JP2004052138A - 機能化繊維製品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】アスコルビン酸誘導体を、人体の皮膚の表面に存在する皮脂等の油成分により徐放出させることが可能なスキンケア効果を有する機能化繊維製品を得るための製造方法を提供する。
【解決手段】繊維製品を、水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物を界面活性剤で乳化分散させた水溶液で処理する機能化繊維製品の製造方法である。包接化合物として水に難溶なアスコルビン酸誘導体とシクロデキストリンとの包接化合物
を用いることができる。
【解決手段】繊維製品を、水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物を界面活性剤で乳化分散させた水溶液で処理する機能化繊維製品の製造方法である。包接化合物として水に難溶なアスコルビン酸誘導体とシクロデキストリンとの包接化合物
を用いることができる。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、洗濯耐久性のあるスキンケア効果を生ぜしめる成分の徐放機能を有し、且つ本来繊維製品自体が有する風合や吸湿性を損なわない機能化繊維製品の製造方法に関し、該機能化繊維製品は、肌着やシャツ等の衣料分野に好適に利用できるものである。
【0002】
【従来の技術】
アスコルビン酸は天然の抗酸化成分で、スキンケア、食品の酸化防止等の目的で化粧品や健康食品に広く用いられている。このアスコルビン酸をスキンケアや消臭機能化を目的として繊維製品に応用することは、以前から試みられている。しかしながら、アスコルビン酸は非常に酸化され易くそのまま繊維製品に付着させても、短時間で酸化されて抗酸化能を失ってしまうし、又、単に付着させただけでは洗濯耐久性が乏しい。そのため、繊維製品への応用はアスコルビン酸の安定化と繊維製品へ付着させたときの洗濯耐久性の向上改善が重要であった。
【0003】
例えば、特公平3−13355号公報には、アスコルビン酸と各種第一鉄塩とを合成樹脂を使用することにより繊維に固着させ、洗濯耐久性を持たせる消臭加工法が開示されている。しかしながら、アスコルビン酸を合成樹脂によって繊維に固着させる方法では、繊維の風合が悪くなり、又、天然繊維等のセルロース系繊維に加工した場合、繊維本来の吸湿性が損なわれるという欠点がある。又、アスコルビン酸の不安定さを解消させたものとしては、特開平10−131042号公報には消臭効果を付与せしめるため、アスコルビン酸アルキルエステルを含む酸化防止剤を内包した内胞体を有する柔軟仕上げ剤が開示され、特開平10−331070号公報には抗酸化剤と蛋白質とのコンプレックスによって抗酸化剤を安定化させた後、該コンプレックスで繊維を処理する抗酸化性繊維材料が開示されている。
【0004】
特開平10−131042号公報に開示された繊維処理組成物は、アスコルビン酸誘導体を使用しているために安定性は優れているが、該発明は洗濯後の柔軟仕上げ剤であるために洗濯耐久性は一切考慮されておらず、耐久性に劣るものである。又、特開平10−331070号公報記載の抗酸化性繊維材料は用途が食品包装材料の分野であり、抗酸化剤は安定化され洗濯耐久性はあるものの耐久性を向上させるため架橋剤と共に処理しており、徐放機能はない。
【0005】
特開平5−32537号公報にはアスコルビン酸、アスコルビン酸りん酸エステル、アスコルビン酸硫酸エステル等の誘導体がコラーゲン合成促進作用を有する物質として皮膚化粧料に用いられることが開示されているが、この化粧料はアスコルビン酸の皮膚に対する徐放機能を有するものではない。
【0006】
出願人は特開2002−61073号公報で水に難溶なアスコルビン酸誘導体を水中で界面活性剤を用いて乳化した水溶液で繊維材料を処理し固定化する方法により、洗濯耐久性を有し、皮脂による徐放機能を有する繊維材料が得られることを開示したが、加工初期のアスコルビン酸誘導体の固定化量が低いことと、多くの水に難溶なアスコルビン酸誘導体がアルカリ存在下で不安定であるため処理浴のpH管理の制約を受けるという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、本来繊維製品自体が具備している風合や吸湿性、放湿性を損なわず、水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物を繊維製品に付着させてアスコルビン酸誘導体の加工初期における固定化量の増量と洗濯耐久性を付与すると共に、アスコルビン酸誘導体を人体の皮膚の表面に存在する皮脂等の油成分により徐放出させることが可能なスキンケア効果を有する機能化繊維製品を得るための製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、繊維製品を、水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物を界面活性剤で乳化分散させた水溶液で処理する機能化繊維製品の製造方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる繊維製品は特に限定されず、素材としては通常衣類に用いられる、綿、羊毛、絹等の天然繊維、レーヨン、ポリノジック、アセテート等の再生繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成繊維で、これらを一種又は二種以上を混繊したものであってもよい。更に、これら再生繊維、合成繊維においては他の機能を発現させるための機能化剤を含有させた繊維製品でもよく、前記含有された機能化剤がアスコルビン酸誘導体の徐放性機能を阻害するものでなければ、特に限定されるものではない。再生繊維のレーヨン、ポリノジックにあっては、例えば、出願人が特開2001−164419号公報で開示した架橋剤をセルロースビスコース溶液に添加混合した後、該溶液を紡糸して得られる水に対する膨潤性を改善した改質セルロース再生繊維や特開2001−164418号公報で開示した架橋剤をセルロースビスコース溶液に添加混合した後、該溶液を紡糸し、次いで架橋剤の水溶液に接触させて得られる水に対する膨潤性及びフィブリル性を改善した改質セルロース再生繊維等であってもよい。
【0010】
又、架橋剤以外に抗菌性、消臭性、染色性改善等の他の機能を発現させるため、例えば、微小粒状キトサン、高分子中空体等の中空微粒子、アニオン化剤等の微粒子状の機能化剤を併用し、これらをセルロースビスコース溶液に添加紡糸して得られる繊維製品であってもよい。繊維製品の形状についても原繊、紡績糸、編織物、更には繊維縫製品等のいずれであってもよく、又、アスコルビン酸誘導体の徐放機能を阻害する加工処理でなければ、前記の夫々の形状の繊維製品に他の機能を付与するための加工処理を施したものでもよいが、この場合、アスコルビン酸誘導体の徐放機能の点から、前記加工処理は本発明の処理の前に行なうことが好適である。そして、繊維製品が原繊、紡績糸、編織物の場合には、処理された機能化繊維製品は衣料用の繊維縫製製品に供される。本発明は、アスコルビン酸誘導体の徐放機能を発揮するため肌に直接接触する衣料に処理することが好適である。
【0011】
本発明に用いられるアスコルビン酸誘導体は、水に難溶であり有機溶剤に可溶な誘導体であれば特に限定されず、例えば、パルミチン酸エステル誘導体、イソパルミチン酸エステル誘導体、L−アスコルビン酸モノアルキルエステル、L−アスコルビン酸ジアルキルエステル、L−アスコルビン酸トリアルキルエステル、L−アスコルビン酸テトラアルキルエステル等が挙げられるが、洗濯耐久性と安定性の点からL−アスコルビン酸テトラアルキルエステルが好適である。L−アスコルビン酸テトラアルキル誘導体としては、イソパルミトイル又はステアロイル誘導体が挙げられる。
【0012】
本発明に用いられる水に難溶なアスコルビン酸誘導体の包接に供される化合物としては、シクロデキストリンが好ましく、用いる水に難溶なアスコルビン酸誘導体に応じてα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン等の一種又は二種以上を組み合わせて好適に用いることができる。水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物を得る調製方法としては、通常行なわれている、例えば水に難溶なアスコルビン酸誘導体を水と混合し得る、例えばアルコール、アセトン等の有機溶媒に溶解させ、次いでシクロデキストリン水溶液と混和加熱し、放冷し、水に不溶の粉体として得る方法がある。水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物としては、バイエルジャパン(株)製のマイクロカプセルが挙げられる。包接化合物中のアスコルビン酸誘導体の含有量は、用いるシクロデキストリンの種類や製造方法を適宜選択することにより調製可能であり、約10〜20重量%が好ましい。
【0013】
本発明では、水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物を水中で攪拌しながら界面活性剤を用いて乳化分散させた水溶液とし、該水溶液で繊維製品を処理し、水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物を繊維製品に付着させる。本発明では、繊維製品の処理中に通常使用される樹脂加工剤、架橋化剤又はバインダー等の固着剤を併用しないので、 得られた機能化繊維製品は、樹脂加工剤、架橋化剤又はバインダー等の固着剤による風合劣化がない。
【0014】
本発明による繊維製品の処理方法としては、通常用いられるパッド−ドライ法、浸染法、スプレー法等をその用途に合わせて適宜選択することができる。パッド−ドライ法を用いる場合は、この水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物を界面活性剤で乳化分散させた水溶液に繊維製品を0.5秒間以上浸漬し、絞り率60〜120%で絞った後、温度80〜200℃で1〜30分間乾燥処理すればよい。浸漬法を用いる場合は、該乳化分散させた水溶液に繊維製品を温度80〜90℃で10〜30分間浸漬し、絞った後乾燥処理を行えばよい。繊維製品を処理する、水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物の使用量は、所望するアスコルビン酸誘導体の繊維製品への固定化量と包接化合物中のアスコルビン酸誘導体の含有率により適宜選択すればよい。
【0015】
本発明で用いる界面活性剤は、水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物が水中で乳化分散できるものであればよく、イオン性は問わない。界面活性剤の濃度は、水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物が充分に乳化分散するのに必要な量の範囲でよいが、種類によっては処理した繊維製品上に付着残存するために、濃度は低いほうが好ましい。又、乳化分散させた水溶液を得る際の攪拌方法は特に限定されず、例えば、ホモジナイザー等を用いて攪拌すればよい。
【0016】
本発明によれば、繊維製品を水に難溶なアルコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物の乳化水溶液で処理するために、繊維製品に効率よく付着固定化させることができ、乾燥して得た機能化繊維製品に固定化された水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物中のアスコルビン酸誘導体は10回洗濯を繰り返しても50%以上残存し、優れた洗濯耐久性を示す。これは、アスコルビン酸誘導体が水に難溶なため親水性が非常に小さいことによる。繊維製品に固定化された水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物中のアスコルビン酸誘導体は、繊維に固定されたままの状態では期待される抗酸化能を発揮せず、着用時に機能化繊維製品の着用者の皮脂等の油脂により機能化繊維製品から皮膚上に徐放されて、皮膚に取り込まれることで効果を発揮するものである。
【0017】
本発明によれば、洗濯による水に難溶なアスコルビン酸誘導体の溶出が押さえられると共に、該誘導体は皮脂等の油脂には良く溶解するために、人体の皮膚の表面に存在する皮脂等の油成分によって徐放されることが期待され、ひいては皮膚内部への取り込みによってスキンケア効果を発揮させることが可能であると推察される。更に、本発明の機能化繊維製品は、処理を行う際に、固着剤を用いないために繊維製品自体が有する風合い、及び吸放湿性等に全く変化を与えることはない。
【0018】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこの範囲に限定されるものではない。尚、各測定値は以下に記載の試験方法により求めた。
・風合いの評価
10名のパネラーで本発明の方法で得た織物の風合を触感判定し、風合がよいもの1点、悪いもの0点とし、各人の評価の合計点から下記の基準に従い風合を判定した。
8〜10点 ○(良好)、4〜7点 △(ややよい)、0〜3点 ×(悪い)
【0019】
・吸湿性・放湿性評価の吸湿率・放湿率
重量Whg既知の秤量瓶に試料約1g入れ、蓋を開いた状態で105℃で60分間乾燥した後、シリカゲル入りデシケータ中にて30分間放置して冷却し、重量W0gを測定した。次いで、相対湿度53%のデシケータ内に一晩放置した後、35℃、相対湿度90%に調湿した恒温恒湿器内に秤量瓶の蓋を開けて入れ、60分後に蓋を閉めて秤量瓶を取り出し、重量W1gを測定した。更に25℃、相対湿度53%に調湿した恒温恒湿器内に秤量瓶の蓋を開けて入れ、60分後に蓋を閉めて秤量瓶を取り出し、重量W2gを測定した。これらの結果から、吸湿率を数1、放湿率を数2により求めた。
【数1】
【数2】
【0020】
・アスコルビン酸誘導体の固定化量の測定方法
試料をイソプロパノールの溶液に入れ、37℃で2時間振とうした後に、上澄み液をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)で測定し、得られたアスコルビン酸誘導体のピーク面積から試料に付着したアスコルビン酸誘導体量を計算した。
【0021】
・洗濯耐久性の算出方法
加工初期の試料のアスコルビン酸誘導体の固定化量とJIS L0217−1995「繊維製品の取り扱いに関する表示用語及び表示方法」2.2(1)洗い方番号103に基づいて10回繰り返し洗濯した後に乾燥して得た試料のアスコルビン酸誘導体の固定化量から、下式数3により洗濯耐久性(%)を算出した。
【数3】
【0022】
・徐放性の評価方法
試料にオレイン酸を0.3〜0.5%owfになるようにオレイン酸を付着させた後に、JIS L0217、繊維製品の取扱いに関する表示記号及びその表示方法、2.2(1)洗い方番号103に準じて市販洗剤〔商品名:アタック、花王(株)製〕を用いて洗濯した。1回、4回、10回洗濯・乾燥後の試料に残存しているアスコルビン酸誘導体の固定化量を上記のアスコルビン酸誘導体の固定化量の測定方法で定量した。
【0023】
〔実施例1〕
1.655texのポリウレタン弾性糸〔商品名:フジボウスパンデックス、富士紡績(株)製〕を芯糸として、1.11texのナイロン糸〔商品名:ミラコスモ、東レ(株)製〕を被覆したS撚りシングルカバードヤーン(以下SCYと略称する)を製造した。同様に1.655texのポリウレタン弾性糸を芯糸として1.11texのナイロン糸を被覆したZ撚りSCYを製造し、パンティストッキング用原糸とした。
【0024】
針数400本のパンティストッキング編立機にS撚りSCYとZ撚りSCYを1本ずつ交互に給糸して回転数500rpmでパンティストッキング7足を製造した。得られたパンティストッキングを夫々プリセット機にて80℃で10分間熱処理した後、縫製した。得られたパンティストッキングはナイロン糸62.2%、ポリウレタン弾性糸37.8%の混用率であった。
【0025】
7足のパンティストッキングをドラム染色機に投入し、酸性染料〔商品名:Kayanol Navy Blue R,Kayanol Red NB、日本化薬(株)製〕4.2%owf、硫安3%owfを含む染色浴で浴比1:20、90℃で染色した後水洗し、遠心脱水した後、80℃の温風で30分間乾燥した。その後、通常のフィックス処理を行い、染色したパンティストッキングを得た。
【0026】
染色されたパンティストッキング1足ずつを繊維重量あたり、水に難溶なアスコルビン酸誘導体であるテトライソパルミチン酸L−アルコルビル〔商品名:NIKKOL VC−IP、日光ケミカルズ(株)製〕をα−シクロデキストリンとβ−シクロデキストリンで包接した包接化合物であるバイエルンジャパン(株)製のマイクロカプセル(混合比;α:β=3:1、アスコルビン酸誘導体含有量14%)と界面活性剤〔商品名:レオドール、(株)花王製〕を夫々0.1%owf、0.5%owf、1.0%owf、3.0%owf、5.0%owf、10.0%owf、20.0%owfを水中に加え、攪拌して得た乳化分散させた表1に示す7種の水溶液中に入れ、浴比1:20で90℃まで昇温し、30分間加熱処理した。次いで、仕上げ剤〔商品名:エバファノールN−20、日華化学(株)製〕4.0%owfを含む水溶液の処理浴で浴比1:20、40℃で15分間処理した後、遠心脱水し、80℃の温風で30分間乾燥し、試料No.1〜No.7を得た。
【0027】
これらの試料を用いてアスコルビン酸誘導体の加工初期の固定化量、洗濯耐久性、徐放性の評価を行い、その結果を表1に示した。
【0028】
【表1】
【0029】
表1より、水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物の処理濃度が0.1%owfである試料No.1は、アスコルビン酸誘導体の加工初期固定化量が0.05mg/gと非常に少なく、又、洗濯耐久性もなかった。水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物の処理濃度が20.0%owfである試料No.7は、処理濃度が10.0%owfである試料No.6に比べて処理濃度を増加させてもアスコルビン酸誘導体の加工初期固定化量が殆ど変わらない。
【0030】
試料No.2〜No.6は水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物の処理濃度が増加すると共に加工初期のアスコルビン酸誘導体の固定化量も増加している。又、洗濯10回後のアスコルビン酸誘導体の固定化量も水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物の処理濃度が増加すると共に増加している。それらの試料の洗濯耐久性は55.2〜74.2%といずれも50%以上の高い洗濯耐久性を示した。又、試料No.2〜No.7について前記の皮脂成分に見立てたオレイン酸処理をした後洗濯した徐放性の評価では、洗濯10回後のアスコルビン酸誘導体の固定化量の減少度が単なる洗濯のみの試料と比較して大きく、洗濯4回後の固定化量の減少率から、アスコルビン酸誘導体が皮脂に対して徐放性を有することが確認できた。
【0031】
〔実施例2〕
実施例1で用いた水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物を用い、この包接化合物を7g、界面活性剤〔商品名:レオドロール、(株)花王製〕7gを混合し、全量で1kgになるように水を加えた後、ホモジナイザーで乳化分散させ、乳化分散させた水溶液を得た。
【0032】
通常の条件で毛焼・糊抜・精練・漂白処理した綿100%ブロード織物〔(50TEX/1×55TEX/1)/144(本/インチ)×76(本/インチ)〕、通常の条件で毛焼・糊抜・精練・漂白処理した綿50%とポリエステル50%の混紡ブロード織物〔(23TEX/1×23TEX/1)/110(本/インチ)×57(本/インチ)〕、通常の条件で毛焼・糊抜・精練処理したナイロン100%フィラメント織物〔(7TEX×7TEX)/214(本/インチ)×150(本/インチ)〕の3種の織物を夫々30cm×30cmの大きさに切り取り、夫々を上述の包接化合物を乳化分散させた水溶液に浸漬し、絞り率100%で絞った後、120℃で5分間熱処理し、夫々試料No.8〜No.10を得た。
【0033】
前述と同一のアスコルビン酸誘導体の包接化合物を7g、同一の界面活性剤を7g、固着剤である樹脂加工剤〔商品名:アルコフィックスPL8863、クラリアントジャパン(株)製〕5g及び触媒〔商品名:リケンフィクサーMX−18、三木理研工業(株)製〕1.5gを混合し、全量が1kgになるように水を加えた後、ホモジナイザーで乳化分散させ、包接化合物が乳化分散された水溶液を得た。前述の通常の条件で毛焼・糊抜・精練・漂白処理した綿100%ブロード織物をアスコルビン酸誘導体の包接化合物と樹脂加工剤を含む該水溶液中に浸漬し、絞り率100%で絞った後、120℃で5分間熱処理し、比較試料No.1を得た。
【0034】
アスコルビン酸誘導体のテトライソパルミチン酸L−アスコルビル〔商品名:NIKKOL VC−IP、日光ケミカルズ(株)製〕を1g、スクワラン〔試薬スクワラン、関東化学(株)製〕5g、ドデカノール〔商品名:1−ドデカノール、関東化学(株)製〕1g、アニオン系界面活性剤〔商品名:レベノールWX、(株)花王製〕0.8g、非イオン系界面活性剤〔商品名:レオドール、(株)花王製〕0.8gを混合し、全量が1kgになるように水を加えた後、ホモジナイザーで乳化分散させた水溶液を得た。前述の通常の条件で毛焼・糊抜・精練・漂白処理した綿100%ブロード織物を得られた前述のアスコルビン酸誘導体等を乳化分散させた水溶液に浸漬し、絞り率100%で絞った後、120℃で5分間熱処理し、比較試料No.2を得た。
【0035】
同様に綿50%とポリエステル50%の混紡ブロード織物、及びナイロンフィラメント100%織物とを表2に記載の条件で処理し、試料No.9と試料No.10を得た。
【0036】
試料No.8〜No.10、比較試料No.1及び比較試料No.2の加工初期の固定化量、洗濯耐久性、徐放性の評価を実施し、又、試料No.8〜No.10とそれぞれの未処理布、及び比較試料No.1、比較試料No.2について風合の評価、吸湿性及び放湿性の評価を行い、それらの結果を表2に示した。
【0037】
【表2】
【0038】
表2より水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物7g、界面活性剤7gの乳化分散された水溶液で処理した試料No.8〜No.10は素材が異なるにも拘らず、いずれも洗濯耐久性が50%以上の高い洗濯耐久性を示した。徐放機能についても同様に良好であった。又、これらの試料の風合は夫々の未処理布と同様に良好であり、本発明による吸放湿性の低下も見られなかった。一方、固着剤を併用した比較試料No.1は加工初期のアスコルビン酸誘導体の固定化量、洗濯耐久性、徐放性及び吸放湿性は試料No.8〜No.10と比較して差は殆どないが、固着剤を用いたために風合いの劣化が認められた。又、アスコルビン酸誘導体、スクワラン、ドデカノール、アニオン系界面活性剤及び非イオン系界面活性剤の乳化分散された水溶液で処理された比較試料No.2は試料No.8〜No.10に比べて加工初期のアスコルビン酸誘導体の固定量が低かった。
【0039】
【発明の効果】
本発明は、水に難溶なアスコルビン酸誘導体のシクロデキストリンによる水不溶の包接化合物を繊維製品に付着させた機能化繊維製品の製造方法であり、該製造方法により、衣料分野において風合に優れ、本来繊維製品自体が具備している吸放湿性を損なわずに、洗濯耐久性のあるスキンケア効果、即ち、人体の皮膚の表面に存在する皮脂等の油成分によりアスコルビン酸誘導体を徐放出させ、スキンケア効果を発揮する機能化繊維製品を得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、洗濯耐久性のあるスキンケア効果を生ぜしめる成分の徐放機能を有し、且つ本来繊維製品自体が有する風合や吸湿性を損なわない機能化繊維製品の製造方法に関し、該機能化繊維製品は、肌着やシャツ等の衣料分野に好適に利用できるものである。
【0002】
【従来の技術】
アスコルビン酸は天然の抗酸化成分で、スキンケア、食品の酸化防止等の目的で化粧品や健康食品に広く用いられている。このアスコルビン酸をスキンケアや消臭機能化を目的として繊維製品に応用することは、以前から試みられている。しかしながら、アスコルビン酸は非常に酸化され易くそのまま繊維製品に付着させても、短時間で酸化されて抗酸化能を失ってしまうし、又、単に付着させただけでは洗濯耐久性が乏しい。そのため、繊維製品への応用はアスコルビン酸の安定化と繊維製品へ付着させたときの洗濯耐久性の向上改善が重要であった。
【0003】
例えば、特公平3−13355号公報には、アスコルビン酸と各種第一鉄塩とを合成樹脂を使用することにより繊維に固着させ、洗濯耐久性を持たせる消臭加工法が開示されている。しかしながら、アスコルビン酸を合成樹脂によって繊維に固着させる方法では、繊維の風合が悪くなり、又、天然繊維等のセルロース系繊維に加工した場合、繊維本来の吸湿性が損なわれるという欠点がある。又、アスコルビン酸の不安定さを解消させたものとしては、特開平10−131042号公報には消臭効果を付与せしめるため、アスコルビン酸アルキルエステルを含む酸化防止剤を内包した内胞体を有する柔軟仕上げ剤が開示され、特開平10−331070号公報には抗酸化剤と蛋白質とのコンプレックスによって抗酸化剤を安定化させた後、該コンプレックスで繊維を処理する抗酸化性繊維材料が開示されている。
【0004】
特開平10−131042号公報に開示された繊維処理組成物は、アスコルビン酸誘導体を使用しているために安定性は優れているが、該発明は洗濯後の柔軟仕上げ剤であるために洗濯耐久性は一切考慮されておらず、耐久性に劣るものである。又、特開平10−331070号公報記載の抗酸化性繊維材料は用途が食品包装材料の分野であり、抗酸化剤は安定化され洗濯耐久性はあるものの耐久性を向上させるため架橋剤と共に処理しており、徐放機能はない。
【0005】
特開平5−32537号公報にはアスコルビン酸、アスコルビン酸りん酸エステル、アスコルビン酸硫酸エステル等の誘導体がコラーゲン合成促進作用を有する物質として皮膚化粧料に用いられることが開示されているが、この化粧料はアスコルビン酸の皮膚に対する徐放機能を有するものではない。
【0006】
出願人は特開2002−61073号公報で水に難溶なアスコルビン酸誘導体を水中で界面活性剤を用いて乳化した水溶液で繊維材料を処理し固定化する方法により、洗濯耐久性を有し、皮脂による徐放機能を有する繊維材料が得られることを開示したが、加工初期のアスコルビン酸誘導体の固定化量が低いことと、多くの水に難溶なアスコルビン酸誘導体がアルカリ存在下で不安定であるため処理浴のpH管理の制約を受けるという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、本来繊維製品自体が具備している風合や吸湿性、放湿性を損なわず、水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物を繊維製品に付着させてアスコルビン酸誘導体の加工初期における固定化量の増量と洗濯耐久性を付与すると共に、アスコルビン酸誘導体を人体の皮膚の表面に存在する皮脂等の油成分により徐放出させることが可能なスキンケア効果を有する機能化繊維製品を得るための製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、繊維製品を、水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物を界面活性剤で乳化分散させた水溶液で処理する機能化繊維製品の製造方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる繊維製品は特に限定されず、素材としては通常衣類に用いられる、綿、羊毛、絹等の天然繊維、レーヨン、ポリノジック、アセテート等の再生繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成繊維で、これらを一種又は二種以上を混繊したものであってもよい。更に、これら再生繊維、合成繊維においては他の機能を発現させるための機能化剤を含有させた繊維製品でもよく、前記含有された機能化剤がアスコルビン酸誘導体の徐放性機能を阻害するものでなければ、特に限定されるものではない。再生繊維のレーヨン、ポリノジックにあっては、例えば、出願人が特開2001−164419号公報で開示した架橋剤をセルロースビスコース溶液に添加混合した後、該溶液を紡糸して得られる水に対する膨潤性を改善した改質セルロース再生繊維や特開2001−164418号公報で開示した架橋剤をセルロースビスコース溶液に添加混合した後、該溶液を紡糸し、次いで架橋剤の水溶液に接触させて得られる水に対する膨潤性及びフィブリル性を改善した改質セルロース再生繊維等であってもよい。
【0010】
又、架橋剤以外に抗菌性、消臭性、染色性改善等の他の機能を発現させるため、例えば、微小粒状キトサン、高分子中空体等の中空微粒子、アニオン化剤等の微粒子状の機能化剤を併用し、これらをセルロースビスコース溶液に添加紡糸して得られる繊維製品であってもよい。繊維製品の形状についても原繊、紡績糸、編織物、更には繊維縫製品等のいずれであってもよく、又、アスコルビン酸誘導体の徐放機能を阻害する加工処理でなければ、前記の夫々の形状の繊維製品に他の機能を付与するための加工処理を施したものでもよいが、この場合、アスコルビン酸誘導体の徐放機能の点から、前記加工処理は本発明の処理の前に行なうことが好適である。そして、繊維製品が原繊、紡績糸、編織物の場合には、処理された機能化繊維製品は衣料用の繊維縫製製品に供される。本発明は、アスコルビン酸誘導体の徐放機能を発揮するため肌に直接接触する衣料に処理することが好適である。
【0011】
本発明に用いられるアスコルビン酸誘導体は、水に難溶であり有機溶剤に可溶な誘導体であれば特に限定されず、例えば、パルミチン酸エステル誘導体、イソパルミチン酸エステル誘導体、L−アスコルビン酸モノアルキルエステル、L−アスコルビン酸ジアルキルエステル、L−アスコルビン酸トリアルキルエステル、L−アスコルビン酸テトラアルキルエステル等が挙げられるが、洗濯耐久性と安定性の点からL−アスコルビン酸テトラアルキルエステルが好適である。L−アスコルビン酸テトラアルキル誘導体としては、イソパルミトイル又はステアロイル誘導体が挙げられる。
【0012】
本発明に用いられる水に難溶なアスコルビン酸誘導体の包接に供される化合物としては、シクロデキストリンが好ましく、用いる水に難溶なアスコルビン酸誘導体に応じてα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン等の一種又は二種以上を組み合わせて好適に用いることができる。水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物を得る調製方法としては、通常行なわれている、例えば水に難溶なアスコルビン酸誘導体を水と混合し得る、例えばアルコール、アセトン等の有機溶媒に溶解させ、次いでシクロデキストリン水溶液と混和加熱し、放冷し、水に不溶の粉体として得る方法がある。水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物としては、バイエルジャパン(株)製のマイクロカプセルが挙げられる。包接化合物中のアスコルビン酸誘導体の含有量は、用いるシクロデキストリンの種類や製造方法を適宜選択することにより調製可能であり、約10〜20重量%が好ましい。
【0013】
本発明では、水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物を水中で攪拌しながら界面活性剤を用いて乳化分散させた水溶液とし、該水溶液で繊維製品を処理し、水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物を繊維製品に付着させる。本発明では、繊維製品の処理中に通常使用される樹脂加工剤、架橋化剤又はバインダー等の固着剤を併用しないので、 得られた機能化繊維製品は、樹脂加工剤、架橋化剤又はバインダー等の固着剤による風合劣化がない。
【0014】
本発明による繊維製品の処理方法としては、通常用いられるパッド−ドライ法、浸染法、スプレー法等をその用途に合わせて適宜選択することができる。パッド−ドライ法を用いる場合は、この水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物を界面活性剤で乳化分散させた水溶液に繊維製品を0.5秒間以上浸漬し、絞り率60〜120%で絞った後、温度80〜200℃で1〜30分間乾燥処理すればよい。浸漬法を用いる場合は、該乳化分散させた水溶液に繊維製品を温度80〜90℃で10〜30分間浸漬し、絞った後乾燥処理を行えばよい。繊維製品を処理する、水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物の使用量は、所望するアスコルビン酸誘導体の繊維製品への固定化量と包接化合物中のアスコルビン酸誘導体の含有率により適宜選択すればよい。
【0015】
本発明で用いる界面活性剤は、水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物が水中で乳化分散できるものであればよく、イオン性は問わない。界面活性剤の濃度は、水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物が充分に乳化分散するのに必要な量の範囲でよいが、種類によっては処理した繊維製品上に付着残存するために、濃度は低いほうが好ましい。又、乳化分散させた水溶液を得る際の攪拌方法は特に限定されず、例えば、ホモジナイザー等を用いて攪拌すればよい。
【0016】
本発明によれば、繊維製品を水に難溶なアルコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物の乳化水溶液で処理するために、繊維製品に効率よく付着固定化させることができ、乾燥して得た機能化繊維製品に固定化された水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物中のアスコルビン酸誘導体は10回洗濯を繰り返しても50%以上残存し、優れた洗濯耐久性を示す。これは、アスコルビン酸誘導体が水に難溶なため親水性が非常に小さいことによる。繊維製品に固定化された水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物中のアスコルビン酸誘導体は、繊維に固定されたままの状態では期待される抗酸化能を発揮せず、着用時に機能化繊維製品の着用者の皮脂等の油脂により機能化繊維製品から皮膚上に徐放されて、皮膚に取り込まれることで効果を発揮するものである。
【0017】
本発明によれば、洗濯による水に難溶なアスコルビン酸誘導体の溶出が押さえられると共に、該誘導体は皮脂等の油脂には良く溶解するために、人体の皮膚の表面に存在する皮脂等の油成分によって徐放されることが期待され、ひいては皮膚内部への取り込みによってスキンケア効果を発揮させることが可能であると推察される。更に、本発明の機能化繊維製品は、処理を行う際に、固着剤を用いないために繊維製品自体が有する風合い、及び吸放湿性等に全く変化を与えることはない。
【0018】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこの範囲に限定されるものではない。尚、各測定値は以下に記載の試験方法により求めた。
・風合いの評価
10名のパネラーで本発明の方法で得た織物の風合を触感判定し、風合がよいもの1点、悪いもの0点とし、各人の評価の合計点から下記の基準に従い風合を判定した。
8〜10点 ○(良好)、4〜7点 △(ややよい)、0〜3点 ×(悪い)
【0019】
・吸湿性・放湿性評価の吸湿率・放湿率
重量Whg既知の秤量瓶に試料約1g入れ、蓋を開いた状態で105℃で60分間乾燥した後、シリカゲル入りデシケータ中にて30分間放置して冷却し、重量W0gを測定した。次いで、相対湿度53%のデシケータ内に一晩放置した後、35℃、相対湿度90%に調湿した恒温恒湿器内に秤量瓶の蓋を開けて入れ、60分後に蓋を閉めて秤量瓶を取り出し、重量W1gを測定した。更に25℃、相対湿度53%に調湿した恒温恒湿器内に秤量瓶の蓋を開けて入れ、60分後に蓋を閉めて秤量瓶を取り出し、重量W2gを測定した。これらの結果から、吸湿率を数1、放湿率を数2により求めた。
【数1】
【数2】
【0020】
・アスコルビン酸誘導体の固定化量の測定方法
試料をイソプロパノールの溶液に入れ、37℃で2時間振とうした後に、上澄み液をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)で測定し、得られたアスコルビン酸誘導体のピーク面積から試料に付着したアスコルビン酸誘導体量を計算した。
【0021】
・洗濯耐久性の算出方法
加工初期の試料のアスコルビン酸誘導体の固定化量とJIS L0217−1995「繊維製品の取り扱いに関する表示用語及び表示方法」2.2(1)洗い方番号103に基づいて10回繰り返し洗濯した後に乾燥して得た試料のアスコルビン酸誘導体の固定化量から、下式数3により洗濯耐久性(%)を算出した。
【数3】
【0022】
・徐放性の評価方法
試料にオレイン酸を0.3〜0.5%owfになるようにオレイン酸を付着させた後に、JIS L0217、繊維製品の取扱いに関する表示記号及びその表示方法、2.2(1)洗い方番号103に準じて市販洗剤〔商品名:アタック、花王(株)製〕を用いて洗濯した。1回、4回、10回洗濯・乾燥後の試料に残存しているアスコルビン酸誘導体の固定化量を上記のアスコルビン酸誘導体の固定化量の測定方法で定量した。
【0023】
〔実施例1〕
1.655texのポリウレタン弾性糸〔商品名:フジボウスパンデックス、富士紡績(株)製〕を芯糸として、1.11texのナイロン糸〔商品名:ミラコスモ、東レ(株)製〕を被覆したS撚りシングルカバードヤーン(以下SCYと略称する)を製造した。同様に1.655texのポリウレタン弾性糸を芯糸として1.11texのナイロン糸を被覆したZ撚りSCYを製造し、パンティストッキング用原糸とした。
【0024】
針数400本のパンティストッキング編立機にS撚りSCYとZ撚りSCYを1本ずつ交互に給糸して回転数500rpmでパンティストッキング7足を製造した。得られたパンティストッキングを夫々プリセット機にて80℃で10分間熱処理した後、縫製した。得られたパンティストッキングはナイロン糸62.2%、ポリウレタン弾性糸37.8%の混用率であった。
【0025】
7足のパンティストッキングをドラム染色機に投入し、酸性染料〔商品名:Kayanol Navy Blue R,Kayanol Red NB、日本化薬(株)製〕4.2%owf、硫安3%owfを含む染色浴で浴比1:20、90℃で染色した後水洗し、遠心脱水した後、80℃の温風で30分間乾燥した。その後、通常のフィックス処理を行い、染色したパンティストッキングを得た。
【0026】
染色されたパンティストッキング1足ずつを繊維重量あたり、水に難溶なアスコルビン酸誘導体であるテトライソパルミチン酸L−アルコルビル〔商品名:NIKKOL VC−IP、日光ケミカルズ(株)製〕をα−シクロデキストリンとβ−シクロデキストリンで包接した包接化合物であるバイエルンジャパン(株)製のマイクロカプセル(混合比;α:β=3:1、アスコルビン酸誘導体含有量14%)と界面活性剤〔商品名:レオドール、(株)花王製〕を夫々0.1%owf、0.5%owf、1.0%owf、3.0%owf、5.0%owf、10.0%owf、20.0%owfを水中に加え、攪拌して得た乳化分散させた表1に示す7種の水溶液中に入れ、浴比1:20で90℃まで昇温し、30分間加熱処理した。次いで、仕上げ剤〔商品名:エバファノールN−20、日華化学(株)製〕4.0%owfを含む水溶液の処理浴で浴比1:20、40℃で15分間処理した後、遠心脱水し、80℃の温風で30分間乾燥し、試料No.1〜No.7を得た。
【0027】
これらの試料を用いてアスコルビン酸誘導体の加工初期の固定化量、洗濯耐久性、徐放性の評価を行い、その結果を表1に示した。
【0028】
【表1】
【0029】
表1より、水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物の処理濃度が0.1%owfである試料No.1は、アスコルビン酸誘導体の加工初期固定化量が0.05mg/gと非常に少なく、又、洗濯耐久性もなかった。水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物の処理濃度が20.0%owfである試料No.7は、処理濃度が10.0%owfである試料No.6に比べて処理濃度を増加させてもアスコルビン酸誘導体の加工初期固定化量が殆ど変わらない。
【0030】
試料No.2〜No.6は水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物の処理濃度が増加すると共に加工初期のアスコルビン酸誘導体の固定化量も増加している。又、洗濯10回後のアスコルビン酸誘導体の固定化量も水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物の処理濃度が増加すると共に増加している。それらの試料の洗濯耐久性は55.2〜74.2%といずれも50%以上の高い洗濯耐久性を示した。又、試料No.2〜No.7について前記の皮脂成分に見立てたオレイン酸処理をした後洗濯した徐放性の評価では、洗濯10回後のアスコルビン酸誘導体の固定化量の減少度が単なる洗濯のみの試料と比較して大きく、洗濯4回後の固定化量の減少率から、アスコルビン酸誘導体が皮脂に対して徐放性を有することが確認できた。
【0031】
〔実施例2〕
実施例1で用いた水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物を用い、この包接化合物を7g、界面活性剤〔商品名:レオドロール、(株)花王製〕7gを混合し、全量で1kgになるように水を加えた後、ホモジナイザーで乳化分散させ、乳化分散させた水溶液を得た。
【0032】
通常の条件で毛焼・糊抜・精練・漂白処理した綿100%ブロード織物〔(50TEX/1×55TEX/1)/144(本/インチ)×76(本/インチ)〕、通常の条件で毛焼・糊抜・精練・漂白処理した綿50%とポリエステル50%の混紡ブロード織物〔(23TEX/1×23TEX/1)/110(本/インチ)×57(本/インチ)〕、通常の条件で毛焼・糊抜・精練処理したナイロン100%フィラメント織物〔(7TEX×7TEX)/214(本/インチ)×150(本/インチ)〕の3種の織物を夫々30cm×30cmの大きさに切り取り、夫々を上述の包接化合物を乳化分散させた水溶液に浸漬し、絞り率100%で絞った後、120℃で5分間熱処理し、夫々試料No.8〜No.10を得た。
【0033】
前述と同一のアスコルビン酸誘導体の包接化合物を7g、同一の界面活性剤を7g、固着剤である樹脂加工剤〔商品名:アルコフィックスPL8863、クラリアントジャパン(株)製〕5g及び触媒〔商品名:リケンフィクサーMX−18、三木理研工業(株)製〕1.5gを混合し、全量が1kgになるように水を加えた後、ホモジナイザーで乳化分散させ、包接化合物が乳化分散された水溶液を得た。前述の通常の条件で毛焼・糊抜・精練・漂白処理した綿100%ブロード織物をアスコルビン酸誘導体の包接化合物と樹脂加工剤を含む該水溶液中に浸漬し、絞り率100%で絞った後、120℃で5分間熱処理し、比較試料No.1を得た。
【0034】
アスコルビン酸誘導体のテトライソパルミチン酸L−アスコルビル〔商品名:NIKKOL VC−IP、日光ケミカルズ(株)製〕を1g、スクワラン〔試薬スクワラン、関東化学(株)製〕5g、ドデカノール〔商品名:1−ドデカノール、関東化学(株)製〕1g、アニオン系界面活性剤〔商品名:レベノールWX、(株)花王製〕0.8g、非イオン系界面活性剤〔商品名:レオドール、(株)花王製〕0.8gを混合し、全量が1kgになるように水を加えた後、ホモジナイザーで乳化分散させた水溶液を得た。前述の通常の条件で毛焼・糊抜・精練・漂白処理した綿100%ブロード織物を得られた前述のアスコルビン酸誘導体等を乳化分散させた水溶液に浸漬し、絞り率100%で絞った後、120℃で5分間熱処理し、比較試料No.2を得た。
【0035】
同様に綿50%とポリエステル50%の混紡ブロード織物、及びナイロンフィラメント100%織物とを表2に記載の条件で処理し、試料No.9と試料No.10を得た。
【0036】
試料No.8〜No.10、比較試料No.1及び比較試料No.2の加工初期の固定化量、洗濯耐久性、徐放性の評価を実施し、又、試料No.8〜No.10とそれぞれの未処理布、及び比較試料No.1、比較試料No.2について風合の評価、吸湿性及び放湿性の評価を行い、それらの結果を表2に示した。
【0037】
【表2】
【0038】
表2より水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物7g、界面活性剤7gの乳化分散された水溶液で処理した試料No.8〜No.10は素材が異なるにも拘らず、いずれも洗濯耐久性が50%以上の高い洗濯耐久性を示した。徐放機能についても同様に良好であった。又、これらの試料の風合は夫々の未処理布と同様に良好であり、本発明による吸放湿性の低下も見られなかった。一方、固着剤を併用した比較試料No.1は加工初期のアスコルビン酸誘導体の固定化量、洗濯耐久性、徐放性及び吸放湿性は試料No.8〜No.10と比較して差は殆どないが、固着剤を用いたために風合いの劣化が認められた。又、アスコルビン酸誘導体、スクワラン、ドデカノール、アニオン系界面活性剤及び非イオン系界面活性剤の乳化分散された水溶液で処理された比較試料No.2は試料No.8〜No.10に比べて加工初期のアスコルビン酸誘導体の固定量が低かった。
【0039】
【発明の効果】
本発明は、水に難溶なアスコルビン酸誘導体のシクロデキストリンによる水不溶の包接化合物を繊維製品に付着させた機能化繊維製品の製造方法であり、該製造方法により、衣料分野において風合に優れ、本来繊維製品自体が具備している吸放湿性を損なわずに、洗濯耐久性のあるスキンケア効果、即ち、人体の皮膚の表面に存在する皮脂等の油成分によりアスコルビン酸誘導体を徐放出させ、スキンケア効果を発揮する機能化繊維製品を得ることができる。
Claims (2)
- 繊維製品を、水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物を界面活性剤で乳化分散させた水溶液で処理することを特徴とする機能化繊維製品の製造方法。
- 水に難溶なアスコルビン酸誘導体の水不溶の包接化合物が、シクロデキストリンによる包接化合物である請求項1に記載の機能化繊維製品の製造方法。
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