JP2004045490A - 感光性樹脂転写材料を用いた金属酸化物構造体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】感光性樹脂転写材料を用いて、基板表面に金属酸化物多孔体を所定の位置に規則的に配置した金属酸化物構造体を形成するための簡易な製造方法を提供することである。
【解決手段】基板表面に少なくとも金属酸化物多孔体を配置した金属酸化物構造体の製造方法であって、金属酸化物前駆体を含有する化学増幅系の感光性樹脂組成物を感光性樹脂層として有する感光性転写材料を用い、前記感光性樹脂層と基板とを少なくとも加熱しながら密着させた後剥離することにより、前記感光性樹脂層を基板表面に形成する転写工程と、該感光性樹脂層をパターン形成するパターニング工程と、前記パターン形成された感光性樹脂層を焼成する焼成工程と、からなること金属酸化物構造体の製造方法である。
【選択図】 図1
【解決手段】基板表面に少なくとも金属酸化物多孔体を配置した金属酸化物構造体の製造方法であって、金属酸化物前駆体を含有する化学増幅系の感光性樹脂組成物を感光性樹脂層として有する感光性転写材料を用い、前記感光性樹脂層と基板とを少なくとも加熱しながら密着させた後剥離することにより、前記感光性樹脂層を基板表面に形成する転写工程と、該感光性樹脂層をパターン形成するパターニング工程と、前記パターン形成された感光性樹脂層を焼成する焼成工程と、からなること金属酸化物構造体の製造方法である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属酸化物構造体の製造方法に関する。より詳細には、金属酸化物多孔体を所望の位置に規則的に配置した金属酸化物構造体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
微細孔を有する金属酸化物多孔体は、表面積が大きく、吸着能力も大きいことから、精密フィルター、触媒等に応用されているが、上記金属酸化物多孔体を、例えば基板表面に複数規則的に一定間隔に配置した金属酸化物構造体とすることができれば、センサーや半導体電極、さらには電子材料や電子機器などの精密加工分野等への応用が期待される。
【0003】
従来、上記金属酸化物多孔体を製造する方法として、1)金属酸化物粉末を焼結する方法、2)二成分系ガラスの分相を利用し、特定成分を選択的に溶解除去し、それ以外の酸化物成分を残す方法、等が知られている。
【0004】
しかしながら、従来の方法は利用できる金属酸化物の種類も限定されており、一般に高価な装置と多大な労力を必要とする。さらに従来方法では、細孔径が数ミクロン以上で不均一な細孔径を有しており、平行した独立孔を得ることは困難であった。
【0005】
これに対し、特開平6−32675号公報では、アルミニウム陽極酸化皮膜の微細孔等を鋳型にした金属酸化物多孔体の製造方法が提案されているが、この方法では、細孔径及び細孔間隔の変動が小さい金属酸化物多孔体を得ることができるものの、前記複数の金属酸化物多孔体を規則的に配置した金属酸化物構造体等とすることはできなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決することを目的とする。
すなわち本発明は、感光性樹脂転写材料を用いて、基板表面に金属酸化物多孔体を所望の位置に規則的に配置した金属酸化物構造体を形成するための簡易な製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、以下の本発明により達成される。すなわち本発明は、
<1> 基板表面に少なくとも金属酸化物多孔体を配置した金属酸化物構造体の製造方法であって、
金属酸化物前駆体を含有する化学増幅系の感光性樹脂組成物を感光性樹脂層として有する感光性転写材料を用い、前記感光性樹脂層と基板とを少なくとも加熱しながら密着させた後剥離することにより、前記感光性樹脂層を基板表面に形成する転写工程と、該感光性樹脂層をパターン形成するパターニング工程と、前記パターン形成された感光性樹脂層を焼成する焼成工程と、からなることを特徴とする金属酸化物構造体の製造方法である。
【0008】
<2> 前記金属酸化物前駆体が、酸化チタンゾル、シリカゾル及びアルミナゾルのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする<1>に記載の金属酸化物構造体の製造方法である。
【0009】
<3> 前記化学増幅系の感光性樹脂組成物が、少なくとも光酸発生剤、酸架橋剤及びバインダーを含むことを特徴とする<1>または<2>に記載の金属酸化物構造体の製造方法である。
【0010】
<4> 前記焼成工程が、300〜800℃の範囲の温度で行われることを特徴とする<1>〜<3>のいずれかに記載の金属酸化物構造体の製造方法である。
【0011】
<5> 前記感光性転写材料が、支持体表面に熱可塑性樹脂層、中間層及び感光性樹脂層を、この順に積層してなることを特徴とする<1>〜<4>のいずれかに記載の金属酸化物構造体の製造方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、基板表面に少なくとも金属酸化物多孔体を配置した金属酸化物構造体の製造方法であって、金属酸化物前駆体を含有する化学増幅系の感光性樹脂組成物を感光性樹脂層として有する感光性転写材料を用い、前記感光性樹脂層と基板とを少なくとも加熱しながら密着させた後剥離することにより、前記感光性樹脂層を基板表面に形成する転写工程と、該感光性樹脂層をパターン形成するパターニング工程と、前記パターン形成された感光性樹脂層を焼成する焼成工程と、からなることを特徴とする。
【0013】
なお、本発明において、「金属酸化物多孔体」とは、少なくともその一部が多孔質な構造を有する金属酸化物を意味し、その空隙率は特に限定されないが、20〜60%の範囲であることが好ましく、26〜48%の範囲であることがより好ましい。また、前記多孔質な構造とは、その構造が少なくとも空隙を有する形態からなる構造であれば特に限定されないが、例えば繊維状、ハニカム形状のような2次元構造が積層したもの、3次元の網目状、あるいは、2種類以上の形態が混合したもの等が挙げられる。
【0014】
また、「金属酸化物構造体」とは、回路、セル、電極、画素、センサー、案内溝等、何らかの機能・役割の達成を目的として、基板表面に金属酸化物多孔体が所望の位置に規則的に配置された構造体、あるいは基板そのものを除去して残った構造体を意味する。また、上記構造体を基板表面に2層以上積層させることにより形成された立体的な構造を有する構造体であってもよい。また、形成された構造体の構造そのものが多孔質なものであってもよい。
【0015】
以下、本発明を各工程ごとに説明する
<転写工程>
本発明における転写工程は、金属酸化物前駆体を含有する化学増幅系の感光性樹脂組成物(以下、単に「感光性樹脂組成物」と略す場合がある。)を感光性樹脂層として有する感光性転写材料を用い、前記感光性樹脂層と基板とを少なくとも加熱しながら密着させた後剥離することにより、前記感光性樹脂層を基板表面に形成するものである。
【0016】
(感光性転写材料)
前記感光性転写材料は、金属酸化物前駆体を含有する化学増幅系の感光性樹脂組成物を感光性樹脂層として有するものであれば、特にその構成は限定されるものではないが、本発明においては、前記感光性転写材料は、支持体表面に熱可塑性樹脂層、中間層及び感光性樹脂層を、この順に積層してなる構成であることが好ましい。
【0017】
−支持体−
本発明において、支持体とはプラスチックフィルムであって、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンのフィルムを挙げることができる。中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、特に2軸延伸、熱固定されたポリエチレンテレフタレートフィルムが、安定性、強靭さなどの点からも特に好ましい。
【0018】
上記支持体の厚さに特に制限はないが、5〜200μmの範囲が一般的で、特に10〜150μmの範囲のものが取扱易さ、汎用性などの点から有利であり好ましい。
【0019】
−熱可塑性樹脂層−
本発明における熱可塑性樹脂層は、アルカリ可溶性の熱可塑性樹脂層であって、この層を構成する樹脂は、実質的な軟化点が80℃以下であることが好ましい。軟化点が80℃以下のアルカリ可溶性の熱可塑性樹脂としては、エチレンとアクリル酸エステル共重合体のケン化物、スチレンと(メタ)アクリル酸エステル共重合体のケン化物、ビニルトルエンと(メタ)アクリル酸エステル共重合体のケン化物、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、及び(メタ)アクリル酸ブチルと酢酸ビニル等の(メタ)アクリル酸エステル共重合体などのケン化物、(メタ)アクリル酸とエチレン不飽和基含有モノマーとの共重合体から少なくとも1つ選ばれるのが好ましいが、さらに「プラスチック性能便覧」(日本プラスチック工業連盟、全日本プラスチック成形工業連合会編著、工業調査会、1968年10月25日発行)による軟化点が約80℃以下の有機高分子のうちアルカリ水溶液に可溶なものを使用することができる。
【0020】
また、軟化点が80℃以上の有機高分子物質においても、その有機高分子物質中に該高分子物質と相溶性のある各種の可塑剤を添加して実質的な軟化点を80℃以下に下げることも可能である。さらに、これらの有機高分子物質中に支持体との接着力を調節するために、実質的な軟化点が80℃を越えない範囲で各種のポリマーや過冷却物質、密着改良剤あるいは界面活性剤、離型剤、等を加えることが可能である。
【0021】
特に、特開平7−28232号公報に記載の、(A)質量平均分子量が5万〜50万、かつTg(ガラス転移温度)が0〜140℃のアルカリ可溶な熱可塑性樹脂、及び(B)質量平均分子量が3千〜3万、かつTgが30〜170℃のアルカリ可溶な熱可塑性樹脂を、質量比で(A)/(B)=5/95〜95/5の範囲で含む組み合わせが好適である。(A)の特に好ましい例としては、メタクリル酸/2−エチルヘキシルメタクリレート/ベンジルメタクリレート/メチルメタクリレート共重合体(共重合組成モル比:5/10/30/55、質量平均分子量:10万、Tg:約70℃)である。(B)の特に好ましい例としては、スチレン/アクリル酸共重合体(共重合組成モル比:65/35、質量平均分子量:1万、Tg:約100℃)である。また質量比(A)/(B)の特に好ましい範囲は30/70〜60/40である。
【0022】
前記可塑剤の好ましい具体例としては、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジオクチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジブチルフタレート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂とポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの付加反応生成物、有機ジイソシアナートとポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの付加反応生成物、有機ジイソシアナートとポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの付加反応生成物、ビスフェノールA−ポリエチレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0023】
上記可塑剤の量は、前記熱可塑性樹脂層を構成する樹脂(A)及び(B)の合計量に対して、質量比で0〜200質量%の範囲であることが好ましく、20〜100質量%の範囲であることがより好ましい。また、前記可塑剤の中で特に好ましい例としては、ビスフェノールA、1モルに対しエチレンオキシドを合計で10モル付加し、両末端アルコールをメタクリルエステル化した化合物を挙げることができる。前記可塑剤の添加量は、(A)と(B)との合計の質量に対し30〜60質量%の範囲であることが好ましい。
【0024】
前記アルカリ可溶性の熱可塑性樹脂層は、上記の各成分を溶剤に均一に溶解した塗布液を、前記支持体表面に塗布、乾燥することにより得られる。好ましい溶剤の例は、メトキシプロピレングリコールアセテート、2−ヒドロキシプロピン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンのような高沸点溶剤と、メチルエチルケトンやアセトンのような低沸点溶剤との混合物である。なお、上記高沸点溶剤、低沸点溶剤は各々混合して用いてもよい。これらの高沸点溶剤と低沸点溶剤との質量組成比(低沸点溶剤の質量/高沸点溶剤の質量)は、1/99〜99/1の範囲から選ばれる。1/99未満では塗布乾燥速度が遅く、99/1を越えると、乾燥ムラが発生しやすい場合がある。好ましくは低沸点溶剤/高沸点溶剤の質量組成比が90/10〜10/90の範囲から選ばれ、80/20〜20/80の範囲であることが最も好ましい。
【0025】
上記アルカリ可溶性の熱可塑性樹脂層は、前記支持体の接着性表面に一般によく知られた塗布方法、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法などにより、前記バインダー等を含む塗布液を塗布することにより形成することができる。アルカリ可溶性の熱可塑性樹脂層の厚さは、1μm以上であることが好ましい。アルカリ可溶性の熱可塑性樹脂層の厚みが1μm未満であると0.5μm以上の下地の凹凸を完全に吸収することが困難となる場合がある。また上限については、塗布製造適性の制限から約100μm以下であることが一般的であり、約50μm以下であることが好ましく、約20μm以下であることが特に好ましい。
【0026】
−中間層−
本発明における中間層は、熱可塑性樹脂層と感光性樹脂層との間の不都合な混じり合い防止を目的に設けられる。上記中間層は、水またはアルカリ水溶液に分散または溶解し、前記熱可塑性樹脂塗布液中の有機溶剤に不溶もしくは難溶であればよく、公知のものが使用できる。例えば、特開昭46−2121号公報や特公昭56−40824号公報に記載のポリビニルエーテル−無水マレイン酸重合体、カルボキシアルキルセルロースの水溶性塩、水溶性セルロースエーテル類、カルボキシアルキル澱粉の塩、水塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、各種のポリアクリルアミド類、各種の水溶性ポリアミド、ポリアクリル酸の水溶性塩、ゼラチン、エチレンオキサイド重合体、各種の澱粉及びその類似物からなる群の水溶性塩、スチレン−マレイン酸の共重合体、及びマレイネート樹脂、さらにこれらの2種以上の組合わせを挙げることができる。
【0027】
上記の中では、特に、1)水溶性ポリビニルブチラール単独や、2)ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンの組み合わせが好ましい。ポリビニルアルコールは鹸化率が80モル%以上であるものが好ましく、ポリビニルピロリドンの含有率は中間層固形物の1〜75質量%の範囲であることが一般的であり、1〜60質量%の範囲であることが好ましく、10〜50質量%の範囲であることがより好ましい。1質量%未満では、感光性樹脂層との充分な接着性が得られない場合があり、75質量%を超えると、感光性樹脂層塗布液に対する耐溶剤性が劣化する場合がある。当該中間層の厚さは、約0.1μm〜5μmの範囲であることが好ましく、0.5μm〜2μmの範囲であることがより好ましい。約0.1μm未満では感光性樹脂層塗布液に対する耐溶剤性が不足する場合があり、約5μmを越えると、乾燥負荷が高くなり塗布速度が制限される場合がある。
【0028】
前記中間層を形成するための塗布液の溶媒は、水単独か、水と混和性の有機溶剤と水との混合物から選ばれる。下層のアルカリ可溶性の熱可塑性樹脂層との接着性を高めるために、アルカリ可溶性の熱可塑性樹脂層を若干膨潤させるように選択するのが好ましい。好ましい溶媒の例としては、水/メタノール、水/エタノール、水/プロパノール、水/メトキシエタノール、水/メトキシプロパノール、水/アセトンなどを挙げることができる。水とこれらの有機溶剤との組成比は質量比で、99/1〜50/50の範囲から選択できる。当該溶剤組成質量比が99/1を越えると有機溶剤の添加効果が得られない場合があり、50/50以下では、水溶性樹脂の十分な溶解性が得られない場合がある。上記溶剤組成質量比は95/5〜60/40の範囲であることが好ましく、90/10〜70/30の範囲であることがより好ましい。
【0029】
−感光性樹脂層−
本発明における感光性樹脂層は、金属酸化物前駆体を含有する化学増幅系の感光性樹脂組成物からなる。
上記金属酸化物としては公知の金属酸化物であれば特に限定されず、2種類以上の金属酸化物であってもよく、結晶性を有するものや非晶質なものであってもよいが、本発明に用いられる金属酸化物前駆体は、少なくとも酸化チタン、シリカ、アルミナのうちの少なくとも1つを含んでなることが好ましい。
【0030】
前記金属酸化物前駆体は、その材料としては、金属酸化物、あるいは、後述する焼成工程を経た後に金属酸化物となるものであれば特に限定されない。また、その構造としては、多孔質な構造を有するものであってもよく、焼成工程を経た後に多孔質な構造を形成するものであってもよい。但し、焼成工程を経た後に多孔質な構造を形成する場合は、金属酸化物前駆体自体が多孔質な構造を形成するものであってもよく、また、金属酸化物前駆体自体は多孔質な構造を形成しないものの、これらが適度な空隙を有しつつ凝集・結着することにより多孔質な構造を形成するものでもよく、さらに前者及び後者を組合せたものであってもよい。
【0031】
このような金属酸化物前駆体としては、例えば、酸化チタンゾル、シリカゾル、アルミナゾル等の金属酸化物ゾル、金属水酸化物、金属アルコキシドや金属微粒子の表面を樹脂で被覆処理したような有機無機材料、あるいは、これらを2種以上組合せたものを用いることができる。これらのうちでも、金属酸化物前駆体としては、ゾル状の金属酸化物が好ましく、酸化チタンゾル、シリカゾル、アルミナゾルのうちの少なくとも1つを含む金属酸化物ゾルがであることがより好ましい。なお、当該金属酸化物ゾルの分散媒としては、水もしくは親水性の溶媒であってもよく、有機溶媒であってもよい。
【0032】
前記金属酸化物前駆体の大きさは、金属アルコキシドのような分子状の大きさであってもよく、ゾル状の金属酸化物のようにある程度の大きさを有するものであってもよい。但し、後者の場合には、その形状は特に限定されず、粒子状、繊維状、ウィスカー状等の如何なる形態であってもよい。
【0033】
前記感光性樹脂組成物中の金属酸化物前駆体の含有量は、5〜80質量%の範囲であることが好ましく、10〜70質量%の範囲であることがより好ましい。80質量%よりも大きいと、後述するパターニング工程においてパターン形成することが困難になる場合があり、5質量%よりも小さいと、十分な強度を有する金属酸化物多孔体からなる金属酸化物構造体を形成することが困難になる場合がある。
【0034】
本発明に用いる化学増幅系の感光性樹脂組成物としては、光の照射により発生する化学増幅剤の作用により、光照射領域の樹脂組成物が現像液に対して不溶性となる性質を持つ樹脂組成物(以下、「ネガ型感光性樹脂組成物」と略す。)、あるいは、前記光の照射により発生する化学増幅剤の作用により、光照射領域の樹脂組成物が現像液に対して溶解性となる性質を持つ樹脂組成物(以下、「ポジ型感光性樹脂組成物」と略す。)であれば、その架橋・分解プロセスやメカニズムは特に限定されず、公知のものを用いることができる。また、少なくとも、前記金属酸化物前駆体含有してなる感光性樹脂層は、少なくとも150℃以下で軟化もしくは粘着性になることが好ましく、熱可塑性であることが好ましい。
なお、感光性樹脂層が、金属酸化物前駆体を含有する感光性樹脂組成物のみからなる場合において、上記のような特性が得られにくい場合には、前記感光性樹脂層中に熱可塑性結合剤、及び/または、可塑剤を添加してもよい。
【0035】
前記ネガ型感光性樹脂組成物としては、以下に示す従来公知の感光性樹脂組成物を用いることができる。
【0036】
(a)光架橋性基を有するポリマー、アジド化合物を含有してなるネガ型感光性樹脂組成物。
(b)特開昭59−101651号公報に記載のジアゾ化合物を含有してなるネガ型感光性樹脂組成物。
(c)米国特許第262276号、特開平2−63054号公報に記載の光重合開始剤、付加車台性不飽和化合物を含有してなる光重合性ネガ型感光性樹脂組成物。
(d)特開平11−095421号公報記載のアルカリ可溶性化合物、光酸発生剤、酸架橋剤を含有してなるネガ型感光性樹脂組成物。
【0037】
本発明においては、ネガ型感光性樹脂組成物として上記いずれを用いてもよいが、少なくとも光酸発生剤、酸架橋剤及びバインダーを基本構成要素として含むものであることが好ましい。そして、この場合には光酸発生剤及び酸架橋剤が前記化学増幅剤となる。
【0038】
上記のようなネガ型感光性樹脂組成物を用いた場合には、現像処理時のサイドエッチング(露光された部分のネガ型感光性樹脂層の端部が、必要以上にエッチングされて実際のパターンよりも小さくなる現象)の発生をより確実に防止することができるため、より精緻な金属酸化物多孔体からなる金属酸化物構造体を得ることができる。
【0039】
一方、ポジ型感光性樹脂組成物としては、酸分解性基で保護されたアルカリ可溶性化合物と酸発生剤との組み合わせを含有してなる化学増幅系ポジ型感光性樹脂組成物がよく知られており本発明に好適に用いることができるが、以下に示すポジ型感光性樹脂組成物と組み合わせて用いることがさらに好適である。
【0040】
(e)特開平11−095421号公報に記載のアルカリ可溶性化合物、及び熱分解性であり、かつ分解しない状態ではアルカリ可溶性化合物の溶解性を実質的に低下させる物質を含有してなるレーザー感応性ポジ型樹脂組成物。
(f)アルカリ現像溶出型ポジ平版印刷版を作製することができる、赤外線吸収剤、ノボラック樹脂、及び溶解抑止剤を含有してなるアルカリ現像溶出ポジ型樹脂組成物。
【0041】
以下に、このような成分からなるネガ型・ポジ型感光性樹脂組成物について、光酸発生剤、酸架橋剤、バインダーの順に説明する。
【0042】
「光酸発生剤」
光酸発生剤としては、露光処理に用いる光の照射により酸を発生するものであれば特に限定されないが、例えば、有機ハロゲン化合物、オニウム塩、スルホン酸エステル等が挙げられる。これらのなかでは有機ハロゲン化合物が好ましく、特に、ハロメチル化トリアジン、ハロメチル化オキサジアゾール化合物が好ましい。具体的にはハロメチル化トリアジン化合物は一般式(1)で示される。
【0043】
【化1】
【0044】
(式中R1及びR2は、ハロメチル基であり、Yは炭素数5以上の有機基である。)
ハロメチル基としては、例えばトリクロロメチル基、トリブロモメチル基、ジクロロメチル基、ジブロモメチル基などがあり、炭素数5以上の有機基としては、例えば置換基を有していてもよい、フェニル基、ナフチル基、スチリル基、スチリルフェニル基、フリルビニル基、四級化アミノエチルアミノ基などがある。ハロメチル化トリアジン化合物の具体例としては、以下の式(2)〜(23)で示される化合物がある。
【0045】
【化2】
【0046】
【化3】
【0047】
【化4】
【0048】
【化5】
【0049】
一般式(1)で示されるハロメチル化トリアジン化合物の中でも好ましいものは、以下の一般式(24)〜(26)で示される化合物である。
【0050】
【化6】
【0051】
式中R1及びR2は、ハロメチル基であり、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基であり、nは0〜3の整数である。
【0052】
【化7】
【0053】
式中R1及びR2は、ハロメチル基であり、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基であり、nは0〜3の整数である。
【0054】
【化8】
【0055】
式中R1及びR2は、ハロメチル基であり、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基であり、nは0〜1の整数である。一般式(24)〜(26)で示される化合物の中でも好ましいものは、R1及びR2がトリクロロメチル基であり、Rの炭素数が1〜2であり、一般式(24)、(25)ではnが0〜2の整数であり、一般式(26)は0〜1の整数である化合物である。ハロメチル化オキサジアゾール化合物は、一般式(27)で示される。
【0056】
【化9】
【0057】
式中R3は、ハロメチル基であり、Zは置換基を有していてもよいベンゾフリル基またはベンゾフリルビニル基である。ハロメチル化オキサジアゾール化合物の具体例としては、以下の式(28)〜(45)で示される化合物がある。
【0058】
【化10】
【0059】
【化11】
【0060】
【化12】
【0061】
一般式(27)で示されるハロメチル化オキサジアゾール化合物の中でも好ましいのは、以下の一般式(46)で示される化合物である。
【0062】
【化13】
【0063】
式中、R3はハロメチル基であり、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基であり、nは0〜2の整数である。さらに好ましいのは、R3がトリクロロメチル基であり、Rがそれぞれ独立して炭素数1〜2のアルキル基またはアルコキシ基であり、nが0〜1の整数である化合物である。
【0064】
光酸発生剤の添加量は、感光性樹脂層中の固形分に対して、0.05〜15質量%、好ましくは5〜15質量%である。光酸発生剤の含有量が15質量%を超えると、パターンが膨潤してしまい、0.05質量%未満であると、露光によって十分な量の酸が発生しないので、感光性樹脂と酸架橋剤との架橋が不充分となり現像後の残膜率が低下し、精緻なパターンを有する金属多孔体からなる金属酸化物構造体を得ることが困難になる場合がある。
【0065】
「酸架橋剤」
ネガ型感光性樹脂組成物に用いられる酸架橋剤は、酸の作用により酸架橋剤同士が重合する作用、及び/または、酸架橋剤を介してバインダー等の他の樹脂成分同士を架橋することにより硬化させ、該硬化した部分を現像液に対して不溶性とする作用を有するものであれば特に限定されないが、例えば、架橋置換基を少なくとも1種以上の置換基(以下、「架橋性置換基」という場合がある。)を有する化合物を挙げることができる。
【0066】
このような架橋性置換基の具体例としては、例えば(i)ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アセトキシアルキル基等のヒドロキシアルキル基またはその誘導体;
(ii)ホルミル基、カルボキシアルキル基等のカルボニル基またはその誘導体;
(iii)ジメチルアミノメチル基、ジエチルアミノメチル基、ジメチロールアミノメチル基、ジエチロールアミノメチル基、モルホリノメチル基等の含窒素基含有置換基;
(iv)グリシジルエーテル基、グリシジルエステル基、グリシジルアミノ基等のグリシジル基含有置換基;
(v)ベンジルオキシメチル基、ベンゾイロキシメチル基等のアリルオキシアルキル基、アラルキルオキシアルキル基等の芳香族誘導体;
(vi)ビニル基、イソプロペニル基等の重合性多重結合含有置換基等を挙げることができる。本発明に用いられる酸架橋剤の架橋性置換基としては、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基等が好ましく、特にアルコキシメチル基が好ましい。
【0067】
前記架橋性置換基を有する酸架橋剤としては、例えば(i)メチロール基含有メラミン化合物、メチロール基含有ベンゾグアナミン化合物、メチロール基含有ウレア化合物、メチロール基含有グリコールウリル化合物、メチロール基含有フェノール化合物等のメチロール基含有化合物;
(ii)アルコキシアルキル基含有メラミン化合物、アルコキシアルキル基含有ベンゾグアナミン化合物、アルコキシアルキル基含有ウレア化合物、アルコキシアルキル基含有グリコールウリル化合物、アルコキシアルキル基含有フェノール化合物等のアルコキシアルキル基含有化合物;
(iii)カルボキシメチル基含有メラミン化合物、カルボキシメチル基含有ベンゾグアナミン化合物、カルボキシメチル基含有ウレア化合物、カルボキシメチル基含有グリコールウリル化合物、カルボキシメチル基含有フェノール化合物等のカルボキシメチル基含有化合物;
(iv)ビスフェノールA系エポキシ化合物、ビスフェノールF系エポキシ化合物、ビスフェノールS系エポキシ化合物、ノボラック樹脂系エポキシ化合物、レゾール樹脂系エポキシ化合物、ポリ(ヒドロキシスチレン)系エポキシ化合物等のエポキシ化合物;等を挙げることができる。
【0068】
本発明に用いられる酸架橋剤は、アルコキシメチル化ウレア化合物またはその樹脂、あるいはアルコキシメチル化グリコールウリル化合物またはその樹脂が好ましい。特に好ましい酸架橋剤としては、下記式(47)で示されるアルコキシメチル化ウレア化合物または式(48)で示されるアルコキシメチル化グリコールウリル化合物を挙げることができる。
【0069】
【化14】
【0070】
ここでR3は、炭素数1〜4のアルキル基である。
【0071】
【化15】
【0072】
ここでR4は、炭素数1〜4のアルキル基である。
【0073】
前記式(47)及び式(48)において、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができる。前記酸架橋剤は、例えば、尿素化合物やグリコールウリル化合物とホルマリンとを縮合反応させてメチロール基を導入した後、さらにメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコール類でエーテル化し、次いで反応液を冷却して、析出する化合物またはその樹脂を回収することで得られる。また、前記酸架橋剤は、CYMEL(商品名:三井サイアナミッド社製)、ニカラッド(商品名:三和ケミカル社製)のような市販品としても入手することができる。
【0074】
酸架橋剤としてはメラミン、ベンゾグアナミン、グリコールウリルまたは尿素にホルムアルデヒドを作用させた化合物、またはそれらのアルキル変性化合物、エポキシ化合物、レゾール化合物等が有効であり、その具体例は、次のとおりである。
【0075】
具体的には、三井サイアナミド社のサイメル(登録商標)300、301、303、350、736、738、370、771、325、327、703、701、266、267、285、232、235、238、1141、272、254、202、1156、1158は、メラミンにホルムアルデヒドを作用させた化合物またはそのアルキル変性物の例である。サイメル(登録商標)1123、1125、1128は、ベンゾグアナミンにホルムアルデヒドを作用させた化合物またはそのアルキル変性物の例である。サイメル(登録商標)1170、1171、1174、1172は、グリコールウリルにホルムアルデヒドを作用させた化合物またはそのアルキル変性物の例である。尿素にホルムアルデヒドを作用させた化合物またはそのアルキル変性物の例としては、三井サイアナミド社のUFR(登録商標)65、300を挙げることができる。
【0076】
エポキシ化合物の例として、ノボラックエポキシ樹脂(VDPN−638、701、702、703、704等:東都化成社製)、アミンエポキシ樹脂(YH−434等:東都化成社製)、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ソルビトール(ポリ)グリシジルエーテル、(ポリ)グリセロール(ポリ)グリシジルエーテル、ペンタエリスリトール(ポリ)グリシジルエーテル、トリグリシジルトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、アリルグリシジルエーテル、エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノールグリシジルエーテル、ラウリルアルコールグリシジルエーテル、アジピン酸グリシジルエーテル、フタル酸グリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリシジルフタルイミド、(ポリ)エチレングリコールグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0077】
この中で特に好ましい化合物としては、分子中に−N(CH2OR)2基を有する化合物(式中、Rは水素原子またはアルキル基を示す)が挙げられる。詳しくは、尿素あるいはメラミンにホルムアルデヒドを作用させた化合物またはそのアルキル変性物が特に好ましい。レゾール化合物の例としては、群栄化学社製のPP−3000s、PP−3000A、RP−2978、SP−1974、SP−1975、SP−1976、SP−1977、RP−3973等が挙げられる。
【0078】
「バインダー」
バインダーは、公知の高分子材料であれば特に限定されないが、本発明においては、ネガ型感光性樹脂組成物に用いられるバインダーとして、メタクリル酸メチルまたはベンジルメタクリレートの少なくとも1つを含む共重合体であることが特に好ましい。このような共重合体として、メタクリル酸メチルを含む共重合体、ベンジルメタクリレートを含む共重合体、メタクリル酸メチル及びベンジルメタクリレートを含む共重合体等が挙げられる。
【0079】
上記共重合体の中では、質量平均分子量が、25,000〜100,000の範囲であるものが好ましく、25,000〜60,000の範囲であるものがより好ましい。また、露光処理に用いる光の波長に対する透過率は高いことが好ましく、プリベーク処理等の比較的低温で実施される加熱処理や、前記波長の光に対して透過率が低下しないものであることがさらに好ましい。このような光学的特性という観点からは、メタクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体、メタクリル酸/メタクリル酸メチル/ベンジルメタクリレート共重合体であることが好ましい。
【0080】
一方、ポジ型感光性樹脂組成物としては、前記アルカリ可溶性のバインダーとして、例えば、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン類、ヒドロキシスチレン−N−置換マレイミド共重合体、ヒドロキシスチレン−無水マレイン酸共重合体、アルカリ可溶性基を有するアクリル系ポリマー、アルカリ可溶性基を有するウレタン型ポリマー等が挙げられる。ここでアルカリ可溶性基としてはカルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、イミド基等が挙げられる。
【0081】
前記アルカリ可溶性基を有するアクリル系ポリマーの例としては、メタクリル酸−ベンジルメタクリレート共重合体、ポリ(ヒドロキシフェニルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシエチルアクリレート)、ポリ(2、4−ジヒドロキシフェニルカルボニルオキシエチルアクリレート)等が挙げられる。これらのアクリル系ポリマーは質量平均分子量が2,000〜500,000、好ましくは4,000〜300,000のものが好ましい。
これらのアルカリ可溶性ポリマーのうち、ヒドロキシスチレン系ポリマー及びアルカリ可溶性基を有するアクリル系共重合体は現像性の点で好ましい。
【0082】
本発明において、アルカリ可溶性化合物であるバインダーは、酸分解性基で保護されていてもよく、該酸分解性基としては、エステル基、カーバメイト基等が挙げられる。
【0083】
本発明において、これらのバインダーの含有量は、感光性樹脂層の全固形分中、10〜90質量%程度であり、20〜85質量%の範囲であることが好ましく、30〜80質量%の範囲であることがさらに好ましい。
また、これらのアルカリ可溶性化合物は、1種類のみで使用してもよいし、あるいは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、前記アルカリ可溶性のバインダーは、酸の作用により分解しアルカリ可溶となる化合物である溶解抑止剤と共に用いられる。
【0084】
上記感光性樹脂組成物としては、アルカリ水溶液により現像可能なものと、有機溶剤により現像可能なものと、が知られているが、公害防止、労働安全性の確保の観点からアルカリ水溶液現像可能なものが好ましい。
【0085】
さらに、前記感光性樹脂層には、種々の目的で、各種の添加剤を含有させることができる。添加剤の例としては、界面活性剤、密着促進剤、可塑剤等が挙げられる。界面活性剤は、塗布性、得られる塗膜の平滑性を向上させるために用いることができ、その具体例としては、例えばBM−1000(BM Chemie社製)、メガファックスF142D、同F172、同F173、同F183、同F176PF、同F177PF(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC−135、同FC−170C、フロラードFC−430、同FC−431(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−112、同S−113、同S−131、同S−141、同S−145(以上、旭硝子(株)製)、SH−28PA、SH−190、SH−193、SZ−6032、SF−8428、DC−57、DC−190(以上、東レシリコーン(株)製)の商品名で市販されているフッ素系またはシリコン系界面活性剤を使用することができる。
【0086】
上記界面活性剤の使用量は、全固形分の0.05〜10質量%であり、0.05質量%以下では有効でなく、10質量%を越えるとレジストパターンの密着性が劣化するので好ましくない。0.08〜5質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜3質量%の範囲であることが特に好ましい。
なお、前記感光性樹脂層の厚みは、1.0〜10μmの範囲であることが好ましい。
【0087】
また、前記感光性樹脂組成物中には、必要に応じて着色剤を添加することもできる。当該着色剤としては、硫酸バリウム、酸化チタン、ベンガラ、カーボンブラック、フタロシアニン等の顔料、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン等の染料などを用いることができる。
【0088】
−感光性転写材料−
本発明に用いられる感光性転写材料は、好ましくは帯電防止層と接着性表面を有する支持体の接着性表面に、例えばアルカリ可溶性の熱可塑性樹脂層溶液を塗布し、乾燥することによりアルカリ可溶性の熱可塑性樹脂層を設け、その後該熱可塑性樹脂層表面に該熱可塑性樹脂層を溶解しないが、ある程度膨潤させる溶媒からなる中間層の溶液を塗布、乾燥し中間層を設ける。その中間層の表面に、さらに感光性樹脂層を、中間層を溶解しない溶剤で塗布、乾燥して設ける。その後、必要により保護フィルムを感光性樹脂層表面にラミネートして完成する。
【0089】
本発明に係る各層用塗布液は、一般によく知られた塗布方法、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、あるいは、米国特許第2681294号明細書に記載のポッパーを使用するエクストルージョンコート法等により塗布することができる。
【0090】
または、別のフィルム表面に感光性樹脂層を設けて、前記の支持体表面にアルカリ可溶性の熱可塑性樹脂層及び中間層を有するフィルムの両方のフィルムを中間層と感光性樹脂層とが接するように相互に貼り合わせること、または、別のフィルムとして、アルカリ可溶性の熱可塑性樹脂層を有する支持体を用意し、このアルカリ可溶性の熱可塑性樹脂層を、フィルム表面に感光性樹脂層、中間層の順に塗布された第2のフィルムの中間層と貼り合わせることにより有利に製造される。
【0091】
(基板)
基板としては、前記感光性樹脂層の形成が可能なものであれば特に限定されないが、少なくとも300℃以上の耐熱性を有し、塗布液として用いる溶媒に対して化学的に安定であり、露光処理に用いる光(紫外光)に対して変質しない材料からなる基板を用いることが好ましい。このような基板としては、例えば、無アルカリガラスや石英等のガラス材料、アルミナ等のセラミックス材料、シリコンやガリウム砒素等の半導体材料、ステンレスや銅等の金属材料、あるいは、これらの複合材料を用いることができる。
【0092】
(転写)
次に、前記感光性転写材料を用いた本発明における転写工程の一例(熱ラミネーション)を説明する。
先行パターンや薄膜を有する基体表面を洗浄後、感光性転写材料から必要に応じて保護フィルムを除去し、ラミネータにより感光性樹脂層をヒートローラーを用いて、基板表面に加熱加圧下で積層転写する。転写時のヒートローラーの温度は50〜150℃の範囲、圧着時の線圧は5kg/cm〜25kg/cmの範囲が有利な条件である。ラミネーションの速度は搬送速度で0.2m/分〜4m/分の範囲であることが好ましい。特に好ましい条件としては、加熱圧着ロール温度が130℃〜140℃の範囲、圧着時の線圧が10kg/cm〜15kg/cmの範囲、搬送速度が1m/分〜3m/分の範囲である。その後、基板のサイズに合わせてロールフィルムをカットする。
【0093】
<パターニング工程>
本発明におけるパターニング工程は、前記転写工程で基板表面に形成された感光性樹脂層をパターン形成するものであり、具体的には、前記感光性樹脂層の表面に所望のパターンが形成できるように、少なくとも、前記パターンに対応する領域に光を照射する露光処理と、該露光処理の後に光照射された領域の感光性樹脂組成物層を完全に現像液に対して不溶化する露光後ベーク処理(加熱処理)と、該露光後ベーク処理の後に現像液により非光照射領域を溶解させてエッチング処理する現像処理と、を経ることによりパターン形成された感光性樹脂組成物層を得るものである(以下、このようなパターン形成を「ネガ型パターン形成」と略す場合がある)。
【0094】
あるいは、前記パターンに対応する領域外に光を照射する露光処理と、該露光処理の後に光照射された領域の感光性樹脂組成物層を完全に現像液に対して易溶化する露光後ベーク処理(加熱処理)と、該露光後ベーク処理の後に現像液により光照射領域を溶解させてエッチング処理する現像処理と、を経ることによりパターン形成された感光性樹脂層を得るものであってもよい(以下、このようなパターン形成を「ポジ型パターン形成」と略す場合がある)。
【0095】
パターン形成は、上記ネガ型あるいはポジ型のいずれであってもよいが、ポジ型の場合では、感光性樹脂組成物層中に含まれる金属酸化物前駆体が、露光工程でパターン形成に用いられる光の波長を吸収するものである場合には、現像液により光照射領域を完全に溶解できない可能性がある。このため、ネガ型のパターン形成を行うことがより好ましい。
【0096】
−露光処理−
露光処理に用いる露光方式としては、半導体の微細パターンの形成に用いられる公知の露光方式を用いることができ、所望するパターニング精度やパターニングコストに応じて適当な方式を選択できる。このような露光方式としては、例えば、所望のパターンが形成されたフォトマスクと、基板表面に形成された感光性樹脂組成物層を密着(近接)させた状態で露光するコンタクト(プロキシミティ)露光方式、2枚の反射鏡を用いた等倍投影露光方式、いわゆるステッパといわれる縮小投影露光機を用いた縮小投影露光方式等を用いることができる。従って、パターニング精度の優れた露光方式を用いてパターン形成を行った場合には、サブミクロンスケールの精緻なパターンを有する金属酸化物多孔体からなる金属酸化物構造体を形成することも可能である。
【0097】
ここで使用する光としては、例えばg線(波長436nm)、i線(波長365nm)及び超高圧水銀灯、キセノン灯、カーボンアーク灯、アルゴンレーザー等の公知の光源からの連続状、及び/または、輝線状の紫外線、KrFエキシマレーザー等の遠紫外線が挙げられ、これらの中では、g線、i線及びこれらを含む300nm〜440nm領域の紫外線が好ましいものとして挙げられる。特開平6−59119号公報に記載のように、400nm以上の波長の光透過率が2%以下である光学フィルター等を併用してもよい。
【0098】
−露光後ベーク処理−
前記露光処理後に実施される露光後ベーク処理は、ネガ型感光性樹脂組成物(あるいはポジ型感光性樹脂組成物)の構成成分に応じて異なるが、ベーク処理温度は、90〜150℃の範囲であることが好ましく、90〜120℃の範囲であることがより好ましい。また、ベーク処理時間は、15秒〜2分の範囲であることが好ましく、30秒〜2分の範囲であることがより好ましい。
【0099】
このようなベーク処理を実施することによって、光照射した領域のフォトマスク側近辺に多く発生した酸を最下部(基板側)まで分散・浸透させることができ、架橋を促進し、現像液に対する不溶化を確実にすることができる。
【0100】
−現像処理−
現像処理は、熱可塑性樹脂層と中間層を除去するための第1のアルカリ現像と、感光性樹脂層の未露光部を除去するための第2のアルカリ現像からなることが望ましい。
第1のアルカリ現像は、26〜40℃でpH9〜11の弱アルカリ現像液を用いて現像し、第2のアルカリ現像は、26〜40℃でpH9〜11の弱アルカリ現像液を用いて現像することができる。
【0101】
前記感光性樹脂層の現像液としては、例えばアルカリ性物質の希薄水溶液を使用するが、さらに、水と混和性の有機溶剤を少量添加したものを用いてもよい。適当なアルカリ性物質としては、アルカリ金属水酸化物類(例、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、アルカリ金属炭酸塩類(例、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)、アルカリ金属重炭酸塩類(例、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム)、アルカリ金属ケイ酸塩類(例、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム)、アルカリ金属メタケイ酸塩類(例、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム)、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、テトラアルキルアンモンニウムヒドロキシド類(例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド)、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ〔4,3,0〕−5−ノナンまたは燐酸三ナトリウムを挙げることができる。
【0102】
上記の水と混和性のある適当な有機溶剤としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ベンジルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、乳酸エチル、乳酸メチル、ε−カプロラクタム、N−メチルピロリドンを挙げることができる。水と混和性の有機溶剤の濃度は、0.1質量%〜30質量%が一般的である。現像液には、さらに公知のアニオン型、ノニオン型界面活性剤を添加することができる。界面活性剤の濃度は0.01質量%〜10質量%が好ましい。現像液は、浴液としても、あるいは噴霧液としても用いることができる。さらに、現像方法としては、液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法、スプレイ法等を利用することができる。
【0103】
<焼成工程>
焼成工程は、前記パターニング工程で基板表面にパターン形成された感光性樹脂層を焼成する工程であり、具体的には、感光性樹脂層に含まれる有機物を酸化分解、及び/または、熱分解することにより除去し、金属酸化物前駆体から金属酸化物構造体を形成する工程である。
【0104】
なお、金属酸化物前駆体が、前記のように金属酸化物以外の材料、及び/または、多孔質な構造を有さないものである場合には、上記焼成により、金属酸化物多孔体を形成する。
【0105】
上記焼成工程の温度は特に限定されないが、有機物を含まない金属酸化物多孔体からなる金属酸化物構造体を得るために、300〜800℃の範囲で行われることが好ましい。
温度が300℃に満たないと、有機物を十分に除去することができなかったり、金属酸化物以外の材料からなる金属酸化物前駆体が、分解や酸化等により十分に金属酸化物に変化することができない場合がある。温度が800℃を超えると、金属酸化物前駆体同士の凝集や結着が進行し過ぎて、多孔質な構造が失われてしまったり、基板が熱により劣化したり変形したりする場合がある。また、焼成に際しては、焼成温度や焼成時間をコントロールすることにより、所望する空隙率や、多孔体構造が得られるように調整することも可能である。
【0106】
但し、焼成することにより金属多孔体からなる金属酸化物構造体を形成した後に、この金属酸化物構造体の所望の領域に、他の物質を含浸等により担持させたり、担持させた後に、さらに高温で焼成することにより、緻密な金属酸化物中に他の物質が閉じ込められた金属酸化物構造体としてもよい。
【0107】
焼成雰囲気は、特に限定されず、通常の雰囲気下で実施してもよいが、シリコンや金属等の酸化されやすい基板を用いる場合には還元性の雰囲気下で焼成してもよく、また、金属酸化物前駆体が金属酸化物以外の材料からなる場合には、酸化を促すために、酸化性の雰囲気下で焼成してもよい。
【0108】
以上に説明したように、塗布工程、パターニング工程および焼成工程を得ることにより金属酸化物構造体が形成されるが、該金属酸化物構造体が2層以上の構造体からなる立体的なものである場合には、1層毎に塗布工程、パターニング工程および焼成工程を繰り返して積層することにより金属酸化物構造体を形成してもよく、あるいは、1層毎に、塗布工程およびパターニング工程を繰り返して積層した後に、焼成工程を経ることにより金属酸化物構造体を形成してもよい。また、各層の金属酸化物多孔体の材料及び多孔質な構造は同じてあってもよく、異なっていてもよい。
【0109】
<金属酸化物構造体の形成>
本発明の金属酸化物多孔体からなる金属酸化物構造体の製造方法の実施形態として、フォトマスクを用いたプロキシミティ露光によりネガ型のパターン形成を行う場合を例として、以下に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0110】
図1は、本発明の金属酸化物構造体の製造方法の一例を示す模式断面図であり、フォトマスクを用いたプロキシミティ露光によりネガ型のパターン形成を行う場合について示している。図1(a)は、露光処理を説明する模式断面図であり、図1(b)は、現像処理後にパターンが形成されたことを説明する模式断面図であり、図1(c)は、焼成工程後に金属酸化物多孔体が規則的に配置された金属酸化物構造体が形成されたことを説明する模式断面図である。
【0111】
図1(a)において、基板1表面には、感光性樹脂層20が形成されている。当該感光性樹脂層20は、光重合開始剤を含む光重合性モノマー22中に、粒子状の金属酸化物前駆体21とバインダー23とが分散・含有してなるものである。また、感光性樹脂層20表面には、フォトマスク10が、ブラックマスク12が形成された面を下にして、感光性樹脂層20上に近接するように設置されている。フォトマスク10は、基板10の厚み方向及び感光性樹脂層20の膜厚方向に対して垂直に入射する、図示しないの平行光源から照射された矢印hνで表される露光用の光を透過するガラス基板11と、露光用の光hνを完全に遮蔽するブラックマスク12からなるものであり、ブラックマスク12は、所望するパターンに応じてガラス基板11表面に形成されている。
【0112】
露光処理は、図1(a)に示すように、フォトマスク10を介して、露光用の光hνを感光性樹脂層20に照射されることにより実施される。この際、露光用の光hνが照射された部分の感光性樹脂層20中に含まれる光酸発生剤の分解等により酸が発生する。
露光処理後、フォトマスク10は、感光性樹脂層20表面から取り除かれ、次に、感光性樹脂層20を露光後ベーク処理することにより、感光性樹脂層20のフォトマスク側近辺に多く存在する酸を、基板側まで十分に拡散・浸透させるとともに露光用の光hνが照射された部分の架橋をさらに促進した。その後、露光後ベーク処理された感光性樹脂層20を現像液を用いてエッチング処理することにより、ブラックマスク12直下の感光性樹脂層20が除去されることにより、図1(b)に示すようなパターンが得られる。
【0113】
図1(b)において、符号40、41及び42は、露光及び現像処理により形成された粒子状の金属酸化物前駆体を含む樹脂層であり、図1(b)に示す粒子状の金属酸化物前駆体を含む樹脂層40、41及び42からなるパターンはフォトマスク10表面のブラックマスク12で覆われていない領域のパターンに対応するものである。なお、粒子状の金属酸化物前駆体を含む樹脂層40、41及び42は、粒子状の金属酸化物前駆体21、酸架橋剤の重合体22’及びバインダー23からなるものである。
【0114】
これら粒子状の金属酸化物前駆体を含む樹脂層40、41及び42を焼成することにより、図1(b)に示すようなパターン形状を保ったまま、図1(c)に示す基板10表面に金属酸化物多孔体50、51及び52が規則的に配置された金属酸化物構造体53が形成される。
【0115】
以上のようにして、本発明により製造される、基板表面に規則的に配置された金属酸化物構造体は、例えば、フィルター、センサー、電極、PDP(プラズマ・ディスプレイ・パネル)の隔壁等への利用が期待できる。なお、上記フィルターに関しては、本発明により基板表面に金属酸化物構造体を形成した後に、基板のみを溶解して得ることができる。
【0116】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
<実施例1>
(感光性転写材料の作製)
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、下記組成の塗布液を塗布、乾燥して、乾燥膜厚が20μmの熱可塑性樹脂層を形成した。
【0117】
−熱可塑性樹脂層塗液組成−
・メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(モル比:55/28.8/11.7/4.5、質量平均分子量:90000):15質量部
・ポリプロピレングリコールジアクリレート(平均分子量:822):6.5質量部
・テトラエチレングリコールジメタクリレート:1.5質量部
・p−トルエンスルホンアミド:0.5質量部
・ベンゾフェノン:1.0質量部
・メチルエチルケトン:30質量部
【0118】
上記の熱可塑性樹脂層の表面に、下記組成の塗布液を塗布、乾燥して乾燥膜厚が1.6μmの中間層を形成した。
【0119】
−中間層用塗液組成−
・ポリビニルアルコール(クラレ(株)社製、PVA205、けん化率:80%):130質量部
・ポリビニルピロリドン(GAFコーポレション社製 PVP K−90):60質量部
・フッ素系界面活性剤(旭硝子(株)社製、サーフロンS−131):10質量部
・蒸留水:3350質量部
【0120】
上記の中間層の表面に下記組成物の塗布液を塗布、乾燥して乾燥膜厚が5μmの感光性樹脂層を形成し、感光性転写材料を作製した。
【0121】
−感光性樹脂層塗液組成−
・メタクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体(モル比:28/72、質量平均分子量:30000):19.98質量部
・酸架橋剤(MW−30M、三和ケミカル(株)製):4.76質量部
・界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)製、F177P):0.21質量部・光酸発生剤(2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4−(N,N−ジエトキシカルボメチル)−3−ブロモフェニル]−s−トリアジン):2.38質量部
・メチルエチルケトン:106.80質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:44.70質量部
・シリカゾル(平均粒径0.2μmのシリカ成分を30質量%含むメチルイソブチルケトン分散物):70.57質量部
【0122】
(感光性樹脂層の転写)
上記の方法で得られた感光性転写材料から前記感光性樹脂層を、ガラス基板(幅10cm、長さ10cm、厚み1.1mm)の表面に、ファーストラミネーター(大成ラミネーター(株)社製、VP−200)を用いて130℃、ラミネーション速度0.2m/min、線圧10kg/cmの条件で転写して、感光性樹脂層が転写されたガラス基板を得た。
【0123】
(パターニング、焼成)
次に、上記感光性樹脂層を形成したガラス基板をクリーンオーブン中にて70℃で30分間プリベーク後、ストライプ状のパターンを有するフォトマスク(線幅20μm、ピッチ20μm間隔)を用いて露光(露光量:100mJ/cm2 )した。露光終了から1分後に、クリーンオーブン中にて100℃で、1分間露光後ベーク処理を実施した。この加熱処理の後、熱可塑性樹脂層と中間層の除去用のアルカリ現像液(冨士写真フィルム(株)社製、T−PD2)の33℃の10倍希釈液(pH10.7)を用いて現像、水洗処理し、続けて感光層の未露光部を除去用アルカリ現像液(冨士写真フィルム(株)社製、T−CD)の5倍希釈液(液温33℃、pH9.9)により現像し、水洗・乾燥させた。さらにクリーンオーブン中にて500℃で3時間焼成し感光性樹脂組成物層から有機物を除去することにより、ガラス基板表面に、線幅21.4μm、ピッチ18.6μm間隔に規則的に配置された厚みが約0.6μmの金属酸化物構造体を形成した。この金属酸化物構造体は、フォトマスクに形成されたパターンと同程度に精緻なパターンを有するものであった。また、このストライプ状の金属酸化物構造体を電子顕微鏡で観察したところ、凝集・結着した個々のシリカ微粒子間には多数の空隙(孔)が観察され、多孔質な構造を有していることが確認された。
【0124】
<比較例1>
感光性樹脂層として、以下の感光性樹脂組成物の塗液を用いた以外は、実施例1と同様にして、膜厚5μmの感光性樹脂層が形成されたガラス基板を得た。
【0125】
−感光性樹脂層塗液組成−
・メタクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体(モル比:28/72、質量平均分子量:30000):20.00質量部
・界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)社製、F177P):0.05質量部
・メチルエチルケトン:100.00質量部
・シリカゾル(平均粒径0.2μmのシリカ成分を30質量%含むメチルイソブチルケトン分散物):63.00質量部
【0126】
次に、感光性樹脂層を形成したガラス基板を、クリーンオーブン中にて70℃で30分間プリベーク後、さらに、500℃で3時間焼成することにより感光性樹脂層から有機物を除去することにより、ガラス基板表面に、一様な膜厚が約0.5μmの金属酸化物膜が形成された。
この膜を電子顕微鏡で観察したところ、凝集・結着した個々のシリカ微粒子間には多数の空隙(孔)が観察され、多孔質な構造を有していることが確認された。しかしながら、規則的に配置された金属酸化物構造体を得ることはできなかった。
【0127】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、感光性樹脂転写材料を用いて、基板表面に金属酸化物多孔体を所定の位置に規則的に配置した金属酸化物構造体を形成するための簡易な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の金属酸化物構造体の製造方法の一例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
1 基板
10 フォトマスク
11 ガラス基板
12 ブラックマスク
20 感光性樹脂層
21 粒子状の金属酸化物前駆体
22 (光酸発生剤を含む)酸架橋剤
22’ 酸架橋剤の重合体
23 バインダー
40、41、42 粒子状の金属酸化物前駆体を含む樹脂層
50、51、52 金属酸化物多孔体
53 金属酸化物多孔体が配置された金属酸化物構造体
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属酸化物構造体の製造方法に関する。より詳細には、金属酸化物多孔体を所望の位置に規則的に配置した金属酸化物構造体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
微細孔を有する金属酸化物多孔体は、表面積が大きく、吸着能力も大きいことから、精密フィルター、触媒等に応用されているが、上記金属酸化物多孔体を、例えば基板表面に複数規則的に一定間隔に配置した金属酸化物構造体とすることができれば、センサーや半導体電極、さらには電子材料や電子機器などの精密加工分野等への応用が期待される。
【0003】
従来、上記金属酸化物多孔体を製造する方法として、1)金属酸化物粉末を焼結する方法、2)二成分系ガラスの分相を利用し、特定成分を選択的に溶解除去し、それ以外の酸化物成分を残す方法、等が知られている。
【0004】
しかしながら、従来の方法は利用できる金属酸化物の種類も限定されており、一般に高価な装置と多大な労力を必要とする。さらに従来方法では、細孔径が数ミクロン以上で不均一な細孔径を有しており、平行した独立孔を得ることは困難であった。
【0005】
これに対し、特開平6−32675号公報では、アルミニウム陽極酸化皮膜の微細孔等を鋳型にした金属酸化物多孔体の製造方法が提案されているが、この方法では、細孔径及び細孔間隔の変動が小さい金属酸化物多孔体を得ることができるものの、前記複数の金属酸化物多孔体を規則的に配置した金属酸化物構造体等とすることはできなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決することを目的とする。
すなわち本発明は、感光性樹脂転写材料を用いて、基板表面に金属酸化物多孔体を所望の位置に規則的に配置した金属酸化物構造体を形成するための簡易な製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、以下の本発明により達成される。すなわち本発明は、
<1> 基板表面に少なくとも金属酸化物多孔体を配置した金属酸化物構造体の製造方法であって、
金属酸化物前駆体を含有する化学増幅系の感光性樹脂組成物を感光性樹脂層として有する感光性転写材料を用い、前記感光性樹脂層と基板とを少なくとも加熱しながら密着させた後剥離することにより、前記感光性樹脂層を基板表面に形成する転写工程と、該感光性樹脂層をパターン形成するパターニング工程と、前記パターン形成された感光性樹脂層を焼成する焼成工程と、からなることを特徴とする金属酸化物構造体の製造方法である。
【0008】
<2> 前記金属酸化物前駆体が、酸化チタンゾル、シリカゾル及びアルミナゾルのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする<1>に記載の金属酸化物構造体の製造方法である。
【0009】
<3> 前記化学増幅系の感光性樹脂組成物が、少なくとも光酸発生剤、酸架橋剤及びバインダーを含むことを特徴とする<1>または<2>に記載の金属酸化物構造体の製造方法である。
【0010】
<4> 前記焼成工程が、300〜800℃の範囲の温度で行われることを特徴とする<1>〜<3>のいずれかに記載の金属酸化物構造体の製造方法である。
【0011】
<5> 前記感光性転写材料が、支持体表面に熱可塑性樹脂層、中間層及び感光性樹脂層を、この順に積層してなることを特徴とする<1>〜<4>のいずれかに記載の金属酸化物構造体の製造方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、基板表面に少なくとも金属酸化物多孔体を配置した金属酸化物構造体の製造方法であって、金属酸化物前駆体を含有する化学増幅系の感光性樹脂組成物を感光性樹脂層として有する感光性転写材料を用い、前記感光性樹脂層と基板とを少なくとも加熱しながら密着させた後剥離することにより、前記感光性樹脂層を基板表面に形成する転写工程と、該感光性樹脂層をパターン形成するパターニング工程と、前記パターン形成された感光性樹脂層を焼成する焼成工程と、からなることを特徴とする。
【0013】
なお、本発明において、「金属酸化物多孔体」とは、少なくともその一部が多孔質な構造を有する金属酸化物を意味し、その空隙率は特に限定されないが、20〜60%の範囲であることが好ましく、26〜48%の範囲であることがより好ましい。また、前記多孔質な構造とは、その構造が少なくとも空隙を有する形態からなる構造であれば特に限定されないが、例えば繊維状、ハニカム形状のような2次元構造が積層したもの、3次元の網目状、あるいは、2種類以上の形態が混合したもの等が挙げられる。
【0014】
また、「金属酸化物構造体」とは、回路、セル、電極、画素、センサー、案内溝等、何らかの機能・役割の達成を目的として、基板表面に金属酸化物多孔体が所望の位置に規則的に配置された構造体、あるいは基板そのものを除去して残った構造体を意味する。また、上記構造体を基板表面に2層以上積層させることにより形成された立体的な構造を有する構造体であってもよい。また、形成された構造体の構造そのものが多孔質なものであってもよい。
【0015】
以下、本発明を各工程ごとに説明する
<転写工程>
本発明における転写工程は、金属酸化物前駆体を含有する化学増幅系の感光性樹脂組成物(以下、単に「感光性樹脂組成物」と略す場合がある。)を感光性樹脂層として有する感光性転写材料を用い、前記感光性樹脂層と基板とを少なくとも加熱しながら密着させた後剥離することにより、前記感光性樹脂層を基板表面に形成するものである。
【0016】
(感光性転写材料)
前記感光性転写材料は、金属酸化物前駆体を含有する化学増幅系の感光性樹脂組成物を感光性樹脂層として有するものであれば、特にその構成は限定されるものではないが、本発明においては、前記感光性転写材料は、支持体表面に熱可塑性樹脂層、中間層及び感光性樹脂層を、この順に積層してなる構成であることが好ましい。
【0017】
−支持体−
本発明において、支持体とはプラスチックフィルムであって、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンのフィルムを挙げることができる。中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、特に2軸延伸、熱固定されたポリエチレンテレフタレートフィルムが、安定性、強靭さなどの点からも特に好ましい。
【0018】
上記支持体の厚さに特に制限はないが、5〜200μmの範囲が一般的で、特に10〜150μmの範囲のものが取扱易さ、汎用性などの点から有利であり好ましい。
【0019】
−熱可塑性樹脂層−
本発明における熱可塑性樹脂層は、アルカリ可溶性の熱可塑性樹脂層であって、この層を構成する樹脂は、実質的な軟化点が80℃以下であることが好ましい。軟化点が80℃以下のアルカリ可溶性の熱可塑性樹脂としては、エチレンとアクリル酸エステル共重合体のケン化物、スチレンと(メタ)アクリル酸エステル共重合体のケン化物、ビニルトルエンと(メタ)アクリル酸エステル共重合体のケン化物、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、及び(メタ)アクリル酸ブチルと酢酸ビニル等の(メタ)アクリル酸エステル共重合体などのケン化物、(メタ)アクリル酸とエチレン不飽和基含有モノマーとの共重合体から少なくとも1つ選ばれるのが好ましいが、さらに「プラスチック性能便覧」(日本プラスチック工業連盟、全日本プラスチック成形工業連合会編著、工業調査会、1968年10月25日発行)による軟化点が約80℃以下の有機高分子のうちアルカリ水溶液に可溶なものを使用することができる。
【0020】
また、軟化点が80℃以上の有機高分子物質においても、その有機高分子物質中に該高分子物質と相溶性のある各種の可塑剤を添加して実質的な軟化点を80℃以下に下げることも可能である。さらに、これらの有機高分子物質中に支持体との接着力を調節するために、実質的な軟化点が80℃を越えない範囲で各種のポリマーや過冷却物質、密着改良剤あるいは界面活性剤、離型剤、等を加えることが可能である。
【0021】
特に、特開平7−28232号公報に記載の、(A)質量平均分子量が5万〜50万、かつTg(ガラス転移温度)が0〜140℃のアルカリ可溶な熱可塑性樹脂、及び(B)質量平均分子量が3千〜3万、かつTgが30〜170℃のアルカリ可溶な熱可塑性樹脂を、質量比で(A)/(B)=5/95〜95/5の範囲で含む組み合わせが好適である。(A)の特に好ましい例としては、メタクリル酸/2−エチルヘキシルメタクリレート/ベンジルメタクリレート/メチルメタクリレート共重合体(共重合組成モル比:5/10/30/55、質量平均分子量:10万、Tg:約70℃)である。(B)の特に好ましい例としては、スチレン/アクリル酸共重合体(共重合組成モル比:65/35、質量平均分子量:1万、Tg:約100℃)である。また質量比(A)/(B)の特に好ましい範囲は30/70〜60/40である。
【0022】
前記可塑剤の好ましい具体例としては、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジオクチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジブチルフタレート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂とポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの付加反応生成物、有機ジイソシアナートとポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの付加反応生成物、有機ジイソシアナートとポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの付加反応生成物、ビスフェノールA−ポリエチレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0023】
上記可塑剤の量は、前記熱可塑性樹脂層を構成する樹脂(A)及び(B)の合計量に対して、質量比で0〜200質量%の範囲であることが好ましく、20〜100質量%の範囲であることがより好ましい。また、前記可塑剤の中で特に好ましい例としては、ビスフェノールA、1モルに対しエチレンオキシドを合計で10モル付加し、両末端アルコールをメタクリルエステル化した化合物を挙げることができる。前記可塑剤の添加量は、(A)と(B)との合計の質量に対し30〜60質量%の範囲であることが好ましい。
【0024】
前記アルカリ可溶性の熱可塑性樹脂層は、上記の各成分を溶剤に均一に溶解した塗布液を、前記支持体表面に塗布、乾燥することにより得られる。好ましい溶剤の例は、メトキシプロピレングリコールアセテート、2−ヒドロキシプロピン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンのような高沸点溶剤と、メチルエチルケトンやアセトンのような低沸点溶剤との混合物である。なお、上記高沸点溶剤、低沸点溶剤は各々混合して用いてもよい。これらの高沸点溶剤と低沸点溶剤との質量組成比(低沸点溶剤の質量/高沸点溶剤の質量)は、1/99〜99/1の範囲から選ばれる。1/99未満では塗布乾燥速度が遅く、99/1を越えると、乾燥ムラが発生しやすい場合がある。好ましくは低沸点溶剤/高沸点溶剤の質量組成比が90/10〜10/90の範囲から選ばれ、80/20〜20/80の範囲であることが最も好ましい。
【0025】
上記アルカリ可溶性の熱可塑性樹脂層は、前記支持体の接着性表面に一般によく知られた塗布方法、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法などにより、前記バインダー等を含む塗布液を塗布することにより形成することができる。アルカリ可溶性の熱可塑性樹脂層の厚さは、1μm以上であることが好ましい。アルカリ可溶性の熱可塑性樹脂層の厚みが1μm未満であると0.5μm以上の下地の凹凸を完全に吸収することが困難となる場合がある。また上限については、塗布製造適性の制限から約100μm以下であることが一般的であり、約50μm以下であることが好ましく、約20μm以下であることが特に好ましい。
【0026】
−中間層−
本発明における中間層は、熱可塑性樹脂層と感光性樹脂層との間の不都合な混じり合い防止を目的に設けられる。上記中間層は、水またはアルカリ水溶液に分散または溶解し、前記熱可塑性樹脂塗布液中の有機溶剤に不溶もしくは難溶であればよく、公知のものが使用できる。例えば、特開昭46−2121号公報や特公昭56−40824号公報に記載のポリビニルエーテル−無水マレイン酸重合体、カルボキシアルキルセルロースの水溶性塩、水溶性セルロースエーテル類、カルボキシアルキル澱粉の塩、水塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、各種のポリアクリルアミド類、各種の水溶性ポリアミド、ポリアクリル酸の水溶性塩、ゼラチン、エチレンオキサイド重合体、各種の澱粉及びその類似物からなる群の水溶性塩、スチレン−マレイン酸の共重合体、及びマレイネート樹脂、さらにこれらの2種以上の組合わせを挙げることができる。
【0027】
上記の中では、特に、1)水溶性ポリビニルブチラール単独や、2)ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンの組み合わせが好ましい。ポリビニルアルコールは鹸化率が80モル%以上であるものが好ましく、ポリビニルピロリドンの含有率は中間層固形物の1〜75質量%の範囲であることが一般的であり、1〜60質量%の範囲であることが好ましく、10〜50質量%の範囲であることがより好ましい。1質量%未満では、感光性樹脂層との充分な接着性が得られない場合があり、75質量%を超えると、感光性樹脂層塗布液に対する耐溶剤性が劣化する場合がある。当該中間層の厚さは、約0.1μm〜5μmの範囲であることが好ましく、0.5μm〜2μmの範囲であることがより好ましい。約0.1μm未満では感光性樹脂層塗布液に対する耐溶剤性が不足する場合があり、約5μmを越えると、乾燥負荷が高くなり塗布速度が制限される場合がある。
【0028】
前記中間層を形成するための塗布液の溶媒は、水単独か、水と混和性の有機溶剤と水との混合物から選ばれる。下層のアルカリ可溶性の熱可塑性樹脂層との接着性を高めるために、アルカリ可溶性の熱可塑性樹脂層を若干膨潤させるように選択するのが好ましい。好ましい溶媒の例としては、水/メタノール、水/エタノール、水/プロパノール、水/メトキシエタノール、水/メトキシプロパノール、水/アセトンなどを挙げることができる。水とこれらの有機溶剤との組成比は質量比で、99/1〜50/50の範囲から選択できる。当該溶剤組成質量比が99/1を越えると有機溶剤の添加効果が得られない場合があり、50/50以下では、水溶性樹脂の十分な溶解性が得られない場合がある。上記溶剤組成質量比は95/5〜60/40の範囲であることが好ましく、90/10〜70/30の範囲であることがより好ましい。
【0029】
−感光性樹脂層−
本発明における感光性樹脂層は、金属酸化物前駆体を含有する化学増幅系の感光性樹脂組成物からなる。
上記金属酸化物としては公知の金属酸化物であれば特に限定されず、2種類以上の金属酸化物であってもよく、結晶性を有するものや非晶質なものであってもよいが、本発明に用いられる金属酸化物前駆体は、少なくとも酸化チタン、シリカ、アルミナのうちの少なくとも1つを含んでなることが好ましい。
【0030】
前記金属酸化物前駆体は、その材料としては、金属酸化物、あるいは、後述する焼成工程を経た後に金属酸化物となるものであれば特に限定されない。また、その構造としては、多孔質な構造を有するものであってもよく、焼成工程を経た後に多孔質な構造を形成するものであってもよい。但し、焼成工程を経た後に多孔質な構造を形成する場合は、金属酸化物前駆体自体が多孔質な構造を形成するものであってもよく、また、金属酸化物前駆体自体は多孔質な構造を形成しないものの、これらが適度な空隙を有しつつ凝集・結着することにより多孔質な構造を形成するものでもよく、さらに前者及び後者を組合せたものであってもよい。
【0031】
このような金属酸化物前駆体としては、例えば、酸化チタンゾル、シリカゾル、アルミナゾル等の金属酸化物ゾル、金属水酸化物、金属アルコキシドや金属微粒子の表面を樹脂で被覆処理したような有機無機材料、あるいは、これらを2種以上組合せたものを用いることができる。これらのうちでも、金属酸化物前駆体としては、ゾル状の金属酸化物が好ましく、酸化チタンゾル、シリカゾル、アルミナゾルのうちの少なくとも1つを含む金属酸化物ゾルがであることがより好ましい。なお、当該金属酸化物ゾルの分散媒としては、水もしくは親水性の溶媒であってもよく、有機溶媒であってもよい。
【0032】
前記金属酸化物前駆体の大きさは、金属アルコキシドのような分子状の大きさであってもよく、ゾル状の金属酸化物のようにある程度の大きさを有するものであってもよい。但し、後者の場合には、その形状は特に限定されず、粒子状、繊維状、ウィスカー状等の如何なる形態であってもよい。
【0033】
前記感光性樹脂組成物中の金属酸化物前駆体の含有量は、5〜80質量%の範囲であることが好ましく、10〜70質量%の範囲であることがより好ましい。80質量%よりも大きいと、後述するパターニング工程においてパターン形成することが困難になる場合があり、5質量%よりも小さいと、十分な強度を有する金属酸化物多孔体からなる金属酸化物構造体を形成することが困難になる場合がある。
【0034】
本発明に用いる化学増幅系の感光性樹脂組成物としては、光の照射により発生する化学増幅剤の作用により、光照射領域の樹脂組成物が現像液に対して不溶性となる性質を持つ樹脂組成物(以下、「ネガ型感光性樹脂組成物」と略す。)、あるいは、前記光の照射により発生する化学増幅剤の作用により、光照射領域の樹脂組成物が現像液に対して溶解性となる性質を持つ樹脂組成物(以下、「ポジ型感光性樹脂組成物」と略す。)であれば、その架橋・分解プロセスやメカニズムは特に限定されず、公知のものを用いることができる。また、少なくとも、前記金属酸化物前駆体含有してなる感光性樹脂層は、少なくとも150℃以下で軟化もしくは粘着性になることが好ましく、熱可塑性であることが好ましい。
なお、感光性樹脂層が、金属酸化物前駆体を含有する感光性樹脂組成物のみからなる場合において、上記のような特性が得られにくい場合には、前記感光性樹脂層中に熱可塑性結合剤、及び/または、可塑剤を添加してもよい。
【0035】
前記ネガ型感光性樹脂組成物としては、以下に示す従来公知の感光性樹脂組成物を用いることができる。
【0036】
(a)光架橋性基を有するポリマー、アジド化合物を含有してなるネガ型感光性樹脂組成物。
(b)特開昭59−101651号公報に記載のジアゾ化合物を含有してなるネガ型感光性樹脂組成物。
(c)米国特許第262276号、特開平2−63054号公報に記載の光重合開始剤、付加車台性不飽和化合物を含有してなる光重合性ネガ型感光性樹脂組成物。
(d)特開平11−095421号公報記載のアルカリ可溶性化合物、光酸発生剤、酸架橋剤を含有してなるネガ型感光性樹脂組成物。
【0037】
本発明においては、ネガ型感光性樹脂組成物として上記いずれを用いてもよいが、少なくとも光酸発生剤、酸架橋剤及びバインダーを基本構成要素として含むものであることが好ましい。そして、この場合には光酸発生剤及び酸架橋剤が前記化学増幅剤となる。
【0038】
上記のようなネガ型感光性樹脂組成物を用いた場合には、現像処理時のサイドエッチング(露光された部分のネガ型感光性樹脂層の端部が、必要以上にエッチングされて実際のパターンよりも小さくなる現象)の発生をより確実に防止することができるため、より精緻な金属酸化物多孔体からなる金属酸化物構造体を得ることができる。
【0039】
一方、ポジ型感光性樹脂組成物としては、酸分解性基で保護されたアルカリ可溶性化合物と酸発生剤との組み合わせを含有してなる化学増幅系ポジ型感光性樹脂組成物がよく知られており本発明に好適に用いることができるが、以下に示すポジ型感光性樹脂組成物と組み合わせて用いることがさらに好適である。
【0040】
(e)特開平11−095421号公報に記載のアルカリ可溶性化合物、及び熱分解性であり、かつ分解しない状態ではアルカリ可溶性化合物の溶解性を実質的に低下させる物質を含有してなるレーザー感応性ポジ型樹脂組成物。
(f)アルカリ現像溶出型ポジ平版印刷版を作製することができる、赤外線吸収剤、ノボラック樹脂、及び溶解抑止剤を含有してなるアルカリ現像溶出ポジ型樹脂組成物。
【0041】
以下に、このような成分からなるネガ型・ポジ型感光性樹脂組成物について、光酸発生剤、酸架橋剤、バインダーの順に説明する。
【0042】
「光酸発生剤」
光酸発生剤としては、露光処理に用いる光の照射により酸を発生するものであれば特に限定されないが、例えば、有機ハロゲン化合物、オニウム塩、スルホン酸エステル等が挙げられる。これらのなかでは有機ハロゲン化合物が好ましく、特に、ハロメチル化トリアジン、ハロメチル化オキサジアゾール化合物が好ましい。具体的にはハロメチル化トリアジン化合物は一般式(1)で示される。
【0043】
【化1】
【0044】
(式中R1及びR2は、ハロメチル基であり、Yは炭素数5以上の有機基である。)
ハロメチル基としては、例えばトリクロロメチル基、トリブロモメチル基、ジクロロメチル基、ジブロモメチル基などがあり、炭素数5以上の有機基としては、例えば置換基を有していてもよい、フェニル基、ナフチル基、スチリル基、スチリルフェニル基、フリルビニル基、四級化アミノエチルアミノ基などがある。ハロメチル化トリアジン化合物の具体例としては、以下の式(2)〜(23)で示される化合物がある。
【0045】
【化2】
【0046】
【化3】
【0047】
【化4】
【0048】
【化5】
【0049】
一般式(1)で示されるハロメチル化トリアジン化合物の中でも好ましいものは、以下の一般式(24)〜(26)で示される化合物である。
【0050】
【化6】
【0051】
式中R1及びR2は、ハロメチル基であり、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基であり、nは0〜3の整数である。
【0052】
【化7】
【0053】
式中R1及びR2は、ハロメチル基であり、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基であり、nは0〜3の整数である。
【0054】
【化8】
【0055】
式中R1及びR2は、ハロメチル基であり、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基であり、nは0〜1の整数である。一般式(24)〜(26)で示される化合物の中でも好ましいものは、R1及びR2がトリクロロメチル基であり、Rの炭素数が1〜2であり、一般式(24)、(25)ではnが0〜2の整数であり、一般式(26)は0〜1の整数である化合物である。ハロメチル化オキサジアゾール化合物は、一般式(27)で示される。
【0056】
【化9】
【0057】
式中R3は、ハロメチル基であり、Zは置換基を有していてもよいベンゾフリル基またはベンゾフリルビニル基である。ハロメチル化オキサジアゾール化合物の具体例としては、以下の式(28)〜(45)で示される化合物がある。
【0058】
【化10】
【0059】
【化11】
【0060】
【化12】
【0061】
一般式(27)で示されるハロメチル化オキサジアゾール化合物の中でも好ましいのは、以下の一般式(46)で示される化合物である。
【0062】
【化13】
【0063】
式中、R3はハロメチル基であり、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基であり、nは0〜2の整数である。さらに好ましいのは、R3がトリクロロメチル基であり、Rがそれぞれ独立して炭素数1〜2のアルキル基またはアルコキシ基であり、nが0〜1の整数である化合物である。
【0064】
光酸発生剤の添加量は、感光性樹脂層中の固形分に対して、0.05〜15質量%、好ましくは5〜15質量%である。光酸発生剤の含有量が15質量%を超えると、パターンが膨潤してしまい、0.05質量%未満であると、露光によって十分な量の酸が発生しないので、感光性樹脂と酸架橋剤との架橋が不充分となり現像後の残膜率が低下し、精緻なパターンを有する金属多孔体からなる金属酸化物構造体を得ることが困難になる場合がある。
【0065】
「酸架橋剤」
ネガ型感光性樹脂組成物に用いられる酸架橋剤は、酸の作用により酸架橋剤同士が重合する作用、及び/または、酸架橋剤を介してバインダー等の他の樹脂成分同士を架橋することにより硬化させ、該硬化した部分を現像液に対して不溶性とする作用を有するものであれば特に限定されないが、例えば、架橋置換基を少なくとも1種以上の置換基(以下、「架橋性置換基」という場合がある。)を有する化合物を挙げることができる。
【0066】
このような架橋性置換基の具体例としては、例えば(i)ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アセトキシアルキル基等のヒドロキシアルキル基またはその誘導体;
(ii)ホルミル基、カルボキシアルキル基等のカルボニル基またはその誘導体;
(iii)ジメチルアミノメチル基、ジエチルアミノメチル基、ジメチロールアミノメチル基、ジエチロールアミノメチル基、モルホリノメチル基等の含窒素基含有置換基;
(iv)グリシジルエーテル基、グリシジルエステル基、グリシジルアミノ基等のグリシジル基含有置換基;
(v)ベンジルオキシメチル基、ベンゾイロキシメチル基等のアリルオキシアルキル基、アラルキルオキシアルキル基等の芳香族誘導体;
(vi)ビニル基、イソプロペニル基等の重合性多重結合含有置換基等を挙げることができる。本発明に用いられる酸架橋剤の架橋性置換基としては、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基等が好ましく、特にアルコキシメチル基が好ましい。
【0067】
前記架橋性置換基を有する酸架橋剤としては、例えば(i)メチロール基含有メラミン化合物、メチロール基含有ベンゾグアナミン化合物、メチロール基含有ウレア化合物、メチロール基含有グリコールウリル化合物、メチロール基含有フェノール化合物等のメチロール基含有化合物;
(ii)アルコキシアルキル基含有メラミン化合物、アルコキシアルキル基含有ベンゾグアナミン化合物、アルコキシアルキル基含有ウレア化合物、アルコキシアルキル基含有グリコールウリル化合物、アルコキシアルキル基含有フェノール化合物等のアルコキシアルキル基含有化合物;
(iii)カルボキシメチル基含有メラミン化合物、カルボキシメチル基含有ベンゾグアナミン化合物、カルボキシメチル基含有ウレア化合物、カルボキシメチル基含有グリコールウリル化合物、カルボキシメチル基含有フェノール化合物等のカルボキシメチル基含有化合物;
(iv)ビスフェノールA系エポキシ化合物、ビスフェノールF系エポキシ化合物、ビスフェノールS系エポキシ化合物、ノボラック樹脂系エポキシ化合物、レゾール樹脂系エポキシ化合物、ポリ(ヒドロキシスチレン)系エポキシ化合物等のエポキシ化合物;等を挙げることができる。
【0068】
本発明に用いられる酸架橋剤は、アルコキシメチル化ウレア化合物またはその樹脂、あるいはアルコキシメチル化グリコールウリル化合物またはその樹脂が好ましい。特に好ましい酸架橋剤としては、下記式(47)で示されるアルコキシメチル化ウレア化合物または式(48)で示されるアルコキシメチル化グリコールウリル化合物を挙げることができる。
【0069】
【化14】
【0070】
ここでR3は、炭素数1〜4のアルキル基である。
【0071】
【化15】
【0072】
ここでR4は、炭素数1〜4のアルキル基である。
【0073】
前記式(47)及び式(48)において、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができる。前記酸架橋剤は、例えば、尿素化合物やグリコールウリル化合物とホルマリンとを縮合反応させてメチロール基を導入した後、さらにメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコール類でエーテル化し、次いで反応液を冷却して、析出する化合物またはその樹脂を回収することで得られる。また、前記酸架橋剤は、CYMEL(商品名:三井サイアナミッド社製)、ニカラッド(商品名:三和ケミカル社製)のような市販品としても入手することができる。
【0074】
酸架橋剤としてはメラミン、ベンゾグアナミン、グリコールウリルまたは尿素にホルムアルデヒドを作用させた化合物、またはそれらのアルキル変性化合物、エポキシ化合物、レゾール化合物等が有効であり、その具体例は、次のとおりである。
【0075】
具体的には、三井サイアナミド社のサイメル(登録商標)300、301、303、350、736、738、370、771、325、327、703、701、266、267、285、232、235、238、1141、272、254、202、1156、1158は、メラミンにホルムアルデヒドを作用させた化合物またはそのアルキル変性物の例である。サイメル(登録商標)1123、1125、1128は、ベンゾグアナミンにホルムアルデヒドを作用させた化合物またはそのアルキル変性物の例である。サイメル(登録商標)1170、1171、1174、1172は、グリコールウリルにホルムアルデヒドを作用させた化合物またはそのアルキル変性物の例である。尿素にホルムアルデヒドを作用させた化合物またはそのアルキル変性物の例としては、三井サイアナミド社のUFR(登録商標)65、300を挙げることができる。
【0076】
エポキシ化合物の例として、ノボラックエポキシ樹脂(VDPN−638、701、702、703、704等:東都化成社製)、アミンエポキシ樹脂(YH−434等:東都化成社製)、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ソルビトール(ポリ)グリシジルエーテル、(ポリ)グリセロール(ポリ)グリシジルエーテル、ペンタエリスリトール(ポリ)グリシジルエーテル、トリグリシジルトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、アリルグリシジルエーテル、エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノールグリシジルエーテル、ラウリルアルコールグリシジルエーテル、アジピン酸グリシジルエーテル、フタル酸グリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリシジルフタルイミド、(ポリ)エチレングリコールグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0077】
この中で特に好ましい化合物としては、分子中に−N(CH2OR)2基を有する化合物(式中、Rは水素原子またはアルキル基を示す)が挙げられる。詳しくは、尿素あるいはメラミンにホルムアルデヒドを作用させた化合物またはそのアルキル変性物が特に好ましい。レゾール化合物の例としては、群栄化学社製のPP−3000s、PP−3000A、RP−2978、SP−1974、SP−1975、SP−1976、SP−1977、RP−3973等が挙げられる。
【0078】
「バインダー」
バインダーは、公知の高分子材料であれば特に限定されないが、本発明においては、ネガ型感光性樹脂組成物に用いられるバインダーとして、メタクリル酸メチルまたはベンジルメタクリレートの少なくとも1つを含む共重合体であることが特に好ましい。このような共重合体として、メタクリル酸メチルを含む共重合体、ベンジルメタクリレートを含む共重合体、メタクリル酸メチル及びベンジルメタクリレートを含む共重合体等が挙げられる。
【0079】
上記共重合体の中では、質量平均分子量が、25,000〜100,000の範囲であるものが好ましく、25,000〜60,000の範囲であるものがより好ましい。また、露光処理に用いる光の波長に対する透過率は高いことが好ましく、プリベーク処理等の比較的低温で実施される加熱処理や、前記波長の光に対して透過率が低下しないものであることがさらに好ましい。このような光学的特性という観点からは、メタクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体、メタクリル酸/メタクリル酸メチル/ベンジルメタクリレート共重合体であることが好ましい。
【0080】
一方、ポジ型感光性樹脂組成物としては、前記アルカリ可溶性のバインダーとして、例えば、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン類、ヒドロキシスチレン−N−置換マレイミド共重合体、ヒドロキシスチレン−無水マレイン酸共重合体、アルカリ可溶性基を有するアクリル系ポリマー、アルカリ可溶性基を有するウレタン型ポリマー等が挙げられる。ここでアルカリ可溶性基としてはカルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、イミド基等が挙げられる。
【0081】
前記アルカリ可溶性基を有するアクリル系ポリマーの例としては、メタクリル酸−ベンジルメタクリレート共重合体、ポリ(ヒドロキシフェニルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシエチルアクリレート)、ポリ(2、4−ジヒドロキシフェニルカルボニルオキシエチルアクリレート)等が挙げられる。これらのアクリル系ポリマーは質量平均分子量が2,000〜500,000、好ましくは4,000〜300,000のものが好ましい。
これらのアルカリ可溶性ポリマーのうち、ヒドロキシスチレン系ポリマー及びアルカリ可溶性基を有するアクリル系共重合体は現像性の点で好ましい。
【0082】
本発明において、アルカリ可溶性化合物であるバインダーは、酸分解性基で保護されていてもよく、該酸分解性基としては、エステル基、カーバメイト基等が挙げられる。
【0083】
本発明において、これらのバインダーの含有量は、感光性樹脂層の全固形分中、10〜90質量%程度であり、20〜85質量%の範囲であることが好ましく、30〜80質量%の範囲であることがさらに好ましい。
また、これらのアルカリ可溶性化合物は、1種類のみで使用してもよいし、あるいは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、前記アルカリ可溶性のバインダーは、酸の作用により分解しアルカリ可溶となる化合物である溶解抑止剤と共に用いられる。
【0084】
上記感光性樹脂組成物としては、アルカリ水溶液により現像可能なものと、有機溶剤により現像可能なものと、が知られているが、公害防止、労働安全性の確保の観点からアルカリ水溶液現像可能なものが好ましい。
【0085】
さらに、前記感光性樹脂層には、種々の目的で、各種の添加剤を含有させることができる。添加剤の例としては、界面活性剤、密着促進剤、可塑剤等が挙げられる。界面活性剤は、塗布性、得られる塗膜の平滑性を向上させるために用いることができ、その具体例としては、例えばBM−1000(BM Chemie社製)、メガファックスF142D、同F172、同F173、同F183、同F176PF、同F177PF(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC−135、同FC−170C、フロラードFC−430、同FC−431(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−112、同S−113、同S−131、同S−141、同S−145(以上、旭硝子(株)製)、SH−28PA、SH−190、SH−193、SZ−6032、SF−8428、DC−57、DC−190(以上、東レシリコーン(株)製)の商品名で市販されているフッ素系またはシリコン系界面活性剤を使用することができる。
【0086】
上記界面活性剤の使用量は、全固形分の0.05〜10質量%であり、0.05質量%以下では有効でなく、10質量%を越えるとレジストパターンの密着性が劣化するので好ましくない。0.08〜5質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜3質量%の範囲であることが特に好ましい。
なお、前記感光性樹脂層の厚みは、1.0〜10μmの範囲であることが好ましい。
【0087】
また、前記感光性樹脂組成物中には、必要に応じて着色剤を添加することもできる。当該着色剤としては、硫酸バリウム、酸化チタン、ベンガラ、カーボンブラック、フタロシアニン等の顔料、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン等の染料などを用いることができる。
【0088】
−感光性転写材料−
本発明に用いられる感光性転写材料は、好ましくは帯電防止層と接着性表面を有する支持体の接着性表面に、例えばアルカリ可溶性の熱可塑性樹脂層溶液を塗布し、乾燥することによりアルカリ可溶性の熱可塑性樹脂層を設け、その後該熱可塑性樹脂層表面に該熱可塑性樹脂層を溶解しないが、ある程度膨潤させる溶媒からなる中間層の溶液を塗布、乾燥し中間層を設ける。その中間層の表面に、さらに感光性樹脂層を、中間層を溶解しない溶剤で塗布、乾燥して設ける。その後、必要により保護フィルムを感光性樹脂層表面にラミネートして完成する。
【0089】
本発明に係る各層用塗布液は、一般によく知られた塗布方法、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、あるいは、米国特許第2681294号明細書に記載のポッパーを使用するエクストルージョンコート法等により塗布することができる。
【0090】
または、別のフィルム表面に感光性樹脂層を設けて、前記の支持体表面にアルカリ可溶性の熱可塑性樹脂層及び中間層を有するフィルムの両方のフィルムを中間層と感光性樹脂層とが接するように相互に貼り合わせること、または、別のフィルムとして、アルカリ可溶性の熱可塑性樹脂層を有する支持体を用意し、このアルカリ可溶性の熱可塑性樹脂層を、フィルム表面に感光性樹脂層、中間層の順に塗布された第2のフィルムの中間層と貼り合わせることにより有利に製造される。
【0091】
(基板)
基板としては、前記感光性樹脂層の形成が可能なものであれば特に限定されないが、少なくとも300℃以上の耐熱性を有し、塗布液として用いる溶媒に対して化学的に安定であり、露光処理に用いる光(紫外光)に対して変質しない材料からなる基板を用いることが好ましい。このような基板としては、例えば、無アルカリガラスや石英等のガラス材料、アルミナ等のセラミックス材料、シリコンやガリウム砒素等の半導体材料、ステンレスや銅等の金属材料、あるいは、これらの複合材料を用いることができる。
【0092】
(転写)
次に、前記感光性転写材料を用いた本発明における転写工程の一例(熱ラミネーション)を説明する。
先行パターンや薄膜を有する基体表面を洗浄後、感光性転写材料から必要に応じて保護フィルムを除去し、ラミネータにより感光性樹脂層をヒートローラーを用いて、基板表面に加熱加圧下で積層転写する。転写時のヒートローラーの温度は50〜150℃の範囲、圧着時の線圧は5kg/cm〜25kg/cmの範囲が有利な条件である。ラミネーションの速度は搬送速度で0.2m/分〜4m/分の範囲であることが好ましい。特に好ましい条件としては、加熱圧着ロール温度が130℃〜140℃の範囲、圧着時の線圧が10kg/cm〜15kg/cmの範囲、搬送速度が1m/分〜3m/分の範囲である。その後、基板のサイズに合わせてロールフィルムをカットする。
【0093】
<パターニング工程>
本発明におけるパターニング工程は、前記転写工程で基板表面に形成された感光性樹脂層をパターン形成するものであり、具体的には、前記感光性樹脂層の表面に所望のパターンが形成できるように、少なくとも、前記パターンに対応する領域に光を照射する露光処理と、該露光処理の後に光照射された領域の感光性樹脂組成物層を完全に現像液に対して不溶化する露光後ベーク処理(加熱処理)と、該露光後ベーク処理の後に現像液により非光照射領域を溶解させてエッチング処理する現像処理と、を経ることによりパターン形成された感光性樹脂組成物層を得るものである(以下、このようなパターン形成を「ネガ型パターン形成」と略す場合がある)。
【0094】
あるいは、前記パターンに対応する領域外に光を照射する露光処理と、該露光処理の後に光照射された領域の感光性樹脂組成物層を完全に現像液に対して易溶化する露光後ベーク処理(加熱処理)と、該露光後ベーク処理の後に現像液により光照射領域を溶解させてエッチング処理する現像処理と、を経ることによりパターン形成された感光性樹脂層を得るものであってもよい(以下、このようなパターン形成を「ポジ型パターン形成」と略す場合がある)。
【0095】
パターン形成は、上記ネガ型あるいはポジ型のいずれであってもよいが、ポジ型の場合では、感光性樹脂組成物層中に含まれる金属酸化物前駆体が、露光工程でパターン形成に用いられる光の波長を吸収するものである場合には、現像液により光照射領域を完全に溶解できない可能性がある。このため、ネガ型のパターン形成を行うことがより好ましい。
【0096】
−露光処理−
露光処理に用いる露光方式としては、半導体の微細パターンの形成に用いられる公知の露光方式を用いることができ、所望するパターニング精度やパターニングコストに応じて適当な方式を選択できる。このような露光方式としては、例えば、所望のパターンが形成されたフォトマスクと、基板表面に形成された感光性樹脂組成物層を密着(近接)させた状態で露光するコンタクト(プロキシミティ)露光方式、2枚の反射鏡を用いた等倍投影露光方式、いわゆるステッパといわれる縮小投影露光機を用いた縮小投影露光方式等を用いることができる。従って、パターニング精度の優れた露光方式を用いてパターン形成を行った場合には、サブミクロンスケールの精緻なパターンを有する金属酸化物多孔体からなる金属酸化物構造体を形成することも可能である。
【0097】
ここで使用する光としては、例えばg線(波長436nm)、i線(波長365nm)及び超高圧水銀灯、キセノン灯、カーボンアーク灯、アルゴンレーザー等の公知の光源からの連続状、及び/または、輝線状の紫外線、KrFエキシマレーザー等の遠紫外線が挙げられ、これらの中では、g線、i線及びこれらを含む300nm〜440nm領域の紫外線が好ましいものとして挙げられる。特開平6−59119号公報に記載のように、400nm以上の波長の光透過率が2%以下である光学フィルター等を併用してもよい。
【0098】
−露光後ベーク処理−
前記露光処理後に実施される露光後ベーク処理は、ネガ型感光性樹脂組成物(あるいはポジ型感光性樹脂組成物)の構成成分に応じて異なるが、ベーク処理温度は、90〜150℃の範囲であることが好ましく、90〜120℃の範囲であることがより好ましい。また、ベーク処理時間は、15秒〜2分の範囲であることが好ましく、30秒〜2分の範囲であることがより好ましい。
【0099】
このようなベーク処理を実施することによって、光照射した領域のフォトマスク側近辺に多く発生した酸を最下部(基板側)まで分散・浸透させることができ、架橋を促進し、現像液に対する不溶化を確実にすることができる。
【0100】
−現像処理−
現像処理は、熱可塑性樹脂層と中間層を除去するための第1のアルカリ現像と、感光性樹脂層の未露光部を除去するための第2のアルカリ現像からなることが望ましい。
第1のアルカリ現像は、26〜40℃でpH9〜11の弱アルカリ現像液を用いて現像し、第2のアルカリ現像は、26〜40℃でpH9〜11の弱アルカリ現像液を用いて現像することができる。
【0101】
前記感光性樹脂層の現像液としては、例えばアルカリ性物質の希薄水溶液を使用するが、さらに、水と混和性の有機溶剤を少量添加したものを用いてもよい。適当なアルカリ性物質としては、アルカリ金属水酸化物類(例、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、アルカリ金属炭酸塩類(例、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)、アルカリ金属重炭酸塩類(例、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム)、アルカリ金属ケイ酸塩類(例、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム)、アルカリ金属メタケイ酸塩類(例、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム)、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、テトラアルキルアンモンニウムヒドロキシド類(例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド)、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ〔4,3,0〕−5−ノナンまたは燐酸三ナトリウムを挙げることができる。
【0102】
上記の水と混和性のある適当な有機溶剤としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ベンジルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、乳酸エチル、乳酸メチル、ε−カプロラクタム、N−メチルピロリドンを挙げることができる。水と混和性の有機溶剤の濃度は、0.1質量%〜30質量%が一般的である。現像液には、さらに公知のアニオン型、ノニオン型界面活性剤を添加することができる。界面活性剤の濃度は0.01質量%〜10質量%が好ましい。現像液は、浴液としても、あるいは噴霧液としても用いることができる。さらに、現像方法としては、液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法、スプレイ法等を利用することができる。
【0103】
<焼成工程>
焼成工程は、前記パターニング工程で基板表面にパターン形成された感光性樹脂層を焼成する工程であり、具体的には、感光性樹脂層に含まれる有機物を酸化分解、及び/または、熱分解することにより除去し、金属酸化物前駆体から金属酸化物構造体を形成する工程である。
【0104】
なお、金属酸化物前駆体が、前記のように金属酸化物以外の材料、及び/または、多孔質な構造を有さないものである場合には、上記焼成により、金属酸化物多孔体を形成する。
【0105】
上記焼成工程の温度は特に限定されないが、有機物を含まない金属酸化物多孔体からなる金属酸化物構造体を得るために、300〜800℃の範囲で行われることが好ましい。
温度が300℃に満たないと、有機物を十分に除去することができなかったり、金属酸化物以外の材料からなる金属酸化物前駆体が、分解や酸化等により十分に金属酸化物に変化することができない場合がある。温度が800℃を超えると、金属酸化物前駆体同士の凝集や結着が進行し過ぎて、多孔質な構造が失われてしまったり、基板が熱により劣化したり変形したりする場合がある。また、焼成に際しては、焼成温度や焼成時間をコントロールすることにより、所望する空隙率や、多孔体構造が得られるように調整することも可能である。
【0106】
但し、焼成することにより金属多孔体からなる金属酸化物構造体を形成した後に、この金属酸化物構造体の所望の領域に、他の物質を含浸等により担持させたり、担持させた後に、さらに高温で焼成することにより、緻密な金属酸化物中に他の物質が閉じ込められた金属酸化物構造体としてもよい。
【0107】
焼成雰囲気は、特に限定されず、通常の雰囲気下で実施してもよいが、シリコンや金属等の酸化されやすい基板を用いる場合には還元性の雰囲気下で焼成してもよく、また、金属酸化物前駆体が金属酸化物以外の材料からなる場合には、酸化を促すために、酸化性の雰囲気下で焼成してもよい。
【0108】
以上に説明したように、塗布工程、パターニング工程および焼成工程を得ることにより金属酸化物構造体が形成されるが、該金属酸化物構造体が2層以上の構造体からなる立体的なものである場合には、1層毎に塗布工程、パターニング工程および焼成工程を繰り返して積層することにより金属酸化物構造体を形成してもよく、あるいは、1層毎に、塗布工程およびパターニング工程を繰り返して積層した後に、焼成工程を経ることにより金属酸化物構造体を形成してもよい。また、各層の金属酸化物多孔体の材料及び多孔質な構造は同じてあってもよく、異なっていてもよい。
【0109】
<金属酸化物構造体の形成>
本発明の金属酸化物多孔体からなる金属酸化物構造体の製造方法の実施形態として、フォトマスクを用いたプロキシミティ露光によりネガ型のパターン形成を行う場合を例として、以下に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0110】
図1は、本発明の金属酸化物構造体の製造方法の一例を示す模式断面図であり、フォトマスクを用いたプロキシミティ露光によりネガ型のパターン形成を行う場合について示している。図1(a)は、露光処理を説明する模式断面図であり、図1(b)は、現像処理後にパターンが形成されたことを説明する模式断面図であり、図1(c)は、焼成工程後に金属酸化物多孔体が規則的に配置された金属酸化物構造体が形成されたことを説明する模式断面図である。
【0111】
図1(a)において、基板1表面には、感光性樹脂層20が形成されている。当該感光性樹脂層20は、光重合開始剤を含む光重合性モノマー22中に、粒子状の金属酸化物前駆体21とバインダー23とが分散・含有してなるものである。また、感光性樹脂層20表面には、フォトマスク10が、ブラックマスク12が形成された面を下にして、感光性樹脂層20上に近接するように設置されている。フォトマスク10は、基板10の厚み方向及び感光性樹脂層20の膜厚方向に対して垂直に入射する、図示しないの平行光源から照射された矢印hνで表される露光用の光を透過するガラス基板11と、露光用の光hνを完全に遮蔽するブラックマスク12からなるものであり、ブラックマスク12は、所望するパターンに応じてガラス基板11表面に形成されている。
【0112】
露光処理は、図1(a)に示すように、フォトマスク10を介して、露光用の光hνを感光性樹脂層20に照射されることにより実施される。この際、露光用の光hνが照射された部分の感光性樹脂層20中に含まれる光酸発生剤の分解等により酸が発生する。
露光処理後、フォトマスク10は、感光性樹脂層20表面から取り除かれ、次に、感光性樹脂層20を露光後ベーク処理することにより、感光性樹脂層20のフォトマスク側近辺に多く存在する酸を、基板側まで十分に拡散・浸透させるとともに露光用の光hνが照射された部分の架橋をさらに促進した。その後、露光後ベーク処理された感光性樹脂層20を現像液を用いてエッチング処理することにより、ブラックマスク12直下の感光性樹脂層20が除去されることにより、図1(b)に示すようなパターンが得られる。
【0113】
図1(b)において、符号40、41及び42は、露光及び現像処理により形成された粒子状の金属酸化物前駆体を含む樹脂層であり、図1(b)に示す粒子状の金属酸化物前駆体を含む樹脂層40、41及び42からなるパターンはフォトマスク10表面のブラックマスク12で覆われていない領域のパターンに対応するものである。なお、粒子状の金属酸化物前駆体を含む樹脂層40、41及び42は、粒子状の金属酸化物前駆体21、酸架橋剤の重合体22’及びバインダー23からなるものである。
【0114】
これら粒子状の金属酸化物前駆体を含む樹脂層40、41及び42を焼成することにより、図1(b)に示すようなパターン形状を保ったまま、図1(c)に示す基板10表面に金属酸化物多孔体50、51及び52が規則的に配置された金属酸化物構造体53が形成される。
【0115】
以上のようにして、本発明により製造される、基板表面に規則的に配置された金属酸化物構造体は、例えば、フィルター、センサー、電極、PDP(プラズマ・ディスプレイ・パネル)の隔壁等への利用が期待できる。なお、上記フィルターに関しては、本発明により基板表面に金属酸化物構造体を形成した後に、基板のみを溶解して得ることができる。
【0116】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
<実施例1>
(感光性転写材料の作製)
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、下記組成の塗布液を塗布、乾燥して、乾燥膜厚が20μmの熱可塑性樹脂層を形成した。
【0117】
−熱可塑性樹脂層塗液組成−
・メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(モル比:55/28.8/11.7/4.5、質量平均分子量:90000):15質量部
・ポリプロピレングリコールジアクリレート(平均分子量:822):6.5質量部
・テトラエチレングリコールジメタクリレート:1.5質量部
・p−トルエンスルホンアミド:0.5質量部
・ベンゾフェノン:1.0質量部
・メチルエチルケトン:30質量部
【0118】
上記の熱可塑性樹脂層の表面に、下記組成の塗布液を塗布、乾燥して乾燥膜厚が1.6μmの中間層を形成した。
【0119】
−中間層用塗液組成−
・ポリビニルアルコール(クラレ(株)社製、PVA205、けん化率:80%):130質量部
・ポリビニルピロリドン(GAFコーポレション社製 PVP K−90):60質量部
・フッ素系界面活性剤(旭硝子(株)社製、サーフロンS−131):10質量部
・蒸留水:3350質量部
【0120】
上記の中間層の表面に下記組成物の塗布液を塗布、乾燥して乾燥膜厚が5μmの感光性樹脂層を形成し、感光性転写材料を作製した。
【0121】
−感光性樹脂層塗液組成−
・メタクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体(モル比:28/72、質量平均分子量:30000):19.98質量部
・酸架橋剤(MW−30M、三和ケミカル(株)製):4.76質量部
・界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)製、F177P):0.21質量部・光酸発生剤(2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4−(N,N−ジエトキシカルボメチル)−3−ブロモフェニル]−s−トリアジン):2.38質量部
・メチルエチルケトン:106.80質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:44.70質量部
・シリカゾル(平均粒径0.2μmのシリカ成分を30質量%含むメチルイソブチルケトン分散物):70.57質量部
【0122】
(感光性樹脂層の転写)
上記の方法で得られた感光性転写材料から前記感光性樹脂層を、ガラス基板(幅10cm、長さ10cm、厚み1.1mm)の表面に、ファーストラミネーター(大成ラミネーター(株)社製、VP−200)を用いて130℃、ラミネーション速度0.2m/min、線圧10kg/cmの条件で転写して、感光性樹脂層が転写されたガラス基板を得た。
【0123】
(パターニング、焼成)
次に、上記感光性樹脂層を形成したガラス基板をクリーンオーブン中にて70℃で30分間プリベーク後、ストライプ状のパターンを有するフォトマスク(線幅20μm、ピッチ20μm間隔)を用いて露光(露光量:100mJ/cm2 )した。露光終了から1分後に、クリーンオーブン中にて100℃で、1分間露光後ベーク処理を実施した。この加熱処理の後、熱可塑性樹脂層と中間層の除去用のアルカリ現像液(冨士写真フィルム(株)社製、T−PD2)の33℃の10倍希釈液(pH10.7)を用いて現像、水洗処理し、続けて感光層の未露光部を除去用アルカリ現像液(冨士写真フィルム(株)社製、T−CD)の5倍希釈液(液温33℃、pH9.9)により現像し、水洗・乾燥させた。さらにクリーンオーブン中にて500℃で3時間焼成し感光性樹脂組成物層から有機物を除去することにより、ガラス基板表面に、線幅21.4μm、ピッチ18.6μm間隔に規則的に配置された厚みが約0.6μmの金属酸化物構造体を形成した。この金属酸化物構造体は、フォトマスクに形成されたパターンと同程度に精緻なパターンを有するものであった。また、このストライプ状の金属酸化物構造体を電子顕微鏡で観察したところ、凝集・結着した個々のシリカ微粒子間には多数の空隙(孔)が観察され、多孔質な構造を有していることが確認された。
【0124】
<比較例1>
感光性樹脂層として、以下の感光性樹脂組成物の塗液を用いた以外は、実施例1と同様にして、膜厚5μmの感光性樹脂層が形成されたガラス基板を得た。
【0125】
−感光性樹脂層塗液組成−
・メタクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体(モル比:28/72、質量平均分子量:30000):20.00質量部
・界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)社製、F177P):0.05質量部
・メチルエチルケトン:100.00質量部
・シリカゾル(平均粒径0.2μmのシリカ成分を30質量%含むメチルイソブチルケトン分散物):63.00質量部
【0126】
次に、感光性樹脂層を形成したガラス基板を、クリーンオーブン中にて70℃で30分間プリベーク後、さらに、500℃で3時間焼成することにより感光性樹脂層から有機物を除去することにより、ガラス基板表面に、一様な膜厚が約0.5μmの金属酸化物膜が形成された。
この膜を電子顕微鏡で観察したところ、凝集・結着した個々のシリカ微粒子間には多数の空隙(孔)が観察され、多孔質な構造を有していることが確認された。しかしながら、規則的に配置された金属酸化物構造体を得ることはできなかった。
【0127】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、感光性樹脂転写材料を用いて、基板表面に金属酸化物多孔体を所定の位置に規則的に配置した金属酸化物構造体を形成するための簡易な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の金属酸化物構造体の製造方法の一例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
1 基板
10 フォトマスク
11 ガラス基板
12 ブラックマスク
20 感光性樹脂層
21 粒子状の金属酸化物前駆体
22 (光酸発生剤を含む)酸架橋剤
22’ 酸架橋剤の重合体
23 バインダー
40、41、42 粒子状の金属酸化物前駆体を含む樹脂層
50、51、52 金属酸化物多孔体
53 金属酸化物多孔体が配置された金属酸化物構造体
Claims (5)
- 基板表面に少なくとも金属酸化物多孔体を配置した金属酸化物構造体の製造方法であって、
金属酸化物前駆体を含有する化学増幅系の感光性樹脂組成物を感光性樹脂層として有する感光性転写材料を用い、前記感光性樹脂層と基板とを少なくとも加熱しながら密着させた後剥離することにより、前記感光性樹脂層を基板表面に形成する転写工程と、該感光性樹脂層をパターン形成するパターニング工程と、前記パターン形成された感光性樹脂層を焼成する焼成工程と、からなることを特徴とする金属酸化物構造体の製造方法。 - 前記金属酸化物前駆体が、酸化チタンゾル、シリカゾル及びアルミナゾルのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の金属酸化物構造体の製造方法。
- 前記化学増幅系の感光性樹脂組成物が、少なくとも光酸発生剤、酸架橋剤及びバインダーを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の金属酸化物構造体の製造方法。
- 前記焼成工程が、300〜800℃の範囲の温度で行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属酸化物構造体の製造方法。
- 前記感光性転写材料が、支持体表面に熱可塑性樹脂層、中間層及び感光性樹脂層を、この順に積層してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金属酸化物構造体の製造方法。
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- 2002-07-09 JP JP2002199734A patent/JP2004045490A/ja active Pending
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