JP2004080430A - Δς変換回路 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡便な回路構成でしかも帰還回路の安定性を確保する。
【解決手段】少なくとも1つの積分器22と量子化器23とを含み、入力信号XをΔΣ変換して出力するΔΣ変換回路において、量子化器23の入力信号及び出力信号の差分を出力する差分器25と、この差分器25の出力を微分処理して入力信号Xに負帰還させる変換器26とを備えた。
【選択図】 図1
【解決手段】少なくとも1つの積分器22と量子化器23とを含み、入力信号XをΔΣ変換して出力するΔΣ変換回路において、量子化器23の入力信号及び出力信号の差分を出力する差分器25と、この差分器25の出力を微分処理して入力信号Xに負帰還させる変換器26とを備えた。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、A/D変換器、変調器等に用いられるΔΣ変換回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
ΔΣ変換回路は、Δ変調器の入力段にローブースト回路、出力段にローカット回路を挿入し、回路を単純化させたもので、広帯域にわたる量子化ノイズを高域側に集中させることにより、本来の信号成分に重畳される量子化ノイズを抑圧するノイズシェイピング特性を有し、回路が単純であることから、オーディオ信号等を扱うA/D変換器や変調器等に広く応用されている。
【0003】
図8は、1次のノイズシェイピング特性を有する従来の基本的なΔΣ変換回路を示す回路図である。このΔΣ変換回路は、入力信号Xと遅延出力信号z−1Yとの差分を出力する差分器1と、差分器1の出力を積分する積分器2と、積分器2の出力を1ビット量子化して出力信号Yを出力する量子化器3と、量子化器3の出力から差分器1の入力への負帰還経路に介挿された遅延器4とを備えて構成されている。
【0004】
差分器1の一方の入力端に入力された入力信号Xは、差分器1において1サンプル前の出力を減算され、その差分出力は、積分器2で積分されたのち量子化器3で1ビット量子化されて1/0の出力信号Yとして出力される。出力信号Yは、遅延器4で1サンプル遅延されて差分器1の他方の入力端に負帰還される。
【0005】
このΔΣ変換回路をA/D変換器に応用する場合には、入力信号Xとしてアナログ信号を与えることで、出力信号Yとして1/0の系列のディジタル出力が得られる。ディジタル出力が1のとき階段状波形を1段登り、ディジタル出力が0のとき階段状波形を1段下るとすると、アナログの入力信号Xにより1ビットディジタルデータである出力信号Yを得ることができる。ここで積分器2は、加算器2a及びその出力を入力側に正帰還する経路に挿入された遅延器2bにより構成され、差分器1から出力される誤差の累積加算を行なう。量子化器3は階段状波形を1段登るか下るかの判定を行なっている。図8の回路では、入力信号Xと出力信号Yとが、下記(1)式の関係を有している。
【0006】
【数1】
Y = X+(1−z−1)Q (1)
【0007】
すなわち、図8の回路により得られるディジタル変換された出力信号Yには(1−z−1)Qという雑音が重畳されることになる。ここで、Qは量子化器3の量子化雑音であり、その周波数特性はすべての帯域にわたり一定のホワイト雑音である。雑音(1−z−1)Qは量子化雑音Qを低域阻止フィルタに通した後の雑音であり、低域のレベルが抑圧された雑音となる。これにより、本来の信号成分が低域に集中している場合には、信号成分の帯域では雑音成分が抑圧されたノイズシェーピングの効果が得られる。
【0008】
また、オーディオ信号をA/D変換する際のように、例えば20kHzの帯域を使用する場合、場合によっては、この帯域の中にも(1−z−1)Qの雑音が重畳されてしまうことがある。この場合には、ノイズシェイピングの次数を更に上げることがなされている。一般にn次のノイズシェイピングは、
【0009】
【数2】
Y = X+(1−z−1)nQ (2)
【0010】
で与えられる。ここでnは1以上の整数である。図9には、n=1の場合とn=3の場合について量子化雑音の伝達関数の周波数特性を示している。この図からも明らかなように、量子化雑音の伝達関数(1−z−1)nにおけるnを大きな値とすることにより、量子化雑音の中で低い周波数成分の雑音を更に低減することが可能となる。
【0011】
ノイズシェイピングの次数を上げるための従来知られている手法には、
(1)ループの伝達関数の次数を高めることによりnを大きな値とする手法、
(2)MASHと呼ばれている手法(Y. Matsuya, K. Uchida, A. Iwata, T. Kobayashi, M. Ishikawa, and T. Yoshitomi, ”A 16−bit over sampling tripleintegration noise shaping,” IEEE Proc. of ISSCC 1987.)によりnを大きな値とする手法、
の2つの方法が知られている。
【0012】
図10はループの伝達関数の次数を高めることによりnを大きな値とするようにしたΔΣ変換回路の例を示す。この回路は、n段の差分器11〜1n及び積分器21〜2nを縦続接続してなり、各差分器11〜1nへの負帰還信号が係数器51〜5nによりゲイン調整されるようになっている。例として、この方法で2次のノイズシェイピング特性を実現することを考える。この時、n=2となる。係数器51、係数器52の係数を工夫し、a1=a2=1とおけば、入力信号X、出力信号Yの関係は、
【0013】
【数3】
Y = X+(1−z−1)2Q (3)
【0014】
となる。この結果、量子化雑音の中で低い周波数成分の雑音を1次の場合よりも低減させることが可能となる。
【0015】
しかしながら、この方法においては、帰還ループにおいて積分器21,22が2個縦続接続される。積分器21,22では最大90度の位相遅れが生じるので、これが複数個縦続接続されていれば全体の位相遅れは180度を超えてしまい、帰還ループが不安定となる。このため、係数器51,52の係数を調整して安定性を確保する必要があるが、係数器51,52の係数は量子化器3が非線形要素となっているため、解析的に安定性を保証することが難しく、シミュレーション等によりカットアンドトライで決める必要があるという欠点を有する。さらに安定性を保証するために選択された係数器の係数では出力信号Yは複雑な伝達特性を有するフィルタを通過した信号となっており、必ずしも所望の入力信号Xに対する出力信号Yとはならないこととなる。
【0016】
図11はMASHと呼ばれている手法により3次のノイズシェイピングを実現する回路の例を示す。このΔΣ変換回路は、3つのΔΣ変換部11,12,13を継続(カスケード)接続して構成されている。各ΔΣ変換部11,12,13は、図8と同様に、差分器111,121,131、積分器112,122,132、量子化器113,123,133及び遅延器114,124,134により構成されている。1段目と2段目のΔΣ変換部11,12には、量子化器113,123の入力信号及び出力信号の差分である量子化誤差Q1,Q2を得るための差分器115,125が設けられ、差分器115,125から出力される量子化誤差Q1,Q2が、それぞれ次段のΔΣ変換部12,13の入力信号となっている。そして、1段目のΔΣ変換部11の出力と、2段目のΔΣ変換部12の出力を1次の微分器14を介した出力と、3段目のΔΣ変換部13の出力を2次の微分器15,16を介した出力とを加算器17,18で加算することにより、出力信号Yを得るようにしている。
【0017】
このMASH方式のΔΣ変換回路では、1次のΔΣ変換部11,12,13を3段継続接続しており、入力信号Xと出力信号Yとの関係は、
【0018】
【数4】
Y = X+(1−z−1)3Q (4)
【0019】
で与えられる。こうして3段のMASHでは3次のノイズシェイピングの特性が実現されるが、1次のΔΣ変換部11,12,13の継続接続であるため、回路の安定性は確保される。しかしながら、この回路では積分器と量子化器をそれぞれ3個ずつ必要とし、さらに2段目に微分器14を、3段目に微分器15,16を必要とする。したがって、3次のノイズシェイピング特性を持つためには回路構成要素が増加するという欠点を有している。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来のΔΣ変換回路は、高い次数のノイズシェイピングを実現しようとすると、回路の安定性を確保するのが困難になり、また、回路構成が複雑になるという問題がある。
【0021】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、簡便な回路構成でしかも帰還回路の安定性を確保できるΔΣ変換回路を提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る第1のΔΣ変換回路は、入力信号から第1の帰還信号及び第2の帰還信号を差し引いた差分信号を出力する第1の差分器と、この第1の差分器の出力を積分する少なくとも1つの積分器と、この積分器の出力を量子化して前記出力信号として出力する量子化器と、前記量子化器の出力を遅延させて前記第1の帰還信号として前記第1の差分器に出力する遅延器と、前記量子化器の入力信号と出力信号の差分を出力する第2の差分器と、この第2の差分器の出力に微分を主体とした変換処理を施して前記第2の帰還信号として前記第1の差分器に出力する変換器とを備えたことを特徴とする。
【0023】
なお、変換器としては、例えば縦続接続されたn個の微分器と、これらn個の微分器のうちのn−m(但しn>m)段目の微分器の出力からn段目の微分器の出力を差し引いて前記第2の帰還信号として出力する第3の差分器とを備えてなるものを用いることができる。
【0024】
また、本発明に係る第2のΔΣ変換回路は、少なくとも1つの積分器と量子化器とを含み、入力信号をΔΣ変換して出力するΔΣ変換回路において、前記量子化器の入力信号及び出力信号の差分を出力する差分器と、この差分器の出力を微分処理して前記入力信号に負帰還させる変換器とを備えたことを特徴とする。
【0025】
更に、本発明に係る第3のΔΣ変換回路は、1つの積分器と量子化器とを含み、入力端に入力された信号をΔΣ変換して出力端から出力するΔΣ変換部を継続接続して構成され、1段目のΔΣ変換器の入力端に入力信号を入力すると共に、k段目(但しk≧2)のΔΣ変換部の入力端に(k−1)段目のΔΣ変換部の量子化器の入力信号及び出力信号の差分を入力し、1段目の出力端から出力される信号と、k段目の出力端から出力される信号の前段からのノイズシェイピングの次数に応じた次数の微分器を経た信号とを加算して前記入力信号をΔΣ変換した出力信号として出力するΔΣ変換回路において、前記各段のΔΣ変換部が、前記量子化器の入力信号及び出力信号の差分を出力する差分器と、この差分器の出力を微分処理して前記入力端に負帰還させる変換器とを備えたことを特徴とする。
【0026】
前記変換器としては、ノイズシェイピングの次数をn、前記積分器の段数をn−mとしたとき、
H(z)=(1−z−1)n−m−(1−z−1)n
で表される変換特性を有するものを用いることができる。
【0027】
本発明によれば、本来の主帰還ループの他に、量子化器の量子化誤差が副帰還ループを介して入力信号に負帰還され、且つ負帰還経路に設けられた変換器が、量子化誤差に微分を主体とした変換処理を施すので、積分器による位相遅れを補償し、しかもノイズシェイピングの次数を高める作用がある。このため、主帰還ループの伝達関数の次数を高めずに、高次のノイズシェイピングが実現でき、MASH方式の場合には、継続接続の段数を減らせるので、簡便な回路構成でしかも帰還回路の安定性を確保できる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るΔΣ変換回路の構成を示すブロック図である。
このΔΣ変換回路は、入力信号Xから第1の帰還信号Y´及び第2の帰還信号Q´を差し引く第1の差分器21と、差分器21の出力を積分する積分器22と、積分器22の出力を1ビット量子化して出力信号Yを出力する量子化器23と、量子化器23の出力から差分器21の入力への第1の帰還信号Y´の負帰還経路(主帰還ループ)に介挿された遅延器24と、量子化器23の入力信号及び出力信号の差分を出力する第2の差分器25と、この差分器25から出力される量子化誤差Qに微分を主体とした変換処理を施して第2の帰還信号Q´として差分器21に出力する、副帰還ループに設けられた変換器26とを備えて構成されている。
【0029】
このように構成された本実施形態に係るΔΣ変換回路において、いま、変換器26の変換特性をA(z)とすると、入力信号Xと出力信号Yとの関係は、次式で示される。
【0030】
【数5】
Y = X+(1−z−1−A(z))Q (5)
【0031】
但し、Qは量子化雑音である。
ここで3次のノイズシェイピング特性を持ったΔΣ変換回路を作るためには、変換特性A(z)の式を工夫して、量子化雑音のフィルタ特性を
【0032】
【数6】
(1−z−1)3=1−3z−1+3z−2−z−3 (6)
【0033】
とすればよい。すなわち、この問題は、
【0034】
【数7】
(1−z−1−A(z))=1−3z−1+3z−2−z−3 (7)
【0035】
を満たす変換特性A(z)の式を求める問題に帰着する。この結果、
【0036】
【数8】
【0037】
となる。この式に基づいて構成された変換器26の例を図2に示す。
この変換器26は、入力信号である量子化誤差Qを遅延させる遅延器261と、遅延器261の出力を微分する係数器付きの微分器262と、微分器262の出力を更に微分する微分器263と、その出力に係数を乗算する係数器264とを備えている。
【0038】
図1に示されたΔΣ変換回路によれば、下記の効果を奏する。
(1)安定性に関しては、積分器、微分器、係数器の付いた微分器をそれぞれ1個ずつ用いている。ここで積分器が1個使われているので位相が90度遅れる。更に量子化誤差を微分器と係数器の付いた微分器で微分を行なっているので、位相が90度から180度の間で進む。そのことによって、安定性で問題は生じない。
(2)図5で示されるMASHはやはり3次のノイズシェイピング特性を持ったΔΣ変換回路となっているが、この従来例と比較してはるかに少ない部品点数で同等の機能が実現されている。
【0039】
図3は、本発明の第2の実施形態に係るΔΣ変換回路の変換器27の構成を示すブロック図である。この変換器27は、図1の変換器26に代えて用いられるものである。本実施形態のΔΣ変換回路でn次のノイズシェイピングを実現するためには、次の関係を満たすように変換特性A(z)を決定すれば良い。
【0040】
【数9】
(1−z−1−A(z))=(1−z−1)n (9)
【0041】
上記の式から変換特性A(z)は、
【0042】
【数10】
A(z)=(1−z−1)−(1−z−1)n (10)
【0043】
となる。図3に示す回路は、この式を実現するものであり、量子化誤差Qを入力する縦続接続されたn個(但し、この例では、n=m+1)の微分器271,272,…,27nと、1段目の微分器271の出力からn段目の微分器27nの出力を差し引く差分器27sとから構成されている。
この実施形態では、変換器27に係数器が含まれておらず、全て遅延器と差分器で構成されているため、先の実施形態よりも更に構成が簡単になるという利点がある。
【0044】
本発明は、また、従来提案されている多段構成のΔΣ変換回路に適用することも可能である。図4は多段構成の2次のΔΣ変換回路に本発明を適用した第3の実施形態を示している。この実施形態では、6次のノイズシェイピングの特性を持ったΔΣ変換回路を実現している。
【0045】
このΔΣ変換回路は、入力信号Xから第1の帰還信号Y´及び第2の帰還信号Q´を差し引く差分器31(第1の差分器)と、差分器31の出力を積分する積分器32と、積分器32の出力から第1の帰還信号Y´を差し引く差分器33と、差分器33の出力を積分する積分器34と、この積分器34の出力を1ビット量子化して出力信号Yを出力する量子化器35と、量子化器35の出力から差分器31の入力への負帰還経路(主帰還ループ)に介挿された遅延器36と、量子化器35の入力信号及び出力信号の差分を出力する差分器37(第2の差分器)と、この差分器37から出力される量子化誤差Qに微分を主体とした変換処理を施す変換器38とを備えて構成されている。
【0046】
ここで、変換器38の変換特性をB(z)とすると、入力信号Xと出力信号Yとの関係は、
【0047】
【数11】
Y = X+(1−2z−1+z−2−B(z))Q (11)
【0048】
となる。6次のノイズシェイピング特性を持ったΔΣ変換回路を作るためには、
【0049】
【数12】
(1−2z−1+z−2−B(z))=(1−z−1)6 (12)
【0050】
とする必要がある。従って、
【0051】
【数13】
B(z)=4z−1−14z−2+20z−3−15z−4+6z−5−z−6 (13)
【0052】
を満たす回路を構成することにより、6次のノイズシェイピングを実現するΔΣ変換回路を実現することができる。
【0053】
(13)式は、また、主帰還ループに(n−m)個の積分器が挿入されている場合に、n次のノイズシェイピングを実現するための変換特性B(z)の一般式として下記の式に置き換えられる。
【0054】
【数14】
B(z)=(1−z−1)n−m−(1−z−1)n (14)
【0055】
図5は、上記式に基づく本発明の第4の実施形態に係る変換器39のブロック図である。この変換器39は、例えば図4の変換器38に代えて用いられるものである。このように、主帰還ループに挿入される積分器の個数と、ノイズシェイピングの次数とが決まれば、変換器39を、係数器を必要とせずに簡単に構成することができる。
【0056】
図6は、本発明の第5の実施形態に係るΔΣ変換回路を示すブロック図である。
この回路は、図1の回路の積分器22と量子化器23の間に、加算器28を挿入し、この加算器28にディザDを加えて量子化雑音のスペクトラムを拡散させ、量子化雑音の影響を低減するようにしたものである。なお、加算器28の挿入位置は、主帰還ループの様々な位置をとり得る。
【0057】
図7は、本発明の第6の実施形態に係るΔΣ変換回路を示すブロック図である。
この回路は、MASH型のΔΣ変換回路に本発明を適用したものであり、継続接続された2つのΔΣ変換部41,42を主体として構成されている。
各ΔΣ変換部41,42は、図1と同様に、それぞれ第1の差分器411,421、積分器412,422、量子化器413,423、遅延器414,424、第2の差分器415,425、変換器416,426により構成されている。1段目のΔΣ変換部41には、量子化器413の入力信号及び出力信号の差分である量子化誤差−Q1を得るための差分器417が設けられ、差分器417から出力される量子化誤差−Q1が、次段のΔΣ変換部42の入力信号となっている。そして、1段目のΔΣ変換部41の出力と、2段目のΔΣ変換部42の出力を3つの微分器43,44,45を介した出力とを加算器46で加算することにより、出力信号Yを得るようにしている。
【0058】
本実施形態によれば、継続接続されたΔΣ変換部41,42に本発明を適用することにより、ノイズシェイピング特性を改善することが可能である。例えば、従来1次のノイズシェイピング特性を持つΔΣ変換部41,42を2段継続接続して2次のノイズシェイピング特性を持つΔΣ変換回路を構成するのに対して、図7で示すように、各段を3次のノイズシェイピング特性を持つΔΣ変換部41,42に変更し、その継続接続を実施することで、容易に6次のノイズシェイピング特性を持つΔΣ変換回路を提供することができる。同様に3次のノイズシェイピング特性を持つΔΣ変換回路であれば容易に9次のノイズシェイピング特性を持つΔΣ変換回路となる。
【0059】
このように本発明によれば、高次のノイズシェイピング特性を持たせれば持たせるほど従来問題となっていた帰還系の発振を避けながら、容易に高次のノイズシェイピング特性を有するΔΣ変換回路を実現することが可能となる。例えば、図7において、変換器416,426の変換特性A(z)が、
【0060】
【数15】
A(z)=(1−z−1)−(1−z−1)3 (15)
【0061】
であるとすれば、継続接続された1段目の出力Y1は、
【0062】
【数16】
Y1=X+(1−z−1)3Q1 (16)
【0063】
となる。この段で、差分器417により量子化器413の入力信号から出力信号を引くことで量子化誤差−Q1を得ることができる。これが継続接続された2段目の入力である。同様に2段目の出力は
【0064】
【数17】
Y2=−Q1+(1−z−1)3Q2 (17)
【0065】
となる。1段目と2段目の量子化誤差Q1を加算して、キャンセルするため、2段目の出力を縦続接続された微分器43、44、45により2段目の変換出力Y2´を得る。出力Yは1段目の出力Y1と2段目の変換出力Y2´を加算することで、
【0066】
【数18】
【0067】
となり、6次のノイズシェイピングの特性を得ることができる。
【0068】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
例えば、量子化器は多値を出力するものであっても、本願発明は適用可能である。多値を出力するものであれば変換精度を高めることができることはすでに公知であるが、本発明においても同様に利用することができる。
また、ノイズシェイピングの次数を上げるための種々な従来手法、例えばループの伝達関数の次数を高める手法における多重帰還による構成法や、MASHとは異なる継続接続による構成法(James C. Candy and Gabor C. Temes, Oversampling delta−sigma data converter. IEEE Press, ISBN 0−87942−285−8, 1992)への本発明の適用も勿論可能である。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、高次のノイズシェイピング特性を持ち、安定性に優れ、簡易に構成することができるΔΣ変換回路を提供することができる。このため、A/D変換器や変調器に応用した場合には従来と比較して高い周波数の入力信号に対して良好な変換特性を有するΔΣ変換回路を安価に提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るΔΣ変換回路を示すブロック図である。
【図2】同ΔΣ変換回路における変換器を示すブロック図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るΔΣ変換回路おける変換器を示すブロック図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係るΔΣ変換回路を示すブロック図である。
【図5】本発明の第4の実施形態に係るΔΣ変換回路における変換器を示すブロック図である。
【図6】本発明の第5の実施形態に係るΔΣ変換回路を示すブロック図である。
【図7】本発明の第6の実施形態に係るΔΣ変換回路を示すブロック図である。
【図8】従来の基本的なΔΣ変換回路を示すブロック図である。
【図9】ノイズシェイピングの次数と量子化雑音のスペクトルとの関係を示すグラフである。
【図10】従来のループの伝達関数の次数を高めたΔΣ変換回路を示すブロック図である。
【図11】従来のMASH方式のΔΣ変換回路を示すブロック図である。
【符号の説明】
1,21,25,31,33,37,411,417,421…差分器
2,22,32,34,412,422…積分器
3,23,35,413,423…量子化器
4,24,36,414,424…遅延器
51〜5n…係数器
11〜13,41,42…ΔΣ変換部
14〜16,43〜45…微分器
17,18,46…加算器
26,27,38,39,416,426…変換器
【発明の属する技術分野】
本発明は、A/D変換器、変調器等に用いられるΔΣ変換回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
ΔΣ変換回路は、Δ変調器の入力段にローブースト回路、出力段にローカット回路を挿入し、回路を単純化させたもので、広帯域にわたる量子化ノイズを高域側に集中させることにより、本来の信号成分に重畳される量子化ノイズを抑圧するノイズシェイピング特性を有し、回路が単純であることから、オーディオ信号等を扱うA/D変換器や変調器等に広く応用されている。
【0003】
図8は、1次のノイズシェイピング特性を有する従来の基本的なΔΣ変換回路を示す回路図である。このΔΣ変換回路は、入力信号Xと遅延出力信号z−1Yとの差分を出力する差分器1と、差分器1の出力を積分する積分器2と、積分器2の出力を1ビット量子化して出力信号Yを出力する量子化器3と、量子化器3の出力から差分器1の入力への負帰還経路に介挿された遅延器4とを備えて構成されている。
【0004】
差分器1の一方の入力端に入力された入力信号Xは、差分器1において1サンプル前の出力を減算され、その差分出力は、積分器2で積分されたのち量子化器3で1ビット量子化されて1/0の出力信号Yとして出力される。出力信号Yは、遅延器4で1サンプル遅延されて差分器1の他方の入力端に負帰還される。
【0005】
このΔΣ変換回路をA/D変換器に応用する場合には、入力信号Xとしてアナログ信号を与えることで、出力信号Yとして1/0の系列のディジタル出力が得られる。ディジタル出力が1のとき階段状波形を1段登り、ディジタル出力が0のとき階段状波形を1段下るとすると、アナログの入力信号Xにより1ビットディジタルデータである出力信号Yを得ることができる。ここで積分器2は、加算器2a及びその出力を入力側に正帰還する経路に挿入された遅延器2bにより構成され、差分器1から出力される誤差の累積加算を行なう。量子化器3は階段状波形を1段登るか下るかの判定を行なっている。図8の回路では、入力信号Xと出力信号Yとが、下記(1)式の関係を有している。
【0006】
【数1】
Y = X+(1−z−1)Q (1)
【0007】
すなわち、図8の回路により得られるディジタル変換された出力信号Yには(1−z−1)Qという雑音が重畳されることになる。ここで、Qは量子化器3の量子化雑音であり、その周波数特性はすべての帯域にわたり一定のホワイト雑音である。雑音(1−z−1)Qは量子化雑音Qを低域阻止フィルタに通した後の雑音であり、低域のレベルが抑圧された雑音となる。これにより、本来の信号成分が低域に集中している場合には、信号成分の帯域では雑音成分が抑圧されたノイズシェーピングの効果が得られる。
【0008】
また、オーディオ信号をA/D変換する際のように、例えば20kHzの帯域を使用する場合、場合によっては、この帯域の中にも(1−z−1)Qの雑音が重畳されてしまうことがある。この場合には、ノイズシェイピングの次数を更に上げることがなされている。一般にn次のノイズシェイピングは、
【0009】
【数2】
Y = X+(1−z−1)nQ (2)
【0010】
で与えられる。ここでnは1以上の整数である。図9には、n=1の場合とn=3の場合について量子化雑音の伝達関数の周波数特性を示している。この図からも明らかなように、量子化雑音の伝達関数(1−z−1)nにおけるnを大きな値とすることにより、量子化雑音の中で低い周波数成分の雑音を更に低減することが可能となる。
【0011】
ノイズシェイピングの次数を上げるための従来知られている手法には、
(1)ループの伝達関数の次数を高めることによりnを大きな値とする手法、
(2)MASHと呼ばれている手法(Y. Matsuya, K. Uchida, A. Iwata, T. Kobayashi, M. Ishikawa, and T. Yoshitomi, ”A 16−bit over sampling tripleintegration noise shaping,” IEEE Proc. of ISSCC 1987.)によりnを大きな値とする手法、
の2つの方法が知られている。
【0012】
図10はループの伝達関数の次数を高めることによりnを大きな値とするようにしたΔΣ変換回路の例を示す。この回路は、n段の差分器11〜1n及び積分器21〜2nを縦続接続してなり、各差分器11〜1nへの負帰還信号が係数器51〜5nによりゲイン調整されるようになっている。例として、この方法で2次のノイズシェイピング特性を実現することを考える。この時、n=2となる。係数器51、係数器52の係数を工夫し、a1=a2=1とおけば、入力信号X、出力信号Yの関係は、
【0013】
【数3】
Y = X+(1−z−1)2Q (3)
【0014】
となる。この結果、量子化雑音の中で低い周波数成分の雑音を1次の場合よりも低減させることが可能となる。
【0015】
しかしながら、この方法においては、帰還ループにおいて積分器21,22が2個縦続接続される。積分器21,22では最大90度の位相遅れが生じるので、これが複数個縦続接続されていれば全体の位相遅れは180度を超えてしまい、帰還ループが不安定となる。このため、係数器51,52の係数を調整して安定性を確保する必要があるが、係数器51,52の係数は量子化器3が非線形要素となっているため、解析的に安定性を保証することが難しく、シミュレーション等によりカットアンドトライで決める必要があるという欠点を有する。さらに安定性を保証するために選択された係数器の係数では出力信号Yは複雑な伝達特性を有するフィルタを通過した信号となっており、必ずしも所望の入力信号Xに対する出力信号Yとはならないこととなる。
【0016】
図11はMASHと呼ばれている手法により3次のノイズシェイピングを実現する回路の例を示す。このΔΣ変換回路は、3つのΔΣ変換部11,12,13を継続(カスケード)接続して構成されている。各ΔΣ変換部11,12,13は、図8と同様に、差分器111,121,131、積分器112,122,132、量子化器113,123,133及び遅延器114,124,134により構成されている。1段目と2段目のΔΣ変換部11,12には、量子化器113,123の入力信号及び出力信号の差分である量子化誤差Q1,Q2を得るための差分器115,125が設けられ、差分器115,125から出力される量子化誤差Q1,Q2が、それぞれ次段のΔΣ変換部12,13の入力信号となっている。そして、1段目のΔΣ変換部11の出力と、2段目のΔΣ変換部12の出力を1次の微分器14を介した出力と、3段目のΔΣ変換部13の出力を2次の微分器15,16を介した出力とを加算器17,18で加算することにより、出力信号Yを得るようにしている。
【0017】
このMASH方式のΔΣ変換回路では、1次のΔΣ変換部11,12,13を3段継続接続しており、入力信号Xと出力信号Yとの関係は、
【0018】
【数4】
Y = X+(1−z−1)3Q (4)
【0019】
で与えられる。こうして3段のMASHでは3次のノイズシェイピングの特性が実現されるが、1次のΔΣ変換部11,12,13の継続接続であるため、回路の安定性は確保される。しかしながら、この回路では積分器と量子化器をそれぞれ3個ずつ必要とし、さらに2段目に微分器14を、3段目に微分器15,16を必要とする。したがって、3次のノイズシェイピング特性を持つためには回路構成要素が増加するという欠点を有している。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来のΔΣ変換回路は、高い次数のノイズシェイピングを実現しようとすると、回路の安定性を確保するのが困難になり、また、回路構成が複雑になるという問題がある。
【0021】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、簡便な回路構成でしかも帰還回路の安定性を確保できるΔΣ変換回路を提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る第1のΔΣ変換回路は、入力信号から第1の帰還信号及び第2の帰還信号を差し引いた差分信号を出力する第1の差分器と、この第1の差分器の出力を積分する少なくとも1つの積分器と、この積分器の出力を量子化して前記出力信号として出力する量子化器と、前記量子化器の出力を遅延させて前記第1の帰還信号として前記第1の差分器に出力する遅延器と、前記量子化器の入力信号と出力信号の差分を出力する第2の差分器と、この第2の差分器の出力に微分を主体とした変換処理を施して前記第2の帰還信号として前記第1の差分器に出力する変換器とを備えたことを特徴とする。
【0023】
なお、変換器としては、例えば縦続接続されたn個の微分器と、これらn個の微分器のうちのn−m(但しn>m)段目の微分器の出力からn段目の微分器の出力を差し引いて前記第2の帰還信号として出力する第3の差分器とを備えてなるものを用いることができる。
【0024】
また、本発明に係る第2のΔΣ変換回路は、少なくとも1つの積分器と量子化器とを含み、入力信号をΔΣ変換して出力するΔΣ変換回路において、前記量子化器の入力信号及び出力信号の差分を出力する差分器と、この差分器の出力を微分処理して前記入力信号に負帰還させる変換器とを備えたことを特徴とする。
【0025】
更に、本発明に係る第3のΔΣ変換回路は、1つの積分器と量子化器とを含み、入力端に入力された信号をΔΣ変換して出力端から出力するΔΣ変換部を継続接続して構成され、1段目のΔΣ変換器の入力端に入力信号を入力すると共に、k段目(但しk≧2)のΔΣ変換部の入力端に(k−1)段目のΔΣ変換部の量子化器の入力信号及び出力信号の差分を入力し、1段目の出力端から出力される信号と、k段目の出力端から出力される信号の前段からのノイズシェイピングの次数に応じた次数の微分器を経た信号とを加算して前記入力信号をΔΣ変換した出力信号として出力するΔΣ変換回路において、前記各段のΔΣ変換部が、前記量子化器の入力信号及び出力信号の差分を出力する差分器と、この差分器の出力を微分処理して前記入力端に負帰還させる変換器とを備えたことを特徴とする。
【0026】
前記変換器としては、ノイズシェイピングの次数をn、前記積分器の段数をn−mとしたとき、
H(z)=(1−z−1)n−m−(1−z−1)n
で表される変換特性を有するものを用いることができる。
【0027】
本発明によれば、本来の主帰還ループの他に、量子化器の量子化誤差が副帰還ループを介して入力信号に負帰還され、且つ負帰還経路に設けられた変換器が、量子化誤差に微分を主体とした変換処理を施すので、積分器による位相遅れを補償し、しかもノイズシェイピングの次数を高める作用がある。このため、主帰還ループの伝達関数の次数を高めずに、高次のノイズシェイピングが実現でき、MASH方式の場合には、継続接続の段数を減らせるので、簡便な回路構成でしかも帰還回路の安定性を確保できる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るΔΣ変換回路の構成を示すブロック図である。
このΔΣ変換回路は、入力信号Xから第1の帰還信号Y´及び第2の帰還信号Q´を差し引く第1の差分器21と、差分器21の出力を積分する積分器22と、積分器22の出力を1ビット量子化して出力信号Yを出力する量子化器23と、量子化器23の出力から差分器21の入力への第1の帰還信号Y´の負帰還経路(主帰還ループ)に介挿された遅延器24と、量子化器23の入力信号及び出力信号の差分を出力する第2の差分器25と、この差分器25から出力される量子化誤差Qに微分を主体とした変換処理を施して第2の帰還信号Q´として差分器21に出力する、副帰還ループに設けられた変換器26とを備えて構成されている。
【0029】
このように構成された本実施形態に係るΔΣ変換回路において、いま、変換器26の変換特性をA(z)とすると、入力信号Xと出力信号Yとの関係は、次式で示される。
【0030】
【数5】
Y = X+(1−z−1−A(z))Q (5)
【0031】
但し、Qは量子化雑音である。
ここで3次のノイズシェイピング特性を持ったΔΣ変換回路を作るためには、変換特性A(z)の式を工夫して、量子化雑音のフィルタ特性を
【0032】
【数6】
(1−z−1)3=1−3z−1+3z−2−z−3 (6)
【0033】
とすればよい。すなわち、この問題は、
【0034】
【数7】
(1−z−1−A(z))=1−3z−1+3z−2−z−3 (7)
【0035】
を満たす変換特性A(z)の式を求める問題に帰着する。この結果、
【0036】
【数8】
【0037】
となる。この式に基づいて構成された変換器26の例を図2に示す。
この変換器26は、入力信号である量子化誤差Qを遅延させる遅延器261と、遅延器261の出力を微分する係数器付きの微分器262と、微分器262の出力を更に微分する微分器263と、その出力に係数を乗算する係数器264とを備えている。
【0038】
図1に示されたΔΣ変換回路によれば、下記の効果を奏する。
(1)安定性に関しては、積分器、微分器、係数器の付いた微分器をそれぞれ1個ずつ用いている。ここで積分器が1個使われているので位相が90度遅れる。更に量子化誤差を微分器と係数器の付いた微分器で微分を行なっているので、位相が90度から180度の間で進む。そのことによって、安定性で問題は生じない。
(2)図5で示されるMASHはやはり3次のノイズシェイピング特性を持ったΔΣ変換回路となっているが、この従来例と比較してはるかに少ない部品点数で同等の機能が実現されている。
【0039】
図3は、本発明の第2の実施形態に係るΔΣ変換回路の変換器27の構成を示すブロック図である。この変換器27は、図1の変換器26に代えて用いられるものである。本実施形態のΔΣ変換回路でn次のノイズシェイピングを実現するためには、次の関係を満たすように変換特性A(z)を決定すれば良い。
【0040】
【数9】
(1−z−1−A(z))=(1−z−1)n (9)
【0041】
上記の式から変換特性A(z)は、
【0042】
【数10】
A(z)=(1−z−1)−(1−z−1)n (10)
【0043】
となる。図3に示す回路は、この式を実現するものであり、量子化誤差Qを入力する縦続接続されたn個(但し、この例では、n=m+1)の微分器271,272,…,27nと、1段目の微分器271の出力からn段目の微分器27nの出力を差し引く差分器27sとから構成されている。
この実施形態では、変換器27に係数器が含まれておらず、全て遅延器と差分器で構成されているため、先の実施形態よりも更に構成が簡単になるという利点がある。
【0044】
本発明は、また、従来提案されている多段構成のΔΣ変換回路に適用することも可能である。図4は多段構成の2次のΔΣ変換回路に本発明を適用した第3の実施形態を示している。この実施形態では、6次のノイズシェイピングの特性を持ったΔΣ変換回路を実現している。
【0045】
このΔΣ変換回路は、入力信号Xから第1の帰還信号Y´及び第2の帰還信号Q´を差し引く差分器31(第1の差分器)と、差分器31の出力を積分する積分器32と、積分器32の出力から第1の帰還信号Y´を差し引く差分器33と、差分器33の出力を積分する積分器34と、この積分器34の出力を1ビット量子化して出力信号Yを出力する量子化器35と、量子化器35の出力から差分器31の入力への負帰還経路(主帰還ループ)に介挿された遅延器36と、量子化器35の入力信号及び出力信号の差分を出力する差分器37(第2の差分器)と、この差分器37から出力される量子化誤差Qに微分を主体とした変換処理を施す変換器38とを備えて構成されている。
【0046】
ここで、変換器38の変換特性をB(z)とすると、入力信号Xと出力信号Yとの関係は、
【0047】
【数11】
Y = X+(1−2z−1+z−2−B(z))Q (11)
【0048】
となる。6次のノイズシェイピング特性を持ったΔΣ変換回路を作るためには、
【0049】
【数12】
(1−2z−1+z−2−B(z))=(1−z−1)6 (12)
【0050】
とする必要がある。従って、
【0051】
【数13】
B(z)=4z−1−14z−2+20z−3−15z−4+6z−5−z−6 (13)
【0052】
を満たす回路を構成することにより、6次のノイズシェイピングを実現するΔΣ変換回路を実現することができる。
【0053】
(13)式は、また、主帰還ループに(n−m)個の積分器が挿入されている場合に、n次のノイズシェイピングを実現するための変換特性B(z)の一般式として下記の式に置き換えられる。
【0054】
【数14】
B(z)=(1−z−1)n−m−(1−z−1)n (14)
【0055】
図5は、上記式に基づく本発明の第4の実施形態に係る変換器39のブロック図である。この変換器39は、例えば図4の変換器38に代えて用いられるものである。このように、主帰還ループに挿入される積分器の個数と、ノイズシェイピングの次数とが決まれば、変換器39を、係数器を必要とせずに簡単に構成することができる。
【0056】
図6は、本発明の第5の実施形態に係るΔΣ変換回路を示すブロック図である。
この回路は、図1の回路の積分器22と量子化器23の間に、加算器28を挿入し、この加算器28にディザDを加えて量子化雑音のスペクトラムを拡散させ、量子化雑音の影響を低減するようにしたものである。なお、加算器28の挿入位置は、主帰還ループの様々な位置をとり得る。
【0057】
図7は、本発明の第6の実施形態に係るΔΣ変換回路を示すブロック図である。
この回路は、MASH型のΔΣ変換回路に本発明を適用したものであり、継続接続された2つのΔΣ変換部41,42を主体として構成されている。
各ΔΣ変換部41,42は、図1と同様に、それぞれ第1の差分器411,421、積分器412,422、量子化器413,423、遅延器414,424、第2の差分器415,425、変換器416,426により構成されている。1段目のΔΣ変換部41には、量子化器413の入力信号及び出力信号の差分である量子化誤差−Q1を得るための差分器417が設けられ、差分器417から出力される量子化誤差−Q1が、次段のΔΣ変換部42の入力信号となっている。そして、1段目のΔΣ変換部41の出力と、2段目のΔΣ変換部42の出力を3つの微分器43,44,45を介した出力とを加算器46で加算することにより、出力信号Yを得るようにしている。
【0058】
本実施形態によれば、継続接続されたΔΣ変換部41,42に本発明を適用することにより、ノイズシェイピング特性を改善することが可能である。例えば、従来1次のノイズシェイピング特性を持つΔΣ変換部41,42を2段継続接続して2次のノイズシェイピング特性を持つΔΣ変換回路を構成するのに対して、図7で示すように、各段を3次のノイズシェイピング特性を持つΔΣ変換部41,42に変更し、その継続接続を実施することで、容易に6次のノイズシェイピング特性を持つΔΣ変換回路を提供することができる。同様に3次のノイズシェイピング特性を持つΔΣ変換回路であれば容易に9次のノイズシェイピング特性を持つΔΣ変換回路となる。
【0059】
このように本発明によれば、高次のノイズシェイピング特性を持たせれば持たせるほど従来問題となっていた帰還系の発振を避けながら、容易に高次のノイズシェイピング特性を有するΔΣ変換回路を実現することが可能となる。例えば、図7において、変換器416,426の変換特性A(z)が、
【0060】
【数15】
A(z)=(1−z−1)−(1−z−1)3 (15)
【0061】
であるとすれば、継続接続された1段目の出力Y1は、
【0062】
【数16】
Y1=X+(1−z−1)3Q1 (16)
【0063】
となる。この段で、差分器417により量子化器413の入力信号から出力信号を引くことで量子化誤差−Q1を得ることができる。これが継続接続された2段目の入力である。同様に2段目の出力は
【0064】
【数17】
Y2=−Q1+(1−z−1)3Q2 (17)
【0065】
となる。1段目と2段目の量子化誤差Q1を加算して、キャンセルするため、2段目の出力を縦続接続された微分器43、44、45により2段目の変換出力Y2´を得る。出力Yは1段目の出力Y1と2段目の変換出力Y2´を加算することで、
【0066】
【数18】
【0067】
となり、6次のノイズシェイピングの特性を得ることができる。
【0068】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
例えば、量子化器は多値を出力するものであっても、本願発明は適用可能である。多値を出力するものであれば変換精度を高めることができることはすでに公知であるが、本発明においても同様に利用することができる。
また、ノイズシェイピングの次数を上げるための種々な従来手法、例えばループの伝達関数の次数を高める手法における多重帰還による構成法や、MASHとは異なる継続接続による構成法(James C. Candy and Gabor C. Temes, Oversampling delta−sigma data converter. IEEE Press, ISBN 0−87942−285−8, 1992)への本発明の適用も勿論可能である。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、高次のノイズシェイピング特性を持ち、安定性に優れ、簡易に構成することができるΔΣ変換回路を提供することができる。このため、A/D変換器や変調器に応用した場合には従来と比較して高い周波数の入力信号に対して良好な変換特性を有するΔΣ変換回路を安価に提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るΔΣ変換回路を示すブロック図である。
【図2】同ΔΣ変換回路における変換器を示すブロック図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るΔΣ変換回路おける変換器を示すブロック図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係るΔΣ変換回路を示すブロック図である。
【図5】本発明の第4の実施形態に係るΔΣ変換回路における変換器を示すブロック図である。
【図6】本発明の第5の実施形態に係るΔΣ変換回路を示すブロック図である。
【図7】本発明の第6の実施形態に係るΔΣ変換回路を示すブロック図である。
【図8】従来の基本的なΔΣ変換回路を示すブロック図である。
【図9】ノイズシェイピングの次数と量子化雑音のスペクトルとの関係を示すグラフである。
【図10】従来のループの伝達関数の次数を高めたΔΣ変換回路を示すブロック図である。
【図11】従来のMASH方式のΔΣ変換回路を示すブロック図である。
【符号の説明】
1,21,25,31,33,37,411,417,421…差分器
2,22,32,34,412,422…積分器
3,23,35,413,423…量子化器
4,24,36,414,424…遅延器
51〜5n…係数器
11〜13,41,42…ΔΣ変換部
14〜16,43〜45…微分器
17,18,46…加算器
26,27,38,39,416,426…変換器
Claims (5)
- 入力信号から第1の帰還信号及び第2の帰還信号を差し引いた差分信号を出力する第1の差分器と、
この第1の差分器の出力を積分する少なくとも1つの積分器と、
この積分器の出力を量子化して前記出力信号として出力する量子化器と、
前記量子化器の出力を遅延させて前記第1の帰還信号として前記第1の差分器に出力する遅延器と、
前記量子化器の入力信号と出力信号の差分を出力する第2の差分器と、
この第2の差分器の出力に微分を主体とした変換処理を施して前記第2の帰還信号として前記第1の差分器に出力する変換器と
を備えたことを特徴とするΔΣ変換回路。 - 前記変換器は、
縦続接続されたn個の微分器と、
これらn個の微分器のうちのn−m(但しn>m)段目の微分器の出力からn段目の微分器の出力を差し引いて前記第2の帰還信号として出力する第3の差分器と
を備えてなることを特徴とする請求項1記載のΔΣ変換回路。 - 少なくとも1つの積分器と量子化器とを含み、入力信号をΔΣ変換して出力するΔΣ変換回路において、
前記量子化器の入力信号及び出力信号の差分を出力する差分器と、
この差分器の出力を微分処理して前記入力信号に負帰還させる変換器と
を備えたことを特徴とするΔΣ変換回路。 - 1つの積分器と量子化器とを含み、入力端に入力された信号をΔΣ変換して出力端から出力するΔΣ変換部を継続接続して構成され、1段目のΔΣ変換器の入力端に入力信号を入力すると共に、k段目(但しk≧2)のΔΣ変換部の入力端に(k−1)段目のΔΣ変換部の量子化器の入力信号及び出力信号の差分を入力し、1段目の出力端から出力される信号と、k段目の出力端から出力される信号の前段からのノイズシェイピングの次数に応じた次数の微分器を経た信号とを加算して前記入力信号をΔΣ変換した出力信号として出力するΔΣ変換回路において、
前記各段のΔΣ変換部は、
前記量子化器の入力信号及び出力信号の差分を出力する差分器と、
この差分器の出力を微分処理して前記入力端に負帰還させる変換器と
を備えたことを特徴とするΔΣ変換回路。 - 前記変換器は、
ノイズシェイピングの次数をn、前記積分器の段数をn−mとしたとき、
H(z)=(1−z−1)n−m−(1−z−1)n
で表される変換特性を有するものである
ことを特徴とする請求項3又は4記載のΔΣ変換回路。
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