JP2004068049A - 水素移動量に優れたbcc固溶体型水素貯蔵合金および該水素貯蔵合金の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】固溶体型水素貯蔵合金の有効水素移動量を増大させる。
【解決手段】BCC固溶体型の水素貯蔵合金の表面に、LaNi5やPdなどの水素分子を解離する能力に優れた材料を用いて蒸着、スパッタリング、メッキ等によって被覆層を形成する。
【効果】水素吸放出時の反応性が促進され、固溶領域の水素の吸放出が行われやすくなり有効水素移動量が増加する効果が得られる。また、水素との反応性が高まるため、水素化速度が増加し、初期活性化が容易になる。合金組成によってはプラトー領域の傾きが小さくなる。
【選択図】 図2
【解決手段】BCC固溶体型の水素貯蔵合金の表面に、LaNi5やPdなどの水素分子を解離する能力に優れた材料を用いて蒸着、スパッタリング、メッキ等によって被覆層を形成する。
【効果】水素吸放出時の反応性が促進され、固溶領域の水素の吸放出が行われやすくなり有効水素移動量が増加する効果が得られる。また、水素との反応性が高まるため、水素化速度が増加し、初期活性化が容易になる。合金組成によってはプラトー領域の傾きが小さくなる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素貯蔵用材料、熱変換用水素吸収材料、燃料電池用水素供給用材料、Ni−水素電池用負極材料、水素精製回収用材料、水素ガスアクチュエータ用水素吸収材料等に用いられ、特に環境温度(20℃〜80℃)で優れた水素吸放出特性を示す水素貯蔵合金および該合金の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、水素の貯蔵・輸送用としてボンベ方式や液体水素方式があるが、これらの方式に代わって水素貯蔵合金を使った方式が注目されている。周知のように、水素貯蔵合金は水素と可逆的に反応して、反応熱の出入りを伴って水素を吸収、放出する性質を有している。この化学反応を利用して水素を貯蔵、運搬する技術の実用化が図られており、さらに反応熱を利用して、熱貯蔵、熱輸送システム等を構成する技術の開発、実用化が進められている。代表的な水素貯蔵合金としてはLaNi5、TiFe、TiMn1.5等がよく知られている。
【0003】
各種用途の実用化においては、水素貯蔵材料の特性を一層向上させる必要があり、例えば、水素貯蔵量の増加、原料の低廉化、プラトー特性の改善、水素との反応性の向上、耐久性の向上などが大きな課題として挙げられている。中でもV、TiVMn系、TiVCr系合金などの体心立方構造(以下BCC構造と呼ぶ)の固溶体型金属は、すでに実用化されているAB5型合金やAB2型合金に比べ大量の水素を吸収することが古くから知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記したV、TiVMn系、TiVCr系合金などのBCC固溶体型水素貯蔵合金は理論上400cc/g程度の水素を吸収することが知られている。しかし、そのうち約150cc/g程は固溶水素であり、合金中に安定して存在するため上記水素の吸収・放出にはあまり寄与しない。したがってBCC固溶体型水素貯蔵合金において実用上、有効に吸収・放出できる水素量は理論量の半分程度である。そのため、貯蔵用材料として実用化するには十分な特性であるとは言えなく、より多くの有効水素移動量を持つ合金の開発が求められている。
【0005】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、実用上の水素移動量に優れたBCC固溶体型水素貯蔵合金および該水素貯蔵合金の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明の水素移動量に優れたBCC固溶体型水素貯蔵合金のうち請求項1記載の発明は、表面に水素分子解離能力に優れた材料の被覆層が形成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の水素移動量に優れたBCC固溶体型水素貯蔵合金の発明は、請求項1記載の発明において、前記の水素分子解離能力に優れた材料が、PdまたはANi5−xBx(ただし、A=La、Mmの1種または2種;B=Al、B、Co、Cr、Cu、Fe、Mn、Si、Ti、Zn、Vの1種または2種以上;0≦X≦1.0;)のいずれかでであることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載のBCC固溶体型水素貯蔵合金の製造方法は、合金表面に水素分子解離能力に優れた材料で表面被覆処理を行って被覆層を形成することを特徴とする。
【0009】
請求項4記載のBCC固溶体型水素貯蔵合金の製造方法は、請求項3記載の発明において、前記表面被覆処理は、蒸着、スパッタリング、メッキ等により行うことを特徴とする。
【0010】
請求項5記載のBCC固溶体型水素貯蔵合金の製造方法は、請求項3または4に記載の発明において、前記表面被覆処理を行う合金が、30μm〜5mmの径を有する粉末からなることを特徴とする。
【0011】
すなわち本発明のBCC固溶体型水素貯蔵合金によれば、任意組成のBCC固溶体型水素貯蔵合金の表面をLaNi5やPdなどの水素分子を解離する能力に優れた材料で表面被覆することで、水素吸放出時の反応性が促進され、固溶領域の水素の吸放出が行われやすくなり有効水素移動量(80℃脱ガスによる見かけ上の水素吸収量)が増加する。更に、水素との反応性が高まるため、初期活性化を容易にし、水素化速度を増加させ、プラトー領域の傾きを小さくする作用も得られる。
【0012】
また、本発明のBCC固溶体型水素貯蔵合金の製造方法によれば、蒸着、スパッタリング、メッキ等によって合金の表面に容易かつ確実に表面被覆処理を行うことができる。表面処理がなされた合金は、水素移動量の増加を代表として、上記作用が得られる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明では、BCC固溶体型水素貯蔵合金を対象としており、本発明としては、該構造を有する水素貯蔵合金であれば、その組成が特定されるものではない。具体例としては、V、TiCr系、TiVCr系、TiVMn系、TiVFe系等が挙げられる。該合金は所定の組成に調整して常法により溶製することができる。溶製された合金は、必要に応じて熱処理等の適宜の処理を行うことができる。
【0014】
上記合金は、通常は粉末状にされ、その粉末の表面に上記被膜が形成される。該粉末の大きさは特に限定されるものではないが、好適には、実質的な径として30μm〜5mmを有するのが望ましい。また、粉末にする方法も特に限定されるものではなく、ハンマーによる機械的粉砕、アトマイズ法等の適宜の方法を選択することができる。
【0015】
本発明では、上記BCC固溶体型水素貯蔵合金の表面に水素分子解離能力に優れた材料で被覆層が形成される。該材料は、相対的にBCC固溶体型水素貯蔵合金よりも水素分子解離能力に優れ、水素吸放出速度が速い特性を有するものである。該材料としては、Pd、ANi5−xBx(ただし、A=La、Mmの1種または2種;B=Al、B、Co、Cr、Cu、Fe、Mn、Si、Ti、Zn、Vの1種または2種以上;0≦X≦1.0;)等が挙げられる。
該被覆層を形成する方法は特に限定されるものではないが、代表的には蒸着、スパッタリング、メッキ等が挙げられる。表面を被覆する際の条件は特に限定されるものではなく、被覆層の厚さも限定されるものではないが、代表的には0.01μm〜10μmの厚さを挙げることができる。
【0016】
上記により被覆層が形成された水素貯蔵合金は、従来と同様に、水素貯蔵用材料、熱変換用水素吸収材料、燃料電池用水素供給用材料、Ni−水素電池用負極材料、水素精製回収用材料、水素ガスアクチュエータ用水素吸収材料等の各種の用途に使用することができる。各用途では、優れた水素移動量によって効果的に水素の吸収、放出がなされる。
【0017】
【実施例】
以下に本発明の実施例を比較例と対比しつつ説明する。
試料として、Ti:Cr:Vの組成比が36:50:14となるように原料を配合した。この配合物を真空アーク溶解装置のるつぼ内に収納し、高純度Arガス雰囲気下でアーク溶解し、装置内で室温まで冷却して凝固させた。その後、シリコニット炉を使用し高純度Arガス雰囲気下で1400℃の均質化熱処理を施し、水冷処理によりBCC単相の合金(BCC固溶体型合金)を作製した。得られた合金は大気中で30μm〜5mmのサイズに粉砕し、表面処理を施していない試料、Pd、LaNi5等による表面被覆処理を施した試料をそれぞれ準備した。なお、表面被覆処理を施した試料には、蒸着法を施したものと、スパッタリング法を施したものとをそれぞれ用意した。蒸着法、スパッタリング法の条件は以下に示す通りである。
<蒸着条件>
真空度:1×10−3Pa以下、タングステンバスケットを使用し粉末試料全面に蒸着
<スパッタ条件>
電力:DC100V
雰囲気Ar圧力:7×10−3Torr
成膜時間:100sec
【0018】
さらに、それぞれの試料について以下の手順に従って水素活性化特性の測定を行った。
先ず、各試料3gを高圧法金属水素化物製造装置内のステンレス鋼製反応容器内に封入した。上記試料を用いて水素吸収・放出特性を測定する前の処理として、前記反応容器内を減圧(約10−2mmHg)排気しながら80℃にて約1時間の脱ガス処理した後、20℃で50kgf/cm2圧の高純度水素を導入し、活性化処理を行った。このような処理によって試料は直ちに水素を吸収し始め、30分後には水素の吸収が完了した。
【0019】
さらに容器を80℃で排気して前記試料から水素を放出させ、活性化処理を終了し、水素化の反応速度を測定した。実施例としてのPd蒸着処理材およびLaNi5蒸着処理材と、比較例としての表面処理なし材とについて、水素吸収量の時間変化を図1に示した。図から明らかなように、表面被覆処理を行ったものは表面処理なし材に比較して、合金の活性化が促進されていることがわかる。
【0020】
次に、各試料における水素化特性を測定した。具体的には、表面処理なし材と、Pdスパッタリング処理材とについて、水素化時の水素の吸収量と経過時間との関係を測定し、図2に示した。
図2から明らかなように、表面被覆処理を行うことでBCC固溶体型水素貯蔵合金の水素化速度を増加させ、見かけ上の水素吸収量が増加していることがわかる。
【0021】
次に、表面処理なし材と、Pdスパッタリング処理材について水素化特性(PCT曲線)を測定し、その結果を図3に示した。また、表面処理なし材と、LaNi5蒸着処理材について同様に水素化特性(PCT曲線)を測定し、その結果を図4に示した。
なお、水素化特性の測定は、活性化処理後容器温度を20℃に降下させて該温度に保持し、容器内に高純度水素を所定量導入した。試料に水素が吸収され容器内の圧力が安定した後、容器内の水素圧力および定容積法を用いて試料に吸収された水素量を求めた。再び、所定量の水素を容器に導入し、圧力の安定後、水素圧力および水素吸収量を求めた。以上の操作を容器内の圧力が50kgf/cm2となるまで繰り返し、水素吸収過程における水素圧力−吸収量一等温曲線(P−C−T曲線)を求めた。
【0022】
上記のように、水素を各試料に50kgf/cm2の圧力まで吸収させた後、反応容器を前記20℃に保持したままで、容器から所定量の水素を排出し、容器内の水素圧力が安定した後、容器内の圧力及び定容積法を用いて試料から放出された水素量を求めた。再び反応容器から所定量の水素を排出した。以上の操作を容器内の圧力が0.2kgf/cm2となるまで繰り返し、水素放出過程における水素−圧力−吸収曲線(P−C−T曲線)を求めた。
図3、4から明らかなように被覆処理材は、プラトーの傾きが小さくなっている。
【0023】
また、上記試料の組成以外に、Ti:Cr:Vの組成比が30:50:20となるBCC固溶体型合金においても同様の試験を実施したところ、上記と同様の結果が得られた。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によればBCC固溶体型の水素貯蔵合金の表面に、LaNi5やPdなどの水素分子を解離する能力に優れた材料を用いて蒸着、スパッタリング、メッキ等によって被覆層を形成したことで、表面処理を施していないBCC固溶体型水素貯蔵合金に比べ水素吸放出時の反応性が促進され、固溶領域の水素の吸放出が行われやすくなり有効水素移動量が増加するという効果が得られる。
【0025】
さらに、水素との反応性が高まるため、水素化速度を増加させ、初期活性化を容易にし、合金組成によってはプラトー領域の傾きを小さくする効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における活性化時の水素吸収速度を示すグラフである。
【図2】実施例における有効水素移動量と水素化反応速度を示すグラフである。
【図3】実施例における水素化特性(PCT曲線)を示すグラフである。
【図4】同じく実施例における水素化特性(PCT曲線)を示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素貯蔵用材料、熱変換用水素吸収材料、燃料電池用水素供給用材料、Ni−水素電池用負極材料、水素精製回収用材料、水素ガスアクチュエータ用水素吸収材料等に用いられ、特に環境温度(20℃〜80℃)で優れた水素吸放出特性を示す水素貯蔵合金および該合金の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、水素の貯蔵・輸送用としてボンベ方式や液体水素方式があるが、これらの方式に代わって水素貯蔵合金を使った方式が注目されている。周知のように、水素貯蔵合金は水素と可逆的に反応して、反応熱の出入りを伴って水素を吸収、放出する性質を有している。この化学反応を利用して水素を貯蔵、運搬する技術の実用化が図られており、さらに反応熱を利用して、熱貯蔵、熱輸送システム等を構成する技術の開発、実用化が進められている。代表的な水素貯蔵合金としてはLaNi5、TiFe、TiMn1.5等がよく知られている。
【0003】
各種用途の実用化においては、水素貯蔵材料の特性を一層向上させる必要があり、例えば、水素貯蔵量の増加、原料の低廉化、プラトー特性の改善、水素との反応性の向上、耐久性の向上などが大きな課題として挙げられている。中でもV、TiVMn系、TiVCr系合金などの体心立方構造(以下BCC構造と呼ぶ)の固溶体型金属は、すでに実用化されているAB5型合金やAB2型合金に比べ大量の水素を吸収することが古くから知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記したV、TiVMn系、TiVCr系合金などのBCC固溶体型水素貯蔵合金は理論上400cc/g程度の水素を吸収することが知られている。しかし、そのうち約150cc/g程は固溶水素であり、合金中に安定して存在するため上記水素の吸収・放出にはあまり寄与しない。したがってBCC固溶体型水素貯蔵合金において実用上、有効に吸収・放出できる水素量は理論量の半分程度である。そのため、貯蔵用材料として実用化するには十分な特性であるとは言えなく、より多くの有効水素移動量を持つ合金の開発が求められている。
【0005】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、実用上の水素移動量に優れたBCC固溶体型水素貯蔵合金および該水素貯蔵合金の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明の水素移動量に優れたBCC固溶体型水素貯蔵合金のうち請求項1記載の発明は、表面に水素分子解離能力に優れた材料の被覆層が形成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の水素移動量に優れたBCC固溶体型水素貯蔵合金の発明は、請求項1記載の発明において、前記の水素分子解離能力に優れた材料が、PdまたはANi5−xBx(ただし、A=La、Mmの1種または2種;B=Al、B、Co、Cr、Cu、Fe、Mn、Si、Ti、Zn、Vの1種または2種以上;0≦X≦1.0;)のいずれかでであることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載のBCC固溶体型水素貯蔵合金の製造方法は、合金表面に水素分子解離能力に優れた材料で表面被覆処理を行って被覆層を形成することを特徴とする。
【0009】
請求項4記載のBCC固溶体型水素貯蔵合金の製造方法は、請求項3記載の発明において、前記表面被覆処理は、蒸着、スパッタリング、メッキ等により行うことを特徴とする。
【0010】
請求項5記載のBCC固溶体型水素貯蔵合金の製造方法は、請求項3または4に記載の発明において、前記表面被覆処理を行う合金が、30μm〜5mmの径を有する粉末からなることを特徴とする。
【0011】
すなわち本発明のBCC固溶体型水素貯蔵合金によれば、任意組成のBCC固溶体型水素貯蔵合金の表面をLaNi5やPdなどの水素分子を解離する能力に優れた材料で表面被覆することで、水素吸放出時の反応性が促進され、固溶領域の水素の吸放出が行われやすくなり有効水素移動量(80℃脱ガスによる見かけ上の水素吸収量)が増加する。更に、水素との反応性が高まるため、初期活性化を容易にし、水素化速度を増加させ、プラトー領域の傾きを小さくする作用も得られる。
【0012】
また、本発明のBCC固溶体型水素貯蔵合金の製造方法によれば、蒸着、スパッタリング、メッキ等によって合金の表面に容易かつ確実に表面被覆処理を行うことができる。表面処理がなされた合金は、水素移動量の増加を代表として、上記作用が得られる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明では、BCC固溶体型水素貯蔵合金を対象としており、本発明としては、該構造を有する水素貯蔵合金であれば、その組成が特定されるものではない。具体例としては、V、TiCr系、TiVCr系、TiVMn系、TiVFe系等が挙げられる。該合金は所定の組成に調整して常法により溶製することができる。溶製された合金は、必要に応じて熱処理等の適宜の処理を行うことができる。
【0014】
上記合金は、通常は粉末状にされ、その粉末の表面に上記被膜が形成される。該粉末の大きさは特に限定されるものではないが、好適には、実質的な径として30μm〜5mmを有するのが望ましい。また、粉末にする方法も特に限定されるものではなく、ハンマーによる機械的粉砕、アトマイズ法等の適宜の方法を選択することができる。
【0015】
本発明では、上記BCC固溶体型水素貯蔵合金の表面に水素分子解離能力に優れた材料で被覆層が形成される。該材料は、相対的にBCC固溶体型水素貯蔵合金よりも水素分子解離能力に優れ、水素吸放出速度が速い特性を有するものである。該材料としては、Pd、ANi5−xBx(ただし、A=La、Mmの1種または2種;B=Al、B、Co、Cr、Cu、Fe、Mn、Si、Ti、Zn、Vの1種または2種以上;0≦X≦1.0;)等が挙げられる。
該被覆層を形成する方法は特に限定されるものではないが、代表的には蒸着、スパッタリング、メッキ等が挙げられる。表面を被覆する際の条件は特に限定されるものではなく、被覆層の厚さも限定されるものではないが、代表的には0.01μm〜10μmの厚さを挙げることができる。
【0016】
上記により被覆層が形成された水素貯蔵合金は、従来と同様に、水素貯蔵用材料、熱変換用水素吸収材料、燃料電池用水素供給用材料、Ni−水素電池用負極材料、水素精製回収用材料、水素ガスアクチュエータ用水素吸収材料等の各種の用途に使用することができる。各用途では、優れた水素移動量によって効果的に水素の吸収、放出がなされる。
【0017】
【実施例】
以下に本発明の実施例を比較例と対比しつつ説明する。
試料として、Ti:Cr:Vの組成比が36:50:14となるように原料を配合した。この配合物を真空アーク溶解装置のるつぼ内に収納し、高純度Arガス雰囲気下でアーク溶解し、装置内で室温まで冷却して凝固させた。その後、シリコニット炉を使用し高純度Arガス雰囲気下で1400℃の均質化熱処理を施し、水冷処理によりBCC単相の合金(BCC固溶体型合金)を作製した。得られた合金は大気中で30μm〜5mmのサイズに粉砕し、表面処理を施していない試料、Pd、LaNi5等による表面被覆処理を施した試料をそれぞれ準備した。なお、表面被覆処理を施した試料には、蒸着法を施したものと、スパッタリング法を施したものとをそれぞれ用意した。蒸着法、スパッタリング法の条件は以下に示す通りである。
<蒸着条件>
真空度:1×10−3Pa以下、タングステンバスケットを使用し粉末試料全面に蒸着
<スパッタ条件>
電力:DC100V
雰囲気Ar圧力:7×10−3Torr
成膜時間:100sec
【0018】
さらに、それぞれの試料について以下の手順に従って水素活性化特性の測定を行った。
先ず、各試料3gを高圧法金属水素化物製造装置内のステンレス鋼製反応容器内に封入した。上記試料を用いて水素吸収・放出特性を測定する前の処理として、前記反応容器内を減圧(約10−2mmHg)排気しながら80℃にて約1時間の脱ガス処理した後、20℃で50kgf/cm2圧の高純度水素を導入し、活性化処理を行った。このような処理によって試料は直ちに水素を吸収し始め、30分後には水素の吸収が完了した。
【0019】
さらに容器を80℃で排気して前記試料から水素を放出させ、活性化処理を終了し、水素化の反応速度を測定した。実施例としてのPd蒸着処理材およびLaNi5蒸着処理材と、比較例としての表面処理なし材とについて、水素吸収量の時間変化を図1に示した。図から明らかなように、表面被覆処理を行ったものは表面処理なし材に比較して、合金の活性化が促進されていることがわかる。
【0020】
次に、各試料における水素化特性を測定した。具体的には、表面処理なし材と、Pdスパッタリング処理材とについて、水素化時の水素の吸収量と経過時間との関係を測定し、図2に示した。
図2から明らかなように、表面被覆処理を行うことでBCC固溶体型水素貯蔵合金の水素化速度を増加させ、見かけ上の水素吸収量が増加していることがわかる。
【0021】
次に、表面処理なし材と、Pdスパッタリング処理材について水素化特性(PCT曲線)を測定し、その結果を図3に示した。また、表面処理なし材と、LaNi5蒸着処理材について同様に水素化特性(PCT曲線)を測定し、その結果を図4に示した。
なお、水素化特性の測定は、活性化処理後容器温度を20℃に降下させて該温度に保持し、容器内に高純度水素を所定量導入した。試料に水素が吸収され容器内の圧力が安定した後、容器内の水素圧力および定容積法を用いて試料に吸収された水素量を求めた。再び、所定量の水素を容器に導入し、圧力の安定後、水素圧力および水素吸収量を求めた。以上の操作を容器内の圧力が50kgf/cm2となるまで繰り返し、水素吸収過程における水素圧力−吸収量一等温曲線(P−C−T曲線)を求めた。
【0022】
上記のように、水素を各試料に50kgf/cm2の圧力まで吸収させた後、反応容器を前記20℃に保持したままで、容器から所定量の水素を排出し、容器内の水素圧力が安定した後、容器内の圧力及び定容積法を用いて試料から放出された水素量を求めた。再び反応容器から所定量の水素を排出した。以上の操作を容器内の圧力が0.2kgf/cm2となるまで繰り返し、水素放出過程における水素−圧力−吸収曲線(P−C−T曲線)を求めた。
図3、4から明らかなように被覆処理材は、プラトーの傾きが小さくなっている。
【0023】
また、上記試料の組成以外に、Ti:Cr:Vの組成比が30:50:20となるBCC固溶体型合金においても同様の試験を実施したところ、上記と同様の結果が得られた。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によればBCC固溶体型の水素貯蔵合金の表面に、LaNi5やPdなどの水素分子を解離する能力に優れた材料を用いて蒸着、スパッタリング、メッキ等によって被覆層を形成したことで、表面処理を施していないBCC固溶体型水素貯蔵合金に比べ水素吸放出時の反応性が促進され、固溶領域の水素の吸放出が行われやすくなり有効水素移動量が増加するという効果が得られる。
【0025】
さらに、水素との反応性が高まるため、水素化速度を増加させ、初期活性化を容易にし、合金組成によってはプラトー領域の傾きを小さくする効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における活性化時の水素吸収速度を示すグラフである。
【図2】実施例における有効水素移動量と水素化反応速度を示すグラフである。
【図3】実施例における水素化特性(PCT曲線)を示すグラフである。
【図4】同じく実施例における水素化特性(PCT曲線)を示すグラフである。
Claims (5)
- 表面に水素分子解離能力に優れた材料の被覆層が形成されていることを特徴とする水素移動量に優れたBCC固溶体型水素貯蔵合金。
- 前記の水素分子解離能力に優れた材料が、PdまたはANi5−xBx(ただし、A=La、Mmの1種または2種;B=Al、B、Co、Cr、Cu、Fe、Mn、Si、Ti、Zn、Vの1種または2種以上;0≦X≦1.0;)のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の水素移動量に優れたBCC固溶体型水素貯蔵合金。
- 合金表面に水素分子解離能力に優れた材料で表面被覆処理を行って被覆層を形成することを特徴とするBCC固溶体型水素貯蔵合金の製造方法。
- 前記表面被覆処理は、蒸着、スパッタリング、メッキ等により行うことを特徴とする請求項3記載のBCC固溶体型水素貯蔵合金の製造方法。
- 前記表面被覆処理を行う合金が、30μm〜5mmの径を有する粉末からなることを特徴とする請求項3または4に記載のBCC固溶体型水素貯蔵合金の製造方法。
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JP (1) | JP2004068049A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2016223921A (ja) * | 2015-05-29 | 2016-12-28 | 国立大学法人名古屋大学 | 水素吸蔵量測定方法および水素吸蔵量測定装置 |
CN114447288A (zh) * | 2020-10-30 | 2022-05-06 | 丰田自动车株式会社 | 复合合金的制造方法和电极的制造方法 |
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2002
- 2002-08-02 JP JP2002225898A patent/JP2004068049A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2016223921A (ja) * | 2015-05-29 | 2016-12-28 | 国立大学法人名古屋大学 | 水素吸蔵量測定方法および水素吸蔵量測定装置 |
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CN114447288B (zh) * | 2020-10-30 | 2024-01-30 | 丰田自动车株式会社 | 复合合金的制造方法和电极的制造方法 |
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