JP4390357B2 - アンモニア含有水の処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アンモニア含有水の処理方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、化学工場排水、発電所の復水処理用のイオン交換装置の再生に際して排出される排水などに含まれるアンモニアを、圧力1MPa・G未満の温和な条件で効率的に酸化分解処理して、無害化することができるアンモニア含有水の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
肥料工場排水、染料工場排水などの化学工場排水や、半導体工場排水、発電所排水などには、かなりの量のアンモニアが含まれる場合がある。このような排水中に含まれるアンモニアは、閉鎖性水域においては富栄養化の源となるので、なんらかの手段を講じて除去しなければならない。このために、さまざまなアンモニア含有水の処理方法が試みられている。
排水中のアンモニアの除去方法として、従来より、高温高圧下における触媒空気酸化方法、ゼオライトを用いた吸着処理方法、亜硝酸アンモニウムとして熱分解処理する方法、生物学的硝化脱窒法などが知られている。高温高圧下における空気酸化方法は、5MPa以上の高圧下でアンモニア含有排水に空気を吹き込み、アンモニアを分解して窒素ガスとして除去する方法である。この方法は、高圧を必要とするために、設備が高価なものとなる上に、爆発の危険を伴い、反応容器が腐食しやすくなるという欠点がある。
これに対し、特開平9−117782号公報には、副生物の発生がなく、小型の反応装置により処理することができる経済的に有利なアンモニア含有排水の処理方法として、アンモニア含有排水に0.29〜0.98MPa・Gの加圧条件で純度90%以上の酸素ガスを吹き込み、140〜180℃で貴金属担持触媒と接触させ、さらに処理水に過酸化水素を添加し、140〜180℃で貴金属担持触媒と接触させる方法が提案されている。しかしながら、この方法では酸化分解反応を2段に行う必要がある。
また、操作圧力1MPa・G未満の条件下で、酸化含有ガスを吹き込んで、アンモニアを酸化分解する場合、アンモニアの分解速度が遅く、多量の触媒が必要になるため、装置が大きくなるという問題が生じ、さらに、過酸化水素を酸化剤として用いると、薬品コストが高くつき、経済的に不利となるのを免れないという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、化学工場排水、発電所の復水処理用のイオン交換装置の再生に際して排出される排水などに含まれるアンモニアを、圧力1MPa・G未満の温和な条件で効率的に酸化分解処理して、無害化することができるアンモニア含有水の処理方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、アンモニア含有水(被処理水)を、酸素含有ガスと共に、1MPa・G未満の圧力下で触媒と接触させて、被処理水中のアンモニアを酸化分解するに際し、気液混合流を上向流として触媒と接触させると共に、被処理水の線速度をある値以上とし、かつ酸素含有ガス流通量と被処理水流通量との体積比をある値以上とすることにより、気、液、固の三相系の反応効率が高まるものと考えられ、これらによりアンモニア含有水を効率よく処理し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)アンモニア含有水を、酸素含有ガスと共に、1MPa・G未満の圧力下で、粒径3〜6mmかつ球状の貴金属担持触媒と接触させて、アンモニア含有水中のアンモニアを酸化分解するに当たり、気液並流の上向流型反応装置を用い、該アンモニア含有水の線速度が空塔基準で20〜40m/hになるように通液するとともに、化学量論的酸素必要量の1〜2倍に相当する酸素含有ガスを、その標準状態に換算した流通量(G)と、該アンモニア含有水の流通量(L)との体積比G/Lが2〜10になるように吹き込むことを特徴とするアンモニア含有水の処理方法、
を提供するものである。
また、本発明の好ましい態様は、
(2)アンモニア含有水のpHが10以上となるようにアルカリを添加して通液処理する第1項記載のアンモニア含有水の処理方法、
である。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明のアンモニア含有水の処理方法は、アンモニア含有水(被処理水)を、酸素含有ガスと共に、1MPa・G未満の圧力下で触媒と接触させて、アンモニア含有水中のアンモニアを酸化分解する方法であって、気液並流の上向流型反応装置を用いて通液処理するものである。本発明において、アンモニア含有水とは、水中に解離したアンモニウムイオン若しくは未解離なアンモニア又はその両方を含む水を指す。
本発明方法においては、アンモニア含有水と酸素含有ガスとの気液混合流を、上向流として触媒と接触させて、該アンモニア含有水中のアンモニアを酸化分解させる。この際使用使用する酸素含有ガスに特に制限はなく、例えば、空気を用いることができ、あるいは、液体空気の分留などにより得られる高純度の酸素ガスを用いることもできる。これらの中で、後で説明するG/L値を大きくとるために、比較的低濃度の酸素ガスを好適に用いることができる。
本発明方法においては、アンモニア含有水と酸素含有ガスの気液混合流を、圧力1MPa・G未満で液相を保持する温度、すなわち、約180℃以下で触媒と接触させる。接触分解の温度が180℃を超えると、液相を保持するために1MPa・G以上の圧力とする必要があり、設備費が大きくなる。本発明方法によれば、後述のように酸素含有ガスの利用効率が向上し、アンモニアが効率的に分解されるので、圧力1MPa・G未満の反応条件であってもアンモニアの除去率を向上させることができる。
【0006】
本発明方法においては、上記触媒として、通常貴金属担持触媒が好ましく用いられる。この貴金属担持触媒の金属としては特に制限はなく、例えば、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金などを挙げることができる。これらの中で、パラジウムと白金を特に好適に用いることができる。また、貴金属担持触媒の担体としては特に制限はなく、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、ゼオライト、シリコンカーバイド、活性炭などを挙げることができる。これらの中で、チタニア、ジルコニア及びシリコンカーバイドを好適に用いることができる。担体の形状にも特に制限はないが、球状であることが好ましく、その粒径は3mm以上が好ましい。該粒径が3mm未満では、次に述べるように被処理水の線速度が大きいので、触媒が流動しやすくなり、その結果、摩耗が生じやすくなる。また、粒径が大きすぎると表面積が小さくなりすぎて、触媒性能が十分に発揮されにくくなる。摩耗や触媒性能などを考慮すると、この触媒のより好ましい粒径は3〜6mmの範囲である。
本発明方法においては、被処理水の線速度は、空塔基準で20m/h以上であることが必要である。一般に、触媒充填層に気液並流の上向流で通液処理する場合、ガスは被処理水より速い速度で反応塔内を上昇して反応塔外へ抜けていくために、ガスと被処理水の接触が不十分となり、従来の条件設定ではアンモニア除去効果に限界があるが、本発明によれば、線速度を20m/h以上とすることにより、気、液、固の三相系における接触効率が上がり、酸化分解速度の向上効果が発揮される。また、該線速度があまり高すぎると触媒が流動し、摩耗する原因となる。気、液、固の三相系の混合効率及び触媒摩耗などを考慮すると、この線速度は20〜100m/hの範囲が好ましく、特に20〜40m/hの範囲が好ましい。
【0007】
本発明方法においては、酸素含有ガスを、その標準状態に換算した流通量(G)と、該アンモニア含有水の流通量(L)との体積比G/Lが2以上になるように、吹き込むことが必要である。酸素純分としての量は、被処理水中のアンモニアを酸化分解するための化学量論的酸素必要量以上であればよい。上記G/L値が2未満では、酸化分解速度の向上効果が十分に発揮されにくい。また、このG/L値が大きすぎると反応塔内の圧力損失が大きくなり、好ましくない。該G/L値は2〜20の範囲がより好ましく、特に2〜10の範囲が好ましい。なお、G/L値を大きくするには、酸素含有ガスとして、酸素濃度の比較的低いガスを用い、多量に吹き込むようにすればよい。
本発明においては、水中に含まれるアンモニアは、次式にしたがって酸化分解され、無害な窒素ガスと水になる。
4NH3+3O2→2N2+6H2
本発明方法によれば、前述のように反応効率が上昇するために、酸素を大過剰に吹き込む必要がなく、上式より求められる化学量論的酸素必要量の1〜2倍に相当する酸素含有ガスを吹き込むのが有利である。
本発明方法においては、アンモニア含有水に、アルカリを添加し、pH10以上、好ましくはpH11以上に調整して通液処理するのが好ましい。アンモニア含有水にアルカリを添加することにより、水中の遊離のアンモニアが迅速に気相に移動し、酸素含有ガス中の酸素と反応して、アンモニアの除去効率を高めることができる。
本発明方法においては、このように、アンモニア含有水のpHを高めて通液処理することにより、中性から弱アルカリ性の処理水を得ることができ、処理水によって配管などの装置の腐食を招くおそれがない。
図1は、本発明方法を実施するための装置の一態様の工程系統図である。原水槽1のアンモニア含有水は、必要に応じてpHを調整したのち、ポンプ2により昇圧され、コンプレッサー3により昇圧された酸素含有ガスと配管中で混合される。アンモニア含有水と酸素含有ガスの気液混合流体は熱交換器4及び加熱器5を経て所定の温度に昇温され、触媒充填塔6に上向流として通液される。触媒充填塔6より流出する処理水は熱交換器4及び冷却器7を経て冷却され、気液分離器8により排ガスと処理水に分離される。
【0008】
【作用】
本発明方法によれば、気液並流の上向流型反応装置を用いて、アンモニア含有水中のアンモニアを酸素含有ガスにより酸化分解処理する方法において、前記G/L値を2以上とし、かつ被処理水の線速度を空塔基準で20m/hとすることで、気、液、固の三相系の反応効率が向上するものと考えられ、これらにより酸素含有ガスの反応効率が高まり、化学量論的必要量又は小過剰量の酸素含有ガスを使用して、1MPa・G未満及び180℃未満の比較的低温低圧で被処理水中のアンモニアを効率よく酸化分解処理することができる。さらに、反応装置へ通液するアンモニア含有水にアルカリを添加することにより、遊離のアンモニアが気相に移行しやすくなり、アンモニアの除去効率がさらに向上する。
【0009】
【実施例】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1
粒径3mmのチタニア担体に白金1重量%を担持させた触媒をカラムに充填した。このカラムに、アンモニア態窒素(NH4−N)2,000mg/リットルを含むpH11.5の発電所排水を、化学量論的酸素必要量の1.2倍に相当する酸素濃度99容量%の酸素ガスを吹き込みながら、下記の条件にて気液並流の上向流で通水して、アンモニアの分解処理を行った。
反応条件
通液速度 :SV6h-1
G/L値 :2.9
通液線速度:10〜40m/h(空塔基準)
反応温度 :170℃
操作圧力 :0.9MPa・G
図2に、通液線速度とアンモニア除去率との関係をグラフで示す。
図2から分かるように、通液線速度20m/h以上において、アンモニア除去率が顕著に高い。
実施例2
実施例1で用いたものと同じ触媒をカラムに充填した。このカラムに、アンモニア態窒素(NH4−N)1,000mg/リットルを含むpH9.8の発電所排水を、化学量論的酸素必要量の1.2倍に相当する濃度100、90、80、70及び20容量%の酸素ガス又は酸素と窒素との混合ガスをそれぞれ吹き込みながら、下記の条件にて気液並流の上向流で通水して、アンモニアの分解処理を行った。
通液速度 :SV6h-1
G/L値 :1.5〜7
通液線速度:30m/h(空塔基準)
反応温度 :170℃
操作圧力 :0.9MPa・G
図3に、G/L値とアンモニア除去率との関係をグラフで示す。
図3から分かるように、G/L値が2以上において、アンモニア除去率が顕著に高い。
なお、G/L値は、酸素含有ガスの標準状態に換算した流通量(G)と、被処理水の流通量(L)との体積比である。
【0010】
【発明の効果】
本発明によれば、化学工場排水、発電所の復水処理用イオン交換装置の再生に際して排出される排水などに含まれるアンモニアを、気液並流の上向流型反応装置を用い、操作圧力1MPa・G未満の温和な条件で、酸素含有ガスにより効率よく接触分解処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明方法を実施するための装置の一態様の工程系統図である。
【図2】図2は、実施例1における通液線速度とアンモニア除去率との関係を示すグラフである。
【図3】図3は、実施例2におけるG/L値とアンモニア除去率との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 原水槽
2 ポンプ
3 コンプレッサー
4 熱交換器
5 加熱器
6 触媒充填塔
7 冷却器
8 気液分離器

Claims (1)

  1. アンモニア含有水を、酸素含有ガスと共に、1MPa・G未満の圧力下で、粒径3〜6mmかつ球状の貴金属担持触媒と接触させて、アンモニア含有水中のアンモニアを酸化分解するに当たり、気液並流の上向流型反応装置を用い、該アンモニア含有水の線速度が空塔基準で20〜40m/hになるように通液するとともに、化学量論的酸素必要量の1〜2倍に相当する酸素含有ガスを、その標準状態に換算した流通量(G)と、該アンモニア含有水の流通量(L)との体積比G/Lが2〜10になるように吹き込むことを特徴とするアンモニア含有水の処理方法。
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