JP2002146446A - 水素吸蔵合金の回復方法及び水素燃料タンク - Google Patents

水素吸蔵合金の回復方法及び水素燃料タンク

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JP2002146446A JP2000344988A JP2000344988A JP2002146446A JP 2002146446 A JP2002146446 A JP 2002146446A JP 2000344988 A JP2000344988 A JP 2000344988A JP 2000344988 A JP2000344988 A JP 2000344988A JP 2002146446 A JP2002146446 A JP 2002146446A
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storage alloy
fuel tank
alloy
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Atsuhito Matsukawa
篤人 松川
Tsutomu Cho
勤 長
Shinichi Yamashita
信一 山下
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 水素の吸放出を繰り返すサイクルにより劣化
する水素吸蔵合金の水素吸蔵特性を初期に近い状態まで
回復させる水素吸蔵合金の回復方法及び大きな設備を必
要とせず、簡単に水素吸蔵特性を回復させることができ
る燃料タンクを提供する。 【解決手段】 体心立方(bcc)構造を有する水素吸
蔵合金であって、水素の吸放出により劣化した水素吸蔵
合金を、150℃〜700℃の温度範囲で、かつ真空中
で熱処理する水素吸蔵合金の回復方法であり、このよう
な回復方法により初期状態に近い状態にまで回復するこ
とができる水素吸蔵合金を用いる水素燃料タンクであ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水素の吸放出を繰
り返すサイクルにより劣化する水素吸蔵合金の回復方法
に関する、さらに、水素の吸放出を繰り返すサイクルに
より劣化する水素吸蔵合金を回復させる水素燃料タンク
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、水素吸蔵合金は、電子技術の発展
に伴い、パソコン、携帯電話、電動工具等の二次電池の
電極材料として使用されている。また、近年の排ガスに
よる環境汚染を防止するために、燃料電池を搭載する電
気自動車、水素を燃料とする水素エンジンを搭載する水
素自動車が開発されている。このなかで、水素吸蔵合金
は、燃料電池用水素タンク、又は水素自動車用燃料タン
クの水素貯蔵材料として利用されている。このような場
合、水素吸蔵合金に求められる特性としては、吸蔵でき
る水素量が大きいこと、水素を可逆的に安定して吸放出
できることが挙げられる。これらの特性を向上させるた
めに、組成、結晶構造、製造方法等について多面的に検
討されている。
【0003】水素吸蔵合金としては、AB型、AB
型(ラーベス相)、AB型、A型(bcc構
造)等の結晶構造を有する合金相が知られている。その
中でも、体心立方結晶構造(bcc構造)を有する水素
吸蔵合金は水素吸放出量が非常に大きく、水素の輸送及
び貯蔵用、燃料電池用として幅広く利用されていくこと
が期待されている。例えば、特公昭59−38293号
公報では、チタン(Ti)−クロム(Cr)−バナジウ
ム(V:以下、元素記号で記す。)系水素吸蔵用合金が
提案されているが、このようなbcc構造の水素吸蔵用
合金は、サイクル劣化が大きいという不具合があった。
【0004】また、例えば、特開平5−59471号公
報では、その表面から内部に向かって所定の雰囲気に対
して安定な金属または合金によって変性された水素吸蔵
合金材料及びこの水素吸蔵合金材料の製造方法が開示さ
れている。これにより、雰囲気に対して安定で、雰囲気
からの被毒による特性劣化を起こさず、常に十分な特性
を発揮できる水素吸蔵合金材料が提案されている。ま
た、特開平8−104940号公報では、Ti−Mn系
水素吸蔵合金で、Yを添加する水素吸蔵合金が提案され
ている。ここでは、Yをラーべス相に含有させることに
より、被毒耐性及び再生回復能力に優れた水素吸蔵合金
が提案されている。
【0005】一方、水素自動車の燃料タンク用の充填材
料として水素吸蔵合金のサイクル劣化の不具合に対応す
ることは、水素自動車の実用化にとって重要なことであ
る。そのために、特開平7−117498号公報では、
水素自動車への燃料の供給を、水素吸蔵合金に水素を十
分吸蔵させて、すでに用意してある、燃料タンクとの交
換を行い、取り外した燃料タンク中の水素吸蔵合金が劣
化している場合は、再生工場に回し、溶解して、固化、
微細化して再び燃料タンクに使用する燃料タンクのリサ
イクルシステムが提案されている。これにより、燃料タ
ンク内に充填されている水素吸蔵合金のリサイクルを行
うことができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平
5−59471号公報等の水素吸蔵合金材料等では、い
ずれも長期にわたって使用すると、初期の水素吸蔵特性
が劣化するという問題点がある。一方、特開平7−11
7498号公報の燃料タンクのリサイクルシステムで
は、大がかりな設備を必要とするという問題点がある。
【0007】そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてな
されたものであり、水素の吸放出を繰り返すサイクルに
より劣化する水素吸蔵合金の水素吸蔵特性を初期に近い
状態まで回復させる水素吸蔵合金の回復方法を提供する
ことを課題とする。さらに、大きな設備を必要とせず、
簡単に水素吸蔵特性を回復させることができる燃料タン
クを提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を達成するため
に、請求項1に記載の発明は、 体心立方構造を有する
水素吸蔵合金であって、 水素の吸放出により劣化した
水素吸蔵合金を、150℃〜700℃の温度範囲で、か
つ、真空中で熱処理する 水素吸蔵合金の回復方法とす
る。請求項2に記載の発明は、 請求項1に記載の水素
吸蔵合金の回復方法であって、 前記熱処理の温度範囲
が、300℃〜600℃である 水素吸蔵合金の回復方
法とする。請求項3に記載の発明は、 請求項1又は2
に記載の水素吸蔵合金の回復方法であって、 前記熱処
理により水素吸蔵合金が析出するラーべス相の量を、1
6%以下にする 水素吸蔵合金の回復方法とする。請求
項4に記載の発明は、 請求項1ないし3のいずれかに
記載の水素吸蔵合金の回復方法であって、 水素吸蔵合
金が、一般式TiCr(ここで、Mは、Mo、
Mn、Al、Rからなる群から選択される少なくとも1
つ以上の金属元素であり、Rは、Y及びランタノイド系
列の金属元素を表す。ただし、1.0≦b/a≦2.
0、0<c≦15、a+b+c=100とする。)で表
される水素吸蔵合金の回復方法とする。請求項5に記載
の発明は、 請求項1ないし3のいずれかに記載の水素
吸蔵合金の回復方法であって、 水素吸蔵合金が、一般
式TiCr(ここで、Mは、Mo、Mn、
Al、Rからなる群から選択される少なくとも1つ以上
の金属元素であり、Rは、Y及びランタノイド系列の金
属元素を表す。ただし、1.0≦b/a≦2.0、0≦
c≦15、0<d≦60、a+b+c+d=100とす
る。)で表される 水素吸蔵合金の回復方法とする。
【0009】請求項6に記載の発明は、 水素吸蔵合金
を収容する水素燃料タンクであって、水素燃料タンクが
収容する水素吸蔵合金が、水素を吸放出して劣化した後
に、150℃〜700℃の温度範囲で、かつ、真空中で
熱処理する 水素燃料タンクとする。請求項7に記載の
発明は、 請求項6に記載の水素燃料タンクにおいて、
前記熱処理の温度範囲が、300℃〜600℃である
水素燃料タンクとする。請求項8に記載の発明は、
請求項6又は7に記載の水素燃料タンクであって、前記
熱処理により水素吸蔵合金が析出するラーべス相の量
を、16%以下にする 水素燃料タンクとする。請求項
9に記載の発明は、 請求項6ないし8のいずれかに記
載の水素燃料タンクであって、 水素吸蔵合金が、一般
式TiCr(ここで、Mは、Mo、Mn、A
l、Rからなる群から選択される少なくとも1つ以上の
金属元素であり、Rは、Y及びランタノイド系列の金属
元素を表す。ただし、1.0≦b/a≦2.0、0<c
≦15、a+b+c=100とする。)で表される 水
素燃料タンクとする。請求項10に記載の発明は、 請
求項6ないし8のいずれかに記載の水素燃料タンクであ
って、 水素吸蔵合金が、一般式TiCr
(ここで、Mは、Mo、Mn、Al、Rからなる群から
選択される少なくとも1つ以上の金属元素であり、R
は、Y及びランタノイド系列の金属元素を表す。ただ
し、1.0≦b/a≦2.0、0≦c≦15、0<d≦
60、a+b+c+d=100とする。)で表される
水素燃料タンクとする。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態を詳
細に説明する。本発明は、体心立方構造(以下、「bc
c構造」と記す。)を有する水素吸蔵合金の回復方法で
ある。金属元素が水素ガスを吸蔵するのは、水素ガスが
水素原子となって、金属元素による結晶格子中に侵入又
は固溶して侵入型水素化物を形成するからである。この
ために、金属元素の結晶構造としては、充填率の高い面
心立方構造(fcc構造)や最密六方構造(hcp構
造)よりも、充填率が低く、結晶格子内に水素原子が占
有できる空間が多数あるbcc構造がよい。bcc構造
の水素吸蔵合金としては、Ti、V、Nb、Ta等の金
属を主成分とする合金が挙げられる。特に、V−Ti
系,V−Ti−Cr系,V−Ti−Fe系などのV固溶
体型bcc合金がよく知られている。
【0011】また、本発明は、水素の吸放出により劣化
した水素吸蔵合金を、真空中における150℃〜700
℃、好ましくは300℃〜600℃の温度範囲で熱処理
する水素吸蔵合金の回復方法である。水素吸蔵合金は、
繰り返し水素を吸放出させて使用される。この水素の吸
放出で、水素吸蔵合金は膨張・収縮を繰り返し、次第に
微細化する。この微細化することで、新たに活性表面が
表れ、水素吸蔵反応が行われる。しかし、水素ガス中に
は、CO、O、CO、HS等の不純物が含まれる
ために、これらの不純物が水素吸蔵合金の表面に吸着し
又は酸化膜を形成して、水素吸蔵特性が次第に劣化する
ことが知られている。また、水素の吸放出の繰り返しに
より、水素の吸放出の可逆反応と同時に生ずる水素化物
の不可逆反応により、次第にこの水素化物の生成量が増
加して水素吸蔵特性が劣化することも知られている。特
に、bcc合金ではこの水素化物の不可逆反応が重要で
ある。
【0012】真空中とするのは、酸化雰囲気中では水素
吸蔵合金が酸化して合金表面に酸化膜を形成すると水素
の吸放出をしなくなるからである。また、不活性ガス雰
囲気中であっても、酸化は生じないが、不活性ガス中に
含まれるCO、O、CO、HS等の不純物により
水素吸蔵合金が被毒するからである。一方、真空中であ
れば、酸化することなく、かつ、不純物による被毒を防
止することができる。さらに、熱処理により水素吸蔵合
金から分離するCO、O、CO、HS等の離脱が
容易にできるからである。
【0013】熱処理は、150℃〜700℃、好ましく
は300℃〜600℃の温度範囲で行う。150℃未満
では、不純物の離脱、水素化物の分解が起こらない、ま
たは、熱処理に長時間を必要とするために実用的ではな
いからである。700℃を越えると、水素吸蔵合金中に
ラーベス相が生じ水素吸蔵量が低下する。実用的な時間
で、ラーベス相の析出なく熱処理するためには、300
℃〜600℃の温度範囲がより好ましい。また、熱処理
の時間としては、1分〜24時間で行う。24時間を越
えると長時間であり実用的ではないし、1分未満では、
熱処理時間が短すぎて水素吸蔵合金全体を均一に熱処理
できないからである。
【0014】本発明の水素吸蔵合金の回復方法では、析
出するラーベス相の量が、16%以下になるように熱処
理を行う。ラーベス相は、AB型の組成で表される金
属間化合物であり、C14(hcp構造)、C15(f
cc構造)、C36(hcp構造)の3種類がある。C
36ラーベス相は水素を吸放出しない。他のC14、C
15ラーベス相は水素を吸放出するが、bcc固溶体の
方が水素吸蔵特性に優れている。したがって、ラーベス
相の析出を抑えることが必要である。しかしながら、本
発明のbcc構造の水素吸蔵合金では、組成にもよるが
ラーベス相の方が安定相であり、高温ではラーベス相が
析出しやすい。そこで、熱処理温度はラーべス相の析出
する700℃以下とする。特に低V組成や低Mo組成で
は、温度、時間を本発明の範囲内で低温、短時間とする
のが好ましく、X線回折(XRD)シグナルの積分強度
から求めたラーベス相の析出量が全体の16%以下とな
るようにする。ラーべス相の析出量を16%以下とする
ことで、水素吸蔵量をbcc単相の場合の90%以上に
保つことができる。
【0015】本発明の水素吸蔵合金の回復方法では、水
素吸蔵合金が、一般式TiCr(ここで、M
は、Mo、Mn、Al、Rからなる群から選択される少
なくとも1つ以上の金属元素であり、Rは、Y及びラン
タノイド系列の金属元素を表す。ただし、1.0≦b/
a≦2.0、0<c≦15、a+b+c=100とす
る。)、または、一般式TiCr(ここ
で、MはMo、Mn、Al、Rからなる群から選択され
る少なくとも1つ以上の金属元素で、RはY及びランタ
ノイド系列の金属元素である。ただし、1.0≦b/a
≦2.0、0≦c≦15、0<d≦60、a+b+c+
d=100とする。)で表される。
【0016】Crは単独で、高温領域までbcc構造で
あり、また、Tiも高温で、bcc構造を有している。
さらに、Cr、Tiは、周期表上第4周期に属し、遷移
金属として原子量が小さい方で、水素吸蔵合金として利
用する上には有利である。また、Ti−Cr系の2元系
合金は、上述したように、温度や組成によりbcc固溶
体、ラーベス相が存在する。高温の平衡状態で存在する
ラーベス相は、水素を吸放出しない、または、水素吸蔵
特性が低いために、Ti−Cr系水素吸蔵合金として、
bcc固溶体単相が好ましい。
【0017】ここで、Cr/Tiの比(b/a)は、
1.0〜2.0の範囲とする。Crは、bcc横造の格
子定数を小さくし、Tiはこれを大きくする。従って、
プラトー圧を制御するためには、Cr/Tiの比(b/
a)を適正化する必要がある。燃料電池等に用いられる
水素タンク用としては、放出プラトー圧は10−1〜1
MPa程度に制御するのが好ましいが、冷却水を用
いて水素吸蔵合金を加熱する場合は、常温〜100℃で
の放出プラトー圧をこの範囲に制御する必要がある。そ
こで、この温度範囲での放出プラトー圧を10−1〜1
MPaに制御するために1.0≦b/a≦2.0と
する。
【0018】さらに、Mとして、Mo、Mn、Al、R
からなる群から選択される少なくとも1つ以上の金属を
添加する。ここで、Rは、Yを含むランタノイド系列の
金属で、具体的には、La、Ce、Pr、Sm等、さら
に、これらの混合物であるMm(ミッシュメタル)が挙
げられる。これらの金属は、MoやAlのようにTi−
Cr系合金のbcc構造単相化を促進したり、Mnのよ
うに水素吸蔵量を増加させたり、Rのように合金に含ま
れる酸素と反応してbcc相の酸素による特性劣化を防
止したりするのに有効であるが、多量の添加は逆に水素
吸蔵量を低下させる。そこで、Mの添加量は0<c≦1
5とした。さらに、VはMoやAl同様、Ti−Cr系
合金のbcc構造単相化に有効であるが、多量に添加し
ても水素吸蔵量は低下しない。ただし、Vは高価なの
で、できるだけ少量にすることが好ましく、Vの含有量
dは0<d≦60が好ましい。
【0019】水素吸蔵合金は、繰り返し使用される、例
えば、水素の定置式貯蔵容器、輸送容器、水素自動車用
燃料タンク、ヒートポンプ等に適用することができる。
特に、現在の自動車の燃料であるガソリンは、燃焼させ
ると窒素酸化物、炭素化合物、硫黄酸化物等を多量に排
出する。この点で、水素は、酸素と混合して燃焼させて
排出するのは、少量の窒素酸化物、微量の炭化水素だけ
であり、クリーンなエネルギーである。このような水素
自動車の水素燃料タンクに水素吸蔵合金を用いることが
できる。水素燃料タンクは、水素吸蔵合金を収容し、さ
らに、水素の補給用口と放出用口、水素吸蔵合金の加熱
・冷却用パイプ等を有している。水素燃料タンクを搭載
する水素自動車は以下のように動作する。まず、水素燃
料タンクから水素を水素エンジンに供給し、エンジンを
駆動させる。駆動したエンジンから排出される排ガス又
はエンジンを冷却して暖められた温水は、水素燃料タン
ク中のパイプを通して水素吸蔵合金を加熱して、新たな
水素を発生させ、連続的に水素をエンジンに供給するも
のである。次に、水素燃料タンク中の水素がなくなった
時は、水素燃料タンク内の圧力をプラトー圧以上にして
水素を補給することができる。このように、水素燃料タ
ンク内の水素吸蔵合金は、水素を繰り返し吸放出するこ
とが必要となる。
【0020】本発明の水素燃料タンクは、水素吸蔵合金
を、150℃〜700℃の温度範囲で、好ましくは30
0℃〜600℃の温度範囲で、かつ 真空中で熱処理す
るものである。この水素燃料タンク中の水素吸蔵合金の
加熱は、外部の熱源を利用して外部から加熱するもので
も、水素燃料タンク中にチューブを通して内部から加熱
するものであってもよい。熱処理は、一定の水素の吸放
出サイクル経過後でも、水素を吸蔵させるときに水素吸
蔵合金の劣化度合いを検査して、それにより回復させる
ものであってもよい。
【0021】さらに、本発明の水素燃料タンクに収容す
る水素吸蔵合金は、熱処理によりラーベス相の析出する
量を16%以下にすることが好ましい。ラーべス相の析
出量をこの範囲に抑えることで、水素吸蔵量を90%以
上に保つことができる。また、本発明の水素燃料タンク
には、一般式TiCr(ここで、Mは、Mo、
Mn、Al、Rからなる群から選択される少なくとも1
つ以上の金属元素であり、Rは、Y及びランタノイド系
列の金属元素を表す。ただし、1.0≦b/a≦2.
0、0<c≦15、a+b+c=100とする。)、ま
たは、一般式Ti Cr(ここで、Mは、M
o、Mn、Al、Rからなる群から選択される少なくと
も1つ以上の金属元素であり、Rは、Y及びランタノイ
ド系列の金属元素を表す。ただし、1.0≦b/a≦
2.0、0≦c≦15、0<d≦60、a+b+c+d
=100とする。)で表される水素吸蔵合金を用いるこ
とが好ましい。
【0022】
【実施例】本発明の水素吸蔵合金に関する好適な実施例
を以下に示す。 (実施例1)Ti(純度99.99%)、Cr(純度9
9.99%)、Mo(純度99.9%)を、Ti40
50Mo10になるように秤量する。これらを、アー
ク溶解炉で溶解する。その際、合金の偏析を防止して均
質化を図るために、インゴットを上下反転させて4回溶
解する。作製したインゴットを1,420℃で、10分
間、Arガス中で熱処理する。その後、氷水中にて急冷
し、得られた合金をN ガス下で、1〜2mm程度に粗
粉砕する。この合金の結晶構造をXRDにて解析したと
ころ格子定数0.3069nmのbcc単相であった。
次に、水素ガス雰囲気における圧力―組成等温線(PC
T線)の測定を行う。測定は、JIS H 7201に
従い、ジーベルツ法(容量法)にて行った。活性化処理
は特に行わず、測定は40℃での真空原点法(10−1
Pa)で行った。測定の1回目では、低圧プラトー部の
常温では利用できない水素を含むために、2回目の測定
で吸蔵した水素量を初期の水素吸蔵量とした。このよう
にして得られた初期の水素吸蔵量を100%として、そ
の後40℃で水素の吸放出(0⇔10MPa)を繰り返
し、100サイクル終了後に、PCT線の測定を行っ
た。さらにその後、真空中において所定の温度で1時間
の熱処理を行い、再び40℃で水素を吸蔵させた後、4
0℃での真空原点法でPCT測定を行った。この真空中
における熱処理は低温側から順に行い、熱処理温度とP
CT線の関係を調べた。
【0023】図1は、Ti40Cr50Mo10合金の
初期状態、サイクル試験後、及び各温度での熱処理後の
PCT線を示した図である。初期状態においては、水素
吸蔵量は2.38wt%で大きくプラトーの傾斜も比較
的平坦であるが、サイクル試験後は、水素吸蔵量は2.
11wt%へと小さくなると共にプラトーの傾斜が大き
くなりサイクル劣化していることが分かる。ところが、
この試料を真空熱処理すると、水素吸蔵量及びプラトー
の平坦性が初期状態近くまで回復することが分かる。熱
処理温度を変えたときの、Ti40Cr50Mo10
金の水素吸蔵量を表1に示す。 <表1:Ti40Cr50Mo10合金の熱処理温度と
水素吸蔵量>
【表1】
【0024】図1及び表1より、水素吸蔵量は、40℃
での水素ガスの吸放出を100サイクル続けた後、比較
例1−1に示すように、初期状態と比較して89%まで
低下したが、400〜600℃で真空熱処理を行うこと
により、初期状態の95〜97%まで回復することがわ
かった。
【0025】(実施例2)実施例1と同様にして、Ti
40Cr56Mo合金を作製した。結晶構造をXRD
により解析したところ、格子定数0.3055nmのb
cc単相であった。次に、実施例1と同様にして、水素
吸蔵特性の測定を行った。真空原点法による初期の水素
吸蔵量は、2.50wt%であった。その後、水素吸放
出のサイクル試験を実施例1と同様にして行い、100
サイクル終了後に、水素吸蔵量の測定を行った。その
後、真空中において所定の温度で1時間の熱処理を行
い、再び40℃で水素を吸蔵させた後、40℃での真空
原点法でPCT測定を行った。その結果を表2に示す。
また、図2に、このときのPCT線を示す。
【0026】<表2:Ti40Cr56Mo合金の熱
処理温度と水素吸蔵量>
【表2】
【0027】表2及び図2より明らかなように、水素吸
蔵量は、40℃での水素ガスの吸放出を100サイクル
続けた後、比較例2−1に示すように、初期状態と比較
して89%まで低下したが、実施例2−1に示すよう
に、500℃で真空熱処理を行うことにより、初期状態
の95%まで回復することが分かった。一方、比較例2
−2は、600℃で真空熱処理したものだが、熱処理
後、水素吸蔵量は、逆に、初期の80%まで逆に低下す
る結果となった。熱処理後の結晶構造をXRDにて解析
したところ、ラーベス相が32%析出していた。600
〜700℃の高温で真空熱処理を行うとき、熱処理時間
に応じてラーベス相が析出することがあるため、ラーベ
ス相の析出を16%以下に抑えるよう、熱処理時間を設
定する必要があることが分かる。
【0028】図3は、実施例1(Ti40Cr50Mo
10合金)と実施例2(Ti40Cr56Mo合金)
をまとめてその水素吸蔵量の変化を示した図である。図
3からも明らかなように、いずれの組成でも100サイ
クル後に初期状態に比べて、水素吸蔵量が低下している
が、真空中での熱処理によって、水素吸蔵量が回復する
こと、及びラーベス相が析出する条件では、水素吸蔵量
が低下していることが分かる。
【0029】(実施例3)実施例1と同様にして、Ti
37.5Cr57.5合金を作製した。結晶構造を
XRDにより解析したところ、格子定数0.3037n
mのbcc単相であった。次に、実施例1と同様にし
て、水素吸蔵特性の測定を行った。真空原点法による初
期の水素吸蔵量は2.55wt%であった。その後、水素
吸放出のサイクル試験を100℃で行った以外は実施例
1と同様にして行い、50サイクル終了後に、40℃に
おける真空原点法でPCT測定を行った。その後、真空
中において500℃で1時間の熱処理を行い、再び40
℃で水素を吸蔵させた後、40℃での真空原点法でPC
T測定を行った。このサイクル試験と真空熱処理を繰り
返したときの水素吸蔵量の変化を表3に示す。
【0030】<表3:Ti37.5Cr57.5
金のサイクル試験と真空熱処理の繰り返しによる水素吸
蔵量の変化>
【表3】 サイクル試験を高温で行うとサイクル劣化が激しく、5
0サイクル後の水素吸蔵量は初期の88%まで低下して
いるが、真空熱処理により脱水素することで水素吸蔵量
は95%以上にまで回復した。サイクル試験と真空熱処
理を繰り返した場合でも、真空熱処理により初期の95
%以上にまで回復することが分かる。
【0031】(実施例4)実施例1と同様にして、Ti
40Cr58Mo合金を作製した。結晶構造をXRD
により解析したところ、格子定数0.3049nmのb
cc単相であった。次に、実施例1と同様にして、水素
吸蔵特性の測定を行った。真空原点法による初期の水素
吸蔵量は2.55wt%であった。その後、水素吸放出の
サイクル試験を100℃で行った以外は実施例1と同様
にして行い、50サイクル終了後に、40℃における真
空原点法でPCT測定を行った。その後、真空中におい
て500℃で1時間の熱処理を行い、再び40℃で水素
を吸蔵させた後、40℃での真空原点法でPCT測定を
行った。このサイクル試験と真空熱処理を繰り返したと
きの水素吸蔵量の変化を表4に示す。
【0032】<表4:Ti40Cr58Mo合金のサ
イクル試験と真空熱処理の繰り返しによる水素吸蔵量の
変化>
【表4】 図4は、実施例3(Ti37.5Cr57.5
金)と実施例4(Ti Cr58Mo合金)をまと
めてその水素吸蔵量の変化を示した図である。いずれの
水素吸蔵合金も、サイクル試験により水素吸蔵量は初期
の90%以下にまで低下しているが、真空で熱処理を行
うことにより、95%以上に回復している。
【0033】図5は、Ti36Cr5410合金のD
TA(示差熱分析)の測定結果を示すチャートである。
また、表5には、V組成の比較的小さなTi−Cr−V
系合金のラーベス相の析出する温度を示す。
【表5】 ラーベス相の析出する温度は、DTA(示差熱分析)
((株)マック・サイエンス製:TG−DTA2000
S)で測定した。測定条件は、Arガス中で、昇温速度
は20℃/min.である。最も温度の低かったTi
34Cr4610Mn10合金は682℃で、最も温
度の高かったTi47Cr3310Co10合金は7
66℃で、80℃以上の差があった。しかし、いずれも
700℃前後であり、600℃以下であれば、長時間の
熱処理を行わない限りほとんどの場合ラーベス相の析出
を抑えることができるが、700近くでは、熱処理時間
を短くする必要がある。
【0034】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の水素吸蔵
合金の回復方法により、水素の吸放出の繰り返しにより
サイクル劣化した水素吸蔵合金であっても、PCT特性
における水素吸蔵量の他、プラトーの傾斜などがほぼ初
期状態に近い状態にまで回復させることができる。ま
た、本発明の水素燃料タンクでは、初期状態に近い状態
に回復させることができる水素吸蔵合金を用いること
で、長期間にわたって水素を繰り返し補給しながら使用
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Ti40Cr50Mo10合金の初期状態、サ
イクル試験後、及び各温度で真空熱処理した後のPCT
線を示した図である。
【図2】Ti40Cr56Mo合金の初期状態、サイ
クル試験後、及び各温度で真空熱処理した後のPCT線
を示した図である。
【図3】実施例1(Ti40Cr50Mo10合金)と
実施例2(Ti40Cr56Mo合金)をまとめて、
その水素吸蔵量の変化を示した図である。
【図4】実施例3(Ti37.5Cr57.5
金)と実施例4(Ti40Cr Mo合金)をまと
めて、その水素吸蔵量の変化を示した図である。
【図5】Ti36Cr5410合金のDTA(示差熱
分析)の測定結果を示すチャートである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山下 信一 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内 Fターム(参考) 3E072 EA10 4K001 AA42 BA22 EA02 5H027 AA02 BA14 BE07 MM21

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 体心立方構造を有する水素吸蔵合金であ
    って、 水素の吸放出により劣化した水素吸蔵合金を、150℃
    〜700℃の温度範囲で、かつ、真空中で熱処理するこ
    とを特徴とする水素吸蔵合金の回復方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の水素吸蔵合金の回復方
    法であって、 前記熱処理の温度範囲が、300℃〜600℃であるこ
    とを特徴とする水素吸蔵合金の回復方法。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2に記載の水素吸蔵合金の
    回復方法であって、 前記熱処理により水素吸蔵合金が析出するラーべス相の
    量を、16%以下にすることを特徴とする水素吸蔵合金
    の回復方法。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれかに記載の水
    素吸蔵合金の回復方法であって、 水素吸蔵合金が、一般式TiCr(ここで、M
    は、Mo、Mn、Al、Rからなる群から選択される少
    なくとも1つ以上の金属元素であり、Rは、Y及びラン
    タノイド系列の金属元素を表す。ただし、1.0≦b/
    a≦2.0、0<c≦15、a+b+c=100とす
    る。)で表されることを特徴とする水素吸蔵合金の回復
    方法。
  5. 【請求項5】 請求項1ないし3のいずれかに記載の水
    素吸蔵合金の回復方法であって、 水素吸蔵合金が、一般式TiCr(ここ
    で、Mは、Mo、Mn、Al、Rからなる群から選択さ
    れる少なくとも1つ以上の金属元素であり、Rは、Y及
    びランタノイド系列の金属元素を表す。ただし、1.0
    ≦b/a≦2.0、0≦c≦15、0<d≦60、a+
    b+c+d=100とする。)で表されることを特徴と
    する水素吸蔵合金の回復方法。
  6. 【請求項6】 水素吸蔵合金を収容する水素燃料タンク
    であって、 水素燃料タンクが収容する水素吸蔵合金が、水素を吸放
    出して劣化した後に、150℃〜700℃の温度範囲
    で、かつ、真空中で熱処理することを特徴とする水素燃
    料タンク。
  7. 【請求項7】 請求項6に記載の水素燃料タンクにおい
    て、 前記熱処理の温度範囲が、300℃〜600℃であるこ
    とを特徴とする水素燃料タンク。
  8. 【請求項8】 請求項6又は7に記載の水素燃料タンク
    であって、 前記熱処理により水素吸蔵合金が析出するラーべス相の
    量を、16%以下にすることを特徴とする水素燃料タン
    ク。
  9. 【請求項9】 請求項6ないし8のいずれかに記載の水
    素燃料タンクであって、 水素吸蔵合金が、一般式TiCr(ここで、M
    は、Mo、Mn、Al、Rからなる群から選択される少
    なくとも1つ以上の金属元素であり、Rは、Y及びラン
    タノイド系列の金属元素を表す。ただし、1.0≦b/
    a≦2.0、0<c≦15、a+b+c=100とす
    る。)で表されることを特徴とする水素燃料タンク。
  10. 【請求項10】 請求項6ないし8のいずれかに記載の
    水素燃料タンクであって、 水素吸蔵合金が、一般式TiCr(ここ
    で、Mは、Mo、Mn、Al、Rからなる群から選択さ
    れる少なくとも1つ以上の金属元素であり、Rは、Y及
    びランタノイド系列の金属元素を表す。ただし、1.0
    ≦b/a≦2.0、0≦c≦15、0<d≦60、a+
    b+c+d=100とする。)で表されることを特徴と
    する水素燃料タンク。
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