JP2004081679A - ラケットフレーム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】フレーム本体2と該フレーム本体2の左右枠部を連結するヨーク10とが別個に形成されるラケットフレーム1であって、上記ヨーク10は複数の部材からなり、該複数の部材同士を機械的結合及び接着剤により結合して上記ヨーク10を形成すると共に、上記ヨーク10と上記フレーム本体2とを機械的結合及び接着剤により結合している
【選択図】 図2
Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、ラケットフレームに関し、特に硬式テニス用のラケットフレームとして用いられ、ヨークの構成を改良することにより振動減衰性を高めるものである。
【0002】
【従来の技術】
近年,ラケットフレームは、軽量性,高剛性,高強度,耐久性等の性能が要求されており、その構成材料は繊維強化樹脂(以下、FRPと称す)が主流となっている。通常、ラケットフレームは炭素繊維のような高強度,高弾性率の繊維で強化された熱硬化性樹脂から成形されている。
この熱硬化性樹脂をマトリクス樹脂とする繊維強化樹脂は剛性が高く優れたものであるが、衝撃を受けた時に振動が発生しやすく、プレーヤーがテニスエルボーになりやすい問題がある。
【0003】
そのため、エポキシ樹脂からなる熱硬化性樹脂をマトリクス樹脂としたものにおいて、振動減衰性を良くするため,アラミド繊維や超高分子量ポリエステル繊維等の有機繊維を使用する場合もあるが、振動減衰率は0.6以下で振動減衰率は余り高くならず,剛性,強度が小さいため,有機繊維のみの補強では剛性の点で問題がある。
【0004】
そのため、近年、振動減衰性に優れた熱可塑性樹脂をマトリクス樹脂とし、連続繊維にて強化を施した繊維強化熱可塑性樹脂製のラケットフレームが提供されている。具体的には、ポリアミド樹脂をマトリクス樹脂とし、連続繊維又は短繊維を強化繊維としており、製法は以下の3種類に分類される。この繊維強化熱可塑性樹脂からなるラケットフレームの振動減衰率は0.9以上となっている。
(1)短繊維を含むポリアミド樹脂の射出成形。(振動減衰率1.9%)
(2)マトリクスとなる材料の繊維と強化繊維を繊維形状のまま積層し,高温で内圧をかけ,マトリクス樹脂を溶融して成形。(振動減衰率0.92%)
(3)金型内に強化繊維を予め配置し,ポリアミド樹脂モノマーの反応射出成型(RIM)。(振動減衰率1.1%)
上記繊維強化熱可塑性樹脂からなるラケットフレームは熱可塑性樹脂の持つ靭性の高さを反映して,従来の熱硬化性樹脂製ラケットでは達しなかった耐衝撃性、振動減衰性などの特性が得られている。
【0005】
しかしながら、一般に熱可塑性樹脂は熱硬化性樹脂と比較して、弾性率・強度の環境依存性が大きく、ラケットフレームの使用環境により、剛性等の特性が変化しやすいという欠点がある。
よって、マトリクス樹脂を熱可塑性樹脂とした場合、熱硬化性樹脂とした場合のそれぞれの問題を解決するために、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを組み合わせたラケットフレームも提案されている。
例えば、特開平6−63183号では、スロート部からグリップ部にかけた部分を熱可塑性樹脂マトリクスで成形し、打球面を囲むガット張架部(フェイス部)を熱硬化性樹脂マトリクスから成形している。
また、特開2000−70415号では、部分的にRIMナイロンを使用しており、予めカーボン繊維/RIMナイロンによるヨークを形成し、その後、フレーム本体の金型に配置し、未硬化のカーボン繊維/エポキシ樹脂プリプレグからなる積層体と一体成形するものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記した特開平6−63183号のラケットフレームでは、フレーム本体の半分を熱可塑性樹脂マトリクスで形成されるため、使用環境による影響をうけやすいばかりでなく、ラケットの振動モードが考慮されておらず、有効な振動減衰効果が得られないという問題がある。
また、後記した特開2000−70415号のラケットフレームでは、ストリングテンション及び打球時の荷重がヨークとフレーム本体との結合部を直撃するため、一体成形による接着を非常に強固にする必要があり、実際には、接合部分でクラックが発生するという問題が生じる。また、接合部分の界面に剪断応力が発生するが、その部分によりフレーム振動を抑制することは困難であった。
【0007】
ラケットフレームでは、振動減衰性を高めることが要望されているのに加えて、スピンをかけるといったプレースタイルに対応するため、ラケットの操作性が重要視され、ますます軽量化(慣性モーメントの低減)が望まれるようになってきている。
また、打球面の幅広い部分を打点として、スピンをかけることとなり、スイートエリアの拡大も望まれている。
さらに、競技者向けには、打球面の安定性が要求され、いわゆる面内方向の剛性が重要な性能であることが判明している。
このように、ラケットフレームは、軽量で操作性が良く、かつ、高剛性・高強度で高反発、高い面安定性を有しながら、振動減衰性の良いことが要望されている。
【0008】
本発明は上記した要望に鑑みてなされたもので、軽量で、剛性が安定して高く、適度な振動減衰性を持つと共に、振動減衰性の制御が可能なラケットフレームを提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、フレーム本体と該フレーム本体の左右枠部を連結する別材のヨークとから構成されるラケットフレームにおいて、
上記ヨークは複数の分割部材からなり、該複数の分割部材同士を機械的結合手段又は/及び接着剤により結合して上記ヨークを形成すると共に、上記ヨークと上記フレーム本体とを機械的結合手段又は/及び接着剤により結合していることを特徴とするラケットフレームを提供している。
【0010】
従来、通常のFRPからなるラケットフレームでは、ヨークとフレーム本体との結合部は、フレーム本体の成形時に一体的に成形されており、ヨークを成形している樹脂とフレーム本体との樹脂とが溶融して強固に一体化されている。そのため、ヨークとフレーム本体との接合面(境界)にはラケットフレーム変形時に応力が集中される構成とはなっていない。
これに対して、本発明では、フレーム本体とヨークとを金型内で一体的成形せずに、別体として成形し、後付けで機械的結合手段あるいは/および接着剤により連結している。
そのため、フレーム本体とヨークとの結合力を確保できると共に、結合されたフレーム本体とヨークとの接合面は、一体化させていないため、ラケットフレームの変形時に発生する剪断荷重が分散されずに上記接合面に集中して負荷され、それにより、フレーム全体に発生する振動は上記接合部で吸収され、グリップに伝達する振動は抑制されることとなる。
【0011】
特に、フレーム本体にヨークを結合する部分は、面外方向の1次振動や2次振動においてフレームが大きく変形する部位(所謂、振動の腹となる部位)であるため、この部位で振動を吸収することにより、フレーム全体に発生する振動を効果的に抑制でき、振動減衰性の高いラケットフレームとすることができる。
【0012】
さらに、ヨーク自体を複数の分割部材から形成して、この分割部材同士の接合面にも剪断荷重を集中させることで、ラケットフレーム全体に発生する振動をより効果的に抑制することができ、さらに振動減衰性の高いラケットフレームとすることができる。
【0013】
上記ヨークを形成する複数の分割部材は、厚さ方向あるいは幅方向で分割している。
ヨークを幅方向に分割する場合には、打球面側の内周部を構成する部材を剛性を有する材料により形成する一方、外周部を構成する部材を弾性を有する材料により形成すると、ヨークの強度を維持しつつ、打球時にガットを撓みやすくして、反発性を向上することができる。
【0014】
上記厚さ方向に分割する場合は、フレーム本体の左右スロート部とガット張架部との連続点にフレーム本体の厚さ方向の前後両側より被せる連結部をヨーク本体部の両側に突設し、これら連結部をフレーム本体の前後面に嵌合させ、かつ、この連結部とフレーム本体との間に凹凸部を設けて機械的に結合している。また、両端の連結部の間のヨーク本体部は互いに凹凸嵌合させて1つの部材となるように結合している。この凹凸嵌合による結合部では接合面の間に接着剤を介在させて接着も行ってもよい。
【0015】
また、フレーム本体とヨークとの接合面積は少なくとも5cm2以上30cm2以下としていることが好ましい。
接合面積が5cm2より小さいと、振動減衰性を効果的に高めることができないためであり、30cm2より大きいと、重量増となり操作性が低下するためである。
また、ヨークを形成する分割部材同士の接合面積は10cm2以上40cm2以下とすることが好ましい。
上記した接合面積を変えることにより振動減衰性の制御が可能となり、打球感の好みに応じて振動減衰率を適宜に設定することができる。
【0016】
上記フレーム本体とヨークおよびヨークの分割部材同士を結合する機械的結合手段とは、粘着性を有する材料や化学的結合力を介せずに結合する手段であり、結合させる物同士の形状等の違いや変化の組み合わせにより結合させる手段である。具体的には、凹凸嵌合、ネジ止め、はめ合わせ、噛み合わせ、引っかけ係止、ボルト・ナット、バネ等が挙げられ、凹凸嵌合、ネジ止め等が好適に用いられる。 この機械的結合力は、当然、ストリング力を保持でき、さらにボールの衝撃力に耐えうることが必要である。
具体的には、フレーム本体の内側とヨークの接合面のいずれか一方に凸部又は凹部を設ける一方、他方に凸部又は凹部に嵌合する凹部又は凸部を設け、これらを凹凸嵌合により結合している。
其の際、フレーム本体に凸部、ヨークに凹部を設けると、フレーム本体に対するヨークの拘束が小さくなり、容易に嵌合することができる。
【0017】
上記フレーム本体は繊維強化樹脂から一体成形したパイプからなり、打球面を囲むガット張架部、スロート部、シャフト部およびグリップ部が連続して形成している。このように、フレーム本体を1部品から形成することにより、フレーム本体とヨークとの結合部の接合面、ヨークを形成する分割材同士の接合面に剪断荷重を集中させることができる。
【0018】
フレーム本体は、軽量化、剛性および強度の点から、連続繊維を強化繊維とすることが好ましい。マトリクス樹脂は熱硬化性樹脂として強度、剛性を高めても良いし、熱可塑性樹脂として振動減衰性をより高めてもよい。すなわち、振動減衰機能をフレーム本体とヨークとの接合面、ヨークを形成する部材同士の接合面に持たせることにより、フレーム本体のFRPは、ラケットフレームの主たる機能に合わせて、任意に選択される。
【0019】
上記ヨークを形成する複数の部材は、繊維強化樹脂、樹脂単体、金属単体からなり、同種又は異種の上記部材を結合してヨークを形成している。
上記金属としてはアルミ、チタン、マグネシウム等の軽量金属又はそれぞれの金属を主成分とする合金が用いられる。高振動減衰効果を考えると、より好ましくは、繊維強化熱可塑性樹脂である。マトリクス樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂やポリアミドとABSのアロイ等が好適に用いられる。
【0020】
上記ヨークの製法は、
カーボン繊維等の短繊維で強化した状態で射出成形する製法、
ポリアミド繊維とカーボン繊維のコミングルドヤーンをブレイド(組紐)に織りし、該強化繊維にポリアミドを加熱溶融して成形する方法、
発泡エポキシにナイロンチューブを被覆し、さらにカーボンブレイドを積層したものにRIMナイロンモノマーを注入して成るRIMナイロン成形する方法等挙げられる。
【0021】
上記ヨークを形成する複数の分割部材同士の接合面又は/及び上記フレーム本体と上記ヨークとの接合面に、振動吸収性に優れた接着剤又は/及び、制振フィルムもしくは制振シートを介在させてもよい。
【0022】
即ち、フレーム本体とヨークとの結合、ヨークを形成する部材同士の結合に関しては、機械的結合に加えて、ヨークおよびフレーム本体よりも弾性率が小さい接着剤を併用してもよく、その場合には接着剤による接着力効果がある。
上記接着剤を介在させても、その部分に剪断応力が集中させることができ、かつ、接着剤を選定することでフレーム全体の振動減衰性を調整することが可能となる。
また、フレーム本体とヨークとの接合面、ヨークを形成する部材同士の接合面の少なくとも一部に高減衰性材料(フィルム・シート・制振塗料)を介在させてもよく、この制振材を選定することで減衰性能を容易に調整することができる。
これら減衰材は単体で使用しても良いし、接着剤と併用しても良い。
上記接着剤、制振材をフレーム本体とヨークの接合面、ヨークを形成する部材同士の接合面に介在させると、不快な音が発生するのを防止できる効果がある。
【0023】
上記制振フィルムとしては、シーシーアイ社のダイポルギーフィルムが好適に用いられる。
上記接着剤としては、可撓性の高いものが好ましく、エポキシ系の他、ウレタン系等の接着剤があり、具体例を以下に列挙する。
・シアノアクリレートとエラストマーをベースにした高剥離強度耐衝撃用接着剤。例えば、スリーボンド社製 1731・1733。
・ゴム微粒子をエポキシ樹脂に均一分散させることで、安定した強靱性がある常温硬化型二液性エポキシ樹脂 高剪断接着力タイプとして、例えば、スリーボンド社の2082C。
・シリル基含有特殊ポリマーを主成分とし、空気中の微量水分と反応して硬化する一液湿気硬化型弾性接着剤。例えば、スリーボンド社製の1530。
・ウレタン系接着剤「エスプレン」
・チバガイギー社「Redux 609」 「AW106/HV953U」「AW136A/B」
・LOCTITE社「E−214」
・スリーエム社「DP−460」 「9323B/A」
【0024】
本発明のラケットフレームに用いられる樹脂としては、上述したように、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が挙げられるが、具体的には、熱硬化性樹脂としては、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ユリア系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ケイ素樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、AS樹脂、メタクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0025】
また、繊維強化樹脂に用いられる強化繊維としては、一般に高性能強化繊維として用いられる繊維が使用できる。例えば、カーボン繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維、芳香族ポリエステル繊維、超高分子ポリエチレン繊維等が挙げられる。また金属繊維を用いてもよい。軽量で高強度であることからカーボン繊維が好ましい。これらの強化繊維は、長繊維、短繊維の何れであっても良く、これらの繊維を2種以上混合して用いても構わない。強化繊維の形状や配列については限定されず、例えば、単一方向、ランダム方向、シート状、マット状、織物(クロス)状、組み紐状などいずれの形状・配列でも使用可能である。
【0026】
なお、フレーム本体は、プリプレグの積層体からなるものに限定されず、マンドレルにフィラメントワインデイングで強化繊維を巻き付けてレイアップを形成しておき、これを金型内に配置してリムナイロン等の熱可塑性樹脂を充填して形成したフレーム本体とすることもできる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図4は本発明の第1実施形態に係るラケットフレーム1を示す。
ラケットフレーム1は、各々別個に形成されたフレーム本体2とヨーク10とから構成される。フレーム本体2は、打球面Fを囲むガット張架部3、スロート部4、シャフト部5、グリップ部6を連続して構成している。
【0028】
ヨーク10は、ヨーク10の厚み方向に2つに分割された分割部材(以下、分割ヨークと称する)10A、10Bとからなる。分割ヨーク10Aは、打球面Fの下端開口を閉鎖するヨーク本体部10A−1と、該ヨーク本体部10A−1のの両端に設けられる連結部10A−2、10A−3を備えている。同様に分割ヨーク10Bもヨーク本体部10B−1と左右の連結部10B−2、10B−3を備えている。上記左右の連結部10A−2と10A−3、10B−2、10B−3は夫々略半円環形状で、フレーム本体2のガット張架部3とスロート部4の境界部分に前後両側より被せて嵌合させる形状とし、この連結部をフレーム本体に取り付けた状態でヨーク本体部10A−1と10B−1とを互いに接合されて厚肉の1部材となるようにしている。
【0029】
具体的には、ヨーク本体部10Aー1の接合面に、長さ方向(横糸方向)に延在する凸部10A−1bを設ける一方、ヨーク本体部10Bー1の接合面に対応する凹部10B−1bを長さ方向に設け、これら凹凸部を嵌合させてヨーク本体部10Aと10Bとを機械的結合している。
また、分割ヨーク10Aと分割ヨーク10Bとは、上記凹凸嵌合による機械的結合に加え、ウレタン系接着剤(エスプレン)により接着している。
上記接合面には、ガット張架部3に張架するガットを通すガット溝10A−1a、10B−1aを上記凹凸部と直交する方向(縦糸方向)に設け、分割ヨーク10Aと分割ヨーク10Bとを接合した状態でガット穴10aを形成している。
【0030】
上記連結部10A−2と10A−3、10B−2と10B−3には、それぞれ嵌合穴10A−2a、10A−3a、10B−2a、10B−3aを設けている。これら嵌合穴と対応位置のフレーム本体2のガット張架部3とスロート部4の境界部分にそれぞれ凸部2aを設け、該凸部2aを上記嵌合穴にそれぞれ嵌合させて、分割ヨーク10A、10Bとフレーム本体2とを機械的に結合している。分割ヨーク10A、10Bとフレーム本体2との間も上記凹凸嵌合による機械的結合に加えウレタン系接着剤で接着している。
【0031】
本実施形態では、分割ヨーク10Aと10Bとからなるヨーク10は、熱可塑性樹脂である66ナイロンに長さ1mmのカーボン繊維(短繊維)を22%充填させた材料からなり、中実の射出成形体からなる。また、ヨーク10の重量は計24gとし、ヨーク10とフレーム本体2との合計重量からなるローフレーム重量の約12%としている。また、分割ヨーク10Aと分割ヨーク10Bとの接合面積は15cm2としている。
フレーム本体2は厚み24mm、幅13〜15mmの断面形状とし、打球面積が110平方インチ、ラケットフレーム重量が245gとしている。
フレーム本体2は、繊維強化樹脂製の中空パイプからなり、カーボン繊維からなる強化繊維をマトリクス樹脂のエポキシ樹脂で含浸しているプリプレグの積層体からなる。
【0032】
上記のように、第1実施形態のラケットフレーム1は、フレーム本体2とヨーク10とを別部材として成形し、かつ、ヨーク10を分割ヨーク10Aと分割ヨーク10Bとに分割して成形し、その後、機械的結合手段及び接着剤により結合している。よって、フレーム本体と分割ヨーク10A、10Bの各連結部10A−2と10A−3、10B−2と10B−3の接合面、分割ヨーク10Aと10Bのヨーク本体部10A−1と10B−1との接合面に、ラケットフレーム1の変形時に発生する剪断力を集中させることができ、ラケットフレーム1の振動減衰性能を高めることができる。
【0033】
なお、上記実施形態では、ウレタン系の接着剤を用いているが、その他、必要性能に応じて、振動吸収性に優れた接着剤等を用いても良い。
また、上記実施形態では、ヨークは熱可塑性樹脂により成形しており、成形性や振動減衰性に特に優れるが、繊維強化樹脂からなる中空体とすることもでき、強度や軽量性を高めることもできる。
【0034】
図5は、第1実施形態の変形例を示し、分割ヨーク10Aと分割ヨーク10Bとの接合面に制振フィルム20(CCI社製:ダイポールギーフィルム)を介在させている。
その他の構成は上記第1実施形態と同様のため説明を省略する。
【0035】
上記構成とすると、さらに振動減衰性を向上することができる。また、打球時の不快な音が発生するのを防止することができる。
【0036】
図6乃至図8は、本発明の第2実施形態を示す。
第2実施形態ではヨーク10’の分割ヨーク10A’と分割ヨーク10B’とは幅方向で分割し、分割ヨーク10A’を打球面に対して内周側とし、分割ヨーク10B’を外周側としている。
【0037】
上記内周側の分割ヨーク10A’は打球面Fの下端開口を閉鎖するヨーク本体部10A−1’と、両端に厚さ方向両側に向けて突出する連結部10A−2’、10A−3’とを備えている。ヨーク本体部10A−1’の打球面の反対側に分割ヨーク10B’を嵌合する凹部10A−1a’を設ける一方、連結部10A−2’、10A−3’のフレーム本体2’との接合面には、フレーム本体2’と機械的に結合するための凹部10A−2a’、10A−3a’を設けている。
【0038】
分割ヨーク10B’は略棒状体からなり、分割ヨーク10A’に設けた溝10A−1a’に嵌め込まれる形状とし、ウレタン系接着剤で接着している。
また、分割ヨーク本体10A−1’と分割ヨーク10B’にはそれぞれガット穴10A−1b’、10B−1’を設けており、分割ヨーク本体10A−1’の溝10A−1a’に分割ヨーク10B’を嵌め込んだ状態で、ガット穴10A−1b’とガット穴10B−1’とがそれぞれ連通している。
【0039】
フレーム本体2’の内周側には、ガット張架部3とスロート部4との境界部分に凸部2a’を設け、該凸部2a’と分割ヨーク10A’の連結部10A−2’、10A−3’に設けた凹部10A−2a’、10A−3a’とを嵌合させて、分割ヨーク10A’とフレーム本体2’とを機械的に結合している。また、分割ヨーク10A’とフレーム本体2’とは機械的結合に加えウレタン系接着剤で接着もしている。
【0040】
分割ヨーク10A’は、本実施形態では、熱可塑性樹脂である66ナイロンに長さ1mmのカーボン繊維(短繊維)を22%充填させた材料からなり、中実の射出成形体からなる。また、分割ヨーク10B’は、PEBAX5533(ポリエーテルブロックアミド)からなり、中実の射出成形体からなる。なお、分割ヨーク10B’は、ポリアミドエラストマー、ラバー等により成形してもよい。
ヨーク10’重量は23gとし、ヨーク10’とフレーム本体2’との合計重量からなるローフレーム重量の約12%としている。また、分割ヨーク10A’と分割ヨーク10B’との接合面積が16cm2としている。
フレーム本体2を厚み24mm、幅13〜15mmの断面形状とし、打球面積が110平方インチ、ラケットフレーム重量が245gとしている。
その他の構成は、上記第1実施形態と同様のため説明を省略する。
【0041】
上記のように、フレーム本体2’とヨーク10’とを別部材として成形し、かつヨーク10’を分割ヨーク10A’と分割ヨーク10B’とに分割して成形し、その後、機械的結合手段及び接着剤により結合している。よって、それぞれの接合面にラケットフレーム1の変形時に発生する剪断力を集中させることができ、ラケットフレーム1の振動減衰性能を高めることができる。
【0042】
また、ヨーク10’の打球面内周側を構成する分割ヨーク10A’に剛性を持たせ、ヨーク10’の打球面外周側を構成する分割ヨーク10B’に弾性を持たせているため、ヨーク10’の強度を維持しつつ、打球時にガットを撓みやすくして、反発性を向上することができる。
【0043】
図9及び図10は、第2実施形態の変形例を示し、分割ヨーク10A’と分割ヨーク10B’との接合面に制振フィルム20(CCI社製:ダイポールギーフィルム)を介在させている。
その他の構成は上記第2実施形態と同様のため説明を省略する。
【0044】
上記構成とすると、さらに振動減衰性を向上することができる。また、打球時の不快な音が発生するのを防止することができる。
【0045】
以下、本発明のラケットフレームの実施例1〜4及び比較例1、2について詳述する。
実施例、比較例とも、フレーム本体は、繊維強化樹脂製の中空形状であり、厚み24mm,幅13mm〜15mmの断面形状を持ち、打球面積が110平方インチである同一形状とし、以下に示す方法により作成した。
カーボン繊維を強化繊維とした繊維強化熱硬化性樹脂のプリプレグシート(CFプリプレグ(東レT300,700,800,M46J))を、66ナイロンからなる内圧チューブを被覆したマンドレル(φ14.5)上に積層し、鉛直状の積層体を成型した。プリプレグ角度は0゜,22゜,30゜,90゜とし、積層した。マンドレルを抜き取って上記積層体を金型にセットした。金型を型締して、金型を150℃に昇温し、30分間の加熱を行うと同時に内圧チューブ内に9kgf/cm2の空気圧を付加し、加圧保持し、加熱加圧成形により作成した。 ヨークの材質、特徴、重量、フレーム本体とヨークとの接合方法、ヨークを形成する部材同士の接合面積、ローフレーム(重量/バランス)、ラケットフレーム(重量/バランス)をそれぞれ下記の表1の通り設定した。
【0046】
【表1】
【0047】
(実施例1)
上記第1実施形態のラケットフレーム1と同一形態とした。
(実施例2)
上記第1実施形態の変形例のラケットフレーム1と同一形態とした。
(実施例3)
上記第2実施形態のラケットフレーム1と同一形態とした。
(実施例4)
上記第2実施形態の変形例のラケットフレーム1と同一形態とした。
【0048】
(比較例1)
予めヨークを成形し、フレーム本体と共に金型内のキャビテイ内に充填し、加圧加熱によりヨークとフレーム本体とを一体成形した。機械的結合は行わなかった。
(比較例2)
フレーム本体とヨークとを別体とし、機械的結合及び接着剤を用いて結合した。ヨークは分割せず、単一構造とした。機械的結合方法及び接着剤は上記実施例3と同様とした。
【0049】
上記実施例1〜4及び、比較例1、2のラケットフレームに関し、それぞれ、後述する方法により面外1次振動の振動数,減衰率、面外2次振動の振動数,減衰率、反発係数(3点)を測定した。その結果を上記の表1に示す。
【0050】
(面外1次振動減衰率の測定)
各実施例及び比較例のラケットフレームを図11(A)に示すようにガット張架部3の上端を紐51で吊り下げ、ガット張架部3とスロート部4との一方の連続点に加速度ピックアップ計53をフレーム面に垂直に固定した。この状態で、図11(B)に示すように、ガット張架部3とスロート部4の他方の連続点をインパクトハンマー55で加振した。インパクトハンマー55に取り付けられたフォースピックアップ計で計測した入力振動(F)と加速度ピックアップ計53で計測した応答振動(α)をアンプ56A、56Bを介して周波数解析装置57(ヒューレットパッカード社製、ダイナミックシングルアナライザーHP3562A)に入力して解析した。解析で得た周波数領域での伝達関数を求め、テニスラケットの振動数を得た。振動減衰比(ζ)は下式より求め、面外1次振動減衰率とした。各実施例及び比較例のラケットフレームについて測定された平均値を上記表1に示す。
【0051】
ζ=(1/2)×(Δω/ωn)
To=Tn/√2
【0052】
(面外2次振動減衰率の測定)
ラケットフレームを図11(C)に示すようにガット張架部3上端を紐51で吊り下げ、スロート部4とシャフト部5との連続点に加速度ピックアップ計53をフレーム面に垂直に固定した。この状態で、加速度ピックアップ計53の裏側のフレームをインパクトハンマー55で加振した。そして、面外1次振動減衰率と同等の方法で減衰率を算出し、面外2次振動減衰率とした。各実施例及び比較例のラケットフレームについて測定された平均値を上記表1に示す。
【0053】
(反発係数の測定)
反発係数は、図12に示すように、実施例及び比較例のラケットフレーム1を垂直状態でフリーとなるようにグリップ部を柔らかく吊り下げて、その打球面にボール打出機から一定速度V1(30m/sec)でテニスボールを打球面に衝突させ、跳ね返ったボールの速度V2を測定した。反発係数は発射速度V1、反発速度V2の比(V2/V1)であり、反発係数が大きい程、ボールの飛びが良いことを示している。打球面の中心(フェイスセンター)での反発係数、フェイスセンターから80mm下の位置(X)での反発係数、(X)位置から50cm横の位置での反発係数を測定し、3回の平均値を上記表1に記載した。
【0054】
表1に示すように、実施例1〜4は、面外1次振動の減衰率が0.8〜1.1、面外2次振動の減衰率が0.9〜1.2であるのに対し、比較例1、2は面外1次振動の減衰率が0.3〜0.6、面外2次振動の減衰率が0.3〜0.6であった。この結果より、実施例1〜4の本発明のラケットフレームは振動減衰性に優れていることが確認できた。
【0055】
また、打球面上の3点での反発係数についても、実施例1〜4のラケットフレームの方が全体的に高い値を示しており、スイートエリアも広く、反発性能にも優れていることが確認できた。特に、ヨークを断面幅方向に分割した実施例3、4のラケットフレームが反発性能に優れていることが確認できた。
【0056】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、フレーム本体とヨークとを別部材として成形し、さらにヨークを分割して成形した後、機械的結合手段により結合させ、両者の接合面にラケットフレームの変形時に発生する剪断力を集中させることでラケットフレームの振動減衰性能を高めることができる。
上記のように、ヨークを複数の分割部材の結合により振動減衰性を向上させているため、余分な重量増がなく、軽量である上に、機械的結合手段により結合させているため、剛性が低下することもなく、高い振動減衰性を得ることができる。
【0057】
また、フレーム本体とヨークとの接合面の面積や、分割したヨーク同士の接合面の面積、材料や接着剤の選定、形状の変更等により、打球感の好みにもなる振動減衰性の制御を可能としており、プレーヤーに応じた最適なラケットフレームを設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態のラケットフレームの概略正面図である。
【図2】フレーム本体とヨークの要部拡大図である。
【図3】フレーム本体にヨークを取り付けた状態を示す要部拡大斜視図である。
【図4】(A)は図1のI1−I1線断面図、(B)は図1のI2−I2線断面図である。
【図5】第1実施形態の変形例を示す要部拡大正面図である。
【図6】本発明の第2実施形態のラケットフレームの概略正面図である。
【図7】第2実施形態のヨークの斜視図である。
【図8】フレーム本体とヨークの要部拡大図である。
【図9】第2実施形態の変形例を示す要部拡大正面図である。
【図10】第2実施形態の変形例のヨークの斜視図である。
【図11】(A)(B)(C)はラケットフレームの振動減衰率の測定方法を示す概略図である。
【図12】反発係数の測定方法を示す図である。
【符号の説明】
1 ラケットフレーム
2、2’ フレーム本体
2a、2a’ 凸部
3 ガット張架部
4 スロート部
5 シャフト部
6 グリップ部
10、10’ ヨーク
10A、10A’、10B、10B’ 分割ヨーク
10A−1、10A−1’、10B−1 ヨーク本体
10A−1b 凸部
10A−1a’ 溝
10A−2、10A−3、10B−2、10B−3 連結部
10A−2a、10A−3a、10B−2a、10B−3a 嵌合穴
10A−2a’ 凹部
10B−1b 凹部
20 制振フィルム
Claims (5)
- フレーム本体と該フレーム本体の左右枠部を連結する別材のヨークとから構成されるラケットフレームにおいて、
上記ヨークは複数の分割部材からなり、該複数の分割部材同士を機械的結合手段又は/及び接着剤により結合して上記ヨークを形成すると共に、上記ヨークと上記フレーム本体とを機械的結合手段又は/及び接着剤により結合していることを特徴とするラケットフレーム。 - 上記フレーム本体は繊維強化樹脂から一体成形したパイプからなり、打球面を囲むガット張架部、スロート部、シャフト部およびグリップ部が連続して形成され、
上記ヨークを形成する複数の分割部材は、繊維強化樹脂、樹脂単体、金属単体からなり、同種又は異種の上記部材を結合してヨークを形成している請求項1に記載のラケットフレーム。 - 上記ヨークを形成する複数の分割部材は、厚さ方向あるいは幅方向で分割している請求項1または請求項2に記載のラケットフレーム。
- 上記ヨークを形成する複数の分割部材同士の接合面積を10cm2以上40cm2以下とし、上記ヨークとフレーム本体の接合面積を5cm2以上30cm2以下としている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のラケットフレーム。
- 上記ヨークを形成する複数の分割部材同士の接合面又は/及び上記フレーム本体と上記ヨークとの接合面に、振動吸収性に優れた接着剤又は/及び、制振フィルムもしくは制振シートを介在させている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のラケットフレーム。
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