JP2006063382A - チタン酸化物薄膜を基板の表面に形成する方法 - Google Patents

チタン酸化物薄膜を基板の表面に形成する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 優れた特性を有するチタン酸化物薄膜を基板の表面に形成することができる新規な方法を提供すること。
【解決手段】 金属チタンを基板の表面に気相蒸着させるとともに、酸素のクラスターイオンビームを加速して蒸着域に照射することを特徴とする。
【選択図】 図10

Description

本発明は、優れた特性を有するチタン酸化物薄膜を基板の表面に形成することができる新規な方法に関する。
二酸化チタン(TiO2)に代表されるチタン酸化物は、ルチル型、アナターゼ型、ブルカイト型の3種類の結晶構造を持つこと、光分解作用(光の照射によって表面に存在する有機物を分解する作用)や光親水性作用(光の照射によって表面の水に対する接触角を低下させて親水性を発現させる作用)などの光触媒作用は、最も安定な結晶構造であるルチル型よりもアナターゼ型の方が高い作用を有することが知られており、誘電材料などとしての用途の他、光触媒作用に基づいた、抗菌性、防汚性、脱臭性、消臭性、水浄化性、抗癌性、防曇性、親水性などが必要とされる多種多様な用途への展開が期待されている。
チタン酸化物の利用形態は様々であるが、その一つに、チタン酸化物薄膜をガラス基板などの基板の表面に形成して利用する方法がある。これまでに知られている、チタン酸化物薄膜を基板の表面に形成する方法としては、例えば、湿式法であるゾル・ゲル法がある。しかしながら、ゾル・ゲル法で形成したチタン酸化物薄膜は、基板への付着力が弱いという欠点を有する。また、チタン酸化物薄膜の結晶構造を制御するためには、形成した薄膜を約850℃の高温で熱的処理する必要がある。従って、ゾル・ゲル法は、ガラス基板や有機物基板などの軟化点や融点が低い材質からなる基板の表面に、チタン酸化物薄膜を形成する際には不向きであると言わざるを得ない。また、ゾル・ゲル法で形成したチタン酸化物薄膜は、通常、表面粗さ(Ra)が数nm〜数十nmと粗いため、例えば、これを電子・光学デバイスに応用しようとしても、その表面に均一な電極を形成するのが困難であるといった問題があり、応用範囲が制限されるといった欠点を有する。チタン酸化物薄膜を基板の表面に形成するその他の方法としては、酸素存在下の真空中(例えば0.1Pa〜10Pa)で金属チタンを蒸着源に用いてスパッタを行う方法をはじめとする各種の気相蒸着法(乾式法)も知られている。しかしながら、このような方法は、基板への付着力が強いチタン酸化物薄膜を形成することができるものの、結晶性や結晶構造の制御が困難であるといった欠点を有する。
そこで、近年、金属チタンを基板の表面に気相蒸着させるとともに、分子状の酸素のビームをイオン化し加速して蒸着域に照射する、酸素イオンビーム援用蒸着法によってチタン酸化物薄膜を形成する方法が提案されている(例えば特許文献1を参照のこと)。しかしながら、酸素イオンビーム援用蒸着法は、分子状の酸素のイオンビームを用いているため、高い加速エネルギーを持った酸素イオンの照射による薄膜の損傷が生じるといった欠点を有する。また、酸素存在下の真空中で、金属チタンの塊状分子集団であるクラスターのビームをイオン化し加速して基板の表面に照射する、クラスターイオンビーム法によってチタン酸化物薄膜を形成する方法も提案されている(例えば特許文献2を参照のこと)。しかしながら、この方法によれば、アナターゼ型結晶構造を多く含むチタン酸化物薄膜を形成しやすいといった利点があるものの、この方法は、一部の酸素分子がイオン化され、高い加速エネルギーを持った酸素イオンの照射による薄膜の損傷が生じるといった欠点を有する。
また、金属を基板の表面に気相蒸着させるとともに、断熱膨張によって形成した酸素の塊状分子集団であるクラスターのビームをイオン化し加速して蒸着域に照射する、酸素クラスターイオンビーム援用蒸着法によって金属酸化物薄膜を形成する方法が知られている(例えば特許文献3や特許文献4を参照のこと)。酸素クラスターイオンビーム援用蒸着法によれば、酸素をクラスターで蒸着域に照射するため、ビームの加速電圧として数kVを印加しても、各酸素原子を低速の低エネルギービームとして利用することができるので、分子状の酸素を用いた酸素イオンビーム援用蒸着法では得られない照射効果、例えば、高密度照射効果や多体衝突効果や低エネルギー照射効果などを得ることができる。しかしながら、酸素クラスターイオンビーム援用蒸着法によりチタン酸化物薄膜を基板の表面に形成し、形成したチタン酸化物薄膜を光触媒として応用した報告はこれまでにない。
特開平8−165209号公報 特開平11−197512号公報 特開平6−275545号公報 特開2004−43874号公報
そこで本発明は、優れた特性を有するチタン酸化物薄膜を基板の表面に形成することができる新規な方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の点に鑑みて種々の検討を行った結果、チタン酸化物薄膜を基板の表面に形成する方法として、金属チタンを基板の表面に気相蒸着させるとともに、断熱膨張によって形成した酸素の塊状分子集団であるクラスターのビームをイオン化し加速して蒸着域に照射する、酸素クラスターイオンビーム援用蒸着法を採用し、ビームの加速エネルギーや基板の温度などの各種条件を制御することで、表面平滑性に優れるとともに、優れた光触媒作用を有するチタン酸化物薄膜を基板の表面に形成することができることを見出した。
上記の知見に基づいて完成された本発明のチタン酸化物薄膜を基板の表面に形成する方法は、請求項1記載の通り、金属チタンを基板の表面に気相蒸着させるとともに、酸素のクラスターイオンビームを加速して蒸着域に照射することを特徴とする。
また、請求項2記載の方法は、請求項1記載の方法であって、チタン酸化物薄膜の表面粗さ(Ra)が1nm以下であることを特徴とする。
また、請求項3記載の方法は、請求項1または2記載の方法において、チタン酸化物薄膜がアナターゼ型の結晶構造を含むことを特徴とする。
また、請求項4記載の方法は、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法において、チタン酸化物薄膜が光分解作用および/または光親水性作用を有することを特徴とする。
また、請求項5記載の方法は、請求項1乃至4のいずれかに記載の方法において、チタン酸化物薄膜が表面の水に対する接触角を20°以下にまで減じることができる光親水性作用を有することを特徴とする。
また、請求項6記載の方法は、請求項1乃至5のいずれかに記載の方法において、基板の温度を250℃〜500℃とすることを特徴とする。
また、本発明のチタン酸化物薄膜は、請求項7記載の通り、金属チタンを基板の表面に気相蒸着させるとともに、酸素のクラスターイオンビームを加速して蒸着域に照射することで、基板の表面に形成されてなることを特徴とする。
本発明によれば、酸素クラスターイオンビーム援用蒸着法が有する特徴的な照射効果、例えば、高密度照射効果や多体衝突効果や低エネルギー照射効果などを利用して、低温において金属チタンの酸化反応を効率的に促進させることで、表面平滑性に優れる高密度かつ低損傷なチタン酸化物薄膜を、その結晶構造を制御して基板の表面に形成することができる(図1参照)。
以下、本発明のチタン酸化物薄膜を基板の表面に形成する方法の代表的な形態について、図面を参考にしながら説明する。
本発明のチタン酸化物薄膜を基板の表面に形成する方法は、公知のガスクラスターイオンビーム援用蒸着装置を用いて実現することができる。図2に概略を示す装置は、酸素のクラスターを生成させるための真空容器であるクラスター生成室1、クラスター生成室1で生成させた酸素のクラスターをビーム状にし、このクラスタービームを電子衝撃によってイオン化して加速し、サイズ分離することで、酸素のクラスターイオンビームとして基板の表面に照射するための真空容器である成膜室2から構成されている。クラスター生成室1に設けられたガスクラスターソース3は、左右方向のX軸、奥行き手前方向のY軸、ビーム進行方向のZ軸の3軸方向にそれぞれ独立に可動できるようになっており、ガスクラスターソース3に供給された加圧された酸素は、ガスクラスターソース3に設けられた小孔を通過して真空(例えば1Pa〜10Pa)のクラスター生成室1に噴射される。この時、断熱膨張によって酸素の塊状分子集団すなわちクラスターが生成される。こうして生成された酸素のクラスターは、形状がコーン状で直径が1mm以下の開孔を有するスキマー4を通過して成膜室2に導入されることでビーム状にされ、スキマー4を通過して成膜室2に導入された酸素のクラスターは、イオン化部5に導入され、そこで電子衝撃によってイオン化されて加速され、クラスターイオンとして引き出された後、サイズ分離器6に導入される。サイズ分離器6では、酸素のクラスターイオンを減速電界法によってサイズ分離し、サイズ分離された酸素のクラスターイオンは、レンズ電極7を通過して集束され、酸素のクラスターイオンビームとして基板ホルダー8に装着された基板の表面に照射される。また、成膜室2には、金属チタンを加熱して蒸発させるための蒸着源9が設けられている。金属チタンの蒸気は、成膜室2の真空中(例えば10-4Pa〜10-2Pa)を走行し、基板ホルダー8に装着されている基板の表面に蒸着される。基板の表面では、金属チタンの蒸気と酸素のクラスターイオンとが反応して、金属チタン薄膜が形成される。酸素のクラスターイオンの電流は、基板ホルダー8とイオン化部5の間にファラデーカップ10を移動させて測定する。また、金属チタンの蒸着時間は、蒸着源9の上に設けられたシャッター11の開閉によって制御する。チタン酸化物薄膜の膜厚は、膜厚モニター12によって測定する。クラスター生成室1の真空排気は、図略のメカニカルブースターポンプと油回転ポンプによって行われ、成膜室2の真空排気は、図略のターボ分子ポンプと油回転ポンプによって行われる。
酸素のクラスターイオンビームは、酸素のみから構成してもよいが、酸素とヘリウムのような不活性ガスとの混合ガスから構成してもよい。このような混合ガスを用いることには、酸素と不活性ガスとの衝突によって酸素が冷却され、酸素のクラスターが生成されやすいといった利点がある。この場合、酸素と不活性ガスとの混合比は5:5〜9:1とすることが望ましい。混合比が5:5よりも酸素プアであると十分量の酸素のクラスターイオンを蒸着域に照射することができない恐れがある一方、混合比が9:1よりも酸素リッチであると不活性ガスを混合した効果が得られない恐れがある。酸素のクラスターイオンビームの生成条件としては、例えば、ガスクラスターソース内部の酸素圧(Inlet:酸素と不活性ガスとの混合ガスを用いる場合は混合ガス圧)が2500Torr〜4000Torr、イオン化電子電圧(Ve)が300V〜500V、イオン化電子電流(Ie)が50mA〜300mA、イオン電流密度(Iion)が1μA/cm2〜5μA/cm2、加速電圧(Va)が1kV〜10kVといった条件を挙げることができる。このような条件を採用することで、500〜6000のクラスターサイズ分布を有し、10μA〜50μAのイオン電流を有する酸素のクラスターイオンビームを生成させることができる。
本発明によれば、例えば、上記のような生成条件で酸素のクラスターイオンビームを生成させ、成膜速度を0.1Å/秒〜100Å/秒にすることで、表面粗さ(Ra)が1nm以下の表面平滑性に優れた膜厚が1nm〜1μmのチタン酸化物薄膜を基板の表面に形成することができる。この場合、基板を、例えば、500℃を超えるような高温に加熱せずとも、その表面にチタン酸化物薄膜を形成することができるので、Si基板のような半導体基板のみならず、ガラス基板や有機物基板などの軟化点や融点が低い材質からなる基板の表面にチタン酸化物薄膜を形成する場合にも好適である。また、基板の温度を250℃以上にした場合、アナターゼ型の結晶構造を含む、光分解作用や光親水性作用などの光触媒作用に優れたチタン酸化物薄膜をその表面に形成することができる。なお、金属チタンを基板の表面に気相蒸着させる前に、基板の表面に酸素のクラスターイオンビームを加速して照射すれば、予め基板の表面を清浄することができ、また、基板の表面原子と酸素原子の結合の促進や酸素原子とチタン原子の結合の促進をすることができるので、形成されるチタン酸化物薄膜の基板への付着力を高めることができる。
以下、図2に概略を示す公知のガスクラスターイオンビーム援用蒸着装置を用いて行った実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の記載に何ら限定して解釈されるものではない。
(1)酸素のクラスターイオンビームの性状について
酸素とヘリウムの混合ガス(混合比7:3)を用い、混合ガス圧(Inlet)が2000Torr,2500Torr,3000Torr,3500Torrの4条件、イオン化電子電圧(Ve)が400V、イオン化電子電流(Ie)が100mA、イオン電流密度(Iion)が3μA/cm2、加速電圧(Va)が7kVの条件で、酸素のクラスターイオンビームを生成させた。その結果を図3に示す。図3から明らかなように、以上の条件においては、混合ガス圧を2500Torr以上とすることで、500〜6000のクラスターサイズ分布を有し、10μA〜50μAのイオン電流を有する酸素のクラスターイオンビームを生成させることができた。
(2)基板の表面に形成したチタン酸化物薄膜の性状について
酸素とヘリウムの混合ガス(混合比7:3)を用い、混合ガス圧(Inlet)が3000Torr、イオン化電子電圧(Ve)が400V、イオン化電子電流(Ie)が100mA、イオン電流密度(Iion)が3μA/cm2、加速電圧(Va)が7kVの条件で、酸素のクラスターイオンビームを生成させ、成膜速度を1Å/秒にして、膜厚が200nmのチタン酸化物薄膜をSi(100)基板の表面に形成した。基板の温度(Ts)を室温(R.T.:50℃),100℃,200℃,300℃とした場合のそれぞれにおいて形成したチタン酸化物薄膜のX線回折パターンを図4に示す。図4から明らかなように、以上の条件においては、基板の温度を200℃以下とした場合において形成したチタン酸化物薄膜ではX線回折ピークは現れておらず、よって、これらのチタン酸化物薄膜は、非晶質状態にあることがわかった。一方、基板の温度を300℃とした場合において形成したチタン酸化物薄膜ではX線回折ピークが現れており、このチタン酸化物薄膜は、アナターゼ型とルチル型の結晶構造が混在した多結晶状態にあることがわかった。また、基板の温度(Ts)を室温(R.T.:50℃),100℃,200℃,300℃とした場合のそれぞれにおいて形成したチタン酸化物薄膜の表面粗さ(Ra)を図5に示す(原子間力顕微鏡観察による)。図5から明らかなように、電子ビーム蒸着法によって形成したチタン酸化物薄膜のRaは約1.67nmであるのに対し、本発明において基板の温度を室温,100℃,200℃,300℃とした場合のそれぞれにおいて形成したチタン酸化物薄膜のRaは0.581nm,0.733nm,0.642nm,0.386nmであり、いずれの場合もRaが1nm以下の表面平滑性に優れた薄膜であることがわかった。また、基板の温度が増加するとともに形成したチタン酸化物薄膜の表面粗さは減少する傾向にあり、基板の温度を制御することで、Raが0.5nm以下の超平坦な薄膜を形成することができることもわかった。
(3)基板の表面に形成したチタン酸化物薄膜の光触媒作用について(その1)
上記の条件で、Si(100)基板の温度を室温(R.T.:50℃),100℃,200℃,300℃とした場合のそれぞれにおいて形成したチタン酸化物薄膜の光分解作用を、図6に概略を示す方法で評価した。即ち、チタン酸化物薄膜を表面に形成した基板21を、高分子材料のポリメタクリル酸メチル製透明容器22の内部に設置し、容器22に濃度が10ppmのメチレンブルー水溶液23を充填することで、チタン酸化物薄膜を表面に形成した基板21をメチレンブルー水溶液23に浸漬した。その後、紫外線ライト24から発せられた紫外線を、メチレンブルー水溶液23に浸漬したチタン酸化物薄膜を表面に形成した基板21の表面に照射した。図7は、メチレンブルー水溶液の可視光の透過特性を示すグラフである。図7から明らかなように、メチレンブルー水溶液は、波長が約500nm〜700nmの領域で光の吸収が生じて透過率が減少する。特に、波長が610nmと660nmでメチレンブルー水溶液の特徴を示す吸収ピークが現れる。このような特性を有するメチレンブルー水溶液の波長が660nmの可視光の吸収強度が、メチレンブルー水溶液中のチタン酸化物被膜に波長が360nmの紫外線(0.31mW/cm2)を照射した時間によりどのように変化するかを、吸収強度の変化量によって図8に示す。図8から明らかなように、基板の温度を300℃とした場合において形成したチタン酸化物薄膜は、紫外線の照射時間の増加とともに吸収強度の変化量が負の値で大きくなった。これは、メチレンブルー水溶液中のチタン酸化物薄膜の表面に吸着しているメチレンブルー分子が、チタン酸化物薄膜に紫外線を照射したことによって分解されたことにより、波長が660nmの可視光の吸収強度が弱まり、透過率が向上したことによるものであり、よって、基板の温度を300℃とした場合において形成したチタン酸化物薄膜、即ち、アナターゼ型とルチル型の結晶構造が混在した多結晶状態にあるチタン酸化物薄膜は、優れた光分解作用を有することがわかった。一方、基板の温度を200℃以下とした場合において形成したチタン酸化物薄膜は、紫外線の照射時間が増加しても、波長が660nmの可視光の吸収強度の変化はほとんどなかった。これは、基板の温度を200℃以下とした場合において形成したチタン酸化物薄膜は、非晶質状態にあるので、その表面に吸着しているメチレンブルー分子を分解する能力がないことによるものであることがわかった。
(4)基板の表面に形成したチタン酸化物薄膜の光触媒作用について(その2)
上記の条件で、Si(100)基板の温度を室温(R.T.:50℃),100℃,200℃,300℃とした場合のそれぞれにおいて形成したチタン酸化物薄膜の光親水性作用を、次のようにして評価した。即ち、大気中で、基板の表面に形成したチタン酸化物薄膜に波長が254nmの紫外線(0.42mW/cm2)を照射した後、その表面に水滴を滴下し、水に対する接触角を測定した。紫外線の照射時間と水に対する接触角の関係を図9に示す。また、チタン酸化物薄膜を形成した際の基板の温度と紫外線を30分照射した際の水に対する接触角の関係を図10に示す。図9と図10から明らかなように、基板の温度を300℃とした場合において形成したチタン酸化物薄膜は、紫外線の照射時間の増加とともに水に対する接触角が小さくなり、紫外線を30分照射することで、水に対する接触角を20°以下にまで減じることができた。よって、基板の温度を300℃とした場合において形成したチタン酸化物薄膜、即ち、アナターゼ型とルチル型の結晶構造が混在した多結晶状態にあるチタン酸化物薄膜は、優れた光親水性作用を有することがわかった。一方、基板の温度を200℃以下とした場合において形成したチタン酸化物薄膜は、紫外線の照射時間が増加しても、水に対する接触角の変化はなく、比較例として紫外線を照射して調べたSi(100)基板の水に対する接触角よりも接触角が大きかった。これは、基板の温度を200℃以下とした場合において形成したチタン酸化物薄膜は、非晶質状態にあるので、光親水性作用を有していないことによるものであることがわかった。また、データは示さないが、別途に紫外線を照射して調べたルチル型単結晶基板の水に対する接触角は、Si(100)基板の水に対する接触角よりも大きく、また、紫外線の照射時間が増加しても、水に対する接触角の変化はなく、よって、ルチル型単結晶基板も光親水性作用を有していないことがわかった。従って、基板の温度を300℃とした場合において形成したチタン酸化物薄膜が優れた光親水性作用を有するのは、アナターゼ型とルチル型の結晶構造が混在した多結晶状態にあることによる特異的な事象であることがわかった。
また、Si(100)基板の温度を300℃として、加速電圧(Va)を3kV,5kV,7kV,9kVとした場合のそれぞれにおいて形成したチタン酸化物薄膜(いずれの薄膜もアナターゼ型とルチル型の結晶構造が混在した多結晶状態にある)の、紫外線の照射時間と水に対する接触角の関係を図11に示す。図11から明らかなように、加速電圧が異なっても、紫外線の照射時間の増加とともに水に対する接触角が小さくなる傾向は同じであった。
本発明は、優れた特性を有するチタン酸化物薄膜を基板の表面に形成することができる新規な方法を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。
酸素クラスターイオンビーム援用蒸着法の概念図である。 公知のガスクラスターイオンビーム援用蒸着装置の一例の概略図である。 実施例における、酸素のクラスターイオンビームの生成結果を示すグラフである。 同、基板の表面に形成したチタン酸化物薄膜のX線回折パターンを示すグラフである。 同、表面粗さ(Ra)を示すグラフである。 同、光分解作用の評価方法の概念図である。 メチレンブルー水溶液の可視光の透過特性を示すグラフである。 実施例において基板の表面に形成したチタン酸化物薄膜の光分解作用を示すグラフである。 同、光親水性作用を示すグラフである。 同、光親水性作用を示す別のグラフである。 同、光親水性作用を示すさらに別のグラフである。
符号の説明
1 クラスター生成室
2 成膜室
3 ガスクラスターソース
4 スキマー
5 イオン化部
6 サイズ分離器
7 レンズ電極
8 基板ホルダー
9 蒸着源
10 ファラデーカップ
11 シャッター
12 膜厚モニター
21 チタン酸化物薄膜を表面に形成した基板
22 透明容器
23 メチレンブルー水溶液
24 紫外線ライト

Claims (7)

  1. チタン酸化物薄膜を基板の表面に形成する方法であって、金属チタンを基板の表面に気相蒸着させるとともに、酸素のクラスターイオンビームを加速して蒸着域に照射することを特徴とする方法。
  2. チタン酸化物薄膜の表面粗さ(Ra)が1nm以下であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. チタン酸化物薄膜がアナターゼ型の結晶構造を含むことを特徴とする請求項1または2記載の方法。
  4. チタン酸化物薄膜が光分解作用および/または光親水性作用を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
  5. チタン酸化物薄膜が表面の水に対する接触角を20°以下にまで減じることができる光親水性作用を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
  6. 基板の温度を250℃〜500℃とすることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。
  7. 金属チタンを基板の表面に気相蒸着させるとともに、酸素のクラスターイオンビームを加速して蒸着域に照射することで、基板の表面に形成されてなることを特徴とするチタン酸化物薄膜。
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