JP2004061686A - マゼンタトナー - Google Patents
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Abstract
【解決手段】結着樹脂とマゼンタ顔料を含有するマゼンタトナー粒子を有するマゼンタトナーであり、該マゼンタ顔料がC.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントバイオレット19及びC.I.ピグメントレッド185からなるマゼンタトナー。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法等によって形成される静電潜像を現像するためのマゼンタトナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真装置や静電記録装置等の画像形成装置において、感光体上に形成される静電潜像は、先ず、トナーにより現像される。次いで、形成されたトナー像は、必要に応じて紙等の転写材上に転写された後、加熱、加圧または溶剤蒸気などの種々の方式により定着される。
このような画像形成装置において、デジタルフルカラー複写機やデジタルフルカラープリンターが実用化されてきている。デジタルフルカラー複写機では、カラー画像原稿を、ブルー、グリーン及びレッドの各フィルターで色分解した後、オリジナルのカラー原稿に対応した20〜70μmのドット径からなる静電潜像をイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各トナーを用い、減色混合作用を利用してフルカラー画像を形成している。
近年、このフルカラー画像の高画質化、高精細化への要求はますます高くなってきている。特に、色の再現性を高めるために、インキにより印刷と同等の色相に印刷できることが望まれている。これまで、マゼンタトナー用の着色剤としては、キナクリドン系顔料、チオインジゴ系顔料、β−オキシナフトエ酸アニリド系顔料等の有機顔料が賞用されている。これらの中でも、耐候性、耐熱性及び透明性に優れている点から、キナクリドン系顔料が広く用いられている。このキナクリドン系顔料は、得られるトナーの特性を向上させるために、キナクリドン系顔料の2種の併用又は他のマゼンタ顔料と併用することも検討されている。
【0003】
特開平10−312088号公報には、C.I.ピグメントレッド122とC.I.ピグメントレッド57:1を併用したマゼンタトナーが、特開2000−181144号公報には、C.I.ピグメントレッド122と少なくとも一種の負帯電性または弱正帯電性の赤色顔料とを併用したマゼンタトナーが、特開2002−91086号公報には、キナクリドン系顔料とナフトールAS系顔料またはβ−ナフトール系のレーキ顔料とを併用するマゼンタトナーが記載されている。しかしながら、これらのトナーは、画像形成装置において、トナー粒子間の接触、供給ロールと現像ロール間、現像ロールと感光体間等の様々な状態で応力が掛かったときに、トナーが割れることがあり、これにより流動性が低下したり、印字濃度が低下したりする問題がある。更に、特開平10−312088号公報及び特開2002−91086号公報の実施例で使用されているC.I.ピグメントレッド57:1は耐候性が悪く、得られた画像が退色することがあり、特開2000−181144号公報及び特開2002−91086号公報の実施例で使用されているC.I.ピグメントレッド5やC.I.ピグメントレッド209は、化合物中に塩素を含有するために、画像が形成された紙などの転写材を焼却する際にダイオキシンを発生することがあり環境問題を引き起こす恐れがある。
【0004】
特開平10−123760号公報には、C.I.ピグメントレッド122とC.I.ピグメントバイオレット19の固溶体顔料又はC.I.ピグメントレッド202とC.I.ピグメントバイオレット19の固溶体顔料を含有するマゼンタトナーが開示されている。しかし、このトナーでは印字濃度が低くなることがあり、同じ濃度で印刷するためには顔料を多量に使用する必要が生じ、そのためにコストアップするのみでなく、定着性が低下することがある。
特開2001−117263号公報には、C.I.ピグメントレッド185とC.I.ピグメントレッド122とを併用したマゼンタトナーが開示されているが、このトナーは顔料の分散が悪く、印字濃度が低下することがある。
特開2002−156795号公報には、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントバイオレット19及びC.I.ピグメントレッド150を含有するマゼンタトナーが開示されている。しかしながら、このトナーは、印字濃度が低く、カブリが発生することがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、印字濃度が高く、カブリの発生がなく、インキ印刷と同等の色相を再現できるマゼンタトナーを提供することにある。画像形成装置内でトナーが割れて、流動性が低下することがなく、印字により得られた画像が退色することがなく、更に、画像が形成された転写材を焼却しても環境問題を引き起こす恐れの少ないマゼンタトナーを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、この目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、結着樹脂とマゼンタ顔料とを含有するマゼンタトナー粒子を有するマゼンタトナーにおいて、マゼンタ顔料として複数種の顔料を用いることにより、上記目的が達成されることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば、結着樹脂とマゼンタ顔料とを含有するマゼンタトナー粒子を有するマゼンタトナーであり、該マゼンタ顔料がC.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントバイオレット19及びC.I.ピグメントレッド185からなるマゼンタトナーが提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
マゼンタトナー粒子は、結着樹脂とマゼンタ顔料とを必須成分として含有している。
【0008】
結着樹脂の具体例としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の従来からトナーに広く用いられている樹脂を挙げることができる。
【0009】
本発明に用いるマゼンタ顔料は、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントバイオレット19及びC.I.ピグメントレッド185からなる。この3種の顔料からなるマゼンタ顔料を使用することによって、印字濃度が高く、インキ印刷のマゼンタと同等色相の画像を得られるマゼンタトナーを得ることができる。また、顔料中に塩素を含有しないので、マゼンタトナーにより画像が形成された紙などの転写材を焼却しても環境問題を引き起こす恐れが少ない。
【0010】
C.I.ピグメントバイオレット19は、C.I.ピグメントレッド122と混晶を形成させて用いるのが、耐候性及び着色濃度を高める上で好ましい。C.I.ピグメントバイオレット19とC.I.ピグメントレッド122との混晶は、例えば、混晶成分を硫酸またはその他の適当な溶剤から同時に再結晶させ、必要によっては塩磨砕した後に溶剤で処理する米国特許第3160510号公報に記載の方法や、置換されたジアミノテレフタル酸混合物の環化後に溶剤で処理するドイツ特許出願公告1217333号公報に記載の方法により製造することができる。
また、C.I.ピグメントレッド122とC.I.ピグメントバイオレット19との使用割合は、通常95:5〜60:40、好ましくは90:10〜70:30、更に好ましくは80:20〜75:25である。
C.I.ピグメントレッド122とC.I.ピグメントバイオレット19との混晶に対する、C.I.ピグメントレッド185の使用割合は、通常90:10〜30:70、好ましくは80:20〜40:60、更に好ましくは70:30〜50:50である。
このマゼンタ顔料の量は、3種の合計で、結着樹脂100重量部に対して、通常1〜10重量部である。
【0011】
本発明では、マゼンタトナー粒子に帯電制御樹脂を更に含有させることが好ましい。帯電制御樹脂は、特開昭63−60458号公報、特開平3−175456号公報、特開平3−243954号公報、特開平11−15192号公報などの記載に準じて製造される4級アンモニウム(塩)基含有共重合体や、特開平1−217464号公報、特開平3−15858号公報などの記載に準じて製造されるスルホン酸(塩)基含有共重合体を用いる。
こうした帯電制御樹脂は、結着樹脂との相溶性が高く、無色であり高速でのカラー連続印刷においても帯電性が安定したトナーを得ることができるので好ましい。
【0012】
帯電制御樹脂の重量平均分子量は、通常2,000〜50,000、好ましくは4,000〜40,000、さらに好ましくは6,000〜30,000である。重量平均分子量がこの範囲にあることにより、トナーの再度や透明性を維持することができる。
帯電制御樹脂のガラス転移温度は、通常40〜80℃、好ましくは45〜75℃、さらに好ましくは45〜70℃である。ガラス転移温度がこの範囲にあることにより、トナーの保存性と定着性をバランスよく向上させることができる。
帯電制御樹脂の量は、結着樹脂100重量部に対して、通常0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部である。
【0013】
本発明では、マゼンタトナー粒子に更に離型剤を含有させることが好ましい。離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリブチレンなどのポリオレフィンワックス類;キャンデリラ、カルナウバ、ライス、木ロウ、ホホバなどの植物系天然ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラクタムなどの石油系ワックスおよびその変性ワックス;フィッシャートロプシュワックスなどの合成ワックス;ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ジペンタエリスリトールヘキサミリステートなどの多官能エステル化合物;などが挙げられる。
これらは1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
これらの離型剤のうち、合成ワックス、末端変性ポリオレフィンワックス類、石油系ワックス、多官能エステル化合物が好ましい。多官能エステル化合物のなかでも示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、昇温時の吸熱ピーク温度が30〜200℃、好ましくは40〜160℃、更に好ましくは50〜120℃の範囲にあるペンタエリスリトールエステルや、同吸熱ピーク温度が50〜80℃の範囲にあるジペンタエリスリトールエステルが、トナーとしての定着−剥離性バランスの面で特に好ましい。昇温時の吸熱ピーク温度が30〜200℃の範囲にあるペンタエリスリトールエステルや同吸熱ピーク温度が50〜80℃の範囲にあるジペンタエリスリトールエステルなどの多官能エステル化合物の中でも、分子量が1000以上であり、25℃でスチレン100重量部に対し5重量部以上溶解し、酸価が10mg/KOH以下であるものは定着温度低下に顕著な効果を示すので更に好ましい。吸熱ピーク温度は、ASTM D3418−82によって測定された値である。
上記離型剤の量は、結着樹脂100重量部に対して、通常0.5〜50重量部、好ましくは1〜20重量部である。
【0015】
本発明で用いるマゼンタトナー粒子は、前記結着樹脂とマゼンタ顔料と、必要に応じて含有される帯電制御樹脂と離型剤によって構成され粒子を形成したものである。
【0016】
マゼンタトナー粒子は、粒子の内部(コア層)と外部(シェル層)に異なる二つの重合体を組み合わせて得られる、所謂コアシェル型(または、「カプセル型」ともいう。)の粒子とすることができる。コアシェル型粒子では、内部(コア層)の低軟化点物質をそれより高い軟化点を有する物質で被覆することにより、定着温度の低温化と保存時の凝集防止とのバランスを取ることができるので好ましい。
通常、このコアシェル型粒子のコア層は前記結着樹脂、マゼンタ顔料、帯電制御樹脂及び離型剤で構成され、シェル層は結着樹脂のみで構成される。
【0017】
コアシェル型粒子の場合、コア粒子の体積平均粒径は3.0〜12.0μm、好ましくは4.0〜10.0μm、更に好ましくは5.0〜8.0μmである。また、体積平均粒径(dv)と個数平均粒径(dp)の比である粒径分布(dv/dp)が1.0〜1.3であると好ましく、1.0〜1.2であると更に好ましい。
【0018】
コアシェル型粒子のコア層とシェル層との重量比率は特に限定されないが、通常80/20〜99.9/0.1で使用される。
シェル層の割合を上記割合にすることにより、トナーの保存性と低温での定着性を兼備することができる。
【0019】
コアシェル型粒子のシェル層の平均厚みは、通常0.001〜1.0μm、好ましくは0.003〜0.5μm、より好ましくは0.005〜0.2μmであると考えられる。厚みが大きくなると定着性が低下し、小さくなると保存性が低下する恐れがある。なお、コアシェル型のトナー粒子を形成するコア粒子はすべての表面がシェル層で覆われている必要はなく、コア粒子の表面の一部がシェル層で覆われていればよい。
コアシェル型粒子のコア粒子径およびシェル層の厚みは、電子顕微鏡により観察できる場合は、その観察写真から無作為に選択した粒子の大きさおよびシェル厚みを直接測ることにより得ることができ、電子顕微鏡でコアとシェルとを観察することが困難な場合は、コア粒子の粒径およびトナー製造時に用いたシェルを形成する単量体の量から算定することができる。
【0020】
マゼンタトナー粒子は、体積平均粒径(dv)が3.0〜12.0μm、好ましくは4.0〜10.0μm、更に好ましくは5.0〜8.0μmである。粒径が小さいと流動性が低下して、転写性が低下したり、カスレが発生したりし、また印字濃度が低下する。逆に大きいとカブリやトナー飛散が発生し、画像の解像度が低下する。
体積平均粒径(dv)と個数平均粒径(dp)の比である粒径分布(dv/dp)が1.0〜1.3であり、1.0〜1.2であると更に好ましい。粒径分布が大きいとカスレが発生したり、転写性、印字濃度及び解像度の低下が起こったりする。
マゼンタトナー粒子の体積平均粒径及び粒径分布は、例えば、マルチサイザー(ベックマン・コールター社製)などを用いて測定することができる。
【0021】
マゼンタトナー粒子は、粒子の長径(rl)を短径(rs)で割って得られる平均球形度(rl/rs)1〜1.3であり、1.0〜1.2であるとより好ましく、1.0〜1.15であると更に好ましい。平均球形度が1.3より大きくなると、転写性が低下することがある。
この平均球形度は、例えば、転相乳化法、溶解懸濁法及び重合法等を用いることにより容易に上記範囲とすることができる。
【0022】
本発明のマゼンタトナーは、上述したマゼンタトナー粒子のみで構成してもよいが、クリーニング性、帯電性、流動性及び保存性を向上させるために外添剤を含有することが好ましい。外添剤は、ヘンシェルミキサーなどの混合機に入れて撹拌することによって、マゼンタトナー粒子の表面に付着または一部埋め込ませる。
外添剤としては、六面体の無機微粒子を含有することが好ましい。六面体の無機微粒子は、その形状が立方体や直方体などの六面体をなすものであるが、六面体の頂点が丸みを帯びるなど多少変形していてもよい。また、六面体を構成する稜のうち、最も長い稜と最も短い稜との比が、1〜2であると好ましく、その比が1である立方体であると更に好ましい。
【0023】
六面体の無機微粒子は、その化学構造において、特に限定がないが、代表的なものとして、炭酸カルシウムが挙げられる。
六面体の無機微粒子の体積平均粒径は特に限定されないが、通常、0.05〜10μmである。体積平均粒径が小さいとクリーニング性が低下し、逆に大きいと流動性が低下してカスレが発生したり、画像欠損を引き起こしたりすることがある。
【0024】
これらの六面体の無機微粒子は、疎水化処理されているものが好ましい。疎水化処理された六面体の無機微粒子は、一般に市販されているが、未処理の無機微粒子をシランカップリング剤、シリコーンオイル、脂肪酸や脂肪酸金属石鹸などで疎水化処理するなどの方法によっても得ることができる。
【0025】
六面体の無機微粒子の添加量は特に限定されないが、マゼンタトナー粒子100重量部に対して、通常0.05〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部である。この量が少ないとクリーニング性を良くできないことがあり、逆に多くなると流動性が低下しカスレが発生することがある。
【0026】
六面体の無機微粒子以外に、外添剤として、その形状が球状や不定形の微粒子を含有することが好ましい。形状が球状や不定形の微粒子としては、無機微粒子と有機微粒子の何れを使用してもよいが、トナーの流動性や帯電性を制御する点から無機微粒子が好ましい。これらの微粒子は、1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
球状や不定形の無機微粒子としては、例えば、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムなどが挙げられるが、これらの中でもシリカが印刷時のカブリが少ないので好ましい。
無機微粒子の体積平均粒径は、特に限定されないが、通常5〜500nm、好ましくは5〜100nm、更に好ましくは7〜50nmである。体積平均粒径が小さいと低温低湿時にチャージアップして印字濃度が低下し、逆に大きいと流動性が低下してカスレ易くなることがある。無機微粒子の体積平均粒径は、例えば、粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、その写真を画像処理解析装置((株)ニレコ製、商品名「ルーゼックスIID」)を用いて測定することができる。
また、これらの無機微粒子は、メタノール法で測定される疎水化度が30〜90%であるものが好ましい。
無機微粒子の添加量は特に限定されないが、マゼンタトナー粒子100重量部に対して、通常0.1〜5重量部、好ましくは0.3〜3重量部である。この量が少ないと流動性が低下してカスレが発生することがあり、逆に多くなると流動性が良くなり過ぎてカブリが発生することがある。
【0028】
球状や不定形の有機微粒子は特に限定されないが、粒子同士のブロッキングを抑制するという点から、微粒子を構成する化合物のガラス転移温度又は融点が、80〜250℃のものが好ましく、90〜200℃のものが更に好ましい。
有機微粒子を構成する化合物として、メタクリル酸メチル重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。
有機微粒子の体積平均粒径は特に限定されないが、通常0.1〜1μm、好ましくは0.1〜0.8μmである。また、その球形度(rl/rs)も特に限定されないが、通常1.0〜1.3、好ましくは1.0〜1.2である。体積平均粒径が小さいとフィルミングの発生が防止できないことがあり、逆に大きいと流動性が低下することがある。また、球形度が大きいと転写性が低下することがある。
有機微粒子の添加量は特に限定されないが、マゼンタトナー粒子100重量部に対して、通常0.05〜1重量部、好ましくは0.1〜0.5重量部である。この量が少ないとフィルミングが起こり易く、逆に多くなると流動性が悪くなりカスレ易くなる恐れがある。
【0029】
本発明では、マゼンタトナー粒子は、その製法によって特に限定されず、(1)粉砕法、(2)乳化重合法や懸濁重合法などの重合法、(3)溶解懸濁法等により製造することができる。これらの中でも、高解像度の画質や印刷の高速化に対応できるトナーを得る観点から重合法が好ましく、特に懸濁重合法により得られた実質的に球状のマゼンタトナー粒子が好ましい。粒子を球状にすることにより、画像形成装置内でトナーが割れて、流動性が低下することが無くなる。
【0030】
以下、懸濁重合法によるマゼンタトナー粒子の製造方法について説明する。
懸濁重合法では、結着樹脂原料である重合性単量体中にマゼンタ顔料、帯電制御樹脂、離型剤等を溶解あるいは分散させ、分散安定剤を含有する水系分散媒体中に懸濁させ、重合開始剤を添加後、所定温度まで加温して重合を開始し、重合終了後に濾過、洗浄、脱水、乾燥することによりマゼンタトナー粒子を製造する。
【0031】
本発明では、予めマゼンタ顔料と帯電制御樹脂を混合して製造した帯電制御樹脂組成物を使用することが好ましい。その際、マゼンタ顔料は、帯電制御樹脂100重量部に対して、通常10〜200重量部、好ましくは20〜150重量部である。
帯電制御樹脂組成物の製造には、有機溶剤を用いることが好ましい。有機溶剤を用いることで、帯電制御樹脂が柔らかくなり、マゼンタ顔料と混合し易くなる。有機溶剤を用いない場合は、樹脂が柔らかくなる程度の温度まで、加温して混合する必要がある。有機溶剤を用いる場合、特に有機溶剤の沸点が低いときには、加温すると有機溶剤が蒸発することがあるので、室温で、あるいは冷却して行なう方が好ましい。尚、トナー中に有機溶剤が残存していると臭気の問題が発生することがあるので、有機溶剤は、帯電制御樹脂組成物の製造過程又はトナーの製造過程のいずれかで除去されることが好ましい。有機溶剤を用いない場合は、樹脂が柔らかくなる程度の温度まで、加温して混合する必要がある。
有機溶剤の量は、帯電制御樹脂100重量部に対して0〜100重量部、好ましくは5〜80重量部、さらに好ましくは10〜60重量部であり、この範囲にあると分散性と加工性のバランスが優れる。また、このとき、有機溶剤は、一度に全量を添加しても、あるいは混練状態を確認しながら、何回かに分割して添加しても良い。
【0032】
有機溶剤を用いる場合は、その溶解度係数(以下、SP値という。)が8〜15[cal/cm3]1/2であり、沸点が50〜150℃の範囲のものが好ましい。SP値が8[cal/cm3]1/2より小さいと極性が小さくなって帯電制御樹脂を溶解させることができないことがあり、また逆にSP値が15[cal/cm3]1/2より大きいと極性が高くなって帯電制御樹脂を溶解させることができないことがある。一方、沸点が50℃より低いと混練により発生する熱で有機溶剤が蒸発することがあり、逆に150℃より高いと混練後、有機溶剤を除去することが困難になることがある。
有機溶剤としては、具体的に(SP値/沸点)、メタノール(14.5/65℃)、エタノール(10.0/78.3℃)、プロパノール(11.9/97.2℃)、ジエチルケトン(8.8/102℃)、ジ−n−プロピルケトン(8.0/144℃)、ジ−i−プロピルケトン(8.0/124℃)、メチル−n−プロピルケトン(8.3/102℃)、メチル−i−プロピルケトン(8.5/95℃)、メチル−n−ブチルケトン(8.5/127℃)、メチル− iso−ブチルケトン(8.4/117℃)、トルエン(8.9/110℃)、テトラヒドロフラン(9.1/65℃)、メチルエチルケトン(9.3/80℃)、アセトン(9.9/56℃)、シクロヘキサノン(9.9/156℃)などが挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いても良い。この中でも帯電制御樹脂への溶解性や混練後の除去を考慮して、ジエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルエチルケトン/メタノール混合溶媒、トルエン/エタノール混合溶媒及びトルエン/プロパノール混合溶媒が好ましい。
【0033】
混合は、ロール、プラスチコーダー(ブラベンダー社製)、ラボプラストミル(東洋精機社製)、ニーダー、一軸押出機、二軸押出機、バンバリー、ブス・コニーダー等を用いて行うことができる。有機溶剤を用いる場合は、臭気や毒性の問題が有るので、有機溶剤が漏れない密閉系の混練機が好ましい。
また、混合機にはトルクメーターが設置されていることが、トルクのレベルで分散性を管理することができるので好ましい。
帯電制御樹脂組成物の量は、後述する結着樹脂を得るための重合性単量体100重量部に対して、通常、2〜20重量部、好ましくは3〜15重量部である。これが少ないと、帯電制御が不充分で、カブリが生じることがあり、逆に多いと、高温高湿下で吸湿して、カブリが生じることがある。
【0034】
結着樹脂を得るための重合性単量体として、モノビニル単量体、架橋性単量体、マクロモノマー等を挙げることができる。この重合性単量体が重合され、結着樹脂成分となる。
モノビニル単量体としては、具体的にはスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボニル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸の誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン等のモノオレフィン単量体;等が挙げられる。
モノビニル単量体は、単独で用いても、複数の単量体を組み合わせて用いても良い。これらモノビニル単量体のうち、芳香族ビニル単量体単独、芳香族ビニル単量体と(メタ)アクリル酸の誘導体との併用などが好適に用いられる。
【0035】
モノビニル単量体と共に、架橋性単量体及び重合体を用いるとホットオフセットが有効に改善される。架橋性単量体は、2個以上のビニル基を有する単量体である。具体的には、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、およびこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等のジエチレン性不飽和カルボン酸エステル;N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル等のビニル基を2個有する化合物、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルやトリメチロールプロパントリアクリレート等のビニル基を3個以上有する化合物等を挙げることができる。架橋性重合体は、重合体中に2個以上のビニル基を有する重合体のことであり、具体的には、分子内に2個以上の水酸基を有するポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル及びポリエチレングリコール等の重合体と、アクリル酸やメタクリル酸等の不飽和カルボン酸単量体を縮合反応することにより得られるエステルを挙げることができる。これらの架橋性単量体及び架橋性重合体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。使用量は、モノビニル単量体100重量部当たり、通常10重量部以下、好ましくは、0.1〜2重量部である。
【0036】
また、モノビニル単量体と共に、マクロモノマーを用いると、保存性と低温での定着性とのバランスが良好になるので好ましい。マクロモノマーは、分子鎖の末端に重合可能な炭素−炭素不飽和二重結合を有するもので、数平均分子量が、通常、1,000〜30,000のオリゴマーまたはポリマーである。数平均分子量が上記範囲にあると、マクロモノマーの溶融性を損なうことなく、定着性および保存性が維持できるので好ましい。
マクロモノマー分子鎖の末端に有る重合可能な炭素−炭素不飽和二重結合としては、アクリロイル基、メタクリロイル基などを挙げることができ、共重合のし易さの観点からメタクリロイル基が好ましい。
【0037】
マクロモノマーは、前記モノビニル単量体を重合して得られる重合体のガラス転移温度よりも、高いガラス転移温度を有する重合体を与えるものが好ましい。本発明に用いるマクロモノマーの具体例としては、スチレン、スチレン誘導体、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を単独でまたは2種以上を重合して得られる重合体、ポリシロキサン骨格を有するマクロモノマーなどを挙げることができるが、その中でも、親水性のもの、特にメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルを単独でまたはこれらを組み合わせて重合して得られる重合体が好ましい。
マクロモノマーを使用する場合、その量は、モノビニル単量体100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好適には0.03〜5重量部、さらに好適には0.05〜1重量部である。マクロモノマーの使用量が上記範囲にあると、保存性を維持したままで、定着性が低下することがないので好ましい。
【0038】
分散安定剤としては、例えば、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなどの硫酸塩;炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;リン酸カルシウムなどのリン酸塩;酸化アルミニウム、酸化チタン等の金属酸化物;などの金属化合物や、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化第二鉄等の金属水酸化物;ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ゼラチン等水溶性高分子;アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を挙げることができ、これらは、単独で用いても、2種類以上を組み合わせても良い。
これらのうち、金属化合物、特に難水溶性の金属水酸化物のコロイドを含有する分散安定剤は、重合体粒子の粒径分布を狭くすることができ、また分散安定剤の洗浄後の残存性が少なく、画像を鮮明に再現できるので好ましい。
【0039】
難水溶性金属水酸化物のコロイドは、その粒径分布において、小粒径側から起算した個数累計が50%である粒径Dp50が0.5μm以下で、90%である粒径Dp90が1μm以下であることが好ましい。コロイドの粒径が大きくなると重合の安定性が崩れ、またトナーの保存性が低下する。
【0040】
分散安定剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部の割合で使用する。この割合が上記範囲にあることで、充分な重合安定性が得られ、重合凝集物の生成が抑制され、所望の粒径のトナーを得ることができるので好ましい。
【0041】
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ジ−t−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の過酸化物類などを例示することができる。また、これら重合開始剤と還元剤とを組み合わせたレドックス開始剤を挙げることができる。
【0042】
こうした中でも特に、使用される重合性単量体に可溶な油溶性の重合開始剤を選択することが好ましく、必要に応じて水溶性の重合開始剤をこれと併用することもできる。上記重合開始剤は、重合性単量体100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜15重量部、更に好ましくは0.5〜10重量部用いる。
重合開始剤は、重合性単量体組成物中に予め添加することができるが、懸濁重合の場合は重合性単量体組成物の液滴形成工程終了後の懸濁液、乳化重合の場合は乳化工程終了後の乳化液に、直接添加することもできる。
【0043】
また、重合に際して、分子量調整剤を使用することが好ましい。分子量調整剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−4−チオール等のメルカプタン類;四塩化炭素、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素類;などを挙げることができる。これらの分子量調整剤は、重合開始前、あるいは重合途中に添加することができる。分子量調整剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の割合で用いられる。
【0044】
上述した、好ましいコアシェル型マゼンタトナー粒子を製造する方法としては、スプレイドライ法、界面反応法、in situ重合法、相分離法などの方法が挙げられる。具体的には、粉砕法、重合法、会合法又は転相乳化法により得られたマゼンタトナー粒子をコア粒子として、それに、シェル層を被覆することによりコアシェル型マゼンタトナー粒子が得られる。この製造方法の中でも、in
situ重合法や相分離法が、製造効率の点から好ましい。
【0045】
in situ重合法によるコアシェル型マゼンタトナー粒子の製造方法を以下に説明する。
コア粒子が分散している水系分散媒体中に、シェルを形成するための重合性単量体(シェル用重合性単量体)と重合開始剤を添加し、重合することでコアシェル型マゼンタトナー粒子を得ることができる。
シェルを形成する具体的な方法としては、コア粒子を得るために行った重合反応の反応系にシェル用重合性単量体を添加して継続的に重合する方法、または別の反応系で得たコア粒子を仕込み、これにシェル用重合性単量体を添加して段階的に重合する方法などを挙げることができる。
シェル用重合性単量体は反応系中に一括して添加しても、またはプランジャポンプなどのポンプを使用して連続的もしくは断続的に添加してもよい。
【0046】
シェル用重合性単量体としては、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートなどのガラス転移温度が80℃を超える重合体を形成する単量体をそれぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0047】
シェル用重合性単量体を添加する際に、水溶性の重合開始剤を添加することがコアシェル型マゼンタトナー粒子を得やすくなるので好ましい。シェル用重合性単量体の添加の際に水溶性重合開始剤を添加すると、シェル用重合性単量体が移行したコア粒子の外表面近傍に水溶性重合開始剤が進入し、コア粒子表面に重合体(シェル)を形成しやすくなると考えられる。
【0048】
水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス−(2−メチル−N−(1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)プロピオンアミド)等のアゾ系開始剤などを挙げることができる。水溶性重合開始剤の量は、シェル用単量体100重量部に対して、通常、0.1〜50重量部、好ましくは1〜30重量部である。
【0049】
【実施例】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、部および%は、特に断りのない限り重量基準である。
本実施例では、以下の方法で評価した。
【0050】
1.マゼンタトナー特性
(1)マゼンタトナー粒子の平均粒径と粒径分布
マゼンタトナー粒子の体積平均粒径(dv)及び粒径分布即ち体積平均粒径と個数平均粒径(dp)との比(dv/dp)は、マルチサイザー(ベックマン・コールター社製)により測定した。このマルチサイザーによる測定は、アパーチャー径:100μm、媒体:イソトンII、濃度10%、測定粒子個数:100000個の条件で行った。
(2)平均球形度
走査型電子顕微鏡でトナーの写真を撮影し、その写真をネクサス9000型のソフトを組み込んだ画像処理装置で読み込み、トナーの長径rlを短径rsで割った値(rl/rs)を測定した。トナーは100個測定し、得られた100個の測定値の平均を計算した。
【0051】
(3)帯電量
温度10℃、湿度20%の(L/L)環境、温度23℃、湿度50%の(N/N)環境、温度35℃、湿度80%の(H/HL)環境下における帯電量を測定した。
トナーの帯電量は、市販の非磁性一成分現像方式のプリンター(沖データ社製、商品名「マイクロライン3010C」)にトナーを入れ、前記環境下で1昼夜放置後、ハーフトーンの印字パターンを5枚印字し、その後、現像ローラ上のトナーを吸引式帯電量測定装置に吸引し、帯電量と吸引量から単位重量当たりの帯電量を測定した。
【0052】
2.画質評価
(1)色調
前述したプリンターに印字用紙をセットし、現像装置にトナーを入れ、温度23℃及び湿度50%の(N/N)環境下で一昼夜放置後、5%濃度でベタ印字を行い、分光色差計(日本電色社製、機種名「SE2000」)でL*a*b*表色系で測定した。JapanColorのマゼンタとの色相角差は、同様にして測定したJapanColor標準用紙の色調とトナーを印字して得られた色調を、L*C*H*表色系の座標として表し、下記式により色相角差ΔHを算出した。
ΔH*=((ΔE*)2−(ΔL*)2−(ΔC*)2)1/2
ここで、 ΔE*:L*a*b*表色系による色差
ΔL*:L*a*b*表色系における二つの物体色の明度指数差
ΔC*:L*a*b*表色系における二つの物体色abクロマの差
を表し、ベタ印字を行ったときの紙面上のトナー付着量は、0.45mg/cm2とした。
(2)印字濃度
前述したプリンターに印字用紙をセットし、現像装置にトナーを入れ、温度35℃及び湿度80%の(H/H)環境下で一昼夜放置後、5%濃度で初期から連続印字を行い、20,000枚目印字時にベタ印字を行い、カラー反射型濃度計(X−ライト社製、機種名「404A」)を用いて、印字濃度を測定した。
【0053】
(3)カブリ
前述したプリンターを用いて、温度35℃及び湿度80%の(H/H)環境下で一昼夜放置後、5%濃度で連続印字を行い、20,000枚印字後に、ベタ印字を行い、印字を途中で停止させ、現像後の感光体上にある非画像部のトナーを粘着テープ(住友スリーエム社製、スコッチメンディングテープ810−3−18)で剥ぎ取り、それを新しい印字用紙に貼り付けた。次に、その粘着テープを貼り付けた印字用紙の色調(B)を、前記分光色差計で測定し、同様にして、粘着テープだけを貼り付けた印字用紙の色調(A)を測定し、それぞれの色調をL*a*b*空間の座標として表し、色差ΔE*を算出して、カブリ値とした。この値の小さい方が、カブリが少ないことを示す。
【0054】
(参考例1)
2,5−ジ−(4−メチルフェニルアミノ)テレフタル酸をリン酸中で環化して、2,9−ジメチルキナクリドン(C.I.ピグメントレッド122)を合成した。得られた2,9−ジメチルキナクリドンのリン酸分散液に水を添加してフィルターで濾別した後、更に水で洗浄した。洗浄した2,9−ジメチルキナクリドンに再び水を添加して、固形分20%の水分散液とした。
同様に2,5−ジ−フェニルアミノテレフタル酸を用いて、固形分20%のキナクリドン(C.I.ピグメントバイオレット19)の水分散液を作製した。
上記固形分20%のジメチルキナクリドン(C.I.ピグメントレッド122)の水分散液325部と固形分20%のキナクリドン(C.I.ピグメントバイオレット19)の水分散液175部にエタノール250部を添加して顔料の混合液とした。この混合液を、冷却管を装備した容器に移し、顔料を磨砕しながら、加熱還流下で5時間反応させた。反応終了後、反応液から顔料を濾別、洗浄、乾燥した後、粉砕して、マゼンタ顔料の混晶を得た。
【0055】
(実施例1)
スチレン82%、アクリル酸ブチル11%及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸7%からなる単量体混合物を重合してなる帯電制御樹脂(重量平均分子量1.8万、ガラス転移温度67℃)100部に、メチルエチルケトン24部、メタノール6部を分散させ、冷却しながらロールにて混練した。帯電制御樹脂がロールに巻き付いたところで、マゼンタ顔料として、参考例で合成した混晶67部とC.I.ピグメントレッド185 33部を徐々に添加して、1時間混練を行い、帯電制御樹脂組成物を製造した。この時、ロール間隙は、初期1mmであり、その後徐々に間隙を広げ、最後は3mmまで広げ、有機溶剤(メチルエチルケトン/メタノール=4/1混合溶剤)は、帯電制御樹脂の混練状態に合わせ何回か追加した。
帯電制御樹脂組成物の一部を取り出した後、トルエンを加えて溶解させ、トルエンの帯電制御樹脂組成物の5%溶液にした。ガラス板上に間隙が30μmのドクターブレードで混合溶液を塗布、乾燥させ、シ−トを作製した。このシートを光学顕微鏡にて観察したところ、100μm平方に存在する、長径が0.2μm以上の着色剤粒子は存在しなかった。
【0056】
イオン交換水250部に塩化マグネシウム(水溶性多価金属塩)9.8部を溶解した水溶液に、イオン交換水50部に水酸化ナトリウム(水酸化アルカリ金属)6.9部を溶解した水溶液を攪拌下で徐々に添加して、水酸化マグネシウムコロイド(難水溶性の金属水酸化物コロイド)分散液を調製した。調整したコロイドの粒径分布を測定したところ、粒径は、D50(個数粒径分布の50%累計値)が0.38μmで、D90(個数粒径分布の90%累計値)が0.82μmであった。
【0057】
スチレン80.5部、アクリル酸ブチル19.5部及びポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業社製、商品名「AA6」)0.25部からなるコア用重合性単量体と、上述した帯電制御樹脂組成物12部、TDM3部及びジペンタエリスリトールヘキサミリステート10部を攪拌、混合して、均一分散し、コア用重合性単量体組成物を得た。
一方、メタクリル酸メチル1部と水100部を超音波乳化機にて微分散化処理して、シェル用重合性単量体の水分散液を得た。シェル用重合性単量体の液滴の粒径は、(SALD2000A型、島津製作所株式会社製)で測定したところ、D90が1.6μmであった。
【0058】
前記により得られた水酸化マグネシウムコロイド分散液に、前記コア用重合性単量体組成物を投入し、液滴が安定するまで攪拌し、そこにt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂社製「パーブチルO」)6部を添加後、エバラマイルダーを用いて15,000rpmの回転数で30分間高剪断攪拌して、更に小さい単量体混合物の液滴を形成させた。このコア用重合性単量体組成物の水分散液を、攪拌翼を装着した反応器に入れ、90℃で重合反応を開始させ、重合転化率がほぼ100%に達したときに、サンプリングし、コアの粒径を測定した。この結果、7.4μmであった。前記シェル用重合性単量体の水分散液、及び蒸留水65部に溶解した2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド(和光純薬社製、商品名「VA−086」)0.2部を反応器に入れた。8時間重合を継続した後、反応を停止し、pH9.5のマゼンタトナー粒子の水分散液を得た。
【0059】
前記により得たマゼンタトナー粒子の水分散液を攪拌しながら、硫酸により系のpHを5以下にして酸洗浄(25℃、10分間)を行い、濾過により水を分離した後、新たにイオン交換水500部を加えて再スラリー化し水洗浄を行った。その後、再度、脱水と水洗浄を数回繰り返し行って、固形分を濾過分離した後、乾燥機にて45℃で2昼夜乾燥を行い、マゼンタトナー粒子を得た。
【0060】
乾燥したマゼンタトナー粒子を取り出し、測定した体積平均粒径(dv)は7.4μmであり、体積平均粒径(dv)/個数平均粒径(dp)は1.23であった。rl/rsは1.1であった。
前記により得られたマゼンタトナー粒子100部に、体積平均粒径0.3μmのキューブ状の炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製、商品名「CUBE−03BHS」)0.3部、疎水化処理された不定形のコロイダルシリカA(日本アエロジル社製、商品名「RX−300」)0.5部、疎水化処理された不定形のコロイダルシリカB(日本アエロジル社製、商品名「RX−50」)2.0部、ヘンシェルミキサーを用いて混合してマゼンタトナーを調製した。
【0061】
(実施例2)
実施例1において、帯電制御樹脂組成物を合成する際に、使用するマゼンタ顔料を混晶50部とC.I.ピグメントレッド185 50重量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてマゼンタトナーを得た。得られたマゼンタトナー粒子の特性、画質評価の結果を表1に示す。
【0062】
(比較例1)
イオン交換水250部に塩化マグネシウム(水溶性多価金属塩)9.8部を溶解した水溶液に、イオン交換水50部に水酸化ナトリウム(水酸化アルカリ金属)6.9部を溶解した水溶液を攪拌下で徐々に添加して、水酸化マグネシウムコロイド(難水溶性の金属水酸化物コロイド)分散液を調製した。調整したコロイドの粒径分布を測定したところ、粒径は、D50(個数粒径分布の50%累計値)が0.38μmで、D90(個数粒径分布の90%累計値)が0.82μmであった。
【0063】
スチレン80.5部及びアクリル酸ブチル19.5部からなる重合性単量体と、マゼンタ顔料としてC.I.ピグメントレッド122 2.5部、C.I.ピグメントバイオレット19 0.625部及びI.ピグメントレッド150 1.875部、サリチル酸金属塩系帯電制御剤(オリエント化学工業社製、商品名「ボントロンE−84」)2部、ペンタエリスリトールテトラステアレート10部及びTDM3部を攪拌、混合して、均一分散し、重合性単量体組成物を得た。
【0064】
前記により得られた水酸化マグネシウムコロイド分散液に、前記重合性単量体組成物を投入し、液滴が安定するまで攪拌し、そこにt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂社製「パーブチルO」)6部を添加後、エバラマイルダーを用いて15,000rpmの回転数で30分間高剪断攪拌して、さらに小さな重合性単量体組成物の液滴を形成させた。この重合性単量体組成物の水分散液を、攪拌翼を装着した反応器に入れ、90℃で重合反応を開始させ、8時間重合を継続した後、反応を停止し、pH9.5のマゼンタトナー粒子の水分散液を得た。
【0065】
前記により得たマゼンタトナー粒子の水分散液を攪拌しながら、硫酸により系のpHを5以下にして酸洗浄(25℃、10分間)を行い、濾過により水を分離した後、新たにイオン交換水500部を加えて再スラリー化し水洗浄を行った。その後、再度、脱水と水洗浄を数回繰り返し行って、固形分を濾過分離した後、乾燥機にて45℃で2昼夜乾燥を行い、マゼンタトナー粒子を得た。
【0066】
乾燥したマゼンタトナー粒子を取り出し、測定した体積平均粒径(dv)は7.6μmであり、体積平均粒径(dv)/個数平均粒径(dp)は1.26であった。rl/rsは1.2であった。
前記により得られたマゼンタトナー粒子100部に、疎水化処理された不定形のコロイダルシリカ(日本アエロジル社製、商品名「RX−200」)0.6部を添加し、ヘンシェルミキサーを用いて混合してマゼンタトナーを調製した。
【0067】
【表1】
【0068】
表1のトナーの評価結果から、以下のことがわかる。
マゼンタ顔料として、本発明で規定したものと異なるC.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントバイオレット19及びI.ピグメントレッド150を使用した比較例1のマゼンタトナーは、インキにより印刷されたJapanColor標準用紙のマゼンタとは色相が離れており、更に印字濃度が低く、カブリが発生し易いことがわかる。
これに対して、本発明の実施例1〜2のマゼンタトナーは、20,000枚の耐久印字を行なった後でも、H/H環境及びL/L環境のいずれにおいても、JapanColor標準用紙のマゼンタ近い色相をしており、印字濃度が高く、カブリが発生し難いことがわかる。
【0069】
【発明の効果】
本発明のマゼンタトナーは、印字濃度が高く、カブリの発生がなく、インキ印刷と同等の色相を有してしている。また、画像形成装置内でトナーが割れて、流動性が低下することがなく、印字により得られた画像が退色することがない。更に、画像が形成された転写材を焼却しても環境問題を引き起こす恐れが少ない。
Claims (5)
- 結着樹脂とマゼンタ顔料とを含有するマゼンタトナー粒子を有するマゼンタトナーであり、該マゼンタ顔料がC.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントバイオレット19及びC.I.ピグメントレッド185からなるマゼンタトナー。
- マゼンタトナー粒子が、更に帯電制御樹脂を含有する請求項1記載のマゼンタトナー。
- マゼンタ顔料が、C.I.ピグメントレッド122とC.I.ピグメントバイオレット19との混晶及びC.I.ピグメントレッド185を混合してなるものである請求項1及び2記載のマゼンタトナー
- C.I.ピグメントレッド122とC.I.ピグメントバイオレット19との混晶及びC.I.ピグメントレッド185の使用重量比が80:20〜30:70である請求項3記載のマゼンタトナー。
- マゼンタトナー粒子がコアシェル構造を有するものである請求項1〜4記載のマゼンタトナー。
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