JP4171970B2 - 投影用スクリーンおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光源からの光を受けることにより画像を表示する投影用スクリーンおよびその製造方法に係り、特に反射方式の投影用スクリーンおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、会議等では発表者が資料を提示する手段としてオーバーヘッドプロジェクタやスライドプロジェクタが広く用いられ、一般家庭ではビデオプロジェクタや動画フィルムプロジェクタが普及しつつある。これらプロジェクタ装置では、光源から出力された光が、ライトバルブ(Light Valve )により空間的に変調されて画像光とされ、この画像光がレンズ等の照明光学系を通じて投影用スクリーン上に投影される。
【0003】
この種のプロジェクタ装置にはカラー画像を表示させることができるものがあり、光源として三原色である赤色(Red =R),緑色(Green =G),青色(Blue=B)を含んだ白色光を発するランプが用いられ、ライトバルブとしては透過型の液晶パネルが用いられている。このプロジェクタ装置では、光源から出射された白色光が、照明光学系によって赤色光、緑色光および青色光の各色の光線に分離され、これら光線が所定の光路に収束される。これら光束が液晶パネルにより画像信号に応じて空間的に変調され、変調された光束が光合成部によってカラー画像光として合成され、合成されたカラー画像光が投影レンズにより投影用スクリーンに拡大投射される。
【0004】
また、最近、カラー画像を表示させることが可能なプロジェクタ装置として、光源に狭帯域三原色光源、例えば三原色の各色の狭帯域光を発するレーザ発振器を用い、ライトバルブに回折格子型ライトバルブ(GLV:Grating Light Valve )を用いた装置が開発されている。このプロジェクタ装置では、レーザ発振器により出射された各色の光束が画像信号に応じてGLVにより空間的に変調される。このように変調された光束は前述したプロジェクタ装置と同様にして、光合成部によってカラー画像光として合成され、この合成されたカラー画像光が投影レンズにより投影用スクリーンに拡大投射される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、プロジェクタ装置に用いられる投影用スクリーンは、その背面側から投影光を照射して前面側から見る透過方式と、前面側から投影光を照射しその反射した光を前面側から見る反射方式とに分けられる。いずれの方式においても、視認性の良好なスクリーンを実現するために、明るくて、かつ、コントラストの高い画像を得ることが望まれている。また、収納性を向上させるために、基板材料として高分子材料を用い、この高分子材料の可撓性を利用した投影用スクリーンが望まれている。
【0006】
しかしながら、明るくて、かつ、コントラストの高い画像が得られると共に、可撓性を有するような投影用スクリーンは実現されていない。例えば、図11に示したような投影用スクリーン100では、透明層112の表面に突起112Aを形成し、この突起112Aの側面には黒色塗料からなる不透明層113を形成することにより、スクリーンの表面形状を工夫して、黒レベルを下げて明るさとコントラストを高めている(例えば、特許文献1参照)。しかし、突起112Aを形成する工程や不透明層113を形成する工程等で多くの時間と手間がかかることによって製造コストが高くなり、また、可撓性を得ることができないという問題があった。
【0007】
【特許文献1】
特許第2889153号公報
【0008】
また、図12に示したような投影用スクリーン200は基板211を備えており、この基板211の上には反射層212、光吸収層213および拡散層214が順次形成されている(例えば、特許文献2参照)。このような構成を有する投影用スクリーン200は全ての層に可撓性を持たせているので全体として可撓性を有するが、光吸収層213が反射層212よりも光の入射面側に形成されており、殆どの入射光が光吸収層213に吸収されるために白レベルが下がり、十分な明るさとコントラストを得ることができないという問題があった。
【0009】
【特許文献2】
特許第3103802号公報
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、映写環境に影響されずに、明瞭な画像を得ることが可能となり、可撓性も得ることができ、また生産性を向上させることが可能となる投影用スクリーンおよびその製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明による投影用スクリーンは、基板上に、金属膜と誘電体膜とがこの順に交互に積層してなる光学多層膜を備え、光学多層膜は三原色の波長領域の光に対して反射特性を有すると共に、三原色の波長領域以外の光に対しては吸収特性を有するものである。
【0012】
本発明による投影用スクリーンの製造方法は、スパッタリング法を用いて、基板上に、金属膜と誘電体膜とをこの順に交互に積層し、三原色の波長領域の光に対して反射特性を有すると共に、三原色の波長領域以外の光に対しては吸収特性を有する光学多層膜を形成する工程を含むものである。
【0013】
本発明による投影用スクリーンでは、光学多層膜により、三原色の波長領域の光に対して反射特性を示す一方、三原色の波長領域以外の光に対しては吸収特性を示し、その結果、明暗のコントラストが高い画像が得られる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態に係る投影用スクリーン10の一部の断面構成を表すものである。この投影用スクリーン10はいわゆる反射方式のスクリーンである。投影用スクリーン10は透明基板11を備えており、この透明基板11の上には光選択反射層として光学多層膜12が形成されている。この光学多層膜12は、特定の波長領域の光に対して高反射特性を有し、特定の波長領域以外の光に対しては高吸収特性を有するものである。これについては後述する。光学多層膜12の上には光拡散層13が形成されている。
【0016】
透明基板11は、例えば、高分子材料から構成され、厚さが188μmであり、可撓性を有する。高分子材料としては、例えばポリカーボネイト(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリオレフィン(PO)が挙げられる。
【0017】
光学多層膜12は、金属膜12Mp と誘電体膜12Dp とが交互に積層されたものである(但し、pは 1〜nの正数である)。すなわち、金属膜12M1 , 誘電体膜12D1 , 金属膜M2 , 誘電体膜12D2,・・・・, 金属膜12Mn , 誘電体膜12Dn が順次積層されたものである。金属膜12Mp は、ニオブ(Nb)、アルミニウム(Al)または銀(Ag)からなる。例えば、金属膜12Mp としてAlが用いられると、光学多層膜12における平均反射率が大きくなり、このAlにより平均反射率の上限が決定される。他方、金属膜12Mp としてNbが用いられると、光学多層膜12における平均反射率が小さくなり、このNbにより平均反射率の下限が決定される。誘電体膜12Dp は、五酸化ニオブ(Nb2 O5 )、二酸化チタン(TiO2 )、五酸化タンタル(Ta2 O5 )、酸化アルミニウム(Al2 O3 )または酸化シリコン(SiO2 )からなる。
【0018】
光学多層膜12の各膜厚は、例えば赤色、緑色および青色の各色の波長領域の光からなる三原色波長域光に対して、例えば反射率が70%以上という高い反射特性を有すると共に、この三原色波長域光以外の波長域の光に対しては、例えば吸収率が80%以上という高い吸収特性を有するように設計されている。ここで、光学多層膜12の各膜厚は、その各膜の厚さをd、その各膜の屈折率をn、この光学多層膜に入射する入射光の波長をλとすると、各膜の光学的厚さndが入射光の波長λに対して数1に示した式を満足するように設計されている。
【0019】
【数1】
nd=λ(α±1/4)(但し、αは自然数である)
【0020】
例えば、金属膜12M1 にはNb、誘電体膜12D1 にはNb2 O5 、金属膜12M2 にはNb、誘電体膜12D2 にはNb2 O5 が用いられ、合計層数が計4層とされ、図2に示したような光学特性を有するように設計されている。すなわち、赤色光の波長が642nm、緑色光の波長が532nm、および青色光の波長が457nmである三原色波長域光に対して、光学多層膜12が高い反射率、例えば70%の反射率を有し、この三原色波長域光以外の波長領域の光に対しては高い吸収率、例えば吸収率が80%以上という吸収率を有し、また全波長領域の光に対して例えば5〜10%の透過率を有するように設計されている。このように設計したことにより、各層の厚さは、金属膜12M1 が40nm、誘電体膜12D1 が553nm、金属膜12M2 が20nm、誘電体膜12D2 が553nmとなっている。
【0021】
このような構成を有する光学多層膜12は、三原色波長域光に対して高反射特性を有し、三原色波長域光以外の波長領域の光に対しては高吸収特性を有するので、スクリーンの白レベルおよび黒レベルが高められる。また、光学多層膜12の合計層数が少なくなり、膜厚が小さくなるので、可撓性を有する。なお、三原色波長域光の各色光の波長は、本実施の形態に適用されるプロジェクタ装置20(図8)の光源(レーザ発振器21)から出射される各色のレーザ光の波長である。
【0022】
また、このときの金属膜12M1 , 誘電体膜12D1 , 金属膜12M2 , 誘電体膜12D2 の厚さを基準として、全ての膜の膜厚を同じ割合で変化させると、三原色波長域の各色光の波長領域において、図3に示した▲1▼〜▲3▼のような反射率変化となる。更に、スクリーンに対する入射角度を変化させると、三原色波長域の各色の波長領域において、図4に示した▲1▼〜▲3▼ような反射率変化となる。ここで、比較例として、本出願人と同一の出願人が、特願2002−070799号にて提案している投影用スクリーンの光学薄膜における反射率変化の膜厚依存性を図3の▲4▼〜▲6▼に、反射率変化の入射角度依存性を図4の▲4▼〜▲6▼に併せて示しておく。この光学薄膜は、高屈折率層と、この高屈折率層よりも低い屈折率を有する低屈折率層とを交互に積層したものであり、高屈折率層としては五酸化ニオブ(Nb2 O5 )、低屈折率層としては二酸化シリコン(SiO2 )が用いられている。
【0023】
図3に示したように、光学多層膜12の膜厚を変化させると、本実施の形態は、比較例と比べて反射率変化の膜厚依存性が小さくなる。また、図4に示したように、スクリーンに対する入射角度を変化させると、本実施の形態は、比較例と比べて反射率変化の入射角度依存性が小さくなる。特にこの場合は、金属膜12M1 および金属膜12M2 にNbが用いられるので、反射率変化の入射角度依存性が小さくなり、広視野角特性が得られる。
【0024】
また、例えば、金属膜12M1 にはAl、誘電体膜12D1 にはNb2 O5 、金属膜12M2 にはNb、誘電体膜12D2 にはNb2 O5 が用いられ、合計層数が計4層とされ、図5に示したような光学特性を有するように設計されている。すなわち、三原色波長域光に対して、光学多層膜12が高い反射率、例えば80%の反射率を有し、この三原色波長域光以外の波長領域の光に対しては高い吸収率、例えば吸収率が90%以上という吸収率を有し、また全波長領域の光に対して例えば略0%の透過率を有するように設計されている。このように設計したことにより、金属膜12M1 の厚さが50nm、誘電体膜12D1 の厚さが551nm、金属膜12M2 の厚さが15nm、誘電体膜12D2 の厚さが551nmとなっている。
【0025】
このような構成を有する光学多層膜12は、三原色波長域光に対して高反射特性を有し、三原色波長域光以外の波長領域の光に対して高吸収特性を有するので、スクリーンの白レベルおよび黒レベルが高められる。また、光学多層膜12は合計層数が少なくなることから薄くなるので、可撓性を有する。
【0026】
また、このときの金属膜12M1 , 誘電体膜12D1 , 金属膜12M2 , 誘電体膜12D2 の厚さを基準として、全ての膜の膜厚を同じ割合で変化させると、三原色波長域の各色光の波長領域において、図6の▲1▼〜▲3▼に示したような反射率変化となる。更に、スクリーンに対する入射角度を変化させると、三原色波長域の各色の波長領域において、図7の▲1▼〜▲3▼に示したような反射率変化となる。ここで、比較例として、前述した光学薄膜における反射率変化の膜厚依存性(図6の▲4▼〜▲6▼)、反射率変化の入射角度依存性(図7の▲4▼〜▲6▼)も併せて示しておく。
【0027】
図6に示したように、光学多層膜12の膜厚を変化させると、本実施の形態は、比較例と比べて反射率変化の膜厚依存性が小さくなる。また、図7に示したように、スクリーンに対する入射角度を変化させると、本実施の形態は、比較例と比べて反射率変化の入射角度依存性が小さくなる。特にこの場合は、金属膜12M1 にAl、金属膜12M2 にNbが用いられるので、反射率変化の膜厚依存性が小さくなる。
【0028】
ここで、金属膜12Mp に用いられる材料は、上記金属材料に限定されるものではなく、可視光波長域における反射率を均一とする金属材料が望ましい。また、誘電体膜12Dp に用いられる材料は、上記誘電体材料に限定されるものではなく、誘電体膜12Dp の屈折率が大きいほど三原色波長域の各色光の波長領域における反射ピークの半値幅が大きくなり、屈折率が小さいほど各色光の波長領域における反射ピークの半値幅が小さくなる傾向を有することから、必要とされるスクリーンの光学特性に応じて適宜に選択することが可能である。
【0029】
光拡散層13は、例えばマイクロレンズアレー(MLA)が形成されたフィルムであり、可撓性を有する。この光拡散層13では、光学多層膜12で反射された三原色波長域光が散乱される。これによって、視野角が大きくなり良い視野特性が得られる。なお、光拡散層13は、例えば直径が数μm〜数mm程度である球状の複数のビーズが等間隔に配列されたものでもよい。これらのビーズは例えばガラスや高分子材料等の透明な材料からなる。更に、光拡散層13は、所定の媒質中に例えば銀(Ag)や銅(Cu)等の金属微粒子が分散されたものでもよい。
【0030】
このように本実施の形態では、スクリーンを構成する透明基板11、光学多層膜12および光拡散層13の全てが可撓性を有するので、スクリーン自体が可撓性を有する。
【0031】
次に、このような構成を有する投影用スクリーン10の製造方法について説明する。まず、先に挙げた高分子材料からなる透明基板11を用意する。次に、例えばスパッタリング法を用いて、透明基板11の上に、金属膜12Mp と誘電体膜12Dp とを交互に積層して光学多層膜12を形成する。この光学多層膜12の各膜厚は、前述のように赤色、緑色および青色の各色の波長領域の光からなる三原色波長域光に対して高反射特性を有すると共に、この三原色波長域光の波長領域以外の光に対して高吸収特性を有するように設計する。
【0032】
光学多層膜12は、具体的には、Nbからなる金属膜12M1 、Nb2 O5 からなる誘電体膜12D1 、Nbからなる金属膜12M2 、Nb2 O5 からなる誘電体膜12D2 の4層構造とし、各層の厚さを、金属膜12M1 を40nm、誘電体膜12D1 を553nm、金属膜12M2 を20nm、誘電体膜12D2 を553nmとする。これにより、三原色波長域光に対して、光学多層膜12が高い反射率、例えば70%の反射率を有し、この三原色波長域光以外の波長領域の光に対しては高い吸収率、例えば吸収率が80%以上という吸収率を有し、また全波長領域の光に対して例えば5〜10%の透過率を有するようになる(図2)。
【0033】
また、光学多層膜12は、Alからなる金属膜12M1 、Nb2 O5 からなる誘電体膜12D1 、Nbからなる金属膜12M2 、Nb2 O5 からなる誘電体膜12D2 の4層構造とし、各層の厚さを金属膜12M1 を50nm、誘電体膜12D1 を551nm、金属膜12M2 を15nm、誘電体膜12D2 を551nmとする。これにより、三原色波長域光に対して、光学多層膜12が高い反射率、例えば80%の反射率を有し、この三原色波長域光以外の波長領域の光に対しては高い吸収率、例えば吸収率が90%以上という吸収率を有し、また全波長領域の光に対して例えば略0%の透過率を有するようになる(図5)。
【0034】
最後に、光学多層膜12の上に、例えばマイクロレンズアレー(MLA)が形成されたフィルムである光拡散層13を貼り合わせることによって、図1に示した投影用スクリーン10が完成する。
【0035】
このように本実施の形態では、透明基板11に光吸収層としての機能を持たせることにより画像の黒レベルを向上させるだけでなく、光学多層膜12を形成することにより画像の白レベルを向上させることにより、画像の明暗のコントラストを高めて明瞭な画像が得られるようにしたので、従来のように画像の明暗のコントラストを高めるために突起を形成する等してスクリーンの表面形状を工夫することが不要となる。その結果、手間や時間がかからなくなり、これにより製造コストが削減される。
【0036】
また、本実施の形態では、光学多層膜12を金属膜12Mp と誘電体膜12Dp とを交互に積層させた構成としたことにより、比較例と比べて反射率の膜厚依存性が小さくなり、また、反射率変化の入射角度依存性が小さくなるので、製造マージンが大きくなり、製造コストが更に削減されると共に、生産性が向上する。
【0037】
このような構成を有する投影用スクリーン10は、例えばフロント式のプロジェクタ装置20のスクリーンとして用いられる。図8は、このプロジェクタ装置20の概略構成を表すものである。プロジェクタ装置20は、光源として三原色の各色の波長領域からなる三原色狭帯域光を出射するレーザ発振器21を備えている。レーザ発振器21は、例えば波長が642nmである赤色光を出射するレーザ発振器21R、波長が532nmである緑色光を出射するレーザ発振器21G、波長が457nmである青色光を出射するレーザ発振器21Bから構成されている。
【0038】
また、プロジェクタ装置20は、レーザ発振器21から出射された光を画像光として投影用スクリーン10に導くための照明光学系として、コリメータレンズ22、シリンドリカルレンズ23、GLV24、体積型ホログラム素子25、ガルバノミラー26および投影レンズ27を備えている。コリメータレンズ22は、赤色光用のコリメータレンズ22R、緑色光用のコリメータレンズ22G、および、青色光用のコリメータレンズ22Bから構成される。GLV24は、赤色光用のリボン列24R、緑色光用のリボン列24G、および青色光用のリボン列24Bを備えている。体積型ホログラム素子25は、第1体積型ホログラム素子25aおよび第2体積型ホログラム素子25bから構成されている。
【0039】
なお、プロジェクタ装置20では、レーザ発振器21Rから出射された赤色光、レーザ発振器21Gから出射された緑色光、レーザ発振器21Bから出射された青色光のそれぞれが、コリメータレンズ22では各色用のコリメータレンズ22R,22G,22B、GLV24では各色用のリボン列24R,24G,24Bに入射するようにこれらの構成要素が配置されている。
【0040】
このような構成を有するプロジェクタ装置20では、レーザ発振器21から出射された赤色光、緑色光および青色光の各光は、コリメータレンズ22を透過することにより平行光となる。このコリメータレンズ22により平行光となった三原色波長域光は、シリンドリカルレンズ23の作用によりGLV24に集光される。これら集光した三原色波長域光は、画像信号に応じてGLV24の各リボン列が駆動されることによって空間的に変調される。
【0041】
GLV24の作用により変調された三原色波長域光は、シリンドリカルレンズ23の作用により体積型ホログラム素子25に集光される。この体積型ホログラム素子25では、第1体積型ホログラム素子25aにより赤色光が回折され、第2体積型ホログラム素子25bにより青色光および赤色光が同じ方向に回折される。また、第1体積型ホログラム素子25aおよび第2体積型ホログラム素子25bでは、緑色光が回折されずに直進して透過し、赤色光と同じ方向に出射される。このようにして体積型ホログラム素子25の作用により、赤色光、緑色光および青色光の各色の光が合成されて、同じ方向に出射される。同じ方向に出射された三原色波長域光は、ガルバノミラー26により所定の方向に走査され、投影レンズ27を介して投影用スクリーン10の前面に投射される。
【0042】
本実施の形態の投影用スクリーン10では、プロジェクタ装置20から投射された三原色波長域光とともに外光が、光拡散層13を通過して光学多層膜12に入射する。この光学多層膜12は図2または図5に示したような反射特性を有するので、この光学多層膜12により三原色波長域光が反射されると共に、三原色波長域光以外の光が吸収される。光学多層膜12で反射された三原色波長域光は光拡散層13に入射し、この光拡散層14により散乱され、スクリーンの前面に画像が形成される。このとき、光学多層膜12により白レベルおよび黒レベルが高められるので、明暗のコントラストが高い画像を形成することができる。よって、映写環境に影響されずに明瞭な画像を得ることが可能となる。
【0043】
また、光学多層膜12が金属膜12Mp と誘電体膜12Dp とが交互に積層された構成であるので、比較例と比較して良い視野特性が得られる。例えば、光学多層膜12において、金属膜12M1 にNb、誘電体膜12D1 にNb2 O5 、金属膜12M2 にNb、誘電体膜12D2 にNb2 O5 が用いられ、合計層数が計4層である場合には、図3に示したように、比較例と比べて反射率変化の膜厚依存性が小さくなり、また、図4に示したように、比較例と比べて反射率変化の入射角度依存性が小さくなることにより良い視野特性が得られる。また、例えば、金属膜12M1 にはAl、誘電体膜12D1 にはNb2 O5 、金属膜12M2 にはNb、誘電体膜12D2 にはNb2 O5 が用いられ、合計層数が計4層である場合には、図7に示したように、比較例と比べて反射率変化の膜厚依存性が小さくなる。また、図8に示したように、比較例と比べて反射率変化の入射角度依存性が小さくなることにより、広い視野角が得られる。これにより視野特性を向上させることができ、よって大画面化を図ることが可能となる。
【0044】
更に、透明基板11の上を高分子材料からなるようにし、光学多層膜12を光学多層膜12が金属膜12Mp と誘電体膜12Dp とが交互に積層された構成としたので、スクリーンが可撓性を有するようになり、これにより収納性を向上させることが可能となる。
【0045】
また、光学多層膜12を形成することにより画像の白レベルおよび黒レベルを向上させることにより、画像の明暗のコントラストを高めて明瞭な画像が得られるようにしたので、従来のように画像の明暗のコントラストを高めるために突起を形成する等してスクリーンの表面形状を工夫することが不要となる。その結果、手間や時間がかからなくなり、これにより製造コストを削減することが可能となる。また、光学多層膜12を金属膜12Mp と誘電体膜12Dp とを交互に積層させた構成としたので、比較例と比べて反射率変化の膜厚依存性が小さくなり、また、反射率変化の入射角度依存性が小さくなる。これにより、製造マージンを大きくすることができ、その結果、製造コストを更に削減することができ、生産性を向上させることが可能となる。
【0046】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態では基板として透明基板11を用いるようにしたが、例えば図9に示した投影用スクリーン20のように、黒色塗料等を含んだ高分子材料から構成される黒色基板31を用い、基板自体に光吸収層としての機能を持たせるようにしてもよい。また、例えば図10に示した投影用スクリーン30のように、透明基板31の裏面に別途黒色塗料からなる光吸収層32を形成するようにしてもよい。更に、基板として透明基板31を用い、この透明基板31の裏面に別途黒色基板を設けるようにしてもよい。
【0047】
また、透明基板11と金属膜12M1 との間に誘電体膜を形成するようにしてもよい。この誘電体膜は、例えば五酸化ニオブ(Nb2 O5 )、二酸化チタン(TiO2 )、五酸化タンタル(Ta2 O5 )、酸化アルミニウム(Al2 O3 )または酸化シリコン(SiO2 )からなるようにする。
【0048】
更に、上記実施の形態では、光学多層膜12の上に光拡散層13を形成し、この光拡散層13により光学多層膜12で反射された三原色波長域光を散乱させるようにしたが、透明基板11の表面に複数の凸部または複数の凹部を有する光拡散部を形成し、この光拡散部の上に、凸部または凹部と同じ形状を有すると共に、特定の波長領域の光に対して高反射特性を有し、前記波長領域以外の少なくとも可視波長領域の光に対して高吸収特性を有する光学薄膜12を形成するようにしてもよい。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の投影用スクリーンによれば、基板上に、金属膜と誘電体膜とをこの順に交互に積層することにより、三原色の波長領域の光に対して反射特性を有し、三原色の波長領域の以外の光に対しては吸収特性を有する光学多層膜を設けるようにしたので、画像の白レベルおよび黒レベルを高めることができる。よって、映写環境に影響されずに明瞭な画像を得ることが可能となる。
【0050】
特に、本発明では、光学多層膜を金属膜と誘電体膜とを交互に積層した構成としたので、広い視野角が得られる。これにより視野特性を向上させることができ、よって大画面化を図ることが可能となる。
【0051】
また、基板を高分子材料からなるようにし、光学多層膜を金属膜と誘電体膜とを交互に積層した構成とすることにより、スクリーンが可撓性を有するようになり、これにより収納性を向上させることが可能となる。
【0052】
また、本発明の投影用スクリーンの製造方法によれば、金属膜と誘電体膜とをこの順に交互に積層してなる光学多層膜を形成して画像の白レベルおよび黒レベルを向上させることにより、画像の明暗のコントラストを高めて明瞭な画像が得られるようにしたので、従来のように画像の明暗のコントラストを高めるために突起を形成する等してスクリーンの表面形状を工夫することが不要となる。その結果、手間や時間がかからなくなり、これにより製造コストを削減することが可能となる。
【0053】
また、光学多層膜を金属膜と誘電体膜とを交互に積層させた構成としたので、反射率変化の膜厚依存性が小さくなり、また、反射率変化の入射角度依存性が小さくなることにより、製造マージンを大きくすることができ、その結果、製造コストを更に削減することができ、生産性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る投影用スクリーンの概略構成図である。
【図2】図1に示した投影用スクリーンの光学多層膜の光学特性を表すものである。
【図3】図1に示した投影用スクリーンの光学多層膜の反射特性と比較例の投影用スクリーンの光学薄膜の反射特性とを比較したものである。
【図4】図1に示した投影用スクリーンの光学多層膜の反射特性と比較例の投影用スクリーンの光学薄膜の反射特性とを比較したものである。
【図5】図1に示した投影用スクリーンの光学多層膜の光学特性を表すものである。
【図6】図1に示した投影用スクリーンの光学多層膜の反射特性と比較例の投影用スクリーンの光学薄膜の反射特性とを比較したものである。
【図7】図1に示した投影用スクリーンの光学多層膜の反射特性と比較例の投影用スクリーンの光学薄膜の反射特性とを比較したものである。
【図8】図1に示した投影用スクリーンを用いたプロジェクタ装置の概略構成図である。
【図9】投影用スクリーンの変形例の概略構成図である。
【図10】投影用スクリーンの変形例の概略構成図である。
【図11】従来の投影用スクリーンの概略構成図である。
【図12】従来の投影用スクリーンの概略構成図である。
【符号の説明】
10, 20, 30・・・ 投影用スクリーン、11・・・ 透明基板、12・・・ 光学多層膜、12Mp ・・・ 金属膜、12Dp ・・・ 誘電体膜、13・・・ 光拡散層、20・・・ プロジェクタ装置、21,21R,21G,21B・・・ レーザ発振器、22,22R,22G,22B・・・ コリメータレンズ、23・・・ シリンドリカルレンズ、24・・・ GLV、24R,24G,24B・・・ リボン列、25・・・ 体積型ホログラム素子、25a・・・ 第1体積型ホログラム素子、25b・・・ 第2体積型ホログラム素子、26・・・ ガルバノミラー、27・・・ 投影レンズ、31・・・ 黒色基板、32・・・ 光吸収層
Claims (26)
- 基板上に、金属膜と誘電体膜とをこの順に交互に積層してなる光学多層膜を備え、前記光学多層膜は三原色の波長領域の光に対して反射特性を有すると共に、前記特定の波長領域以外の光に対しては吸収特性を有する
ことを特徴とする投影用スクリーン。 - 前記光学多層膜は、三原色の波長領域の光に対する反射率が70%以上であり、前記三原色の波長領域以外の光に対する吸収率が80%以上である
ことを特徴とする請求項1記載の投影用スクリーン。 - 前記光学多層膜は、金属膜,誘電体膜,金属膜および誘電体膜をこの順に有する4層構造である
ことを特徴とする請求項1記載の投影用スクリーン。 - 前記金属膜がNb、AlまたはAgからなる
ことを特徴とする請求項1または3記載の投影用スクリーン。 - 前記誘電体膜がNb2 O5 、TiO2 、Ta2 O5 、Al2 O3 またはSiO2 からなる
ことを特徴とする請求項1または3記載の投影用スクリーン。 - 前記光学多層膜は、Nbからなる第1金属膜、Nb2 O5 からなる第1誘電体膜、Nbからなる第2金属膜、Nb2 O5 からなる第2誘電体膜が順に積層された構成を有する
ことを特徴とする請求項1または3記載の投影用スクリーン。 - 前記光学多層膜は、Alからなる第1金属膜、Nb2 O5 からなる第1誘電体膜、Nbからなる第2金属膜、Nb2 O5 からなる第2誘電体膜が順に積層された構成を有する
ことを特徴とする請求項1または3記載の投影用スクリーン。 - 前記基板は高分子材料からなる
ことを特徴とする請求項1または3記載の投影用スクリーン。 - 前記高分子材料は、ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、またはポリオレフィンである
ことを特徴とする請求項8記載の投影用スクリーン。 - 前記光学多層膜における前記基板との隣接面とは反対側の面に光拡散層を備えている
ことを特徴とする請求項1または3記載の投影用スクリーン。 - 前記基板における前記光学多層膜が形成された面に、複数の凸部または複数の凹部を有する光拡散部を有する
ことを特徴とする請求項1または3記載の投影用スクリーン。 - スパッタリング法を用いて、基板上に、金属膜と誘電体膜とをこの順に交互に積層し、三原色の波長領域の光に対して反射特性を有すると共に、前記三原色の波長領域以外の光に対しては吸収特性を有する光学多層膜を形成する
ことを特徴とする投影用スクリーンの製造方法。 - 前記光学多層膜は、三原色の波長領域の光に対する反射率を70%以上とし、前記三原色の波長領域以外の光に対する吸収率を80%以上とする
ことを特徴とする請求項12記載の投影用スクリーンの製造方法。 - 前記光学多層膜を、金属膜,誘電体膜,金属膜および誘電体膜をこの順に積層することにより形成する
ことを特徴とする請求項12記載の投影用スクリーンの製造方法。 - 前記金属膜をNb、AlまたはAgにより形成する
ことを特徴とする請求項12または14記載の投影用スクリーンの製造方法。 - 前記誘電体膜をNb2 O5 、TiO2 、Ta2 O5 、Al2 O3 またはSiO2 により形成する
ことを特徴とする請求項12または14記載の投影用スクリーンの製造方法。 - 前記光学多層膜を、Nbからなる第1金属膜、Nb2 O5 からなる第1誘電体膜、Nbからなる第2金属膜、Nb2 O5 からなる第2誘電体膜を順に積層させた構成とする
ことを特徴とする請求項12または14記載の投影用スクリーンの製造方法。 - 前記光学多層膜を、Alからなる第1金属膜、Nb2 O5 からなる第1誘電体膜、Nbからなる第2金属膜、Nb2 O5 からなる第2誘電体膜を順に積層させた構成とする
ことを特徴とする請求項12または14記載の投影用スクリーンの製造方法。 - 前記基板を高分子材料により形成する
ことを特徴とする請求項12記載の投影用スクリーンの製造方法。 - 前記高分子材料は、ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、またはポリオレフィンとする
ことを特徴とする請求項19記載の投影用スクリーンの製造方法。 - 前記光学多層膜の上に光拡散層を形成する
ことを特徴とする請求項12記載の投影用スクリーンの製造方法。 - 前記基板の表面に複数の凸部または複数の凹部を有する光拡散部を形成する
ことを特徴とする請求項12記載の投影用スクリーンの製造方法。 - 前記第1金属膜の膜厚は40nm,前記第1誘電体膜の膜厚は553nm,前記第2金属膜の膜厚は20nm,前記第2誘電体膜の膜厚は553nmである
ことを請求項6記載の投影用スクリーン。 - 前記第1金属膜の膜厚は50nm,前記第1誘電体膜の膜厚は551nm,前記第2金属膜の膜厚は15nm,前記第2誘電体膜の膜厚は551nmである ことを請求項7記載の投影用スクリーン。
- 前記第1金属膜の膜厚を40nm,前記第1誘電体膜の膜厚を553nm,前記第2金属膜の膜厚を20nm,前記第2誘電体膜の膜厚を553nmとする
ことを請求項17記載の投影用スクリーンの製造方法。 - 前記第1金属膜の膜厚を50nm,前記第1誘電体膜の膜厚を551nm,前記第2金属膜の膜厚を15nm,前記第2誘電体膜の膜厚を551nmとする
ことを請求項18記載の投影用スクリーンの製造方法。
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