JP2004068922A - 液封入式防振装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】第1取付け具1と筒状の第2取付け具2とをゴム状弾性材から成る防振基体3を介して連結し、第2取付け具2に、防振基体3との間に液室4を形成するダイヤフラム5を設け、薄肉の仕切り板20で液室4を第1液室部6と第2液室部7に仕切る仕切り部8を設け、第1液室部6と第2液室部7を連通させるオリフィス22を形成し、仕切り板20に剛性増大部32を設けてある。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は液封入式防振装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図8に示すように液封入式防振装置は、自動車のエンジン等の振動体に取付ける第1取付け具1と、車体フレームに取付ける丸筒状の第2取付け具2とをゴム状弾性材から成る防振基体3を介して連結し、第2取付け具2に、防振基体3との間に液室4を形成するダイヤフラム5を設け、薄肉の仕切り板20で液室4を第1液室部6と第2液室部7に仕切る仕切り部8を設け、第1液室部6と第2液室部7を連通させるオリフィス22を形成して構成してある。この構造により、両液室部6,7の液流動効果や防振基体3の防振効果を得て振動体から車体に振動が伝わるのを抑制している。
【0003】
また、これらの構造に加えて、第2取付け具2の径方向外方側に張り出す被ストッパ部10を第2取付け具2に形成するとともに、被ストッパ部10を第2取付け具2の軸心方向で受止める板状のストッパ部材11を第1取付け具1側に片持ち支持させ、防振基体3の過剰な圧縮・伸長(大変位)を防止してある。
【0004】
上記の構造の液封入式防振装置において、各部の固有振動数が通常の運転時における振動体の振動数の範囲内にあると、通常の運転時に各部がそれぞれ共振し、液封入式防振装置のばね定数が上がって防振効果を十分に得ることができなくなる。
【0005】
そこで従来、ストッパ部材11や仕切り板20や防振基体3を、それらの固有振動数が前記振動数の範囲よりも高くなるように形成してあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の構成によれば、通常の運転時にはストッパ部材11や仕切り板20や防振基体3の共振を回避でき、液封入式防振装置のばね定数が上がるのを回避できて防振効果を十分に得ることができるものの、ストッパ部材11と仕切り板8と防振基体3のいずれをもそれらの固有振動数が高くなるように形成してあったために、振動体の振動数が前記範囲を越えるような運転状態になると、ストッパ部材11と仕切り板20と防振基体3のいずれもが一斉に共振し、図5の一点鎖線(従来例)で示すように液封入式防振装置のばね定数が急激に大きくなって、防振性能が大きく低下しやすかった(図5については[実施形態]の項で詳しく説明してある)。
【0007】
本発明の目的は、振動体の振動数が通常の運転時における範囲を越えるような運転状態になっても防振性能が低下しにくい液封入式防振装置を提供する点にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1による発明の構成は、第1取付け具と筒状の第2取付け具とをゴム状弾性材から成る防振基体を介して連結し、前記第2取付け具に、前記防振基体との間に液室を形成するダイヤフラムを設け、薄肉の仕切り板で前記液室を第1液室部と第2液室部に仕切る仕切り部を設け、前記第1液室部と第2液室部を連通させるオリフィスを形成し、前記仕切り板に剛性増大部を設けてある点にある。
【0009】
請求項2による発明の構成は、請求項1による発明の構成において、前記仕切り部は、前記第2取付け具に内嵌させる筒部の内周壁間に前記仕切り板を架設して構成し、前記筒部と仕切り板とは、一枚の金属板をプレス加工して一体に形成してある点にある。
【0010】
請求項3による発明の構成は、請求項1又は2による発明の構成において、前記剛性増大部は、前記仕切り板の両板面のうち少なくとも一方の板面側に薄板材を重合し固着して構成してある点にある。
【0011】
請求項4による発明の構成は、請求項1又は2による発明の構成において前記剛性増大部は、前記仕切り板に所定数のリブを形成して構成してある点にある。
【0012】
請求項5による発明の構成は、請求項4による発明の構成において、前記リブは、前記仕切り板をプレス加工して形成してある点にある。
【0013】
請求項6による発明の構成は、請求項1〜5のいずれか一つによる発明の構成において、前記第2取付け具の径方向外方側に張り出す被ストッパ部を前記第2取付け具側に形成するとともに、前記被ストッパ部を前記第2取付け具の軸心方向で受止めるストッパ部材を前記第1取付け具側に片持ち支持させるよう構成してある点にある。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
[第1実施形態]
図1,図2,図4に自動車用の液封入式防振装置を示してある。この液封入式防振装置は、エンジンに取付ける板状の第1取付け金具1と、エンジンの下方の車体フレームに取付ける丸筒状の第2取付け金具2の上端部とをゴム状弾性材から成る防振基体3を介して連結し、第2取付け具2に、防振基体3との間に液室4を形成するダイヤフラム5を設け、液室4を上側の第1液室部6と下側の第2液室部7に仕切る仕切り部8を設け、両液室部6,7に液体を封入して構成してある。
【0016】
そして、第2取付け金具2の径方向外方側に張り出す被ストッパ部10を第2取付け金具2の上端側に形成するとともに、エンジンへの第1取付け金具1の取付け状態で、被ストッパ部10を第2取付け金具2の軸心方向(上下方向)及び横方向で受止める板状のストッパ金具11(ストッパ部材に相当)を第1取付け金具1側に、この第1取付け金具1とは別体に設けて防振基体3の過剰な圧縮・伸長(大変位)を防止してある。
【0017】
第1取付け金具1は、その中央部に突設した上向きの取付けボルト12をエンジン側の雌ねじ部に螺合してエンジンに取付ける。19は第1取付け金具1に突設した上向きの位置決めピンである。この位置決めピン19でエンジン側に対する第1取付け具1の位置を正確に決めることができる。
【0018】
第2取付け金具2は、防振基体3を加硫接着される筒状金具部13と、この筒状金具部13にかしめ固定された底金具部14とから成り、底金具部14の中央部に突設した下向きの取付け用ボルト15を車体フレーム側の雌ねじ部に螺合して車体フレームに取付ける。
【0019】
防振基体3は円錐台状に形成してあり、その上端面が第1取付け金具1に加硫接着し、下端外周部が筒状金具部13の上広がり状の上端部に加硫接着している。そして、防振基体3の下端部に連なるゴム膜部16が筒状金具部13の内周面に加硫接着している。
【0020】
図2に示すように、ダイヤフラム5は部分球状のゴム膜体17とその外周部側のリング金具18とから成る。
【0021】
仕切り部8は、筒状金具部13に内嵌させる丸筒部9と、丸筒部9の上端よりも少し下方の内周壁間の仕切り板20と、下側の取付け用のフランジ21とを、一枚の薄肉の金属板をプレスして形成してある(つまり、仕切り部8は、液室4を第1液室部6と第2液室部7に仕切る仕切り板20を丸筒部9の内周壁間に架設して構成してある)。
【0022】
丸筒部9は上下両端部を径方向外方側に張り出させてあり、上端部と、取付け用のフランジ21の付け根側の下端部とが筒状金具部13のゴム膜部16に内嵌している。丸筒部9の周壁と筒状金具部13のゴム膜部16との間は、第1液室部6と第2液室部7を連通させるオリフィス22に形成してある。取付け用のフランジ21はダイヤフラム5のリング金具18・第2取付け金具2の底金具部14と共に筒状金具部13にかしめ固定してある。
【0023】
また、仕切り板20に剛性増大部32を設け、この剛性増大部32は、図3にも示すように、仕切り板20の上面に薄い金属製の円板33(薄板材に相当)を仕切り板20と同芯状に重合し溶接固着して構成してある。円板33の径は仕切り板20の径の約三分の2、肉厚は仕切り板20と同一である。
【0024】
上記の構造により、振動数の低い大振幅の振動が発生すると、液体がオリフィス22を通って両液室部6,7間を流動することで振動を減衰させ、振動数の高い微振幅の振動が発生すると、液体がオリフィス22を通ることなく、仕切り板20の往復動変形により振動を減衰させる。
【0025】
被ストッパ部10は、筒状金具部13の上端側の平面視長方形状の張り出し片23と、これよりも下方の補強金具板24とを、これらに対応させて張り出させた防振基体部分25で覆って形成してある。
【0026】
ストッパ金具11は、第1取付け金具1に上方側から重合する重合部26と、被ストッパ部10を上下両方向側及び横外方側から囲むストッパ作用部27とを一体に連設して断面「つ」の字状に形成してある。さらに、重合部26の幅方向両端部側を下方に折曲して補強用の第1リブ28を形成し、重合部26に、取付けボルト12を挿通させるボルト挿通孔29と、位置決めピン19を挿通させるピン挿通孔30とを形成してある。ストッパ作用部27にもその幅方向中央部を盛り上げて補強用の第2リブ31を形成してある。これによりストッパ金具11の強度を上げることができる。上記構造のストッパ金具11は、重合部26が第1取付け金具1とエンジン側の取付け部とに挟持されて第1取付け具1側に片持ち支持された状態になる。
【0027】
図5に示すように本発明者は、上記構造の液封入式防振装置(実施例1)に加わる振動数と液封入式防振装置のばね定数との関係を実験により求めた。同様に、仕切り板20に剛性増大部32を設けてない液封入式防振装置(従来例)に加わる振動数と液封入式防振装置のばね定数との関係を実験により求め、両実験結果を比較した。
【0028】
[実験の条件]
50Hz〜1000Hz、+−9.8m/s2の振動を液封入式防振装置に加え、各振動数ごとの液封入式防振装置のばね定数を測定した。
【0029】
[実験の結果]
従来例では50Hz〜700Hzの振動が加わった場合、ばね定数が1500N/mm以内のほぼ一定の値になったが、700Hzを超える振動が加わるとばね定数が大きく上昇し始め、900Hzの振動で最大の9000N/mmになった。
【0030】
これに対して実施例1では50Hz〜700Hzの振動が加わった場合、ばね定数が1000N/mm〜1250N/mmのほぼ一定の値になり、また700Hz〜950Hzの振動が加わった場合、3000N/mm以内に抑えることができ、1000Hzの振動が加わっても4000N/mm以内に抑えることができた。
【0031】
[第2実施形態]
図6,図7に示すように、仕切り板20に、第1実施形態とは異なる構造の剛性増大部32を設けてあり、この剛性増大部32は、プレス加工により仕切り板20に6個の第3リブ34を上方に膨出形成して構成してある。6個の第3リブ34は仕切り板20の軸心周りに60度ごとに放射状に配置してある。その他の構造は第1実施形態の液封入式防振装置とほぼ同じであり、その構造の説明は省略する。
【0032】
図5に示すように本発明者は、上記構造の液封入式防振装置(実施例2)に加わる振動数と液封入式防振装置のばね定数との関係を実験により求め、従来例(第1実施形態における従来例と同じ)の実験結果と比較した。実験の条件と、従来例の実験の結果とは第1実施形態に記載した通りである。
【0033】
実施例2では50Hz〜700Hzの振動が加わった場合、ばね定数が1000N/mm〜1600N/mmのほぼ一定の値になり、700Hzを超える振動が加わっても6300N/mm以内に抑えることができた。
【0034】
[別実施形態]
前記円板33を仕切り板20の下面に重合してあっても、一対の円板33を上下両面に各別に重合してあってもよい。前記第3リブ34の数や形状は上記の実施形態における数や形状に限られるものではない。また、第3リブ34を仕切り板20の下方に膨出形成してあってもよく、例えば上方に膨出する第3リブ34と下方に膨出する第3リブ34とを隣合うように配設してあってもよい。第3リブ34をプレス加工以外の手段で形成してあってもよい。上記の実施形態で挙げた数値は一例であり別の数値であってもよい。
【0035】
【発明の効果】
請求項1の構成によれば、仕切り板に剛性増大部を設けてあるから、振動体の振動数が通常の運転時における振動体の振動数を越えるような運転状態になって、ストッパ部材や防振基体が共振しても、仕切り板が共振するのを回避することができ、仕切り板と防振基体とストッパ部材のいずれもが共振する従来の構造に比べると、上記の運転状態で液封入式防振装置のばね定数が大きくなるのを抑制することができる。
【0036】
従って、振動体の振動数が通常の運転時における振動体の振動数の範囲を越えるような運転状態になっても防振性能が低下しにくい液封入式防振装置を提供することができた。
【0037】
請求項2の構成によれば、仕切り部は、第2取付け具に内嵌させる筒部の内周壁間に仕切り板を架設して構成し、筒部と仕切り板とは、一枚の金属板をプレス加工して一体に形成してあるから、仕切り部を簡単に形成することができて製作コストを低廉化することができる。
【0038】
請求項3の構成によれば、剛性増大部は、仕切り板の両板面のうち少なくとも一方の板面側に薄板材を重合し固着して構成してあるから、剛性増大部の構造を簡素化することができる。
【0039】
また液封入式防振装置においては、請求項2に記載したように、仕切り部を構成するに、第2取付け具に内嵌させる筒部の内周壁間に仕切り板を架設し、筒部と仕切り板とを、一枚の金属板をプレス加工して一体に形成した構造があり、例えば、仕切り板を厚肉にすることで仕切り板の剛性を増大させると、金属板のプレスが困難になって上記の仕切り部を構成できなくなる不具合があるが、請求項3の構成では、剛性増大部は、仕切り板の両板面のうち少なくとも一方の板面側に薄板材を重合し固着して構成してあるから、上記の不具合を回避することができ、一枚の金属板をプレス加工して形成した上記の構造とは異なった構造に変更しなくても済む。
【0040】
請求項4の構成によれば、剛性増大部は、仕切り板に所定数のリブを形成して構成してあるから、請求項3の構成による上記の効果と同様の効果を奏することができる。
【0041】
請求項5の構成によれば、前記リブは前記仕切り板をプレス加工して形成してあるから、剛性増大部を簡単に形成することができて製作コストを低廉化できる。
【0042】
請求項6の構成によれば、第1取付け具側に片持ち支持されるストッパ部材を備えた液封入式防振装置において、請求項1〜5のいずれか一つの構成による効果と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】液封入式防振装置の平面図
【図2】液封入式防振装置の縦断正面図
【図3】図2におけるA視図
【図4】液封入式防振装置の側面図
【図5】液封入式防振装置の振動数とばね定数の関係を示す図
【図6】第2実施形態の液封入式防振装置の縦断正面図
【図7】図6におけるB視図
【図8】従来の技術を示す縦断正面図
【符号の説明】
1 第1取付け具
2 第2取付け具
3 防振基体
4 液室
5 ダイヤフラム
6 第1液室部
7 第2液室部
8 仕切り部
10 被ストッパ部
11 ストッパ部材
22 オリフィス
32 剛性増大部
33 薄板材
34 リブ
Claims (6)
- 第1取付け具と筒状の第2取付け具とをゴム状弾性材から成る防振基体を介して連結し、前記第2取付け具に、前記防振基体との間に液室を形成するダイヤフラムを設け、薄肉の仕切り板で前記液室を第1液室部と第2液室部に仕切る仕切り部を設け、前記第1液室部と第2液室部を連通させるオリフィスを形成し、前記仕切り板に剛性増大部を設けてある液封入式防振装置。
- 前記仕切り部は、前記第2取付け具に内嵌させる筒部の内周壁間に前記仕切り板を架設して構成し、前記筒部と仕切り板とは、一枚の金属板をプレス加工して一体に形成してある請求項1記載の液封入式防振装置。
- 前記剛性増大部は、前記仕切り板の両板面のうち少なくとも一方の板面側に薄板材を重合し固着して構成してある請求項1又は2記載の液封入式防振装置。
- 前記剛性増大部は、前記仕切り板に所定数のリブを形成して構成してある請求項1又は2記載の液封入式防振装置。
- 前記リブは、前記仕切り板をプレス加工して形成してある請求項4記載の液封入式防振装置。
- 前記第2取付け具の径方向外方側に張り出す被ストッパ部を前記第2取付け具側に形成するとともに、前記被ストッパ部を前記第2取付け具の軸心方向で受止めるストッパ部材を前記第1取付け具側に片持ち支持させるよう構成してある請求項1〜5のいずれか一つに記載の液封入式防振装置。
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