JP2004094193A - スペーサー配設方法、電気光学装置の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のスペーサー配設方法は、液滴吐出装置を用いて電気光学装置用基板上の所定位置にスペーサー125を配設する方法であって、液滴吐出装置により電気光学装置用基板上に液滴を吐出する工程を含み、該液滴として、沸点が150℃〜250℃で、粘度が10mPa・s〜40mPa・sの溶媒にスペーサーを懸濁させたものを用いたことを特徴とする。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はスペーサーの配設方法及び電気光学装置の製造方法に係り、特に、所定の位置にスペーサーを配設する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶装置として、下側基板と上側基板とがそれぞれの基板の周縁部においてシール材を介して所定間隔で貼着され、これら一対の基板間に液晶層が封入された構成のものがある。このような液晶装置においては、各基板間に、これら基板間隔を基板面内で均一にするべく球状のスペーサーが多数配設されている。このようなスペーサーを基板上に配設する方法として、インクジェット装置を用いた方法が知られている。この場合、インクジェット用の溶媒が必要となるが、そのような溶媒として、例えば特許文献1には水とイソプロピルアルコールの混合液を用いた例が開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−72218号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一般的に、インクジェット装置を用いてスペーサーと溶媒の混合液を基板表面に吐出し、スペーサーを基板の所定位置に配設する場合、インクジェットノズルから吐出された溶媒とスペーサーの混合液は球状に近い状態で基板に向かって滴下していき、基板到達時には1つの液滴として基板表面に広がるのが理想的である。しかしながら、上記のような特許文献1に開示されたような溶媒、特に水を中心とする溶媒によると、粘度が低いため、インクジェットノズルからスペーサーと溶媒の混合液を安定して吐出する事ができない場合がある。
【0005】
具体的には、インクジェットノズルから吐出された液滴は、粘度が低いため必ずしも1つの液滴としてまとまらず、複数の液滴に別れて基板表面に滴下していく場合があり、仮に1つの液滴として基板表面に到達しても、基板到達と同時に複数の液滴に別れ飛散する場合もある。このような場合、目的の位置にスペーサーを配設することが困難となってスペーサー配設位置にバラツキが生じ、ひいては液晶装置にセル厚ムラが生じ表示不良を生じる惧れもある。
【0006】
また、滴下した後、溶媒を蒸発させることにより、所定位置にスペーサーが配設されることとなるが、この場合も溶媒の沸点が低いと蒸発スピードが速くなり過ぎ、最終的にスペーサーの配設される場所にバラツキが生じてしまう場合がある。さらに極端な場合には、基板表面で溶媒が沸騰し、スペーサーが基板上で飛び散る等の不具合も生じる場合がある。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、一層正確に所定位置にスペーサーを配設することが可能なスペーサーの配設方法と、そのスペーサー配設方法を用いた電気光学装置の製造方法とを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明のスペーサー配設方法は、液滴吐出装置を用いて電気光学装置用基板上の所定位置にスペーサーを配設する方法であって、前記液滴吐出装置により前記電気光学装置用基板上に液滴を吐出する工程を含み、該液滴は、沸点が150℃〜250℃で、粘度が10mPa・s〜40mPa・sの溶媒にスペーサーを懸濁させたものであることを特徴とする。
【0009】
このような液滴吐出装置を用いたスペーサー配設方法によると、スペーサーを懸濁させる溶媒の沸点を150℃〜250℃としたため、液滴の滴下後、溶媒の蒸発速度が速過ぎず、上述したようなスペーサーの配設位置にバラツキが生じ難くなるとともに、滴下途上の基板表面で溶媒が蒸発する等の不具合も生じ難く、スペーサーを所定位置に正確に配設することが可能となる。また、溶媒の粘度を10mPa・s〜40mPa・sとしたため、1つの液滴が、滴下途上において複数に別れることなく、まとまった球状の状態で滴下され、また基板到達と同時に複数に飛散する不具合も生じ難くなり、スペーサーの定点配置を確実に実現することが可能となる。
【0010】
なお、溶媒の沸点を150℃未満とすると、溶媒の蒸発速度が速くなり過ぎて、スペーサーの配設位置にバラツキが生じる場合がある。一方、溶媒の沸点が250℃を超えるものとすると、溶媒を蒸発させるための加熱温度又は加熱時間をいたずらに増やすこととなり、電気光学装置用基板において変形等の不具合が生じる場合があり、特に電気光学物質を配向させるための配向膜を付与したものにあっては該配向膜において配向乱れが生じる場合がある。なお、溶媒の沸点が180℃未満の場合に、極稀ではあるが液滴が1点に集まらないことがあるため、溶媒の沸点としては好ましくは180℃〜250℃とするのが良い。
【0011】
また、溶媒の粘度を10mPa・s未満とすると、液滴が滴下途上において複数に分散したり、基板との衝突により複数に飛散する等の不具合が生じる場合がある。一方、溶媒の粘度が40mPa・sを超えるものとすると、液滴吐出装置の吐出口から液滴を安定して吐出することが困難となる場合があり、吐出口先端に液滴が溜まってしまう等の不具合が生じる場合もある。なお、溶媒の粘度が20mPa・s未満の場合には、液滴が基板に到達した後、極稀ではあるが基板上で複数に飛散する場合があり、また溶媒の粘度が35mPa・sを超えると、極稀ではあるが液滴が吐出できない場合があるため、溶媒の粘度としては好ましくは20mPa・s〜35mPa・sとするのが良い。
【0012】
本発明のスペーサー配設方法においては、液滴を滴下した後、電気光学装置用基板を60℃〜150℃に加熱し、溶媒を蒸発させるものとすることができる。溶媒として沸点が150℃〜250℃のものを用いたため、加熱温度を60°〜150℃に設定すると、蒸発速度を適当な速さにすることができ、スペーサーの配設位置にバラツキが生じることを防止ないし抑制することができる。加熱温度を60℃よりも低くすると、加熱時間が長くなりすぎる場合があり、加熱時間を150℃よりも高くすると、特に電気光学物質を配向させるための配向膜を付与したものにあっては該配向膜において配向乱れが生じる場合がある。なお、蒸発工程における基板加熱温度は、好ましくは90℃〜140℃とするのが良い。
【0013】
また、液滴を吐出する工程において、該液滴を電気光学装置用基板の非画素領域にのみ滴下するものとすることもできる。本発明のスペーサー配設方法は、液滴吐出装置を用いているため任意の位置にスペーサーを配設することが可能であるが、特に電気光学装置においては画素間の非画素領域(ブラックマトリクス)にスペーサーを配設することが好ましく、この場合、例えばスペーサー周りに生じ得る液晶配向不良の表示に対する影響を小さくすることができる。
【0014】
本発明に用いる溶媒としては、非含水溶媒を用いることができる。水を含むと粘度低下を招く上、沸点が約100℃ということもあって、スペーサーの配設位置にバラツキを生じる場合がある。具体的に本発明に用いることが可能な溶媒として、1−ノナノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1,2−エタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタジオール、フェノール、2−ピロリドン、2−フェノキシエタノール、2,2’−ジヒドロキシジエチルエーテル、2−(2−メトキシエトキシ)エタノールから選択される1の溶媒、若しくは選択される2以上の溶媒を混合したものを例示することができる。
【0015】
次に、本発明の電気光学装置の製造方法は、一対の基板間に電気光学物質を挟持してなる電気光学装置の製造方法であって、一対の基板のうちの少なくとも一方に、上記記載のスペーサー配設方法によりスペーサーを配設する工程を含むことを特徴とする。このような方法により、電気光学装置においてスペーサーを所定位置に配設することが可能となり、特にスペーサーを面内で均一に配設することが可能となるため、基板間隔が面内で不均一となるような不具合発生を防止ないし抑制することができ、それに伴う表示不良も生じ難くなる。
【0016】
なお、本発明に用いることが可能な液滴吐出装置としては、例えば入力される駆動波形に応じて伸縮可能な振動子と、該振動子により液滴を吐出する吐出部とが設けられた液滴吐出ヘッドを備え、該液滴吐出ヘッドを吐出対象物に対して相対的に移動させつつ、前記駆動波形により吐出部を駆動して液滴を吐出させる液滴吐出装置、具体的にはインクジェット装置を例示することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、インクジェット装置を用いることにより、吐出される液滴の吐出位置及び吐出回数を任意に設定可能とし、電気光学装置用基板上の所定位置に所定量のスペーサー分散溶液を吐出可能としている。電気光学装置用基板上にスペーサー分散溶液を吐出した後、スペーサー分散溶液の溶媒を自然蒸発あるいは加熱蒸発させることにより、電気光学装置用基板上の所定位置に所定個数のスペーサーを配設させている。
【0018】
図1及び図2は、本実施形態で用いたインクジェット装置におけるインクジェットノズル300の斜視図及び断面図である。インクジェットノズル300は、図1に示すように、例えばステンレス製のノズルプレート310と振動板320とを備え、両者は仕切部材(リザーバプレート)330を介して接合されている。ノズルプレート310と振動板320との間には、仕切部材330によって複数の空間340と液溜まり350とが形成されている。各空間340と液溜まり350の内部はスペーサー分散溶液が満たされており、各空間340と液溜まり350とは供給口360を介して連通している。さらに、ノズルプレート310には、空間340からスペーサー分散溶液を噴射するためのノズル孔370が設けられている。一方、振動板320には液溜まり350にスペーサー分散溶液を供給するための孔380が形成されている。
【0019】
また、図2に示すように、振動板320の空間340に対向する面と反対側の面上には圧電素子390が接合されている。この圧電素子390は一対の電極400の間に位置し、通電すると圧電素子390が外側に突出するように撓曲し、同時に圧電素子390が接合されている振動板320も一体となって外側に撓曲する。これによって空間340の容積が増大する。したがって、空間340内に増大した容積分に相当するスペーサー分散溶液が液溜まり350から供給口360を介して流入する。次に、圧電素子390への通電を解除すると、圧電素子390と振動板320はともに元の形状に戻る。これにより、空間340も元の容積に戻るため、空間340内部のスペーサー分散溶液の圧力が上昇し、ノズル孔370から電気光学装置用基板に向けてスペーサー分散溶液の液滴410が吐出される。
【0020】
このようなインクジェットノズル300を備えるインクジェット装置によれば、スペーサー分散溶液の滴下位置を制御することができ、本実施形態では電気光学装置用基板の非画素領域のみにスペーサー分散溶液を滴下するものとしている。スペーサー分散溶液を電気光学装置用基板上に滴下した後、該基板を加熱して溶媒を蒸発させ、スペーサーを基板の所定位置に配設することを可能としている。
【0021】
本実施形態の場合、上記スペーサー分散溶液の溶媒として、沸点が150℃〜250℃で、粘度が10〜40mPa・sのものを用いており、具体的には、非水系の溶媒、例えば1−ドデカノール、1,2−エタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタジオール、フェノール、2−ピロリドン、2−フェノキシエタノール、2,2’−ジヒドロキシジエチルエーテル、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、若しくはこれらの混合溶媒を用いている。
【0022】
これら溶媒の蒸発は常温では進み難く、例えば60℃〜150℃程度加熱することで、基板に対して過剰の熱を加えることなく、適当な蒸発速度で蒸発を行うことが可能となる。また、比較的高い粘度を備えるため、ノズル孔370から吐出される液滴410が、滴下途上で複数に分散されることなく1つの球状液滴のまま滴下されることとなり、さらに基板上に着弾した際にも、複数に飛散することも殆どなく、所定の位置に1の液滴を確実に滴下することが可能となる。
【0023】
以上のようなインクジェット装置を用いたスペーサー配設方法は、種々の電気光学装置用のスペーサー配設方法として適用可能であるが、本実施の形態では液晶表示装置用のスペーサーを配設する際に適用した。以下、本発明に係るスペーサー配設方法を適用した液晶表示装置の構成について説明する。
【0024】
図3は、上記スペーサー配設方法を適用した方法にて製造される液晶表示装置の一実施形態を示す断面模式図で、図4はスペーサーの配設位置を示す平面模式図である。なお、本実施形態においては、各図において各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0025】
液晶表示装置200は、対向して配置された上基板101と下基板102との間にはスペーサー125(図4参照)を介して液晶層104が挟持されてなり、該液晶層104をシール材105で封止した液晶パネル100と、この液晶パネル100の背面側(図示下側)に配設されたバックライト(照明装置)130とを備えて構成されている。液晶パネル100の上基板101の内面側(液晶層104側)には、カラーフィルタ層111と、カラーフィルタ層111の各色間に形成された遮光膜110と、これらカラーフィルタ層111及び遮光膜110を覆う平坦化膜112と、共通電極113と、配向膜115とが形成されており、上基板101の外面側(図示上面側)には偏光層119が形成されている。
【0026】
一方、液晶パネル100の下基板102の内面側(液晶層104側)には、基板面内においてマトリクス状に配列された画素電極120と、その画素電極120の上層に形成された配向膜116とが設けられ、また、下基板102の外面側には偏光層129が設けられている。
【0027】
液晶表示装置200においては、上基板101と下基板102との間には上述した通りスペーサー125が設けられているが、図4に示すように、各色のカラーフィルタ層111の間に形成された遮光膜110の形成領域に対応してスペーサー125が位置決めされている。言い換えると、各画素電極120の境界領域、すなわち非画素領域にのみスペーサー125が配設されている。したがって、スペーサー125に基づく表示への不具合発生(例えばスペーサー周りの光抜け等)は殆どないものとなる。なお、液晶表示装置200を製造する際には、一対の基板のうちの一方について電極及び配向膜等を予め形成しておき、その上に上記インクジェット装置を用いてスペーサー分散溶液を滴下し、溶媒を蒸発させた後に、他方の基板との間に液晶を挟持させつつ各基板を封止するものとしている。
【0028】
(実施例)
以下、本発明の実施例について説明する。
[第1実施例]
図1及び図2に示したインクジェットノズル300を備えたインクジェット装置を用いて、スペーサーの配設を行った。
本実施例においてはノズル径を20μmとし、1回の液滴の吐出量を約20pリットルとするとともに、当該ノズル300と基板(下側基板102)との間の距離を800μmとして、表1に示す各溶剤にスペーサーを分散させて吐出したときの、当該ノズル300からの吐出状態、液滴の基板到達後の形状等を調査した。ポリプロピレングリコールは粘度と吐出状態の関係を調査する為に平均分子量を振ったサンプルを用い、スペーサーの配置状態の確認は行っていない。また、吐出後、基板を150℃で3分乾燥を行い、溶剤蒸発後のスペーサーの配置状態について調査した。なお、基板は図3に示した下基板102に係るもので、電極及び配向膜(膜厚500Å)を形成したものであり、用いたスペーサーは球径3.75μmの樹脂製の球状スペーサーである。
【0029】
【表1】
【0030】
表1において、液滴吐出性×は、基板に着弾した後に液滴が飛散する、若しくは液滴が十分に吐出できないもの、また該液滴吐出性△は、基板着弾後、極稀に液滴が飛散したもの、さらに該液滴吐出性○は、基板着弾後の飛散が発生せず安定して吐出ができたものである。一方、スペーサーの配置状態×は、スペーサーを目的位置に集めることができなかったもの、配置状態△は、極稀にスペーサーが目的位置に集まらなかったもの、配置状態○は、スペーサーを目的の1点に集めることができたものを意味している。
【0031】
表1に示すように、粘度が10mPa・s未満の1−ヘプタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノールを溶剤として用いた場合、液滴が基板に到達した後に液滴が飛散し、それに伴いスペーサーも基板上で飛散して、結果的にスペーサーを所定位置に散布できなかった。また、特に粘度の低い1−ヘプタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−ヘプタノールを用いた場合には、滴下途上において液滴が分散して所定位置に滴下できない場合もあった。なお、粘度が10mPa・s以上であっても、20mPa・s未満の溶媒を用いた場合には、基板着弾後、極稀に液滴が飛散する場合があった。
【0032】
また、粘度が40mPa・sを超える1,2−プロパンジオール、ポリプロピレングリコール(平均分子量550,750)を溶剤として用いた場合、液滴がノズルより安定して吐出できず、ノズル先端に溜まってしまう場合があった。なお、粘度が40mPa・s以下のものであっても、35mPa・sを超える溶媒を用いた場合には、極稀に液滴が安定して吐出されない場合があった。
【0033】
一方、沸点が150℃未満の2−メチル−1−ペンタノールを溶剤として用いた場合、溶剤の蒸発速度が速く、全てのスペーサーを所定の位置に集めることができなかった。これは、基板を加熱することにより、溶剤は徐々に蒸発し最終的には1点に集まり蒸発して無くなるが、1つの液滴の中にスペーサーが複数存在すると、基板表面の液滴が小さくなるに従い、スペーサーも液滴の中に含まれた状態で集まってくるものの、溶剤の蒸発速度が速過ぎるために、各スペーサーが1点に集まることができなかったためと考えられる。なお、溶媒の沸点が150以上であっても、180℃未満の場合には、極稀にスペーサーが1点に集まらない場合があった。
【0034】
また、沸点が250℃を超える1−ドデカノールでは、蒸発速度が遅くなり過ぎ、本実施例の過熱条件では十分に溶剤を蒸発させることができなかった。なお、加熱を余剰に行ったところ溶剤を蒸発させることができたが、基板への加熱の影響、特に配向膜の配向性悪化が生じる場合があった。
【0035】
以上の結果から、スペーサーの配設工程においてインクジェット装置を用いる場合、インクジェット用の溶剤としては、粘度が10mPa・s〜40mPa・sで、沸点が150℃〜250℃の場合に、配向膜を含む基板に対してダメージを与えずに、安定した液滴の吐出、並びにスペーサーの定点配置が可能となることが分かり、更に好ましくは、粘度が20mPa・s〜35mPa・sで、沸点が180℃〜250℃の溶媒を用いれば、液滴吐出性を一層安定化することができるとともに、スペーサーの配置の確実性を一層高めることができることが分かった。
【0036】
[第2実施例]
図1及び図2に示したインクジェットノズル300を備えたインクジェット装置を用いて、スペーサーの配設を行った。
本実施例においてはノズル径を20μmとし、1回の液滴の吐出量を約20pリットルとするとともに、当該ノズル300と基板(下側基板102)との間の距離を800μmとして、表1に示す各溶剤にスペーサーを分散させて吐出したときの、当該ノズル300からの吐出状態、液滴の基板到達後の形状等を調査した。ポリプロピレングリコールは粘度と吐出状態の関係を調査する為に平均分子量を振ったサンプルを用い、スペーサーの配置状態の確認は行っていない。また、吐出後、基板を60℃で3分乾燥を行い、溶剤蒸発後のスペーサーの配置状態について調査した。なお、基板は図3に示した下基板102に係るもので、電極及び配向膜(膜厚500Å)を形成したものであり、用いたスペーサーは球径6.0μmの樹脂製の球状スペーサーである。
【0037】
【表2】
【0038】
なお、表2において、液滴吐出性及びスペーサーの配置状態に関する結果(×、△、○)は、表1と同じ内容を意味するものである。
【0039】
表2に示すように、粘度が10mPa・s未満の1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノールを溶剤として用いた場合、液滴が基板に到達した後に液滴が飛散し、それに伴いスペーサーも基板上で飛散して、結果的にスペーサーを所定位置に散布できなかった。また、特に粘度の低い1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−ヘプタノールを用いた場合には、滴下途上において液滴が分散して所定位置に滴下できない場合もあった。なお、粘度が10mPa・s以上であっても、20mPa・s未満の溶媒を用いた場合には、基板着弾後、極稀に液滴が飛散する場合があった。
【0040】
また、粘度が40mPa・sを超える1,2−プロパンジオール、ポリプロピレングリコール(平均分子量550,750)を溶剤として用いた場合、液滴がノズルより安定して吐出できず、ノズル先端に溜まってしまう場合があった。なお、粘度が40mPa・s以下のものであっても、35mPa・sを超える溶媒を用いた場合には、極稀に液滴が安定して吐出されない場合があった。
【0041】
一方、沸点が150℃未満の2−メチル−1−ペンタノールを溶剤として用いた場合であっても、加熱温度が60℃と低いため複数のスペーサーを1点に集めることが可能となったが、この場合、粘度が低いため液滴の飛散等が生じ、スペーサーを所定位置に配置させることができない場合があった。なお、沸点が118℃の1−ブタノールを用いた場合は、加熱温度が60℃と低いにも拘らず、蒸発速度が速過ぎてスペーサーを1点に集めることができなかった。また、溶媒の沸点が150以上であっても、180℃未満の場合には、極稀にスペーサーが1点に集まらない場合があった。
【0042】
また、沸点が250℃を超える1−ドデカノールでは、蒸発速度が遅くなり過ぎ、本実施例の過熱条件では十分に溶剤を蒸発させることができなかった。なお、加熱を余剰に行ったところ溶剤を蒸発させることができたが、基板への加熱の影響、特に配向膜の配向性悪化が生じる場合があった。
【0043】
以上の結果から、スペーサーの配設工程においてインクジェット装置を用いる場合、インクジェット用の溶剤としては、粘度が10mPa・s〜40mPa・sで、沸点が150℃〜250℃の場合に、配向膜を含む基板に対してダメージを与えずに、安定した液滴の吐出、並びにスペーサーの定点配置が可能となることが分かり、更に好ましくは、粘度が20mPa・s〜35mPa・sで、沸点が180℃〜250℃の溶媒を用いれば、液滴吐出性を一層安定化することができるとともに、スペーサーの配置の確実性を一層高めることができることが分かった。
【0044】
[第3実施例]
図1及び図2に示したインクジェットノズル300を備えたインクジェット装置を用いて、スペーサーの配設を行った。
本実施例においてはノズル径を12μmとし、1回の液滴の吐出量を約4pリットルとするとともに、当該ノズル300と基板(下側基板102)との間の距離を800μmとして、表1に示す各溶剤にスペーサーを分散させて吐出したときの、当該ノズル300からの吐出状態、液滴の基板到達後の形状等を調査した。また、吐出後、基板を150℃で3分乾燥を行い、溶剤蒸発後のスペーサーの配置状態について調査した。ポリプロピレングリコールは粘度と吐出状態の関係を調査する為に平均分子量を振ったサンプルを用い、スペーサーの配置状態の確認は行っていない。なお、基板は図3に示した下基板102に係るもので、電極及び配向膜(膜厚500Å)を形成したものであり、用いたスペーサーは球径3.75μmの樹脂製の球状スペーサーである。
【0045】
【表3】
【0046】
表3において、液滴吐出性及びスペーサーの配置状態に関する結果(×、△、○)は、表1と同じ内容を意味するものである。
【0047】
表3に示すように、粘度が10mPa・s未満の1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノールを溶剤として用いた場合、液滴が基板に到達した後に液滴が飛散し、それに伴いスペーサーも基板上で飛散して、結果的にスペーサーを所定位置に散布できなかった。また、特に粘度の低い1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−ヘプタノールを用いた場合には、滴下途上において液滴が分散して所定位置に滴下できない場合もあった。なお、粘度が10mPa・s以上であっても、20mPa・s未満の溶媒を用いた場合には、基板着弾後、極稀に液滴が飛散する場合があった。
【0048】
また、粘度が40mPa・sを超える1,2−プロパンジオール、ポリプロピレングリコール(平均分子量550,750)を溶剤として用いた場合、液滴がノズルより安定して吐出できず、ノズル先端に溜まってしまう場合があった。なお、粘度が40mPa・s以下のものであっても、35mPa・sを超える溶媒を用いた場合には、極稀に液滴が安定して吐出されない場合があった。
【0049】
一方、沸点が150℃未満の2−メチル−1−ペンタノールを溶剤として用いた場合、溶剤の蒸発速度が速く、全てのスペーサーを所定の位置に集めることができなかった。また、沸点が250℃を超える1−ドデカノールでは、蒸発速度が遅くなり過ぎ、本実施例の過熱条件では十分に溶剤を蒸発させることができなかった。なお、加熱を余剰に行ったところ溶剤を蒸発させることができたが、基板への加熱の影響、特に配向膜の配向性悪化が生じる場合があった。また、溶媒の沸点が150以上であっても、180℃未満の場合には、極稀にスペーサーが1点に集まらない場合があった。
【0050】
以上の結果から、スペーサーの配設工程においてインクジェット装置を用いる場合、ノズル径及び吐出量に拘らず、インクジェット用の溶剤としては粘度が10mPa・s〜40mPa・sで、沸点が150℃〜250℃のものを用いることが好ましく、配向膜を含む基板に対してダメージを与えずに、安定した液滴の吐出、並びにスペーサーの定点配置が可能となることが分かり、更に好ましくは、粘度が20mPa・s〜35mPa・sで、沸点が180℃〜250℃の溶媒を用いれば、液滴吐出性を一層安定化することができるとともに、スペーサーの配置の確実性を一層高めることができることが分かった。なお、ノズルと基板との距離は、800μmである必要はなく、500μm〜2mmの間であれば良い。また、使用するスペーサーの径は特に限定されるものではないが、ノズル径の1/4〜1/3程度であることが好ましい。
【0051】
[第4実施例]
第1実施例と同様の条件で、インクジェットノズル300を備えるインクジェット装置により、溶剤として表4に示すように2,2’−ジヒドロキシジエチルエーテル(粘度30.0mPa・s、沸点245℃)、3,5,5−トリメリチル−1−ヘキサノール(粘度11.1mPa・s、沸点194℃)を用いたスペーサー分散溶液を基板上に滴下した。その後、表4に示す各加熱温度で3分間加熱を行った後のスペーサーの配置状態、ならびに基板上の配向膜の配向状態について解析した。
【0052】
【表4】
【0053】
基板の加熱温度を60℃、150℃とした場合、スペーサーを所定位置に配設することが可能となり、また基板上の配向膜において配向不良が生じることもなかった。一方、基板の加熱温度を50℃とした場合には、溶剤の蒸発速度が遅過ぎて、粘度が11.1mPa・sの3,5,5−トリメリチル−1−ヘキサノールを用いた場合には、50℃の加熱により更に粘度が低下し、溶剤が蒸発する以上に溶剤が基板上に広がり、隣接する滴下液と接触してしまいスペーサーの配置位置にズレが生じる場合があった。また、基板の加熱温度を160℃とした場合には、配向膜の配向に乱れが生じる場合があった。以上のことから、スペーサー分散溶液滴下後の基板加熱温度は、60〜150℃程度が好ましいことが分かる。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、スペーサーを電気光学装置用基板に配設する方法において液滴吐出装置を用い、スペーサーを分散させるための溶媒として沸点が150℃〜250℃で、粘度が10mPa・s〜40mPa・sのものを用いたため、スペーサーを所定位置に正確に配設することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、インクジェットノズルの一例を示す概略斜視図である。
【図2】図2は、図1のインクジェットノズルについての概略断面図である。
【図3】図3は、本発明に係るスペーサー配設方法を適用した方法にて製造される液晶表示装置の一実施形態を示す断面模式図である。
【図4】図4は、図3の液晶表示装置においてスペーサーの配設位置を示す平面模式図である。
【符号の説明】
110 遮光膜(非画素領域、非表示領域)
111 カラーフィルタ層
125 スペーサー
200 液晶表示装置
300 インクジェットノズル
370 ノズル孔
410 液滴
Claims (7)
- 液滴吐出装置を用いて電気光学装置用基板上の所定位置にスペーサーを配設する方法であって、前記液滴吐出装置により前記電気光学装置用基板上に液滴を吐出する工程を含み、該液滴は、沸点が150℃〜250℃で、粘度が10mPa・s〜40mPa・sの溶媒にスペーサーを懸濁させたものであることを特徴とするスペーサー配設方法。
- 液滴吐出装置を用いて電気光学装置用基板上の所定位置にスペーサーを配設する方法であって、前記液滴吐出装置により前記電気光学装置用基板上に液滴を吐出する工程を含み、該液滴は、沸点が180℃〜250℃で、粘度が20mPa・s〜35mPa・sの溶媒にスペーサーを懸濁させたものであることを特徴とするスペーサー配設方法。
- 前記液滴を滴下した後、前記電気光学装置用基板を60℃〜150℃に加熱し、前記溶媒を蒸発させる工程を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のスペーサー配設方法。
- 前記液滴を吐出する工程において、前記液滴を前記電気光学装置用基板の非画素領域にのみ滴下することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のスペーサー配設方法。
- 前記溶媒として、非含水溶媒を用いることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のスペーサー配設方法。
- 前記溶媒として、1−ノナノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1,2−エタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタジオール、フェノール、2−ピロリドン、2−フェノキシエタノール、2,2’−ジヒドロキシジエチルエーテル、2−(2−メトキシエトキシ)エタノールから選択される1の溶媒、若しくは選択される2以上の溶媒を混合したものを用いることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のスペーサー配設方法。
- 一対の基板間に電気光学物質を挟持してなる電気光学装置の製造方法であって、前記基板の少なくとも一方に、請求項1ないし6のいずれかの方法によりスペーサーを配設する工程を含むことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
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