JP2004038002A - 投影用スクリーンおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】映写環境に影響されずに、明瞭な画像を得ることが可能となるだけでなく、視野特性を向上させることができる投影用スクリーンを提供する。
【解決手段】基板11の表面に、光拡散部として複数の凸部11Aが形成される。基板11の上には光学薄膜12が形成され、この光学薄膜12の表面に基板11の凸部11Aと同じ形状の凸部12Aが形成される。三原色波長域光とともに外光が光学薄膜12に入射した場合、光学薄膜12では三原色波長域光のみが反射され、外光のうち少なくとも可視波長域光は基板11に吸収される。ここで三原色波長域光が光学薄膜12に例えば垂直に入射する場合、光学薄膜12の凸部12Aによって、三原色波長域光が光学薄膜12に対して所定の入射角度θを有することとなり、三原色波長域光が所定の比率で、拡散反射光として反射角度2θで散乱されるのでスクリーンの視野角が拡がる。
【選択図】    図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光源からの光を受けて画像を表示する投影用スクリーンおよびその製造方法に係り、特に反射方式の投影用スクリーンおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、会議等では発表者が資料を提示する手段としてオーバーヘッドプロジェクタやスライドプロジェクタが広く用いられ、一般家庭ではビデオプロジェクタや動画フィルムプロジェクタが普及しつつある。これらプロジェクタ装置では、光源から出力された光がライトバルブ(Light Valve )により空間的に変調されて画像光とされ、この画像光がレンズ等の照明光学系を通じて投影用スクリーン上に投影される。
【0003】
この種のプロジェクタ装置にはカラー画像を表示させることができるものがあり、光源として三原色である赤色(Red =R),緑色(Green =G),青色(Blue=B)を含んだ白色光を発するランプが用いられ、ライトバルブとしては透過型の液晶パネルが用いられている。このプロジェクタ装置では、光源から出射された白色光が、照明光学系によって赤色光、緑色光および青色光の各色の光線に分離され、これらの光線が所定の光路に収束される。これら光束が液晶パネルにより画像信号に応じて空間的に変調され、変調された光束が光合成部によってカラー画像光として合成され、合成されたカラー画像光が投影レンズにより投影用スクリーンに拡大投射される。
【0004】
また、最近、カラー画像を表示させることが可能なプロジェクタ装置として、光源に狭帯域三原色光源、例えば三原色の各色の狭帯域光を発するレーザ発振器を用い、ライトバルブに回折格子型ライトバルブ(GLV:Grating Light Valve )を用いた装置が開発されている。このプロジェクタ装置では、レーザ発振器により出射された各色の光束が画像信号に応じてGLVにより空間的に変調される。このように変調された光束は前述したプロジェクタ装置と同様にして、光合成部によってカラー画像光として合成され、この合成されたカラー画像光が投影レンズにより投影用スクリーンに拡大投射される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、プロジェクタ装置に用いられる投影用スクリーンは、その背面側から投影光を照射して前面側から見る透過方式と、前面側から投影光を照射しその反射した光を前面側から見る反射方式とに分けられる。いずれの方式においても、視認性の良好なスクリーンを実現するために、明るくて、かつ、コントラストの高い画像を得ることが望まれている。
【0006】
しかし、反射方式の投影用スクリーンを用いたフロント式のプロジェクタ装置は、自発光型ディスプレイやリアプロジェクタ装置とは異なり、例えばNDフィルタを用いて外光の映り込みを低減することができず、特に映写環境が明るい場合には、投影用スクリーン上における明暗のコントラストを高くすることが困難であるという問題があった。
【0007】
このような問題を解決するために、図10に示したように、いわゆる帯域フィルタとしての機能を有する光学薄膜112が形成された投影用スクリーン100が提案されている(特願2002−070799号)。この投影用スクリーン100は、光吸収層としての機能を有するスクリーン基板111を備え、このスクリーン基板111の上に光学薄膜112が形成されている。この光学薄膜112は、特定波長帯の光に対して高反射特性を有すると共に、少なくともこの特定波長域光以外の可視波長域光に対して高透過特性を有する誘電体多層膜である。この誘電体多層膜の各膜厚はマトリクス法に基づいたシミュレーションにより設計されている。光学薄膜112の上には、光学薄膜112で反射された特定波長帯の光を散乱するための光拡散層113が形成されている。この光拡散層113は、ビーズを配列したり、マイクロレンズアレーが形成されたフィルムを用いたりする等の一般的な手法で形成される。
【0008】
このような構成を有する投影用スクリーン100では、プロジェクタ装置から照射された光のうち特定波長帯の光が光学薄膜112で反射され、この反射された光が光拡散層113で散乱されて画像が形成される。他方、プロジェクタ装置から照射された光のうち特定波長帯以外の光は光学薄膜112を透過し、スクリーン基板111に吸収される。このように投影用スクリーン100は、光学薄膜112が帯域フィルタとして機能することにより明暗のコントラストを高めることができるので、映写環境が明るい場合でも明瞭な画像を得ることができる。
【0009】
しかしながら、投影用スクリーン100において、前述したように光拡散層113を従来のものと同様な構成とすると、視野角が20度程度しか得られず、十分な視野特性を得ることができないという問題があった。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、映写環境に影響されずに、明瞭な画像を得ることが可能となるだけでなく、視野特性も向上させることができる投影用スクリーンおよびその製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明による投影用スクリーンは、基板と、基板の表面に形成され、複数の凸部または複数の凹部を有する光拡散部と、光拡散部の上に形成され、光拡散部の凸部または凹部と同じ形状を有すると共に、特定の波長領域の光に対して高反射特性を有し、前記波長領域以外の少なくとも可視波長領域の光に対して高透過特性を有する光学薄膜とを備えたものである。
【0012】
本発明による投影用スクリーンの製造方法は、基板の表面に、複数の凸部または複数の凹部を有する光拡散部を形成する工程と、光拡散部の上に、光拡散部の凸部または凹部と同じ形状を有すると共に、特定の波長領域の光に対して高反射特性を有し、前記波長領域以外の少なくとも可視波長領域の光に対して高透過特性を有する光学薄膜を形成する工程とを含むものである。
【0013】
本発明による投影用スクリーンまたはその製造方法では、基板の表面に、光拡散部が複数の凸部または複数の凹部を有するように形成され、これら凸部または凹部により光学薄膜がこれらの構造と同じ形状を有するように形成されるようにしたので、光学薄膜に特定の波長領域の光が入射した場合、この波長領域の光が光学薄膜に対して所定の入射角度を有することとなり、この波長領域の光が所定の比率で、その所定の入射角度の倍の角度で拡散反射光として散乱され、これによってスクリーンの視野角が拡がる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態に係る投影用スクリーン10の一部の断面構成を表すものである。図2は投影用スクリーン10の斜視図である。図3は図1のの一部分を拡大したものである。なお、図2は投影用スクリーン10の光学薄膜12より上の構成要素を省略している。この投影用スクリーン10はいわゆる反射方式のスクリーンである。投影用スクリーン10は基板11を備えている。この基板11の表面には光拡散部として凸部11Aが複数個形成されており、これら凸部11Aにより光学薄膜12で反射される光が、所定の比率で拡散反射光として散乱される。これについては後述する。基板11の上には、いわゆる帯域フィルタとしての機能を有する光学薄膜12が形成されている。この光学薄膜12は基板11の凸部11Aと同じ形状の凸部12Aを有する。光学薄膜12の上には保護膜13が形成されている。
【0016】
基板11は、その表面に複数個の凸部11Aが形成されており、これら凸部11Aの間は平坦面となっている。凸部11Aは例えば表面が球面であり、その曲率半径が数μm〜数mm程度である。凸部11Aにおいて、その形状、曲率半径r、配置、面積比および表面性等は、光学シミュレーション等により設計されている。この基板11の凸部11Aは光学薄膜12で反射される光を所定の比率で拡散反射光として散乱させる機能を有している。
【0017】
また、基板11は、例えば黒色塗料等を含んだ高分子材料から構成されている。高分子材料としては、例えばポリカーボネイト(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、あるいはポリオレフィン(PO)が挙げられる。この基板11は黒色塗料を含み黒色となっているので、光学薄膜12を透過した光を吸収する光吸収層としての機能を有しており、これによってスクリーンの黒レベルが高められ明暗のコントラストが向上する。
【0018】
光学薄膜12は、高い屈折率を有する誘電体材料からなる高屈折率膜12Hと、この高屈折率膜12Hよりも低い屈折率を有する誘電体材料からなる低屈折率膜12Lとが交互に積層された誘電体多層膜である。高屈折率膜12Hの誘電体材料としては、例えば五酸化ニオブ(Nb2 5 )、二酸化チタン(TiO2 )あるいは五酸化タンタル(Ta2 5 )、低屈折率膜12Lの誘電体材料としては、例えば二酸化シリコン(SiO2 )あるいはフッ化マグネシウム(MgF2 )が挙げられる。
【0019】
光学薄膜12の各膜は、基板11の凸部11Aと同じ形状の凸部12Aを有するように形成されている。また、光学薄膜12の各膜厚は、マトリクス法に基づいたシミュレーションによって、例えば赤色、緑色および青色の各色の波長領域の光からなる三原色波長域光に対して高反射特性を有すると共に、この三原色波長域光の波長領域以外の少なくとも可視波長域光に対して高透過特性を有するように設計されている。具体的には、光学薄膜12は、波長が630nm程度である赤色光、波長が540nm程度である緑色光、および波長が460nm程度である青色光のそれぞれに対して高反射特性を有し、それ以外の少なくとも可視波長域光に対して高透過特性を有するものとなっている。誘電体多層膜の各膜の厚さは例えば80nm以上200nm以下である。
【0020】
このような構成を有する光学薄膜12に三原色波長域光が例えば垂直に入射すると、光学薄膜12の凸部12Aにより、三原色波長域光が光学薄膜12に対して所定の入射角度を有することとなるので、その三原色波長域光は所定の比率で、その入射角度の倍の反射角度で拡散反射光として散乱される。すなわち、図3に示したように、三原色波長域光の拡散反射光は、境界点11aと凸部11Aの球面の中心とを結ぶ直線と基板11の平坦面の法線とのなす角度θに因り、その反射角度は角度2θとなる。このように三原色波長域光は、所定の比率で拡散反射光として反射角度2θで散乱されるのでスクリーンの視野角が拡がる。なお、境界点11aは、基板11の凸部11Aと平坦面との境界である。
【0021】
保護膜13は光学薄膜12を保護するためのものである。この保護膜13は、光学薄膜12の表面と同じ形状に形成されている。なお、この保護膜13は平坦な表面としてもよい。
【0022】
次に、このような構成を有する投影用スクリーン10の製造方法について説明する。まず、黒色塗料を含ませた高分子材料からなる基板11を用意する。この基板11の表面に例えばエンボス加工を施すことにより複数の凸部11Aを形成する。これら凸部11Aの形状、曲率半径rの大きさ、配置、面積比および表面性等は光学シミュレーション等を用いて設計する。この凸部11Aは、光学薄膜12で反射される光を所定の比率で拡散反射光として散乱させる機能を有しているので、凸部11Aを適宜設計することにより、光学薄膜12での拡散反射光の反射角度の範囲を制御することが可能となる。なお、基板11の表面のうち凸部11Aの間は平坦面とする。
【0023】
次に、基板11の上に、例えばスパッタリング法によって、光学薄膜12を形成する。このとき、光学薄膜12が基板11の凸部11Aと同じ形状の凸部12Aを有するようにする。また、光学薄膜12は誘電体多層膜とし、この誘電体多層膜を高屈折率膜12Hと、この高屈折率膜12Hよりも低い屈折率を有する低屈折率膜12Lとを交互に積層したものとする。このような光学薄膜12の各膜厚は、マトリクス法に基づいたシミュレーションを用いて、この光学薄膜12が例えば三原色波長域光に対して高反射特性を有すると共に、この三原色波長域光以外の少なくとも可視波長域光に対して高透過特性を有するように設計する。最後に、光学薄膜12の上に保護膜13を形成することによって、図1に示した投影用スクリーン10が完成する。
【0024】
このように本実施の形態では、基板11に凸部11Aを形成し、この凸部11Aに、光学薄膜12で反射される光を所定の比率で拡散反射光として散乱させる機能を有するようにしたので、この基板11の上に凸部11Aと同じ形状の凸部12Aを有する光学薄膜12を形成することができ、これによってシンプルな構成を有するスクリーンを作製することができる。
【0025】
ここで、光学薄膜12を設計するときに用いるマトリクス法に基づいたシミュレーションの概要について説明する。このシミュレーションでは、例えば基板の上に形成された誘電体多層膜をモデルとして用いる。この誘電体多層膜のモデルにおいて、誘電体多層膜の表面に光源から或る角度で所定の光が入射すると仮定すると、誘電体多層膜の各膜の境界で多重反射が生じるが、このように多重反射した光は、光源の波長や誘電体多層膜の各膜の厚さおよび屈折率に依存して互いに干渉し合う。
【0026】
このような誘電体多層膜のモデルにマトリクス法を適用する。すなわち、光の波長や、基板の厚さおよび屈折率、誘電体多層膜の各膜の厚さおよび屈折率、誘電体多層膜の表面への入射光の角度などをパラメータとして用い、マクスウェル方程式やスネルの法則などの光学法則が誘電体多層膜の各膜での境界条件を満足するようにマトリクス演算を行う。これによって、所定の光に対する誘電体多層膜の透過率および反射率等の光学特性が求められ、誘電体多層膜の設計を行うことができる。
【0027】
このような構成を有する投影用スクリーン10は、例えばGLVを用いたフロント式のプロジェクタ装置20のスクリーンに適用される。図4は、このプロジェクタ装置20の概略構成を表すものである。プロジェクタ装置20は、光源として三原色の各色の波長領域からなる三原色狭帯域光を出射するレーザ発振器21を備えている。レーザ発振器21は、例えば波長が642nmである赤色光を出射するレーザ発振器21R、波長が532nmである緑色光を出射するレーザ発振器21G、および波長が457nmである青色光を出射するレーザ発振器21Bから構成されている。
【0028】
また、プロジェクタ装置20は、レーザ発振器21から出射された光を画像光として投影用スクリーン10に導くための照明光学系として、コリメータレンズ22、シリンドリカルレンズ23、GLV24、体積型ホログラム素子25、ガルバノミラー26および投影レンズ27を備えている。コリメータレンズ22は、赤色光用のコリメータレンズ22R、緑色光用のコリメータレンズ22G、および青色光用のコリメータレンズ22Bから構成される。GLV24は、赤色光用のリボン列24R、緑色光用のリボン列24G、および青色光用のリボン列24Bを備えている。体積型ホログラム素子25は、第1体積型ホログラム素子25aおよび第2体積型ホログラム素子25bから構成されている。
【0029】
なお、プロジェクタ装置20では、レーザ発振器21Rから出射された赤色光、レーザ発振器21Gから出射された緑色光、レーザ発振器21Bから出射された青色光の各色光が、コリメータレンズ22では各色用のコリメータレンズ22R,22G,22Bに入射するように、GLV24では各色用のリボン列24R,24G,24Bに入射するようにこれらの構成要素が配置されている。
【0030】
このような構成を有するプロジェクタ装置20では、レーザ発振器21から出射された赤色光、緑色光および青色光の各光は、コリメータレンズ22を透過することにより平行光となる。このコリメータレンズ22により平行光となった三原色波長域光は、シリンドリカルレンズ23の作用によりGLV24に集光される。これら集光された三原色波長域光は、GLV24の各リボン列が画像信号に応じて独立に駆動されることによって空間的に変調される。
【0031】
GLV24の作用により変調された三原色波長域光は、シリンドリカルレンズ23の作用により体積型ホログラム素子25に集光される。この体積型ホログラム素子25では、第1体積型ホログラム素子25aにより赤色光が回折され、第2体積型ホログラム素子25bにより赤色光および青色光が同じ方向に回折される。また、第1体積型ホログラム素子25aおよび第2体積型ホログラム素子25bでは、緑色光が回折されずに直進して透過し、赤色光と同じ方向に出射される。このようにして体積型ホログラム素子25の作用により、赤色光、緑色光および青色光の各色光が合成されて同じ方向に出射される。同じ方向に合波された三原色波長域光は、ガルバノミラー26により所定の方向に走査され、投影レンズ27を透過して投影用スクリーン10の前面に投射される。
【0032】
投影用スクリーン10では、プロジェクタ装置20から投射された三原色波長域光が保護膜13を通過し、光学薄膜12に入射する。このとき、三原色波長域光とともに外光が光学薄膜12に入射しても、この光学薄膜12では、三原色波長域光のみが反射され、外光のうち少なくとも可視波長域光は吸収光として基板11に吸収される(図3)。これにより、映写環境が明るい場合においても明瞭な画像が得られる。また、光学薄膜12に三原色波長域光が例えば垂直に入射したとき、光学薄膜12の凸部12Aにより、三原色波長域光が光学薄膜12に対して所定の入射角度を有することとなり、その三原色波長域光は所定の比率で、その入射角度の倍の反射角度で拡散反射光として散乱される。
【0033】
図3に示したように、三原色波長域光の拡散反射光の反射角度は、境界点11aと凸部11Aの球面の中心とを結ぶ直線と基板11の平坦面の法線とのなす角度θに因ることから角度2θとなる。すなわち、三原色波長域光は所定の比率で拡散反射光として反射角度2θで散乱されるので、本実施の形態では視野角が拡がり、視野特性が向上する。また、このように拡散反射光の反射角度が基板11の凸部11Aに因るので、この凸部11Aを適宜設計することにより、拡散反射光の反射角度の範囲を制御することが可能となる。
【0034】
このように本実施の形態では、基板11の表面に複数の凸部11Aが形成され、これらの凸部11Aにより、基板11の上に光学薄膜12が同じ形状の凸部12Aを有するように形成されるので、この光学薄膜12の凸部12Aによって、光学薄膜12に入射した三原色波長域光が、光学薄膜12に対して所定の入射角度θを有することとなり、三原色波長域光が所定の比率で、反射角度2θで拡散反射光として散乱され、スクリーンの視野角が拡がる。これによって、映写環境に影響されずに、明瞭な画像を得ることが可能となるだけでなく、視野特性も向上させることができる。また、光学シミュレーション等を用いて、基板11の凸部11Aを適宜設計することにより、拡散反射光の反射角度の範囲を調整することができるので、視野特性を制御することが可能となり、これによって更に視野特性の向上を図ることができる。
【0035】
更に、基板11の表面に形成された凸部11Aが、光学薄膜12で反射される光を所定の比率で拡散反射光として散乱させる機能を有するので、シンプルな構成のスクリーンを作製することが可能となる。その結果、光学特性や視野特性等のバラツキを減少させることができ、信頼性を向上させることが可能となり、製造コストを低減させることができる。
【0036】
〔変形例1〕
上記実施の形態では、基板11の表面に光拡散部として複数の凸部11Aを形成するようにしたが、図5および図6に示したように、基板31の表面に光拡散部として凸部11Aの代わりに凹部31Aを形成するようにしてもよい。なお、図6では光学薄膜32より上の構成要素は省略している。
【0037】
このような基板31を備える投影用スクリーン30は次のようにして製造する。例えば、上記実施の形態と同様に黒色塗料を含ませた高分子材料からなる基板31を用意する。この基板31の表面に、例えばエンボス加工を施すことにより複数の凹部31Aを形成する。これら凹部31Aは、例えばその表面が球面であり、数μm〜数mm程度の曲率半径rを有する。凹部31Aの形状、曲率半径r、配置、面積比および表面性等は、光学シミュレーション等により設計する。このような基板31は、光学薄膜32で反射される光を所定の比率で拡散反射光として散乱させる機能を有しているので、凹部31Aを適宜設計することにより、光学薄膜32での拡散反射光の反射角度の範囲を制御することが可能となる。なお、基板31の表面のうち凹部31Aの間は平坦面とする。
【0038】
次に、基板31の上に、例えばスパッタリング法によって、光学薄膜32を形成する。このとき、光学薄膜32は基板31の凹部31Aと同じ形状の凹部32Aを有するようにする。この光学薄膜32は、高屈折率膜32Hとこの高屈折率膜32Hよりも低い屈折率を有する低屈折率膜32Lとを交互に積層した誘電体多層膜とする。このような光学薄膜32の各膜厚は、マトリクス法に基づいたシミュレーションによって、この光学薄膜32が例えば三原色波長域光に対して高反射特性を有すると共に、この三原色波長域光以外の少なくとも可視波長域光に対して高透過特性を有するように設計する。最後に、光学薄膜32の上に保護膜33を形成することによって、図5に示した投影用スクリーン30が完成する。
【0039】
本変形例では、光学薄膜32における拡散反射光の反射角度は、境界点31aおよび凹部31Aを結ぶ直線と基板31の平坦面の法線とのなす角度θに因り角度2θとなる(図7)。よって、三原色波長域光が角度θで入射すると、その拡散反射光は所定の比率で角度2θの方向に散乱される。この拡散反射光の反射角度2θによって投影用スクリーン30の視野角が決定されることから、基板31の凹部31Aを適宜設計することにより、拡散反射光の反射角度の範囲を制御することが可能となり、視野特性の向上を図ることができる。その他の作用効果は上記実施の形態と同様であるので、その説明は省略する。なお、境界点31aは、基板31の凹部31Aと平坦面との境界である。
【0040】
〔変形例2〕
上記実施の形態では、例えばエンボス加工により基板11の表面に光拡散部として複数の凸部11Aを形成するようにしたが、例えば図8に示したように、基板41の上に光拡散部42を形成するようにしてもよい。この光拡散部42は、複数のビーズ43とこれらのビーズ43の間を固定するビーズ固定層44とにより構成される。
【0041】
ビーズ43は、例えばガラスやポリマー等の透明材料により形成され、例えば数μm〜数mm程度の直径dで均一な大きさの球形状を有しており、等間隔に配置されている。ビーズ固定層44は樹脂等により形成され、ビーズ43の間を固定し接着している。このビーズ固定層44の厚さは、例えばビーズ43の直径dより小さくなっており、これによって光拡散部42の表面には、上記実施の形態の凸部11Aと同様の凸部42Aが形成される。この光拡散部42の上に、上記実施の形態と同様にして、光拡散部42の凸部42Aと同じ形状を有する光学薄膜12および保護膜13を形成すると投影用スクリーン40が完成する。
【0042】
本変形例では、図9に示したように、ビーズ43の直径dに対して、ビーズ固定層44の厚さtを変えることにより視野角を調整することができる。すなわち、光拡散部42の表面における、ビーズ43およびビーズ固定層44の境界を境界点42aとすると、光学薄膜12での拡散反射光の反射は、境界点42aとビーズ43の中心とを結ぶ直線と光拡散部42の平坦面の法線とのなす角度θに因り、その反射角度は角度2θとなる。
【0043】
これによって、ビーズ43の直径dに対して、ビーズ固定層44の厚さtを変えることにより、拡散反射光の反射角度2θが所望の角度となるように適宜設定することが可能となり、所望の視野角を得ることができる。その他の作用効果は上記実施の形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0044】
本変形例では、複数のビーズ43およびビーズ固定層44から光拡散部42を構成し、この光拡散部42が複数の凸部42Aを有するようにしたが、光拡散部42を他のものにより構成するようにしてもよい。例えば、光拡散部をマイクロレンズアレー(MLA)が形成されたフィルムとし、このフィルムが複数の凸部を有するようにしてもよい。
【0045】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態では凸部11Aの表面を球面としたが、それ以外の形状としてもよい。例えば、凸部11Aの表面を楕円形状や非対称の形状としてもよい。これにより、光学薄膜12での拡散反射光の反射角度2θを上下および左右のそれぞれに調整することが可能となる。
【0046】
また、上記実施の形態では、基板11にエンボス加工を施すことにより凸部11Aを形成するようにしたが、例えばエッチング法を用いることにより凸部11Aを形成するようにしてもよい。加えて、上記実施の形態では高分子材料に黒色塗料を含ませることにより、基板11を黒色として三原色波長域光以外の光を吸収させるようにしたが、例えば基板11の裏側に別途黒色塗料からなる光吸収層を形成し、この光吸収層により三原色波長域光以外の光を吸収させるようにしてもよい。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1ないし請求項16のいずれか1項に記載の投影用スクリーンによれば、基板の表面に光拡散部が形成され、この光拡散部が複数の凸部または凹部を有し、これら凸部または凹部と同じ形状を有するように光学薄膜が形成されるようにしたので、光学薄膜に特定の波長領域の光が入射すると、この波長領域の光が光学薄膜に対して所定の入射角度を有することとなる。よって、特定の波長領域の光が光学薄膜において所定の比率で、その所定の入射角度の倍の角度で拡散反射光として散乱され、スクリーンの視野角が拡がる。従って、映写環境に影響されずに、明瞭な画像を得ることができるだけでなく、視野特性も向上させることが可能となる。
【0048】
請求項17ないし請求項31のいずれか1項に記載の投影用スクリーンの製造方法によれば、基板の表面に複数の凸部または凹部を形成することにより光拡散部を形成するようにしたので、この光拡散部の上に凸部または凹部と同じ形状を有するように光学薄膜を形成することにより、シンプルな構成を有するスクリーンを作製することが可能となる。その結果、光学特性や視野特性等のバラツキを減少させることができ、信頼性を向上させることが可能となる。また、製造コストを低減させることが可能となる。
【0049】
特に、請求項19記載の投影用スクリーンの製造方法によれば、基板の表面を加工することにより凸部または凹部を有する光拡散部を形成し、これら凸部または凹部により光学薄膜での反射光の反射角度を制御するように光学シミュレーションを用いて光拡散部を設計するようしたので、反射光の反射角度の範囲を調整することができ、これにより視野特性を制御することが可能となる。従って、視野特性の向上を更に図ることができる。
【0050】
また、請求項22記載の投影用スクリーンの製造方法によれば、基板の表面に光拡散部を形成し、この光拡散部を所定の半径を有する球形状をした複数のビーズと、ビーズ間を固定するビーズ固定層とから構成すると共に、ビーズ固定層の厚さにより光学薄膜で反射される反射光の反射角度を制御するようにしたので、この反射角度の範囲を調整することが可能となり、視野特性を制御することができる。よって、視野特性の向上を更に図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る投影用スクリーンの概略構成図である。
【図2】図1に示した投影用スクリーンの斜視図である。
【図3】図1に示した投影用スクリーンの一部分を拡大した概略構成図である。
【図4】図1に示した投影用スクリーンを用いたプロジェクタ装置の概略構成図である。
【図5】投影用スクリーンの変形例の概略構成図である。
【図6】投影用スクリーンの変形例の斜視図である。
【図7】投影用スクリーンの変形例の一部分を拡大した概略構成図である。
【図8】投影用スクリーンの変形例の概略構成図である。
【図9】投影用スクリーンの変形例の一部分を拡大した概略構成図である。
【図10】投影用スクリーンの比較例の概略構成図である。
【符号の説明】
10,30,40・・・ 投影用スクリーン、11,31,41・・・ 基板、11A,12A,42A・・・ 凸部、12,32・・・ 光学薄膜、12H,32H・・・ 高屈折率膜、12L,32L・・・ 低屈折率膜、13,33・・・ 保護膜、20・・・ プロジェクタ装置、21,21R,21G,21B・・・ レーザ発振器、22,22R,22G,22B・・・ コリメータレンズ、23・・・ シリンドリカルレンズ、24・・・ GLV、24R,24G,24B・・・ リボン列、25・・・ 体積型ホログラム素子、25a・・・ 第1体積型ホログラム素子、25b・・・ 第2体積型ホログラム素子、26・・・ ガルバノミラー、27・・・ 投影レンズ、31A, 32A・・・ 凹部、42・・・ 光拡散部、43・・・ ビーズ、44・・・ ビーズ固定層

Claims (31)

  1. 投影光を受けて画像を表示する投影用スクリーンであって、
    基板と、
    前記基板の表面に形成され、複数の凸部または複数の凹部を有する光拡散部と、
    前記光拡散部の上に形成され、前記光拡散部の凸部または凹部と同じ形状を有すると共に、特定の波長領域の光に対して高反射特性を有し、前記波長領域以外の少なくとも可視波長領域の光に対して高透過特性を有する光学薄膜と
    を備えたことを特徴とする投影用スクリーン。
  2. 前記光拡散部の凸部または凹部は前記基板を加工することにより形成されたものである
    ことを特徴とする請求項1記載の投影用スクリーン。
  3. 前記光拡散部の凸部または凹部により前記光学薄膜での反射光の反射角度が制御されるように、光学シミュレーションによって前記光拡散部が設計されている
    ことを特徴とする請求項2記載の投影用スクリーン。
  4. 前記光拡散部の凸部または凹部は球面を有する
    ことを特徴とする請求項3記載の投影用スクリーン。
  5. 前記光拡散部は、
    所定の半径を有する球形状をした複数のビーズと、
    前記ビーズの間に形成され、前記ビーズ間を固定するビーズ固定層と
    から構成されたことを特徴とする請求項1記載の投影用スクリーン。
  6. 前記ビーズの半径に対して前記ビーズ固定層の厚さが調整されることにより前記光学薄膜での反射光の反射角度が制御される
    ことを特徴とする請求項5記載の投影用スクリーン。
  7. 前記光学薄膜が、高屈折率膜と低屈折率膜とが交互に積層された誘電体多層膜であり、前記誘電体多層膜の各膜の厚さが80nm以上200nm以下であること
    ことを特徴とする請求項1記載の投影用スクリーン。
  8. 前記高屈折率膜がNb2 5 、TiO2 またはTa2 5 からなる
    ことを特徴とする請求項7記載の投影用スクリーン。
  9. 前記低屈折率膜がSiO2 またはMgF2 からなる
    ことを特徴とする請求項8記載の投影用スクリーン。
  10. 前記光学薄膜の透過光を吸収する光吸収層を備えた
    ことを特徴とする請求項1記載の投影用スクリーン。
  11. 前記光吸収層は黒色塗料を含む
    ことを特徴とする請求項10記載の投影用スクリーン。
  12. 前記光吸収層を前記基板が兼ねている
    ことを特徴とする請求項11記載の投影用スクリーン。
  13. 前記基板は高分子材料からなる
    ことを特徴とする請求項12記載の投影用スクリーン。
  14. 前記高分子材料は、ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、またはポリオレフィンである
    ことを特徴とする請求項13記載の投影用スクリーン。
  15. 前記投影光はレーザ光である
    ことを特徴とする請求項1記載の投影用スクリーン。
  16. 前記波長領域は、赤色光の波長領域、緑色光の波長領域および青色光の波長領域を含む
    ことを特徴とする請求項1記載の投影用スクリーン。
  17. 投影光を受けて画像を表示する投影用スクリーンの製造方法であって、
    基板の表面に、複数の凸部または複数の凹部を有する光拡散部を形成する工程と、
    前記光拡散部の上に、前記光拡散部の凸部または凹部と同じ形状を有すると共に、特定の波長領域の光に対して高反射特性を有し、前記波長領域以外の少なくとも可視波長領域の光に対して高透過特性を有する光学薄膜を形成する工程と
    を含むことを特徴とする投影用スクリーンの製造方法。
  18. 前記光拡散部を、前記基板を加工することにより形成する
    ことを特徴とする請求項17記載の投影用スクリーンの製造方法。
  19. 前記光拡散部の凸部または凹部により前記光学薄膜での反射光の反射角度を制御するように、光学シミュレーションによって前記光拡散部を設計する
    ことを特徴とする請求項18記載の投影用スクリーンの製造方法。
  20. 前記光拡散部の凸部または凹部は球面を有する
    ことを特徴とする請求項19記載の投影用スクリーンの製造方法。
  21. 前記光拡散部を形成する工程は、
    所定の半径を有する球形状をした複数のビーズを形成する工程と、
    前記ビーズの間に前記ビーズ間を固定するビーズ固定層を形成する工程と
    を含むことを特徴とする請求項17記載の投影用スクリーンの製造方法。
  22. 前記ビーズの半径に対して前記ビーズ固定層の厚さを調整することにより、前記光学薄膜での反射光の反射角度を制御する
    ことを特徴とする請求項21記載の投影用スクリーンの製造方法。
  23. 前記光学薄膜を、高屈折率膜と低屈折率膜とを交互に積層した誘電体多層膜とし、前記誘電体多層膜の各膜の厚さを80nm以上200nm以下とする
    ことを特徴とする請求項17記載の投影用スクリーンの製造方法。
  24. 前記高屈折率膜をNb2 5 、TiO2 またはTa2 5 により形成する
    ことを特徴とする請求項23記載の投影用スクリーンの製造方法。
  25. 前記低屈折率膜をSiO2 またはMgF2 により形成する
    ことを特徴とする請求項24記載の投影用スクリーンの製造方法。
  26. 前記光学薄膜の透過光を吸収する光吸収層を形成する工程を含む
    ことを特徴とする請求項17記載の投影用スクリーンの製造方法。
  27. 前記光吸収層は黒色塗料を含む
    ことを特徴とする請求項26記載の投影用スクリーンの製造方法。
  28. 前記光吸収層を前記基板が兼ねる
    ことを特徴とする請求項27記載の投影用スクリーンの製造方法。
  29. 前記基板を高分子材料により形成する
    ことを特徴とする請求項28記載の投影用スクリーンの製造方法。
  30. 前記高分子材料は、ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、またはポリオレフィンとする
    ことを特徴とする請求項29記載の投影用スクリーンの製造方法。
  31. 前記波長領域は、赤色光の波長領域、緑色光の波長領域および青色光の波長領域を含む
    ことを特徴とする請求項17記載の投影用スクリーンの製造方法。
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