JP2004039858A - 電力回路部の防水方法及び電力回路部をもつパワーモジュール - Google Patents

電力回路部の防水方法及び電力回路部をもつパワーモジュール Download PDF

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Abstract

【課題】外部接続端子を回路配設面に対して平行に設ける場合にも確実な絶縁を確保することができ、簡単な方法で有効な防水を図ることができる電力回路部の防水方法及び電力回路部をもつパワーモジュールを提供する。
【解決手段】回路配設面2aから立ち上がる起立部14aと回路配設面2aと略平行に延出する延出部14bとを有する外部接続端子14を備えた電力回路部を形成する。回路配設面2aと略平行に開口したフード5底部に一端が開口する凹部6と、フード5に延出部14bを側方より挿通し得る組付時挿通孔50とを有するケース3を製造する。外部接続端子14を凹部6及び組付時挿通孔50に挿通させてフード5、凹部6内に収容しつつ電力回路部1の所定範囲を囲むシール部材7を介在させてケース3を放熱部材2に組み付ける。凹部6と放熱部材2とにより囲まれた空間内に外部接続端子14の基端部を被覆する高さまで防水用樹脂を充填する。
【選択図】  図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、バスバーや半導体素子を含み、絶縁層を介して放熱部材上に配設される電力回路部の防水方法に関し、例えば共通の車載電源から複数の電子ユニットに配電を行うための電力回路部の防水方法及び電力回路部をもつパワーモジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、共通の車載電源から各電子ユニットに電力を分配する手段として、複数枚のバスバー基板を積層することにより電力回路部を構成し、これにヒューズやリレースイッチが組み込まれた電気接続箱が知られている。
【0003】
このような電気接続箱は、上記電力回路部をロアケースとアッパーケースとにより構成されるケース内部に収納し、短絡等防止の観点からロアケースとアッパーケースとを水密状に嵌合してケース内部の防水が図られているのが一般的である。
【0004】
ところで、近年、かかる電気接続箱の小型化や高速スイッチング制御を実現すべく、前記リレーに代えてFET等の半導体スイッチング素子を入力端子と出力端子との間に介在させたパワーモジュールが開発されるに至っており、かかるパワーモジュールにおいては半導体素子から発せられる熱を冷却する観点から放熱部材の回路配設面上に絶縁層を介して電力回路部が配設されて構成されているものも提案されている(例えば、特開平11−204700号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このようなパワーモジュールにおいて、外部回路と接続される外部接続端子を形成する方法としては、例えば前記回路配設面上に配設される電力回路部に備えられたバスバーの端部を折り起こしてこれを外部側のコネクタと結合される外部接続端子とすることが行われている。しかしながら、この構造では、結合方向が回路配設面の法線方向に限られることになる。そこで、結合方向を回路配設面と平行な方向にする手段として、バスバーの端部を電力回路部からまっすぐに延ばすことが考えられるが、この場合には、外部接続端子が放熱部材の回路配設面上に近接して配置されるため、外部接続端子と放熱部材が離間していても大電流、大電圧の場合には短絡の虞があり、また振動等によっても一時的に接触したり等して両者の確実な絶縁を確保することができないという問題がある。また、外部接続端子が放熱部材の回路配設面に近接して配置された場合には、その外部接続端子をフードにより取り囲んでコネクタを形成することが困難になるという問題もある。
【0006】
一方において、上記のようなパワーモジュールにおいても、短絡等を防止する必要があるのは上記従来の電気接続箱と同様であり、従ってその回路部の防水性が要請されるところ、いまだこのような防水の具体的手法についての開示がなされていない。
【0007】
本発明は、回路配設面と略平行な方向から外部接続端子に結合させる場合にも確実な絶縁を確保することができると共に、コネクタを容易に形成することができ、しかも簡単な方法で有効な防水を図ることができる電力回路部の防水方法及び電力回路部をもつパワーモジュールを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明に係る電力回路部の防水方法は、放熱部材の回路配設面上に設けられた電力回路部の防水方法であって、上記回路配設面から立ち上がる起立部とこの起立部の先端部から上記回路配設面と略平行にその外側に向かって延出する延出部とを有する外部接続端子を備えた上記電力回路部を形成する電力回路部形成工程と、上記回路配設面と略平行に開口して上記延出部の先端部を取り囲むフードが設けられたケースであって、そのフード底部に一端が放熱部材側に開口した凹部を有しかつ上記フードの放熱部材側周側壁に上記外部接続端子の延出部における先端部を側方より挿通し得る組付時挿通孔を有するケースを製造するケース製造工程と、上記凹部及び組付時挿通孔に上記外部接続端子を挿通させてこの外部接続端子を上記フード及び凹部内に収容しつつ上記外部接続端子よりも内側の電力回路部部分を取り囲む形状のシール部材を介在させて上記ケースを上記放熱部材に組み付ける組付工程と、上記フードを上方に開口させて上記凹部と放熱部材とにより囲まれた空間内に起立部を含む外部接続端子の基端部を被覆する高さまで防水用樹脂を充填する端子防水処理工程とを含むものである。
【0009】
上記構成によれば、放熱部材の回路配設面から立ち上がる起立部とこの起立部の先端部から上記回路配設面と略平行にその外側に向かって延出する延出部とを有する外部接続端子を備えた電力回路部を形成するので、回路配設面と略平行な方向から外部接続端子に外部端子が結合される場合に、起立部によって放熱部材から離間した状態で延出部を配置することができ、外部接続端子の延出部の短絡を確実に防止することができる。しかも、上記凹部と放熱部材とにより囲まれた空間内に起立部を含む外部接続端子を収容して、その外部接続端子の基端部を被覆する高さまで防水用樹脂を充填するので、該防水用樹脂が絶縁層の役目を果たして回路配設面に近接した位置での短絡も確実に防止される。従って、外部接続端子は、延出部から起立部に至るまで放熱部材から確実に絶縁される。また、延出部の先端部を取り囲むようにフードが設けられるので、放熱部材の回路配設面から離間した位置にフードが形成され、容易にコネクタを形成することができる。さらに、外部接続端子よりも内側の電力回路部部分を取り囲む形状のシール部材を介してケースを放熱部材に組み付けるので、外部接続端子よりも内側の電力回路部分、すなわち外部接続端子を除く電力回路部は、ケース及び放熱部材により確実に防水される。一方、これらのケースと放熱部材によりシールされなかった外部接続端子を伝って電力回路部が浸水されるという事態が懸念されるところであるが、この外部接続端子は、上記ケースの組付によりそのケースに設けられたフード及び凹部内に収納され、その凹部内に外部接続端子の基端部を被覆する状態にまで防水用樹脂を充填するので、起立部を含めた外部接続端子の基端部が防水用樹脂により水密状に封止され、これらを伝う電力回路部への浸水も確実に防止される。従って、簡単な方法で有効な防水を図ることができる。また、このように、フード内に外部接続端子を収納した状態に組み付けるに当たって、フードに設けられた組付時挿通孔及び一端が開口した凹部を通して行われるので、ケースを一軸方向(回路配設面の法線方向)に操作することによって放熱部材に簡単に組み付けることができ、その組付作業性が向上する。
【0010】
この発明において、上記凹部及び放熱部材により囲まれる空間内に充填される防水用樹脂を特に限定するものではないが、汎用性、耐久性等の観点からエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。
【0011】
また、この発明において、上記ケース製造工程では、上記凹部の底部に上記外部接続端子の起立部を収納する起立部収納溝を設けるものとすることが好ましい。このように構成すれば、起立部収納溝によって外部接続端子の位置決めが確実に行われる。
【0012】
さらに、この発明において、上記組付工程では、熱硬化性樹脂を含む接着剤を熱硬化させてシール部材を形成するシール形成工程を含むものとすることが好ましい。このように構成すれば、接着剤によりシール部材を形成して上記ケースと放熱部材の間をシールするので、接着剤による粘着性によって両部材間の隙間を吸収して確実に塞ぎ、この状態で接着剤を熱硬化させてシール部材を形成するので、より確実にシールすることができ、簡単な方法でより一層有効な電力回路部の防水を図ることができる。
【0013】
一方、本発明に係るパワーモジュールは、外部接続端子を備えた電力回路部が放熱部材の回路配設面上に配設され、上記外部接続端子が上記回路配設面から立ち上がる起立部とこの起立部の先端部から上記回路配設面と略平行に電力回路部の外側に向かって延出する延出部とを有するパワーモジュールであって、上記外部接続端子よりも内側の電力回路部部分を取り囲む形状のシール部材を介在させて放熱部材に組み付けられるケースを備え、このケースは、上記回路配設面と略平行に開口して上記延出部の先端部を取り囲むフードが設けられ、そのフード底部に一端が放熱部材側に開口した凹部を有し、この凹部と上記放熱部材とにより囲まれた空間内に上記起立部を含む外部接続端子の基端部を被覆する高さまで防水用樹脂が充填されているものである。
【0014】
上記構成によれば、起立部によって放熱部材から離間した状態で延出部を配置することができ、延出部の短絡を確実に防止すると共に、起立部を含む外部接続端子の基端部は、防水用樹脂が充填され、この防水用樹脂による防水層が絶縁層としての機能を発揮し回路配設面に近接した位置での短絡も確実に防止して、外部接続端子の確実な絶縁を確保することができる。また、外部接続端子よりも内側の電力回路部部分を取り囲む形状のシール部材を介してケースが放熱部材に組み付けられているので、外部接続端子を除く電力回路部は、ケース及び放熱部材により確実に防水される。一方、これらのケースと放熱部材によりシールされなかった外部接続端子は、上記ケースの組付によりそのケースに設けられたフード及び凹部内に収納され、その凹部内に外部接続端子の基端部を被覆する状態にまで防水用樹脂を充填するので、起立部を含めた外部接続端子の基端部が防水用樹脂により水密状に封止され、これらを伝う電力回路部への浸水も確実に防止される。従って、簡単な方法で有効な防水を図ることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、ここでは、車両等に搭載される共通の電源から供給される電力を複数の電気的負荷に分配する電力回路部を示すが、この発明にかかる電力回路部の用途はこれに限らず、放熱及び防水が要請される電力回路部に広く適用可能である。
【0016】
図1は、本実施形態の防水方法によって防水処理がなされた電力回路部を含むパワーモジュールを示す断面図である。また、図2は、このパワーモジュールを示す平面図である。このパワーモジュールは、本実施形態では縦置き、すなわち図2における左端部を上方に向けて車両に装着されるものであるが、車両に対する装着の方向はこれに限定されるものではない。以下の説明においてこのパワーモジュールが縦置きされた場合における方向で説明することもあるが、これは各部材間の相対的な方向を特定するために便宜的に用いたものである。
【0017】
1)電力回路部形成工程
まず、この発明に用いられる所定の電力回路部1を形成する。
【0018】
すなわち、この電力回路部1は、略矩形状の平面領域内に複数枚のバスバー10aが同一平面内に所定のパターン、本実施形態では平面領域両側縁(図1では上下両側縁)にバスバー10a端部が突出されるようなパターンで配列されたバスバー構成板10と、このバスバー構成板10を構成するバスバー10aのうち入力端子用バスバー10aと出力端子用バスバー10aとの間に介在される半導体スイッチング素子である複数個のFET11と、上記バスバー構成板10の片面(図1では右側面)に接着され上記FET11のスイッチング動作を制御する制御回路を有する制御回路基板12とを含み、上記FET11はバスバー構成板10と制御回路基板12の双方に電気的に接続されている。また、この電力回路部1は、所望方向から外部端子が接続される複数本の外部接続端子13,14を有し、これらの外部接続端子13,14のうち少なくとも一の接続端子14は、上記バスバー構成板10の平面領域と略平行な方向(図1では上方)から外部端子が接続されるものとなされている。ここで、平面領域の平行な方向とは、バスバー10aが配列される平面領域と平行な方向をいい、電力回路部1を後述する放熱部材2の回路配設面2a上に配設した場合には、この回路配設面2aと平行な方向、すなわち回路配設面2aの法線方向と垂直な方向と一致するものである。
【0019】
なお、バスバー構成板10の形状やバスバー10aの配置パターンは適宜変更することができ、またFET11についてこれをその他の半導体スイッチング素子やスイッチング素子以外のその他の半導体素子に変更することもできる。さらに、制御回路基板12についてこれをFET11の上位に配置するように変更することもできる。
【0020】
上記外部接続端子13,14は、所定のバスバー10aを折り曲げて構成する。本実施形態では、外部接続端子13,14は、バスバー構成板10の平面領域の法線方向(図1では側方)に指向するI字状の第1外部接続端子13と、バスバー構成板10の平面領域の法線方向に対して垂直方向(図1では上方)に指向するL字状の第2外部接続端子14とを有する。なお、言うまでもないが、この第2外部接続端子14が本願請求項に言う外部接続端子に相当する。
【0021】
具体的には、上記バスバー10aのうち電力回路部1の下端縁(図2では右側端縁)に列設されたバスバー10aの端部を垂直に折り起こして第1外部接続端子13を形成する。一方、図1及び図4に示すように、電力回路部1の上端縁(図2では左側端縁)に列設されたバスバー10aの端部を折り起こし、その起立端部のさらに端部をバスバー構成板10に対して平行、すなわち平面領域の法線方向に垂直な方向(図1では上方)に折り戻してL字状の第2外部接続端子14を構成する。すなわち、この第2外部接続端子14は、上記平面領域から立ち上がる起立部14aと、この起立部14aの先端から回路配設面2aと略平行にその外側に(図1では上方)向かって延出する延出部14bとから構成され、上述のように、上方から外部端子が接続されるものとなされている。この第2外部接続端子14は、バスバー10a端部が一動作あるいは複数動作で折り曲げられて構成されている。
【0022】
これらの外部接続端子13,14は、例えば入力端子、出力端子または信号入力端子として機能するものであり、これらの端子13,14に外部端子が電気的に接続されるものとなされている。なお、第1及び第2外部接続端子13,14は、入出力端子、信号入力端子といった種類によって区別されるものではなく、先端部の指向方向によって区別されるものであり、従って第1及び第2外部接続端子13,14のそれぞれに上記のような各端子が含まれ得ることは言うまでもない。
【0023】
このように、第2外部接続端子14をL字状に形成し、すなわち第2外部接続端子14が平面領域から立ち上がる起立部14aとこの起立部14aの先端部から平面領域と略平行にその外側に向かって延出する延出部14bとを有するものとなされているので、後述のように電力回路部1を回路配設面2aに配設した場合に、放熱部材2から離間した状態で第2外部接続端子14の延出部14bを配置することができ、延出部14bの短絡を確実に防止することができる。すなわち、電力回路部1と同一平面内に外部接続端子を配置すれば、この外部接続端子が放熱部材2の回路配設面2a上に近接して配置されるため、外部接続端子と放熱部材2とが離間していても大電流、大電圧の場合には短絡の虞があるのに対して、本発明においては上記のように起立部14aにより第2外部接続端子14を設けるので、延出部14bと放熱部材2との間を十分に離間させることができ、延出部14bの短絡を確実に防止することができる。
【0024】
2)電力回路部の配設工程
この電力回路部1を、図1及び図2に示すように、放熱部材2の回路配設面2aに絶縁層20を介して配設する。すなわち、上記電力回路部1を、例えば熱伝導性の高い接着剤により接着し、あるいはバスバー10aの中に接地されるべきものが含まれる場合には、このバスバー10aを放熱部材2にネジ止めすることによって絶縁層20を介して放熱部材2の回路配設面2a上に配設する。
【0025】
上記電力回路部1が配設される放熱部材2は、例えば全体がアルミニウム系金属等の熱伝導性に優れた材料で形成され、上面が平坦に形成されて回路配設面2aとして構成されている。一方、この放熱部材2と電力回路部1との間に介在する絶縁層20は、放熱部材2の回路配設面2aの中央部における上記電力回路部1に対応する領域に設けられ、放熱部材2に熱的に接続されており、例えば絶縁性の高い接着剤(例えばエポキシ系樹脂からなる接着剤、シリコーン系接着剤等)を塗布して乾燥させることにより形成され、あるいは回路配設面2a上に絶縁シートを貼着することにより形成される。
【0026】
なお、この放熱部材2について回路配設面2aと反対側に複数の放熱フィンを列設し、放熱効率を向上させるように構成しても良い。
【0027】
3)ケース製造工程
そして、上記放熱部材2の回路配設面2a上に配設された電力回路部1に防水を施すため、その回路配設面2a上の電力回路部1の所定範囲を覆う所定のケース3を製造する。
【0028】
このケース3は、絶縁材からなり、一方(図1では左側)に開口して放熱部材2と反対側(図1では右側)から前記電力回路部1の所定範囲を覆う箱型形状を有し、周側壁を構成するケース本体30と、このケース本体30の上端開口部(図では右端開口部)を閉塞するケース本体天蓋体31とを備える。
【0029】
このケース本体30は、上記放熱部材2の回路配設面2aに重ね合わす略矩形環状の重合面3aを有し、この重合面3aには、図1及び図5に示すように、第1外部接続端子13に対応して重合面3aの法線方向に貫通して設けられその対応する第1外部接続端子13が挿通される複数個の端子用貫通孔32と、第2外部接続端子14に対応して設けられ、重合面3aを横切るように形成されたバスバー収納溝部33と、第1及び第2外部接続端子14を除く電力回路部1を取り囲み得る囲繞溝34とを備える。
【0030】
バスバー収納溝部33は、後述するようにケース3からはみ出して配設される第2外部接続端子14に連設されるバスバー10aが収納されるものであり、ケース3と放熱部材2間のバスバー10aに起因する両部材2,3間の隙間を全てあるいは一部吸収するために設けられるものである。従って、このバスバー収納溝部33は、バスバー10aの厚み等を考慮して設けられる。
【0031】
囲繞溝34は、上述のように、電力回路部1の所定範囲、すなわち少なくともFET11を含み第1及び第2外部接続端子13,14よりも内側の電力回路部1領域を、取り囲み得るように重合面3aに沿って略矩形環状に形成され、その断面形状は特に限定するものではないが、本実施形態では断面略V字状に形成されている。また、囲繞溝34は、後述するように、この溝に沿って熱硬化性樹脂を含む接着剤が充填されるものであり、その深さは充填される接着剤を考慮して適宜設定される。
【0032】
一方、ケース本体30の上記重合面3aと反対側の面及び上端側面には、上記電力回路部1の第1及び第2外部接続端子13,14にそれぞれ対応して形成されるコネクタ形成用の第1及び第2フード4,5を備える。すなわち、図1に示すように、ケース本体30の下端部には側方に突出する筒状の第1フード4が設けられ、上記電力回路部1の第1外部接続端子13が端子用貫通孔32からこの第1フード4内に突出し得るように構成されている。一方、ケース本体30の上端部に上方に突出する第2フード5が設けられ、上記電力回路部1の第2外部接続端子14における延出部14b先端部がこの第2フード5内に収容し得るように構成されている。
【0033】
これらの第1フード4とこれに対応する1本ないし複数本の第1外部接続端子13とにより、また第2フード5とこれに対応する1本ないし複数本の第2外部接続端子14とにより、別のコネクタの結合可能な外部接続コネクタを構成している。これらの第1及び第2フード5の断面形状は、接続される別のコネクタの形状を考慮して適宜設定されるものである。
【0034】
図3及び図5に明示するように、ケース本体30には、上記第2フード5の底部に一端が放熱部材2側に開口した樹脂充填用の凹部6が設けられている。言い換えると、ケース本体30の周側壁における放熱部材2側の端部にケース本体30の重合面3aから第2フード5の底部に延びる一端開口型の凹部6が設けられている。この凹部6は、ケース3と放熱部材2の組付状態において、放熱部材2の回路配設面2aとの間に、後述する防水用樹脂を充填する容器を形成するものである。この凹部6は、またその底部に沿って第2外部接続端子14の起立部14aが収容されるものとなされており、特に本実施形態では、図5に示すように、この底部に放熱部材2側端縁から延びる起立部収納溝60が設けられ、第2外部接続端子14の起立部14aを収納するものとなされている。この起立部収納溝60の深さは、起立部14aの厚みを考慮して適宜設定される。このように、起立部収納溝60に起立部14aが収納されることにより、第2外部接続端子14の位置決め、特に第2フード5に対する位置決めが容易かつ確実になされるものとなされている。
【0035】
上記第2フード5には、後述するようにケース3を放熱部材2に組み付ける際に第2外部接続端子14の先端部を側方より挿通させ得る組付時挿通孔50が形成されている。すなわち、この第2フード5の放熱部材2側の周側壁には、上記凹部6の底面からの高さが少なくとも延出部14b長さに相当するように設定され、これにより凹部6から突出する第2外部接続端子14の対応部分を側方より挿通させ得る組付時挿通孔50が設けられている。
【0036】
ケース本体天蓋体31は、ケース本体30の開口部に対応して略矩形状に形成され、後述する組付工程において接着、溶着等によりケース本体30に取り付け得るものとなされている。
【0037】
このように、第2フード5内に第2外部接続端子14を収納した状態に組み付けるに当たって、第2フード5に設けられた組付時挿通孔50及び一端が開口した凹部6を通して行われるので、ケース3を一軸方向(回路配設面2aの法線方向)に操作することによって放熱部材2に簡単に組み付けることができ、その組付作業性が向上する。
【0038】
4)組付工程
上記ケース3製造工程により製造されたケース3を、放熱部材2に組み付ける。
【0039】
すなわち、まず上記ケース3のうちのケース本体30における上記囲繞溝34に、接着剤を充填する。具体的には、図5に示すように、上記囲繞溝34に熱硬化性樹脂(例えばシリコーン系樹脂)を含む接着剤を充填する。
【0040】
次に、この囲繞溝34に接着剤が充填されたケース本体30に、上記電力回路部1が配設された放熱部材2を組み付け、このケース本体30と放熱部材2との間にシール部材7を形成して両部材2,30をシールする。具体的には、まず、上記のように接着剤をケース本体30の囲繞溝34に隈無く充填した後、ケース本体30の凹部6及び組付時挿通孔50に第2外部接続端子14を挿通させてこの第2外部接続端子14を第2フード5及び凹部6内に収容しつつ、ケース本体30の重合面3aに放熱部材2の回路配設面2aを重ね合わせる。そして、上記組み付けたケース本体30と放熱部材2を加熱すると、熱硬化性樹脂を含む接着剤が硬化され、シール部材7が形成される。すなわち、接着剤によりシール部材7を形成するシール形成工程を経て、上記ケース本体30と放熱部材2との間をシールする。
【0041】
この接着剤が熱硬化されて形成されたシール部材7は、上記電力回路部1の所定範囲、本実施形態では第1及び第2外部接続端子14よりも内側の電力回路部1部分を取り囲む略矩形環状の形状を呈し、上記放熱部材2とケース本体30との間にこれら両部材2,30に接着された状態で介在している。
【0042】
このシール形成工程後に、上記ケース本体30の放熱部材2と反対側の開口を上方に向け、この開口から適当なポッティング剤を充填することによりケース本体30内部を封止する。
【0043】
そして、このポッティング工程後に、ケース本体天蓋体31を上記ケース本体30の放熱部材2と反対側の開口を閉塞した状態で接着、溶着等によりケース本体30に取り付ける。
【0044】
而して、ケース本体30にケース本体天蓋体31が取り付けられたケース3は、上記シール部材7を介在させた状態で放熱部材2に組み付けられている。
【0045】
このように、第1及び第2外部接続端子13,14よりも内側の電力回路部1部分を取り囲む形状のシール部材7を介してケース3を放熱部材2に組み付けるので、これらの外部接続端子13,14よりも内側の電力回路部分、すなわち外部接続端子13,14を除く電力回路部1は、ケース3及び放熱部材2により確実に防水される。従って、外部接続端子13,14を除く電力回路部1について簡単な方法で有効な防水を図ることができ、しかも電力回路部1からの発熱は放熱部材2により十分に放熱されるので、電力回路部1の性能を高水準のまま維持することもでき、また電力回路部1が容器内に収納されるのではなく、上記のように放熱部材2の回路配設面2a上に設けられた電力回路部1をケース3により被覆するので、アッパーケースとロアケースとを要する従来の電気接続箱に比べてコンパクトに形成することができる。
【0046】
また、ケース本体30内部にポッティング剤を注入するので、このポッティング剤が電力回路部1を被覆してより確実に放熱することができると共に、防水性を有するポッティング剤を注入した場合にはより確実に電力回路部1の防水を図ることができる。
【0047】
5)端子防水処理工程
上記組付工程後、上記第1及び第2フード4,5の開口から所定高さに亘って防水用樹脂を充填し、この防水用樹脂によって防水層8を形成する。このとき、第1及び第2外部接続端子14は、各防水層8から所定長さ突出するものとなされている。この防水用樹脂としては、特に限定するものではないが、汎用性、耐久性の観点から、例えばエポキシ系樹脂等が用いられる。
【0048】
具体的には、第1フード4を上方に開口させるように、パワーモジュールをセッティングし、この状態で防水用樹脂を第1フード4内の下部に充填する。この防水用樹脂によって防水層8を形成して第1外部接続端子13の基端部及び端子用貫通孔32を封止する。
【0049】
一方、第1フード4に防水用樹脂を充填して防水層8を形成する前または形成した後に、図3に示すように、第2フード5を上方に開口させるように、パワーモジュールをセッティングし、この状態で第2フード5の下位の凹部6と放熱部材2とにより囲まれる空間内に防水用樹脂を充填する。この防水用樹脂によって防水層8を形成し、バスバー収納溝33を封止するのはもちろんのこと、起立部14aを含む第2外部接続端子14の基端部を防水層8内に封止する。
【0050】
このように、上記のケース3と放熱部材2によりシールされなかった第1及び第2外部接続端子14については、上記ケース3の組付により第1外部接続端子13は第1フード4に収納されてこの第1フード4下部に防水用樹脂を充填し、第2外部接続端子14は第2フード5及び凹部6内に収納されてその凹部6内に外部接続端子の基端部を被覆する状態にまで防水用樹脂を充填するので、第1外部接続端子13の基端部及び起立部14aを含めた第2外部接続端子14の基端部が防水用樹脂により水密状に封止され、これらを伝う電力回路部1への浸水も確実に防止される。しかも、第2外部接続端子14の基端部は防水用樹脂により被覆されるので、該防水用樹脂が絶縁層20の役目を果たして回路配設面2aに近接した位置での短絡が確実に防止される。
【0051】
なお、以上に本実施形態に係る電力回路部1の防水方法について説明したが、この発明に係る防水方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、以下のような変更が可能である。
【0052】
各工程の順番は、上記実施形態のものに限られず、例えば、端子防水処理工程が組付工程内、すなわちケース本体30を放熱部材2に取り付けた後で、ポッティング工程前に行うもの等であっても良い。ただ、ポッティング工程後に端子防水処理工程を行う方が所望の防水層を確実に形成することができる観点から好ましい。
【0053】
また、上記実施形態では、接着剤を熱硬化させることによりシール部材7を形成したが、シール部材の形成方法はこの手法に限定されるものではなく、放熱部材を防水ケースに組み付けて所定時間放置しておくことにより接着剤が自然に硬化しシール部材を形成するものであってもよい。
【0054】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、外部接続端子が起立部と延出部とを有するので、起立部により放熱部材から離間した状態で延出部を配置することができ、延出部の短絡を確実に防止することができると共に、起立部を含む外部接続端子の基端部は防水用樹脂により被覆されるので、該防水用樹脂が絶縁層の役目を果たして回路配設面に近接した位置での短絡を確実に防止することができ、従って、外部接続端子の延出部を回路配設面に対して平行に設ける場合にも確実な絶縁を確保することができる。
【0055】
また、延出部の先端部を取り囲むようにフードが設けられるので、放熱部材の回路配設面から離間した位置にフードが形成され、容易にコネクタを形成することができる。
【0056】
さらに、外部接続端子を除く電力回路部は、ケース及び放熱部材により確実に防水される。一方、これらのケースと放熱部材によりシールされなかった外部接続端子は、起立部を含めた外部接続端子の基端部が防水用樹脂により水密状に封止され、これらを伝う電力回路部への浸水も確実に防止される。従って、簡単な方法で有効な防水を図ることができる。
【0057】
また、フードに設けられた組付時挿通孔及び一端が開口した凹部により、ケースを一軸方向(回路配設面の法線方向)に操作することによって放熱部材に簡単に組み付けることができ、その組付作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態にかかる電力回路部の防水方法が適用されるパワーモジュールを示す断面図である。
【図2】同パワーモジュールの平面図である。
【図3】図1の要部拡大図面である。
【図4】バスバーの折り曲げ状態を示す説明図である。
【図5】ケースと放熱部材の組付状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 電力回路部
2 放熱部材
2a 回路配設面
3 ケース
5 第2フード
6 凹部
8 防水層
14 第2外部接続端子
14a 起立部
14b 延出部
50 組付時挿通孔
60 起立部収納溝

Claims (5)

  1. 放熱部材の回路配設面上に設けられた電力回路部の防水方法であって、上記回路配設面から立ち上がる起立部とこの起立部の先端部から上記回路配設面と略平行にその外側に向かって延出する延出部とを有する外部接続端子を備えた上記電力回路部を形成する電力回路部形成工程と、上記回路配設面と略平行に開口して上記延出部の先端部を取り囲むフードが設けられたケースであって、そのフード底部に一端が放熱部材側に開口した凹部を有しかつ上記フードの放熱部材側周側壁に上記外部接続端子の延出部における先端部を側方より挿通し得る組付時挿通孔を有するケースを製造するケース製造工程と、上記凹部及び組付時挿通孔に上記外部接続端子を挿通させてこの外部接続端子を上記フード及び凹部内に収容しつつ上記外部接続端子よりも内側の電力回路部部分を取り囲む形状のシール部材を介在させて上記ケースを上記放熱部材に組み付ける組付工程と、上記フードを上方に開口させて上記凹部と放熱部材とにより囲まれた空間内に起立部を含む外部接続端子の基端部を被覆する高さまで防水用樹脂を充填する端子防水処理工程とを含むことを特徴とする電力回路部の防水方法。
  2. 請求項1記載の電力回路部の防水方法であって、上記防水用樹脂は、エポキシ系樹脂であることを特徴とする電力回路部の防水方法。
  3. 請求項1または請求項2記載の電力回路部の防水方法において、上記ケース製造工程では、上記凹部の底部に上記外部接続端子の起立部を収納する起立部収納溝を設けることを特徴とする電力回路部の防水方法。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電力回路部の防水方法であって、上記組付工程では、熱硬化性樹脂を含む接着剤を熱硬化させてシール部材を形成するシール形成工程を含むことを特徴とする電力回路部の防水方法。
  5. 外部接続端子を備えた電力回路部が放熱部材の回路配設面上に配設され、上記外部接続端子が上記回路配設面から立ち上がる起立部とこの起立部の先端部から上記回路配設面と略平行に電力回路部の外側に向かって延出する延出部とを有するパワーモジュールであって、上記外部接続端子よりも内側の電力回路部部分を取り囲む形状のシール部材を介在させて放熱部材に組み付けられるケースを備え、このケースは、上記回路配設面と略平行に開口して上記延出部の先端部を取り囲むフードが設けられ、そのフード底部に一端が放熱部材側に開口した凹部を有し、この凹部と上記放熱部材とにより囲まれた空間内に上記起立部を含む外部接続端子の基端部を被覆する高さまで防水用樹脂が充填されていることを特徴とするパワーモジュール。
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