JP2004052822A - ビスカスラバーダンパの製造方法 - Google Patents
ビスカスラバーダンパの製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004052822A JP2004052822A JP2002207769A JP2002207769A JP2004052822A JP 2004052822 A JP2004052822 A JP 2004052822A JP 2002207769 A JP2002207769 A JP 2002207769A JP 2002207769 A JP2002207769 A JP 2002207769A JP 2004052822 A JP2004052822 A JP 2004052822A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- elastic body
- mass
- hub
- press
- peripheral side
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Fluid-Damping Devices (AREA)
Abstract
【解決手段】ハブ2およびマス3を弾性体4を介して連結するとともにハブ2およびマス3間に形成した近接空間部9に粘性流体10を封入してなるビスカスラバーダンパの製造方法において、マス3に設けた凹部3dに粘性流体10を充填する工程と、次いでハブ2、マス3および弾性体4を組み立て、この組立時に発生する弾性体4の圧入圧力によって凹部3d内の粘性流体10を凹部3dから溢れ出させて近接空間部9に充満させる工程とを有し、マス3に設けた凹部3dに粘性流体10を充填してから、ハブ2、マス3および弾性体4を組み立てる手順とした。
【選択図】 図5
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関のクランクシャフト等の回転軸に発生する捩り振動を吸収し減衰させるために用いられるビスカスラバーダンパの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ハブおよびマスをゴム状弾性材製の弾性体を介して連結するとともに前記ハブおよびマス間に形成した微小間隙である近接空間部にシリコンオイル等の粘性流体を封入してなるビスカスラバーダンパが知られている。このビスカスラバーダンパは、弾性体によるバネ定数とマスによる慣性質量によって一定の周波数の振動に対して共振する共振系を構成し、その共振作動によって振動を減衰させるとともに、ハブに対してマスが周方向に相対変位するときに発生する粘性流体の粘性抵抗によって振動減衰力を高めるよう作用するものである。
【0003】
しかしながら、従来のビスカスラバーダンパはその製造工程において、ハブ、マスおよび弾性体を互いに組み立ててからハブおよびマス間の狭隘な近接空間部に粘性流体を注入する手順であるために、その注入工程において粘性流体を大きな流体抵抗を受けながら少しずつ注入しなければならない。したがってこの注入工程に長時間を要し、これに伴ってダンパ全体の製造時間が長時間に及ぶ不都合がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上の点に鑑みて、ビスカスラバーダンパの製造時間を短縮することができるビスカスラバーダンパの製造方法を提供することを目的とし、これに加えて、ビスカスラバーダンパの製造時間を短縮してもダンパ内の近接空間部にエアが残存するのを防止することができるビスカスラバーダンパの製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1による製造方法は、ハブおよびマスを弾性体を介して連結するとともに前記ハブおよびマス間に形成した近接空間部に粘性流体を封入してなるビスカスラバーダンパの製造方法において、マスに設けた凹部に粘性流体を充填する工程と、次いでハブ、マスおよび弾性体を組み立て、この組立時に発生する前記弾性体の圧入圧力によって前記凹部内の粘性流体を前記凹部から溢れ出させて近接空間部に充満させる工程とを有することを特徴とするものである。
【0006】
また、本発明の請求項2による製造方法は、上記した請求項1の製造方法において、ハブにおける弾性体圧入面にエア抜き穴を設け、弾性体をハブおよびマス間に圧入するときに、前記弾性体の内側のエアを前記エア抜き穴から排出しながら圧入を行なうことを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の請求項3による製造方法は、上記した請求項1または2の製造方法において、弾性体をマスに連結するための取付環を前記弾性体に設け、前記弾性体の内側に近接空間部を形成するためのフランジ部を前記取付環に設け、前記弾性体および取付環を前記ハブおよびマス間に圧入するときに、前記弾性体を弾性変形させて前記フランジ部に密着させた状態で前記弾性体および取付環を圧入し、引き続き前記取付環のみを更に圧入することより、圧入工程の終了後、前記弾性体およびフランジ部間に軸方向間隙を形成することを特徴とするものである。
【0008】
更にまた、本発明の請求項4による製造方法は、上記した請求項1、2または3の製造方法において、ハブおよびマスにおける近接空間部を形成する面を、この面が凹部から径方向に遠のくにしたがって当該ダンパの製品取付面から軸方向に遠のく側へ傾斜するように形成し、その先にエア抜き穴を設けたことを特徴とするものである。
【0009】
上記構成を備えた本発明の請求項1による製造方法においては、マスに設けた凹部に粘性流体を充填してから、ハブ、マスおよび弾性体を組み立てる手順であるために、上記従来技術のように粘性流体を大きな流体抵抗を受けながら少しずつ狭隘な近接空間部に注入する作業を行なう必要がない。粘性流体はその必要全量が組立に先立ってマスの凹部に一旦充填され、組立時に弾性体がハブおよびマス間に圧入されると、その圧入圧力を受けて一部が凹部から溢れ出て近接空間部に充満する。
【0010】
またこれに加えて、上記構成を備えた本発明の請求項2による製造方法においては、ハブにおける弾性体圧入面にエア抜き穴を設け、弾性体をハブおよびマス間に圧入するときに、弾性体の内側のエアをエア抜き穴から排出しながら圧入を行なうために、弾性体の内側にエアが残存するのを防止することが可能となる。
【0011】
また、上記構成を備えた本発明の請求項3による製造方法においては、弾性体およびフランジ部を備えた取付環の圧入を、弾性体を弾性変形させてフランジ部に密着させた状態で行ない、引き続き取付環のみを更に圧入することより、圧入工程の終了後、弾性体およびフランジ部間に軸方向間隙を形成するものであるために、弾性体およびフランジ部間にエアが残存するのを防止することが可能となる。弾性体はフランジ部から離れて摺動摩耗せず、またダイアフラムとして機能するため、粘性流体の温度膨張による体積増加分を吸収することが可能である。
【0012】
更にまた、上記構成を備えた本発明の請求項4による製造方法においては、ハブおよびマスにおける近接空間部を形成する面を、この面が凹部から径方向に遠のくにしたがって当該ダンパの製品取付面から軸方向に遠のく側へ傾斜するように形成し、その先にエア抜き穴を設けたために、近接空間部の中途にエアが残存するのを防止することが可能となる。
【0013】
尚、本件出願には、以下の技術的事項が含まれる。
【0014】
すなわち、上記目的を達成するため、本件出願が提案する一のビスカスラバーダンパないしその製造方法は、以下の内容を備えている。
【0015】
(1)粘性流体を部品組立前に、予めマス部品の凹部に充填させ、組立工程内で粘性流体を内封する。
(2)マス組立前に、粘性流体を凹部に塗布、浸漬等の方法で充填させる。マスに粘性流体の注入口を設ける必要はない。
(3)ハブ、マスの近接空間部を形成する面は、エア抜きを目的として、中心に向かって製品取付面から遠のく側へ傾斜している。
(4)弾性体部の形状は、プレート部とゴム部を一体化した形状とする。また組立時第一段階では、治具でゴム部を押さえる等して、ゴム部とプレート部間に隙間の無い形状として圧入し、エア入りを防止する。その後、組立第二段階として弾性体部のプレート部のみ更に圧入し、ゴム部とプレート部に隙間を設け、ゴム部、プレート部間の摩耗を防ぐ。
(5)ハブの、弾性体部の圧入面に穴を設け、上記(4)の工程時に弾性体部近傍のエア抜きを可能とする。また、穴位置は内周側弾性体の圧入前のマスとハブの位置決めの際に、粘性流体が妨げにならない箇所とする。
(6)当該ビスカスラバーダンパは、自動車エンジンの防振分野に利用され、またその他エンジン等の防振分野にも利用される。
【0016】
(7)当該製造方法の製造工程例は、以下のとおりである。
▲1▼ マスの凹部にシリコンオイルを専用ガンで流し込んで充填する。
▲2▼ ハブを所定の位置にセットする。このとき、先に流し込んだシリコンオイルがマス、ハブ形状に沿って移動する。シリコンオイルがハブのエア抜き穴を塞いでしまわないように、シリコンオイル充填量を適量に調整しておく。
▲3▼ 内周側弾性体を圧入する。
▲4▼ 弾性体部を圧入(第一段階)する。ゴム部とプレート部に隙間ができないようにゴム部を治具で押さえておく(エア入り防止のため)。このときにシリコンオイルは全封入領域に充満完了する。
▲5▼ 弾性体部のプレート部のみ更に圧入し、ゴム部とプレート部の間に隙間を設ける(ゴム部、プレート部間の磨耗防止のため)。
▲6▼ ハブのエア抜き穴をボール止め具で塞ぎ、組立完成とする。
【0017】
当該ビスカスラバーダンパまたはその製造方法によれば、以下の作用効果を奏することが可能である。
(1)組立後の粘性流体注入工程に費やす時間を大幅に削減することができるために、製造工程の短縮となり、コスト低減も可能となる。従来の製造方法による粘性流体封入工程が半日ないし一日(実験値)であったとすれば、当該製造方法による粘性流体封入工程は5〜15分間程度と予測される。
(2)弾性体部におけるプレート部とゴム部を、エア入り防止の目的で一体化したために、組立が簡略化され、コストの低減にもなる。プレート部のフランジ部とゴム部は接着しないので、ゴム部がダイアフラムとして機能し、粘性流体の温度膨張による体積増加分を吸収する機能を持つ。
(3)マスに粘性流体の注入口を設ける必要がなく、またこの注入口をボール止め具等によって閉塞する必要がないために、この分、構成が簡略化され、コストの削減にもなる。
【0018】
【発明の実施の形態】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施例に係る製造方法によって製造されるビスカスラバーダンパ1の半裁断面を示しており、当該ビスカスラバーダンパ1は以下のように構成されている。
【0020】
すなわち先ず、自動車エンジンのクランクシャフトに連結される円板状ないし環状のハブ2が設けられており、このハブ2に対して環状のマス(質量体)3が同芯的に組み合わされて、外周側弾性体4および内周側弾性体8を介して連結されている。
【0021】
上記ハブ2は、板金等の剛材によって形成されており、クランクシャフトの端部に固定される円板状の取付部2aと、この取付部2aの外周端部から軸方向一方へ向けて一体成形された筒状の内周側弾性体圧入部2bと、この内周側弾性体圧入部2bの軸方向一端部から径方向外方へ向けて一体成形された環状の内周側近接空間形成部2cと、この内周側近接空間形成部2cの外周端部から軸方向他方へ向けて一体成形された筒状の外周側弾性体圧入部2dと、この外周側弾性体圧入部2dの軸方向一端部から径方向外方へ向けて一体成形された環状の外周側近接空間形成部2eとを一体に有しており、上記取付部2aにボルト差込み穴2f、内周側近接空間形成部2cの内周端部近傍に内周側エア抜き穴2g、外周側弾性体圧入部2dの軸方向略中央に外周側エア抜き穴2hがそれぞれ所要数設けられている。
【0022】
上記マス3は、所定の慣性質量を備えるよう鋳鉄等の剛材によって環状に形成されており、上記ハブ2における内周側弾性体圧入部2bと外周側弾性体圧入部2dの間に非接触で配置される筒状の内周側部分3aと、この内周側部分3aの軸方向一端部から径方向外方へ向けて一体成形された環状の立ち上がり部分3bと、この立ち上がり部分3bの外周端部から軸方向一方へ向けて一体成形された筒状の外周側部分3cとを一体に有しており、全体に断面略コ字形を呈して、軸方向一方に開口する環状の凹部3dを有し、この凹部3d内に上記ハブ2の外周側弾性体圧入部2dおよび外周側近接空間形成部2eが非接触の状態で収容されている。
【0023】
上記外周側弾性体4は、所定の径方向バネ定数を備えるよう所定のゴム状弾性体によって環状に形成されており、またこの外周側弾性体4を上記ハブ2の外周側弾性体圧入部2dの外周面に取り付けるために内周側取付環5が設けられるとともに、弾性体4を上記マス3の外周側部分3cの内周面に取り付けるために外周側取付環6が設けられている。弾性体4は、内周側取付環5の外周面に加硫接着された筒状の内周側部分4aと、外周側取付環6の内周面に加硫接着された筒状の外周側部分4bと、両部分4a,4bを連結するよう膜状に形成された環状の弾性体本体部4cとを一体に有している。内周側取付環5は板金等の剛材によって筒状に形成されており、上記ハブ2の外周側弾性体圧入部2dの外周面に対して軸方向一方から圧入されることにより固定されている。圧入後この内周側取付環5は、ハブ2の外周側弾性体圧入部2dに設けられた外周側エア抜き穴2hに達してその一部を閉塞する。外周側取付環6は板金等の剛材によって筒状に形成されており、上記マス3の外周側部分3cの内周面に対して軸方向一方から圧入されることにより固定されている。また、この外周側取付環6の軸方向一端部には径方向内方へ向けて環状のフランジ部6aが一体成形されており、このフランジ部6aが弾性体4とハブ2の外周側近接空間形成部2eとの間に配置されている。弾性体4の弾性体本体部4cとフランジ部6aは接着されておらず、両者4c,6aの間には環状の軸方向間隙7が形成されている。このように両者4c,6aの間に軸方向間隙7を形成するのは弾性体本体部4cをフランジ部6aから離間させるためであり、弾性体本体部4cをフランジ部6aから離間させるのは当該ダンパ1の作動時に弾性体本体部4cがフランジ部6aと摺動して摩耗するのを防止するためである。尚、フランジ部6aは、近接空間部9を増やして粘性流体10の粘性抵抗による振動減衰力を高めるために設けられている。
【0024】
上記内周側弾性体8は、所定の径方向バネ定数を備えるよう所定のゴム状弾性体によって筒状に形成されており、ハブ2の内周側弾性体圧入部2bとマス3の内周側部分3aの間に軸方向一方から圧入されることにより固定されている。
【0025】
以上までの構成によって当該ダンパ1の内部には、対向部品が互いに接近配置されて対向部品間に微小間隙を形成する近接空間部9が設けられており、この近接空間部9にシリコンオイル等よりなる粘性流体10が封入されている。
【0026】
近接空間部9は具体的には、ハブ2の内周側近接空間形成部2cとマス3の内周側部分3aの間の部分9a、ハブ2の外周側弾性体圧入部2dとマス3の内周側部分3aの間の部分9b、ハブ2の外周側近接空間形成部2eとマス3の立ち上がり部分3bの間の部分9c、ハブ2の外周側近接空間形成部2eとマス3の外周側部分3cの間の部分9dおよびハブ2の外周側近接空間形成部2eと外周側弾性体4における外周側取付環7のフランジ部7aの間の部分9eであって、これらの各部分に内周側弾性体8に面する部分、外周側弾性体4に面する部分および外周側エア抜き穴2hを含めて当該ダンパ1の内部空間全部に粘性流体10が余さず充填されている。内周側エア抜き穴2gには鋼球等よりなるボール状の止め具11が圧入されて、粘性流体10の流出を防いでいる。近接空間部9の幅一般に実寸で0.4〜0.8mm程度である。
【0027】
また、近接空間部9の中途すなわちハブ2の内周側近接空間形成部2cとマス3の内周側部分3a間の部分9aは、両者2c,3aの互いに対向する面2i,3eすなわち当該部分9a全体が凹部3dから径方向内方へ遠のくのにしたがって当該ダンパ1の製品取付面13から軸方向へ遠のく側へ傾斜するようテーパー状に形成されており、その先すなわち当該部分9aの内周側に上記内周側エア抜き穴2gが設けられている。このように近接空間部9の中途をテーパー状としてその先に内周側エア抜き穴2gを設けたのは、後記するようにダンパ1内のエア抜きを容易にするためである。尚、当該ダンパ1の製品取付面13は、当該ダンパ1の図上右端面であって、すなわち凹部3dが開口していない方の、ハブ2およびマス3の軸直角端面である。
【0028】
つぎに上記ビスカスラバーダンパ1の製造方法を説明する。
【0029】
すなわち先ず、図2に示すように、マス3の凹部3dに粘性流体10を専用ガン等によって流し込んで充填する。後の工程で当該ダンパ1の内部に粘性流体10を注入する作業はないので、粘性流体10は必要全量をこのとき凹部3dに充填する。
【0030】
次いで、図3に示すように、マス3に対してハブ2を所定位置にセットする。このときハブ2の外周側近接空間形成部2eが粘性流体10に漬かるので、この分粘性流体10の水位が上昇する。
【0031】
次いで、図4に示すように、ハブ2とマス3との間に内周側弾性体8を圧入する。
【0032】
次いで、図5に示すように、ハブ2とマス3との間に外周側弾性体4を圧入するが、この圧入は第一工程と第二工程とに分けて行なう。
【0033】
すなわち先ず、前半の第一工程では、図5に示したように、治具12等を使用して外周側弾性体4の弾性体本体部4cを圧入方向(図上下方)へ押圧して弾性変形させ、外周側取付環6のフランジ部6aに密着させて隙間をなくし、この状態で弾性体4を内周側取付環5および外周側取付環6とともにハブ2とマス3の間すなわち凹部3dに圧入する。このように弾性体4、内周側取付環5および外周側取付環6を凹部3d内に圧入してゆくと、これらが粘性流体10を押圧して粘性流体10に圧入圧力が作用するので、粘性流体10が凹部3dから溢れ出て図上左側のハブ2の内周側近接空間形成部2cとマス3の内周側部分3aの間の部分9a、内周側弾性体8に面する部分、更には内周側エア抜き穴2gの一部にまで充満し、すなわちダンパ1内部の全域に充満する。当初ダンパ1内に存在するエアは粘性流体10に押されて内周側エア抜き穴2gからダンパ1外部へ排出される。
【0034】
尚、この第一圧入工程においては、外周側弾性体4、内周側取付環5および外周側取付環6の内側(図上下側)にエアが残存することが懸念されるが、この部位のエアは、上記したようにハブ2の外周側弾性体圧入部2dに外周側エア抜き穴2hが設けられているので、この外周側エア抜き穴2hから内周側エア抜き穴2gへと排出される。したがって外周側弾性体4、内周側取付環5および外周側取付環6の内側にエアが残存することはない。
【0035】
また、外周側弾性体4の弾性体本体部4cと外周側取付環6のフランジ部6a間の軸方向間隙7内にエアが残存することが懸念されるが、この部位のエアは、上記したように当該圧入工程が治具12等を使用して外周側弾性体4の弾性体本体部4cを圧入方向へ押圧して弾性変形させ、外周側取付環6のフランジ部6aに密着させて隙間をなくした状態で行なわれるので、当該工程の当初、弾性体本体部4cがフランジ部6aに密着した時点で排出される。したがって当該工程後に治具12による弾性体本体部4cへの押圧が解除されて弾性体本体部4cとフランジ部6a間に軸方向間隙7が形成されても、この間隙7内にエアが残存することはない。
【0036】
更にまた、近接空間部9の中途すなわちハブ2の内周側近接空間形成部2cとマス3の内周側部分3a間の部分9aにエアが残存することが懸念されるが、この部位のエアは、上記したように内周側近接空間形成部2cと内周側部分3aの対向面2i,3eすなわち当該部分9aが凹部3dから径方向内方へ遠のくのにしたがって当該ダンパ1の製品取付面13から軸方向へ遠のく側へ傾斜するようにテーパー状に形成され、その先に内周側エア抜き穴2gが設けられているために、このテーパーを伝って内周側エア抜き穴2gへと確実に排出される。したがって近接空間部9の中途すなわちハブ2の内周側近接空間形成部2cとマス3の内周側部分3a間の部分9aにエアが残存することもない。尚、このテーパーの案内によるエア抜きは、近接空間部9全体にとっても有効であるので、マス3の立ち上がり部分3bの内面、ハブ2の外周側近接空間形成部2e、外周側取付環6のフランジ部6aもそれぞれ図示するように同方向にテーパー状に形成されている。
【0037】
上記第一圧入工程の終了時点で、内周側取付環5は圧入が完了して製品状態位置に配置されるが、外周側取付環6は圧入ストロークの中途で停止しているので次いで後半の第二圧入工程として、図6に示すように、外周側取付環6のみを単独で更に圧入する。この第二圧入工程の終了時点で、外周側取付環6はこれも圧入が完了して製品状態位置に配置される。また、この第二圧入工程は治具12による弾性体本体部4cへの押圧が解除された状態で行なわれるので、工程終了時点で弾性体本体部4cとフランジ部6aの間に軸方向間隙7が形成される。上記したように弾性体本体部4cがフランジ部6aから離れることにより、当該ダンパ1の作動時に弾性体本体部4cがフランジ部6aと摺動して摩耗するのを防止することができ、またこの弾性体本体部4cがダイアフラムとして機能するために粘性流体10の温度膨張による体積増加分を吸収することができる。
【0038】
次いで、図7に示すように、内周側エア抜き穴2gにボール状の止め具11を圧入してこのエア抜き穴2gを閉塞し、以上をもって当該ダンパ1の組立を完了する。
【0039】
【発明の効果】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0040】
すなわち、上記構成を備えた本発明の請求項1による製造方法においては、その工程が先ず、マスに設けた凹部に粘性流体を充填してから、ハブ、マスおよび弾性体を組み立てる手順であるために、上記従来技術のように粘性流体を大きな流体抵抗を受けながら少しずつ狭隘な近接空間部に注入する作業を行なう必要がない。粘性流体はその必要全量が組立に先立ってマスの凹部に一旦充填され、組立時に弾性体がハブおよびマス間に圧入されると、その圧入圧力を受けて一部が凹部から溢れ出て近接空間部に充満する。したがってこの方法によれば、ダンパの製造所要時間を短縮することができる。
【0041】
またこれに加えて、上記構成を備えた本発明の請求項2による製造方法においては、ハブにおける弾性体圧入面にエア抜き穴を設け、弾性体をハブおよびマス間に圧入するときに、弾性体の内側のエアをエア抜き穴から排出しながら圧入を行なうために、弾性体の内側にエアが残存するのを防止することができ、粘性流体の粘性抵抗による振動減衰力を設定どおりに発揮させることができる。
【0042】
また、上記構成を備えた本発明の請求項3による製造方法においては、弾性体およびフランジ部を備えた取付環の圧入を、弾性体を弾性変形させてフランジ部に密着させた状態で行ない、引き続き取付環のみを更に圧入することより、圧入工程の終了後、弾性体およびフランジ部間に軸方向間隙を形成するものであるために、弾性体およびフランジ部間にエアが残存するのを防止することができ、粘性流体の粘性抵抗による振動減衰力を設定どおりに発揮させることができる。また、弾性体がフランジ部から離れることにより、当該ダンパの作動時に弾性体がフランジ部と摺動して摩耗するのを防止することができ、またこの弾性体がダイアフラムとして機能するため、粘性流体の温度膨張による体積増加分を吸収することができる。
【0043】
更にまた、上記構成を備えた本発明の請求項4による製造方法においては、ハブおよびマスにおける近接空間部を形成する面を、この面が凹部から径方向に遠のくにしたがって当該ダンパの製品取付面から軸方向に遠のく側へ傾斜するように形成し、その先にエア抜き穴を設けたために、近接空間部の中途にエアが残存するのを防止することができ、粘性流体の粘性抵抗による振動減衰力を設定どおりに発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る製造方法によって製造されるビスカスラバーダンパの半裁断面図
【図2】同ビスカスラバーダンパの製造工程(粘性流体充填)説明図
【図3】同ビスカスラバーダンパの製造工程(ハブのセット)説明図
【図4】同ビスカスラバーダンパの製造工程(内周側弾性体圧入)説明図
【図5】同ビスカスラバーダンパの製造工程(外周側弾性体圧入第一段階)説明図
【図6】同ビスカスラバーダンパの製造工程(外周側弾性体圧入第二段階)説明図
【図7】同ビスカスラバーダンパの製造工程(エア抜き穴封塞)説明図
【符号の説明】
1 ビスカスラバーダンパ
2 ハブ
2a 取付部
2b 内周側弾性体圧入部
2c 内周側近接空間形成部
2d 外周側弾性体圧入部
2e 外周側近接空間形成部
2f ボルト差込み穴
2g 内周側エア抜き穴(エア抜き穴)
2h 外周側エア抜き穴(エア抜き穴)
2i,3e 面
3 マス
3a,4a 内周側部分
3b 立ち上がり部分
3c,4b 外周側部分
3d 凹部
4 外周側弾性体(弾性体)
4c 弾性体本体部
5 内周側取付環
6 外周側取付環(取付環)
6a フランジ部
7 軸方向間隙
8 内周側弾性体
9 近接空間部
9a,9b,9c,9d,9e 近接空間部の部分
10 粘性流体
11 止め具
12 治具
13 製品取付面
Claims (4)
- ハブおよびマスを弾性体を介して連結するとともに前記ハブおよびマス間に形成した近接空間部に粘性流体を封入してなるビスカスラバーダンパの製造方法において、
マスに設けた凹部に粘性流体を充填する工程と、次いでハブ、マスおよび弾性体を組み立て、この組立時に発生する前記弾性体の圧入圧力によって前記凹部内の粘性流体を前記凹部から溢れ出させて近接空間部に充満させる工程とを有することを特徴とするビスカスラバーダンパの製造方法。 - 請求項1の製造方法において、
ハブにおける弾性体圧入面にエア抜き穴を設け、弾性体をハブおよびマス間に圧入するときに、前記弾性体の内側のエアを前記エア抜き穴から排出しながら圧入を行なうことを特徴とするビスカスラバーダンパの製造方法。 - 請求項1または2の製造方法において、
弾性体をマスに連結するための取付環を前記弾性体に設け、前記弾性体の内側に近接空間部を形成するためのフランジ部を前記取付環に設け、前記弾性体および取付環を前記ハブおよびマス間に圧入するときに、前記弾性体を弾性変形させて前記フランジ部に密着させた状態で前記弾性体および取付環を圧入し、引き続き前記取付環のみを更に圧入することより、圧入工程の終了後、前記弾性体およびフランジ部間に軸方向間隙を形成することを特徴とするビスカスラバーダンパの製造方法。 - 請求項1、2または3の製造方法において、
ハブおよびマスにおける近接空間部を形成する面を、この面が凹部から径方向に遠のくにしたがって当該ダンパの製品取付面から軸方向に遠のく側へ傾斜するように形成し、その先にエア抜き穴を設けたことを特徴とするビスカスラバーダンパの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002207769A JP2004052822A (ja) | 2002-07-17 | 2002-07-17 | ビスカスラバーダンパの製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002207769A JP2004052822A (ja) | 2002-07-17 | 2002-07-17 | ビスカスラバーダンパの製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004052822A true JP2004052822A (ja) | 2004-02-19 |
Family
ID=31932091
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002207769A Pending JP2004052822A (ja) | 2002-07-17 | 2002-07-17 | ビスカスラバーダンパの製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004052822A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2007114408A1 (en) * | 2006-03-29 | 2007-10-11 | Nifco Inc. | Rotary damper |
KR101266551B1 (ko) | 2008-04-02 | 2013-05-24 | 오일레스고교 가부시키가이샤 | 스러스트 슬라이드 베어링 |
-
2002
- 2002-07-17 JP JP2002207769A patent/JP2004052822A/ja active Pending
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2007114408A1 (en) * | 2006-03-29 | 2007-10-11 | Nifco Inc. | Rotary damper |
JP2007292286A (ja) * | 2006-03-29 | 2007-11-08 | Nifco Inc | 回転ダンパー |
US8177042B2 (en) | 2006-03-29 | 2012-05-15 | Nifco Inc. | Rotary damper |
KR101263064B1 (ko) | 2006-03-29 | 2013-05-10 | 가부시키가이샤 니프코 | 회전 댐퍼 |
TWI396804B (zh) * | 2006-03-29 | 2013-05-21 | Nifco Inc | 旋轉阻尼器 |
KR101266551B1 (ko) | 2008-04-02 | 2013-05-24 | 오일레스고교 가부시키가이샤 | 스러스트 슬라이드 베어링 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US3990324A (en) | Vibration damper and method of making said damper | |
GB2069095A (en) | Rubber-viscous torsional vibration dampers and a method for their manufacture | |
JPH02278019A (ja) | 弾性継手 | |
JP2004052822A (ja) | ビスカスラバーダンパの製造方法 | |
US4073047A (en) | Method of making vibration damper | |
JP4199379B2 (ja) | 防振装置 | |
JPH0650134B2 (ja) | 防振ゴムブッシュ | |
KR100425225B1 (ko) | 로크업클러치및이를구비한유체동역학적커플링장치 | |
JP3972180B2 (ja) | ダイナミックダンパー | |
US4339862A (en) | Method of making rubber/viscous torsional vibration dampers | |
CN116438391A (zh) | 驱动轮 | |
JP2005172202A (ja) | 防振装置及びその製法 | |
JP2012207708A (ja) | 防振装置の製造方法及び防振装置 | |
JP3678253B2 (ja) | 液体封入式マウント | |
JP3952164B2 (ja) | ダンパの製造方法 | |
JPH0979302A (ja) | 油圧緩衝器及び油圧緩衝器のガス封入方法 | |
JPS6020849Y2 (ja) | ト−シヨナルダンパ− | |
JPS5916585Y2 (ja) | ト−シヨナルダンパ | |
JPH0771512A (ja) | 防振装置 | |
JPH023068B2 (ja) | ||
JP2003278823A (ja) | 液封式筒形マウントの製造方法及び液封式筒形マウント | |
JP2000329180A (ja) | 防振ブッシュ | |
JPH0729328Y2 (ja) | ダンパ | |
JPH04210134A (ja) | 防振装置 | |
JP2010249249A (ja) | 防振装置 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050113 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20070112 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20070509 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20070703 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20070725 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20071121 |