JP2004103140A - 光ディスクの製造装置及び製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ディスク基板の記録面に設けられたスタック支持部からの干渉を受けることなく、加圧部材によりカバーシート全体を適正な加圧力で加圧してディスク基板に貼り合わす。
【解決手段】ディスク基板12の記録面14には、記録層の内周側に環状のスタックリブ34が一体的に成形されている。このスタックリブ34は、開口部30を通してカバーシート24の表面(光入射面)から突出する。加圧ローラ54のローラ面56には、加圧逃げ部64が凹状に形成されている。この加圧逃げ部64は、ディスク基板12におけるスタックリブ34に対応して設けられ、平面上に展開すると、その内径がスタックリブ34の外径よりも僅かに長くされ、かつローラ面56からの深さがスタックリブ34の突出長(0.2mm〜0.4mm)よりも深くなっている。
【選択図】 図4
【解決手段】ディスク基板12の記録面14には、記録層の内周側に環状のスタックリブ34が一体的に成形されている。このスタックリブ34は、開口部30を通してカバーシート24の表面(光入射面)から突出する。加圧ローラ54のローラ面56には、加圧逃げ部64が凹状に形成されている。この加圧逃げ部64は、ディスク基板12におけるスタックリブ34に対応して設けられ、平面上に展開すると、その内径がスタックリブ34の外径よりも僅かに長くされ、かつローラ面56からの深さがスタックリブ34の突出長(0.2mm〜0.4mm)よりも深くなっている。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディスク基板の記録面上に薄膜状のカバーシートを貼り合わせて光ディスクを製造する光ディスクの製造装置及び、この光ディスクの製造装置を用いた光ディスクの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザ光を用いて情報を記録し、又は再生する光ディスクとしては、例えば、CD−R(Compact Disc−recordable)、CD(Compact Disc)、DVD(digitalversatile disc)、DVD−R(digital versatile disc−recordable)等が既に普及しているが、近年、光ディスクに対しては、映像情報等の情報を更に大量に格納したいという要望があり、高密度化の検討が進んでいる。このような光ディスクに対する記録密度は、おおむねディスク上の光ビームのスポットサイズで決まり、このスポットサイズは、レーザ波長をλ、対物レンズの開口数をNAとすると、λ/NAに比例する。このため、光ディスクに対する記録密度を高めるためには、レーザ光の短波長化と対物レンズの高NA化が必要となる。しかし、光ディスクの傾きにより発生するコマ収差はNAの3乗に比例して大きくなるため、高NA化によってディスクの傾きに対するマージンが極めて小さくなり、わずかな傾きでもビームスポットがぼやけ、高密度での記録及び再生が実現できなくなる。従って、高密度化に適した従来の光ディスクでは、レーザ光の透過層であるカバー層を十分薄いもの(例えば、0.1mm程度のもの)とし、高NAに伴うディスクの傾きによるコマ収差の増加を抑制する必要がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−31337号公報(第9−10頁、図4)
【0004】
上記のような高密度化に適した構造を有する光ディスクは、例えば、情報記録層が形成されたディスク基板の記録面上にポリカーボネイト等からなる樹脂フィルムを基材とする薄膜状のカバーシートを貼り合せ、このカバーシートによりディスク基板上に透明なカバー層を形成する。ここで、カバーシートは、樹脂フィルム及びこの樹脂フィルムの片側の面に形成された粘着膜から構成されており、この粘着膜を介してディスク基板の記録面に重ね合わされ、加圧ローラ等の加圧部材により加圧されて記録面に貼り合わされる。
【0005】
一方、従来の光ディスクであって、上記のような高密度化に適した構造を備えていないものには、ディスク基板の記録面とは反対側の面(レーベル面)に凸状のスタックリブが一体的に成形されたものがある。このスタックリブは、例えば、光ディスクの回転心を中心とする円軌跡に沿って環状に形成されており、レーベル面からの突出長が0.2mm〜0.3mm程度とされている。このスタックリブは、製造完了した光ディスクを一時的に保管等するため、複数枚の光ディスクを積み重ねた場合に、互いに隣接する光ディスクの面(光入射面及びレーベル面)間に一定幅の隙間を形成する。これにより、互いに隣接する光ディスクの面同士が加圧状態におかれ光ディスクの面同士が貼り付いてしまったり、また加圧状態で光ディスクの面同士が擦れ合って光ディスクの光入射面又はレーベル面に擦り傷等の損傷が生じることが防止される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本出願の発明者等は、高密度化に適した構造を有する光ディスク、すなわちカバー層の厚さが0.1mm程度しかない光ディスクにもスタックリブを設けることを検討した。その結果、近時、開発が進んでいる高密度化に適した光ディスク用ディスク駆動装置との適応性等を考慮した場合、光ディスク(ディスク基板)のレーベル面にスタックリブを設けるよりも、ディスク基板の記録面にスタックリブを設けることに幾つかの優位点があると判断した。しかし、ディスク基板の記録面における情報記録層の内周側に環状のスタックリブを設け、このスタックリブの外周側にカバーシートを貼り合わせようとした場合、加圧ローラ等の加圧部材によりディスク基板上のカバーシートの中央部付近を加圧する際に、加圧部材がスタックリブに圧接してカバーシートの中央部付近を適正な加圧力で加圧できなくなり、この結果、カバーシート中央部付近のディスク基板への貼り合わせが不完全になるという問題が生じる。
【0007】
本発明の目的は、上記事実を考慮して、ディスク基板の記録面に設けられたスタック支持部からの干渉を受けることなく、加圧部材によりカバーシート全体を適正な加圧力で加圧してディスク基板に貼り合わすことができる光ディスクの製造装置及び光ディスクの製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る光ディスクの製造装置は、少なくとも片側の面が記録面とされ、該記録面に情報記録層が設けられると共に、記録面における情報記録層の内周側に凸状のスタック支持部が設けられたディスク基板と、樹脂フィルムの片側の面に粘着膜が成膜されてなり、該粘着膜を介して前記情報記録層を覆うように前記記録面に貼り合わされるカバーシートと、を有する光ディスクの製造装置であって、前記記録面における前記スタック支持部の外周側に重ね合された前記カバーシートを加圧して前記記録面に貼り合わす加圧部材と、前記加圧部材における前記スタック支持部に対応する部位に凹状に設けられ、前記加圧部材による前記カバーシートの加圧時に前記加圧部材と前記スタック支持部との間に隙間を形成する加圧逃げ部と、を有する光ディスクの製造装置。
【0009】
本発明に係る光ディスクの製造装置では、加圧部材に設けられた加圧逃げ部が、この加圧部材によるカバーシートの加圧時に加圧部材と凸状のスタック支持部との間に隙間を形成することにより、加圧部材からの加圧力がスタック支持部に伝達されることを防止できるので、スタック支持部の影響により加圧部材からカバーシートにおけるスタック支持部付近に伝達される加圧力が低減することを防止できる。この結果、加圧部材によりカバーシート全体を適正な加圧力で記録面上へ加圧してディスク基板に貼り合わすことができる。
【0010】
ここで、加圧部材としては、例えば、カバーシートにローラ面を圧接させつつ、このカバーシート上を転動可能とされた加圧ローラを用いることができ、この加圧ローラのローラ面におけるスタック支持部にスタック支持部に対応する部位に凹状の加圧逃げ部を設けることにより、スタック支持部からの干渉を受けることなく、加圧ローラのローラ面によりカバーシート全体を適正な加圧力で加圧できるようになる。また加圧ローラ以外にも、例えば、加圧部材としては、カバーシート上を転動可能とされた加圧ベルト、カバーシートに対して圧接及び離間可能に支持されカバーシート全体又は一部に圧接するもの等も使用可能である。
【0011】
またスタック支持部としては、記録面に環状に形成されたスタックリブ以外にも、周方向に沿って等間隔に配置された複数の突起状のものや、記録面の中央部付近を外周側よりも肉厚として形成された円柱状のもの等を設けることができる。
【0012】
また、本発明に係る光ディスクの製造方法は、少なくとも片側の面が記録面とされ、該記録面に情報記録層が形成されると共に、記録面における情報記録層の内周側にスタック支持部が設けられたディスク基板と、樹脂フィルムの片側の面に粘着膜が成膜されて構成され、該粘着膜を介して前記情報記録層を覆うように前記記録面に貼り合わされるカバーシートと、を有する光ディスクの製造方法であって、前記粘着膜を介して前記カバーシートを前記記録面における前記スタック支持部の外周側に重ね合わせた後、請求項1、2又は3記載の光ディスクの製造装置を用いて前記カバーシートを加圧して前記記録面に貼り合わす貼合工程を有することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る光ディスクの製造方法によれば、粘着膜を介してカバーシートを記録面におけるスタック支持部の外周側に重ね合わせた後、請求項1、2又は3記載の光ディスクの製造装置を用いてカバーシートを加圧して記録面に貼り合わすことにより、上述したように、加圧部材から加圧力がスタック支持部に伝達されることを防止できるので、スタック支持部の影響により加圧部材からカバーシートにおけるスタック支持部付近に伝達される加圧力が低減することを防止できる。この結果、ディスク基板の記録面にスタック支持部を設けた場合でも、加圧部材によりカバーシート全体を適正な加圧力で記録面上へ加圧してディスク基板に貼り合わすことができるので、カバーシート全体がディスク基板に確実に貼り合わされた光ディスクを簡単に製造できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態に係る光ディスクの製造装置及び製造方法について図面を参照して説明する。
【0015】
(実施形態の構成)
先ず、本発明の実施形態に係る光ディスクの構成について説明する。図1には、本発明の実施形態に係る光ディスクの製造方法により製造された光ディスクが示されている。この光ディスク10は、従来のDVD−R等の光ディスクに対して高密度の情報記録が可能とされたものであり、例えば、従来の光ディスクと比較して、記録再生用のレーザ光として短波長の青紫レーザ光を用いると共に、ディスク駆動装置の対物レンズの開口数NAを0.85程度まで増大することで、12cm径の光ディスク10に対する片面記録容量が25Gバイト以上に高められている。
【0016】
光ディスク10には、円板状に形成されたディスク基板12が設けられており、このディスク基板12の片側の面は情報の記録面14とされている。このディスク基板12の記録面14側には、光反射層18及び光吸収層20が順に積層されており、これらの光反射層18及び光吸収層20により情報記録層(以下、単に「記録層」という。)16が構成されている。また光ディスク10には、記録層16を覆うようにディスク基板12上に透明なカバー層22が設けられている。このカバー層22は、透明樹脂を素材とするカバーシート24により構成され、その厚さが0.1mm(100μm)程度とされている。
【0017】
ディスク基板12は、PC(ポリカーボネイト)等の樹脂を素材としてモールド成形されている。カバー層22を構成するカバーシート24は、PC(ポリカーボネイト)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の透明な樹脂フィルム25及び、この樹脂フィルム25の片側の面に形成された粘着膜26からなる。粘着膜26は、公知のアクリル系、ゴム系、シリコン系等の粘着剤により形成されるが、透明性及び耐久性の観点からは、アクリル系粘着剤が望ましい。またカバーシート24における樹脂フィルム25及び粘着膜26のそれぞれの厚さは、カバー層22の設定値に応じて決められるが、例えば、カバー層22の厚さの設定値が100μmの場合には、樹脂フィルム25の厚さが80μmに設定され、粘着膜26の厚さが20μmに設定される。
【0018】
ディスク基板12の中心部には、光ディスク10の回転中心となる軸心SDに沿って円形のセンターホール28が穿設されている。またディスク基板12の記録面14には、記録層16の内周側に軸心SDを中心とする円軌跡に沿って環状のスタックリブ34が一体的に成形されている。このスタックリブ34は、その径方向に沿った断面形状が略二等辺三角形とされ、記録面14からの突出長が周方向に沿った任意の位置で一定とされている。具体的には、スタックリブ34の記録面14からの突出長は0.2mm〜0.4mm程度に設定されている。一方、カバー層22の中心部には、軸心SDを中心としてスタックリブ34の径方向に沿った外径よりも大径とされた円形の開口部30が形成されている。これにより、スタックリブ34は開口部30を通して記録面14の法線方向へ突出し、カバーシート24の厚さが0.1mmの場合には、カバーシート24の表面(光入射面)からの突出長が0.1mm〜0.3mm程度となる。
【0019】
上記のような光ディスクの製造ラインでは、モールド成形等により成形されたディスク基板12に記録層16を形成した後、カバーシート24をディスク基板12に貼り合せる貼合工程が行われる。この貼合工程では、先ず、図2(A)に示されるように、カバーシート24の他端部を吸着等により支持テーブル42の上方へ支持しつつ、カバーシート24の一端部をディスク基板12の一端部上に載置する。このとき、カバーシート24とディスク基板12とがなす角度θは、3°〜10°程度になるようにカバーシート24の傾きが調整される。なお、図2に示されるディスク基板12及びカバーシート24は、理解を容易にするために、厚さ方向に沿った寸法が実際のものよりも拡大されて示されている。
【0020】
次いで、図2(B)及び(C)に示されるように、待機位置にあった加圧ローラ54をディスク基板12上にカバーシート24が載置されたディスク積層体32の一端部上へ移動させ、この加圧ローラ54をディスク積層体32の上面部33に圧接させつつ、ディスク積層体32上の一端部から他端部へ向って転動させる。このとき、加圧ローラ54の移動に従ってカバーシート24の他端部をディスク基板12側へ徐々に下降させて行く。加圧ローラ54のカバーシート24の一端部から他端部まで転動することにより、カバーシート24の粘着膜26とディスク基板12の記録面14との間の空気を抜きつつ、カバーシート24全体をディスク基板12に密着状態となるように貼り合わすことができる。
【0021】
上記のようにディスク基板12にカバーシート24を貼り合わすことにより、ディスク基板12の記録面14上にカバー層22が構成され、製品素材としての光ディスク10(図1参照)の製造が完了する。この光ディスク10は、例えば、専用のディスク保管台(図示省略)上に積み重ねられて状態(積載状態)で所定枚数が貯まるまで一時保管され、この所定枚数の光ディスク10の束は、1ロットとして塗装工程や包装工程等へ搬出される。
【0022】
次に、カバーシート24をディスク基板12に貼り合わすために用いられるローラ加圧装置40について説明する。図3に示されるように、ローラ加圧装置40には、支持テーブル42が設けられると共に、この支持テーブル42の上側に円筒状の加圧ローラ54が回転可能に支持されている。支持テーブル42の上面は、ディスク基板12上にカバーシート24が重ね合わされたディスク積層体32が載置される載置面44とされており、載置面44の中央部には円柱状のセンターピン46が突出している。このセンターピン46は、ディスク基板12の厚さよりも短くなっているか、伸縮可能とされて突出長が調整可能になっている。ディスク基板12は、そのセンターホール28内へセンターピン46が挿入されるように載置面44上へ載置され、センターピン46により載置面44の中央部へ位置決めされる。
【0023】
図3に示されるように、支持テーブル42内には、載置面44の下部側に周方向へ延在する負圧室48が設けられており、この負圧室48には配管50を通して真空ポンプ等の真空発生装置(図示省略)が接続されている。また支持テーブル42には、載置面44と負圧室48の上面部との間を貫通する複数の吸引穴52が周方向及び径方向に沿って一定ピッチで穿設されている。ローラ加圧装置40では、載置面44上へディスク基板12が載置されると、真空発生装置を作動させて負圧室48内を減圧し、吸引穴52を通して載置面44上のディスク基板12へ負圧を作用させる。これにより、ディスク基板12の下面(レーベル面)全体が載置面44上へ吸着される。
【0024】
図3に示されるように、加圧ローラ54は、そのローラ軸方向(矢印W方向)に沿ってディスク基板12よりも幅広とされ、その両端面にはそれぞれ軸心SRに沿って突出するローラ軸58が設けられている。また加圧ローラ54のローラ面56に沿った表層部はシリコンゴム、ウレタンゴム、バイトン等の弾性材料により形成されている。ここで、加圧ローラ54は、下方へ向って開いた略コ字状に形成された昇降フレーム60により支持されており、この昇降フレーム60の両端部には、それぞれ加圧ローラ54における一対のローラ軸58を軸支する軸受62が設けられている。この昇降フレーム60は、ローラ軸SRが載置面44と平行になるように加圧ローラ54を支持している。
【0025】
ここで、加圧ローラ54のローラ面56の周長は、光ディスク10の直径以上の長さにされている。従って、光ディスク10の直径が120mmである場合には、加圧ローラ54のローラ面56の外径は38.2mm以上にする必要がある。また図4に示されるように、加圧ローラ54のローラ面56には、軸方向に沿った中央部に加圧逃げ部64が凹状に形成されている。この加圧逃げ部64は、ディスク基板12におけるスタックリブ34に対応して設けられており、平面上に展開すると、その内径がスタックリブ34の外径よりも僅かに長くされ、かつローラ面56からの深さがスタックリブ34の突出長(0.2mm〜0.4mm)よりも0.2mm以上深くなっている。
【0026】
図3に示されるように、昇降フレーム60には、その上面部に、直流サーボシリンダ、油圧サーボシリンダ等からなる昇降シリンダ66の駆動ロッド68が連結されている。また昇降フレーム60は、支持テーブル42に対して固定された装置のメインフレーム(図示省略)によりディスク厚方向に沿って昇降可能に支持されている。昇降シリンダ66の本体部67はメインフレーム側に連結されている。これにより、昇降シリンダ66が駆動ロッド68をディスク厚方向に沿って伸縮させると、昇降フレーム60が駆動ロッド68の伸縮に対応して昇降する。
【0027】
昇降フレーム60には、加圧ローラ54の位相を検出するための位相センサ78が配置されている。この位相センサ78は、加圧ローラ54の端面部に取り付けられたマーカ79を光学的に検出することにより、加圧ローラ54の位相が加圧開始時の基準となる位相点に一致したタイミングで検出信号を出力する。
【0028】
ローラ加圧装置40には、昇降シリンダ66に接続されたシリンダドライバ70が設けられると共に、位相センサ78に接続された増幅器72が設けられており、これらのシリンダドライバ70及び増幅器72は、それぞれ装置全体を制御するためのコントローラ74に接続されている。シリンダドライバ70は、コントローラ74からのシリンダ制御信号に従って昇降シリンダ66を制御する。これにより、昇降シリンダ66の駆動ロッド68がシリンダ制御信号に対応する位置へ位置調整されると共に、昇降シリンダ66が発生する駆動力(押圧力)がシリンダ制御信号に対応する大きさに制御される。また位相センサ78から出力された検出信号は増幅器72により所定の信号形式(例えば、4mA〜20mA)に変換されてコントローラ74へ出力される。
【0029】
ローラ加圧装置40には、昇降フレーム60及び加圧ローラ54をディスク積層体32の径方向と平行なローラ移動方向(図2の矢印M方向)に沿って直線的に移動させるローラ移動機構(図示省略)が設けられている。ローラ移動機構はサーボモータ77を駆動源としており、このサーボモータ77はモータドライバ76(図3参照)を介してコントローラ74に接続されている。モータドライバ76は、コントローラ74からのモータ制御信号に従ってサーボモータ77に駆動信号及び駆動パルスを出力する。これにより、サーボモータが駆動信号に対応する方向へ駆動パルスの入力数に比例する回転量だけ回転する。このサーボモータ77からの駆動力によりローラ駆動機構は、ローラ移動方向に沿って加圧ローラ54を位置調整すると共に、加圧ローラ54の移動速度を制御する。
【0030】
昇降フレーム60には軸受62の外側にモータユニット80が搭載されており、このモータユニット80は、駆動源としてのサーボモータ及び電磁クラッチ等のクラッチ機構を内蔵しており、このクラッチ機構を介してサーボモータの出力軸が加圧ローラ54のローラ軸58に連結されている。モータユニット80のサーボモータもモータドライバ82(図3参照)を介してコントローラ74に接続されている。このモータドライバ82は、コントローラ74からのモータ制御信号に従ってモータユニット80のサーボモータに駆動信号及び駆動パルスを出力する。これにより、モータユニット80のサーボモータが駆動信号に対応する方向へ駆動パルスの入力数に比例する回転量だけ回転し、加圧ローラ54の回転方向及び回転量が制御される。
【0031】
(実施形態の作用)
次に、上記のように構成されたローラ加圧装置40を用いてカバーシート24をディスク基板12に貼り合せて光ディスク10を製造する方法について説明する。
【0032】
コントローラ74は、加圧ローラ54によりディスク積層体32への加圧を開始する前には、図2(B)で実線により示されるように、ローラ駆動機構により加圧ローラ54をディスク積層体32の径方向外側の待機位置に保持すると共に、昇降シリンダ66によりディスク厚方向に沿って加圧ローラ54を載置面44との間隔がディスク積層体32の厚さよりも僅かに狭くなるように位置調整する。またコントローラ74は、位相センサ78から検出信号に基づいてモータユニット80により待機位置にある加圧ローラ54を回転させ、この加圧ローラ54の位相を加圧開始時の基準となる位相点(初期位相点)へ調整する。
【0033】
コントローラ74は、支持テーブル42の載置面44上にディスク基板12が載置され、負圧室48内への負圧の供給が完了すると、ローラ駆動機構を作動させて、昇降フレーム60及び加圧ローラ54を待機位置からローラ移動方向に沿ってディスク積層体32上へ移動させる。このとき、加圧ローラ54は、載置面44との間隔がディスク積層体32の厚さよりも狭くなっていることから、ディスク積層体32上へ乗り上げてローラ面56によりディスク積層体32のカバーシート24に圧接する。
【0034】
この後、コントローラ74は、昇降シリンダ66により加圧ローラ54をディスク積層体32の上面部33に所定の圧接力で圧接させつつ、ローラ駆動機構により加圧ローラ54をローラ移動方向(矢印M方向)に沿って移動させる。このとき、コントローラ74は、モータユニット80により加圧ローラ54をローラ移動方向への移動速度と等線速度で回転させる。またコントローラ74は、シリンダドライバ70を介して昇降シリンダ66の駆動量及び駆動力を制御することで、ディスク積層体32上を転動する加圧ローラ54の圧接力を調整する。具体的には、コントローラ74は、例えば、加圧ローラ54のローラ面56との圧接部分でカバーシート24に生じる応力が任意の位置で一定の目標値となるように昇降シリンダ66を制御する。
【0035】
ローラ加圧装置40では、待機位置にある加圧ローラ54の位相が初期位相点に調整されることより、図2(C)に示されるように、ディスク積層体32上を転動する加圧ローラ54がディスク積層体32の中心部に達したときに、ローラ面56における加圧逃げ部64の中心点CPがディスク積層体32の軸心SDと一致する。このとき、加圧逃げ部64の内径がスタックリブ34の外径よりも大きくされ、かつ加圧逃げ部64の深さがスタックリブ34の突出長よりも深くされている。これにより、ディスク基板12のスタックリブ34は、ディスク積層体32の中心部付近を転動する加圧ローラ54の加圧逃げ部64内に挿入し、加圧ローラ54から離間した状態に保たれる。従って、加圧ローラ54は、ディスク積層体32上を転動する際に、スタックリブ34と接することなくディスク積層体32の中心部を通過する。
【0036】
コントローラ74は、ローラ移動方向に沿って加圧ローラ54がディスク積層体32の中心部を通過した後、ディスク積層体32上を横断してディスク積層体32から離脱すると、昇降シリンダ66により加圧ローラ54をディスク積層体32の上方へ上昇させた後、昇降シリンダ66及びローラ移動機構により加圧ローラ54を待機位置(図2(B)参照)に復帰させる。このとき、加圧ローラ54がローラ移動方向に沿ってディスク積層体32上を横断することにより、カバーシート24全体が加圧ローラ54からの加圧力によりディスク基板12の記録面14に貼り合わされ、製品素材としての光ディスク10の製造が完了する。
【0037】
以上説明した本実施形態に係るローラ加圧装置40では、加圧ローラ54のローラ面56に凹状に設けられた加圧逃げ部64が、加圧ローラ54によるカバーシート24の加圧時に加圧ローラ54と凸状のスタックリブ34との間に隙間を形成することにより、加圧ローラ54からの加圧力の一部がスタックリブ34に伝達されることを防止できるので、スタックリブ34の影響により加圧ローラ54からカバーシート24のスタックリブ34付近に伝達される加圧力が低減することを防止できる。この結果、ディスク基板12の記録面14にスタックリブ34を設けた場合でも、加圧ローラ54によりカバーシート24全体を適正な加圧力でディスク基板12の記録面14上へ加圧してディスク基板12に貼り合わすことができるので、カバーシート24全体がディスク基板12の記録面14に確実に貼り合わされた光ディスク10を簡単に製造できる。
【0038】
なお、本実施形態に係るローラ加圧装置40では、ディスク積層体32におけるカバーシート24を加圧する加圧部材として加圧ローラ54を用いたが、このような加圧部材としては、例えば、カバーシート上を転動可能とされた加圧ベルトや、ディスク積層体32のカバーシート24に対して圧接及び離間可能に支持されカバーシート全体又は一部に圧接するスタンプ型のもの等を用いることができ、このような加圧部材にスタックリブに対応する加圧逃げ部を設けることによっても、加圧ローラ54の場合と同様に、カバーシート24全体を適正な加圧力でディスク基板12の記録面14上へ加圧してディスク基板12に貼り合わすことができる、という効果を得られる。
【0039】
また本実施形態に係る光ディスク10では、ディスク基板12の記録面14に環状のスタックリブ34をスタック支持部として一体的に成形したが、このようなスタック支持部としては、例えば、光ディスク10の周方向に沿って等間隔に配置された複数の突起状のものを記録面14に設けても、また記録面14の中央部付近を外周側よりも肉厚として円柱状又は円錐台状のスタック支持部を記録面14に設けるようにしても良い。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る光ディスクの製造装置及び製造方法によれば、ディスク基板の記録面に設けられたスタック支持部からの干渉を受けることなく、加圧部材によりカバーシート全体を適正な加圧力で加圧してディスク基板に貼り合わすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る光ディスクの構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る加圧ローラ及びディスク積層体の側面図であり、カバーシートをディスク基板に貼り合わせる際の加圧ローラの動作を示している。
【図3】本発明の実施形態に係るローラ加圧装置の構成を示す正面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る加圧ローラ及びディスク積層体の斜視図である。
【符号の説明】
10 光ディスク
12 ディスク基板
14 記録面
16 記録層(情報記録層)
24 カバーシート
25 樹脂フィルム
26 粘着膜
34 スタックリブ(スタック支持部)
40 ローラ加圧装置(光ディスクの製造装置)
54 加圧ローラ(加圧部材)
56 ローラ面
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディスク基板の記録面上に薄膜状のカバーシートを貼り合わせて光ディスクを製造する光ディスクの製造装置及び、この光ディスクの製造装置を用いた光ディスクの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザ光を用いて情報を記録し、又は再生する光ディスクとしては、例えば、CD−R(Compact Disc−recordable)、CD(Compact Disc)、DVD(digitalversatile disc)、DVD−R(digital versatile disc−recordable)等が既に普及しているが、近年、光ディスクに対しては、映像情報等の情報を更に大量に格納したいという要望があり、高密度化の検討が進んでいる。このような光ディスクに対する記録密度は、おおむねディスク上の光ビームのスポットサイズで決まり、このスポットサイズは、レーザ波長をλ、対物レンズの開口数をNAとすると、λ/NAに比例する。このため、光ディスクに対する記録密度を高めるためには、レーザ光の短波長化と対物レンズの高NA化が必要となる。しかし、光ディスクの傾きにより発生するコマ収差はNAの3乗に比例して大きくなるため、高NA化によってディスクの傾きに対するマージンが極めて小さくなり、わずかな傾きでもビームスポットがぼやけ、高密度での記録及び再生が実現できなくなる。従って、高密度化に適した従来の光ディスクでは、レーザ光の透過層であるカバー層を十分薄いもの(例えば、0.1mm程度のもの)とし、高NAに伴うディスクの傾きによるコマ収差の増加を抑制する必要がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−31337号公報(第9−10頁、図4)
【0004】
上記のような高密度化に適した構造を有する光ディスクは、例えば、情報記録層が形成されたディスク基板の記録面上にポリカーボネイト等からなる樹脂フィルムを基材とする薄膜状のカバーシートを貼り合せ、このカバーシートによりディスク基板上に透明なカバー層を形成する。ここで、カバーシートは、樹脂フィルム及びこの樹脂フィルムの片側の面に形成された粘着膜から構成されており、この粘着膜を介してディスク基板の記録面に重ね合わされ、加圧ローラ等の加圧部材により加圧されて記録面に貼り合わされる。
【0005】
一方、従来の光ディスクであって、上記のような高密度化に適した構造を備えていないものには、ディスク基板の記録面とは反対側の面(レーベル面)に凸状のスタックリブが一体的に成形されたものがある。このスタックリブは、例えば、光ディスクの回転心を中心とする円軌跡に沿って環状に形成されており、レーベル面からの突出長が0.2mm〜0.3mm程度とされている。このスタックリブは、製造完了した光ディスクを一時的に保管等するため、複数枚の光ディスクを積み重ねた場合に、互いに隣接する光ディスクの面(光入射面及びレーベル面)間に一定幅の隙間を形成する。これにより、互いに隣接する光ディスクの面同士が加圧状態におかれ光ディスクの面同士が貼り付いてしまったり、また加圧状態で光ディスクの面同士が擦れ合って光ディスクの光入射面又はレーベル面に擦り傷等の損傷が生じることが防止される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本出願の発明者等は、高密度化に適した構造を有する光ディスク、すなわちカバー層の厚さが0.1mm程度しかない光ディスクにもスタックリブを設けることを検討した。その結果、近時、開発が進んでいる高密度化に適した光ディスク用ディスク駆動装置との適応性等を考慮した場合、光ディスク(ディスク基板)のレーベル面にスタックリブを設けるよりも、ディスク基板の記録面にスタックリブを設けることに幾つかの優位点があると判断した。しかし、ディスク基板の記録面における情報記録層の内周側に環状のスタックリブを設け、このスタックリブの外周側にカバーシートを貼り合わせようとした場合、加圧ローラ等の加圧部材によりディスク基板上のカバーシートの中央部付近を加圧する際に、加圧部材がスタックリブに圧接してカバーシートの中央部付近を適正な加圧力で加圧できなくなり、この結果、カバーシート中央部付近のディスク基板への貼り合わせが不完全になるという問題が生じる。
【0007】
本発明の目的は、上記事実を考慮して、ディスク基板の記録面に設けられたスタック支持部からの干渉を受けることなく、加圧部材によりカバーシート全体を適正な加圧力で加圧してディスク基板に貼り合わすことができる光ディスクの製造装置及び光ディスクの製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る光ディスクの製造装置は、少なくとも片側の面が記録面とされ、該記録面に情報記録層が設けられると共に、記録面における情報記録層の内周側に凸状のスタック支持部が設けられたディスク基板と、樹脂フィルムの片側の面に粘着膜が成膜されてなり、該粘着膜を介して前記情報記録層を覆うように前記記録面に貼り合わされるカバーシートと、を有する光ディスクの製造装置であって、前記記録面における前記スタック支持部の外周側に重ね合された前記カバーシートを加圧して前記記録面に貼り合わす加圧部材と、前記加圧部材における前記スタック支持部に対応する部位に凹状に設けられ、前記加圧部材による前記カバーシートの加圧時に前記加圧部材と前記スタック支持部との間に隙間を形成する加圧逃げ部と、を有する光ディスクの製造装置。
【0009】
本発明に係る光ディスクの製造装置では、加圧部材に設けられた加圧逃げ部が、この加圧部材によるカバーシートの加圧時に加圧部材と凸状のスタック支持部との間に隙間を形成することにより、加圧部材からの加圧力がスタック支持部に伝達されることを防止できるので、スタック支持部の影響により加圧部材からカバーシートにおけるスタック支持部付近に伝達される加圧力が低減することを防止できる。この結果、加圧部材によりカバーシート全体を適正な加圧力で記録面上へ加圧してディスク基板に貼り合わすことができる。
【0010】
ここで、加圧部材としては、例えば、カバーシートにローラ面を圧接させつつ、このカバーシート上を転動可能とされた加圧ローラを用いることができ、この加圧ローラのローラ面におけるスタック支持部にスタック支持部に対応する部位に凹状の加圧逃げ部を設けることにより、スタック支持部からの干渉を受けることなく、加圧ローラのローラ面によりカバーシート全体を適正な加圧力で加圧できるようになる。また加圧ローラ以外にも、例えば、加圧部材としては、カバーシート上を転動可能とされた加圧ベルト、カバーシートに対して圧接及び離間可能に支持されカバーシート全体又は一部に圧接するもの等も使用可能である。
【0011】
またスタック支持部としては、記録面に環状に形成されたスタックリブ以外にも、周方向に沿って等間隔に配置された複数の突起状のものや、記録面の中央部付近を外周側よりも肉厚として形成された円柱状のもの等を設けることができる。
【0012】
また、本発明に係る光ディスクの製造方法は、少なくとも片側の面が記録面とされ、該記録面に情報記録層が形成されると共に、記録面における情報記録層の内周側にスタック支持部が設けられたディスク基板と、樹脂フィルムの片側の面に粘着膜が成膜されて構成され、該粘着膜を介して前記情報記録層を覆うように前記記録面に貼り合わされるカバーシートと、を有する光ディスクの製造方法であって、前記粘着膜を介して前記カバーシートを前記記録面における前記スタック支持部の外周側に重ね合わせた後、請求項1、2又は3記載の光ディスクの製造装置を用いて前記カバーシートを加圧して前記記録面に貼り合わす貼合工程を有することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る光ディスクの製造方法によれば、粘着膜を介してカバーシートを記録面におけるスタック支持部の外周側に重ね合わせた後、請求項1、2又は3記載の光ディスクの製造装置を用いてカバーシートを加圧して記録面に貼り合わすことにより、上述したように、加圧部材から加圧力がスタック支持部に伝達されることを防止できるので、スタック支持部の影響により加圧部材からカバーシートにおけるスタック支持部付近に伝達される加圧力が低減することを防止できる。この結果、ディスク基板の記録面にスタック支持部を設けた場合でも、加圧部材によりカバーシート全体を適正な加圧力で記録面上へ加圧してディスク基板に貼り合わすことができるので、カバーシート全体がディスク基板に確実に貼り合わされた光ディスクを簡単に製造できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態に係る光ディスクの製造装置及び製造方法について図面を参照して説明する。
【0015】
(実施形態の構成)
先ず、本発明の実施形態に係る光ディスクの構成について説明する。図1には、本発明の実施形態に係る光ディスクの製造方法により製造された光ディスクが示されている。この光ディスク10は、従来のDVD−R等の光ディスクに対して高密度の情報記録が可能とされたものであり、例えば、従来の光ディスクと比較して、記録再生用のレーザ光として短波長の青紫レーザ光を用いると共に、ディスク駆動装置の対物レンズの開口数NAを0.85程度まで増大することで、12cm径の光ディスク10に対する片面記録容量が25Gバイト以上に高められている。
【0016】
光ディスク10には、円板状に形成されたディスク基板12が設けられており、このディスク基板12の片側の面は情報の記録面14とされている。このディスク基板12の記録面14側には、光反射層18及び光吸収層20が順に積層されており、これらの光反射層18及び光吸収層20により情報記録層(以下、単に「記録層」という。)16が構成されている。また光ディスク10には、記録層16を覆うようにディスク基板12上に透明なカバー層22が設けられている。このカバー層22は、透明樹脂を素材とするカバーシート24により構成され、その厚さが0.1mm(100μm)程度とされている。
【0017】
ディスク基板12は、PC(ポリカーボネイト)等の樹脂を素材としてモールド成形されている。カバー層22を構成するカバーシート24は、PC(ポリカーボネイト)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の透明な樹脂フィルム25及び、この樹脂フィルム25の片側の面に形成された粘着膜26からなる。粘着膜26は、公知のアクリル系、ゴム系、シリコン系等の粘着剤により形成されるが、透明性及び耐久性の観点からは、アクリル系粘着剤が望ましい。またカバーシート24における樹脂フィルム25及び粘着膜26のそれぞれの厚さは、カバー層22の設定値に応じて決められるが、例えば、カバー層22の厚さの設定値が100μmの場合には、樹脂フィルム25の厚さが80μmに設定され、粘着膜26の厚さが20μmに設定される。
【0018】
ディスク基板12の中心部には、光ディスク10の回転中心となる軸心SDに沿って円形のセンターホール28が穿設されている。またディスク基板12の記録面14には、記録層16の内周側に軸心SDを中心とする円軌跡に沿って環状のスタックリブ34が一体的に成形されている。このスタックリブ34は、その径方向に沿った断面形状が略二等辺三角形とされ、記録面14からの突出長が周方向に沿った任意の位置で一定とされている。具体的には、スタックリブ34の記録面14からの突出長は0.2mm〜0.4mm程度に設定されている。一方、カバー層22の中心部には、軸心SDを中心としてスタックリブ34の径方向に沿った外径よりも大径とされた円形の開口部30が形成されている。これにより、スタックリブ34は開口部30を通して記録面14の法線方向へ突出し、カバーシート24の厚さが0.1mmの場合には、カバーシート24の表面(光入射面)からの突出長が0.1mm〜0.3mm程度となる。
【0019】
上記のような光ディスクの製造ラインでは、モールド成形等により成形されたディスク基板12に記録層16を形成した後、カバーシート24をディスク基板12に貼り合せる貼合工程が行われる。この貼合工程では、先ず、図2(A)に示されるように、カバーシート24の他端部を吸着等により支持テーブル42の上方へ支持しつつ、カバーシート24の一端部をディスク基板12の一端部上に載置する。このとき、カバーシート24とディスク基板12とがなす角度θは、3°〜10°程度になるようにカバーシート24の傾きが調整される。なお、図2に示されるディスク基板12及びカバーシート24は、理解を容易にするために、厚さ方向に沿った寸法が実際のものよりも拡大されて示されている。
【0020】
次いで、図2(B)及び(C)に示されるように、待機位置にあった加圧ローラ54をディスク基板12上にカバーシート24が載置されたディスク積層体32の一端部上へ移動させ、この加圧ローラ54をディスク積層体32の上面部33に圧接させつつ、ディスク積層体32上の一端部から他端部へ向って転動させる。このとき、加圧ローラ54の移動に従ってカバーシート24の他端部をディスク基板12側へ徐々に下降させて行く。加圧ローラ54のカバーシート24の一端部から他端部まで転動することにより、カバーシート24の粘着膜26とディスク基板12の記録面14との間の空気を抜きつつ、カバーシート24全体をディスク基板12に密着状態となるように貼り合わすことができる。
【0021】
上記のようにディスク基板12にカバーシート24を貼り合わすことにより、ディスク基板12の記録面14上にカバー層22が構成され、製品素材としての光ディスク10(図1参照)の製造が完了する。この光ディスク10は、例えば、専用のディスク保管台(図示省略)上に積み重ねられて状態(積載状態)で所定枚数が貯まるまで一時保管され、この所定枚数の光ディスク10の束は、1ロットとして塗装工程や包装工程等へ搬出される。
【0022】
次に、カバーシート24をディスク基板12に貼り合わすために用いられるローラ加圧装置40について説明する。図3に示されるように、ローラ加圧装置40には、支持テーブル42が設けられると共に、この支持テーブル42の上側に円筒状の加圧ローラ54が回転可能に支持されている。支持テーブル42の上面は、ディスク基板12上にカバーシート24が重ね合わされたディスク積層体32が載置される載置面44とされており、載置面44の中央部には円柱状のセンターピン46が突出している。このセンターピン46は、ディスク基板12の厚さよりも短くなっているか、伸縮可能とされて突出長が調整可能になっている。ディスク基板12は、そのセンターホール28内へセンターピン46が挿入されるように載置面44上へ載置され、センターピン46により載置面44の中央部へ位置決めされる。
【0023】
図3に示されるように、支持テーブル42内には、載置面44の下部側に周方向へ延在する負圧室48が設けられており、この負圧室48には配管50を通して真空ポンプ等の真空発生装置(図示省略)が接続されている。また支持テーブル42には、載置面44と負圧室48の上面部との間を貫通する複数の吸引穴52が周方向及び径方向に沿って一定ピッチで穿設されている。ローラ加圧装置40では、載置面44上へディスク基板12が載置されると、真空発生装置を作動させて負圧室48内を減圧し、吸引穴52を通して載置面44上のディスク基板12へ負圧を作用させる。これにより、ディスク基板12の下面(レーベル面)全体が載置面44上へ吸着される。
【0024】
図3に示されるように、加圧ローラ54は、そのローラ軸方向(矢印W方向)に沿ってディスク基板12よりも幅広とされ、その両端面にはそれぞれ軸心SRに沿って突出するローラ軸58が設けられている。また加圧ローラ54のローラ面56に沿った表層部はシリコンゴム、ウレタンゴム、バイトン等の弾性材料により形成されている。ここで、加圧ローラ54は、下方へ向って開いた略コ字状に形成された昇降フレーム60により支持されており、この昇降フレーム60の両端部には、それぞれ加圧ローラ54における一対のローラ軸58を軸支する軸受62が設けられている。この昇降フレーム60は、ローラ軸SRが載置面44と平行になるように加圧ローラ54を支持している。
【0025】
ここで、加圧ローラ54のローラ面56の周長は、光ディスク10の直径以上の長さにされている。従って、光ディスク10の直径が120mmである場合には、加圧ローラ54のローラ面56の外径は38.2mm以上にする必要がある。また図4に示されるように、加圧ローラ54のローラ面56には、軸方向に沿った中央部に加圧逃げ部64が凹状に形成されている。この加圧逃げ部64は、ディスク基板12におけるスタックリブ34に対応して設けられており、平面上に展開すると、その内径がスタックリブ34の外径よりも僅かに長くされ、かつローラ面56からの深さがスタックリブ34の突出長(0.2mm〜0.4mm)よりも0.2mm以上深くなっている。
【0026】
図3に示されるように、昇降フレーム60には、その上面部に、直流サーボシリンダ、油圧サーボシリンダ等からなる昇降シリンダ66の駆動ロッド68が連結されている。また昇降フレーム60は、支持テーブル42に対して固定された装置のメインフレーム(図示省略)によりディスク厚方向に沿って昇降可能に支持されている。昇降シリンダ66の本体部67はメインフレーム側に連結されている。これにより、昇降シリンダ66が駆動ロッド68をディスク厚方向に沿って伸縮させると、昇降フレーム60が駆動ロッド68の伸縮に対応して昇降する。
【0027】
昇降フレーム60には、加圧ローラ54の位相を検出するための位相センサ78が配置されている。この位相センサ78は、加圧ローラ54の端面部に取り付けられたマーカ79を光学的に検出することにより、加圧ローラ54の位相が加圧開始時の基準となる位相点に一致したタイミングで検出信号を出力する。
【0028】
ローラ加圧装置40には、昇降シリンダ66に接続されたシリンダドライバ70が設けられると共に、位相センサ78に接続された増幅器72が設けられており、これらのシリンダドライバ70及び増幅器72は、それぞれ装置全体を制御するためのコントローラ74に接続されている。シリンダドライバ70は、コントローラ74からのシリンダ制御信号に従って昇降シリンダ66を制御する。これにより、昇降シリンダ66の駆動ロッド68がシリンダ制御信号に対応する位置へ位置調整されると共に、昇降シリンダ66が発生する駆動力(押圧力)がシリンダ制御信号に対応する大きさに制御される。また位相センサ78から出力された検出信号は増幅器72により所定の信号形式(例えば、4mA〜20mA)に変換されてコントローラ74へ出力される。
【0029】
ローラ加圧装置40には、昇降フレーム60及び加圧ローラ54をディスク積層体32の径方向と平行なローラ移動方向(図2の矢印M方向)に沿って直線的に移動させるローラ移動機構(図示省略)が設けられている。ローラ移動機構はサーボモータ77を駆動源としており、このサーボモータ77はモータドライバ76(図3参照)を介してコントローラ74に接続されている。モータドライバ76は、コントローラ74からのモータ制御信号に従ってサーボモータ77に駆動信号及び駆動パルスを出力する。これにより、サーボモータが駆動信号に対応する方向へ駆動パルスの入力数に比例する回転量だけ回転する。このサーボモータ77からの駆動力によりローラ駆動機構は、ローラ移動方向に沿って加圧ローラ54を位置調整すると共に、加圧ローラ54の移動速度を制御する。
【0030】
昇降フレーム60には軸受62の外側にモータユニット80が搭載されており、このモータユニット80は、駆動源としてのサーボモータ及び電磁クラッチ等のクラッチ機構を内蔵しており、このクラッチ機構を介してサーボモータの出力軸が加圧ローラ54のローラ軸58に連結されている。モータユニット80のサーボモータもモータドライバ82(図3参照)を介してコントローラ74に接続されている。このモータドライバ82は、コントローラ74からのモータ制御信号に従ってモータユニット80のサーボモータに駆動信号及び駆動パルスを出力する。これにより、モータユニット80のサーボモータが駆動信号に対応する方向へ駆動パルスの入力数に比例する回転量だけ回転し、加圧ローラ54の回転方向及び回転量が制御される。
【0031】
(実施形態の作用)
次に、上記のように構成されたローラ加圧装置40を用いてカバーシート24をディスク基板12に貼り合せて光ディスク10を製造する方法について説明する。
【0032】
コントローラ74は、加圧ローラ54によりディスク積層体32への加圧を開始する前には、図2(B)で実線により示されるように、ローラ駆動機構により加圧ローラ54をディスク積層体32の径方向外側の待機位置に保持すると共に、昇降シリンダ66によりディスク厚方向に沿って加圧ローラ54を載置面44との間隔がディスク積層体32の厚さよりも僅かに狭くなるように位置調整する。またコントローラ74は、位相センサ78から検出信号に基づいてモータユニット80により待機位置にある加圧ローラ54を回転させ、この加圧ローラ54の位相を加圧開始時の基準となる位相点(初期位相点)へ調整する。
【0033】
コントローラ74は、支持テーブル42の載置面44上にディスク基板12が載置され、負圧室48内への負圧の供給が完了すると、ローラ駆動機構を作動させて、昇降フレーム60及び加圧ローラ54を待機位置からローラ移動方向に沿ってディスク積層体32上へ移動させる。このとき、加圧ローラ54は、載置面44との間隔がディスク積層体32の厚さよりも狭くなっていることから、ディスク積層体32上へ乗り上げてローラ面56によりディスク積層体32のカバーシート24に圧接する。
【0034】
この後、コントローラ74は、昇降シリンダ66により加圧ローラ54をディスク積層体32の上面部33に所定の圧接力で圧接させつつ、ローラ駆動機構により加圧ローラ54をローラ移動方向(矢印M方向)に沿って移動させる。このとき、コントローラ74は、モータユニット80により加圧ローラ54をローラ移動方向への移動速度と等線速度で回転させる。またコントローラ74は、シリンダドライバ70を介して昇降シリンダ66の駆動量及び駆動力を制御することで、ディスク積層体32上を転動する加圧ローラ54の圧接力を調整する。具体的には、コントローラ74は、例えば、加圧ローラ54のローラ面56との圧接部分でカバーシート24に生じる応力が任意の位置で一定の目標値となるように昇降シリンダ66を制御する。
【0035】
ローラ加圧装置40では、待機位置にある加圧ローラ54の位相が初期位相点に調整されることより、図2(C)に示されるように、ディスク積層体32上を転動する加圧ローラ54がディスク積層体32の中心部に達したときに、ローラ面56における加圧逃げ部64の中心点CPがディスク積層体32の軸心SDと一致する。このとき、加圧逃げ部64の内径がスタックリブ34の外径よりも大きくされ、かつ加圧逃げ部64の深さがスタックリブ34の突出長よりも深くされている。これにより、ディスク基板12のスタックリブ34は、ディスク積層体32の中心部付近を転動する加圧ローラ54の加圧逃げ部64内に挿入し、加圧ローラ54から離間した状態に保たれる。従って、加圧ローラ54は、ディスク積層体32上を転動する際に、スタックリブ34と接することなくディスク積層体32の中心部を通過する。
【0036】
コントローラ74は、ローラ移動方向に沿って加圧ローラ54がディスク積層体32の中心部を通過した後、ディスク積層体32上を横断してディスク積層体32から離脱すると、昇降シリンダ66により加圧ローラ54をディスク積層体32の上方へ上昇させた後、昇降シリンダ66及びローラ移動機構により加圧ローラ54を待機位置(図2(B)参照)に復帰させる。このとき、加圧ローラ54がローラ移動方向に沿ってディスク積層体32上を横断することにより、カバーシート24全体が加圧ローラ54からの加圧力によりディスク基板12の記録面14に貼り合わされ、製品素材としての光ディスク10の製造が完了する。
【0037】
以上説明した本実施形態に係るローラ加圧装置40では、加圧ローラ54のローラ面56に凹状に設けられた加圧逃げ部64が、加圧ローラ54によるカバーシート24の加圧時に加圧ローラ54と凸状のスタックリブ34との間に隙間を形成することにより、加圧ローラ54からの加圧力の一部がスタックリブ34に伝達されることを防止できるので、スタックリブ34の影響により加圧ローラ54からカバーシート24のスタックリブ34付近に伝達される加圧力が低減することを防止できる。この結果、ディスク基板12の記録面14にスタックリブ34を設けた場合でも、加圧ローラ54によりカバーシート24全体を適正な加圧力でディスク基板12の記録面14上へ加圧してディスク基板12に貼り合わすことができるので、カバーシート24全体がディスク基板12の記録面14に確実に貼り合わされた光ディスク10を簡単に製造できる。
【0038】
なお、本実施形態に係るローラ加圧装置40では、ディスク積層体32におけるカバーシート24を加圧する加圧部材として加圧ローラ54を用いたが、このような加圧部材としては、例えば、カバーシート上を転動可能とされた加圧ベルトや、ディスク積層体32のカバーシート24に対して圧接及び離間可能に支持されカバーシート全体又は一部に圧接するスタンプ型のもの等を用いることができ、このような加圧部材にスタックリブに対応する加圧逃げ部を設けることによっても、加圧ローラ54の場合と同様に、カバーシート24全体を適正な加圧力でディスク基板12の記録面14上へ加圧してディスク基板12に貼り合わすことができる、という効果を得られる。
【0039】
また本実施形態に係る光ディスク10では、ディスク基板12の記録面14に環状のスタックリブ34をスタック支持部として一体的に成形したが、このようなスタック支持部としては、例えば、光ディスク10の周方向に沿って等間隔に配置された複数の突起状のものを記録面14に設けても、また記録面14の中央部付近を外周側よりも肉厚として円柱状又は円錐台状のスタック支持部を記録面14に設けるようにしても良い。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る光ディスクの製造装置及び製造方法によれば、ディスク基板の記録面に設けられたスタック支持部からの干渉を受けることなく、加圧部材によりカバーシート全体を適正な加圧力で加圧してディスク基板に貼り合わすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る光ディスクの構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る加圧ローラ及びディスク積層体の側面図であり、カバーシートをディスク基板に貼り合わせる際の加圧ローラの動作を示している。
【図3】本発明の実施形態に係るローラ加圧装置の構成を示す正面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る加圧ローラ及びディスク積層体の斜視図である。
【符号の説明】
10 光ディスク
12 ディスク基板
14 記録面
16 記録層(情報記録層)
24 カバーシート
25 樹脂フィルム
26 粘着膜
34 スタックリブ(スタック支持部)
40 ローラ加圧装置(光ディスクの製造装置)
54 加圧ローラ(加圧部材)
56 ローラ面
Claims (4)
- 少なくとも片側の面が記録面とされ、該記録面に情報記録層が設けられると共に、記録面における情報記録層の内周側に凸状のスタック支持部が設けられたディスク基板と、樹脂フィルムの片側の面に粘着膜が成膜されてなり、該粘着膜を介して前記情報記録層を覆うように前記記録面に貼り合わされるカバーシートと、を有する光ディスクの製造装置であって、
前記記録面における前記スタック支持部の外周側に重ね合された前記カバーシートを加圧して前記記録面に貼り合わす加圧部材と、
前記加圧部材における前記スタック支持部に対応する部位に凹状に設けられ、前記加圧部材による前記カバーシートの加圧時に前記加圧部材と前記スタック支持部との間に隙間を形成する加圧逃げ部と、
を有することを特徴とする光ディスクの製造装置。 - 前記加圧部材を、前記カバーシートにローラ面を圧接させつつ、該カバーシート上を転動可能とされた加圧ローラにより構成し、
前記加圧逃げ部を、前記ローラ面における前記スタック支持部に対応する部位に設けたことを特徴とする請求項1記載の光ディスクの製造装置。 - 前記スタック支持部が、光ディスクの回転心を中心とする円軌跡に沿って環状に延在するスタックリブとして前記記録面に設けられている場合に、
前記加圧逃げ部を、光ディスクの径方向に沿った前記スタックリブの外径よりも大きい内径を有する円形凹状に形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の光ディスクの製造装置。 - 少なくとも片側の面が記録面とされ、該記録面に情報記録層が形成されると共に、記録面における情報記録層の内周側にスタック支持部が設けられたディスク基板と、樹脂フィルムの片側の面に粘着膜が成膜されて構成され、該粘着膜を介して前記情報記録層を覆うように前記記録面に貼り合わされるカバーシートと、を有する光ディスクの製造方法であって、
前記粘着膜を介して前記カバーシートを前記記録面における前記スタック支持部の外周側に重ね合わせた後、請求項1、2又は3記載の光ディスクの製造装置を用いて前記カバーシートを加圧して前記記録面に貼り合わす貼合工程を有することを特徴とする光ディスクの製造方法。
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