JP3953793B2 - 潤滑剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリエーテル系潤滑剤に関する。さらに詳しくは、流動性、潤滑性、低起泡性、オイル分離性に優れたポリエーテル系水溶性潤滑剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
切削油、摺動面潤滑油、圧延油、引き抜き油、プレス油、鍛造油、アルミディスクおよびシリコンウエハの研磨・切断などの加工に用いる金属加工油、並びに水−グリコール系作動油等の水系潤滑油に用いられる基剤は、水溶性、潤滑性が要求される。従来、水溶性ポリエーテル系の基剤は、水への溶解性を上げるためにオキシエチレン単位(以後EO単位と略記)を導入して水溶性化を行い、潤滑性を満たすために分子量が2000以上のものが良好とされている。しかし、EO単位が100モル%のポリエーテルは、分子量が1000を超えると流動性が乏しくなり、ハンドリング性が困難である。また、オキシプロピレン単位(以後PO単位と略記)とEO単位とのブロック共重合体も、分子量が2500以上になると固状となる。EO単位とPO単位がランダムに結合したポリエーテルは、分子量が大きくても液状となるが、泡立ちがあり、混入してくる鉱物油系の摺動面油との分離性が悪いという問題がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は流動性、潤滑性、低起泡性およびオイル分離性に優れた潤滑剤を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の問題点に鑑み、鋭意検討した結果、本発明に到達した。 即ち、本発明は、下記一般式(1)で表され、HLBが8.5以上であり、かつ重量平均分子量が1,000〜10,000であるポリエーテル(E)を含有する[ただし、下記一般式(2)で表されるポリエーテルおよび/または一般式(3)で表されるポリエーテルを含有しない]水系潤滑油用基油であって、(E)を構成するポリオキシアルキレン鎖中のOA1単位とOA2単位の合計の含量〔(k+p)/(k+m+n+p)〕×100が10〜40モル%である水系潤滑剤;ならびにこの水系潤滑剤と、水、酸化防止剤、極圧添加剤、防錆剤、消泡剤、乳化剤から選ばれる1種以上の添加剤からなる水系潤滑剤組成物である。
式中、R1は炭素数1〜8のq価の脂肪族アルコールからq個のOH基を除いた残基、R2はHまたは炭素数1〜8のアルキル基、A1およびA2は1,2−プロピレン基である。kは0または1以上の整数、mおよびnは1以上の整数であり、m+nは10以上である。pは1以上の整数、qは1〜8の整数であって、qが1のときのR1はメチル基、エチル基、n−もしくはiso−プロピル基、またはn−、iso−、sec−もしくはtert−ブチル基である。
、n、pおよびR2 は同じでも異なっていてもよい。
R3O−(CH2CH2O)d−H (2)
式中、R3は炭素数5〜8の炭化水素基、dはエチレンオキシドの平均付加モル数で0.2〜2である。
R4[X{(A1O)eH}r]t (3)
式中、R4は炭素数2〜9の多価アルコール残基またはポリアミン残基、Xは酸素原子又は窒素原子、A1は炭素数3もしくは4のアルキレン基、eは炭素数3もしくは4のアルキレンオキサイドの平均付加モル数で4〜10、rは1もしくは2、tは2〜8の整数である。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明のポリエーテル(E)を表す一般式(1)において、R1は炭素数1〜8のq価の脂肪族アルコールからq個のOH基を除いた残基であり、直鎖もしくは分岐の脂肪族炭化水素基が挙げられる。qは1〜8の整数である。qが8を超えると(E)の粘度が上がり好ましくない。また、R1の炭素数が8を超えると水溶性が悪くなる。
qが1のときのR1は、メチル基、エチル基、n−およびiso−プロピル基、n−、iso−、sec−およびtert−ブチル基である。
【0006】
直鎖もしくは分岐の2価の脂肪族炭化水素基としては、脂肪族ジオールから2個のOH基を除いた残基が挙げられる。
脂肪族ジオールとしては、例えば、飽和脂肪族ジオール(エチレングリコール#、プロピレングリコール、1,4−および1,2−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−および1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールおよび2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジオールなど)、不飽和脂肪族ジオール(2−ブテン−1,4−ジオール、3−メチル−3−ブテン−1,2−ジオールなど)などが挙げられる。
【0007】
直鎖もしくは分岐の3価の脂肪族炭化水素基としては、脂肪族トリオールから3個のOH基を除いた残基が挙げられる。
脂肪族トリオールとしては、例えば、飽和脂肪族トリオール(グリセリン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、2−メチル−2,3,4−ブタントリオール、2−エチル−1,2,3−ブタントリオール、2,3,4−ペンタントリオール、2,3,4−ヘキサントリオール、2,4−ジメチル−2,3,4−ペンタントリオール、ペンタメチルグリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなど)、不飽和脂肪族トリオール(2−ヘキセン−1,4,5−トリオール、3−ヘキセン−1,2,5−トリオールなど)などが挙げられる。
【0008】
直鎖もしくは分岐の4〜8価の脂肪族炭化水素基としては、4〜8価の脂肪族ポリオールからすべてのOH基を除いた残基が挙げられる。
4〜8価の脂肪族ポリオールとしては、例えば、アルカンポリオールおよびその分子内もしくは分子間脱水物(ペンタエリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリンなど)、糖類およびその誘導体(グルコース、マンノース、フルクトース、メチルグルコシドなど)が挙げられる。
【0009】
これらのR1のうち好ましいのは、1〜3価、特に1〜2価の脂肪族炭化水素基(すなわち脂肪族アルコールからすべてのOH基を除いた残基)である。したがって、qの値も、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2である。
【0010】
前記一般式(1)におけるR2は、Hまたは炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐のアルキル基である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−およびiso−プロピル基、n−、iso−、sec−およびtert−ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、ペンチル基、オクチル基が挙げられる。これらのうち好ましいのはHおよび炭素数3以下のアルキル基であり、さらに好ましくはHおよびメチル基であり、特に好ましくはHである。炭素数が9以上であると水溶性が悪くなる。
【0011】
部分である。EO単位とPO単位がブロック結合していると低温流動性が悪くなる。
【0012】
一般式(1)におけるA1およびA2は1,2−プロピレン基である。
【0013】
本発明における(E)のHLB値は、通常8.5以上である。好ましくは8.8〜17であり、さらに好ましくは9〜15である。(E)のHLB値が8.5より小さいと水溶性が悪くなる。なお、HLB値は有機概念図に基づく小田式による値であり、その計算方法は、例えば「乳化・可溶化の技術」〔昭和51年、工学図書(株)〕に記載されている。またHLB値を導き出すための有機性値および無機性値については「有機概念図−基礎と応用−」〔昭和59年 三共出版(株)〕記載の無機性基表(昭和49年、藤田らの報告値)を用いて算出できる。
【0014】
(E)の重量平均分子量(Mw)[ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による。以下も同様とする。]は、1,000〜10,000であり、好ましくは2,000〜6,000、さらに好ましくは2,300〜5,000である。1,000未満では潤滑性が不良であり、10,000を超えると動粘度が高くなりすぎる。
【0015】
一般式(1)におけるkは0または1以上の整数であり、好ましくは0である#。m、nおよびpは1以上の整数であり、m+nは10以上である。また、k、m、nおよびpは、上記の(E)の分子量を満たす範囲の整数である。
m+nが10未満であると、潤滑性が悪くなる。潤滑性、水溶性の点から、ポリオキシアルキレン鎖中のEO単位の含量(モル%):〔m/(k+m+n+p)〕×100 が、30〜90、特に35〜60となる値であるのが好ましい。EO単位の含量が30モル%以上であると水溶性と潤滑性が良好であり、90モル%以下であるとオイル分離性が良好である。
【0016】
(E)を構成するポリオキシアルキレン鎖中のOA1単位とOA2単位の合計の含量(モル%):〔(k+p)/(k+m+n+p)〕×100 は、10〜40である。40モル%以下であると水への溶解性が良好であり、10モル%以上であるとオイル分離性が良好である。m/n比は好ましくは35/65〜83/17であり、40/60〜5/25である。
【0017】
一般式(1)で示される化合物の製造法としては、R1[−OH]qで表される炭素数1〜8の1〜8価の脂肪族アルコールに、触媒の存在下、通常100〜180℃で加圧下に、必要によりプロピレンオキシドを付加した後、エチレンオキシド(以後EOと略記)およびプロピレンオキシド(以後POと略記)をランダムに付加し、次いでプロピレンオキシドを付加させて、R2がHの場合の化合物を得る方法などが挙げられる。さらに得られたアルキレンオキシド付加物の末端をアルキルエーテル化して、R2がアルキル基の場合の化合物を製造できる。
【0019】
上記アルキレンオキシド付加に用いる触媒としては、通常用いられる公知の触媒でよく、アルカリ触媒、例えば、水酸化物[KOH、NaOH、CsOH、Ca(OH)2 等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物等]、酸化物(K2O 、CaO、BaO等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の酸化物等)、アルカリ金属(Na、K等)、およびその水素化物(NaH、KH等)、アミン類(トリエチルアミン、トリメチルアミン等)が挙げられる。THF単独付加、あるいはTHFと他のアルキレンオキシドを共付加重合する場合は、さらに、BF3、BCl3、AlCl3、FeCl3、SnCl3等のルイス酸およびそれらの錯体[例えばBF3エーテル錯体、BF3テトラヒドロフラン錯体(BF3・THF)];H2SO4、HClO4などのプロトン酸;KClO4、NaClO4などのアルカリ金属の過塩素酸塩;Ca(ClO4)2、Mg(ClO4)2などのアルカリ土類金属の過塩素酸塩;Al(ClO4)3などの前記以外の金属の過塩素酸塩等が挙げられる。
これらの触媒のうち好ましくは、KOH、NaOH、CsOH、BF3エーテル錯体およびBF3・THFである。
【0020】
アルキルエーテル化をする場合は、アルキレンオキシド付加物をアルカリ(#KOH、NaOHおよびCsOHなどのアルカリ金属の水酸化物等)の存在下にハロゲン化アルキル(炭素数1〜8)と反応させることで製造できる。炭素数1〜8のアルキル基は前記R2と同じものである。ハロゲン化アルキルの量は、アルキレンオキシド付加物の水酸基に対し、当量比で1/1〜5/1、特に1.2/1〜4/1が好ましい。また、アルカリの添加量は、アルキレンオキシド付加物の水酸基に対し、当量比で1/1〜10/1、特に1.2/1〜5/1が好ましい。
【0021】
本発明の潤滑剤は、潤滑性が良好であり単独でも使用可能であるが、必要により、酸化防止剤、極圧添加剤、防錆剤、消泡剤および乳化剤などの添加剤を加え、水で希釈して、エマルション型、ソリュブル型およびソリューション型の潤滑剤組成物として使用することができる。これらの添加剤は2種以上を併用してもよい。
【0022】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤〔例えば2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、4,4−ブチリデンビス(6−tert−ブチルメタクレゾール)等〕;アミン系酸化防止剤(例えばフェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン等);ジアルキル(炭素数1〜36)ジチオリン酸亜鉛;ジアリル(炭素数2〜36)ジチオリン酸亜鉛;有機硫化物;有機セレナイド等が挙げられる。
【0023】
極圧添加剤としては、鉛石けん(ナフテン酸鉛等);硫黄化合物(硫化オレイン酸などの硫化脂肪酸、硫化脂肪酸エステル、硫化スパーム油、硫化テルペン、ジベンジルダイサルファイド、炭素数8〜24のアルキルチオプロピオン酸のアミン塩またはアルカリ金属塩、炭素数8〜24のアルキルチオグリコール酸のアミン塩またはアルカリ金属塩等);塩素化合物(塩素化ステアリン酸、塩素化パラフィン、クロロナフサザンテート等);リン化合物(トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリクレジルホスファイト、n−ブチルジ−n−オクチルホスフィネート、ジ−n−ブチルジヘキシルホスホネート、ジ−n−ブチルフェニルホスホネート、ジブチルホスホロアミデート、アミンジブチルホスフェート等)などが挙げられる。
【0024】
防錆剤としては、例えば、炭素数2〜36の有機アミン(脂肪族アミン、例えば、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、オレイルアミン;脂環式アミン、例えばシクロヘキシルアミン;複素環式アミン、例えばモルホリン;アルカノールアミン、例えば、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、N−ジメチルアミノエタノールアミン、イソプロパノールアミンなど);有機アミンのアルキレンオキサイド(アルキレン基の炭素数2〜4)付加体(上記アミンのPOもしくはEO1〜10モル付加物など);炭素数6〜36の脂肪族カルボン酸とそのアミド(カプリル酸、ラウリル酸、ノナン酸、デカン酸、オレイン酸、オレイルアミドなど);炭素数6〜24の二塩基酸(アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン2酸、ダイマー酸など);炭素数6〜36のアルケニルコハク酸とそのアミド(オクテニルコハク酸、ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸アミドなど);芳香族カルボン酸(安息香酸、p−tertブチル安息香酸、ニトロ安息香酸など);これらのカルボン酸のアミン塩(カプリル酸トリエタノールアミン塩など)またはアルカリ金属塩(カプリル酸セシウム、セバシン酸カリウムなど);シクロヘキシルアミンナイトライト;ベンゾトリアゾール;メルカプトベンゾチアゾール;N,N’−ジサリチリデン−1,2−ジアミノプロパン;アリザリンなどが挙げられる。なお、炭素数6〜36の脂肪族カルボン酸とそのアミドおよび炭素数6〜36のアルケニルコハク酸とそのアミドは、油性向上剤としての機能も有する。
【0025】
消泡剤としてはポリオルガノシロキサン(例えばポリジメチルシロキサン等)等が挙げられる。
【0026】
乳化剤としては、ポリオキシエチレン(重合度4〜20)モノアルキルエーテル(アルキル基の炭素数8〜22)などのノニオン界面活性剤;石油スルフォネート、アルキル(炭素数5〜36)ベンゼンスルフォン酸アルカリ金属塩などのアニオン活性剤が挙げられる。
【0027】
本発明の潤滑剤組成物中、(E)からなる潤滑剤の含量は、好ましくは5〜90質量%、さらに好ましくは10〜50質量%である。水の含量は、好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは10〜90質量%、特に好ましくは20〜80質量%である。 酸化防止剤を使用する場合の含量は、好ましくは0.0001〜2質量%、特に0.001〜1%である。極圧添加剤を使用する場合の含量は、好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。防錆剤を使用する場合の含量は、好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは1〜20質量%である。消泡剤を使用する場合の含量は、好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは10〜500ppmである。乳化剤を使用する場合の含量は、好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0028】
本発明の潤滑剤または潤滑剤組成物は、切削油、研削油、摺動面潤滑油、圧延油、引き抜き油、プレス油、鍛造油、アルミディスクおよびシリコンウエハの研磨、切断などの加工に用いる金属加工油、並びに水−グリコール系作動油等の潤滑油に用いられる基油として好適に用いることができる。
【0029】
本発明の潤滑剤または潤滑剤組成物は、金属加工油および潤滑剤として使用する場合、必要により水で希釈(例えば、質量基準で10〜200倍)して使用する。特に(E)の含量が0.5〜3質量%(特に1〜2質量%)、防錆剤の含量が0.2〜2質量%(特に0.5〜1質量%)となるように希釈して用いるのが好ましい。
【0030】
【実施例】
以下の実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特記しない限り、文中の部は質量部、%は質量%を表す。試験方法は、以下のとおりである。
(1)水溶性
水溶性は、潤滑剤の2%水溶液の25℃における外観を観察することにより
、外観が均一透明であれば、水溶性○、それ以外であれば×と判断した。
(2)潤滑性
潤滑性は振動摩擦摩耗試験機(オプチモール社製 SRV試験器)を用い、鋼球と平面の鋼円盤との点接触(荷重200N)における摩擦係数および鋼球上の摩耗痕径を観察することにより、評価した。試験条件を下記に示す。
<試験液の調整>
潤滑性の評価は、潤滑剤原液、および潤滑剤2%+カプリル酸トリエタノールアミン塩0.5%の混合水溶液で実施した。なお、後述の泡立ち性およびオイル分離性試験は、潤滑剤の2%水溶液で実施した。
<潤滑性試験条件>
振幅:2mm
振動数:50Hz
温度:30℃
時間:10分間
摩擦係数:時間10分間の平均
油膜切れ:摩擦係数(μ)が立ち上がる状態を見た。
○:なし(μ安定)、△:あり(μやや変動)、×:あり(μ変動大)
摩耗痕径:10mm鋼球(SUJ−2)の摩耗直径(mm)
【0031】
(3)泡立ち性
泡立ち性は、JIS K2518 石油製品−潤滑油−泡立ち試験法 に準じて行い、空気吹き込み直後の泡立ち容量と吹き込み停止5分後の泡の容量を測定した。
(4)オイル分離性
オイル分離性は、共栓つき100mlメスシリンダーに、試験液を90mlと摺動面油(ダイナウエイ68:コスモ石油製)10mlを入れ、30秒間振とう後、静置して5分後の分離したオイル層とクリーム層の容量を読みとった。
【0032】
製造例1
ガラス製オートクレーブにメタノール32部(1モル)とKOH0.6部を仕#を仕込み、耐圧滴下ロートからPO261部(9モル)を110℃で10時間かけて滴下した。その後、130℃で圧力が平衡になるまで反応させた。続いて、EO1000部(22.7モル)とPO1000部(17.2モル)を125℃で滴下し、同温度で圧力が平衡になるまで反応した。その後、さらにPO261部(9モル)を110℃で滴下反応させ、圧力が平衡になるまで反応した。冷却後、吸着処理剤〔協和化学工業(株)製キョーワード600およびキョーワード1000。以下同様とする。〕で処理し、濾過し、減圧脱水して、メタノールのPO9モル、EO22.7モルとPO17.2モルのランダム、およびPO9モルのブロック付加体2522部(E1)を得た。
【0033】
製造例2
ガラス製オートクレーブにヘキシレングリコール118部(1モル)と粉末状KOH7.5部を仕込み、耐圧滴下ロートからEO1496部(34モル)とPO522部(9モル)を125℃で滴下した。その後、同温度で圧力平衡になるまで反応させた後、さらに、PO986部(17モル)を温度110℃で滴下させ、同温度で圧力平衡になるまで反応した。冷却後、吸着処理剤で処理ろ過し、減圧脱水して、ヘキシレングリコールのEO34モルとPO9モルのランダム、およびPO17モルのブロック付加体3090部(E2)を得た。
【0034】
製造例3
ガラス製オートクレーブにグリセリン92部と粉末KOH10部を仕込み、耐圧滴下ロートからEO1760部(40モル)とPO986部(17モル)を125℃で滴下した。その後、同温度で圧力平衡になるまで反応させた後、さらに、PO696部(12モル)を110℃で滴下させ、圧力平衡になるまで同温度で反応させた。冷却後、吸着処理剤で処理ろ過し、減圧脱水して、グリセリンのEO40モルとPO17モルのランダム、およびPO12モルのブロック付加体3503部(E3)を得た。
【0036】
比較製造例1
ガラス製オートクレーブにポリエチレングリコール(数平均分子量2000)200部(0.1モル)と粉末KOH0.75部を仕込み、耐圧滴下ロートからPO300部(5.2モル)を温度110℃で滴下し、同温度で圧力平衡になるまで反応させた。冷却後、吸着処理剤で処理ろ過し、減圧脱水して、ポリエチレングリコールのPOブロック付加体493部(E’1)を得た。
【0037】
比較製造例2
ガラス製オートクレーブにn−ブタノール74部(1モル)とKOH4.8部を仕込み、耐圧滴下ロートからEO915.2部(20.8モル)とPO916.4部(15.8モル)の混合物を110℃で15時間かけて滴下した。その後、130℃で10時間反応させ、冷却した。冷却後、吸着処理剤で処理し、濾過し、減圧脱水して、n−ブタノールのEO20.8モル/PO15.8モルランダム付加物1888部(E’2)を得た。
【0038】
比較製造例3
ガラス製オートクレーブにポリプロピレングリコール(数平均分子量1750)1750部(1モル)とKOH0.7部を仕込み、耐圧滴下ロートからEO117部(2.7モル)を130℃で2時間かけて滴下した。その後、130℃で4時間反応させ、冷却した。冷却後、吸着処理剤で処理し、濾過し、減圧脱水して、ポリプロピレングリコールのEO2.7モル付加物1849部(E’3)を得た。
【0039】
比較製造例4
ガラス製オートクレーブにメタノール32部(1モル)とKOH0.2部を仕込み、耐圧滴下ロートからPO174部(3モル)を100℃で2時間かけて滴下後、EO308部(7モル)とPO406部(7モル)を130℃で5時間かけて滴下し、同温度で圧力平衡になるまで反応させた。続いて、PO174部(#3モル)を滴下ロートから滴下し、圧力平衡になるまで反応させた。冷却後、吸着処理剤で処理し、減圧脱水して、メタノールのPO3モル、EO7モルとPO7モルのランダム、およびPO4モルのブロック付加体1085部(E’4)を得た。
【0040】
比較製造例5
ガラス製オートクレーブにEOとPOランダム付加物(質量比60/40;数平均分子量6000)を300部(0.05モル)とKOH2.25部を仕込み、耐圧滴下ロートからEO264部(6モル)とPO232部(4モル)を130℃で5時間かけて滴下し、同温度で圧力平衡になるまで反応させた。続いてPO404部(7モル)を滴下ロートから滴下反応させ、圧力平衡になった後、冷却し、減圧脱水して、EO201.8モルとPO121.4モルのランダム、およびPO140モルのブロック付加体1182部(E’5)を得た。
【0041】
実施例1〜4、比較例1〜5
(E1)〜(E4)を実施例1〜4、(E’1)〜(E’5)を比較例1〜5の潤滑剤とした。
Mw、HLB、200N(原液および2質量%水溶液)の荷重下における油膜切れ、摩擦係数および摩耗痕径、流動点、水溶性、泡立ち性、オイル分離性試験の結果を表1および2に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
本発明のポリエーテル系潤滑剤を用いた実施例1〜4のいずれも、水溶性であり、流動性、潤滑性(原液および2質量%水溶液)、泡立ち性、オイル分離性の点で優れている。それに対して、比較例2、3および5はオイル分離性が不十分である。また、比較例2、3および4は水溶液での潤滑性が不十分であり、比較例2、3および5は泡立ち性も実施例に劣る。比較例1は流動点が高くハンドリング性で劣る。
【0045】
【発明の効果】
本発明のポリエーテル系潤滑剤および潤滑剤組成物は、流動性、オイル分離性、潤滑性、低泡性に優れているため、切削油、摺動面潤滑油、圧延油、引き抜き油、プレス油、鍛造油、アルミディスクおよびシリコンウエハの研磨・切断などの加工に用いる金属加工油、並びに水−グリコール系作動油等の水系潤滑油に用いられる潤滑油用基油として極めて好適である。
Claims (4)
- 下記一般式(1)で表され、HLBが8.5以上であり、かつ重量平均分子量が1,000〜10,000であるポリエーテル(E)を含有する[ただし、下記一般式(2)で表されるポリエーテルおよび/または一般式(3)で表されるポリエーテルを含有しない]水系潤滑油用基油であって、(E)を構成するポリオキシアルキレン鎖中のOA1単位とOA2単位の合計の含量〔(k+p)/(k+m+n+p)〕×100が10〜40モル%である水系潤滑剤。
[式中、R1は炭素数1〜8のq価の脂肪族アルコールからq個のOH基を除いた残基、R2はHまたは炭素数1〜8のアルキル基、A1およびA2は1,2−プロピレン基である。kは0または1以上の整数、mおよびnは1以上の整数であり、m+nは10以上である。pは1以上の整数、qは1〜8の整数であって、qが1のときのR1はメチル基、エチル基、n−もしくはiso−プロピル基、またはn−、iso−、sec−もしくはtert−ブチル基である。
、n、pおよびR2 は同じでも異なっていてもよい。]
R3O−(CH2CH2O)d−H (2)
(式中、R3は炭素数5〜8の炭化水素基、dはエチレンオキシドの平均付加モル数で0.2〜2である。)
R4[X{(A1O)eH}r]t (3)
(式中、R4は炭素数2〜9の多価アルコール残基またはポリアミン残基、Xは酸素原子又は窒素原子、A1は炭素数3もしくは4のアルキレン基、eは炭素数3もしくは4のアルキレンオキサイドの平均付加モル数で4〜10、rは1もしくは2、tは2〜8の整数である。) - ポリオキシアルキレン鎖中のオキシエチレン単位(OCH2CH2単位)の含量が30〜90モル%である請求項1記載の水系潤滑剤。
- R1が1〜3価の脂肪族アルコールの残基である請求項1または2記載の水系潤滑剤。
- 請求項1〜3いずれか記載の潤滑剤と、水、酸化防止剤、極圧添加剤、防錆剤、消泡剤、乳化剤から選ばれる1種以上の添加剤からなる水系潤滑剤組成物。
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