JP2004066661A - 酸化物積層体及びその形成方法、並びに画像表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】曲げ等の機械的な特性に優れている酸化物積層体。
【解決手段】基材上に少なくとも1つの酸化物層を有し、酸化物層の少なくとも1つの層において赤外吸収スペクトル測定より得られた、−M−O−M−(Mはケイ素、ジルコニウム、チタン、タングステン、タンタル、アルミニウム、亜鉛、インジウム、クロム、バナジウム、ニオブ、錫のうち少なくとも1種類の元素)結合に帰属される吸収におけるLO(Longitudinal Optical)モードとTO(Transverse Optical)モードとの吸収強度比LO/TOが、0.2〜0.8の範囲であること。
【選択図】 図1
【解決手段】基材上に少なくとも1つの酸化物層を有し、酸化物層の少なくとも1つの層において赤外吸収スペクトル測定より得られた、−M−O−M−(Mはケイ素、ジルコニウム、チタン、タングステン、タンタル、アルミニウム、亜鉛、インジウム、クロム、バナジウム、ニオブ、錫のうち少なくとも1種類の元素)結合に帰属される吸収におけるLO(Longitudinal Optical)モードとTO(Transverse Optical)モードとの吸収強度比LO/TOが、0.2〜0.8の範囲であること。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基材上に形成した酸化物積層体及びその形成方法、並びに画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
古くから様々な用途に、基材上に金属酸化物薄膜を形成した積層体が用いられている。一例として、電極膜、誘電体保護膜、半導体膜、透明導電膜、エレクトロクロミック膜、蛍光膜、超伝導膜、誘電体膜、太陽電池膜、反射防止膜、耐摩耗性膜、光学干渉膜、反射膜、帯電防止膜、導電膜、防汚膜、ハードコート膜、下引き膜、バリア膜、電磁波遮蔽膜、赤外線遮蔽膜、紫外線吸収膜、潤滑膜、形状記憶膜、磁気記録膜、発光素子膜、生体適合膜、耐食性膜、触媒膜、ガスセンサ膜、装飾膜等が挙げられる。
【0003】
一方で、情報化社会においては通信技術の発達により、企業や家庭のような特定の場所のみならず、何時でも何処でも情報を取り出せる社会が到来しようとしており、情報を認識するためのディスプレイデバイスも、何時でも何処でも動作でき、且つ明瞭に表示内容を認識できることが求められている。何時でも何処でもという要望に応えるためには、携帯性も重要な性能であるし、傷が付き難いといった耐久性も必要とされる。先に掲げたように酸化物薄膜積層体は、例えば反射防止膜であれば、基材上に屈折率の異なる酸化物薄膜を積層したものが一般的である。金属酸化物系のものは屈折率制御において有利であったが、機械的特性、つまり曲げと耐傷性といった特性はその硬さ故に脆く、例えば曲げた場合にひびが入るといった欠点を有している。
【0004】
更に言えば、従来このような高機能性の薄膜は、塗布に代表される湿式製膜法、或いは、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等の真空を用いた乾式製膜法によって形成されているが、塗布は生産性が高い点で有用であるが、薄膜を構成する材料を溶媒に溶解或いは分散した塗布液としなければならないため、当該溶媒が薄膜中に残存したり、膜厚の均一性を保つことが難しい等、あまり高性能の薄膜形成には向いているとは言えない。また、塗布後の乾燥工程において、塗布液から蒸発した有機溶剤等の溶媒が環境に負荷を与えるという問題も含んでいる。
【0005】
一方、上記真空を用いた乾式製膜法は、高精度の薄膜が形成出来るため、高性能の薄膜を形成するには好ましい方法である。しかし、乾式製膜法に用いる真空装置は、被処理基材が大きくなると装置が非常に大型化し、値段も高額になる他に、真空排気にも膨大に時間を費やし、生産性が上げられないデメリットが大きい。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、酸化物積層体は硬さに優れる反面、その他の機械的な特性に劣ることが知られている。特に、表示素子等使用環境が苛酷なものについては高品質であると同時に、高耐久性であることを求められている。また、これまでにない真空、溶媒除去を必要としない新しい生産プロセスが求められている。
【0007】
本発明者達は係る問題に鑑み、鋭意検討の結果、本発明における酸化物積層体が先に記載した曲げ等の機械的な特性に優れていることを見出した。更に、本発明における酸化物積層体の形成方法によれば、緻密で品質の高い酸化物薄膜を高品質な基材上に形成できることを見出した。
【0008】
なお、本発明は透明基材上に酸化物薄膜を形成する反射防止膜等に好適である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的は下記の何れかの手段により達成される。
【0010】
▲1▼基材上に少なくとも1つの酸化物層を有し、酸化物層の少なくとも1つの層において赤外吸収スペクトル測定より得られた、−M−O−M−(Mはケイ素、ジルコニウム、チタン、タングステン、タンタル、アルミニウム、亜鉛、インジウム、クロム、バナジウム、ニオブ、錫のうち少なくとも1種類の元素)結合に帰属される吸収におけるLO(Longitudinal Optical)モードとTO(Transverse Optical)モードとの吸収強度比LO/TOが、0.2〜0.8の範囲であることを特徴とする酸化物積層体。
【0011】
▲2▼請求項1〜5の何れか1項に記載の酸化物積層体を用い、酸化物層を形成する際、大気圧または大気圧近傍の圧力下において、少なくとも1種類以上の不活性ガスと、少なくとも1種類以上の反応性ガスからなる混合ガスを放電空間に導入してプラズマ状態とし、基材を前記プラズマ状態の反応性ガスに晒すことによって、前記基材上に薄膜を形成することを特徴とする酸化物積層体の形成方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
先ず、本発明における酸化物積層体について図1を参照して説明する。
【0013】
・膜の種類
ケイ素、ジルコニウム、チタン、タングステン、タンタル、アルミニウム、亜鉛、インジウム、クロム、バナジウム、ニオブ、錫のうち少なくとも1種類の元素を有する酸化物。好ましくはケイ素、チタン。より好ましくはケイ素。
【0014】
・組成
金属、酸素、炭素、水素からなる膜が好ましい。好ましい組成は、金属、酸素、炭素、窒素の合計に対し、金属の量が5原子%以上。より好ましくは20原子%以上、更に好ましくは25原子%以上。炭素含有率は0.1〜5原子%が好ましい。膜の組成はX線光電子分光法により求めることができる。
【0015】
・LO/TO比の測定
例えばシリコン基板を1000℃で加熱酸化させた試料において、減衰全反射赤外分光法(ATR−IR法)を用い、入射面に平行な(p−偏光)光を入射させて測定すると、Si−O−Siの格子振動であるLO(Longitudinal Optical)モードの吸収が1200cm−1付近に現れる。この吸収は欠陥の多いSiO2膜や粒子状SiO2では観察されない吸収であり、欠陥の少ない格子状構造になるに従って強く観察される性質を有する。一方、同様なSi−O−Siの格子振動であるTO(Transverse Optical)モードの吸収は1000から1100cm−1付近に現れ、逆に欠陥の多いSiO2膜や粒子状SiO2で強く観察される。
【0016】
両者の吸収強度比を測定することにより、SiO2膜の内部欠陥(不完全性)を示すパラメータとなり、膜の硬さと相関が認められる。プラズマCVDで作成したSiO2膜も同様な吸収が観察される。
【0017】
膜の硬さは硬い程丈夫であるが、硬過ぎると亀裂を生じ易くなって問題が生じるので、適度の硬さを有するものが好ましい。LOモードとTOモードの吸収強度比(LO/TO)が好ましくは0.2〜0.8の範囲にあると良好な膜が得られた。さらに好ましくは0.4〜0.7である。
【0018】
LO/TO吸収強度比の測定方法
減衰全反射赤外分光法(ATR−IR法)を用い、次の条件で測定する。
【0019】
プリズム:ゲルマニウム、入射角:45℃、これに入射面に振動面が平行な偏光および垂直な偏光をワイヤーグリッド偏光子を用いて入射し、赤外(IR)スペクトルを測定する。下層の吸収の影響が強い場合は、下層の基準スペクトルを同様に測定し差スペクトルを行い、下層の影響を消去する。
【0020】
LO/TO吸収強度比の求め方
入射面に振動面が垂直な偏光を入射し、SiO2膜の1000から1100cm−1の間に現れる最も強いピーク(複数認められる場合は最も強度の高いピーク)の強度を測定し、このピーク強度をTOモードのピークとする。ピーク強度は、そのピークトップの波数を(1062cm−1)とすると1300から1400cm−1の中の最も吸光度の小さな点と、800から900cm−1の中の最も吸光度の小さな点を結びこれをベースラインとし、そこからのピークの強度を測定して求める。同様に入射面に振動面が平行な偏光を入射し、SiO2膜の1205cm−1におけるピークの強度を測定し、このピーク強度をLOモードのピークとするピーク強度は、1300から1400cm−1の中の最も吸光度の小さな点と、800から900cm−1の中の最も吸光度の小さな点を結びこれをベースラインとし、そこからの1205cm−1のおける吸光度を測定して求める。
【0021】
なお、LO/TO吸収強度比=LO/TOとする。
また、下記の文献を参考にすることができる。
【0022】
▲1▼Infrared absorption spectra of SiO2 precipitates of various shapes in silicon:calculated and experimental,S.M.Hu,J.Appl.Phys.51(11).5945(1980).
▲2▼J.E.Olsen and F.Shimura,J.Appl.Phys.66(3),1353(1989).
高機能性の薄膜は、塗布に代表される湿式製膜法、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等の真空を用いた乾式製膜法によって形成されている。
【0023】
塗布は生産性が高い点で有用であるが、薄膜を構成する材料を溶媒に溶解或いは分散した塗布液としなければならないため、当該溶媒が薄膜中に残存したり、膜厚の均一性を保つことが難しい等、高性能の薄膜形成にはあまり向いていない。また、塗布後の乾燥工程において、塗布液から蒸発した有機溶剤等の溶媒が環境に負荷を与えるという問題も含んでいる。
【0024】
一方、上記真空を用いた乾式製膜法は高精度の薄膜が形成出来るため、高性能の薄膜を形成するには好ましい方法である。しかし、乾式製膜法に用いる真空装置は被処理基材が大きくなると装置が非常に大型化し、値段も高額になる他、真空排気にも膨大な時間を費やし、生産性が上げられないデメリットが大きい。
【0025】
上記の塗布による高機能な薄膜が得にくいディメリット、及び真空装置を用いることによる低生産性のディメリットを克服する方法として、大気圧または大気圧近傍の圧力下で放電し、反応性ガスをプラズマ励起し、ここに反応性ガスを導入して基材表面に金属酸化物等の薄膜を形成する方法が特開平11−133205号公報、特開2000−185362号公報、特開平11−61406号公報、特開2000−147209号公報、特開2000−121804号公報等に記載されている(以下、大気圧プラズマ法とも称する)。これらの公報に開示される大気圧プラズマ法は、対向する電極間にパルス化され、周波数が0.5〜100kHzであり、且つ電界の強さが1〜100V/cmの電界を印加し、放電プラズマを発生させるというものである。
【0026】
即ち、高機能性の薄膜を作成するには、スパッタ、蒸着、真空CVD、塗布(ゾルゲル)法で作成することも可能であるが、生産性及び品質を考慮すると、大気圧プラズマを用いた製膜法で作成することが好ましい。
【0027】
次に、フィルムに直接または他の層を介して形成される金属化合物層について説明する。
【0028】
この金属化合物層を形成する方法としてはプラズマ放電処理が好ましく用いられる。詳細には、対向する電極間に高周波電圧を印加して放電させることにより、反応性ガスをプラズマ状態とし、基材であるフィルムをこのプラズマ状態の反応性ガスに晒すことによって、前記フィルム上に直接または他の層を介して設けられる。
【0029】
本発明において、電極間に印加する高周波電圧の周波数の上限値として好ましくは150MHz以下である。また、高周波電圧の周波数の下限値として好ましくは200kHz以上、更に好ましくは800kHz以上である。
【0030】
また、電極間に供給する電力の下限値として好ましくは1.2W/cm2以上であり、上限値として好ましくは50W/cm2以下、更に好ましくは20W/cm2以下である。なお、電極における電圧の印加面積(/cm2)は、放電が起こる範囲の面積のことを指す。
【0031】
また、電極間に印加する高周波電圧は、断続的なパルス波であっても、連続したサイン波であっても構わないが、本発明の効果を高く得るためには、連続したサイン波であることが好ましい。
【0032】
本発明においては、このようなハイパワーの電圧を印加して均一なグロー放電状態を保つことができる電極をプラズマ放電処理装置に採用する必要がある。
【0033】
このような電極としては、金属母材上に誘電体を被覆したものであることが好ましい。少なくとも対向する印加電極とアース電極の片側に誘電体を被覆すること、更に好ましくは対向する印加電極とアース電極の両方に誘電体を被覆することである。誘電体としては、比誘電率が6〜45の無機物であることが好ましく、このような誘電体としては、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、或いは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等がある。
【0034】
また、基材であるセルロースエステルフィルムを電極間に載置或いは電極間を搬送してプラズマに晒す場合には、基材を片方の電極に接して搬送出来るロール電極仕様にするだけでなく、更に誘電体表面を研磨仕上げし、電極の表面粗さRmax(JIS B0601)を10μm以下にすることで、誘電体の厚み及び電極間のギャップを一定に保つことができ、放電状態を安定化できること、更に熱収縮差や残留応力による歪やひび割れを無くし、且つポーラスで無い高精度の無機誘電体を被覆することで大きく耐久性を向上させることができるため好ましい。
【0035】
また、高温下での金属母材に対する誘電体被覆による電極製作において、少なくとも基材と接する側の電極表面の誘電体を研磨仕上げすること、更に電極の金属母材と誘電体間の熱膨張の差をなるべく小さくすることが必要であり、そのために製作方法において、母材表面に応力を吸収出来る層として泡混入量をコントロールして無機質の材料をライニングすること、特に材質としては琺瑯等で知られる溶融法により得られるガラスであることが良く、更に導電性金属母材に接する最下層の泡混入量を20〜30体積%とし、次層以降を5体積%以下とすることで、緻密で且つひび割れ等が発生しない良好な電極が出来る。
【0036】
また、電極の母材に誘電体を被覆する別の方法として、セラミックスの溶射を空隙率10体積%以下まで緻密に行い、更にゾルゲル反応により硬化する無機質の材料にて封孔処理を行うことであり、ここでゾルゲル反応の促進には、熱硬化やUV硬化が良く、更に封孔液を希釈し、コーティングと硬化を逐次で数回繰り返すと、より一層無機質化が向上し、劣化の無い緻密な電極が出来る。
【0037】
このような電極を用いたプラズマ放電処理装置について、図2〜図7を参照しながら説明する。図2〜図7のプラズマ放電処理装置は、アース電極であるロール電極と、対向する位置に配置された印加電極である固定電極との間で放電させ、当該電極間に反応性ガスを導入してプラズマ状態とし、前記ロール電極に巻回された長尺フィルム状の基材を前記プラズマ状態の反応性ガスに晒すことによって、薄膜を形成するものであるが、本発明で採用される薄膜形成方法を実施する装置としてはこれに限定されるものではなく、グロー放電を安定に維持し、薄膜を形成するために反応性ガスを励起してプラズマ状態とするものであればよい。他の方式としては、基材を電極間ではない電極近傍に載置或いは搬送させ、発生したプラズマを当該基材上に吹き付けて薄膜形成を行うジェット方式等がある。或いは、2つの隣接した回転電極間で高周波電圧を印可して放電させ、このロール電極に巻回された長尺フィルム状の基材上に薄膜を形成することもできる。
【0038】
図2は、本発明で採用される薄膜形成方法に用いられるプラズマ放電処理装置に設置されるプラズマ放電処理容器の一例を示す概略図である。
【0039】
図2において、長尺フィルム状の基材Fは搬送方向(図中、時計回り)に回転するロール電極25に巻回されながら搬送される。ロール電極25の直径は特に限定はないが100〜3000mmが好ましく用いられ、特に200〜2000mmのものが好ましく用いられる。
【0040】
対向電極26は複数の円筒から構成され、ロール電極25に対向させて設置される。幅手での放電を均一にするため、対向電極26とロール電極25間の間隙は幅手方向で一定となるように配置されることが好ましい。幅手での電極間隙の変動は平均電極間隔に対して、±15%以内であることが好ましく、より好ましくは±5%以内であり、特に好ましくは±1%以内である。対向電極26は固定されていてもよいが、ロール電極25との電極間隙が変動しないようにしながら回転させて処理することもでき、回転させることによって均一に処理することができるため好ましい。
【0041】
ロール電極25に巻回された基材Fは、ニップローラ65,66で押圧され、ガイドローラ64で規制されてプラズマ放電処理容器31によって確保された放電処理空間に搬送され、放電プラズマ処理され、次いで、ガイドローラ67を介して次工程に搬送される。また、仕切板54はニップローラ65,66に近接して配置され、基材Fに同伴する空気がプラズマ放電処理容器31内に進入するのを抑制する。プラズマ放電処理容器31内は大気圧近傍の圧力に保たれており、外部に対してやや圧力が高く保たれていることが空気の同伴を防止する上で好ましい。
【0042】
この同伴される空気は、プラズマ放電処理容器31内の気体の全体積に対し、1体積%以下に抑えることが好ましく、0.1体積%以下に抑えることがより好ましい。ニップローラ65,66により、それを達成することが可能である。
【0043】
なお、放電プラズマ処理に用いられる混合ガス(不活性ガスと、反応性ガスである有機フッ素化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、珪素化合物、錫化合物等の金属化合物を含有するガス)は、給気口52からプラズマ放電処理容器31に導入され、処理後のガスは排気口53から排気される。
【0044】
図3は図2と同様に本発明で採用される薄膜形成方法に用いられるプラズマ放電処理装置に設置されるプラズマ放電処理容器の一例を示す概略図である。図2においては、ロール電極25に対向する対向電極26は円柱型の電極が用いられているのに対し、角柱型の対向電極36に変更した例を示している。図2に示した円柱型の対向電極26に比べて、図3に示した角柱型の対向電極36は放電範囲を広げる効果があるので、本発明に好ましく用いられる。
【0045】
図4(a),(b)は各々、上述の円筒型のロール電極の一例を示す概略図、図5(a),(b)は各々、円筒型の対向電極の一例を示す概略図、図6(a),(b)は各々、角柱型の対向電極の一例を示す概略図である。
【0046】
図4(a),(b)において、アース電極であるロール電極25cは、金属等の導電性母材25aに対しセラミックスを溶射後、無機材料を用いて封孔処理したセラミック被覆処理誘電体25bを被覆した組み合わせで構成されているものである。セラミック被覆処理誘電体25bを片肉で1mm被覆し、ロール径を被覆後500φとなるように製作し、アースに接地してある。または、金属等の導電性母材25Aへライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体25Bを被覆した組み合わせ、ロール電極25Cで構成してもよい。ライニング材としては、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラス、ゲルマン酸塩系ガラス、亜テルル酸塩ガラス、アルミン酸塩ガラス、バナジン酸塩ガラス等が好ましく用いられるが、この中でもホウ酸塩系ガラスが加工し易いので、更に好ましく用いられる。金属等の導電性母材25a,25Aとしては、銀、白金、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属等が挙げられるが、加工の観点からステンレスが好ましい。また、溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工し易いので、更に好ましく用いられる。なお、本実施の形態においては、ロール電極の母材は、冷却水による冷却手段を有するステンレス製ジャケットロール母材を使用している(不図示)。
【0047】
図5(a),(b)及び図6(a),(b)は、印加電極である対向電極26c,26C,36c,36Cであり、上記のロール電極25c,25Cと同様な組み合わせで構成されている。即ち、中空のステンレスパイプに対し、上記同様の誘電体を被覆し、放電中は冷却水による冷却が行えるようになっている。対向電極の大きさは特に限定されないが、セラミック被覆処理誘電体の被覆後で10〜100mmの直径の円筒、或いは1片の長さが10〜100mmの断面を有する角柱のものが好ましく用いられる。例えば、12φまたは15φとなるように製作され、当該対向電極の数は、上記ロール電極の円周上に沿って1〜20本、より好ましくは5〜15本配置することが好ましい。
【0048】
印加電極に電圧を印加する電源としては特に限定はないが、パール工業製高周波電源(200kHz)、パール工業製高周波電源(800kHz)、日本電子製高周波電源(13.56MHz)、パール工業製高周波電源(150MHz)等が使用できる。
【0049】
図7は本発明に用いられるプラズマ放電処理装置の一例を示す概念図である。図7において、プラズマ放電処理容器31の部分は図3の記載と同様であるが、更に、ガス発生装置51、電源41、電極冷却ユニット60等が装置構成として配置されている。電極冷却ユニット60の冷却剤としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が好ましく用いられる。
【0050】
図7に記載のロール電極25、対向電極36は、図4乃至図6等に示したものと同様であり、対向する電極間のギャップは、例えば1mm程度に設定される。
【0051】
上記電極間の距離は、電極の母材に設置した固体誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定される。上記電極の一方に固体誘電体を設置した場合の固体誘電体と電極の最短距離、上記電極の双方に固体誘電体を設置した場合の固体誘電体同士の距離としては、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.5mm〜20mmが好ましく、より好ましくは0.5mm〜5mmであり、特に好ましくは1〜3mmである。
【0052】
プラズマ放電処理容器31内にロール電極25、対向電極36を所定位置に配置し、ガス発生装置51で発生させた混合ガスを流量制御して、給気口52よりプラズマ放電処理容器31内に入れ、前記プラズマ放電処理容器31内をプラズマ処理に用いる混合ガスで充填し排気口53より排気する。次に、電源41により対向電極36に電圧を印加し、ロール電極25はアースに接地し、放電プラズマを発生させる。ここでロール状の元巻き基材61より基材Fを供給し、ガイドローラ64を介して、プラズマ放電処理容器31内の電極間を片面接触(ロール電極25に接触している)の状態で搬送され、基材Fは搬送中に放電プラズマにより表面が放電処理され、その後にガイドローラ67を介して、次工程に搬送される。ここで、基材Fのロール電極25に接触していない面が放電処理される。基材Fにゴミや異物が付着していると欠陥の原因となるため、放電処理の前に粘着ロール或いはブロア等でゴミを除去したり、また除電対策によりフィルムの帯電量を低減させることが好ましい。
【0053】
電源41より対向電極36に印加される電圧の値は適宜決定されるが、例えば、電圧が0.5〜10kV程度で、電源周波数は100kHzを越えて150MHz以下に調整される。ここで電源の印加法に関しては、連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードとパルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モードのどちらを採用しても良いが、連続モードの方がより緻密で良質な膜が得られる。
【0054】
プラズマ放電処理容器31はパイレックス(R)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウムまたはステンレスのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けてもよく、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとってもよい。
【0055】
放電プラズマ処理時の基材の温度は、常温(15〜25℃)で200℃未満の温度に調整することが好ましく、より好ましくは50〜150℃に調整することであり、更に好ましくは80〜120℃に調整することである。基材表面の温度を高くすることによって、緻密な薄膜を形成することが容易になり、屈折率を高くしたり、導電性を良くしたりすることもできる。一方で、基材の耐熱温度を超えないように処理することが好ましい。上記の温度範囲に調整するため、必要に応じて電極、基材は冷却手段で冷却しながら、或いは加熱しながら放電プラズマ処理される。
【0056】
本発明においては、上記の放電プラズマ処理が大気圧または大気圧近傍で行われることが好ましい。ここで大気圧近傍とは、20kPa〜200kPaの圧力を表すが、本発明に記載の効果を好ましく得るためには、93kPa〜110kPaが好ましい。
【0057】
また、本発明の薄膜形成方法に係る放電用電極においては、電極の少なくとも基材と接する側の表面がJIS B0601で規定される表面粗さの最大高さ(Rmax)が10μm以下になるように調整されることが、本発明に記載の効果を得る観点から好ましいが、更に好ましくは、表面粗さの最大値が8μm以下であり、特に好ましくは、0・7μmに調整することである。
【0058】
大気圧プラズマで本発明の範囲となる膜を作成するには、反応ガスとして、好ましくは、ケイ素、ジルコニウム、チタン、タングステン、タンタル、アルミニウム、亜鉛、インジウム、クロム、バナジウム、ニオブ、錫の有機金属化合物を用いることが好ましく、これらの有機金属化合物が金属アルコキシド、アルキル化金属、金属錯体から選ばれるものが好ましい。反応性ガスに用いられる珪素化合物、チタン化合物、錫化合物等の金属化合物としては、取り扱い上の観点から金属水素化合物、金属アルコキシドが好ましく、腐食性、有害ガスの発生がなく、工程上の汚れ等も少ないことから、金属アルコキシドが好ましく用いられる。
【0059】
また、上記の珪素化合物、チタン化合物等の金属化合物を放電空間である電極間に導入するには、これらは常温常圧で、気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合は、そのまま放電空間に導入できるが、液体、固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用される。珪素化合物、チタン化合物等を加熱により気化して用いる場合、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシチタン等、常温の液体で、沸点が300℃以下である金属アルコキシドが反射防止膜の形成に好適に用いられる。上記金属アルコキシドは、溶媒によって希釈して使用されてもよく、溶媒は、メタノール、エタノール、n・ヘキサン等の有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用できる。
【0060】
混合ガス中に上記の金属化合物を用いる場合、放電プラズマ処理により基材上に均一な薄膜を形成する観点から、混合ガス中の金属化合物の含有率は、0.1〜10体積%であることが好ましいが、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。
【0061】
また、混合ガス中に酸素、オゾン、過酸化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、窒素から選択される成分を0.01〜5体積%含有させることにより、反応が促進され、且つ、緻密で良質な薄膜を形成することができるため好ましい。
【0062】
上記の珪素化合物としては、例えば、ジメチルシラン、テトラメチルシラン等の有機金属化合物、モノシラン、ジシラン等の金属水素化合物、二塩化シラン、三塩化シラン等の金属ハロゲン化合物、HSi(OC2H5)3、FSi(OC2H5)3、HSi(OCH3)3、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のアルコキシシラン、オルガノシラン等を用いることが好ましいがこれらに限定されない。また、これらは適宜組み合わせて用いることが出来る。これにより形成された酸化珪素層は例えば反射防止層の低屈折率層として特に好ましく用いられる。或いは、防汚性を付与することもできる。
【0063】
上記のチタン化合物としては、テトラジメチルアミノチタン等の有機金属化合物、モノチタン、ジチタン等の金属水素化合物、二塩化チタン、三塩化チタン、四塩化チタン等の金属ハロゲン化合物、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等の金属アルコキシド等を用いることが好ましいがこれらに限定されない。これにより形成された酸化チタン層は例えば反射防止層の高屈折率層として特に好ましく用いられる。
【0064】
大気圧プラズマで本発明の範囲となる膜を作成するには、混合ガス中の反応ガス量、混合ガスの流量及び反応ガスの種類を適宜選択することにより調整することができる。
【0065】
次に、本発明に用いることができる基材について説明する。
基本的に基材は問わないが、ガラスや樹脂フィルムを好適に用いることができる。特に好ましいのは透過率75%以上の透明な基材である。
【0066】
また、なるべく多くの種類のフィルムを盛り込みたい。TAC、アートン、ゼオネックス、ゼオノア、流延法で形成したポリカーボネートフィルム(帝人社製ピュアエース)、PET、PEN、PES等。基材に他の層(AG、CHC、BC、ANS)を付けても構わない。
【0067】
TACの場合、一般的に使用される添加剤(可塑剤、UV吸収剤等)を含んでいても構わない。
【0068】
次に、本発明に用いることができる光学フィルムについて説明する。
本発明の光学フィルムに用いられる基材フィルムは特に限定はなく、例えば基材としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートフタレートフィルム、セルローストリアセテートフィルム、セルロースナイトレートフィルム等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体からなるフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルム或いはポリアリレート系フィルム等を挙げることができる。
【0069】
これらの素材は単独で或いは適宜混合されて使用することもできる。中でもポリシクロオレフィン、ノルボルネン系の樹脂、例えばゼオネックス、ゼオノア(日本ゼオン(株)製)、ARTON(日本合成ゴム(株)製)等の市販品を好ましく使用することができる。更に、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルフォン及びポリエーテルスルフォン等の固有複屈折率の大きい素材であっても、溶液流延、溶融押し出し等の条件、更には縦、横方向に延伸条件等を適宜設定することにより使用することが出来る。また、本発明に係る支持体は、上記の記載に限定されない。膜厚としては10μm〜1000μmのフィルムが好ましく用いられる。
【0070】
更に、これらの上にゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロースエステル系樹脂、活性線硬化樹脂、熱硬化性樹脂等を塗設したもの等を使用することが出来る。また、これら基材は、支持体上に防眩層やクリアハードコート層を塗設したり、バックコート層、帯電防止層を塗設したものを用いることが出来る。
【0071】
本発明において、基材フィルムとしては、特にセルロースエステルフィルムを用いることが低い反射率の積層体が得られるために好ましい。本発明に記載の効果を好ましく得る観点から、セルロースエステルとしてはセルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく、中でもセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルローストリアセテートが好ましく用いられる。
【0072】
本発明で用いられるセルロースエステルフィルムは溶融流延法によって製造したものであっても溶液流延法によって製造されたものであってもよいが、特に好ましくは溶液流延法によって製造されたものである。
【0073】
また、本発明で用いられるセルロースエステルフィルムには、20℃で液体の添加剤を1〜30質量%含有することが好ましい。これにより、異物故障の少ない、緻密で膜厚均一性の高い高機能性の薄膜を、生産効率高く得ることができる。
【0074】
ここで、20℃で液体の添加剤とは、溶媒を含まない状態でも20℃で液状を示す添加剤である。ここで溶媒とは、ドープに含まれる溶媒のことである。例えば、融点が20℃以下の添加剤のほか、2種以上の添加剤の混合物が液状を示しているものであってもよい。例えば、混合によって凝固点降下し、20℃で液状を示している添加剤であってもよい。
【0075】
本発明において、セルロースエステルフィルムに添加する20℃で液体の添加剤としては、例えば紫外線吸収剤、可塑剤、リターデーション調整剤から選択されるものが挙げられる。これらのうち20℃で液体の添加剤の合計が1〜30質量%含有しているものであり、好ましくは2〜25質量%であり、更に好ましくは5〜20質量%である。
【0076】
特に、紫外線吸収剤、可塑剤にそれぞれ液体のものが少なくとも1種使用されていることが好ましい。
【0077】
本発明では、20℃で液体の紫外線吸収剤は、融点が20℃よりも高い紫外線吸収剤を併用することもできる。同様に分子内にエステル基を有する紫外線吸収剤と分子内にエステル基を有しない紫外線吸収剤とを併用することもできる。
【0078】
本発明に用いられる紫外線吸収剤は20℃で液体の紫外線吸収剤であればよいが、具体例としては、例えばベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物が挙げられ、ベンゾトリアゾール系化合物が特に好ましい。更に、紫外線吸収剤は、セルロースエステルとの相溶性の点から炭素数8以上のアルキル鎖、アルケニル鎖、アルキレン鎖またはアルキレンオキシド鎖を有することが好ましい。
【0079】
また、20℃で液体の紫外線吸収剤と併用できる紫外線吸収化合物としては一般的に使用されている紫外線吸収剤を用いることができるが、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物が挙げられる。中でも好ましいのはベンゾトリアゾール系化合物である。
【0080】
上記紫外線吸収剤の含有量は、セルロースエステルフィルムに対して0.01〜10質量%が好ましく、更に好ましくは0.1〜5質量%である。
【0081】
本発明に用いられる可塑剤としては特に限定されないが、リン酸エステル系ではトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系ではジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等、グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート等を単独或いは併用して用いることができる。
【0082】
このうち、20℃で液体の可塑剤としては、例えば、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ビジフェニルビフェニルホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、トリアセチン、エチルフタリルエチルグリコレート等を挙げることが出来る。本発明では特に20℃で液体の可塑剤を含用するのが好ましい。これらの可塑剤は20℃で固体の可塑剤を併用するのも好ましい。
【0083】
上記可塑剤の含有量は、フィルムの性能、加工性等の点でセルロースエステルフィルムに対して1〜20質量%が好ましく、寸法安定性の点で液晶表示部材用としては2〜18質量%であることが更に好ましく、特に好ましくは3〜15質量%である。
【0084】
本発明において、リターデーション調整剤は膜厚方向のリターデーションRtを増加させたり、或いは低減させたりする作用を有する添加剤であり、紫外線吸収性を有していても、可塑剤としての性質を併せ持っていてもよい。
【0085】
20℃で液体であるリターデーション調整剤としては、低分子量のポリマーが挙げられる。例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート或いはこれらのモノマー成分を含む共重合体等で質量平均分子量1万以下のものが挙げられる。特に質量平均分子量500〜3000のものが好ましく用いられる。これらを添加することによって膜厚方向のリターデーションを低減することができる。
【0086】
リタデーション調整剤としては特開2000−111914号公報、特開2001−166144号公報に記載のリタデーション上昇剤等も挙げられる。これらは添加量によってリタデーションを上昇させたり、逆に低減させたりすることができる。
【0087】
また、金属酸化物膜に関し、屈折率おいて低屈折率層は1.1〜1.6が好ましく、1.3〜1.5が更に好ましく、高屈折率層は1.6〜2.4が好ましく、1.8〜2.3が更に好ましい。
【0088】
本発明の大気圧プラズマ製膜法では、有機珪素化合物を反応ガスとして大気圧プラズマ法で製膜することで、膜中に炭素を含有させることができる。これは、真空プラズマ法と比較して、大気圧プラズマ法では電極間に存在する反応ガス由来のイオン等の粒子が高い密度で存在することになるので、有機珪素化合物由来の炭素が残りやすくなる。本発明においては、膜中の炭素は、膜に柔軟性を与え、基材との密着性が向上することから僅かに含有することが好ましく、具体的には0.2〜5質量%含有することが好ましい。5質量%を超えて含有すると、膜の屈折率等の物性が経時的に変化することがあり、好ましくない。
【0089】
本発明の光学フィルムは画像表示装置として好ましく用いることができる。具体的には、画像表示画面の反射防止膜等に好適である。
【0090】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0091】
基材としてポリエーテルスルホンを用いた。
・試料101の作成
真空蒸着法により基材上に酸化物層を形成した。
・試料102の作成
スパッタ法により基材上に酸化物層を形成した。
・試料103の作成
〈テトラエトキシシラン加水分解物の調製〉
テトラエトキシシラン250質量部にエタノール380質量部を加え、この溶液に3質量部の塩酸(conc)を235質量部の水で希釈した塩酸水溶液を室温で、ゆっくり滴下した。滴下後、3時間室温で攪拌してテトラエトキシシラン加水分解物を調製した。これをバーコーターにより基材上に塗布し、80℃で30分間乾燥した。
・試料104の作成
試料103で作成したテトラエトキシシラン加水分解物を用い、下記に示す組成の塗布液を作成し、バーコーターで塗布、80℃で30分間乾燥した。
【0092】
テトラエトキシシラン加水分解物 : 180質量部
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン: 5質量部
シクロヘキサノン :3200質量部
・試料105の作成
図8に示す真空プラズマCVD装置を用いて酸化物層を作成した(特開2000−336196号公報参照)。なお、図8において、35aは導電性の金属材料、35bは誘電体、105は印加電圧、100は基体である。
【0093】
また、高周波電源として13.56MHzのRF電源を用いた。製膜条件は以下の通りである。
【0094】
印加電力 :30kW
圧力 :50mTorr
反応ガス :ヘキサメチルジシロキサン
反応ガス流量 :1slm
酸素ガス流量 :10slm
成膜用ドラム表面温度(成膜温度):100℃
上記のガス流量単位slmは、standard liter per minuteのことである。
・試料106の作成
試料105の作成において印加電力を10kWとしたこと以外は試料105の作成と同様に基材上に酸化物層を形成した。
・試料107の作成
基材は試料101〜106と同じポリエーテルスルホンを用いて基材上に大気圧プラズマ法により酸化物薄膜を形成した。プラズマ放電装置には、電極が平行平板型のものを用い、この電極間にガラス基板を載置し、且つ、混合ガスを導入して薄膜形成を行った。
【0095】
なお、電極は、以下の物を用いた。200mm×200mm×2mmのステンレス板に高密度、高密着性のアルミナ溶射膜を被覆し、その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させ封孔処理を行った。このようにして被覆した誘電体表面を研磨し、平滑にして、Rmax5μmとなるように加工した。このように電極を作成し、アース(接地)した。
【0096】
一方、印加電極としては、中空の角型の純チタンパイプに対し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆したものを複数作成し、対向する電極群とした。
【0097】
また、プラズマ発生に用いる使用電源は日本電子(株)製高周波電源JRF−10000にて周波数13.56MHzの電圧で、且つ5W/cm2の電力を供給した。
【0098】
電極間に以下の組成の反応性ガスを流した。
不活性ガス :アルゴン 98.50体積%
反応性ガス1種:酸素ガス(混合ガス全体に対し1%)
反応性ガス2種:テトラエトキシシラン蒸気(加熱した液体にアルゴンガスをバブリング)、反応性ガス全体に対し0.50体積%
基材上に上記反応性ガス、反応条件により大気圧プラズマ処理を行い、酸化物薄膜を作成した。
【0099】
以下試料107の作成と同様にして製膜条件を表1に記載した条件として基材上に酸化物薄膜を形成した。これらの試料を108〜112とする。
《評価》
作成した反射防止膜は以下の方法に従って評価した。
〈LO/TOの評価〉
前述のLO/TO比の記載に従って評価した。
〈組成〉
膜組成、炭素含有率はXPS表面分析装置を用いてその値を測定した。XPS表面分析装置としては特に限定なく、いかなる機種も使用することができるが、本実施例においてはVGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200Rを用いた。X線アノードにはMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定した。エネルギー分解能は、清浄なAg3d5/2ピークの半値幅で規定したとき、1.5〜1.7eVとなるように設定した。測定を行う前に、汚染による影響を除くために、薄膜の膜厚の10〜20%の厚さに相当する表面層をエッチング除去する必要がある。表面層の除去には、希ガスイオンが利用できるイオン銃を用いることが好ましく、イオン種としては、He,Ne,Ar,Xe,Kr等が利用できる。本測定おいては、Arイオンエッチングを用いて表面層を除去した。
【0100】
先ず、結合エネルギー0eVから1100eVの範囲を、データ取り込み間隔1.0eVで測定し、いかなる元素が検出されるかを求めた。
【0101】
次に、検出された、エッチングイオン種を除く全ての元素について、データの取り込み間隔を0.2eVとして、その最大強度を与える光電子ピークについてナロースキャンをおこない、各元素のスペクトルを測定した。得られたスペクトルは測定装置或いはコンピューターの違いによる含有率算出結果の違いを生じせしめなくするために、VAMAS−SCA−JAPAN製のCOMMON DATA PROCESSING SYSTEM (Ver.2.3以降が好ましい)上に転送した後、同ソフトで処理をおこない、炭素含有率の値を原子数濃度(atomic concentration:at%)として求めた。錫とインジウムの比も、上記結果から得られた原子数濃度の比とした。
【0102】
定量処理を行う前に、各元素についてCount Scaleのキャリブレーションを行い、5ポイントのスムージング処理を行った。定量処理では、バックグラウンドを除去したピークエリア強度(cps*eV)を用いた。バックグラウンド処理には、Shirleyによる方法を用いた。
【0103】
Shirley法については、D.A.Shirley,Phys.Rev.,B5,4709(1972)を参考にすることができる。
〈密着性〉
得られたそれぞれの試料について、50℃/相対湿度95%の環境下に48時間放置した後の反射防止層のセロハンテープ剥離試験を行なった。セロハンテープ剥離試験は、ニチバン(株)製のセロテープ(R)を用いて、10mm×10mmクロスカットで5回の剥離試験を行ないその平均値を求めた。
〈耐屈曲性試験〉
得られたそれぞれの試料について、JIS規格K5400に準じて行なった。反射防止フィルムの巻き付けには直径10mmのステンレス棒を用いた。試験の結果、反射防止層に微細なクラックが発生したものを×、何らの変化もなかったものを○とした。
〈耐傷性の測定〉
1cm×1cmの面にスチールウールを貼り付けたプローブを、酸化物層の薄膜面に250gの荷重をかけて押し付け10回往復運動させた後、擦り傷の入る本数を測定した。
【0104】
以上の評価結果を表1に記す。
【0105】
【表1】
【0106】
《反射防止層の作成》
基材フィルムに非晶質シクロポリオレフィン樹脂フィルム(JSR社製ARTONフィルム:厚さ100μm)を用い、図3に示す放電処理容器を図7のプラズマ放電処理装置を用いて、表2に記載の反射防止層を有する光学フィルムを各々作成した。
【0107】
【表2】
【0108】
ここで、ロール電極25は、冷却水による冷却手段を有するステンレス製ジャケットロール母材(冷却手段は図3には図示していない)に対して、セラミック溶射によりアルミナを1mm被覆し、その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させ封孔処理を行い、表面を平滑にしてRmax5μmとした誘電体(比誘電率10)を有するロール電極25を製作しアース(接地)した。一方、印加電極としては、中空の角型のステンレスパイプに対し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆し、対向する電極群とした。
【0109】
但し、プラズマ発生に用いる使用電源は、パール工業製高周波電源(800kHz)を使用した。
《放電条件》
放電出力を12W/cm2とした。電極間隔は1mmとした。
《反応性ガス》
プラズマ処理に用いた混合ガス(反応性ガス)の組成を以下に記載する。気圧は1.0気圧とした。混合ガスの流量は2L/秒とした。
(高屈折率(酸化チタン)層形成用)
不活性ガス :アルゴン 98.75体積%
反応性ガス1:水素ガス(混合ガス全体に対し1%)
反応性ガス2:テトライソプロポキシチタン蒸気(150℃に加熱した液体にアルゴンガスをバブリング)、反応ガス全体に対し0.25体積%
上記条件にて基材フィルム上に高屈折率層(酸化チタン層、屈折率2.21、膜厚92nm、炭素含有量0.4%)を作成した。更にこの上に、実施例の101から112の条件にて低屈折率層を作成し、反射防止機能を有する酸化物積層体を作成した。
《評価》
作成した反射防止膜は以下の方法に従って評価した。
〈膜厚、製膜速度〉
膜厚はPhotal社製FE−3000反射分光膜厚計により測定し、得られた膜厚を製膜に要した時間(分)で徐したものを製膜速度とした。
〈透過率〉
JIS−R−1635に従い、日立製作所製分光光度計U−4000型を用いて測定を行った。試験光の波長は550nmとした。
〈反射率〉
各層の屈折率と膜厚は分光反射率の測定より計算して算出した。反射光学特性は分光光度計(日立製作所製U−4000型)を用い、5度正反射の条件にて反射率の測定を行った。この測定法において、反射防止層が作成されていない側の基板面を粗面化した後、黒色のスプレーを用いて光吸収処理を行い、フィルム裏面での光の反射を防止し、反射率の測定を行った。
【0110】
【発明の効果】
本発明における酸化物積層体は曲げ等の機械的な特性に優れており、且つ、その形成方法によれば、緻密で品質の高い酸化物薄膜を高品質な基材上に形成できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】酸化物積層体に関するTOモードとLOモードのグラフである。
【図2】プラズマ放電処理装置に設置されるプラズマ放電処理容器の一例を示す概略図である。
【図3】プラズマ放電処理装置に設置されるプラズマ放電処理容器の一例を示す概略図である。
【図4】円筒型のロール電極の一例を示す概略図である。
【図5】円筒型の対向電極の一例を示す概略図である。
【図6】角柱型の対向電極の一例を示す概略図である。
【図7】プラズマ放電処理装置の一例を示す概念図である。
【図8】真空プラズマCVD装置を示す概略図である。
【符号の説明】
25,25c,25C ロール電極
26,26c,26C,36,36c,36C 対向電極
25a,25A 金属等の導電性母材
25b セラミック被覆処理誘電体
25B ライニング処理誘電体
31 プラズマ放電処理容器
41 電源
51 ガス発生装置
52 給気口
53 排気口
60 電極冷却ユニット
61 元巻き基材
65,66 ニップローラ
64,67 ガイドローラ
【発明の属する技術分野】
本発明は、基材上に形成した酸化物積層体及びその形成方法、並びに画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
古くから様々な用途に、基材上に金属酸化物薄膜を形成した積層体が用いられている。一例として、電極膜、誘電体保護膜、半導体膜、透明導電膜、エレクトロクロミック膜、蛍光膜、超伝導膜、誘電体膜、太陽電池膜、反射防止膜、耐摩耗性膜、光学干渉膜、反射膜、帯電防止膜、導電膜、防汚膜、ハードコート膜、下引き膜、バリア膜、電磁波遮蔽膜、赤外線遮蔽膜、紫外線吸収膜、潤滑膜、形状記憶膜、磁気記録膜、発光素子膜、生体適合膜、耐食性膜、触媒膜、ガスセンサ膜、装飾膜等が挙げられる。
【0003】
一方で、情報化社会においては通信技術の発達により、企業や家庭のような特定の場所のみならず、何時でも何処でも情報を取り出せる社会が到来しようとしており、情報を認識するためのディスプレイデバイスも、何時でも何処でも動作でき、且つ明瞭に表示内容を認識できることが求められている。何時でも何処でもという要望に応えるためには、携帯性も重要な性能であるし、傷が付き難いといった耐久性も必要とされる。先に掲げたように酸化物薄膜積層体は、例えば反射防止膜であれば、基材上に屈折率の異なる酸化物薄膜を積層したものが一般的である。金属酸化物系のものは屈折率制御において有利であったが、機械的特性、つまり曲げと耐傷性といった特性はその硬さ故に脆く、例えば曲げた場合にひびが入るといった欠点を有している。
【0004】
更に言えば、従来このような高機能性の薄膜は、塗布に代表される湿式製膜法、或いは、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等の真空を用いた乾式製膜法によって形成されているが、塗布は生産性が高い点で有用であるが、薄膜を構成する材料を溶媒に溶解或いは分散した塗布液としなければならないため、当該溶媒が薄膜中に残存したり、膜厚の均一性を保つことが難しい等、あまり高性能の薄膜形成には向いているとは言えない。また、塗布後の乾燥工程において、塗布液から蒸発した有機溶剤等の溶媒が環境に負荷を与えるという問題も含んでいる。
【0005】
一方、上記真空を用いた乾式製膜法は、高精度の薄膜が形成出来るため、高性能の薄膜を形成するには好ましい方法である。しかし、乾式製膜法に用いる真空装置は、被処理基材が大きくなると装置が非常に大型化し、値段も高額になる他に、真空排気にも膨大に時間を費やし、生産性が上げられないデメリットが大きい。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、酸化物積層体は硬さに優れる反面、その他の機械的な特性に劣ることが知られている。特に、表示素子等使用環境が苛酷なものについては高品質であると同時に、高耐久性であることを求められている。また、これまでにない真空、溶媒除去を必要としない新しい生産プロセスが求められている。
【0007】
本発明者達は係る問題に鑑み、鋭意検討の結果、本発明における酸化物積層体が先に記載した曲げ等の機械的な特性に優れていることを見出した。更に、本発明における酸化物積層体の形成方法によれば、緻密で品質の高い酸化物薄膜を高品質な基材上に形成できることを見出した。
【0008】
なお、本発明は透明基材上に酸化物薄膜を形成する反射防止膜等に好適である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的は下記の何れかの手段により達成される。
【0010】
▲1▼基材上に少なくとも1つの酸化物層を有し、酸化物層の少なくとも1つの層において赤外吸収スペクトル測定より得られた、−M−O−M−(Mはケイ素、ジルコニウム、チタン、タングステン、タンタル、アルミニウム、亜鉛、インジウム、クロム、バナジウム、ニオブ、錫のうち少なくとも1種類の元素)結合に帰属される吸収におけるLO(Longitudinal Optical)モードとTO(Transverse Optical)モードとの吸収強度比LO/TOが、0.2〜0.8の範囲であることを特徴とする酸化物積層体。
【0011】
▲2▼請求項1〜5の何れか1項に記載の酸化物積層体を用い、酸化物層を形成する際、大気圧または大気圧近傍の圧力下において、少なくとも1種類以上の不活性ガスと、少なくとも1種類以上の反応性ガスからなる混合ガスを放電空間に導入してプラズマ状態とし、基材を前記プラズマ状態の反応性ガスに晒すことによって、前記基材上に薄膜を形成することを特徴とする酸化物積層体の形成方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
先ず、本発明における酸化物積層体について図1を参照して説明する。
【0013】
・膜の種類
ケイ素、ジルコニウム、チタン、タングステン、タンタル、アルミニウム、亜鉛、インジウム、クロム、バナジウム、ニオブ、錫のうち少なくとも1種類の元素を有する酸化物。好ましくはケイ素、チタン。より好ましくはケイ素。
【0014】
・組成
金属、酸素、炭素、水素からなる膜が好ましい。好ましい組成は、金属、酸素、炭素、窒素の合計に対し、金属の量が5原子%以上。より好ましくは20原子%以上、更に好ましくは25原子%以上。炭素含有率は0.1〜5原子%が好ましい。膜の組成はX線光電子分光法により求めることができる。
【0015】
・LO/TO比の測定
例えばシリコン基板を1000℃で加熱酸化させた試料において、減衰全反射赤外分光法(ATR−IR法)を用い、入射面に平行な(p−偏光)光を入射させて測定すると、Si−O−Siの格子振動であるLO(Longitudinal Optical)モードの吸収が1200cm−1付近に現れる。この吸収は欠陥の多いSiO2膜や粒子状SiO2では観察されない吸収であり、欠陥の少ない格子状構造になるに従って強く観察される性質を有する。一方、同様なSi−O−Siの格子振動であるTO(Transverse Optical)モードの吸収は1000から1100cm−1付近に現れ、逆に欠陥の多いSiO2膜や粒子状SiO2で強く観察される。
【0016】
両者の吸収強度比を測定することにより、SiO2膜の内部欠陥(不完全性)を示すパラメータとなり、膜の硬さと相関が認められる。プラズマCVDで作成したSiO2膜も同様な吸収が観察される。
【0017】
膜の硬さは硬い程丈夫であるが、硬過ぎると亀裂を生じ易くなって問題が生じるので、適度の硬さを有するものが好ましい。LOモードとTOモードの吸収強度比(LO/TO)が好ましくは0.2〜0.8の範囲にあると良好な膜が得られた。さらに好ましくは0.4〜0.7である。
【0018】
LO/TO吸収強度比の測定方法
減衰全反射赤外分光法(ATR−IR法)を用い、次の条件で測定する。
【0019】
プリズム:ゲルマニウム、入射角:45℃、これに入射面に振動面が平行な偏光および垂直な偏光をワイヤーグリッド偏光子を用いて入射し、赤外(IR)スペクトルを測定する。下層の吸収の影響が強い場合は、下層の基準スペクトルを同様に測定し差スペクトルを行い、下層の影響を消去する。
【0020】
LO/TO吸収強度比の求め方
入射面に振動面が垂直な偏光を入射し、SiO2膜の1000から1100cm−1の間に現れる最も強いピーク(複数認められる場合は最も強度の高いピーク)の強度を測定し、このピーク強度をTOモードのピークとする。ピーク強度は、そのピークトップの波数を(1062cm−1)とすると1300から1400cm−1の中の最も吸光度の小さな点と、800から900cm−1の中の最も吸光度の小さな点を結びこれをベースラインとし、そこからのピークの強度を測定して求める。同様に入射面に振動面が平行な偏光を入射し、SiO2膜の1205cm−1におけるピークの強度を測定し、このピーク強度をLOモードのピークとするピーク強度は、1300から1400cm−1の中の最も吸光度の小さな点と、800から900cm−1の中の最も吸光度の小さな点を結びこれをベースラインとし、そこからの1205cm−1のおける吸光度を測定して求める。
【0021】
なお、LO/TO吸収強度比=LO/TOとする。
また、下記の文献を参考にすることができる。
【0022】
▲1▼Infrared absorption spectra of SiO2 precipitates of various shapes in silicon:calculated and experimental,S.M.Hu,J.Appl.Phys.51(11).5945(1980).
▲2▼J.E.Olsen and F.Shimura,J.Appl.Phys.66(3),1353(1989).
高機能性の薄膜は、塗布に代表される湿式製膜法、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等の真空を用いた乾式製膜法によって形成されている。
【0023】
塗布は生産性が高い点で有用であるが、薄膜を構成する材料を溶媒に溶解或いは分散した塗布液としなければならないため、当該溶媒が薄膜中に残存したり、膜厚の均一性を保つことが難しい等、高性能の薄膜形成にはあまり向いていない。また、塗布後の乾燥工程において、塗布液から蒸発した有機溶剤等の溶媒が環境に負荷を与えるという問題も含んでいる。
【0024】
一方、上記真空を用いた乾式製膜法は高精度の薄膜が形成出来るため、高性能の薄膜を形成するには好ましい方法である。しかし、乾式製膜法に用いる真空装置は被処理基材が大きくなると装置が非常に大型化し、値段も高額になる他、真空排気にも膨大な時間を費やし、生産性が上げられないデメリットが大きい。
【0025】
上記の塗布による高機能な薄膜が得にくいディメリット、及び真空装置を用いることによる低生産性のディメリットを克服する方法として、大気圧または大気圧近傍の圧力下で放電し、反応性ガスをプラズマ励起し、ここに反応性ガスを導入して基材表面に金属酸化物等の薄膜を形成する方法が特開平11−133205号公報、特開2000−185362号公報、特開平11−61406号公報、特開2000−147209号公報、特開2000−121804号公報等に記載されている(以下、大気圧プラズマ法とも称する)。これらの公報に開示される大気圧プラズマ法は、対向する電極間にパルス化され、周波数が0.5〜100kHzであり、且つ電界の強さが1〜100V/cmの電界を印加し、放電プラズマを発生させるというものである。
【0026】
即ち、高機能性の薄膜を作成するには、スパッタ、蒸着、真空CVD、塗布(ゾルゲル)法で作成することも可能であるが、生産性及び品質を考慮すると、大気圧プラズマを用いた製膜法で作成することが好ましい。
【0027】
次に、フィルムに直接または他の層を介して形成される金属化合物層について説明する。
【0028】
この金属化合物層を形成する方法としてはプラズマ放電処理が好ましく用いられる。詳細には、対向する電極間に高周波電圧を印加して放電させることにより、反応性ガスをプラズマ状態とし、基材であるフィルムをこのプラズマ状態の反応性ガスに晒すことによって、前記フィルム上に直接または他の層を介して設けられる。
【0029】
本発明において、電極間に印加する高周波電圧の周波数の上限値として好ましくは150MHz以下である。また、高周波電圧の周波数の下限値として好ましくは200kHz以上、更に好ましくは800kHz以上である。
【0030】
また、電極間に供給する電力の下限値として好ましくは1.2W/cm2以上であり、上限値として好ましくは50W/cm2以下、更に好ましくは20W/cm2以下である。なお、電極における電圧の印加面積(/cm2)は、放電が起こる範囲の面積のことを指す。
【0031】
また、電極間に印加する高周波電圧は、断続的なパルス波であっても、連続したサイン波であっても構わないが、本発明の効果を高く得るためには、連続したサイン波であることが好ましい。
【0032】
本発明においては、このようなハイパワーの電圧を印加して均一なグロー放電状態を保つことができる電極をプラズマ放電処理装置に採用する必要がある。
【0033】
このような電極としては、金属母材上に誘電体を被覆したものであることが好ましい。少なくとも対向する印加電極とアース電極の片側に誘電体を被覆すること、更に好ましくは対向する印加電極とアース電極の両方に誘電体を被覆することである。誘電体としては、比誘電率が6〜45の無機物であることが好ましく、このような誘電体としては、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、或いは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等がある。
【0034】
また、基材であるセルロースエステルフィルムを電極間に載置或いは電極間を搬送してプラズマに晒す場合には、基材を片方の電極に接して搬送出来るロール電極仕様にするだけでなく、更に誘電体表面を研磨仕上げし、電極の表面粗さRmax(JIS B0601)を10μm以下にすることで、誘電体の厚み及び電極間のギャップを一定に保つことができ、放電状態を安定化できること、更に熱収縮差や残留応力による歪やひび割れを無くし、且つポーラスで無い高精度の無機誘電体を被覆することで大きく耐久性を向上させることができるため好ましい。
【0035】
また、高温下での金属母材に対する誘電体被覆による電極製作において、少なくとも基材と接する側の電極表面の誘電体を研磨仕上げすること、更に電極の金属母材と誘電体間の熱膨張の差をなるべく小さくすることが必要であり、そのために製作方法において、母材表面に応力を吸収出来る層として泡混入量をコントロールして無機質の材料をライニングすること、特に材質としては琺瑯等で知られる溶融法により得られるガラスであることが良く、更に導電性金属母材に接する最下層の泡混入量を20〜30体積%とし、次層以降を5体積%以下とすることで、緻密で且つひび割れ等が発生しない良好な電極が出来る。
【0036】
また、電極の母材に誘電体を被覆する別の方法として、セラミックスの溶射を空隙率10体積%以下まで緻密に行い、更にゾルゲル反応により硬化する無機質の材料にて封孔処理を行うことであり、ここでゾルゲル反応の促進には、熱硬化やUV硬化が良く、更に封孔液を希釈し、コーティングと硬化を逐次で数回繰り返すと、より一層無機質化が向上し、劣化の無い緻密な電極が出来る。
【0037】
このような電極を用いたプラズマ放電処理装置について、図2〜図7を参照しながら説明する。図2〜図7のプラズマ放電処理装置は、アース電極であるロール電極と、対向する位置に配置された印加電極である固定電極との間で放電させ、当該電極間に反応性ガスを導入してプラズマ状態とし、前記ロール電極に巻回された長尺フィルム状の基材を前記プラズマ状態の反応性ガスに晒すことによって、薄膜を形成するものであるが、本発明で採用される薄膜形成方法を実施する装置としてはこれに限定されるものではなく、グロー放電を安定に維持し、薄膜を形成するために反応性ガスを励起してプラズマ状態とするものであればよい。他の方式としては、基材を電極間ではない電極近傍に載置或いは搬送させ、発生したプラズマを当該基材上に吹き付けて薄膜形成を行うジェット方式等がある。或いは、2つの隣接した回転電極間で高周波電圧を印可して放電させ、このロール電極に巻回された長尺フィルム状の基材上に薄膜を形成することもできる。
【0038】
図2は、本発明で採用される薄膜形成方法に用いられるプラズマ放電処理装置に設置されるプラズマ放電処理容器の一例を示す概略図である。
【0039】
図2において、長尺フィルム状の基材Fは搬送方向(図中、時計回り)に回転するロール電極25に巻回されながら搬送される。ロール電極25の直径は特に限定はないが100〜3000mmが好ましく用いられ、特に200〜2000mmのものが好ましく用いられる。
【0040】
対向電極26は複数の円筒から構成され、ロール電極25に対向させて設置される。幅手での放電を均一にするため、対向電極26とロール電極25間の間隙は幅手方向で一定となるように配置されることが好ましい。幅手での電極間隙の変動は平均電極間隔に対して、±15%以内であることが好ましく、より好ましくは±5%以内であり、特に好ましくは±1%以内である。対向電極26は固定されていてもよいが、ロール電極25との電極間隙が変動しないようにしながら回転させて処理することもでき、回転させることによって均一に処理することができるため好ましい。
【0041】
ロール電極25に巻回された基材Fは、ニップローラ65,66で押圧され、ガイドローラ64で規制されてプラズマ放電処理容器31によって確保された放電処理空間に搬送され、放電プラズマ処理され、次いで、ガイドローラ67を介して次工程に搬送される。また、仕切板54はニップローラ65,66に近接して配置され、基材Fに同伴する空気がプラズマ放電処理容器31内に進入するのを抑制する。プラズマ放電処理容器31内は大気圧近傍の圧力に保たれており、外部に対してやや圧力が高く保たれていることが空気の同伴を防止する上で好ましい。
【0042】
この同伴される空気は、プラズマ放電処理容器31内の気体の全体積に対し、1体積%以下に抑えることが好ましく、0.1体積%以下に抑えることがより好ましい。ニップローラ65,66により、それを達成することが可能である。
【0043】
なお、放電プラズマ処理に用いられる混合ガス(不活性ガスと、反応性ガスである有機フッ素化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、珪素化合物、錫化合物等の金属化合物を含有するガス)は、給気口52からプラズマ放電処理容器31に導入され、処理後のガスは排気口53から排気される。
【0044】
図3は図2と同様に本発明で採用される薄膜形成方法に用いられるプラズマ放電処理装置に設置されるプラズマ放電処理容器の一例を示す概略図である。図2においては、ロール電極25に対向する対向電極26は円柱型の電極が用いられているのに対し、角柱型の対向電極36に変更した例を示している。図2に示した円柱型の対向電極26に比べて、図3に示した角柱型の対向電極36は放電範囲を広げる効果があるので、本発明に好ましく用いられる。
【0045】
図4(a),(b)は各々、上述の円筒型のロール電極の一例を示す概略図、図5(a),(b)は各々、円筒型の対向電極の一例を示す概略図、図6(a),(b)は各々、角柱型の対向電極の一例を示す概略図である。
【0046】
図4(a),(b)において、アース電極であるロール電極25cは、金属等の導電性母材25aに対しセラミックスを溶射後、無機材料を用いて封孔処理したセラミック被覆処理誘電体25bを被覆した組み合わせで構成されているものである。セラミック被覆処理誘電体25bを片肉で1mm被覆し、ロール径を被覆後500φとなるように製作し、アースに接地してある。または、金属等の導電性母材25Aへライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体25Bを被覆した組み合わせ、ロール電極25Cで構成してもよい。ライニング材としては、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラス、ゲルマン酸塩系ガラス、亜テルル酸塩ガラス、アルミン酸塩ガラス、バナジン酸塩ガラス等が好ましく用いられるが、この中でもホウ酸塩系ガラスが加工し易いので、更に好ましく用いられる。金属等の導電性母材25a,25Aとしては、銀、白金、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属等が挙げられるが、加工の観点からステンレスが好ましい。また、溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工し易いので、更に好ましく用いられる。なお、本実施の形態においては、ロール電極の母材は、冷却水による冷却手段を有するステンレス製ジャケットロール母材を使用している(不図示)。
【0047】
図5(a),(b)及び図6(a),(b)は、印加電極である対向電極26c,26C,36c,36Cであり、上記のロール電極25c,25Cと同様な組み合わせで構成されている。即ち、中空のステンレスパイプに対し、上記同様の誘電体を被覆し、放電中は冷却水による冷却が行えるようになっている。対向電極の大きさは特に限定されないが、セラミック被覆処理誘電体の被覆後で10〜100mmの直径の円筒、或いは1片の長さが10〜100mmの断面を有する角柱のものが好ましく用いられる。例えば、12φまたは15φとなるように製作され、当該対向電極の数は、上記ロール電極の円周上に沿って1〜20本、より好ましくは5〜15本配置することが好ましい。
【0048】
印加電極に電圧を印加する電源としては特に限定はないが、パール工業製高周波電源(200kHz)、パール工業製高周波電源(800kHz)、日本電子製高周波電源(13.56MHz)、パール工業製高周波電源(150MHz)等が使用できる。
【0049】
図7は本発明に用いられるプラズマ放電処理装置の一例を示す概念図である。図7において、プラズマ放電処理容器31の部分は図3の記載と同様であるが、更に、ガス発生装置51、電源41、電極冷却ユニット60等が装置構成として配置されている。電極冷却ユニット60の冷却剤としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が好ましく用いられる。
【0050】
図7に記載のロール電極25、対向電極36は、図4乃至図6等に示したものと同様であり、対向する電極間のギャップは、例えば1mm程度に設定される。
【0051】
上記電極間の距離は、電極の母材に設置した固体誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定される。上記電極の一方に固体誘電体を設置した場合の固体誘電体と電極の最短距離、上記電極の双方に固体誘電体を設置した場合の固体誘電体同士の距離としては、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.5mm〜20mmが好ましく、より好ましくは0.5mm〜5mmであり、特に好ましくは1〜3mmである。
【0052】
プラズマ放電処理容器31内にロール電極25、対向電極36を所定位置に配置し、ガス発生装置51で発生させた混合ガスを流量制御して、給気口52よりプラズマ放電処理容器31内に入れ、前記プラズマ放電処理容器31内をプラズマ処理に用いる混合ガスで充填し排気口53より排気する。次に、電源41により対向電極36に電圧を印加し、ロール電極25はアースに接地し、放電プラズマを発生させる。ここでロール状の元巻き基材61より基材Fを供給し、ガイドローラ64を介して、プラズマ放電処理容器31内の電極間を片面接触(ロール電極25に接触している)の状態で搬送され、基材Fは搬送中に放電プラズマにより表面が放電処理され、その後にガイドローラ67を介して、次工程に搬送される。ここで、基材Fのロール電極25に接触していない面が放電処理される。基材Fにゴミや異物が付着していると欠陥の原因となるため、放電処理の前に粘着ロール或いはブロア等でゴミを除去したり、また除電対策によりフィルムの帯電量を低減させることが好ましい。
【0053】
電源41より対向電極36に印加される電圧の値は適宜決定されるが、例えば、電圧が0.5〜10kV程度で、電源周波数は100kHzを越えて150MHz以下に調整される。ここで電源の印加法に関しては、連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードとパルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モードのどちらを採用しても良いが、連続モードの方がより緻密で良質な膜が得られる。
【0054】
プラズマ放電処理容器31はパイレックス(R)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウムまたはステンレスのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けてもよく、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとってもよい。
【0055】
放電プラズマ処理時の基材の温度は、常温(15〜25℃)で200℃未満の温度に調整することが好ましく、より好ましくは50〜150℃に調整することであり、更に好ましくは80〜120℃に調整することである。基材表面の温度を高くすることによって、緻密な薄膜を形成することが容易になり、屈折率を高くしたり、導電性を良くしたりすることもできる。一方で、基材の耐熱温度を超えないように処理することが好ましい。上記の温度範囲に調整するため、必要に応じて電極、基材は冷却手段で冷却しながら、或いは加熱しながら放電プラズマ処理される。
【0056】
本発明においては、上記の放電プラズマ処理が大気圧または大気圧近傍で行われることが好ましい。ここで大気圧近傍とは、20kPa〜200kPaの圧力を表すが、本発明に記載の効果を好ましく得るためには、93kPa〜110kPaが好ましい。
【0057】
また、本発明の薄膜形成方法に係る放電用電極においては、電極の少なくとも基材と接する側の表面がJIS B0601で規定される表面粗さの最大高さ(Rmax)が10μm以下になるように調整されることが、本発明に記載の効果を得る観点から好ましいが、更に好ましくは、表面粗さの最大値が8μm以下であり、特に好ましくは、0・7μmに調整することである。
【0058】
大気圧プラズマで本発明の範囲となる膜を作成するには、反応ガスとして、好ましくは、ケイ素、ジルコニウム、チタン、タングステン、タンタル、アルミニウム、亜鉛、インジウム、クロム、バナジウム、ニオブ、錫の有機金属化合物を用いることが好ましく、これらの有機金属化合物が金属アルコキシド、アルキル化金属、金属錯体から選ばれるものが好ましい。反応性ガスに用いられる珪素化合物、チタン化合物、錫化合物等の金属化合物としては、取り扱い上の観点から金属水素化合物、金属アルコキシドが好ましく、腐食性、有害ガスの発生がなく、工程上の汚れ等も少ないことから、金属アルコキシドが好ましく用いられる。
【0059】
また、上記の珪素化合物、チタン化合物等の金属化合物を放電空間である電極間に導入するには、これらは常温常圧で、気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合は、そのまま放電空間に導入できるが、液体、固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用される。珪素化合物、チタン化合物等を加熱により気化して用いる場合、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシチタン等、常温の液体で、沸点が300℃以下である金属アルコキシドが反射防止膜の形成に好適に用いられる。上記金属アルコキシドは、溶媒によって希釈して使用されてもよく、溶媒は、メタノール、エタノール、n・ヘキサン等の有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用できる。
【0060】
混合ガス中に上記の金属化合物を用いる場合、放電プラズマ処理により基材上に均一な薄膜を形成する観点から、混合ガス中の金属化合物の含有率は、0.1〜10体積%であることが好ましいが、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。
【0061】
また、混合ガス中に酸素、オゾン、過酸化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、窒素から選択される成分を0.01〜5体積%含有させることにより、反応が促進され、且つ、緻密で良質な薄膜を形成することができるため好ましい。
【0062】
上記の珪素化合物としては、例えば、ジメチルシラン、テトラメチルシラン等の有機金属化合物、モノシラン、ジシラン等の金属水素化合物、二塩化シラン、三塩化シラン等の金属ハロゲン化合物、HSi(OC2H5)3、FSi(OC2H5)3、HSi(OCH3)3、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のアルコキシシラン、オルガノシラン等を用いることが好ましいがこれらに限定されない。また、これらは適宜組み合わせて用いることが出来る。これにより形成された酸化珪素層は例えば反射防止層の低屈折率層として特に好ましく用いられる。或いは、防汚性を付与することもできる。
【0063】
上記のチタン化合物としては、テトラジメチルアミノチタン等の有機金属化合物、モノチタン、ジチタン等の金属水素化合物、二塩化チタン、三塩化チタン、四塩化チタン等の金属ハロゲン化合物、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等の金属アルコキシド等を用いることが好ましいがこれらに限定されない。これにより形成された酸化チタン層は例えば反射防止層の高屈折率層として特に好ましく用いられる。
【0064】
大気圧プラズマで本発明の範囲となる膜を作成するには、混合ガス中の反応ガス量、混合ガスの流量及び反応ガスの種類を適宜選択することにより調整することができる。
【0065】
次に、本発明に用いることができる基材について説明する。
基本的に基材は問わないが、ガラスや樹脂フィルムを好適に用いることができる。特に好ましいのは透過率75%以上の透明な基材である。
【0066】
また、なるべく多くの種類のフィルムを盛り込みたい。TAC、アートン、ゼオネックス、ゼオノア、流延法で形成したポリカーボネートフィルム(帝人社製ピュアエース)、PET、PEN、PES等。基材に他の層(AG、CHC、BC、ANS)を付けても構わない。
【0067】
TACの場合、一般的に使用される添加剤(可塑剤、UV吸収剤等)を含んでいても構わない。
【0068】
次に、本発明に用いることができる光学フィルムについて説明する。
本発明の光学フィルムに用いられる基材フィルムは特に限定はなく、例えば基材としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートフタレートフィルム、セルローストリアセテートフィルム、セルロースナイトレートフィルム等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体からなるフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルム或いはポリアリレート系フィルム等を挙げることができる。
【0069】
これらの素材は単独で或いは適宜混合されて使用することもできる。中でもポリシクロオレフィン、ノルボルネン系の樹脂、例えばゼオネックス、ゼオノア(日本ゼオン(株)製)、ARTON(日本合成ゴム(株)製)等の市販品を好ましく使用することができる。更に、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルフォン及びポリエーテルスルフォン等の固有複屈折率の大きい素材であっても、溶液流延、溶融押し出し等の条件、更には縦、横方向に延伸条件等を適宜設定することにより使用することが出来る。また、本発明に係る支持体は、上記の記載に限定されない。膜厚としては10μm〜1000μmのフィルムが好ましく用いられる。
【0070】
更に、これらの上にゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロースエステル系樹脂、活性線硬化樹脂、熱硬化性樹脂等を塗設したもの等を使用することが出来る。また、これら基材は、支持体上に防眩層やクリアハードコート層を塗設したり、バックコート層、帯電防止層を塗設したものを用いることが出来る。
【0071】
本発明において、基材フィルムとしては、特にセルロースエステルフィルムを用いることが低い反射率の積層体が得られるために好ましい。本発明に記載の効果を好ましく得る観点から、セルロースエステルとしてはセルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく、中でもセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルローストリアセテートが好ましく用いられる。
【0072】
本発明で用いられるセルロースエステルフィルムは溶融流延法によって製造したものであっても溶液流延法によって製造されたものであってもよいが、特に好ましくは溶液流延法によって製造されたものである。
【0073】
また、本発明で用いられるセルロースエステルフィルムには、20℃で液体の添加剤を1〜30質量%含有することが好ましい。これにより、異物故障の少ない、緻密で膜厚均一性の高い高機能性の薄膜を、生産効率高く得ることができる。
【0074】
ここで、20℃で液体の添加剤とは、溶媒を含まない状態でも20℃で液状を示す添加剤である。ここで溶媒とは、ドープに含まれる溶媒のことである。例えば、融点が20℃以下の添加剤のほか、2種以上の添加剤の混合物が液状を示しているものであってもよい。例えば、混合によって凝固点降下し、20℃で液状を示している添加剤であってもよい。
【0075】
本発明において、セルロースエステルフィルムに添加する20℃で液体の添加剤としては、例えば紫外線吸収剤、可塑剤、リターデーション調整剤から選択されるものが挙げられる。これらのうち20℃で液体の添加剤の合計が1〜30質量%含有しているものであり、好ましくは2〜25質量%であり、更に好ましくは5〜20質量%である。
【0076】
特に、紫外線吸収剤、可塑剤にそれぞれ液体のものが少なくとも1種使用されていることが好ましい。
【0077】
本発明では、20℃で液体の紫外線吸収剤は、融点が20℃よりも高い紫外線吸収剤を併用することもできる。同様に分子内にエステル基を有する紫外線吸収剤と分子内にエステル基を有しない紫外線吸収剤とを併用することもできる。
【0078】
本発明に用いられる紫外線吸収剤は20℃で液体の紫外線吸収剤であればよいが、具体例としては、例えばベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物が挙げられ、ベンゾトリアゾール系化合物が特に好ましい。更に、紫外線吸収剤は、セルロースエステルとの相溶性の点から炭素数8以上のアルキル鎖、アルケニル鎖、アルキレン鎖またはアルキレンオキシド鎖を有することが好ましい。
【0079】
また、20℃で液体の紫外線吸収剤と併用できる紫外線吸収化合物としては一般的に使用されている紫外線吸収剤を用いることができるが、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物が挙げられる。中でも好ましいのはベンゾトリアゾール系化合物である。
【0080】
上記紫外線吸収剤の含有量は、セルロースエステルフィルムに対して0.01〜10質量%が好ましく、更に好ましくは0.1〜5質量%である。
【0081】
本発明に用いられる可塑剤としては特に限定されないが、リン酸エステル系ではトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系ではジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等、グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート等を単独或いは併用して用いることができる。
【0082】
このうち、20℃で液体の可塑剤としては、例えば、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ビジフェニルビフェニルホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、トリアセチン、エチルフタリルエチルグリコレート等を挙げることが出来る。本発明では特に20℃で液体の可塑剤を含用するのが好ましい。これらの可塑剤は20℃で固体の可塑剤を併用するのも好ましい。
【0083】
上記可塑剤の含有量は、フィルムの性能、加工性等の点でセルロースエステルフィルムに対して1〜20質量%が好ましく、寸法安定性の点で液晶表示部材用としては2〜18質量%であることが更に好ましく、特に好ましくは3〜15質量%である。
【0084】
本発明において、リターデーション調整剤は膜厚方向のリターデーションRtを増加させたり、或いは低減させたりする作用を有する添加剤であり、紫外線吸収性を有していても、可塑剤としての性質を併せ持っていてもよい。
【0085】
20℃で液体であるリターデーション調整剤としては、低分子量のポリマーが挙げられる。例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート或いはこれらのモノマー成分を含む共重合体等で質量平均分子量1万以下のものが挙げられる。特に質量平均分子量500〜3000のものが好ましく用いられる。これらを添加することによって膜厚方向のリターデーションを低減することができる。
【0086】
リタデーション調整剤としては特開2000−111914号公報、特開2001−166144号公報に記載のリタデーション上昇剤等も挙げられる。これらは添加量によってリタデーションを上昇させたり、逆に低減させたりすることができる。
【0087】
また、金属酸化物膜に関し、屈折率おいて低屈折率層は1.1〜1.6が好ましく、1.3〜1.5が更に好ましく、高屈折率層は1.6〜2.4が好ましく、1.8〜2.3が更に好ましい。
【0088】
本発明の大気圧プラズマ製膜法では、有機珪素化合物を反応ガスとして大気圧プラズマ法で製膜することで、膜中に炭素を含有させることができる。これは、真空プラズマ法と比較して、大気圧プラズマ法では電極間に存在する反応ガス由来のイオン等の粒子が高い密度で存在することになるので、有機珪素化合物由来の炭素が残りやすくなる。本発明においては、膜中の炭素は、膜に柔軟性を与え、基材との密着性が向上することから僅かに含有することが好ましく、具体的には0.2〜5質量%含有することが好ましい。5質量%を超えて含有すると、膜の屈折率等の物性が経時的に変化することがあり、好ましくない。
【0089】
本発明の光学フィルムは画像表示装置として好ましく用いることができる。具体的には、画像表示画面の反射防止膜等に好適である。
【0090】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0091】
基材としてポリエーテルスルホンを用いた。
・試料101の作成
真空蒸着法により基材上に酸化物層を形成した。
・試料102の作成
スパッタ法により基材上に酸化物層を形成した。
・試料103の作成
〈テトラエトキシシラン加水分解物の調製〉
テトラエトキシシラン250質量部にエタノール380質量部を加え、この溶液に3質量部の塩酸(conc)を235質量部の水で希釈した塩酸水溶液を室温で、ゆっくり滴下した。滴下後、3時間室温で攪拌してテトラエトキシシラン加水分解物を調製した。これをバーコーターにより基材上に塗布し、80℃で30分間乾燥した。
・試料104の作成
試料103で作成したテトラエトキシシラン加水分解物を用い、下記に示す組成の塗布液を作成し、バーコーターで塗布、80℃で30分間乾燥した。
【0092】
テトラエトキシシラン加水分解物 : 180質量部
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン: 5質量部
シクロヘキサノン :3200質量部
・試料105の作成
図8に示す真空プラズマCVD装置を用いて酸化物層を作成した(特開2000−336196号公報参照)。なお、図8において、35aは導電性の金属材料、35bは誘電体、105は印加電圧、100は基体である。
【0093】
また、高周波電源として13.56MHzのRF電源を用いた。製膜条件は以下の通りである。
【0094】
印加電力 :30kW
圧力 :50mTorr
反応ガス :ヘキサメチルジシロキサン
反応ガス流量 :1slm
酸素ガス流量 :10slm
成膜用ドラム表面温度(成膜温度):100℃
上記のガス流量単位slmは、standard liter per minuteのことである。
・試料106の作成
試料105の作成において印加電力を10kWとしたこと以外は試料105の作成と同様に基材上に酸化物層を形成した。
・試料107の作成
基材は試料101〜106と同じポリエーテルスルホンを用いて基材上に大気圧プラズマ法により酸化物薄膜を形成した。プラズマ放電装置には、電極が平行平板型のものを用い、この電極間にガラス基板を載置し、且つ、混合ガスを導入して薄膜形成を行った。
【0095】
なお、電極は、以下の物を用いた。200mm×200mm×2mmのステンレス板に高密度、高密着性のアルミナ溶射膜を被覆し、その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させ封孔処理を行った。このようにして被覆した誘電体表面を研磨し、平滑にして、Rmax5μmとなるように加工した。このように電極を作成し、アース(接地)した。
【0096】
一方、印加電極としては、中空の角型の純チタンパイプに対し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆したものを複数作成し、対向する電極群とした。
【0097】
また、プラズマ発生に用いる使用電源は日本電子(株)製高周波電源JRF−10000にて周波数13.56MHzの電圧で、且つ5W/cm2の電力を供給した。
【0098】
電極間に以下の組成の反応性ガスを流した。
不活性ガス :アルゴン 98.50体積%
反応性ガス1種:酸素ガス(混合ガス全体に対し1%)
反応性ガス2種:テトラエトキシシラン蒸気(加熱した液体にアルゴンガスをバブリング)、反応性ガス全体に対し0.50体積%
基材上に上記反応性ガス、反応条件により大気圧プラズマ処理を行い、酸化物薄膜を作成した。
【0099】
以下試料107の作成と同様にして製膜条件を表1に記載した条件として基材上に酸化物薄膜を形成した。これらの試料を108〜112とする。
《評価》
作成した反射防止膜は以下の方法に従って評価した。
〈LO/TOの評価〉
前述のLO/TO比の記載に従って評価した。
〈組成〉
膜組成、炭素含有率はXPS表面分析装置を用いてその値を測定した。XPS表面分析装置としては特に限定なく、いかなる機種も使用することができるが、本実施例においてはVGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200Rを用いた。X線アノードにはMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定した。エネルギー分解能は、清浄なAg3d5/2ピークの半値幅で規定したとき、1.5〜1.7eVとなるように設定した。測定を行う前に、汚染による影響を除くために、薄膜の膜厚の10〜20%の厚さに相当する表面層をエッチング除去する必要がある。表面層の除去には、希ガスイオンが利用できるイオン銃を用いることが好ましく、イオン種としては、He,Ne,Ar,Xe,Kr等が利用できる。本測定おいては、Arイオンエッチングを用いて表面層を除去した。
【0100】
先ず、結合エネルギー0eVから1100eVの範囲を、データ取り込み間隔1.0eVで測定し、いかなる元素が検出されるかを求めた。
【0101】
次に、検出された、エッチングイオン種を除く全ての元素について、データの取り込み間隔を0.2eVとして、その最大強度を与える光電子ピークについてナロースキャンをおこない、各元素のスペクトルを測定した。得られたスペクトルは測定装置或いはコンピューターの違いによる含有率算出結果の違いを生じせしめなくするために、VAMAS−SCA−JAPAN製のCOMMON DATA PROCESSING SYSTEM (Ver.2.3以降が好ましい)上に転送した後、同ソフトで処理をおこない、炭素含有率の値を原子数濃度(atomic concentration:at%)として求めた。錫とインジウムの比も、上記結果から得られた原子数濃度の比とした。
【0102】
定量処理を行う前に、各元素についてCount Scaleのキャリブレーションを行い、5ポイントのスムージング処理を行った。定量処理では、バックグラウンドを除去したピークエリア強度(cps*eV)を用いた。バックグラウンド処理には、Shirleyによる方法を用いた。
【0103】
Shirley法については、D.A.Shirley,Phys.Rev.,B5,4709(1972)を参考にすることができる。
〈密着性〉
得られたそれぞれの試料について、50℃/相対湿度95%の環境下に48時間放置した後の反射防止層のセロハンテープ剥離試験を行なった。セロハンテープ剥離試験は、ニチバン(株)製のセロテープ(R)を用いて、10mm×10mmクロスカットで5回の剥離試験を行ないその平均値を求めた。
〈耐屈曲性試験〉
得られたそれぞれの試料について、JIS規格K5400に準じて行なった。反射防止フィルムの巻き付けには直径10mmのステンレス棒を用いた。試験の結果、反射防止層に微細なクラックが発生したものを×、何らの変化もなかったものを○とした。
〈耐傷性の測定〉
1cm×1cmの面にスチールウールを貼り付けたプローブを、酸化物層の薄膜面に250gの荷重をかけて押し付け10回往復運動させた後、擦り傷の入る本数を測定した。
【0104】
以上の評価結果を表1に記す。
【0105】
【表1】
【0106】
《反射防止層の作成》
基材フィルムに非晶質シクロポリオレフィン樹脂フィルム(JSR社製ARTONフィルム:厚さ100μm)を用い、図3に示す放電処理容器を図7のプラズマ放電処理装置を用いて、表2に記載の反射防止層を有する光学フィルムを各々作成した。
【0107】
【表2】
【0108】
ここで、ロール電極25は、冷却水による冷却手段を有するステンレス製ジャケットロール母材(冷却手段は図3には図示していない)に対して、セラミック溶射によりアルミナを1mm被覆し、その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させ封孔処理を行い、表面を平滑にしてRmax5μmとした誘電体(比誘電率10)を有するロール電極25を製作しアース(接地)した。一方、印加電極としては、中空の角型のステンレスパイプに対し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆し、対向する電極群とした。
【0109】
但し、プラズマ発生に用いる使用電源は、パール工業製高周波電源(800kHz)を使用した。
《放電条件》
放電出力を12W/cm2とした。電極間隔は1mmとした。
《反応性ガス》
プラズマ処理に用いた混合ガス(反応性ガス)の組成を以下に記載する。気圧は1.0気圧とした。混合ガスの流量は2L/秒とした。
(高屈折率(酸化チタン)層形成用)
不活性ガス :アルゴン 98.75体積%
反応性ガス1:水素ガス(混合ガス全体に対し1%)
反応性ガス2:テトライソプロポキシチタン蒸気(150℃に加熱した液体にアルゴンガスをバブリング)、反応ガス全体に対し0.25体積%
上記条件にて基材フィルム上に高屈折率層(酸化チタン層、屈折率2.21、膜厚92nm、炭素含有量0.4%)を作成した。更にこの上に、実施例の101から112の条件にて低屈折率層を作成し、反射防止機能を有する酸化物積層体を作成した。
《評価》
作成した反射防止膜は以下の方法に従って評価した。
〈膜厚、製膜速度〉
膜厚はPhotal社製FE−3000反射分光膜厚計により測定し、得られた膜厚を製膜に要した時間(分)で徐したものを製膜速度とした。
〈透過率〉
JIS−R−1635に従い、日立製作所製分光光度計U−4000型を用いて測定を行った。試験光の波長は550nmとした。
〈反射率〉
各層の屈折率と膜厚は分光反射率の測定より計算して算出した。反射光学特性は分光光度計(日立製作所製U−4000型)を用い、5度正反射の条件にて反射率の測定を行った。この測定法において、反射防止層が作成されていない側の基板面を粗面化した後、黒色のスプレーを用いて光吸収処理を行い、フィルム裏面での光の反射を防止し、反射率の測定を行った。
【0110】
【発明の効果】
本発明における酸化物積層体は曲げ等の機械的な特性に優れており、且つ、その形成方法によれば、緻密で品質の高い酸化物薄膜を高品質な基材上に形成できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】酸化物積層体に関するTOモードとLOモードのグラフである。
【図2】プラズマ放電処理装置に設置されるプラズマ放電処理容器の一例を示す概略図である。
【図3】プラズマ放電処理装置に設置されるプラズマ放電処理容器の一例を示す概略図である。
【図4】円筒型のロール電極の一例を示す概略図である。
【図5】円筒型の対向電極の一例を示す概略図である。
【図6】角柱型の対向電極の一例を示す概略図である。
【図7】プラズマ放電処理装置の一例を示す概念図である。
【図8】真空プラズマCVD装置を示す概略図である。
【符号の説明】
25,25c,25C ロール電極
26,26c,26C,36,36c,36C 対向電極
25a,25A 金属等の導電性母材
25b セラミック被覆処理誘電体
25B ライニング処理誘電体
31 プラズマ放電処理容器
41 電源
51 ガス発生装置
52 給気口
53 排気口
60 電極冷却ユニット
61 元巻き基材
65,66 ニップローラ
64,67 ガイドローラ
Claims (16)
- 基材上に少なくとも1つの酸化物層を有し、酸化物層の少なくとも1つの層において赤外吸収スペクトル測定より得られた、−M−O−M−(Mはケイ素、ジルコニウム、チタン、タングステン、タンタル、アルミニウム、亜鉛、インジウム、クロム、バナジウム、ニオブ、錫のうち少なくとも1種類の元素)結合に帰属される吸収におけるLO(Longitudinal Optical)モードとTO(Transverse Optical)モードとの吸収強度比LO/TOが、0.2〜0.8の範囲であることを特徴とする酸化物積層体。
- 赤外吸収スペクトル測定より得られた、−M−O−M−結合に帰属される吸収におけるLO(Longitudinal Optical)モードとTO(Transverse Optical)モードとの吸収強度比LO/TOが、0.2〜0.8の範囲である層がケイ素を含むことを特徴とする請求項1に記載の酸化物積層体。
- 赤外吸収スペクトル測定より得られた、−M−O−M−結合に帰属される吸収におけるLO(Longitudinal Optical)モードとTO(Transverse Optical)モードとの吸収強度比LO/TOが、0.2〜0.8の範囲である層において、M(Mはケイ素、ジルコニウム、チタン、タングステン、タンタル、アルミニウム、亜鉛、インジウム、クロム、バナジウム、ニオブ、錫の元素の合計)、炭素、窒素、酸素の合計に対する、Mの割合が5原子%以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の酸化物積層体。
- 酸化物層の少なくとも1つの層において赤外吸収スペクトル測定より得られた、−M−O−M−(Mはケイ素、ジルコニウム、チタン、タングステン、タンタル、アルミニウム、亜鉛、インジウム、クロム、バナジウム、ニオブ、錫のうち少なくとも1種類の元素)結合に帰属される吸収におけるLO(Longitudinal Optical)モードとTO(Transverse Optical)モードとの吸収強度比LO/TOが、0.4〜0.7の範囲であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の酸化物積層体。
- 赤外吸収スペクトル測定より得られた、−M−O−M−結合に帰属される吸収におけるLO(Longitudinal Optical)モードとTO(Transverse Optical)モードとの吸収強度比LO/TOが、0.2〜0.8の範囲である層において、M(Mはケイ素、ジルコニウム、チタン、タングステン、タンタル、アルミニウム、亜鉛、インジウム、クロム、バナジウム、ニオブ、錫の元素の合計)、炭素、窒素、酸素の合計に対する、Mの割合が20原子%以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の酸化物積層体。
- 請求項1〜5の何れか1項に記載の酸化物積層体を用い、酸化物層を形成する際、大気圧または大気圧近傍の圧力下において、少なくとも1種類以上の不活性ガスと、少なくとも1種類以上の反応性ガスからなる混合ガスを放電空間に導入してプラズマ状態とし、基材を前記プラズマ状態の反応性ガスに晒すことによって、前記基材上に薄膜を形成することを特徴とする酸化物積層体の形成方法。
- 前記放電空間には前記反応性ガスと少なくとも1種類の不活性ガスを含有する混合ガスを導入し、前記不活性ガスがアルゴンまたはヘリウムを含有することを特徴とする請求項6に記載の酸化物積層体の形成方法。
- 前記放電空間に印加する電界が、周波数100kHzを越えた高周波電圧で、且つ、1W/cm2以上の電力を供給して放電させることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の酸化物積層体の形成方法。
- 前記高周波電圧は、連続したサイン波であることを特徴とする請求項8に記載の酸化物積層体の形成方法。
- 前記高周波電圧を印加する電極の少なくとも一方が、誘電体で被覆されていることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の酸化物積層体の形成方法。
- 前記誘電体は、比誘電率が6〜45の無機物であることを特徴とする請求項10に記載の酸化物積層体の形成方法。
- 前記電極の表面粗さRmaxが10μm以下であることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の酸化物積層体の形成方法。
- 酸化物積層体の基材の透過率が75%以上であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の酸化物積層体。
- 酸化物積層体の基材が長尺フィルムであることを特徴とする請求項1〜5、13の何れか1項に記載の酸化物積層体。
- 酸化物積層体の反射率が5%以下であることを特徴とする、請求項1〜5、13、14の何れか1項に記載の酸化物積層体。
- 請求項1〜5、13〜15の何れか1項に記載の酸化物積層体を有する画像表示装置。
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WO2006106808A1 (ja) * | 2005-04-04 | 2006-10-12 | Nec Corporation | 帯域制御方法及び通信装置 |
WO2009066630A1 (ja) * | 2007-11-19 | 2009-05-28 | Konica Minolta Holdings, Inc. | 撥水または防汚性物品、それを用いて構成された建築用窓ガラス、車両用窓ガラス、ディスプレイ部材、光学部品 |
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2002
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JP5407869B2 (ja) * | 2007-11-19 | 2014-02-05 | コニカミノルタ株式会社 | 撥水または防汚性物品、それを用いて構成された建築用窓ガラス、車両用窓ガラス、ディスプレイ部材、光学部品 |
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