JP2004068012A - インキおよび塗料用バインダー - Google Patents

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Abstract

【課題】 溶液粘度が低いうえに固形分比率が高く(顔料含有率が高く)、十分なインク分散性を有するインキまたは塗料を製造するのに適した、ビニルアセタール系重合体からなるインキおよび塗料用バインダーを提供する。
【解決手段】 重合度が30〜700、けん化度が80.0〜99.99モル%であり、末端にスルフィド結合を介して結合したイオン基を下記式(1)を満足する条件で含有するビニルアルコール系重合体をアセタール化して得られる、アセタール化度が45〜80モル%のビニルアセタール系重合体からなるインキまたは塗料用バインダーにより上記課題が解決される。
 0.15 ≦ 含有量 ≦ 218.3×P−1.046 ・・・(1)
(式中、含有量は、スルフィド結合を介して結合したイオン基の含有量(モル%)を表し、Pはビニルアルコール系重合体の重合度を表す。)
【選択図】 なし

Description

 本発明は、ビニルアセタール系重合体からなるインキおよび塗料用バインダーに関する。
 ビニルアセタール系重合体は、ビニルアルコール系重合体をアルデヒド化合物を用い、酸性条件下でアセタール化することにより得られることが古くから知られている。ビニルアルコール系重合体は、通常、ビニルアルコール単位およびビニルエステル単位を有することから、該ビニルアルコール系重合体をアセタール化することにより得られるビニルアセタール系重合体は、これら2種類の単量体単位に加え、ビニルアセタール単位を含む少なくとも3種類の単量体単位から構成される。近年、多種類のビニルアルコール系重合体が提案されるようになっていることから、これらと種々のアルデヒドを組合わせることにより、多くの種類のビニルアセタール系重合体が知られるようになってきている。
 その中でも、ビニルアルコール系重合体とホルムアルデヒドとから製造されるビニルホルマール系重合体、ビニルアルコール系重合体とアセトアルデヒドとから製造されるビニルアセタール系重合体、およびビニルアルコール系重合体とブチルアルデヒドとから製造されるビニルブチラール系重合体は、商業的に重要な位置を占めている。
 特に、ビニルブチラール系重合体は、自動車や建築物の窓ガラスの中間膜として用いられているだけでなく、セラミック成形用バインダー、感光性材料、インキ用分散剤などの種々の工業用分野において広く用いられている。工業用分野のうち、例えば、塗料の分野では、自動車用の塗料、焼付けエナメル、ショッププライマー、ウォッシュプライマー、粘着剤ラッカー、タールまたはニコチン上の絶縁コート、プラスチック用の塗料、ニトロセルロースラッカー、ペーパーワニスなどに用いられている。また、包装材をプリントするのに用いられる印刷インキのバインダーとして、低溶液粘度のビニルブチラール系重合体が用いられている。この印刷インキは、有機質基体および無機質基体に対する粘着性が優れていることから、ポリオレフィンフィルム、金属箔、セルロースアセテートフィルム、ポリアミドフィルムおよびポリスチレンフィルムをプリントするのに適している。
 特に近年、印刷機は高速で運転されることが多いことから、印刷機の高速運転を実現するために、印刷インキが所望の粘度において高い顔料含有率を有しており、かつ印刷により成形される塗膜の厚さが薄い場合でも、色の強度が大きいことが必要であるとされている。一般的に、印刷インキにおいて顔料含有率を高くするためには、その溶液粘度を低くすることが重要である。印刷インキの溶液粘度を低くするためには、低重合度のビニルアセタール系重合体を使用することが考えられるが、完全けん化ビニルアルコール系重合体をアセタール化することにより製造される低重合度ビニルアセタール系重合体を用いる場合には、ビニルアセタール系重合体の水溶液がゲル化しやすい、顔料含有率を高くすることができないなどの問題点があった。
 これらの問題点を解決する目的で、例えば、特定の加水分解度を有するビニルアルコール系重合体から製造されるビニルブチラール系重合体を用いる方法(特許文献1)、1−アルキルビニルアルコール単位および1−アルキルビニルアセテート単位を有するビニルアルコール系重合体を原料としたビニルアセタール系重合体を用いる方法(特許文献2)などが提案されている。しかしながら、これらの方法によって、上記の問題点についてある程度の改善効果は見られるものの、必ずしも満足すべき効果が得られているとは言いがたい。
 この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては次のものがある。
特開平11−349889号公報 特表2000−503341号公報
 本発明の目的は、溶液粘度が低いうえに固形分比率が高く(顔料含有率が高く)、十分なインク分散性を有するインキまたは塗料を製造するのに適した、ビニルアセタール系重合体からなるインキまたは塗料用バインダーを提供することにある。
 本発明者らは上記の課題を達成するために鋭意検討した結果、特定のビニルアルコール系重合体を原料にしたビニルアセタール系重合体を用いることで、上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、重合度が30〜700、けん化度が80.0〜99.99モル%であり、末端にスルフィド結合を介して結合したイオン基を下記式(1)を満足する条件で含有するビニルアルコール系重合体をアセタール化して得られる、アセタール化度が45〜80モル%のビニルアセタール系重合体からなるインキまたは塗料用バインダーを提供する。
 0.15 ≦ 含有量 ≦ 218.3×P−1.046 ・・・(1)
(式中、含有量は、スルフィド結合を介して結合したイオン基の含有量(モル%)を表し、Pはビニルアルコール系重合体の重合度を表す。)
 本発明のインキまたは塗料用バインダーを用いることにより、溶液粘度が低いうえに固形分比率が高く(顔料含有率が高く)、十分なインキ分散性を有するインキまたは塗料を製造することができる。このようにして製造されるインキまたは塗料は、印刷に用いられるインキが所望の粘度において高い顔料含有率を有しており、印刷により形成された塗膜の厚さが薄い場合でも、色の強度が大きいなどの優れた特長を備えているので、高速で運転される印刷機に好適に用いることができる。   
 本発明においてインキまたは塗料用バインダーとして用いられるビニルアセタール系重合体は、重合度が30〜700、けん化度が80.0〜99.99モル%であり、末端にスルフィド結合を介して結合したイオン基を下記式(1)を満足する条件で含有するビニルアルコール系重合体(以下「PVA」と略記することがある)をアセタール化することにより製造される。
 0.15 ≦ 含有量 ≦ 218.3×P−1.046 ・・・(1)
(式中、含有量は、スルフィド結合を介して結合したイオン基の含有量(モル%)を表し、Pはビニルアルコール系重合体の重合度を表す。)
 本発明においてビニルアセタール系重合体の製造に用いられるPVAの重合度は30〜700であり、50〜600が好ましく、100〜550がより好ましい。PVAの重合度が30未満の場合には、PVAを工業的に製造するのが困難になり、重合度が700を超えると、低溶液粘度でかつ高固形分比率(高顔料含有率)のインキおよび塗料を得るのが困難になる。
 本発明において、PVAの重合度とは粘度平均重合度を意味し、JIS−K6726に準じて測定される。すなわち、PVAをけん化度が99.5モル%以上になるめでけん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η]から次式により求めることができる。
  P=([η]×1000/8.29)(1/0.62)
 本発明においてPVAのけん化度は80.0〜99.99モル%であり、85〜99.5モル%が好ましく、90〜99モル%がさらに好ましく、92〜98.5モル%が特に好ましい。けん化度が80モル%未満の場合には、低溶液粘度でかつ高固形分比率(高顔料含有率)のインキおよび塗料を得るのが困難になる場合があり、けん化度が99.99モル%を超える場合には、PVAを製造するのが困難になる。
 本発明においてビニルアセタール系重合体の原料に用いられるPVAは、末端にスルフィド結合を介して結合したイオン基の含有量が0.15モル%以上であり、ビニルアルコール系重合体の重合度をPとしたときに(218.3×P−1.046)モル%以下である。
 イオン基の含有量が0.15モル%に満たないと、このようなPVAを用いることにより得られるビニルアセタール系重合体インキまたは塗料のバインダーとして用いた場合に、低溶液粘度でかつ高固形分比率(高顔料含有率)のインキまたは塗料を得るのが困難になることがある。一方、イオン基の含有量が、ビニルアルコール系重合体の重合度をPとしたときに(218.3×P−1.046)モル%を超える場合には、このようなPVAを用いることにより得られるビニルアセタール系重合体をインキまたは塗料のバインダーとして用いた場合に、得られるインクまたは塗料の、溶液粘度を低下させたり、固形分比率を高くする(顔料含有率を大きくする)効果が発現しなくなることがある。
 本発明においてビニルアセタール系重合体の原料に用いられるPVAは、末端にスルフィド結合を介してイオン基を含有していることが必要である。このようなイオン基としては、カルボン酸またはその塩、スルホン酸またはその塩、リン酸またはその塩などのアニオン性イオン基、および1級〜3級アミンのアンモニウム塩、4級アンモニウム塩などのカチオン性イオン基などが挙げられる。これらの中でも、カルボン酸もしくはスルホン酸、またはこれらのアルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩が好ましい。
 本発明において用いられるPVAについてその末端の構造を示すならば、下記式のとおりである。
  −S−(CH−A
(上記式において、nは1〜10の整数であり、Aは−COOXまたは−SOXであり、ここでXは水素原子、アルカリ金属またはNHである)
 PVAの末端にスルフィド結合を介して結合したイオン基の含有量は、プロトンNMRのピークから求めることができる。すなわち、PVAをけん化度が99.95モル%以上になるまでけん化し、十分にメタノール洗浄を行った後、90℃で減圧下に2日間乾燥を行って分析用のPVAを作成し、溶媒としてDMSO−d6を用いてプロトンNMRの測定を行い、硫黄原子に結合するメチレンに由来するピーク(2.6〜2.8ppm)からイオン基の含有量を算出する。
 PVAに含まれる末端にスルフィド結合を介して結合したイオン基の含有量は、該PVAをアセタール化することによって変化しない。そのため、本発明のポリビニルアセタール系重合体には、その原料として用いられるPVAと同じ量の末端にスルフィド結合を介して結合したイオン基が含まれる。
 本発明において用いられるポリビニルアセタール系重合体の末端にスルフィド結合を介して結合したイオン基の含有量についても、プロトンNMRのピークから求めることができる。すなわち、ポリビニルアセタール系重合体から分析用の試料を作成し、溶媒としてDMSO−d6またはメタノール−d4を用いてプロトンNMRの測定を行い、硫黄原子に結合するメチレンに由来するピーク(2.6〜2.8ppm)からイオン基の含有量を算出する。
 さらに、ビニルアセタール系重合体をアルコール溶媒中で塩酸ヒドロキシアミンと反応させ、得られた反応物を水/アルコールで十分に再沈精製してPVAとし、得られたPVAをけん化度が99.95モル%以上となるまでけん化し、乾燥することで分析用の試料を作成し、溶媒としてDMSO−d6を用いてプロトンNMRの測定を行うことによっても、イオン基の含有量を算出することができる。
 本発明において用いられるビニルアセタール系重合体において、その原料として用いられるPVAは1,2−グリコール結合を1〜2モル%含有し、かつ下記式(2)を満足することが好ましい。
 0.15 ≦ 含有量 ≦ −0.0606×Y+2.3049 ・・・(2)
(式中、含有量はスルフィド結合を介して結合したイオン基の含有量(モル%)を表し、YはPVAにおける1,2−グリコール結合の含有量を表す。)
 1,2−グリコール結合の含有量が1モル%に満たなかったり、あるいは2モル%を超える場合には、このようなPVAを用いることにより得られるビニルアセタール系重合体をインキまたは塗料のバインダーとして用いた場合に、得られるインクまたは塗料の、溶液粘度を低下させたり、固形分比率を高くする(顔料含有率を大きくする)効果が発現しなくなることがある。
 イオン基の含有量が、PVAにおける1,2−グリコール結合の含有量をYとしたときに(−0.0606×Y+2.3049)モル%を超える場合には、このようなPVAを用いることにより得られるビニルアセタール系重合体をインキまたは塗料のバインダーとして用いた場合に、得られるインクまたは塗料の、溶液粘度を低下させたり、固形分比率を高くする(顔料含有率を大きくする)効果が発現しなくなることがある。
 本発明において、PVAの1,2−グリコール結合の含有量はNMRのピークから求めることができる。すなわち、PVAをけん化度が99.9モル%以上になるまでけん化し、十分にメタノール洗浄を行い、次いで90℃の温度で減圧下に2日間乾燥を行うことにより、分析用の試料を作成する。分析用の試料をDMSO−D6に溶解し、トリフルオロ酢酸を数滴加えた後、500MHzのプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて80℃で測定する。ビニルアルコール単位のメチンに由来するピーク(3.2〜4.0ppm;積分値A)と、1,2−グリコール結合の1つのメチンに由来するピーク(3.25ppm;積分値B)から、次式にしたがって1,2−グリコール結合の含有量を算出する。
 1,2−グリコール結合含有量(モル%)=100B/A
 PVAの1,2−グリコール結合の含有量は、ビニルアセタール系重合体から求めることもできる。この場合には、ビニルアセタール系重合体をアルコール溶媒中で塩酸ヒドロキシアミンと反応させ、得られた反応物を水/アルコールで十分に再沈精製してPVAとし、それ以降の操作は上記と同様にして分析用の試料を作成する。
 本発明において、PVAの末端にスルフィド結合を介してイオン基を導入する方法として、ビニルエステル系単量体のラジカル重合を、イオン基を有するメルカプタンの共存下に行う連鎖移動重合法を採用することができる。この方法に基づく変性PVAの製造については、特開昭57−28121号公報、特開昭57−105410号公報、特開平1−26602号公報などに詳述されている。
 本発明において、PVAの1,2−グリコール結合含有量は、ビニルエステル系単量体のラジカル重合を行う際の重合温度あるいはビニレンカーボネートなどの他の単量体とビニルエステル系単量体との共重合により調整することができる。
 ビニルエステル系単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニルなどが挙げられ、これらの中でも酢酸ビニルが好ましい。
 イオン基を有するメルカプタンとしては、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸、4−メルカプトブタン酸、5−メルカプトペンタン酸、6−メルカプトヘキサン酸、8−メルカプトオクタン酸などのメルカプトカルボン酸;メルカプトメタンスルホン酸、2−メルカプトエタンスルホン酸、3−メルカプトプロパンスルホン酸、4―メルカプトブタンスルホン酸、5−メルカプトペンタンスルホン酸、6−メルカプトヘキサンスルホン酸、8−メルカプトオクタンスルホン酸などのメルカプトスルホン酸;メルカプトメタンホスホン酸、2−メルカプトエタンホスホン酸、3−メルカプトプロパンホスホン酸、4−メルカプトブタンホスホン酸、5−メルカプトペンタンホスホン酸、6−メルカプトヘキサンホスホン酸、8−メルカプトオクタンホスホン酸などのメルカプトホスホン酸;メルカプトメタンモノリン酸エステル、2−メルカプトエタンモノリン酸エステル、3−メルカプトプロパンモノリン酸エステル、4−メルカプトブタンモノリン酸エステル、5−メルカプトペンタンモノリン酸エステル、6−メルカプトヘキサンモノリン酸エステル、8−メルカプトオクタンモノリン酸エステルなどのメルカプトアルカンモノリン酸エステル;メルカプトメタントリメチルアンモニウムクロライド、2−メルカプトエタントリメチルアンモニウムクロライド、3−メルカプトプロパントリメチルアンモニウムクロライド、4−メルカプトブタントリメチルアンモニウムクロライド、5−メルカプトペンタントリメチルアンモニウムクロライド、6−メルカプトヘキサントリメチルアンモニウムクロライド、8−メルカプトオクタントリメチルアンモニウムクロライドなどのメルカプトアルキル基含有4級アンモニウム塩などが挙げられ、これらの中でもメルカプトカルボン酸およびメルカプトスルホン酸が好ましい。
 本発明の効果を損なわない範囲であれば、PVAにはビニルアルコール単位およびビニルエステル単位以外の単量体単位が含有されていてもよい。このような単位としては、エチレン、プロピレン、イソブテンなどのα−オレフィン類;フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などに由来するカルボキシル基を有する単量体;アクリル酸またはその塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸またはその塩、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピルなどのメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミドなどのアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミドなどのメタクリルアミド誘導体;N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムなどのN−ビニルアミド類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテルなどのヒドロキシ基含有ビニルエーテル類;アリルアセテート、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテルなどのアリルエーテル類;オキシアルキレン基を有する単量体;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン類、酢酸イソプロペニル、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オールなどのヒドロキシ基含有α−オレフィン類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などに由来するスルホン酸基を有する単量体;ビニロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシブチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシエチルジメチルアミン、ビニロキシメチルジエチルアミン、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドジメチルアミン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルアミン、アリルエチルアミンなどに由来するカチオン基を有する単量体が挙げられる。これらの単量体の含有量は、通常20モル%以下、好ましくは10モル%以下、さらに好ましくは5モル%以下である。
 本発明において用いられる、末端にスルフィド結合を介してイオン基を含有するPVAは、前述のイオン基を有するメルカプタンを用いた上に、さらに2−メルカプトエタノール、n−ドデシルメルカプタンなどのチオール化合物を用いて酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体を重合させ、得られるビニルエステル系重合体をけん化することによっても製造することができる。
 イオン基を有するメルカプタンの共存下にビニルエステル系単量体をラジカル重合させる方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法が採用される。その中でも、無溶媒で重合を行う塊状重合法またはアルコールなどの溶媒中で重合を行う溶液重合法が通常採用される。PVAの末端にイオン基を有するメルカプタンを効率よく導入するには、ビニルエステル系単量体の反応率に応じて該メルカプタンを添加することが望ましい。その具体的な方法として、重合系内においてビニルエステル系単量体と該メルカプタンのモル濃度が一定になるように調整する方法が挙げられる。溶液重合法を採用して重合を行う際に溶媒として使用されるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどの低級アルコールが挙げられる。重合に使用される開始剤としては、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−バレロニトリル)などのアゾ系開始剤、および過酸化ベンゾイル、n−プロピルパーオキシカーボネートなどの過酸化物系開始剤が挙げられる。重合温度については特に制限はないが、0℃〜150℃が好ましく、10℃〜120℃がより好ましく、30℃〜100℃がさらに好ましく、40℃〜80℃がより好ましい。
 前述した方法にしたがって、イオン基を有するメルカプタンの共存下にビニルエステル系単量体をラジカル重合させることにより得られたビニルエステル系重合体は、アルコールまたはジメチルスルホキシド溶液中でけん化され、末端にスルフィド結合を介してイオン基を含有するPVAが得られる。
 ビニルエステル系重合体をけん化するに際し、触媒として、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ性物質が用いられる。アルカリ性物質はビニルエステル単位に対するモル比で0.004〜0.5で用いられるのが好ましく、0.005〜0.05が特に好ましい。アルカリ性物質はけん化反応の初期に一括して添加してもよいし、あるいはけん化反応の途中で追加添加してもよい。
 けん化反応に用いられる溶媒としては、メタノール、酢酸メチル、ジエチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。これらの溶媒の中でもメタノールが好ましく、メタノールを用いるにあたり含水率を0.001〜1重量%に調整するのが好ましく、0.003〜0.9重量%がより好ましく、0.005〜0.8重量%が特に好ましい。
 ビニルエステル系重合体をけん化する際に、ビニルエステル系重合体の濃度を10〜70%にするのが好ましく、20〜65%がより好ましい。けん化反応の温度は、5〜80℃が好ましく、20〜70℃がより好ましい。けん化反応の時間は、5分間〜10時間が好ましく、10分間〜5時間がより好ましい。ビニルエステル系重合体のけん化を行う方法としては、バッチ法や連続法など公知の方法が適用可能である
 ビニルエステル系重合体をけん化することにより得られた末端にスルフィド結合を介してイオン基を含有するPVAは、次いで洗浄に付される。
 使用可能な洗浄液としては、メタノール、アセトン、酢酸メチル、ヘキサン、水などが挙げられ、これらの中でもメタノール、酢酸メチル、水を単独でまたは混合液として用いるのが好ましい。
 洗浄液は、PVA100重量部に対して通常2〜10000重量部の量で用いられるのが好ましく、3〜3000重量部がより好ましい。洗浄時の温度は、5〜80℃が好ましく、20〜70℃がより好ましい。洗浄の時間は、20分間〜10時間が好ましく、1時間〜6時間がより好ましい。PVAを洗浄する方法としてはバッチ法や向流洗浄法など公知の方法が適用可能である。
 上記の方法により製造された末端にスルフィド結合を介してイオン基を含有するPVAは、公知の方法にしたがって、酸性条件下含水溶媒中でアセタール化され、ビニルアセタール系重合体が得られる。本発明において用いられるビニルアセタール系重合体はアセタール化度が45〜80モル%であり、50〜80重量モル%が好ましく、60〜80重量モル%が特に好ましい。ビニルアセタール系重合体のアセタール化度が45モル%に満たない場合には、アセタール化反応により得られる粉末状の反応生成物の回収が困難になる場合があり、あるいは低溶液粘度でかつ高固形分比率(高顔料含有率)のインキおよび塗料を得るのが困難になることがあり、この場合、印刷または塗装により形成された塗膜の耐久性に問題が生じることがある。ビニルアセタール系重合体のアセタール化度が80モル%を超えると、ビニルアセタール系重合体の製造が困難になる場合がある。
 末端にスルフィド結合を介してイオン基を含有するPVAをアセタール化する方法としては、例えば、a)該PVAを水に加熱溶解して5〜30%濃度の水溶液を調製し、これを5〜50℃まで冷却した後、所定量のアルデヒドを加えて−10〜30℃まで冷却し、酸を添加することにより水溶液のpHを1以下にしてアセタール化反応を開始する方法、b)該PVAを水に加熱溶解して5〜30%濃度の水溶液を調製し、これを5〜50℃まで冷却し、酸を添加することにより水溶液のpHを1以下にした後−10〜30℃まで冷却し、所定量のアルデヒドを加えてアセタール化反応を開始する方法などが挙げられる。
 アセタール化反応に要する時間は通常1〜10時間程度であり、反応は攪拌下に行うことが好ましい。また、上述した方法でアセタール反応を行った場合に、ビニルアセタール系重合体のアセタール化度が上昇しない場合には、50〜80℃程度の高い温度で反応を継続してもよい。
 アセタール化反応後に得られる粉末状の反応生成物を濾過し、アルカリ水溶液で中和した後、水洗、乾燥することにより、目的とするビニルアセタール系重合体が得られる。
 アセタール化反応に用いられるアルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ベンズアルデヒドなどが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。好ましいアルデヒド化合物の例は炭素数4以下のアルキルアルデヒド、およびベンズアルデヒドであり、特にブチルアルデヒドが好ましい。
 アセタール化反応の際に使用される酸としては、通常、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸、およびjp−トルエンスルホン酸などの有機酸が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。また、アセタール化反応後に得られる粉末状の反応生成物を中和するのに用いられるアルカリ化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物のほか、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジンなどのアミン系化合物が挙げられる。
 本発明のインキまたは塗料用バインダーとして、重合度が30〜700、けん化度が80.0〜99.99モル%であり、末端にスルフィド結合を介して結合したイオン基を前記式(1)を満足する条件で含有するビニルアルコール系重合体をアセタール化して得られる、アセタール化度が45〜80モル%のビニルアセタール系重合体(A)、および重合度が30〜1000、けん化度が80.0〜99.99モル%のビニルアルコール系重合体をアセタール化して得られる、アセタール化度が45〜80モル%のアセタール化度を有するビニルアセタール系重合体(B)を、5/95≦(A)/(B)≦100/0の重量比で含有するビニルアセタール系重合体組成物を用いることができる。
 ビニルアセタール系重合体(A)と併用されるビニルアセタール系重合体(B)について、その重合度が30未満の場合には、PVAを工業的に製造するのが困難になり、重合度が1000を超えると、低溶液粘度でかつ高固形分比率(高顔料含有率)のインキおよび塗料を得るのが困難になることがある。また、ビニルアセタール系重合体(B)のけん化度が80モル%未満の場合には、低溶液粘度でかつ高固形分比率(高顔料含有率)のインキおよび塗料を得るのが困難になることがある。また、けん化度が99.99モル%を超える場合には、PVAを製造するのが困難になる。
 本発明のインキまたは塗料用バインダーとして用いられるビニルアセタール系重合体組成物において、(A)および(B)は5/95≦(A)/(B)≦100/0の重量比で用いられる必要があり、(A)/(B)の重量比の下限は10/90がより好ましく、20/80がさらに好ましい。(A)/(B)が5/95未満の場合には、(A)を使用することによる効果が発現しないことがあり、低溶液粘度でかつ高固形分比率(高顔料含有率)のインキおよび塗料を得るのが困難になることがある。
 (A)および(B)を含有するビニルアセタール系重合体組成物を製造する方法としては、(A)および(B)をそれぞれ別途に製造しておいて、両者を混合するという方法によってもよいし、あるいは重合度が30〜700、けん化度が80.0〜99.99モル%であり、末端にスルフィド結合を介して結合したイオン基を前記式(1)を満足する条件で含有するビニルアルコール系重合体(A)と、重合度が30〜1000、けん化度が80.0〜99.99モル%のビニルアルコール系重合体(B)とを混合した水溶液を調製し、これを前述したアセタール化反応に付することによって、(A)と(B)が混合された状態のビニルアセタール系重合体を得るという方法によってもよい。
 (A)および(B)の2種類のビニルアセタール系重合体を併用する場合に、ビニルアセタール系重合体(A)の原料に用いられるPVAに含まれるスルフィド結合を介して結合したイオン基の平均含有量は、ビニルアセタール系重合体(A)の原料に用いられるPVAとビニルアセタール系重合体(B)の原料に用いられるPVAの合計の全単量体単位に対して0.15モル%以上であることが好ましい。ビニルアセタール系重合体(A)の原料に用いられるPVAに含まれるスルフィド結合を介して結合したイオン基の平均含有量が、ビニルアセタール系重合体(A)の原料に用いられるPVAとビニルアセタール系重合体(B)の原料に用いられるPVAの合計の全単量体単位に対して0.15モル%以上となるように、(A)および(B)の2種類のビニルアセタール系重合体を併用して、インキまたは塗料用バインダーとして用いた場合には、後述する実施例17、18および19に示されるように、低い溶液粘度でかつ高い固形分比率のインキまたは塗料を製造することができる。
 本発明のインキまたは塗料用バインダーは、インキまたは塗料における含有量として好ましくは1〜35重量%、さらに好ましくは5〜25重量%の範囲で用いられる。インキおよび塗料は、例えば、5〜25重量%の顔料、および5〜25重量%のビニルアセタール系重合体のほか、溶媒を含んでいてもよい。
 インキまたは塗料に含まれる顔料としては、従来から公知のあらゆる有機または無機顔料が適している。また、用いられる溶媒としては、エチルアルコールなどのアルコール類や酢酸エチルなどのエステル類が挙げられる。
 また、このようなインキまたは塗料において、上記した特定のビニルアセタール系重合体からなるインキまたは塗料用バインダーは、エクステンダー樹脂、助剤などと組み合わせて使用することができる。また、上記ビニルアセタール系重合体は、単にインキの添加剤として使用することもできる。
 本発明のインキまたは塗料用バインダーを用いた場合には、該インキまたは塗料用バインダーを含む溶液に1種または2種以上の顔料を添加し、得られた顔料ペーストを混練した後に得られる溶液の粘度が、使用したビニルアセタール系重合体の粘度から予測される溶液の粘度よりも低く、従来公知のビニルアセタール系重合体をインキまたは塗料用バインダーとして用いた場合と比較して、溶液の粘度を著しく低下させることができるという効果がもたらされる。このことは、インキまたは塗料の粘度を調整する際に使用されるワニスまたは溶媒の量を低減できるということと、顔料の含有量を増加させることができるということを意味している。その結果、本発明のインキまたは塗料用バインダーは、最適の粘度のままで着色の程度を高くすることができ、あるいは着色の程度を変えずに粘度をより低くすることができ、インキおよび塗料に必要とされていた要求性能を満たすことができる。
 以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。なお、以下の実施例および比較例において、「部」および「%」は特に断らない限り重量基準を意味する。
[PVAの分析方法]
 PVAの分析は、特に断らない限りJIS−K6726に記載の方法にしたがって行った。PVAの末端にスルフィド結合を介して結合したイオン基の量および1,2−グリコール結合の含有量は、前述の方法にしたがって、500MHzのプロトンNMR測定装置(JEOL GX−500)を用いて求めた。
[ビニルアセタール系重合体の分析方法]
 ビニルアセタール系重合体のアセタール化度は、ビニルアセタール系重合体をDMSO−d6に溶解し、500MHzのプロトンNMR測定装置(JEOL GX−500)を用いて求めた。
合成例(PVAの合成)
 撹拌機、還流管、およびディレー溶液の添加口を備えた6Lのセパラブルフラスコに酢酸ビニル2800g、メタノール680gを仕込み、60℃に昇温した後、30分間窒素ガスによるバブリングを行い系中を窒素置換した。連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸の15重量%メタノール溶液を調製し、これに窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。この溶液5.0gを上記フラスコ内に添加し、フラスコの内温を60℃に調整した。重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル2.5gをメタノール20gに溶解し、上記フラスコに添加して重合を開始した。重合中は重合温度を60℃に維持し、3−メルカプトプロピオン酸の15重量%メタノール溶液を連続的に添加して重合を実施した。5時間経過後、重合率が70%となったところで、フラスコを冷却して重合を停止した。なお、重合中に連続的に添加した3−メルカプトプロピオン酸の15重量%メタノール溶液の量は129.2gであった。次いで、フラスコ内にメタノール蒸気を導入することで未反応の酢酸ビニル単量体を追い出し、ビニルエステル系重合体を70%含有するメタノール溶液を得た。
 ビニルエステル系重合体を70%含有するメタノール溶液を用い、これに適当量のメタノール、水酸化ナトリウム10重量%を含有するメタノール溶液をこの順番で加え、40℃でけん化反応を開始した。なお、けん化反応開始時のビニルエステル系重合体の固形分濃度は50重量%であった。水酸化ナトリウムを含有するメタノール溶液の添加は攪拌下に行われ、水酸化ナトリウムの添加量はビニルエステル系重合体の酢酸ビニル単位に対するモル比で0.012であった。水酸化ナトリウムを含有するメタノール溶液の添加を開始して約2分後に得られたゲル化物を粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチルを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、白色のPVA固体を濾別した。得られたPVA固体に5倍量のメタノールを加え室温で3時間放置するという操作でPVA固体を洗浄した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心法により脱液したPVAを乾燥機に入れ、70℃で2日間放置して乾燥を行った。このようにして得られたPVA(PVA−1a)の分析値を表2に示す。
 また、これとは別に、上記のビニルエステル系重合体をけん化度99.95モル%以上にけん化し、3日間メタノールソックスレー抽出し十分に洗浄を行った後、90℃で減圧下に2日間乾燥を行って分析用のPVAを作成した。溶媒としてDMSO−d6を用いてプロトンNMRの測定を行い、硫黄原子に結合するメチレンに由来するピーク(2.6ppm)からイオン基の含有量を算出した結果、0.82モル%であった。また同様に1,2−グリコール結合含有量を算出した結果、1.52モル%であった。
 反応条件を表1および表3に示す内容に変更した以外はPVA−1aと同様にして、各種のPVA(PVA−2a〜PVA−17aおよびPVA−1b〜PVA−10b)を合成した。各PVAについてその分析値を表2および表4に示す。なお、重合温度が60℃を超える場合、同様の付帯設備を有するオーaトクレーブを用いて重合反応を行った。
Figure 2004068012
Figure 2004068012
Figure 2004068012
Figure 2004068012
実施例1
(ビニルアセタール系重合体の合成)
  540gのPVA(PVA−1a)を水6600ml中に投入し、攪拌下に90℃まで昇温して溶解させた後、30℃まで冷却し、ブチルアルデヒド287 gを添加して分散させた後0℃まで冷却し、20%濃度の塩酸溶液1090mlを添加し、反応を開始した。塩酸溶液の添加が終了してから、その反応溶液を3時間かけて30℃にまで加温し、そしてこの温度を更に2時間維持した。析出した粒状物を濾別してこれを水で十分に洗浄し、中和させるために、10%水酸化ナトリウム溶液350mlを得られた生成物の懸濁液に添加し、これを再び穏やかに加温した。さらに、水で洗浄することによって過剰のアルカリを除去した後、生成物を乾燥した。得られたビニルアセタール系重合体(VAP−1a)の分析値を表2に示す。 なお、該ビニルアセタール系重合体を90℃で減圧下2日間乾燥した後、溶媒としてDMSO−d6を用いてプロトンNMRの測定を行い、硫黄原子に結合するメチレンに由来するピーク(2.6ppm)からイオン基の含有量を算出した結果、原料として用いたPVA−1aのそれと同量であった。
(顔料分散液の調製)
 数種類の固形分濃度が異なるビニルアセタール系重合体(VAP−1a)のエタノール溶液を調製し、これらの溶液の流出時間をDIN 4mmカップ(DIN53211/23℃)で測定した後、流出時間が20秒になるように濃度を調節したビニルアセタール系重合体(VAP−1a)のエタノール溶液400 gを調製した。このエタノール溶液に顔料(Hostaperm Blue B 2G)100 gを添加し、これらの混合物を均質化し、ガラスビーズを用いて30分間、冷却しながら練磨した後、篩を用いてガラスビーズを分離し、顔料分散液を調製した。
 得られた顔料分散液について、顔料分散液の粘度および顔料分散液に含有させうる顔料の量を以下の方法により測定した。測定結果を表5に示す。
(顔料分散液の粘度:カップ流出時間)
顔料分散液の流出時間をDIN6mmカップ(DIN53211/23℃)で測定した。
(顔料分散液中の顔料含有量)
 カップ流出時間の測定に用いた顔料分散液についてその23℃におけるヘプラー粘度が10mPa・sとなるようにエタノールで希釈し、その溶液中に含まれる顔料含有量を算出した。なお、顔料含有量は、比較例1において測定された顔料含有量を1.0としたときの比率(倍)で示した。
実施例2〜15
 表2に示す重合度が200のPVA(PVA−1aおよびPVA−5a〜PVA−16a)を用い、実施例1と同様の方法でビニルアセタール系重合体を合成してカップ流出時間、および顔料分散液中における顔料含有量を求めた。その結果を表5に示す。
比較例1〜6
 表2および表4に示す重合度が200のPVA(PVA−1a、PVA−1b、およびPVA−7b〜PVA−9b)を用い、実施例1と同様の方法でビニルアセタール系重合体を合成してカップ流出時間、および顔料分散液中における顔料含有量を求めた。その結果を表5に示す。
Figure 2004068012
実施例16および比較例7、8
 表2および表4に示す重合度が500のPVA(PVA−2a、PVA−2bおよびPVA−10b)を用い、実施例1と同様の方法でビニルアセタール系重合体を合成してカップ流出時間、および顔料分散液中における顔料含有量を求めた。その結果を表6に示す。
Figure 2004068012
比較例9および10
 表4に示す重合度が850のPVA(PVA−5bおよびPVA−6b)を用い、実施例1と同様の方法でビニルアセタール系重合体を合成してカップ流出時間、および顔料分散液中における顔料含有量を求めた。その結果を表7に示す。
Figure 2004068012
実施例17〜21および比較例11
 表2および表4に示す重合度が80および300のPVA(PVA−3a、PVA−4a、PVA−17a、PVA−3bおよびPVA−4b)から2種類を選択し、これを平均重合度が250となる割合で混合して用いた以外は、実施例1と同様の方法でビニルアセタール系重合体を合成し、カップ流出時間、および顔料分散液中における顔料含有量を求めた。その結果を表8に示す。
Figure 2004068012
 表5〜表8に示す結果から、重合度が30〜700、けん化度が80.0〜99.99モル%であり、末端にスルフィド結合を介して結合したイオン基を前記式(1)を満足する条件で含有するビニルアルコール系重合体をアセタール化して得られる、アセタール化度が45〜80モル%のビニルアセタール系重合体をインキまたは塗料用バインダーとして用いた場合に得られる顔料分散液(実施例1〜21)は、これらの条件を満たさないビニルアセタール系重合体をインキまたは塗料用バインダーとして用いた場合に得られる顔料分散液(比較例1〜11)と比較して、顔料分散液の粘度が低い上、顔料分散液に含まれる顔料含有量が高いことが分かる。
 特に、ビニルアセタール系重合体として、1,2−グリコール含有量が1〜2モル%であり、イオン基がカルボキシル基またはスルホン酸基であり、さらにこれらイオン基の含有量が前記式(2)を満足するビニルアルコール系重合体をブチラール化することによって得られ、そのブチラール化度が60〜80モル%のビニルブチラール系重合体を用いた場合には(実施例1、2、5、6、7、10、11、14、16、17、18、19)、顔料分散液の粘度を低くし、かつ顔料含有量を高くする効果が顕著に優れている。

Claims (6)

  1.  重合度が30〜700、けん化度が80.0〜99.99モル%であり、末端にスルフィド結合を介して結合したイオン基を下記式(1)を満足する条件で含有するビニルアルコール系重合体をアセタール化して得られる、アセタール化度が45〜80モル%のビニルアセタール系重合体からなるインキまたは塗料用バインダー。
     0.15 ≦ 含有量 ≦ 218.3×P−1.046 ・・・(1)
    (式中、含有量は、スルフィド結合を介して結合したイオン基の含有量(モル%)を表し、Pはビニルアルコール系重合体の重合度を表す。)
  2.  ビニルアルコール系重合体が1,2−グリコール結合を1〜2モル%含有し、かつ下記式(2)を満足することを特徴とする請求項1記載のインキまたは塗料用バインダー。
     0.15 ≦ 含有量 ≦ −0.0606×Y+2.3049 ・・・(2)
    (式中、含有量はスルフィド結合を介して結合したイオン基の含有量(モル%)を表し、Yはビニルアルコール系重合体における1,2−グリコール結合の含有量を表す。)
  3.  イオン基がカルボン酸およびスルホン酸またはこれらの塩から選ばれる少なくとも1種の基である請求項1または2記載のインキまたは塗料用バインダー。
  4.  ビニルアセタール系重合体が、ビニルアルコール系重合体をブチラール化することによって得られたものであり、かつそのブチラール化度が60〜80モル%であることを特徴とする請求項1記載のインキまたは塗料用バインダー。
  5.  重合度が30〜700、けん化度が80.0〜99.99モル%であり、末端にスルフィド結合を介して結合したイオン基を下記式(1)を満足する条件で含有するビニルアルコール系重合体をアセタール化して得られる、アセタール化度が45〜80モル%のビニルアセタール系重合体(A)、および重合度が30〜1000、けん化度が80.0〜99.99モル%のビニルアルコール系重合体をアセタール化して得られる、アセタール化度が45〜80モル%のアセタール化度を有するビニルアセタール系重合体(B)を、5/95≦(A)/(B)≦100/0の重量比で含有するビニルアセタール系重合体組成物からなるインキまたは塗料用バインダー。
     0.15 ≦ 含有量 ≦ 218.3×P−1.046 ・・・(1)
    (式中、含有量は、スルフィド結合を介して結合したイオン基の含有量(モル%)を表し、Pはビニルアルコール系重合体の重合度を表す。)
  6.  ビニルアルコール系重合体(A)が1,2−グリコール結合を1〜2モル%含有し、かつ下記式(2)を満足することを特徴とする請求項5記載のビニルアセタール系重合体組成物からなるインキまたは塗料用バインダー。
     0.15 ≦ 含有量 ≦ −0.0606×Y+2.3049 ・・・(2)
    (式中、含有量はスルフィド結合を介して結合したイオン基の含有量(モル%)を表し、Yはビニルアルコール系重合体における1,2−グリコール結合の含有量を表す。)
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