JP3764534B2 - 液体封入式防振装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体封入式防振装置に関するものであり、特に、主バネを形成する防振ゴム体の外周に液室を設けるようにするとともに、当該液室の外側を耐熱性に優れたゴム膜状弾性部材にて覆うようにし、これによって高周波数域における低動バネ定数化を図るようにした、液体封入式防振装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
防振装置のうち、特に、自動車用のエンジンマウント等にあっては、動力源であるところのエンジンが、アイドリング運転の状態から最大回転速度までの間、種々の状況下で使用されるものであるため、広い範囲の周波数に対応できるものでなければならない。そのため、内部に二つの液室を設け、その間をオリフィスをもって連結するようにした、いわゆる液体封入式のエンジンマウント(防振装置)が、すでに案出されており、公知となっている。ところで、このような従来の液体封入式のエンジンマウントは、エンジンルーム内等の高温下に置かれるものであるところから、当該インシュレータの部分が、疲労変形(へたり)等を起こすという問題点がある。このような高温下での疲労変形(へたり)等の問題点を解決するために、主バネを形成するインシュレータ(ゴム状弾性体)の外側に耐熱性の弾性部材(ゴム材)を配するようにしたものが既に案出されており、例えば特開平7−114388号公報等により、すでに公知となっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来のものは、主バネを形成する部分を天然ゴムを主体としたゴム状弾性体にて形成させるとともに、その外側の部分に耐熱性に優れたゴム状弾性部材を巻き付けるようにした構成からなるものである。従って、上記天然ゴムを主体とした主バネの部分の耐熱性あるいは酸素遮断性を向上させようとすれば、上記外側に巻き付けられる(装着される)耐熱性弾性部材の部分を厚くする必要がある。しかしながら、この耐熱性を有するゴム状弾性部材は、高周波数振動に対して、その動バネ定数が高くなるという性質を有している。従って、高周波数域において、低動バネ特性を得ようとするエンジンマウント等においては、上記耐熱性弾性部材の部分を厚くするのは好ましくない。
このような問題点を解決するために、主バネを形成する防振ゴム体を天然ゴムを主体とした防振ゴム材から形成させるようにするとともに、当該防振ゴム体の外周に液室を設け、更に、当該液室の外郭を形成するところに、耐熱性のゴム膜状弾性部材を設けるようにして、高周波数域全般の振動に対して十分に高い遮断効果が得られる液体封入式の防振装置を提供しようとするのが、本発明の目的(課題)である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明においては次のような手段を講ずることとした。すなわち、請求項1記載の発明においては、振動体に取付けられる上部連結部材と、車体側のメンバに取付けられる下部連結部材と、この下部連結部材にその一端が結合されるものであって筒状の形態からなる筒状金具と、この筒状金具の下端部に設けられたフランジ部に前記下部連結部材とともに一体的に結合されたプレートと、このプレートと上記上部連結部材との間に設けられ、上記振動体からの振動が入力されるように主バネを形成する天然ゴムを主体とした防振ゴム体と、この防振ゴム体の下方部に当該防振ゴム体と直列に設けられ、その内部に非圧縮性液体が充填された主室と、この主室にオリフィスを介して連通された副室と、を備えてなる防振装置において、上記防振ゴム体の外側周りであって、前記筒状金具の上部開口部と上記上部連結部材とに結合されて該防振ゴム体とは別個独立にゴム膜状の耐熱性弾性部材が設けられ、上記副室は、上記ゴム膜状の耐熱性弾性部材及び上記筒状金具により形成される空間部であって、上記防振ゴム体の外周に当該防振ゴム体を取り囲むように設けられているとともに、上記主室と副室とを連通させるオリフィスは上記プレートと筒状金具との間に形成され、上記副室内の液体が上記防振ゴム体が形成する主バネのバネ定数に対してダンパマスを形成するように構成されていることを特徴とする。
【0005】
このような構成を採ることにより、請求項1記載の発明のものにおいては次のような作用を呈することとなる。すなわち、上記主バネを形成する防振ゴム体の周りには、当該防振ゴム体を取り囲むように一定の質量を有する液体が充填された液室(副室)が設けられているものであるから、本防振装置における上記副室内の液体の部分が、防振ゴム体が形成する主バネのバネ定数(K)に対して、ダンパマス、すなわち、質量(M)を形成することとなる。従って、上記振動体からの振動入力に対して、これらバネ定数(K)及び質量(M)によって、一種の共振系が形成されることとなる。その結果、100Hzないし600Hzの高周波数域の振動全般にわたって、本防振装置における動バネ定数の低減化がもたらされることとなる。これによって、これら高周波数域全般にわたっての振動の遮断機能が発揮されることとなる。
【0006】
また、請求項1記載の発明のものにおいては、上記防振ゴム体の外側に、副室の外郭を形成する表皮部となるゴム膜状の耐熱性弾性部材が設けられていることから、エンジンルーム等、高温下に設置される場合においても、主バネを形成する上記防振ゴム体部分が直接高温に晒されることがない。また、防振ゴム体の周りに副室を配置することで、その表面部が、直接大気中の酸素と接触することもない。すなわち、酸素遮断性において優れた構成となっている。従って、本発明における主バネを形成する防振ゴム体としては、耐熱性及び対酸素劣化性については、特に配慮する必要がなく、低動バネ特性のみを追求すれば良い。その結果、通常の天然ゴムを主体とした防振ゴム材を採用することができるようになり、高周波数振動に対する動バネ定数の上昇を抑えることができる。すなわち、動バネ定数(Kd )と静バネ定数(Ks )との比(Kd /Ks )が高くならず、高周波数域における振動遮断効果が十分に得られることとなる。
【0007】
また、請求項1記載の発明のものにおいては、上記防振ゴム体の外側に設けられる耐熱性の弾性部材は、上記防振ゴム体の周りに設けられた副室の外郭を形成する表皮部を担うようになっているものである。従って、本弾性部材は、非常に薄くすることができるようになる。すなわち、ゴム膜状の形態からなるものであれば良い。また、本弾性部材は、主バネを形成する防振ゴム体とは別個独立に設けられているものであるから、本弾性部材が、本液体封入式防振装置全体のバネ定数、特に、動バネ定数(動バネ特性)に影響を及ぼすことが無い。これらのことから、本液体封入式防振装置の高周波数域における動バネ定数は低く抑えられることとなる。
【0008】
次に、請求項2記載の発明について説明する。このものも、その基本的な点は、上記請求項1記載のものと同じである。その特徴とするところは、主室と副室とを有する液体封入式防振装置において、上記防振ゴム体の周りに主室及び副室とは独立した液室を設け、本防振ゴム体の耐熱性及び対酸素遮断性を向上させるようにしたことである。すなわち、振動体に取付けられる上部連結部材と、車体側のメンバに取付けられる下部連結部材と、この下部連結部材にその一端が結合されるものであって筒状の形態からなる筒状金具と、この筒状金具の下端部に設けられたフランジ部に前記下部連結部材とともに一体的に結合されたプレートと、このプレートと上記上部連結部材との間に設けられ、上記振動体からの振動が入力されるように主バネを形成する天然ゴムを主体とした防振ゴム体と、上記防振ゴム体の下方部に当該防振ゴム体と直列に設けられ、その内部に非圧縮性液体が充填された主室と、この主室の下方部に仕切板を介して設けられた副室と、これら主室と副室とを連通させるように上記仕切板に設けられたオリフィスとを備えている液体封入式防振装置において、上記防振ゴム体の外側周りであって、上記筒状金具の上部開口部と上記上部連結部材とに結合されて該防振ゴム体とは別個独立にゴム膜状の耐熱性弾性部材を設け、このゴム膜状の耐熱性弾性部材及び上記筒状金具により形成される空間部であって、上記防振ゴム体の外周に当該防振ゴム体を取り囲むようにその内部に非圧縮性液体が充填された液室を上記主室及び副室とは独立して設け、この独立の液室内の液体が上記防振ゴム体が形成する主バネのバネ定数に対してダンパマスを形成するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
このような構成を採ることにより、請求項2記載の発明のものにおいては、上記請求項1記載の発明の作用に加えて、更に次のような作用を呈することとなる。すなわち、請求項2記載の発明のものは、主バネを形成する防振ゴム体の下方部に、当該防振ゴム体に直列に、非圧縮性液体の封入された主室及び副室が、更にはこれら主室と副室との間を連結するオリフィスが設けられていることから、上記請求項1記載のものに加えて、更に、上記主室及び副室間の液体の流動作用により、低周波数域の振動であるアイドリング振動の遮断が行なわれることとなる。
【0010】
次に、請求項3記載の発明について説明する。このものも、その基本的な点は、上記請求項1記載の発明と同じである。その特徴とするところは、上記請求項1記載の構成に加えて、上記防振ゴム体の下方部に当該防振ゴム体と直列に設けられた主室内に、振動体へ連結される連結部材の下端に取り付けられて上記振動体から直接入力される振動に応じて振動し上記主室内の液体を共振する撹拌板が設けられていることを特徴とする。
【0011】
このような構成を採ることにより、請求項3記載の発明においては、上記撹拌板の作用により、高周波数域での低動バネ定数化(低動バネ特性)を得ることができるようになる。すなわち、上記撹拌板の振動により、上記主室内の液体を共振させることにより、100Hzないし600Hzの範囲内の高周波数振動であって特定周波数の振動入力に対して、本防振装置全体の動バネ定数を低減化させることができるようになる。また、この特定周波数の付近の高周波数域全般にわたっての振動入力に対しては、上記防振ゴム体周りに形成される副室内の液体の質量効果(ダンパマス効果)によって、これら入力振動に対する動バネ定数の低減化を図ることができるようになる。その結果、これら高周波数域の振動の遮断効果が高められることとなる。また、これら作用に加えて、上記主室及び副室、更にはこれらの間を連結するオリフィスの作用により、アイドリング振動に対して低動バネ定数を得ることができるようになり、当該アイドリング振動に対する遮断機能が発揮されることとなる。
【0012】
次に、請求項4記載の発明について説明する。このものも、その基本的な点は、上記請求項3記載の発明と同じである。その特徴とするところは、上記撹拌板の端面全周部にゴム状弾性体を設け、これをよって、本防振装置における上下方向及び当該上下方向を軸とする場合におけるラジアル方向のストッパを形成させ、更に、当該ストッパを形成するゴム状弾性体のところであって上記撹拌板の下面部を形成するところには、該攪拌板が上下方向の最下端部まで移動してストッパ機能を発揮している状態において液体の流動を可能とするスリット溝が設けられていることを特徴とする。
【0013】
このような構成を採ることにより、本発明のものにおいては、次のような作用を呈することとなる。すなわち、上記請求項3記載の発明のところで述べたと同様、上記撹拌板の作用による高周波数域での低動バネ定数化が得られることとなる。そして、これに加えて、更に、本撹拌板がストッパの役目を果たすこととなる。また、これらストッパを形成するもののうち、ダウンストッパ(バウンドストッパ)を成す上記撹拌板の下面部のところには、ゴム状弾性体を基礎としたスリット溝が設けられるようになっている。そして、このスリット溝内を、上記主室内の液体が流動できるようになっている。従って、上記撹拌板が最下方部まで移動(ストローク)してストッパ接触をしている状態において、更に、当該撹拌板を下方にストロークさせようとする力が作用(入力)したときに、上記ストッパを形成するゴム状弾性体の部分が撓むことの外に、上記撹拌板の下方部に溜っていた液体が上記スリット溝を経由して撹拌板の外側に流動する。このような液体の流動作用によって、上記ストッパ作動後におけるバネ定数(動バネ特性)の上昇が抑えられることとなる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について図を基に説明する。図1ないし図2は、本発明の一つの実施の形態を示すもので、その構成は、図1に示す如く、振動体に取付けられる上部連結部材9と、車体側のメンバ等に取付けられる下部連結部材99と、上記下部連結部材99にその一端が結合されるものであって筒状の形態からなる筒状金具22と、当該筒状金具22の上部開口部と上記上部連結部材9との間に設けられるゴム膜状の弾性部材2と、当該ゴム膜状弾性部材2及び上記筒状金具22にて形成される空間部内に設けられるものであって、上記振動体からの振動が入力される主バネを形成する防振ゴム体1と、当該防振ゴム体1の下方に当該防振ゴム体1と直列に設けられるものであって、その内部に非圧縮性流体(液体)の封入される主室3と、上記防振ゴム体1の周りであって上記ゴム膜状弾性部材2及び筒状金具22にて形成される空間部に設けられるとともに、その内部に液体の充填された室からなる副室6と、これら主室3と副室6との間を連結するオリフィス4と、上記上部連結部材9に設けられるものであって、振動体への連結に供される連結ボルト91の一端に取り付けられるとともに、上記主室3内にて、上記振動体からの入力振動に応じて振動する撹拌板5と、からなることを基本とするものである。
【0015】
このような基本構成において、上記弾性部材2は、薄膜状の部材からなるものであり、具体的には、EPDM等の耐熱性ゴム材からなるものである。そして、その上方部は、上記上部連結部材9に結合されるとともに、下方部は円筒状の筒状金具22の上部開口部に一体的に結合されて上記防振ゴム体1とは別個独立に設けられている。そして、当該筒状金具22の下端部にフランジ部222が設けられており、このフランジ部222にて、オリフィス4の一部を形成するとともに防振ゴム体1の下方部を支えるプレート15、更には下部連結部材99等がクリンチ結合手段等により一体的に結合されるようになっているものである。なお、上記弾性部材2は、図1に示す如く、上記筒状金具22等とともに、一定の空間を形成するようになっているものである。そして、当該空間部内には、液体が充填されて上記の副室6となされているものである。
【0016】
このような構成からなる液体の充填された空間部内には、防振ゴム体1が設置されるようになっている。そして、当該防振ゴム体1は、図1に示す如く、上記上部連結部材9に、上記弾性部材2とは別個独立に設けられるようになっているものであり、天然ゴムを主体とした防振ゴム材にて形成されているものである。従って、高周波数域の振動入力に対して、その動バネ定数(Kd )の上昇が抑えられるようになっているものである。なお、このような構成からなる上記防振ゴム体1の周りに副室6が設けられるようになっているものにおいては、図1に示す如く、上記弾性部材2が、上記副室6内の液圧変動に応じて変形するダイヤフラムを形成するようになっているものである。
【0017】
次に、このような構成からなる防振ゴム体1の下方部には、例えば図1に示す如く、液体の封入された主室3が設けられるようになっており、この主室3は、オリフィス4を介して上記副室6に連通するようになっているものである。そして、このような主室3内には図1に示す如く、撹拌板5が設けられるようになっている。この撹拌板5は、円錐形の形態からなるものであり、上記上部連結部材9に設けられるものであって振動体への連結に供される連結ボルト91の、その一端側に取り付けられるようになっているものである。従って、本撹拌板5は、上記振動体からの振動が直接入力されるようになっているものであり、この振動入力に応じて、上記主室3内の液体を撹拌する(振動させる)ようになっているものである。
【0018】
なお、本実施の形態においては、上記撹拌板5は、本液体封入式防振装置の内部ストッパを形成するようになっており、円錐形撹拌板5の円周部付近には、その端面全周部51、52、59にわたってゴム状弾性体が設けられるようになっている。従って、本実施の形態のものにおいては、上面部51はリバウンドストッパを形成し、下面部52はバウンドストッパ(ダウンストッパ)を形成するようになっているものである。また、その側端部59は、前後・左右方向のストッパ、すなわち、ラジアル方向のストッパを形成するようになっているものである。なお、このようなストッパを兼用する撹拌板5については図1に示すようなストッパ部が円環状の形態からなるものの他に、図3に示すような短冊状の形態からなるものとが考えられる。この後者のもの(短冊状のもの)は、車体側のメンバ等に取り付けられるカップ状の下部連結部材99の、その円筒部のところを、四隅にわたって絞り込むことによって形成される縦壁部999のところに接触するようになっているものである。すなわち、上記撹拌板5を、図3に示す如く、短冊状の形態からなるようにするとともに、この短冊状撹拌板5の側端部59のところを、上記下部連結部材99の縦壁部999のところに、所定量の移動代(ストローク代)をもたせた状態で接触させるようにしているものである。これによって、上記振動体からの振動入力が、上記撹拌板5のラジアル方向へのものである場合、上記ストッパ59、999が作動し、これら振動入力が抑え込まれることとなる。なお、この短冊状のもの(図3参照)は、撹拌板としての機能は上記円環状のものに較べて低下することとなる。
【0019】
このような構成からなる撹拌板5の下面部52に形成されるゴム状弾性体からなるダウンストッパのところには、図1及び図2に示すようなスリット溝55が複数本設けられるようになっている。なお、このスリット溝55は、多くの場合、特に、上記撹拌板5が円錐形の形態からなるもの、すなわち、ストッパ部が円環状の形態からなるものにおいては、図2に示す如く、放射状に設けられるようになっている。そして、このストッパ部の下面部52のところに放射状に設けられたスリット溝55の作用によって、上記撹拌板5が最下端部までストロークしてダウンストッパとしての機能を発揮している状態において、更に下方部への入力が作用した場合、上記円錐形状の撹拌板5内に滞留している液体は、上記スリット溝55を介して、その外側へと排出されることとなる。これによって、ダウンストッパ作動時付近における動バネ定数の上昇を抑えることができるようになる。
【0020】
このような構成からなるものにおいて、上記弾性部材2及び筒状金具22等にて形成されるものであって、上記防振ゴム体1の、その外周部に形成される液室を有するものについての、他の実施の形態について、図4を基に説明する。この他の実施の形態においても、その基本的な点は、上記実施の形態のところで説明したものと同じである。その特徴とするところは、上記液室が独立の液室66となっていることである。すなわち、上部連結部材9及び上記筒状金具22の上部開口部の間に設けられるゴム膜状弾性部材2と上記上部連結部材9に別途連結される防振ゴム体1との間に形成される空間部内に、液体が充填(封入)されることによって、独立の液室66が形成されるようになっているものである。そして、このような構成からなる防振ゴム体1及び独立の液室66の下方部に、上記防振ゴム体1に対して直列に主室3が設けられるとともに、その下方部には仕切板45を介して副室6が設けられるようになっているものである。そして、このような構成からなる主室3と副室6との間の仕切板45には、これら各室3、6間を連結するオリフィス4が設けられるようになっているものである。そして更に、このような構成からなる副室6の下方部にはゴム膜状のダイヤフラム7を介して空気室8が形成されるようになっているものである。これら構成からなる各部材が、振動体に取り付けられる上部連結部材9と車体側のメンバ等に連結される下部連結部材99との間に設けられることによって、液体封入式防振装置が形成されるようになっている。
【0021】
このような構成からなる本実施の形態(図1及び図4に示す形態)のものについての、その作用等について説明する。すなわち、本実施の形態のものにおいては、主バネを形成する防振ゴム体1の周りには、一定の質量を有する液体の充填された副室6または主室3及び副室6とは独立した液室66が設けられるようになっているものであるところから、本防振装置における上記副室6または独立した液室66内の液体の部分は、防振ゴム体1が形成するバネ定数(K)に対して、ダンパマス、すなわち質量(M)を形成することとなる。従って、上記振動体からの振動入力に対して、これらバネ定数(K)及び質量(M)によって一種の共振系が形成されることとなる。特に、本実施の形態のものにおいては、上記質量(M)を形成する液体が100Hzないし600Hzの高周波数域全般の振動に対して、本防振装置における動バネ定数の低減化をもたらすこととなる。その結果、これら高周波数域全般における振動の遮断機能が発揮されることとなる。
【0022】
また、本実施の形態のものにおいては、上記防振ゴム体1の、その外側にゴム膜状の耐熱性弾性部材2が設けられるようになっているところから、エンジンルーム等、高温下に設置される場合においても、上記防振ゴム体1の部分が直接高温に晒されることがない。また、防振ゴム体1は、その周りに副室6または独立した液室66が設けられるようになっているところから、その表面部が、直接大気中の酸素に晒されることが無い。従って、耐熱性及び対酸素劣化性等については特に考慮する必要がない。その結果、防振ゴム体1として、通常の天然ゴムを主体とした防振ゴム材を採用することができるようになり、高周波数振動に対する動バネ定数の上昇を抑えることができるようになる。すなわち、動バネ定数(Kd )と静バネ定数(Ks )との比(Kd /Ks )が高くならず、高周波数域における振動遮断機能を十分に発揮させることができるようになる。また、上記防振ゴム体1の、その外側に設けられる耐熱性の弾性部材2は、上記防振ゴム体1の周りに設けられた副室6または独立した液室66の外郭を規定する表皮部を形成するようになっているものであるので、その厚さを薄くすることができるようになる。また、弾性部材2は、主バネを形成する防振ゴム体1とは別個独立に設けられるようになっているものであるところから、この弾性部材2が、液体封入式防振装置全体のバネ定数、特に動バネ定数(動バネ特性)に影響を及ぼすことが無い。これらのことから、液体封入式防振装置の高周波数域における動バネ定数を低く抑えることができるようになる。
【0023】
また、本実施の形態のうち、図1に示す形態のものにおいては、上記主室3内に撹拌板5が設けられるようになっていることより、この撹拌板5の作用により、高周波数域での低動バネ定数化(低動バネ特性)を得ることができるようになる。すなわち、上記撹拌板5の振動により、上記主室3内の液体を共振させることにより、100Hzないし600Hzの範囲内であって特定周波数の振動入力に対して、動バネ定数を低減化させることができるようになる。また、比較的低周波数の振動であるアイドリング振動に対しては、上記防振ゴム体1に直列に設けられる主室3及び副室6、更にはこれら両室3、6の間を連結するオリフィス4等の作用により、低動バネ定数を形成させることができるようになる。その結果、上記アイドリング振動の遮断が行なわれることとなる。
【0024】
また、上記撹拌板5はストッパ機能を発揮するようになっているとともに、当該撹拌板5の、その下面部52のところにはスリット溝55が設けられるようになっているので、このスリット溝55の作用により、ストッパ作動時付近におけるバネ特性の変動を滑らかに行なわせることができるようになる。その結果、ストッパ作動時の衝撃音等を軽減化することができるようになるとともに、ストッパが離れるときの吸着作用を低減化することができるようになる。
【0025】
【発明の効果】
以上のように、請求項1記載の発明においては、振動体に取付けられる上部連結部材と、車体側のメンバに取付けられる下部連結部材と、この下部連結部材にその一端が結合されるものであって筒状の形態からなる筒状金具と、この筒状金具の下端部に設けられたフランジ部に前記下部連結部材とともに一体的に結合されたプレートと、このプレートと上記上部連結部材との間に設けられ、上記振動体からの振動が入力されるように主バネを形成する天然ゴムを主体とした防振ゴム体と、この防振ゴム体の下方部に当該防振ゴム体と直列に設けられ、その内部に非圧縮性液体が充填された主室と、上記防振ゴム体の外側周りであって、前記筒状金具の上部開口部と上記上部連結部材とに結合されて該防振ゴム体とは別個独立に設けられているゴム膜状の耐熱性弾性部材と、このゴム膜状の耐熱性弾性部材及び上記筒状金具により形成される空間部であって、上記防振ゴム体の外周に当該防振ゴム体を取り囲むように設けられ、その内部に非圧縮性液体が充填された副室と、上記主室と副室とを連通させるように上記プレートと筒状金具との間に形成されたオリフィスとを備えてなり、前記副室内の液体が上記防振ゴム体が形成する主バネのバネ定数に対してダンパマスを形成するように構成されていることを特徴とし、また、請求項2記載の発明においては、振動体に取付けられる上部連結部材と、車体側のメンバに取付けられる下部連結部材と、この下部連結部材にその一端が結合されるものであって筒状の形態からなる筒状金具と、この筒状金具の下端部に設けられたフランジ部に前記下部連結部材とともに一体的に結合されたプレートと、このプレートと上記上部連結部材との間に設けられ、上記振動体からの振動が入力されるように主バネを形成する天然ゴムを主体とした防振ゴム体と、上記防振ゴム体の下方部に当該防振ゴム体と直列に設けられ、その内部に非圧縮性液体が充填された主室と、この主室の下方部に仕切板を介して設けられた副室と、これら主室と副室とを連通させるように上記仕切板に設けられたオリフィスとを備えている液体封入式防振装置において、上記防振ゴム体の外側周りであって、上記筒状金具の上部開口部と上記上部連結部材とに結合されて該防振ゴム体とは別個独立にゴム膜状の耐熱性弾性部材を設け、このゴム膜状の耐熱性弾性部材及び上記筒状金具により形成される空間部であって、上記防振ゴム体の外周に当該防振ゴム体を取り囲むようにその内部に非圧縮性液体が充填された液室を上記主室及び副室とは独立して設け、この独立の液室内の液体が上記防振ゴム体が形成する主バネのバネ定数に対してダンパマスを形成するように構成されていることを特徴としたので、上記主バネを形成する防振ゴム体に対して、上記液体の部分が特定の質量からなるダンパマスを形成することとなり、これによって高周波数域全般の振動に対して低動バネ定数を形成させることができるようになった。その結果、こもり音を対象とした高周波数域全般の振動遮断効果を高めることができるようになった。
【0026】
また、エンジンルーム等、高温下に設置される場合においても、上記防振ゴム体の部分が直接高温に晒されることがなくなった。また、防振ゴム体は、その周りに副室または独立した液室が設けられるようになっていることから、その表面部が、直接大気中の酸素と接触することも無くなった。その結果、主バネを形成する上記防振ゴム体に、天然ゴムを主体とした防振ゴム材を採用することができるようになり、高周波数域において低動バネ定数を得ることができるようになり、これによっても、こもり音を対象とした高周波数域の振動に対して、その遮断効果を高めることができるようになった。
【0027】
また、請求項3及び請求項4記載の発明においては、上記主室内に撹拌板を設けるとともに、当該撹拌板の下面部にゴム状弾性体を設け、これによってダウンストッパを形成させ、更に、このゴム状弾性体のところにスリット溝を設けるようにした構成を採ることとしたので、上記ダウンストッパ作動時に、上記撹拌板内に滞留している液体が、その外側に円滑に流れ出るようになり、ストッパ作動時の衝撃力が緩和されるようになった。その結果、ストッパ作動時におけるバネ定数の変化が滑らかになるとともに、衝撃音の発生等が防止されるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一つの実施の形態に関する液体封入式防振装置の全体構成を示す縦断面図である。
【図2】本発明にかかる撹拌板のところに設けられるスリット溝の構成を示す底面図である。
【図3】本発明にかかる撹拌板についての変形例を示す平面図である。
【図4】本発明にかかる他の実施の形態に関する液体封入式防振装置の全体構成を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 防振ゴム体
15 プレート
2 弾性部材(ゴム膜状の耐熱性弾性部材)
22 筒状金具
222 フランジ部
3 主室
4 オリフィス
45 仕切板
5 撹拌板
51 上面部
52 下面部
55 スリット溝
59 側端部
6 副室
66 独立の液室
7 ダイヤフラム
8 空気室
9 上部連結部材
91 連結ボルト
99 下部連結部材
999 縦壁部
Claims (4)
- 振動体に取付けられる上部連結部材と、車体側のメンバに取付けられる下部連結部材と、この下部連結部材にその一端が結合されるものであって筒状の形態からなる筒状金具と、この筒状金具の下端部に設けられたフランジ部に前記下部連結部材とともに一体的に結合されたプレートと、このプレートと上記上部連結部材との間に設けられ、上記振動体からの振動が入力されるように主バネを形成する天然ゴムを主体とした防振ゴム体と、この防振ゴム体の下方部に当該防振ゴム体と直列に設けられ、その内部に非圧縮性液体が充填された主室と、この主室にオリフィスを介して連通された副室と、を備えてなる防振装置において、上記防振ゴム体の外側周りであって、前記筒状金具の上部開口部と上記上部連結部材とに結合されて該防振ゴム体とは別個独立にゴム膜状の耐熱性弾性部材が設けられ、上記副室は、上記ゴム膜状の耐熱性弾性部材及び上記筒状金具により形成される空間部であって、上記防振ゴム体の外周に当該防振ゴム体を取り囲むように設けられているとともに、上記主室と副室とを連通させるオリフィスは上記プレートと筒状金具との間に形成され、上記副室内の液体が上記防振ゴム体が形成する主バネのバネ定数に対してダンパマスを形成するように構成されていることを特徴とする液体封入式防振装置。
- 振動体に取付けられる上部連結部材と、車体側のメンバに取付けられる下部連結部材と、この下部連結部材にその一端が結合されるものであって筒状の形態からなる筒状金具と、この筒状金具の下端部に設けられたフランジ部に前記下部連結部材とともに一体的に結合されたプレートと、このプレートと上記上部連結部材との間に設けられ、上記振動体からの振動が入力されるように主バネを形成する天然ゴムを主体とした防振ゴム体と、上記防振ゴム体の下方部に当該防振ゴム体と直列に設けられ、その内部に非圧縮性液体が充填された主室と、この主室の下方部に仕切板を介して設けられた副室と、これら主室と副室とを連通させるように上記仕切板に設けられたオリフィスとを備えている液体封入式防振装置において、上記防振ゴム体の外側周りであって、上記筒状金具の上部開口部と上記上部連結部材とに結合されて該防振ゴム体とは別個独立にゴム膜状の耐熱性弾性部材を設け、このゴム膜状の耐熱性弾性部材及び上記筒状金具により形成される空間部であって、上記防振ゴム体の外周に当該防振ゴム体を取り囲むようにその内部に非圧縮性液体が充填された液室を上記主室及び副室とは独立して設け、この独立の液室内の液体が上記防振ゴム体が形成する主バネのバネ定数に対してダンパマスを形成するように構成されていることを特徴とする液体封入式防振装置。
- 請求項1記載の液体封入式防振装置において、上記防振ゴム体の下方部に当該防振ゴム体と直列に設けられた主室内に、振動体へ連結される連結部材の下端に取り付けられて上記振動体から直接入力される振動に応じて振動し上記主室内の液体を共振する撹拌板が設けられていることを特徴とする液体封入式防振装置。
- 請求項3記載の液体封入式防振装置において、上記撹拌板の端面全周部にはゴム状弾性体を設け、これをもって、本防振装置における上下方向及び当該上下方向を軸とする場合におけるラジアル方向のストッパを形成させ、更に、当該ストッパを形成するゴム状弾性体のところであって上記撹拌板の下面部を形成するところには、該攪拌板が上下方向の最下端部まで移動してストッパ機能を発揮している状態において液体の流動を可能とするスリット溝が設けられていることを特徴とする液体封入式防振装置。
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