JP2004059364A - 砒化ガリウム単結晶の製造方法 - Google Patents

砒化ガリウム単結晶の製造方法 Download PDF

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Seiji Mizuniwa
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Abstract

【課題】LEC法で製造するGaAs単結晶の成長における液体封止剤の失透の発生を解消し、種付けを容易、且つ再現性良く実施することを可能とする。
【解決手段】不活性ガスを充填した耐圧容器内に収容され加熱されたるつぼ5に、原料融液と液体封止剤を収納し、原料融液に種結晶11を接触させ、この種結晶を引き上げることで単結晶を成長させるLEC法による砒化ガリウム単結晶の製造方法において、上記液体封止剤として、三酸化硼素を主体とし、これに三酸化ガリウム、三酸化砒素よりなる群から選択された一種以上を添加した液体封止剤を用い、その三酸化硼素中の含有−OH基量を100ppm未満に定めて、砒化ガリウム融液作成時の三酸化硼素の白濁の発生を解消し、その状態で種付けを行う。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、LEC法による砒化ガリウム単結晶の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
化合物半導体はその単結晶の高品質化により、高速集積回路、光−電子集積回路やその他の電子素子に広く用いられるようになってきた。なかでも、III−V族化合物半導体の砒化ガリウム(GaAs)は電子移動度がシリコンに比べて早く、10Ω・cm以上の比抵抗のウエハが製造容易という特長がある。現在では上記GaAsの単結晶は、主に液体封止引き上げ法、すなわち液体封止チョクラルスキー法(Liquid Encapsulated Czochralski 法。略称:LEC法)により製造されている。
【0003】
図1に、GaAs単結晶の成長装置として広く使用されているLEC法による結晶引上装置の概略を示す。
【0004】
図において、1は結晶成長用の高温炉(耐圧容器)であり、高温炉1内には下側から下軸2が挿入され、この下軸2の先端にペデスタル3を介してサセプタ4が支持されている。サセプタ4内にはパイロリティック窒化硼素(PBN)製るつぼ5が配置されている。サセプタ4の周囲にはヒータ8が設けられており、サセプタ4を介してPBN製るつぼ5を周囲から加熱できるようになっている。下軸2は図示しない回転機構に接続されており、一定の回転速度で回転されるようになっている。また、容器1の上側からは下軸2と同軸的に上軸9が挿入され、その下端に設けられた種結晶ホルダ10に所望の方位を持った種結晶11(通常、方位として(100)が用いられる)が取り付けられる。この上軸9は、図示しない回転・昇降機構によってPBN製るつぼ5とは逆向きに軸回転されると共に、昇降移動されるようになっている。上軸9の途中には重量センサ12が設けられており、これによって成長過程の結晶重量を検知できるようになっている。
【0005】
結晶成長の際には、先ず、PBN製るつぼ5の中にGaAs多結晶原料6を14000gと、液体封止剤7の三酸化硼素(B)を4000g入れ、高温炉1内を真空排気し、その後窒素またはアルゴンなどの不活性ガスで40気圧程度に加圧し、主ヒータ8に通電してPBN製るつぼ5の内部を昇温させる。500℃前後で液体封止剤(B)7が軟化、融解してGaAs多結晶原料6を覆う。引き続き昇温させ、PBN製るつぼ5内部の温度を1238℃以上とし、多結晶原料6を融解させる。次に、高温炉1内を5〜20気圧に減圧した後、種結晶11を降下させ、その先端を原料融液に浸して種付けを行う。その後、主ヒータ8の温度を下げながら、上軸9を9〜12mm/hrの速度で引き上げていき、重量センサ12で結晶重量を検知しながら、主ヒータの出力を制御してGaAs単結晶を成長させる。
【0006】
LEC法で砒化ガリウム単結晶を成長する場合、液体封止剤としては、上記のように三酸化硼素(B)を用いるのが一般的である。
【0007】
このBの目的は、メルト表面及び育成結晶からのVb族元素の蒸発を防止するためにあるが、室温からBが軟化する約600℃までは、As、GaともBで覆われることが無いという不都合に鑑み、その融点を低下させる、すなわち粘度を低下させて、低温時にGaAs多結晶原料ないしはAsを封止剤融液により被覆することを可能とすべく、Bに添加物を加えるというアプローチが従来なされている(特公昭60−18635号公報)。
【0008】
具体的には、三酸化硼素を主成分とし、これにAl、Ga、Pよりなる群から選択された一種以上を添加するものであり、これにより粘度が低く、従って封止剤の融点が低く、しかも電気的に活性な不純物が育成される結晶中に取り込まれるおそれがないという利点が得られる。しかし、B中の含有水分量についての規定は無い。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようにLEC法で砒化ガリウム(GaAs)単結晶を製造する場合、液体封止剤として三酸化硼素(B)を用いるが、B中の含有−OH基量については規定が無いのが一般的である。また、添加物について、特公昭60−18635号公報には、三酸化アルミニウム、三酸化ガリウム、五酸化リンからなる群から選択された一種以上を添加する旨の記載があるが、三酸化砒素は含まれておらず、また、添加物の量的規制の記載も無い。
【0010】
上述したように、LEC法で液体封止剤としてBを用いて、GaAs単結晶を製造する場合、先ず、るつぼ内に原料である砒素とガリウム、または多結晶砒化GaAs、及びBを収納し、不活性ガスを充填した耐圧容器内で、加熱手段によって、GaAs融液とし、種付け、結晶成長を行うのが一般的である。
【0011】
しかしながら、このGaAs融液の作成時に、一般的には無色透明であるB融液が失透(白濁)してしまうことが多々あり、種付けが困難になる場合が多々ある。
【0012】
また、特公昭60−18635号公報に記載の三酸化アルミニウム、三酸化ガリウム、五酸化リンを添加した場合でも、用いるBに対し、ある一定量を越えた場合には、添加しない場合と同様に、B、が失透する。また三酸化アルミニウム、五酸化リンをBに添加した場合、微量のアルミニウム、リンが製造するGaAsに混入することになる。アルミニウム、リンは、GaAs中では電気的に不活性であるが、格子不整合となり、製造したGaAsウェハを用いてデバイスを作成した場合、デバイスの寿命低下の原因となる可能性がある。
【0013】
そこで、本発明の目的は、LEC法で製造するGaAs単結晶の成長における液体封止剤の失透の発生を解消し、種付けを容易、且つ再現性良く実施することのできるGaAs単結晶の製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成したものである。
【0015】
請求項1の発明に係る砒化ガリウム単結晶の製造方法は、不活性ガスを充填した耐圧容器内に収容され加熱されたるつぼに、原料融液と液体封止剤を収納し、原料融液に種結晶を接触させ、この種結晶を引き上げることで単結晶を成長させるLEC法による砒化ガリウム単結晶の製造方法において、上記液体封止剤として、三酸化硼素を主体とし、これに三酸化ガリウム、三酸化砒素よりなる群から選択された一種以上を添加した液体封止剤を用い、その三酸化硼素中の含有−OH基量を100ppm未満に定めて、砒化ガリウム融液作成時の三酸化硼素の白濁の発生を解消し、その状態で種付けを行うことを特徴とする。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1記載の砒化ガリウム単結晶の製造方法において、上記液体封止剤の三酸化硼素に添加する三酸化ガリウム、三酸化砒素の総和が、0.4mol%以上、0.5mol%未満であることを特徴とする。
【0017】
<発明の要点>
本発明者等はLEC法による化合物半導体単結晶の成長に関して鋭意研究を重ねた結果、次のような知見を得た。液体封止剤として無添加のBを用いた場合、GaAs融液作成時の液体封止剤の失透の原因は、B中の−OH基と原料であるAsまたはGaの酸化物{例えば、三酸化ガリウム(Ga)、三酸化砒素(As)等}が、融液であるB中に浮遊することが原因である。Ga、Asは、それぞれ、Bに可溶であるが、(1)Ga、Asそれぞれの生成速度が遅いこと、(2)Ga、AsそれのBへの溶解速度が遅いこと、(3)Ga、AsそれのBへの溶解量が少ないこと、以上の3点のため、液体封止剤が失透し易く、且つ失透の度合いが不安定となる。
【0018】
液体封止剤の失透を防止する対策としては、B中の−OH基を減らすことが最も単純な方法であるが、B中の−OH基を減らすに従い、Bの粘度は大きくなり、LEC法でのGaAs単結晶育成過程での結晶の直径制御が困難となり、最終的には単結晶育成過程で多結晶となってしまい、単結晶の製造が困難となる。
【0019】
そこで、B中の−OH基を100ppm未満に減らす一方、Bの粘性を下げる方法として、Ga、Asの一方又は双方を添加する。製造したGaAsウェハを使用したデバイスの信頼性を維持するためには、Ga、Asの添加が最も適しており、更に、液体封止剤の失透を有効に防止するためには、添加量をGa、Asが容易にBに溶解する添加量の総和が0.5mol%未満であることが望ましく、且つ粘性を下げるためには0.4mol%以上が望ましい。
【0020】
なお、Bの粘性を下げる方法として、特公昭60−18635号公報には、BにAl、Ga、Pよりなる群から選択された一種以上を添加することが記載されているが、三酸化砒素は含まれておらず、また、添加物の量的規制の記載も無い。そして、B中の含有−OH基量についても規定が無い。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明は、LEC法において使用する液体封止剤が含有−OH基量を規定したBを主体として、三酸化ガリウム、三酸化砒素のうち一種以上を規定量添加した液体封止剤を用いることで、GaAs融液作成時の液体封止剤の失透の発生を解消し、種付けが容易、且つ再現性良く実施できるLEC法によるGaAs単結晶の製造方法を提供するものである。
【0022】
以下、本発明のLEC法による砒化ガリウム単結晶の製造方法を実施例を中心にして説明する。
【0023】
以下の実施例1及び比較例1〜3で使用した製造装置は、図1と同様であり、不活性ガスを充填した耐圧容器たる高温炉1内に収容され加熱されたるつぼ5に原料融液、液体封止剤のBを収納し、種結晶11を原料融液に接触させつつ種結晶11とるつぼ5とを相対的に移動させて、LEC法により化合物半導体単結晶を成長した。
【0024】
(実施例1)
液体封止剤として、B中の含有−OH基量が100ppm未満、添加したGa、Asの総和が0.4mol%以上、0.5mol%未満である液体封止剤を用い、直径280mmのPBN(Pyrolitic Boron Nitride)製のるつぼを用い、結晶直径100mm、結晶長さ400mmのGaAsの単結晶成長を50回行った。その結果、種付け時の液体封止剤の失透が原因で種付けが不可となった場合は1回のみであった。なお、結晶成長の結果、結晶の種付け部から結晶成長最終部まで全域単結晶(All Single)は90%以上の確率で得られた。
【0025】
(比較例1)
中の含有−OH基量が100ppm以上であるBを用いた以外は、前記実施例と同様の条件で、単結晶成長を50回行った。その結果、種付け時のBの白濁による失透が原因で種付けが不可となった場合は15回であった。なお、結晶成長の結果、結晶の種付けから結晶成長最終部まで全域単結晶(All Single)は60%以下の確率であった。
【0026】
(比較例2)
に添加したGa、Asの総和が0.5mol%以上であるBを用いた以外は、前記実施例と同様の条件で、単結晶成長を50回行った。その結果、種付け時のBの白濁が失透が原因で種付けが不可となった場合は10回であった。なお、結晶成長の結果、結晶の種付けから結晶成長最終部まで全域単結晶(All Single)は70%以下の確率であった。
【0027】
(比較例3)
に添加したGa、Asの総和が0.4mol%未満であるBを用いた以外は、前記実施例と同様の条件で、単結晶成長を50回行った。その結果、種付け時のBの白濁による失透が原因で種付けが不可となった場合は1回であったが、結晶成長中に結晶外径が変動し、成長を途中で中止した場合が5回発生した。なお、結晶成長の結果、結晶の種付けから結晶成長最終部まで全域単結晶(All Single)は50%以下の確率であった。
【0028】
以上の実施例1及び比較例1〜3の結果を総合すると、含有−OH基量が100ppm未満のBを主体とし、これにGa、Asの総和が0.4mol%以上、0.5mol%未満の液体封止剤を使用することで、高収率でGaAs単結晶を得ることが可能なことが判る。
【0029】
<他の実施例、変形例>
上記実施例は、砒化ガリウム単結晶のLEC法における成長方法について記載したが、InP、GaP、InAs等をLEC法で結晶成長を行う化合物半導体単結晶の製造方法についても、Bへの添加物を考慮することで、同様の効果を得ることができる。
【0030】
<使用方法、応用システム>
本発明による方法で得られるLEC法によるGaAs単結晶の製造は、従来法よりも種付けを容易、且つ再現性良く実施することを可能とし、更に結晶の成長過程における結晶外径の変動の抑制を可能とし、これによって、高収率でGaAs単結晶を得ることを可能とするものである。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、液体封止剤として、三酸化硼素を主体とし、これに三酸化ガリウム、三酸化砒素よりなる群から選択された一種以上を添加した液体封止剤を用い、その三酸化硼素中の含有−OH基量を100ppm未満に定めて、砒化ガリウム融液作成時の三酸化硼素の白濁の発生を解消し、その状態で種付けを行うものである。また、好ましくはLEC法で成長させるGaAs単結晶の製造において、含有−OH基量が100ppm未満のBを主体とし、これにGa、Asの総和が0.4mol%以上、0.5mol%未満の液体封止剤を使用するものである。
【0032】
従って、本発明によれば、GaAs融液作成時のBの失透の発生を防止し、種付けを容易、且つ再現性良く実施することができ、高収率でGaAs単結晶を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による化合物半導体単結晶の製造方法に用いた製造装置の基本構成を示した図である。
【符号の説明】
1 高温炉
5 PBN製るつぼ
6 多結晶原料
7 液体封止剤
8 ヒータ
11 種結晶

Claims (2)

  1. 不活性ガスを充填した耐圧容器内に収容され加熱されたるつぼに、原料融液と液体封止剤を収納し、原料融液に種結晶を接触させ、この種結晶を引き上げることで単結晶を成長させるLEC法による砒化ガリウム単結晶の製造方法において、
    上記液体封止剤として、三酸化硼素を主体とし、これに三酸化ガリウム、三酸化砒素よりなる群から選択された一種以上を添加した液体封止剤を用い、
    その三酸化硼素中の含有−OH基量を100ppm未満に定めて、砒化ガリウム融液作成時の三酸化硼素の白濁の発生を解消し、その状態で種付けを行うことを特徴とする砒化ガリウム単結晶の製造方法。
  2. 上記液体封止剤の三酸化硼素に添加する三酸化ガリウム、三酸化砒素の総和が、0.4mol%以上、0.5mol%未満であることを特徴とする請求項1記載の砒化ガリウム単結晶の製造方法。
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