JP3737748B2 - ボタン付けミシン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボタン付けミシンに関し、詳細には該ミシンの糸切り装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動的に生地にボタンを縫い付けるボタン付けミシンが知られている。従来のボタン付けミシンによるボタン付け縫製を図11に基づいて説明する。ボタン付け縫製では、まず図11(a)に示すように、水平方向にボタンBを支持した状態で、糸Tが通されている縫い針1を上下動しながら、ベッド部2の針板(図示略)直下の図示しないルーパーとの協働により、ボタンBを生地Cに縫い付ける。ボタンBと生地Cとの間の糸を根糸t1とする。根糸t1が生地Cを貫通せず生地Cの中を通っていることから、図11(a)の第1工程を「すくい縫い」とも言う。
このすくい縫い後、図11(b)に示すように、ボタンBを90度倒し、この状態で縫い針1を駆動しながら、根糸t1の周りに糸を巻きつけていく。この第2工程を「根巻き」と言う。ボタンBを90度倒す際には、ボタンBの下縁部がベッド部2とぶつからないように支持し、これに合わせてベッド部2上に台4を設置し、この台4上に生地Cを載置していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ボタン付けミシンには、図11(a)、(b)に示すように、縫製後などに糸を切断するための糸切り装置3が設けられる。糸切り装置3は、ベッド2の前記針板近傍に固定して設けられている。
従って、第1工程においては図11(a)に示すように、根糸t1の直下で切断することができるので、生地C側に連なる糸残り長さを短くすることができる。しかし、第2工程においては、台4により生地Cの高さを上げてしまうので、根糸t1周りに形成された根巻き糸t2から台4の高さ分離れた位置で、糸切り装置3により糸が切断されるので、その分糸残り長さが長くなってしまい、見苦しいという問題があった。
【0004】
本発明の課題は、糸切り装置を備えたボタン付けミシンにおいて、すくい縫いでも根巻き縫製でも、糸残り長さを短く一定として、見た目を向上させることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、例えば図1、図4〜図9に示すように、
ベッド部(11)の前端部に配設され被縫製物を上面に載置する針板(18)と、
前記針板の下方に配設されたメス土台(25)と、前記メス土台の上面側に配設された複数の糸切りメス(第1メス部材31、第2メス部材33、第3メス部材35)と、前記複数の糸切りメスを駆動する糸切りメス駆動手段(糸切りシリンダ52、パルスモータ71)とを有し、前記複数の糸切りメスの協働により縫い糸を切断する糸切り装置(20)と、
前記糸切りメス駆動手段を制御する制御手段(CPU81)とを備え、
前記被縫製物にボタンを縫い付けるボタン付けミシン(10)において、
前記制御手段によって制御され、針板とメス土台と複数の糸切りメスとを一体に上下方向に移動可能とする上下駆動手段(エアシリンダ41)を備えることを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、針板とメス土台と複数の糸切りメスとを一体に上下方向に移動することができることから、図11で説明した第1工程のすくい縫いのときには、針板とベッド部の面が面一であるような高さで縫製し、第2工程の根巻き縫製時には針板をベッド部に対して上昇させれば、ボタンを上下方向に向けた状態で根巻き縫製が可能となる。そして、メス土台及び糸切りメスもともに上昇しているので、糸切りメスと針板に載置される被縫製物との高さ関係は一定である。従って、第1工程のすくい縫い時も第2工程の根巻き縫製時も変わらず、糸切り後の糸残り長さを一定に短くすることができ、見た目に良い仕上がりとなる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のボタン付けミシンにおいて、
前記上下駆動手段により、針板とメス土台と複数の糸切りメスとが一体に上下方向に移動する際に、前記糸切りメス駆動手段は上下方向に移動しないように構成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、糸切りメスの駆動源である糸切りメス駆動手段は、上下駆動手段により針板等が上下方向に移動しても、上下に移動しないことから、上下運動に要する力を小さくすることでき、上下駆動手段をコンパクトな構成にでき、スペースやコストの点で有利である。
【0009】
ここで、糸切りメス駆動手段は、各糸切りメスに対応するように同数設けられていてもよいし、複数の糸切りメスに対して1つの糸切り駆動手段が設けられていてもよい。さらには糸切りメスが3つ以上設けられ、1つの糸切りメスと1つの糸切り駆動手段が対応し、2つ以上の糸切りメスと1つの糸切り駆動手段が対応するように構成されていてもよい。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のボタン付けミシンにおいて、
前記制御手段による前記上下駆動手段の制御により、前記針板とメス土台と複数の糸切りメスは、一体に、任意の上下方向位置に移動することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、針板と糸切りメスを任意の高さに調節できるようになる。それにより、例えば大きなボタンであれば高い位置に、小さければより低い位置に移動させるなどの縫製条件に応じた調節が可能となり、有用性が高い。
この場合、上下駆動手段としては、任意の高さ調節可能なパルスモータなどを用いることが好ましい。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載のボタン付けミシンにおいて、
前記複数の糸切りメスは、前記針板の下面とメス土台の上面部との間において、ベッド部の前後方向に略直交する左右方向に移動する2つのメス取付板(第1スライド板32、第2スライド板37)に少なくとも1つずつ取り付けられ、針板の前後方向に略直交する一端部から突出し、
針板の前記一端部の近傍が針穴(18a)となっていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、複数の糸切りメスは、針板の前後方向に略直交する一端部から突出するように配設され、針板の前記一端部の近傍が針穴となっていることから、針板及び糸切りメスが上昇し根巻き縫製を行う際に、上下方向に立った状態で保持されているボタンを被縫製物ごと、例えば布送り機構などで移動させて、針板の一端部に近接した位置まで近づけることができる。これにより、根巻き縫製時にボタンの裏面に接近した位置まで縫い針によって根巻きを行うことができ、見た目に美しい縫製ができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のボタン付けミシンにおいて、
糸切り装置は、
前記2つのメス取付板のベッド部の前後方向に略直交する端面に形成されたラック(第1ラック32a、第2ラック37a)と、
前記ラックのそれぞれと噛み合う2つのピニオン(第1ピニオン55、第2ピニオン65)と、
上下方向に設けられ、糸の切断時に前記糸切りメス駆動手段によって駆動されて所定方向に移動する2本の連結軸(58、58)と、
略水平面内における一端部に前記2つのピニオンそれぞれが接続され、他端部に前記2本の連結軸のそれぞれが接続された2つのレバー(ピニオン側レバー61、61)とを備え、
2本の連結軸は、ベッド部前端部の左右に離れて配設されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、ラックを介してメス取付板を移動させるピニオンそれぞれが一端部に接続された2つのレバーにおいて、略水平面内における他端部、つまり、ピニオンの回転軸からずれた位置に、糸切りメス駆動手段によって駆動され所定方向に移動する連結軸の一端部が接続され、2本の連結軸は、ベッド部前端部の左右に離れて配設されている。従って、2本の連結軸の間が空くので、他の部品を設置したり工具を差し入れてその奥の部材の調整をしたりといったスペースを確保できる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のボタン付けミシンにおいて、
糸切りメス駆動手段は2つ設けられ、
糸切り装置は、2つの連結リンク(54、74)を備え、
2つの連結リンクの一端部は、前記2つの糸切りメス駆動手段側にそれぞれ連結され、他端部は、前記2本の連結軸のそれぞれに遊嵌し、
前記上下駆動手段によって針板とメス土台と複数の糸切りメスとが一体に上下方向に移動する際に、前記2つの連結リンクの前記他端部に対して各連結軸が上下方向に摺動することを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、上下駆動手段によって針板とメス土台と複数の糸切りメスとが一体に上下方向に移動する際に、前記2つの連結リンクの前記他端部に対して各連結軸が上下方向に摺動することから、糸切りメス駆動手段は、上下駆動手段により針板等が上下方向に移動しても、上下に移動しないことから、上下運動に要する力を小さくすることでき、上下駆動手段をコンパクトな構成にでき、スペースやコストの点で有利である。
なお、請求項6が請求項2に従属する場合、請求項2の「糸切りメス駆動手段は上下方向に移動しない」ことの具体的態様が請求項6の構成となる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1に示す本発明の一例としてのボタン付けミシン10は、単環縫い根巻きボタン付けミシンである。ボタン付けミシン10は、主に、ベッド部11と、このベッド部11の基端部から起立する縦胴部12と、この縦胴部12の上部からベッド部11にほぼ平行するように前方に延びるアーム部13とから構成される。ベッド部11の上面には、針板18が固定されている。この針板18に対し、ミシン10の長手方向(前後方向)において対向するように、開口19aが形成されている開口部材19が固定されている。この開口19aは、すくい縫いから根巻き縫製に進むときに、図11(b)のようにボタンを90度立てたときに、ボタンの下縁部がベッド部11にぶつからないように念のため設けられているものである。
【0019】
図2に示すように針板18と開口部材19の間のスペースが、縫い針15が上下動するためのいわゆる針穴18aとなっており、この針穴18aの近傍に糸切り装置20の糸切断部30が設けられている。
アーム部13の前方頭部13aには、下端部に縫い針15を備えた針棒16が設けられている。この針棒16は、ミシンモータ17(図9)を駆動源として、アーム部13内に設けられた図示しない主軸等を介して、上下に駆動されるようになっている。
また、ミシン10には、図示しないが、ボタンを水平方向及び鉛直方向に把持可能なボタン把持機構や、縫い針15の上下動に連動してアクチュエータ92により駆動され被縫製物(生地)を前後方向に移動させる布送り機構なども設けられている。
【0020】
ベッド部11内には、針棒16の直下に図示しないルーパーが設けられている。このルーパーは、針棒16の上下運動と同期して所定の動作を繰り返すように構成されている。そして、前記ルーパーは、縫い針15との協働により、先に形成される糸ループと当該糸ループの次に形成される糸ループとを結節させる。これを繰り返すことで、すくい縫いにより被縫製物にボタンを縫い付けたり、あるいは根巻き縫製を行う。そして、最終針落ち後に、縫い針15が上昇するとともに、糸の結び目が形成され、ルーパーと縫い針15の間で糸切り装置20によって糸が切断される。
【0021】
図2〜図10に基づいて糸切り装置20について説明する。
糸切り装置20は、縫い終わり、さらには縫い始めに糸を切断するもので、糸を切断する糸切断部30と、糸切断部30を駆動する糸切りメス駆動手段としての糸切りシリンダ52及びパルスモータ71と、糸切りメス駆動手段からの駆動力を伝達する第1、第2伝達手段28、29から構成される。なお、図2は、糸切断部30を中心に示し、針板18を破断し、かつ、ベッド部11を構成するフレームについては、前側の前フレーム11aのみ図示している。図3は、糸切り装置20全体をベッド部11の側部を構成する側部フレーム11bごと図示し、図4は糸切り装置20のみを示している。
【0022】
糸切断部30は、図5に示すように、本発明の糸切りメスである第1メス部材31と、第2メス部材33と、第3メス部材35を有する。
【0023】
まず、第1メス部材31、糸切りシリンダ52、及び糸切りシリンダ52の駆動力を第1メス部材31に伝達する第1伝達手段28について説明する。
第1メス部材31は、図6(a)に示すように、左右にスライド移動可能である第1スライド板(メス取付板)32の側縁部から後方に延出するように形成されている。
第1メス部材31は、図6(b)に示すように、円弧形状に形成され糸を内側に案内する切欠部31bと、左側端部の上面から上方に突出するように設けられた突起31aとを有する。この突起31aの右側面(第3メス部材35側)及び左側面(第2メス部材33側)それぞれは糸を切断するための刃となっている。つまり、第1メス部材31は右側に移動した場合には、第3メス部材35との間で糸を切断できるとともに、左側に移動した場合には第2メス部材33との間で糸を切断できる。
【0024】
第1スライド板32は、略平板な板からなり、その前側には第1ラック32aが形成され、この第1ラック32aは、後述の第1ピニオン55と噛み合っている。
図2などに示すように、針板18の直下には、第1スライド板32及び第2スライド板37を支持するスライド板支持部25bを有するメス土台25が固定されている。図6(b)に示すように、スライド板支持部25bには、左右方向にガイド孔25aが形成され、第1スライド板32の下面からは、前記ガイド孔25aに嵌合する嵌合部32cが突出している。
【0025】
第1スライド板32は、嵌合部32cが前記ガイド孔25aに嵌った状態でメス土台25に支持され、ガイド孔25aにガイドされることで左右に直線移動するようになっている。
なお、第1ラック32aは、その右側部分の歯が高く形成され、それにより形成された歯の後ろ側に、後述の第2スライド板37の右前面37bに当接する当接面32bが形成されている。
【0026】
糸切りシリンダ52は、エアシリンダからなる。糸切りシリンダ52の駆動力は、第1伝達手段28を介して第1スライド板32に伝達されるようになっている。すなわち、糸切りシリンダ52の先端のシリンダロッド52aは、ナット60、60などにより、L字状の第1L型部材53の後端部に固定されている。第1L型部材53の先端部は、連結リンク54の一端に回動自在に連結されている。
【0027】
一方、前述のように、針板18の下方にはメス土台25が設けられている。メス土台25には図示しない円形の穴が形成され、該穴に、第1ピニオン55の下端部(図示せず)が固定されているピニオン側レバー61が、回動自在にはめ込まれている。メス土台25の下面側において、ピニオン側レバー61の周面から略水平方向に延出部61aが延出している。
前記延出部61aに上下方向に長い連結軸58が固定されている。前記連結リンク54の他端54aは延出部61aの直下において連結軸58に摺動・回動自在に遊嵌されている。
【0028】
連結軸58の下方には、メス土台25に対向するように取付板59が設けられている。メス土台25と取付板59との間には、図2及び図3に示すように、矩形状の長板26、26が介設され、これら長板26、26の上下両端部がメス土台25と取付板59それぞれにネジ止めされている。
取付板59の上面には、円筒形状の土台側レバー57が取付板59に対して第1ピニオン55の回転中心線を中心に回転自在であるように取り付けられている。この土台側レバー57の上面には外方に延出する延出部57aが形成され、この延出部57aに、前記連結軸58の下端部が固定されている。
【0029】
糸切りシリンダ52のシリンダロッド52aは、前後の2つのポジションをとり、一方から他方への移動により第1メス部材31に所定方向への移動を行わせるようになっている。例えば後方に位置した状態から、前方に突出すると、連結リンク54により連結軸58が前方に押される。これにより連結軸58は第1ピニオン55の回転中心線を中心とする円弧を描きながら前方に移動し、延出部61a、57aも同方向に押されて、ピニオン側レバー61と土台側レバー57が回転し、第1ピニオン55が図6(a)の時計方向に回転し、第1メス部材31とともに第1スライド板32が図6(a)の紙面手前方向に移動する。逆に、シリンダロッド52aが後方に引き込まれると、第1メス部材31及び第1スライド板32は図6(a)の紙面奥側へ移動する。
以上のように、第1L型部材53から第1ピニオン55にかけて、第1伝達手段28が構成される。
【0030】
第2メス部材33と第3メス部材35は、図7に示すように、略矩形状の細長い板状の第2スライド板(メス取付板)37の左右両端に固定されている。第2メス部材33の先端は、U字型に切り込まれており、その内側に第1メス部材31の突起31aの左側面の刃と合致することで、糸を切断する第2刃部33aが形成されている。
第3メス部材35の第2メス部材33と向き合う先端も、同様にU字型に切り込まれており、その内側に前記突起31aの右側面の刃と合致することで、糸を切断する第3刃部35aが形成されている。
【0031】
第2スライド板37の左下面には、第2メス部材33と上下に対峙するように、切断時等に第1メス部材31との間で糸をクランプする左クランプ部材34が固定されている。また、第2スライド板37の右下面には、第3メス部材35と上下に対峙するように、切断時等に第1メス部材31との間で糸をクランプする右クランプ部材36が固定されている。糸切断部30においては、切断時にクランプすることで、糸にある程度の張力を与えることで、確実に切断できるようになっている。
【0032】
また、第2スライド板37の右前面37bの左側には、後述の第2ピニオン65と噛み合う第2ラック37aが形成されている。
第2スライド板37の後面37cの中央部分は、図2に示すように、針板18の断面カギ型に形成された後縁部18bによって係止されている。これにより、第2スライド板37、つまり第2メス部材33及び第3メス部材35は、後縁部18bにガイドされながら、第2ピニオン65の回転に伴い左右に移動するようになっている。
【0033】
なお、前述のように、第2スライド板37の右前面37bは平坦に形成され、第1スライド板32の当接面32bと互いに当接する。第1スライド板32と第2スライド板37は、それぞれ、メス土台25あるいは針板18にガイドされることで、左右に直線移動するが、さらに、右前面37bと当接面32bとが面接触することで、両者の移動軌跡が完全に平行するように規制される。
【0034】
前述のように、第1スライド板32は、嵌合部32cがメス土台25のガイド孔25aに嵌合した状態で、メス土台25により支持されている。第2スライド板37の下面には、図示しないが、第1スライド板32の左右移動距離を考慮した長さを有する薄い凹みが形成されている。該凹み内に第1スライド板32が収まっており、逆に言えば、第2スライド板37は、図5に示すように、第1スライド板32を完全に被った状態である。この状態で、第2スライド板37の前記凹みの両脇の下面は、図2に示すように、スライド板支持部25bのガイド孔25aを囲む主面と面接触する。従って、第2スライド板37も、メス土台25のスライド板支持部25bによって支持された状態で左右に移動するようになっている。
【0035】
第2メス部材33及び第3メス部材35を駆動するための糸切りメス駆動手段としては、図8に示すように、パルスモータ71を用いている。このパルスモータ71の駆動力は第2伝達手段29によって、第2スライド板37に伝達されるようになっている。
パルスモータ71の出力軸71aに固定された作動片72は、略水平方向に設けられた平板75の一端に回動自在に連結されている。平板75の他端部は、L字状の第2L型部材73の一端部に回動自在に連結されている。第2L型部材73の他端部73aは連結リンク74の後端部に固定されている。
【0036】
連結リンク74は、長い棒状に形成され、中央部分がほぼ水平面内において2箇所約90度ずつ折り曲げられ、折曲部74aとなっている。連結リンク74は、図3に示すように、折曲部74a付近から前部は、ベッド部11の側部フレーム11b内部にあって、糸切断部30まで延びている。さらに、折曲部74aの近傍のミシンフレームには、例えば磁気センサからなる位置検出センサ76が固定されている。一方、折曲部74aには金属板77が固定されており、連結リンク74が前後方向における特定の位置にあることを検出するようになっている。
【0037】
一方、第2ピニオン65から取付板59にかけての構造は、前述の第1ピニオン55同様である。すなわち、取付板59には土台側レバー57が回転自在に取り付けられ、土台側レバー57の延出部57aに連結軸58の下端部が固定されている。連結軸58の上端部は、ピニオン側レバー61の延出部61aに固定されている。前記連結リンク74の前端部は、延出部61aの直下で連結軸58に摺動及び回動自在に遊嵌されている。
また、第1ピニオン55同様に、メス土台25には図示しない円形の穴が形成され、第2ピニオン65の下端部(図示せず)が固定されているピニオン側レバー61は該穴に回転自在にはめ込まれている。
【0038】
パルスモータ71が動作し、その出力軸71aが回転すると、作動片72が左右に揺動する。例えば、作動片72が後方に揺動すると、平板75や第2L型部材73、連結リンク74を介して、連結軸58が後方に引かれる。これにより、連結軸58が第2ピニオン65の回転中心線を中心に円弧を描きながら後方に移動し、延出部61aを介して第2ピニオン65が図7の時計方向に回転し、第2メス部材33及び第3メス部材35ごと第2スライド板37が図7の右方に移動する。逆に、作動片72が前方に揺動すれば、第2スライド板37は左方に移動する。第2スライド板37は、パルスモータ71の回転角度を制御することで、一定の範囲内の任意の位置に移動できるようになっている。
【0039】
糸切断部30は、上記の糸切りシリンダ52によって第1メス部材31が、パルスモータ71によって第2メス部材33と第3メス部材35が一体になって左右に移動し、これにより、第1メス部材31と第2メス部材33、第1メス部材31と第3メス部材35それぞれとの間で糸を切断するようになっている。
【0040】
ボタン付けミシン10は、糸切断部30を針板18ごと上下動する上下駆動手段としてのエアシリンダ41を備える。エアシリンダ41は、上下方向に出没可能な2本の出力ロッド41a、41a(図10参照)を備え、この出力ロッド41a、41aが上下動土台42の下面に固定されている。上下動土台42は、両端が下方に垂れた略コ字状に形成され、その上面42aに複数の短い支持棒27、27…が固定されている。これら支持棒27、27…が取付板59の下面側に固定されている。
【0041】
エアシリンダ41の出力ロッド41a、41aが引き込まれたOFF状態のときには、針板18は、図2のように、ベッド部11の上面の開口部材19とほぼ面一である。そして、エアシリンダ41がONになり、出力ロッド41a、41aが上昇すると、これにより、図10に示すように、上下動土台42ごと、その上部構造、すなわち、取付板59、メス土台25、糸切断部30、針板18が上昇する。よって針板18は、ベッド部11の開口部材19よりも上方に移動する。なお、連結リンク54、74は、それぞれ、連結軸58、58に対して遊嵌していることから、連結軸58、58は連結リンク54、74に対して摺動しながら上昇し、連結リンク54、74及び糸切りシリンダ52、パルスモータ71は上下方向には動かない。
【0042】
図9には、ボタン付けミシン10の制御ブロック図を示した。制御部80は、CPU(Central Processing Unit)81と、ROM(Read Only Memory)82と、RAM(Randam Access Memory)83と、各駆動回路84,85,86,87、88、93と、起動ペダル89と、操作パネル90とを備え、システムバスにより各部が相互にデータ入出力可能に接続されている。
【0043】
本発明の制御手段であるCPU81は、ROM82に格納される制御プログラムや制御データ、および、起動ペダル89や操作パネル90によって入力される信号などに従って、制御部80全体の制御や各種データ処理を行う。RAM83は、CPU81の作業領域等として用いられ、ROM82の格納内容、あるいはCPU81の演算処理結果が格納される。
【0044】
駆動回路84は、ミシンモータ17に接続されており、CPU81の演算処理結果に基づきミシンモータ17の駆動制御する。なお、ミシンモータ17の駆動により、縫い針15が上下動したり、図示しないルーパが回転して、被縫製物に縫製が行われる。
【0045】
駆動回路85は、糸切りシリンダ52に接続されており、CPU81の演算処理結果に基づきこれを駆動制御し、第1メス部材31をスライド移動させる。
駆動回路86は、パルスモータ71に接続されており、CPU81の演算処理結果に基づきこれを駆動制御して、第2メス部材33及び第3メス部材35をスライド移動させる。
例えば、縫い始めには、第1メス部材31と第2メス部材33との間で糸を切断し、縫い終わりには第1メス部材31と第3メス部材35との間で糸を切断するよう、糸切りシリンダ52及びパルスモータ71が制御駆動される。
【0046】
駆動回路87は、ミシン10内に設けられた図示しない針振り機構を駆動させるアクチュエータ91に接続されており、CPU81の演算処理結果に基づき針振り機構の針振り動作を制御する。なお、この針振り機構の針振り動作は縫針15が縫製物の上方に位置する毎に行われるように制御されている。
駆動回路88は、図示しない布送り機構を駆動させるアクチュエータ92に接続されており、CPU81の演算処理結果に基づき布送り機構の駆動を制御する。アクチュエータ92による布送り機構の駆動は針棒16の駆動と同期して行われる。
【0047】
駆動回路93は、エアシリンダ41に接続され、CPU81の制御の下でこれを制御駆動する。具体的には、すくい縫いから根巻き縫製に進むときにエアシリンダ41をONし出力ロッド41a、41aを突出させ、根巻き縫製が終了すれば、OFFにし出力ロッド41a、41aを引き込む。
【0048】
起動ペダル89は、縫製者がミシンを制御するために用いられるものであり、縫製者のペダルの踏み込み程度によって、ミシン回転、停止等の各種縫製指令をCPU81に出力し、ミシンモータ17は駆動する。
操作パネル90は、各種ボタンと7セグメント表示部などの表示部とを備え、これらを押下することによって操作信号をCPU81等に出力するとともに、設定内容などを表示する。この操作パネル90から、縫製に係る情報を入力することができ、その情報に基づきCPU81が演算処理を行う。操作パネル90を介して、例えば、糸切断部30による糸切断のタイミングを設定できる。
【0049】
CPU81は、操作パネル90からの操作信号に基づきROM82から糸切りプログラムを読み出す。当該糸切りプログラムに基づきミシンモータ17、パルスモータ71、糸切りシリンダ52及びアクチュエータ91・92が制御される。これにより、選択された縫いはじめからの針数で糸を切断させることができる。また、CPU81は、根巻きボタン付け縫製において、第1工程のすくい縫い終了時に糸切りさせ、次いで第2工程の根巻き縫製の前に、駆動回路93を介してエアシリンダ41をONし、針板18及び糸切断部30を上昇駆動させる。根巻き縫製終了後は、再び糸切りした後、エアシリンダ41をOFFにし針板18及び糸切断部30を下降させる。
【0050】
以上の糸切り装置20を備えるボタン付けミシン10によれば、エアシリンダ41によって、糸切断部30を針板18とともに上下可能に構成したので、糸切断部30と針板18に載置される生地との高さ関係は、第1工程のすくい縫い時も第2工程の根巻き縫製時も変わらず、糸切り後の糸残り長さを一定に短くすることができ、見た目に良い仕上がりとなる。
加えて、連結軸58、58が連結リンク54、74に対して摺動することから、糸切りシリンダ52から連結リンク54にかけて、及びパルスモータ71から連結リンク74にかけて、エアシリンダ41により針板18等が上下方向に移動しても、上下に移動しない。従って、上下運動に要する力を小さくすることでき、上下駆動手段であるエアシリンダ41として小型のシリンダを使用することができ、スペースやコストの点で有利である。
【0051】
また、図5でも示すように、第1ピニオン55及び第2ピニオン65の回転中心線である直線L1、L2上には軸となる部材を設けず、ピニオン側レバー61と土台側レバー57とにより軸が2分割されて、連結軸58、58は直線L1、L2よりも外側にはずれた位置にある。これにより、駆動軸58、58の間が空間となっている。
そのため、他の部品を設置したり、メス土台25と取付板59との間から工具を差し入れてその奥の部材の調整をしたりといったスペースを確保できる。
【0052】
加えて、生地が載置される針板18と、その後端部に設けられている糸切断部30がともに上昇した状態で根巻き縫製が行われることから、根巻き縫製時に、図11(b)の状態のボタンと生地を前記布送り機構で移動させることで、ボタンを糸切断部30、すなわち針穴18aに近接した位置まで近づけることができる。これにより、根巻き縫製時にボタンの裏面に接近した位置まで縫い針15によって根巻きを行うことができ、見た目に美しい縫製ができる。
【0053】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、具体的な形状、構造、駆動源の種類等は適宜変更可能であるのは勿論である。
例えば、上下駆動手段の駆動源としては、角度制御可能な各種モータでもよい。このようなモータを使用することで、実施例のような2ポジションだけでなく、多段階あるいは全く任意の高さに調節できるようになる。それにより、例えば大きなボタンであれば高い位置に、小さければより低い位置に移動させるなどの縫製条件に応じた調節が可能となる。
また、糸切りメス駆動手段である糸切りシリンダ52やパルスモータ71についても、上記実施例に限定されず、各種モータやソレノイドなど用いることができる。
【0054】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、針板とメス土台と複数の糸切りメスとを一体に上下方向に移動することができることから、第1工程のすくい縫いのときには、針板とベッド部の面が面一であるような高さで縫製し、第2工程の根巻き縫製時には針板をベッド部に対して上昇させれば、ボタンを上下方向に向けた状態で根巻き縫製が可能となる。そして、メス土台及び糸切りメスもともに上昇しているので、糸切りメスと針板に載置される被縫製物との高さ関係は一定である。従って、第1工程のすくい縫い時も第2工程の根巻き縫製時も変わらず、糸切り後の糸残り長さを一定に短くすることができ、見た目に良い仕上がりとなる。
【0055】
請求項2に記載の発明によれば、糸切りメスの駆動源である糸切りメス駆動手段は、上下駆動手段により針板等が上下方向に移動しても、上下に移動しないことから、上下運動に要する力を小さくすることでき、上下駆動手段をコンパクトな構成にでき、スペースやコストの点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例としてのボタン付けミシンの概略を示す斜視図である。
【図2】図1のミシンの糸切断部付近を示す斜視図であり、針板は破断して示している。
【図3】図1のミシンに設けられる糸切り装置及び上下駆動手段を示す斜視図であり、ベッド部ごと示している。
【図4】図1のミシンに設けられる糸切り装置及び上下駆動手段を示す斜視図であり、ベッド部を除いて示している。
【図5】糸切り装置を構成する糸切断部と伝達手段の一部を示す斜視図である。
【図6】(a)は糸切りシリンダ及び第1伝達手段の斜視図であり、(b)は主に第1メス部材とメス土台とを示す斜視図である。
【図7】糸切断部と第2伝達手段それぞれの一部を示す斜視図である。
【図8】パルスモータと第2伝達手段を示す斜視図である。
【図9】図1のミシンの制御部を示すブロック図である。
【図10】上下駆動手段により針板及び糸切断部が上昇している状態を示す斜視図である。
【図11】従来のボタン付けミシンにおける縫製の様子を示す模式図であり、(a)は第1工程を示し、(b)は第2工程を示す。
【符号の説明】
10 ボタン付けミシン
11 ベッド部
18 針板
18a 針穴
20 糸切り装置
25 メス土台
28 第1伝達手段
29 第2伝達手段
31 第1メス部材(糸切りメス)
32 第1スライド板
32a 第1ラック
33 第2メス部材(糸切りメス)
35 第3メス部材(糸切りメス)
37 第2スライド板
37a 第2ラック
41 エアシリンダ(上下駆動手段)
52 糸切りシリンダ(糸切りメス駆動手段)
54、74 連結リンク
55 第1ピニオン
61、61 ピニオン側レバー
58、58 連結軸
65 第2ピニオン
71 パルスモータ(糸切りメス駆動手段)
81 CPU(制御手段)

Claims (6)

  1. ベッド部の前端部に配設され被縫製物を上面に載置する針板と、
    前記針板の下方に配設されたメス土台と、前記メス土台の上面側に配設された複数の糸切りメスと、前記複数の糸切りメスを駆動する糸切りメス駆動手段とを有し、前記複数の糸切りメスの協働により縫い糸を切断する糸切り装置と、
    前記糸切りメス駆動手段を制御する制御手段とを備え、
    前記被縫製物にボタンを縫い付けるボタン付けミシンにおいて、
    前記制御手段によって制御され、針板とメス土台と複数の糸切りメスとを一体に上下方向に移動可能とする上下駆動手段を備えることを特徴とするボタン付けミシン。
  2. 前記上下駆動手段により、針板とメス土台と複数の糸切りメスとが一体に上下方向に移動する際に、前記糸切りメス駆動手段は上下方向に移動しないように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のボタン付けミシン。
  3. 前記制御手段による前記上下駆動手段の制御により、前記針板とメス土台と複数の糸切りメスは、一体に、任意の上下方向位置に移動することを特徴とする請求項1または2に記載のボタン付けミシン。
  4. 前記複数の糸切りメスは、前記針板の下面とメス土台の上面部との間において、ベッド部の前後方向に略直交する左右方向に移動する2つのメス取付板に少なくとも1つずつ取り付けられ、針板の前後方向に略直交する一端部から突出し、
    針板の前記一端部の近傍が針穴となっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のボタン付けミシン。
  5. 糸切り装置は、
    前記2つのメス取付板のベッド部の前後方向に略直交する端面に形成されたラックと、
    前記ラックのそれぞれと噛み合う2つのピニオンと、
    上下方向に設けられ、糸の切断時に前記糸切りメス駆動手段によって駆動されて所定方向に移動する2本の連結軸と、
    略水平面内における一端部に前記2つのピニオンそれぞれが接続され、他端部に前記2本の連結軸のそれぞれが接続された2つのレバーとを備え、
    2本の連結軸は、ベッド部前端部の左右に離れて配設されていることを特徴とする請求項4に記載のボタン付けミシン。
  6. 糸切りメス駆動手段は2つ設けられ、
    糸切り装置は、2つの連結リンクを備え、
    2つの連結リンクの一端部は、前記2つの糸切りメス駆動手段側にそれぞれ連結され、他端部は、前記2本の連結軸のそれぞれに遊嵌し、
    前記上下駆動手段によって針板とメス土台と複数の糸切りメスとが一体に上下方向に移動する際に、前記2つの連結リンクの前記他端部に対して各連結軸が上下方向に摺動することを特徴とする請求項5に記載のボタン付けミシン。
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