JP2004039829A - 放熱部材、その製造方法及びその敷設方法 - Google Patents

放熱部材、その製造方法及びその敷設方法 Download PDF

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Abstract

【課題】常温でシート状又はフィルム状であると共に、長期に渉って優れた放熱性を有する放熱部材を提供する。
【解決手段】放熱部材は、厚さが1〜50μmでありかつ熱伝導率が10〜500W/mKである金属箔及び/又は金属メッシュを中間層とし、その中間層の両面に、シリコーン樹脂100重量部と熱伝導性充填剤1,000〜3,000重量部を含有する熱伝導性組成物からなる層を、全体の厚さが40〜500μmの範囲となるように形成させてなる。この放熱部材は室温では非流動性であると共に、電子部品動作時の発熱によって、樹脂および低融点金属の相転移に基づく低粘度化、軟化、若しくは溶融が生じ、前記電子部品と放熱部品との境界に実質的に空隙なく密着する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発熱性電子部品の冷却に使用される放熱部材に関し、特に、電子部品の温度上昇にともない、可逆的にその性状が個体からペースト状あるいは液状に変化する放熱部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、パーソナルコンピューター、デジタルビデオディスク、携帯電話などの電子機器に使用されるCPUやドライバIC或いはメモリーなどのLSIは、集積度の向上と動作の高速化に伴って消費電力が増大し、その発熱量が増大することが電子機器の誤動作や電子部品の損傷の一因となっているため、その放熱対策が大きな課題となっている。
従来、電子機器等においては、その使用中における電子部品の温度上昇を抑えるために、黄銅等、熱伝導率の高い金属板を用いたヒートシンクが使用されている。このヒートシンクは、その電子部品が発生する熱を伝導し、その熱を外気との温度差によって表面から放出するものである。
【0003】
電子部品から発生する熱をヒートシンクに効率良く伝えるためには、ヒートシンクを電子部品に密着させる必要があるが、各電子部品の高さの違いや組み付け加工による公差があるため、柔軟性を有する熱伝導性シートや熱伝導性グリースを電子部品とヒートシンクとの間に介在させ、この熱伝導性シートまたは熱伝導性グリースを介して電子部品からヒートシンクへの熱伝導を実現している。
【0004】
上記熱伝導性シートとしては、熱伝導性シリコーンゴム等で形成された熱伝導用シート(熱伝導性シリコーンゴムシート)が用いられ、熱伝導性グリースとしては熱伝導性シリコーングリースが使用されている。しかしながら、従来から使用されている熱伝導性シリコーンゴムシートでは電子部品との界面に空隙が生じるために、界面接触熱抵抗が大きくなって熱伝導性能が不十分となるという欠点があった。この欠点は、発熱量が大きな高周波駆動のCPUの冷却には大きな問題であり、界面接触熱抵抗の低減が望まれていた。
【0005】
一方、熱伝導性グリースはその性状が液体に近いために界面接触熱抵抗が殆ど無視できる程度であり熱伝導性能が良いものの、ディスペンサなどの専用の装置が必要になること及び回収する場合に作業性が悪いという欠点があった。さらに熱伝導性グリースは、室温から電子部品動作温度(60〜120℃)間でのヒートサイクルを長期間に渉って受けた場合に、ポンプアウトという不具合が発生するという問題がある。ポンプアウトとは、グリースに含まれる液状オイル成分が分離して電子部品と熱放散部材の間からしみ出すために、グリースが固化し、亀裂やボイドが発生する現象であり、その結果、熱抵抗の増加を招き電子部品の放熱ができなくなるというものである。
【0006】
上記問題点を改良するために、既に、常温では固体シート状で、電子部品の動作時に発生する熱により軟化して界面接触熱抵抗が無視出来るレベルとなる相変化型放熱部材(フェイズチェンジシート)が提案されている。例えば、米国特許第4466483号明細書では非金属シートの両面に相変化するワックス層を形成するものが開示され、同第5904796号明細書では金属箔の片面に相変化するパラフィンまたは石油ゼリーを形成させ、その反対側の面には接着剤層を形成させたものが開示されている。更に、特表2000−509209号公報には、アクリル粘着剤とワックス及び熱伝導性フィラーからなり、網状組織やフィルム等の中間層を設けないことを特徴とするフェイズチェンジシートが開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらこれらの先行技術においては、加工性及び作業性の観点から熱伝導性充填材の含有量に限界があり、また相転移後においても、接触面が樹脂成分を主体として追随・密着するため、空隙による界面接触熱抵抗の上昇は防げるものの、樹脂自体の熱伝導率が低いことから、さらなる界面接触熱抵抗の低減化要求に対しては答えられないという欠点があった。
そこで本発明者等は上記の欠点を解決するために鋭意検討した結果、常温では固体シート状で、電子部品やヒートシンクへの装着、脱着が容易な、一定量の低融点金属を含有する放熱部材の場合には、電子部品の動作時に発生する熱により、若しくは配置時に積極的に含有する低融点金属の融点以上の熱を一時的にかけることにより、樹脂よりもむしろ低融点金属が溶融軟化して界面接触熱抵抗を無視出来るレベルとすることが出来る上、ポンプアウトしないので長期間に渉って優れた放熱性能を発揮することが出来ることを見出し、本発明に到達した。
従って本発明の第1の目的は、常温でシート状又はフィルム状であると共に、使用時の界面接触熱抵抗が十分に小さい、ポンプアウトせずに長期に渉って優れた放熱性を有する放熱部材を提供することにある。
本発明の第2の目的は、常温でシート状又はフィルム状であって、使用時に可逆的に熱溶融軟化する放熱部材の製造方法を提供することにある。
更に、本発明の第3の目的は、本発明の放熱部材の性能を十分に発揮させるための敷設方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記の諸目的は、動作時に室温より高温となる発熱性電子部品と該発熱性電子部品から発生した熱を放熱する為の放熱部品との間に狭持される放熱部材において、該放熱部材が、厚さが1〜50μmでありかつ熱伝導率が10〜500W/mKである金属箔及び/又は金属メッシュを中間層とし、その中間層の両面に、シリコーン樹脂100重量部と熱伝導性充填剤1,000〜3,000重量部を含有する熱伝導性組成物からなる層を、全体の厚さが40〜500μmの範囲となるように形成させてなる放熱部材であり、前記発熱性電子部品動作以前の室温では非流動性であると共に、電子部品動作時の発熱によって、樹脂および低融点金属の相転移に基づく低粘度化、軟化、若しくは溶融が生じ、前記電子部品と放熱部品との境界に実質的に空隙なく充填される放熱部材であって、前記熱伝導性充填剤として、溶融温度が40〜250℃であると共に平均粒径が0.1〜100μmである低融点金属粉末(1)、及び溶融温度が250℃を越えると共に平均粒径が0.1〜100μmである熱伝導性粉末(2)が、(1)/〔(1)+(2)〕=0.2〜1.0となるように含有されてなることを特徴とする放熱部材、その製造方法及びその敷設方法によって達成された。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に使用される金属箔及び/又は金属メッシュは本発明の放熱部材の中間層であり、支持体として放熱部材の強度を高める機能がある。即ち、室温で電子部品またはヒートシンク等の熱放散部材に対して本発明の放熱部材の装着又は脱着を行う際における、その取り扱い性を向上させることができる。上記の金属箔及び金属メッシュは10〜500W/mKという高い熱伝導率を持つ金属であることが好ましい。このような金属の具体例としては、アルミニウム合金、マグネシウム合金、銅、鉄、ステンレス、銀、金などが挙げられる。金属メッシュは、金属箔の打ち抜き加工により複数の孔を開けたものや、上記金属のワイヤーを織物状にしたものなどである。上記金属箔及び金属メッシュの厚さは1〜50μmの範囲であることが必要である。1μm未満では、支持体として放熱部材の強度を十分に高めることができず、50μmを越えると放熱部材の柔軟性が低下し、装着の際に電子部品またはヒートシンクと放熱部材の間にエアーを巻き込み易くなる。
【0010】
上記金属箔または金属メッシュは、熱伝導性組成物のポンプアウトを抑制する機能もある。一般的に、放熱シートは電子部品と熱放散部材から圧縮応力を受ける様に組み込まれる。本発明の樹脂成分及び低融点金属は熱軟化もしくは熱溶融するが、その際、圧縮応力により熱伝導性組成物は電子部品と熱放散部材の接触面よりはみ出すと同時に厚みが薄くなるが、この際中間層と熱伝導性組成物間に摩擦力が働くので、中間層がない場合に比較して上記はみ出しを抑制することができる。また、同様の摩擦力により液状成分がしみ出すこと(ポンプアウト)も抑制できる。さらに中間層が金属メッシュである場合には、金属メッシュの開口部に熱伝導性組成物が埋め込まれる形となっていることから、より効果的にポンプアウトを抑制することができる。
【0011】
本発明の放熱部材の全体の厚みは40〜500μmの範囲である。40μm未満では剛性が不十分であるので、手作業で放熱部材を取り扱う際に変形し、500μmを越えると熱抵抗が大きくなるので不利となる。
本発明の熱伝導性組成物の熱伝導率は0.5W/mK以上であることが好ましく、低融点金属粉末が溶融状態で有る無しに関わらず80℃における粘度が1×10〜1×10Pa・sの範囲であることが好ましい。熱伝導率が0.5W/mK未満では、電子部品とヒートシンクの間の熱伝導性が低くなり充分な放熱性能が発揮されないので、特に1.0W/mK以上であることが好ましい。
また、80℃における粘度が1×10Pa・s未満では、電子部品とヒートシンクの間から液状成分がポンプアウトする場合があり、1×10Pa・sを越えると加工性の面で不利になり易い上、電子部品とヒートシンクの間隔が薄くならず、熱伝導性が低くなるので充分な放熱性能が発揮されない。
【0012】
本発明の熱伝導性組成物の媒体(マトリックス)となり得るシリコーン樹脂は、放熱部材が実質的に常温で個体(非流動性)であって、40℃〜発熱性電子部品の発熱による最高到達温度以下、具体的には40〜150℃程度、特に40〜120℃程度の温度範囲において、熱軟化、低粘度化または融解して流動化するものの中から適宜選択することが出来る。このシリコーン樹脂は放熱部材が熱軟化を起こす一つの因子ではあるが、熱伝導性を付与する充填材のバインダーとしての役割を果たすものである。
【0013】
ここで、本発明における熱軟化、低粘度化又は融解する温度は放熱部材としてのものであり、シリコーン樹脂自体は40℃未満に融点をもつものであってもよい。熱軟化を起こす媒体は、上記したようにシリコーン樹脂の中から適宜選択されるが、常温で非流動性を維持するために、RSiO3/2単位(以下、T単位と称する)及び/又はSiO単位(以下Q単位と称する)を含んだ重合体、これらとRSiO単位(以下D単位と称する)との共重合体等が例示される。これらの(共)重合体の末端はRSiO1/2単位(M単位)で封鎖されていても良い。また、更にD単位からなるシリコーンオイルやシリコーン生ゴムを添加してもよい。これらの中でも、T単位とD単位を含む樹脂、T単位を含むシリコーン樹脂と25℃における粘度が100Pa・s以上のシリコーンオイル又はシリコーン生ゴムの組み合わせが特に好ましい。
【0014】
ここで、上記Rは炭素数1〜10、好ましくは1〜6の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキシニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えば、クロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。これらの中でも、特にメチル基、フェニル基、ビニル基が好ましい。
【0015】
更にシリコーン樹脂について具体的に説明すると、通常、T単位及び/又はQ単位を含むシリコーン樹脂は、M単位とT単位、或いはM単位とQ単位で設計することが行われている。本発明においては、固形時の強靱性に優れ、脆さを改善して取り扱い時の破損等を防止する観点から、T単位を導入することが有効であり更にD単位を用いることが好ましい。ここで、T単位の置換基(R)としては、メチル基及びフェニル基が好ましく、D単位の置換基としては、メチル基、フェニル基、及びビニル基が好ましい。また、上記T単位とD単位の比率は、10:90〜90:10、特に20:80〜80:20とすることが好ましい。
【0016】
なお、通常用いられるM単位とT単位、或いはM単位とQ単位とから合成されたレジンであっても、T単位を含み、これに主としてD単位からなる(末端はM単位)高粘度オイル(100 Pa・s以上)もしくは生ゴム状の化合物を混合することによって脆さを改良したり、ヒートショックをかけた場合のポンピングアウト(充填材とベースシロキサンとの分離による気泡の生成或いはベースシロキサンの流出)を防止することができる。したがって、T単位を含むがD単位を含まないシリコーン樹脂を用いる場合には、このシリコーン樹脂にD単位を主成分とする高粘度オイル又は生ゴム状の化合物を添加することが好ましい。
【0017】
上記のように、軟化点を有するシリコーン樹脂がT単位を含んでD単位を含まない場合には、上記理由によりD単位を主成分とする高粘度オイルもしくは生ゴム等を添加すれば取り扱い性に優れた材料となり得る。この場合、D単位を主成分とする高粘度オイル又は生ゴム状の化合物等の添加量は、常温より高い温度に軟化点もしくは融点を有するシリコーン樹脂100重量部に対して1〜100重量部、特に2〜10重量部とすることが好ましい。1重量部未満の場合にはポンピングアウト現象が発生する可能性が高く、100重量部を越えると放熱性能が低減するおそれがある。
【0018】
上記したように、シリコーン樹脂は、ある程度粘度低下を発生させればよく、また充填材のバインダーとなり得ればよいので、その分子量は500〜20,000、特に1,000〜10,000であることが好ましい。
なお、本発明で使用するシリコーン樹脂は、本発明の放熱部材に柔軟性やタック性を付与するものが好ましいので、単一の粘度の重合体を使用しても良いが、粘度の異なる2種類以上の重合体等を混合して使用した場合には、バランスに優れたシートが得られて有利となるため、粘度の異なる2種類以上を用いてもよい。
【0019】
本発明の放熱部材は、一度熱軟化、低粘度化又は融解した後に架橋させることが好ましく、これによりリワーク性を向上させることができる。即ち、一度熱軟化することによって、発熱性電子部品と放熱部品とに本組成物が密着した後、架橋させることによって低熱抵抗性を維持したまま追随し、かつリワークが必要な際には、架橋している為に容易に剥がすことができる。また架橋させることにより、その軟化点を超えた状態においても形状を維持することができるので、高い温度でも熱放散部材としての役割を果たすことが可能となる。かかる点から、本発明の放熱部材は、架橋反応によって硬化したものであることが好ましい。このような目的のためには、シリコーン樹脂は硬化反応性官能基を有していることが好ましい。このような官能基としては、通常、脂肪族不飽和基、シラノール基、アルコキシシリル基等が挙げられる。
【0020】
本発明に使用される熱伝導性充填剤は、成分(1)と成分(2)の2つに分類される。成分(1)は放熱部材の実質的な相転移をにない、凸凹に影響されることなく発熱性部品および放熱部品の表面に溶融密着し、界面抵抗の著しい低下や、他の充填材もしくは自身と接合することによって高い放熱性を発揮する。
成分(1)は通常低融点金属と称され、本発明ではこれをアトマイズされた粉末として使用する。この低融点金属粉末の融点は、40℃以下では取り扱いが難しいし、250℃以上に加熱すると配置される発熱性部品や放熱部品等にダメージを与える可能性があるため、40〜250℃の範囲である必要があるが、特に100〜220℃であることが好ましい。低融点金属粉末の平均粒径は0.1〜100μmの範囲である必要があり、特に20〜50μmであることが好ましい。またこの粉末の形状は、球状であっても不定形であっても良い。0.1μmより小さいと得られる組成物の粘度が高くなりすぎるため伸展性の乏しいものとなり、シート又はフィルム等の形成が難しくなる。平均粒径が100μmより大きくなると、得られる組成物が不均一になる上、シート又はフィルム等の形成時にその表面が粗くなる可能性がある。
【0021】
成分(1)の低融点金属粉末は、インジウム、錫などの金属単体であっても、各種金属の合金であっても良い。合金としては、ビスマス、鉛、錫、あるいはアンチモンからなるマロット合金、セロマトリックス合金、あるいは錫、鉛、ビスマス、インジウム、カドニウム、亜鉛、銀、アンチモンから成る、ハンダ、ウッドメタル、セロトルー合金、さらにアルミニウム、亜鉛、錫、鉛、カドニウムなどからなるアルミハンダなどがある(化学便覧基礎編改定4版:日本化学会編 平成5年9月30日発行 PI−547)。
【0022】
成分(2)の熱伝導性充填剤は、相転移をせず、単純に熱伝導性を付与するためのものである。その平均粒径は0.1〜100μmの範囲である必要があり、特に20〜50μmであることが好ましい。成分(2)の熱伝導性充填剤の平均粒径が0.1μmより小さいと、得られる組成物の粘度が高くなりすぎるため伸展性の乏しいものとなり、シート又はフィルム等の形成が難しくなる。また、平均粒径が100μmより大きくなると、得られる組成物が不均一になる上シート又はフィルム等の形成時にその表面が粗くなり、更には電子部品と放熱部品との間隙が大きくなるため十分な放熱性能を発現することができなくなる。
【0023】
成分(2)の充填材は、熱伝導率が良好で融点が250℃を超えるものであれば特に限定されず、例えばアルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末、アルミナ粉末、窒化硼素粉末、窒化アルミニウム粉末、窒化珪素粉末、銅粉末、銀粉末、ダイヤモンド粉末、ニッケル粉末、亜鉛粉末、ステンレス粉末、カーボン粉末等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの充填剤の形状は、球状であっても不定形状であっても良く、単独で用いても2種類以上を混合して用いても良い。
【0024】
成分(1)と(2)の総量はシリコーン樹脂100重量部に対して1,000〜3,000重量部であり、(1)/((1)+(2))=0.2〜1.0となるように成分(1)および成分(2)を配合する。成分(1)と(2)の総量が、1,000重量部より少ないと得られる組成物の熱伝導性が乏しくなり、また3,000重量部より多いと加工性が悪くなる。本発明においては、特に1,500〜2,500重量部であることが好ましい。また(1)/((1)+(2))が0.2より小さいと、相転移後の放熱特性の向上をあまり期待することができない。
本発明においては成分(2)を用いず、成分(1)だけを用いても放熱部材を形成することは可能であるが、成分(1)と成分(2)とを併用することにより、放熱部材の放熱性能、シート加工性、作業性などをさらに向上させることができる。
【0025】
本発明においては、使用する熱伝導性充填剤の表面に存在する酸化膜を除去し、よりその充填剤の特性を向上させるために、フラックス成分を熱伝導性組成物に配合することが有効である。また、フラックス成分を金属箔や金属メッシュにあらかじめ塗布し、その両面に熱伝導性組成物層を形成させた後、該熱伝導性組成物層表面にもフラックス成分を塗布することにより、中間層と組成物層並びに電子部品等と組成物層表面(放熱部材表面)の両方の密着性を向上させることもできる。
【0026】
フラックス成分は大きく分けて、無機系、有機系、樹脂系の3つに分けられる。無機系のフラックス成分としては正リン酸、塩酸、臭化水素酸、弗酸等の無機酸系、塩化亜鉛、塩化第一スズ、塩化アンモニウム、弗化アンモニウム、弗化ナトリウム、塩化亜鉛/塩化アンモニウム=75/25等の無機酸系のもの等がある。有機系のフラックス成分の具体例としては、蟻酸、酢酸、オレイン酸、ステアリン酸、アジピン酸、乳酸、グルタミン酸等の有機酸系、蟻酸アンモニウム、メチルアミン乳酸塩等の有機酸塩系、エチレンジアミン等のアミン系、メチルアミン塩酸塩、ブチルアミン臭化水素酸塩、エチレンジアミン塩酸塩、トリエタノールアミン塩酸塩、塩酸アニリン等のアミンハロゲン化水素酸塩系等がある。樹脂系のフラックス成分としては、ロジン、活性ロジン等がある。
【0027】
特に、本発明の放熱部材用組成物には、配合混練しやすく、溶剤に溶け、成形した放熱部材表面に塗布することが容易な、有機酸系もしくは樹脂系のフラックスを用いることが好ましい。フラックスの熱伝導性組成物への配合量は、シリコーン樹脂100重量部に対して0.05重量部より少ないと効果が薄く、40重量部より多くても効果が増大することがないので、0.05〜40重量部の範囲であることが好ましく、特に0.1〜30重量部であることが好ましい。
本発明の放熱部材には、任意成分として通常合成ゴムに使用される各種添加剤または充填剤等を、本発明の目的を損なわない範囲で用いることができる。
【0028】
具体的には、離型剤としてシリコーンオイル、フッ素変性シリコーン界面活性剤、着色剤としてカーボンブラック、二酸化チタン、ベンガラなど、難燃性付与剤として白金触媒、酸化鉄、酸化チタン、酸化セリウムなどの金属酸化物、或いは金属水酸化物、加工性向上剤としてプロセスオイル、反応性シラン若しくはシロキサン、反応性チタネート触媒、反応性アルミ触媒などを添加してもよい。
【0029】
本発明は、上記の各成分をドウミキサー(ニーダー)、ゲートミキサー、プラネタリーミキサーなどのゴム混練機を用い、低融点金属粉末の融点以下の温度で配合混練することによって、容易に製造できる。低融点金属粉末の融点以上の温度で配合混練すると、低融点金属粉末が溶融する為に不均一になるだけでなく、混練後の低融点金属粉末の粒径が大きくなるため、上記したような問題が生じることがある。
【0030】
本発明の放熱部材は、上記熱伝導性組成物と金属箔または金属メッシュを共押し出し成型、プレス成型、コーティング成型により複合シート状に成型することにより得ることができる。コーティング成型の場合には、熱伝導性組成物を加熱溶融するか、溶剤に溶解して塗工液とすることが好ましい。溶剤としてはトルエン、キシレン、シンナー、ゴム揮などを用いることができる。また加熱溶融する際には、配合混練時と同様に低融点金属粉末の融点以下の温度で行う。
【0031】
【実施例】
以下、実施例を掲げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。尚、本発明の放熱部材の組成物を形成する、以下の各成分を用意した。
中間層:アルミニウム箔 50μm
シリコーン樹脂:D25Φ 55Vi 20で表される軟化点が30〜50℃のシリコーンレジン
但しDはMeSiO2/2、TΦはPhSiO3/2、DViはViMeSiO2/2であり、Meはメチル基、Phはフェニル基、Viはビニル基をそれぞれ表す。また、D、TΦ、DViの比率はモル%である。
【0032】
熱伝導性充填材
成分(1):低融点金属粉末
1−1:平均粒径18.4μmのインジウム〔融点156.7℃〕粉末
1−2:平均粒径47.6μmのインジウム〔融点156.7℃〕粉末
1−3:平均粒径26.9μmの錫(42重量%)/ビスマス(58重量%)の合金〔融点139℃〕粉末
1−4:平均粒径110μmのインジウム〔融点156.7℃〕粉末
成分(2):金属フィラー
2−1:平均粒径7.4μmのアルミニウム粉末
2−2:平均粒径1.0μmの酸化亜鉛粉末
2−3:平均粒径10.0μmのニッケル粉末
2−4:平均粒径120μmのアルミニウム粉末
【0033】
フラックス:ロジンを主成分とするゲル
上記成分を表1(実施例)及び表2(比較例)の配合となるようにプラネタリ−ミキサーに投入し、70℃(成分(1)の融点以下)で1時間攪拌混合した。次に、得られたコンパウンドを上記アルミニウム箔の両面に同じ厚みでコーティングし、全体の厚みが300μmになるように、放熱部材を所定の形状に成形した。
シート成形時の表面状態は、表面粗さ測定器(株式会社ミツトヨ、型式;Sufect−501)を用いて、算術平均粗さ(カットオフ値:λc=8mm)により評価した。
【0034】
次に、二枚の標準アルミプレートに上記の放熱部材を挟み、約1.80kg/cmの圧力をかけながら、170℃で15分間加熱した。上記のようにして熱抵抗の測定サンプルを調製した後に、二枚の標準プレートごと厚みを測定し、予め厚みが分かっている標準アルミプレートの厚みを差し引くことによって、実質的なシートの厚みを測定した。尚、上記組成物の測定に際しては、マイクロメーター(株式会社ミツトヨ、型式;M820−25VA)を用いた。また、最終組成物の熱抵抗を熱抵抗測定器(ホロメトリックス社製のマイクロフラッシュ)を用いて測定した。
【0035】
【表1】
Figure 2004039829
【0036】
【表2】
Figure 2004039829
【0037】
実施例7.
実施例2で得られた放熱部材(厚み300μm)を直径12.7mmの円形に切り抜き、2枚のガラスプレートに挟み込んだ(図1)。次いで、上記2枚のガラスプレートをクリップで挟むことにより放熱部材に1.8kg/cmの圧力をかけながら、下記のヒートショック試験を行い、ポンピングアウト性の評価を行った。得られた結果は表3に示した通りである。
ヒートショック試験:
1サイクルを(125℃/15分→25℃/10分→−50℃/15分→25℃/10分)とし、これを25サイクル行う。
ポンピングアウトの評価:
初期の状態からどれだけ外周へ滲み出したかを直径の4方向の平均で比較した(図2参照)。
ポンピングアウト比=(ヒートショック後の直径4方向の長さ平均)/(初期直径4方向の長さ平均:12.7mm)
【0038】
比較例6.
実施例2で使用した組成物を、アルミニウム箔を用いることなく、その組成物だけでシート化して試料とした(厚み250μm)他は、実施例7と同様にしてポンピングアウト比を求めた。結果は表3に示した通りである。
【0039】
比較例7.
市販の熱伝導性シリコーングリース(G746:信越化学工業(株)の商品名)を50μm厚にして試料とした他は、実施例7と同様にしてポンピングアウト比を求めた。結果は表3に示した通りである。
【0040】
【表3】
Figure 2004039829
表1、表2、表3の結果は本発明の有効性を実証するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】ポンピングアウト性評価の為の装置の概念図である。
【図2】ポンピングアウト比の為の説明図である。

Claims (9)

  1. 動作時に室温より高温となる発熱性電子部品と該発熱性電子部品から発生した熱を放熱する為の放熱部品との間に狭持される放熱部材において、該放熱部材が、厚さが1〜50μmでありかつ熱伝導率が10〜500W/mKである金属箔及び/又は金属メッシュを中間層とし、その中間層の両面に、シリコーン樹脂100重量部と熱伝導性充填剤1,000〜3,000重量部を含有する熱伝導性組成物からなる層を、全体の厚さが40〜500μmの範囲となるように形成させてなる放熱部材であり、前記発熱性電子部品動作以前の室温では非流動性であると共に、電子部品動作時の発熱によって、樹脂および低融点金属の相転移に基づく低粘度化、軟化、若しくは溶融が生じ、前記電子部品と放熱部品との境界に実質的に空隙なく充填される放熱部材であって、前記熱伝導性充填剤として、溶融温度が40〜250℃であると共に平均粒径が0.1〜100μmである低融点金属粉末(1)、及び溶融温度が250℃を越えると共に平均粒径が0.1〜100μmである熱伝導性粉末(2)が、(1)/〔(1)+(2)〕=0.2〜1.0となるように含有されてなることを特徴とする放熱部材。
  2. 前記シリコーン樹脂が、分子中にRSiO3/2単位(T単位)とRSiO2/2単位(D単位)(Rは炭素数1〜10の非置換又は置換一価炭化水素基)を含有するシリコーン樹脂を含む、請求項1に記載された放熱部材。
  3. 前記シリコーン樹脂が、分子中にRSiO3/2単位(T単位)(Rは炭素数1〜10の非置換又は置換一価炭化水素基)を含有するシリコーン樹脂を含むと共に、25℃における粘度が100Pa・s以上のシリコーンオイル又はシリコーン生ゴムを含有する、請求項1又は2に記載された放熱部材。
  4. 前記熱伝導性組成物がシリコーン樹脂100重量部に対してフラックス成分を0.05〜40重量部含有する、請求項1乃至3の何れかに記載された放熱部材。
  5. 前記熱伝導性組成物の熱伝導率が0.5W/mK以上であると共に、低融点金属粉末が溶融状態で有る無しに関わらず、80℃における粘度が1×10〜1×10Pa・sの範囲である、請求項1乃至4の何れかに記載された放熱部材。
  6. 前記中間層が表面にフラックスを塗布された中間層であると共に、該中間層の両面に形成された熱伝導組成物の表面にフラックス成分が塗布されてなる、請求項1〜5の何れかに記載された放熱部材。
  7. 前記中間層がアルミニウム合金、マグネシウム合金、銅、鉄、ステンレス、銀、金、タングステンから選ばれた金属からなることを特徴とする、請求項1乃至6の何れかに記載された放熱部材。
  8. シリコーン樹脂100重量部及び熱伝導性充填剤1,000〜3,000重量部を含有する熱伝導組成物を金属箔及び金属メッシュの中から選択された中間層の両面に塗布する放熱部材の製造方法であって、前記熱伝導性充填剤が、溶融温度が40〜250℃であると共に平均粒径が0.1〜100μmである低融点金属粉末(1)、及び溶融温度が250℃を越えると共に平均粒径が0.1〜100μmである熱伝導性粉末(2)を、(1)/〔(1)+(2)〕=0.2〜1.0となるように含有すると共に、前記熱伝導性組成物の調製を前記低融点金属粉末の融点以下の温度で配合混練することによって行うことを特徴とする放熱部材の製造方法。
  9. 請求項1〜7に記載された何れかの放熱部材を、発熱性電子部品及び該電子部品から発生した熱を放熱させる為の放熱部品との間に敷設する方法であって、前記シートを敷設するにあたり、低融点金属粉末(1)の融点以上の熱を一時的に加えることを特徴とする放熱部材の敷設方法。
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