JP2004061545A - 投影用スクリーンおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】映写環境に影響されずに、明瞭でかつ鮮明な画像を得ることが可能となる投影用スクリーンを提供する。
【解決手段】スピンコーティング等の塗布法を用いて、黒色基板11の上に、熱硬化型樹脂などの溶剤系材料からなる光学多層膜12を形成する。光学多層膜12の各膜厚は、三原色波長域光に対して高反射特性を有すると共に、この三原色波長域光の波長領域以外の少なくとも可視波長域の光に対して高透過特性を有するように設計する。これにより明暗のコントラストが高められる。光学多層膜12の上に角度補正層13を形成し、角度補正層13はフレネルレンズの機能を有する。スクリーン面に対して三原色波長域光が斜め方向から入射しても、角度補正層13により三原色波長域光が回折され、光学多層膜12に垂直な方向に入射する。これにより光学多層膜12で色ずれが生じることが殆どなくなる。
【選択図】 図1
【解決手段】スピンコーティング等の塗布法を用いて、黒色基板11の上に、熱硬化型樹脂などの溶剤系材料からなる光学多層膜12を形成する。光学多層膜12の各膜厚は、三原色波長域光に対して高反射特性を有すると共に、この三原色波長域光の波長領域以外の少なくとも可視波長域の光に対して高透過特性を有するように設計する。これにより明暗のコントラストが高められる。光学多層膜12の上に角度補正層13を形成し、角度補正層13はフレネルレンズの機能を有する。スクリーン面に対して三原色波長域光が斜め方向から入射しても、角度補正層13により三原色波長域光が回折され、光学多層膜12に垂直な方向に入射する。これにより光学多層膜12で色ずれが生じることが殆どなくなる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光源からの光を受けることにより画像を表示する投影用スクリーンおよびその製造方法に係り、特に反射方式の投影用スクリーンおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、会議等では発表者が資料を提示する手段としてオーバーヘッドプロジェクタやスライドプロジェクタが広く用いられ、一般家庭ではビデオプロジェクタや動画フィルムプロジェクタが普及しつつある。これらプロジェクタ装置では、光源から出力された光がライトバルブ(Light Valve )により空間的に変調されて画像光とされ、この画像光がレンズ等の照明光学系を通じて投影用スクリーン上に投影される。
【0003】
この種のプロジェクタ装置にはカラー画像を表示させることができるものがあり、光源として三原色である赤色(Red =R),緑色(Green =G),青色(Blue=B)を含んだ白色光を発するランプが用いられ、ライトバルブとしては透過型の液晶パネルが用いられている。このプロジェクタ装置では、光源から出射された白色光が、照明光学系によって赤色光、緑色光および青色光の各色の光線に分離され、これら光線が所定の光路に収束される。これら光束が液晶パネルにより画像信号に応じて空間的に変調され、変調された光束が光合成部によってカラー画像光として合成され、合成されたカラー画像光が投影レンズにより投影用スクリーンに拡大投射される。
【0004】
また、最近、カラー画像を表示させることが可能なプロジェクタ装置として、光源に狭帯域三原色光源、例えば三原色の各色の狭帯域光を発するレーザ発振器を用い、ライトバルブに回折格子型ライトバルブ(GLV:Grating Light Valve )を用いた装置が開発されている。このプロジェクタ装置では、レーザ発振器により出射された各色の光束が画像信号に応じてGLVにより空間的に変調される。このように変調された光束は前述したプロジェクタ装置と同様にして、光合成部によってカラー画像光として合成され、この合成されたカラー画像光が投影レンズにより投影用スクリーンに拡大投射される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、プロジェクタ装置に用いられる投影用スクリーンは、その背面側から投影光を照射して前面側から見る透過方式と、前面側から投影光を照射しその反射した光を前面側から見る反射方式とに分けられる。いずれの方式においても、視認性の良好なスクリーンを実現するために、明るくて、かつ、コントラストの高い画像を得ることが望まれている。また、収納性を向上させるために、基板材料として高分子材料を用い、この高分子材料の可撓性を利用した投影用スクリーンが望まれている。
【0006】
しかしながら、明るくて、かつ、コントラストの高い画像が得られると共に、可撓性を有するような投影用スクリーンは実現されていない。例えば、図8に示したような投影用スクリーン100では、透明層112の表面に突起112Aを形成し、この突起112Aの側面には黒色塗料からなる不透明層113を形成することにより、スクリーンの表面形状を工夫して、黒レベルを下げて明るさとコントラストを高めている(特許2889153)。しかし、突起112Aを形成する工程や不透明層113を形成する工程等で多くの時間と手間がかかることによって製造コストが高くなり、また、可撓性を得ることができないという問題があった。
【0007】
また、図9に示したような投影用スクリーン200は基板211を備えており、この基板211の上には反射層212、光吸収層213および拡散層214が順次形成されている(特許3103802)。このような構成を有する投影用スクリーン200は全ての層に可撓性を持たせているので全体として可撓性を有するが、光吸収層213が反射層212よりも光の入射面側に形成されており、殆どの入射光が光吸収層213に吸収されるために白レベルが下がり、十分な明るさとコントラストを得ることができないという問題があった。
【0008】
更に、投影用スクリーン200では、スクリーン面に対して斜め方向から光が入射すると、その光が反射層212の面内に対して斜め方向に入射するために、反射特性の変化が起こり、色ずれが生じることから、色コントラストが低下してしまい鮮明な画像を得ることができないという問題があった。特に、スクリーン面が大きい場合には、このような問題が顕著に現われてしまう。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、映写環境に影響されずに、明瞭でかつ鮮明な画像を得ることが可能となると共に、可撓性を得ることができ、スクリーンの大画面化を図ることが可能となり、また製造コストを削減することが可能となる投影用スクリーンおよびその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明による投影用スクリーンは、基板と、基板の一面に形成され、特定の波長領域の光に対して高反射特性を有し、前記波長領域以外の少なくとも可視波長領域の光に対して高透過特性を有する光反射層と、光反射層における基板との隣接面とは反対側の面に形成され、光反射層の面内に対して垂直な方向に光を入射させる角度補正層とを備えたものである。
【0011】
本発明による投影用スクリーンの製造方法は、基板の上に、塗布法を用いて、特定の波長領域の光に対して高反射特性を有し、前記波長領域以外の少なくとも可視波長領域の光に対して高透過特性を有する光反射層を形成する工程と、光反射層の上に、光反射層の面内に対して垂直な方向に光を入射させる角度補正層を形成する工程とを含むものである。
【0012】
本発明による投影用スクリーンでは、特定の波長領域の光に対して高反射特性を有し、特定の波長領域以外の少なくとも可視波長領域の光に対して高透過特性を有する光反射層を形成するようにしたので、明暗のコントラストが高い画像が得られる。また、光反射層の上に、角度補正層を形成し、この角度補正層により光反射層の面内に対して垂直な方向に光を入射させるようにしたので、光反射層での反射特性の変化が防止され、色ずれが殆ど生じなくなり、これにより画像の色コントラストが向上する。
【0013】
本発明による投影用スクリーンの製造方法では、塗布法を用いて、特定の波長領域の光に対して高反射特性を有し、特定の波長領域以外の少なくとも可視波長領域の光に対して高透過特性を有する光反射層を形成するようにしたので、製造プロセスにおいて手間と時間がかからなくなる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態に係る投影用スクリーン10の一部の断面構成を表すものである。この投影用スクリーン10はいわゆる反射方式のスクリーンである。投影用スクリーン10は黒色基板11を備えている。黒色基板11の上には光反射層として、例えばいわゆる帯域フィルタとしての機能を有する光学多層膜12が形成されている。この光学多層膜12は、例えば溶剤系材料により形成されており、可撓性を有する。光学多層膜12の上には角度補正層13が形成されている。この角度補正層13は、光学多層膜12の面内に対して垂直な方向に光を入射させる機能を有する。これら光学多層膜12および角度補正層13の詳細については後述する。角度補正層13の上には光拡散層14が形成されている。
【0016】
黒色基板11は、例えば黒色塗料等を含んだ高分子材料から構成され、例えば厚さが188μmであり、可撓性を有する。高分子材料としては、例えばポリカーボネイト(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリオレフィン(PO)が挙げられる。この黒色基板11は黒色塗料を含み黒色となっているので、光学多層膜12を透過した光を吸収する光吸収層としての機能を有している。これによりスクリーンの黒レベルが高められる。
【0017】
光学多層膜12は、高屈折率膜12Hと、高屈折率膜12Hよりも低い屈折率を有する低屈折率膜12Lとが交互に積層されたものである。具体的には、高屈折率膜12Hが、溶剤系材料、例えば熱硬化型樹脂JSR製オプスター(JN7102、屈折率1.68)により形成され、低屈折率膜12Lが、溶剤系材料、例えば熱硬化型樹脂JSR製オプスター(JN7215、屈折率1.41)により形成されている。これにより光学多層膜12は可撓性を有する。
【0018】
光学多層膜12の各膜厚は、例えば赤色、緑色および青色の各色の波長領域の光からなる三原色波長域光に対して、例えば反射率が80%以上という高い反射特性を有すると共に、この三原色波長域光の波長領域以外の少なくとも可視波長域の光に対しては、例えば透過率が80%以上という高い透過特性を有するように設計されている。ここで、光学多層膜12の各膜厚は、その各膜の厚さをd、その各膜の屈折率をn、この光学多層膜に入射する入射光の波長をλとすると、各膜の光学的厚さndが入射光の波長λに対して数1に示した式を満足するように設計されている。
【0019】
【数1】
nd=λ(α±1/4)(但し、αは自然数である)
【0020】
具体的には、高屈折率膜12Hおよび低屈折率膜12Lには前述した屈折率を有する熱硬化型樹脂が用いられ、光学多層膜12は、図5の実線に示したように、赤色光の波長が642nm、緑色光の波長が532nm、および青色光の波長が457nmである三原色波長域光に対して、高い反射率、例えば80%の反射率を有すると共に、この三原色波長域光の波長領域以外の少なくとも可視波長域の光に対しては、例えば反射率が20%という高い透過特性を有するように設計されている。このような設計により、高屈折率膜12Hの厚さが1, 023nm、低屈折率膜12Lの厚さが780nmであり、これら高屈折率膜12Hおよび低屈折率膜12Lが交互に9層ずつ積層され、その積層されたものの上に高屈折率膜12Hが積層される。このような構成を有する光学多層膜12は、三原色波長域光に対して高反射特性を有するのでスクリーンの白レベルが高められる。また、光学多層膜12は溶剤系の材料により形成されることから、可撓性を有する。なお、三原色波長域光の各色光の波長は、本実施の形態が適用されるプロジェクタ装置20(図6)の光源(レーザ発振器21)から出射される各色のレーザ光の波長である。
【0021】
ここで、高屈折率膜12Hおよび低屈折率膜12Lは、上記熱硬化型樹脂に限定されるものではない。高屈折率膜12Hには例えば二酸化チタン(TiO2 )系の微粒子が混合された樹脂を用い、屈折率が1.9となるようにしてもよい。低屈折率膜12Lには例えばフッ素系樹脂を用い、屈折率が1.2となるようにしてもよい。このような屈折率を有する材料を用いると合計層数は7層となる。このように高屈折率膜12Hと低屈折率膜12Lとの屈折率の差が大きい程、高屈折率膜12Hおよび低屈折率膜12Lの合計層数が少なくなるので、これらの膜の屈折率差を大きくすることは生産性の観点から好ましい。
【0022】
角度補正層13は、例えば可撓性を有するプラスチック基板がフレネルレンズの形状に加工されたものであり、光学多層膜12の面内に対して垂直な方向に光を入射させる機能を有している。フレネルレンズとは、球面レンズの球面が同心円状に分割され、その分割された球面が同心円状に配置されたもの、すなわち、そのレンズの中心に円形状に複数の溝が配置されたものである。これらの溝は、溝毎に焦点位置の誤差が補正されるように設計されている。
【0023】
本実施の形態では、角度補正層13は例えばフレネルレンズ31(図2)またはフレネルレンズ32(図3)の形状に加工されている。フレネルレンズ31の場合には、その断面形状が、中心に曲面構造31Aを有し、その曲面の両端に鋸刃構造31Bを有する。鋸刃構造31Bは、所定の角度で複数の溝が形成され、複数の鋸刃31Bm (但し、mは1, 2, 3)から構成されている。これら曲面構造31Aと鋸刃構造31Bは、数2に示した位相Φ(x)、数3に示した座標xm を満たすように設計されている。なお、xm は、曲面構造31Aと鋸刃構造31Bとの境界の座標、鋸刃構造31Bの隣接する鋸刃31Bm 同士の境界の座標にそれぞれ対応し、λが入射する光の波長、fが焦点距離である。また、入射する光の波長λは三原色波長域光の各色の波長であり、例えば赤色光の波長が642nm、緑色光の波長が532nm、青色光の波長が457nmである。
【0024】
【数2】
【0025】
【数3】
【0026】
フレネルレンズ32の場合、フレネルレンズ31の曲面構造31Aおよび鋸刃構造31Bでの曲面を平面としたものであり、溝構造32Aを有する。溝構造32Aは複数の溝32Am からなる。これら溝32Am は、フレネルレンズ31と同様に数2に示した位相Φ(x)、数3に示した座標xm を満たすように設計されている。なお、溝32Am の右側面の座標がxm である。
【0027】
このように角度補正層13はフレネルレンズ31またはフレネルレンズ32の形状に加工されているので、図4に示したように、三原色波長域光が、スクリーンの垂直方向に対して例えば角度30度で入射した場合、この入射光が角度補正層13により回折され、光学多層膜12に対して垂直な方向に入射する。これにより、光学多層膜12の光学特性が低下することが防止され、色ずれが生じることが殆どなくなる。また、角度補正層13はフレネルレンズ31またはフレネルレンズ32の形状に加工されるのでに薄くてかつ平板状である。
【0028】
光拡散層14は、例えばマイクロレンズアレー(MLA)が形成されたフィルムであり、可撓性を有する。この光拡散層14では、光学多層膜12を透過した三原色波長域光が散乱される。これによって、視野角が大きくなり良い視野特性が得られる。なお、光拡散層14は、例えば直径が数μm〜数mm程度である球状の複数のビーズが等間隔に配列されたものでもよい。これらのビーズは例えばガラスや高分子材料等の透明な材料からなる。更に、光拡散層14は、所定の媒質中に例えば銀(Ag)や銅(Cu)等の金属微粒子が分散されたものでもよい。
【0029】
このように本実施の形態では、スクリーンを構成する黒色基板11、光学多層膜12、角度補正層13および光拡散層14の全てが可撓性を有するので、スクリーン自体が可撓性を有する。
【0030】
次に、このような構成を有する投影用スクリーン10の製造方法について説明する。まず、黒色塗料を含ませた高分子材料からなる黒色基板11を用意する。次に、例えば大気雰囲気中でスピンコーティング等の塗布法を用いて、黒色基板11の上に、溶剤系材料からなる、高屈折率膜12Hと低屈折率膜12Lとを交互に積層して光学多層膜12を形成する。この光学多層膜12は可撓性を有する。また、光学多層膜12の各膜厚は、例えば赤色、緑色および青色の各色の波長領域の光からなる三原色波長域光に対して高反射特性を有すると共に、この三原色波長域光の波長領域以外の少なくとも可視波長域の光に対して高透過特性を有するように設計する。
【0031】
具体的には、光学多層膜12は、図5の実線に示したように、赤色光の波長が642nm、緑色光の波長が532nm、および青色光の波長が457nmである三原色域光に対して例えば80%という高い反射率を有すると共に、この三原色波長域光の波長領域以外の少なくとも可視波長域の光に対しては、例えば反射率が20%以下という高い透過特性を有するように設計する。このように設計された光学多層膜12を形成するために、まず、ヒラノテクシード株式会社製のキャップコータを用いて塗布法によって、黒色基板11の上に溶剤系材料として熱硬化型樹脂JSR製オプスター(JN7102、屈折率1.68)を塗布し、これに120度、10分間の加熱処理を施すことにより高屈折率膜12Hを形成する。この高屈折率膜12Hの厚さは1, 023nmとする。ここで、高屈折率膜12Hの膜厚が1, 023nmより大きい場合には、高屈折率膜12Hの反射特性等をモニタしながら、高屈折率膜12Hに例えば酸素プラズマエッチング等のエッチング処理を行うことにより所望の膜厚とする。
【0032】
次に、高屈折率膜12Hの場合と同様に上記キャップコータを用いて、高屈折率膜12Hの上に、溶剤系材料として熱硬化型樹脂JSR製オプスター(JN7215、屈折率1.41)を塗布し、これに120度、60分間の加熱処理を施すことにより低屈折率膜12Lを形成する。この低屈折率膜12Lの厚さは780nmとする。ここで、低屈折率膜12Lの膜厚が780nmより大きい場合には、高屈折率膜12Hの場合と同様な手法で、低屈折率膜12Lにエッチング処理を行うことにより所望の膜厚とする。このような工程を繰り返し行い、高屈折率膜12Hおよび低屈折率膜12Lを交互に9層ずつ積層し、この交互に積層したものの上に高屈折率膜12Hを積層する。これにより、図5の実線に示した反射特性を有する光学多層膜12が形成される。
【0033】
続いて、光学多層膜12の上に、角度補正層13を貼り合わせる。この角度補正層13は、例えば可撓性を有するプラスチック基板をフレネルレンズ31またはフレネルレンズ32の形状に加工したものである。角度補正層13をフレネルレンズ31の形状に加工する場合、その断面形状を、中心に曲面構造31Aを有し、その曲面の両端に所定の角度で複数の溝が形成された鋸刃構造31Bを有するようにする。鋸刃構造31Bは、所定の角度で複数の溝を形成し、複数の鋸刃31Bm (但し、mは1, 2, 3)から構成する。これら曲面構造31Aと鋸刃構造31Bは、数2に示し位相Φ(x)た、数3に示した座標xm を満たすように設計する。
【0034】
また、角度補正層13をフレネルレンズ32の形状に加工する場合には、フレネルレンズ31の曲面構造31Aおよび鋸刃構造31Bでの曲面を平面とし、溝構造32Aを形成する。この溝構造32Aは複数の溝32Am を有する。これら溝32Am は、フレネルレンズ31と同様に、数2に示した位相Φ(x)、数3に示した座標xm を満たすように設計する。また、入射する光の波長λは、三原色波長域光の各色の波長とする。例えば、赤色光の波長を642nm、緑色光の波長を532nm、青色光の波長を457nmとする。このように角度補正層13はフレネルレンズ31またはフレネルレンズ32の形状に加工するので、薄くてかつ平板状となる。
【0035】
最後に、光学多層膜12の上に、例えばマイクロレンズアレー(MLA)が形成されたフィルムである光拡散層14を貼り合わせることによって、図1に示した投影用スクリーン10が完成する。
【0036】
このように本実施の形態では、黒色基板11に光吸収層としての機能を持たせることにより画像の黒レベルを向上させるだけでなく、光学多層膜12を形成することにより画像の白レベルを向上させることにより、画像の明暗のコントラストを高めて明瞭な画像が得られるようにしたので、従来のように画像の明暗のコントラストを高めるために突起を形成する等してスクリーンの表面形状を工夫することが不要となる。その結果、手間や時間がかからなくなり、これにより製造コストが削減される。
【0037】
ちなみに、本出願人と同一の出願人は、無機材料からなる光学薄膜を備えた投影用スクリーンを提案している(特願2002−070799号)。この光学薄膜は、高屈折率層と、この高屈折率層よりも低い屈折率を有する低屈折率層とを交互に積層したものである。高屈折率層の無機材料としては、例えば五酸化ニオブ(Nb2 O5 )、二酸化チタンあるいは五酸化タンタル(Ta2 O5 )、低屈折率層の無機材料としては、例えば二酸化シリコン(SiO2 )あるいはフッ化マグネシウム(MgF2 )が用いられている。このような無機材料からなる光学薄膜は、スパッタリング法などの真空方式を用いて形成する。これに対して、本実施の形態では、大気雰囲気中で塗布法を用いて光学多層膜12を形成するようにしたので、真空プロセスを用いる場合と比較して製造コストが削減される。
【0038】
このような構成を有する投影用スクリーン10は、例えばフロント式のプロジェクタ装置20のスクリーンとして用いられる。図6は、このプロジェクタ装置20の概略構成を表すものである。プロジェクタ装置20は、光源として三原色の各色の波長領域からなる三原色狭帯域光を出射するレーザ発振器21を備えている。レーザ発振器21は、例えば波長が642nmである赤色光を出射するレーザ発振器21R、波長が532nmである緑色光を出射するレーザ発振器21G、波長が457nmである青色光を出射するレーザ発振器21Bから構成されている。
【0039】
また、プロジェクタ装置20は、レーザ発振器21から出射された光を画像光として投影用スクリーン10に導くための照明光学系として、コリメータレンズ22、シリンドリカルレンズ23、GLV24、体積型ホログラム素子25、ガルバノミラー26および投影レンズ27を備えている。コリメータレンズ22は、赤色光用のコリメータレンズ22R、緑色光用のコリメータレンズ22G、および、青色光用のコリメータレンズ22Bから構成される。GLV24は、赤色光用のリボン列24R、緑色光用のリボン列24G、および青色光用のリボン列24Bを備えている。体積型ホログラム素子25は、第1体積型ホログラム素子25aおよび第2体積型ホログラム素子25bから構成されている。
【0040】
なお、プロジェクタ装置20では、レーザ発振器21Rから出射された赤色光、レーザ発振器21Gから出射された緑色光、レーザ発振器21Bから出射された青色光のそれぞれが、コリメータレンズ22では各色用のコリメータレンズ22R,22G,22B、GLV24では各色用のリボン列24R,24G,24Bに入射するようにこれらの構成要素が配置されている。
【0041】
このような構成を有するプロジェクタ装置20では、レーザ発振器21から出射された赤色光、緑色光および青色光の各光は、コリメータレンズ22を透過することにより平行光となる。このコリメータレンズ22により平行光となった三原色波長域光は、シリンドリカルレンズ23の作用によりGLV24に集光される。これら集光した三原色波長域光は、画像信号に応じてGLV24の各リボン列が駆動されることによって空間的に変調される。
【0042】
GLV24の作用により変調された三原色波長域光は、シリンドリカルレンズ23の作用により体積型ホログラム素子25に集光される。この体積型ホログラム素子25では、第1体積型ホログラム素子25aにより赤色光が回折され、第2体積型ホログラム素子25bにより青色光および赤色光が同じ方向に回折される。また、第1体積型ホログラム素子25aおよび第2体積型ホログラム素子25bでは、緑色光が回折されずに直進して透過し、赤色光と同じ方向に出射される。このようにして体積型ホログラム素子25の作用により、赤色光、緑色光および青色光の各色の光が合成されて、同じ方向に出射される。同じ方向に出射された三原色波長域光は、ガルバノミラー26により所定の方向に走査され、投影レンズ27を介して投影用スクリーン10の前面に投射される。
【0043】
投影用スクリーン10では、プロジェクタ装置20から投射された三原色波長域光が外光とともに光拡散層14および角度補正層13を透過し、光学多層膜12に入射する。ここで、図10に示したように角度補正層13が形成されていない場合には、スクリーンの垂直方向に対して例えば30度で三原色波長域光が入射すると、光学多層膜12に対して斜め方向で入射するため、光学多層膜12で反射される三原色波長域光は所望の光学特性から変化し、色ずれが生じてしまう(図5の破線)。これに対して、本実施の形態では光学多層膜12の上に角度補正層13を形成し、この角度補正層13がフレネルレンズの機能を有するので、この角度補正層13により三原色波長域光が回折され、図4に示したように光学多層膜12に垂直な方向に入射する。
【0044】
この光学多層膜12では、三原色波長域光が反射されると共に、三原色波長域光以外の少なくとも可視波長域の光は透過し黒色基板11に吸収される。このとき、光学多層膜12で反射される三原色波長域光は、図5の実線に示したように色ずれが殆ど生じずに、所望の光学特性で反射される。このように三原色波長域光は光拡散層14に入射し、この光拡散層14により散乱され、スクリーンの前面に画像が形成される。
【0045】
このとき、黒色基板11により黒レベルが高められるだけでなく、光学多層膜12により白レベルが高められるので、明暗のコントラストが高い画像が形成される。また、角度補正層13によって光学多層膜12の光学特性が低下することが防止され、色ずれが生じることが殆どなくなるので、色コントラストの高い画像が形成される。
【0046】
このように本実施の形態では、光学多層膜12が三原色波長域光に対して高反射特性を有し、三原色波長域光以外の少なくとも可視波長領域の光に対して高透過特性を有するようにしたので、画像の白レベルが高めることができる。よって、映写環境に影響されずに明瞭な画像を得ることが可能となる。また、光学多層膜12の上に角度補正層13を形成し、スクリーンに入射光が斜め方向から入射した場合でも、この角度補正層により三原色波長域光を光学多層膜12に対して垂直に入射させるようにしたので、光学多層膜12の光学特性の低下が防止され、色ずれが生じることがなくなる。これにより、色コントラストを高めることができるので鮮明な画像も得ることが可能となり、また、スクリーンの大画面化を図ることができる。また、高分子材料からなる黒色基板11の上に、溶剤材料により光学多層膜12が形成されているので、スクリーンが可撓性を有するようになり、これにより収納性を向上させることが可能となる。
【0047】
また、黒色基板11に光吸収層としての機能を持たせることにより画像の黒レベルを向上させるだけでなく光学多層膜12を形成することにより画像の白レベルを向上させ、画像の明暗のコントラストを高めて明瞭な画像が得られるようにしたので、従来のように画像の明暗のコントラストを高めるために突起を形成する等してスクリーンの表面形状を工夫することが不要となる。その結果、手間や時間がかからなくなり、これにより製造コストを削減することが可能となる。更に、塗布法を用いて光学多層膜12を形成するようにしたので、真空プロセスにより形成する場合と比較して製造コストを削減することができる。
【0048】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態では溶剤系材料として、加熱により硬化する熱硬化型樹脂を用いて光学多層膜12を形成するようにしたが、紫外線を照射することにより硬化する熱硬化型樹脂を用いるようにしてもよい。
【0049】
また、上記実施の形態では、角度補正層13にプラスチック材料からなるプラスチック基板を用いるようにしたが、プラスチック材料以外の材料からなる基板を用いるようにしてもよい。例えば、ガラス材料からなる基板を用いることが可能である。更に、上記実施の形態では、角度補正層13をフレネルレンズ31またはフレネルレンズ32の形状に加工するようにしたが、これら以外のフレネルレンズの形状に加工するようにしてもよい。加えて、上記実施の形態では、角度補正層13は溶剤系材料からなる光学多層膜12の上に形成するようにしたが、他の材料、例えば無機材料からなる光学多層膜の上に形成するようにしてもよい。また、上記実施の形態では、角度補正層13は光学多層膜の上に形成するようにしたが、光を反射させる機能を有する如何なる光反射層の上に形成するようにしてもよい。
【0050】
また、上記実施の形態では基板として黒色基板11を用い、この黒色基板11に光吸収層の機能を持たせるようにしたが、基板として透明基板41を用い、この透明基板41の裏面に別途黒色塗料からなる光吸収層42を形成するようにしてもよい(図7)。更に、基板として透明基板41を用い、この透明基板41の裏面に別途黒色基板を設けるようにしてもよい。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の投影用スクリーンによれば、光反射層が特定の波長領域の光に対して高反射特性を有し、この特定の波長領域の以外の少なくとも可視波長領域の光に対して高透過特性を有するようにしたので、画像の白レベルが高めることが可能となる。従って、映写環境に影響されずに明瞭な画像を得ることができる。また、光反射層の上に角度補正層を形成し、スクリーンに入射光が斜めに入射した場合にも、この角度補正層により光反射層の面内に対して垂直な方向に光を入射させるようにしたので、光反射層の光学特性の低下を防止することができ、色ずれが生じることがなくなる。よって、色コントラストを高めることができるので鮮明な画像も得ることが可能となり、また、スクリーンの大画面化を図ることができる。
【0052】
特に、請求項3および請求項9記載の投影用スクリーンによれば、基板を高分子材料からなるようにし、光反射層を溶剤材料からなるようにしたので、スクリーンが可撓性を有するようになり、これにより収納性を向上させることができる。
【0053】
また、請求項13ないし請求項25のいずれか1項に記載の投影用スクリーンの製造方法によれば、光反射層を形成し画像の白レベルを向上させることにより、画像の明暗のコントラストを高めて明瞭な画像が得られるようにしたので、従来のように画像の明暗のコントラストを高めるために、突起を形成する等してスクリーンの表面形状を工夫することが不要となる。その結果、手間や時間がかからなくなり、これにより製造コストを削減することが可能となる。更に、塗布法を用いて光反射層を形成するようにしたので、真空プロセスにより形成する場合と比較して製造コストを削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る投影用スクリーンの断面構成図である。
【図2】図1に示した投影用スクリーンの角度補正層に用いられるフレネルレンズである。
【図3】図1に示した投影用スクリーンの角度補正層に用いられるフレネルレンズである。
【図4】図1に示した投影用スクリーンに光が斜め方向から入射した場合を説明するための概略図である。
【図5】図1に示した投影用スクリーンの光学多層膜の反射特性を表すものである。
【図6】図1に示した投影用スクリーンを用いたプロジェクタ装置の概略構成図である。
【図7】投影用スクリーンの変形例の概略構成図である。
【図8】従来の投影用スクリーンの概略構成図である。
【図9】従来の投影用スクリーンの概略構成図である。
【図10】投影用スクリーンの比較例に光が斜め方向から入射した場合を説明するための概略図である。
【符号の説明】
10・・・ 投影用スクリーン、11・・・ 黒色基板、12・・・ 光学多層膜、13・・・ 光拡散層、20・・・ プロジェクタ装置、21,21R,21G,21B・・・ レーザ発振器、22,22R,22G,22B・・・ コリメータレンズ、23・・・ シリンドリカルレンズ、24・・・ GLV、24R,24G,24B・・・ リボン列、25・・・ 体積型ホログラム素子、25a・・・ 第1体積型ホログラム素子、25b・・・ 第2体積型ホログラム素子、26・・・ ガルバノミラー、27・・・ 投影レンズ、31, 32・・・ フレネルレンズ、31A・・・ 曲面構造、31B・・・ 鋸刃構造、31Bm ・・・ 鋸刃、32A・・・ 溝構造、32Am ・・・ 溝、41・・・ 透明基板、42・・・ 光吸収層
【発明の属する技術分野】
本発明は、光源からの光を受けることにより画像を表示する投影用スクリーンおよびその製造方法に係り、特に反射方式の投影用スクリーンおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、会議等では発表者が資料を提示する手段としてオーバーヘッドプロジェクタやスライドプロジェクタが広く用いられ、一般家庭ではビデオプロジェクタや動画フィルムプロジェクタが普及しつつある。これらプロジェクタ装置では、光源から出力された光がライトバルブ(Light Valve )により空間的に変調されて画像光とされ、この画像光がレンズ等の照明光学系を通じて投影用スクリーン上に投影される。
【0003】
この種のプロジェクタ装置にはカラー画像を表示させることができるものがあり、光源として三原色である赤色(Red =R),緑色(Green =G),青色(Blue=B)を含んだ白色光を発するランプが用いられ、ライトバルブとしては透過型の液晶パネルが用いられている。このプロジェクタ装置では、光源から出射された白色光が、照明光学系によって赤色光、緑色光および青色光の各色の光線に分離され、これら光線が所定の光路に収束される。これら光束が液晶パネルにより画像信号に応じて空間的に変調され、変調された光束が光合成部によってカラー画像光として合成され、合成されたカラー画像光が投影レンズにより投影用スクリーンに拡大投射される。
【0004】
また、最近、カラー画像を表示させることが可能なプロジェクタ装置として、光源に狭帯域三原色光源、例えば三原色の各色の狭帯域光を発するレーザ発振器を用い、ライトバルブに回折格子型ライトバルブ(GLV:Grating Light Valve )を用いた装置が開発されている。このプロジェクタ装置では、レーザ発振器により出射された各色の光束が画像信号に応じてGLVにより空間的に変調される。このように変調された光束は前述したプロジェクタ装置と同様にして、光合成部によってカラー画像光として合成され、この合成されたカラー画像光が投影レンズにより投影用スクリーンに拡大投射される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、プロジェクタ装置に用いられる投影用スクリーンは、その背面側から投影光を照射して前面側から見る透過方式と、前面側から投影光を照射しその反射した光を前面側から見る反射方式とに分けられる。いずれの方式においても、視認性の良好なスクリーンを実現するために、明るくて、かつ、コントラストの高い画像を得ることが望まれている。また、収納性を向上させるために、基板材料として高分子材料を用い、この高分子材料の可撓性を利用した投影用スクリーンが望まれている。
【0006】
しかしながら、明るくて、かつ、コントラストの高い画像が得られると共に、可撓性を有するような投影用スクリーンは実現されていない。例えば、図8に示したような投影用スクリーン100では、透明層112の表面に突起112Aを形成し、この突起112Aの側面には黒色塗料からなる不透明層113を形成することにより、スクリーンの表面形状を工夫して、黒レベルを下げて明るさとコントラストを高めている(特許2889153)。しかし、突起112Aを形成する工程や不透明層113を形成する工程等で多くの時間と手間がかかることによって製造コストが高くなり、また、可撓性を得ることができないという問題があった。
【0007】
また、図9に示したような投影用スクリーン200は基板211を備えており、この基板211の上には反射層212、光吸収層213および拡散層214が順次形成されている(特許3103802)。このような構成を有する投影用スクリーン200は全ての層に可撓性を持たせているので全体として可撓性を有するが、光吸収層213が反射層212よりも光の入射面側に形成されており、殆どの入射光が光吸収層213に吸収されるために白レベルが下がり、十分な明るさとコントラストを得ることができないという問題があった。
【0008】
更に、投影用スクリーン200では、スクリーン面に対して斜め方向から光が入射すると、その光が反射層212の面内に対して斜め方向に入射するために、反射特性の変化が起こり、色ずれが生じることから、色コントラストが低下してしまい鮮明な画像を得ることができないという問題があった。特に、スクリーン面が大きい場合には、このような問題が顕著に現われてしまう。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、映写環境に影響されずに、明瞭でかつ鮮明な画像を得ることが可能となると共に、可撓性を得ることができ、スクリーンの大画面化を図ることが可能となり、また製造コストを削減することが可能となる投影用スクリーンおよびその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明による投影用スクリーンは、基板と、基板の一面に形成され、特定の波長領域の光に対して高反射特性を有し、前記波長領域以外の少なくとも可視波長領域の光に対して高透過特性を有する光反射層と、光反射層における基板との隣接面とは反対側の面に形成され、光反射層の面内に対して垂直な方向に光を入射させる角度補正層とを備えたものである。
【0011】
本発明による投影用スクリーンの製造方法は、基板の上に、塗布法を用いて、特定の波長領域の光に対して高反射特性を有し、前記波長領域以外の少なくとも可視波長領域の光に対して高透過特性を有する光反射層を形成する工程と、光反射層の上に、光反射層の面内に対して垂直な方向に光を入射させる角度補正層を形成する工程とを含むものである。
【0012】
本発明による投影用スクリーンでは、特定の波長領域の光に対して高反射特性を有し、特定の波長領域以外の少なくとも可視波長領域の光に対して高透過特性を有する光反射層を形成するようにしたので、明暗のコントラストが高い画像が得られる。また、光反射層の上に、角度補正層を形成し、この角度補正層により光反射層の面内に対して垂直な方向に光を入射させるようにしたので、光反射層での反射特性の変化が防止され、色ずれが殆ど生じなくなり、これにより画像の色コントラストが向上する。
【0013】
本発明による投影用スクリーンの製造方法では、塗布法を用いて、特定の波長領域の光に対して高反射特性を有し、特定の波長領域以外の少なくとも可視波長領域の光に対して高透過特性を有する光反射層を形成するようにしたので、製造プロセスにおいて手間と時間がかからなくなる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態に係る投影用スクリーン10の一部の断面構成を表すものである。この投影用スクリーン10はいわゆる反射方式のスクリーンである。投影用スクリーン10は黒色基板11を備えている。黒色基板11の上には光反射層として、例えばいわゆる帯域フィルタとしての機能を有する光学多層膜12が形成されている。この光学多層膜12は、例えば溶剤系材料により形成されており、可撓性を有する。光学多層膜12の上には角度補正層13が形成されている。この角度補正層13は、光学多層膜12の面内に対して垂直な方向に光を入射させる機能を有する。これら光学多層膜12および角度補正層13の詳細については後述する。角度補正層13の上には光拡散層14が形成されている。
【0016】
黒色基板11は、例えば黒色塗料等を含んだ高分子材料から構成され、例えば厚さが188μmであり、可撓性を有する。高分子材料としては、例えばポリカーボネイト(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリオレフィン(PO)が挙げられる。この黒色基板11は黒色塗料を含み黒色となっているので、光学多層膜12を透過した光を吸収する光吸収層としての機能を有している。これによりスクリーンの黒レベルが高められる。
【0017】
光学多層膜12は、高屈折率膜12Hと、高屈折率膜12Hよりも低い屈折率を有する低屈折率膜12Lとが交互に積層されたものである。具体的には、高屈折率膜12Hが、溶剤系材料、例えば熱硬化型樹脂JSR製オプスター(JN7102、屈折率1.68)により形成され、低屈折率膜12Lが、溶剤系材料、例えば熱硬化型樹脂JSR製オプスター(JN7215、屈折率1.41)により形成されている。これにより光学多層膜12は可撓性を有する。
【0018】
光学多層膜12の各膜厚は、例えば赤色、緑色および青色の各色の波長領域の光からなる三原色波長域光に対して、例えば反射率が80%以上という高い反射特性を有すると共に、この三原色波長域光の波長領域以外の少なくとも可視波長域の光に対しては、例えば透過率が80%以上という高い透過特性を有するように設計されている。ここで、光学多層膜12の各膜厚は、その各膜の厚さをd、その各膜の屈折率をn、この光学多層膜に入射する入射光の波長をλとすると、各膜の光学的厚さndが入射光の波長λに対して数1に示した式を満足するように設計されている。
【0019】
【数1】
nd=λ(α±1/4)(但し、αは自然数である)
【0020】
具体的には、高屈折率膜12Hおよび低屈折率膜12Lには前述した屈折率を有する熱硬化型樹脂が用いられ、光学多層膜12は、図5の実線に示したように、赤色光の波長が642nm、緑色光の波長が532nm、および青色光の波長が457nmである三原色波長域光に対して、高い反射率、例えば80%の反射率を有すると共に、この三原色波長域光の波長領域以外の少なくとも可視波長域の光に対しては、例えば反射率が20%という高い透過特性を有するように設計されている。このような設計により、高屈折率膜12Hの厚さが1, 023nm、低屈折率膜12Lの厚さが780nmであり、これら高屈折率膜12Hおよび低屈折率膜12Lが交互に9層ずつ積層され、その積層されたものの上に高屈折率膜12Hが積層される。このような構成を有する光学多層膜12は、三原色波長域光に対して高反射特性を有するのでスクリーンの白レベルが高められる。また、光学多層膜12は溶剤系の材料により形成されることから、可撓性を有する。なお、三原色波長域光の各色光の波長は、本実施の形態が適用されるプロジェクタ装置20(図6)の光源(レーザ発振器21)から出射される各色のレーザ光の波長である。
【0021】
ここで、高屈折率膜12Hおよび低屈折率膜12Lは、上記熱硬化型樹脂に限定されるものではない。高屈折率膜12Hには例えば二酸化チタン(TiO2 )系の微粒子が混合された樹脂を用い、屈折率が1.9となるようにしてもよい。低屈折率膜12Lには例えばフッ素系樹脂を用い、屈折率が1.2となるようにしてもよい。このような屈折率を有する材料を用いると合計層数は7層となる。このように高屈折率膜12Hと低屈折率膜12Lとの屈折率の差が大きい程、高屈折率膜12Hおよび低屈折率膜12Lの合計層数が少なくなるので、これらの膜の屈折率差を大きくすることは生産性の観点から好ましい。
【0022】
角度補正層13は、例えば可撓性を有するプラスチック基板がフレネルレンズの形状に加工されたものであり、光学多層膜12の面内に対して垂直な方向に光を入射させる機能を有している。フレネルレンズとは、球面レンズの球面が同心円状に分割され、その分割された球面が同心円状に配置されたもの、すなわち、そのレンズの中心に円形状に複数の溝が配置されたものである。これらの溝は、溝毎に焦点位置の誤差が補正されるように設計されている。
【0023】
本実施の形態では、角度補正層13は例えばフレネルレンズ31(図2)またはフレネルレンズ32(図3)の形状に加工されている。フレネルレンズ31の場合には、その断面形状が、中心に曲面構造31Aを有し、その曲面の両端に鋸刃構造31Bを有する。鋸刃構造31Bは、所定の角度で複数の溝が形成され、複数の鋸刃31Bm (但し、mは1, 2, 3)から構成されている。これら曲面構造31Aと鋸刃構造31Bは、数2に示した位相Φ(x)、数3に示した座標xm を満たすように設計されている。なお、xm は、曲面構造31Aと鋸刃構造31Bとの境界の座標、鋸刃構造31Bの隣接する鋸刃31Bm 同士の境界の座標にそれぞれ対応し、λが入射する光の波長、fが焦点距離である。また、入射する光の波長λは三原色波長域光の各色の波長であり、例えば赤色光の波長が642nm、緑色光の波長が532nm、青色光の波長が457nmである。
【0024】
【数2】
【0025】
【数3】
【0026】
フレネルレンズ32の場合、フレネルレンズ31の曲面構造31Aおよび鋸刃構造31Bでの曲面を平面としたものであり、溝構造32Aを有する。溝構造32Aは複数の溝32Am からなる。これら溝32Am は、フレネルレンズ31と同様に数2に示した位相Φ(x)、数3に示した座標xm を満たすように設計されている。なお、溝32Am の右側面の座標がxm である。
【0027】
このように角度補正層13はフレネルレンズ31またはフレネルレンズ32の形状に加工されているので、図4に示したように、三原色波長域光が、スクリーンの垂直方向に対して例えば角度30度で入射した場合、この入射光が角度補正層13により回折され、光学多層膜12に対して垂直な方向に入射する。これにより、光学多層膜12の光学特性が低下することが防止され、色ずれが生じることが殆どなくなる。また、角度補正層13はフレネルレンズ31またはフレネルレンズ32の形状に加工されるのでに薄くてかつ平板状である。
【0028】
光拡散層14は、例えばマイクロレンズアレー(MLA)が形成されたフィルムであり、可撓性を有する。この光拡散層14では、光学多層膜12を透過した三原色波長域光が散乱される。これによって、視野角が大きくなり良い視野特性が得られる。なお、光拡散層14は、例えば直径が数μm〜数mm程度である球状の複数のビーズが等間隔に配列されたものでもよい。これらのビーズは例えばガラスや高分子材料等の透明な材料からなる。更に、光拡散層14は、所定の媒質中に例えば銀(Ag)や銅(Cu)等の金属微粒子が分散されたものでもよい。
【0029】
このように本実施の形態では、スクリーンを構成する黒色基板11、光学多層膜12、角度補正層13および光拡散層14の全てが可撓性を有するので、スクリーン自体が可撓性を有する。
【0030】
次に、このような構成を有する投影用スクリーン10の製造方法について説明する。まず、黒色塗料を含ませた高分子材料からなる黒色基板11を用意する。次に、例えば大気雰囲気中でスピンコーティング等の塗布法を用いて、黒色基板11の上に、溶剤系材料からなる、高屈折率膜12Hと低屈折率膜12Lとを交互に積層して光学多層膜12を形成する。この光学多層膜12は可撓性を有する。また、光学多層膜12の各膜厚は、例えば赤色、緑色および青色の各色の波長領域の光からなる三原色波長域光に対して高反射特性を有すると共に、この三原色波長域光の波長領域以外の少なくとも可視波長域の光に対して高透過特性を有するように設計する。
【0031】
具体的には、光学多層膜12は、図5の実線に示したように、赤色光の波長が642nm、緑色光の波長が532nm、および青色光の波長が457nmである三原色域光に対して例えば80%という高い反射率を有すると共に、この三原色波長域光の波長領域以外の少なくとも可視波長域の光に対しては、例えば反射率が20%以下という高い透過特性を有するように設計する。このように設計された光学多層膜12を形成するために、まず、ヒラノテクシード株式会社製のキャップコータを用いて塗布法によって、黒色基板11の上に溶剤系材料として熱硬化型樹脂JSR製オプスター(JN7102、屈折率1.68)を塗布し、これに120度、10分間の加熱処理を施すことにより高屈折率膜12Hを形成する。この高屈折率膜12Hの厚さは1, 023nmとする。ここで、高屈折率膜12Hの膜厚が1, 023nmより大きい場合には、高屈折率膜12Hの反射特性等をモニタしながら、高屈折率膜12Hに例えば酸素プラズマエッチング等のエッチング処理を行うことにより所望の膜厚とする。
【0032】
次に、高屈折率膜12Hの場合と同様に上記キャップコータを用いて、高屈折率膜12Hの上に、溶剤系材料として熱硬化型樹脂JSR製オプスター(JN7215、屈折率1.41)を塗布し、これに120度、60分間の加熱処理を施すことにより低屈折率膜12Lを形成する。この低屈折率膜12Lの厚さは780nmとする。ここで、低屈折率膜12Lの膜厚が780nmより大きい場合には、高屈折率膜12Hの場合と同様な手法で、低屈折率膜12Lにエッチング処理を行うことにより所望の膜厚とする。このような工程を繰り返し行い、高屈折率膜12Hおよび低屈折率膜12Lを交互に9層ずつ積層し、この交互に積層したものの上に高屈折率膜12Hを積層する。これにより、図5の実線に示した反射特性を有する光学多層膜12が形成される。
【0033】
続いて、光学多層膜12の上に、角度補正層13を貼り合わせる。この角度補正層13は、例えば可撓性を有するプラスチック基板をフレネルレンズ31またはフレネルレンズ32の形状に加工したものである。角度補正層13をフレネルレンズ31の形状に加工する場合、その断面形状を、中心に曲面構造31Aを有し、その曲面の両端に所定の角度で複数の溝が形成された鋸刃構造31Bを有するようにする。鋸刃構造31Bは、所定の角度で複数の溝を形成し、複数の鋸刃31Bm (但し、mは1, 2, 3)から構成する。これら曲面構造31Aと鋸刃構造31Bは、数2に示し位相Φ(x)た、数3に示した座標xm を満たすように設計する。
【0034】
また、角度補正層13をフレネルレンズ32の形状に加工する場合には、フレネルレンズ31の曲面構造31Aおよび鋸刃構造31Bでの曲面を平面とし、溝構造32Aを形成する。この溝構造32Aは複数の溝32Am を有する。これら溝32Am は、フレネルレンズ31と同様に、数2に示した位相Φ(x)、数3に示した座標xm を満たすように設計する。また、入射する光の波長λは、三原色波長域光の各色の波長とする。例えば、赤色光の波長を642nm、緑色光の波長を532nm、青色光の波長を457nmとする。このように角度補正層13はフレネルレンズ31またはフレネルレンズ32の形状に加工するので、薄くてかつ平板状となる。
【0035】
最後に、光学多層膜12の上に、例えばマイクロレンズアレー(MLA)が形成されたフィルムである光拡散層14を貼り合わせることによって、図1に示した投影用スクリーン10が完成する。
【0036】
このように本実施の形態では、黒色基板11に光吸収層としての機能を持たせることにより画像の黒レベルを向上させるだけでなく、光学多層膜12を形成することにより画像の白レベルを向上させることにより、画像の明暗のコントラストを高めて明瞭な画像が得られるようにしたので、従来のように画像の明暗のコントラストを高めるために突起を形成する等してスクリーンの表面形状を工夫することが不要となる。その結果、手間や時間がかからなくなり、これにより製造コストが削減される。
【0037】
ちなみに、本出願人と同一の出願人は、無機材料からなる光学薄膜を備えた投影用スクリーンを提案している(特願2002−070799号)。この光学薄膜は、高屈折率層と、この高屈折率層よりも低い屈折率を有する低屈折率層とを交互に積層したものである。高屈折率層の無機材料としては、例えば五酸化ニオブ(Nb2 O5 )、二酸化チタンあるいは五酸化タンタル(Ta2 O5 )、低屈折率層の無機材料としては、例えば二酸化シリコン(SiO2 )あるいはフッ化マグネシウム(MgF2 )が用いられている。このような無機材料からなる光学薄膜は、スパッタリング法などの真空方式を用いて形成する。これに対して、本実施の形態では、大気雰囲気中で塗布法を用いて光学多層膜12を形成するようにしたので、真空プロセスを用いる場合と比較して製造コストが削減される。
【0038】
このような構成を有する投影用スクリーン10は、例えばフロント式のプロジェクタ装置20のスクリーンとして用いられる。図6は、このプロジェクタ装置20の概略構成を表すものである。プロジェクタ装置20は、光源として三原色の各色の波長領域からなる三原色狭帯域光を出射するレーザ発振器21を備えている。レーザ発振器21は、例えば波長が642nmである赤色光を出射するレーザ発振器21R、波長が532nmである緑色光を出射するレーザ発振器21G、波長が457nmである青色光を出射するレーザ発振器21Bから構成されている。
【0039】
また、プロジェクタ装置20は、レーザ発振器21から出射された光を画像光として投影用スクリーン10に導くための照明光学系として、コリメータレンズ22、シリンドリカルレンズ23、GLV24、体積型ホログラム素子25、ガルバノミラー26および投影レンズ27を備えている。コリメータレンズ22は、赤色光用のコリメータレンズ22R、緑色光用のコリメータレンズ22G、および、青色光用のコリメータレンズ22Bから構成される。GLV24は、赤色光用のリボン列24R、緑色光用のリボン列24G、および青色光用のリボン列24Bを備えている。体積型ホログラム素子25は、第1体積型ホログラム素子25aおよび第2体積型ホログラム素子25bから構成されている。
【0040】
なお、プロジェクタ装置20では、レーザ発振器21Rから出射された赤色光、レーザ発振器21Gから出射された緑色光、レーザ発振器21Bから出射された青色光のそれぞれが、コリメータレンズ22では各色用のコリメータレンズ22R,22G,22B、GLV24では各色用のリボン列24R,24G,24Bに入射するようにこれらの構成要素が配置されている。
【0041】
このような構成を有するプロジェクタ装置20では、レーザ発振器21から出射された赤色光、緑色光および青色光の各光は、コリメータレンズ22を透過することにより平行光となる。このコリメータレンズ22により平行光となった三原色波長域光は、シリンドリカルレンズ23の作用によりGLV24に集光される。これら集光した三原色波長域光は、画像信号に応じてGLV24の各リボン列が駆動されることによって空間的に変調される。
【0042】
GLV24の作用により変調された三原色波長域光は、シリンドリカルレンズ23の作用により体積型ホログラム素子25に集光される。この体積型ホログラム素子25では、第1体積型ホログラム素子25aにより赤色光が回折され、第2体積型ホログラム素子25bにより青色光および赤色光が同じ方向に回折される。また、第1体積型ホログラム素子25aおよび第2体積型ホログラム素子25bでは、緑色光が回折されずに直進して透過し、赤色光と同じ方向に出射される。このようにして体積型ホログラム素子25の作用により、赤色光、緑色光および青色光の各色の光が合成されて、同じ方向に出射される。同じ方向に出射された三原色波長域光は、ガルバノミラー26により所定の方向に走査され、投影レンズ27を介して投影用スクリーン10の前面に投射される。
【0043】
投影用スクリーン10では、プロジェクタ装置20から投射された三原色波長域光が外光とともに光拡散層14および角度補正層13を透過し、光学多層膜12に入射する。ここで、図10に示したように角度補正層13が形成されていない場合には、スクリーンの垂直方向に対して例えば30度で三原色波長域光が入射すると、光学多層膜12に対して斜め方向で入射するため、光学多層膜12で反射される三原色波長域光は所望の光学特性から変化し、色ずれが生じてしまう(図5の破線)。これに対して、本実施の形態では光学多層膜12の上に角度補正層13を形成し、この角度補正層13がフレネルレンズの機能を有するので、この角度補正層13により三原色波長域光が回折され、図4に示したように光学多層膜12に垂直な方向に入射する。
【0044】
この光学多層膜12では、三原色波長域光が反射されると共に、三原色波長域光以外の少なくとも可視波長域の光は透過し黒色基板11に吸収される。このとき、光学多層膜12で反射される三原色波長域光は、図5の実線に示したように色ずれが殆ど生じずに、所望の光学特性で反射される。このように三原色波長域光は光拡散層14に入射し、この光拡散層14により散乱され、スクリーンの前面に画像が形成される。
【0045】
このとき、黒色基板11により黒レベルが高められるだけでなく、光学多層膜12により白レベルが高められるので、明暗のコントラストが高い画像が形成される。また、角度補正層13によって光学多層膜12の光学特性が低下することが防止され、色ずれが生じることが殆どなくなるので、色コントラストの高い画像が形成される。
【0046】
このように本実施の形態では、光学多層膜12が三原色波長域光に対して高反射特性を有し、三原色波長域光以外の少なくとも可視波長領域の光に対して高透過特性を有するようにしたので、画像の白レベルが高めることができる。よって、映写環境に影響されずに明瞭な画像を得ることが可能となる。また、光学多層膜12の上に角度補正層13を形成し、スクリーンに入射光が斜め方向から入射した場合でも、この角度補正層により三原色波長域光を光学多層膜12に対して垂直に入射させるようにしたので、光学多層膜12の光学特性の低下が防止され、色ずれが生じることがなくなる。これにより、色コントラストを高めることができるので鮮明な画像も得ることが可能となり、また、スクリーンの大画面化を図ることができる。また、高分子材料からなる黒色基板11の上に、溶剤材料により光学多層膜12が形成されているので、スクリーンが可撓性を有するようになり、これにより収納性を向上させることが可能となる。
【0047】
また、黒色基板11に光吸収層としての機能を持たせることにより画像の黒レベルを向上させるだけでなく光学多層膜12を形成することにより画像の白レベルを向上させ、画像の明暗のコントラストを高めて明瞭な画像が得られるようにしたので、従来のように画像の明暗のコントラストを高めるために突起を形成する等してスクリーンの表面形状を工夫することが不要となる。その結果、手間や時間がかからなくなり、これにより製造コストを削減することが可能となる。更に、塗布法を用いて光学多層膜12を形成するようにしたので、真空プロセスにより形成する場合と比較して製造コストを削減することができる。
【0048】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態では溶剤系材料として、加熱により硬化する熱硬化型樹脂を用いて光学多層膜12を形成するようにしたが、紫外線を照射することにより硬化する熱硬化型樹脂を用いるようにしてもよい。
【0049】
また、上記実施の形態では、角度補正層13にプラスチック材料からなるプラスチック基板を用いるようにしたが、プラスチック材料以外の材料からなる基板を用いるようにしてもよい。例えば、ガラス材料からなる基板を用いることが可能である。更に、上記実施の形態では、角度補正層13をフレネルレンズ31またはフレネルレンズ32の形状に加工するようにしたが、これら以外のフレネルレンズの形状に加工するようにしてもよい。加えて、上記実施の形態では、角度補正層13は溶剤系材料からなる光学多層膜12の上に形成するようにしたが、他の材料、例えば無機材料からなる光学多層膜の上に形成するようにしてもよい。また、上記実施の形態では、角度補正層13は光学多層膜の上に形成するようにしたが、光を反射させる機能を有する如何なる光反射層の上に形成するようにしてもよい。
【0050】
また、上記実施の形態では基板として黒色基板11を用い、この黒色基板11に光吸収層の機能を持たせるようにしたが、基板として透明基板41を用い、この透明基板41の裏面に別途黒色塗料からなる光吸収層42を形成するようにしてもよい(図7)。更に、基板として透明基板41を用い、この透明基板41の裏面に別途黒色基板を設けるようにしてもよい。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の投影用スクリーンによれば、光反射層が特定の波長領域の光に対して高反射特性を有し、この特定の波長領域の以外の少なくとも可視波長領域の光に対して高透過特性を有するようにしたので、画像の白レベルが高めることが可能となる。従って、映写環境に影響されずに明瞭な画像を得ることができる。また、光反射層の上に角度補正層を形成し、スクリーンに入射光が斜めに入射した場合にも、この角度補正層により光反射層の面内に対して垂直な方向に光を入射させるようにしたので、光反射層の光学特性の低下を防止することができ、色ずれが生じることがなくなる。よって、色コントラストを高めることができるので鮮明な画像も得ることが可能となり、また、スクリーンの大画面化を図ることができる。
【0052】
特に、請求項3および請求項9記載の投影用スクリーンによれば、基板を高分子材料からなるようにし、光反射層を溶剤材料からなるようにしたので、スクリーンが可撓性を有するようになり、これにより収納性を向上させることができる。
【0053】
また、請求項13ないし請求項25のいずれか1項に記載の投影用スクリーンの製造方法によれば、光反射層を形成し画像の白レベルを向上させることにより、画像の明暗のコントラストを高めて明瞭な画像が得られるようにしたので、従来のように画像の明暗のコントラストを高めるために、突起を形成する等してスクリーンの表面形状を工夫することが不要となる。その結果、手間や時間がかからなくなり、これにより製造コストを削減することが可能となる。更に、塗布法を用いて光反射層を形成するようにしたので、真空プロセスにより形成する場合と比較して製造コストを削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る投影用スクリーンの断面構成図である。
【図2】図1に示した投影用スクリーンの角度補正層に用いられるフレネルレンズである。
【図3】図1に示した投影用スクリーンの角度補正層に用いられるフレネルレンズである。
【図4】図1に示した投影用スクリーンに光が斜め方向から入射した場合を説明するための概略図である。
【図5】図1に示した投影用スクリーンの光学多層膜の反射特性を表すものである。
【図6】図1に示した投影用スクリーンを用いたプロジェクタ装置の概略構成図である。
【図7】投影用スクリーンの変形例の概略構成図である。
【図8】従来の投影用スクリーンの概略構成図である。
【図9】従来の投影用スクリーンの概略構成図である。
【図10】投影用スクリーンの比較例に光が斜め方向から入射した場合を説明するための概略図である。
【符号の説明】
10・・・ 投影用スクリーン、11・・・ 黒色基板、12・・・ 光学多層膜、13・・・ 光拡散層、20・・・ プロジェクタ装置、21,21R,21G,21B・・・ レーザ発振器、22,22R,22G,22B・・・ コリメータレンズ、23・・・ シリンドリカルレンズ、24・・・ GLV、24R,24G,24B・・・ リボン列、25・・・ 体積型ホログラム素子、25a・・・ 第1体積型ホログラム素子、25b・・・ 第2体積型ホログラム素子、26・・・ ガルバノミラー、27・・・ 投影レンズ、31, 32・・・ フレネルレンズ、31A・・・ 曲面構造、31B・・・ 鋸刃構造、31Bm ・・・ 鋸刃、32A・・・ 溝構造、32Am ・・・ 溝、41・・・ 透明基板、42・・・ 光吸収層
Claims (25)
- 基板と、
前記基板の一面に形成され、特定の波長領域の光に対して高反射特性を有し、前記波長領域以外の少なくとも可視波長領域の光に対して高透過特性を有する光反射層と、
前記光反射層における前記基板との隣接面とは反対側の面に形成され、前記光反射層の面内に対して垂直な方向に光を入射させる角度補正層と
を備えたことを特徴とする投影用スクリーン。 - 前記光反射層は、特定の波長領域の光に対する反射率が80%以上であり、前記波長領域以外の少なくとも可視波長領域の光に対する透過率が80%以上である
ことを特徴とする請求項1記載の投影用スクリーン。 - 前記光反射層は溶剤材料からなる
ことを特徴とする請求項1記載の投影用スクリーン。 - 前記光反射層の溶剤材料は加熱または紫外線照射により硬化された
ことを特徴とする請求項3記載の投影用スクリーン。 - 前記光反射層は、高屈折率膜と、前記高屈折率膜よりも低い屈折率を有する低屈折率膜とが交互に積層された光学多層膜である
ことを特徴とする請求項4記載の投影用スクリーン。 - 前記角度補正層はフレネルレンズの形状に加工されたものである
ことを特徴とする請求項1記載の投影用スクリーン。 - 前記基板の色は黒色であり、光吸収層としての機能を有している
ことを特徴とする請求項1記載の投影用スクリーン。 - 前記基板は透明であり、前記基板における前記光反射層が形成された面とは反対側の面に黒色塗料からなる光吸収層を備えている
ことを特徴とする請求項1記載の投影用スクリーン。 - 前記基板は高分子材料からなり、この高分子材料は、ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、またはポリオレフィンである
ことを特徴とする請求項1記載の投影用スクリーン。 - 前記角度補正層における前記光反射層が形成された面とは反対側の面に光拡散層を備えた
ことを特徴とする請求項1記載の投影用スクリーン。 - 前記光拡散層はフィルムである
ことを特徴とする請求項10記載の投影用スクリーン。 - 前記特定の波長領域は、赤色光の波長領域、緑色光の波長領域および青色光の波長領域を含む
ことを特徴とする請求項1記載の投影用スクリーン。 - 基板の上に、塗布法を用いて、特定の波長領域の光に対して高反射特性を有し、前記波長領域以外の少なくとも可視波長領域の光に対して高透過特性を有する光反射層を形成する工程と、
前記光反射層の上に、前記光反射層の面内に対して垂直な方向に光を入射させる角度補正層を形成する工程と
を含むことを特徴とする投影用スクリーンの製造方法。 - 前記光反射層は、特定の波長領域の光に対する反射率を80%以上とし、前記波長領域以外の少なくとも可視波長領域の光に対する透過率を80%以上とする
ことを特徴とする請求項13記載の投影用スクリーンの製造方法。 - 前記光反射層を溶剤材料により形成する
ことを特徴とする請求項13記載の投影用スクリーンの製造方法。 - 前記光反射層の溶剤材料を加熱または紫外線照射によって硬化する
ことを特徴とする請求項15記載の投影用スクリーンの製造方法。 - 前記光反射層を高屈折率膜と前記高屈折率膜よりも低い屈折率を有する低屈折率膜とを交互に積層した光学多層膜とする
ことを特徴とする請求項16記載の投影用スクリーンの製造方法。 - エッチング処理を施すことにより、前記光学多層膜の各膜を所望の厚さとする
ことを特徴とする請求項17記載の投影用スクリーンの製造方法。 - 前記角度補正層をフレネルレンズの形状に加工する
ことを特徴とする請求項13記載の投影用スクリーンの製造方法。 - 前記基板の色を黒色とし、光吸収層としての機能を持たせる
ことを特徴とする請求項13記載の投影用スクリーンの製造方法。 - 前記基板を透明とし、前記基板の下に黒色塗料からなる光吸収層を形成する
ことを特徴とする請求項13記載の投影用スクリーンの製造方法。 - 前記基板を高分子材料とし、この高分子材料を、ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、またはポリオレフィンとする
ことを特徴とする請求項13記載の投影用スクリーンの製造方法。 - 前記光反射層の上に光拡散層を形成する工程を含む
ことを特徴とする請求項13記載の投影用スクリーンの製造方法。 - 前記光拡散層をフィルムとする
ことを特徴とする請求項23記載の投影用スクリーンの製造方法。 - 前記特定の波長領域は、赤色光の波長領域、緑色光の波長領域および青色光の波長領域を含む
ことを特徴とする請求項13記載の投影用スクリーンの製造方法。
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-
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