JP2004010958A - 薄膜形成方法 - Google Patents

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斉藤 篤志
Yuichiro Maehara
前原 雄一郎
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福田 和浩
Akira Nishiwaki
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Abstract

【課題】本発明の目的は、高屈折率で、優れた表面硬度を有し、かつ薄膜形成速度の速い、炭素原子を含む化合物を含有する反応性ガスを用いた循環式の薄膜形成方法を提供することにある。
【解決手段】大気圧もしくはその近傍の圧力下で、密閉された反応容器内に設けた対向する電極間の放電空間に、炭素原子を含む化合物を含有するガスを供給し、前記放電空間に高周波電圧を印加することにより前記ガスを励起し、基材を励起したガスに晒すことにより、前記基材上に薄膜を形成する薄膜形成方法において、前記反応容器から排出される排出ガスに炭素除去処理を施し、前記炭素除去処理を施した排出ガスを、ふたたび前記放電空間に供給することを特徴とする薄膜形成方法。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、大気圧もしくはその近傍の圧力下で行う薄膜形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体デバイスや表示、記録、光電変換のための各種のデバイスには、基材上に高機能性の薄膜を設けた、例えば、電極膜、誘電体保護膜、半導体膜、透明導電膜、反射防止膜、光学干渉膜、ハードコート膜、下引き膜、バリア膜等の各種の材料が用いられている。
【0003】
このような高機能性の薄膜生成においては、従来、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等の真空を用いた乾式製膜法が用いられてきた。
【0004】
このような製膜方法は、真空設備を必要とする為、設備費用が高額となる。更に、連続生産が出来ず、製膜速度が低いことから、生産性が低いという課題を有していた。
【0005】
これらの真空装置を用いることによる低生産性のデメリットを克服する方法として、特開昭61−238961号等において、大気圧下で放電プラズマを発生させ、該放電プラズマにより高い処理効果を得る大気圧プラズマ処理方法が提案されている。大気圧プラズマ処理方法は、基材の表面に、均一な組成、物性、分布で製膜することができる。また、大気圧又は大気圧近傍下で処理を行うことができることから、真空設備を必要とせず、設備費用を抑えることができ、連続生産にも対応でき、製膜速度を速くすることができる。また、大気圧または大気圧近傍の圧力下で放電し、反応性ガスをプラズマ励起し、基材上に薄膜を形成する応用例が、特開平11−133205号、特開2000−185362、特開平11−61406号、特開2000−147209、同2000−121804等に記載されている(以下、大気圧プラズマ法とも称する)。これら公報に開示される大気圧プラズマ法は、対向する電極間に、パルス化され、周波数が0.5〜100kHzであり、且つ、電界の強さが1〜100V/cmの電界を印加し、放電プラズマを発生させるというものである。更に、特開平6−330326号には、大気圧プラズマ放電中に、金属アルコキシド等を微量添加することにより、金属酸化膜を形成する方法が提案されている。
【0006】
上記のような放電プラズマによる薄膜形成方法においては、供給する反応ガスを電極間の放電空間で分解することにより薄膜を形成する方法であるが、薄膜の形成に従って、供給された反応性ガスが消費され、反応容器内、特に電極間の放電空間での反応性ガス濃度が低下する。特に、大面積の基材上に薄膜を形成するような場合には、放電空間において、常に一定した反応性ガス濃度に維持することが重要となる。この様な課題に対して、特開平11−189877号では、回転電極を用いた薄膜形成方法において、反応容器内のシランガスを循環してアモルファスシリコンの薄膜形成方法が提案されており、更に、ガス循環路に発生した微粒子の除去手段、或いは水分除去手段を設ける方法が開示されている。
【0007】
本発明者らは、上記薄膜形成方法に従って、有機金属ガスを含む反応性ガスを用いた薄膜形成を試みた結果、得られた薄膜の膜品質が大きく劣化し、更に、反応容器内及び循環路の内壁に汚れが発生することが判明した。この処理時間の経過に伴って発生する汚れは、炭素成分を主とした不純物の堆積物であることが判明した。特に、反応性ガスに有機金属ガスを用いて均質な薄膜を形成する方法においては、この循環路等に堆積した不純物の発生が、極めて致命的な問題であることが判明し、早急な課題の解決が望まれている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高屈折率で、優れた表面硬度を有し、かつ薄膜形成速度の速い、炭素原子を含む化合物を含有する反応性ガスを用いた循環式の薄膜形成方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
【0010】
1.大気圧もしくはその近傍の圧力下で、密閉された反応容器内に設けた対向する電極間の放電空間に、炭素原子を含む化合物を含有するガスを供給し、前記放電空間に高周波電圧を印加することにより前記ガスを励起し、基材を励起したガスに晒すことにより、前記基材上に薄膜を形成する薄膜形成方法において、前記反応容器から排出される排出ガスに炭素除去処理を施し、前記炭素除去処理を施した排出ガスを、ふたたび前記放電空間に供給することを特徴とする薄膜形成方法。
【0011】
2.前記炭素除去処理を行った後の排出ガスの炭素濃度が1000ppm以下であることを特徴とする前記1項に記載の薄膜形成方法。
【0012】
3.前記炭素除去処理を行った後の排出ガスの炭素濃度が100ppm以下であることを特徴とする前記1項に記載の薄膜形成方法。
【0013】
4.前記炭素除去処理を行った後の排出ガス中の前記炭素原子を含む化合物の濃度を検出し、前記検出した濃度に応じて前記炭素原子を含む化合物を含有する反応性ガスの供給量を制御することを特徴とする前記1〜3項のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
【0014】
5.前記対向する電極が、平行に配置された印加電極とアース電極であることを特徴とする前記1〜4項のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
【0015】
6.前記炭素除去処理が、冷却凝縮手段、圧縮手段及び吸着手段により行われることを特徴とする前記1〜5項のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
【0016】
7.前記炭素除去処理を行った後の排出ガス中の炭素原子を含む化合物の濃度の検出手段が、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)、又はガスクロマトグラフ−質量分析計(GC−MS)であることを特徴とする前記4〜6項のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
【0017】
8.前記反応容器から排出される排出ガスの水分除去手段又は微粒子除去手段を有していることを特徴とする前記1〜7項のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
【0018】
9.前記排出ガス流量に対する反応性ガスの供給量比率が、0.01〜1.0体積%であることを特徴とする前記4〜8項のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
【0019】
10.前記炭素原子を含む化合物が、金属アルコキシド、アルキル化金属、及び金属錯体から選ばれる少なくとも1つの有機金属化合物であることを特徴とする前記1〜9項のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
【0020】
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明の薄膜形成方法は、大気圧もしくはその近傍の圧力下で、密閉された反応容器内に設けた対向する電極間の放電空間に、炭素原子を含む化合物を含有するガスを供給し、前記放電空間に高周波電圧を印加することにより前記ガスを励起し、基材を励起したガスに晒すことにより、前記基材上に薄膜を形成する薄膜形成方法において、前記反応容器から排出される排出ガスに炭素除去処理を施し、前記炭素除去処理を施した排出ガスを、ふたたび前記放電空間に供給することが特徴である。
【0021】
本発明の薄膜形成方法をより具体的に説明すると、大気圧もしくはその近傍の圧力下で、密閉された反応容器内に、放電ガス及び希釈ガスと炭素原子を含む化合物とを含有する反応性ガスとを供給し、反応容器内に設けた印加電極とアース電極とが対向して構成される電極間に、放電ガスと反応性ガスからなる混合ガスを供給し、放電空間に高周波電圧を印加して、プラズマ放電により反応ガスを分解し、基材表面に炭素原子を含む薄膜を形成する装置であり、薄膜形成後、プラズマ放電処理を行った混合ガスを排出し、再び反応容器に戻すためのガス循環路を通り、ガス循環路間に設けられた炭素除去処理手段により、混合ガス中の炭素含有不純物(例えば、遊離した炭素粒子、炭酸ガス、メタン等)を除去した後、ふたたび、反応容器に供給することが特徴である。
【0022】
更に、反応容器から排出されるガスを、ガス濃度検出部でその組成を測定し、消費された炭素原子を含む化合物の含有量や放電ガス含有量の測定結果に基づき、目標とする濃度に対し不足した炭素原子を含む化合物や放電ガスを供給して、再び、反応容器内に戻して、循環しながら連続して薄膜形成を行うものである。本発明の構成を用いることにより、常に炭素原子を含む化合物を規定の濃度条件で、安定して供給できるものであり、更に、循環方式による大きな課題であった炭素成分を主とする不純物の混入を効率的に防止でき、結果として、異物の混入が無く、均一の面質からなる薄層を形成することができる。加えて、従来のプラズマ放電方式の多くは、供給した放電ガスは、使用後は系外に排出しているが、本発明においては、特に、高価な放電ガス(例えば、ヘリウム、アルゴン等)を循環方式により再利用を行うことが可能となり、コスト面でも極めて有効な方法であるといえる。
【0023】
本発明においては、上述の炭素除去処理を行った後の排出ガス中の炭素原子を含む化合物の濃度の検出手段として、公知の各種分析機器を用いることができるが、特に、ガス中の炭素原子を含む化合物の含有量(濃度)を精度良く検出するためには、特に、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)、又はガスクロマトグラフ−質量分析計(GC−MS)を用いることが好ましい。
【0024】
また、本発明の薄膜形成方法においては、上記炭素除去処理により、混合ガス中の炭素含有不純物を行った後の排出ガスの炭素濃度が1000ppm以下であることが好ましく、さらに好ましくは100ppm以下であり、より好ましくは0.1〜100ppmである。排出ガスとして上記で規定する炭素濃度とすることにより、炭素不純物を、混合ガスの再利用に際し、薄膜形成に影響を与えない条件に制御することができる。
【0025】
また、本発明で用いる薄膜形成装置においては、放電空間を構成する対向する電極が、平行に配置された印加電極とアース電極であることが好ましい。
【0026】
従来から広く用いられている回転電極に対し、平行電極を用いることにより、反応容器をよりコンパクトに設計することができ、更に、大面積の基材上に薄膜を形成するような場合に、効率的にかつ均一の薄膜を形成することができる。
【0027】
また、本発明に係る炭素除去手段としては、その主要な構成として、プラズマ放電処理を行った排出ガスを液体窒素等で冷却凝縮する手段、コンプレッサー等で圧縮する手段及び活性炭等を用いて炭素粒子、炭素含有不純物等を吸着する手段等から構成されていることが好ましい。
【0028】
また、本発明においては、反応容器から排出される排出ガスの水分除去手段又は微粒子除去手段を有していることが好ましい。大気圧もしくはその近傍の圧力下でプラズマ放電処理を行う際、循環させるガス中に、プラズマ放電処理による副生成物として、水分あるいは基材上に形成されなかった微粒子等が、基材に形成した薄膜上に付着することにより、面品質の均一性を損ねたり、あるいは微粒子による故障の原因となるため、上記各手段を用いて除去することが好ましい。
【0029】
また、本発明の薄膜形成方法においては、排出ガス流量に対する反応性ガスの供給量比率を、0.01〜1.0体積%とすることが好ましい。
【0030】
また、本発明の薄膜形成方法においては、炭素原子を含む化合物として、金属アルコキシド、アルキル化金属、及び金属錯体から選ばれる少なくとも1つの有機金属化合物を用いることが好ましく、これらの有機金属化合物を用いることにより、本発明の効果をいかんなく発揮することができる。
【0031】
【発明の実施の態様】
本発明の薄膜形成方法について、以下にその実施の形態を図を用いて説明するが、本発明はこれに限定されない。また、以下の説明には用語等に対する断定的な表現が含まれている場合があるが、本発明の好ましい例を示すものであって、本発明の用語の意義や技術的な範囲を限定するものではない。
【0032】
本発明の薄膜形成方法を用いて、基材上に高機能の各種薄膜を形成することができ、例えば、電極膜、誘電体保護膜、半導体膜、透明導電膜、エレクトロクロミック膜、蛍光膜、超伝導膜、誘電体膜、太陽電池膜、反射防止膜、耐摩耗性膜、光学干渉膜、反射膜、帯電防止膜、導電膜、防汚膜、ハードコート膜、下引き膜、バリア膜、電磁波遮蔽膜、赤外線遮蔽膜、紫外線吸収膜、潤滑膜、形状記憶膜、磁気記録膜、発光素子膜、生体適合膜、耐食性膜、触媒膜、ガスセンサ膜、装飾膜等の形成に用いることができる。
【0033】
図1は、大気圧プラズマ処理装置の全体構成の一例を示す概略図である。
図1に示した本発明に係る大気圧プラズマ処理装置の主な構成は以下の通りである。
【0034】
反応容器1(プラズマ放電処理容器ともいう)は、外気を遮断した密閉容器となっており、反応容器1内には、各々平行に配置された印加電極2a、2bと、アース電極3とで放電空間が形成されている。印加電極2a、2bとアース電極3の間には、高周波電圧を印加するための高周波電源15があり、アース電極3は、アース16に接地している。
【0035】
この反応容器には、放電ガス供給管5及び反応性ガス供給管6より、それぞれ放電ガスと炭素原子を含む化合物を含有する反応性ガスがガス循環路8を介して供給される。放電ガスと反応性ガスとを所定の比率となるように混合して混合ガスとした後、反応容器1内に導入し、印加電極2a、2bとアース電極3の間に高周波電圧を印加して、プラズマ放電処理を行い、アース電極3上に配置された基材4表面に、炭素含有薄膜を形成する。
【0036】
基材4は、図示されていない元巻きから巻きほぐされて搬送してくるか、または前工程から搬送されてきて、ガイドロールを経てニップロールで基材4に同伴してくる空気等をカットし、印加電極2a、2bとアース電極3の間で薄膜形成した後移送され、ニップロール、ガイドロール等を経て、図示していない巻き取り機で巻き取られるか、次工程に移送する。
【0037】
プラズマ放電処理を行った混合ガスは、ポンプ14により反応容器1のガス排出部9よりガス循環路8を通じて系外に排出される。排出された混合ガスは、微粒子除去部12、水分除去部13を経て、炭素除去装置10に導入され、プラズマ放電処理で発生した炭素含有不純物の除去を行う。次いで、濃度検出部11で炭素除去済みのガス中の炭素原子を含む化合物等の混合ガスを構成する有効成分の濃度測定を行い、消費された各有効成分量に従って、その情報を基に反応性ガス供給管6に設けられたバルブ7bや放電ガス供給管5に設けられたバルブ7aを制御して、放電ガス及び反応性ガスの所定量を炭素除去済みのガスに混合して、ふたたび反応容器1に供給されるものである。
【0038】
図2は、大気圧プラズマ処理装置の全体構成の他の一例を示す概略図である。上述の図1では、放電ガスと反応性ガスを循環路中で混合するのに対し、図2では放電ガスと反応性ガスを個別に、印加電極2a、2bとアース電極3の間に供給する方式であり、この構成とすることにより、均一の反応ガスを供給できると共に、特に印加電極表面での炭素原子を含む化合物等の堆積をより防止することができ好ましい。
【0039】
以下、上記で説明した本発明に係るプラズマ放電処理装置を構成する各要素について、更に詳細に説明する。
【0040】
反応容器1は、外気を遮断した密閉容器となっており、各電極に対し絶縁性を有する材質のフレームや容器で囲むことが好ましく、電極との絶縁がとれれば金属製のものを用いてもよい。例えば、金属製のものとしては、アルミまたは、ステンレスのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けたものでもよく、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性を持たせたものでもよい。またパイレックス(R)ガラス製の処理容器で装置全体を囲うのも好ましい。
【0041】
次いで、印加電極及びアース電極の詳細について説明する。
図3は、本発明に係る大気圧プラズマ処理装置のガス導入部及び電極部の一例を示す拡大断面図である。図3においては、上記の図2で示したガス供給方式を例に示してある。
【0042】
印加電極2a、2bは、金属母体A、Bの表面を誘電体A′、B′で被覆し、放電中はその内部が冷却水等による印加電極2a、2bの冷却手段を有していることが好ましい。
【0043】
一方、上記印加電極2a、2bに対向する位置には、基材4が接触して搬送される電極として、基材保持用のアース電極3が配置されている。アース電極3は、金属母体C上に、誘電体C′を被覆したものであることが好ましい。
【0044】
上記各電極において、金属母体(A、B、C)としては、例えば、銀、白金、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属等が挙げられるが、加工の観点からステンレスであることが好ましい。
【0045】
また、誘電体(A′、B′、C′)は、無機材料であることが好ましく、更に、誘電体が、アルミナセラミックス溶射後、更にゾルゲル反応により硬化する珪素化合物にて封孔処理を行ったものであることが好ましい。
【0046】
誘電体としては、無機材料であるケイ酸塩系ガラス・ホウ酸塩系ガラス・リン酸塩系ガラス・ゲルマン酸塩系ガラス・亜テルル酸塩ガラス・アルミン酸塩ガラス・バナジン酸塩ガラス等を用いることができる。この中でもホウ酸塩系ガラスが加工し易い。また、溶射法により気密性の高い高耐熱性のセラミックを用いることも好ましい。セラミックスの材質としては例えばアルミナ系、ジルコニア系、窒化珪素系、炭化珪素系のセラミックスが挙げられるが、中でもアルミナ系のセラミックスが好ましく、アルミナ系のセラミックスの中でも特にAlを用いるのが好ましい。アルミナ系のセラミックスの厚みは1mm程度が好ましく、体積固有抵抗は10Ω・cm以上が好ましい。
【0047】
セラミックスは、無機質材料で封孔処理されているのが好ましく、これにより電極の耐久性を向上させることができる。上記アルミナ系のセラミックスを被覆した上に、封孔剤である、ゾルゲル反応により硬化する珪素化合物(アルコキシシランが好ましい)を主原料とするゾルを塗布した後に、ゲル化させて硬化させることで、強固な3次元結合を形成させ均一な構造を有する珪素酸化物を形成することによって、セラミックスの封孔処理をすることができる。
【0048】
また、ゾルゲル反応を促進するためにエネルギー処理を行うことが好ましい。ゾルにエネルギー処理をすることによって、金属−酸素−金属の3次元結合を促進することができる。該エネルギー処理には、プラズマ処理や、200℃以下の加熱処理、UV処理が好ましい。
【0049】
高温下での金属母材に誘電体を被覆して電極を製作する方法において、少なくとも基材と接する側の誘電体を研磨仕上げすること、更に電極の金属母材と誘電体間の熱膨張の差をなるべく小さくすることが必要であり、そのため製作方法において、母材表面に、応力を吸収出来る層として泡混入量をコントロールして無機質の材料をライニングする、特に材質としては琺瑯等で知られる溶融法により得られるガラスであることが良く、更に導電性金属母材に接する最下層の泡混入量を20〜30体積%とし、次層以降を5体積%以下とすることで、緻密でかつひび割れ等が発生しない良好な電極が出来る。
【0050】
また、電極の金属母材に誘電体を被覆する本発明に係る方法として、セラミックスの溶射を空隙率10体積%以下まで緻密に行い、更にゾルゲル反応により硬化する無機質の材料にて封孔処理を行うことであり、ここでゾルゲル反応の促進には、熱硬化やUV硬化が良く、更に封孔液を希釈し、コーティングと硬化を逐次で数回繰り返すと、よりいっそう無機質化が向上し、劣化の無い緻密な電極ができる。
【0051】
図4に、本発明で用いることのできる高圧用の印加電極の一例を示す。
図4は、角柱型で固定されている電極の一例を示す斜視図であり、高圧用印加電極を例とすると、固定の印加電極2a、2bであり、金属母体A、Bである中空のステンレスパイプに対して、セラミックスを溶射後、無機材料を用いて封孔処理したセラミック被覆処理の誘電体A′、B′を被覆した組み合わせで構成されているものである。
【0052】
本発明において、1対の電極間の間隙は、誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的、電極の形状等を考慮して決定される。電極表面同士の距離は、プラズマ放電を均一に発生させるという観点から0.5〜20mmが好ましく、より好ましくは0.5〜5mmであり、特に好ましくは1mm±0.5mmである。本発明における1対の電極間の間隙とは、印加電極表面とアース電極表面とが互いに最も接近している間隔をいう。
【0053】
図1において、15は印加電極2a、2bとアース電極3の間に高周波電圧を印加するための高周波電源であり、印加する電圧が100kHzを越えていることが好ましく、より好ましくは上限値が150MHz以下である。本発明で用いることのできる高周波電源としては、特に限定はないが、例えば、パール工業製高周波電源(200kHz)、同(800kHz)、同(2MHz)、日本電子製高周波電源(13.56MHz)、パール工業製高周波電源(150MHz)等を用いることができる。
【0054】
16はアースであり、アース電極3はアース16に接地している。本発明においては、上記電極間に供給する電圧の放電出力が、1W/cm以上であることが好ましく、より好ましくは1〜50W/cmである。放電出力を上記で規定した範囲とすることにより、放電プラズマのプラズマ密度を上げることができる。
【0055】
次いで、本発明に係る炭素除去装置について説明する。
図5は、本発明で用いることのできる炭素除去装置の一例を示す概略図である。
【0056】
本発明に係る炭素除去処理は、主に、冷却凝縮手段、圧縮手段及び吸着手段から構成されていることが好ましい。
【0057】
プラズマ放電処理を行った後の排出ガス101は、前処理として、はじめに圧縮機102により、例えば、10〜20MPa、100〜250℃の様な高温高圧条件下で圧縮し、次いで、冷却機103により、例えば、15〜50℃に冷却して、排出ガスを液化した後、油分離フィルター104や微小油滴分離装置により、不純物として混入している水や油分を分離し、更にモレキュラシーブ105を通して水分を吸着させた後、炭素除去部に送られる。
【0058】
炭素除去部に送られた排出ガスは、熱交換器106で一次冷却を行った後、コールドトラップ(冷却容器)100中に設けた冷媒107(例えば、液体窒素 −196℃)により二次冷却を行い、エアーコンデンサー108により、空気を分離した後、複数を直列に配置した微量不純物吸着塔109を通して、炭素含有不純物を吸着する。微量不純物吸着塔109で用いる吸着剤としては、ゼオライトあるいは活性炭を好ましく用いることができる。炭素含有不純物を除去した高純度ガス110は、再び熱交換器106により、所定の温度に昇温されたのち、循環路に戻される。
【0059】
本発明に係る炭素除去装置で除去する炭素含有不純物としては、使用する炭素原子を含む化合物の種類により異なるため一概には規定することはできないが、例えば、CO、CO、CH、C、C、C、CHOH、COH、C等を挙げることができる。
【0060】
炭素除去装置により高純度に精製されたガスは、次いで、ポンプ14を経てガス濃度検出部11に送られる。ガス濃度検出部11では、高純度に精製されたガス中の有効成分含有量を測定し、その測定結果に基づき、反応性ガス供給管6に設けられたバルブ7bや放電ガス供給管5に設けられたバルブ7aを制御して、放電ガス及び反応性ガスの所定量を高純度に精製されたガスに混合して、規定の成分比率とした後、ふたたび反応容器1に供給されるものである。
【0061】
ガス中の有効成分含有量の測定方法としては、分析するガス成分の種類により一概には規定することはできないが、好ましくはフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)、又はガスクロマトグラフ−質量分析計(GC−MS)である。
【0062】
フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)としては、例えば、FT−IR(日本分光Janssen顕微フーリエ変換赤外分光光度計)、フーリエ変換赤外分光分析法(島津製作所製FTIR−8300)等を挙げることができ、また、ガスクロマトグラフ−質量分析計(GC−MS)としては、日本電子社製ガスクロマトグラフ質量計(JMS−Gcmate)等を挙げることができる。
【0063】
本発明において、循環路に設ける微粒子除去部12としては、プラズマ処理により発生する炭素粒子をはじめとする微粒子を除去するものであり、一般には、高精度のフィルター等により構成されている。フィルターとしては、例えば、フィルターペーパー、メンブランフィルター、金属フィルター等、目的に応じて適宜選択して用いることができる。
【0064】
本発明において、循環路に設ける水分除去部13は、プラズマ処理により発生する水分、あるいは空気中から持ち込まれる水分を除去するものであり、前述の炭素除去手段で説明した水分除去方法の他、公知の方法により除去することができる。
【0065】
次いで、本発明の薄膜形成方法で用いる基材、放電ガス、反応性ガスの詳細につて以下説明する。
【0066】
基材を構成する材料も特に限定はないが、大気圧または大気圧近傍の圧力下であることと、低温のプラズマ放電であることから、樹脂を好ましく用いることができる。
【0067】
例えば、本発明に係る薄膜が反射防止膜である場合、基材として好ましくはフィルム状のセルローストリアセテート等のセルロースエステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、更にこれらの上にゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂等を塗設したもの等を使用することが出来る。また、これら基材は、支持体上にエチレン性不飽和モノマーを含む成分を重合させて形成した樹脂層等を塗装した防眩層やクリアハードコート層を有するもの、バックコート層、帯電防止層を塗設したものを用いることが出来る。
【0068】
上記の支持体(基材としても用いられる)としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートフタレートフィルム、セルローストリアセテート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体からなるフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルムあるいはポリアリレート系フィルム等を挙げることができる。
【0069】
これらの素材は単独であるいは適宜混合されて使用することもできる。中でもゼオネックス(日本ゼオン(株)製)、ARTON(日本合成ゴム(株)製)などの市販品を好ましく使用することができる。更に、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルフォン及びポリエーテルスルフォンなどの固有複屈折率の大きい素材であっても、溶液流延、溶融押し出し等の条件、更には縦、横方向に延伸条件等を適宜設定することにより、得ることが出来る。また、本発明に係る支持体は、上記の記載に限定されない。膜厚としては10〜1000μmのフィルムが好ましく用いられる。
【0070】
本発明において、基材上に設ける薄膜が、反射防止膜である場合には、本発明に係る支持体としては、中でもセルロースエステルフィルムを用いることが低い反射率の積層体が得られる為、好ましい。本発明に記載の効果を好ましく得る観点から、セルロースエステルとしてはセルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく、中でもセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられる。
【0071】
本発明において用いられる反応ガスは、基材上に設けたい薄膜の種類によって異なるが、基本的に、放電ガスと、薄膜を形成するための反応性ガスの混合ガスである。反応性ガスは、混合ガスに対し、0.01〜10体積%含有させることが好ましい。薄膜の膜厚としては、1〜1000nmの範囲の薄膜が得られる。
【0072】
上記放電ガスとは、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が挙げられるが、本発明に記載の効果を得るためには、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられる。
【0073】
例えば、反応性ガスとしてジンクアセチルアセトナート、トリエチルインジウム、トリメチルインジウム、ジエチル亜鉛、ジメチル亜鉛、エトラエチル錫、エトラメチル錫、二酢酸ジ−n−ブチル錫、テトラブチル錫、テトラオクチル錫などから選択された少なくとも1つの有機金属化合物を含む反応性ガスを用いて、導電性膜あるいは帯電防止膜、あるいは反射防止膜の中屈折率層として有用な金属酸化物層を形成することができる。
【0074】
また、フッ素含有化合物ガスを用いることによって、基材表面にフッ素含有基を形成させて表面エネルギーを低くし、撥水性表面を得る撥水膜を得ることが出来る。フッ素元素含有化合物としては、6フッ化プロピレン(CFCFCF)、8フッ化シクロブタン(C)等のフッ素・炭素化合物が挙げられる。安全上の観点から、有害ガスであるフッ化水素を生成しない6フッ化プロピレン、8フッ化シクロブタンを用いるのが好ましい。
【0075】
また、分子内に親水性基と重合性不飽和結合を有するモノマーの雰囲気下で処理を行うことにより、親水性の重合膜を堆積させることもできる。上記親水性基としては、水酸基、スルホン酸基、スルホン酸塩基、1級若しくは2級又は3級アミノ基、アミド基、4級アンモニウム塩基、カルボン酸基、カルボン酸塩基等の親水性基等が挙げられる。又、ポリエチレングリコール鎖を有するモノマーを用いても同様に親水性重合膜を堆積が可能である。
【0076】
上記モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、メタクリル酸カリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、アリルアルコール、アリルアミン、ポリエチレングリコールジメタクリル酸エステル、ポリエチレングリコールジアクリル酸エステルなどが挙げられ、これらの少なくとも1種が使用できる。
【0077】
また、有機フッ素化合物、珪素化合物またはチタン化合物を含有する反応性ガスを用いることにより、反射防止膜の低屈折率層または高屈折率層を設けることが出来る。
【0078】
有機フッ素化合物としては、フッ化炭素ガス、フッ化炭化水素ガス等が好ましく用いられる。フッ化炭素ガスとしては、4フッ化炭素、6フッ化炭素、具体的には、4フッ化メタン、4フッ化エチレン、6フッ化プロピレン、8フッ化シクロブタン等が挙げられる。前記のフッ化炭化水素ガスとしては、2フッ化メタン、4フッ化エタン、4フッ化プロピレン、3フッ化プロピレン等が挙げられる。
【0079】
更に、1塩化3フッ化メタン、1塩化2フッ化メタン、2塩化4フッ化シクロブタン等のフッ化炭化水素化合物のハロゲン化物やアルコール、酸、ケトン等の有機化合物のフッ素置換体を用いることが出来るがこれらに限定されない。また、これらの化合物が分子内にエチレン性不飽和基を有していても良い。前記の化合物は単独でも混合して用いても良い。
【0080】
混合ガス中に上記記載の有機フッ素化合物を用いる場合、放電プラズマ処理により基材上に均一な薄膜を形成する観点から、混合ガス中の有機フッ素化合物の含有率は、0.1〜10体積%であることが好ましいが、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。
【0081】
また、本発明に係る有機フッ素化合物が常温、常圧で気体である場合は、混合ガスの構成成分として、そのまま使用できるので最も容易に本発明の方法を遂行することができる。しかし、有機フッ素化合物が常温・常圧で液体又は固体である場合には、加熱、減圧等の方法により気化して使用すればよく、また、適切な溶剤に溶解して用いてもよい。
【0082】
混合ガス中に上記記載のチタン化合物を用いる場合、放電プラズマ処理により基材上に均一な薄膜を形成する観点から、混合ガス中のチタン化合物の含有率は、0.01〜10体積%であることが好ましいが、更に好ましくは、0.01〜1体積%である。
【0083】
また、上記記載の混合ガス中に水素ガスを0.1〜10体積%含有させることにより薄膜の硬度を著しく向上させることが出来る。
【0084】
また、混合ガス中に酸素、オゾン、過酸化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、窒素から選択される成分を0.01〜5体積%含有させることにより、反応促進され、且つ、緻密で良質な薄膜を形成することができる。
【0085】
上記記載の珪素化合物、チタン化合物としては、取り扱い上の観点から金属水素化合物、金属アルコキシドが好ましく、腐食性、有害ガスの発生がなく、工程上の汚れなども少ないことから、金属アルコキシドが好ましく用いられる。
【0086】
また、上記記載の珪素化合物、チタン化合物を放電空間である電極間に導入するには、両者は常温常圧で、気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合は、そのまま放電空間に導入できるが、液体、固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用される。珪素化合物、チタン化合物を加熱により気化して用いる場合、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシチタンなど、常温で液体で、沸点が200℃以下である金属アルコキシドが反射防止膜の形成に好適に用いられる。上記金属アルコキシドは、溶媒によって希釈して使用されても良く、溶媒は、メタノール、エタノール、n−ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用できる。尚、これらの希釈溶媒は、プラズマ放電処理中において、分子状、原子状に分解される為、基材上への薄膜の形成、薄膜の組成などに対する影響は殆ど無視することが出来る。
【0087】
上記記載の珪素化合物としては、例えば、ジメチルシラン、テトラメチルシランなどの有機金属化合物、モノシラン、ジシランなどの金属水素化合物、二塩化シラン、三塩化シランなどの金属ハロゲン化合物、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジエトキシシランなどのアルコキシシラン、オルガノシランなどを用いることが好ましいがこれらに限定されない。また、これらは適宜組み合わせて用いることが出来る。
【0088】
混合ガス中に上記記載の珪素化合物を用いる場合、放電プラズマ処理により基材上に均一な薄膜を形成する観点から、混合ガス中の珪素化合物の含有率は、0.01〜10体積%であることが好ましいが、更に好ましくは、0.01〜1体積%である。
【0089】
上記記載のチタン化合物としては、テトラジメチルアミノチタンなどの有機金属化合物、モノチタン、ジチタンなどの金属水素化合物、二塩化チタン、三塩化チタン、四塩化チタンなどの金属ハロゲン化合物、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタンなどの金属アルコキシドなどを用いることが好ましいがこれらに限定されない。
【0090】
反応性ガスに有機金属化合物を添加する場合、例えば、有機金属化合物としてLi,Be,B,Na,Mg,Al,Si,K,Ca,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Rb,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Cd,In,Ir,Sn,Sb,Cs,Ba,La,Hf,Ta,W,Tl,Pb,Bi,Ce,Pr,Nd,Pm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Luから選択される金属を含むことができる。より好ましくは、これらの有機金属化合物が金属アルコキシド、アルキル化金属、金属錯体から選ばれるものが好ましい。
【0091】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0092】
実施例1
《基材の作製》
以下に示す方法に従って、基材であるセルロースエステルフィルムを作製した。
【0093】
〔ドープ液の調製〕
〈酸化ケイ素分散液の調製〉
アエロジル200V(日本アエロジル(株)製)        1kg
エタノール                         9kg
上記素材をディゾルバで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリン型高圧分散装置を用いて分散を行った。
【0094】
〈添加液の調製〉
セルローストリアセテート(アセチル置換度:2.65)    6kg
メチレンクロライド                   140kg
上記素材を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解、濾過した。これに10kgの上記酸化ケイ素分散液を撹拌しながら加えて、さらに30分間撹拌した後、濾過し、添加液を調製した。
【0095】
Figure 2004010958
溶剤を密閉容器に投入し、攪拌しながら素材を投入し、加熱、撹拌しながら、完全に溶解、混合した。ドープを流延する温度まで下げて一晩静置し、脱泡操作を施した後、溶液を安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過して、ドープ原液を調製した。
【0096】
ついで、上記ドープ原液100kgあたり、上記添加液を2kgの割合で添加し、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機H−Mixer、SWJ)で十分混合した後、濾過してドープ液を調製した。
【0097】
〔セルロースエステルフィルムの作製〕
上記で調製したドープ液を用いて下記のようにしてセルロースエステルフィルムを作製した。
【0098】
(セルロースエステルフィルムの作製)
濾過したドープ液を、ベルト流延装置を用い、ドープ温度35℃で30℃のステンレスバンド支持体上に均一に流延した。その後、剥離可能な範囲まで乾燥させた後、ステンレスバンド支持体上からウェブを剥離した。このときのウェブの残留溶媒量は35%であった。
【0099】
ステンレスバンド支持体から剥離した後、幅方向に保持しながら115℃で乾燥させた後、幅保持を解放して、ロール搬送しながら120℃の乾燥ゾーンで乾燥を終了させ、フィルム両端に幅10mm、高さ5μmのナーリング加工を施して、膜厚80μmのセルロースエステルフィルムを作製した。
【0100】
《TiO:高屈折率薄膜の形成》
(試料1の作製)
上記作製した基材表面に、図2に記載の大気圧プラズマ処理装置において、本発明に係る炭素除去装置を使用しないで、プラズマ放電処理を連続して行い、100nmの高屈折薄膜を有する試料1を作製した。
【0101】
〈反応ガス条件〉
ガス種A(放電ガス):ヘリウムガス80.0体積%、酸素ガス0.5体積%ガス種B(反応性ガス):テトライソプロポキシチタン0.1体積%をヘリウムガス19.4質量%に混合してリンテックス製気化器により気化させた。
【0102】
〈ガスの供給方法〉
はじめに、図2における放電ガス供給管5よりガス種Aを導入し、一方反応性ガス供給管6よりガス種Bを導入しながら、アース電極3と印加電極2a、2bに、高周波電源15として、パール工業製高周波電源より、周波数2MHz、放電出力が10W/cmで印加した。ここで、アース電極3と印加電極2a、2bとの間隙は、1mmに設定して行った。
【0103】
次いで、連続処理に入り、ガス濃度検出部11で、排出されたガスの成分測定を行い、上記反応条件に記載の各成分組成からの差異を検出して、放電ガス供給管5及び反応性ガス供給管6に装備した各バルブ7a、7bを操作して、上記反応ガス組成となるように適宜制御した。なお、ガス種A(放電ガス)のガス濃度検出は、日本電子社製ガスクロマトグラフ質量計(JMS−Gcmate)を用いて行い、また、ガス種B(反応性ガス)のガス濃度検出は、フーリエ変換赤外分光分析装置(島津製作所製FTIR−8300)を用いて行った。
【0104】
なお、薄膜の膜形成速度(nm/sec)は、上記ガス濃度組成の制御が適正に行われる条件を予め求め、その条件で行った。
【0105】
(試料2〜7の作製)
上記試料1の作製において、図5に記載の構成からなる炭素除去装置を用いた以外は同様にし、炭素除去処理を行った後のガス中の炭素不純物含有濃度が表1に記載の濃度となるように条件を適宜調整して試料2〜7を作製した。
【0106】
炭素除去装置において、圧縮機102は15MPa、170℃の条件で、油分離フィルター104は、15MPa、30℃で、又微量不純物吸着塔109は、活性炭を用いて、4基を直列に配置した。
【0107】
なお、炭素除去処理を行った後のガス中の炭素不純物含有濃度の所定の条件への制御は、コールドトラップ(冷却容器)100の冷却温度をコンロトール(温度を低くすると、炭素不純物の除去率が高くなる)したり、あるいは微量不純物吸着塔109の吸着面積に対するガスの供給量をコントロール(ガス供給量を少なくすると、炭素不純物の除去率が高くなる)して行った。
【0108】
《高屈折率薄膜を形成した試料の評価》
(屈折率の測定)
試料1〜7について、形成した薄膜の屈折率の測定を、自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて行った。
【0109】
(異物故障の評価)
10時間連続処理した後、各試料表面をルーペを用いて10cm×10cm観察し、異物故障の数を計測し、下記の基準に則り評価を行った。
【0110】
◎:異物故障数が、2個未満である
○:異物故障数が、2個以上5個未満である
△:異物故障数が、5個以上10個未満である
×:異物故障数が、10個以上である
以上により得られた結果を表1に示す。
【0111】
【表1】
Figure 2004010958
【0112】
表1より明らかなように、本発明に係る炭素除去装置を用いた試料は速い製膜速度で、高屈折率の薄膜を形成することができ、更に異物による故障の発生が低減されていることが判る。更に、本発明の効果は、炭素除去処理を行った後の排出ガスの炭素濃度を1000ppm以下、特には100ppm以下に制御して行うことにより、その効果がより一層発揮されていることが判る。
【0113】
また、比較例である試料1の屈折率の低下は、循環ガス中の不純物に含有される炭素濃度の上昇に伴い薄膜中への炭素原子の取り込みによる低下と推測している。
【0114】
実施例2
上記実施例1において、反応ガスを下記の内容に変更した以外は同様にして、炭素除去を行った後のガス中の炭素不純物含有濃度が表2に記載の濃度となるように条件を適宜調整して、厚さ100nmの酸化ケイ素薄膜を有する試料11〜16を作製した。なお、試料11は、本発明に係る炭素除去装置を用いない水準である。
【0115】
(反応ガス条件)
ガス種A(放電ガス):ヘリウムガス80.0体積%、酸素ガス1.0体積%ガス種B(反応性ガス):テトラエトキシシラン0.1体積%をヘリウムガス18.9質量%に混合してリンテックス製気化器により気化させた。
【0116】
(各試料の評価)
上記作製した各試料について、実施例1に記載の方法で異物故障の評価と、下記の方法に従って、膜硬度の測定を行い、得られた結果を表2に示す。
【0117】
〈膜硬度の測定〉
JIS K 5400の鉛筆硬度試験に準じ、9H〜6Bの鉛筆を用意して試料の薄膜形成面に傷を付けるように描いて、傷が付きはじめる鉛筆の硬度を求めた。評価基準は、硬い順に9H、8H、7H、6H、5H、4H、3H、2H、H、F、HB、B、2B、3B、4B、5B、6Bである。鉛筆硬度が4H以上であれば実技上問題ないレベルと判断した。
【0118】
【表2】
Figure 2004010958
【0119】
表2より明らかなように、本発明に係る炭素除去装置を用いた試料は速い製膜速度で、高い硬度を有する酸化ケイ素薄膜を形成することができ、更に異物による故障の発生が低減されていることが判る。更に、本発明の効果は、炭素除去処理を行った後の排出ガスの炭素濃度を1000ppm以下、特には100ppm以下に制御して行うことにより、その効果がより一層発揮されていることが判る。
【0120】
また、比較例である試料11の膜硬度の低下は、循環ガス中の不純物に含有される炭素濃度の上昇に伴い薄膜中への炭素原子の取り込みによる低下と推測している。
【0121】
【発明の効果】
本発明により、高屈折率で、優れた表面硬度を有し、かつ薄膜形成速度の速い、炭素原子を含む化合物を含有する反応性ガスを用いた循環式の薄膜形成方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る大気圧プラズマ処理装置の全体構成の一例を示す概略図である。
【図2】本発明に係る大気圧プラズマ処理装置の全体構成の他の一例を示す概略図である。
【図3】本発明に係る大気圧プラズマ処理装置のガス導入部及び電極部の一例を示す拡大断面図である。
【図4】本発明で用いることのできる高圧用の印加電極の一例を示す。
【図5】本発明で用いることのできる炭素除去装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
1 反応容器
2a、2b 印加電極
3 アース電極
4 基材
5 放電ガス供給管
6 反応性ガス供給管
7a、7b バルブ
8 ガス循環路
9 ガス排出部
10 炭素除去装置
11 ガス濃度検出部
12 微粒子除去部
13 水分除去部
14 ポンプ
15 高周波電源
16 アース
A、B、C 金属母体
A′、B′、C′ 誘電体
100 コールドトラップ
101 排出ガス
102 圧縮機
103 冷却機
104 油分離フィルター
105 モレキュラシーブ
106 熱交換器
107 冷媒
108 エアーコンデンサー
109 微量不純物吸着塔
110 高純度ガス

Claims (10)

  1. 大気圧もしくはその近傍の圧力下で、密閉された反応容器内に設けた対向する電極間の放電空間に、炭素原子を含む化合物を含有するガスを供給し、前記放電空間に高周波電圧を印加することにより前記ガスを励起し、基材を励起したガスに晒すことにより、前記基材上に薄膜を形成する薄膜形成方法において、前記反応容器から排出される排出ガスに炭素除去処理を施し、前記炭素除去処理を施した排出ガスを、ふたたび前記放電空間に供給することを特徴とする薄膜形成方法。
  2. 前記炭素除去処理を行った後の排出ガスの炭素濃度が1000ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成方法。
  3. 前記炭素除去処理を行った後の排出ガスの炭素濃度が100ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成方法。
  4. 前記炭素除去処理を行った後の排出ガス中の前記炭素原子を含む化合物の濃度を検出し、前記検出した濃度に応じて前記炭素原子を含む化合物を含有する反応性ガスの供給量を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
  5. 前記対向する電極が、平行に配置された印加電極とアース電極であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
  6. 前記炭素除去処理が、冷却凝縮手段、圧縮手段及び吸着手段により行われることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
  7. 前記炭素除去処理を行った後の排出ガス中の炭素原子を含む化合物の濃度の検出手段が、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)、又はガスクロマトグラフ−質量分析計(GC−MS)であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
  8. 前記反応容器から排出される排出ガスの水分除去手段又は微粒子除去手段を有していることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
  9. 前記排出ガス流量に対する反応性ガスの供給量比率が、0.01〜1.0体積%であることを特徴とする請求項4〜8のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
  10. 前記炭素原子を含む化合物が、金属アルコキシド、アルキル化金属、及び金属錯体から選ばれる少なくとも1つの有機金属化合物であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
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