JP2004097584A - 千鳥縫いミシン - Google Patents
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Abstract
【解決手段】左針振りの場合は、基本の動作タイミング(主軸の回転角度300度)になると、左針振用区間において、針棒3を揺動させ、右針振りの場合は、基本の動作タイミングにディレイ値(今回は90度)を加算したタイミング(主軸の回転角度30度)になると、右針振用区間において、針棒3を揺動させる。
【選択図】 図6
Description
【発明の属する技術分野】本発明は、加工布の搬送方向と直交する揺動方向へ縫針を往復移動させる千鳥縫いミシンに関する。
【0002】
【従来の技術】従来の千鳥縫いミシンにおいては、特開2001−190877号公報に示すように、ステッピングモータ等のアクチュエータを制御して縫針を加工布の搬送方向と直交する方向に揺動することにより、加工布に千鳥縫い目模様を形成する千鳥縫いミシンが知られている。そして、縫針の移動方向に係わらず一定の揺動タイミングにて縫針を左右に揺動するように構成されている。
【0003】
また、特に工業用千鳥縫いミシン等においては、特開2001−145794号公報に示すように、ミシンアーム部の先端部において回転するロータリ天秤をそなえた千鳥縫いミシンが知られている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−190877号公報(第7頁、図8)
【特許文献2】特開2001−145794号公報(第4頁、図1)
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の千鳥縫いミシンにおいては、縫針の移動方向に係わらず一定の揺動タイミングにて縫針を左右に移動するように構成されているため、縫針を右に移動するときに形成される縫い目と縫針を左に移動するときに形成される縫い目との間で糸締まり等のバランスが崩れるという問題点がある。
【0005】
特に、ミシンアーム部の先端部において回転するロータリ天秤をそなえた千鳥縫いミシンで千鳥縫い目を形成するときバランスが崩れやすく、その原因について、図7を参照して説明する。
【0006】
アーム部1の先端部にはロータリ天秤9が設けられており、ロータリ天秤9から引き出された上糸17は、糸掛部18を通って針棒3及び縫針2まで導かれるように構成されている。尚、縫針2(針棒3)は本来1本であるが、説明を分かり易くするために、右に移動した場合と左に移動した場合の2本を記載してある。
【0007】
このような、千鳥縫いミシンにおいては、縫針2が右に移動した場合と左に移動した場合とで、縫針2と糸掛部18との距離に差が生じるため、縫針2が右に移動した場合、縫針2が上糸17を引っ張り、左に移動した場合、縫針2が上糸17を弛めるような動作となる。
【0008】
そして、ロータリ天秤9による上糸17の引き上げ量は一定であるため、縫針2が右に移動した場合、上糸17の全体の引き上げ量が過剰となる傾向にあり、縫針2が左に移動した場合、上糸17の全体の引き上げ量が不足となる傾向にあり、この引き上げ量の違いにより、左右の縫い目間で糸締まり等のバランスが崩れるのである。
【0009】
このことは、上述したロータリ天秤を備えた千鳥縫いミシン以外の千鳥縫いミシン、すなわちアーム部の前面に上下動する天秤を有する千鳥縫いミシンにおいても、縫針が右に移動した場合と左に移動した場合とで、糸掛部との距離に差が生じる場合は同様の問題点がある。
【0010】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、縫針の移動方向に係わらずバランスのとれた縫い目を形成することのできる千鳥縫いミシンを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するために、請求項1記載の千鳥縫いミシンは、加工布を所定の搬送方向へ搬送させると共に前記搬送方向と直交する揺動方向へ縫針を往復移動させることにより、前記加工布に千鳥縫い目模様を形成する千鳥縫いミシンにおいて、前記縫針を揺動するためのアクチュエータと、前記縫針の移動方向に応じて、縫針の揺動タイミングが異なるように前記アクチュエータを制御する制御手段を備えている。
【0012】
この構成によれば、縫針の移動方向に応じた適切なタイミングにおいて縫針を揺動することができ、縫針の移動方向に係わらずバランスのとれた縫い目を形成することのできる。
【0013】
請求項2の千鳥縫いミシンは、請求項1の発明において、前記縫針の揺動方向における一方側に配置された天秤を備え、前記制御手段は、縫針が前記天秤側に向かって移動する場合に対して、縫針が天秤側から離れるように移動する場合の揺動タイミングを遅延するように、前記アクチュエータを制御する。
【0014】
この構成によれば、縫針が天秤側に向かって移動する場合と縫針が天秤側から離れるように移動する場合とで適切なタイミングにてそれぞれ縫針を揺動することができるので、バランスのとれた縫い目を形成することのできる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。尚、図1の前方と左方を基準にして説明する。
【0016】
図1に示すように、千鳥縫いミシンMのアーム部1の左部(頭部)に、下端部に縫針2を装着した針棒3と、加工布を針板(図示略)に押える押え足4が支持され、その上側に、押え足4の押え力を調節する為の調節ネジ5が設けられている。図示していないが、アーム部1の内部に、ミシンモータで回転駆動される左右方向向きの上軸と、上軸の回転力により針棒3を上下駆動する針棒上下駆動機構と、針棒3を左右に揺動駆動する針棒揺動駆動機構等が設けられている。尚、アーム部1の前面側に、縫製に供する縫目形状の選択や縫目サイズの設定等を行う為の操作パネル6が設けられている。
【0017】
アーム部1の左端部に面板7が設けられ、面板7に形成された円形孔に、上軸に同心状に連結された回転板8が遊嵌状に設けられている。ロータリ天秤9は回転板8の左端面に複数のビス9cで固定され、面板7から外部(左部)に突出し上軸と同じ回転軸心a回りに回転駆動される。
【0018】
ここで、糸駒等の糸供給部(図示略)から延びる上糸10は、アーム部1の糸掛部11,12、糸調子機構13、糸掛部14、糸調子機構15、糸掛部16,17を経由し、糸掛部17から後上方へ延びてロータリ天秤9に前側から掛けられて下方へ延び、アーム部1の糸掛部18と針棒3の糸掛部19を介して縫針2の目孔を通すように装着され、回転するロータリ天秤9により上糸10の引締めと開放が行われる。尚、糸掛部17からロータリ天秤9へ至る上糸10及びロータリ天秤9から糸掛部18に至る上糸10は、面板7とその外面(左面)に固定された天秤ガード21の間の隙間を通る。
【0019】
ロータリ天秤用ガードカバー20は、面板7の外面(左面)に固定された環状の金属製(例えば、アルミ製)の天秤ガード21と、天秤ガード21の外側を開閉可能なカバー部材30と、カバー部材30の後端部を天秤ガード21の後端部に回動可能に枢着する枢支軸50等を備えている。前記カバー部材30は、環状の金属製(例えば、アルミ製)のカバー本体31と、その開口をカバーする合成樹脂製の透明な窓カバー41からなる。
【0020】
次に、千鳥縫いミシンの内部構造について説明する。アーム部1の先端部の内部には、正面視略コ字状の針棒支持枠23が配設され、上下方向向きの針棒3はその針棒支持枠23に上下動可能に支持され、その針棒3の下端には縫針2が着脱可能に取付けられている。
【0021】
前記針棒支持枠23は、アーム部1内に水平に配設されたシャフト24の一端部に固定されている。そのシャフト24は軸受け25を介して左右方向に摺動自在に設けられ、シャフト24の他端部に固着された連結部材26が連結レバー27の一端部にピン28により回動自在に枢支されている。連結レバー27の他端部は、揺動機構33のリンク部材34にピン35を介して回動自在に枢支されている。これにより、リンク部材34が左右方向に揺動することにより、連結レバー27を介して針棒支持枠23が同時に左右方向に往復揺動され、針棒3が2点鎖線で示すように往復揺動される。即ち、ミシンベッド部に設けられた図示外の糸輪捕捉用釜と縫針2との協働により、加工布にジグザグ縫目(千鳥縫目)が形成されるようになっている。尚、針棒上下動機構については、その説明を省略する。
【0022】
次に、千鳥縫いミシンの脚柱部に設けられた揺動機構33について説明する。
【0023】
脚柱部に固着されたベースプレート43の背面には、アクチュエータとしてのステッピングモータからなる揺動駆動用の駆動モータ44が固定され、その駆動軸がベースプレート11を挿通して正面側に突出している。その駆動軸には駆動レバー45の基端部が固着され、その駆動レバー45の先端部には上下方向に向いたリンク部材34の上端近傍部にピンにより回動可能に連結されている。リンク部材34は、その上端部において、前記連結レバー27の一端部に連結されている。
【0024】
即ち、駆動モータ44が時計回り方向と反時計回り方向とに往復回転駆動されると、駆動レバー45の上端部が左右方向に揺動するようになり、これと同時に、リンク部材34はその下端部の支点部を中心として揺動される。
【0025】
リンク部材34の支点部には二股部34aが形成され、その二股部34aに対応するベースプレート11には偏心軸部材36が回動自在に枢支されている。その偏心軸部材36は偏心軸部36aを含んで構成されている。この偏心軸部36aはベースプレート11より前方に突出状であり、リンク部材34の二股部34aに内嵌状に係合されている。
【0026】
次に、図3を参照して、千鳥縫いミシンの電気的構成について説明する。
【0027】
CPU52には、前述した操作パネル6及び駆動モータ44が接続されると共に、RAM56及びROM58が接続されている。
【0028】
RAM56は、図4Aに示すような縫目データを格納した縫目テーブルを備え、CPU52による各種制御動作を実行する際に必要なデータの読み出し及び書き込みを行なうように構成されている。尚、図4Bは図4Aの縫い目データによって形成される縫い目の形状を示している。
【0029】
また、ROM58は、後述する縫製作業を実行するための縫製処理プログラム等を格納している。
【0030】
また、CPU52には、ミシンモータ53が接続されると共に、ミシンモータ53によって回転される図示しないミシン主軸の回転位相(縫針2の上下位置)を検出するためのエンコーダ54が接続されている。
【0031】
以上のように構成された千鳥縫いミシンの動作について説明する。
【0032】
まず、作業者は、操作パネル6を操作することにより、縫針2を右位置から左位置に揺動(左針振)するときに対して、縫針2を左位置から右位置に揺動(右針振)するときに、どのくらい針揺動タイミングを遅延させるかのディレイ値を設定してRAM56に記憶させる。本実施の形態においては、主軸の回転角度で90度が設定されている。また、このディレイ値は予め所定の値が記憶されていてもよい。
【0033】
尚、図6に示すように針揺動可能区間は決まっているので、そのディレイ値によって、右針振する際の揺動終了タイミングが主軸の回転角度で120度を越えないように制限が掛けられている。
【0034】
そして、作業者は、操作パネル6を操作して、所望の千鳥模様を選択した後、図示しないペダルを踏み込むことによって、千鳥縫いミシンは、図5に示すフローチャートに従って動作する。
【0035】
まず、ステップSP1(以下、単にSP1を称す。他のステップも同じ)において、CPU52は、データ順位1の位置データ(図4に示す右位置A)をROM58から読み出して、駆動モータ44を制御して、その位置に針棒3を移動させる。尚、このSP1の動作は、上述した千鳥模様の選択時に予め動作させておいてもよい。
【0036】
次に、SP2において、CPU52は、データ順位を1つインクリメントして、位置データ(図4に示す左位置B)を読み出す。この場合、読み出された位置データはエンドコードでないため(SP3:NO)、CPU52は、SP4において、読み出された位置データ(左位置B)と現在の位置(右位置A)とに基づいて、針棒3の移動量(移動方向を含む)を算出する。
【0037】
尚、読み出された位置データがエンドコードの場合は(SP3:YES)、CPU52は、SP5において、データ順位を1にして、データ順位1の位置データ(右位置A)を読み出す。
【0038】
そして、CPU52は、SP6において、針棒3の移動方向を判別する。今回右位置Aから左位置Bに移動するため、SP6ではNOとなり、SP7において、ディレイ値が0にセットされる。
【0039】
次に、CPU52は、SP8において、エンコーダ54からの信号をチェックして、基本の動作タイミングにディレイ値(今回は0度)を加算したタイミングになるまで待機する。尚、本実施の形態における基本の動作タイミングは、図6に示す主軸の回転角度が300度のタイミングであり、この動作タイミングは、針棒3の揺動量やミシンモータ53の速度等によって適宜前後に自動設定されるようになっている。
【0040】
そして、CPU52は、基本の動作タイミングにディレイ値(今回は0度)を加算したタイミングになると(SP8:YES)、SP9において、駆動モータ44を制御して、図6の左針振用区間において、針棒3を揺動させる。
【0041】
また、CPU52が、SP6において、YESと判別したときは、左位置Bから右位置Aに移動するため、SP10において、ディレイ値が90度にセットされる。
【0042】
そして、CPU52は、基本の動作タイミングにディレイ値(今回は90度)を加算したタイミング(主軸の回転角度30度)になると(SP8:YES)、SP9において、駆動モータ44を制御して、図6の右針振用区間において、針棒3を揺動させる。尚、SP10において、ディレイ値に90度をセットしたとき、この右針振区間における針棒3の揺動終了タイミングが主軸の回転角度120度を超える場合は、ディレイ値を減らして針棒3の揺動終了タイミングが主軸の回転角度120度を超えないようにする。
【0043】
以上、詳述したように、本実施の形態の千鳥縫いミシンにおいては、図6に示すように主軸の回転角度330度から30度の区間、すなわち、上糸が中釜をくぐり抜けて引き上げられる区間を避けて右針振りを行うようにしたため、上糸に余計な抵抗が掛かることなく糸切れの発生を抑制することができる。また、主軸の回転角度30度以降の区間、すなわち、上糸が中釜をくぐり抜けた後の区間を避けて左針振りを行うようにしたため、上糸が余りすぎて糸締まりが悪くなくことを抑制することができる。
【0044】
尚、本発明は前記実施の形態に限定されることなく種々の変形、改良が可能である。例えば、本実施の形態においては、縫針2の揺動開始タイミングを遅延するように制御したが、縫針2の揺動終了タイミングを遅延するように制御してもよい。また、本実施の形態においては、基本動作タイミングにディレイ値を加算するように制御したが、基本動作タイミングから所定値を減算して動作タイミングを早めるように制御してもよい。更に、本実施の形態においては、ディレイ値を主軸の回転角度で入力するようにしているが、タイマー等により時間を入力するようにしてもよい。また、本実施の形態においては、右針振りに対して左針振りの揺動タイミングを遅延するように制御しているが、必要に応じて、左針振りに対して右針振りの揺動タイミングを遅延するように制御してもよい。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、請求項1記載の千鳥縫いミシンは、縫針の移動方向に応じて、縫針の揺動タイミングが異なるように制御するため、縫針の移動方向に応じた適切なタイミングにおいて縫針を揺動することができ、縫針の移動方向に係わらずバランスのとれた縫い目を形成することのできる。
【0046】
請求項2の千鳥縫いミシンは、請求項1の発明において、縫針が天秤側に向かって移動する場合に対して、縫針が天秤側から離れるように移動する場合の揺動タイミングを遅延するように制御するため、縫針が天秤側に向かって移動する場合と縫針が天秤側から離れるように移動する場合とで適切なタイミングにてそれぞれ縫針を揺動することができるので、バランスのとれた縫い目を形成することのできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係る千鳥縫いミシンの外観要部の斜視図である。
【図2】上記千鳥縫いミシンの内部構成を示す正面図である。
【図3】上記千鳥縫いミシンの電気的構成を示すブロック図である。
【図4】上記千鳥縫いミシンによって形成される千鳥縫いの位置データ及び縫い目形状を説明するための図である。
【図5】上記千鳥縫いミシンの動作を示すフローチャートである。
【図6】上記千鳥縫いミシンの動作タイミングを示すタイミングチャートである。
【図7】従来の千鳥縫いミシンの針棒の揺動状態を説明する説明図である。
【符号の説明】
2 縫針
9 ロータリ天秤
44 駆動モータ
52 CPU
Claims (2)
- 加工布を所定の搬送方向へ搬送させると共に前記搬送方向と直交する揺動方向へ縫針を往復移動させることにより、前記加工布に千鳥縫い目模様を形成する千鳥縫いミシンにおいて、
前記縫針を揺動するためのアクチュエータと、
前記縫針の移動方向に応じて、縫針の揺動タイミングが異なるように前記アクチュエータを制御する制御手段を備えたことを特徴とする千鳥縫いミシン。 - 前記縫針の揺動方向における一方側に配置された天秤を備え、前記制御手段は、縫針が前記天秤側に向かって移動する場合に対して、縫針が天秤側から離れるように移動する場合の揺動タイミングを遅延するように、前記アクチュエータを制御することを特徴とする請求項1記載の千鳥縫いミシン。
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