JP2004051100A - フィルムインサート注出口及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】フィルムインサート注出口を容器に超音波シールした時に注出口の裏スコア部分に生じがちなピンホールやフィルムの剥離、破断を防止する。
【解決手段】注出口のフィルムインサート成形に用いる金型の内面で、且つ、注出口の裏スコア4Aを形成すべき領域のうち、少なくとも、ピンホールやフィルムの剥離、破断を生じやすい領域に対応する部分を平坦面としておき、その金型を用いてフィルムインサート成形し、成形時の樹脂の収縮などによって自然に生じる窪みによって第二裏スコア部4bを形成し、他の領域は山状断面の第一裏スコア部4aとする。第二裏スコア部4bではフィルム2に対する樹脂の接着性が良好であるので、超音波シール時に生じ勝ちであったピンホールの発生やフィルムの剥離、破断を防止できる。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、牛乳、ジュース、酒などの液体を収容するための紙製の容器に取り付ける注出口に関し、特に、ガスバリア性の高いフィルム(金属箔を含む)を樹脂と一体に成形してなるフィルムインサート注出口に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、紙製の容器に樹脂製の注出口を取り付けることが広く行われており、その注出口は多くの場合、ポリエチレンの射出成形によって作られていた。ところが、容器の内容物によっては、ポリエチレン製の注出口ではガスバリア性が不足し、更に高いガスバリア性を要求される場合があった。そこで、樹脂製の注出口のガスバリア性を向上させるため、注出口の口壁裏面に、ガスバリア性の高いPVDC、EVOH、MXナイロン、アルミ箔等のフィルムを、インサート成形によって一体化した注出口が開発され、使用されている。図9はインサート成形によって作られた従来のフィルムインサート注出口1を示すものであり、この注出口1は、容器に取り付けるためのフランジ部1aと、そのフランジ部1aから直立するように形成された筒状のノズル部1bと、そのノズル部1bを閉じる口壁1cと、その口壁1cの裏面側に配置されたガスバリア性の高いフィルム2と、口壁1cを容易に開封しうるように、口壁1cの表面側に無端状に形成された深い溝からなる表スコア3と、口壁1cの下面側に表スコア3に対応して形成された浅い裏スコア4と、口壁1cの、表スコア3で囲まれた領域内で且つ表スコア3に隣接した位置に支柱1dを介して連結されたプルリング1eとを備えている。ここで、裏スコア4(及び表スコア3)の平面形状は、図10に示すように、全体が点Oを中心とするほぼ円形をなし、その一部を、破断を開始しやすくするよう外側に突出させて角部4cとし、そこに支柱1dを配置している。また、断面形状は、図11(a)に拡大して示すように、表スコア3を台形状の深い溝とし、裏スコア4を両側の斜面の傾斜角α、αが互いに等しい山状の浅い溝としていた。そして、これらの表スコア3及び裏スコア4を形成するため、図11(b)に示すように、インサート成形に用いる金型7には、表スコア3に対応する位置に台形状の凸条7aが、裏スコア4に対応する位置に山状の凸条7bが形成されており、これらの凸条7a、7bによって表スコア3、裏スコア4を形成していた。
【0003】
ところが、この種のフィルムインサート注出口1では、フランジ部1aを容器に対して超音波シールした時に、裏スコア4の位置で、薄肉部にピンホールが発生するとか、フィルム2が剥離し、破断することがあり、容器の気密性やガスバリア性が低下するという問題があった。この原因は、成形時における樹脂の流れにあった。すなわち、注出口1の成形に当たって、樹脂を図9に矢印Pで示すように口壁1cのほぼ中央に射出しており、その樹脂は、図11(b)に示すように、凸条7a、7bの間を矢印Q方向に流れるため、凸条7bの下流側では樹脂が乱流状態となり、凸条7bの下流側の表面に位置するフィルム2に対して良好な接着が阻害され、接着力が小さくなり、場合によっては剥離していた。このため、注出口の超音波シール時に、フランジ部に作用する超音波振動がスコア部分に伝播し、裏スコア4においてフィルム2が樹脂部から剥がれ、破断するとか、フィルム2が剥がれることにより樹脂部が弱くなり、その樹脂部に超音波振動が集中してピンホールが発生し、場合によっては樹脂部に破断が生じていた。
【0004】
そこで、本出願人らはこの問題点を解決するため、図12(b)に示すように、裏スコアを形成するための凸条7aの断面形状を、樹脂の流れに関して下流側がなだらかな斜面となるようにし、これによって、図12(a)に示すように、裏スコア4の断面形状を、外側斜面が内側斜面よりもゆるくなるようにした構造の、すなわち、下流側の傾斜角α1 を上流側の傾斜角α2 よりも大きくした注出口を開発し、特許出願した(特開2001−354257号公報参照)。この注出口では、裏スコア4におけるフィルム2の樹脂に対する接着性が向上しており、これにより、フィルム2の剥離や破断、ピンホールの発生を大幅に抑制できるという利点を有している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、この注出口にも更に改良すべき点のあることが判明した。すなわち、この注出口を数カ月保管した後で、容器に対して超音波シールによって取り付けたところ、裏スコアの部分にピンホールが生じるとか、フィルムに剥離や破断が生じることがあるという問題があった。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、長期間の保存後においても、超音波シール時に裏スコアの部分にピンホールが生じるとか、フィルムに剥離や破断が生じることを防止しうる注出口を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討の結果、裏スコアに生じる恐れのあるピンホールや、フィルムの剥離、破断などは、主として、無端状の裏スコアの特定の領域(具体的には、図10に示すように、支柱1dから少し離れた領域)に発生していること、裏スコアを形成するには、必ずしも金型に凸条7bを形成しなくてもよく、金型を単に平坦面としておいても、成形時の樹脂の収縮などによって、深い溝からなる表スコアの裏面に、自然に極く浅い窪みが生じ、それが裏スコアとして作用すること、並びに、金型の凸条7bを無くすことで、射出成形時の樹脂の流れが安定してフィルムの樹脂に対する優れた接着性を確保でき、長期間保存しても優れた接着性を保持できることを見出し、本発明を達成した。すなわち、本発明は、フランジ部と、そのフランジ部から直立するように形成された筒状のノズル部と、そのノズル部を閉じる口壁と、その口壁の裏面側に配置されたフィルムと、前記口壁を容易に開封しうるように、前記口壁の表面側に無端状に形成された深い溝からなる表スコアと、前記口壁の下面側に前記表スコアに対応して形成された浅い裏スコアと、口壁の前記表スコアで囲まれた領域内で且つ表スコアに隣接した位置に支柱を介して連結されたプルリングとを備えたフィルムインサート注出口において、前記裏スコアの少なくとも一部領域を、該領域に対する金型内面を平坦面とした金型を用いて成形し、成形時の樹脂の収縮などによって表スコアの裏面側に自然に生じる極く浅い窪みによって形成するという構成としたものである。このように裏スコアを形成すべき領域に対応する位置の金型内面を平坦としておくと、成形時における樹脂の流れが平滑となるため、その位置ではフィルムに対する樹脂の接着性が良く、このため、長期間保存した後であっても、超音波シール時に生じ勝ちであったピンホールの発生やフィルムの剥離、破断を防止できる。また、金型を平坦面としておいても、表スコアを形成した位置の裏面では成形時の樹脂の収縮などによって自然に極く浅い窪みが生じており、これが裏スコアとして作用するので、開封強度はあまり大きくならず、容易に開封できる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、上記したように、注出口のインサート成形に当たって、裏スコアを形成しようとする領域の少なくとも一部領域に対応する金型内面を平坦面としておき、成形時の樹脂の収縮などによって自然に生じる窪みによって裏スコアを形成するという構成としたものである。ここで、金型内面を平坦面とする領域は、ピンホールや、フィルムの剥離、破断などの発生しやすい領域を含むように選定すればよい。
【0009】
本発明の好適な実施の形態では、注出口の口壁の裏面側に形成される裏スコアを、金型内面に形成した凸条によって強制的に形成される第一裏スコア部と、平坦な金型内面を用いて成形した際に表スコアの裏面側に自然に生じる極く薄い窪みからなる第二裏スコア部を有する構成とする。第一裏スコア部は優れた開封しやすさを与え、第二裏スコア部はピンホールや、フィルムの剥離、破断などの発生を防止する。このため、ピンホールや、フィルムの剥離、破断などの発生を防止すべき領域に第二裏スコア部を形成し、その他の領域に第一裏スコア部を形成することで、開封しやすい且つピンホールや、フィルムの剥離、破断などの発生の少ない注出口を提供できる。
【0010】
更に具体的な一つの実施の形態では、第二裏スコア部を、プルリングの支柱に隣接した開封開始領域の両側にそれぞれ隣接した領域に形成し、その他の領域には第一裏スコア部を形成した構成とする。一般に、注出口の容器に対する超音波シール時に生じるピンホールや、フィルムの剥離、破断などは、プルリングの支柱に隣接した開封開始領域の両側にそれぞれ隣接した領域(図10参照)に多発するため、この領域に第二裏スコア部を形成したことで、ピンホールや、フィルムの剥離、破断などの発生の少ない注出口を提供できる。
【0011】
また、本発明の更に他の実施の形態では、第一裏スコア部を、プルリングの支柱に隣接した開封開始領域に形成し、その他の領域には第二裏スコア部を形成する。開封開始領域は、極力開封しやすくすることが望ましいので、この領域に第一裏スコア部を形成したことで、開封の容易さを確保でき、且つその他の領域には第二裏スコア部を形成したことで、ピンホールや、フィルムの剥離、破断などを良好に防止できる。
【0012】
本発明のフィルムインサート注出口の製造方法の一実施の形態では、フランジ部と、そのフランジ部から直立するように形成された筒状のノズル部と、そのノズル部を閉じる口壁と、その口壁の裏面側に配置されたフィルムと、前記口壁を容易に開封しうるように、前記口壁の表面側に無端状に形成された深い溝からなる表スコアと、前記口壁の下面側に前記表スコアに対応して形成された浅い裏スコアと、口壁の前記表スコアで囲まれた領域内で且つ表スコアに隣接した位置に支柱を介して連結されたプルリングとを備えた注出口を、射出成形用の金型内面にフィルムを支持させ、合成樹脂を射出して成形するインサート成形によって製造するに当たって、前記金型として、前記裏スコアを形成しようとする無端状の領域の少なくとも一部領域に対応する金型内面を平坦面とした金型を用いる構成とする。この構成により、注出口の容器に対する超音波シールの際に、裏スコア部分にピンホールや、フィルムの剥離、破断などの発生のない注出口を製造できる。
【0013】
以下、図面に示す本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の第一の実施の形態によるフィルムインサート注出口1Aの概略断面図、図2はその概略平面図、図3(a)は注出口1Aの口壁2cの表面側に形成した表スコア3の概略平面図、図3(b)はその口壁2cの裏面側に形成した裏スコア4Aの概略下面図であり、図9〜図12に示す従来例と同一部品には同一符号を付して示している。図1、図2に示す注出口1Aも、従来と同様に、容器に取り付けるためのフランジ部1aと、そのフランジ部1aから直立するように形成された筒状のノズル部1bと、そのノズル部1bを閉じる口壁1cと、その口壁1cの裏面側に配置されたガスバリア性の高いフィルム2と、口壁1cを容易に開封しうるように、口壁1cの表面側に無端状に形成された深い溝からなる表スコア3と、口壁1cの下面側に表スコア3に対応して形成された浅い裏スコア4Aと、口壁1cの、表スコア3で囲まれた領域内で且つ表スコア3に隣接した位置に支柱1dを介して連結されたプルリング1eとを備え、インサート成形により製造されたものである。また、口壁1cの表面及び裏面に形成した表スコア3及び裏スコア4Aの平面形状は、全体が、点Oを中心とするほぼ円形をなしており、その円の一部を外側に突出させ、破断開始しやすくするように角部3c、4cを形成し、そこにプルリング11eの支柱1dを配置している。これらの構造は従来と同様であるが、裏スコア4Aの構成が従来とは異なっている。すなわち、この実施の形態における裏スコア4Aは、プルリング1eの支柱1dに隣接した開封開始領域に形成された第一裏スコア部4aと、その両側にそれぞれ隣接した領域にされた第二裏スコア部4bと、その他の領域に形成された第一裏スコア部4aで構成されている。
【0014】
ここで、第一裏スコア部4aは、図4(a)に示すように、山状の溝で構成されたものであり、この溝は、図4(b)に示すように、インサート成形用の金型7Aの内面に、従来と同様に、裏スコアを形成するための凸条7bを形成しておき、この凸条7bによって強制的に形成されている。従って、従来と同様の切れ易さを備えている。ここで、凸条7bの断面形状は、矢印Qで示す樹脂の流れ方向に関して下流側がなだらかな斜面となるようにしており、形成された第一裏スコア部4aの断面形状も、下流側の斜面(注出口の外周側の斜面)の傾斜角α1 が上流側の斜面(注出口の中心側の斜面)の傾斜角α2 よりも大きくなるように選定している。この形状を採用することにより、樹脂の射出時に凸条7bの上を流れる樹脂の流れが円滑となり、樹脂のフィルム2に対する良好な接着性を確保できる利点が得られる。なお、凸条7bの断面形状は、図示のものに限定されるものではなく、上流、下流を同じ傾斜としてもよく、更には山状の断面に限らず台形状等の他の形状としてもよい。
【0015】
第二裏スコア部4bは、図5(b)に示すように、第二裏スコア部を形成すべき領域のインサート成形用の金型7Aの内面を平坦面としておき、この金型7Aを用いて形成したものである。金型内面を平坦面としておけば、本来なら、その平坦面によって成形された注出口1Aの表面は平坦面となるはずであるが、図5(a)に示すように、注出口1Aの内壁1cの上面に深い溝からなる表スコア3を形成しており、その表スコア3の底部は薄肉部となっているため、射出された樹脂が冷却されて固化し、収縮する際に、両側に引っ張られるためか、表スコア3の裏面に、極く浅いものではあるが窪みが自然に形成され、これが第二裏スコア部4bとなる。かくして、平坦な金型内面を用いて第二裏スコア部4bを形成できる。この第二裏スコア部4bは、金型内面を平坦面とした位置に形成されるので、成形時に射出された樹脂が平坦な金型内面上に支持したフィルム2の上を円滑に流れることとなり、これにより成形された注出口では、第二裏スコア部4bにおけるフィルム2の樹脂に対する接着性がきわめて良好となっており、超音波シール時に生じ勝ちなピンホールや、フィルムの剥離、破断などを防止できる。なお、この第二裏スコア部4bは、第一裏スコア部4aに比べると若干切れにくいが、表スコア部3の裏面に形成されるので、スコア部の開封には支障はない。
【0016】
図3(b)において、プルリング1eの支柱1dに隣接した開封開始領域に形成する第一裏スコア部4aの具体的な形成範囲としては、中心Oと支柱1dの中心を通る直線ODの両側にそれぞれ、中心Oを頂点とする角度θ1 が、15〜30°程度となるように選定するのがよい。この角度θ1 が小さ過ぎると、開封開始が困難となり、大き過ぎると、注出口の超音波シール時にピンホールや、フィルムの剥離、破断などが発生する恐れが生じる。このため、上記した範囲が好ましい。また、それに隣接して形成する第二裏スコア部4bは、直線ODから遠い側の端部の、直線ODに対する角度θ2 が60〜150°程度となるように選定するのがよい。ここで、第二裏スコア部4bを直線ODの両側の一部領域に形成し、その他の領域は第一裏スコア部4aとしたのは、注出口の超音波シール時に発生しがちなピンホールや、フィルムの剥離、破断などを防止しながら、開封開始及び開封終わりを切れ易くするためである。本発明者らが確認したところ、従来のフィルムインサート注出口において、注出口の超音波シール時に裏スコア部にピンホールや、フィルムの剥離、破断などが多発する領域は、図10に示すように、直線ODに対する角度θ3 が30°程度の位置よりも外側で且つ角度θ4 が60°程度の位置よりも内側の領域であった。この理由は必ずしも明瞭ではないが、インサート成形後の型抜きの際にプルリング1eに大きい力が作用し、支柱1dを介してその周辺にも作用してその部分を一時的に変形させ、それによってフィルム2の樹脂に対する接着力を弱めるためと考えられる。従って、この多発領域を含んだ領域に、図3(b)に示すように第二裏スコア部4bを形成しておく。なお、開封性よりも、ピンホールや、フィルムの剥離、破断などの防止を一層重視する場合には、第二裏スコア部4bの形成領域を、開封開始側及び/又は開封終わり側に一層広くすることも可能であり、極端な場合には、開封開始側及び/又は開封終わり側の第一裏スコア部4aをなくすことも可能である。
【0017】
図1〜図3に示す注出口1Aも、図4、図5に示す金型7Aを用いてインサート成形により製造される。そして得られた注出口1Aでは、注出口の超音波シール時に裏スコア4Aの、ピンホールや、フィルムの剥離、破断などが発生しやすい領域に、第二裏スコア部4bを形成してフィルム2の樹脂に対する接着性を向上させているので、長期間保存した後であっても、第二裏スコア部4bにおけるフィルム2の樹脂に対する良好な接着性が確保されている。このため、この注出口を容器に超音波シールした時にも、ピンホールや、フィルムの剥離、破断などが生じない。また、開封に際しては、開封開始位置に第一裏スコア部4aを形成しており、且つ開封終わり位置にも第一裏スコア部4aを形成しているので、容易に開封することができる。
【0018】
上記した実施の形態では、図3(b)に示す形状の裏スコア4Aを用いているが、この裏スコア4Aの平面形状や、第一裏スコア部4a及び第二裏スコア部4bの配列は種々変更可能である。以下、その例をいくつか説明する。図6に示す裏スコア4Bは、プルリング1eの支柱1dに隣接した開封開始領域に第一裏スコア部4aを形成し、その他の領域はすべて第二裏スコア部4bとしている。図7に示す実施の形態では、表スコア3C及び裏スコア4Cの平面形状を、全体がほぼ円形をなしており、支柱1dの両側に位置する部分が内側に引っ込められると共に支柱1dの隣接部分が小径の円弧状となった形状としている。そして、その小径の円弧状の部分を第一裏スコア部4aとし、それに隣接した領域を第二裏スコア部4bとし、更に残りを第一裏スコア部4aとしている。図8に示す裏スコア4Dは、平面形状は図7に示す裏スコア4Cと同様とし、小径の円弧状の部分を第一裏スコア部4aとするが、その他の領域は全部第二裏スコア部4bとしたものである。これらの実施の形態に用いている第一裏スコア部4a、第二裏スコア部4bも、図3〜図5に示す実施の形態のものと同様であり、また、その形成範囲(角度θ1 、θ2 )についても図3の実施の形態と同様である。これらの裏スコア4B、4C、4Dを設けた注出口においても、注出口を容器に超音波シールした際の、ピンホールや、フィルムの剥離、破断などを防止でき、また、開封に際しては、容易に開封することができるといった利点を有している。なお、以上の実施例はいずれも、裏スコアを第一裏スコア部と第二裏スコア部で構成したが、特にスコア切れの発生を防ぐのであれば、裏スコアを第二裏スコア部のみで構成してもよい。
【0019】
【実施例】
インサート材として、厚さ20μのアルミ箔の両面をポリエチレンで被覆したフィルム2を用意し、そのフィルム2を、図6に示す裏スコア4Bを形成する構成の金型内にセットし、低密度ポリエチレン樹脂を射出成形機を用いて金型内に射出し、インサート成形を行って注出口を作成した。得られた注出口は、全体の形状は図1、図2に示す注出口1Aと同様であるが、裏スコアのみは図6に示す裏スコア4B(プルリング1eの支柱1dに隣接した開封開始領域に第一裏スコア部4aを形成し、その他の領域はすべて第二裏スコア部4bとしたもの)としている。また、第一裏スコア部4aの断面形状は、図4(a)に示すように、外側斜面が内側斜面にくらべてなだらかとしており、その傾斜角度はα1 =70°、α2 =50°とした。
【0020】
比較例1として、同様のフィルム2を、裏スコアを形成すべき領域全体に図11(b)に示す断面形状の凸条7bを備えた金型内にセットし、低密度ポリエチレン樹脂を射出成形機を用いて金型内に射出し、インサート成形を行って注出口を作成した。得られた注出口1では、図11(a)に示す山状の断面形状の裏スコア4が、図10に示す形状に無端状に形成されている。なお、裏スコア4の断面において、外側斜面と内側斜面は同じ傾斜とし、α=45°とした。
【0021】
更に、比較例2として、裏スコア4の断面形状を、図12(a)に示すように、外側斜面が内側斜面にくらべてなだらかとし、その傾斜角度をα1 =70°、α2 =50°とした以外は、比較例1と同様の注出口をインサート成形して作成した。
【0022】
実施例及び比較例1、2の注出口の各サンプル50個を10°Cに冷却後、超音波溶接機(日本エマソン株式会社製920MA)を用いて、紙容器に超音波シールして取り付けた。ここで、注出口を冷却したのは、ピンホールを発生しやすくするためである。注出口の取り付け後、放電チェッカーによりスコア部のピンホールの有無を判定すると共に、目視によりスコア部のアルミフィルムの破断の有無を判定した。また、引張り試験機によりプルリングの開封強度を測定した。各サンプルの試験結果を表1に示す。
【0023】
更に、実施例及び比較例1、2の注出口の各サンプル50個を、40°C、湿度90%の雰囲気内で3ヶ月保存後、上記と同様の手順で紙容器に超音波シールして取り付け、上記と同様の検査を行い、ピンホールの有無及びアルミフィルムの破断の有無を判定した。この結果も表1に再評価A(ピンホール発生数)、再評価B(アルミフィルムの破断数)として示す。
【0024】
【表1】
Figure 2004051100
【0025】
表1より明らかなように、実施例のものは、製造直後のものでも、3ヶ月保存した後のものでもピンホール及びアルミフィルムの破断の発生がなく、また、開封性も良好であった。これに対し、比較例1のものは、製造直後のものも、3ヶ月保存した後のものも、ピンホール及びアルミフィルムの破断が多発した。また、比較例2のものは、製造直後のものでは、ピンホール及びアルミフィルムの破断の発生がなかったが、3ヶ月保存した後のものではピンホール及びアルミフィルムの破断が発生した。
【0026】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の注出口は、裏スコアを形成しようとする無端状の領域のうちの少なくとも一部領域、具体的には、超音波シール時にピンホールやフィルムの剥離、破断の生じる恐れのある領域に対応する金型内面を平坦面としておき、成形時の樹脂の収縮などによって自然に生じる極く浅い窪みによって裏スコアを形成するという構成としたことにより、その領域でのフィルムに対する樹脂の接着性を大幅に向上でき、このため、長期間の保存後においても、超音波シール時に生じ勝ちであったピンホールの発生やフィルムの剥離、破断を防止できるという効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態による注出口の概略断面図
【図2】図1に示す注出口の概略平面図
【図3】(a)は図1に示す注出口の表スコアの平面形状を示す概略平面図
(b)はその注出口の裏スコアの平面形状を示す概略下面図
【図4】(a)は図1の注出口を、図3(b)の矢印A−A方向に見た概略断面図
(b)はその注出口の、図4(a)に示す部分の成形に用いる金型部分を示す概略断面図
【図5】(a)は図1の注出口を、図3(b)の矢印B−B方向に見た概略断面図
(b)は注出口の、図5(a)に示す部分の成形に用いる金型部分を示す概略断面図
【図6】注出口に形成する裏スコアの変形例の平面形状を示す概略下面図
【図7】(a)は本発明の他の実施の形態に係る注出口の表スコアの平面形状を示す概略平面図
(b)はその注出口の裏スコアの平面形状を示す概略下面図
【図8】注出口に形成する裏スコアの更に他の変形例の平面形状を示す概略下面図
【図9】従来のフィルムインサート注出口の概略断面図
【図10】図9の注出口の裏スコアの平面形状を示す概略下面図
【図11】(a)は図9の注出口を、図10の矢印C−C方向に見た概略断面図
(b)はその注出口の、図11(a)に示す部分の成形に用いる金型部分を示す概略断面図
【図12】(a)は、従来の注出口に形成する裏スコアの断面形状の他の例を示す概略断面図
(b)はその注出口の、図12(a)に示す部分の成形に用いる金型部分を示す概略断面図
【符号の説明】
1、1A 注出口
1a フランジ部
1b ノズル部
1c 口壁
1d 支柱
1e プルリング
2 フィルム
3 表スコア
4、4A、4B、4C、4D 裏スコア
4a 第一裏スコア部
4b 第二裏スコア部
7、7A 金型
7a、7b 凸条

Claims (5)

  1. 射出成形用の金型内面にインサート用のフィルムを支持させ、合成樹脂を射出して前記フィルムと成形樹脂とを一体化してなるフィルムインサート注出口であって、フランジ部と、そのフランジ部から直立するように形成された筒状のノズル部と、そのノズル部を閉じる口壁と、その口壁の裏面側に配置された前記フィルムと、前記口壁を容易に開封しうるように、前記口壁の表面側に無端状に形成された深い溝からなる表スコアと、前記口壁の下面側に前記表スコアに対応して形成された浅い裏スコアと、口壁の前記表スコアで囲まれた領域内で且つ表スコアに隣接した位置に支柱を介して連結されたプルリングとを備えたフィルムインサート注出口において、前記裏スコアの少なくとも一部領域を、該領域に対応する金型内面を平坦面とした金型を用いて成形し、成形時の樹脂の収縮などによって表スコアの裏面側に自然に生じる極く浅い窪みによって形成していることを特徴とするフィルムインサート注出口。
  2. 前記口壁の裏面側に形成される裏スコアが、金型内面に形成した凸条によって強制的に形成される第一裏スコア部と、平坦な金型内面を用いて成形した際に表スコアの裏面側に自然に生じる極く浅い窪みによって形成される第二裏スコア部を有することを特徴とする請求項1記載のフィルムインサート注出口。
  3. 前記第二裏スコア部が、前記支柱に隣接した開封開始領域の両側にそれぞれ隣接した領域に形成され、その他の領域には第一裏スコア部が形成されていることを特徴とする請求項2記載のフィルムインサート注出口。
  4. 前記第一裏スコア部が、前記支柱に隣接した開封開始領域に形成され、その他の領域には第二裏スコア部が形成されていることを特徴とする請求項2記載のフィルムインサート注出口。
  5. フランジ部と、そのフランジ部から直立するように形成された筒状のノズル部と、そのノズル部を閉じる口壁と、その口壁の裏面側に配置されたフィルムと、前記口壁を容易に開封しうるように、前記口壁の表面側に無端状に形成された深い溝からなる表スコアと、前記口壁の下面側に前記表スコアに対応して形成された浅い裏スコアと、口壁の前記表スコアで囲まれた領域内で且つ表スコアに隣接した位置に支柱を介して連結されたプルリングとを備えた注出口を、射出成形用の金型内面にフィルムを支持させ、合成樹脂を射出して成形するインサート成形によって製造する方法において、前記金型として、前記裏スコアを形成しようとする領域内の、少なくとも一部領域に対応する金型内面を平坦面とした金型を用いることを特徴とするフィルムインサート注出口の製造方法。
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