JP2009001879A - 銅用防錆防食剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 銅に対する防錆性及び/又は防食性に優れる防錆防食剤を提供することを課題とする。
【解決手段】
一般式(1)で表される化合物(A)を含有する銅用防錆防食剤である。
【化9】
Figure 2009001879

式中、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数4〜18の炭化水素基であって、R1とR2が同時に水素原子となることはなく;R3及びR4は炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基;M1は水素原子又はカチオンを表す。
【選択図】なし

Description

本発明は、銅用防錆防食剤に関する。
切削油、研削油、洗浄液、及び半導体製造工程における防錆防食処理液等の、金属表面との接触がある各種の工業用加工液や処理液は、近年の水系化に伴い、水および水中の酸素の影響により、金属表面に錆が発生したり腐食が起こりやすいという問題がある。そこで加工液や処理液に防錆及び/又は防食を目的として、アルカノールアミン等の水溶性防錆防食剤が添加されている。これらのアルカノールアミン等のアミン系、マレイン化オレイン酸塩、及びアルケニルコハク酸塩等水溶性防錆防食剤は、鉄系やアルミニウム系の金属表面に吸着膜を形成することによって酸素などの酸化性物質を遮断することによって防錆防食作用を発揮すると考えられているが、銅に対しては効果が薄かった。銅に対しては、通常はベンゾトリアゾールやその誘導体等のトリアゾール系化合物等が用いられている(特許文献1及び2参照)。これらの防錆防食作用は、上記の水溶性防錆防食剤とは異なり、トリアゾール系化合物が銅との間に水に不溶で安定なキレートポリマーを形成することで、外部と有効に絶縁されることにより、銅の溶出及び酸化を防止すると言われている。
しかし、従来のトリアゾール系化合物であっても、銅や銅合金に対する防錆性及び防食性は不十分であり、更に防錆防食効果の改善された銅用の防錆防食剤が望まれていた。
特開平8−83780号公報 特開平8−283967号公報
本発明は、特に銅に対する防錆防食性において優れた効果のある防錆防食剤を提供することを目的とする。
本発明は、一般式(1)で表される化合物(A)を含有する銅用防錆防食剤からなることを要旨とする。
Figure 2009001879
式中、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数4〜18の炭化水素基であって、R1とR2が同時に水素原子となることはなく;R3及びR4は炭素数1〜6のアリキル基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基;M1は水素原子又はカチオンである。
本発明の銅用防錆防食剤は、銅に対する防錆性及び防食性に優れる。また、銅以外の金属に対しても従来と同等もしくはそれ以上の防錆性及び防食性がある。
一般式(1)におけるR1及びR2で示される基のうち、炭化水素基としては脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基が含まれる。
脂肪族炭化水素基としては、鎖式炭化水素基および脂環式炭化水素基が挙げられる。鎖式炭化水素基としては、直鎖状炭化水素基および分岐状炭化水素基が挙げられる。
直鎖状炭化水素基としては、直鎖状アルキル基及び直鎖状アルケニル基が挙げられる。直鎖状アルキル基としては、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基及びオクタデシル基等が挙げられる。
直鎖状アルケニル基としては、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基及びオレイル基等が挙げられる。
分岐状炭化水素基としては、分岐状アルキル基及び分岐状アルケニル基が挙げられる。分岐状アルキル基としては、t−ブチル基、2−エチルへキシル基、2,4,6−トリメチルヘプチル基、2,4,6,8−テトラメチルノニル基、2−n−ブチルテトラデシル基、プロピレンテトラマーの水添化物の残基、及びブテントリマーの水添化物の残基等が挙げられる。
分岐状アルケニル基としては、t−ブテニル基、2−エチルへキセニル基、2,4,6−トリメチルヘプテニル基、2,4,6,8−テトラメチルノネニル基、2−n−ブチルテトラデセニル基、プロピレンテトラマーの残基、及びブテントリマーの残基等が挙げられる。
脂環式炭化水素基としては、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、及びシクロヘプチル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、キシリル基、ナフチル基、オクチルフェニル基、及びノニルフェニル基等が挙げられる。
1及びR2は同時に水素原子になることはなく、一方が水素原子で他方は炭素数4〜18の炭化水素基、又は両方が炭素数4〜18の炭化水素基である。R1及びR2のうち、銅に対する防錆防食性の観点及び原料入手のし易さの観点から好ましいのは、いずれか一方が水素原子であって、他方が4〜18の炭化水素基、さらに好ましいのは炭素数8〜18の脂肪族炭化水素基、とりわけ好ましいのは炭素数8〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基である。
1及びR2のうち一方が水素原子の場合、一般式(1)におけるR1及びR2はどちらが炭化水素基でもよく、R1が炭化水素基であるもの単独、R2が炭化水素基であるもの単独、又はこれらが混在したものでもよい。
一般式(1)におけるR3及びR4は炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基である。炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、直鎖又は分岐のプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基としては、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、及び3−ヒドロキシ−2−メチルプロピル基等が挙げられる。このうち銅に対する防錆性に優れるという観点から、好ましいのは炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であり、特に好ましいのは2−ヒドロキシエチル基である。一般式(1)におけるR3及びR4は同一でも異なっていてもよい。
一般式(1)におけるM1は水素原子又はカチオンである。カチオンとしては、アルカリ金属カチオン、アンモニウムカチオン、アミンカチオン及び第4級アンモニウムカチオンが挙げられる。
アルカリ金属カチオンとしては、例えば、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、及びセシウムカチオン等が挙げられる。
アミンカチオンを構成するアミンとしては、例えば、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノn−ブチルアミン、ジn−ブチルアミン、及びトリn−ブチルアミン等の炭素数1〜12のモノ、ジ、トリアルキルアミン;シクロヘキシルアミン、及び1,4−シクロヘキサンジアミン等の炭素数4〜12の脂環式アミン;モルホリン、及びピペラジン等の炭素数4〜12の複素環式アミン;並びに、下記一般式(2)で表されるヒドロキシアルキル基含有アミンが挙げられる。
M1として好ましいのは、水溶性に優れ、臭気の影響が少ないという観点から、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、アミンのカチオンであり、銅に対する防錆性に優れるという観点から、さらに好ましいのはアミンのカチオン、特に好ましいのは一般式(2)で表されるアミンのカチオンである。
Figure 2009001879
式中、R5は水素原子、炭素数1〜18の1価もしくは2価の炭化水素基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基;R6は水素原子、炭素数1〜18の1価の炭化水素基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基;R7は炭素数2〜4のアルキレン基;pはR5が水素原子、炭素数1〜18の1価の炭化水素基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基の場合は1、R5が炭素数1〜18の2価の炭化水素基の場合は2である。
5及びR6における炭素数1〜18の1価の炭化水素基としては前記R1の例として挙げた炭素数4〜18の炭化水素基の他に、メチル基、エチル基及びプロピル基が挙げられる。
5における炭素数1〜18の2価の炭化水素基としては前記R3の例として挙げた炭素数2〜4のアルキレン基の他に、メチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、テトラデカメチレン基、ペンタデカメチレン基及びオクタデカメチレン基等の直鎖状アルキレン基;プロペニレン基、ブテニレン基、ヘキセニレン基、オクテニレン基、及びオクタデセニレン基等の直鎖状アルケニレン基;2−エチルへキシレン基、2,4,6−トリメチルヘプチレン基、及び2,4,6,8−テトラメチルノニレン基等の分岐状アルキレン基;2−メチルプロペニレン基、2,2−ジメチルブテニレン基、及び2−メチルオクテニレン基等の分岐状アルケニレン基;1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘプチレン基、及び1,4−シクロヘキシルジメチレン基等の脂環式2価炭化水素基;フェニレン基、キシリレン基、及びナフチレン基等の芳香族2価炭化水素基等が挙げられる。
5のうち好ましいのは、防食性の観点等から、水素原子又は炭素数2〜12の1もしくは2価の脂肪族炭化水素基であり、さらに好ましいのは水素原子、炭素数3〜12の2価の鎖式炭化水素基及び炭素数5〜8の1価の脂環式炭化水素基、特に好ましいのは水素原子又はシクロヘキシル基である。
6における炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基としては、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、及び3−ヒドロキシ−2−メチルプロピル基等が挙げられる。
6のうち好ましいのは、防食性の観点から、水素原子、炭素数2〜12の脂肪族炭化水素基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であり、さらに好ましいのは水素原子、炭素数3〜12の鎖式炭化水素基、炭素数6の脂環式炭化水素基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であり、特に好ましいのは炭素数2のヒドロキシエチル基である。
7における炭素数2〜4のアルキレン基としては、前記R3で挙げた基が挙げられる。
7のうち、好ましいのは原料入手のし易さの観点から、エチレン基、1,3−プロピレン基、及び1,2−プロピレン基であり、さらに好ましくはエチレン基である。
pはR5が水素原子、1価の炭化水素基又はヒドロキシアルキル基の場合は1、R5が2価の炭化水素基の場合は2である。
一般式(2)で表されるアミンの例としては、モノアルカノールアミン[モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン及びモノブタノールアミン等];ジアルカノールアミン[ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン及びN−ヒドロキシエチルイソプロパノールアミン等];トリアルカノールアミン[トリエタノールアミン、N−ヒドロキシエチルジイソプロパノールアミン等];モノアルカノールアルキルアミン[モノエタノールエチルアミン、モノイソプロパノールエチルアミン及びモノエタノールブチルアミン等];モノアルカノールシクロアルキルアミン[モノエタノールシクロヘキシルアミン、モノイソプロパノールシクロヘキシルアミン及びモノn−ブタノールシクロヘキシルアミン等];ジアルカノールシクロアルキルアミン[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシイソプロピル)−N−シクロヘキシルアミン及びN,N−ビス(2−ヒドロキシイソブチル)−N−シクロヘキシルアミン等];テトラアルカノールアルキレンジアミン[N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン及びN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)−1,6−ヘキサメチレンジアミン等]が挙げられる。
一般式(1)で表される化合物(A)の具体例としては、ドデセニルコハク酸ジエタノールアミドのナトリウム塩、ドデセニルコハク酸ジエタノールアミドのジエタノールアミン塩、ドデセニルコハク酸ジエタノールアミドのN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン塩、オクテニルコハク酸ジエタノールアミドのN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン塩、ドデセニルコハク酸ジエタノールアミドのN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン塩、
ペンタデセニルコハク酸ジエタノールアミドのN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン塩、ドデセニルコハク酸ジエタノールアミドのN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)−1,6−ヘキサメチレンジアミン塩、及びドデセニルコハク酸ジエチルアミドのジエタノールアミン塩等が挙げられる。
化合物(A)は、一般式(4)で表される酸無水物に、一般式(5)で表される化合物を反応させる方法等により製造できる。
Figure 2009001879
式中、R1及びR2は一般式(1)と同じである。
Figure 2009001879
式中、R3及びR4は一般式(1)と同じである。
一般式(4)で表される酸無水物に対する一般式(5)で表される化合物の仕込みモル比は1/0.4〜1/2.2が好ましい。反応は、温度−5〜150℃、圧力0〜0.6MPa、反応時間2〜15時間で行うことが好ましい。反応温度が高いとエステル化合物が副生しやすいため、−5〜30℃の低温で反応することが特に好ましい。
本発明の防錆防食剤の固形分の合計のうちの化合物(A)の含有量は通常5〜100重量%であり、好ましくは10〜100%(以下において、特に限定しない限り%は重量%を表す)、さらに好ましくは15〜100%、特に好ましくは20〜100%である。なお、本発明における「固形分」とは、後述の水および親水性有機溶媒以外の成分をいう。
本発明の防錆防食剤は化合物(A)以外に、さらにその他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、一般式(3)で表される化合物(B)、水、親水性有機溶剤、及びpH調整剤等が挙げられる。
Figure 2009001879
式中、R8及びR9はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数4〜18の炭化水素基であって、R8とR9が同時に水素原子となることはなく;M2及びM3は水素原子又はカチオンであり、R8及びR9はそれぞれ一般式(1)におけるR1及びR2として挙げられた基と同様の基が挙げられ、好ましいものも同様である。また、M2及びM3はそれぞれ一般式(1)におけるM1として挙げられたカチオンと同様のカチオンが挙げられ、好ましいものも同様である。
化合物(B)の具体例としては、ドデセニルコハク酸のモノ及び/又はジナトリウム塩、ドデセニルコハク酸のモノ及び/又はジジエタノールアミン塩、ドデセニルコハク酸のモノ及び/又はジN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン塩、ドデセニルコハク酸のモノN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン塩及びドデセニルコハク酸ジエタノールアミドのモノN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)−1,6−ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
本発明の銅用防錆防食剤が化合物(B)を含有する場合は、銅用防錆防食剤の固形分の合計のうちの化合物(A)の含有量が5%以上であり、化合物(B)の含有量が95%以下であり、銅に対する防錆防食性の観点から化合物(B)は90%以下が好ましく、さらに好ましくは85%以下であり、特に好ましくは80%以下である。
本発明の防錆防食剤は、水を含有してもよい。水を含有する場合、水の含有量は、防錆防食剤全体の重量のうちの通常95%以下、好ましくは5〜95%、さらに好ましくは20〜80%、特に好ましくは25〜75%である。この範囲であると、粘度が低くなり、使用時にさらに水で希釈する(通常5〜1,000倍希釈)場合に溶解しやすくなる。
本発明の防錆防食剤は、親水性有機溶媒を含有してもよい。親水性有機溶媒としては、エチルアルコール、アセトン、ジメチルホルムアミド、エチレングリコール、及びポリエチレングリコールなどが挙げられる。親水性有機溶媒を含有する場合、親水性有機溶媒の含有量は、前記水と親水性有機溶媒の合計の重量のうちの、30%以下、好ましくは0〜25%、さらに好ましくは0〜15%、特に好ましくは0〜10%である。この範囲であると、粘度が低くなり、使用時にさらに水で希釈する(通常5〜1,000倍希釈)場合に溶解しやすくなる。
本発明の防錆防食剤は、水性溶液とした場合のpHは、通常5.0〜12.0、好ましくは7.0〜9.5である。pHを調節するために、酸及びアルカリを含有してもよい。酸としては、無機酸及び有機酸が含まれる。 無機酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸及びほう酸等が挙げられる。有機酸としては、炭素数1〜22の有機酸が好ましく、酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、ラウリン酸、オレイン酸及びコハク酸等が挙げられる。アルカリとしては、アンモニア、アルカリ金属水酸化物及びアミン等が含まれる。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウム等が含まれる。アミンとしては、アルキルアミン及びアルカノールアミンが含まれる。アルキルアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン等が含まれる。アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミン等が含まれる。pH調整のために添加される酸及びアルカリは、(A)及び(B)の合計重量に対して、通常それぞれ10%以下、好ましくは5%以下である。
本発明の防錆防食剤は、化合物(A)以外に、化合物(B)、水、親水性有機溶剤及び/又はpH調整剤を含有する場合は、それぞれの成分を単に混合することにより得られるが、化合物(A)又は化合物(B)は、それぞれ水溶液として製造した後、混合してもよい、また、例えば、上記一般式(4)で表される酸無水物1モルにに、一般式(5)で表される化合物(1〜2モル)を反応させた後、副生するエステル化合物を水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を添加することにより加水分解すると同時にアミドのアルカリ塩とし、必要により塩酸を加えた後、数回水洗して、水相を除去後、除去すると同時に未反応の一般式(5)で表される化合物も除去し、目的のカチオンとするために、アルカリを加えて塩交換することにより、(A)、(B)が同時に生成するように製造してもよい。(A)と(B)の重量比は例えば反応温度を調整することにより変えることができる。反応温度が低いと(A)の生成する比率が高くなる。
本発明の防錆防食剤は特に銅に対する防錆防食に優れるが、他に鉄(鋼鉄及び鋳鉄等)、黄銅、アルミニウム、亜鉛及びハンダ等の金属の防錆防食性にも優れる。
本発明の防錆防食剤は、通常、水に0.1〜20%(見かけの重量%)加えて使用するが、焼入れ油などのポリエーテル水溶液や洗浄剤などの界面活性剤含有の水溶液に添加して使用してもよい。また、切削油、研削油、鍛造油、圧延油、引き抜き油、離形剤などに配合して使用してもよい。
[実施例]
以下の実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において、部は重量部を表す。
<実施例1>
ガラス製のコルベンにクロロホルム400部、ジエタノールアミン126部(1.2モル部)を仕込み、滴下ロートに仕込んだドデセニル無水コハク酸266部(1モル部)(三洋化成工業(株)製「DSA」)を、コルベン内が0〜5℃を保つように攪拌しながら制御して3時間かけて滴下した。その後、0〜5℃で10時間さらに撹拌下に反応させた。次に、水を400部投入し、30℃で10分間攪拌して水洗し、分離した水相を除去し、クロロホルムを減圧下で除去することにより、ドデセニルコハク酸ジエタノールアミド350部を得た。さらに撹拌下で水449部とジエタノールアミン99部を添加し、ドデセニルコハク酸ジエタノールアミドのジエタノールアミン塩の50%水溶液からなる防錆防食剤898部(A1)を得た。
<実施例2>
実施例1と同様にして得られたドデセニルコハク酸ジエタノールアミド350部に撹拌しながら水酸化ナトリウム37部及び水355部を添加することにより、ドデセニルコハク酸ジエタノールアミドのナトリウム塩の50%水溶液からなる防錆防食剤742部(A2)を得た。
<実施例3>
ガラス製のコルベンに水300部、ジエタノールアミン126部(1.2モル部)を仕込み、滴下ロートに仕込んだドデセニル無水コハク酸266部(1モル部)(三洋化成工業(株)製「DSA」)を、コルベン内が50℃〜70℃を保つように攪拌しながら制御して3時間かけて滴下した。その後、60〜70℃で5時間さらに撹拌下に反応させた。さらに48%の水酸化ナトリウム水溶液を333部(4モル部)添加後、60〜70℃で2時間撹拌し、副生するエステル化合物を加水分解した。次に、室温まで冷却後、撹拌しながら0.5Nの塩酸を系内がpH=3になるまで添加し、系内の内容物を分液ロートに移した後、分液した水相を除去した。分液ロート内に残った油相を水洗することにより、ドデセニルコハク酸ジエタノールアミドとドデセニルコハク酸の混合物290部(重量比36/64、重量比は下記LC/MS条件で測定した)を得た。さらに撹拌下で水447部とジエタノールアミン167部を添加し、ドデセニルコハク酸ジエタノールアミドのジエタノールアミン塩とドデセニルコハク酸のジエタノールアミン塩の混合物(重量比29/71)の50%水溶液からなる防錆防食剤914部(A3)を得た。
<LC/MS条件>
LC条件
装置:Agilent社製 Agilent1100
カラム:YMC−Pack ODS−AQ,AQ−312 150×6.0mm i.d.
移動相:水/アセトニトリル=10/90
流量:1.0mL/min
注入量:1μL
オーブン温度:40℃
検出器:UV210nm
MS条件
装置:HP社製 LC/MSD 1100
イオンソース:ESI
Mode:Negative
測定質量数:m/z 100−1000
Fragment Voltage :75V
Drying gas:窒素、350℃、10L/min
Neblizer Pressure:45psi
Capillary Voltage:3000V
<実施例4>
実施例3と同様にして得られたドデセニルコハク酸ジエタノールアミドとドデセニルコハク酸の混合物290部(重量比36/64)に、撹拌しながら水587部とN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン297部を添加し、ドデセニルコハク酸ジエタノールアミドのN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン塩とドデセニルコハク酸のN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン塩の混合物(重量比27/73)の50%水溶液からなる防錆防食剤1174部(A4)を得た。
<実施例5>
ガラス製のコルベンにクロロホルム400部、ジエタノールアミン126部(1.2モル部)を仕込み、滴下ロートに仕込んだオクテニル無水コハク酸210部(1モル部)(三洋化成工業(株)製「N−OSA」)を、コルベン内が0〜5℃を保つように攪拌しながら制御して3時間かけて滴下した。その後、0〜5℃で10時間さらに撹拌下に反応させた。次に、水を400部投入し、30℃で10分間攪拌して水洗し、分離した水相を除去し、クロロホルムを減圧下で除去することにより、オクテニルコハク酸ジエタノールアミド300部を得た。さらに撹拌下で水478部とN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン178部を添加し、オクテニルコハク酸ジエタノールアミドのN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン塩の50%水溶液からなる防錆防食剤956部(A5)を得た。
<実施例6>
ガラス製のコルベンにクロロホルム400部、ジエタノールアミン126部(1.2モル部)を仕込み、滴下ロートに仕込んだペンタデセニル無水コハク酸308部(1モル部)(三洋化成工業(株)製「PDSA−DA」)を、コルベン内が0〜5℃を保つように攪拌しながら制御して3時間かけて滴下した。その後、0〜5℃で10時間さらに撹拌下に反応させた。次に、水を400部投入し、30℃で10分間攪拌して水洗し、分離した水相を除去し、クロロホルムを減圧下で除去することにより、ペンタデセニルコハク酸ジエタノールアミド400部を得た。さらに撹拌下で水581部とN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン181部を添加し、ペンタデセニルコハク酸ジエタノールアミドのN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン塩の50%水溶液からなる防錆防食剤1,162部(A6)を得た。
<比較例1>
ガラス製のコルベンにドデセニル無水コハク酸266部(1モル部)(三洋化成工業(株)製「DSA」)及び水20部(1.1モル部)を仕込み、80〜90℃で撹拌下10時間反応させ、ドデセニルコハク酸とした。次にジエタノールアミン210部(2モル部)及び水492部を撹拌しながら添加し、ドデセニルコハク酸のジエタノールアミン塩の50%水溶液からなる防錆防食剤988部(X1)を得た。
<比較例2>
比較例1と同様にして得られたドデセニルコハク酸286部(1モル部)にN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン374部(2モル部)及び水656部を撹拌しながら添加し、ドデセニルコハク酸のN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン塩の50%水溶液からなる防錆防食剤1,316部(X2)を得た。
防錆防食性の評価は、実施例及び比較例で製造した防錆防食剤(A1)〜(A6)、(X1)、(X2)およびベンゾトリアゾール(X3)を用いて、以下のように行った。防錆防食性試験に用いる試験液は防錆防食剤の水を除く成分の濃度が0.5%となる水溶液を水酸化ナトリウム又は塩酸を用いてpHを8.5に合わせることにより調製した。銅に対する防錆防食性は耐水ペーパー(粒度320A 住友スリーエム社製)を用いて研磨後、トルエン及びアセトンを用いて洗浄した銅の試験片及び試験液を試験管に入れ、半浸漬状態で50℃で5日間放置し、テストピースの気相部、液相部の錆の発生状態を観察した。
試験片の外観を、以下の基準によって評価した。
◎:試験前と全く変化がないかまたは同じ色調および光沢を有する。
○:試験前に比べて若干変化が見られるがほぼ同じ色調である。
△:試験前に比べて変色が見られるが、全面錆又は腐食、孔食は見られない。
×:変色の有無に関わらず全面錆又は腐食、孔食等がある。
銅以外の金属(黄銅、鋼、鋳鉄、アルミニウム、亜鉛)に対する防錆防食性は、銅と同様にして研磨洗浄した各種金属の試験片及び試験液を試験管に入れ、全浸漬状態で25℃で5日間放置し、テストピースの錆の発生状態を観察した。
<試験片>
(銅)材質:JIS H−3100(銅板)のC1100P;寸法:2×50×25mm
(黄銅)材質:JIS H−3100(銅及び銅合金の板及び条)のC2801P;寸法:2×50×25mm
(鋼)材質:JIS G−3141(冷間圧延鋼板及び鋼帯)のSPCC−SB;寸法:2×50×25mm
(鋳鉄)材質:JIS G−5501(ねずみ鋳鉄品)のFC−200;寸法:2×50×25mm
(アルミニウム)材質:JIS H−4000(アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条)のA2024P;寸法:2×50×25mm
(亜鉛)材質:JIS H−2201(ダイカスト用亜鉛合金塊)の1種;寸法:2×50×25mm
防錆防食性の結果を表1に示す。
Figure 2009001879
本発明の防錆防食剤(A1)〜(A6)は、比較例の防錆防食剤に比べて、銅に対する防錆防食性に優れている。特に気相での防錆防食性に優れている。また、(A1)〜(A6)は、黄銅、鋼、鋳鉄、アルミニウム及び亜鉛に対しては、比較の防錆防食剤と同等もしくはそれ以上の防錆防食効果があることがわかった。
本発明の防錆防食剤は、切削油、研削油、研磨液、圧延油、引き抜き油等の水溶性加工油、不凍液、作動油、洗浄液、半導体製造工程、プリント基板製造工程等の一時防錆等の防錆防食剤として極めて好適である。

Claims (5)

  1. 一般式(1)で表される化合物(A)を含有する銅用防錆防食剤。
    Figure 2009001879
    (式中、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数4〜18の炭化水素基であって、R1とR2が同時に水素原子となることはなく;R3及びR4は炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基;M1は水素原子又はカチオンを表す。)
  2. 一般式(1)におけるR1及びR2のうち、いずれか一方が水素原子で、他方が炭素数8〜18のアルケニル基である請求項1記載の銅用防錆防食剤。
  3. 一般式(1)におけるR3及びR4が、炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基である請求項1又は2記載の銅用防錆防食剤。
  4. 1が一般式(2)で表されるアミンのカチオンである請求項1〜3のいずれか記載の銅用防錆防食剤。
    Figure 2009001879
    (式中、R5は水素原子、炭素数1〜18の1価もしくは2価の炭化水素基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基;R6は水素原子、炭素数1〜18の1価の炭化水素基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基;R7は炭素数2〜4のアルキレン基;pはR5が水素原子、炭素数1〜18の1価の炭化水素基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基の場合は1、R5が炭素数1〜18の2価の炭化水素基の場合は2である。)
  5. 更に、一般式(3)で表される化合物(B)を含有し、銅用防錆防食剤の固形分の合計のうちの化合物(A)の含有量が5重量%以上であり、化合物(B)の含有量が95重量%以下である請求項1〜4のいずれか記載の銅用防錆防食剤。
    Figure 2009001879
    (式中、R8及びR9はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数4〜18の炭化水素基であって、R8とR9が同時に水素原子となることはなく;M2及びM3はそれぞれ独立に水素原子又はカチオンである。)
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