JP2004043794A - 金属加工用潤滑剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】HLBが8.5以上で、且つ重量平均分子量が1,000〜10,000である、特定の構造を有する脂肪族アルコールのアルキレンオキサイド付加物及びその誘導体であるポリエーテル(A)、及び炭素数8〜12の脂肪族モノカルボン酸及び/又はジカルボン酸(B)からなり、配合比が(A)100重量部に対して(B)が1〜400重量部である金属加工用潤滑剤である。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリエーテル系金属加工用潤滑剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
切削油、摺動面潤滑油、圧延油、引き抜き油、プレス油、鍛造油、アルミディスク及びシリコンウエハの研磨・切断等の加工に用いる金属加工油は、水溶性、低泡性、潤滑性及びオイル分離性が要求される。従来の水溶性ポリエーテル系の金属加工用潤滑剤としては、オキシエチレン(以下、EOと略記)単位を導入して水溶性を付与し、さらに潤滑性を満たすために分子量を2,000以上にしたポリエーテルが使用されている。しかし、ポリエーテルの分子量を上げると泡が立ち易くなるので、泡を抑制するためにエチレンオキサイド付加物にさらにプロピレンオキサイド(以下、POと略記)をブロック付加させた金属加工油が提案されている(例えば、特許文献1)。また、廃水処理性を改良する為に、多価アルコールにEOとPOをランダム付加し、さらにPOをブロック付加したもの、アルコールのEO付加物、及び多価アルコールに炭素数3〜4のアルキレンオキサイドを付加したものを併用した潤滑剤が提案されている(例えば、特許文献2)。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−231977号公報
【特許文献2】
特開昭58−145791号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの加工油は、潤滑性が十分でなく、混入してくる摺動面油等のオイルとの分離性が悪いという問題があった。
本発明は、潤滑性、低起泡性及びオイル分離性に優れた金属加工用潤滑剤を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の問題点に鑑み、鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち、本発明は、下記一般式(1)で表され、HLBが8.5以上で、且つ重量平均分子量が1,000〜10,000であるポリエーテル(A)、及び炭素数8〜12の脂肪族モノカルボン酸及び/又はジカルボン酸(B)からなり、配合比が(A)100重量部に対して(B)が1〜400重量部である金属加工用潤滑剤;
【0006】
【化3】
【0007】
[式中、R1は炭素数1〜8のq価の脂肪族アルコールからq個のOH基を除いた残基;R2はH又は炭素数1〜8のアルキル基;A1及びA2は炭素数が3又は4の1種以上のアルキレン基;kは0又は1以上の整数;m及びnは1以上の整数であり、且つm+nは10以上;pは1以上の整数;qは1〜8の整数;
【0008】
【化4】
【0009】
はランダム結合した(ポリ)オキシエチレン/(ポリ)オキシプロピレン鎖を表し;qが2〜8のときのq個のk、m、n、p及びR2はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。]
並びに、上記の潤滑剤及び、酸化防止剤、極圧添加剤、防錆剤、及び消泡剤からなる群から選ばれる1種以上の添加剤からなる金属加工用組成物である。
【0010】
【発明の実施の形態】
一般式(1)において、R1は炭素数1〜8のq価の脂肪族アルコールからq個のOH基を除いた残基であり、例えばエーテル結合を有していてもよい直鎖若しくは分岐のq価の脂肪族炭化水素基が挙げられる。R1の炭素数が8を超えると(A)の水溶性が悪くなる。好ましくは炭素数1〜6の脂肪族アルコールからq個のOH基を除いた残基である。
qは1〜8の整数である。qの値は、好ましくは1〜3であり、より好ましくは1〜2である。qが8を超えると(A)の粘度が高くなりすぎて使い辛くなる。
R1のq価の脂肪族炭化水素基の内、1価の脂肪族炭化水素基は、1価の脂肪族アルコールからOH基を除いた残基に相当し、炭素数1〜8のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、n−及びiso−プロピル基、n−、iso−、sec−及びtert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ペンチル基、オクチル基等)、cis−若しくはtrans−の不飽和炭化水素基(アルケニル基若しくはアルキニル基、例えば、エテニル基、1−、2−及びiso−プロペニル基、ブテニル基、ペンチニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、及びプロピニル基;並びにアルカポリエニル基、例えば、ブタジエニル基等)が挙げられる。
【0011】
2価の脂肪族炭化水素基には、メチレン基、及び炭素数2〜8の脂肪族ジオールから2個のOH基を除いた残基が含まれる。
脂肪族ジオールには、飽和脂肪族ジオール(アルカンジオール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−及び1,2−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−及び1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール及び2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジオール)、並びに不飽和脂肪族ジオール(アルケンジオール、例えば2−ブテン−1,4−ジオール、3−メチル−3−ブテン−1,2−ジオール)が含まれる。
【0012】
3価の脂肪族炭化水素基としては、脂肪族トリオールから3個のOH基を除いた残基が挙げられる。
脂肪族トリオールには、飽和脂肪族トリオール(アルカントリオール、例えばグリセリン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、2−メチル−2,3,4−ブタントリオール、2−エチル−1,2,3−ブタントリオール、2,3,4−ペンタントリオール、2,3,4−ヘキサントリオール、2,4−ジメチル−2,3,4−ペンタントリオール、ペンタメチルグリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、トリメチロールエタン、及びトリメチロールプロパン等)、並びに不飽和脂肪族トリオール(アルケントリオール、例えば2−ヘキセン−1,4,5−トリオール、3−ヘキセン−1,2,5−トリオール)が含まれる。
【0013】
4〜8価の脂肪族基としては、4〜8価の脂肪族ポリオールからすべてのOH基を除いた残基が挙げられる。
4〜8価の脂肪族ポリオールには、例えば、アルカンポリオール及びその分子内若しくは分子間脱水物(ペンタエリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン等)、糖類及びその誘導体(グルコース、マンノース、フルクトース、メチルグルコシド等)等が挙げられる。
これらのR1のうち好ましいのは1〜3価であり、特に好ましいのは1〜2価の脂肪族炭化水素基である。
【0014】
R2は、H又は炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐のアルキル基である。アルキル基としては、R1における炭素数1〜8のアルキル基と同じでよい。これらのうち好ましいのはH及び炭素数3以下のアルキル基であり、より好ましくはメチル基であり、特に好ましくはHである。炭素数が8を超えると(A)の水溶性が悪くなる。
一般式(1)におけるkは0又は1以上の整数であり、好ましくは0である。m、n及びpは1以上の整数であり、m+nは10以上である。また、k、m、n及びpは、(A)の重量平均分子量1,000〜10,000を満たす範囲の整数である。
m+nが10未満であると、潤滑剤の潤滑性が悪くなる。潤滑性、水溶性の点から、オキシアルキレン基中のEO単位の含量(モル%):〔m/(k+m+n+p)〕×100 が、20〜70、特に30〜60となる値であるのが好ましい。EO単位の含量が20モル%以上であると潤滑剤の水溶性と潤滑性が良好であり、70モル%以下であるとオイル分離性が良好である。
【0015】
一般式(1)におけるA1及びA2は炭素数3又は4のアルキレン基から選ばれる1種以上であり、1,2−及び1,3−プロピレン基、1,2−、2,3−、1,3−、1,4及びiso−ブチレン基である。これらのうち好ましいのは1,2−プロピレン基、1,4−ブチレン基である。
【0016】
(A)を構成するポリオキシアルキレン鎖中のOA1単位とOA2単位の合計の含量(モル%):〔(k+p)/(k+m+n+p)〕×100 は、8〜70が好ましく、さらに好ましいのは10〜50である。70モル%以下であると水への溶解性が良好であり、8モル%以上であるとオイル分離性が良好である。
一般式(1)における
【0017】
【化5】
【0018】
はEO単位とPO単位のランダム結合部分である。EO単位とPO単位がランダム結合でない(ブロック結合している)と(A)の低温流動性が悪くなる。
【0019】
一般式(1)で示される化合物の製造法としては、R1[−OH]qで表される炭素数1〜8の1〜8価の脂肪族アルコールに、触媒の存在下、好ましくは100〜180℃で常圧乃至加圧下(好ましくは0〜O.6MPa)に、必要により炭素数3〜4のアルキレンオキシドを付加した後、EO及びPOをランダム付加し、次いで炭素数3〜4のAOを付加させて、R2がHの場合の化合物を得る方法等が挙げられる。さらに得られたAO付加物の末端をアルキルエーテル化して、R2がアルキル基の場合の化合物を製造できる。
【0020】
上記炭素数3〜4のAOとしては、最初に脂肪族アルコールに付加するもの、EO・POランダム付加後に付加するものの何れも、PO、1,2−、2,3−及び1,3−ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、テトラヒドロフラン(以下THFと略記)等が挙げられる。これらのうち好ましいのは、PO、1,2−ブチレンオキシドである。これらは2種以上を併用してもよく、併用の場合の付加形式はランダムでもブロックでもよい。特に好ましくはPO単独付加である。併用の割合はPO100重量部に対して100重量部以下 である。
【0021】
上記AO付加に用いる触媒としては、通常用いられる公知の触媒でよく、アルカリ触媒、例えば、水酸化物[KOH、NaOH、CsOH、Ca(OH)2等のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物等]、酸化物(K2O
、CaO、BaO等のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物等)、アルカリ金属(Na、K等)、及びその水素化物(NaH、KH等)、アミン類(トリエチルアミン、トリメチルアミン等)が挙げられる。THF単独付加、あるいはTHFと他のアルキレンオキシドを共付加重合する場合は、さらに、BF3、BCl3、AlCl3、FeCl3、SnCl3等のルイス酸及びそれらの錯体[例えばBF3エーテル錯体、BF3・THF錯体(BF3・THF)];H2SO4、HClO4等のプロトン酸;KClO4、NaClO4等のアルカリ金属の過塩素酸塩;Ca(ClO4)2、Mg(ClO4)2等のアルカリ土類金属の過塩素酸塩;Al(ClO4)3等の前記以外の金属の過塩素酸塩等が挙げられる。
これらの触媒のうち好ましくは、KOH、NaOH、CsOH、BF3エーテル錯体及びBF3・THFである。
【0022】
アルキルエーテル化をする場合は、AO付加物をアルカリ(KOH、NaOH及びCsOHなどのアルカリ金属の水酸化物等)の存在下にハロゲン化アルキル(炭素数1〜8)と反応させることで製造できる。炭素数1〜8のアルキル基は前記R2と同じものである。ハロゲン化アルキルの量は、AO付加物の水酸基に対し、当量比で1/1〜5/1が好ましく、特に1.2/1〜4/1が好ましい。また、アルカリの添加量は、AO付加物の水酸基に対し、当量比で1/1〜10/1が好ましく、特に1.2/1〜5/1が好ましい。
この様にして得られた本発明における(A)のHLB値は、通常8.5以上である。好ましくは8.8〜17であり、さらに好ましくは9〜15である。(A)のHLB値が8.5より小さいと水溶性が悪くなる。
なお、HLBは、化合物の有機性の値と無機性の値の比率から算出するもの(小田式)であり、「新界面活性剤入門」[1996年、三洋化成工業社出版]197頁に記載の計算方法により算出される。
【0023】
(A)の重量平均分子量(Mw)は、通常1,000〜10,000であり、好ましくは2,000〜6,000、特に2,300〜5,000である。1,000未満では潤滑剤の潤滑性が不良となり、10,000を超えると潤滑剤の動粘度が高くなりすぎる。Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用して以下の条件で測定する。
測定機器:東ソー社製LC8120
溶離液 :種類 THF
流速 :0.6(ml/分)
カラム :KF−802,803,804
基準物質:ポリエチレングリコール
【0024】
炭素数8〜12の脂肪族モノカルボン酸としては、具体的には、アルカン酸例えばオクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸等が挙げられる。これらの内、好ましいのはオクタン酸、ノナン酸、及びデカン酸、特にオクタン酸、ノナン酸である。炭素数が8未満であると金属が錆易くなり、12を超えると潤滑剤が泡立ち易く使用し辛くなる。
炭素数8〜12の脂肪族ジカルボン酸としては、具体的には、例えばアゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられる。これらの内、好ましいのはアゼライン酸、特にセバシン酸である。炭素数が8未満であると金属が錆易くなり、12を超えると潤滑剤が泡立ち易く使用し辛くなる。
これらのうち好ましいものは、炭素数8〜10の脂肪族モノカルボン酸である。
これらは2種以上併用してもよく、併用する割合は脂肪族モノカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸が10:90〜50:50である。
【0025】
本発明における金属加工用潤滑剤において、(A)と(B)の配合比率は、(A)100重量部に対して(B)が通常1〜400重量部であり、好ましくは5〜100重量部であり、より好ましくは10〜50重量部である。(B)の量が1未満であると金属が錆易く潤滑性も不良になりやすい。400を超えると潤滑剤のオイル分離性が不良となる。
本発明の金属加工用潤滑剤において、必要に応じて脂肪族アミンのアルキレンオキサイド付加物(C)を配合してもよい。(C)の配合比率は、(A)100重量部に対して好ましくは1〜40重量部であり、より好ましくは、5〜30重量部である。(C)が1以上であると潤滑剤のオイル分離性が良好となり、 40以下であると潤滑性が良好となる。
(C)としては、炭素数1〜10又はそれ以上のアルキルモノアミン(メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン等):炭素数2〜18又はそれ以上のアルキレンジアミン(エチレンジアミン、1,2−及び1,3−プロピレンジアミン、ヘキシレンジアミン、オクチレンジアミン、デシレンジアミン及びドデシレンジアミン等)及び炭素数4〜18又はそれ以上のポリアルキレンポリアミン(アミン数;好ましくは3〜6)(ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンペンタミ等のポリエチレンポリアミン等)の炭素数2〜4のアルキレンオキシド(例えばEO、PO)の付加物が挙げられる。アルキレンオキシドの付加モル数は、アミンのN原子1個当たり好ましくは0.5〜2モルである。0.5〜2であるとオイル分離性が良好となる。好ましくはPOの付加物であり、付加モル数は1〜2モルが好ましい。
(C)の具体例としてはブチルアミンPO4モル付加体、オクチルアミンPO2モル付加体、エチレンジアミンPO4モル付加体、ジエチレントリアミンPO5モル付加体、テトラエチレンンペンタミンPO7モル付加体が挙げられる。好ましいのはポリアルキレンポリアミンのPO付加である。
【0026】
本発明の金属加工用潤滑剤に、必要により水を含有させてもよい。水を使用する場合、(A)の含量が好ましくは5〜90重量%、より好ましくは10〜50重量%になるように水で希釈しておき、使用時に更に水で希釈して使用する。
本発明の金属加工用潤滑剤は、必要によりさらに酸化防止剤、極圧添加剤、防錆剤、及び消泡剤などの添加剤を加えて金属加工用潤滑剤組成物として使用することができる。これらの添加剤は2種以上を併用してもよい。
【0027】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤〔例えば2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、4,4−ブチリデンビス(6−tert−ブチルメタクレゾール)等〕;アミン系酸化防止剤(例えばフェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン等);ジアルキル(炭素数1〜36)ジチオリン酸亜鉛;ジアリル(炭素数3〜36)ジチオリン酸亜鉛;有機硫化物(例えば4,4‘−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール等);等が挙げられる。
【0028】
極圧添加剤としては、鉛石けん(ナフテン酸鉛等);硫黄化合物(硫化オレイン酸等の硫化脂肪酸、硫化脂肪酸エステル、硫化スパーム油、硫化テルペン、ジベンジルダイサルファイド、炭素数8〜24のアルキルチオプロピオン酸のアミン塩又はアルカリ金属塩、炭素数8〜24のアルキルチオグリコール酸のアミン塩又はアルカリ金属塩等);塩素化合物(塩素化ステアリン酸、塩素化パラフィン、クロロナフサザンテート等);リン化合物(トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリクレジルホスファイト、n−ブチルジ−n−オクチルホスフィネート、ジ−n−ブチルジヘキシルホスホネート、ジ−n−ブチルフェニルホスホネート、ジブチルホスホロアミデート、アミンジブチルホスフェート等)等が挙げられる。
【0029】
防錆剤としては、例えば有機アミン(脂肪族アミン、例えばラウリルアミン、オレイルアミン;複素環式アミン、例えばモルホリン;アルカノールアミン、例えばモノエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、N−ジメチルアミノエタノールアミン、イソプロパノールアミン等);炭素数14〜36の脂肪族モノカルボン酸とそのアミド(ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、オレイルアミド等);炭素数6〜36のアルケニルコハク酸とそのアミド(ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸アミド等);芳香族カルボン酸(安息香酸、p−tertブチル安息香酸、ニトロ安息香酸等);シクロヘキシルアミンナイトライト;ベンゾトリアゾール;メルカプトベンゾチアゾール;N,N’−ジサリチリデン−1,2−ジアミノプロパン;アリザリン等が挙げられる。尚、炭素数14〜36の脂肪族カルボン酸とそのアミド及び炭素数6〜36のアルケニルコハク酸とそのアミドは、油性向上剤としての機能も有する。
消泡剤としては分子量100〜1,000のポリオルガノシロキサン(例えばポリジメチルシロキサン等)等が挙げられる。
【0030】
本発明の金属加工用潤滑剤組成物中、(A)の含量は、好ましくは5〜90重量%、より好ましくは10〜50重量%である。水の含量は、好ましくは95重量%以下、より好ましくは10〜50重量%、特に好ましくは20〜50重量%である。酸化防止剤を使用する場合の含量は、好ましくは0.0001〜2重量%、特に0.001〜1%である。極圧添加剤を使用する場合の含量は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。防錆剤を使用する場合の含量は、好ましくは25重量%以下、より好ましくは1〜20重量%である。消泡剤を使用する場合の含量は、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは10〜500ppmである。
【0031】
本発明の金属加工用潤滑剤は、切削油、研削油、研磨油、穿孔油、摺動面潤滑油、圧延油、打ち抜き油、引き抜き油、プレス油、鍛造油、焼き入れ油、アルミディスク及びシリコンウエハの研磨、切断などの加工に用いる金属加工油に用いることができる。適用できる金属としては、鉄鋼、鋳鉄、アルミ、合金鋼、ステンレス、銅、真ちゅう等が挙げられる。
また、本発明の金属加工用潤滑剤に種々の添加剤を加えた金属加工用潤滑剤組成物は、好ましくは、水で希釈(例えば、重量基準で10〜100倍)して使用する。特に(A)の含量が0.5〜3重量%(特に1〜2重量%)、(B)の含量が0.1〜2重量%(特に0.4〜2重量%)となるように希釈して用いるのが好ましい。この組成物は水溶性のソリューション系金属加工用潤滑剤として好適に使用できる。
【0032】
【実施例】
以下の実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特記しない限り、文中の%は重量%を表す。
【0033】
試験方法は、以下のとおりである。
<試験液の調整>
泡立ち性、オイル分離性及び潤滑性の評価は、後記する表1の組成物を水で5%に希釈して実施した。
(1)潤滑性
潤滑性は振動摩擦摩耗試験機(オプチモール社製 SRV試験器)を用い、鋼球と平面の鋼円盤との点接触(荷重200N)における摩擦係数及び鋼球上の摩耗痕径を観察することにより、評価した。試験条件を下記に示す。
<潤滑性試験条件>
振幅:2mm
振動数:50Hz
温度:30℃
時間:10分間
摩擦係数:時間10分間の平均
油膜切れ:摩擦係数(μ)が変動する状態を見た。(摩擦係数が大きく振れる状態)
○:なし(μ安定)、△:あり(μ変動幅小)、×:あり(μ変動幅大)
摩耗直径:10mm鋼球(SUJ−2)の摩耗直径(mm)
【0034】
(2)泡立ち性
泡立ち性は、JIS K2518 石油製品−潤滑油−泡立ち試験法 に準じて行い、空気吹き込み直後の泡立ち容量と吹き込み停止5分後の泡の容量を測定した。
(3)オイル分離性
オイル分離性は、共栓つき100mlメスシリンダーに、試験液を90mlと摺動面油(ダイナウエイ68:コスモ石油製)10mlを入れ、30秒間振とう後、静置して5分後の分離したオイル層とクリーム層の容量を読みとった。
【0035】
製造例1
ガラス製オートクレーブにメタノール32g(1モル)とKOH0.6gを仕込み、耐圧滴下ロートからPO261g(9モル)を110℃で10時間かけて滴下した。その後、130℃で圧力が平衡になるまで反応させた。続いて、EO1,000g(22.7モル)とPO1,000g(17.2モル)を125℃で滴下し、同温度で圧力が平衡になるまで反応した。その後、さらにPO261g(9モル)を110℃で滴下反応させ、圧力が平衡になるまで反応した。冷却後、吸着処理剤〔協和化学工業社製キョーワード600及びキョーワード1000。以下同様とする。〕で処理し、濾過し、減圧脱水して、メタノールにPO9モル、EO22.7モルとPO17.2モルのランダム、及びPO9モルが付加したポリエーテル2522g(A−1)を得た。HLBが10.3,Mwが2550であった。
【0036】
製造例2
ガラス製オートクレーブにヘキシレングリコール118g(1モル)とKOH7.5gを仕込み、耐圧滴下ロートからEO1496g(34モル)とPO522g(9モル)を125℃で滴下した。その後、同温度で圧力平衡になるまで反応させた後、さらに、PO986g(17モル)を温度110℃で滴下させ、同温度で圧力平衡になるまで反応した。冷却後、吸着処理剤で処理ろ過し、減圧脱水して、ヘキシレングリコールにEO34モルとPO9モルのランダム、及びPO17モルが付加したポリエーテル3090g(A−2)を得た。HLBが11.9、Mwが3100であった。
【0037】
製造例3
ガラス製オートクレーブにグリセリン92(1モル)gとKOH10部を仕込み、耐圧滴下ロートからEO1760g(40モル)とPO986g(17モル)を125℃で滴下した。その後、同温度で圧力平衡になるまで反応させた後、さらに、PO696g(12モル)を110℃で滴下させ、圧力平衡になるまで同温度で反応させた。冷却後、吸着処理剤で処理ろ過し、減圧脱水して、グリセリンにEO40モルとPO17モルのランダム、およびPO12モルが付加したポリエーテル3503g(A−3)を得た。HLBが12.5,Mwが3500であった。
【0038】
製造例4
ガラス製オートクレーブにエチレングリコール62g(1モル)と粉末KOH7.5gを仕込み、耐圧滴下ロートからEO880g(20モル)とPO870g(15モル)を温度125℃で滴下し、同温度で圧力平衡になるまで反応させた。続いて、1,2−ブチレンオキシド216g(3モル)とPO232g(4モル)を滴下ロートから滴下し、温度110℃で圧力平衡になるまで反応させた。冷却後、吸着処理剤で処理ろ過し、減圧脱水して、エチレングリコールにEO20モルとPO15モルのランダム、及びブチレンオキシド3モルとPO4モルのランダムのポリエーテル2234g(A−4)を得た。HLBが10.7、Mwが2200であった。
【0039】
比較製造例1
ガラス製オートクレーブにポリエチレングリコール(数平均分子量2,000)200g(0.1モル)と粉末KOH0.75gを仕込み、耐圧滴下ロートからPO300g(5.2モル)を温度110℃で滴下し、同温度で圧力平衡になるまで反応させた。冷却後、吸着処理剤で処理ろ過し、減圧脱水して、HLBが10.5、Mwが5000のポリエチレングリコールのPOブロック付加体493g(A’−1)を得た。
【0040】
比較製造例2
ガラス製オートクレーブにn−ブタノール74g(1モル)とKOH4.8gを仕込み、耐圧滴下ロートからEO915.2g(20.8モル)とPO916.4g(15.8モル)の混合物を110℃で15時間かけて滴下した。その後、130℃で10時間反応させ、冷却した。冷却後、吸着処理剤で処理し、濾過し、減圧脱水して、HLBが11.6、Mwが1900のn−ブタノールのEO20.8モル/PO15.8モルランダム付加物1888g(A’−2)を得た。
【0041】
比較製造例3
ガラス製オートクレーブにポリプロピレングリコール(数平均分子量1,750)1750g(1モル)とKOH0.7gを仕込み、耐圧滴下ロートからEO117g(2.7モル)を130℃で2時間かけて滴下した。その後、130℃で4時間反応させ、冷却した。冷却後、吸着処理剤で処理し、濾過し、減圧脱水して、HLBが5.5,Mwが1860のポリプロピレングリコールのEO2.7モル付加物1849g(A’−3)を得た。
【0042】
比較製造例4
ガラス製オートクレーブにメタノール32g(1モル)とKOH0.2gを仕込み、耐圧滴下ロートからPO174g(3モル)を100℃で2時間かけて滴下後、EO264g(6モル)とPO290g(5モル)を130℃で5時間かけて滴下し、同温度で圧力平衡になるまで反応させた。続いて、PO174g(3モル)を滴下ロートから滴下し、圧力平衡になるまで反応させた。冷却後、吸着処理剤で処理し、減圧脱水して、HLBが9.2、Mwが930のメタノールのPO3モル、EO6モルとPO5モルのランダム、およびPO3モルのブロック付加体934g(A’−4)を得た。
【0043】
実施例1〜6、比較例1〜6
下記の表1に示す配合処方に基づいて、実施例1〜6、比較例1〜6の金属加工用潤滑剤組成物を得た。(単位は重量部)
【0044】
【表1】
【0045】
表1に記載の金属加工用潤滑剤組成物を用いて、製品外観、油膜切れ、摩擦係数および摩耗直径、泡立ち性、オイル分離性を測定した結果を表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
【発明の効果】
本発明のポリエーテル系金属加工用潤滑剤は、オイル分離性、潤滑性、低泡性に優れるという効果を奏する。そのため、切削油、摺動面潤滑油、圧延油、引き抜き油、プレス油、鍛造油、アルミディスクおよびシリコンウエハの研磨・切断等の加工に用いる金属加工用潤滑剤として極めて好適である。
Claims (6)
- 下記一般式(1)で表され、HLBが8.5以上で、且つ重量平均分子量が1,000〜10,000であるポリエーテル(A)、及び炭素数8〜12の脂肪族モノカルボン酸及び/又はジカルボン酸(B)からなり、配合比が(A)100重量部に対して(B)が1〜400重量部である金属加工用潤滑剤。
- さらに、脂肪族アミンのアルキレンオキサイド付加物(C)を前記(A)100重量部に対して1〜40重量部配合してなる請求項1記載の潤滑剤。
- 前記(C)が、N原子含有数が2〜6であり、且つアルキレンオキサイドがN原子1個あたり0.5〜2モル付加した化合物である請求項1又は2記載の潤滑剤。
- 前記(A)における全オキシアルキレン基中の(OCH2CH2)単位の割合が20〜70モル%である請求項1〜3の何れか記載の潤滑剤。
- 前記qが1〜3である請求項1〜4の何れか記載の潤滑剤。
- 請求項1〜5の何れか記載の潤滑剤及び、酸化防止剤、極圧添加剤、防錆剤、及び消泡剤からなる群から選ばれる1種以上の添加剤からなる金属加工用潤滑剤組成物。
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