JP2004044808A - システム制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 無段変速機をスライディングモード制御するに際してハンチングを抑制する。
【解決手段】 スライディングモード制御部54が行うスライディングモード制御による制御量P2と、プライマリ油圧フィードフォワード項演算部52にて制御量P1が演算される。無段変速機2はP1とP2とが加算された目標プライマリ油圧PPtでプライマリ油圧制御アクチュエータ26が調整される。従って、目標プライマリ油圧PPtは、その全てがスライディングモード制御による制御量に基づくのではなく、フィードフォワード制御による制御量分が含まれている。即ち、スライディングモード制御による制御量は、フィードフォワード制御による制御量分が含まれている分、そうでない場合に比べ、小さくなる。このことは、スライディングモード制御における非線形フィードバック項ゲインを小さくとれることを示し、応答性を満足しつつ、ハンチングの防止ができる。
【選択図】 図3
【解決手段】 スライディングモード制御部54が行うスライディングモード制御による制御量P2と、プライマリ油圧フィードフォワード項演算部52にて制御量P1が演算される。無段変速機2はP1とP2とが加算された目標プライマリ油圧PPtでプライマリ油圧制御アクチュエータ26が調整される。従って、目標プライマリ油圧PPtは、その全てがスライディングモード制御による制御量に基づくのではなく、フィードフォワード制御による制御量分が含まれている。即ち、スライディングモード制御による制御量は、フィードフォワード制御による制御量分が含まれている分、そうでない場合に比べ、小さくなる。このことは、スライディングモード制御における非線形フィードバック項ゲインを小さくとれることを示し、応答性を満足しつつ、ハンチングの防止ができる。
【選択図】 図3
Description
本発明は、入力される調整量により、この調整量に対応する状態に向けて制御系の状態を変化させる被制御システム、例えば無段変速機等に対して制御を行う制御装置に関する。
従来、車両用の無段変速機として、ベルト式無段変速機が知られている。このベルト式無段変速機を制御するための制御装置は、プーリ位置やプライマリ回転数(駆動プーリの回転数)を制御対象として、無段変速機の変速比を、車両の運転状態に適合する変速比となるように制御していた。
この変速比の調整のために、前記ベルト式無段変速機においては、入力トルクに応じてセカンダリ油圧(従動プーリのベルト挟持力調整のための油圧)を設定するセカンダリ油圧制御系と、入力トルクおよびセカンダリ油圧に応じて、所定の変速比を得るのに必要なプライマリ油圧(駆動プーリのプーリ位置調整のための油圧)を設定する変速比制御系とを備えていた。
ここで、変速比制御系では目標変速比を実現するために、対応する目標プーリ位置あるいは、目標プライマリ回転数が演算され、これらプーリ位置あるいはプライマリ回転数の実値との偏差に基づいてフィードバック制御によるプライマリ油圧が演算され、このプライマリ油圧となるように油圧が調整された。
このようなフィードバック制御を行うにあたっては、各種走行モード(発進、定常、キックダウン、手動変速、ブレーキなど)に応じて制御ゲインを調整、あるいは、目標値の補正を行うことにより、変速比のハンチングを防止して、変速制御の応答性、収束性の適正化が図られていた。
この種の無段変速機において、制御ゲインを調整するものが挙げられる。(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1では、急ブレーキ時には通常の走行モードより制御ゲインを大きくして変速比が大側に移動する速度を上げ、それ以外の場合は制御ゲインを小さく維持する技術が開示されている。
また、目標値の補正を行うものが挙げられる(例えば、特許文献2参照。)。この特許文献2では、スロットルが急閉された場合など、目標のプライマリ回転数が急減したときに、PID制御器の過剰な積分制御により、実プライマリ回転数がアンダーシュートすることで変速比のハンチングが生じるのを防止するために、目標のプライマリ回転数の減少速度にリミッタをかける技術が開示されている。
しかし、上記先行技術においては、基本的にはPID制御であることからロバスト性が低いとともに、以下の様な不具合がある。すなわち、(1)各種走行モード毎に、制御ゲインを調整、あるいは、目標値の補正を行うために、制御ソフトウエアが複雑化する。(2)各種走行モード毎に、最適な制御ゲインや目標値の補正量を設定する必要があるために制御ソフトウエアの開発に時間がかかる。
このような、PID制御の欠点を補うフィードバック制御として、ロバスト性が高く、前記(1)、(2)の問題が少ない、スライディングモード制御が知られている(例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6等参照。)。
これらは、基本的にはフィードフォワード演算にて得られた目標値に基づいて、スライディングモード制御器にてサーボ機構に対するフィードバック制御を行っている。
特許第2505420号公報
特開平7−167234号公報
特開平8−249067号公報
特開昭61−271509号公報
特開昭61−271510号公報
特開平2−297602号公報
しかし、スライディングモード制御では、その性質上、制御のハンチングが生じ易い。したがって、運転条件が限られているロボットのような分野では大きな問題とならないとしても、他の多くの分野での各種装置の制御、例えば、車両用の無段変速機等の制御に適用すると、そのハンチングが無視できず、乗り心地の低下につながるおそれがあった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、ロバスト性を高めて、各種走行モード等の運転条件に応じて制御ゲインを調整あるいは目標値の補正を行うことを減らし、あるいは無くすとともに、かつハンチングを抑制することにある。
本発明のシステム制御装置は、状態調整手段が、フィードフォワード制御量演算手段にて演算された制御量と、スライディングモード制御量演算手段にて演算された制御量との加算に基づいて得られた調整量により、無段変速機の状態を調整している。
すなわち、本発明では、スライディングモード制御量演算手段が行うスライディングモード制御による制御量とは、別個に、フィードフォワード制御量演算手段にて入力トルクと目標変速比に基づいて制御量が演算されている。無段変速機は、スライディングモード制御による制御量と、フィードフォワード制御による制御量との加算に基づいて調整量が求められ、その調整量で調整される。
したがって、調整量は、従来のごとくそのすべてがスライディングモード制御による制御量に基づくというのではなく、スライディングモード制御とは並行して求められたフィードフォワード制御による制御量分が含まれている。すなわち、スライディングモード制御による制御量は、フィードフォワード制御によって入力トルクと目標変速比に基づいて演算される制御量が含まれている分、そうでない場合に比べ、小さくなる。このことは、スライディングモード制御における非線形フィードバック項ゲインを小さくとれることを示し、スライディングモード制御の有するロバスト性を保持しつつ、ハンチングを抑制させることができる。
なお、上述した構成に、更に、スライディングモード制御に起因するハンチングを低減させるために、無段変速機の状態に生じる振動の周波数帯域を除去するフィルタ処理を、目標値演算手段にて演算された目標変速比と状態検出手段にて検出された実値との偏差に加えた後に、スライディングモード制御量演算手段へ入力するフィルタ前処理手段を備えても良い。
また、フィルタ前処理手段の代りに、あるいはフィルタ前処理手段に加えて、無段変速機の状態に生じる振動の周波数帯域を除去するフィルタ処理を、スライディングモード制御量演算手段が演算した制御量に加えた後に、状態調整手段へ入力するフィルタ後処理手段を備えて、スライディングモード制御に起因するハンチングを更に低減させるようにしても良い。
[実施の形態1]図1は、上述した発明が適用された無段変速機2、制御装置4、および周辺装置の概略構成を表すブロック図である。これら無段変速機2および制御装置4は自動車の無段変速機2および制御装置4として構成されている。
無段変速機2は、可動円錐盤6と固定円錐盤8とからなる駆動側のプライマリプーリ10(駆動プーリに相当する。)、可動円錐盤12と固定円錐盤14とからなる従動側のセカンダリプーリ16(従動プーリに相当する。)、駆動側のプライマリプーリシリンダ18、従動側のセカンダリプーリシリンダ20、およびプライマリプーリ10とセカンダリプーリ16との間に掛け渡された金属ベルト22、内燃機関としてのエンジンEにより駆動されるオイルポンプ24、プライマリ油圧制御アクチュエータ26、セカンダリ油圧制御アクチュエータ28、エンジンEからのトルクの伝達を調整するトルクコンバータ等の発進デバイス30を備えている。
制御装置4は、電子制御回路から成るコントロールユニット32、プライマリプーリ10の回転数を検出するプライマリ回転センサ34、セカンダリプーリ16の回転数を検出するセカンダリ回転センサ36、エンジンEへの吸入空気量を調整するスロットル開度を検出するスロットル開度センサ38、およびエンジンEの回転数を検出するエンジン回転センサ40を備えている。
コントロールユニット32は、CPUを中心とするマイクロコンピュータとして構成され、状態検出手段としての、プライマリ回転センサ34、セカンダリ回転センサ36、スロットル開度センサ38、およびエンジン回転センサ40の検出データに基づいて目標変速比を設定し、この目標変速比となるように、プライマリ油圧制御アクチュエータ26を調整して、オイルポンプ24にて発生しプライマリプーリシリンダ18に供給される油圧を制御している。また、コントロールユニット32は、金属ベルト22がスリップを生じないように、セカンダリ油圧制御アクチュエータ28を調整して、オイルポンプ24にて発生しセカンダリプーリシリンダ20に供給される油圧を制御している。
ここで、コントロールユニット32により実行される詳細な制御を、図2,図3の制御ブロック図により説明する。図2は、セカンダリプーリ16側の制御ブロック図であり、セカンダリプーリシリンダ20のセカンダリ油圧制御アクチュエータ28の調整を実行して、セカンダリプーリ16に対して金属ベルト22が滑らないように、可動円錐盤12と固定円錐盤14との挟持力を十分に発生させるための制御処理を示している。この内、入力トルク推定部42および目標セカンダリ油圧演算部44はコントロールユニット32のCPUが実行するプログラムとして実現されている。また、セカンダリ油圧制御器46はコントロールユニット32内に備えられた、セカンダリ油圧制御アクチュエータ28を駆動するための駆動回路である。
制御が開始されると、入力トルク推定部42は、スロットル開度センサ38から検出されたスロットル開度θとエンジン回転センサ40から検出されたエンジン回転数NEとに基づいて、図4に示すエンジン回転数NEおよびスロットル開度θと入力トルクTinとの関係を表すマップから入力トルクTinを推定する。この入力トルクTinは、エンジンEで発生し、エンジンEから発進デバイス30を介して無段変速機2へ入力されるトルクである。
次に、目標セカンダリ油圧演算部44が、入力トルク推定部42にて求められた入力トルクTinと、後述する目標変速比設定部48にて求められた目標変速比TRtとに基づいて、目標セカンダリ油圧PStを演算する。この目標セカンダリ油圧PStは、金属ベルト22がセカンダリプーリ16に対してスリップすること無くトルクを伝達できる油圧であり、図5に示す3次元マップから求められる。
こうして求められた目標セカンダリ油圧PStの信号に基づいて、セカンダリ油圧制御器46にて、セカンダリ油圧制御アクチュエータ28が駆動制御され、ベルトスリップしないセカンダリ油圧PSが実現する。図3は、プライマリプーリ10側の制御ブロック図であり、駆動側のプライマリプーリシリンダ18のプライマリ油圧制御アクチュエータ26の調整を実行して、プライマリプーリ10に対して、セカンダリプーリ16との間で金属ベルト22を介して行われる変速を、目標変速比TRtにする制御処理を示している。この内、目標変速比設定部48、変速比−プーリ位置変換部50、プライマリ油圧フィードフォワード項演算部52、スライディングモード制御部54、実変速比検出部58、および変速比−プーリ位置変換部60は、コントロールユニット32のCPUが実行するプログラムとして実現されている。また、プライマリ油圧制御器56はコントロールユニット32内に備えられた、プライマリ油圧制御アクチュエータ26を駆動するための駆動回路である。
制御が開始されると、目標変速比設定部48は、スロットル開度センサ38から検出されるスロットル開度θ、およびセカンダリ回転センサ36から検出されるセカンダリ回転数NS等の、各種センサから得られる無段変速機2および無段変速機2を駆動するエンジンEの状態に基づいて、所定のマップから目標変速比TRtを求める。
次に、この目標変速比TRt、目標セカンダリ油圧PSt、および入力トルクTinとに基づいて、プライマリ油圧フィードフォワード項演算部52は、目標プライマリ油圧フィードフォワード項P1の演算を行う。この演算は、まず、目標セカンダリ油圧PStに基づいて、図6に示す、予め測定されているセカンダリ油圧PSと入力トルクTinとの関係を表すテーブルにより、セカンダリプーリ16にて金属ベルト22がスリップせずに伝達可能な最大トルクTmaxが求められる。次に入力トルクTinと最大トルクTmaxとの比から、トルク比Tin/Tmaxが演算される。
次に、このトルク比Tin/Tmaxから、図7に示すプライマリ油圧フィードフォワード項演算マップに基づいて、該当する変速比TRのラインから油圧比(PP:プライマリ油圧/PS:セカンダリ油圧)を求め、この油圧比と目標セカンダリ油圧PStとの積を計算し、その値をプライマリ油圧フィードフォワード項P1とする。
具体的には、例えばトルク比Tin/Tmax=0.25、目標変速比TRt=2.0であった場合には、図7に示すごとく、油圧比(PP/PS)=0.41が求まり、P1=0.41・PStにて、プライマリ油圧フィードフォワード項P1が求まる。なお、図7は一例であり、無段変速機2の種類により異なるマップとなる。
一方、目標変速比設定部48で得られた目標変速比TRtは変速比−プーリ位置変換部50により目標プーリ位置xt、すなわちプライマリプーリ10の可動円錐盤6の目標位置xtに変換される。次に、実変速比検出部58が、実際に無段変速機2のプライマリ回転センサ34とセカンダリ回転センサ36との検出から得られるプライマリ回転数NPおよびセカンダリ回転数NSの比から実変速比TRrを得、変速比−プーリ位置変換部60がこの実変速比TRrを実プーリ位置xr、すなわち、プライマリプーリ10の可動円錐盤6の実位置xrに変換する。
変速比−プーリ位置変換部50からの目標プーリ位置xtと変速比−プーリ位置変換部60からの実プーリ位置xrとの偏差errが次式のごとく演算されて、この偏差errがスライディングモード制御部54に入力する。
次に、スライディングモード制御部54にて、偏差errに基づいて実行されるスライディングモード制御演算について説明する。ここで、まず、プライマリ油圧フィードフォワード項P1とプーリ位置xtとが対応しているものと考え、更に図1の構成に対する実験データから、プライマリ油圧フィードバック項P2とerrとの間には次の近似式が成り立つと考えることができる。
定常偏差を無くするために次式の偏差積分計算にて定義される変数ierrを導入する。
A,Bが変動し、それぞれA0,B0とは異なる値をとった場合に、目標プーリ位置xtに実プーリ位置xrが追従するためには、kの値は次の不等式を満足する必要がある。
前記式6は、次のようにして導出される。前記式2において、A=A0+dA、B=B0+dBとすれば、式2は次式のごとくとなる。
上述のごとく、プライマリ油圧フィードバック項P2が求まり、プライマリ油圧フィードフォワード項演算部52にて求められているプライマリ油圧フィードフォワード項P1と加算され、目標プライマリ油圧PPtとされる。この目標プライマリ油圧PPtの信号に基づいて、プライマリ油圧制御器56にて、プライマリ油圧制御アクチュエータ26が駆動制御され、ベルトスリップしないプライマリ油圧PPが実現するとともに、無段変速機2の実変速比TRrが目標変速比TRtへ向けて調整される。
本実施の形態1では、スライディングモード制御部54(スライディングモード制御量演算手段に相当する。)が行うスライディングモード制御による制御量(プライマリ油圧フィードバック項P2)とは、別個に、プライマリ油圧フィードフォワード項演算部52(フィードフォワード制御量演算手段に相当する。)にて制御量(プライマリ油圧フィードフォワード項P1)が演算されている。
無段変速機2は、スライディングモード制御によるプライマリ油圧フィードバック項P2と、フィードフォワード制御によるプライマリ油圧フィードフォワード項P1との加算に基づいて調整量(目標プライマリ油圧PPt)が求められ、その目標プライマリ油圧PPtでプライマリ油圧制御アクチュエータ26が調整される。
したがって、目標プライマリ油圧PPtは、そのすべてがスライディングモード制御による制御量に基づくのではなく、フィードフォワード制御による制御量分が含まれている。すなわち、スライディングモード制御による制御量は、フィードフォワード制御による制御量分が含まれている分、そうでない場合に比べ、小さくなる。このことは、スライディングモード制御における非線形フィードバック項ゲインを小さくとれることを示し、応答性を満足しつつ、ハンチングの防止ができる。これを、以下、図で説明する。
図10に実線で示すごとく、目標変速比TRtが変化して、プーリ位置がxt1からxt2に移動する場合、フィードフォワード制御による制御量が含まれている分、図10の中の線Aで示すように、スライディングモード制御に起因するハンチングを防止できる。
なお、比較例として、図10の線B,Cで示しているのは、フィードフォワード制御による制御量(プライマリ油圧フィードフォワード項P1)がなく、スライディングモード制御による制御量(プライマリ油圧フィードバック項P2)のみで、制御した場合の実プーリ位置の応答を示している。
線Bは、特に実プーリ位置の応答を重視して、スライディングモード制御の適合をおこなった場合であり、実プーリ位置の応答の立ち上がりは早いものの、スライディングモード制御の高ゲインによるハンチングが発生する。線Cは、特に安定性を重視して、スライディングモード制御の適合をおこなった場合であり、定常状態におけるハンチングは見られないが、実プーリ位置の応答の立ち上がりが緩慢である。
[実施の形態2]実施の形態2は、図11に示すごとく、プライマリプーリ10側の制御ブロックが異なるのみであり、他は実施の形態1と同じである。図11においては、特に、フィルタ前処理部162とフィルタ後処理部164とがスライディングモード制御部154の処理の前後に設けられている点が異なり、目標変速比設定部148、変速比−プーリ位置変換部150、プライマリ油圧フィードフォワード項演算部152、スライディングモード制御部154、プライマリ油圧制御器156、実変速比検出部158、および変速比−プーリ位置変換部160は、実施の形態1における目標変速比設定部48、変速比−プーリ位置変換部50、プライマリ油圧フィードフォワード項演算部52、スライディングモード制御部54、プライマリ油圧制御器56、実変速比検出部58、および変速比−プーリ位置変換部60とそれぞれ同一である。
フィルタ前処理部162は、ローパスフィルタあるいはバンドストップフィルタを用い、偏差errから変速比ハンチングを生じる周波数成分を除くことで、変速比ハンチングを更に抑制している。また、フィルタ後処理部164は、ローパスフィルタあるいはバンドストップフィルタを用い、スライディングモード制御部154が出力するプライマリ油圧フィードバック項P2から変速比ハンチングを生じる周波数成分を除くことで、変速比ハンチングを更に抑制している。
なお、フィルタ処理部は、フィルタ前処理部162のみでもフィルタ後処理部164のみでも効果はあるが、特に、フィルタ後処理部164の方がハンチングを抑制するには、より効果的である。
[実施の形態3]実施の形態1の式5においては、飽和関数sat(s)として図8に示した関数を使用したが、実施の形態3では、この飽和関数sat(s)の代りに、図12に実線で示す非線形関数f(s)を使用する点が実施の形態1とは異なる。
この非線形関数f(s)では、特に、境界層内(−d<s<0,0<s<d)では、実施の形態1で行った位相空間上の無段変速機2の制御系の状態点sと切換え面(s=0)との距離で比例計算して得られる値(実施の形態1の飽和関数sat(s)の値であり、破線で示す。)よりも、非線形フィードバック項の値を小さくすることになる(実線で示す。)。したがって、境界層内に入ると状態点sの変動を実施の形態1よりも大きく抑制して、切換え面への収束性を高めることになり、一層、制御のハンチングを抑制することができる。
なお、境界層の外側(s<−d,s>d)では、| f(s) |>1であることから、無段変速機2の状態量が、境界層の外側に存在する場合には、飽和関数sat(s)よりも非線形フィードバック項の値が大きくなり、境界層までの収束性が高いので、目標変速比方向への状態点の移動が急速であり、しかも境界層内に入れば上述したごとく状態点の変動を抑制できるので、ハンチングを防止できる。
f(s)の例としては、例えば、次式のごとくの関数を挙げることができる。
[実施の形態4]実施の形態4は、実施の形態1における式(3)の演算が異なるのみであり、他は実施の形態1と同じである。実施の形態4においては、位相空間上の被制御システムの状態点sと前記切換え面との距離が、予め設定された値より大きい場合には、前記式fにおける偏差の積分演算を停止し、その積分演算の中止までの積分量(一定値)を保持する。この効果を、図13、図14を用いて説明する。
図13に示すようにステップ状に変化する目標値が、図3の変速比−プーリ位置変換部50より印加された場合の応答を、図14に示すような位相空間で考察する。簡単のために、目標値がステップ状に変化する前は、系の状態点は位相空間の原点に存在するとする。一般にはフィードフォワード項に含まれる誤差のせいで、目標値がステップ状に変化した後の定常状態における系の状態点は、原点でなく図14の位相空間の中のierr軸上の点Aに存在する。
実施の形態1のように積分演算に制限を施さない場合には、系の状態点は、図14中に示すがごとく軌道1にそって、点Aに接近する。すなわち、目標値がステップ状に変化した直後には、正の偏差が現れるので、ierrの値も正の方向に向かって増大する。この結果、系の状態点は、第1象限を右上がりに進む。その後フィードバック制御によって、偏差が減少し始めると、軌道は点Dに達する。その後、偏差は減少してゆくが、その符号は依然として正なので、ierrは増加し続ける。この結果、軌道は第1象限を左上がりに進む。そして、点Eに達すると、偏差の符号は負になるので、ierrは減少し始める。この結果、軌道は第2象限を左下がりに進む。
その後、スライディングモード制御の性質により、点Aを通り且つ切換え面s=0に平行な線1に沿って、平衡点Aに達する。ここで、今述べたように、軌道1は第1象限から第2象限にわたって、点Aに接近することから、偏差errは正から負へ符号を変え、図13の一点鎖線に示すようなオーバーシュートが発生する。
これに対し、実施の形態4においては、系の状態点は、図14中に示す軌道2に沿って点Aに達する。すなわち、目標値がステップ状に変化した直後には、実施の形態1の場合と同様に、正の偏差が現れるので、ierrの値も正の方向に向かって増大する。この結果、系の状態点は、第1象限を右上がりに進む。その後、系の状態点が、切換え面s=0から、予め定められた距離d0だけ離れた線2に到達すると(点B)、積分演算が停止するので、軌道は、err軸に平行に点Cまで進む。その後、フィードバック制御によって偏差が減少し始めると、軌道は同じ線を通って、点Bに再び達する。すると、積分演算が再開されるので、ierrは再び増加し始める。この結果、軌道は第1象限を左上がりに進む。
その後、スライディングモード制御の性質により、点Aを通り且つ切換え面S=0に平行な線1に沿って、平衡点Aに達する。このように、軌道2は第1象限の中から点Aに接近することから、偏差errは符号を変えず、図13の実線に示すようにオーバーシュートは発生しない。
なお、このようなことが成立するには、点Bにおけるierrの値が、点Aにおけるierrの値よりも小さい必要がある。仮に、点Bにおけるierrの値が、点Aにおけるierrの値よりも大きい場合や、定常状態における系の状態点Aがierr軸の負の位置に存在する場合には、実施の形態4においても、オーバーシュートが発生するが、その量は、実施の形態1におけるオーバーシュートの量より少ない。
これを、定常状態における系の状態点Aがierr軸の負の位置に存在する場合を例に取って説明する。定常状態における系の状態点Aがierr軸の負の位置に存在する場合には、図15に示す様に、実施の形態4における軌道2も、実施の形態1における軌道1と同様に、第1象限から第2象限を通って第3象限から点Aに接近するが、図からわかるように、軌道2におけるオーバーシュート量a2は軌道1におけるオーバーシュート量alよりも必ず小さくなる。
[実施の形態5]実施の形態1の式5においては、飽和関数sat(s)として図8に示す関数を使用したが、実施の形態5では、この飽和関数sat(s)の代りに、図16,図17に示す飽和関数sat1(s),sat2(s)を使用する点が実施の形態1
とは異なる。
とは異なる。
図16の飽和関数sat1(s)は、制御系の状態点sが、図18に示すごとく領域1(s>0)に存在する場合に用いられる。図17の飽和関数sat2(s)は、制御系の状態点sが、図19に示すごとく領域2(s<0)に存在する場合に用いられる。
図18,図19から判るように、切換え面(s=0)を挟んで、制御系の状態点sが存在する側の境界層の幅d1またはd2は、存在しない側の境界層の幅d2またはd1よりも大きく設定されている。すなわち、制御系の状態点sが存在する側においては、存在しない側に比較して、飽和関数sat1(s),sat2(s)の勾配は小さくなっている。
このことにより、制御系の状態点s側では境界層内での状態点sの変動を抑制するとともに、切換え面の反対側へ状態点sが移行するのを急速な絶対値の上昇で強力に阻止することにより、オーバーシュートを強力に抑制し、切換え面への収束性を高めてハンチングを抑制することができる。
[実施の形態6]実施の形態6は、図20に示すごとく、プライマリプーリ10側の制御ブロックが異なるのみであり、他は実施の形態1と同じである。図20においては、特に、変速比ハンチング検出部266が実プライマリ回転数NPrのハンチング状態から、変速比ハンチングであるか否かを判断して、変速比ハンチング有無のデータをスライディングモード制御部254へ出力するものである。スライディングモード制御部254では、変速比ハンチングであれば、変速比ハンチングを抑制する処理を行う。目標変速比設定部248、変速比−プーリ位置変換部250、プライマリ油圧フィードフォワード項演算部252、プライマリ油圧制御器256、実変速比検出部258、および変速比−プーリ位置変換部260は、実施の形態1における目標変速比設定部48、変速比−プーリ位置変換部50、プライマリ油圧フィードフォワード項演算部52、プライマリ油圧制御器56、実変速比検出部58、および変速比−プーリ位置変換部60とそれぞれ同一である。
変速比ハンチング検出部266にて行われる変速比ハンチングであるか否かの判断は、次のようにして行われる。すなわち、変速比ハンチング検出部266は、一定周期で実プライマリ回転数NPrを、プライマリ回転センサ34の信号に基づいて求めて、メモリに蓄積し、N周期毎に次式の計算にて実プライマリ回転数NPrの平均値NPaを算出する。
次に、判定量Varを次式のごとく計算する。
変速比ハンチング検出部266では、こうして得られた判定量Varが基準値以上である場合には、変速比ハンチングがあるとし、基準値未満であれば変速ハンチングがないものとする。変速比ハンチング検出部266にて変速比ハンチングがあると判定されている場合に、スライディングモード制御部254が行う変速比ハンチングを抑制する処理としては、実施の形態1の図9にて示した位相空間に設けられた境界層の幅dを所定幅分あるいは所定割合、広げる処理、あるいは、実施の形態1の式5に示した非線形フィードバック項ゲインkの値を所定値分あるいは所定割合、小さくする処理が挙げられる。この変速比ハンチングを抑制する処理は、変速比ハンチング検出部266にて変速比ハンチングがあると判定されている限り、繰り返し行われて、境界層の幅dは、所定幅を限界として次第に広がり、あるいは非線形フィードバック項ゲインkの値は、0より大きい所定値を限界として次第に小さくなる。逆に、変速ハンチングが変速比ハンチング検出部266にてしばらく検出されていないと、境界層の幅dあるいは非線形フィードバック項ゲインkの値は元の状態に次第に戻る。
このことにより、ハンチング時には状態点の変動を抑制してハンチングを早期に納めるようにできるとともに、ハンチングが生じていない場合には、境界層の幅dを狭い状態に維持して、あるいは非線形フィードバック項のゲインkを高い状態に維持して、目標値への収束性を高めることができる。
なお、変速比ハンチング検出部266は、プライマリ回転センサ34から得られる実プライマリ回転数NPrに基づいて、その実プライマリ回転数NPrの変動から、変速比ハンチングを判定したが、実プライマリ回転数NPrの代りに、実変速比検出部258にて検出される実変速比TRrを用いて、前記式11,12と同じ計算を行って、直接、変速比ハンチングを判断しても良い。また、実プライマリ回転数NPrの代りに、変速比−プーリ位置変換部260にて求められる実プーリ位置xrを用いて、前記式11,12と同じ計算を行って、実プーリ位置xrの変動から変速比ハンチングを判断しても良い。
[実施の形態7]実施の形態7は、図21に示すごとく、プライマリプーリ10側の制御ブロックが異なるのみであり、他は実施の形態1と同じである。図21においては、特に、制御パラメータ変更部368が、入力トルク推定部42にて推定される入力トルクTinに基づいて、スライディングモード制御部354にて用いられる境界層の幅dあるいは非線形フィードバック項のゲインkの値を変更する。
目標変速比設定部348、変速比−プーリ位置変換部350、プライマリ油圧フィードフォワード項演算部352、プライマリ油圧制御器356、実変速比検出部358、および変速比−プーリ位置変換部360は、実施の形態1における目標変速比設定部48、変速比−プーリ位置変換部50、プライマリ油圧フィードフォワード項演算部52、プライマリ油圧制御器56、実変速比検出部58、および変速比−プーリ位置変換部60とそれぞれ同一である。
目標変速比設定部348、変速比−プーリ位置変換部350、プライマリ油圧フィードフォワード項演算部352、プライマリ油圧制御器356、実変速比検出部358、および変速比−プーリ位置変換部360は、実施の形態1における目標変速比設定部48、変速比−プーリ位置変換部50、プライマリ油圧フィードフォワード項演算部52、プライマリ油圧制御器56、実変速比検出部58、および変速比−プーリ位置変換部60とそれぞれ同一である。
スライディングモード制御部354では、制御パラメータ変更部368により、図22に示すごとく、入力トルクTinが大きくなれば、境界層の幅dも広くなるように設定される。あるいは、図23に示すごとく、入力トルクTinが大きくなれば、非線形フィードバック項のゲインkの値は小さくなるように設定される。
入力トルクTinが大きいとアンダーシュートあるいはオーバーシュートが大きくなり、ハンチングの程度も大きくなるので、境界層の幅dを広くすることで、あるいは、非線形フィードバック項のゲインkを小さくすることで、その状態点の変動を抑制して、ハンチングを有効に抑制することができる。
[実施の形態8]本実施の形態8では、図21に示した制御パラメータ変更部368が、入力トルクTinの代りに、実変速比検出部358にて検出された実変速比TRrを用い、実変速比TRrに応じて境界層の幅dを、図24に示すごとく広狭調整している点が、実施の形態7とは異なる。他の構成は実施の形態7と同じである。
図24のグラフは、変速比ハンチングが生じ易い変速比領域が存在するという知見に基づいている。したがって、変速比ハンチングが生じ易い変速比領域(ここでは実変速比TRr=1.0を中心とする領域)では、図24のごとく、境界層の幅dを広くしている。このことにより、ハンチングが生じ易い変速比領域であれば、境界層の幅dを広げてハンチングを抑制し、ハンチングが生じ易い変速比領域でなければ、広げずにそのまま維持したりあるいは狭くしたりして、目標変速比TRtへの迅速な移動を行わせることができる。
なお、実変速比TRrに応じて境界層の幅dの広さを調整するのではなく、実変速比TRrに応じて非線形フィードバック項のゲインkを調整しても良い。この場合、図25のごとく、変速比ハンチングが生じ易い変速比領域(ここでは実変速比TRr=1.0を中心とする領域)では、非線形フィードバック項のゲインkを小さくしている。このことにより、ハンチングが生じ易い変速比領域であれば、ゲインkを小さくしてハンチングを抑制し、ハンチングが生じ易い変速比領域でなければ、小さくせずにそのまま維持したりあるいは大きくしたりして、目標変速比TRtへの迅速な移動を行わせることができる。
[実施の形態9]本実施の形態9では、図21に示した制御パラメータ変更部368が、入力トルクTinの代りに、実施の形態1で述べたごとく、プライマリ油圧フィードフォワード項演算部52が入力トルクTinと最大トルクTmaxとの比から演算したトルク比Tin/Tmaxを用い、トルク比Tin/Tmaxに応じて境界層の幅dを、図26に示すごとく広狭調整している点が、実施の形態7とは異なる。他の構成は実施の形態7と同じである。
図26のグラフは、変速比ハンチングが生じ易いトルク比領域が存在するという知見に基づいている。したがって、変速比ハンチングが生じ易いトルク比領域(ここではトルク比Tin/Tmax=0を中心とする領域)では、図26のごとく、境界層の幅dを広くしている。このことにより、ハンチングが生じ易いトルク比領域であれば、境界層の幅dを広げてハンチングを抑制し、ハンチングが生じ易いトルク比領域でなければ、広げずにそのまま維持したりあるいは狭くしたりして、目標変速比TRtへの迅速な移動を行わせることができる。
なお、トルク比に応じて境界層の幅dの広さを調整するのではなく、トルク比に応じて非線形フィードバック項のゲインkを調整しても良い。この場合、図27のごとく、変速比ハンチングが生じ易いトルク比領域(ここではトルク比Tin/Tmax=0を中心とする領域)では、非線形フィードバック項のゲインkを小さくしている。このことにより、ハンチングが生じ易いトルク比領域であれば、ゲインkを小さくしてハンチングを抑制し、ハンチングが生じ易いトルク比領域でなければ、小さくせずにそのまま維持したりあるいは大きくしたりして、目標変速比TRtへの迅速な移動を行わせることができる。
[実施の形態10]本実施の形態10では、スライディングモード制御における切換え面sを、前記実施の形態1で定義した式4の代りに、次式のように定義する。
[実施の形態11]上記実施の形態1において、式2の近似式が成り立つとして、スライディングモード制御部54にてプライマリ油圧フィードバック項P2を演算したが、プライマリ圧の指令値と実在の遅れが無視できない場合には次式17が成り立つものとして、以下に述べるごとく、スライディングモード制御部54にてプライマリ油圧フィードバック項P2を演算しても良い。
スライディングモード制御における状態点s(切換え面s=0)を次式のように定義する。
C,D,Eが変動し、それぞれC0,D0,E0とは異なる値をとった場合に、目標プーリ位置xtに実プーリ位置xrが追従するためには、k12の値は次の不等式を満足する必要がある。
前記式20は、次のようにして導出される。プライマリ油圧フィードバック項P2と対応する実圧P2aの遅れを考慮すると、次の関係が得られる。
この不等式27は、以下のようにして導出される。すなわち、次のごとくの関係にあるとする。
上述のごとく、プライマリ油圧フィードバック項P2が求まり、プライマリ油圧フィードフォワード項演算部52にて求められているプライマリ油圧フィードフォワード項P1と加算され、目標プライマリ油圧PPtとされる。このようにして、本実施の形態においても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態のスライディングモード制御部54におけるプライマリ油圧フィードバック項P2の演算は、実施の形態2〜11にも適用でき、同様な効果を得ることができる。さらに、前記実施の形態4に述べたように、位相空間上の被制御システムの状態点sと切換え面との距離が、予め設定された値より大きい場合には、偏差の積分演算を停止し、その積分演算の停止までの積分量(一定値)を保持する手法を適用すれば、オーバーシュート低減の効果が得られる。
[実施の形態12]本実施の形態12は、実施の形態11とは次の点で異なる。実施の形態11では、スライディングモード制御部54にて、式18にて次のように、状態点s(切換え面s=0)を求めていた。
図12に実線で示す関数f(s)は、境界層内では、位相空間上の被制御システムの状態点sと切換え面(s=0)との距離で比例計算して得られる値よりも、絶対値として小さい値を与える非線形関数f(s)である。また、このような性質を非線形関数f(s)に与えるために、境界層内では、図31に示すごとく、切換え面(s=0)に近いほど、その曲線の勾配が緩くされている。このことは、切換え面から状態点sが遠いほど迅速に、状態点sが切換え面に近づける効果があり、切換え面に近くなれば、状態点sの移動を緩慢にして、切換え面でのハンチングを防止する効果がある。
何らかの原因で、プライマリ油圧フィードフォワード項演算部52側の出力に比較的大きい誤差Δが生じて、積分項「s11・ierr」が膨れ上がった場合に、式18の計算を行ってしまうと、図32に示すごとく状態点sが切換え面(s=0)から離れ、非線形関数f(s)の内、勾配が大きな位置で計算されてしまうため、比例項「s12・err」や微分項「err′」にて生じる変動Δ2が大きくなり、プライマリ油圧フィードバック項P2がハンチングしてしまうおそれがある。
しかし、本実施の形態では、各項の関数f(s)による写像は独立して行われるため、比例項「s12・err」や微分項「err′」の写像に、積分項「s11・ierr」の値が影響しないので変動Δ1は小さくなる。このため、前記実施の形態1〜11に比較して、より一層ハンチングを防止することができる。
[その他]前記実施の形態1〜12では、変速比−プーリ位置変換部50,60により、変速比TRをプーリ位置に変換し、更に、スライディングモード制御部54,154,254,354内では、実プーリ位置xrを目標プーリ位置xtへ一致させる処理を行ったが、変速比−プーリ位置変換部50,60の代りに変速比TRをプライマリ回転数NPに変換する変速比−プライマリ回転数変換部を設けて、スライディングモード制御部54,154,254,354内では、実プーリ位置xrおよび目標プーリ位置xtの代りに実プライマリ回転数NPrと目標プライマリ回転数NPtを用いても良く、同様な効果が得られる。なお、目標プーリ位置xtは目標変速比TRtに対して一意に決定するが、目標プライマリ回転数NPtの場合は変速比にも関係するので、それだけ計算処理が必要となる。しかし、計算処理的に問題となるほどではない。
実施の形態12では、スライディングモード制御部54は、式32に示したごとく、積分項「s11・ierr」、比例項「s12・err」および微分項「err′」の各項毎に同一の非線形関数f(s)にて写像して、その合計値を式19の「sat(s)」の代わりに用いていたが、図33および次式に示すごとく、各項毎に異なる非線形関数f11(s),f12(s),f13(s)にて写像して合計した値を、式19の「sat(s)」の代わりに用いても良い。
また、実施の形態12のごとく、積分項、比例項および微分項の各項を分けて別々に写像するのではなく、積分項のみを他の比例項および微分項と分けて、それぞれ同一の非線形関数f(s)にて写像しても良い。たとえば、次の式のごとく計算した値を式33の代わりに用いても良い。
ここで境界層幅dkの設定としては、たとえば、d11は固定とし、d12,d13はそれぞれ、入力トルクTin、実変速比TRrおよびトルク比Tin/Tmaxの内から選択された1つ以上に基づいて調整しても良い。このことにより、高収束性と低ハンチング性とを両立させることができる。
また別の境界層幅dkの設定としては、たとえば、d11は図35に示す偏差収束時間を所望の値にすることで決定し、d12,d13は実値の立ち上がり速度を所望の値にすることで決定しても良い。このように構成することにより、定常偏差0と高応答性を両立させることができる。
前述した実施の形態7,8,9では、制御パラメータ変更部368が、入力トルクTin、実変速比TRrあるいはトルク比Tin/Tmaxに基づいて、スライディングモード制御部354にて用いられる境界層の幅dあるいは非線形フィードバック項のゲインkの値を変更していたが、入力トルクTin、実変速比TRrおよびトルク比Tin/Tmaxから2つあるいは3つすべてをパラメータとした2次元あるいは3次元マップにより、境界層の幅dあるいは非線形フィードバック項のゲインkの値を変更するようにしても良い。
このようなマップでは、入力トルクTin、実変速比TRrおよびトルク比Tin/Tmaxのすべてを用いた3次元マップから境界層の幅dあるいは非線形フィードバック項のゲインkを求めることが、もっとも効果的である。次に、好ましいのは2次元マップであるが、この内でも、入力トルクTinまたはトルク比Tin/Tmaxの内の一つと、実変速比TRrとの組み合わせをパラメータとするマップが、トルク成分と変速比成分との両方を反映させることができることから効果上好ましい。もちろん、入力トルクTinとトルク比Tin/Tmaxとの組み合わせでも効果はある。
なお、これらのマップを設計するに当たっては、入力トルクTinの高いところ、実変速比TRrが1〜1.2付近、あるいはトルク比Tin/Tmaxが小さい(0付近)範囲では、境界層の幅dを広くしたり、あるいは非線形フィードバック項のゲインkの値を小さくする。
前述した各実施の形態における制御は、好適な例として無段変速機の場合を挙げたが、他の装置においても同様に用いることができ、前述したロバスト性を維持しつつ、制御のハンチングを抑制させることができる。
E…エンジン
2…無段変速機
4…制御装置
6…可動円錐盤
8…固定円錐盤
10…プライマリプーリ
12…可動円錐盤
14…固定円錐盤
16…セカンダリプーリ
18…プライマリプーリシリンダ
20…セカンダリプーリシリンダ
22…金属ベルト
24…オイルポンプ
26…プライマリ油圧制御アクチュエータ
28…セカンダリ油圧制御アクチュエータ
30…発進デバイス
32…コントロールユニット
34…プライマリ回転センサ
36…セカンダリ回転センサ
38…スロットル開度センサ
40…エンジン回転センサ
42…入力トルク推定部
44…目標セカンダリ油圧演算部
46…セカンダリ油圧制御器
48…目標変速比設定部
50…変速比−プーリ位置変換部
52…プライマリ油圧フィードフォワード項演算部
54…スライディングモード制御部
56…プライマリ油圧制御器
58…実変速比検出部
60…変速比−プーリ位置変換部
148…目標変速比設定部
150…変速比−プーリ位置変換部
152…プライマリ油圧フィードフォワード項演算部
154…スライディングモード制御部
156…プライマリ油圧制御器
158…実変速比検出部
160…変速比−プーリ位置変換部
162…フィルタ前処理部
164…フィルタ後処理部
248…目標変速比設定部
250…変速比−プーリ位置変換部
252…プライマリ油圧フィードフォワード項演算部
254…スライディングモード制御部
256…プライマリ油圧制御器
258…実変速比検出部
260…変速比−プーリ位置変換部
266…変速比ハンチング検出部
348…目標変速比設定部
350…変速比−プーリ位置変換部
352…プライマリ油圧フィードフォワード項演算部
354…スライディングモード制御部
356…プライマリ油圧制御器
358…実変速比検出部
360…変速比−プーリ位置変換部
368…制御パラメータ変更部
2…無段変速機
4…制御装置
6…可動円錐盤
8…固定円錐盤
10…プライマリプーリ
12…可動円錐盤
14…固定円錐盤
16…セカンダリプーリ
18…プライマリプーリシリンダ
20…セカンダリプーリシリンダ
22…金属ベルト
24…オイルポンプ
26…プライマリ油圧制御アクチュエータ
28…セカンダリ油圧制御アクチュエータ
30…発進デバイス
32…コントロールユニット
34…プライマリ回転センサ
36…セカンダリ回転センサ
38…スロットル開度センサ
40…エンジン回転センサ
42…入力トルク推定部
44…目標セカンダリ油圧演算部
46…セカンダリ油圧制御器
48…目標変速比設定部
50…変速比−プーリ位置変換部
52…プライマリ油圧フィードフォワード項演算部
54…スライディングモード制御部
56…プライマリ油圧制御器
58…実変速比検出部
60…変速比−プーリ位置変換部
148…目標変速比設定部
150…変速比−プーリ位置変換部
152…プライマリ油圧フィードフォワード項演算部
154…スライディングモード制御部
156…プライマリ油圧制御器
158…実変速比検出部
160…変速比−プーリ位置変換部
162…フィルタ前処理部
164…フィルタ後処理部
248…目標変速比設定部
250…変速比−プーリ位置変換部
252…プライマリ油圧フィードフォワード項演算部
254…スライディングモード制御部
256…プライマリ油圧制御器
258…実変速比検出部
260…変速比−プーリ位置変換部
266…変速比ハンチング検出部
348…目標変速比設定部
350…変速比−プーリ位置変換部
352…プライマリ油圧フィードフォワード項演算部
354…スライディングモード制御部
356…プライマリ油圧制御器
358…実変速比検出部
360…変速比−プーリ位置変換部
368…制御パラメータ変更部
Claims (4)
- 音声の通信を行なうための音声通信手段と、
画像の通信を行なうための画像通信手段と、
この画像通信手段による受信画像を表示する動画像表示手段と、
前記音声通信手段による音声通信と動画像通信手段による動画像通信とを実行し制御するように設けられ、動画像通信中、電波の状態等により動画像を通信するに充分な伝送速度が得られなくなった場合には、最後に受信した動画像を静止画像として表示したまま、音声通信のみを行なうように制御する制御手段とを具備してなるテレビ電話機能付携帯電話機。 - 制御手段は、動画像通信中、電波の状態等により画像を通信するに充分な伝送速度が得られなくなった場合には、音声通信のみに自動的に切替えるように構成されていることを特徴とする請求項1記載のテレビ電話機能付携帯電話機。
- 制御手段は、電波の状態等により動画像を通信するに充分な伝送速度が得られない音声通信のみの状態から、電波の状態等が良好となり画像を通信するに充分な伝送速度が得られるようになった場合には、自動的に動画像通信をも行なうように構成されていることを特徴する請求項1記載のテレビ電話機能付携帯電話機。
- 制御手段は、画像通信中、電波の状態等により動画像を通信するに充分な伝送速度が得られなくなった場合には、音声通信のみに自動的に切替え、かつ、電波の状態等が良好となり画像を通信するに充分な伝送速度が得られるようになった場合には、自動的に動画像通信を復帰させるように構成されていることを特徴とする請求項1記載のテレビ電話機能付携帯電話機。
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