JP2004095776A - 半導体装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来での半導体装置では、対向する2つのゲート領域に対して2つのソース領域を形成し、それぞれのソース領域はトレンチにより区切られており、自由キャリア(正孔)の均一な注入及び引き抜きを行うことが出来ないという問題があった。
【解決手段】本発明の半導体装置では、対向する2つのゲート領域9に対して1つのソース領域4を形成している。そして、トレンチ7はそれらのゲート領域9に少なくともその端部重畳するように、且つY軸方向に一定間隔で形成している。そのことで、ソース領域4の両側から自由キャリア(正孔)の注入及び引き抜きを均一な状態で行うことができる。その結果、半導体装置のスイッチング動作、安全動作領域の改善等を行うことができる。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明の半導体装置では、対向する2つのゲート領域9に対して1つのソース領域4を形成している。そして、トレンチ7はそれらのゲート領域9に少なくともその端部重畳するように、且つY軸方向に一定間隔で形成している。そのことで、ソース領域4の両側から自由キャリア(正孔)の注入及び引き抜きを均一な状態で行うことができる。その結果、半導体装置のスイッチング動作、安全動作領域の改善等を行うことができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明の半導体装置は、固定絶縁電極の形状、配置間隔を改善し、ソース領域とゲート領域との距離を短縮し、ソース領域とゲート領域との位置関係を改善することで、スイッチング動作、安全動作領域の改善を行う大電流素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の半導体装置では、ノーマリ・オフ型、制御性に優れ、且つスイッチング時のオン抵抗の低いトランジスタとして、例えば、特開平06−252408号公報に示す構造が知られている。
【0003】
図8および図9を参照して、以下にその構造の一例を示す。図8(A)は素子の斜視図であり、図8(B)は上面図である。図9(A)は図8(B)のX−X線の断面図であり、図9(B)は図8(B)のY−Y線方向の断面図である。
【0004】
先ず、図8(A)に示す如く、従来の半導体装置は、N+型の半導体基板51、N+型の半導体基板51上にはN−型のエピタキシャル層52が形成されている。N−型のエピタキシャル層52には、N+型のソース領域54とトレンチ57とが互いに直交するように形成されている。そして、トレンチ57には、その側壁を被覆するように絶縁膜56、高濃度のP+型多結晶シリコン(ポリシリコン)から成る固定電位絶縁電極55が形成されている。尚、固定電位絶縁電極55とソース領域54とは、例えば、アルミニウム(Al)層61(図9参照)によりオーミックコンタクトし電位が固定されている。また、エピタキシャル層52は主にドレイン領域53として用いられ、エピタキシャル層52のうち、固定電位絶縁電極55に挾まれた領域をチャネル領域58と呼ぶことにする。
【0005】
そして、チャネル領域58には、絶縁膜56を介して隣接する固定電位絶縁電極55が高濃度のP+型ポリシリコンであるため、仕事関数差によって空乏層が形成される。そのことで、チャネル領域58には伝導電子に対するポテンシャル障壁が形成されていて、ソース領域54とドレイン領域53とは初めから電気的に遮断された状態となっている。
【0006】
次に、図8(B)に示す如く、固定電位絶縁電極55はストライプ状をしており、その両端はP型のゲート領域59に接している。そして、ゲート領域59表面にはゲート電極Gが形成されており、ここからドレイン領域53へ自由キャリア(正孔)を供給する。また、固定電位絶縁電極55間に囲まれたチャネル領域58は、ひとつの単位セルを形成している。尚、チャネルの状態によって電流を遮断、もしくは電流量を制御し得るという条件を満たしていれば、単位セルを構成する固定電位絶縁電極55の形状、ソース領域54の形状などは任意である。
【0007】
図9(A)に示す如く、H2をチャネル厚み、L2をチャネル長と呼ぶ。つまり、チャネル厚みH2とは、チャネル領域において対向する絶縁膜56間の間隔であり、チャネル長L2とは、溝の側壁に沿って、ソース領域54の底面から固定電位絶縁電極55の底面までの距離をいう。また、基板51裏面にはAl層60が形成されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来における半導体装置では、ドレイン電極Dに正の高電圧を印加し、ソース電極Sを接地し、ゲート電極Gを接地または負の電圧を印加した状態でOFFの状態を成す。そして、この半導体装置のOFFの状態では、N型のチャネル領域58とP型の固定電位絶縁電極55との仕事関数差によりチャネル領域58が擬似的なP型領域となる。そのことで、ドレイン領域53に正の高電圧が印加され、チャネル領域58が接地状態となることで逆バイアス状態となり、OFFの状態を成す。そして、半導体装置をONの状態にするためには、ゲート電極Gに正の電圧を印加しゲート領域59から自由キャリア(正孔)を注入し、チャネル領域58をN型領域にすると同時にチャネル領域58およびドレイン領域53で伝導度変調を起こす。そして、半導体装置はゲート領域59から注入する自由キャリア(正孔)によりON、OFFを行っているので、ゲート領域59からの自由キャリア(正孔)の注入量により直流信号電流増幅率が左右される。
【0009】
しかしながら、従来の半導体装置では、図9(B)に示す如く、固定電位絶縁電極55を形成するトレンチ57が、Y軸方向に軸部63を有し、その軸部63からX軸方向に櫛歯状に延在している。そして、トレンチ57の軸部63からX軸方向にほぼ等距離の位置にそれぞれソース領域54が形成されている。それぞれのソース領域54は最も近傍に位置するゲート領域59と対となり、上述したように半導体装置のON状態、OFF状態を成す。このとき、従来の半導体装置では、丸印64で示した領域の自由キャリア(正孔)は対となるゲート領域からは遠く、また、他方のゲート領域59とはトレンチ57の軸部63により隔たれている。そのため、丸印64で示した領域では、トレンチ軸部63が存在するために、主として片側のゲート側からしか引き抜かれず、引き抜き効率が悪いという問題があった。また、トレンチ57が軸部63を有することで、丸印62に示した領域のように自由キャリア(正孔)が偏る領域が存在する。そのことで、自由キャリア(正孔)の分布の不均一性が緩和されにくく、安全動作領域が狭くなる、また遮断速度が落ちるという問題があった。
【0010】
更に、従来の半導体装置では、トレンチ57間に位置するチャネル厚みH2が小さいため、1つのソースセルに対する電流密度が高くなり直流信号電流増幅率が低いという問題があった。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上述した各事情に鑑みて成されたものであり、本発明の半導体装置では、ドレイン領域を構成する一導電型の半導体基体の一主面に設けられ、且つ等間隔をなして互いに平行に配置された複数のトレンチと、前記トレンチの内壁には絶縁膜を有し、且つ前記絶縁膜を覆うように前記トレンチ内を充填する逆導電型の多結晶シリコンから成る固定電位絶縁電極と、前記一主表面上の前記トレンチ間に位置し、且つ前記固定電位絶縁電極と同電位に保たれる一導電型のソース領域と、前記半導体基体には前記ソース領域と離間され、且つ各前記絶縁膜と少なくともその一部を隣接するように設けられた複数の逆導電型のゲート領域と、前記半導体基体には前記固定電位絶縁電極間に位置し、且つ少なくとも前記ソース領域の下部に位置するチャネル領域とを具備し、前記複数のゲート領域はその長手方向にほぼ平行に配置され、前記トレンチはそれぞれ独立し前記ゲート領域間に平行に位置し、且つ前記トレンチは前記ゲート領域の長手方向と直交し、少なくとも前記トレンチの両端及びその近傍領域をそれぞれ近傍に位置する前記ゲート領域と隣接するように形成されていることを特徴とする。
【0012】
従って、本発明の半導体装置では、対向する2つのゲート領域に対して1つのソース領域が対応し、ソース領域の両側に位置するゲート領域により自由キャリア(正孔)の注入及び引き抜きを行うことができる。そのことで、ソース領域に対して自由キャリア(正孔)の注入及び引き抜きを均一に分布するように行うことができる。
【0013】
また、本発明の半導体装置では、前記複数のトレンチは、前記ゲート領域の長手方向に1.0〜1.4μmの離間距離を有し配置されることを特徴とする。
【0014】
従って、本発明の半導体装置では、トレンチ間に位置するチャネル厚みを大きくすることができ、1つのソースセル当たりの電流密度を低減することができ、直流信号電流増幅率を増大することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の半導体装置の一実施の形態について、図1〜図6を参照にして詳細に説明する。
【0016】
図1(A)は本発明の半導体装置の構造を示す斜視図であり、図1(B)は本発明の半導体装置の構造を示す上面図である。図1(A)に示す如く、N+型の半導体基板1上にはN−型のエピタキシャル層2が堆積されている。このエピタキシャル層2には、表面から等間隔をなして互いに平行に複数のトレンチ7が形成されている。そして、基板1はドレイン取り出し領域として用いられており、主に、エピタキシャル層2はドレイン領域3として用いられる。また、トレンチ7はエピタキシャル層2表面から側壁がほぼ垂直に掘られ、その内壁には絶縁膜6が形成されている。更に、トレンチ7には、P型不純物が注入された、例えば、多結晶シリコン(ポリシリコン)が堆積されている。そして、詳細は後述するが、トレンチ7内のポリシリコンは、エピタキシャル層2表面で、例えば、アルミニウム(Al)を介してソース領域4と電気的に接続されている。そのことで、トレンチ7内のP型のポリシリコンは、ソース電極Sと同電位からなる固定電位絶縁電極5として用いられる。一方、複数のトレンチ7間に位置するエピタキシャル層2はチャネル領域8として用いられる。尚、特許請求の範囲で記載した半導体基体とは本実施の形態では基板1およびエピタキシャル層2とにより構成する。
【0017】
図1(A)および図1(B)に示す如く、本実施の形態では、ゲート領域9はソース領域4と離間され、且つ絶縁膜6に接するエピタキシャル層2に一定の間隔を置いて複数設けられている。そして、図示の如く、ゲート領域9の長手方向、つまり、Y軸方向に対向する2本のゲート領域9間には、それぞれのゲート領域9から等距離に位置するように1本のソース領域4が形成されている。ソース領域4もY軸方向にゲート領域9とほぼ平行に位置している。一方、固定電位絶縁電極5を形成するトレンチ7は、ソース領域4及びゲート領域9と直交する方向に、つまり、X軸方向に形成されている。そして、トレンチ7の両端はそれぞれゲート領域9とその形成領域の一部を重畳させ、且つ、トレンチ7はY軸方向に一定間隔でゲート領域9間に形成されている。尚、ゲート領域9では、隣のゲート領域9間に形成されたトレンチ7の端部が位置し、それぞれゲート領域9により隔てられている。
【0018】
次に、図2を参照として本発明の半導体装置の断面構造およびその動作について説明する。図2(A)は図1(B)のA−A線方向の断面図であり、図2(B)は図1(B)のB−B線方向の断面図である。
【0019】
図2(A)に示す如く、エピタキシャル層2の表面領域のなかでトレンチ7に囲まれた領域がチャネル領域8であり、矢印H1をチャネル厚み、矢印L1をチャネル長とする。つまり、チャネル厚みH1とは、チャネル領域8において対向するトレンチ7間の間隔であり、チャネル長L1とは、トレンチ7の側壁に沿って、ソース領域4底面から固定電位絶縁電極5の底面までの距離をいう。また、ドレイン取り出し領域として用いるN+型の基板1の裏面には、例えば、Al層10がオーミックコンタクトしており、このAl層10を介してドレイン電極Dが形成されている。一方、エピタキシャル層2表面には絶縁層としてのシリコン酸化膜12が形成されている。そして、このシリコン酸化膜12に設けられたコンタクトホール13を介して、Al層11がソース領域4にオーミックコンタクトしている。また、Al層11はコンタクトホール14を介して、固定電位絶縁電極5にもオーミックコンタクトしている。この構造により、上述の如く、ソース領域4と固定電位絶縁電極5とは同電位に保たれる。尚、チャネル領域8に形成される主電流の導通路により電流を遮断、もしくは電流量を制御し得るため、その条件を満たしていれば単位セルを構成する固定電位絶縁電極5の形状、ソース領域4の形状などは任意である。
【0020】
図2(B)に示す如く、ゲート領域9上を含めエピタキシャル層2表面にはシリコン酸化膜12が堆積されている。そして、ゲート領域9上には、シリコン酸化膜12に設けられたコンタクトホール16を介して、例えば、Alから成るゲート電極Gが形成されている。尚、図中の破線は固定電位絶縁電極5の存在を示している。そして、図示の如く、断面図および表面図における絶縁膜6の角部は角張って描いてあるが、これらは模式図であり、実際には丸みを帯びていてもよい。すなわち、電界集中を抑制するためにこれら角部に丸みを持たせることは、広く一般に採用されていることである。
【0021】
次に、本発明の半導体素子の動作原理を説明する。
【0022】
先ず、半導体素子のOFF状態について説明する。上述したように、半導体素子の電流経路は、ドレイン取り出し領域であるN+型の基板1、N−型のエピタキシャル層2から成るドレイン領域3、エピタキシャル層2の表面領域で複数のトレンチ7間に位置するN−型のチャネル領域8およびN+型のソース領域4とから構成される。つまり、全ての領域がN型領域から構成されており、一見、ドレイン電極Dに正の電圧を印加し、ソース電極Sを接地した状態で動作するとOFF状態を成すことができないようにみられる。
【0023】
しかしながら、上述の如く、ソース領域4及びチャネル領域8から成るN型領域と固定電位絶縁電極5であるP型領域とはAl層11を介して接続され、同電位となっている。そのため、固定電位絶縁電極5周辺のチャネル領域8では、P+型のポリシリコンとN−型のエピタキシャル層2との仕事関数差により、固定電位絶縁電極5を囲むように空乏層が広がる。つまり、固定電位絶縁電極5を形成するトレンチ7間の幅、つまり、チャネル幅Hを調整することで、両側の固定電位絶縁電極5から延びる空乏層によりチャネル領域8は埋め尽くされることとなる。詳細は後述するが、この空乏層で埋め尽くされたチャネル領域8は、擬似的なP型領域となっている。
【0024】
この構造により、N−型のドレイン領域3とN+型のソース領域4とを擬似的なP型領域であるチャネル領域8をもってPN接合分離構造を形成することとなる。つまり、本発明の半導体装置は、チャネル領域8に擬似的なP型領域を形成することで、初めから遮断状態(OFF状態)となっている。また、半導体装置がOFF時ではドレイン電極Dには正の電圧が印加され、ソース電極Sおよびゲート電極Gが接地されている。このとき、擬似的なP型領域であるチャネル領域8とN型領域であるドレイン領域3との境界面からは、逆バイアスが印加されることで紙面下方向に空乏層が形成される。そして、この空乏層の形成状態は半導体装置の耐圧特性を左右する。
【0025】
ここで、図3を参照とし、上述した擬似的なP型領域について以下に説明する。図3(A)はOFF時のチャネル領域8でのエネルギーバンド図を示しており、図3(B)はOFF時のチャネル領域8に形成された空乏層を模式的に表した図である。固定電位絶縁電極5であるP+型のポリシリコン領域とチャネル領域8であるN−型のエピタキシャル層2領域とは絶縁膜6を介して対峙している。そして、両者はエピタキシャル層2表面でAl層11を介して同電位に保たれている。そのことで、トレンチ7周辺部には、両者の仕事関数差により空乏層が形成され、さらに空乏層内にわずかに存在する少数の自由キャリア(正孔)によりP型領域となる。
【0026】
具体的には、Al層11を介してP+型のポリシリコン領域とN−型のエピタキシャル層2領域とを同電位にすると、図3(A)に示す如くエネルギーバンド図が形成される。先ず、P+型のポリシリコン領域において、絶縁膜6界面では価電子帯が負の傾斜により形成されており、自由キャリア(正孔)に対しては絶縁膜6の界面はポテンシャルエネルギーが高いことを示している。つまり、P+型のポリシリコン領域の自由キャリア(正孔)は絶縁膜6界面に存在することができず、絶縁膜6から離れる方向に追いやられる。その結果、P+型のポリシリコン領域の絶縁膜6界面にはイオン化アクセプタから成る負電荷が取り残される状態となる。そして、P+型のポリシリコン領域の絶縁膜6界面にイオン化アクセプタから成る負電荷が存在する。そのことで、N−型のエピタキシャル層2領域では、このイオン化アクセプタから成る負電荷と対となるイオン化ドナーから成る正電荷が必要となる。そのため、チャネル領域8は絶縁膜6界面から空乏層化していくこととなる。
【0027】
しかしながら、チャネル領域8の不純物濃度は1E14(/cm3)程度、厚みは1.0〜1.4μm程度であるため、チャネル領域8を囲むように形成された固定電位絶縁電極5から広がり出した空乏層で完全に占有されることとなる。実際には、チャネル領域8が空乏層化しただけではイオン化アクセプタと釣合うだけの正電荷を確保できないため、チャネル領域8内には少数の自由キャリア(正孔)も存在するようになる。そのことで、図示の如く、P+型のポリシリコン領域内のイオン化アクセプタとN−型のエピタキシャル層2内の自由キャリア(正孔)またはイオン化ドナーとが対となり電界を形成する。その結果、絶縁膜6界面から形成された空乏層はP型領域となり、この空乏層で満たされたチャネル領域8はP型の領域となる。
【0028】
次に、半導体素子のOFF時からON時へと転じる状態について説明する。先ず、ゲート電極Gに接地状態から正の電圧を印加する。このとき、ゲート領域9からは自由キャリア(正孔)が導入されるが、上述の如く、自由キャリア(正孔)はイオン化アクセプタにひかれて絶縁膜6界面に流れ込む。そして、チャネル領域8の絶縁膜6界面に自由キャリア(正孔)が充填されることで、P+型のポリシリコン領域内のイオン化アクセプタと自由キャリア(正孔)のみで対となり電界を形成する。そのことで、チャネル領域8での絶縁膜6と最も遠い領域、つまり、チャネル領域8中央領域から、自由キャリア(電子)が存在するようになり、中性領域が出現する。その結果、チャネル領域8の空乏層が減退し、中央領域からチャネルが開き、ソース領域4からドレイン領域3へ自由キャリア(電子)が移動し、主電流が流れる。
【0029】
つまり、自由キャリア(正孔)は、トレンチ7壁面を通路として瞬時に行き渡り、固定電位絶縁電極5からチャネル領域8へと広がる空乏層は後退し、チャネルが開くのである。更に、ゲート電極Gが所定値以上の電圧が印加されると、ゲート領域9とチャネル領域8ならびにドレイン領域3の形成するPN接合が順バイアスとなる。そして、自由キャリア(正孔)がチャネル領域8ならびにドレイン領域3に直接注入される。その結果、チャネル領域8ならびにドレイン領域3に自由キャリア(正孔)が多く分布することで伝導度変調が起こり、主電流は低いオン抵抗で流れるようになる。
【0030】
最後に、半導体素子のON時からOFF時へと転じる状態について説明する。半導体素子をターン・オフするためには、ゲート電極Gの電位を接地状態(0V)、もしくは負電位にする。すると伝導度変調によりドレイン領域3およびチャネル領域8に大量に存在していた自由キャリア(正孔)は消滅するか、もしくはゲート領域9を通して素子外に排除される。そのことで、再びチャネル領域8は空乏層で満たされ、再び擬似的なP型領域となり、耐圧を維持し、主電流は止まる。
【0031】
そして、本発明の半導体装置では、図1(B)に示す如く、トレンチ7はY軸方向に延在する2本の対向するゲート領域9間に一定の間隔で複数形成されている。そして、その複数のトレンチ7はそれぞれX軸方向に延在し、その両端部及びその近傍をそれぞれゲート領域9と重畳するようにY軸方向に配列されている。つまり、本実施の形態の半導体装置では、従来の構造である図8(B)に示したように、Y軸方向に一定間隔で配置された複数のトレンチ7を一体にするY軸方向に延在する軸部63を省略した構造である。そして、従来のトレンチ57の軸部63が形成されていた領域、言い換えると2本の対向するゲート領域9から中間領域に1本のソース領域4をY軸方向に延在して形成している。
【0032】
そのことで、本発明の半導体装置では、Y軸方向に延在する2本の対向するゲート領域9からほぼ等しい距離のところに共通のソース領域4を1本有することで、以下に説明する効果を得ることができる。
【0033】
第1に、2本の対向するゲート領域9に共通のソース領域4とすることで、ゲート領域9から注入され、引き抜かれる自由キャリア(正孔)を瞬時にバランス良く行うことができる。従来の構造では、2本の対向するゲート領域59に対して2本のソース領域54が形成され、2本のソース領域54間にトレンチ57の軸部63が位置していた。そのため、チャネル領域58内の自由キャリア(正孔)は主として片側のゲート領域59からしか引き抜けず、遮断効率が悪かった。その結果、ターンオフ速度が遅く、とりわけ自由キャリア(正孔)の引き抜きの弱いところに電流集中が生じたため、その領域が大電流により焼け故障してしまっていた。
【0034】
しかしながら、本実施の形態では、2本の対向するゲート領域9に共通のソース領域4とすることで、どちらのゲート領域9からも自由キャリア(正孔)を注入し、引き抜くことが可能である。そのことで、従来の構造の問題点である自由キャリア(正孔)が不均一に存在することが無くなり、逆バイアス安全動作領域(RBASO:Reverse Bias Area of Safety Operating)が広くなる。具体的には、均一に自由キャリア(正孔)を注入し、引き抜くことが可能となることで、図4に示す如く、特に、ドレイン電圧(VCEX)の高電圧領域と単位面積当たりの電流(JC)の高電流領域でも機能し、RBASOを改善することができる。その結果、本実施の形態のように大電流を扱う半導体装置を誘電負荷回路に組み込んで使う場合では、半導体装置をOFF状態とする時に一部の領域への大電流の集中を無くすことができ、大電流の集中による半導体装置の破壊を大幅に抑制することができる。
【0035】
第2に、本実施の形態では、上述したように、2本の対向するゲート領域9に共通のソース領域4を設け、ソース領域4に対して両側から自由キャリア(正孔)を注入し、引き抜いている。更に、ゲート領域9の中心からソース領域4の中心までの距離W1を9.7μm程度と短縮し、且つエピタキシャル層2表面において、ソース領域4の端辺とゲート領域9の端辺との離間距離W2が1〜2μm程度となるように形成されている。従来の構造では、ソース領域54に対してその近傍に位置するゲート領域59により主として片側から自由キャリア(正孔)を注入し、引き抜いていた。そして、ゲート領域59の中心からソース領域54の中心までの距離W3(図8参照)を18.5μm程度有し、エピタキシャル層52表面において、ソース領域54の端辺とゲート領域59の端辺との離間距離W4が13μm程度であった。そのため、ソース領域54とゲート領域59との距離が遠いため主電流の遮断が遅れ、フォール時間(tf)が遅れスイッチング動作に問題があった。
【0036】
しかしながら、本実施の形態では、上述したように、ゲート領域9とソース領域4との距離を短縮し、エピタキシャル層2表面でのソース領域4の端辺とゲート領域9の端辺との離間距離W2を1〜2μm程度している。これは、ゲート領域9及びソース領域4はそれぞれ熱拡散工程を経て形成されるが、この時両者とも深さ方向の拡散に合わせて、横方向へも拡散するためである。そのことで、図5(A)及び(B)に示すように、特に、大電流に対するスイッチング(SW)特性が改善する。例えば、300(A/cm2)では、フォール時間(tf)が約半分程度まで短縮される。これは、自由キャリア(正孔)を瞬時に両側に位置するゲート領域9から均一に引き抜くことができるからである。また、ターンオフ遅延時間に対するスイッチング(SW)特性は、全ての電流値において従来の状態をほぼ維持することができる。また、本実施の形態では、2本の対向するゲート領域9に共通のソース領域4を設けることで、ソース電極S用のAl層11とソースコンタクト孔であるコンタクトホール13とのパターンニング余裕が大きくなる。
【0037】
尚、本実施の形態ではエピタキシャル層2表面でのソース領域4の端辺とゲート領域9の端辺との離間距離W2を1〜2μm程度として説明した。これは、ソース領域とゲート領域とが隣接し、またはその一部の領域が重畳することを防ぐためである。しかし、半導体装置の製造方法の工程において、拡散領域のばらつき、マスク形成のばらつき等の製法上の誤差を多少生じてもソース領域4とゲート領域9とが隣接またはその一部が重畳しなければ、両者の離間距離が1〜2μm以下であっても問題はない。そして、両者の離間距離を1〜2μm以下に配置できる場合には、更に、上述した効果を得ることができる。
【0038】
第3に、本実施の形態では、図1(B)に示すように、対向するゲート領域9に少なくともその端部を重畳させるようにX軸方向にトレンチ7が形成されている。更に、トレンチ7はY軸方向に一定の間隔を有し配置されている。そして、上述の如く、このトレンチ7を介して形成された固定電位絶縁電極5からチャネル領域8へと広がる空乏層により、半導体装置のON動作及びOFF動作を成している。従来の構造では、トレンチ57はY軸方向に0.8μm程度の間隔、つまり、チャネル厚みH2(図9参照)が0.8μm程度有するように配置されていた。しかしながら、本実施の形態では、トレンチ7はY軸方向に1.0〜1.4μm程度の間隔で配置され、つまり、チャネル厚みH1(図2参照)が1.0〜1.4μm程度有するように配置されている。尚、本発明の構造及び従来の構造においても、トレンチの中心間の距離T1(図2参照)、T2(図9参照)は共に等しい。つまり、例えば、トレンチの中心間の距離T1、T2はそれぞれ3.2μm程度とし、トレンチの幅を任意とすることでチャネル厚みH1、H2を調整している。そして、この構造により、以下に説明する効果を得ることができる。
【0039】
図6(A)、(B)はチャネル厚みHと直流信号電流増幅率(hFE)との関係を表した表である。図6(A)では5V/100mAの場合でのチャネル厚みHとhFEとの関係について示し、図6(B)では5V/2Aの場合でのチャネル厚みHとhFEとの関係について示している。但し、チップサイズは2.2mm角である。図示の如く、実験により半導体装置の駆動条件に影響されること無くチャネル厚みH1が大きくなるにつれてhFEが増大している関係が示されている。そして、本実施の形態では、チャネル厚みH1が1.0μm以上においてもhFEが増大していることが示されている。これは、トレンチ7の中心間の距離T1が等しい場合、つまり、等しいチップ面積にソースセルが同じ数存在し、1つのソースセルに等しい電流が流れる場合である。このとき、例えば、ある状態を基準としその状態からチャネル厚みH1が半分になれば、そのソースセルでの電流密度は2倍、つまりキャリア濃度勾配も2倍となる。これはN+型のソース領域4近傍のキャリア濃度もその分高くなっていることを示す。ここでいうキャリアとは主電流を形成する自由キャリア(電子)とゲート領域9から注入した自由キャリア(正孔)のことであるが、両者はほぼ同数存在している。
【0040】
ところが、ソース領域4近傍に存在する自由キャリア(正孔)はソース領域4内に飛び込み消滅してしまう。よって、ソース領域4近傍に分布する自由キャリア(正孔)が多いほどソース領域4に飛び込み消滅する確率も高くなり、それを補うための自由キャリア(正孔)を多く注入する必要が有り、図示の如く、チャネル厚みHが小さい程hFEが小さくなる。
【0041】
一方、チャネル厚みHが大きくなるにつれてhFEが増加することが図6により示されたが、その値には上限がある。つまり、上述したように、本実施の形態では、トレンチ7間に位置するチャネル領域8を固定電位絶縁電極5から広がる空乏層で満たすことで半導体装置のOFF状態を成している。そのため、トレンチ7の中心間の距離T1は、チャネル領域8の両側から広がる空乏層が交わる距離である必要がある。そして、図7に示す如く、チャネル厚みH1が1.4μm以上になると耐圧(VCES)が低下し、所望の耐圧が得られないことが示されている。その結果、本実施の形態では、チャネル厚みH1が1.0〜1.4μm程度有するように配置されている。
【0042】
尚、チャネル厚みH1はその両側から広がる空乏層が交わり、ON状態及びOFF状態を成すことが可能であれば、1.4μm程度以上であっても良い。また、チャネルが充分に遮断できるためのチャネル厚みHはN−型のエピタキシャル層2の不純物濃度によっても異なる。本発明では、例えば、N−型のエピタキシャル層2の不純物濃度が1.0E14/cm3のSiの場合を持って説明したが、他の材料を用いた場合でも同様の効果が得られる。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0043】
【発明の効果】
上述したように、第1に、本発明の半導体装置では、2本の対向するゲート領域に共通のソース領域とすることで、どちらのゲート領域からも均一に自由キャリア(正孔)を注入し、引き抜くことが可能である。そのことで、本発明では、チップ内の一部に自由キャリア(正孔)残存する不均一領域を無くすことができ、特に、高電圧及び高電流時における逆バイアス安全動作領域を向上させることができる。
【0044】
第2に、本発明の半導体装置では、ゲート領域とソース領域との距離を短縮し、エピタキシャル層表面でのソース領域の端辺とゲート領域の端辺との離間距離を1〜2μm程度している。そのことで、本発明では、自由キャリア(正孔)を瞬時に両側に位置するゲート領域から均一に引き抜くことができ、大電流に対するスイッチング特性が改善することができる。
【0045】
第3に、本発明の半導体装置では、トレンチはゲート領域の長手方向に1.0〜1.4μm程度の間隔で配置され、つまり、チャネル厚みが1.0〜1.4μm程度有するように配置されている。そのことで、本発明では、1つのソースセルに対する電流密度を低減することで直流信号電流増幅率も増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体装置を説明するための(A)斜視図、(B)上面図である。
【図2】本発明の半導体装置を説明するための(A)断面図、(B)断面図である。
【図3】本発明の半導体装置を説明するための(A)エネルギーバンド図、(B)OFF時のチャネル領域を説明する図である。
【図4】本発明の半導体装置の逆バイアス安全動作領域を説明する特性図である。
【図5】本発明の半導体装置の(A)フォール時間を説明する特性図、(B)ターンオフ遅延時間を説明する特性図である。
【図6】本発明の半導体装置の直流信号電流増幅率を説明するための(A)特性図、(B)特性図である。
【図7】本発明の半導体装置の耐圧特性とチャネル厚みとの関係を示す特性図である。
【図8】従来の半導体装置を説明するための(A)斜視図、(B)上面図である。
【図9】従来の半導体装置を説明するための(A)断面図、(B)断面図である。
【発明の属する技術分野】
本発明の半導体装置は、固定絶縁電極の形状、配置間隔を改善し、ソース領域とゲート領域との距離を短縮し、ソース領域とゲート領域との位置関係を改善することで、スイッチング動作、安全動作領域の改善を行う大電流素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の半導体装置では、ノーマリ・オフ型、制御性に優れ、且つスイッチング時のオン抵抗の低いトランジスタとして、例えば、特開平06−252408号公報に示す構造が知られている。
【0003】
図8および図9を参照して、以下にその構造の一例を示す。図8(A)は素子の斜視図であり、図8(B)は上面図である。図9(A)は図8(B)のX−X線の断面図であり、図9(B)は図8(B)のY−Y線方向の断面図である。
【0004】
先ず、図8(A)に示す如く、従来の半導体装置は、N+型の半導体基板51、N+型の半導体基板51上にはN−型のエピタキシャル層52が形成されている。N−型のエピタキシャル層52には、N+型のソース領域54とトレンチ57とが互いに直交するように形成されている。そして、トレンチ57には、その側壁を被覆するように絶縁膜56、高濃度のP+型多結晶シリコン(ポリシリコン)から成る固定電位絶縁電極55が形成されている。尚、固定電位絶縁電極55とソース領域54とは、例えば、アルミニウム(Al)層61(図9参照)によりオーミックコンタクトし電位が固定されている。また、エピタキシャル層52は主にドレイン領域53として用いられ、エピタキシャル層52のうち、固定電位絶縁電極55に挾まれた領域をチャネル領域58と呼ぶことにする。
【0005】
そして、チャネル領域58には、絶縁膜56を介して隣接する固定電位絶縁電極55が高濃度のP+型ポリシリコンであるため、仕事関数差によって空乏層が形成される。そのことで、チャネル領域58には伝導電子に対するポテンシャル障壁が形成されていて、ソース領域54とドレイン領域53とは初めから電気的に遮断された状態となっている。
【0006】
次に、図8(B)に示す如く、固定電位絶縁電極55はストライプ状をしており、その両端はP型のゲート領域59に接している。そして、ゲート領域59表面にはゲート電極Gが形成されており、ここからドレイン領域53へ自由キャリア(正孔)を供給する。また、固定電位絶縁電極55間に囲まれたチャネル領域58は、ひとつの単位セルを形成している。尚、チャネルの状態によって電流を遮断、もしくは電流量を制御し得るという条件を満たしていれば、単位セルを構成する固定電位絶縁電極55の形状、ソース領域54の形状などは任意である。
【0007】
図9(A)に示す如く、H2をチャネル厚み、L2をチャネル長と呼ぶ。つまり、チャネル厚みH2とは、チャネル領域において対向する絶縁膜56間の間隔であり、チャネル長L2とは、溝の側壁に沿って、ソース領域54の底面から固定電位絶縁電極55の底面までの距離をいう。また、基板51裏面にはAl層60が形成されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来における半導体装置では、ドレイン電極Dに正の高電圧を印加し、ソース電極Sを接地し、ゲート電極Gを接地または負の電圧を印加した状態でOFFの状態を成す。そして、この半導体装置のOFFの状態では、N型のチャネル領域58とP型の固定電位絶縁電極55との仕事関数差によりチャネル領域58が擬似的なP型領域となる。そのことで、ドレイン領域53に正の高電圧が印加され、チャネル領域58が接地状態となることで逆バイアス状態となり、OFFの状態を成す。そして、半導体装置をONの状態にするためには、ゲート電極Gに正の電圧を印加しゲート領域59から自由キャリア(正孔)を注入し、チャネル領域58をN型領域にすると同時にチャネル領域58およびドレイン領域53で伝導度変調を起こす。そして、半導体装置はゲート領域59から注入する自由キャリア(正孔)によりON、OFFを行っているので、ゲート領域59からの自由キャリア(正孔)の注入量により直流信号電流増幅率が左右される。
【0009】
しかしながら、従来の半導体装置では、図9(B)に示す如く、固定電位絶縁電極55を形成するトレンチ57が、Y軸方向に軸部63を有し、その軸部63からX軸方向に櫛歯状に延在している。そして、トレンチ57の軸部63からX軸方向にほぼ等距離の位置にそれぞれソース領域54が形成されている。それぞれのソース領域54は最も近傍に位置するゲート領域59と対となり、上述したように半導体装置のON状態、OFF状態を成す。このとき、従来の半導体装置では、丸印64で示した領域の自由キャリア(正孔)は対となるゲート領域からは遠く、また、他方のゲート領域59とはトレンチ57の軸部63により隔たれている。そのため、丸印64で示した領域では、トレンチ軸部63が存在するために、主として片側のゲート側からしか引き抜かれず、引き抜き効率が悪いという問題があった。また、トレンチ57が軸部63を有することで、丸印62に示した領域のように自由キャリア(正孔)が偏る領域が存在する。そのことで、自由キャリア(正孔)の分布の不均一性が緩和されにくく、安全動作領域が狭くなる、また遮断速度が落ちるという問題があった。
【0010】
更に、従来の半導体装置では、トレンチ57間に位置するチャネル厚みH2が小さいため、1つのソースセルに対する電流密度が高くなり直流信号電流増幅率が低いという問題があった。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上述した各事情に鑑みて成されたものであり、本発明の半導体装置では、ドレイン領域を構成する一導電型の半導体基体の一主面に設けられ、且つ等間隔をなして互いに平行に配置された複数のトレンチと、前記トレンチの内壁には絶縁膜を有し、且つ前記絶縁膜を覆うように前記トレンチ内を充填する逆導電型の多結晶シリコンから成る固定電位絶縁電極と、前記一主表面上の前記トレンチ間に位置し、且つ前記固定電位絶縁電極と同電位に保たれる一導電型のソース領域と、前記半導体基体には前記ソース領域と離間され、且つ各前記絶縁膜と少なくともその一部を隣接するように設けられた複数の逆導電型のゲート領域と、前記半導体基体には前記固定電位絶縁電極間に位置し、且つ少なくとも前記ソース領域の下部に位置するチャネル領域とを具備し、前記複数のゲート領域はその長手方向にほぼ平行に配置され、前記トレンチはそれぞれ独立し前記ゲート領域間に平行に位置し、且つ前記トレンチは前記ゲート領域の長手方向と直交し、少なくとも前記トレンチの両端及びその近傍領域をそれぞれ近傍に位置する前記ゲート領域と隣接するように形成されていることを特徴とする。
【0012】
従って、本発明の半導体装置では、対向する2つのゲート領域に対して1つのソース領域が対応し、ソース領域の両側に位置するゲート領域により自由キャリア(正孔)の注入及び引き抜きを行うことができる。そのことで、ソース領域に対して自由キャリア(正孔)の注入及び引き抜きを均一に分布するように行うことができる。
【0013】
また、本発明の半導体装置では、前記複数のトレンチは、前記ゲート領域の長手方向に1.0〜1.4μmの離間距離を有し配置されることを特徴とする。
【0014】
従って、本発明の半導体装置では、トレンチ間に位置するチャネル厚みを大きくすることができ、1つのソースセル当たりの電流密度を低減することができ、直流信号電流増幅率を増大することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の半導体装置の一実施の形態について、図1〜図6を参照にして詳細に説明する。
【0016】
図1(A)は本発明の半導体装置の構造を示す斜視図であり、図1(B)は本発明の半導体装置の構造を示す上面図である。図1(A)に示す如く、N+型の半導体基板1上にはN−型のエピタキシャル層2が堆積されている。このエピタキシャル層2には、表面から等間隔をなして互いに平行に複数のトレンチ7が形成されている。そして、基板1はドレイン取り出し領域として用いられており、主に、エピタキシャル層2はドレイン領域3として用いられる。また、トレンチ7はエピタキシャル層2表面から側壁がほぼ垂直に掘られ、その内壁には絶縁膜6が形成されている。更に、トレンチ7には、P型不純物が注入された、例えば、多結晶シリコン(ポリシリコン)が堆積されている。そして、詳細は後述するが、トレンチ7内のポリシリコンは、エピタキシャル層2表面で、例えば、アルミニウム(Al)を介してソース領域4と電気的に接続されている。そのことで、トレンチ7内のP型のポリシリコンは、ソース電極Sと同電位からなる固定電位絶縁電極5として用いられる。一方、複数のトレンチ7間に位置するエピタキシャル層2はチャネル領域8として用いられる。尚、特許請求の範囲で記載した半導体基体とは本実施の形態では基板1およびエピタキシャル層2とにより構成する。
【0017】
図1(A)および図1(B)に示す如く、本実施の形態では、ゲート領域9はソース領域4と離間され、且つ絶縁膜6に接するエピタキシャル層2に一定の間隔を置いて複数設けられている。そして、図示の如く、ゲート領域9の長手方向、つまり、Y軸方向に対向する2本のゲート領域9間には、それぞれのゲート領域9から等距離に位置するように1本のソース領域4が形成されている。ソース領域4もY軸方向にゲート領域9とほぼ平行に位置している。一方、固定電位絶縁電極5を形成するトレンチ7は、ソース領域4及びゲート領域9と直交する方向に、つまり、X軸方向に形成されている。そして、トレンチ7の両端はそれぞれゲート領域9とその形成領域の一部を重畳させ、且つ、トレンチ7はY軸方向に一定間隔でゲート領域9間に形成されている。尚、ゲート領域9では、隣のゲート領域9間に形成されたトレンチ7の端部が位置し、それぞれゲート領域9により隔てられている。
【0018】
次に、図2を参照として本発明の半導体装置の断面構造およびその動作について説明する。図2(A)は図1(B)のA−A線方向の断面図であり、図2(B)は図1(B)のB−B線方向の断面図である。
【0019】
図2(A)に示す如く、エピタキシャル層2の表面領域のなかでトレンチ7に囲まれた領域がチャネル領域8であり、矢印H1をチャネル厚み、矢印L1をチャネル長とする。つまり、チャネル厚みH1とは、チャネル領域8において対向するトレンチ7間の間隔であり、チャネル長L1とは、トレンチ7の側壁に沿って、ソース領域4底面から固定電位絶縁電極5の底面までの距離をいう。また、ドレイン取り出し領域として用いるN+型の基板1の裏面には、例えば、Al層10がオーミックコンタクトしており、このAl層10を介してドレイン電極Dが形成されている。一方、エピタキシャル層2表面には絶縁層としてのシリコン酸化膜12が形成されている。そして、このシリコン酸化膜12に設けられたコンタクトホール13を介して、Al層11がソース領域4にオーミックコンタクトしている。また、Al層11はコンタクトホール14を介して、固定電位絶縁電極5にもオーミックコンタクトしている。この構造により、上述の如く、ソース領域4と固定電位絶縁電極5とは同電位に保たれる。尚、チャネル領域8に形成される主電流の導通路により電流を遮断、もしくは電流量を制御し得るため、その条件を満たしていれば単位セルを構成する固定電位絶縁電極5の形状、ソース領域4の形状などは任意である。
【0020】
図2(B)に示す如く、ゲート領域9上を含めエピタキシャル層2表面にはシリコン酸化膜12が堆積されている。そして、ゲート領域9上には、シリコン酸化膜12に設けられたコンタクトホール16を介して、例えば、Alから成るゲート電極Gが形成されている。尚、図中の破線は固定電位絶縁電極5の存在を示している。そして、図示の如く、断面図および表面図における絶縁膜6の角部は角張って描いてあるが、これらは模式図であり、実際には丸みを帯びていてもよい。すなわち、電界集中を抑制するためにこれら角部に丸みを持たせることは、広く一般に採用されていることである。
【0021】
次に、本発明の半導体素子の動作原理を説明する。
【0022】
先ず、半導体素子のOFF状態について説明する。上述したように、半導体素子の電流経路は、ドレイン取り出し領域であるN+型の基板1、N−型のエピタキシャル層2から成るドレイン領域3、エピタキシャル層2の表面領域で複数のトレンチ7間に位置するN−型のチャネル領域8およびN+型のソース領域4とから構成される。つまり、全ての領域がN型領域から構成されており、一見、ドレイン電極Dに正の電圧を印加し、ソース電極Sを接地した状態で動作するとOFF状態を成すことができないようにみられる。
【0023】
しかしながら、上述の如く、ソース領域4及びチャネル領域8から成るN型領域と固定電位絶縁電極5であるP型領域とはAl層11を介して接続され、同電位となっている。そのため、固定電位絶縁電極5周辺のチャネル領域8では、P+型のポリシリコンとN−型のエピタキシャル層2との仕事関数差により、固定電位絶縁電極5を囲むように空乏層が広がる。つまり、固定電位絶縁電極5を形成するトレンチ7間の幅、つまり、チャネル幅Hを調整することで、両側の固定電位絶縁電極5から延びる空乏層によりチャネル領域8は埋め尽くされることとなる。詳細は後述するが、この空乏層で埋め尽くされたチャネル領域8は、擬似的なP型領域となっている。
【0024】
この構造により、N−型のドレイン領域3とN+型のソース領域4とを擬似的なP型領域であるチャネル領域8をもってPN接合分離構造を形成することとなる。つまり、本発明の半導体装置は、チャネル領域8に擬似的なP型領域を形成することで、初めから遮断状態(OFF状態)となっている。また、半導体装置がOFF時ではドレイン電極Dには正の電圧が印加され、ソース電極Sおよびゲート電極Gが接地されている。このとき、擬似的なP型領域であるチャネル領域8とN型領域であるドレイン領域3との境界面からは、逆バイアスが印加されることで紙面下方向に空乏層が形成される。そして、この空乏層の形成状態は半導体装置の耐圧特性を左右する。
【0025】
ここで、図3を参照とし、上述した擬似的なP型領域について以下に説明する。図3(A)はOFF時のチャネル領域8でのエネルギーバンド図を示しており、図3(B)はOFF時のチャネル領域8に形成された空乏層を模式的に表した図である。固定電位絶縁電極5であるP+型のポリシリコン領域とチャネル領域8であるN−型のエピタキシャル層2領域とは絶縁膜6を介して対峙している。そして、両者はエピタキシャル層2表面でAl層11を介して同電位に保たれている。そのことで、トレンチ7周辺部には、両者の仕事関数差により空乏層が形成され、さらに空乏層内にわずかに存在する少数の自由キャリア(正孔)によりP型領域となる。
【0026】
具体的には、Al層11を介してP+型のポリシリコン領域とN−型のエピタキシャル層2領域とを同電位にすると、図3(A)に示す如くエネルギーバンド図が形成される。先ず、P+型のポリシリコン領域において、絶縁膜6界面では価電子帯が負の傾斜により形成されており、自由キャリア(正孔)に対しては絶縁膜6の界面はポテンシャルエネルギーが高いことを示している。つまり、P+型のポリシリコン領域の自由キャリア(正孔)は絶縁膜6界面に存在することができず、絶縁膜6から離れる方向に追いやられる。その結果、P+型のポリシリコン領域の絶縁膜6界面にはイオン化アクセプタから成る負電荷が取り残される状態となる。そして、P+型のポリシリコン領域の絶縁膜6界面にイオン化アクセプタから成る負電荷が存在する。そのことで、N−型のエピタキシャル層2領域では、このイオン化アクセプタから成る負電荷と対となるイオン化ドナーから成る正電荷が必要となる。そのため、チャネル領域8は絶縁膜6界面から空乏層化していくこととなる。
【0027】
しかしながら、チャネル領域8の不純物濃度は1E14(/cm3)程度、厚みは1.0〜1.4μm程度であるため、チャネル領域8を囲むように形成された固定電位絶縁電極5から広がり出した空乏層で完全に占有されることとなる。実際には、チャネル領域8が空乏層化しただけではイオン化アクセプタと釣合うだけの正電荷を確保できないため、チャネル領域8内には少数の自由キャリア(正孔)も存在するようになる。そのことで、図示の如く、P+型のポリシリコン領域内のイオン化アクセプタとN−型のエピタキシャル層2内の自由キャリア(正孔)またはイオン化ドナーとが対となり電界を形成する。その結果、絶縁膜6界面から形成された空乏層はP型領域となり、この空乏層で満たされたチャネル領域8はP型の領域となる。
【0028】
次に、半導体素子のOFF時からON時へと転じる状態について説明する。先ず、ゲート電極Gに接地状態から正の電圧を印加する。このとき、ゲート領域9からは自由キャリア(正孔)が導入されるが、上述の如く、自由キャリア(正孔)はイオン化アクセプタにひかれて絶縁膜6界面に流れ込む。そして、チャネル領域8の絶縁膜6界面に自由キャリア(正孔)が充填されることで、P+型のポリシリコン領域内のイオン化アクセプタと自由キャリア(正孔)のみで対となり電界を形成する。そのことで、チャネル領域8での絶縁膜6と最も遠い領域、つまり、チャネル領域8中央領域から、自由キャリア(電子)が存在するようになり、中性領域が出現する。その結果、チャネル領域8の空乏層が減退し、中央領域からチャネルが開き、ソース領域4からドレイン領域3へ自由キャリア(電子)が移動し、主電流が流れる。
【0029】
つまり、自由キャリア(正孔)は、トレンチ7壁面を通路として瞬時に行き渡り、固定電位絶縁電極5からチャネル領域8へと広がる空乏層は後退し、チャネルが開くのである。更に、ゲート電極Gが所定値以上の電圧が印加されると、ゲート領域9とチャネル領域8ならびにドレイン領域3の形成するPN接合が順バイアスとなる。そして、自由キャリア(正孔)がチャネル領域8ならびにドレイン領域3に直接注入される。その結果、チャネル領域8ならびにドレイン領域3に自由キャリア(正孔)が多く分布することで伝導度変調が起こり、主電流は低いオン抵抗で流れるようになる。
【0030】
最後に、半導体素子のON時からOFF時へと転じる状態について説明する。半導体素子をターン・オフするためには、ゲート電極Gの電位を接地状態(0V)、もしくは負電位にする。すると伝導度変調によりドレイン領域3およびチャネル領域8に大量に存在していた自由キャリア(正孔)は消滅するか、もしくはゲート領域9を通して素子外に排除される。そのことで、再びチャネル領域8は空乏層で満たされ、再び擬似的なP型領域となり、耐圧を維持し、主電流は止まる。
【0031】
そして、本発明の半導体装置では、図1(B)に示す如く、トレンチ7はY軸方向に延在する2本の対向するゲート領域9間に一定の間隔で複数形成されている。そして、その複数のトレンチ7はそれぞれX軸方向に延在し、その両端部及びその近傍をそれぞれゲート領域9と重畳するようにY軸方向に配列されている。つまり、本実施の形態の半導体装置では、従来の構造である図8(B)に示したように、Y軸方向に一定間隔で配置された複数のトレンチ7を一体にするY軸方向に延在する軸部63を省略した構造である。そして、従来のトレンチ57の軸部63が形成されていた領域、言い換えると2本の対向するゲート領域9から中間領域に1本のソース領域4をY軸方向に延在して形成している。
【0032】
そのことで、本発明の半導体装置では、Y軸方向に延在する2本の対向するゲート領域9からほぼ等しい距離のところに共通のソース領域4を1本有することで、以下に説明する効果を得ることができる。
【0033】
第1に、2本の対向するゲート領域9に共通のソース領域4とすることで、ゲート領域9から注入され、引き抜かれる自由キャリア(正孔)を瞬時にバランス良く行うことができる。従来の構造では、2本の対向するゲート領域59に対して2本のソース領域54が形成され、2本のソース領域54間にトレンチ57の軸部63が位置していた。そのため、チャネル領域58内の自由キャリア(正孔)は主として片側のゲート領域59からしか引き抜けず、遮断効率が悪かった。その結果、ターンオフ速度が遅く、とりわけ自由キャリア(正孔)の引き抜きの弱いところに電流集中が生じたため、その領域が大電流により焼け故障してしまっていた。
【0034】
しかしながら、本実施の形態では、2本の対向するゲート領域9に共通のソース領域4とすることで、どちらのゲート領域9からも自由キャリア(正孔)を注入し、引き抜くことが可能である。そのことで、従来の構造の問題点である自由キャリア(正孔)が不均一に存在することが無くなり、逆バイアス安全動作領域(RBASO:Reverse Bias Area of Safety Operating)が広くなる。具体的には、均一に自由キャリア(正孔)を注入し、引き抜くことが可能となることで、図4に示す如く、特に、ドレイン電圧(VCEX)の高電圧領域と単位面積当たりの電流(JC)の高電流領域でも機能し、RBASOを改善することができる。その結果、本実施の形態のように大電流を扱う半導体装置を誘電負荷回路に組み込んで使う場合では、半導体装置をOFF状態とする時に一部の領域への大電流の集中を無くすことができ、大電流の集中による半導体装置の破壊を大幅に抑制することができる。
【0035】
第2に、本実施の形態では、上述したように、2本の対向するゲート領域9に共通のソース領域4を設け、ソース領域4に対して両側から自由キャリア(正孔)を注入し、引き抜いている。更に、ゲート領域9の中心からソース領域4の中心までの距離W1を9.7μm程度と短縮し、且つエピタキシャル層2表面において、ソース領域4の端辺とゲート領域9の端辺との離間距離W2が1〜2μm程度となるように形成されている。従来の構造では、ソース領域54に対してその近傍に位置するゲート領域59により主として片側から自由キャリア(正孔)を注入し、引き抜いていた。そして、ゲート領域59の中心からソース領域54の中心までの距離W3(図8参照)を18.5μm程度有し、エピタキシャル層52表面において、ソース領域54の端辺とゲート領域59の端辺との離間距離W4が13μm程度であった。そのため、ソース領域54とゲート領域59との距離が遠いため主電流の遮断が遅れ、フォール時間(tf)が遅れスイッチング動作に問題があった。
【0036】
しかしながら、本実施の形態では、上述したように、ゲート領域9とソース領域4との距離を短縮し、エピタキシャル層2表面でのソース領域4の端辺とゲート領域9の端辺との離間距離W2を1〜2μm程度している。これは、ゲート領域9及びソース領域4はそれぞれ熱拡散工程を経て形成されるが、この時両者とも深さ方向の拡散に合わせて、横方向へも拡散するためである。そのことで、図5(A)及び(B)に示すように、特に、大電流に対するスイッチング(SW)特性が改善する。例えば、300(A/cm2)では、フォール時間(tf)が約半分程度まで短縮される。これは、自由キャリア(正孔)を瞬時に両側に位置するゲート領域9から均一に引き抜くことができるからである。また、ターンオフ遅延時間に対するスイッチング(SW)特性は、全ての電流値において従来の状態をほぼ維持することができる。また、本実施の形態では、2本の対向するゲート領域9に共通のソース領域4を設けることで、ソース電極S用のAl層11とソースコンタクト孔であるコンタクトホール13とのパターンニング余裕が大きくなる。
【0037】
尚、本実施の形態ではエピタキシャル層2表面でのソース領域4の端辺とゲート領域9の端辺との離間距離W2を1〜2μm程度として説明した。これは、ソース領域とゲート領域とが隣接し、またはその一部の領域が重畳することを防ぐためである。しかし、半導体装置の製造方法の工程において、拡散領域のばらつき、マスク形成のばらつき等の製法上の誤差を多少生じてもソース領域4とゲート領域9とが隣接またはその一部が重畳しなければ、両者の離間距離が1〜2μm以下であっても問題はない。そして、両者の離間距離を1〜2μm以下に配置できる場合には、更に、上述した効果を得ることができる。
【0038】
第3に、本実施の形態では、図1(B)に示すように、対向するゲート領域9に少なくともその端部を重畳させるようにX軸方向にトレンチ7が形成されている。更に、トレンチ7はY軸方向に一定の間隔を有し配置されている。そして、上述の如く、このトレンチ7を介して形成された固定電位絶縁電極5からチャネル領域8へと広がる空乏層により、半導体装置のON動作及びOFF動作を成している。従来の構造では、トレンチ57はY軸方向に0.8μm程度の間隔、つまり、チャネル厚みH2(図9参照)が0.8μm程度有するように配置されていた。しかしながら、本実施の形態では、トレンチ7はY軸方向に1.0〜1.4μm程度の間隔で配置され、つまり、チャネル厚みH1(図2参照)が1.0〜1.4μm程度有するように配置されている。尚、本発明の構造及び従来の構造においても、トレンチの中心間の距離T1(図2参照)、T2(図9参照)は共に等しい。つまり、例えば、トレンチの中心間の距離T1、T2はそれぞれ3.2μm程度とし、トレンチの幅を任意とすることでチャネル厚みH1、H2を調整している。そして、この構造により、以下に説明する効果を得ることができる。
【0039】
図6(A)、(B)はチャネル厚みHと直流信号電流増幅率(hFE)との関係を表した表である。図6(A)では5V/100mAの場合でのチャネル厚みHとhFEとの関係について示し、図6(B)では5V/2Aの場合でのチャネル厚みHとhFEとの関係について示している。但し、チップサイズは2.2mm角である。図示の如く、実験により半導体装置の駆動条件に影響されること無くチャネル厚みH1が大きくなるにつれてhFEが増大している関係が示されている。そして、本実施の形態では、チャネル厚みH1が1.0μm以上においてもhFEが増大していることが示されている。これは、トレンチ7の中心間の距離T1が等しい場合、つまり、等しいチップ面積にソースセルが同じ数存在し、1つのソースセルに等しい電流が流れる場合である。このとき、例えば、ある状態を基準としその状態からチャネル厚みH1が半分になれば、そのソースセルでの電流密度は2倍、つまりキャリア濃度勾配も2倍となる。これはN+型のソース領域4近傍のキャリア濃度もその分高くなっていることを示す。ここでいうキャリアとは主電流を形成する自由キャリア(電子)とゲート領域9から注入した自由キャリア(正孔)のことであるが、両者はほぼ同数存在している。
【0040】
ところが、ソース領域4近傍に存在する自由キャリア(正孔)はソース領域4内に飛び込み消滅してしまう。よって、ソース領域4近傍に分布する自由キャリア(正孔)が多いほどソース領域4に飛び込み消滅する確率も高くなり、それを補うための自由キャリア(正孔)を多く注入する必要が有り、図示の如く、チャネル厚みHが小さい程hFEが小さくなる。
【0041】
一方、チャネル厚みHが大きくなるにつれてhFEが増加することが図6により示されたが、その値には上限がある。つまり、上述したように、本実施の形態では、トレンチ7間に位置するチャネル領域8を固定電位絶縁電極5から広がる空乏層で満たすことで半導体装置のOFF状態を成している。そのため、トレンチ7の中心間の距離T1は、チャネル領域8の両側から広がる空乏層が交わる距離である必要がある。そして、図7に示す如く、チャネル厚みH1が1.4μm以上になると耐圧(VCES)が低下し、所望の耐圧が得られないことが示されている。その結果、本実施の形態では、チャネル厚みH1が1.0〜1.4μm程度有するように配置されている。
【0042】
尚、チャネル厚みH1はその両側から広がる空乏層が交わり、ON状態及びOFF状態を成すことが可能であれば、1.4μm程度以上であっても良い。また、チャネルが充分に遮断できるためのチャネル厚みHはN−型のエピタキシャル層2の不純物濃度によっても異なる。本発明では、例えば、N−型のエピタキシャル層2の不純物濃度が1.0E14/cm3のSiの場合を持って説明したが、他の材料を用いた場合でも同様の効果が得られる。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0043】
【発明の効果】
上述したように、第1に、本発明の半導体装置では、2本の対向するゲート領域に共通のソース領域とすることで、どちらのゲート領域からも均一に自由キャリア(正孔)を注入し、引き抜くことが可能である。そのことで、本発明では、チップ内の一部に自由キャリア(正孔)残存する不均一領域を無くすことができ、特に、高電圧及び高電流時における逆バイアス安全動作領域を向上させることができる。
【0044】
第2に、本発明の半導体装置では、ゲート領域とソース領域との距離を短縮し、エピタキシャル層表面でのソース領域の端辺とゲート領域の端辺との離間距離を1〜2μm程度している。そのことで、本発明では、自由キャリア(正孔)を瞬時に両側に位置するゲート領域から均一に引き抜くことができ、大電流に対するスイッチング特性が改善することができる。
【0045】
第3に、本発明の半導体装置では、トレンチはゲート領域の長手方向に1.0〜1.4μm程度の間隔で配置され、つまり、チャネル厚みが1.0〜1.4μm程度有するように配置されている。そのことで、本発明では、1つのソースセルに対する電流密度を低減することで直流信号電流増幅率も増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体装置を説明するための(A)斜視図、(B)上面図である。
【図2】本発明の半導体装置を説明するための(A)断面図、(B)断面図である。
【図3】本発明の半導体装置を説明するための(A)エネルギーバンド図、(B)OFF時のチャネル領域を説明する図である。
【図4】本発明の半導体装置の逆バイアス安全動作領域を説明する特性図である。
【図5】本発明の半導体装置の(A)フォール時間を説明する特性図、(B)ターンオフ遅延時間を説明する特性図である。
【図6】本発明の半導体装置の直流信号電流増幅率を説明するための(A)特性図、(B)特性図である。
【図7】本発明の半導体装置の耐圧特性とチャネル厚みとの関係を示す特性図である。
【図8】従来の半導体装置を説明するための(A)斜視図、(B)上面図である。
【図9】従来の半導体装置を説明するための(A)断面図、(B)断面図である。
Claims (6)
- ドレイン領域を構成する一導電型の半導体基体の一主面に設けられ、且つ等間隔をなして互いに平行に配置された複数のトレンチと、
前記トレンチの内壁には絶縁膜を有し、且つ前記絶縁膜を覆うように前記トレンチ内を充填する逆導電型の多結晶シリコンから成る固定電位絶縁電極と、
前記一主表面上の前記トレンチ間に位置し、且つ前記固定電位絶縁電極と同電位に保たれる一導電型のソース領域と、
前記半導体基体には前記ソース領域と離間され、且つ各前記絶縁膜と少なくともその一部を隣接するように設けられた複数の逆導電型のゲート領域と、
前記半導体基体には前記固定電位絶縁電極間に位置し、且つ少なくとも前記ソース領域の下部に位置するチャネル領域とを具備し、
前記複数のゲート領域はその長手方向にほぼ平行に配置され、前記トレンチはそれぞれ独立し前記ゲート領域間に平行に位置し、且つ前記トレンチは前記ゲート領域の長手方向と直交し、少なくとも前記トレンチの両端及びその近傍領域をそれぞれ近傍に位置する前記ゲート領域と隣接するように形成されていることを特徴とする半導体装置。 - 前記ソース領域はその領域を挟むように位置する前記ゲート領域からほぼ等しい距離に1本位置し、且つ前記ソース領域は前記ゲート領域の長手方向とほぼ平行に位置することを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
- 少なくとも前記半導体基体の一主面では、前記ソース領域はその近傍に位置する前記ゲート領域に対して1〜2μmの離間距離を有していることを特徴とする請求項2記載の半導体装置。
- 前記複数のトレンチは、前記ゲート領域の長手方向に1.0〜1.4μmの離間距離を有し配置されることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
- ドレイン領域を構成する一導電型の半導体基体の一主面に設けられ、且つ等間隔をなして互いに平行に配置された複数のトレンチと、
前記トレンチの内壁には絶縁膜を有し、且つ前記絶縁膜を覆うように前記トレンチ内を充填する逆導電型の多結晶シリコンから成る固定電位絶縁電極と、
前記一主表面上の前記トレンチ間に位置し、且つ前記固定電位絶縁電極と同電位に保たれる一導電型のソース領域と、
前記半導体基体には前記ソース領域と離間され、且つ各前記絶縁膜と少なくともその一部を隣接するように設けられた複数の逆導電型のゲート領域と、
前記半導体基体には前記固定電位絶縁電極間に位置し、且つ少なくとも前記ソース領域の下部に位置するチャネル領域とを具備し、
前記チャネル領域はその領域を挟むように隣接して配置された2つの前記固定電位絶縁電極から広がる空乏層が交わり、前記空乏層によりその領域を満たされることでOFF状態を成すことを特徴とする半導体装置。 - 前記複数のトレンチは、前記ゲート領域の長手方向に1.0〜1.4μmの離間距離を有し配置されることを特徴とする請求項5記載の半導体装置。
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JP2002253780A JP2004095776A (ja) | 2002-08-30 | 2002-08-30 | 半導体装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN108538915A (zh) * | 2017-03-06 | 2018-09-14 | 松下知识产权经营株式会社 | 半导体外延晶片、半导体元件以及半导体元件的制造方法 |
-
2002
- 2002-08-30 JP JP2002253780A patent/JP2004095776A/ja active Pending
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