JP2004105903A - ヒドラジン含有排水の処理法 - Google Patents
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Abstract
【課題】発電設備などから排出されるヒドラジン含有排水から、ヒドラジンを効率よく酸化および/または分解し、より簡単且つ確実に無害化することのできる方法を提供すること。
【解決手段】ヒドラジンを含む排水を、触媒および酸素含有ガスの存在下で加温し、該排水中のヒドラジンを酸化および/または分解して無害化するに当り、排水を30℃以上100℃未満の温度域で湿式分解することにより、ヒドラジンをアンモニア態窒素に変換した後、該アンモニア態窒素を気相側へ放散させ、得られるガスを排ガス処理装置で浄化する。
【選択図】 図1
【解決手段】ヒドラジンを含む排水を、触媒および酸素含有ガスの存在下で加温し、該排水中のヒドラジンを酸化および/または分解して無害化するに当り、排水を30℃以上100℃未満の温度域で湿式分解することにより、ヒドラジンをアンモニア態窒素に変換した後、該アンモニア態窒素を気相側へ放散させ、得られるガスを排ガス処理装置で浄化する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はヒドラジン含有排水の処理法に関し、特に、発電用ボイラーなどから排出されるヒドラジン含有排水からヒドラジンを効率よく分解して無害化する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
発電所などで使用されるボイラーや配管には、防錆を目的としてヒドラジンが広く利用されている。そして、防錆処理後のヒドラジン含有排水は放出されることになるが、ヒドラジンは還元性物質でありCOD源として排出基準にかかるため、可及的に除去しなければならない。
【0003】
こうした状況の下で、ヒドラジン含有排水の処理法については古くから研究が進められており、その一部は実用化されている。かかる研究の中でも比較的新しい技術として、▲1▼ヒドラジン含有排水に過炭酸塩と銅、マンガン、コバルト、ニッケル等の化合物を反応触媒として共存させ、ヒドラジンを酸化分解することによって無害化する方法(特許文献1など)、▲2▼ヒドラジン含有排水に酸化剤を添加し、これを、活性炭に貴金属イオンを担持させた酸化触媒充填層に通して酸化分解する方法(特許文献2など)、▲3▼ヒドラジン含有排水を、鉄、マンガン、亜鉛、クロム、ニッケル、コバルト等の金属元素の存在下にpH7以下で酸素含有ガスと接触させた後、生物学的処理を施すことによって無害化する方法(特許文献3など)等がある。
【0004】
これらの方法は、夫々処理効率や安全性、操業性などにおいてそれなりの特長を有している。しかし、環境破壊防止の観点から排水基準が益々厳しくなっている昨今、無害化の確実性や安全性、処理操作や設備の簡便性などにおいて必ずしも満足し得るものとは言えず、一層の改善が求められる。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−301171号公報(特許請求の範囲など)。
【特許文献2】
特開2000−107774号公報(特許請求の範囲など)。
【特許文献3】
特開2002−79278号公報(特許請求の範囲など)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、発電設備などから排出されるヒドラジン含有排水から、ヒドラジンを効率よく酸化および/または分解してより簡単且つ確実に無害化することのできる方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することのできた本発明の処理法は、ヒドラジンを含む排水を、触媒および酸素含有ガスの存在下に加温し、該排水中のヒドラジンを酸化および/または分解して無害化するに当り、排水を30℃以上100℃未満の温度域で湿式分解することにより、ヒドラジンをアンモニア態窒素および/または窒素ガスに変換した後、該アンモニア態窒素を気相側へ放散させ、得られるガスを排ガス処理装置で浄化するところに要旨を有している。
【0008】
本発明の上記処理法を実施するに当り、前記湿式分解工程で使用する触媒としては、少なくとも活性炭を含む触媒が好適であり、またこの処理法は、ヒドラジンと共に塩化物イオンを含む排水に対しても有効に活用できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
上記の様に本発明は、特に発電設備などから排出されるヒドラジン含有排水を対象とし、該排水中のヒドラジンを簡単に且つより効率良く分解して無害化する方法を提供するもので、該処理法の特徴は、ヒドラジン含有排水を触媒と酸素含有ガスの存在下、100℃未満の低温域で処理することによって先ずアンモニア態窒素に変換し、このアンモニア態窒素を気相側へ放散した後、ガス成分を排ガス処理設備で処理することにより無害な窒素に変えるところにある。
【0010】
ちなみに、ヒドラジン含有排水中のヒドラジンの無害化処理法として従来から実施されているのは、前掲の特許文献を含めて殆どが「2H2N2+O2→2N2+2H2O」で示される如くヒドラジンを無害な窒素と水に酸化および/または分解する方法であり、この方法を利用してヒドラジンの酸化および/または分解を行う場合、触媒や処理条件(特に処理温度など)等として最適な条件を設定すれば、高レベルの酸化および/または分解効率を得ることができる。しかし酸化および/または分解に最適の条件は、排水中のヒドラジン濃度やCOD値、SS成分含量等によりかなり異なってくるため、常に安定して高レベルの酸化および/または分解効率が得られるとは限らず、一部がアンモニア態窒素として残存したり、或いは酸化が進み過ぎてNOxが副生する恐れも生じてくる。
【0011】
そこで、湿式酸化・分解法を利用したヒドラジン含有排水の無害化処理をより確実且つ安定して行うための方法を種々模索した結果、ヒドラジン含有排水を触媒と酸素含有ガスの存在下に30℃以上100℃未満の温度域で湿式分解すれば、該排水中に含まれるヒドラジンの殆どを効率よくアンモニア態窒素と窒素ガスに変換し得ること、そして、該アンモニア態窒素を公知の方法で気相側へ放散させれば、排水から窒素成分を可及的に除去し得ること、更に気相側へ放散されたアンモニア態窒素は、排ガス処理装置で処理することによって効率よく無害化できることを確認し、上記本発明に想到したものである。以下、本発明について詳細に説明を進める。
【0012】
先ず本発明では、ヒドラジン含有排水を触媒および酸素含有ガスの存在下で加温処理し、ヒドラジンをアンモニア態窒素および/または窒素ガスに変換する。
【0013】
この際に用いる触媒の種類は特に制限されず、加温条件下の水溶液中で用いられる種々の固体触媒を使用できる。しかし本発明者らが様々の触媒についてヒドラジンの湿式分解効率を調べた結果、活性炭が最も優れた触媒活性を発揮することが確認された。よって本発明を実施するに当っては、少なくとも活性炭を含む触媒を湿式分解工程で使用するのが好ましい。
【0014】
なお上記湿式分解工程で、従来から湿式酸化触媒として知られているマンガン、コバルト、ニッケル、銅、セリウム、銀、白金、パラジウム、ロジウム、金、イリジウム、ルテニウム、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素、鉄などの1種もしくは2種以上を適宜組み合わせて使用することもできる。しかし上記の如く、本発明で実施される30℃以上100℃未満の温度条件下でのヒドラジンからアンモニア態窒素や窒素ガスへの湿式分解を効率よく進める上では、上記金属元素のみの触媒ではやや活性不足であり、上記の如く比較的穏和な条件下で前記湿式分解をより効率よく進めるには、これらの金属を活性炭と併用し、好ましくは活性炭に担持させるのがよいこと知った。
【0015】
従って、本発明においてヒドラジンからアンモニア態窒素および/または窒素ガスへ湿式分解する際には、触媒として活性炭を単独で使用するか、あるいは該活性炭と共に前述した金属触媒を併用するのがよく、その場合の上記金属成分の好ましい使用量(担持量)は、活性炭に対して25質量%程度以下、より好ましくは0.05〜20質量%の範囲である。
【0016】
該湿式分解触媒の形状には特に制限がなく、例えばペレット状、球状、粒状、リング状、ハニカム状、破砕片状など、任意の形状のものを使用できる。
【0017】
これらの触媒を用いた湿式分解の具体的な方法としては、上記触媒が充填された反応塔に被処理排水と酸素含有ガスを通し、両者を気液接触させつつ触媒と接触させればよい。排水と酸素含有ガスを気液接触させる具体的な手法としては、▲1▼排水と酸素含有ガスの両方を触媒が充填された反応塔の下部から供給する並流方式、▲2▼排水と酸素含有ガスの両方を反応塔の上部から供給する並流方式、▲3▼排水は反応塔の上部から連続相を形成するように供給し、酸素含有ガスは反応塔の下部から供給する向流方式、▲4▼排水は反応塔の上部から供給し、酸素含有ガスは反応塔の下部からガスの連続相を形成するように供給する向流方式、などが挙げられる。
【0018】
これらの中でも本発明法を実施する際により適した方式は、▲1▼、▲3▼、▲4▼の方式である。▲1▼の方式は、排水を加温下で処理する際に特に好ましく採用され、装置の制御が容易で尚且つ高レベルの湿式分解効率が得られ易い。また▲3▼、▲4▼も本発明に適した方式であり、特に排水中に含まれるヒドラジン濃度が高い場合に効果的である。
【0019】
なお上記湿式分解に用いられる反応塔の内部には、前述した固体触媒以外に、気液の攪拌および触媒との接触効率を向上させ、また気液の偏流を防止して触媒充填層をムラなく均等に通過させるため、充填物や種々の構造物などを組み込むことができる。
【0020】
充填物として金属またはセラミック製のものを使用する場合、その形状は、耐摩耗性および強度的に問題がない形状であるならば特に限定されないが、代表的なものとしては、球状、ペレット状、塊状、リング状、サドル状、多面体状などが挙げられる。その他に、繊維状、鎖状、数珠状、メッシュ状の如き連続体の形状をした充填物も使用できる。これらの中でも汎用性の高いのは、球状、ペレット状、リング状またはサドル状、特に球状、ペレット状またはリング状の充填物である。なお粒状の充填物は、反応塔に容易に充填できる点からも推奨される。それらの例として、ラシヒリング、スロテッドリング、レッシヒリング、ディクソンパッキング、ヘリパック、マクマホンパッキング、ヘリックス、キャノンパッキング、ポールリング、コイルパック、ベルルサドル、インタロックスサドル、バールサドル、グッドローパッキング、デミスターなどの如き吸収塔や蒸留塔などの気液接触装置で一般的に用いられる金属またはセラミック製の充填物を使用することができる。
【0021】
また、充填構造物としては、金網や単孔または多孔の板、グリッド、仕切板などを単数もしくは複数設けることができる。これらの構造物と共に、前述した充填物を併用することも勿論可能である。
【0022】
本発明で使用する酸素含有ガスとは、酸素および/またはオゾンを含むガスであり、オゾンもしくは酸素等のガスを用いる場合には、適宜不活性ガスや空気などで希釈して用いることができる。また酸素富化ガスを使用することもでき、あるいは他のプラントで生じる酸素含有排ガスを利用することも勿論可能である。しかし、入手の容易性やコスト等を考慮して最も一般的なのは空気である。
【0023】
上記酸素含有ガスと触媒を用いて湿式分解を行う際の温度は、本発明において極めて重要であり、30℃以上100℃未満としなければならず、より好ましくは50℃以上95℃以下、更に好ましくは80℃以上95℃である。ちなみに、湿式分解時の温度が100℃を超えると、排水が液相を保持できなくなるため、装置を耐圧構造としなければならず、設備面からの負担が強いられるので好ましくない。一方、温度が30℃未満では湿式分解効率が低下し、ヒドラジンからアンモニア態窒素や窒素ガスへの分解が不十分になり、ヒドラジン除去率が低下する。
【0024】
また該湿式分解を行う際の被処理排水の流速は特に制限されないが、好ましいのは、排水の空間速度で湿式分解反応塔当たり0.1hr−1〜10hr−1が効果的である。ちなみに、空間速度が0.1hr−1未満では排水の単位時間当たりの処理量が不足気味になり、逆に10hr−1を超えると、ヒドラジンの一部が未分解状態で残存する恐れが生じてくるからである。より好ましい空間速度は0.3hr−1〜5hr−1である。
【0025】
酸素含有ガスの供給量は、排水中のヒドラジンを含めた被酸化性物質の理論酸素要求量に対して0.1倍以上2.0倍以下の量であることが望ましい。その理由は、酸素含有が巣の供給量が0.1倍未満である場合は、排水中の被酸化性物質を少量だけしか酸化処理できず、また2.0倍を超える量を供給すると、反応塔内での排水の温度が降下し反応効率が上がり難くなるからである。
【0026】
具体的には、排水に含まれるヒドラジンを含めて被酸化性物質の理論酸素要求量の0.1倍以上2.0倍以下、より好ましくは0.5倍以上1.5倍以下の範囲である。
【0027】
なお本発明において、排水中の被酸化性物質の理論酸素要求量を実排水について求めることは困難であるため、ヒドラジンを含めた排水中の被酸化性物質の理論的酸素要求量[ThOD(Cr)]もしくは全酸素要求量(TOD)として求めることができる。排水中の被酸化性物質の理論酸素要求量は、排水中の被酸化性物質の化学的酸素要求量や全酸素要求量とほぼ等しいことが多いからである。
【0028】
湿式分解処理時の排水のpHは特に制限されないが、特にヒドラジンからアンモニア態窒素や窒素ガスへの変換を効率よく進めるには、pH6〜13.5の範囲、より好ましくは7〜11の範囲に調整することが望ましい。
【0029】
尚本発明が適用される排水には、前述の如くヒドラジン以外の被酸化性物質やSS成分などが含まれていてもよく、更には防錆剤の溶解用媒体や冷媒等として簡便に使用されることの多い海水に由来して塩素イオン等が含まれている場合でも、本発明の方法は支障なく実施できる。
【0030】
上記の様にして湿式分解を行った後は、該酸化によって生成し被処理排水中に溶解しているアンモニア態窒素を気相側へ放散させるための処理を行う。この処理自体は、アンモニアストリッピング法として公知の方法であり、例えばアンモニアを含む被処理液に空気を吹き込んでアンモニアを放散させる空気ストリッピング法や、水蒸気を吹き込んでアンモニアを放散させる蒸気ストリッピング法、或いはこれらを組み合わせた複合ストリッピング法などを採用できる。
【0031】
アンモニアストリッピングを行う際の具体的な条件も特に制限的でないが、排水中のアンモニア態窒素を効率よく気相側へ放散されるための好ましい条件としては、非処理水のpHを6〜13.5、より好ましくは8〜13.5程度で、温度は80℃以上、より好ましくは90℃以上である。
【0032】
この処理で気相側へ放散されたアンモニア態窒素は、当該気相を排ガス処理に付し、触媒の存在下に酸化および/または分解して無害化する。ここで使用される排ガス処理装置としては、種々の排ガス処理装置を用いることができるが、好ましくはアンモニア分解触媒が充填された排ガス処理装置が使用される。該触媒の種類は特に限定されるものではないが、好ましいのは、触媒A成分として、チタニウム、ジルコニウム、ケイ素、アルミニウム、セリウム、鉄よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む酸化物と、触媒B成分として白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、バナジウム、タングステン、モリブテン、クロム、マンガン、銅よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属あるいは酸化物とを含有する混合触媒である。
【0033】
好ましい処理温度は150〜700℃の範囲であり、より好ましくは200〜500℃である。また被処理ガスの空間速度(SV)は、触媒の種類や温度、ガス中のアンモニア濃度などによっても変わってくるので一律に決めることはできないが、好ましいのは1000hr−1以上100000hr−1以下、より好ましくは5000hr−1以上50000hr−1以下である。
【0034】
他方、前記アンモニアストリッピング処理でアンモニア態窒素を放散した後の残液には、アンモニア態窒素は殆ど残存しておらず、且つヒドラジンの殆どはその前の湿式分解工程で分解されているので、ヒドラジンも実質的に含まれていない。更に前記湿式分解工程では、ヒドラジン以外の被酸化性物質もアンモニア態窒素や窒素ガスに分解されるので、有機態窒素含量そのものが大幅に低減されており、結果的にCOD基準にも適合し得る清浄度の排水として放出可能となる。従って、アンモニアストリッピング処理後の処理水はそのまま放流することも可能であるが、場合によっては更に適当な後処理を施し、酸化処理では除去しきれなかった有害不純物を除去することも勿論有効である。
【0035】
本発明の処理対象となるヒドラジン含有排水は、前述した如く主として発電設備のボイラーやその関連配管の防錆処理液として排出される排水であり、沿岸地域に設置された発電設備では冷媒や洗浄水などとして海水が使用されることも多い。そして本発明は、ヒドラジンと共に塩素イオンが含まれている排水に適用した場合でも、支障なく有効に活用できる。またこれらの排水には、ヒドラジン以外にも相当量の被酸化性物質が含まれていることがあるが、本発明によればこれらの被酸化性物質も同時に湿式分解されるので、これら被酸化性物質のうち有機窒素化合物も分解されてアンモニア態窒素に変換された後、アンモニアストリッピング及び排ガス処理によって除去される。
【0036】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に包含される。
【0037】
実施例1
図1に示す装置を使用し、下記の条件でヒドラジン含有排水の処理を行った。
【0038】
処理に用いた湿式分解反応塔1は、直径26mm、長さ3000mmの円筒状であり、該反応塔1の内部には、触媒としてペレット状(直径4mm、長さ3〜6mm)の活性炭を0.8リットル充填した。処理に供した排水は、発電用ボイラーから排出された排水であり、ヒドラジン含量は900mg/リットル、アンモニア態窒素は1,500mg/リットル、塩素イオン濃度は15,000mg/リットル、pHは2.5であった。この排水には、予め苛性ソーダ水溶液をNa/Cl(モル比)が1.0となる様に添加しておいた。
【0039】
湿式分解処理に当っては、タンクから排水供給ライン6を経て送られてくる排水を、排水供給ポンプ5から1.6リットル/hの流量、すなわち触媒充填量当りの空間速度(LHSV)2hr−1で昇圧フィ−ドした後、熱交換器4を経てから加熱器3で90℃に加熱し、反応塔1の底部から供給した。また該排水には、空気ブロワー10から、O2/ThOD(Cr)(供給ガス中の酸素量/排水の理論的酸素要求量)=1.0の割合となるように空気を供給して該排水に混入した。反応塔1では、電気ヒーター2により95℃に保温して分解処理を行った。
【0040】
湿式分解処理を終えた処理水は、処理水ライン9を経て放散塔10へ送り、水蒸気を吹き込むことにより、アンモニア態窒素を気相側へ放散させた。放散塔10から排出される排ガスは、空気ブロワー14から供給される空気と混合した後、熱交換器11および加熱器12で加熱してから排ガス処理装置13へ送り、装置入口温度350℃、SV:5,000hr−1で処理した。なお排ガス処理装置13内には、チタン、ケイ素、バナジウム、タングステンの酸化物を主成分とするハニカム状成形体にパラジウムを担持した触媒を充填しておいた。
【0041】
排ガス処理装置13の放出ライン16から放出される排ガスは、熱交換器11で前記排ガスと空気の混合流を加熱した後スタックから放出されるが、放出される該ガスのアンモニア濃度は10ppm以下、窒素酸化物濃度は50ppm以下であった。他方、前記放散塔10の塔底から処理液ポンプ15、処理液排出ライン17および熱交換器4を経て抜き出される処理水(排出液)のヒドラジン濃度は20mg/リットル以下であり、COD排出基準を十分に満足する低濃度のものであった。
【0042】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されており、発電設備などから排出されるヒドラジン含有排水を比較的温和な湿式分解処理に付すことによって、NOxなどの有害な副生物を生成させることなく、ヒドラジンを効率よく酸化および/または分解すると共に、生成したアンモニア態窒素はストリッピング処理およびアンモニア含有ガス処理によって効率よく無害化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る処理装置の一実施態様を示す説明図である。
【符号の説明】
1 反応塔
2 ヒーター
3 加熱器
4 熱交換器
5 排水供給ポンプ
6 排水供給ライン
7 アルカリ供給ライン
8 空気ブロワー
9 処理液ライン
10 放散塔
11 熱交換器
12 加熱器
13 反応塔
14 空気ブロワー
15 処理液ポンプ
16 ガス排出ライン
17 処理液排出ライン
【発明の属する技術分野】
本発明はヒドラジン含有排水の処理法に関し、特に、発電用ボイラーなどから排出されるヒドラジン含有排水からヒドラジンを効率よく分解して無害化する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
発電所などで使用されるボイラーや配管には、防錆を目的としてヒドラジンが広く利用されている。そして、防錆処理後のヒドラジン含有排水は放出されることになるが、ヒドラジンは還元性物質でありCOD源として排出基準にかかるため、可及的に除去しなければならない。
【0003】
こうした状況の下で、ヒドラジン含有排水の処理法については古くから研究が進められており、その一部は実用化されている。かかる研究の中でも比較的新しい技術として、▲1▼ヒドラジン含有排水に過炭酸塩と銅、マンガン、コバルト、ニッケル等の化合物を反応触媒として共存させ、ヒドラジンを酸化分解することによって無害化する方法(特許文献1など)、▲2▼ヒドラジン含有排水に酸化剤を添加し、これを、活性炭に貴金属イオンを担持させた酸化触媒充填層に通して酸化分解する方法(特許文献2など)、▲3▼ヒドラジン含有排水を、鉄、マンガン、亜鉛、クロム、ニッケル、コバルト等の金属元素の存在下にpH7以下で酸素含有ガスと接触させた後、生物学的処理を施すことによって無害化する方法(特許文献3など)等がある。
【0004】
これらの方法は、夫々処理効率や安全性、操業性などにおいてそれなりの特長を有している。しかし、環境破壊防止の観点から排水基準が益々厳しくなっている昨今、無害化の確実性や安全性、処理操作や設備の簡便性などにおいて必ずしも満足し得るものとは言えず、一層の改善が求められる。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−301171号公報(特許請求の範囲など)。
【特許文献2】
特開2000−107774号公報(特許請求の範囲など)。
【特許文献3】
特開2002−79278号公報(特許請求の範囲など)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、発電設備などから排出されるヒドラジン含有排水から、ヒドラジンを効率よく酸化および/または分解してより簡単且つ確実に無害化することのできる方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することのできた本発明の処理法は、ヒドラジンを含む排水を、触媒および酸素含有ガスの存在下に加温し、該排水中のヒドラジンを酸化および/または分解して無害化するに当り、排水を30℃以上100℃未満の温度域で湿式分解することにより、ヒドラジンをアンモニア態窒素および/または窒素ガスに変換した後、該アンモニア態窒素を気相側へ放散させ、得られるガスを排ガス処理装置で浄化するところに要旨を有している。
【0008】
本発明の上記処理法を実施するに当り、前記湿式分解工程で使用する触媒としては、少なくとも活性炭を含む触媒が好適であり、またこの処理法は、ヒドラジンと共に塩化物イオンを含む排水に対しても有効に活用できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
上記の様に本発明は、特に発電設備などから排出されるヒドラジン含有排水を対象とし、該排水中のヒドラジンを簡単に且つより効率良く分解して無害化する方法を提供するもので、該処理法の特徴は、ヒドラジン含有排水を触媒と酸素含有ガスの存在下、100℃未満の低温域で処理することによって先ずアンモニア態窒素に変換し、このアンモニア態窒素を気相側へ放散した後、ガス成分を排ガス処理設備で処理することにより無害な窒素に変えるところにある。
【0010】
ちなみに、ヒドラジン含有排水中のヒドラジンの無害化処理法として従来から実施されているのは、前掲の特許文献を含めて殆どが「2H2N2+O2→2N2+2H2O」で示される如くヒドラジンを無害な窒素と水に酸化および/または分解する方法であり、この方法を利用してヒドラジンの酸化および/または分解を行う場合、触媒や処理条件(特に処理温度など)等として最適な条件を設定すれば、高レベルの酸化および/または分解効率を得ることができる。しかし酸化および/または分解に最適の条件は、排水中のヒドラジン濃度やCOD値、SS成分含量等によりかなり異なってくるため、常に安定して高レベルの酸化および/または分解効率が得られるとは限らず、一部がアンモニア態窒素として残存したり、或いは酸化が進み過ぎてNOxが副生する恐れも生じてくる。
【0011】
そこで、湿式酸化・分解法を利用したヒドラジン含有排水の無害化処理をより確実且つ安定して行うための方法を種々模索した結果、ヒドラジン含有排水を触媒と酸素含有ガスの存在下に30℃以上100℃未満の温度域で湿式分解すれば、該排水中に含まれるヒドラジンの殆どを効率よくアンモニア態窒素と窒素ガスに変換し得ること、そして、該アンモニア態窒素を公知の方法で気相側へ放散させれば、排水から窒素成分を可及的に除去し得ること、更に気相側へ放散されたアンモニア態窒素は、排ガス処理装置で処理することによって効率よく無害化できることを確認し、上記本発明に想到したものである。以下、本発明について詳細に説明を進める。
【0012】
先ず本発明では、ヒドラジン含有排水を触媒および酸素含有ガスの存在下で加温処理し、ヒドラジンをアンモニア態窒素および/または窒素ガスに変換する。
【0013】
この際に用いる触媒の種類は特に制限されず、加温条件下の水溶液中で用いられる種々の固体触媒を使用できる。しかし本発明者らが様々の触媒についてヒドラジンの湿式分解効率を調べた結果、活性炭が最も優れた触媒活性を発揮することが確認された。よって本発明を実施するに当っては、少なくとも活性炭を含む触媒を湿式分解工程で使用するのが好ましい。
【0014】
なお上記湿式分解工程で、従来から湿式酸化触媒として知られているマンガン、コバルト、ニッケル、銅、セリウム、銀、白金、パラジウム、ロジウム、金、イリジウム、ルテニウム、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素、鉄などの1種もしくは2種以上を適宜組み合わせて使用することもできる。しかし上記の如く、本発明で実施される30℃以上100℃未満の温度条件下でのヒドラジンからアンモニア態窒素や窒素ガスへの湿式分解を効率よく進める上では、上記金属元素のみの触媒ではやや活性不足であり、上記の如く比較的穏和な条件下で前記湿式分解をより効率よく進めるには、これらの金属を活性炭と併用し、好ましくは活性炭に担持させるのがよいこと知った。
【0015】
従って、本発明においてヒドラジンからアンモニア態窒素および/または窒素ガスへ湿式分解する際には、触媒として活性炭を単独で使用するか、あるいは該活性炭と共に前述した金属触媒を併用するのがよく、その場合の上記金属成分の好ましい使用量(担持量)は、活性炭に対して25質量%程度以下、より好ましくは0.05〜20質量%の範囲である。
【0016】
該湿式分解触媒の形状には特に制限がなく、例えばペレット状、球状、粒状、リング状、ハニカム状、破砕片状など、任意の形状のものを使用できる。
【0017】
これらの触媒を用いた湿式分解の具体的な方法としては、上記触媒が充填された反応塔に被処理排水と酸素含有ガスを通し、両者を気液接触させつつ触媒と接触させればよい。排水と酸素含有ガスを気液接触させる具体的な手法としては、▲1▼排水と酸素含有ガスの両方を触媒が充填された反応塔の下部から供給する並流方式、▲2▼排水と酸素含有ガスの両方を反応塔の上部から供給する並流方式、▲3▼排水は反応塔の上部から連続相を形成するように供給し、酸素含有ガスは反応塔の下部から供給する向流方式、▲4▼排水は反応塔の上部から供給し、酸素含有ガスは反応塔の下部からガスの連続相を形成するように供給する向流方式、などが挙げられる。
【0018】
これらの中でも本発明法を実施する際により適した方式は、▲1▼、▲3▼、▲4▼の方式である。▲1▼の方式は、排水を加温下で処理する際に特に好ましく採用され、装置の制御が容易で尚且つ高レベルの湿式分解効率が得られ易い。また▲3▼、▲4▼も本発明に適した方式であり、特に排水中に含まれるヒドラジン濃度が高い場合に効果的である。
【0019】
なお上記湿式分解に用いられる反応塔の内部には、前述した固体触媒以外に、気液の攪拌および触媒との接触効率を向上させ、また気液の偏流を防止して触媒充填層をムラなく均等に通過させるため、充填物や種々の構造物などを組み込むことができる。
【0020】
充填物として金属またはセラミック製のものを使用する場合、その形状は、耐摩耗性および強度的に問題がない形状であるならば特に限定されないが、代表的なものとしては、球状、ペレット状、塊状、リング状、サドル状、多面体状などが挙げられる。その他に、繊維状、鎖状、数珠状、メッシュ状の如き連続体の形状をした充填物も使用できる。これらの中でも汎用性の高いのは、球状、ペレット状、リング状またはサドル状、特に球状、ペレット状またはリング状の充填物である。なお粒状の充填物は、反応塔に容易に充填できる点からも推奨される。それらの例として、ラシヒリング、スロテッドリング、レッシヒリング、ディクソンパッキング、ヘリパック、マクマホンパッキング、ヘリックス、キャノンパッキング、ポールリング、コイルパック、ベルルサドル、インタロックスサドル、バールサドル、グッドローパッキング、デミスターなどの如き吸収塔や蒸留塔などの気液接触装置で一般的に用いられる金属またはセラミック製の充填物を使用することができる。
【0021】
また、充填構造物としては、金網や単孔または多孔の板、グリッド、仕切板などを単数もしくは複数設けることができる。これらの構造物と共に、前述した充填物を併用することも勿論可能である。
【0022】
本発明で使用する酸素含有ガスとは、酸素および/またはオゾンを含むガスであり、オゾンもしくは酸素等のガスを用いる場合には、適宜不活性ガスや空気などで希釈して用いることができる。また酸素富化ガスを使用することもでき、あるいは他のプラントで生じる酸素含有排ガスを利用することも勿論可能である。しかし、入手の容易性やコスト等を考慮して最も一般的なのは空気である。
【0023】
上記酸素含有ガスと触媒を用いて湿式分解を行う際の温度は、本発明において極めて重要であり、30℃以上100℃未満としなければならず、より好ましくは50℃以上95℃以下、更に好ましくは80℃以上95℃である。ちなみに、湿式分解時の温度が100℃を超えると、排水が液相を保持できなくなるため、装置を耐圧構造としなければならず、設備面からの負担が強いられるので好ましくない。一方、温度が30℃未満では湿式分解効率が低下し、ヒドラジンからアンモニア態窒素や窒素ガスへの分解が不十分になり、ヒドラジン除去率が低下する。
【0024】
また該湿式分解を行う際の被処理排水の流速は特に制限されないが、好ましいのは、排水の空間速度で湿式分解反応塔当たり0.1hr−1〜10hr−1が効果的である。ちなみに、空間速度が0.1hr−1未満では排水の単位時間当たりの処理量が不足気味になり、逆に10hr−1を超えると、ヒドラジンの一部が未分解状態で残存する恐れが生じてくるからである。より好ましい空間速度は0.3hr−1〜5hr−1である。
【0025】
酸素含有ガスの供給量は、排水中のヒドラジンを含めた被酸化性物質の理論酸素要求量に対して0.1倍以上2.0倍以下の量であることが望ましい。その理由は、酸素含有が巣の供給量が0.1倍未満である場合は、排水中の被酸化性物質を少量だけしか酸化処理できず、また2.0倍を超える量を供給すると、反応塔内での排水の温度が降下し反応効率が上がり難くなるからである。
【0026】
具体的には、排水に含まれるヒドラジンを含めて被酸化性物質の理論酸素要求量の0.1倍以上2.0倍以下、より好ましくは0.5倍以上1.5倍以下の範囲である。
【0027】
なお本発明において、排水中の被酸化性物質の理論酸素要求量を実排水について求めることは困難であるため、ヒドラジンを含めた排水中の被酸化性物質の理論的酸素要求量[ThOD(Cr)]もしくは全酸素要求量(TOD)として求めることができる。排水中の被酸化性物質の理論酸素要求量は、排水中の被酸化性物質の化学的酸素要求量や全酸素要求量とほぼ等しいことが多いからである。
【0028】
湿式分解処理時の排水のpHは特に制限されないが、特にヒドラジンからアンモニア態窒素や窒素ガスへの変換を効率よく進めるには、pH6〜13.5の範囲、より好ましくは7〜11の範囲に調整することが望ましい。
【0029】
尚本発明が適用される排水には、前述の如くヒドラジン以外の被酸化性物質やSS成分などが含まれていてもよく、更には防錆剤の溶解用媒体や冷媒等として簡便に使用されることの多い海水に由来して塩素イオン等が含まれている場合でも、本発明の方法は支障なく実施できる。
【0030】
上記の様にして湿式分解を行った後は、該酸化によって生成し被処理排水中に溶解しているアンモニア態窒素を気相側へ放散させるための処理を行う。この処理自体は、アンモニアストリッピング法として公知の方法であり、例えばアンモニアを含む被処理液に空気を吹き込んでアンモニアを放散させる空気ストリッピング法や、水蒸気を吹き込んでアンモニアを放散させる蒸気ストリッピング法、或いはこれらを組み合わせた複合ストリッピング法などを採用できる。
【0031】
アンモニアストリッピングを行う際の具体的な条件も特に制限的でないが、排水中のアンモニア態窒素を効率よく気相側へ放散されるための好ましい条件としては、非処理水のpHを6〜13.5、より好ましくは8〜13.5程度で、温度は80℃以上、より好ましくは90℃以上である。
【0032】
この処理で気相側へ放散されたアンモニア態窒素は、当該気相を排ガス処理に付し、触媒の存在下に酸化および/または分解して無害化する。ここで使用される排ガス処理装置としては、種々の排ガス処理装置を用いることができるが、好ましくはアンモニア分解触媒が充填された排ガス処理装置が使用される。該触媒の種類は特に限定されるものではないが、好ましいのは、触媒A成分として、チタニウム、ジルコニウム、ケイ素、アルミニウム、セリウム、鉄よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む酸化物と、触媒B成分として白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、バナジウム、タングステン、モリブテン、クロム、マンガン、銅よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属あるいは酸化物とを含有する混合触媒である。
【0033】
好ましい処理温度は150〜700℃の範囲であり、より好ましくは200〜500℃である。また被処理ガスの空間速度(SV)は、触媒の種類や温度、ガス中のアンモニア濃度などによっても変わってくるので一律に決めることはできないが、好ましいのは1000hr−1以上100000hr−1以下、より好ましくは5000hr−1以上50000hr−1以下である。
【0034】
他方、前記アンモニアストリッピング処理でアンモニア態窒素を放散した後の残液には、アンモニア態窒素は殆ど残存しておらず、且つヒドラジンの殆どはその前の湿式分解工程で分解されているので、ヒドラジンも実質的に含まれていない。更に前記湿式分解工程では、ヒドラジン以外の被酸化性物質もアンモニア態窒素や窒素ガスに分解されるので、有機態窒素含量そのものが大幅に低減されており、結果的にCOD基準にも適合し得る清浄度の排水として放出可能となる。従って、アンモニアストリッピング処理後の処理水はそのまま放流することも可能であるが、場合によっては更に適当な後処理を施し、酸化処理では除去しきれなかった有害不純物を除去することも勿論有効である。
【0035】
本発明の処理対象となるヒドラジン含有排水は、前述した如く主として発電設備のボイラーやその関連配管の防錆処理液として排出される排水であり、沿岸地域に設置された発電設備では冷媒や洗浄水などとして海水が使用されることも多い。そして本発明は、ヒドラジンと共に塩素イオンが含まれている排水に適用した場合でも、支障なく有効に活用できる。またこれらの排水には、ヒドラジン以外にも相当量の被酸化性物質が含まれていることがあるが、本発明によればこれらの被酸化性物質も同時に湿式分解されるので、これら被酸化性物質のうち有機窒素化合物も分解されてアンモニア態窒素に変換された後、アンモニアストリッピング及び排ガス処理によって除去される。
【0036】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に包含される。
【0037】
実施例1
図1に示す装置を使用し、下記の条件でヒドラジン含有排水の処理を行った。
【0038】
処理に用いた湿式分解反応塔1は、直径26mm、長さ3000mmの円筒状であり、該反応塔1の内部には、触媒としてペレット状(直径4mm、長さ3〜6mm)の活性炭を0.8リットル充填した。処理に供した排水は、発電用ボイラーから排出された排水であり、ヒドラジン含量は900mg/リットル、アンモニア態窒素は1,500mg/リットル、塩素イオン濃度は15,000mg/リットル、pHは2.5であった。この排水には、予め苛性ソーダ水溶液をNa/Cl(モル比)が1.0となる様に添加しておいた。
【0039】
湿式分解処理に当っては、タンクから排水供給ライン6を経て送られてくる排水を、排水供給ポンプ5から1.6リットル/hの流量、すなわち触媒充填量当りの空間速度(LHSV)2hr−1で昇圧フィ−ドした後、熱交換器4を経てから加熱器3で90℃に加熱し、反応塔1の底部から供給した。また該排水には、空気ブロワー10から、O2/ThOD(Cr)(供給ガス中の酸素量/排水の理論的酸素要求量)=1.0の割合となるように空気を供給して該排水に混入した。反応塔1では、電気ヒーター2により95℃に保温して分解処理を行った。
【0040】
湿式分解処理を終えた処理水は、処理水ライン9を経て放散塔10へ送り、水蒸気を吹き込むことにより、アンモニア態窒素を気相側へ放散させた。放散塔10から排出される排ガスは、空気ブロワー14から供給される空気と混合した後、熱交換器11および加熱器12で加熱してから排ガス処理装置13へ送り、装置入口温度350℃、SV:5,000hr−1で処理した。なお排ガス処理装置13内には、チタン、ケイ素、バナジウム、タングステンの酸化物を主成分とするハニカム状成形体にパラジウムを担持した触媒を充填しておいた。
【0041】
排ガス処理装置13の放出ライン16から放出される排ガスは、熱交換器11で前記排ガスと空気の混合流を加熱した後スタックから放出されるが、放出される該ガスのアンモニア濃度は10ppm以下、窒素酸化物濃度は50ppm以下であった。他方、前記放散塔10の塔底から処理液ポンプ15、処理液排出ライン17および熱交換器4を経て抜き出される処理水(排出液)のヒドラジン濃度は20mg/リットル以下であり、COD排出基準を十分に満足する低濃度のものであった。
【0042】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されており、発電設備などから排出されるヒドラジン含有排水を比較的温和な湿式分解処理に付すことによって、NOxなどの有害な副生物を生成させることなく、ヒドラジンを効率よく酸化および/または分解すると共に、生成したアンモニア態窒素はストリッピング処理およびアンモニア含有ガス処理によって効率よく無害化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る処理装置の一実施態様を示す説明図である。
【符号の説明】
1 反応塔
2 ヒーター
3 加熱器
4 熱交換器
5 排水供給ポンプ
6 排水供給ライン
7 アルカリ供給ライン
8 空気ブロワー
9 処理液ライン
10 放散塔
11 熱交換器
12 加熱器
13 反応塔
14 空気ブロワー
15 処理液ポンプ
16 ガス排出ライン
17 処理液排出ライン
Claims (3)
- ヒドラジンを含む排水を、触媒および酸素含有ガスの存在下で加温し、該排水中のヒドラジンを酸化および/または分解して無害化するに当り、排水を30℃以上100℃未満の温度域で湿式分解することにより、ヒドラジンをアンモニア態窒素および/または窒素ガスに変換した後、該アンモニア態窒素を気相側へ放散させ、得られるガスを排ガス処理装置で浄化することを特徴とするヒドラジン含有排水の処理法。
- 上記酸化および/または分解工程で、少なくとも活性炭を含む触媒を使用する請求項1に記載の処理法。
- 排水が、ヒドラジンと共に塩化物イオンを含むものである請求項1または2に記載の処理法。
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