JP2004058442A - 電子基板のインサート射出成形用金型 - Google Patents

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【課題】本発明は、各保持ピンの軸芯位置を互いにずらせることにより、二次射出時の電子基板の一部の変形をなくし、歩留まりを向上させることを目的とする。
【解決手段】本発明による電子基板のインサート射出成形用金型は、電子基板(1)の両面に対向する上側保持ピン(5)と下側保持ピン(6)の軸芯(5c,6c)を相互にずらせて配置したことにより、各保持ピン(5,6)をキャビティ(4)から後退させた状態での空間(5a,6a)の重合面積が従来よりも小さくなり、二次射出時の電子基板(1)の部分的変形の発生を防止し、歩留まりの向上が得られる構成である。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子基板のインサート射出成形用金型に関し、特に、各保持ピンの配置位置をずらせることにより、細いピンを用いた場合と同等の作用を得て再射出時の電子基板の変形を防止するための新規な改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば薄板形状の基板に通信アンテナが形成されたICタグを構成する電子基板からなる電子部品の場合、機能及び部品の保護維持、取扱の容易性等を目的として、電子基板の全体を合成樹脂材料により被覆するすなわち封止することが行われている。このような電子基板の封止は、通常以下の要領で、射出成形機のインサート射出成形により行われていた。
【0003】
図3はインサート射出成形用金型の主要部分断面図であり、薄板形状の電子部品である電子基板1は、上側金型2及び下側金型3が閉じられて形成されたキャビティ4内に保持され射出成形直前の状態を示している。すなわち、図3において、符号10で示されるものは上側金型2及び下側金型3により水平分割されるキャビティ4を形成するように構成された金型であり、この上側金型2には、キャビティ4内へ鉛直方向に出入する複数本の上側保持ピン5が設けられ、前記下側金型3には、前記キャビティ4内へ鉛直方向に出入する複数本の下側保持ピン6が設けられている。
【0004】
前記各保持ピン5、6は同一断面形状の棒状部材であり、先端が平面に構成され、電子基板1に当接して対向した状態で上下に対向するそれぞれが軸芯を一直線状に同一状態として配置されている。また、前記各保持ピン5、6は、図示しない駆動装置により、キャビティ4に対して出入すなわち突出し、後退するように構成されている。
【0005】
次に、動作について述べる。まず、以上のように構成された電子基板のインサート射出成形用金型において、上側金型2及び下側金型3を離間した型開状態で電子基板1を挿入し各保持ピン5、6によってこの電子基板1を挟持した状態で金型10を型閉させると、図3のように電子基板1はキャビティ4内の中央位置で各保持ピン5、6により保持した状態となる。次に、図3の状態において、溶融した合成樹脂材料からなる樹脂11を図示しない射出成形機のノズルからキャビティ4内に一次射出し充満させる。その後、一次射出された樹脂がある程度固化した状態で、上側保持ピン5及び下側保持ピン6を後退させる。
【0006】
図4は、図3と同一部分の断面図であり、一次射出された樹脂11がある程度固化して電子基板1をキャビティ4内の中央部に保持し、上側保持ピン5及び下側保持ピン6を後退させた状態を示している。図4において、キャビティ4は、複数箇所の上側保持ピン5が後退して発生した空間5a及び複数箇所の下側保持ピン6が後退して発生した空間6aを除いて、樹脂11が充満している。
【0007】
次に、図4の状態で、二次射出を行い、前記各空間5a、6aに樹脂11aが充満される。この二次射出により電子基板1の全周が樹脂11、11aで被覆される。その後、この樹脂11,11aが冷却固化した後、金型10を型開すると、樹脂で被覆された電子基板1を取出して封止成形を完了する。以上の動作を繰返すことにより、合成樹脂材料で封止された電子基板1が繰返し生産される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来の電子基板のインサート射出成形用金型は以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。すなわち、図4の状態で二次射出を行うと、各空間に対して同時に樹脂が充満しない場合があり、その場合には、図5に示されるように、電子基板1の一部は、先に充満した側(図5では下側金型の空間側)の樹脂により、空間の表面積に相当する射出圧力がそのままの大きさで掛り、充満の遅れた側(図5では上側金型の空間側)へ膨らむように電子基板1の一部1aが変形して損傷し、成形製品の歩留まり率を低下させている。
【0009】
このような変形による電子基板の損傷を防止する方法として、各保持ピンの直径を現状より細くし、それらの横断面に相当する電子基板への空間の表面積(受圧面積)を小さくし、作用する射出圧力を小さくして変形を防止することが考えられるが、一次射出におけるキャビティ内の溶融した樹脂の高速流動に対し、細い保持ピンでは強度が不足して曲げ変形を起し、電子基板を確実に保持できなくなり、また突出及び後退の往復作動が不能になる。従って、保持ピンを現状より細くすることは、強度上採用できなかった。
【0010】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、保持ピンの軸芯の配置位置をずらせることにより、二次射出時の電子基板の変形を防止するようにした電子基板のインサート射出成形用金型を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明による電子基板のインサート射出成形用金型は、上側金型及び下側金型により形成されるキャビティ内に出入自在に設けられた上側保持ピン及び下側保持ピンによって電子基板を保持し、前記キャビティ内に樹脂を射出して前記樹脂により前記電子基板を保持した後に前記上側保持ピン及び下側保持ピンを前記キャビティから後退させ、前記キャビティ内に再び樹脂を射出するようにした電子基板のインサート射出成形用金型において、前記電子基板に当接した状態で互いに対向する前記上側保持ピン及び前記下側保持ピンの各軸芯位置が前記電子基板の面方向に沿って相互に間隔だけずらせて配置されている構成であり、また、前記間隔が、前記上側保持ピン及び下側保持ピンの直径に対して1/4〜1/2の範囲である構成であり、また、前記上側保持ピン及び下側保持ピンの直径は同一である構成である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面と共に本発明による電子基板のインサート射出成形用金型の好適な実施の形態について説明する。尚、従来例と同一あるいは同等部分については同一符号を用いて説明する。
【0013】
図1において、符号10で示されるものはインサート射出成形用の金型であり、この金型10は、上側金型2及び下側金型3により、水平分割されるキャビティ4を形成するように構成されている。この上側金型2及び下側金型3には、各金型2、3からキャビティ4内へ鉛直上方向に出入する複数本の上側保持ピン5及び下側保持ピン6が設けられている。
【0014】
前記各保持ピン5、6は同一断面形状の棒状部材であり、先端が平面に構成され、電子基板1の両面に当接して対向する各保持ピン5、6において、上側保持ピン5の軸芯5cと下側保持ピン6の軸芯6cとは電子基板1の面方向に沿って間隔dだけずらせて配置されている。この間隔dは、前記各保持ピン5、6の直径より小さく、電子基板1に対して突出した時の先端面が部分的に相互に重なり合うように配置されていると共に、図示しない駆動装置により出入自在に構成されている。尚、前記各保持ピン5、6間の前記間隔dは各保持ピン5、6の直径に対して1/4〜1/2が好適であることが判明している。
【0015】
次に、動作について説明する。以上のように構成された電子基板のインサート射出成形用金型において、まず、各金型2、3を型開した状態で電子基板1を挿入し、金型10を型閉する。図1に示すように、型閉状態では、上側保持ピン5及び下側保持ピン6がキャビティ4内に突出し、電子基板1を所定の保持圧力でキャビティ4内の中央部に保持した状態となる。
【0016】
次に、図1の状態で溶融した合成樹脂材料からなる樹脂11をキャビティ4内に一次射出し充満させる。その後、一次射出された樹脂11がある程度固化した状態すなわち、樹脂11によって電子基板1が保持された状態で各保持ピン5、6を後退させる。この各保持ピン5、6が後退した後には、図2のように、それぞれのピン形状の空間5a、6aが発生すると共に、各空間5a、6aに二次射出を行う。
【0017】
前記各空間5a、6aは相互に間隔dだけずれており、電子基板1の両面に対向して発生する空間5a、6aは部分的に重なり合っており、重なり部分は各ピン5、6の断面積より小さい。従って、二次射出において、電子基板1の二次射出圧力に対する受圧面積は小さくなり、電子基板1の一部は、両面の空間の充満時期が従来と同様にずれた場合でも、射出圧力に耐えて変形することはない。
【0018】
前述の二次射出により電子基板1の全周が樹脂11で被覆され、その後、冷却固化し、金型10を型開させ、樹脂11で被覆された電子基板1を取出して封止成形を完了する。以上の動作を繰返すことにより、樹脂11で封止された電子基板1が繰返し生産される。
【0019】
【発明の効果】
本発明による電子基板のインサート射出成形用金型は以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。すなわち、各金型の互いに対向する各保持ピンの先端面が部分的に重なり合うように、軸芯を電子基板の面方向に沿って相互にずらせて配置していることにより、二次射出時の射出圧力に対する電子基板の受圧面積を小さくすることができ、電子基板の両面で充満の時期がずれた場合でも、射出圧力に耐え、変形することはなくなった。
また、前述の構成により、保持ピンの形状を変更することなく従来と同じ直径で構成して用いることができ、それによって、従来と同じ剛性のピンを用いることによって歩留まりの向上を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による電子基板のインサート射出成形用金型の型閉じ状態を示す主要部分の断面図である。
【図2】図1の各保持ピンを後退させて射出した状態を示す断面図である。
【図3】従来の電子基板のインサート射出成形用金型の型閉じ状態を示す主要部分の断面図である。
【図4】図3の各保持ピンを後退させて射出した状態を示す断面図である。
【図5】図4の状態において各空間に二次射出をした場合の電子基板の一部の不具合の発生状況を示す主要部分の断面図である。
【符号の説明】
1  電子基板
2  上側金型
3  下側金型
4  キャビティ
5  上側保持ピン
6  下側保持ピン
5c、6c  軸芯
10  金型
d  間隔

Claims (3)

  1. 上側金型(2)及び下側金型(3)により形成されるキャビティ(4)内に出入自在に設けられた上側保持ピン(5)及び下側保持ピン(6)によって電子基板(1)を保持し、前記キャビティ(4)内に樹脂(11)を射出して前記樹脂(11)により前記電子基板(1)を保持した後に前記上側保持ピン(5)及び下側保持ピン(6)を前記キャビティ(4)から後退させ、前記キャビティ(4)内に再び樹脂(11a)を射出するようにした電子基板のインサート射出成形用金型において、前記電子基板(1)に当接した状態で互いに対向する前記上側保持ピン(5)及び前記下側保持ピン(6)の各軸芯(5c,6c)位置が前記電子基板(1)の面方向に沿って相互に間隔(d)だけずらせて配置されていることを特徴とする電子基板のインサート射出成形用金型。
  2. 前記間隔(d)が、前記上側保持ピン(5)及び下側保持ピン(6)の直径に対して1/4〜1/2の範囲であることを特徴とする請求項1記載の電子基板のインサート射出成形用金型。
  3. 前記上側保持ピン(5)及び下側保持ピン(6)の直径は同一であることを特徴とする請求項1又は2記載の電子基板のインサート射出成形用金型。
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