JP2004029383A - ハロゲン化銀写真乳剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】高感度で、しかも粒子凝集が防止され、安定に製造可能なハロゲン化銀写真乳剤を提供する。
【解決手段】粒子の全投影面積の50%以上が沃臭化銀、塩臭化銀、塩化銀もしくは塩沃臭化銀よりなるアスペクト比2以上の平板状ハロゲン化銀粒子で占められているハロゲン化銀写真乳剤であって、該乳剤は増感色素がハロゲン化銀粒子に対する飽和被覆量の60%以上吸着して分光増感されており、かつ、該粒子の主表面における吸着バインダー層の厚みが1.0nmより大きいことを特徴とするハロゲン化銀写真乳剤である。
【選択図】 なし
【解決手段】粒子の全投影面積の50%以上が沃臭化銀、塩臭化銀、塩化銀もしくは塩沃臭化銀よりなるアスペクト比2以上の平板状ハロゲン化銀粒子で占められているハロゲン化銀写真乳剤であって、該乳剤は増感色素がハロゲン化銀粒子に対する飽和被覆量の60%以上吸着して分光増感されており、かつ、該粒子の主表面における吸着バインダー層の厚みが1.0nmより大きいことを特徴とするハロゲン化銀写真乳剤である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸着バインダー層の厚みを制御した平板状ハロゲン化銀写真乳剤に関する。本発明は特に、平板状ハロゲン化銀粒子の凝集による性能の悪化を改良したハロゲン化銀写真乳剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
平板状ハロゲン化銀粒子に関してはすでに米国特許第4434226号明細書、同4439520号明細書、同4414310号明細書、同4433048号明細書、同4414306号明細書、同4459353号明細書等にその製法、および使用技術が開示されており、分光増感色素による色増感効率の向上を含む、感度/粒状性の関係改良等の利点が知られている。ハロゲン化銀粒子のアスペクト比を高くするほど高感度化に有効であるが、一方で、ハロゲン化銀粒子の凝集が問題となる。ここで、「凝集」とは2つ以上の平板状粒子が集まって、平板状粒子の主表面同士が合着して二次粒子を形成する現象で、平板状粒子のアスペクト比が高いほど、吸着色素量が多いほど、即ち吸着色素の粒子表面の被覆率が高いほど起こり易い。特に、増感色素がより吸着し易い沃化銀を組成に有するハロゲン化銀粒子、および赤感性及び緑感性のハロゲン化銀粒子において顕著である。この凝集は、粒状性の悪化、現像後の濃度低下、カブリ濃度の上昇等の写真性能の低下を引き起こす。この凝集現象はゼラチンのハロゲン化銀粒子からの脱着であることが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
平板状粒子表面のゼラチン層の厚みを原子間力顕微鏡(以下AFM)を用いて測定する方法が、Journal of Imaging Science and Technology 40巻(1996)に記載されている。該文献では吸着ゼラチン層の厚みは3nm〜5.9nmであり、粒子を過剰の増感色素にさらすと、粒子凝集が起こりAFM測定が不能になると報告されている。本発明者らが研究したところ、写真性能上適量の増感色素を添加した場合は、吸着ゼラチン層の厚みをAFMにより測定することができた。この吸着ゼラチン層の厚みと粒子凝集とは関連しており、ゼラチン層の厚みを制御し、平板状ハロゲン化銀粒子の凝集を防止する技術の開発が強く望まれていた。
【0004】
本発明の目的は高感度で、しかも粒子凝集が防止され安定に製造可能なハロゲン化銀写真乳剤を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] 粒子の全投影面積の50%以上がアスペクト比2以上であって、沃臭化銀、塩臭化銀、塩化銀もしくは塩沃臭化銀よりなる平板状ハロゲン化銀粒子で占められているハロゲン化銀写真乳剤であって、増感色素がハロゲン化銀粒子に対する飽和被覆量の60%以上吸着されて分光増感されており、かつ該粒子の主表面における吸着バインダー層の厚みが1.0nmより大きいことを特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。
[2] 粒子の全投影面積の50%以上がアスペクト比2以上の平板状ハロゲン化銀粒子で占められているハロゲン化銀写真乳剤であって、該乳剤は青感色性以外の増感色素がハロゲン化銀粒子に対する飽和被覆量の60%以上吸着して分光増感されており、かつ、該粒子の主表面における吸着バインダー層の厚みが1.0nmより大きいことを特徴とするロゲン化銀写真乳剤。
[3] 粒子の全投影面積の50%以上が沃臭化銀、塩臭化銀、塩化銀もしくは塩沃臭化銀よりなるアスペクト比2以上の平板状ハロゲン化銀粒子で占められているハロゲン化銀写真乳剤であって、該乳剤は増感色素がハロゲン化銀粒子に対する飽和被覆量の60%以上吸着して分光増感されており、かつ、該粒子の主表面における吸着バインダー層の厚みの増感色素の添加による減少率が50%未満であることを特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。
[4] 粒子の全投影面積の50%以上がアスペクト比2以上の平板状ハロゲン化銀粒子で占められているハロゲン化銀写真乳剤であって、該乳剤は青感色性以外の増感色素がハロゲン化銀粒子に対する飽和被覆量の60%以上吸着して分光増感されており、かつ、該粒子の主表面における吸着バインダー層の厚みの増感色素の添加による減少率が50%未満であることを特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。
[5] 前記ハロゲン化銀粒子の主表面における吸着バインダー層の厚みが2.0nm以上であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のハロゲン化銀写真乳剤。
[6] 前記ハロゲン化銀粒子の主表面における吸着バインダー層の厚みの増感色素の添加による減少率が40%未満であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載のハロゲン化銀写真乳剤。
[7] 粒子の全投影面積の50%以上が下記の(a)〜(d)を満たすことを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(a) 平行な主平面が(111)面、
(b) アスペクト比が2以上、
(c) 転位線を1粒子当り10本以上を含む、
(d) 塩化銀含有率が10mol%未満の沃臭化銀もしくは塩沃臭化銀よりなる平板状ハロゲン化銀粒子。
[8] 粒子の全投影面積の50%以上が下記の(a)、(d)および(e)を満たすことを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(a) 平行な主平面が(111)面、
(d) 塩化銀含有率が10mol%未満の沃臭化銀もしくは塩沃臭化銀よりなる平板状ハロゲン化銀粒子、
(e) 六角形ハロゲン化銀粒子の頂点部および/または側面部および/または主平面部に1粒子当り少なくとも1個のエピタキシャル接合を有する。
[9] 上記[1]〜[8]のいずれかに記載の乳剤を少なくとも1種含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0007】
本発明のハロゲン化銀写真乳剤は、増感色素により増感されているとともに、粒子の主表面における吸着バインダー層の厚みが所定の厚さを有する、または増感剤添加前後の吸着バインダー層の厚みの減少率が所定の範囲であることを特徴とする。本発明では、ハロゲン化銀粒子の主表面における吸着バインダー層の厚みを1.0nmより大きく維持することによって、または増感色素の添加による前記バインダー層の減少率を50%未満に維持することによって、高感度であるとともに、凝集が起こり難いハロゲン化銀写真乳剤としている。
【0008】
本発明において、「ハロゲン化銀粒子の主表面における吸着バインダー層の厚み」とは、原子間力顕微鏡(以下AFM)の測定値をいう。以下に、「ハロゲン化銀粒子の主表面における吸着バインダー層の厚み」の測定方法を詳細に説明する。
▲1▼測定試料の調製
銀原子として600μgに相当する乳剤を、50℃の臭化ナトリウム溶液(10mmol/L)6mLに分散する。40℃で遠心分離を行い、上澄みを除去して臭化ナトリウム溶液(10mmol/L)6mLに再分散する。これをシリコンウエハー(1cm×1cm)上に30μL載せ、1分間静置した後、自然乾燥させる(25℃)。ここまでの試料を試料Aとする。
粒子の吸着バインダー層がゼラチン層のように硬膜を形成し得る場合は、以下の手順でバインダー層を硬膜化させた後、ハロゲン化銀を除去し、残留したゼラチン殻の厚みを測定することができる。
試料Aをホルマリン10重量%水溶液に21℃で3分間浸漬し、次いでイオン交換水に1分間浸漬する。自然乾燥した後、チオ硫酸ナトリウム3重量%水溶液に21℃で5分間浸漬してハロゲン化銀を除去する。イオン交換水に1分間浸漬し自然乾燥させる(25℃)。この試料を試料Bとする。
【0009】
▲2▼AFMを用いた厚みの計測
上記試料B(または試料A)の高さ計測は、例えば、セイコーインスツルメンツ社製「SPI3800N」等を用いてタッピングモードで計測することができる。測定条件を以下に示す。
・ヘッド : SPA400
・カンチレバー : Si3N4製、先端の曲率半径約20nm
・押しつけ力 : 1nN
・スキャン範囲 : 20μm四方を1Hz、256×256点で測定。
AFM計測によって高さと横方向の長さの形状に関する情報(以下プロファイル)を得ることができる。1粒子当たり10以上のプロファイルを測定し、この面積平均で得られた高さの値を1/2倍することで片側の吸着バインダー層の厚みを算出する。これを1試料当たり60個以上の粒子で行い、さらに粒子間で平均値を求め測定試料の吸着バインダー層の厚みとする。
【0010】
上記測定を増感色素を添加したハロゲン化銀粒子について行うことにより、増感色素によって増感されたハロゲン化銀粒子の吸着バインダー層の厚みを確認でき、さらに増感色素を添加していないハロゲン化粒子についても行うことにより、増感色素を添加することによる前記吸着バインダー層の厚みの減少率を算出することができる。
【0011】
なお、後述する吸着バインダー層の厚みを増加させるための方法を、粒子形成終了後、脱塩工程以降に実施した場合、例えば、以下の方法で吸着バインダー層の厚みを算出することもできる。
先ず、粒子形成終了まで同時に調製した粒子を上記試料Aの状態で測定すれば、ハロゲン化銀自体の粒子厚みと吸着バインダー層の厚みの和(Ta1とする)を得ることができる。ハロゲン化銀自体の粒子厚み(Tc1とする)は、上記試料Bの状態で吸着バインダー層の厚み(Tb1とする)を求め、この値をTa1から引くことにより(Tc1=Ta1−Tb1)得られる。次に、後述する吸着バインダー層の厚みを増加させるための方法を実施した後の吸着バインダー層の厚み(Tb2)は、試料Aの状態でハロゲン化銀自体の粒子厚みと吸着バインダー層の厚みの和Ta2を測定し、粒子自身の厚みはTc1と共通であるから、Tb2=Ta2−Tc1で求められる。この様に、いずれのタイミングでバインダー層の厚みを厚くするための方法を実施した場合も、分光増感を施したハロゲン化銀粒子および施していないハロゲン化銀粒子について、吸着バインダー層の厚み(Tb2)を求めることができ、その変化率を算出することができる。
【0012】
本発明の一態様においては、粒子の主表面における吸着バインダー層の厚みは、上記の増感色素を添加していない粒子に対し添加した粒子の厚みの減少が50%未満である。厚みの減少は40%未満であることが好ましく、20%未満であることがさらに好ましい。
また、本発明の他の態様においては、増感色素を添加した粒子の主表面における吸着バインダー層の厚みは1.0nmより大きく、1.5nm以上であることが好ましく、2nm以上10nm以下であるのがさらに好ましい。
【0013】
次に、ハロゲン化銀粒子の吸着バインダー層の厚みを制御する(厚くするための)方法について説明する。
一般的に、増感色素を添加すると吸着バインダー層の厚みが減少するのは、増感色素がハロゲン化銀粒子に吸着することによって、それまで吸着していたバインダーが粒子から脱着するためと考えられる。従って、増感色素等の吸着を妨害せずに、かつ増感色素の吸着後も、バインダーが粒子から脱着するのを抑制することによって、吸着バインダー層の厚み変化を軽減させ、必要な厚みを維持することが可能となる。
具体的には、1)バインダーの全部または一部として、高分子量成分を増加させたゼラチンを使用する;2)バインダーの一部または全部として、ハロゲン化銀への吸着性官能基を導入した修飾ゼラチンを使用する;および3)バインダーの一部または全部として、ハロゲン化銀への吸着性官能基をもつ水溶性合成高分子を使用する;ことにより、吸着バインダー層の厚みを所定の範囲に維持することができる。これらの手段を2種以上組み合わせて実施することもでき、また、バインダーとして2種以上の性質を有する材料を用いることもできる。
【0014】
以下、前記1)〜3)の各方法について詳細に説明する。
1) 高分子量成分を増加させたゼラチンを使用する方法
ここで、「高分子量成分を増加させたゼラチン」とは、分子量約200万以上の高分子量成分が3%以上30%以下、かつ分子量約10万以下の低分子量成分が55%以下のゼラチンをいう。
本発明で用いるゼラチンの種類は特に限定されない。ゼラチンの主要な供給源としては、豚、牛類の皮と骨等が挙げられるが、好ましくは、牛骨から生産されるゼラチンである。その処理方法としては酸処理、アルカリ(石灰)処理、などが挙げられ、これらのいずれも用いることができるが、より好ましくはアルカリ(石灰)処理ゼラチンである。
【0015】
本発明におけるゼラチンの成分の比率、すなわち分子量分布は国際的に決められたPAGI法に準じて、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(以下「GPC法」と記す)で測定したものである。この方法に関しては大野隆司、小林裕幸、水澤伸也、 ”日本写真学会誌” 、47巻4号、1984年、237〜247頁等に詳述されている。
【0016】
前記1)のゼラチンの分子量分布は、以下の測定条件に基づいて測定された値をいう。
(測定条件)
カラム:Shodex Asahipak GS−620 7G(8mmI.D.×500mm)×2
ガードカラム:Shodex Asahipak GS−1G 7B
溶離液:0.1mmol/Lのりん酸二水素カリウム溶液と0.1mmol/Lのりん酸水素二ナトリウム溶液の等量混合液
流速:1.0mL/分
カラム温度:50℃
検出:UV230nm
サンプル濃度:0.2wt%
注入量:100μL
【0017】
横軸にリテンションタイム(Retention Time)を、縦軸に吸光度をとって得られるGPC曲線は、まず排除限界のピークが現われ、次にゼラチンのβ成分、α成分のピークが現われ、さらにリテンションタイムが長くなるにつれて裾を引くような形になる。
前記1)のゼラチンにおける分子量約200万以上の高分子量成分の占める割合は、排除限界のピークの面積の全体に占める割合を算出することにより求めることができる。具体的には、リテンションタイム17分位に現われるGPC曲線の極小点から横軸に対して垂線を引き、その垂線より高分子量側の部分(高分子量成分)の面積の全体の面積に占める割合を算出する。また、分子量約10万以下の低分子量成分の占める割合は、α成分以下の面積の全体に占める割合を算出することにより求める。具体的には、リテンションタイム23分位に現われるβ成分ピークとα成分ピークとの間のGPC曲線の極小点から横軸に対して垂線を引き、その垂線より低分子量側の部分(低分子量成分)の面積の全体の面積に占める割合を算出する。
【0018】
前記1)のゼラチンは、分子量約200万以上の高分子量成分が3%以上30%以下、かつ分子量約10万以下の低分子量成分が55%以下に制御されたものである。高分子量成分が30%を越えると濾過性が急激に悪化するため好ましくない。また、低分子量成分が55%を越える場合および/または高分子量成分が5%未満の場合には本発明の効果が充分に発現しない。本発明の効果を発現するためには、分子量約200万以上の高分子量成分が5%以上15%以下、かつ分子量約10万以下の低分子量成分が50%以下であることが特に好ましい。
【0019】
前記1)のゼラチンの製造法としては下記の▲1▼ゼラチンの架橋を行わない方法;および▲2▼ ゼラチン架橋剤を用いる方法;の二つに大別される。
▲1▼ ゼラチンの架橋を行わない方法
例えば下記のような方法が用いられる。
製法1−1: 一般的なゼラチン製法中の抽出操作で得られる抽出液のうち、抽出後期のゼラチン抽出液を使用して、抽出初期のゼラチン抽出液を排除する。
製法1−2: 一般的なゼラチン製法中、抽出以後乾燥までの製造工程において処理温度を40℃未満とする。
製法1−3: ゼラチンゲルを冷水(15℃)透析[ザ・ジャーナル・オブ・フォトグラフィックサイエンス(The Journal of Photographic Science)、23巻33頁(1975)参照]により製造する。
製法1−4: イソプロピルアルコールの使用による分画法[ディスカッションズ・オブ・ザ・フアラディ・ソサイエティ(Discussions of the Faraday Society)、18巻、288頁(1954)参照]により製造する。
これら1−1〜4の製法を、単独もしくは組み合わせることにより、前記1)のゼラチンを製造することができる。
【0020】
▲2▼ ゼラチン架橋剤を用いる方法
前記1)のゼラチンは、ゼラチンを架橋し、分子量分布を制御することによって製造することができ、架橋により分子量制御されたゼラチンを用いるのが好ましい。架橋方法としては酵素によってゼラチン分子間の架橋する方法と、架橋剤を添加して架橋剤がゼラチン分子間に化学結合を作ってゼラチン分子を架橋する方法との二つがある。
【0021】
酵素による架橋方法の代表的な例として、トランスグルタミナーゼによる架橋方法について詳細に説明する。トランスグルタミナーゼ酵素は、蛋白質であるゼラチンのグルタミン残基のγ−カルボキシアミド基と各種一級アミンとの間のアシル転移反応を触媒する機能によってゼラチンを架橋することができる。トランスグルタミナーゼは動物由来、植物由来、微生物由来のものがあり、例えば、動物由来のものとしては、モルモットの肝臓などの哺乳類の臓器、血液より抽出したもの;また、植物由来のものとしては、エンドウ豆より抽出したもの;微生物由来のものとしては、放線菌より抽出したもの;がある。本発明ではトランスグルタミナーゼ活性を示すものであれば、どの様な起源のものも好ましく用いることができる。
【0022】
本発明で用いられるトランスグルタミナーゼは、例えばClark 等の方法(Achives of Biochemistry and Biophysics, 79, 338 (1959))、Connel等の方法(J.Bilogical Chemistry, 246 (1971))、特開平4−207149号公報記載の方法、特開平6−30770号公報記載の方法のいずれで合成されたものでも好ましく用いることができる。これらのトランスグルタミナーゼとしては、商品名アクテバ(味の素(株)製)が挙げられる。本発明で用いられるトランスグルタミナーゼ活性は、ベンジルオキシカルボニルLグルタミニルグリシンとヒドロキシアミンを反応させ、生成したヒドロキサム酸の量を求めることにより測定できる。この測定により、1分間に1×10−6molのヒドリキサム酸を生成するトランスグルタミナーゼ活性を、1ユニット(unit)とする。本発明で用いられるトランスグルタミナーゼは、使用されるゼラチンによって異なるが、ゼラチン1gに対して1×10−6mol以上のヒドロキサム酸を生成する量を添加して、分子量分布を制御するのが好ましい。
【0023】
架橋剤によりゼラチンを架橋する方法としては、これまでゼラチンの硬化剤として知られている架橋剤は全て使用することができる。以下にその代表的な化合物をあげる。
A.無機架橋剤(無機硬膜剤)
A−1 カチオン性のクロム錯
配位子としてはヒドロキシル基、シュウ酸基、クエン酸基、マロン酸基、乳酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、硫酸塩、塩化物、硝酸塩が挙げられる。
A−2 アルミニウム塩
特に硫酸塩、カリみょうばん、アンモニウムみょうばんが好ましい。
上記の化合物はゼラチンのカルボキシル基を架橋する。
【0024】
B.有機架橋剤(有機硬膜剤)
B−1 アルデヒド系架橋剤
最もよく用いられるのはホルムアルデヒドである。またジアルデヒドでも有効な架橋ができ、その例としてはグリオキザール、スクシンアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが有効である。ジグリコアルデヒドや種々の芳香族ジアルデヒド、またジアルデヒドスターチ、植物ガムのジアルデヒド誘導体も用いられる。
B−2 N−メチロール化合物およびその他の保護されたアルデヒド架橋剤
ホルムアルデヒドと種々の脂肪族直鎖もしくは環状のアミド、尿素、含窒素ヘテロ環との縮合によって得られるN−メチロール化合物である。具体的には2,3−ジヒドロキジオキサン、ジアルデヒドとそのヘミアセタールの酢酸エステル、2,5−メトキシテトラヒドロフラン等が挙げられる。
B−3 ケトン架橋剤
ジケトン、キノン類の化合物である。よく知られているジケトンとして、2,3−ブタンジオン、CH3COCOCH3などが挙げられる。キノンとしては、p−ベンゾキノンがよく知られている。
B−4 スルホン酸エステルとスルホニルハライド
代表的化合物としてビス(スルホニルクロリド)類およびビス(スルホニルフロリド)類がある。
【0025】
B−5 活性ハロゲン化合物
2個以上の活性ハロゲン原子をもつ化合物である。代表的化合物としてケトン、エステル、アミドの単純なビス−α−クロロ或いはビス−α−ブロモ誘導体、ビス(2−クロロエチル尿素)、ビス(2−クロロエチル)スルフォン、ホスホールアミジックハライド等が挙げられる。
B−6 エポキサイド
ブタジェンジオキサイドが代表的化合物として挙げられる。
B−7 活性オレフィン
2個以上の二重結合、特に隣接する電子吸引基によって活性化された無置換ビニル基をもつ多くの化合物はゼラチンの架橋剤として有効である。この化合物の例としては、ジビニルケトン、レゾルシノールビス(ビニルスルホナート)、4,6−ビス(ビニルスルホナート)、4,6−ビス(ビニルスルホニル)−m−キシレン、ビス(ビニルスルホニルアルキル)エーテルまたはアミン、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、ジアクリルアミド、1,3−ビス(アクリロイル)尿素等が挙げられる。
【0026】
B−8 s−トリアジン系化合物:下記一般式(H−I)で表される化合物
【0027】
【化1】
【0028】
式中、R1は水酸基、−OM基(Mは1価の金属原子)、炭素数1〜10のアルキル基(例えばメチル、エチル、2−エチルヘキシル)、−N(R2)(R3)基(R2およびR3はそれぞれ炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基を表し、互いに同じであっても異なってもよい)、−NHCOR4(R4は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜20アリールチオ基を表わす)、または炭素数1〜20のアルコキシ基を表わす。
前記一般式(H−I)で示されるシアヌルクロリド系硬膜剤については、特公昭47−6151号公報、同47−33380号公報、同54−25411号公報、特開昭56−130740号公報に詳細な記載がある。また一般式(H−I)の化合物と類似した構造を持つ特公昭53−2726号公報、特開昭50−61219号公報、同56−27135号公報等に記載されている化合物も本発明に有用である。
【0029】
B−9 ビニルスルホン系化合物:下記一般式(H−II)で表される化合物
【0030】
【化2】
【0031】
上記一般式中、X1およびX2は−CH=CH2または−CH2CH2Yを表し、X1およびX2は同じであっても異なってもよい。Yは求核性基により置換されるか、塩基によってHYの形で脱離し得る基(例えば、ハロゲン原子、スルホニルオキシ、硫酸モノエステル等)を表す。Lは2価の連結基であり、置換されていてもよい。
一般式(H−II)で表わされるビニルスルホン系硬膜剤については、例えば特公昭47−24259号公報、同50−35807号公報、特開昭49−24435号公報、同53−41221号公報、同59−18944号公報等の公報に詳細な記載がある。
【0032】
B−10 カルバモイルアンモニウム塩:下記一般式(H−III)で表される化合物
【0033】
【化3】
【0034】
式中、R1およびR2は炭素数1〜10のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、2−エチルヘキシル基など)、炭素数6〜15のアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基など)、または炭素数7〜15のアラルキル基(例えばベンジル基、フェネチル基など)を表わし、互いに同じであっても異なってもよい。またR1およびR2は互いに結合して窒素原子と共に複素環を形成することも好ましい。X−は陰イオンを表わす。
一般式(H−III)で表わされるカルバモイルアンモニウム塩系硬膜剤についての詳細な記載は、特公昭56−12853号公報、同58−32699号公報、特開昭49−51945号公報、同51−59625号公報、同61−9641号公報に詳しい。
【0035】
B−11 下記一般式(H−IV)で表される化合物
【0036】
【化4】
【0037】
R1、R2、R3およびX−の定義は一般式(H−III)における定義と全く同様であり、これらの化合物はベルギー特許第825,726号明細書に詳しい。
【0038】
B−12 アミジニウム塩系化合物:下記一般式(H−V)で表される化合物
【0039】
【化5】
【0040】
R1、R2、R3およびR4は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基、または炭素数6〜20のアリール基であり、それぞれ同じであっても異なってもよい。Yは前記一般式(H−V)で表わされる化合物が求核試薬と反応した際に脱離し得る基を表わし、好ましい例としてハロゲン原子、スルホニルオキシ基、1−ピリジニウミル基等を挙げられる。X−は陰イオンを表わす。一般式(H−V)で表わされるアミジニウム塩系硬膜剤については特開昭60−225148号公報に詳細な記述がある。
【0041】
B−13 カルボジイミド系化合物;下記一般式(H−VI)で表される化合物
【0042】
【化6】
【0043】
式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基(例えばメチル基、エチル基など)、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数3〜10のアルコキシアルキル基、または炭素数7〜15のアラルキル基を表わす。R2はR1に定義された基を表わす。
これらのカルボジイミド系硬膜剤については、特開昭51−126125号公報、同52−48311号公報に詳しい。
【0044】
B−14 リジニウム塩基系化合物;下記一般式(H−VII)で表される化合物
【0045】
【化7】
【0046】
式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、または炭素数7〜15のアラルキル基を表わす。これらの基は置換されてもよい。R2およびR3は水素原子、ハロゲン原子、アシルアミド基、ニトロ基、カルバモイル基、ウレイド基、アルコキシ基、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはアラルキル基などの置換基を表わし、それぞれ同じであっても異なってもよい。またR2とR3が結合してピリジニウム環骨格と共に縮合環を形成することも好ましい。Yは一般式(H−VII)で表わされる化合物が求核試薬と反応した際に脱離し得る基を表わす。X−は陰イオンを表わす。
これらのピリジニウム塩基硬膜剤については、特公昭58−50699号公報、特開昭57−44140号公報、同57−46538号公報に詳細な記載がある。
【0047】
B−15 ピリジニウム塩系化合物;下記一般式(H−VIII)で表される化合物
【0048】
【化8】
【0049】
式中、R1およびR2の定義は、前記一般式(H−III)におけるR1およびR2の定義と全く同様であり、R3は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基または炭素数7〜15のアラルキル基を表わす。X−は陰イオンを表わす。
一般式(H−VIII)で表わされるピリジニウム塩系硬膜剤については特開昭52−54427号公報に詳しく記載されている。
【0050】
本発明に用いられる硬膜剤(架橋剤)としては、前記の一般式(H−I)〜一般式(H−VIII) で表わされる化合物の他にも、特開昭50−38540号公報、同52−93470号公報、同56−43353号公報、同58−113929号公報、米国特許第3,321,313号明細書に記載された化合物等も好ましい。
【0051】
以下に本発明にゼラチンの架橋剤として使用可能な化合物の具体例を分類して挙げるが、本発明は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。
【0052】
【化9】
【0053】
【化10】
【0054】
架橋されたゼラチンは、上記架橋剤をゼラチン溶液に添加して、ゼラチン分子間に架橋を起こさせることによって製造することができる。その際の条件は、各架橋剤によって異なるが、一定の反応温度と反応時間を設定して、GPC法によってゼラチンの分子量分布を測定することによって、適切な反応条件を決定することができる。その際、ゼラチン溶液の粘度を測定することで架橋の進行を追跡することができる。添加された架橋剤は、全部を反応させることが望ましいが、未反応で残った場合は、架橋反応後ゼラチン溶液の限外濾過などにより残存した架橋剤を除去することができる。本発明のゼラチンの分子量分布は、架橋剤の添加量や架橋反応の温度、時間、pH等の架橋反応の条件を調節することにより制御できる。
【0055】
前記高分子量のゼラチンとしては、上記の架橋剤いずれか1種または2種以上を組み合わせて架橋されたゼラチンを好ましく用いることができる。前記一般式(H−I)で表されるs−トリアジン系化合物、前記一般式(H−II)で表されるビニルスルホン系化合物、前記一般式(H−III)で表されるカルバモイルアンモニウム塩または前記一般式(H−VI)で表されるカルボジイミド系化合物を用いて架橋されたゼラチンが好ましい。特に、写真性能への影響が少ない点で、前記一般式(H−II)で表されるビニルスルホン系化合物が好ましい。
【0056】
前記高分子量のゼラチンの製造に用いる元ゼラチンとしては、アルカリ処理ゼラチン、酸処理ゼラチンのいずれも使用可能だが、写真性能に悪影響を及ぼす不純物含量が少ない点でアルカリ処理ゼラチンがより好ましい。特に不純物イオンや不純物を除去する脱イオン処理や限外濾過処理を施したアルカリ処理ゼラチンを用いることが好ましい。また、本発明において好ましく用いられる架橋されたゼラチンの元ゼラチンとしても、アルカリ処理ゼラチンが好ましい。
【0057】
2)ハロゲン化銀への吸着性官能基を導入した修飾ゼラチンを使用する方法
本発明に使用可能な修飾ゼラチンは、好ましくは、ゼラチンと、メルカプト基を有する含窒素芳香族環を含み、ゼラチン中の反応性基と共有結合を形成し得る化合物、とを反応させて得られる修飾ゼラチンであって、ゼラチン中における上記化合物の導入量がゼラチン100g当たり1.0×10−6mol以上2.0×10−3mol以下であることを特徴とする修飾ゼラチンである。
【0058】
ゼラチンの修飾は、メルカプト基を有する含窒素芳香族環を含み、ゼラチン中の反応性基と共有結合を形成しうる化合物を用いる。含窒素芳香族環とは、具体的には単環または縮環の含窒素芳香族ヘテロ環であり、好ましくは5〜7員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは5〜6員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、例えば、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、セレナゾール、ベンズトリアゾール、ベンズチアゾール、ベンズオキサゾール、ベンズセレナゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、ナフトチアゾール、ナフトオキサゾール、アザベンズイミダゾール、プリン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアザインデン、テトラザインデン等があげられ、更に好ましくは、5員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、具体的にはイミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズトリアゾール、ベンズチアゾール、ベンズオキサゾール、チアジアゾール、オキサジアゾールが好ましく、特に好ましくは、トリアゾール、テトラゾールであり、最も好ましくはテトラゾールである。ゼラチン中の反応性基と共有結合を形成しうる化合物とは具体的には、ゼラチン又はゼラチン誘導体中に含まれる反応性基(例えば、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、メルカプト基などが挙げられる)と共有結合を形成する基を有する化合物である。このような共有結合を形成する基の具体例については後述する。
【0059】
本発明の修飾ゼラチンでは、ゼラチン中における、ゼラチン中の反応性基と共有結合を形成しうる化合物の導入量がゼラチン100g当たり1.0×10−6mol以上2.0×10−3mol以下であり、好ましくは1.0×10−6mol以上1.5×10−3mol以下であり、より好ましくは1.0×10−6mol以上1.0×10−3mol以下である。上記化合物の導入量を上記範囲に限定することにより、ハロゲン化銀写真感光材料の感度を低下せずに、かぶり濃度の上昇を抑制することができ、さらに乳剤の溶解経時後のハロゲン化銀粒子の凝集抑制効果を発揮することにより、塗設における写真性能の悪化が改良され、製造適性に優れたハロゲン化銀写真乳剤を調製することが可能になる。
【0060】
本発明の修飾ゼラチンは、好ましくは下記一般式(I)で表される化合物である。以下、一般式(I)について詳しく説明する。
【0061】
【化11】
【0062】
前記一般式(I)において、Gelはゼラチンを表す。ゼラチンの種類は本明細書中上記した通りである。ゼラチンは、ゼラチン中の化学反応性基が残存していれば、ゼラチンが一般式(I)の修飾基以外の他の官能基で修飾されていてもよい。例えばビス−(ビニルスルホニル)化合物またはカルボキシル基を活性化し、ゼラチンを架橋し得る化合物を用いて製造された水可溶性鎖延長ゼラチン、フタル化ゼラチン、コハク化ゼラチン、トリメリット化ゼラチン、ピロメリット化ゼラチン、酵素処理低分子量ゼラチン(分子量2000〜100,000)等が挙げられ、これらを2種類以上混合してもよい。
【0063】
L1はゼラチン中に存在する反応性基のうち、−C(=O)O−、−NH−、−N=、−N<、−O−、−S−、−NH−C(=NH2 +)NH−又は−NH−C(=NH)NH−から選ばれる基を表し、具体的にはゼラチン分子中に含まれる化学反応性基として、リジン、ヒドロキシリジンまたはオルニチン残基の側鎖のアミノ基、グルタミン酸やアスパラギン酸残基の側鎖のカルボキシル基、セリン、スレオニン、ヒドロキシリジンまたはヒドロキシプロリン残基側鎖のヒドロキシル基、システイン残基側鎖のメルカプト基、チロシン残基側鎖のフェノール性水酸基、ヒスチジン残基側鎖のイミダゾール基、アルギニン残基側鎖のグアニジノ基、ポリペプチドの末端にあるアミノ酸のアミノ基、カルボキシル基等に由来するものが挙げられる。L1として好ましくは−NH−、−N=、−O−であり、より好ましくは−NH−、−N=であり、最も好ましくは−NH−である。
【0064】
L2は2価または3価の連結基を表し、好ましくは炭素数1〜20の2価の連結基を表す。L1が−N=である場合、L2は3価の連結基であり、L1との連結部分が例えば=CH−となる。
L2が表す2価の連結基の具体例としては、炭素数1〜20のアルキレン基(例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、キシリレンなど)、炭素数6〜20のアリーレン基(例えばフェニレン、ナフチレンなど)、カルボニル基、スルホン基、スルホキシド基、エーテル基、エステル基、またはアミド基を単独あるいは2つ以上を組み合わせて得られる基が挙げられる。
L2として好ましくは炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、カルボニル基、スルホン基、スルホキシド基、エーテル基、エステル基、またはアミド基を単独あるいは2つ以上を組み合わせて得られる基であり、具体例を以下に示す。
【0065】
【化12】
【0066】
これらは、L1に対して左右いずれの向きで結合してもよいが、左側がL1と結合するのが好ましい。
L2は可能な場合には更に置換基を有していてもよく、置換基としては例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。)、置換又は未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、
【0067】
アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、
【0068】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0069】
nは1あるいは2の整数を表し、好ましくは1である。
Zは、含窒素芳香族ヘテロ環基を表し、具体的には単環または縮環の含窒素芳香族ヘテロ環を表し、好ましくは5〜7員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは5〜6員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、例えば、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、セレナゾール、ベンズトリアゾール、ベンズチアゾール、ベンズオキサゾール、ベンズセレナゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、ナフトチアゾール、ナフトオキサゾール、アザベンズイミダゾール、プリン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアザインデン、テトラザインデン等があげられ、更に好ましくは、5員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、具体的にはイミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズトリアゾール、ベンズチアゾール、ベンズオキサゾール、チアジアゾール、オキサジアゾールが好ましく、特に好ましくは、トリアゾール、テトラゾールであり、最も好ましくはテトラゾールである。
Zで表される含窒素芳香族ヘテロ環は可能な場合には更に置換基を有してもよく、置換基としては、前期一般式(I)のL2の置換基として挙げたものが適用できる。
【0070】
前期一般式(I)における−L2−Z−SHで表される修飾基の導入量は、乾燥したゼラチン100gに対して1.0×10−6mol以上2.0×10−3mol以下であるのが好ましく、より好ましくは1.0×10−6mol以上1.5×10−3mol以下であり、さらに好ましくは1.0×10−6mol以上1.0×10−3mol以下である。この範囲とすることにより、ハロゲン化銀写真感光材料の感度を低下せずに、かぶり濃度の上昇を抑制することができ、さらに乳剤の溶解経時後のハロゲン化銀粒子の凝集抑制効果を発揮することにより、塗設における写真性能の悪化が改良され、製造適性に優れたハロゲン化銀写真乳剤を調製することが可能になる。
【0071】
前期一般式(I)で表される修飾ゼラチンの中でも、下記一般式(II)で表される修飾ゼラチンがより好ましい。
【0072】
【化13】
一般式(II)において、Gel、L1およびnはそれぞれ一般式(I)におけるそれらと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。
一般式(II)において、L2Bは2価または3価の連結基を表し、好ましくは炭素数1〜14の2価の連結基を表わす。具体的には炭素数1〜14のアルキレン基(例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、キシリレンなど)、炭素数6〜14のアリーレン基(例えばフェニレン、ナフチレンなど)、カルボニル基、スルホン基、スルホキシド基、エーテル基、エステル基、またはアミド基を単独あるいは2つ以上を組み合わせて得られる基である。L2Bとして好ましくは炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、カルボニル基、スルホン基、スルホキシド基、エーテル基、エステル基、またはアミド基を単独あるいは2つ以上を組み合わせて得られる基である。具体的には、先のL2で例示した基が挙げられる。
【0073】
R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立に水素原子あるいは置換基を表し、置換基としては一般式(I)におけるL2の置換基として挙げたものが適用できる。
R1、R2、R3およびR4として好ましくはアルキル基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、ヒドロキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、カルボキシル基、ニトロ基、水素原子であり、より好ましくはアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、水素原子であり、更に好ましくは水素原子である。
【0074】
一般式(II)において、括弧内に表される修飾基の導入量は乾燥ゼラチン100gに対して1.0×10−6mol以上2.0×10−3mol以下であるのが好ましく、より好ましくは1.0×10−6mol以上1.5×10−3mol以下であり、さらに好ましくは1.0×10−6以上1.0×10−3mol以下である。この範囲とすることにより、ハロゲン化銀写真感光材料の感度を低下せずに、かぶり濃度の上昇を抑制することができ、さらに乳剤の溶解経時後のハロゲン化銀粒子の凝集抑制効果を発揮することにより、塗設における写真性能の悪化が改良され、製造適性に優れたハロゲン化銀写真乳剤を調製することが可能になる。
【0075】
次に、本発明で用いる修飾ゼラチン(好ましくは、一般式(I)又は(II)で表される修飾ゼラチン)の一般的合成法の一例を示すが、これらに限定されるものではない。
本発明で用いる修飾ゼラチンは、ゼラチンあるいはゼラチン誘導体中に含まれる反応性基(例えば、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、メルカプト基などが挙げられる。)と、それらと共有結合を形成する基を有する化合物を水、あるいは水を含む有機溶媒中で反応させることによって合成することができる。
【0076】
反応温度としては、30〜80℃が好ましく、より好ましくは30〜70℃であり、更に好ましくは40〜70℃であり、特に好ましくは45〜65℃である。
反応pH値としては5.0〜11.0が好ましく、より好ましく5.0〜10.0であり、更に好ましくは6.0〜9.0であり、特に好ましくは、6.5〜8.5である。
反応溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、アセトンなどに水をを混合したもの、または水が好ましい。
反応溶媒中のゼラチン固形分濃度としては、0.1〜40質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜30質量%であり、更に好ましくは3〜30質量%であり、特に好ましくは、5〜30質量%である。
【0077】
ゼラチン中に含まれる反応性基と共有結合を形成することができる基としては、特開昭51−117619号公報、T. H. James「THE THEORY OF THE PHOTOGRAPHIC PROCESS 第4版」マクミラン出版、ニューヨーク、2章III節(1977年)、A. G. Ward、A. Courts、「The Science and Technology of Gelatin」第7章Academic Press(1977年)の記載を参考にすることができる。ゼラチン中に含まれる反応性基と共有結合を形成することができる基として、具体的にはアルデヒド基、アセタール基、エポキシ基、イソシアネート基、活性ハロゲン基(例えばハロゲノメチレンカルボニル基、ハロゲノメチレンカルボニルオキシ基、ハロゲノメチレンカルボンアミド基、ハロゲノメチレンスルホニル基、ハロゲノメチレンスルホンアミド基、ジハロゲノ−S−トリアジン基などがある。)、活性エステル(例えば下記)、
【0078】
【化14】
エチレンイミノ基、活性オレフィン基(例えばビニルスルホニル基、ビニルスルホンアミド基、ビニルカルボニル基、ビニルカルボンアミド基、ビニルカルボニルオキシ基などがある。)、酸ハライド(例えばカルボン酸クロリド、スルホン酸クロリドなどがある。)、スルホン酸エステル、酸無水物(例えば、コハク酸無水物、フタル酸無水物などがある。)、イソチオシアネート基、カルボン酸を縮合剤で活性化したもの、スルホン酸を縮合剤で活性化したもの、リン酸を縮合剤で活性化したもの等が挙げられる。
【0079】
カルボン酸、スルホン酸およびリン酸等を活性化する縮合剤としては、カルボジイミド(例えばN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、 N,N−ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)、N−シクロへキシル−N’−[2−(N−メチル−ピペリジニノエチル)カルボジイミド・メソ−p−トルエンスルホン酸]等がある。)、カルボニルジイミダゾール、スルホニルクロライド(例えばトリイソプロピルベンゼンスルホニルクロライドなどがある。)、蟻酸クロライド(例えば、クロロ蟻酸イソブチル、クロロ蟻酸エチルなどがある。)、ホスホニルクロライド(例えばベンゾトリアゾリル−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP試薬)などがある。)、ウロニウム塩(O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェートなどがある。)、カルバモイルアンモニウム塩(例えば4−(2−スルホナトエチル)−1−モルホニルカルボニルピリジニウムなどがある。)、カルベニウムクロライド塩(例えばクロロビス(モルホリノ)カルベニウムクロライドヘキサフルオロホスフェートなどがある。)などが挙げられるが、カルボン酸、スルホン酸およびリン酸等の酸とアミノ基あるいはヒドロキシル基を結合させ酸アミド結合あるいはエステル結合を形成させる縮合剤であれば何でもよい。また、これらの縮合剤を用いて他の活性エステルへ変換してもよい。
縮合剤として好ましくはカルボジイミドであり、より好ましくは水溶性のカルボジイミドであり、更に好ましくはWSCである。
【0080】
ゼラチン中に含まれる反応性基と共有結合を形成することができる基として好ましいのは、エポキシ基、活性オレフィン基、活性エステル基、カルボン酸を縮合剤で活性化したものであり、より好ましくはエポキシ基、ビニルスルホニル基、ビニルカルボニル基、ビニルカルボンアミド基、ビニルカルボニルオキシ基、カルボン酸をカルボジイミドを用いて活性化したものであり、更に好ましくはカルボン酸をカルボジイミドを用いて活性化したものである。
【0081】
以下にゼラチン中に含まれる反応性基と直接反応し、一般式(I)または(II)で表される修飾ゼラチンを形成する化合物、またはゼラチン中に含まれる反応性基と、縮合剤を用いて活性化した後に反応し、一般式(I)または(II)で表される修飾ゼラチンを形成する化合物の具体例を示すが、本発明で用いる化合物はこれに限定されるものではない。
【0082】
【化15】
【0083】
【化16】
【0084】
【化17】
【0085】
本発明の修飾ゼラチンはハロゲン化銀写真感光材料の親水性コロイド層(例えばハロゲン化銀乳剤層および非感光性親水性コロイド層)の少なくとも1層に含有して使用することができる。本発明の修飾ゼラチンを含有する層は好ましくは、ハロゲン化銀乳剤層およびその隣接親水性コロイド層の少なくとも1層であり、特に好ましい層はハロゲン化銀乳剤層である。さらに本発明の修飾ゼラチンの添加時期はハロゲン化銀乳剤の調製時であることがより好ましく、粒子形成過程、化学熟成過程、化学熟成終了後の何れであってもよい。粒子形成過程で添加することが最も好ましい。本発明の修飾ゼラチンは水または親水性有機溶媒(例えばメタノール、N,N−ジメチルホルムアミド)に溶解して添加される。
【0086】
3)吸着性官能基をもつ水溶性合成高分子を使用する方法
本発明に使用可能な前記水溶性合成高分子は、下記一般式(1)で表されるメルカプト基を有する含窒素芳香族環を部分構造として有することが好ましい。
一般式(1)
Z−SH
【0087】
前記一般式(1)中、Zで表される含窒素芳香族環とは、具体的には単環または縮環の含窒素芳香族ヘテロ環であり、好ましくは5〜7員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは5または6員の含窒素芳香族ヘテロ環である。具体的には、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、セレナゾール、ベンズトリアゾール、ベンズチアゾール、ベンズオキサゾール、ベンズセレナゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、ナフトチアゾール、ナフトオキサゾール、アザベンズイミダゾール、プリン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアザインデン、テトラザインデン等が挙げられる。さらに好ましくは、5員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、具体的にはイミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズトリアゾール、ベンズチアゾール、ベンズオキサゾール、チアジアゾール、オキサジアゾールが挙げられる。特に好ましくは、トリアゾール、テトラゾールであり、最も好ましくはテトラゾールである。
【0088】
本明細書において、「水溶性高分子」とは、水に0.5質量%以上溶解する高分子のことをいい、好ましくは1.0質量%以上溶解する高分子、より好ましくは2.0質量%以上溶解する高分子、さらに好ましくは4.0質量%以上溶解する高分子である。
【0089】
前記水溶性合成高分子は、前記一般式(1)で表されるメルカプト基を、平均で2個/(ポリマー鎖1本)以下含有することが好ましい。ポリマー鎖1本当たり平均で、より好ましくは0.01〜1.5個、さらに好ましくは0.1〜2個、よりさらに好ましくは0.1〜1.8個、特に好ましくは0.2〜1.5個、最も好ましくは1個以下である。ここで、ポリマー鎖1本当たりのメルカプト基の個数は、ポリエチレンオキサイドを基準物質としてGPC測定を行った際のポリマーの数平均分子量Mnから求めた水溶性合成高分子水溶液のモル濃度AMnと、ポリマー水溶液中のメルカプト基を有する含窒素芳香族環のUV吸光度から求めたモル濃度Quvとを測定し、Quv/AMnの値として求められる。即ち、本発明のポリマーは、Quv/AMnが2以下であるのが好ましく、1以下であるのがより好ましい。メルカプト基の導入量が上記範囲であると、ハロゲン化銀写真感光材料の感度を低下せずに、カブリ濃度の上昇をより抑制することができ、さらに乳剤の溶解経時後のハロゲン化銀粒子の凝集抑制効果をより発揮する。その結果、塗設における写真性能の悪化が改良され、製造適性がより優れたハロゲン化銀乳剤を調製することが可能になる。
【0090】
前記水溶性合成高分子は、前記一般式(1)で表されるメルカプト基が、ポリマーの片末端に導入されていることが好ましい。
【0091】
前記水溶性合成高分子の好ましい態様は、下記一般式(2)で表される。
【0092】
【化18】
【0093】
式中、Y1およびY2は、Xの末端基であり、少なくとも一方はSH−Z−L1−を表し、一方がSH−Z−L1−を表すとき、他方は水素原子を表す。Zは一般式(1)中で表されるそれと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0094】
L1は2価の連結基または単結合を表し、2価の連結基または単結合であれば特に制限はないが、L1として好ましくは炭素数0〜20の2価の連結基である。
具体的には炭素数1〜20のアルキレン基(例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、キシリレンなど)、炭素数6〜20のアリーレン基(例えばフェニレン、ナフチレンなど)、−C(=O)−、−S(=O)2−、−S(=O)−、−S−、−O−、−P(=O)O−−、−P(=O)O−−、−P(=O)ORa−、−NRa−(Raは水素原子または置換基を表し、置換基としては後述の置換基Tとしてあげたものが適用できる)、−N=、芳香族へテロ環基、またはこれらを2種以上組み合わせて得られる炭素数0〜20の2価の連結基である。具体例を以下に示す。
【0095】
【化19】
【0096】
これらは、Zに対して左右いずれの向きで結合していてもよいが、左側がZと結合するのが好ましい。
【0097】
L1は可能な場合にはさらに置換基Tを有していてもよく、置換基Tとしては例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、イソ−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる)、置換または未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる)、
【0098】
アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる)、
【0099】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基はさらに置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0100】
前記一般式(2)中、Xはエチレン性不飽和結合を有するモノマーの単独重合体又は共重合体の基を表し、共重合体である場合は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体およびグラフト共重合体のいずれの形態であってもよい。また、Xが共重合体である場合は、L1と共有結合を形成するモノマーがいずれになるかについても特に限定されない。
【0101】
Xは、エチレン性不飽和結合を有するモノマーユニット(以下モノマー)を少なくとも1種含む。前記モノマーとしては、重合可能なモノマーであれば特に制限はなく、ラジカル重合またはイオン重合法で重合可能なモノマーのいずれも用いることができる。Xのモノマーとしては、その単独重合体が水溶性となるモノマーが好ましい。Xの水溶性を損なわない限り、Xは複数のモノマーの共重合体であってもよい。
【0102】
単独重合体が水溶性となるモノマーとしては、以下のモノマー群(k)が挙げられ、いずれもXのモノマーとして好ましく用いられる。
(k)アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルピペリジン、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メタクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド、ジアセトンアクリルアミド、ω−メトキシポリエチレングリコールアクリレート(付加mol数n=9)、ω−メトキシポリエチレングリコールアクリレート(付加mol数n=23)、N−メトキシエチルアクリルアミド等。
【0103】
Xが共重合体である場合は、前述の(k)のモノマー群のいずれか少なくとも1種と、下記に示すモノマー群(a)〜(j)等のいずれか少なくとも1種との共重合体が好ましい。なお、前述の(k)モノマー群の属するモノマーであっても、(a)〜(j)モノマー群に属するものは、重複して列挙した。
【0104】
−モノマー群(a)〜(i)−
(a)共役ジエン:1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2‐n‐プロピル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1−α−ナフチル−1,3−ブタジエン、1−β−ナフチル−1,3−ブタジエン、2‐クロロ1,3−ブタジエン、1−ブロム−1,3−ブタジエン、1‐クロロ1,3−ブタジエン、2‐フルオロ‐1,3−ブタジエン、2,3−ジクロロ1,3−ブタジエン、1,1,2−トリクロロ1,3−ブタジエン、2‐シアノ−1,3−ブタジエン、シクロペンタジエン等、
(b) オレフィン:エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、6−ヒドロキシ−1−ヘキセン、4−ペンテン酸、8−ノネン酸メチル、ビニルスルホン酸、トリメチルビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、1,4−ジビニルシクロヘキサン、1,2,5−トリビニルシクロヘキサン等、
【0105】
(c) α,β−不飽和カルボン酸エステル類:アルキルアクリレート(例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート等)、置換アルキルアクリレート(例えば、2−クロロエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート等)、アルキルメタクリレート(例えば、メチルメタクリレート、ブチルメタクリ−レート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート等)、置換アルキルメタクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、グリセリンモノメタクリレート、2−アセトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(ポリオキシプロピレンの付加mol数=2〜100のもの)、3−N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、クロロ−3−N,N,N−トリメチルアンモニオプロピルメタクリレート、2−カルボキシエチルメタクリレート、3−スルホプロピルメタクリレート、4−オキシスルホブチルメタクリレート、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、アリルメタクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート等)、不飽和ジカルボン酸の誘導体(例えば、マレイン酸モノブチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸ジブチル等)、多官能エステル類(例えばエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラメタクリレート等)、
【0106】
(d) β−不飽和カルボン酸のアミド類:例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−tertブチルアクリルアミド、N−tertオクチルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド、N−アクリロイルモルフォリン、ジアセトンアクリルアミド、イタコン酸ジアミド、N−メチルマレイミド、2−アクリルアミド−メチルプロパンスルホン酸、メチレンビスアクリルアミド、ジメタクリロイルピペラジン等
(e)不飽和ニトリル類:アクリロニトリル、メタクリロニトリル等、
(f) スチレンおよびその誘導体:スチレン、ビニルトルエン、p−tertブチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、α−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、ビニルナフタレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−アミノメチルスチレン、1,4−ジビニルベンゼン等、
(g)ビニルエーテル類:メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル等、
(h)ビニルエステル類:酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニルクロロ酢酸ビニル等、
【0107】
(i)酸基を含有するモノマー:アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、アクリル酸リチウム、アクリル酸アンモニウム、メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カリウム、メタクリル酸リチウム、メタクリル酸アンモニウム、イタコン酸、イタコン酸カリウム、マレイン酸、CH2=CHCOOCH2CH2COOH、CH2=CHCONHCH2CH2COOH、CH2=CHC6H5COOH(p)、CH2=CHCOOCH2CH2CH2COOH、α−クロロアクリル酸等やスチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸アンモニウム、スチレンスルホン酸リチウム、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸アンモニウム、3−アクリロイルオキシ−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−メタクリロイルオキシ−プロパンスルホン酸カリウム、イソプレンスルホン酸等や3−アクリロイルオキシ−エチルホスホン酸ナトリウム等、
(j)その他の重合性単量体:N−ビニルイミダゾール、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ビニルオキサゾリン、2−イソプロペニルオキサゾリン、ジビニルスルホン等、が挙げられる。
【0108】
Xとしては、上記(k)モノマー群から選ばれる1種の単独重合体もしくは2種以上の共重合体、または(k)モノマー群から選ばれる少なくとも1種と上記(i)酸基を含有するモノマー群から選ばれる少なくとも1種との共重合体が好ましく、上記(k)モノマー群から選ばれる1種の単独重合体もしくは2種以上の共重合体がより好ましい。Xのさらに好ましい態様は、カルボン酸基を有するモノマーの単独重合体もしくは2種以上の共重合体であり、よりさらに好ましい態様は、アクリル酸、メタクリル酸、CH2=CHCOOCH2CH2COOH、CH2=CHCONHCH2CH2COOHもしくはCH2=CHCOOCH2CH2CH2COOHの単独重合体またはこれら2種以上の共重合体であり、特に好ましい態様は、アクリル酸もしくはメタクリル酸の単独重合体、またはこれらとアクリル酸、メタクリル酸、CH2=CHCOOCH2CH2COOH、CH2=CHCONHCH2CH2COOHもしくはCH2=CHCOOCH2CH2CH2COOH他のモノマーとの共重合体である。
【0109】
前記一般式(2)で表されるポリマーの好ましい態様は、下記一般式(2−A)で表されるポリマーである。
【0110】
【化20】
【0111】
式中、R11は水素原子またはメチル基を表し、好ましくはメチル基である。
【0112】
R12およびR13はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、置換としては上記置換基Tと同義である。R12およびR13としては、好ましくは水素原子またはアルキル基であり、より好ましくは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、さらに好ましくは水素原子またはメチル基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0113】
式中、X1はエチレン性不飽和結合を有するモノマーのユニットを表し、1種類でも複数種であってもよい。X1は重合可能であれば特に制限はなく、上記一般式(2)中のXのモノマーとして例示した、モノマー群(a)〜(k)から選ばれるモノマーを用いることができる。
前記一般式(2−a)で表されるポリマー化合物の好ましい態様は、X1が上記(i)酸基を含有するモノマー群から選ばれる少なくとも1種、またはX1がない(すなわちn=0であること)態様である。より好ましい態様は、X1がカルボン酸基を含有するモノマーの少なくとも1種である態様であり、さらに好ましい態様は、X1がアクリル酸、メタクリル酸、CH2=CHCOOCH2CH2COOH、CH2=CHCONHCH2CH2COOHまたはCH2=CHCOOCH2CH2CH2COOHである態様であり、特に好ましい態様は、X1がアクリル酸またはメタクリル酸の態様である。
【0114】
式中、mおよびnはモノマーユニットの質量比を表し、m+n=100である。mとして好ましくは50〜100、より好ましくは70〜100、さらに好ましくは80〜100である。nとして好ましくは0〜50、より好ましくは0〜30、さらに好ましくは0〜20である。
なお、X1が2種以上のモノマーユニットを含む場合は、そのモノマーユニットの質量比の合計をnとする。
【0115】
Y1およびY2は末端基であるが、少なくとも一方はSH−Z−L1−を表し、一方がSH−Z−L1−を表す場合、他方は水素原子である。Zは含窒素芳香族環を表し、前記一般式(1)中のZと同義であり、好ましい範囲も同様である。L1は2価の連結基または単結合を表し、前記一般式(2)中のL1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0116】
前記一般式(2)で表されるポリマーのより好ましい態様は、下記一般式(2−B)で表されるポリマーある。
【0117】
【化21】
【0118】
式中、X1、R11、m1およびn1は一般式(2−A)におけるそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。Y11およびY12は末端基であり、少なくとも一方は下記一般式(3)で表される基を表す。
【0119】
【化22】
【0120】
式中、L1Aは2価の連結基または単結合を表す。2価の連結基または単結合であれば特に制限はないが、L1Aとして好ましくは炭素数0〜14の2価の連結基である。
具体的には炭素数1〜14のアルキレン基(例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、キシリレンなど)、炭素数6〜14のアリーレン基(例えばフェニレン、ナフチレンなど)−C(=O)−、−S(=O)2−、−S(=O)−、−S−、−O−、−P(=O)O−−、−P(=O)O−−、−P(=O)ORa−、−NRa−(Raは水素原子または置換基を表し、置換基としては前述の置換基Tとしてあげたものが適用できる)、−N=、芳香族へテロ環基またはこれらの2種類以上を組合せて得られる炭素数0〜14の2価の連結基である。具体例を以下に示す。
【0121】
【化23】
【0122】
式中、QはN、CHまたはC−SHを表し、好ましくはNまたはCHであり、より好ましくはNである。
【0123】
本発明のポリマーの分子量は、数平均分子量5,000以上が好ましく、より好ましくは10,000以上、さらに好ましくは30,000以上、特に好ましくは50,000以上であり、最も好ましくは100,000以上である。
【0124】
次に、前記水溶性合成高分子の一般的合成法の一例を示すが、これらに限定されるものではない。
前記水溶性合成高分子は、▲1▼あらかじめ重合反応により得られたポリマーに、メルカプト基を有する含窒素芳香族環を含みポリマー中の反応性基と共有結合を形成しうる化合物を反応させて前記メルカプト基を導入することによって合成してもよいし、▲2▼メルカプト基を有する含窒素芳香族環を有する化合物をモノマーとともに重合してもよい。モノマーユニットは、ラジカル重合、イオン重合、縮重合、開環重合、重付加等のいずれの重合反応によって重合させてもよい。
【0125】
以下に、前記一般式(2)、(2−A)、または(2−B)で表されるポリマーの具体例を示すが、本発明は、以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0126】
【化24】
【0127】
【化25】
【0128】
【化26】
【0129】
さらに前記水溶性合成高分子は、ハロゲン化銀乳剤の調製時に添加することが好ましく、粒子形成過程、化学熟成過程、化学熟成終了後の何れであってもよい。粒子形成過程で添加することが最も好ましい。本発明のポリマーは水または親水性有機溶媒(例えばメタノール、N,N−ジメチルホルムアミド)に溶解して添加してもよい。
【0130】
次に、本発明のハロゲン化銀写真乳剤(以下、「本発明の乳剤」ともいう)に用いられるハロゲン化銀粒子、増感色素、およびその他の材料、調製方法等について更に詳細に説明する。
本発明で用いるハロゲン化銀粒子乳剤の形状は、平板状である。
本発明におけるハロゲン化銀写真乳剤は、臭化銀、塩化銀、沃臭化銀、沃塩臭化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、等が好ましい。塩化銀、沃臭化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀であることがより好ましい。
【0131】
本発明では、平行な主平面が(111)面である塩化銀含有率が10mol%未満の沃臭化銀または塩沃臭化銀よりなる平板状ハロゲン化銀粒子を用いるのが好ましい。
この平板状ハロゲン化銀粒子は対向する(111)主平面と該主平面を連結する側面からなり、沃臭化銀もしくは塩沃臭化銀よりなる。塩化銀を含んでもよいが、塩化銀含率は10mol%以下、好ましくは8mol%以下、より好ましくは3mol%以下、もしくは0mol%である。沃化銀含有率については、好ましくは40mol%以下、より好ましくは20mol%以下である。沃化銀含有率および臭化銀含有率は、それぞれ0.5mol%以上が好ましい。
【0132】
沃化銀含有率に拘わらず、粒子間の沃化銀含量の分布の変動係数は20%以下が好ましく、特に10%以下が好ましい。
沃化銀分布について粒子内で構造を有していることが好ましい。この場合、沃化銀分布の構造は2重構造、3重構造、4重構造さらにはそれ以上の構造があり得る。また、粒子内部で沃化銀含有量が連続的に変化していてもよい。
【0133】
本発明の乳剤では、全投影面積の50%以上がアスペクト比2以上の粒子で占められる。ここで平板粒子の投影面積ならびにアスペクト比は、参照用のラテックス球とともにシャドーをかけたカーボンレプリカ法による電子顕微鏡写真から測定することができる。平板粒子は上から見た時に、通常6角形、3角形もしくは円形状の形態をしているが、該投影面積と等しい面積の円の直径を厚みで割った値がアスペクト比である。平板粒子の形状は6角形の比率が高い程好ましく、また、6角形の各隣接する辺の長さの比は1:2以下であることが好ましい。
【0134】
平板粒子は、投影面積径で0.1μm以上20.0μm以下が好ましく、0.2μm以上10.0μm以下がさらに好ましい。投影面積径とは、ハロゲン化銀粒子の投影面積と等しい面積の円の直径である。また、平板粒子の厚みは、0.01μm以上0.5μm以下、好ましくは0.02μm以上0.2μm以下が好ましい。0.02μm以上0.1μm以下が最も好ましい。平板粒子の厚みとは二つの主平面の間隔である。球相当径では0.1μm以上5.0μm以下が好ましく、0.2μm以上3μm以下がさらに好ましい。球相当径とは、個々の粒子の体積と等しい体積を有する球の直径である。また、個々の粒子のアスペクト比は、1以上100以下が好ましく、2以上50以下がさらに好ましい。アスペクト比とは粒子の投影面積径をその粒子の厚みで割った値である。
【0135】
本発明の乳剤が含有するハロゲン化銀粒子は単分散性であることが好ましい。本発明の乳剤が含有する全ハロゲン化銀粒子の球相当径の変動係数は30%以下、好ましくは25%以下である。また、平板状粒子の場合は投影面積径の変動係数も重要であり、本発明の全ハロゲン化銀粒子の投影面積径の変動係数は30%以下であることが好ましく、より好ましくは25%以下であり、更に好ましくは20%以下である。また、平板状粒子の厚みの変動係数は、30%以下が好ましく、より好ましくは25%以下であり、更に好ましくは20%以下である。変動係数とは個々のハロゲン化銀粒子の投影面積径の分布の標準偏差を平均投影面積径で割った値、もしくは、個々のハロゲン化銀平板状粒子の厚みの分布の標準偏差を平均厚みで割った値である。
【0136】
本発明の乳剤が含有する平板粒子の双晶面間隔は米国特許第5,219,720号公報に記載のように0.012μm以下にしたり、特開平5−249585号公報に記載のように(111)主平面間距離/双晶面間隔を15以上にしてもよく、目的に応じて選んでよい。
【0137】
アスペクト比が高い程、著しい効果が得られるので、平板粒子乳剤は全投影面積の50%以上が好ましくはアスペクト比5以上の粒子で占められることが好ましい。さらに好ましくはアスペクト比8以上である。アスペクト比があまり大きくなりすぎると、前述した粒子サイズ分布の変動係数が大きくなる方向になるために、通常アスペクト比は100以下が好ましい。
【0138】
平板粒子の転位線は、例えばJ.F.Hamilton,Phot.Sci.Eng.,11、57、(1967)やT.Shiozawa,J.Soc.Phot.Sci.Japan,35、213、(1972)に記載の、低温での透過型電子顕微鏡を用いた直接的な方法により観察することができる。すなわち乳剤から粒子に転位線が発生するほどの圧力をかけないよう注意して取り出した
ハロゲン化銀粒子を電子顕微鏡観察用のメッシュにのせ、電子線による損傷(プリントアウト等)を防ぐように試料を冷却した状態で透過法により観察を行う。この時粒子の厚みが厚い程、電子線が透過しにくくなるので高圧型(0.25μmの厚さの粒子に対して200kV以上)の電子顕微鏡を用いた方がより鮮明に観察することができる。このような方法により得られた粒子の写真より、主平面に対して垂直方向から見た場合の各粒子についての転位線の位置および数を求めることができる。
【0139】
転位線の数は、好ましくは1粒子当り平均10本以上である。より好ましくは1粒子当り平均20本以上である。転位線が密集して存在する場合、または転位線が互いに交わって観察される場合には、1粒子当りの転位線の数は明確には数えることができない場合がある。しかしながら、これらの場合においても、おおよそ10本、20本、30本という程度には数えることが可能であり、明らかに、数本しか存在しない場合とは区別できる。転位線の数の1粒子当りの平均数については100粒子以上について転位線の数を数えて、数平均として求める。
【0140】
転位線は、例えば平板粒子の側面近傍に導入することができる。この場合転位は側面にほぼ垂直であり、平板状粒子の中心から辺(側面)までの距離の長さのx%の位置から始まり側面に至るように転位線が発生している。このxの値は好ましくは10以上100未満であり、より好ましくは30以上99未満であり、最も好ましくは50以上98未満である。この時、この転位線の開始する位置を結んでつくられる形状は粒子形と相似に近いが、完全な相似形ではなく、ゆがむことがある。この型の転位数は粒子の中心領域には見られない。転位線の方向は結晶学的におおよそ(211)方向であるがしばしば蛇行しており、また互いに交わっていることもある。
【0141】
また平板粒子の側面近傍の全域にわたってほぼ均一に転位線を有していても、側面近傍の局所的な位置に転位線を有していてもよい。すなわち六角形平板ハロゲン化銀粒子を例にとると、6つの頂点の近傍のみに転位線が限定されていてもよいし、そのうちの1つの頂点近傍のみに転位線が限定されていてもよい。逆に6つの頂点近傍を除く辺のみに転位線が限定されていることも可能である。
【0142】
また平板粒子の平行な2つの主平面の中心を含む領域に渡って転位線が形成されていてもよい。主平面の全域に渡って転位線が形成されている場合には転位線の方向は主平面に垂直な方向から見ると結晶学的におおよそ(211)方向の場合もあるが(110)方向またはランダムに形成されている場合もあり、さらに各転位線の長さもランダムであり、主平面上に短い線として観察される場合と、長い線として辺(外周)まで到達して観察される場合がある。転位線は直線のこともあれば蛇行していることも多い。また、多くの場合互いに交わっている。
【0143】
転位線の位置は以上のように側面近傍または主平面上または局所的な位置に限定されていてもよいし、これらが組み合わされて、形成されていてもよい。すなわち、側面近傍と主平面上に同時に存在していてもよい。
【0144】
この平板粒子乳剤の粒子表面のヨウ化銀含有量は、好ましくは10mol%以下で、特に好ましくは5mol%以下である。本発明の粒子表面のヨウ化銀含有量はXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)を用いて測定される。ハロゲン化銀粒子表面付近のヨウ化銀含量の分析に使用されるXPS法の原理に関しては、相原らの、「電子の分光」(共立ライブラリ−16、共立出版発行,昭和53年)を参考にすることができる。XPSの標準的な測定法は、励起X線としてMg−Kαを使用し、適当な試料形態としたハロゲン化銀から放出される沃素(I)と銀(Ag)の光電子(通常はI−3d5/2、Ag−3d5/2)の強度を観測する方法である。沃素の含量を求めるには、沃素の含量が既知である数種類の標準試料を用いて沃素(I)と銀(Ag)の光電子の強度比(強度(I)/強度(Ag))の検量線を作成し、この検量線からもとめることができる。ハロゲン化銀乳剤ではハロゲン化銀粒子表面に吸着したゼラチンを蛋白質分解酵素などで分解、除去した後にXPSの測定をおこなわなければならない。粒子表面のヨウ化銀含有量が10mol%以下の平板粒子乳剤とは、1つの乳剤に含まれる乳剤粒子を、XPSで分析したときにヨウ化銀含量が10mol%以下であるものをさす。この場合、明瞭に2種以上の乳剤が混合されているときには、遠心分離法、濾別法など適当な前処理を施した上で同一種類の乳剤につき分析を行なう必要がある。
【0145】
本発明の平板粒子乳剤の構造は例えば臭化銀/沃臭化銀/臭化銀からなる3重構造粒子ならびにそれ以上の高次構造も好ましい。構造間の沃化銀含有率の境界は明確なものであっても、連続的になだらかに変化しているものであっても、いずれでもよい。通常、粉末X線回折法を用いた沃化銀含有量の測定では沃化銀含有量の異なる明確な2山を示す様なことはなく、高沃化銀含有率の方向にすそをひいたようなX線回折プロフィールを示す。表面よりも内側の層の沃化銀含有率が高いことが好ましく、表面よりも内側の層の沃化銀含有率は好ましくは5mol%以上高く、より好ましくは7mol%以上高い。
【0146】
次に、本発明に関する乳剤である平行な主平面が(111)面であり、最小の長さを有する辺の長さに対する最大の長さを有する辺の長さの比が2以下である六角形ハロゲン化銀粒子の頂点部、および/または側面部、および/または主平面部に1粒子当り少なくとも一個以上のエピタキシャル接合を有する粒子について説明する。エピタキシャル接合した粒子とは、ハロゲン化銀粒子本体の他に該粒子と接合した結晶部(すなわち、エピタキシャル部)を持つ粒子であり、接合した結晶部は通常ハロゲン化銀粒子本体から突出している。接合した結晶部(エピタキシャル部)の粒子全銀量に対する割合は2%以上30%以下が好ましく、5%以上15%以下がより好ましい。エピタキシャル部は粒子本体のどの部分に存在してもよいが、粒子主平面部、粒子側面部、粒子頂点部が好ましい。
エピタキシャルの個数は、少なくとも一つ以上が好ましい。また、エピタキシャル部の組成は、AgCl、AgBrCl、AgBrClI、AgBrI、AgI、AgSCN等が好ましい。エピタキシャル部が存在する場合、粒子内部には転位線が存在してもよいが、存在しなくてもよい。
【0147】
前記ハロゲン化銀粒子は塩化銀含有率10mol%未満の沃臭化銀または塩沃臭化銀よりなる。
【0148】
次に、本発明の乳剤に用いられるハロゲン化銀粒子の調製方法について説明する。
ハロゲン化銀粒子の調製方法の一例は、(a)基盤粒子形成工程と、それに引き続く粒子形成工程((b)工程)とを含む。(a)工程に引き続き(b)工程を行うことがより好ましいが、(a)工程のみでもよい。(b)工程は、(b1)転位導入工程、(b2)頂点部転位限定導入工程、または(b3)エピタキシャル接合工程、のいずれでもよく、少なくとも一つでもよければ、二つ以上組み合わせてもよい。
【0149】
まず、(a)基盤粒子形成工程について説明する。基盤部は、粒子形成に使用した全銀量に対して少なくとも50%以上が好ましく、さらに好ましくは60%以上である。また、基盤部の銀量に対するヨードの平均含有率は0mol%以上30%mol以下が好ましく、0mol%以上15mol%以下がさらに好ましい。また、基盤部は必要に応じてコアシェル構造を取ってもよい。この際、基盤部のコア部は基盤部の全銀量に対して50%以上70%以下であることが好ましく、コア部の平均ヨード組成は0mol%以上30mol%以下が好ましく、0mol%以上15mol%以下が更に好ましい。シェル部のヨード組成は0mol%以上3mol%以下が好ましい。
【0150】
ハロゲン化銀写真乳剤の調製方法としては、ハロゲン化銀核を形成した後、更にハロゲン化銀粒子を成長させて所望のサイズの粒子を得る方法が一般的であり、本発明も同様であることに変りはない。また、平板状粒子の形成に関しては、少なくとも核形成、熟成、成長の工程が含まれる。この工程は、米国特許第4,945,037号明細書に詳細に記載されている。
【0151】
1.核形成
平板粒子の核形成は、一般にはゼラチンの水溶液を保持する反応容器に、銀塩水溶液とハロゲン化アルカリ水溶液を添加して行われるダブルジェット法、あるいはハロゲン化アルカリを含むゼラチン溶液に銀塩水溶液を添加するシングルジェット法が用いられる。また、必要に応じて銀塩を含むゼラチン溶液にハロゲン化アルカリ水溶液を添加する方法も用いることができる。さらに、必要に応じて特開昭2−44335号公報に開示されている混合器にゼラチン溶液と銀塩溶液とハロゲン化アルカリ水溶液を添加し、ただちにそれを反応容器に移すことによって平板粒子の核形成を行うこともできる。また、米国特許第5,104,786号明細書に開示されているように、ハロゲン化アルカリと保護コロイド溶液を含む水溶液をパイプに通しそこに銀塩水溶液を添加することにより核形成を行うこともできる。また、米国特許第6,022,681号公報記載の塩素含有量が核形成に使用した銀量に対して10mol%以上であるような核形成を用いてもよい。
【0152】
核形成は、ゼラチンを分散媒とし、pBrが1〜4の条件で分散媒形成することが好ましい。ゼラチンの種類としては、アルカリ処理ゼラチン、低分子量ゼラチン(分子量:3000〜4万)、米国特許第4,713,320号明細書および同第4,942,120号明細書に記載の酸化処理ゼラチン、および低分子量の酸化処理ゼラチンを用いてもよい。特に低分子量の酸化処理ゼラチンを用いることは好まし
い。
【0153】
分散媒の濃度は、10質量%以下が好ましく、さらに1質量%以下がより好ましい。
核形成時の温度は、5〜60℃が好ましいが、平均粒径が0.5μm以下の微粒子平板粒子を作る場合は5〜48℃がより好ましい。
分散媒のpHは、1以上10以下が好ましいが、1.5以上9以下がさらに好ましい。
【0154】
また、米国特許第5,147,771号明細書,同第5,147,772号明細書、同第5,147,773号明細書、同第5,171,659号明細書、同第5,210,013号明細書、同第5,252,453号明細書、および特許第3,089,578号公報に記載のポリアルキレンオキサイド化合物を核形成工程、もしくは後の熟成工程、および成長工程で添加することが可能である。
【0155】
2.熟成
1.における核形成では、平板粒子以外の微粒子(特に、八面体および一重双晶粒子)が形成される。次に述べる成長過程に入る前に平板粒子以外の粒子を消滅せしめ、平板粒子となるべき形状でかつ単分散性のよい核を得る必要がある。これを可能とするために、核形成に引き続いてオストワルド熟成を行うことがよく知られている。
【0156】
核形成後直ちにpBrを調節した後、温度を上昇させ六角平板粒子比率が最高となるまで熟成を行う。この時に、ゼラチン溶液を追添加してもよい。その際の分散媒溶液に対するゼラチンの濃度は、10質量%以下であることが好ましい。この時使用する追添加ゼラチンは、アルカリ処理ゼラチン、アミノ基が95%以上修飾されたコハク化ゼラチンやトリメリット化ゼラチンのような特開平11−143002号公報記載のアミノ基修飾ゼラチン、特開平11−143003号公報記載のイミダゾール基修飾ゼラチン、および酸化処理ゼラチンを用いる。特に、コハク化ゼラチンやトリメリット化ゼラチンを用いることが好ましい。
熟成の温度は、40〜80℃、好ましくは50〜80℃であり、pBrは1.2〜3.0である。また、pHは1.5以上9以下が好ましい。
【0157】
また、この時平板粒子以外の粒子を速やかに消失せしめるために、ハロゲン化銀溶剤を添加してもよい。この場合のハロゲン化銀溶剤の濃度としては、0.3mol/L(以下、「L」とも表記する。)以下が好ましく、0.2mol/L以下がより好ましい。直接反転用乳剤として用いる場合は、ハロゲン化銀溶剤として、アルカリ性側で用いられるNH3より、中性、酸性側で用いられるチオエーテル化物等のハロゲン化銀溶剤の方が好ましい。
このように熟成して、ほぼ100%平板状粒子のみとする。
【0158】
熟成が終わった後、次の成長過程でハロゲン化銀溶剤が不要の場合は次のようにしてハロゲン化銀溶剤を除去する。
(i) NH3のようなアルカリ性ハロゲン化銀溶剤の場合は、HNO3のようなAg+との溶解度積の大きな酸を加えて無効化する。
(ii) チオエーテル系ハロゲン化銀溶剤の場合は、特開昭60−136736号公報に記載のごとくH2O2等の酸化剤を添加して無効化する。
【0159】
3.成長
熟成過程に続く結晶成長期のpBrは1.4〜3.5に保つことが好ましい。成長過程に入る前の分散媒溶液中のゼラチン濃度が低い場合(1質量%以下)に、ゼラチンを追添加する場合がある。その際、分散媒溶液中のゼラチン濃度は、1〜10質量%にすることが好ましい。この時使用するゼラチンは、アルカリ処理ゼラチン、アミノ基が95%以上修飾されたコハク化ゼラチンやトリメリット化ゼラチン、および酸化処理ゼラチンを用いる。特に、コハク化ゼラチンやトリメリット化ゼラチンを用いることが好ましい。
【0160】
成長中のpHは、2以上10以下、好ましくは4以上8以下である。ただし、コハク化ゼラチンおよびトリメリット化ゼラチン存在時には5以上8以下が好ましい。結晶成長期におけるAg+、およびハロゲンイオンの添加速度は、結晶臨界成長速度の20〜100%、好ましくは30〜100%の結晶成長速度になるようにすることが好ましい。この場合、結晶成長とともに銀イオンおよびハロゲンイオンの添加速度を増加させていくが、その場合、特公昭48−36890号公報、同52−16364号公報記載のように、銀塩およびハロゲン塩水溶液の添加速度を上昇させてもよく、水溶液の濃度を増加させてもよい。銀塩水溶液とハロゲン塩水溶液を同時に添加するダブルジェット法で行ってもよいが、米国特許第4,672,027号明細書および同第4,693,964号明細書に記載の硝酸銀水溶液と臭化物を含むハロゲン水溶液と沃化銀微粒子乳剤を同時に添加することが好ましい。この際、成長の温度は、50℃以上90℃以下が好ましく、60℃以上85℃以下が更に好ましい。
また、添加するAgI微粒子乳剤は、あらかじめ調製したものでもよく、連続的に調製しながら添加してもよい。この際の調製方法は特開平10−43570号公報を参考にできる。
【0161】
添加するAgI乳剤の平均粒子サイズは0.005μm以上0.1μm以下、好ましくは0.007μm以上0.08μm以下である。基盤粒子のヨード組成は、添加するAgI乳剤の量により変化させることができる。
【0162】
さらに、銀塩水溶液とハロゲン塩水溶液の添加の代わりに、ヨウ臭化銀微粒子を添加することは好ましい。この際、微粒子のヨード量を所望する基盤粒子のヨード量と等しくすることで、所望のヨード組成の基盤粒子が得られる。ヨウ臭化銀微粒子はあらかじめ調製したものでもよいが、連続的に調製しながら添加する方が好ましい。添加するヨウ臭化銀微粒子サイズは、0.005μm以上0.1μm以下、好ましくは0.01μm以上0.08μm以下である。成長時の温度は50℃以上90℃以下、好ましくは60℃以上85℃以下である。
【0163】
次に、(b)工程について説明する。
まず、(b1)工程について説明する。(b1)工程は第1シェル工程と第2シェル工程から成る。上述した基盤に第1シェルを設ける。第1シェルの比率は好ましくは全銀量に対して1mol%以上30mol%以下であって、その平均沃化銀含有率20mol%以上100mol%以下である。より好ましくは第1シェルの比率は全銀量に対して1mol%以上20mol%以下であって、その平均沃化銀含有率25mol%以上100mol%以下である。基盤への第1シェルの成長は基本的には硝酸銀水溶液と沃化物と臭化物を含むハロゲン水溶液をダブルジェット法で添加する。もしくは硝酸銀水溶液と沃化物を含むハロゲン水溶液をダブルジェット法で添加する。もしくは沃化物を含むハロゲン水溶液をシングルジェット法で添加する。
【0164】
以上のいずれの方法でも、それらの組み合わせでもよい。第1シェルの平均沃化銀含有率から明らかなように、第1シェル形成時には沃臭化銀混晶の他に沃化銀が析出し得る。いずれの場合でも通常は、次の第2シェルの形成時に、沃化銀は消失し、すべて沃臭化銀混晶に変化する。
【0165】
第1シェルの形成の好ましい方法として沃臭化銀もしくは沃化銀微粒子乳剤を添加して熟成し溶解する方法がある。さらに、好ましい方法として沃化銀微粒子乳剤を添加して、その後硝酸銀水溶液の添加もしくは硝酸銀水溶液とハロゲン水溶液を添加する方法がある。この場合、沃化銀微粒子乳剤の溶解は、硝酸銀水溶液の添加により促進されるが、添加した沃化銀微粒子乳剤の銀量を用いて第1シェルとし、沃化銀含有率100mol%とする。そして添加した硝酸銀水溶液の銀量を用いて第2シェルとして計算する。沃化銀微粒子乳剤は急激に添加されることが好ましい。
【0166】
沃化銀微粒子乳剤を急激に添加するとは、好ましくは10分以内に沃化銀微粒子乳剤を添加することをいう。より好ましくは7分以内に添加することをいう。この条件は添加する系の温度、pBr、pH、ゼラチン等の保護コロイド剤の種類、濃度、ハロゲン化銀溶剤の有無、種類、濃度等により変化しうるが、上述したように短い方が好ましい。添加する時には実質的に硝酸銀等の銀塩水溶液の添加は行なわれない方が好ましい。添加時の系の温度は40℃以上90℃以下が好ましく、50℃以上80℃以下が特に好ましい。
【0167】
沃化銀微粒子乳剤は実質的に沃化銀であればよく、混晶となり得る限りにおいて臭化銀および/または塩化銀を含有していてもよい。好ましくは100%沃化銀である。沃化銀はその結晶構造においてβ体、γ体ならびに米国特許第4,672,026号明細書に記載されているようにα体もしくはα体類似構造があり得る。
【0168】
本発明においては、その結晶構造の制限は特にはないが、β体とγ体の混合物がさらに好ましくはβ体が用いられる。沃化銀微粒子乳剤は米国特許第5,004,679号明細書等に記載の添加する直前に形成したものでもよいし、通常の水洗工程を経たものでもいずれでもよいが、本発明においては好ましくは通常の水洗工程を経たものが用いられる。沃化銀微粒子乳剤は、米国特許第4,672,026号明細書等に記載の方法で容易に形成できうる。粒子形成時のpI値を一定にして粒子形成を行う、銀塩水溶液と沃化物塩水溶液のダブルジェット添加法が好ましい。ここでpIは系のI−イオン濃度の逆数の対数である。温度、pI、pH、ゼラチン等の保護コロイド剤の種類、濃度、ハロゲン化銀溶剤の有無、種類、濃度等に特に制限はないが、粒子のサイズは0.1μm以下、より好ましくは0.07?μm以下が本発明に都合がよい。微粒子であるために粒子形状は完全には特定できないが粒子サイズの分布の変動係数は25%以下が好ましい。特に20%以下の場合には、本発明の効果が著しい。ここで沃化銀微粒子乳剤のサイズおよびサイズ分布は、沃化銀微粒子を電子顕微鏡観察用のメッシュにのせ、カーボンレプリカ法ではなく直接、透過法によって観察して求める。これは粒子サイズが小さいために、カーボンレプリカ法による観察では測定誤差が大きくなるためである。粒子サイズは観察された粒子と等しい投影面積を有する円の直径と定義する。粒子サイズの分布についても、この等しい投影面積円直径を用いて求める。本発明において最も有効な沃化銀微粒子は粒子サイズが0.06μm以下0.02μm以上であり、粒子サイズ分布の変動係数が18%以下である。
【0169】
沃化銀微粒子乳剤は上述の粒子形成後、好ましくは米国特許第2,614,929号明細書等に記載の通常の水洗およびpH、pI、ゼラチン等の保護コロイド剤の濃度調整ならびに含有沃化銀の濃度調整が行われる。pHは5以上7以下が好ましい。pI値は沃化銀の溶解度が最低になるpI値もしくはその値よりも高いpI値に設定することが好ましい。保護コロイド剤としては、平均分子量10万程度の通常のゼラチンが好ましく用いられる。平均分子量2万以下の低分子量ゼラチンも好ましく用いられる。また上記の分子量の異なるゼラチンを混合して用いると都合がよい場合がある。乳剤1kgあたりのゼラチン量は好ましくは10g以上100g以下である。より好ましくは20g以上80g以下である。乳剤1kgあたりの銀原子換算の銀量は好ましくは10g以上100g以下である。より好ましくは20g以上80g以下である。ゼラチン量および/または銀量は沃化銀微粒子乳剤を急激に添加するのに適した値を選択することが好ましい。
【0170】
沃化銀微粒子乳剤は、通常あらかじめ溶解して添加するが、添加時には系の撹拌効率を十分に高める必要がある。好ましくは撹拌回転数は、通常よりも高めに設定される。撹拌時の泡の発生を防じるために消泡剤の添加は効果的である。具体的には、米国特許第5,275,929号明細書の実施例等に記述されている消泡剤が用いられる。
【0171】
第1シェル形成のさらに好ましい方法として、従来の沃化物イオン供給法(フリーな沃化物イオンを添加する方法)のかわりに米国特許第5、496、694号明細書に記載の沃化物イオン放出剤を用いて、沃化物イオンを急激に生成せしめながら沃化銀を含むハロゲン化銀相を形成することができる。
【0172】
沃化物イオン放出剤は沃化物イオン放出調節剤(塩基および/または求核試薬)との反応により沃化物イオンを放出するが、この際に用いる求核試薬としては好ましくは以下の化学種が挙げられる。例えば、水酸化物イオン、亜硫酸イオン、ヒドロキシルアミン、チオ硫酸イオン、メタ重亜硫酸イオン、ヒドロキサム酸類、オキシム類、ジヒドロキシベンゼン類、メルカプタン類、スルフィン酸塩、カルボン酸塩、アンモニア、アミン類、アルコール類、尿素類、チオ尿素類、フェノール類、ヒドラジン類、ヒドラジド類、セミカルバジド類、ホスフィン類、スルフィド類が挙げられる。
【0173】
塩基や求核試薬の濃度、添加方法、また反応液の温度をコントロールすることにより沃化物イオンの放出速度、タイミングをコントロールすることができる。塩基として好ましくは水酸化アルカリが挙げられる。
【0174】
沃化物イオンを急激に生成せしめるのに用いる沃化物イオン放出剤及び沃化物イオン放出調節剤の好ましい濃度範囲は1×10−7〜20Mであり、より好ましくは1×10−5〜10M、さらに好ましくは1×10−4〜5M、特に好ましくは1×10−3〜2Mである。
濃度が20Mを上回ると、分子量の大きい沃化物イオン放出剤及び沃化物イオン放出剤の添加量が粒子形成容器の容量に対して多くなり過ぎるため好ましくない。また、1×10−7Mを下回ると沃化物イオン放出反応速度が遅くなり、沃化物イオン放出剤を急激に生成せしめるのが困難になるため好ましくない。
【0175】
好ましい温度範囲は30〜80℃であり、より好ましくは35〜75℃、特に好ましくは35〜60℃である。温度が80℃上回る高温では一般に沃化物イオン放出反応速度が極めて速くなり、また30℃下回る低温では一般に沃化物イオン放出反応速度が極めて遅くなるため、それぞれ使用条件が限られ好ましくない。
【0176】
沃化物イオンの放出の際に塩基を用いる場合、液pHの変化を用いてもよい。
【0177】
この時、沃化物イオンの放出速度、タイミングをコントロールするのに好ましいpHの範囲は2〜12であり、より好ましくは3〜11、特に好ましくは5〜10、最も好ましくは調節後のpHが7.5〜10.0である。pH7の中性条件下でも水のイオン積により定まる水酸化物イオンが調節剤として作用する。
【0178】
また、求核試薬と塩基を併用してもよく、この時もpHを上記の範囲でコントロールし、沃化物イオンの放出速度、タイミングをコントロールしてもよい。沃化物イオン放出剤から沃素原子を沃化物イオンの形で放出させる場合、全沃素原子を放出させてもよいし、一部は分解せずに残っていてもよい。
【0179】
上述した基盤および第1シェルを有する平板粒子上に第2シェルを設ける。第2シェルの比率は好ましくは全銀量に対して10mol%以上40mol%以下であって、その平均沃化銀含有率が0mol%以上5mol%以下である。より好ましくは第2シェルの比率は全銀量に対して15mol%以上30mol%以下であって、その平均沃化銀含有率が0mol%以上3mol%以下である。基盤および第1シェルを有する平板粒子上への第2シェルの成長は該平板粒子のアスペクト比を上げる方向でも下げる方向でもよい。基本的には硝酸銀水溶液と臭化物を含むハロゲン水溶液をダブルジェット法で添加することにより第2シェルの成長は行なわれる。もしくは臭化物を含むハロゲン水溶液を添加した後、硝酸銀水溶液をシングルジェット法で添加してもよい。系の温度、pH、ゼラチン等の保護コロイド剤の種類、濃度、ハロゲン化銀溶剤の有無、種類、濃度等は広範に変化しうる。pBrについては、本発明においては該層の形成終了時のpBrが該層の形成初期時のpBrよりも高くなることが好ましい。好ましくは該層の形成初期のpBrが2.9以下であり該層の形成終了時のpBrが1.7以上である。さらに好ましくは該層の形成初期のpBrが2.5以下であり該層の形成終了時のpBrが1.9以上である。最も好ましくは該層の形成初期のpBrが2.3以下1以上である。最も好ましくは該層の終了時のpBrが2.1以上4.5以下である。
【0180】
(b1)工程の部分には転位線が存在することが好ましい。転位線は平板粒子の側面部近傍に存在することが好ましい。側面部近傍とは、平板粒子の六辺の側面部とその内側部分、すなわち(b1)工程で成長させた部分のことである。側面部に存在する転位線は1粒子当り平均10本以上が好ましい。より好ましくは1粒子当り平均20本以上である。転位線が密集して存在する場合、または転位線が互いに交わって観察される場合には、1粒子当りの転位線の数は明確には数えることができない場合がある。しかしながら、これらの場合においても、おおよそ10本、20本、30本という程度には数えることが可能であり、明らかに数本しか存在しない場合とは区別できる。転位線の数の1粒子当りの平均数については100粒子以上について転位線の数を数えて、数平均として求める。
【0181】
本発明の平板粒子は粒子間の転位線量分布が均一であることが望ましい。本発明の乳剤は1粒子当たり10本以上の転位線を含むハロゲン化銀粒子が全粒子の100〜50%を占めることが好ましく、より好ましくは100〜70%を、特に好ましくは100〜90%を占める。50%を下回ると粒子間の均質性の点で好ましくない。
【0182】
本発明において転位線を含む粒子の割合及び転位線の本数を求める場合は、少なくとも100粒子について転位線を直接観察して求めることが好ましく、より好ましくは200粒子以上、特に好ましくは300粒子以上について観察して求める。
【0183】
次に、(b2)工程について説明する。
一つ目の態様としては、頂点近傍のみをヨウ化物イオンにより溶解する方法、二つ目の態様としては、銀塩溶液とヨウ化物塩溶液を同時に添加する方法、三つ目の態様としては、ハロゲン化銀溶剤を用いて頂点近傍のみを実質的に溶解する方法、四つ目の態様としてはハロゲン変換を介する方法がある。
【0184】
一つ目の態様であるヨウ化物イオンにより溶解する方法について説明する。
【0185】
基盤粒子にヨウ化物イオンを添加することで基盤粒子の各頂点部近傍が溶解して丸みを帯びる。続けて、硝酸銀溶液と臭化物溶液、または、硝酸銀溶液と臭化物溶液とヨウ化物溶液の混合液を同時に添加すると粒子は更に成長して頂点近傍に転位が導入される。この方法に関しては、特開平4−149541号公報、および特開平9−189974号公報を参考にできる。
【0186】
本態様において添加されるヨウ化物イオンの総量は、該ヨウ化物イオン総モル数を基盤粒子の総銀量モル数で除した値に100を掛けた値をI2(mol%)とした時、基盤粒子のヨウ化銀含有率I1(mol%)に対して、(I2−I1)が0以上8以下を満たすことが本発明に従う効果的な溶解を得る上で好ましく、より好ましくは0以上4以下である。
【0187】
本態様において添加されるヨウ化物イオンの濃度は低い方が好ましく、具体的には0.2mol/L以下の濃度であることが好ましく、更に好ましくは0.1mol/L。
また、ヨウ化物イオン添加時のpAgは8.0以上が好ましく、更に好ましくは8.5以上である。
【0188】
基盤粒子へのヨウ化物イオンの添加による該基盤粒子の頂点部溶解に引き続き、硝酸銀溶液の単独添加、または、硝酸銀溶液と臭化物溶液、もしくは、硝酸銀溶液と臭化物溶液とヨウ化物溶液の混合液を同時に添加して粒子を更に成長させ頂点近傍に転位を導入させる。
【0189】
二つ目の態様である銀塩溶液とヨウ化物塩溶液との同時添加による方法について説明する。基盤粒子に対して銀塩溶液とヨウ化物塩溶液を急速に添加することで粒子の頂点部にヨウ化銀もしくはヨウ化銀含率の高いハロゲン化銀をエピタキシャル生成させることができる。この際、銀塩溶液とヨウ化物塩溶液の好ましい添加速度は0.2分〜0.5分であり、更に好ましくは0.5分から2分である。この方法に関しては、特開平4−149541号公報に詳細に記載されているので、参考にすることができる。
【0190】
基盤粒子へのヨウ化物イオンの添加による該基盤粒子の頂点部溶解に引き続き、硝酸銀溶液の単独添加、または、硝酸銀溶液と臭化物溶液、もしくは、硝酸銀溶液と臭化物溶液とヨウ化物溶液の混合液を同時に添加して粒子を更に成長させ頂点近傍に転位を導入させる。
【0191】
三つ目の態様であるハロゲン化銀溶剤を用いる方法について説明する。
基盤粒子を含む分散媒にハロゲン化銀溶剤を加えた後、銀塩溶液とヨウ化物塩溶液を同時添加すると、ハロゲン化銀溶剤により溶解した基盤粒子の頂点部にヨウ化銀もしくはヨウ化銀含率の高いハロゲン化銀が優先的に成長することになる。この際、銀塩溶液およびヨウ化物塩溶液は急速に添加する必要はない。この方法に関しては、特開平4−149541号公報に詳細に記載されているので、これを参考にできる。
【0192】
基盤粒子へのヨウ化物イオンの添加による該基盤粒子の頂点部溶解に引き続き、硝酸銀溶液の単独添加、または、硝酸銀溶液と臭化物溶液、もしくは、硝酸銀溶液と臭化物溶液とヨウ化物溶液の混合液を同時に添加して粒子を更に成長させ頂点近傍に転位を導入させる。
【0193】
次に、四つ目の態様であるハロゲン変換を介する方法について説明する。
基盤粒子にエピタキシャル成長部位指示剤(以下、サイトダイレクターと呼ぶ)、例えば特開昭58−108526号公報記載の増感色素や、水溶性ヨウ化物を添加することで基盤粒子の頂点部に塩化銀のエピタキシャルを形成した後ヨウ化物イオンを添加することで塩化銀をヨウ化銀もしくはヨウ化銀含率の高いハロゲン化銀へハロゲン変換する方法である。サイトダイレクターは増感色素、水溶性チオシアン酸イオン、および水溶性ヨウ化物イオンが使用できるが、沃化物イオンが好ましい。ヨウ化物イオンは基盤粒子に対して0.0005〜1mol%、好ましくは0.001〜0.5mol%が好ましい。最適な量の沃化物イオンを添加した後、銀塩溶液と塩化物塩溶液の同時添加すると塩化銀のエピタキシャルを基盤粒子の頂点部に形成できる。
【0194】
塩化銀のヨウ化物イオンによるハロゲン変換について説明する。溶解度の大きいハロゲン化銀は溶解度のより小さいハロゲン化銀を形成し得るハロゲンイオンを添加することにより、溶解度のより小さいハロゲン化銀に変換される。この過程はハロゲン変換と呼ばれ、例えば米国特許第4,142,900号明細書に記載されている。基盤の頂点部にエピタキシャル成長した塩化銀をヨウ化物イオンにより選択的にハロゲン変換することで基盤粒子頂点部にヨウ化銀相を形成させる。詳細は、特開平4−149541号公報に記載されている。
【0195】
基盤粒子の頂点部にエピタキシャル成長した塩化銀をヨウ化物イオンの添加によるヨウ化銀相へのハロゲン変換に引き続き、硝酸銀溶液の単独添加、または、硝酸銀溶液と臭化物溶液、もしくは、硝酸銀溶液と臭化物溶液とヨウ化物溶液の混合液を同時に添加して粒子を更に成長させ頂点近傍に転位を導入させる。
【0196】
(b2)工程の部分には転位線が存在することが好ましい。転位線は平板粒子の頂点部近傍に存在することが好ましい。頂点部近傍とは、粒子の中心と各頂点を結ぶ直線の中心からx%の位置の点から、各頂点を作る辺に垂線を下した時に、その垂線とその辺とで囲まれた三次元の部分のことである。このxの値は好ましくは50以上100未満、さらに好ましくは75以上100未満である。側面部に存在する転位線は1粒子当り平均10本以上が好ましい。より好ましくは1粒子当り平均20本以上である。転位線が密集して存在する場合、または転位線が互いに交わって観察される場合には、1粒子当りの転位線の数は明確には数えることができない場合がある。しかしながら、これらの場合においても、おおよそ10本、20本、30本という程度には数えることが可能であり、明らかに数本しか存在しない場合とは区別できる。転位線の数の1粒子当りの平均数については100粒子以上について転位線の数を数えて、数平均として求める。
【0197】
本発明の平板粒子は粒子間の転位線量分布が均一であることが望ましい。本発明の乳剤は1粒子当たり10本以上の転位線を含むハロゲン化銀粒子が全粒子の100〜50%を占めることが好ましく、より好ましくは100〜70%を、特に好ましくは100〜90%を占める。50%を下回ると粒子間の均質性の点で好ましくない。
【0198】
本発明において転位線を含む粒子の割合及び転位線の本数を求める場合は、少なくとも100粒子について転位線を直接観察して求めることが好ましく、より好ましくは200粒子以上、特に好ましくは300粒子以上について観察して求める。
【0199】
次に、(b3)工程について説明する。
基盤粒子へのハロゲン化銀のエピタキシャル形成に関しては、米国特許第4,435,501号明細書に記載されているように、基盤粒子表面に吸着したヨウ化物イオン、アミノアザインデン、もしくは分光増感色素等のサイトダイレクターによって銀塩エピタキシャルが選択された部位、例えば基盤粒子の側面、もしくは頂点に形成できることが示されている。また、特開平8−69069号公報には極薄平板粒子基盤の選択された部位に銀塩エピタキシャルを形成させ、このエピタキシャル相を最適な化学増感することで高感化を達成している。
【0200】
本発明においても、これらの方法を用いて本発明の基盤粒子を高感化することは非常に好ましい。サイトダイレクターは、アミノアザインデン、もしくは分光増感色素を用いてもよいし、ヨウ化物イオン、もしくはチオシアン酸イオンを用いることができ、目的に応じて使い分けることもできるし、組み合わせてもよい。
【0201】
増感色素量、ヨウ化物イオン、およびチオシアン酸イオンの添加量を変化させることで、銀塩エピタキシャルの形成部位を、基盤粒子の側面、あるいは頂点に限定させることができる。添加するヨウ化物イオンの量は、基盤粒子の銀量に対して0.0005〜1.0mol%、好ましくは、0.001〜0.5mol%である。また、チオシアン酸イオンの量は、基盤粒子の銀量に対して、0.01〜0.2mol%、好ましくは、0.02〜0.1mol%である。これらサイトダイレクター添加後に、銀塩溶液とハロゲン塩溶液を添加して銀塩エピタキシャルを形成する。この際の、温度は、40〜70℃が好ましく、45〜60℃が更に好ましい。また、この際のpAgは7.5以下が好ましく、6.5以下が更に好ましい。サイトダイレクターを用いることで、基盤粒子の頂点部、もしくは側面部に銀塩のエピタキシャルが形成される。こうして得た乳剤を、特開平8−69069号公報のようにエピタキシャル相に選択的に化学増感を施して高感化させてもよいが、銀塩エピタキシャル形成に引き続き、銀塩溶液とハロゲン塩溶液を同時添加して更に成長させてもよい。この際添加するハロゲン塩水溶液は、臭化物塩溶液、もしくは、臭化物塩溶液とヨウ化物塩溶液との混合液が好ましい。またこの際の温度は、40〜80℃が好ましく、45〜70℃が更に好ましい。また、この際のpAgは5.5以上9.5以下が好ましく、6.0以上9.0以下が好ましい。
【0202】
(b3)工程において形成されるエピタキシャルは、基本的に(a)工程で形成した基盤粒子の外部に基盤粒子とは異なるハロゲン組成が形成されていることを特徴とする。エピタキシャルの組成は、AgCl、AgBrCl、AgBrClI、AgBrI、AgI、AgSCN等が好ましい。また、エピタキシャル層に特開平8−69069号公報に記載されているような「ドーパント(金属錯体)」を導入することはさらに好ましい。エピタキシャル成長の位置は、基盤粒子の頂点部、側面部、主平面部の少なくとも一部分でもよく、複数の個所にまたがってもよい。頂点部のみ、もしくは、側面部のみ、もしくは、頂点部と側面部の形態を取ることが好ましい。
【0203】
(b3)工程の部分には転位線が存在しなくてもよいが、転位線が存在することはさらに好ましい。転位線は基盤粒子とエピタキシャル成長部との接合部、もしくはエピタキシャル部に存在することが好ましい。接合部、もしくはエピタキシャル部に存在する転位線は1粒子当り平均10本以上が好ましい。より好ましくは1粒子当り平均20本以上である。転位線が密集して存在する場合、または転位線が互いに交わって観察される場合には、1粒子当りの転位線の数は明確には数えることができない場合がある。しかしながら、これらの場合においても、おおよそ10本、20本、30本という程度には数えることが可能であり、明らかに数本しか存在しない場合とは区別できる。転位線の数の1粒子当りの平均数については100粒子以上について転位線の数を数えて、数平均として求める。
【0204】
エピタキシャル部の形成時に6シアノ金属錯体がドープされているのが好ましい。6シアノ金属錯体のうち、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム又はクロムを含有するものが好ましい。金属錯体の添加量は、ハロゲン化銀1mol当たり10−9〜10−2molの範囲であることが好ましく、ハロゲン化銀1mol当たり10−8〜10−4molの範囲であることがさらに好ましい。金属錯体は、水または有機溶媒に溶かして添加することができる。有機溶媒は水と混和性を有することが好ましい。有機溶媒の例には、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、及びアミド類が含まれる。
【0205】
金属錯体としては、下記式(MA)で表される6シアノ金属錯体が特に好ましい。
【0206】
6シアノ金属錯体は、高感度の感光材料が得られ、しかも生感光材料を長期間保存したときでも被りの発生を抑制するという効果を有する。
【0207】
(MA)[M(CN)6]n−
(式中、Mは鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウムまたはクロムであり、nは3または4である。)。
【0208】
6シアノ金属錯体の具体例を以下に示す。
(MA−1) [Fe(CN)6]4−
(MA−2) [Fe(CN)6]3−
(MA−3) [Ru(CN)6]4−
(MA−4) [Os(CN)6]4−
(MA−5) [Co(CN)6]3−
(MA−6) [Rh(CN)6]3−
(MA−7) [Ir(CN)6]3−
(MA−8) [Cr(CN)6]4−。
【0209】
6シアノ錯体の対カチオンは、水と混和しやすく、ハロゲン化銀乳剤の沈殿操作に適合しているイオンを用いることが好ましい。対イオンの例には、アルカリ金属イオン(例、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、リチウムイオン)、アンモニウムイオンおよびアルキルアンモニウムイオンが含まれる。
【0210】
本発明の平板粒子は粒子間の転位線量分布が均一であることが望ましい。本発明の乳剤は1粒子当たり10本以上の転位線を含むハロゲン化銀粒子が全粒子の100〜50%を占めることが好ましく、より好ましくは100〜70%を、特に好ましくは100〜90%を占める。50%を下回ると粒子間の均質性の点で好ましくない。
【0211】
本発明において転位線を含む粒子の割合及び転位線の本数を求める場合は、少なくとも100粒子について転位線を直接観察して求めることが好ましく、より好ましくは200粒子以上、特に好ましくは300粒子以上について観察して求める。
【0212】
本発明の乳剤の調製時に用いられる分散媒もしくは保護コロイドとして、及びその他の親水性コロイド層のバインターとしては、ゼラチンを用いるのが有利であるが、それ以外の親水性コロイドも用いることができる。
【0213】
例えば、ゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマー、アルブミン、カゼインのような蛋白質;ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロース硫酸エステル類のようなセルロース誘導体、アルギン酸ソーダ、澱粉誘導体のような糖誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分アセタール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピラゾールのような単一あるいは共重合体の如き多種の合成親水性高分子物質を用いることができる。
【0214】
ゼラチンとしては石灰処理ゼラチンのほか、酸処理ゼラチンやBull.Soc.Sci.Photo.Japan.No.16.P30(1966)に記載されたような酵素処理ゼラチンを用いてもよく、また、ゼラチンの加水分解物や酵素分解物も用いることができる。
【0215】
好ましくは、アミノ基が95%以上修飾されたコハク化ゼラチン、およびトリメリット化ゼラチン、または酸化処理ゼラチンである、また低分子量ゼラチン、および低分子量酸化処理ゼラチンを用いることも好ましい。
【0216】
さらに、分子量分布が28万以上の成分を全ゼラチンに対して、30質量%以上、好ましくは35質量%以上含んでいるゼラチンを用いてもよい。石灰処理ゼラチンは、その分子量に基づいてサブα(低分子量)、α(分子量約10万)、β(分子量約20万)、γ(分子量約30万)および大高分子部分(ボイド:分子量30万より大)からなる。それぞれの成分の比率、すなわち分子量分布は、国際的に定められたPAGI法により測定される。更に詳しい説明および製法は、特開平11−237704号公報に詳細に記載されている。
【0217】
本発明の乳剤は脱塩のために水洗し、新しく用意した保護コロイド分散にすることが好ましい。この際の保護コロイドは上述した親水性コロイドおよびゼラチンを用いることができる。この際、分子量分布が28万以上の成分を30%以上、好ましくは35%以上含んでいるゼラチンを用いることは好ましい。水洗の温度は目的に応じて選べるが、5℃〜50℃の範囲で選ぶことが好ましい。水洗時のpHも目的に応じて選べるが2〜10の間で選ぶことが好ましい。さらに好ましくは3〜8の範囲である。水洗時のpAgも目的に応じて選べるが5〜10の間で選ぶことが好ましい。水洗の方法としてヌードル水洗法、半透膜を用いた透析法、遠心分離法、凝析沈降法、イオン交換法のなかから選んで用いることができる。凝析沈降法の場合には硫酸塩を用いる方法、有機溶剤を用いる方法、水溶性ポリマーを用いる方法、ゼラチン誘導体を用いる方法などから選ぶことができる。
【0218】
次に、本発明に関する、第1の乳剤および第2の乳剤ハロゲン化銀粒子の調製方法について説明する。
本発明の調製工程としては、(a)基盤粒子形成工程と、それに引き続く粒子形成工程((b)工程)から成る。基本的に(a)工程に引き続き(b)工程を行うことがより好ましいが、(a)工程のみでもよい。(b)工程は、(b1)転位導入工程、(b2)頂点部転位限定導入工程、または(b3)エピタキシャル接合工程、のいずれでもよく、少なくとも一つでもよければ、二つ以上組み合わせてもよい。
【0219】
まず、(a)基盤粒子形成工程について説明する。基盤部は、粒子形成に使用した全銀量に対して少なくとも50%以上が好ましく、さらに好ましくは60%以上である。また、基盤部の銀量に対するヨードの平均含有率は0mol%以上30%mol以下が好ましく、0mol%以上15mol%以下がさらに好ましい。また、基盤部は必要に応じてコアシェル構造を取ってもよい。この際、基盤部のコア部は基盤部の全銀量に対して50%以上70%以下であることが好ましく、コア部の平均ヨード組成は0mol%以上30mol%以下が好ましく、0mol%以上15mol%以下が更に好ましい。シェル部のヨード組成は0mol%以上3mol%以下が好ましい。
【0220】
ハロゲン化銀写真乳剤の調製方法としては、ハロゲン化銀核を形成した後、更にハロゲン化銀粒子を成長させて所望のサイズの粒子を得る方法が一般的であり、本発明も同様であることに変りはない。また、平板状粒子の形成に関しては、少なくとも核形成、熟成、成長の工程が含まれる。この工程は、米国特許第4,945,037号明細書に詳細に記載されている。
【0221】
1.核形成
平板粒子の核形成は、一般にはゼラチンの水溶液を保持する反応容器に、銀塩水溶液とハロゲン化アルカリ水溶液を添加して行われるダブルジェット法、あるいはハロゲン化アルカリを含むゼラチン溶液に銀塩水溶液を添加するシングルジェット法が用いられる。また、必要に応じて銀塩を含むゼラチン溶液にハロゲン化アルカリ水溶液を添加する方法も用いることができる。さらに、必要に応じて特開昭2−44335号公報に開示されている混合器にゼラチン溶液と銀塩溶液とハロゲン化アルカリ水溶液を添加し、ただちにそれを反応容器に移すことによって平板粒子の核形成を行うこともできる。また、米国特許第5,104,786号明細書に開示されているように、ハロゲン化アルカリと保護コロイド溶液を含む水溶液をパイプに通しそこに銀塩水溶液を添加することにより核形成を行うこともできる。また、米国特許第6,022,681号明細書記載の塩素含有量が核形成に使用した銀量に対して10mol%以上であるような核形成を用いてもよい。
【0222】
核形成は、ゼラチンを分散媒とし、pBrが1〜4の条件で分散媒形成することが好ましい。ゼラチンの種類としては、アルカリ処理ゼラチン、低分子量ゼラチン(分子量:3000〜4万)、米国特許第4,713,320号明細書および同第4,942,120号明細書に記載の酸化処理ゼラチン、および低分子量の酸化処理ゼラチンを用いてもよい。特に低分子量の酸化処理ゼラチンを用いることは好まし
い。
【0223】
分散媒の濃度は、10質量%以下が好ましく、さらに1質量%以下がより好ましい。
核形成時の温度は、5〜60℃が好ましいが、平均粒径が0.5μm以下の微粒子平板粒子を作る場合は5〜48℃がより好ましい。
分散媒のpHは、1以上10以下が好ましいが、1.5以上9以下がさらに好ましい。
【0224】
また、米国特許第5,147,771号明細書,同第5,147,772号明細書、同第5,147,773号明細書、同第5,171,659号明細書、同第5,210,013号明細書、同第5,252,453号明細書、および特許第3,089,578号公報に記載のポリアルキレンオキサイド化合物を核形成工程、もしくは後の熟成工程、および成長工程で添加することが可能である。
【0225】
2.熟成
1.における核形成では、平板粒子以外の微粒子(特に、八面体および一重双晶粒子)が形成される。次に述べる成長過程に入る前に平板粒子以外の粒子を消滅せしめ、平板粒子となるべき形状でかつ単分散性のよい核を得る必要がある。これを可能とするために、核形成に引き続いてオストワルド熟成を行うことがよく知られている。
【0226】
核形成後直ちにpBrを調節した後、温度を上昇させ六角平板粒子比率が最高となるまで熟成を行う。この時に、ゼラチン溶液を追添加してもよい。その際の分散媒溶液に対するゼラチンの濃度は、10質量%以下であることが好ましい。この時使用する追添加ゼラチンは、アルカリ処理ゼラチン、アミノ基が95%以上修飾されたコハク化ゼラチンやトリメリット化ゼラチンのような特開平11−143002号公報記載のアミノ基修飾ゼラチン、特開平11−143003号公報記載のイミダゾール基修飾ゼラチン、および酸化処理ゼラチンを用いる。特に、コハク化ゼラチンやトリメリット化ゼラチンを用いることが好ましい。
熟成の温度は、40〜80℃、好ましくは50〜80℃であり、pBrは1.2〜3.0である。また、pHは1.5以上9以下が好ましい。
【0227】
また、この時平板粒子以外の粒子を速やかに消失せしめるために、ハロゲン化銀溶剤を添加してもよい。この場合のハロゲン化銀溶剤の濃度としては、0.3mol/L(以下、「L」とも表記する。)以下が好ましく、0.2mol/L以下がより好ましい。直接反転用乳剤として用いる場合は、ハロゲン化銀溶剤として、アルカリ性側で用いられるNH3より、中性、酸性側で用いられるチオエーテル化合物等のハロゲン化銀溶剤の方が好ましい。
このように熟成して、ほぼ100%平板状粒子のみとする。
【0228】
熟成が終わった後、次の成長過程でハロゲン化銀溶剤が不要の場合は次のようにしてハロゲン化銀溶剤を除去する。
(i) NH3のようなアルカリ性ハロゲン化銀溶剤の場合は、HNO3のようなAg+との溶解度積の大きな酸を加えて無効化する。
(ii) チオエーテル系ハロゲン化銀溶剤の場合は、特開昭60−136736号公報に記載のごとくH2O2等の酸化剤を添加して無効化する。
【0229】
3.成長
熟成過程に続く結晶成長期のpBrは1.4〜3.5に保つことが好ましい。成長過程に入る前の分散媒溶液中のゼラチン濃度が低い場合(1質量%以下)に、ゼラチンを追添加する場合がある。その際、分散媒溶液中のゼラチン濃度は、1〜10質量%にすることが好ましい。この時使用するゼラチンは、アルカリ処理ゼラチン、アミノ基が95%以上修飾されたコハク化ゼラチンやトリメリット化ゼラチン、および酸化処理ゼラチンを用いる。特に、コハク化ゼラチンやトリメリット化ゼラチンを用いることが好ましい。
【0230】
成長中のpHは、2以上10以下、好ましくは4以上8以下である。ただし、コハク化ゼラチンおよびトリメリット化ゼラチン存在時には5以上8以下が好ましい。結晶成長期におけるAg+、およびハロゲンイオンの添加速度は、結晶臨界成長速度の20〜100%、好ましくは30〜100%の結晶成長速度になるようにすることが好ましい。この場合、結晶成長とともに銀イオンおよびハロゲンイオンの添加速度を増加させていくが、その場合、特公昭48−36890号公報、同52−16364号公報記載のように、銀塩およびハロゲン塩水溶液の添加速度を上昇させてもよく、水溶液の濃度を増加させてもよい。銀塩水溶液とハロゲン塩水溶液を同時に添加するダブルジェット法で行ってもよいが、米国特許第4,672,027号明細書および同第4,693,964号明細書に記載の硝酸銀水溶液と臭化物を含むハロゲン水溶液と沃化銀微粒子乳剤を同時に添加することが好ましい。この際、成長の温度は、50℃以上90℃以下が好ましく、60℃以上85℃以下が更に好ましい。
また、添加するAgI微粒子乳剤は、あらかじめ調製したものでもよく、連続的に調製しながら添加してもよい。この際の調製方法は特開平10−43570号公報を参考にできる。
【0231】
添加するAgI乳剤の平均粒子サイズは0.005μm以上0.1μm以下、好ましくは0.007μm以上0.08μm以下である。基盤粒子のヨード組成は、添加するAgI乳剤の量により変化させることができる。
【0232】
さらに、銀塩水溶液とハロゲン塩水溶液の添加の代わりに、ヨウ臭化銀微粒子を添加することは好ましい。この際、微粒子のヨード量を所望する基盤粒子のヨード量と等しくすることで、所望のヨード組成の基盤粒子が得られる。ヨウ臭化銀微粒子はあらかじめ調製したものでもよいが、連続的に調製しながら添加する方が好ましい。添加するヨウ臭化銀微粒子サイズは、0.005μm以上0.1μm以下、好ましくは0.01μm以上0.08μm以下である。成長時の温度は50℃以上90℃以下、好ましくは60℃以上85℃以下である。
【0233】
次に、(b)工程について説明する。
まず、(b1)工程について説明する。(b1)工程は第1シェル工程と第2シェル工程から成る。上述した基盤に第1シェルを設ける。第1シェルの比率は好ましくは全銀量に対して1mol%以上30mol%以下であって、その平均沃化銀含有率20mol%以上100mol%以下である。より好ましくは第1シェルの比率は全銀量に対して1mol%以上20mol%以下であって、その平均沃化銀含有率25mol%以上100mol%以下である。基盤への第1シェルの成長は基本的には硝酸銀水溶液と沃化物と臭化物を含むハロゲン水溶液をダブルジェット法で添加する。もしくは硝酸銀水溶液と沃化物を含むハロゲン水溶液をダブルジェット法で添加する。もしくは沃化物を含むハロゲン水溶液をシングルジェット法で添加する。
【0234】
以上のいずれの方法でも、それらの組み合わせでもよい。第1シェルの平均沃化銀含有率から明らかなように、第1シェル形成時には沃臭化銀混晶の他に沃化銀が析出し得る。いずれの場合でも通常は、次の第2シェルの形成時に、沃化銀は消失し、すべて沃臭化銀混晶に変化する。
【0235】
第1シェルの形成の好ましい方法として沃臭化銀もしくは沃化銀微粒子乳剤を添加して熟成し溶解する方法がある。さらに、好ましい方法として沃化銀微粒子乳剤を添加して、その後硝酸銀水溶液の添加もしくは硝酸銀水溶液とハロゲン水溶液を添加する方法がある。この場合、沃化銀微粒子乳剤の溶解は、硝酸銀水溶液の添加により促進されるが、添加した沃化銀微粒子乳剤の銀量を用いて第1シェルとし、沃化銀含有率100mol%とする。そして添加した硝酸銀水溶液の銀量を用いて第2シェルとして計算する。沃化銀微粒子乳剤は急激に添加されることが好ましい。
【0236】
沃化銀微粒子乳剤を急激に添加するとは、好ましくは10分以内に沃化銀微粒子乳剤を添加することをいう。より好ましくは7分以内に添加することをいう。この条件は添加する系の温度、pBr、pH、ゼラチン等の保護コロイド剤の種類、濃度、ハロゲン化銀溶剤の有無、種類、濃度等により変化しうるが、上述したように短い方が好ましい。添加する時には実質的に硝酸銀等の銀塩水溶液の添加は行なわれない方が好ましい。添加時の系の温度は40℃以上90℃以下が好ましく、50℃以上80℃以下が特に好ましい。
【0237】
沃化銀微粒子乳剤は実質的に沃化銀であればよく、混晶となり得る限りにおいて臭化銀および/または塩化銀を含有していてもよい。好ましくは100%沃化銀である。沃化銀はその結晶構造においてβ体、γ体ならびに米国特許第4,672,026号明細書に記載されているようにα体もしくはα体類似構造があり得る。
【0238】
本発明においては、その結晶構造の制限は特にはないが、β体とγ体の混合物がさらに好ましくはβ体が用いられる。沃化銀微粒子乳剤は米国特許第5,004,679号明細書等に記載の添加する直前に形成したものでもよいし、通常の水洗工程を経たものでもいずれでもよいが、本発明においては好ましくは通常の水洗工程を経たものが用いられる。沃化銀微粒子乳剤は、米国特許第4,672,026号明細書等に記載の方法で容易に形成できうる。粒子形成時のpI値を一定にして粒子形成を行う、銀塩水溶液と沃化物塩水溶液のダブルジェット添加法が好ましい。ここでpIは系のI−イオン濃度の逆数の対数である。温度、pI、pH、ゼラチン等の保護コロイド剤の種類、濃度、ハロゲン化銀溶剤の有無、種類、濃度等に特に制限はないが、粒子のサイズは0.1μm以下、より好ましくは0.07μm以下が本発明に都合がよい。微粒子であるために粒子形状は完全には特定できないが粒子サイズの分布の変動係数は25%以下が好ましい。特に20%以下の場合には、本発明の効果が著しい。ここで沃化銀微粒子乳剤のサイズおよびサイズ分布は、沃化銀微粒子を電子顕微鏡観察用のメッシュにのせ、カーボンレプリカ法ではなく直接、透過法によって観察して求める。これは粒子サイズが小さいために、カーボンレプリカ法による観察では測定誤差が大きくなるためである。粒子サイズは観察された粒子と等しい投影面積を有する円の直径と定義する。粒子サイズの分布についても、この等しい投影面積円直径を用いて求める。本発明において最も有効な沃化銀微粒子は粒子サイズが0.06μm以下0.02μm以上であり、粒子サイズ分布の変動係数が18%以下である。
【0239】
沃化銀微粒子乳剤は上述の粒子形成後、好ましくは米国特許第2,614,929号明細書等に記載の通常の水洗およびpH、pI、ゼラチン等の保護コロイド剤の濃度調整ならびに含有沃化銀の濃度調整が行われる。pHは5以上7以下が好ましい。pI値は沃化銀の溶解度が最低になるpI値もしくはその値よりも高いpI値に設定することが好ましい。保護コロイド剤としては、平均分子量10万程度の通常のゼラチンが好ましく用いられる。平均分子量2万以下の低分子量ゼラチンも好ましく用いられる。また上記の分子量の異なるゼラチンを混合して用いると都合がよい場合がある。乳剤1kgあたりのゼラチン量は好ましくは10g以上100g以下である。より好ましくは20g以上80g以下である。乳剤1kgあたりの銀原子換算の銀量は好ましくは10g以上100g以下である。より好ましくは20g以上80g以下である。ゼラチン量および/または銀量は沃化銀微粒子乳剤を急激に添加するのに適した値を選択することが好ましい。
【0240】
沃化銀微粒子乳剤は、通常あらかじめ溶解して添加するが、添加時には系の撹拌効率を十分に高める必要がある。好ましくは撹拌回転数は、通常よりも高めに設定される。撹拌時の泡の発生を防じるために消泡剤の添加は効果的である。具体的には、米国特許第5,275,929号明細書の実施例等に記述されている消泡剤が用いられる。
【0241】
第1シェル形成のさらに好ましい方法として、従来の沃化物イオン供給法(フリーな沃化物イオンを添加する方法)のかわりに米国特許第5、496、694号明細書に記載の沃化物イオン放出剤を用いて、沃化物イオンを急激に生成せしめながら沃化銀を含むハロゲン化銀相を形成することができる。
【0242】
沃化物イオン放出剤は沃化物イオン放出調節剤(塩基および/または求核試薬)との反応により沃化物イオンを放出するが、この際に用いる求核試薬としては好ましくは以下の化学種が挙げられる。例えば、水酸化物イオン、亜硫酸イオン、ヒドロキシルアミン、チオ硫酸イオン、メタ重亜硫酸イオン、ヒドロキサム酸類、オキシム類、ジヒドロキシベンゼン類、メルカプタン類、スルフィン酸塩、カルボン酸塩、アンモニア、アミン類、アルコール類、尿素類、チオ尿素類、フェノール類、ヒドラジン類、ヒドラジド類、セミカルバジド類、ホスフィン類、スルフィド類が挙げられる。
【0243】
塩基や求核試薬の濃度、添加方法、また反応液の温度をコントロールすることにより沃化物イオンの放出速度、タイミングをコントロールすることができる。塩基として好ましくは水酸化アルカリが挙げられる。
【0244】
沃化物イオンを急激に生成せしめるのに用いる沃化物イオン放出剤及び沃化物イオン放出調節剤の好ましい濃度範囲は1×10−7〜20Mであり、より好ましくは1×10−5〜10M、さらに好ましくは1×10−4〜5M、特に好ましくは1×10−3〜2Mである。
濃度が20Mを上回ると、分子量の大きい沃化物イオン放出剤及び沃化物イオン放出剤の添加量が粒子形成容器の容量に対して多くなり過ぎるため好ましくない。
また、1×10−7Mを下回ると沃化物イオン放出反応速度が遅くなり、沃化物イオン放出剤を急激に生成せしめるのが困難になるため好ましくない。
【0245】
好ましい温度範囲は30〜80℃であり、より好ましくは35〜75℃、特に好ましくは35〜60℃である。
温度が80℃上回る高温では一般に沃化物イオン放出反応速度が極めて速くなり、また30℃下回る低温では一般に沃化物イオン放出反応速度が極めて遅くなるため、それぞれ使用条件が限られ好ましくない。
【0246】
沃化物イオンの放出の際に塩基を用いる場合、液pHの変化を用いてもよい。
【0247】
この時、沃化物イオンの放出速度、タイミングをコントロールするのに好ましいpHの範囲は2〜12であり、より好ましくは3〜11、特に好ましくは5〜10、最も好ましくは調節後のpHが7.5〜10.0である。pH7の中性条件下でも水のイオン積により定まる水酸化物イオンが調節剤として作用する。
【0248】
また、求核試薬と塩基を併用してもよく、この時もpHを上記の範囲でコントロールし、沃化物イオンの放出速度、タイミングをコントロールしてもよい。
沃化物イオン放出剤から沃素原子を沃化物イオンの形で放出させる場合、全沃素原子を放出させてもよいし、一部は分解せずに残っていてもよい。
【0249】
上述した基盤および第1シェルを有する平板粒子上に第2シェルを設ける。第2シェルの比率は好ましくは全銀量に対して10mol%以上40mol%以下であって、その平均沃化銀含有率が0mol%以上5mol%以下である。より好ましくは第2シェルの比率は全銀量に対して15mol%以上30mol%以下であって、その平均沃化銀含有率が0mol%以上3mol%以下である。基盤および第1シェルを有する平板粒子上への第2シェルの成長は該平板粒子のアスペクト比を上げる方向でも下げる方向でもよい。基本的には硝酸銀水溶液と臭化物を含むハロゲン水溶液をダブルジェット法で添加することにより第2シェルの成長は行なわれる。もしくは臭化物を含むハロゲン水溶液を添加した後、硝酸銀水溶液をシングルジェット法で添加してもよい。系の温度、pH、ゼラチン等の保護コロイド剤の種類、濃度、ハロゲン化銀溶剤の有無、種類、濃度等は広範に変化しうる。pBrについては、本発明においては該層の形成終了時のpBrが該層の形成初期時のpBrよりも高くなることが好ましい。好ましくは該層の形成初期のpBrが2.9以下であり該層の形成終了時のpBrが1.7以上である。さらに好ましくは該層の形成初期のpBrが2.5以下であり該層の形成終了時のpBrが1.9以上である。最も好ましくは該層の形成初期のpBrが2.3以下1以上である。最も好ましくは該層の終了時のpBrが2.1以上4.5以下である。
【0250】
(b1)工程の部分には転位線が存在することが好ましい。転位線は平板粒子の側面部近傍に存在することが好ましい。側面部近傍とは、平板粒子の六辺の側面部とその内側部分、すなわち(b1)工程で成長させた部分のことである。側面部に存在する転位線は1粒子当り平均10本以上が好ましい。より好ましくは1粒子当り平均20本以上である。転位線が密集して存在する場合、または転位線が互いに交わって観察される場合には、1粒子当りの転位線の数は明確には数えることができない場合がある。しかしながら、これらの場合においても、おおよそ10本、20本、30本という程度には数えることが可能であり、明らかに数本しか存在しない場合とは区別できる。転位線の数の1粒子当りの平均数については100粒子以上について転位線の数を数えて、数平均として求める。
【0251】
本発明の平板粒子は粒子間の転位線量分布が均一であることが望ましい。本発明の乳剤は1粒子当たり10本以上の転位線を含むハロゲン化銀粒子が全粒子の100〜50%を占めることが好ましく、より好ましくは100〜70%を、特に好ましくは100〜90%を占める。50%を下回ると粒子間の均質性の点で好ましくない。
【0252】
本発明において転位線を含む粒子の割合及び転位線の本数を求める場合は、少なくとも100粒子について転位線を直接観察して求めることが好ましく、より好ましくは200粒子以上、特に好ましくは300粒子以上について観察して求める。
【0253】
次に、(b2)工程について説明する。
(b2)工程としては、第一の態様として、頂点近傍のみをヨウ化物イオンにより溶解する方法;第二の態様として、銀塩溶液とヨウ化物塩溶液を同時に添加する方法;第三の態様として、ハロゲン化銀溶剤を用いて頂点近傍のみを実質的に溶解する方法;第四の態様として、ハロゲン変換を介する方法;がある。
【0254】
第一の態様であるヨウ化物イオンにより溶解する方法について説明する。
基盤粒子にヨウ化物イオンを添加することで基盤粒子の各頂点部近傍が溶解して丸みを帯びる。続けて、硝酸銀溶液と臭化物溶液、または、硝酸銀溶液と臭化物溶液とヨウ化物溶液の混合液を同時に添加すると粒子は更に成長して頂点近傍に転位が導入される。この方法に関しては、特開平4−149541号公報、および特開平9−189974号公報を参考にできる。
【0255】
本態様において添加されるヨウ化物イオンの総量は、該ヨウ化物イオン総モル数を基盤粒子の総銀量モル数で除した値に100を掛けた値をI2(mol%)とした時、基盤粒子のヨウ化銀含有率I1(mol%)に対して、(I2−I1)が0以上8以下を満たすことが本発明に従う効果的な溶解を得る上で好ましく、より好ましくは0以上4以下である。
【0256】
本態様において添加されるヨウ化物イオンの濃度は低い方が好ましく、具体的には0.2mol/L以下の濃度であることが好ましく、更に好ましくは0.1mol/Lである。
また、ヨウ化物イオン添加時のpAgは8.0以上が好ましく、更に好ましくは8.5以上である。
【0257】
基盤粒子へのヨウ化物イオンの添加による該基盤粒子の頂点部溶解に引き続き、硝酸銀溶液の単独添加、または、硝酸銀溶液と臭化物溶液、もしくは、硝酸銀溶液と臭化物溶液とヨウ化物溶液の混合液を同時に添加して粒子を更に成長させ頂点近傍に転位を導入させる。
【0258】
第二の態様である銀塩溶液とヨウ化物塩溶液との同時添加による方法について説明する。
基盤粒子に対して銀塩溶液とヨウ化物塩溶液を急速に添加することで粒子の頂点部にヨウ化銀もしくはヨウ化銀含率の高いハロゲン化銀をエピタキシャル生成させることができる。この際、銀塩溶液とヨウ化物塩溶液の好ましい添加速度は0.2分〜0.5分であり、更に好ましくは0.5分から2分である。この方法に関しては、特開平4−149541号公報に詳細に記載されているので、参考にすることができる。
【0259】
基盤粒子へのヨウ化物イオンの添加による該基盤粒子の頂点部溶解に引き続き、硝酸銀溶液の単独添加、または、硝酸銀溶液と臭化物溶液、もしくは、硝酸銀溶液と臭化物溶液とヨウ化物溶液の混合液を同時に添加して粒子を更に成長させ頂点近傍に転位を導入させる。
【0260】
第三の態様であるハロゲン化銀溶剤を用いる方法について説明する。
基盤粒子を含む分散媒にハロゲン化銀溶剤を加えた後、銀塩溶液とヨウ化物塩溶液を同時添加すると、ハロゲン化銀溶剤により溶解した基盤粒子の頂点部にヨウ化銀もしくはヨウ化銀含率の高いハロゲン化銀が優先的に成長することになる。この際、銀塩溶液およびヨウ化物塩溶液は急速に添加する必要はない。この方法に関しては、特開平4−149541号公報に詳細に記載されているので、これを参考にできる。
【0261】
基盤粒子へのヨウ化物イオンの添加による該基盤粒子の頂点部溶解に引き続き、硝酸銀溶液の単独添加、または、硝酸銀溶液と臭化物溶液、もしくは、硝酸銀溶液と臭化物溶液とヨウ化物溶液の混合液を同時に添加して粒子を更に成長させ頂点近傍に転位を導入させる。
【0262】
第四の態様であるハロゲン変換を介する方法について説明する。
基盤粒子にエピタキシャル成長部位指示剤(以下、サイトダイレクターと呼ぶ)、例えば特開昭58−108526号公報記載の増感色素や、水溶性ヨウ化物を添加することで基盤粒子の頂点部に塩化銀のエピタキシャルを形成した後ヨウ化物イオンを添加することで塩化銀をヨウ化銀もしくはヨウ化銀含率の高いハロゲン化銀へハロゲン変換する方法である。サイトダイレクターは増感色素、水溶性チオシアン酸イオン、および水溶性ヨウ化物イオンが使用できるが、沃化物イオンが好ましい。ヨウ化物イオンは基盤粒子に対して0.0005〜1mol%、好ましくは0.001〜0.5mol%が好ましい。最適な量の沃化物イオンを添加した後、銀塩溶液と塩化物塩溶液の同時添加すると塩化銀のエピタキシャルを基盤粒子の頂点部に形成できる。
【0263】
塩化銀のヨウ化物イオンによるハロゲン変換について説明する。溶解度の大きいハロゲン化銀は溶解度のより小さいハロゲン化銀を形成し得るハロゲンイオンを添加することにより、溶解度のより小さいハロゲン化銀に変換される。この過程はハロゲン変換と呼ばれ、例えば米国特許第4,142,900号に記載されている。基盤の頂点部にエピタキシャル成長した塩化銀をヨウ化物イオンにより選択的にハロゲン変換することで基盤粒子頂点部にヨウ化銀相を形成させる。詳細は、特開平4−149541号公報に記載されている。
【0264】
基盤粒子の頂点部にエピタキシャル成長した塩化銀をヨウ化物イオンの添加によるヨウ化銀相へのハロゲン変換に引き続き、硝酸銀溶液の単独添加、または、硝酸銀溶液と臭化物溶液、もしくは、硝酸銀溶液と臭化物溶液とヨウ化物溶液の混合液を同時に添加して粒子を更に成長させ頂点近傍に転位を導入させる。
【0265】
(b2)工程の部分には転位線が存在することが好ましい。転位線は平板粒子の頂点部近傍に存在することが好ましい。頂点部近傍とは、粒子の中心と各頂点を結ぶ直線の中心からx%の位置の点から、各頂点を作る辺に垂線を下した時に、その垂線とその辺とで囲まれた三次元の部分のことである。このxの値は好ましくは50以上100未満、さらに好ましくは75以上100未満である。側面部に存在する転位線は1粒子当り平均10本以上が好ましい。より好ましくは1粒子当り平均20本以上である。転位線が密集して存在する場合、または転位線が互いに交わって観察される場合には、1粒子当りの転位線の数は明確には数えることができない場合がある。しかしながら、これらの場合においても、おおよそ10本、20本、30本という程度には数えることが可能であり、明らかに数本しか存在しない場合とは区別できる。転位線の数の1粒子当りの平均数については100粒子以上について転位線の数を数えて、数平均として求める。
【0266】
本発明の平板粒子は粒子間の転位線量分布が均一であることが望ましい。本発明の乳剤は1粒子当たり10本以上の転位線を含むハロゲン化銀粒子が全粒子の100〜50%を占めることが好ましく、より好ましくは100〜70%を、特に好ましくは100〜90%を占める。50%を下回ると粒子間の均質性の点で好ましくない。
【0267】
本発明において転位線を含む粒子の割合及び転位線の本数を求める場合は、少なくとも100粒子について転位線を直接観察して求めることが好ましく、より好ましくは200粒子以上、特に好ましくは300粒子以上について観察して求める。
【0268】
次に、(b3)工程について説明する。
基盤粒子へのハロゲン化銀のエピタキシャル形成に関しては、米国特許第4,435,501号明細書に記載されているように、基盤粒子表面に吸着したヨウ化物イオン、アミノアザインデン、もしくは分光増感色素等のサイトダイレクターによって銀塩エピタキシャルが選択された部位、例えば基盤粒子の側面、もしくは頂点に形成できることが示されている。また、特開平8−69069号公報には極薄平板粒子基盤の選択された部位に銀塩エピタキシャルを形成させ、このエピタキシャル相を最適な化学増感することで高感化を達成している。
【0269】
本発明においても、これらの方法を用いて本発明の基盤粒子を高感化することは非常に好ましい。サイトダイレクターは、アミノアザインデン、もしくは分光増感色素を用いてもよいし、ヨウ化物イオン、もしくはチオシアン酸イオンを用いることができ、目的に応じて使い分けることもできるし、組み合わせてもよい。
【0270】
増感色素量、ヨウ化物イオン、およびチオシアン酸イオンの添加量を変化させることで、銀塩エピタキシャルの形成部位を、基盤粒子の側面、あるいは頂点に限定させることができる。添加するヨウ化物イオンの量は、基盤粒子の銀量に対して0.0005〜1.0mol%、好ましくは、0.001〜0.5mol%である。また、チオシアン酸イオンの量は、基盤粒子の銀量に対して、0.01〜0.2mol%、好ましくは、0.02〜0.1mol%である。これらサイトダイレクター添加後に、銀塩溶液とハロゲン塩溶液を添加して銀塩エピタキシャルを形成する。この際の、温度は、40〜70℃が好ましく、45〜60℃が更に好ましい。また、この際のpAgは7.5以下が好ましく、6.5以下が更に好ましい。サイトダイレクターを用いることで、基盤粒子の頂点部、もしくは側面部に銀塩のエピタキシャルが形成される。こうして得た乳剤を、特開平8−69069号公報のようにエピタキシャル相に選択的に化学増感を施して高感化させてもよいが、銀塩エピタキシャル形成に引き続き、銀塩溶液とハロゲン塩溶液を同時添加して更に成長させてもよい。この際添加するハロゲン塩水溶液は、臭化物塩溶液、もしくは、臭化物塩溶液とヨウ化物塩溶液との混合液が好ましい。またこの際の温度は、40〜80℃が好ましく、45〜70℃が更に好ましい。また、この際のpAgは5.5以上9.5以下が好ましく、6.0以上9.0以下が好ましい。
【0271】
(b3)工程において形成されるエピタキシャルは、基本的に(a)工程で形成した基盤粒子の外部に基盤粒子とは異なるハロゲン組成が形成されていることを特徴とする。エピタキシャルの組成は、AgCl、AgBrCl、AgBrClI、AgBrI、AgI、AgSCN等が好ましい。また、エピタキシャル層に特開平8−69069号公報に記載されているような「ドーパント(金属錯体)」を導入することはさらに好ましい。エピタキシャル成長の位置は、基盤粒子の頂点部、側面部、主平面部の少なくとも一部分でもよく、複数の個所にまたがってもよい。頂点部のみ、もしくは、側面部のみ、もしくは、頂点部と側面部の形態を取ることが好ましい。
【0272】
(b3)工程の部分には転位線が存在しなくてもよいが、転位線が存在することはさらに好ましい。転位線は基盤粒子とエピタキシャル成長部との接合部、もしくはエピタキシャル部に存在することが好ましい。接合部、もしくはエピタキシャル部に存在する転位線は1粒子当り平均10本以上が好ましい。より好ましくは1粒子当り平均20本以上である。転位線が密集して存在する場合、または転位線が互いに交わって観察される場合には、1粒子当りの転位線の数は明確には数えることができない場合がある。しかしながら、これらの場合においても、おおよそ10本、20本、30本という程度には数えることが可能であり、明らかに数本しか存在しない場合とは区別できる。転位線の数の1粒子当りの平均数については100粒子以上について転位線の数を数えて、数平均として求める。
【0273】
エピタキシャル部の形成時に6シアノ金属錯体がドープされているのが好ましい。6シアノ金属錯体のうち、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム又はクロムを含有するものが好ましい。金属錯体の添加量は、ハロゲン化銀1mol当たり10−9〜10−2molの範囲であることが好ましく、ハロゲン化銀1mol当たり10−8〜10−4molの範囲であることがさらに好ましい。金属錯体は、水または有機溶媒に溶かして添加することができる。有機溶媒は水と混和性を有することが好ましい。有機溶媒の例には、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、及びアミド類が含まれる。
【0274】
金属錯体としては、下記式(MA)で表される6シアノ金属錯体が特に好ましい。6シアノ金属錯体は、高感度の感光材料が得られ、しかも生感光材料を長期間保存したときでも被りの発生を抑制するという効果を有する。
一般式(MA)
[M(CN)6]n−
式中、Mは鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウムまたはクロムであり、nは3または4である。
【0275】
前記6シアノ金属錯体の具体例を以下に示す。
(MA−1) [Fe(CN)6]4−
(MA−2) [Fe(CN)6]3−
(MA−3) [Ru(CN)6]4−
(MA−4) [Os(CN)6]4−
(MA−5) [Co(CN)6]3−
(MA−6) [Rh(CN)6]3−
(MA−7) [Ir(CN)6]3−
(MA−8) [Cr(CN)6]4−。
【0276】
6シアノ錯体の対カチオンは、水と混和しやすく、ハロゲン化銀乳剤の沈殿操作に適合しているイオンを用いることが好ましい。対イオンの例には、アルカリ金属イオン(例、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、リチウムイオン)、アンモニウムイオンおよびアルキルアンモニウムイオンが含まれる。
【0277】
本発明に用いられる平板粒子は粒子間の転位線量分布が均一であることが望ましい。本発明の乳剤は1粒子当たり10本以上の転位線を含むハロゲン化銀粒子が全粒子の100〜50%を占めることが好ましく、より好ましくは100〜70%を、特に好ましくは100〜90%を占める。50%を下回ると粒子間の均質性の点で好ましくない。
【0278】
本発明において転位線を含む粒子の割合及び転位線の本数を求める場合は、少なくとも100粒子について転位線を直接観察して求めることが好ましく、より好ましくは200粒子以上、特に好ましくは300粒子以上について観察して求める。
【0279】
本発明の乳剤の調製時に用いられる分散媒もしくは保護コロイドとして、及びその他の親水性コロイド層のバインターとしては、ゼラチンを用いるのが有利であるが、それ以外の親水性コロイドも用いることができる。
【0280】
例えば、ゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマー、アルブミン、カゼインのような蛋白質;ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロース硫酸エステル類のようなセルロース誘導体、アルギン酸ソーダ、澱粉誘導体のような糖誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分アセタール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピラゾールのような単一あるいは共重合体の如き多種の合成親水性高分子物質を用いることができる。
【0281】
ゼラチンとしては、上述のゼラチン、石灰処理ゼラチンのほか、酸処理ゼラチンやBull.Soc.Sci.Photo.Japan.No.16.P30(1966)に記載されたような酵素処理ゼラチンを用いてもよく、また、ゼラチンの加水分解物や酵素分解物も用いることができる。
【0282】
好ましくは、アミノ基が95%以上修飾されたコハク化ゼラチン、およびトリメリット化ゼラチン、または酸化処理ゼラチンである、また低分子量ゼラチン、および低分子量酸化処理ゼラチンを用いることも好ましい。
【0283】
さらに、分子量分布が28万以上の成分を全ゼラチンに対して、30質量%以上、好ましくは35質量%以上含んでいるゼラチンを用いてもよい。石灰処理ゼラチンは、その分子量に基づいてサブα(低分子量)、α(分子量約10万)、β(分子量約20万)、γ(分子量約30万)および大高分子部分(ボイド:分子量30万より大)からなる。それぞれの成分の比率、すなわち分子量分布は、国際的に定められたPAGI法により測定される。更に詳しい説明および製法は、特開平11−237704号広報に詳細に記載されている。
【0284】
本発明の乳剤は脱塩のために水洗し、新しく用意した保護コロイド分散にすることが好ましい。この際の保護コロイドは上述した親水性コロイドおよびゼラチンを用いることができる。この際、分子量分布が28万以上の成分を30%以上、好ましくは35%以上含んでいるゼラチンを用いることは好ましい。水洗の温度は目的に応じて選べるが、5℃〜50℃の範囲で選ぶことが好ましい。水洗時のpHも目的に応じて選べるが2〜10の間で選ぶことが好ましい。さらに好ましくは3〜8の範囲である。水洗時のpAgも目的に応じて選べるが5〜10の間で選ぶことが好ましい。水洗の方法としてヌードル水洗法、半透膜を用いた透析法、遠心分離法、凝析沈降法、イオン交換法のなかから選んで用いることができる。凝析沈降法の場合には硫酸塩を用いる方法、有機溶剤を用いる方法、水溶性ポリマーを用いる方法、ゼラチン誘導体を用いる方法などから選ぶことができる。
【0285】
本発明の乳剤は、グラフキデ著「写真の物理と化学」、ポールモンテル社刊(P.Glafkides,Chemie et Phisique Photographique,Paul Montel,1967)、ダフィン著「写真乳剤化学」,フォーカルプレス社刊(G.F.Duffin,Photographic EMulsion Chemistry(Focal Press,1966))、ゼリクマン等著「写真乳剤の製造と塗布」、フォーカルプレス社刊(V.L.Zelikman et al.,Making and Coating Photographic EMulsion,Focal Press,1964)などに記載された方法に基づいて調製することができる。すなわち、酸性法、中性法、アンモニア法等のいずれでもよく、また可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させる形式としては片側混合法、同時混合法、それらの組合わせなどのいずれを用いてもよい。粒子を銀イオン過剰の下において形成させる方法(いわゆる逆混合法)を用いることもできる。同時混合法の一つの形式としてハロゲン化銀の生成する液相中のpAg を一定に保つ方法、すなわちいわゆるコントロールド・ダブルジェット法を用いることもできる。この方法によると、結晶形が規則的で粒子サイズが均一に近いハロゲン化銀写真乳剤が得られる。
【0286】
乳剤調製用の反応容器にあらかじめ沈澱形成したハロゲン化銀粒子を添加する方法、米国特許第4,334,012号明細書、同第4,301,241号明細書、同第4,150,994号明細書に記載の方法は、場合により好ましい。これらは種結晶として用いることもできるし、成長用のハロゲン化銀として供給する場合も有効である。後者の場合粒子サイズの小さい乳剤を添加するのが好ましく、添加方法として一度に全量添加、複数回に分割して添加あるいは連続的に添加するなどのなかから選んで用いることができる。また表面を改質させるために種々のハロゲン組成の粒子を添加することも場合により有効である。
【0287】
ハロゲン化銀粒子のハロゲン組成の大部分あるいはごく一部分をハロゲン変換法によって変換させる方法は米国特許第3,477,852号明細書、同第4,142,900号明細書、欧州特許273,429号明細書、同第273,430号明細書、西独公開特許第3,819,241号明細書などに開示されており、有効な粒子形成法である。より難溶性の銀塩に変換するのに可溶性ハロゲンの溶液あるいはハロゲン化銀粒子を添加することができる。一度に変換する、複数回に分割して変換する、あるいは連続的に変換するなどの方法から選ぶことができる。
【0288】
粒子成長の方法として、一定濃度、一定流速で可溶性銀塩とハロゲン塩を添加する方法以外に、英国特許第1,469,480号明細書、米国特許第3,650,757号明細書、同第4,242,445号明細書に記載されているように濃度を変化させる、あるいは流速を変化させる粒子形成法は好ましい方法である。濃度を増加させる、あるいは流速を増加させることにより、供給するハロゲン化銀量を添加時間の一次関数、二次関数、あるいはより複雑な関数で変化させることができる。また必要により供給ハロゲン化銀量を減量することも場合により好ましい。さらに溶液組成の異なる複数個の可溶性銀塩を添加する、あるいは溶液組成の異なる複数個の可溶性ハロゲン塩を添加する場合に、一方を増加させ、もう一方を減少させるような添加方式も有効な方法である。
【0289】
可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩の溶液を反応させる時の混合器は米国特許第2,996,287号明細書、同第3,342,605号明細書、同第3,415,650号明細書、同第3,785,777号明細書、西独公開特許2,556,885号明細書、同第2,555,364号明細書に記載されている方法のなかから選んで用いることができる。
【0290】
熟成を促進する目的に対してハロゲン化銀溶剤が有用である。例えば熟成を促進するのに過剰量のハロゲンイオンを反応器中に存在せしめることが知られている。また他の熟成剤を用いることもできる。これらの熟成剤は銀およびハロゲン化物塩を添加する前に反応器中の分散媒中に全量を配合しておくことができるし、ハロゲン化物塩、銀塩または解膠剤を加えると共に反応器中に導入することもできる。別の変形態様として、熟成剤をハロゲン化物塩および銀塩添加段階で独立して導入することもできる。
【0291】
熟成剤としては、例えば、アンモニア、チオシアン酸塩(例えば、ロダンカリ、ロダンアンモニウム)、有機チオエーテル化合物(例えば、米国特許第3,574,628号明細書、同第3,021,215号明細書、同第3,057,724号明細書、同第3,038,805号明細書、同第4,276,374号明細書、同第4,297,439号明細書、同第3,704,130号明細書、同第4,782,013号明細書、特開昭57−104926号公報に記載の化合物)、チオン化合物(例えば、特開昭53−82408号公報、同55−77737号公報、米国特許第4,221,863号明細書に記載されている四置換チオウレアや、特開昭53−144319号公報に記載されている化合物)や、特開昭57−202531号公報に記載されているハロゲン化銀粒子の成長を促進しうるメルカプト化合物、アミン化合物(例えば、特開昭54−100717号公報)
が挙げられる。
【0292】
米国特許第3,772,031号明細書に記載されているようなカルコゲン化合物を乳剤調製中に添加する方法も有用な場合がある。S、Se、Te以外にもシアン塩、チオシアン塩、セレノシアン酸、炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩を存在させてもよい。
【0293】
本発明のハロゲン化銀粒子は硫黄増感、セレン増感等のカルコゲン増感;金増感、パラジウム増感等の貴金属増感;及び還元増感の少なくとも1つをハロゲン化銀乳剤の製造工程の任意の工程で施こすことができる。2種以上の増感法を組み合せることは好ましい。どの工程で化学増感するかによって種々のタイプの乳剤を調製することができる。粒子の内部に化学増感核をうめ込むタイプ、粒子表面から浅い位置にうめ込むタイプ、あるいは表面に化学増感核を作るタイプがある。本発明の乳剤は目的に応じて化学増感核の場所を選ぶことができるが、一般に好ましいのは表面近傍に少なくとも一種の化学増感核を作った場合である。
【0294】
本発明で好ましく実施しうる化学増感の一つはカルコゲン増感と貴金属増感の単独又は組合せであり、ジェームス(T.H.James)著、ザ・フォトグラフィック・プロセス、第4版、マクミラン社刊、1977年、(T.H.James、The Theory of the Photographic Process,4th ed,Macmillan,1977)67−76頁に記載されるように活性ゼラチンを用いて行うことができるし、またリサーチ・ディスクロージャー、120巻、1974年4月、12008;リサーチ・ディスクロージャー、34巻、1975年6月、13452、米国特許第2,642,361号明細書、同第3,297,446号明細書、同第3,772,031号明細書、同第3,857,711号明細書、同第3,901,714号明細書、同第4,266,018号明細書、および同第3,904,415号明細書、並びに英国特許第1,315,755号明細書に記載されるようにpAg 5〜10、pH5〜8および温度30〜80℃において硫黄、セレン、テルル、金、白金、パラジウム、イリジウムまたはこれら増感剤の複数の組合せとすることができる。貴金属増感においては、金、白金、パラジウム、イリジウム等の貴金属塩を用いることができ、中でも特に金増感、パラジウム増感および両者の併用が好ましい。金増感の場合には、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレナイドのような公知の化合物を用いることができる。パラジウム化合物はパラジウム2価塩または4価の塩を意味する。好ましいパラジウム化合物は、R2PdX6またはR2PdX4で表わされる。ここでRは水素原子、アルカリ金属原子またはアンモニウム基を表わす。Xはハロゲン原子を表わし塩素、臭素または沃素原子を表わす。
【0295】
具体的には、K2PdCl4、(NH4)2PdCl6、Na2PdCl4、(NH4)2PdCl4、Li2PdCl4、Na2PdCl6またはK2PdBr4が好ましい。金化合物およびパラジウム化合物はチオシアン酸塩あるいはセレノシアン酸塩と併用することが好ましい。
【0296】
硫黄増感剤として、ハイポ、チオ尿素系化合物、ロダニン系化合物および米国特許第3,857,711号明細書、同第4,266,018号明細書および同第4,054,457号明細書に記載されている硫黄含有化合物を用いることができる。いわゆる化学増感助剤の存在下に化学増感することもできる。有用な化学増感助剤には、アザインデン、アザピリダジン、アザピリミジンのごとき、化学増感の過程でカブリを抑制し、且つ感度を増大するものとして知られた化合物が用いられる。化学増感助剤改質剤の例は、米国特許第2,131,038号明細書、同第3,411,914号明細書、同第3,554,757号明細書、特開昭58−126526号公報および前述ダフィン著「写真乳剤化学」、138〜143頁に記載されている。
【0297】
本発明の乳剤は金増感を併用することが好ましい。金増感剤の好ましい量としてハロゲン化銀1mol当り1×10−4〜1×10−7molであり、さらに好ましいのは1×10−5〜5×10−7molである。パラジウム化合物の好ましい範囲は1×10−3から5×10−7である。チオシアン化合物あるいはセレノシアン化合物の好ましい範囲は5×10−2から1×10−6である。
【0298】
本発明のハロゲン化銀粒子に対して使用する好ましい硫黄増感剤量はハロゲン化銀1mol当り1×10−4〜1×10−7molであり、さらに好ましいのは1×10−5〜5×10−7molである。
【0299】
本発明の乳剤に対して好ましい増感法としてセレン増感がある。セレン増感においては、公知の不安定セレン化合物を用い、具体的には、コロイド状金属セレニウム、セレノ尿素類(例えば、N,N−ジメチルセレノ尿素、N,N−ジエチルセレノ尿素)、セレノケトン類、セレノアミド類のようなセレン化合物を用いることができる。セレン増感は硫黄増感あるいは貴金属増感あるいはその両方と組み合せて用いた方が好ましい場合がある。
【0300】
本発明のハロゲン化銀写真乳剤を粒子形成中、粒子形成後でかつ化学増感前あるいは化学増感中、あるいは化学増感後に還元増感することは好ましい。
【0301】
ここで、還元増感とは、ハロゲン化銀写真乳剤に還元増感剤を添加する方法、銀熟成と呼ばれるpAg 1〜7の低pAg の雰囲気で成長あるいは熟成させる方法、高pH熟成と呼ばれるpH8〜11の高pHの雰囲気で成長あるいは熟成させる方法のいずれを選ぶこともできる。また2つ以上の方法を併用することもできる。
【0302】
還元増感剤を添加する方法は還元増感のレベルを微妙に調節できる点で好ましい方法である。
【0303】
還元増感剤としては、例えば、二酸化チオ尿素、アスコルビン酸およびその誘導体、アミンおよびポリアミン類、ヒドラジン誘導体、ジヒドロキシベンゼン類及びその誘導体(例えば4,5−ジヒドロキシー1,3−ベンゼンジスルホン酸ジナトリウムなど)、ヒドロキシアミン類及びその誘導体、シラン化合物、ボラン化合物が公知である。本発明の還元増感にはこれら公知の還元増感剤を選んで用いることができ、また2種以上の化合物を併用することもできる。還元増感剤としては二酸化チオ尿素、アスコルビン酸およびその誘導体、ヒドラジン誘導体、ジヒドロキシベンゼン類及びその誘導体が好ましい化合物である。還元増感剤の添加量は乳剤製造条件に依存するので添加量を選ぶ必要があるが、ハロゲン化銀1mol当り10−7〜10−1molの範囲がである。
【0304】
還元増感剤は、例えば、水あるいはアルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類のような有機溶媒に溶かし粒子成長中に添加される。あらかじめ反応容器に添加するのもよいが、粒子成長の適当な時期に添加する方法が好ましい。また水溶性銀塩あるいは水溶性アルカリハライドの水溶性にあらかじめ還元増感剤を添加しておき、これらの水溶液を用いてハロゲン化銀粒子を沈澱せしめてもよい。また粒子成長に伴って還元増感剤の溶液を何回かに分けて添加しても連続して長時間添加するのも好ましい方法である。
【0305】
本発明の乳剤の製造工程中に銀に対する酸化剤を用いることが好ましい。銀に対する酸化剤とは、金属銀に作用して銀イオンに変換せしめる作用を有する化合物をいう。特にハロゲン化銀粒子の形成過程および化学増感過程において副生するきわめて微小な銀粒子を、銀イオンに変換せしめる化合物が有効である。ここで生成する銀イオンは、例えば、ハロゲン化銀、硫化銀、セレン化銀のような水に難溶の銀塩を形成してもよく、又、硝酸銀のような水に易溶の銀塩を形成してもよい。銀に対する酸化剤は、無機物であっても、有機物であってもよい。無機の酸化剤としては、例えば、オゾン、過酸化水素およびその付加物(例えば、NaBO2・H2O2・3H2O、2NaCO3・3H2O2、Na4P2O7・2H2O2、2Na2SO4・H2O2・2H2O)、ペルオキシ酸塩(例えば、K2S2O8、K2C2O6、K2P2O8)、ペルオキシ錯体化合物(例えば、K2[Ti(O2)C2O4]・3H2O、4K2SO4・Ti(O2)OH・SO4・2H2O、Na3[VO(O2)(C2H4)2]・6H2O)、過マンガン酸塩(例えば、KMnO4)、クロム酸塩(例えば、K2Cr2O7)のような酸素酸塩、沃素や臭素のようなハロゲン元素、ハロゲンのオキソ酸塩(例えば、過沃素酸カリウム)、高原子価の金属の塩(例えば、ヘキサシアノ第二鉄酸カリウム)およびチオスルフォン酸塩がある。
【0306】
また、有機の酸化剤としては、p−キノンのようなキノン類、過酢酸や過安息香酸のような有機過酸化物、活性ハロゲンを放出する化合物(例えば、N−ブロムサクシンイミド、クロラミンT、クロラミンB)が例として挙げられる。
【0307】
本発明に用いる好ましい酸化剤は過酸化水素およびその付加物、ハロゲン元素、ハロゲンのオキソ酸塩、チオスルフォン酸塩の無機酸化剤及びキノン類の有機酸化剤である。前述の還元増感と銀に対する酸化剤を併用するのは好ましい態様である。酸化剤を用いたのち還元増感を施こす方法、その逆方法あるいは両者を同時に共存させる方法のなかから選んで用いることができる。これらの方法は粒子形成工程でも化学増感工程でも選んで用いることができる。
【0308】
本発明の乳剤には、感光材料の製造工程、保存中あるいは写真処理中のかぶりを防止し、あるいは写真性能を安定化させる目的で、種々の化合物を含有させることができる。すなわちチアゾール類、例えば、ベンゾチアゾリウム塩、ニトロイミダゾール類、ニトロベンズイミダゾール類、クロロベンズイミダゾール類、ブロモベンズイミダゾール類、メルカプトチアゾール類、メルカプトベンゾチアゾール類、メルカプトベンズイミダゾール類、メルカプトチアジアゾール類、アミノトリアゾール類、ベンゾトリアゾール類、ニトロベンゾトリアゾール類、メルカプトテトラゾール類(特に1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール);メルカプトピリミジン類;メルカプトトリアジン類;例えば、オキサドリンチオンのようなチオケト化合物;アザインデン類、例えば、トリアザインデン類、テトラアザインデン類(特に4−ヒドロキシ置換(1,3,3a,7)チトラアザインデン類)、ペンタアザインデン類のようなかぶり防止剤または安定剤として知られた、多くの化合物を加えることができる。例えば、米国特許第3,954,474号明細書、同第3,982,947号明細書、特公昭52−28660号公報に記載されたものを用いることができる。好ましい化合物の一つに特開昭63−212932号公報に記載された化合物がある。かぶり防止剤および安定剤は粒子形成前、粒子形成中、粒子形成後、水洗工程、水洗後の分散時、化学増感前、化学増感中、化学増感後、塗布前のいろいろな時期に目的に応じて添加することができる。乳剤調製中に添加して本来のかぶり防止および安定化効果を発現する以外に、粒子の晶壁を制御する、粒子サイズを小さくする、粒子の溶解性を減少させる、化学増感を制御する、色素の配列を制御するなど多目的に用いることができる。
【0309】
本発明の乳剤は、増感色素によって分光増感された乳剤である。青感色性以外の増感色素によって分光増感されているのが好ましい。青感性色素は通常添加量が比較的少量でも、目的の性能が得られるが、緑感性または赤感性色素は、飽和吸着量の60%以上使用しないと、必要な性能が得られないことが多い。増感色素としては、メチン色素類が挙げられる。より具体的には、シアニン色素、メロシアニン色素、複合シアニン色素、複合メロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素およびヘミオキソノール色素が包含される。特に有用な色素は、シアニン色素、メロシアニン色素、および複合メロシアニン色素に属する色素である。これらの色素類には、塩基性複素環核としてシアニン色素類に通常利用される核のいずれをも適用できる。すなわち、例えば、ピロリン核、オキサゾリン核、チオゾリン核、ピロール核、オキサゾール核、チアゾール核、セレナゾール核、イミダゾール核、テトラゾール核、ピリジン核;これらの核に脂環式炭化水素環が融合した核;及びこれらの核に芳香族炭化水素環が融合した核、即ち、例えば、インドレニン核、ベンゾインドレニン核、インドール核、ベンゾオキサドール核、ナフトオキサゾール核、ベンゾチアゾール核、ナフトチアゾール核、ベンゾセレナゾール核、ベンゾイミダゾール核、キノリン核が適用できる。これらの核は炭素原子上に置換基を有していてもよい。
【0310】
メロシアニン色素または複合メロシアニン色素にはケトメチレン構造を有する核として、例えば、ピラゾリン−5−オン核、チオヒダントイン核、2−チオオキサゾリジン−2,4−ジオン核、チアゾリジン−2,4−ジオン核、ローダニン核、チオバルビツール酸核の5〜6員複素環核を適用することができる。
【0311】
これらの増感色素は単独に用いてもよいが、それらの組合せを用いてもよく、増感色素の組合せは特に、強色増感の目的でしばしば用いられる。その代表例は米国特許第2,688,545号明細書、同第2,977,229号明細書、同第3,397,060号明細書、同第3,522,052号明細書、同第3,527,641号明細書、同第3,617,293号明細書、同第3,628,964号明細書、同第3,666,480号明細書、同第3,672,898号明細書、同第3,679,428号明細書、同第3,703,377号明細書、同第3,769,301号明細書、同第3,814,609号明細書、同第3,837,862号明細書、同第4,026,707号明細書、英国特許第1,344,281号明細書、同第1,507,803号明細書、特公昭43−4936号公報、同53−12375号公報、特開昭52−110618号公報、同52−109925号公報に記載されている。
【0312】
増感色素とともに、それ自身分光増感作用をもたない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感を示す物質を乳剤中に含んでもよい。
【0313】
増感色素を乳剤中に添加する時期は、これまで有用であると知られている乳剤調製の如何なる段階であってもよい。もっとも普通には化学増感の完了後塗布前までの時期に行なわれるが、米国特許第3,628,969号明細書、および同第4,225,666号明細書に記載されているように化学増感剤と同時期に添加し分光増感を化学増感と同時に行なうことも、特開昭58−113928号公報に記載されているように化学増感に先立って行なうこともでき、またハロゲン化銀粒子沈澱生成の完了前に添加し分光増感を開始することもできる。更にまた米国特許第4,225,666号公報に教示されているようにこれらの前記化合物を分けて添加すること、即ちこれらの化合物の一部を化学増感に先立って添加し、残部を化学増感の後で添加することも可能であり、米国特許第4,183,756号明細書に開示されている方法を始めとしてハロゲン化銀粒子形成中のどの時期であってもよい。
【0314】
添加量は、ハロゲン化銀1mol当り、4×10−6〜8×10−3molで用いることができるが、より好ましいハロゲン化銀粒子サイズ0.2〜1.2μmの場合は約5×10−5〜2×10−3molが有効である。
【0315】
本発明において、増感色素は、ハロゲン化銀粒子にその飽和被覆量に対して60%以上吸着している。75%以上100%以下吸着しているのが好ましい。増感色素のハロゲン化銀粒子に対する飽和被覆量は、通常の増感色素の吸着等温線を求めることにより容易に算出できる。増感色素の吸着等温線に関しては、例えば、T.H.James著「THE THEORY OF THE PHOTOGRAPHIC PROCESS 第4版」マクミラン出版、ニューヨーク、1章III節(1977年)」237頁に記載されている通り、一般に遠心沈殿により個相と液相を分離し、最初に添加した増感色素と上澄み液中の増感色素との差を測定して吸着された増感色素量を求めることができる。
【0316】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、本発明の乳剤を含有する感光性層を少なくとも一層有すればよい。また本発明の乳剤は、何れの感光性層に含有させても本発明の効果を奏する。
【0317】
本発明を採用し得るハロゲン化銀写真感光材料に使用することができる層配列等の技術、ハロゲン化銀乳剤、色素形成カプラー、DIRカプラー等の機能性カプラー、各種の添加剤等、及び現像処理については、欧州特許第0565096A1号(1993年10月13日公開)及びこれに引用された特許に記載されている。以下に各項目とこれに対応する記載個所を列記する。
【0318】
1.層構成:61頁23〜35行、61頁41行〜62頁14行
2.中間層:61頁36〜40行、
3.重層効果付与層:62頁15〜18行、
4.ハロゲン化銀ハロゲン組成:62頁21〜25行、
5.ハロゲン化銀粒子晶癖:62頁26〜30行、
6.ハロゲン化銀粒子サイズ:62頁31〜34行、
7.乳剤製造法:62頁35〜40行、
8.ハロゲン化銀粒子サイズ分布:62頁41〜42行、
9.平板粒子:62頁43〜46行、
10.粒子の内部構造:62頁47行〜53行、
11.乳剤の潜像形成タイプ:62頁54行〜63頁5行、
12.乳剤の物理熟成・化学熟成:63頁6〜9行、
13.乳剤の混合使用:63頁10〜13行、
14.かぶらせ乳剤:63頁14〜31行、
15.非感光性乳剤:63頁32〜43行、
16.塗布銀量:63頁49〜50行、
17.写真用添加剤:リサーチ・ディスクロージャ(RD)Item17643(1978年12月)、同Item18716(1979年11月)及び同Item307105(1989年11月)に記載されており、下記に各項目およびこれに関連する記載個所を示す。
【0319】
【0320】
18.ホルムアルデヒドスカベンジャー:64頁54〜57行、
19.メルカプト系かぶり防止剤:65頁1〜2行、
20.かぶらせ剤等放出剤:65頁3〜7行、
21.色素:65頁7〜10行、
22.カラーカプラー全般:65頁11〜13行、
23.イエロー、マゼンタ及びシアンカプラー:65頁14〜25行、
24.ポリマーカプラー:65頁26〜28行、
25.拡散性色素形成カプラー:65頁29〜31行、
26.カラードカプラー:65頁32〜38行、
27.機能性カプラー全般:65頁39〜44行、
28.漂白促進剤放出カプラー:65頁45〜48行、
29.現像促進剤放出カプラー:65頁49〜53行、
30.その他のDIRカプラー:65頁54行〜66頁4行、
31.カプラー分散方法:66頁5〜28行、
32.防腐剤・防かび剤:66頁29〜33行、
33.感材の種類:66頁34〜36行、
34.感光層膜厚と膨潤速度:66頁40行〜67頁1行、
35.バック層:67頁3〜8行、
36.現像処理全般:67頁9〜11行、
37.現像液と現像薬:67頁12〜30行、
38.現像液添加剤:67頁31〜44行、
39.反転処理:67頁45〜56行、
40.処理液開口率:67頁57行〜68頁12行、
41.現像時間:68頁13〜15行、
42.漂白定着、漂白、定着:68頁16行〜69頁31行、
43.自動現像機:69頁32〜40行、
44.水洗、リンス、安定化:69頁41行〜70頁18行、
45.処理液補充、再使用:70頁19〜23行、
46.現像薬感材内蔵:70頁24〜33行、
47.現像処理温度:70頁34〜38行、
48.レンズ付フィルムへの利用:70頁39〜41行。
【0321】
本発明を適用するハロゲン化銀カラー写真感光材料には、処理の簡略化及び迅速化の目的で発色現像主薬を内蔵させてもよい。内蔵させるためには、発色現像主薬の各種プレカーサーを用いるのが好ましい。例えば、米国特許第3,342,597号明細書記載のインドアニリン系化合物、例えば、同第3,342,599号明細書、リサーチ・ディスクロージャーNo.14,850及び同No.15,159に記載のシッフ塩基型化合物、同No.13,924に記載のアルドール化合物、米国特許第3,719,492号明細書に記載の金属塩錯体、特開昭53−135628号公報に記載のウレタン系化合物を挙げることができる。
【0322】
本発明を適用するハロゲン化銀カラー感光材料は、必要に応じて、発色現像を促進する目的で、各種の1−フェニル−3−ピラゾリドン類を内蔵してもよい。典型的な化合物は、例えば、特開昭56−64339号公報、同57−144547号公報、および同58−115438号公報に記載されている。
本発明における各種処理液は、10℃〜50℃において使用される。通常は33℃〜38℃の温度が標準的であるが、より高温にして処理を促進し処理時間を短縮したり、逆により低温にして画質の向上や処理液の安定性の改良を達成することができる。
【0323】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は適切には、光、レーザーまたはX線照射に感光性のある材料であり、白黒リバーサルフィルム、白黒ネガフィルム、カラーネガフィルム、カラーリバーサルフィルム、感光性写真成分がデジタルスキャンされたフィルム、白黒反転紙、白黒紙、カラー紙、反転カラー紙、感光性写真成分がデジタルデータベースからのレーザー照射により感光された紙から選択される。ハロゲン化銀写真感光材料としてはカラーネガフィルムが好ましく、その実施態様としては例えば特開平11−305396号公報などを挙げることができる。
【0324】
また、本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、米国特許第4,500,626号明細書、特開昭60−133449号公報、同59−218443号公報、同61−238056号公報、欧州特許第210,660A2号などに記載されている熱現像感光材料にも適用できる。また、本発明を適用するハロゲン化銀カラー写真感光材料は、特公平2−32615号公報、実公平3−39784号公報などに記載されているレンズ付きフィルムユニットに適用した場合に、より効果を発現しやすく有効である。
【0325】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
【0326】
(実施例1)
合成例1:修飾ゼラチン1b及び2aの合成
未修飾のアルカリ処理された元ゼラチン1としては、牛骨を原料とする通常のアルカリ処理オセインゼラチンを用いた。元ゼラチン1の物性値は
含水率 : 11.4%
等電点 : 5.0
質量平均分子量: 164,000(分子量はPAGI法に基づいて測定)PAGI法により測定された分子量分布は、高分子量成分が2.5%、低分子量成分が60.0%であった。 ボイド/α比 : 0.13(GPCプロフィールにおける使用したカラム(GS−620)の排除限界のボイド部分(分子量約200万以上)とα鎖(分子量10万)に対する高さの比率)であった。
【0327】
1−1 修飾ゼラチン1bの合成
元ゼラチン1(113.6g)に水836.4gを加え、室温で30分間膨潤させた後、60℃に加温して溶解した。次いで5mol/LのNaOHでpH値8.0に調整した後、あらかじめ、N、N−ジメチルホルムアミド50mLに4−(5−メルカプト−1−テトラゾリル)安息香酸(前記例示化合物1)222mg(1.0mmol)、N−ヒドロキシサクシンイミド(NHS)115mg(1.0mmol)、WSC(N−エチル−N、N−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩)191mg(1.0mmol)を溶解し、室温3時間攪拌したものをゼラチン水溶液中に30分間かけて滴下した。滴下終了後、60℃に保ちながら更に30分間攪拌した。反応終了後、再び5mol/LのでpH=8.0に調整した後、透析(55℃、72時間)を行った。次いで濃縮(55℃、130hPa)を行い、固形分濃度が10質量%になるように調整した。その後5℃に冷却し、ゼラチンセット物として修飾ゼラチン1bを1kg得た。
【0328】
1−2 修飾ゼラチン2aの合成
元ゼラチン1(113.6g)に水760mLを加え、室温で30分間膨潤させた後、60℃に加温して溶解した。次いで5mol/LのNaOHでpH値6.8に調整した後、硬膜剤H−II−4の1%水溶液71.4mL(H−II−4:2.2mmol)を1時間かけて滴下し60℃、3時間攪拌した。この時、ゼラチンは架橋されて高分子量となり、PAGI法により測定された分子量分布は、高分子量成分が11.8%、低分子量成分が42.5%であった。この高分子量ゼラチンを「ゼラチンa」とする。ゼラチンaを更に5mol/LのNaOHでpH値8.0に調整した後、あらかじめ、N、N−ジメチルホルムアミド50mLに4−(5−メルカプト−1−テトラゾリル)安息香酸(前記例示化合物1)ジナトリウム塩133mg(0.5mmol)、N−ヒドロキシサクシンイミド(NHS)58mg(0.5mmol)、WSC(N−エチル−N、N−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩)96mg(0.5mmol)を溶解し、室温3時間攪拌したものをゼラチン水溶液中に30分間かけて滴下した。滴下終了後、60℃に保ちながら更に30分間攪拌した。反応終了後透析(55℃、72時間)を行った。次いで濃縮(55℃、130hPa)を行い、固形分濃度が10%になるように調整した。その後5℃に冷却し、ゼラチンセット物として修飾ゼラチン2aを1kg得た。
【0329】
修飾ゼラチン1bおよび2aの導入量はUV吸収より定量した。結果を表1に示す。
【0330】
【表1】
【0331】
合成例2:吸着基をもつ水溶性ポリマーWP−1の合成
あらかじめpH4.7のフタル酸緩衝液(90mL)に、アクリルアミド47.5g、アクリル酸、2.5g、2−メルカプトエチルアミン塩酸塩0.396gを溶解したA液と、フタル酸緩衝液(50mL)に和光純薬製ラジカル発生剤V−50を溶解させたB液を調製した。窒素雰囲気下、1000mLの3ツ口フラスコに、フタル酸緩衝液(150mL)を加え、60℃で3時間かけて、A液とB液をそれぞれ別に滴下した。滴下終了後、80℃で3時間加熱攪拌した後、室温まで冷却し、5mol/LのNaOHでpH値7.8に調整した後、メタノール5Lに反応液を滴下し、再沈殿操作を行った。得られた固形分をろ別し、40℃で減圧乾燥し、ポリアクリルアミド、アクリル酸共重合ポリマー50gを得た。
得られたポリマー20gを水70mLに溶解し、5mol/LのNaOHでpH値8.0に調整した後、あらかじめN、N−ジメチルホルムアミド70mLに4−(5−メルカプト−1−テトラゾリル)安息香酸ジナトリウム1.43g(5.9mmol)、NHS、0.68g(5.9mmol)、WSC、1.13g(5.9mmol)を溶解し、室温3時間攪拌したものをポリマー水溶液中に20分間かけて滴下した。滴下終了後、40℃に保ちながら更に3時間攪拌した。反応終了後、3Lのメタノールに反応液をゆっくりと滴下し、得られた固形分をろ別した。再び水50mLに溶解させ、3Lのメタノールに再沈殿操作を行い、固形分をろ別した。得られた固形分を40℃で減圧乾燥を行い、白色の固体としてWP−1を2g得た。
合成したWP−1の物性値を表2に示す。
【0332】
【表2】
【0333】
(実施例2)
以下の乳剤調製で分散媒として用いたゼラチン1〜ゼラチン4は、以下の属性を持つゼラチンである。
ゼラチン1: 牛骨を原料とする、通常のアルカリ処理オセインゼラチン。ゼラチン中の−NH2基の化学修飾なし。
ゼラチン2: ゼラチン1の水溶液に、50℃、pH9.0の条件下で無水フタル酸を加えて化学反応させた後、残留するフタル酸を除去して乾燥させたゼラチン。ゼラチン中の−NH2基が化学修飾された数の割合は95%。
ゼラチン3: ゼラチン1の水溶液に、50℃、pH9.0の条件下で無水トリメリット酸を加えて化学反応させた後、残留するトリメリット酸を除去して乾燥させたゼラチン。ゼラチン中の−NH2基が化学修飾された数の割合は95%。
ゼラチン4: ゼラチン1に酵素を作用させて低分子量化し、平均分子量を15,000にした後、酵素を失活させて乾燥させたゼラチン。ゼラチン中の−NH2基の化学修飾なし。
【0334】
上記のゼラチン1〜ゼラチン4は、全て脱イオン処理をした後、5%水溶液の35℃におけるpHが6.0となるように調整を行った。
【0335】
(乳剤A−1の調製)
KBrを1.0g、前記のゼラチン4を1.1g含む水溶液1300mLを35℃に保ち、撹拌した(1st液調製)。Ag−1水溶液(100mL中にAgNO3を4.9g含有する)38mLと、X−1水溶液(100mL中にKBrを5.2g含有する)29mL、およびG−1水溶液(100mL中に前記のゼラチン4を8.0g含有する)8.5mLをトリプルジェット法で、一定の流量で30秒間にわたり添加した(添加1)。その後、KBr6.5gを添加し、温度を75℃に昇温した。昇温後12分間の熟成工程を経た後、G−2水溶液(100mL中に前記のゼラチン1を12.7g含有する)300mLを添加した。
【0336】
次に、Ag−2水溶液(100mL中にAgNO3を22.1g含有する)157mLと、X−2水溶液(100mL中にKBrを15.5g含有する)をダブルジェット法で28分間にわたり添加した。この時、Ag−2水溶液の添加は最終流量が初期流量の3.4倍になるように流量加速を行い、X−2水溶液の添加は反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgが7.52を保つように行った(添加2)。次いで、Ag−3水溶液(100mL中にAgNO3を32.0g含有する)329mLと、X−3水溶液(100mL中にKBrを21.5g、KIを1.2g含有する)をダプルジェット法で53分間にわたり添加した。この時、Ag−3水溶液の添加は最終流量が初期流量の1.6倍になるように流量加速を行い、X−3水溶液の添加は反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgが7.52を保つように行った(添加3)。さらに、Ag−4水溶液(100mL中にAgNO3を32.0g含有する)156mLと、X−4水溶液(100mL中にKBrを22.4g含有する)をダプルジェット法で17分間にわたり添加した。この時、Ag−4水溶液の添加は一定の流量で行い、X−3水溶液の添加は反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgが7.52を保つように行った(添加4)。
【0337】
その後、ベンゼンチオスルホン酸ナトリウムを0.0025g、G−3水溶液(100mL中に前記のゼラチン1を12.0g含有する)125mLを、1分間づつ間隔をあけて順次添加した。次いでKBr43.7gを添加し反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを9.00にしてから、AgI微粒子乳剤(100g中に平均粒径0.047μmのAgI微粒子を13.0g含有する)73.9gを添加し、その2分後から、Ag−4水溶液249mLと、X−4水溶液をダブルジェット法で添加した。この時Ag−4水溶液は一定の流量で9分間にわたって添加し、X−4水溶液は最初の3.3分間だけ反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを9.00に保つように添加し、残りの5.7分間は添加をせず、反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgが最終的に8.4になるようにした(添加5)。その後、通常のフロキュレーション法により脱塩を行い、次いで、攪拌しながら水、NaOH、前記のゼラチン1を添加し、56℃でpH6.4、pAg8.6になるように調整した。
得られた乳剤は、平均球相当径0.99μm、平均円相当径1.26μm、アスペクト比の平均値が3.1、粒子の平均厚みが0.41μmであり、AgI含有量の平均値が3.94mol%の沃臭化銀、平行な主平面が(111)面である平板状ハロゲン化銀粒子からなり、XPSで測定されたハロゲン化銀粒子表面のAgI含有量は2.1mol%であった。また、AgCl含量が0mol%であった。
【0338】
続いて、下記増感色素Exs−1、チオシアン酸カリウム、塩化金酸、チオ硫酸ナトリウムおよびN,N−ジメチルセレノ尿素、下記化合物RS−1を順次添加し最適に化学増感を施した後、水溶性メルカプト化合物ExA−1およびExA−2を4:1の比率で合計でハロゲン化銀1mol当たり3.6×10−4mol添加することにより化学増感を終了させた。
【0339】
【化27】
【0340】
【化28】
【0341】
(乳剤A−2及びA−3の調製)
前記の乳剤A−1における調製条件を変更して、乳剤A−2及びA−3を調製した。
得られた乳剤は、乳剤A−2が平均球相当径0.99μm、平均円相当径1.73μm、平均アスペクト比が7.0、粒子の平均厚みが0.24μmであり、AgI含有量の平均値が3.94mol%、平行な主平面が(111)面である平板状ハロゲン化銀粒子からなり、XPSで測定されたハロゲン化銀粒子表面のAgI含有量は2.4mol%であった。
乳剤A−3は、平均球相当径0.99μm、平均円相当径2.0μm、平均アスペクト比が12.5、粒子の平均厚みが0.16μmであり、AgI含有量の平均値が3.94mol%、平行な主平面が(111)面である平板状ハロゲン化銀粒子から成り、XPSで測定されたハロゲン化銀粒子表面のAgI含有量は2.6mol%であった。
また、乳剤A−2及びA−2はともにAgCl含量が0mol%であった。
【0342】
前記の乳剤A−1〜A−3の増感色素Exs−1の添加量は、何れも飽和被覆量の80%とした。
前記の乳剤A−1〜A−3について400kVの透過型電子顕微鏡を用いて液体窒素温度で観察したところ、何れの粒子においても平板粒子のフリンジ部に転位線が10本以上存在していることがわかった。
【0343】
(乳剤A−4〜A−6の調製)
乳剤A−1〜A−3において、実施例1、合成例2のポリマーWP−1をハロゲン化銀1mol当たり100mg、化学増感終了時に添加する以外は同様にして、各々乳剤A−4〜A−6を調製した。乳剤A−4〜A−6の粒子形状は各々乳剤A−1〜A−3と同じである。
【0344】
(乳剤A−7〜A−9の調製)
乳剤A−1〜A−3において、実施例1、合成例1に記載の高分子量ゼラチン、ゼラチンaを脱塩後に添加するゼラチン1に対し等重量に置き換えた以外は同様にして、各々乳剤A−7〜A−9を調製した。
【0345】
(乳剤A−10〜A−12の調製)
乳剤A−1〜A−3において、脱塩後に添加するゼラチン1を実施例1、合成例1の修飾ゼラチン1bに最適な量に置き換えた以外は同様にして、各々乳剤A−10〜A−12を調製した。
【0346】
(乳剤A−13〜A−15の調製)
乳剤A−1〜A−3において、脱塩後に添加するゼラチン1を実施例1、合成例1の修飾ゼラチン2aに最適な量に置き換えた以外は同様にして、各々乳剤A−13〜A−15を調製した。
【0347】
(吸着バインダー層厚みの測定)
乳剤A−1〜A−15において、増感色素Exs−1を添加せず分光増感を施さない乳剤を準備した。各々乳剤Ab−1〜Ab−15とする。
前述のAFMを用いた測定方法に従って、乳剤Ab−1〜Ab−3、Ab−7〜Ab−15、A−1〜A−3、およびA−7〜A−15の吸着バインダー層厚みを求めた。
乳剤A−1〜A−6はハロゲン化銀の定着をせずに測定し、上記のようにA−1〜A−3で求めた吸着バインダー層厚みから算出したA−1〜A−3の乳剤子自身の厚みを用いて乳剤A−4〜A−6の吸着バインダー層厚みを求めた。
乳剤A−1〜A−15の各々の乳剤Ab−1〜Ab−15に対する減少率(%)を分光増感後の吸着バインダー層厚みの減少率とし、乳剤A−1〜A−15の厚みとともに後述の表3に示した。
【0348】
以下に乳剤の写真性能の評価実験について説明する。
下塗り層を設けてある三酢酸セルロースフィルム支持体に下記に示すような塗布条件で、前記の乳剤A−1〜A−15の塗布を行った。塗布試料を各々表3に示すように試料101〜115とする。
(乳剤塗布条件)
ハロゲン化銀については銀換算の塗布量を示す。
また塗布性をよくするために、適宜、界面活性剤が含有されている。
【0349】
マゼンタ色素形成カプラーM−1
【0350】
【化29】
【0351】
これらの試料を40℃、相対湿度70%の条件下で14時間硬膜処理を施した。その後、富士フイルム(株)製ゼラチンフィルターSC−50(カットオフ波長が500nmである長波長光透過フィルター)と連続ウェッジを通して1/100秒間露光を行い、後述の現像処理を行なった試料を緑色フィルターで濃度測定することにより写真性能の評価を行った。感度はかぶり濃度プラス0.2のマゼンタ濃度を与えるルックス・秒で表示する露光量の逆数の対数の相対値で表示した。(試料101の感度を100とした。)
富士写真フイルム(株)製ネガプロセサーFP−350を用い、特開2002−55412号公報の実施例1に記載の方法で発色現像の処理時間を2分45秒に変更して処理した。
【0352】
(塗設時の粒子凝集による粒状性悪化の評価)
前記の試料101〜115において各乳剤を40℃で溶解し、8時間経時させた後に試料101〜115と同様の塗布条件で試料を新たに作製した。これらの試料を101と同様に40℃、相対湿度70%の条件下で14時間放置した後、各試料のかぶり濃度プラス0.2の濃度でのRMS粒状度を測定した。粒子が凝集すると粒状性が悪化しRMS粒状度の値が増大する。粒状度は試料101を100とした相対値で示した。
【0353】
写真性能の結果を表3にまとめて示した。
【表3】
【0354】
表3に示した結果より、1.0nmより大きい吸着バインダー層厚みを有する本発明の乳剤は、乳剤溶解経時後の粒状性悪化が小さいことが分かる。吸着バインダー層厚みの増加が粒状性悪化の低減と対応している。またアスペクト比の大きい粒子ほど高感度、かつ粒状性悪化に対する効果が大きい。
【0355】
実施例3
以下の製法によりホストハロゲン化銀乳剤Bを調製した。
(種乳剤aの調製)
KBr0.017g、平均分子量20000の酸化処理ゼラチン0.4gを含水溶液1164mLを30℃に保ち撹拌した。AgNO3(1.6g)水溶液とKBr水溶液と平均分子量20000の酸化処理ゼラチン(2.1g)水溶液をトリプルジェット法で30秒間に渡り添加した。AgNO3溶液の濃度は0.2mol/Lの溶液を用いた。この時,銀電位を飽和カロメル電極に対して15mVに保った。KBr水溶液を加え、銀電位を−60mVとした後、75℃に昇温した。平均分子量100,000のコハク化ゼラチン21gを添加した。AgNO3(206.3g)水溶液とKBr水溶液をダブルジェット法で流量加速しながら61分間にわたって添加した。この時、銀電位を飽和カロメル電極に対して−40mVに保った。脱塩した後、平均分子量100,000のコハク化ゼラチンを加え、40℃でpH5.8、pAg8.8に調整し、種乳剤を調製した。この種乳剤は乳剤1kg当たり、Agを1mol、ゼラチンを80g含有し、平均円相当直径1.60μm、円相当直径の変動係数22%、平均厚み0.043μm、平均アスペクト比37の平板粒子であった。
【0356】
(ホスト平板粒子乳剤Bの調製)
上記種乳剤aを134g、KBr 1.9g、平均分子量100,000のコハク化ゼラチン22gを含む水溶液1,200mLを75℃に保ち撹拌した。AgNO3(137.5g)水溶液とKBr水溶液と分子量20,000の酸化処理ゼラチン水溶液を特開平10−43570号に記載の磁気カップリング誘導型攪拌機を有する別のチャンバ−内で添加前直前混合して25分間にわたり添加した。この時、銀電位を飽和カロメル電極に対して−40mVに保った。その後、AgNO3(30.0g)水溶液とKBr水溶液と予め調製したAgI超微粒子乳剤をトリプルジェット法で30分間にわたって一定流量で添加した。AgI超微粒子乳剤の添加量は沃化銀含有率が15mol%になるように調整した。またAgI超微粒子乳剤は円相当径0.03μm、円相当径の変動係数17%であり、分散ゼラチンとしてトリメリット化ゼラチンを使用したものを用いた。この時、銀電位を飽和カロメル電極に対して−20mVに保った。その後AgNO3水溶液(36.4g)とKBr水溶液と前述した予め調整したAgI超微粒子乳剤を40分間に渡って一定流量で添加した。AgI超微粒子乳剤の添加量は沃化銀含有率が15mol%になるように調整した。この時、銀電位を飽和カロメル電極に対して+80mVに保った。通常の水洗を行い、実施例2のゼラチン1を添加し、40℃でpH5.8、pBr4.0に調整した。この乳剤を乳剤Bとした。乳剤Bは平均円相当径4.2μm、円相当径の変動係数19%、平均厚み0.062μm、平均アスペクト比68の平板粒子であった。また、全投影面積の90%以上が円相当径3.0μm以上、厚み0.07μm以下であった。低温での透過電子顕微鏡観察の結果、全投影面積の90%以上の粒子に転位線は全く観測されなかった。また側面の(111)面比率は68%であった。
【0357】
(エピタキシャル沈着と化学増感)
ホスト平板粒子乳剤Bに以下に示した(i)から(iii)のエピタキシャル沈着を行い、乳剤Em−1〜Em−3を調製した。
【0358】
(1の製法)
ホスト平板粒子乳剤Bを40℃で溶解し、KI水溶液をホスト平板粒子の銀量1molに対して3×10−3mol添加した。増感色素I、II、IIIを6:3:1のモル比で飽和被覆量の90%の比率で添加した。但し増感色素は、特開平11−52507号公報に記載の方法で作成した固体微分散物として、使用した。すなわち硝酸ナトリウム0.8質量部および硫酸ナトリウム3.2質量部をイオン交換水43部に溶解し、増感色素13質量部を添加し、60℃の条件下でディゾルバ−翼を用い2000rpmで20分間分散することにより、増感色素の固体分散物を得た。ヘキサシアノルテニウム(II)酸カリウムを最適量になるように添加した後KBr水溶液を1.5×10−2mol添加した。その後、1mol/Lの硝酸銀水溶液3.0×10−2molとNaCl水溶液2.7×10−2molをダブルジェット法で10分間にわたって定流量で添加した。添加終了時の銀電位は飽和カロメル電極に対して+85mVであった。乳剤を50℃に昇温し、チオシアン酸カリウム、塩化金酸、チオ硫酸ナトリウムおよびN,N−ジメチルセレノ尿素を添加し最適に化学増感を施した。かぶり防止剤ExA−3を2×10−5mol、ExA−4を6×10−6mol添加した後、実施例2のメルカプト化合物ExA−1を5×10−4mol添加して化学増感を終了した。
【0359】
【化30】
【0360】
(乳剤Em−2の製法)
ホスト平板粒子乳剤を40℃で溶解し前述したAgI微粒子乳剤を、ホスト平板粒子の銀量1molに対して3×10−3mol添加した。増感色素I、II、IIIを6:3:1のモル比で飽和被覆量の90%の比率で添加した。但し増感色素は、特開平11−52507号公報に記載の方法で作成した固体微分散物として、使用した。すなわち硝酸ナトリウム0.8質量部および硫酸ナトリウム3.2質量部をイオン交換水43部に溶解し、増感色素13質量部を添加し、60℃の条件下でディゾルバ−翼を用い2000rpmで20分間分散することにより、増感色素の固体分散物を得た。ヘキサシアノルテニウム(II)酸カリウムを最適量となるように添加し、KBr水溶液を1.5×10−2mol添加した。NaCl水溶液を2.7×10−2mol添加した後、0.1mol/Lの硝酸銀水溶液3.0×10−2molを1分間に渡って定流量で添加した。添加終了時の銀電位は飽和カロメル電極に対して+85mVであった。乳剤を50℃に昇温し、チオシアン酸カリウム、塩化金酸、チオ硫酸ナトリウムおよびN,N−ジメチルセレノ尿素を添加し最適に化学増感を施した。かぶり防止剤ExA−3を2×10−5mol、ExA−4を6×10−6mol添加した後、化合物ExA−1を5×10−4mol添加して化学増感を終了した。
【0361】
(乳剤Em−3の製法)
ホスト平板粒子乳剤を40℃で溶解し、前述したAgI微粒子乳剤をホスト平板粒子の銀量1molに対して3×10−3mol添加した。増感色素I、II、IIIを6:3:1のモル比で飽和被覆量の90%の比率で添加した。但し増感色素は、特開平11−52507号公報に記載の方法で作成した固体微分散物として、使用した。すなわち硝酸ナトリウム0.8質量部および硫酸ナトリウム3.2質量部をイオン交換水43部に溶解し、増感色素13質量部を添加し、60℃の条件下でディゾルバ−翼を用い2000rpmで20分間分散することにより、増感色素の固体分散物を得た。ヘキサシアノルテニウム(II)酸カリウムを最適量となるように添加し、KBr水溶液を1.5×10−2mol添加した。その後、0.1mol/Lの硝酸銀水溶液3.0×10−2molとNaCl水溶液2.7×10−2molをダブルジェット法で2分間に渡って定流量で添加した。添加終了時の銀電位は飽和カロメル電極に対して+85mVであった。KBr水溶液を添加して銀電位を飽和カロメル電極に対して+20mVに調整した。乳剤を50℃に昇温し、チオシアン酸カリウム、塩化金酸、チオ硫酸ナトリウムおよびN,N−ジメチルセレノ尿素を添加し最適に化学増感を施した。かぶり防止剤ExA−3を2×10−5mol、ExA−4を6×10−6mol添加した後、化合物ExA−1を5×10−4mol添加して化学増感を終了した。
【0362】
ホスト平板粒子乳剤Bに上記エピタキシャル沈着を組み合わせて調製した乳剤Em−1〜Em−3についてEPMA法を用いて粒子間の沃化銀含有率と塩化銀含有率の分布を測定した。またレプリカでの電子顕微鏡観察からエピタキシャル沈着の様子を観察した。ホスト平板粒子乳剤Bでの結果をまとめて表4に示す。これらの乳剤は塩化銀含有率が1.2mol%、沃化銀含有率が4.5mol%の沃臭化銀よりなる平板状ハロゲン化銀粒子であった。
【0363】
【表4】
【0364】
(乳剤Em−4〜Em−6の調製)
乳剤B−1〜B−3において、後述の表5に示すように実施例1のポリマーWP−1をハロゲン化銀1mol当たり120mgを、化学増感終了時に添加する以外は同様にして、乳剤Em−4〜Em−6を調製した。
【0365】
(乳剤Em−7〜Em−9の調製)
乳剤B−1〜B−3において、水洗後に添加するゼラチン1を後述の表5に示すように実施例1のゼラチン2に置き換える以外は同様にして、乳剤Em−7〜Em−9を調製した。
【0366】
(乳剤Em−10〜Em−12の調製)
乳剤B−1〜B−3において、水洗後に添加するゼラチン1を後述の表5に示すように実施例1の修飾ゼラチン2aに置き換える以外は同様にして、乳剤Em−10〜Em−12を調製した。
【0367】
(吸着バインダー層厚みの測定)
実施例2と同様にして、乳剤Em−1〜Em−12において、増感色素を添加しない乳剤(乳剤Emb−1〜Emb−12とする)を用いて、吸着バインダー層厚みの測定を行った。乳剤Em−4〜Em−6及びEmb−4〜Emb−6については、乳剤Emb−1〜Emb−3をハロゲン化銀の定着をせずに測定し、Emb−1〜Emb−3で求めた吸着バインダー層厚みから算出したEm−1〜Em−3の乳剤子自身の厚みを用いて乳剤EMb−4〜EMb−6の吸着バインダー層厚みを求めた。乳剤Em−1〜Em−12の各々の乳剤Emb−1〜Emb−12に対する減少率(%)を分光増感後の吸着バインダー層厚みの減少率とし、乳剤Em−1〜Em−12の厚みとともに後述の表9に示した。
【0368】
上記乳剤以外に多層カラー感光材料乳剤に用いた乳剤の一覧表を表5〜8に示す。
【0369】
【表5】
【0370】
【表6】
【0371】
【表7】
【0372】
【表8】
【0373】
表5〜8に示した乳剤については、以下の記載の特許の本文および/または実施例記載の内容に基づいて、適宜選択、組合せ、および/または変更して調製した。各試料の化学増感方法、用いた化学増感剤、かぶり剤等については詳細を省略するが、いずれも下記特許の本文および/または実施例記載の内容に基づいて、適宜選択、組合せ、および/または変更して、調製した。
乳剤の構造、化学増感、分光増感等については、特に、EP573649B1号公報、特許第2912768号公報、特開平11−249249号公報、特開平11−295832号公報、特開平11−72860号公報、米国特許第5985534号明細書、米国特許第5965343号明細書、特許第3002715号公報、特許第3045624号公報、特許第3045623号公報、特開2000−275571号公報、米国特許第6172110号明細書、特開2000−321702号公報、特開2000−321700号公報、特開2000−321698号公報、米国特許第6153370号明細書、特開2001−92065号公報、特開2001−92064号公報、特開2000−92059号公報、特開2001−147501号公報、US2001/0006768A1、特開2001−228572号公報、特開2001−255613号公報、特開2001−264911号公報、US6280920B1、特開2001−264912号公報、特開2001−281778、US6287753B1、US2002/0006590A1、米国特許第5919611号明細書、US2001/0031434A1等の記載内容を基にした。
【0374】
乳剤の製造法については特に特許第2878903号公報、特開平11−143002号公報、特開平11−143003号公報、特開平11−174612号公報、米国特許第5925508号明細書、米国特許第5955253号明細書、特開平11−327072号公報、米国特許第5989800号明細書、特許第3005382号公報、特許第3014235号公報、EP0431585B1号公報、US6040127A、特許第3049647号公報、特許第3045622号公報、特許第3066692号公報、EP0563708B1号公報、特許第3091041号公報、特開2000−338620号公報、特開2001−83651号公報、特開2001−75213号公報、特開2001−100343号公報、US6251577B1、EP0563701B1号公報、特開2001−281780号公報、US2001/0036606A1等の記載内容に基づいて行った。
【0375】
(多層カラー感光材料201の作製)
下塗りを施した三酢酸セルロースフィルム支持体上に、下記に示すような組成の各層を重層塗布し、多層カラー感光材料である試料201を作製した。
(感光層の組成)
各層に使用する素材の主なものは下記のように分類されている;
ExC:シアンカプラー ExS:分光増感色素
UV :紫外線吸収剤
ExM:マゼンタカプラー HBS:高沸点有機溶剤
ExY:イエローカプラー H :ゼラチン硬化剤
(具体的な化合物は以下の記載で、記号の次に数値が付けられ、後ろに化学式が挙げられている)。
【0376】
各成分に対応する数字は、g/m2単位で表した塗布量を示し、ハロゲン化銀については銀換算の塗布量を示す。また、分光増感色素については同一層のハロゲン化銀1molに対する塗布量をmol単位で示した。
【0377】
第1層(第1ハレーション防止層)
黒色コロイド銀 銀 0.010
ゼラチン 0.66
ExM−1 0.048
Cpd−2 0.001
F−8 0.001
HBS−1 0.090
HBS−2 0.010。
【0378】
第2層(第2ハレーション防止層)
黒色コロイド銀 銀 0.010
ゼラチン 0.80
ExM−1 0.057
ExF−1 0.002
F−8 0.001
HBS−1 0.090
HBS−2 0.010。
【0379】
第3層(中間層)
ExC−2 0.010
Cpd−1 0.086
UV−2 0.029
UV−3 0.052
UV−4 0.011
HBS−1 0.100
ゼラチン 0.580。
【0380】
第4層(低感度赤感乳剤層)
Em−M 銀 0.42
Em−N 銀 0.52
Em−O 銀 0.10
ExC−1 0.222
ExC−2 0.012
ExC−3 0.72
ExC−4 0.148
ExC−5 0.005
ExC−6 0.008
ExC−8 0.071
ExC−9 0.010
UV−2 0.036
UV−3 0.067
UV−4 0.014
Cpd−2 0.010
Cpd−4 0.012
HBS−1 0.240
HBS−5 0.010
ゼラチン 1.50。
【0381】
第5層(中感度赤感乳剤層)
Em−L 銀 0.38
Em−M 銀 0.28
ExC−1 0.110
ExC−2 0.040
ExC−3 0.018
ExC−4 0.074
ExC−5 0.019
ExC−6 0.024
ExC−8 0.010
ExC−9 0.021
Cpd−2 0.020
Cpd−4 0.021
HBS−1 0.129
ゼラチン 0.90。
【0382】
第6層(高感度赤感乳剤層)
Em−1 銀 1.40
ExC−1 0.122
ExC−6 0.032
ExC−8 0.110
ExC−9 0.005
ExC−10 0.159
Cpd−2 0.068
Cpd−4 0.011
HBS−1 0.440
ゼラチン 1.510。
【0383】
第7層(中間層)
Cpd−1 0.081
Cpd−6 0.002
固体分散染料ExF−4 0.015
HBS−1 0.049
ポリエチルアクリレートラテックス 0.088
ゼラチン 0.759。
【0384】
第8層(赤感層へ重層効果を与える層)
Em−E 銀 0.40
Cpd−4 0.010
ExM−2 0.082
ExM−3 0.006
ExM−4 0.026
ExY−1 0.010
ExY−4 0.040
ExC−7 0.007
HBS−1 0.203
HBS−3 0.003
HBS−5 0.010
ゼラチン 0.520。
【0385】
第9層(低感度緑感乳剤層)
Em−H 銀 0.15
Em−I 銀 0.23
Em−J 銀 0.26
ExM−2 0.388
ExM−3 0.040
ExY−1 0.003
ExY−3 0.002
ExC−7 0.009
HBS−1 0.337
HBS−3 0.018
HBS−4 0.260
HBS−5 0.110
Cpd−5 0.010
ゼラチン 1.470。
【0386】
第10層(中感度緑感乳剤層)
Em−G 銀 0.30
Em−H 銀 0.12
ExM−2 0.084
ExM−3 0.012
ExM−4 0.005
ExY−3 0.002
ExC−6 0.003
ExC−7 0.007
ExC−8 0.008
ExS−7 1.0x10−4
ExS−8 6.1x10−4
ExS−9 1.3x10−4
HBS−1 0.096
HBS−3 0.002
HBS−5 0.002
Cpd−5 0.004
ゼラチン 0.42。
【0387】
第11層(高感度緑感乳剤層)
Em−F 銀 1.20
ExC−6 0.002
ExC−8 0.010
ExM−1 0.014
ExM−2 0.023
ExM−3 0.023
ExM−4 0.005
ExM−5 0.040
ExY−3 0.003
ExA−4 4.0x10−6
Cpd−3 0.004
Cpd−5 0.010
HBS−1 0.259
HBS−5 0.020
ポリエチルアクリレートラテックス 0.099
ゼラチン 1.11。
【0388】
第12層(イエローフィルター層)
Cpd−1 0.088
固体分散染料ExF−2 0.051
固体分散染料ExF−8 0.010
HBS−1 0.049
ゼラチン 0.54。
【0389】
第13層(低感度青感乳剤層)
Em−B 銀 0.50
Em−C 銀 0.15
Em−D 銀 0.10
ExC−1 0.024
ExC−7 0.011
ExY−1 0.002
ExY−2 0.956
ExY−4 0.091
Cpd−2 0.037
Cpd−3 0.004
HBS−1 0.372
HBS−5 0.047
ゼラチン 2.01。
【0390】
第14層(高感度青感乳剤層)
Em−A 銀 1.22
ExY−2 0.235
ExY−4 0.018
ExA−4 6.0x10−6
Cpd−2 0.075
Cpd−3 0.001
HBS−1 0.087
ゼラチン 1.30。
【0391】
第15層(第1保護層)
0.07μmのヨウ臭化銀乳剤 銀 0.25
UV−1 0.358
UV−2 0.179
UV−3 0.254
UV−4 0.025
F−11 0.0081
S−1 0.078
ExF−5 0.0024
ExF−6 0.0012
ExF−7 0.0010
HBS−1 0.175
HBS−4 0.050
ゼラチン 1.81。
【0392】
第16層(第2保護層)
H−1 0.400
B−1(直径1.7μm) 0.050
B−2(直径1.7μm) 0.150
B−3 0.050
S−1 0.200
ゼラチン 0.75。
【0393】
更に、各層に適宜、保存性、処理性、圧力耐性、防黴・防菌性、帯電防止性及び塗布性をよくするために、W−1〜W−6、B−4〜B−6、F−1〜F−20及び、鉛塩、白金塩、イリジウム塩、ロジウム塩が含有されている。
【0394】
有機固体分散染料の分散物の調製
第12層のExF−2を次の方法で分散した。
【0395】
ExF−2のウエットケーキ(17.6重量%の水を含む)2.800kg
オクチルフェニルジエトキシメタンスルホン酸ナトリウム
(31重量%水溶液) 0.376kg
F−15(7%水溶液) 0.011kg
水 4.020kg
計 7.210kg
(NaOHでpH=7.2に調整)。
【0396】
上記組成のスラリーをディゾルバーで攪拌して粗分散した後、アジテータミルLMK−4を用い、周速10m/s、吐出量0.6kg/min、0.3mm径のジルコニアビーズ充填率80%で分散液の吸光度比が0.29になるまで分散し、固体微粒子分散物を得た。染料微粒子の平均粒径は0.29μmであった。
【0397】
同様にして、ExF−4、ExF−8の固体分散物を得た。染料微粒子の平均粒径はそれぞれ、0.28μm、0.49μmであった。
【0398】
以下、各層に用いた化合物を示す。
【0399】
【化31】
【0400】
【化32】
【0401】
【化33】
【0402】
【化34】
【0403】
【化35】
【0404】
【化36】
【0405】
【化37】
【0406】
【化38】
【0407】
【化39】
【0408】
【化40】
【0409】
【化41】
【0410】
【化42】
【0411】
【化43】
【0412】
【化44】
【0413】
【化45】
【0414】
【化46】
【0415】
【化47】
【0416】
(試料202〜212の作製)
試料201の第6層の乳剤Em−1を乳剤Em−2〜Em−12に、各々等銀量となるように置き換えた以外は試料201と同じようにして多層カラー感光材料を作製した。
【0417】
試料202〜212について、以下の評価を行った。評価結果を下記表9に示す。
(特定写真感度の測定)
写真感光材料の感度は一般に国際規格であるISO感度が用いられているが、ISO感度では感光材料を露光後5日目に現像処理し、かつその現像処理は各社指定の処理によると規定されているので、本発明では露光後現像処理までの時間を短縮し、かつ一定の現像処理を行うようにしている。
この特定写真感度の決定方法は、JIS K 7614−1981に準じたものであり、異なる点は、現像処理をセンシトメトリ用露光後30分以上6時間以内に完了させる点、および現像処理を下記に記すフジカラー処理処方CN−16による点にある。その他は実質的にJIS記載の測定方法と同一である。
【0418】
下記に示した現像処理以外は、特開昭63−226650号公報に記載されている、試験条件、露光、濃度測定、特定写真感度の決定と同様の方法とした。
現像は富士写真フイルム社製自動現像機FP−360Bを用いて以下により行った。尚、漂白浴のオーバーフロー液を後浴へ流さず、全て廃液タンクへ排出するように改造を行った。このFP−360Bは公開技法94−4992号(社団法人発明協会発行)に記載の蒸発補正手段を搭載している。処理工程及び処理液組成は特開2002−55412号公報の実施例1に記載の方法で行った。
【0419】
また、各感色性層の相対感度は、上記特定写真感度の測定方法から求めている。
かぶりをイエロー濃度、マゼンタ濃度およびシアン濃度の最小値(DYmin、DMmin、DCmin)で定義し、各感色性層の感度はDYmin、DMmin、DCminより各々0.15高い濃度を与える露光量の逆数の対数で定義した。各試料の赤感色性層の感度値を試料201に対する相対値で表した。
【0420】
粒状度については、特定写真感度の測定と同様の処理を行い、慣用のRMS(Root Mean Square)法で測定した。この際、露光は0.005Lux・秒、測定は直径48μmのアパチャーを用いたRMS測定を行った。
【0421】
【表9】
【0422】
(塗設時の粒子凝集による写真性能悪化の評価)
前記の試料201〜212において第6層の乳剤を各々40℃で溶解し8時間経時させた後に試料201〜212と同様の塗布条件で作製したそれぞれの試料を、温度40℃、相対湿度70%の条件下で14時間放置した後、上記と同様に粒状度を測定した(表9の「溶解経時後の粒状度」;試料201の粒状度を100とした)。本発明の吸着バインダー層厚みを有する平板状粒子乳剤を用いた多層カラー感光材料では、乳剤の溶解経時後の塗設における粒状性の悪化が改良され、製造適性に優れていることがわかる。
【0423】
【発明の効果】
本発明のハロゲン化銀写真乳剤は、感度を低下させることなく、溶解経時後の平板状ハロゲン化銀粒子の凝集が軽減されている。塗設における写真性能の悪化が改善されていて、製造適性にも優れている。
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸着バインダー層の厚みを制御した平板状ハロゲン化銀写真乳剤に関する。本発明は特に、平板状ハロゲン化銀粒子の凝集による性能の悪化を改良したハロゲン化銀写真乳剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
平板状ハロゲン化銀粒子に関してはすでに米国特許第4434226号明細書、同4439520号明細書、同4414310号明細書、同4433048号明細書、同4414306号明細書、同4459353号明細書等にその製法、および使用技術が開示されており、分光増感色素による色増感効率の向上を含む、感度/粒状性の関係改良等の利点が知られている。ハロゲン化銀粒子のアスペクト比を高くするほど高感度化に有効であるが、一方で、ハロゲン化銀粒子の凝集が問題となる。ここで、「凝集」とは2つ以上の平板状粒子が集まって、平板状粒子の主表面同士が合着して二次粒子を形成する現象で、平板状粒子のアスペクト比が高いほど、吸着色素量が多いほど、即ち吸着色素の粒子表面の被覆率が高いほど起こり易い。特に、増感色素がより吸着し易い沃化銀を組成に有するハロゲン化銀粒子、および赤感性及び緑感性のハロゲン化銀粒子において顕著である。この凝集は、粒状性の悪化、現像後の濃度低下、カブリ濃度の上昇等の写真性能の低下を引き起こす。この凝集現象はゼラチンのハロゲン化銀粒子からの脱着であることが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
平板状粒子表面のゼラチン層の厚みを原子間力顕微鏡(以下AFM)を用いて測定する方法が、Journal of Imaging Science and Technology 40巻(1996)に記載されている。該文献では吸着ゼラチン層の厚みは3nm〜5.9nmであり、粒子を過剰の増感色素にさらすと、粒子凝集が起こりAFM測定が不能になると報告されている。本発明者らが研究したところ、写真性能上適量の増感色素を添加した場合は、吸着ゼラチン層の厚みをAFMにより測定することができた。この吸着ゼラチン層の厚みと粒子凝集とは関連しており、ゼラチン層の厚みを制御し、平板状ハロゲン化銀粒子の凝集を防止する技術の開発が強く望まれていた。
【0004】
本発明の目的は高感度で、しかも粒子凝集が防止され安定に製造可能なハロゲン化銀写真乳剤を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] 粒子の全投影面積の50%以上がアスペクト比2以上であって、沃臭化銀、塩臭化銀、塩化銀もしくは塩沃臭化銀よりなる平板状ハロゲン化銀粒子で占められているハロゲン化銀写真乳剤であって、増感色素がハロゲン化銀粒子に対する飽和被覆量の60%以上吸着されて分光増感されており、かつ該粒子の主表面における吸着バインダー層の厚みが1.0nmより大きいことを特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。
[2] 粒子の全投影面積の50%以上がアスペクト比2以上の平板状ハロゲン化銀粒子で占められているハロゲン化銀写真乳剤であって、該乳剤は青感色性以外の増感色素がハロゲン化銀粒子に対する飽和被覆量の60%以上吸着して分光増感されており、かつ、該粒子の主表面における吸着バインダー層の厚みが1.0nmより大きいことを特徴とするロゲン化銀写真乳剤。
[3] 粒子の全投影面積の50%以上が沃臭化銀、塩臭化銀、塩化銀もしくは塩沃臭化銀よりなるアスペクト比2以上の平板状ハロゲン化銀粒子で占められているハロゲン化銀写真乳剤であって、該乳剤は増感色素がハロゲン化銀粒子に対する飽和被覆量の60%以上吸着して分光増感されており、かつ、該粒子の主表面における吸着バインダー層の厚みの増感色素の添加による減少率が50%未満であることを特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。
[4] 粒子の全投影面積の50%以上がアスペクト比2以上の平板状ハロゲン化銀粒子で占められているハロゲン化銀写真乳剤であって、該乳剤は青感色性以外の増感色素がハロゲン化銀粒子に対する飽和被覆量の60%以上吸着して分光増感されており、かつ、該粒子の主表面における吸着バインダー層の厚みの増感色素の添加による減少率が50%未満であることを特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。
[5] 前記ハロゲン化銀粒子の主表面における吸着バインダー層の厚みが2.0nm以上であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のハロゲン化銀写真乳剤。
[6] 前記ハロゲン化銀粒子の主表面における吸着バインダー層の厚みの増感色素の添加による減少率が40%未満であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載のハロゲン化銀写真乳剤。
[7] 粒子の全投影面積の50%以上が下記の(a)〜(d)を満たすことを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(a) 平行な主平面が(111)面、
(b) アスペクト比が2以上、
(c) 転位線を1粒子当り10本以上を含む、
(d) 塩化銀含有率が10mol%未満の沃臭化銀もしくは塩沃臭化銀よりなる平板状ハロゲン化銀粒子。
[8] 粒子の全投影面積の50%以上が下記の(a)、(d)および(e)を満たすことを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(a) 平行な主平面が(111)面、
(d) 塩化銀含有率が10mol%未満の沃臭化銀もしくは塩沃臭化銀よりなる平板状ハロゲン化銀粒子、
(e) 六角形ハロゲン化銀粒子の頂点部および/または側面部および/または主平面部に1粒子当り少なくとも1個のエピタキシャル接合を有する。
[9] 上記[1]〜[8]のいずれかに記載の乳剤を少なくとも1種含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0007】
本発明のハロゲン化銀写真乳剤は、増感色素により増感されているとともに、粒子の主表面における吸着バインダー層の厚みが所定の厚さを有する、または増感剤添加前後の吸着バインダー層の厚みの減少率が所定の範囲であることを特徴とする。本発明では、ハロゲン化銀粒子の主表面における吸着バインダー層の厚みを1.0nmより大きく維持することによって、または増感色素の添加による前記バインダー層の減少率を50%未満に維持することによって、高感度であるとともに、凝集が起こり難いハロゲン化銀写真乳剤としている。
【0008】
本発明において、「ハロゲン化銀粒子の主表面における吸着バインダー層の厚み」とは、原子間力顕微鏡(以下AFM)の測定値をいう。以下に、「ハロゲン化銀粒子の主表面における吸着バインダー層の厚み」の測定方法を詳細に説明する。
▲1▼測定試料の調製
銀原子として600μgに相当する乳剤を、50℃の臭化ナトリウム溶液(10mmol/L)6mLに分散する。40℃で遠心分離を行い、上澄みを除去して臭化ナトリウム溶液(10mmol/L)6mLに再分散する。これをシリコンウエハー(1cm×1cm)上に30μL載せ、1分間静置した後、自然乾燥させる(25℃)。ここまでの試料を試料Aとする。
粒子の吸着バインダー層がゼラチン層のように硬膜を形成し得る場合は、以下の手順でバインダー層を硬膜化させた後、ハロゲン化銀を除去し、残留したゼラチン殻の厚みを測定することができる。
試料Aをホルマリン10重量%水溶液に21℃で3分間浸漬し、次いでイオン交換水に1分間浸漬する。自然乾燥した後、チオ硫酸ナトリウム3重量%水溶液に21℃で5分間浸漬してハロゲン化銀を除去する。イオン交換水に1分間浸漬し自然乾燥させる(25℃)。この試料を試料Bとする。
【0009】
▲2▼AFMを用いた厚みの計測
上記試料B(または試料A)の高さ計測は、例えば、セイコーインスツルメンツ社製「SPI3800N」等を用いてタッピングモードで計測することができる。測定条件を以下に示す。
・ヘッド : SPA400
・カンチレバー : Si3N4製、先端の曲率半径約20nm
・押しつけ力 : 1nN
・スキャン範囲 : 20μm四方を1Hz、256×256点で測定。
AFM計測によって高さと横方向の長さの形状に関する情報(以下プロファイル)を得ることができる。1粒子当たり10以上のプロファイルを測定し、この面積平均で得られた高さの値を1/2倍することで片側の吸着バインダー層の厚みを算出する。これを1試料当たり60個以上の粒子で行い、さらに粒子間で平均値を求め測定試料の吸着バインダー層の厚みとする。
【0010】
上記測定を増感色素を添加したハロゲン化銀粒子について行うことにより、増感色素によって増感されたハロゲン化銀粒子の吸着バインダー層の厚みを確認でき、さらに増感色素を添加していないハロゲン化粒子についても行うことにより、増感色素を添加することによる前記吸着バインダー層の厚みの減少率を算出することができる。
【0011】
なお、後述する吸着バインダー層の厚みを増加させるための方法を、粒子形成終了後、脱塩工程以降に実施した場合、例えば、以下の方法で吸着バインダー層の厚みを算出することもできる。
先ず、粒子形成終了まで同時に調製した粒子を上記試料Aの状態で測定すれば、ハロゲン化銀自体の粒子厚みと吸着バインダー層の厚みの和(Ta1とする)を得ることができる。ハロゲン化銀自体の粒子厚み(Tc1とする)は、上記試料Bの状態で吸着バインダー層の厚み(Tb1とする)を求め、この値をTa1から引くことにより(Tc1=Ta1−Tb1)得られる。次に、後述する吸着バインダー層の厚みを増加させるための方法を実施した後の吸着バインダー層の厚み(Tb2)は、試料Aの状態でハロゲン化銀自体の粒子厚みと吸着バインダー層の厚みの和Ta2を測定し、粒子自身の厚みはTc1と共通であるから、Tb2=Ta2−Tc1で求められる。この様に、いずれのタイミングでバインダー層の厚みを厚くするための方法を実施した場合も、分光増感を施したハロゲン化銀粒子および施していないハロゲン化銀粒子について、吸着バインダー層の厚み(Tb2)を求めることができ、その変化率を算出することができる。
【0012】
本発明の一態様においては、粒子の主表面における吸着バインダー層の厚みは、上記の増感色素を添加していない粒子に対し添加した粒子の厚みの減少が50%未満である。厚みの減少は40%未満であることが好ましく、20%未満であることがさらに好ましい。
また、本発明の他の態様においては、増感色素を添加した粒子の主表面における吸着バインダー層の厚みは1.0nmより大きく、1.5nm以上であることが好ましく、2nm以上10nm以下であるのがさらに好ましい。
【0013】
次に、ハロゲン化銀粒子の吸着バインダー層の厚みを制御する(厚くするための)方法について説明する。
一般的に、増感色素を添加すると吸着バインダー層の厚みが減少するのは、増感色素がハロゲン化銀粒子に吸着することによって、それまで吸着していたバインダーが粒子から脱着するためと考えられる。従って、増感色素等の吸着を妨害せずに、かつ増感色素の吸着後も、バインダーが粒子から脱着するのを抑制することによって、吸着バインダー層の厚み変化を軽減させ、必要な厚みを維持することが可能となる。
具体的には、1)バインダーの全部または一部として、高分子量成分を増加させたゼラチンを使用する;2)バインダーの一部または全部として、ハロゲン化銀への吸着性官能基を導入した修飾ゼラチンを使用する;および3)バインダーの一部または全部として、ハロゲン化銀への吸着性官能基をもつ水溶性合成高分子を使用する;ことにより、吸着バインダー層の厚みを所定の範囲に維持することができる。これらの手段を2種以上組み合わせて実施することもでき、また、バインダーとして2種以上の性質を有する材料を用いることもできる。
【0014】
以下、前記1)〜3)の各方法について詳細に説明する。
1) 高分子量成分を増加させたゼラチンを使用する方法
ここで、「高分子量成分を増加させたゼラチン」とは、分子量約200万以上の高分子量成分が3%以上30%以下、かつ分子量約10万以下の低分子量成分が55%以下のゼラチンをいう。
本発明で用いるゼラチンの種類は特に限定されない。ゼラチンの主要な供給源としては、豚、牛類の皮と骨等が挙げられるが、好ましくは、牛骨から生産されるゼラチンである。その処理方法としては酸処理、アルカリ(石灰)処理、などが挙げられ、これらのいずれも用いることができるが、より好ましくはアルカリ(石灰)処理ゼラチンである。
【0015】
本発明におけるゼラチンの成分の比率、すなわち分子量分布は国際的に決められたPAGI法に準じて、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(以下「GPC法」と記す)で測定したものである。この方法に関しては大野隆司、小林裕幸、水澤伸也、 ”日本写真学会誌” 、47巻4号、1984年、237〜247頁等に詳述されている。
【0016】
前記1)のゼラチンの分子量分布は、以下の測定条件に基づいて測定された値をいう。
(測定条件)
カラム:Shodex Asahipak GS−620 7G(8mmI.D.×500mm)×2
ガードカラム:Shodex Asahipak GS−1G 7B
溶離液:0.1mmol/Lのりん酸二水素カリウム溶液と0.1mmol/Lのりん酸水素二ナトリウム溶液の等量混合液
流速:1.0mL/分
カラム温度:50℃
検出:UV230nm
サンプル濃度:0.2wt%
注入量:100μL
【0017】
横軸にリテンションタイム(Retention Time)を、縦軸に吸光度をとって得られるGPC曲線は、まず排除限界のピークが現われ、次にゼラチンのβ成分、α成分のピークが現われ、さらにリテンションタイムが長くなるにつれて裾を引くような形になる。
前記1)のゼラチンにおける分子量約200万以上の高分子量成分の占める割合は、排除限界のピークの面積の全体に占める割合を算出することにより求めることができる。具体的には、リテンションタイム17分位に現われるGPC曲線の極小点から横軸に対して垂線を引き、その垂線より高分子量側の部分(高分子量成分)の面積の全体の面積に占める割合を算出する。また、分子量約10万以下の低分子量成分の占める割合は、α成分以下の面積の全体に占める割合を算出することにより求める。具体的には、リテンションタイム23分位に現われるβ成分ピークとα成分ピークとの間のGPC曲線の極小点から横軸に対して垂線を引き、その垂線より低分子量側の部分(低分子量成分)の面積の全体の面積に占める割合を算出する。
【0018】
前記1)のゼラチンは、分子量約200万以上の高分子量成分が3%以上30%以下、かつ分子量約10万以下の低分子量成分が55%以下に制御されたものである。高分子量成分が30%を越えると濾過性が急激に悪化するため好ましくない。また、低分子量成分が55%を越える場合および/または高分子量成分が5%未満の場合には本発明の効果が充分に発現しない。本発明の効果を発現するためには、分子量約200万以上の高分子量成分が5%以上15%以下、かつ分子量約10万以下の低分子量成分が50%以下であることが特に好ましい。
【0019】
前記1)のゼラチンの製造法としては下記の▲1▼ゼラチンの架橋を行わない方法;および▲2▼ ゼラチン架橋剤を用いる方法;の二つに大別される。
▲1▼ ゼラチンの架橋を行わない方法
例えば下記のような方法が用いられる。
製法1−1: 一般的なゼラチン製法中の抽出操作で得られる抽出液のうち、抽出後期のゼラチン抽出液を使用して、抽出初期のゼラチン抽出液を排除する。
製法1−2: 一般的なゼラチン製法中、抽出以後乾燥までの製造工程において処理温度を40℃未満とする。
製法1−3: ゼラチンゲルを冷水(15℃)透析[ザ・ジャーナル・オブ・フォトグラフィックサイエンス(The Journal of Photographic Science)、23巻33頁(1975)参照]により製造する。
製法1−4: イソプロピルアルコールの使用による分画法[ディスカッションズ・オブ・ザ・フアラディ・ソサイエティ(Discussions of the Faraday Society)、18巻、288頁(1954)参照]により製造する。
これら1−1〜4の製法を、単独もしくは組み合わせることにより、前記1)のゼラチンを製造することができる。
【0020】
▲2▼ ゼラチン架橋剤を用いる方法
前記1)のゼラチンは、ゼラチンを架橋し、分子量分布を制御することによって製造することができ、架橋により分子量制御されたゼラチンを用いるのが好ましい。架橋方法としては酵素によってゼラチン分子間の架橋する方法と、架橋剤を添加して架橋剤がゼラチン分子間に化学結合を作ってゼラチン分子を架橋する方法との二つがある。
【0021】
酵素による架橋方法の代表的な例として、トランスグルタミナーゼによる架橋方法について詳細に説明する。トランスグルタミナーゼ酵素は、蛋白質であるゼラチンのグルタミン残基のγ−カルボキシアミド基と各種一級アミンとの間のアシル転移反応を触媒する機能によってゼラチンを架橋することができる。トランスグルタミナーゼは動物由来、植物由来、微生物由来のものがあり、例えば、動物由来のものとしては、モルモットの肝臓などの哺乳類の臓器、血液より抽出したもの;また、植物由来のものとしては、エンドウ豆より抽出したもの;微生物由来のものとしては、放線菌より抽出したもの;がある。本発明ではトランスグルタミナーゼ活性を示すものであれば、どの様な起源のものも好ましく用いることができる。
【0022】
本発明で用いられるトランスグルタミナーゼは、例えばClark 等の方法(Achives of Biochemistry and Biophysics, 79, 338 (1959))、Connel等の方法(J.Bilogical Chemistry, 246 (1971))、特開平4−207149号公報記載の方法、特開平6−30770号公報記載の方法のいずれで合成されたものでも好ましく用いることができる。これらのトランスグルタミナーゼとしては、商品名アクテバ(味の素(株)製)が挙げられる。本発明で用いられるトランスグルタミナーゼ活性は、ベンジルオキシカルボニルLグルタミニルグリシンとヒドロキシアミンを反応させ、生成したヒドロキサム酸の量を求めることにより測定できる。この測定により、1分間に1×10−6molのヒドリキサム酸を生成するトランスグルタミナーゼ活性を、1ユニット(unit)とする。本発明で用いられるトランスグルタミナーゼは、使用されるゼラチンによって異なるが、ゼラチン1gに対して1×10−6mol以上のヒドロキサム酸を生成する量を添加して、分子量分布を制御するのが好ましい。
【0023】
架橋剤によりゼラチンを架橋する方法としては、これまでゼラチンの硬化剤として知られている架橋剤は全て使用することができる。以下にその代表的な化合物をあげる。
A.無機架橋剤(無機硬膜剤)
A−1 カチオン性のクロム錯
配位子としてはヒドロキシル基、シュウ酸基、クエン酸基、マロン酸基、乳酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、硫酸塩、塩化物、硝酸塩が挙げられる。
A−2 アルミニウム塩
特に硫酸塩、カリみょうばん、アンモニウムみょうばんが好ましい。
上記の化合物はゼラチンのカルボキシル基を架橋する。
【0024】
B.有機架橋剤(有機硬膜剤)
B−1 アルデヒド系架橋剤
最もよく用いられるのはホルムアルデヒドである。またジアルデヒドでも有効な架橋ができ、その例としてはグリオキザール、スクシンアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが有効である。ジグリコアルデヒドや種々の芳香族ジアルデヒド、またジアルデヒドスターチ、植物ガムのジアルデヒド誘導体も用いられる。
B−2 N−メチロール化合物およびその他の保護されたアルデヒド架橋剤
ホルムアルデヒドと種々の脂肪族直鎖もしくは環状のアミド、尿素、含窒素ヘテロ環との縮合によって得られるN−メチロール化合物である。具体的には2,3−ジヒドロキジオキサン、ジアルデヒドとそのヘミアセタールの酢酸エステル、2,5−メトキシテトラヒドロフラン等が挙げられる。
B−3 ケトン架橋剤
ジケトン、キノン類の化合物である。よく知られているジケトンとして、2,3−ブタンジオン、CH3COCOCH3などが挙げられる。キノンとしては、p−ベンゾキノンがよく知られている。
B−4 スルホン酸エステルとスルホニルハライド
代表的化合物としてビス(スルホニルクロリド)類およびビス(スルホニルフロリド)類がある。
【0025】
B−5 活性ハロゲン化合物
2個以上の活性ハロゲン原子をもつ化合物である。代表的化合物としてケトン、エステル、アミドの単純なビス−α−クロロ或いはビス−α−ブロモ誘導体、ビス(2−クロロエチル尿素)、ビス(2−クロロエチル)スルフォン、ホスホールアミジックハライド等が挙げられる。
B−6 エポキサイド
ブタジェンジオキサイドが代表的化合物として挙げられる。
B−7 活性オレフィン
2個以上の二重結合、特に隣接する電子吸引基によって活性化された無置換ビニル基をもつ多くの化合物はゼラチンの架橋剤として有効である。この化合物の例としては、ジビニルケトン、レゾルシノールビス(ビニルスルホナート)、4,6−ビス(ビニルスルホナート)、4,6−ビス(ビニルスルホニル)−m−キシレン、ビス(ビニルスルホニルアルキル)エーテルまたはアミン、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、ジアクリルアミド、1,3−ビス(アクリロイル)尿素等が挙げられる。
【0026】
B−8 s−トリアジン系化合物:下記一般式(H−I)で表される化合物
【0027】
【化1】
【0028】
式中、R1は水酸基、−OM基(Mは1価の金属原子)、炭素数1〜10のアルキル基(例えばメチル、エチル、2−エチルヘキシル)、−N(R2)(R3)基(R2およびR3はそれぞれ炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基を表し、互いに同じであっても異なってもよい)、−NHCOR4(R4は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜20アリールチオ基を表わす)、または炭素数1〜20のアルコキシ基を表わす。
前記一般式(H−I)で示されるシアヌルクロリド系硬膜剤については、特公昭47−6151号公報、同47−33380号公報、同54−25411号公報、特開昭56−130740号公報に詳細な記載がある。また一般式(H−I)の化合物と類似した構造を持つ特公昭53−2726号公報、特開昭50−61219号公報、同56−27135号公報等に記載されている化合物も本発明に有用である。
【0029】
B−9 ビニルスルホン系化合物:下記一般式(H−II)で表される化合物
【0030】
【化2】
【0031】
上記一般式中、X1およびX2は−CH=CH2または−CH2CH2Yを表し、X1およびX2は同じであっても異なってもよい。Yは求核性基により置換されるか、塩基によってHYの形で脱離し得る基(例えば、ハロゲン原子、スルホニルオキシ、硫酸モノエステル等)を表す。Lは2価の連結基であり、置換されていてもよい。
一般式(H−II)で表わされるビニルスルホン系硬膜剤については、例えば特公昭47−24259号公報、同50−35807号公報、特開昭49−24435号公報、同53−41221号公報、同59−18944号公報等の公報に詳細な記載がある。
【0032】
B−10 カルバモイルアンモニウム塩:下記一般式(H−III)で表される化合物
【0033】
【化3】
【0034】
式中、R1およびR2は炭素数1〜10のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、2−エチルヘキシル基など)、炭素数6〜15のアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基など)、または炭素数7〜15のアラルキル基(例えばベンジル基、フェネチル基など)を表わし、互いに同じであっても異なってもよい。またR1およびR2は互いに結合して窒素原子と共に複素環を形成することも好ましい。X−は陰イオンを表わす。
一般式(H−III)で表わされるカルバモイルアンモニウム塩系硬膜剤についての詳細な記載は、特公昭56−12853号公報、同58−32699号公報、特開昭49−51945号公報、同51−59625号公報、同61−9641号公報に詳しい。
【0035】
B−11 下記一般式(H−IV)で表される化合物
【0036】
【化4】
【0037】
R1、R2、R3およびX−の定義は一般式(H−III)における定義と全く同様であり、これらの化合物はベルギー特許第825,726号明細書に詳しい。
【0038】
B−12 アミジニウム塩系化合物:下記一般式(H−V)で表される化合物
【0039】
【化5】
【0040】
R1、R2、R3およびR4は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基、または炭素数6〜20のアリール基であり、それぞれ同じであっても異なってもよい。Yは前記一般式(H−V)で表わされる化合物が求核試薬と反応した際に脱離し得る基を表わし、好ましい例としてハロゲン原子、スルホニルオキシ基、1−ピリジニウミル基等を挙げられる。X−は陰イオンを表わす。一般式(H−V)で表わされるアミジニウム塩系硬膜剤については特開昭60−225148号公報に詳細な記述がある。
【0041】
B−13 カルボジイミド系化合物;下記一般式(H−VI)で表される化合物
【0042】
【化6】
【0043】
式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基(例えばメチル基、エチル基など)、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数3〜10のアルコキシアルキル基、または炭素数7〜15のアラルキル基を表わす。R2はR1に定義された基を表わす。
これらのカルボジイミド系硬膜剤については、特開昭51−126125号公報、同52−48311号公報に詳しい。
【0044】
B−14 リジニウム塩基系化合物;下記一般式(H−VII)で表される化合物
【0045】
【化7】
【0046】
式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、または炭素数7〜15のアラルキル基を表わす。これらの基は置換されてもよい。R2およびR3は水素原子、ハロゲン原子、アシルアミド基、ニトロ基、カルバモイル基、ウレイド基、アルコキシ基、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはアラルキル基などの置換基を表わし、それぞれ同じであっても異なってもよい。またR2とR3が結合してピリジニウム環骨格と共に縮合環を形成することも好ましい。Yは一般式(H−VII)で表わされる化合物が求核試薬と反応した際に脱離し得る基を表わす。X−は陰イオンを表わす。
これらのピリジニウム塩基硬膜剤については、特公昭58−50699号公報、特開昭57−44140号公報、同57−46538号公報に詳細な記載がある。
【0047】
B−15 ピリジニウム塩系化合物;下記一般式(H−VIII)で表される化合物
【0048】
【化8】
【0049】
式中、R1およびR2の定義は、前記一般式(H−III)におけるR1およびR2の定義と全く同様であり、R3は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基または炭素数7〜15のアラルキル基を表わす。X−は陰イオンを表わす。
一般式(H−VIII)で表わされるピリジニウム塩系硬膜剤については特開昭52−54427号公報に詳しく記載されている。
【0050】
本発明に用いられる硬膜剤(架橋剤)としては、前記の一般式(H−I)〜一般式(H−VIII) で表わされる化合物の他にも、特開昭50−38540号公報、同52−93470号公報、同56−43353号公報、同58−113929号公報、米国特許第3,321,313号明細書に記載された化合物等も好ましい。
【0051】
以下に本発明にゼラチンの架橋剤として使用可能な化合物の具体例を分類して挙げるが、本発明は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。
【0052】
【化9】
【0053】
【化10】
【0054】
架橋されたゼラチンは、上記架橋剤をゼラチン溶液に添加して、ゼラチン分子間に架橋を起こさせることによって製造することができる。その際の条件は、各架橋剤によって異なるが、一定の反応温度と反応時間を設定して、GPC法によってゼラチンの分子量分布を測定することによって、適切な反応条件を決定することができる。その際、ゼラチン溶液の粘度を測定することで架橋の進行を追跡することができる。添加された架橋剤は、全部を反応させることが望ましいが、未反応で残った場合は、架橋反応後ゼラチン溶液の限外濾過などにより残存した架橋剤を除去することができる。本発明のゼラチンの分子量分布は、架橋剤の添加量や架橋反応の温度、時間、pH等の架橋反応の条件を調節することにより制御できる。
【0055】
前記高分子量のゼラチンとしては、上記の架橋剤いずれか1種または2種以上を組み合わせて架橋されたゼラチンを好ましく用いることができる。前記一般式(H−I)で表されるs−トリアジン系化合物、前記一般式(H−II)で表されるビニルスルホン系化合物、前記一般式(H−III)で表されるカルバモイルアンモニウム塩または前記一般式(H−VI)で表されるカルボジイミド系化合物を用いて架橋されたゼラチンが好ましい。特に、写真性能への影響が少ない点で、前記一般式(H−II)で表されるビニルスルホン系化合物が好ましい。
【0056】
前記高分子量のゼラチンの製造に用いる元ゼラチンとしては、アルカリ処理ゼラチン、酸処理ゼラチンのいずれも使用可能だが、写真性能に悪影響を及ぼす不純物含量が少ない点でアルカリ処理ゼラチンがより好ましい。特に不純物イオンや不純物を除去する脱イオン処理や限外濾過処理を施したアルカリ処理ゼラチンを用いることが好ましい。また、本発明において好ましく用いられる架橋されたゼラチンの元ゼラチンとしても、アルカリ処理ゼラチンが好ましい。
【0057】
2)ハロゲン化銀への吸着性官能基を導入した修飾ゼラチンを使用する方法
本発明に使用可能な修飾ゼラチンは、好ましくは、ゼラチンと、メルカプト基を有する含窒素芳香族環を含み、ゼラチン中の反応性基と共有結合を形成し得る化合物、とを反応させて得られる修飾ゼラチンであって、ゼラチン中における上記化合物の導入量がゼラチン100g当たり1.0×10−6mol以上2.0×10−3mol以下であることを特徴とする修飾ゼラチンである。
【0058】
ゼラチンの修飾は、メルカプト基を有する含窒素芳香族環を含み、ゼラチン中の反応性基と共有結合を形成しうる化合物を用いる。含窒素芳香族環とは、具体的には単環または縮環の含窒素芳香族ヘテロ環であり、好ましくは5〜7員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは5〜6員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、例えば、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、セレナゾール、ベンズトリアゾール、ベンズチアゾール、ベンズオキサゾール、ベンズセレナゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、ナフトチアゾール、ナフトオキサゾール、アザベンズイミダゾール、プリン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアザインデン、テトラザインデン等があげられ、更に好ましくは、5員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、具体的にはイミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズトリアゾール、ベンズチアゾール、ベンズオキサゾール、チアジアゾール、オキサジアゾールが好ましく、特に好ましくは、トリアゾール、テトラゾールであり、最も好ましくはテトラゾールである。ゼラチン中の反応性基と共有結合を形成しうる化合物とは具体的には、ゼラチン又はゼラチン誘導体中に含まれる反応性基(例えば、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、メルカプト基などが挙げられる)と共有結合を形成する基を有する化合物である。このような共有結合を形成する基の具体例については後述する。
【0059】
本発明の修飾ゼラチンでは、ゼラチン中における、ゼラチン中の反応性基と共有結合を形成しうる化合物の導入量がゼラチン100g当たり1.0×10−6mol以上2.0×10−3mol以下であり、好ましくは1.0×10−6mol以上1.5×10−3mol以下であり、より好ましくは1.0×10−6mol以上1.0×10−3mol以下である。上記化合物の導入量を上記範囲に限定することにより、ハロゲン化銀写真感光材料の感度を低下せずに、かぶり濃度の上昇を抑制することができ、さらに乳剤の溶解経時後のハロゲン化銀粒子の凝集抑制効果を発揮することにより、塗設における写真性能の悪化が改良され、製造適性に優れたハロゲン化銀写真乳剤を調製することが可能になる。
【0060】
本発明の修飾ゼラチンは、好ましくは下記一般式(I)で表される化合物である。以下、一般式(I)について詳しく説明する。
【0061】
【化11】
【0062】
前記一般式(I)において、Gelはゼラチンを表す。ゼラチンの種類は本明細書中上記した通りである。ゼラチンは、ゼラチン中の化学反応性基が残存していれば、ゼラチンが一般式(I)の修飾基以外の他の官能基で修飾されていてもよい。例えばビス−(ビニルスルホニル)化合物またはカルボキシル基を活性化し、ゼラチンを架橋し得る化合物を用いて製造された水可溶性鎖延長ゼラチン、フタル化ゼラチン、コハク化ゼラチン、トリメリット化ゼラチン、ピロメリット化ゼラチン、酵素処理低分子量ゼラチン(分子量2000〜100,000)等が挙げられ、これらを2種類以上混合してもよい。
【0063】
L1はゼラチン中に存在する反応性基のうち、−C(=O)O−、−NH−、−N=、−N<、−O−、−S−、−NH−C(=NH2 +)NH−又は−NH−C(=NH)NH−から選ばれる基を表し、具体的にはゼラチン分子中に含まれる化学反応性基として、リジン、ヒドロキシリジンまたはオルニチン残基の側鎖のアミノ基、グルタミン酸やアスパラギン酸残基の側鎖のカルボキシル基、セリン、スレオニン、ヒドロキシリジンまたはヒドロキシプロリン残基側鎖のヒドロキシル基、システイン残基側鎖のメルカプト基、チロシン残基側鎖のフェノール性水酸基、ヒスチジン残基側鎖のイミダゾール基、アルギニン残基側鎖のグアニジノ基、ポリペプチドの末端にあるアミノ酸のアミノ基、カルボキシル基等に由来するものが挙げられる。L1として好ましくは−NH−、−N=、−O−であり、より好ましくは−NH−、−N=であり、最も好ましくは−NH−である。
【0064】
L2は2価または3価の連結基を表し、好ましくは炭素数1〜20の2価の連結基を表す。L1が−N=である場合、L2は3価の連結基であり、L1との連結部分が例えば=CH−となる。
L2が表す2価の連結基の具体例としては、炭素数1〜20のアルキレン基(例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、キシリレンなど)、炭素数6〜20のアリーレン基(例えばフェニレン、ナフチレンなど)、カルボニル基、スルホン基、スルホキシド基、エーテル基、エステル基、またはアミド基を単独あるいは2つ以上を組み合わせて得られる基が挙げられる。
L2として好ましくは炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、カルボニル基、スルホン基、スルホキシド基、エーテル基、エステル基、またはアミド基を単独あるいは2つ以上を組み合わせて得られる基であり、具体例を以下に示す。
【0065】
【化12】
【0066】
これらは、L1に対して左右いずれの向きで結合してもよいが、左側がL1と結合するのが好ましい。
L2は可能な場合には更に置換基を有していてもよく、置換基としては例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。)、置換又は未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、
【0067】
アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、
【0068】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0069】
nは1あるいは2の整数を表し、好ましくは1である。
Zは、含窒素芳香族ヘテロ環基を表し、具体的には単環または縮環の含窒素芳香族ヘテロ環を表し、好ましくは5〜7員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは5〜6員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、例えば、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、セレナゾール、ベンズトリアゾール、ベンズチアゾール、ベンズオキサゾール、ベンズセレナゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、ナフトチアゾール、ナフトオキサゾール、アザベンズイミダゾール、プリン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアザインデン、テトラザインデン等があげられ、更に好ましくは、5員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、具体的にはイミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズトリアゾール、ベンズチアゾール、ベンズオキサゾール、チアジアゾール、オキサジアゾールが好ましく、特に好ましくは、トリアゾール、テトラゾールであり、最も好ましくはテトラゾールである。
Zで表される含窒素芳香族ヘテロ環は可能な場合には更に置換基を有してもよく、置換基としては、前期一般式(I)のL2の置換基として挙げたものが適用できる。
【0070】
前期一般式(I)における−L2−Z−SHで表される修飾基の導入量は、乾燥したゼラチン100gに対して1.0×10−6mol以上2.0×10−3mol以下であるのが好ましく、より好ましくは1.0×10−6mol以上1.5×10−3mol以下であり、さらに好ましくは1.0×10−6mol以上1.0×10−3mol以下である。この範囲とすることにより、ハロゲン化銀写真感光材料の感度を低下せずに、かぶり濃度の上昇を抑制することができ、さらに乳剤の溶解経時後のハロゲン化銀粒子の凝集抑制効果を発揮することにより、塗設における写真性能の悪化が改良され、製造適性に優れたハロゲン化銀写真乳剤を調製することが可能になる。
【0071】
前期一般式(I)で表される修飾ゼラチンの中でも、下記一般式(II)で表される修飾ゼラチンがより好ましい。
【0072】
【化13】
一般式(II)において、Gel、L1およびnはそれぞれ一般式(I)におけるそれらと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。
一般式(II)において、L2Bは2価または3価の連結基を表し、好ましくは炭素数1〜14の2価の連結基を表わす。具体的には炭素数1〜14のアルキレン基(例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、キシリレンなど)、炭素数6〜14のアリーレン基(例えばフェニレン、ナフチレンなど)、カルボニル基、スルホン基、スルホキシド基、エーテル基、エステル基、またはアミド基を単独あるいは2つ以上を組み合わせて得られる基である。L2Bとして好ましくは炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、カルボニル基、スルホン基、スルホキシド基、エーテル基、エステル基、またはアミド基を単独あるいは2つ以上を組み合わせて得られる基である。具体的には、先のL2で例示した基が挙げられる。
【0073】
R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立に水素原子あるいは置換基を表し、置換基としては一般式(I)におけるL2の置換基として挙げたものが適用できる。
R1、R2、R3およびR4として好ましくはアルキル基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、ヒドロキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、カルボキシル基、ニトロ基、水素原子であり、より好ましくはアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、水素原子であり、更に好ましくは水素原子である。
【0074】
一般式(II)において、括弧内に表される修飾基の導入量は乾燥ゼラチン100gに対して1.0×10−6mol以上2.0×10−3mol以下であるのが好ましく、より好ましくは1.0×10−6mol以上1.5×10−3mol以下であり、さらに好ましくは1.0×10−6以上1.0×10−3mol以下である。この範囲とすることにより、ハロゲン化銀写真感光材料の感度を低下せずに、かぶり濃度の上昇を抑制することができ、さらに乳剤の溶解経時後のハロゲン化銀粒子の凝集抑制効果を発揮することにより、塗設における写真性能の悪化が改良され、製造適性に優れたハロゲン化銀写真乳剤を調製することが可能になる。
【0075】
次に、本発明で用いる修飾ゼラチン(好ましくは、一般式(I)又は(II)で表される修飾ゼラチン)の一般的合成法の一例を示すが、これらに限定されるものではない。
本発明で用いる修飾ゼラチンは、ゼラチンあるいはゼラチン誘導体中に含まれる反応性基(例えば、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、メルカプト基などが挙げられる。)と、それらと共有結合を形成する基を有する化合物を水、あるいは水を含む有機溶媒中で反応させることによって合成することができる。
【0076】
反応温度としては、30〜80℃が好ましく、より好ましくは30〜70℃であり、更に好ましくは40〜70℃であり、特に好ましくは45〜65℃である。
反応pH値としては5.0〜11.0が好ましく、より好ましく5.0〜10.0であり、更に好ましくは6.0〜9.0であり、特に好ましくは、6.5〜8.5である。
反応溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、アセトンなどに水をを混合したもの、または水が好ましい。
反応溶媒中のゼラチン固形分濃度としては、0.1〜40質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜30質量%であり、更に好ましくは3〜30質量%であり、特に好ましくは、5〜30質量%である。
【0077】
ゼラチン中に含まれる反応性基と共有結合を形成することができる基としては、特開昭51−117619号公報、T. H. James「THE THEORY OF THE PHOTOGRAPHIC PROCESS 第4版」マクミラン出版、ニューヨーク、2章III節(1977年)、A. G. Ward、A. Courts、「The Science and Technology of Gelatin」第7章Academic Press(1977年)の記載を参考にすることができる。ゼラチン中に含まれる反応性基と共有結合を形成することができる基として、具体的にはアルデヒド基、アセタール基、エポキシ基、イソシアネート基、活性ハロゲン基(例えばハロゲノメチレンカルボニル基、ハロゲノメチレンカルボニルオキシ基、ハロゲノメチレンカルボンアミド基、ハロゲノメチレンスルホニル基、ハロゲノメチレンスルホンアミド基、ジハロゲノ−S−トリアジン基などがある。)、活性エステル(例えば下記)、
【0078】
【化14】
エチレンイミノ基、活性オレフィン基(例えばビニルスルホニル基、ビニルスルホンアミド基、ビニルカルボニル基、ビニルカルボンアミド基、ビニルカルボニルオキシ基などがある。)、酸ハライド(例えばカルボン酸クロリド、スルホン酸クロリドなどがある。)、スルホン酸エステル、酸無水物(例えば、コハク酸無水物、フタル酸無水物などがある。)、イソチオシアネート基、カルボン酸を縮合剤で活性化したもの、スルホン酸を縮合剤で活性化したもの、リン酸を縮合剤で活性化したもの等が挙げられる。
【0079】
カルボン酸、スルホン酸およびリン酸等を活性化する縮合剤としては、カルボジイミド(例えばN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、 N,N−ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)、N−シクロへキシル−N’−[2−(N−メチル−ピペリジニノエチル)カルボジイミド・メソ−p−トルエンスルホン酸]等がある。)、カルボニルジイミダゾール、スルホニルクロライド(例えばトリイソプロピルベンゼンスルホニルクロライドなどがある。)、蟻酸クロライド(例えば、クロロ蟻酸イソブチル、クロロ蟻酸エチルなどがある。)、ホスホニルクロライド(例えばベンゾトリアゾリル−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP試薬)などがある。)、ウロニウム塩(O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェートなどがある。)、カルバモイルアンモニウム塩(例えば4−(2−スルホナトエチル)−1−モルホニルカルボニルピリジニウムなどがある。)、カルベニウムクロライド塩(例えばクロロビス(モルホリノ)カルベニウムクロライドヘキサフルオロホスフェートなどがある。)などが挙げられるが、カルボン酸、スルホン酸およびリン酸等の酸とアミノ基あるいはヒドロキシル基を結合させ酸アミド結合あるいはエステル結合を形成させる縮合剤であれば何でもよい。また、これらの縮合剤を用いて他の活性エステルへ変換してもよい。
縮合剤として好ましくはカルボジイミドであり、より好ましくは水溶性のカルボジイミドであり、更に好ましくはWSCである。
【0080】
ゼラチン中に含まれる反応性基と共有結合を形成することができる基として好ましいのは、エポキシ基、活性オレフィン基、活性エステル基、カルボン酸を縮合剤で活性化したものであり、より好ましくはエポキシ基、ビニルスルホニル基、ビニルカルボニル基、ビニルカルボンアミド基、ビニルカルボニルオキシ基、カルボン酸をカルボジイミドを用いて活性化したものであり、更に好ましくはカルボン酸をカルボジイミドを用いて活性化したものである。
【0081】
以下にゼラチン中に含まれる反応性基と直接反応し、一般式(I)または(II)で表される修飾ゼラチンを形成する化合物、またはゼラチン中に含まれる反応性基と、縮合剤を用いて活性化した後に反応し、一般式(I)または(II)で表される修飾ゼラチンを形成する化合物の具体例を示すが、本発明で用いる化合物はこれに限定されるものではない。
【0082】
【化15】
【0083】
【化16】
【0084】
【化17】
【0085】
本発明の修飾ゼラチンはハロゲン化銀写真感光材料の親水性コロイド層(例えばハロゲン化銀乳剤層および非感光性親水性コロイド層)の少なくとも1層に含有して使用することができる。本発明の修飾ゼラチンを含有する層は好ましくは、ハロゲン化銀乳剤層およびその隣接親水性コロイド層の少なくとも1層であり、特に好ましい層はハロゲン化銀乳剤層である。さらに本発明の修飾ゼラチンの添加時期はハロゲン化銀乳剤の調製時であることがより好ましく、粒子形成過程、化学熟成過程、化学熟成終了後の何れであってもよい。粒子形成過程で添加することが最も好ましい。本発明の修飾ゼラチンは水または親水性有機溶媒(例えばメタノール、N,N−ジメチルホルムアミド)に溶解して添加される。
【0086】
3)吸着性官能基をもつ水溶性合成高分子を使用する方法
本発明に使用可能な前記水溶性合成高分子は、下記一般式(1)で表されるメルカプト基を有する含窒素芳香族環を部分構造として有することが好ましい。
一般式(1)
Z−SH
【0087】
前記一般式(1)中、Zで表される含窒素芳香族環とは、具体的には単環または縮環の含窒素芳香族ヘテロ環であり、好ましくは5〜7員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは5または6員の含窒素芳香族ヘテロ環である。具体的には、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、セレナゾール、ベンズトリアゾール、ベンズチアゾール、ベンズオキサゾール、ベンズセレナゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、ナフトチアゾール、ナフトオキサゾール、アザベンズイミダゾール、プリン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアザインデン、テトラザインデン等が挙げられる。さらに好ましくは、5員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、具体的にはイミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズトリアゾール、ベンズチアゾール、ベンズオキサゾール、チアジアゾール、オキサジアゾールが挙げられる。特に好ましくは、トリアゾール、テトラゾールであり、最も好ましくはテトラゾールである。
【0088】
本明細書において、「水溶性高分子」とは、水に0.5質量%以上溶解する高分子のことをいい、好ましくは1.0質量%以上溶解する高分子、より好ましくは2.0質量%以上溶解する高分子、さらに好ましくは4.0質量%以上溶解する高分子である。
【0089】
前記水溶性合成高分子は、前記一般式(1)で表されるメルカプト基を、平均で2個/(ポリマー鎖1本)以下含有することが好ましい。ポリマー鎖1本当たり平均で、より好ましくは0.01〜1.5個、さらに好ましくは0.1〜2個、よりさらに好ましくは0.1〜1.8個、特に好ましくは0.2〜1.5個、最も好ましくは1個以下である。ここで、ポリマー鎖1本当たりのメルカプト基の個数は、ポリエチレンオキサイドを基準物質としてGPC測定を行った際のポリマーの数平均分子量Mnから求めた水溶性合成高分子水溶液のモル濃度AMnと、ポリマー水溶液中のメルカプト基を有する含窒素芳香族環のUV吸光度から求めたモル濃度Quvとを測定し、Quv/AMnの値として求められる。即ち、本発明のポリマーは、Quv/AMnが2以下であるのが好ましく、1以下であるのがより好ましい。メルカプト基の導入量が上記範囲であると、ハロゲン化銀写真感光材料の感度を低下せずに、カブリ濃度の上昇をより抑制することができ、さらに乳剤の溶解経時後のハロゲン化銀粒子の凝集抑制効果をより発揮する。その結果、塗設における写真性能の悪化が改良され、製造適性がより優れたハロゲン化銀乳剤を調製することが可能になる。
【0090】
前記水溶性合成高分子は、前記一般式(1)で表されるメルカプト基が、ポリマーの片末端に導入されていることが好ましい。
【0091】
前記水溶性合成高分子の好ましい態様は、下記一般式(2)で表される。
【0092】
【化18】
【0093】
式中、Y1およびY2は、Xの末端基であり、少なくとも一方はSH−Z−L1−を表し、一方がSH−Z−L1−を表すとき、他方は水素原子を表す。Zは一般式(1)中で表されるそれと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0094】
L1は2価の連結基または単結合を表し、2価の連結基または単結合であれば特に制限はないが、L1として好ましくは炭素数0〜20の2価の連結基である。
具体的には炭素数1〜20のアルキレン基(例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、キシリレンなど)、炭素数6〜20のアリーレン基(例えばフェニレン、ナフチレンなど)、−C(=O)−、−S(=O)2−、−S(=O)−、−S−、−O−、−P(=O)O−−、−P(=O)O−−、−P(=O)ORa−、−NRa−(Raは水素原子または置換基を表し、置換基としては後述の置換基Tとしてあげたものが適用できる)、−N=、芳香族へテロ環基、またはこれらを2種以上組み合わせて得られる炭素数0〜20の2価の連結基である。具体例を以下に示す。
【0095】
【化19】
【0096】
これらは、Zに対して左右いずれの向きで結合していてもよいが、左側がZと結合するのが好ましい。
【0097】
L1は可能な場合にはさらに置換基Tを有していてもよく、置換基Tとしては例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、イソ−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる)、置換または未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる)、
【0098】
アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる)、
【0099】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基はさらに置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0100】
前記一般式(2)中、Xはエチレン性不飽和結合を有するモノマーの単独重合体又は共重合体の基を表し、共重合体である場合は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体およびグラフト共重合体のいずれの形態であってもよい。また、Xが共重合体である場合は、L1と共有結合を形成するモノマーがいずれになるかについても特に限定されない。
【0101】
Xは、エチレン性不飽和結合を有するモノマーユニット(以下モノマー)を少なくとも1種含む。前記モノマーとしては、重合可能なモノマーであれば特に制限はなく、ラジカル重合またはイオン重合法で重合可能なモノマーのいずれも用いることができる。Xのモノマーとしては、その単独重合体が水溶性となるモノマーが好ましい。Xの水溶性を損なわない限り、Xは複数のモノマーの共重合体であってもよい。
【0102】
単独重合体が水溶性となるモノマーとしては、以下のモノマー群(k)が挙げられ、いずれもXのモノマーとして好ましく用いられる。
(k)アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルピペリジン、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メタクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド、ジアセトンアクリルアミド、ω−メトキシポリエチレングリコールアクリレート(付加mol数n=9)、ω−メトキシポリエチレングリコールアクリレート(付加mol数n=23)、N−メトキシエチルアクリルアミド等。
【0103】
Xが共重合体である場合は、前述の(k)のモノマー群のいずれか少なくとも1種と、下記に示すモノマー群(a)〜(j)等のいずれか少なくとも1種との共重合体が好ましい。なお、前述の(k)モノマー群の属するモノマーであっても、(a)〜(j)モノマー群に属するものは、重複して列挙した。
【0104】
−モノマー群(a)〜(i)−
(a)共役ジエン:1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2‐n‐プロピル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1−α−ナフチル−1,3−ブタジエン、1−β−ナフチル−1,3−ブタジエン、2‐クロロ1,3−ブタジエン、1−ブロム−1,3−ブタジエン、1‐クロロ1,3−ブタジエン、2‐フルオロ‐1,3−ブタジエン、2,3−ジクロロ1,3−ブタジエン、1,1,2−トリクロロ1,3−ブタジエン、2‐シアノ−1,3−ブタジエン、シクロペンタジエン等、
(b) オレフィン:エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、6−ヒドロキシ−1−ヘキセン、4−ペンテン酸、8−ノネン酸メチル、ビニルスルホン酸、トリメチルビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、1,4−ジビニルシクロヘキサン、1,2,5−トリビニルシクロヘキサン等、
【0105】
(c) α,β−不飽和カルボン酸エステル類:アルキルアクリレート(例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート等)、置換アルキルアクリレート(例えば、2−クロロエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート等)、アルキルメタクリレート(例えば、メチルメタクリレート、ブチルメタクリ−レート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート等)、置換アルキルメタクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、グリセリンモノメタクリレート、2−アセトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(ポリオキシプロピレンの付加mol数=2〜100のもの)、3−N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、クロロ−3−N,N,N−トリメチルアンモニオプロピルメタクリレート、2−カルボキシエチルメタクリレート、3−スルホプロピルメタクリレート、4−オキシスルホブチルメタクリレート、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、アリルメタクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート等)、不飽和ジカルボン酸の誘導体(例えば、マレイン酸モノブチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸ジブチル等)、多官能エステル類(例えばエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラメタクリレート等)、
【0106】
(d) β−不飽和カルボン酸のアミド類:例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−tertブチルアクリルアミド、N−tertオクチルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド、N−アクリロイルモルフォリン、ジアセトンアクリルアミド、イタコン酸ジアミド、N−メチルマレイミド、2−アクリルアミド−メチルプロパンスルホン酸、メチレンビスアクリルアミド、ジメタクリロイルピペラジン等
(e)不飽和ニトリル類:アクリロニトリル、メタクリロニトリル等、
(f) スチレンおよびその誘導体:スチレン、ビニルトルエン、p−tertブチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、α−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、ビニルナフタレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−アミノメチルスチレン、1,4−ジビニルベンゼン等、
(g)ビニルエーテル類:メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル等、
(h)ビニルエステル類:酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニルクロロ酢酸ビニル等、
【0107】
(i)酸基を含有するモノマー:アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、アクリル酸リチウム、アクリル酸アンモニウム、メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カリウム、メタクリル酸リチウム、メタクリル酸アンモニウム、イタコン酸、イタコン酸カリウム、マレイン酸、CH2=CHCOOCH2CH2COOH、CH2=CHCONHCH2CH2COOH、CH2=CHC6H5COOH(p)、CH2=CHCOOCH2CH2CH2COOH、α−クロロアクリル酸等やスチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸アンモニウム、スチレンスルホン酸リチウム、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸アンモニウム、3−アクリロイルオキシ−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−メタクリロイルオキシ−プロパンスルホン酸カリウム、イソプレンスルホン酸等や3−アクリロイルオキシ−エチルホスホン酸ナトリウム等、
(j)その他の重合性単量体:N−ビニルイミダゾール、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ビニルオキサゾリン、2−イソプロペニルオキサゾリン、ジビニルスルホン等、が挙げられる。
【0108】
Xとしては、上記(k)モノマー群から選ばれる1種の単独重合体もしくは2種以上の共重合体、または(k)モノマー群から選ばれる少なくとも1種と上記(i)酸基を含有するモノマー群から選ばれる少なくとも1種との共重合体が好ましく、上記(k)モノマー群から選ばれる1種の単独重合体もしくは2種以上の共重合体がより好ましい。Xのさらに好ましい態様は、カルボン酸基を有するモノマーの単独重合体もしくは2種以上の共重合体であり、よりさらに好ましい態様は、アクリル酸、メタクリル酸、CH2=CHCOOCH2CH2COOH、CH2=CHCONHCH2CH2COOHもしくはCH2=CHCOOCH2CH2CH2COOHの単独重合体またはこれら2種以上の共重合体であり、特に好ましい態様は、アクリル酸もしくはメタクリル酸の単独重合体、またはこれらとアクリル酸、メタクリル酸、CH2=CHCOOCH2CH2COOH、CH2=CHCONHCH2CH2COOHもしくはCH2=CHCOOCH2CH2CH2COOH他のモノマーとの共重合体である。
【0109】
前記一般式(2)で表されるポリマーの好ましい態様は、下記一般式(2−A)で表されるポリマーである。
【0110】
【化20】
【0111】
式中、R11は水素原子またはメチル基を表し、好ましくはメチル基である。
【0112】
R12およびR13はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、置換としては上記置換基Tと同義である。R12およびR13としては、好ましくは水素原子またはアルキル基であり、より好ましくは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、さらに好ましくは水素原子またはメチル基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0113】
式中、X1はエチレン性不飽和結合を有するモノマーのユニットを表し、1種類でも複数種であってもよい。X1は重合可能であれば特に制限はなく、上記一般式(2)中のXのモノマーとして例示した、モノマー群(a)〜(k)から選ばれるモノマーを用いることができる。
前記一般式(2−a)で表されるポリマー化合物の好ましい態様は、X1が上記(i)酸基を含有するモノマー群から選ばれる少なくとも1種、またはX1がない(すなわちn=0であること)態様である。より好ましい態様は、X1がカルボン酸基を含有するモノマーの少なくとも1種である態様であり、さらに好ましい態様は、X1がアクリル酸、メタクリル酸、CH2=CHCOOCH2CH2COOH、CH2=CHCONHCH2CH2COOHまたはCH2=CHCOOCH2CH2CH2COOHである態様であり、特に好ましい態様は、X1がアクリル酸またはメタクリル酸の態様である。
【0114】
式中、mおよびnはモノマーユニットの質量比を表し、m+n=100である。mとして好ましくは50〜100、より好ましくは70〜100、さらに好ましくは80〜100である。nとして好ましくは0〜50、より好ましくは0〜30、さらに好ましくは0〜20である。
なお、X1が2種以上のモノマーユニットを含む場合は、そのモノマーユニットの質量比の合計をnとする。
【0115】
Y1およびY2は末端基であるが、少なくとも一方はSH−Z−L1−を表し、一方がSH−Z−L1−を表す場合、他方は水素原子である。Zは含窒素芳香族環を表し、前記一般式(1)中のZと同義であり、好ましい範囲も同様である。L1は2価の連結基または単結合を表し、前記一般式(2)中のL1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0116】
前記一般式(2)で表されるポリマーのより好ましい態様は、下記一般式(2−B)で表されるポリマーある。
【0117】
【化21】
【0118】
式中、X1、R11、m1およびn1は一般式(2−A)におけるそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。Y11およびY12は末端基であり、少なくとも一方は下記一般式(3)で表される基を表す。
【0119】
【化22】
【0120】
式中、L1Aは2価の連結基または単結合を表す。2価の連結基または単結合であれば特に制限はないが、L1Aとして好ましくは炭素数0〜14の2価の連結基である。
具体的には炭素数1〜14のアルキレン基(例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、キシリレンなど)、炭素数6〜14のアリーレン基(例えばフェニレン、ナフチレンなど)−C(=O)−、−S(=O)2−、−S(=O)−、−S−、−O−、−P(=O)O−−、−P(=O)O−−、−P(=O)ORa−、−NRa−(Raは水素原子または置換基を表し、置換基としては前述の置換基Tとしてあげたものが適用できる)、−N=、芳香族へテロ環基またはこれらの2種類以上を組合せて得られる炭素数0〜14の2価の連結基である。具体例を以下に示す。
【0121】
【化23】
【0122】
式中、QはN、CHまたはC−SHを表し、好ましくはNまたはCHであり、より好ましくはNである。
【0123】
本発明のポリマーの分子量は、数平均分子量5,000以上が好ましく、より好ましくは10,000以上、さらに好ましくは30,000以上、特に好ましくは50,000以上であり、最も好ましくは100,000以上である。
【0124】
次に、前記水溶性合成高分子の一般的合成法の一例を示すが、これらに限定されるものではない。
前記水溶性合成高分子は、▲1▼あらかじめ重合反応により得られたポリマーに、メルカプト基を有する含窒素芳香族環を含みポリマー中の反応性基と共有結合を形成しうる化合物を反応させて前記メルカプト基を導入することによって合成してもよいし、▲2▼メルカプト基を有する含窒素芳香族環を有する化合物をモノマーとともに重合してもよい。モノマーユニットは、ラジカル重合、イオン重合、縮重合、開環重合、重付加等のいずれの重合反応によって重合させてもよい。
【0125】
以下に、前記一般式(2)、(2−A)、または(2−B)で表されるポリマーの具体例を示すが、本発明は、以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0126】
【化24】
【0127】
【化25】
【0128】
【化26】
【0129】
さらに前記水溶性合成高分子は、ハロゲン化銀乳剤の調製時に添加することが好ましく、粒子形成過程、化学熟成過程、化学熟成終了後の何れであってもよい。粒子形成過程で添加することが最も好ましい。本発明のポリマーは水または親水性有機溶媒(例えばメタノール、N,N−ジメチルホルムアミド)に溶解して添加してもよい。
【0130】
次に、本発明のハロゲン化銀写真乳剤(以下、「本発明の乳剤」ともいう)に用いられるハロゲン化銀粒子、増感色素、およびその他の材料、調製方法等について更に詳細に説明する。
本発明で用いるハロゲン化銀粒子乳剤の形状は、平板状である。
本発明におけるハロゲン化銀写真乳剤は、臭化銀、塩化銀、沃臭化銀、沃塩臭化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、等が好ましい。塩化銀、沃臭化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀であることがより好ましい。
【0131】
本発明では、平行な主平面が(111)面である塩化銀含有率が10mol%未満の沃臭化銀または塩沃臭化銀よりなる平板状ハロゲン化銀粒子を用いるのが好ましい。
この平板状ハロゲン化銀粒子は対向する(111)主平面と該主平面を連結する側面からなり、沃臭化銀もしくは塩沃臭化銀よりなる。塩化銀を含んでもよいが、塩化銀含率は10mol%以下、好ましくは8mol%以下、より好ましくは3mol%以下、もしくは0mol%である。沃化銀含有率については、好ましくは40mol%以下、より好ましくは20mol%以下である。沃化銀含有率および臭化銀含有率は、それぞれ0.5mol%以上が好ましい。
【0132】
沃化銀含有率に拘わらず、粒子間の沃化銀含量の分布の変動係数は20%以下が好ましく、特に10%以下が好ましい。
沃化銀分布について粒子内で構造を有していることが好ましい。この場合、沃化銀分布の構造は2重構造、3重構造、4重構造さらにはそれ以上の構造があり得る。また、粒子内部で沃化銀含有量が連続的に変化していてもよい。
【0133】
本発明の乳剤では、全投影面積の50%以上がアスペクト比2以上の粒子で占められる。ここで平板粒子の投影面積ならびにアスペクト比は、参照用のラテックス球とともにシャドーをかけたカーボンレプリカ法による電子顕微鏡写真から測定することができる。平板粒子は上から見た時に、通常6角形、3角形もしくは円形状の形態をしているが、該投影面積と等しい面積の円の直径を厚みで割った値がアスペクト比である。平板粒子の形状は6角形の比率が高い程好ましく、また、6角形の各隣接する辺の長さの比は1:2以下であることが好ましい。
【0134】
平板粒子は、投影面積径で0.1μm以上20.0μm以下が好ましく、0.2μm以上10.0μm以下がさらに好ましい。投影面積径とは、ハロゲン化銀粒子の投影面積と等しい面積の円の直径である。また、平板粒子の厚みは、0.01μm以上0.5μm以下、好ましくは0.02μm以上0.2μm以下が好ましい。0.02μm以上0.1μm以下が最も好ましい。平板粒子の厚みとは二つの主平面の間隔である。球相当径では0.1μm以上5.0μm以下が好ましく、0.2μm以上3μm以下がさらに好ましい。球相当径とは、個々の粒子の体積と等しい体積を有する球の直径である。また、個々の粒子のアスペクト比は、1以上100以下が好ましく、2以上50以下がさらに好ましい。アスペクト比とは粒子の投影面積径をその粒子の厚みで割った値である。
【0135】
本発明の乳剤が含有するハロゲン化銀粒子は単分散性であることが好ましい。本発明の乳剤が含有する全ハロゲン化銀粒子の球相当径の変動係数は30%以下、好ましくは25%以下である。また、平板状粒子の場合は投影面積径の変動係数も重要であり、本発明の全ハロゲン化銀粒子の投影面積径の変動係数は30%以下であることが好ましく、より好ましくは25%以下であり、更に好ましくは20%以下である。また、平板状粒子の厚みの変動係数は、30%以下が好ましく、より好ましくは25%以下であり、更に好ましくは20%以下である。変動係数とは個々のハロゲン化銀粒子の投影面積径の分布の標準偏差を平均投影面積径で割った値、もしくは、個々のハロゲン化銀平板状粒子の厚みの分布の標準偏差を平均厚みで割った値である。
【0136】
本発明の乳剤が含有する平板粒子の双晶面間隔は米国特許第5,219,720号公報に記載のように0.012μm以下にしたり、特開平5−249585号公報に記載のように(111)主平面間距離/双晶面間隔を15以上にしてもよく、目的に応じて選んでよい。
【0137】
アスペクト比が高い程、著しい効果が得られるので、平板粒子乳剤は全投影面積の50%以上が好ましくはアスペクト比5以上の粒子で占められることが好ましい。さらに好ましくはアスペクト比8以上である。アスペクト比があまり大きくなりすぎると、前述した粒子サイズ分布の変動係数が大きくなる方向になるために、通常アスペクト比は100以下が好ましい。
【0138】
平板粒子の転位線は、例えばJ.F.Hamilton,Phot.Sci.Eng.,11、57、(1967)やT.Shiozawa,J.Soc.Phot.Sci.Japan,35、213、(1972)に記載の、低温での透過型電子顕微鏡を用いた直接的な方法により観察することができる。すなわち乳剤から粒子に転位線が発生するほどの圧力をかけないよう注意して取り出した
ハロゲン化銀粒子を電子顕微鏡観察用のメッシュにのせ、電子線による損傷(プリントアウト等)を防ぐように試料を冷却した状態で透過法により観察を行う。この時粒子の厚みが厚い程、電子線が透過しにくくなるので高圧型(0.25μmの厚さの粒子に対して200kV以上)の電子顕微鏡を用いた方がより鮮明に観察することができる。このような方法により得られた粒子の写真より、主平面に対して垂直方向から見た場合の各粒子についての転位線の位置および数を求めることができる。
【0139】
転位線の数は、好ましくは1粒子当り平均10本以上である。より好ましくは1粒子当り平均20本以上である。転位線が密集して存在する場合、または転位線が互いに交わって観察される場合には、1粒子当りの転位線の数は明確には数えることができない場合がある。しかしながら、これらの場合においても、おおよそ10本、20本、30本という程度には数えることが可能であり、明らかに、数本しか存在しない場合とは区別できる。転位線の数の1粒子当りの平均数については100粒子以上について転位線の数を数えて、数平均として求める。
【0140】
転位線は、例えば平板粒子の側面近傍に導入することができる。この場合転位は側面にほぼ垂直であり、平板状粒子の中心から辺(側面)までの距離の長さのx%の位置から始まり側面に至るように転位線が発生している。このxの値は好ましくは10以上100未満であり、より好ましくは30以上99未満であり、最も好ましくは50以上98未満である。この時、この転位線の開始する位置を結んでつくられる形状は粒子形と相似に近いが、完全な相似形ではなく、ゆがむことがある。この型の転位数は粒子の中心領域には見られない。転位線の方向は結晶学的におおよそ(211)方向であるがしばしば蛇行しており、また互いに交わっていることもある。
【0141】
また平板粒子の側面近傍の全域にわたってほぼ均一に転位線を有していても、側面近傍の局所的な位置に転位線を有していてもよい。すなわち六角形平板ハロゲン化銀粒子を例にとると、6つの頂点の近傍のみに転位線が限定されていてもよいし、そのうちの1つの頂点近傍のみに転位線が限定されていてもよい。逆に6つの頂点近傍を除く辺のみに転位線が限定されていることも可能である。
【0142】
また平板粒子の平行な2つの主平面の中心を含む領域に渡って転位線が形成されていてもよい。主平面の全域に渡って転位線が形成されている場合には転位線の方向は主平面に垂直な方向から見ると結晶学的におおよそ(211)方向の場合もあるが(110)方向またはランダムに形成されている場合もあり、さらに各転位線の長さもランダムであり、主平面上に短い線として観察される場合と、長い線として辺(外周)まで到達して観察される場合がある。転位線は直線のこともあれば蛇行していることも多い。また、多くの場合互いに交わっている。
【0143】
転位線の位置は以上のように側面近傍または主平面上または局所的な位置に限定されていてもよいし、これらが組み合わされて、形成されていてもよい。すなわち、側面近傍と主平面上に同時に存在していてもよい。
【0144】
この平板粒子乳剤の粒子表面のヨウ化銀含有量は、好ましくは10mol%以下で、特に好ましくは5mol%以下である。本発明の粒子表面のヨウ化銀含有量はXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)を用いて測定される。ハロゲン化銀粒子表面付近のヨウ化銀含量の分析に使用されるXPS法の原理に関しては、相原らの、「電子の分光」(共立ライブラリ−16、共立出版発行,昭和53年)を参考にすることができる。XPSの標準的な測定法は、励起X線としてMg−Kαを使用し、適当な試料形態としたハロゲン化銀から放出される沃素(I)と銀(Ag)の光電子(通常はI−3d5/2、Ag−3d5/2)の強度を観測する方法である。沃素の含量を求めるには、沃素の含量が既知である数種類の標準試料を用いて沃素(I)と銀(Ag)の光電子の強度比(強度(I)/強度(Ag))の検量線を作成し、この検量線からもとめることができる。ハロゲン化銀乳剤ではハロゲン化銀粒子表面に吸着したゼラチンを蛋白質分解酵素などで分解、除去した後にXPSの測定をおこなわなければならない。粒子表面のヨウ化銀含有量が10mol%以下の平板粒子乳剤とは、1つの乳剤に含まれる乳剤粒子を、XPSで分析したときにヨウ化銀含量が10mol%以下であるものをさす。この場合、明瞭に2種以上の乳剤が混合されているときには、遠心分離法、濾別法など適当な前処理を施した上で同一種類の乳剤につき分析を行なう必要がある。
【0145】
本発明の平板粒子乳剤の構造は例えば臭化銀/沃臭化銀/臭化銀からなる3重構造粒子ならびにそれ以上の高次構造も好ましい。構造間の沃化銀含有率の境界は明確なものであっても、連続的になだらかに変化しているものであっても、いずれでもよい。通常、粉末X線回折法を用いた沃化銀含有量の測定では沃化銀含有量の異なる明確な2山を示す様なことはなく、高沃化銀含有率の方向にすそをひいたようなX線回折プロフィールを示す。表面よりも内側の層の沃化銀含有率が高いことが好ましく、表面よりも内側の層の沃化銀含有率は好ましくは5mol%以上高く、より好ましくは7mol%以上高い。
【0146】
次に、本発明に関する乳剤である平行な主平面が(111)面であり、最小の長さを有する辺の長さに対する最大の長さを有する辺の長さの比が2以下である六角形ハロゲン化銀粒子の頂点部、および/または側面部、および/または主平面部に1粒子当り少なくとも一個以上のエピタキシャル接合を有する粒子について説明する。エピタキシャル接合した粒子とは、ハロゲン化銀粒子本体の他に該粒子と接合した結晶部(すなわち、エピタキシャル部)を持つ粒子であり、接合した結晶部は通常ハロゲン化銀粒子本体から突出している。接合した結晶部(エピタキシャル部)の粒子全銀量に対する割合は2%以上30%以下が好ましく、5%以上15%以下がより好ましい。エピタキシャル部は粒子本体のどの部分に存在してもよいが、粒子主平面部、粒子側面部、粒子頂点部が好ましい。
エピタキシャルの個数は、少なくとも一つ以上が好ましい。また、エピタキシャル部の組成は、AgCl、AgBrCl、AgBrClI、AgBrI、AgI、AgSCN等が好ましい。エピタキシャル部が存在する場合、粒子内部には転位線が存在してもよいが、存在しなくてもよい。
【0147】
前記ハロゲン化銀粒子は塩化銀含有率10mol%未満の沃臭化銀または塩沃臭化銀よりなる。
【0148】
次に、本発明の乳剤に用いられるハロゲン化銀粒子の調製方法について説明する。
ハロゲン化銀粒子の調製方法の一例は、(a)基盤粒子形成工程と、それに引き続く粒子形成工程((b)工程)とを含む。(a)工程に引き続き(b)工程を行うことがより好ましいが、(a)工程のみでもよい。(b)工程は、(b1)転位導入工程、(b2)頂点部転位限定導入工程、または(b3)エピタキシャル接合工程、のいずれでもよく、少なくとも一つでもよければ、二つ以上組み合わせてもよい。
【0149】
まず、(a)基盤粒子形成工程について説明する。基盤部は、粒子形成に使用した全銀量に対して少なくとも50%以上が好ましく、さらに好ましくは60%以上である。また、基盤部の銀量に対するヨードの平均含有率は0mol%以上30%mol以下が好ましく、0mol%以上15mol%以下がさらに好ましい。また、基盤部は必要に応じてコアシェル構造を取ってもよい。この際、基盤部のコア部は基盤部の全銀量に対して50%以上70%以下であることが好ましく、コア部の平均ヨード組成は0mol%以上30mol%以下が好ましく、0mol%以上15mol%以下が更に好ましい。シェル部のヨード組成は0mol%以上3mol%以下が好ましい。
【0150】
ハロゲン化銀写真乳剤の調製方法としては、ハロゲン化銀核を形成した後、更にハロゲン化銀粒子を成長させて所望のサイズの粒子を得る方法が一般的であり、本発明も同様であることに変りはない。また、平板状粒子の形成に関しては、少なくとも核形成、熟成、成長の工程が含まれる。この工程は、米国特許第4,945,037号明細書に詳細に記載されている。
【0151】
1.核形成
平板粒子の核形成は、一般にはゼラチンの水溶液を保持する反応容器に、銀塩水溶液とハロゲン化アルカリ水溶液を添加して行われるダブルジェット法、あるいはハロゲン化アルカリを含むゼラチン溶液に銀塩水溶液を添加するシングルジェット法が用いられる。また、必要に応じて銀塩を含むゼラチン溶液にハロゲン化アルカリ水溶液を添加する方法も用いることができる。さらに、必要に応じて特開昭2−44335号公報に開示されている混合器にゼラチン溶液と銀塩溶液とハロゲン化アルカリ水溶液を添加し、ただちにそれを反応容器に移すことによって平板粒子の核形成を行うこともできる。また、米国特許第5,104,786号明細書に開示されているように、ハロゲン化アルカリと保護コロイド溶液を含む水溶液をパイプに通しそこに銀塩水溶液を添加することにより核形成を行うこともできる。また、米国特許第6,022,681号公報記載の塩素含有量が核形成に使用した銀量に対して10mol%以上であるような核形成を用いてもよい。
【0152】
核形成は、ゼラチンを分散媒とし、pBrが1〜4の条件で分散媒形成することが好ましい。ゼラチンの種類としては、アルカリ処理ゼラチン、低分子量ゼラチン(分子量:3000〜4万)、米国特許第4,713,320号明細書および同第4,942,120号明細書に記載の酸化処理ゼラチン、および低分子量の酸化処理ゼラチンを用いてもよい。特に低分子量の酸化処理ゼラチンを用いることは好まし
い。
【0153】
分散媒の濃度は、10質量%以下が好ましく、さらに1質量%以下がより好ましい。
核形成時の温度は、5〜60℃が好ましいが、平均粒径が0.5μm以下の微粒子平板粒子を作る場合は5〜48℃がより好ましい。
分散媒のpHは、1以上10以下が好ましいが、1.5以上9以下がさらに好ましい。
【0154】
また、米国特許第5,147,771号明細書,同第5,147,772号明細書、同第5,147,773号明細書、同第5,171,659号明細書、同第5,210,013号明細書、同第5,252,453号明細書、および特許第3,089,578号公報に記載のポリアルキレンオキサイド化合物を核形成工程、もしくは後の熟成工程、および成長工程で添加することが可能である。
【0155】
2.熟成
1.における核形成では、平板粒子以外の微粒子(特に、八面体および一重双晶粒子)が形成される。次に述べる成長過程に入る前に平板粒子以外の粒子を消滅せしめ、平板粒子となるべき形状でかつ単分散性のよい核を得る必要がある。これを可能とするために、核形成に引き続いてオストワルド熟成を行うことがよく知られている。
【0156】
核形成後直ちにpBrを調節した後、温度を上昇させ六角平板粒子比率が最高となるまで熟成を行う。この時に、ゼラチン溶液を追添加してもよい。その際の分散媒溶液に対するゼラチンの濃度は、10質量%以下であることが好ましい。この時使用する追添加ゼラチンは、アルカリ処理ゼラチン、アミノ基が95%以上修飾されたコハク化ゼラチンやトリメリット化ゼラチンのような特開平11−143002号公報記載のアミノ基修飾ゼラチン、特開平11−143003号公報記載のイミダゾール基修飾ゼラチン、および酸化処理ゼラチンを用いる。特に、コハク化ゼラチンやトリメリット化ゼラチンを用いることが好ましい。
熟成の温度は、40〜80℃、好ましくは50〜80℃であり、pBrは1.2〜3.0である。また、pHは1.5以上9以下が好ましい。
【0157】
また、この時平板粒子以外の粒子を速やかに消失せしめるために、ハロゲン化銀溶剤を添加してもよい。この場合のハロゲン化銀溶剤の濃度としては、0.3mol/L(以下、「L」とも表記する。)以下が好ましく、0.2mol/L以下がより好ましい。直接反転用乳剤として用いる場合は、ハロゲン化銀溶剤として、アルカリ性側で用いられるNH3より、中性、酸性側で用いられるチオエーテル化物等のハロゲン化銀溶剤の方が好ましい。
このように熟成して、ほぼ100%平板状粒子のみとする。
【0158】
熟成が終わった後、次の成長過程でハロゲン化銀溶剤が不要の場合は次のようにしてハロゲン化銀溶剤を除去する。
(i) NH3のようなアルカリ性ハロゲン化銀溶剤の場合は、HNO3のようなAg+との溶解度積の大きな酸を加えて無効化する。
(ii) チオエーテル系ハロゲン化銀溶剤の場合は、特開昭60−136736号公報に記載のごとくH2O2等の酸化剤を添加して無効化する。
【0159】
3.成長
熟成過程に続く結晶成長期のpBrは1.4〜3.5に保つことが好ましい。成長過程に入る前の分散媒溶液中のゼラチン濃度が低い場合(1質量%以下)に、ゼラチンを追添加する場合がある。その際、分散媒溶液中のゼラチン濃度は、1〜10質量%にすることが好ましい。この時使用するゼラチンは、アルカリ処理ゼラチン、アミノ基が95%以上修飾されたコハク化ゼラチンやトリメリット化ゼラチン、および酸化処理ゼラチンを用いる。特に、コハク化ゼラチンやトリメリット化ゼラチンを用いることが好ましい。
【0160】
成長中のpHは、2以上10以下、好ましくは4以上8以下である。ただし、コハク化ゼラチンおよびトリメリット化ゼラチン存在時には5以上8以下が好ましい。結晶成長期におけるAg+、およびハロゲンイオンの添加速度は、結晶臨界成長速度の20〜100%、好ましくは30〜100%の結晶成長速度になるようにすることが好ましい。この場合、結晶成長とともに銀イオンおよびハロゲンイオンの添加速度を増加させていくが、その場合、特公昭48−36890号公報、同52−16364号公報記載のように、銀塩およびハロゲン塩水溶液の添加速度を上昇させてもよく、水溶液の濃度を増加させてもよい。銀塩水溶液とハロゲン塩水溶液を同時に添加するダブルジェット法で行ってもよいが、米国特許第4,672,027号明細書および同第4,693,964号明細書に記載の硝酸銀水溶液と臭化物を含むハロゲン水溶液と沃化銀微粒子乳剤を同時に添加することが好ましい。この際、成長の温度は、50℃以上90℃以下が好ましく、60℃以上85℃以下が更に好ましい。
また、添加するAgI微粒子乳剤は、あらかじめ調製したものでもよく、連続的に調製しながら添加してもよい。この際の調製方法は特開平10−43570号公報を参考にできる。
【0161】
添加するAgI乳剤の平均粒子サイズは0.005μm以上0.1μm以下、好ましくは0.007μm以上0.08μm以下である。基盤粒子のヨード組成は、添加するAgI乳剤の量により変化させることができる。
【0162】
さらに、銀塩水溶液とハロゲン塩水溶液の添加の代わりに、ヨウ臭化銀微粒子を添加することは好ましい。この際、微粒子のヨード量を所望する基盤粒子のヨード量と等しくすることで、所望のヨード組成の基盤粒子が得られる。ヨウ臭化銀微粒子はあらかじめ調製したものでもよいが、連続的に調製しながら添加する方が好ましい。添加するヨウ臭化銀微粒子サイズは、0.005μm以上0.1μm以下、好ましくは0.01μm以上0.08μm以下である。成長時の温度は50℃以上90℃以下、好ましくは60℃以上85℃以下である。
【0163】
次に、(b)工程について説明する。
まず、(b1)工程について説明する。(b1)工程は第1シェル工程と第2シェル工程から成る。上述した基盤に第1シェルを設ける。第1シェルの比率は好ましくは全銀量に対して1mol%以上30mol%以下であって、その平均沃化銀含有率20mol%以上100mol%以下である。より好ましくは第1シェルの比率は全銀量に対して1mol%以上20mol%以下であって、その平均沃化銀含有率25mol%以上100mol%以下である。基盤への第1シェルの成長は基本的には硝酸銀水溶液と沃化物と臭化物を含むハロゲン水溶液をダブルジェット法で添加する。もしくは硝酸銀水溶液と沃化物を含むハロゲン水溶液をダブルジェット法で添加する。もしくは沃化物を含むハロゲン水溶液をシングルジェット法で添加する。
【0164】
以上のいずれの方法でも、それらの組み合わせでもよい。第1シェルの平均沃化銀含有率から明らかなように、第1シェル形成時には沃臭化銀混晶の他に沃化銀が析出し得る。いずれの場合でも通常は、次の第2シェルの形成時に、沃化銀は消失し、すべて沃臭化銀混晶に変化する。
【0165】
第1シェルの形成の好ましい方法として沃臭化銀もしくは沃化銀微粒子乳剤を添加して熟成し溶解する方法がある。さらに、好ましい方法として沃化銀微粒子乳剤を添加して、その後硝酸銀水溶液の添加もしくは硝酸銀水溶液とハロゲン水溶液を添加する方法がある。この場合、沃化銀微粒子乳剤の溶解は、硝酸銀水溶液の添加により促進されるが、添加した沃化銀微粒子乳剤の銀量を用いて第1シェルとし、沃化銀含有率100mol%とする。そして添加した硝酸銀水溶液の銀量を用いて第2シェルとして計算する。沃化銀微粒子乳剤は急激に添加されることが好ましい。
【0166】
沃化銀微粒子乳剤を急激に添加するとは、好ましくは10分以内に沃化銀微粒子乳剤を添加することをいう。より好ましくは7分以内に添加することをいう。この条件は添加する系の温度、pBr、pH、ゼラチン等の保護コロイド剤の種類、濃度、ハロゲン化銀溶剤の有無、種類、濃度等により変化しうるが、上述したように短い方が好ましい。添加する時には実質的に硝酸銀等の銀塩水溶液の添加は行なわれない方が好ましい。添加時の系の温度は40℃以上90℃以下が好ましく、50℃以上80℃以下が特に好ましい。
【0167】
沃化銀微粒子乳剤は実質的に沃化銀であればよく、混晶となり得る限りにおいて臭化銀および/または塩化銀を含有していてもよい。好ましくは100%沃化銀である。沃化銀はその結晶構造においてβ体、γ体ならびに米国特許第4,672,026号明細書に記載されているようにα体もしくはα体類似構造があり得る。
【0168】
本発明においては、その結晶構造の制限は特にはないが、β体とγ体の混合物がさらに好ましくはβ体が用いられる。沃化銀微粒子乳剤は米国特許第5,004,679号明細書等に記載の添加する直前に形成したものでもよいし、通常の水洗工程を経たものでもいずれでもよいが、本発明においては好ましくは通常の水洗工程を経たものが用いられる。沃化銀微粒子乳剤は、米国特許第4,672,026号明細書等に記載の方法で容易に形成できうる。粒子形成時のpI値を一定にして粒子形成を行う、銀塩水溶液と沃化物塩水溶液のダブルジェット添加法が好ましい。ここでpIは系のI−イオン濃度の逆数の対数である。温度、pI、pH、ゼラチン等の保護コロイド剤の種類、濃度、ハロゲン化銀溶剤の有無、種類、濃度等に特に制限はないが、粒子のサイズは0.1μm以下、より好ましくは0.07?μm以下が本発明に都合がよい。微粒子であるために粒子形状は完全には特定できないが粒子サイズの分布の変動係数は25%以下が好ましい。特に20%以下の場合には、本発明の効果が著しい。ここで沃化銀微粒子乳剤のサイズおよびサイズ分布は、沃化銀微粒子を電子顕微鏡観察用のメッシュにのせ、カーボンレプリカ法ではなく直接、透過法によって観察して求める。これは粒子サイズが小さいために、カーボンレプリカ法による観察では測定誤差が大きくなるためである。粒子サイズは観察された粒子と等しい投影面積を有する円の直径と定義する。粒子サイズの分布についても、この等しい投影面積円直径を用いて求める。本発明において最も有効な沃化銀微粒子は粒子サイズが0.06μm以下0.02μm以上であり、粒子サイズ分布の変動係数が18%以下である。
【0169】
沃化銀微粒子乳剤は上述の粒子形成後、好ましくは米国特許第2,614,929号明細書等に記載の通常の水洗およびpH、pI、ゼラチン等の保護コロイド剤の濃度調整ならびに含有沃化銀の濃度調整が行われる。pHは5以上7以下が好ましい。pI値は沃化銀の溶解度が最低になるpI値もしくはその値よりも高いpI値に設定することが好ましい。保護コロイド剤としては、平均分子量10万程度の通常のゼラチンが好ましく用いられる。平均分子量2万以下の低分子量ゼラチンも好ましく用いられる。また上記の分子量の異なるゼラチンを混合して用いると都合がよい場合がある。乳剤1kgあたりのゼラチン量は好ましくは10g以上100g以下である。より好ましくは20g以上80g以下である。乳剤1kgあたりの銀原子換算の銀量は好ましくは10g以上100g以下である。より好ましくは20g以上80g以下である。ゼラチン量および/または銀量は沃化銀微粒子乳剤を急激に添加するのに適した値を選択することが好ましい。
【0170】
沃化銀微粒子乳剤は、通常あらかじめ溶解して添加するが、添加時には系の撹拌効率を十分に高める必要がある。好ましくは撹拌回転数は、通常よりも高めに設定される。撹拌時の泡の発生を防じるために消泡剤の添加は効果的である。具体的には、米国特許第5,275,929号明細書の実施例等に記述されている消泡剤が用いられる。
【0171】
第1シェル形成のさらに好ましい方法として、従来の沃化物イオン供給法(フリーな沃化物イオンを添加する方法)のかわりに米国特許第5、496、694号明細書に記載の沃化物イオン放出剤を用いて、沃化物イオンを急激に生成せしめながら沃化銀を含むハロゲン化銀相を形成することができる。
【0172】
沃化物イオン放出剤は沃化物イオン放出調節剤(塩基および/または求核試薬)との反応により沃化物イオンを放出するが、この際に用いる求核試薬としては好ましくは以下の化学種が挙げられる。例えば、水酸化物イオン、亜硫酸イオン、ヒドロキシルアミン、チオ硫酸イオン、メタ重亜硫酸イオン、ヒドロキサム酸類、オキシム類、ジヒドロキシベンゼン類、メルカプタン類、スルフィン酸塩、カルボン酸塩、アンモニア、アミン類、アルコール類、尿素類、チオ尿素類、フェノール類、ヒドラジン類、ヒドラジド類、セミカルバジド類、ホスフィン類、スルフィド類が挙げられる。
【0173】
塩基や求核試薬の濃度、添加方法、また反応液の温度をコントロールすることにより沃化物イオンの放出速度、タイミングをコントロールすることができる。塩基として好ましくは水酸化アルカリが挙げられる。
【0174】
沃化物イオンを急激に生成せしめるのに用いる沃化物イオン放出剤及び沃化物イオン放出調節剤の好ましい濃度範囲は1×10−7〜20Mであり、より好ましくは1×10−5〜10M、さらに好ましくは1×10−4〜5M、特に好ましくは1×10−3〜2Mである。
濃度が20Mを上回ると、分子量の大きい沃化物イオン放出剤及び沃化物イオン放出剤の添加量が粒子形成容器の容量に対して多くなり過ぎるため好ましくない。また、1×10−7Mを下回ると沃化物イオン放出反応速度が遅くなり、沃化物イオン放出剤を急激に生成せしめるのが困難になるため好ましくない。
【0175】
好ましい温度範囲は30〜80℃であり、より好ましくは35〜75℃、特に好ましくは35〜60℃である。温度が80℃上回る高温では一般に沃化物イオン放出反応速度が極めて速くなり、また30℃下回る低温では一般に沃化物イオン放出反応速度が極めて遅くなるため、それぞれ使用条件が限られ好ましくない。
【0176】
沃化物イオンの放出の際に塩基を用いる場合、液pHの変化を用いてもよい。
【0177】
この時、沃化物イオンの放出速度、タイミングをコントロールするのに好ましいpHの範囲は2〜12であり、より好ましくは3〜11、特に好ましくは5〜10、最も好ましくは調節後のpHが7.5〜10.0である。pH7の中性条件下でも水のイオン積により定まる水酸化物イオンが調節剤として作用する。
【0178】
また、求核試薬と塩基を併用してもよく、この時もpHを上記の範囲でコントロールし、沃化物イオンの放出速度、タイミングをコントロールしてもよい。沃化物イオン放出剤から沃素原子を沃化物イオンの形で放出させる場合、全沃素原子を放出させてもよいし、一部は分解せずに残っていてもよい。
【0179】
上述した基盤および第1シェルを有する平板粒子上に第2シェルを設ける。第2シェルの比率は好ましくは全銀量に対して10mol%以上40mol%以下であって、その平均沃化銀含有率が0mol%以上5mol%以下である。より好ましくは第2シェルの比率は全銀量に対して15mol%以上30mol%以下であって、その平均沃化銀含有率が0mol%以上3mol%以下である。基盤および第1シェルを有する平板粒子上への第2シェルの成長は該平板粒子のアスペクト比を上げる方向でも下げる方向でもよい。基本的には硝酸銀水溶液と臭化物を含むハロゲン水溶液をダブルジェット法で添加することにより第2シェルの成長は行なわれる。もしくは臭化物を含むハロゲン水溶液を添加した後、硝酸銀水溶液をシングルジェット法で添加してもよい。系の温度、pH、ゼラチン等の保護コロイド剤の種類、濃度、ハロゲン化銀溶剤の有無、種類、濃度等は広範に変化しうる。pBrについては、本発明においては該層の形成終了時のpBrが該層の形成初期時のpBrよりも高くなることが好ましい。好ましくは該層の形成初期のpBrが2.9以下であり該層の形成終了時のpBrが1.7以上である。さらに好ましくは該層の形成初期のpBrが2.5以下であり該層の形成終了時のpBrが1.9以上である。最も好ましくは該層の形成初期のpBrが2.3以下1以上である。最も好ましくは該層の終了時のpBrが2.1以上4.5以下である。
【0180】
(b1)工程の部分には転位線が存在することが好ましい。転位線は平板粒子の側面部近傍に存在することが好ましい。側面部近傍とは、平板粒子の六辺の側面部とその内側部分、すなわち(b1)工程で成長させた部分のことである。側面部に存在する転位線は1粒子当り平均10本以上が好ましい。より好ましくは1粒子当り平均20本以上である。転位線が密集して存在する場合、または転位線が互いに交わって観察される場合には、1粒子当りの転位線の数は明確には数えることができない場合がある。しかしながら、これらの場合においても、おおよそ10本、20本、30本という程度には数えることが可能であり、明らかに数本しか存在しない場合とは区別できる。転位線の数の1粒子当りの平均数については100粒子以上について転位線の数を数えて、数平均として求める。
【0181】
本発明の平板粒子は粒子間の転位線量分布が均一であることが望ましい。本発明の乳剤は1粒子当たり10本以上の転位線を含むハロゲン化銀粒子が全粒子の100〜50%を占めることが好ましく、より好ましくは100〜70%を、特に好ましくは100〜90%を占める。50%を下回ると粒子間の均質性の点で好ましくない。
【0182】
本発明において転位線を含む粒子の割合及び転位線の本数を求める場合は、少なくとも100粒子について転位線を直接観察して求めることが好ましく、より好ましくは200粒子以上、特に好ましくは300粒子以上について観察して求める。
【0183】
次に、(b2)工程について説明する。
一つ目の態様としては、頂点近傍のみをヨウ化物イオンにより溶解する方法、二つ目の態様としては、銀塩溶液とヨウ化物塩溶液を同時に添加する方法、三つ目の態様としては、ハロゲン化銀溶剤を用いて頂点近傍のみを実質的に溶解する方法、四つ目の態様としてはハロゲン変換を介する方法がある。
【0184】
一つ目の態様であるヨウ化物イオンにより溶解する方法について説明する。
【0185】
基盤粒子にヨウ化物イオンを添加することで基盤粒子の各頂点部近傍が溶解して丸みを帯びる。続けて、硝酸銀溶液と臭化物溶液、または、硝酸銀溶液と臭化物溶液とヨウ化物溶液の混合液を同時に添加すると粒子は更に成長して頂点近傍に転位が導入される。この方法に関しては、特開平4−149541号公報、および特開平9−189974号公報を参考にできる。
【0186】
本態様において添加されるヨウ化物イオンの総量は、該ヨウ化物イオン総モル数を基盤粒子の総銀量モル数で除した値に100を掛けた値をI2(mol%)とした時、基盤粒子のヨウ化銀含有率I1(mol%)に対して、(I2−I1)が0以上8以下を満たすことが本発明に従う効果的な溶解を得る上で好ましく、より好ましくは0以上4以下である。
【0187】
本態様において添加されるヨウ化物イオンの濃度は低い方が好ましく、具体的には0.2mol/L以下の濃度であることが好ましく、更に好ましくは0.1mol/L。
また、ヨウ化物イオン添加時のpAgは8.0以上が好ましく、更に好ましくは8.5以上である。
【0188】
基盤粒子へのヨウ化物イオンの添加による該基盤粒子の頂点部溶解に引き続き、硝酸銀溶液の単独添加、または、硝酸銀溶液と臭化物溶液、もしくは、硝酸銀溶液と臭化物溶液とヨウ化物溶液の混合液を同時に添加して粒子を更に成長させ頂点近傍に転位を導入させる。
【0189】
二つ目の態様である銀塩溶液とヨウ化物塩溶液との同時添加による方法について説明する。基盤粒子に対して銀塩溶液とヨウ化物塩溶液を急速に添加することで粒子の頂点部にヨウ化銀もしくはヨウ化銀含率の高いハロゲン化銀をエピタキシャル生成させることができる。この際、銀塩溶液とヨウ化物塩溶液の好ましい添加速度は0.2分〜0.5分であり、更に好ましくは0.5分から2分である。この方法に関しては、特開平4−149541号公報に詳細に記載されているので、参考にすることができる。
【0190】
基盤粒子へのヨウ化物イオンの添加による該基盤粒子の頂点部溶解に引き続き、硝酸銀溶液の単独添加、または、硝酸銀溶液と臭化物溶液、もしくは、硝酸銀溶液と臭化物溶液とヨウ化物溶液の混合液を同時に添加して粒子を更に成長させ頂点近傍に転位を導入させる。
【0191】
三つ目の態様であるハロゲン化銀溶剤を用いる方法について説明する。
基盤粒子を含む分散媒にハロゲン化銀溶剤を加えた後、銀塩溶液とヨウ化物塩溶液を同時添加すると、ハロゲン化銀溶剤により溶解した基盤粒子の頂点部にヨウ化銀もしくはヨウ化銀含率の高いハロゲン化銀が優先的に成長することになる。この際、銀塩溶液およびヨウ化物塩溶液は急速に添加する必要はない。この方法に関しては、特開平4−149541号公報に詳細に記載されているので、これを参考にできる。
【0192】
基盤粒子へのヨウ化物イオンの添加による該基盤粒子の頂点部溶解に引き続き、硝酸銀溶液の単独添加、または、硝酸銀溶液と臭化物溶液、もしくは、硝酸銀溶液と臭化物溶液とヨウ化物溶液の混合液を同時に添加して粒子を更に成長させ頂点近傍に転位を導入させる。
【0193】
次に、四つ目の態様であるハロゲン変換を介する方法について説明する。
基盤粒子にエピタキシャル成長部位指示剤(以下、サイトダイレクターと呼ぶ)、例えば特開昭58−108526号公報記載の増感色素や、水溶性ヨウ化物を添加することで基盤粒子の頂点部に塩化銀のエピタキシャルを形成した後ヨウ化物イオンを添加することで塩化銀をヨウ化銀もしくはヨウ化銀含率の高いハロゲン化銀へハロゲン変換する方法である。サイトダイレクターは増感色素、水溶性チオシアン酸イオン、および水溶性ヨウ化物イオンが使用できるが、沃化物イオンが好ましい。ヨウ化物イオンは基盤粒子に対して0.0005〜1mol%、好ましくは0.001〜0.5mol%が好ましい。最適な量の沃化物イオンを添加した後、銀塩溶液と塩化物塩溶液の同時添加すると塩化銀のエピタキシャルを基盤粒子の頂点部に形成できる。
【0194】
塩化銀のヨウ化物イオンによるハロゲン変換について説明する。溶解度の大きいハロゲン化銀は溶解度のより小さいハロゲン化銀を形成し得るハロゲンイオンを添加することにより、溶解度のより小さいハロゲン化銀に変換される。この過程はハロゲン変換と呼ばれ、例えば米国特許第4,142,900号明細書に記載されている。基盤の頂点部にエピタキシャル成長した塩化銀をヨウ化物イオンにより選択的にハロゲン変換することで基盤粒子頂点部にヨウ化銀相を形成させる。詳細は、特開平4−149541号公報に記載されている。
【0195】
基盤粒子の頂点部にエピタキシャル成長した塩化銀をヨウ化物イオンの添加によるヨウ化銀相へのハロゲン変換に引き続き、硝酸銀溶液の単独添加、または、硝酸銀溶液と臭化物溶液、もしくは、硝酸銀溶液と臭化物溶液とヨウ化物溶液の混合液を同時に添加して粒子を更に成長させ頂点近傍に転位を導入させる。
【0196】
(b2)工程の部分には転位線が存在することが好ましい。転位線は平板粒子の頂点部近傍に存在することが好ましい。頂点部近傍とは、粒子の中心と各頂点を結ぶ直線の中心からx%の位置の点から、各頂点を作る辺に垂線を下した時に、その垂線とその辺とで囲まれた三次元の部分のことである。このxの値は好ましくは50以上100未満、さらに好ましくは75以上100未満である。側面部に存在する転位線は1粒子当り平均10本以上が好ましい。より好ましくは1粒子当り平均20本以上である。転位線が密集して存在する場合、または転位線が互いに交わって観察される場合には、1粒子当りの転位線の数は明確には数えることができない場合がある。しかしながら、これらの場合においても、おおよそ10本、20本、30本という程度には数えることが可能であり、明らかに数本しか存在しない場合とは区別できる。転位線の数の1粒子当りの平均数については100粒子以上について転位線の数を数えて、数平均として求める。
【0197】
本発明の平板粒子は粒子間の転位線量分布が均一であることが望ましい。本発明の乳剤は1粒子当たり10本以上の転位線を含むハロゲン化銀粒子が全粒子の100〜50%を占めることが好ましく、より好ましくは100〜70%を、特に好ましくは100〜90%を占める。50%を下回ると粒子間の均質性の点で好ましくない。
【0198】
本発明において転位線を含む粒子の割合及び転位線の本数を求める場合は、少なくとも100粒子について転位線を直接観察して求めることが好ましく、より好ましくは200粒子以上、特に好ましくは300粒子以上について観察して求める。
【0199】
次に、(b3)工程について説明する。
基盤粒子へのハロゲン化銀のエピタキシャル形成に関しては、米国特許第4,435,501号明細書に記載されているように、基盤粒子表面に吸着したヨウ化物イオン、アミノアザインデン、もしくは分光増感色素等のサイトダイレクターによって銀塩エピタキシャルが選択された部位、例えば基盤粒子の側面、もしくは頂点に形成できることが示されている。また、特開平8−69069号公報には極薄平板粒子基盤の選択された部位に銀塩エピタキシャルを形成させ、このエピタキシャル相を最適な化学増感することで高感化を達成している。
【0200】
本発明においても、これらの方法を用いて本発明の基盤粒子を高感化することは非常に好ましい。サイトダイレクターは、アミノアザインデン、もしくは分光増感色素を用いてもよいし、ヨウ化物イオン、もしくはチオシアン酸イオンを用いることができ、目的に応じて使い分けることもできるし、組み合わせてもよい。
【0201】
増感色素量、ヨウ化物イオン、およびチオシアン酸イオンの添加量を変化させることで、銀塩エピタキシャルの形成部位を、基盤粒子の側面、あるいは頂点に限定させることができる。添加するヨウ化物イオンの量は、基盤粒子の銀量に対して0.0005〜1.0mol%、好ましくは、0.001〜0.5mol%である。また、チオシアン酸イオンの量は、基盤粒子の銀量に対して、0.01〜0.2mol%、好ましくは、0.02〜0.1mol%である。これらサイトダイレクター添加後に、銀塩溶液とハロゲン塩溶液を添加して銀塩エピタキシャルを形成する。この際の、温度は、40〜70℃が好ましく、45〜60℃が更に好ましい。また、この際のpAgは7.5以下が好ましく、6.5以下が更に好ましい。サイトダイレクターを用いることで、基盤粒子の頂点部、もしくは側面部に銀塩のエピタキシャルが形成される。こうして得た乳剤を、特開平8−69069号公報のようにエピタキシャル相に選択的に化学増感を施して高感化させてもよいが、銀塩エピタキシャル形成に引き続き、銀塩溶液とハロゲン塩溶液を同時添加して更に成長させてもよい。この際添加するハロゲン塩水溶液は、臭化物塩溶液、もしくは、臭化物塩溶液とヨウ化物塩溶液との混合液が好ましい。またこの際の温度は、40〜80℃が好ましく、45〜70℃が更に好ましい。また、この際のpAgは5.5以上9.5以下が好ましく、6.0以上9.0以下が好ましい。
【0202】
(b3)工程において形成されるエピタキシャルは、基本的に(a)工程で形成した基盤粒子の外部に基盤粒子とは異なるハロゲン組成が形成されていることを特徴とする。エピタキシャルの組成は、AgCl、AgBrCl、AgBrClI、AgBrI、AgI、AgSCN等が好ましい。また、エピタキシャル層に特開平8−69069号公報に記載されているような「ドーパント(金属錯体)」を導入することはさらに好ましい。エピタキシャル成長の位置は、基盤粒子の頂点部、側面部、主平面部の少なくとも一部分でもよく、複数の個所にまたがってもよい。頂点部のみ、もしくは、側面部のみ、もしくは、頂点部と側面部の形態を取ることが好ましい。
【0203】
(b3)工程の部分には転位線が存在しなくてもよいが、転位線が存在することはさらに好ましい。転位線は基盤粒子とエピタキシャル成長部との接合部、もしくはエピタキシャル部に存在することが好ましい。接合部、もしくはエピタキシャル部に存在する転位線は1粒子当り平均10本以上が好ましい。より好ましくは1粒子当り平均20本以上である。転位線が密集して存在する場合、または転位線が互いに交わって観察される場合には、1粒子当りの転位線の数は明確には数えることができない場合がある。しかしながら、これらの場合においても、おおよそ10本、20本、30本という程度には数えることが可能であり、明らかに数本しか存在しない場合とは区別できる。転位線の数の1粒子当りの平均数については100粒子以上について転位線の数を数えて、数平均として求める。
【0204】
エピタキシャル部の形成時に6シアノ金属錯体がドープされているのが好ましい。6シアノ金属錯体のうち、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム又はクロムを含有するものが好ましい。金属錯体の添加量は、ハロゲン化銀1mol当たり10−9〜10−2molの範囲であることが好ましく、ハロゲン化銀1mol当たり10−8〜10−4molの範囲であることがさらに好ましい。金属錯体は、水または有機溶媒に溶かして添加することができる。有機溶媒は水と混和性を有することが好ましい。有機溶媒の例には、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、及びアミド類が含まれる。
【0205】
金属錯体としては、下記式(MA)で表される6シアノ金属錯体が特に好ましい。
【0206】
6シアノ金属錯体は、高感度の感光材料が得られ、しかも生感光材料を長期間保存したときでも被りの発生を抑制するという効果を有する。
【0207】
(MA)[M(CN)6]n−
(式中、Mは鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウムまたはクロムであり、nは3または4である。)。
【0208】
6シアノ金属錯体の具体例を以下に示す。
(MA−1) [Fe(CN)6]4−
(MA−2) [Fe(CN)6]3−
(MA−3) [Ru(CN)6]4−
(MA−4) [Os(CN)6]4−
(MA−5) [Co(CN)6]3−
(MA−6) [Rh(CN)6]3−
(MA−7) [Ir(CN)6]3−
(MA−8) [Cr(CN)6]4−。
【0209】
6シアノ錯体の対カチオンは、水と混和しやすく、ハロゲン化銀乳剤の沈殿操作に適合しているイオンを用いることが好ましい。対イオンの例には、アルカリ金属イオン(例、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、リチウムイオン)、アンモニウムイオンおよびアルキルアンモニウムイオンが含まれる。
【0210】
本発明の平板粒子は粒子間の転位線量分布が均一であることが望ましい。本発明の乳剤は1粒子当たり10本以上の転位線を含むハロゲン化銀粒子が全粒子の100〜50%を占めることが好ましく、より好ましくは100〜70%を、特に好ましくは100〜90%を占める。50%を下回ると粒子間の均質性の点で好ましくない。
【0211】
本発明において転位線を含む粒子の割合及び転位線の本数を求める場合は、少なくとも100粒子について転位線を直接観察して求めることが好ましく、より好ましくは200粒子以上、特に好ましくは300粒子以上について観察して求める。
【0212】
本発明の乳剤の調製時に用いられる分散媒もしくは保護コロイドとして、及びその他の親水性コロイド層のバインターとしては、ゼラチンを用いるのが有利であるが、それ以外の親水性コロイドも用いることができる。
【0213】
例えば、ゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマー、アルブミン、カゼインのような蛋白質;ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロース硫酸エステル類のようなセルロース誘導体、アルギン酸ソーダ、澱粉誘導体のような糖誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分アセタール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピラゾールのような単一あるいは共重合体の如き多種の合成親水性高分子物質を用いることができる。
【0214】
ゼラチンとしては石灰処理ゼラチンのほか、酸処理ゼラチンやBull.Soc.Sci.Photo.Japan.No.16.P30(1966)に記載されたような酵素処理ゼラチンを用いてもよく、また、ゼラチンの加水分解物や酵素分解物も用いることができる。
【0215】
好ましくは、アミノ基が95%以上修飾されたコハク化ゼラチン、およびトリメリット化ゼラチン、または酸化処理ゼラチンである、また低分子量ゼラチン、および低分子量酸化処理ゼラチンを用いることも好ましい。
【0216】
さらに、分子量分布が28万以上の成分を全ゼラチンに対して、30質量%以上、好ましくは35質量%以上含んでいるゼラチンを用いてもよい。石灰処理ゼラチンは、その分子量に基づいてサブα(低分子量)、α(分子量約10万)、β(分子量約20万)、γ(分子量約30万)および大高分子部分(ボイド:分子量30万より大)からなる。それぞれの成分の比率、すなわち分子量分布は、国際的に定められたPAGI法により測定される。更に詳しい説明および製法は、特開平11−237704号公報に詳細に記載されている。
【0217】
本発明の乳剤は脱塩のために水洗し、新しく用意した保護コロイド分散にすることが好ましい。この際の保護コロイドは上述した親水性コロイドおよびゼラチンを用いることができる。この際、分子量分布が28万以上の成分を30%以上、好ましくは35%以上含んでいるゼラチンを用いることは好ましい。水洗の温度は目的に応じて選べるが、5℃〜50℃の範囲で選ぶことが好ましい。水洗時のpHも目的に応じて選べるが2〜10の間で選ぶことが好ましい。さらに好ましくは3〜8の範囲である。水洗時のpAgも目的に応じて選べるが5〜10の間で選ぶことが好ましい。水洗の方法としてヌードル水洗法、半透膜を用いた透析法、遠心分離法、凝析沈降法、イオン交換法のなかから選んで用いることができる。凝析沈降法の場合には硫酸塩を用いる方法、有機溶剤を用いる方法、水溶性ポリマーを用いる方法、ゼラチン誘導体を用いる方法などから選ぶことができる。
【0218】
次に、本発明に関する、第1の乳剤および第2の乳剤ハロゲン化銀粒子の調製方法について説明する。
本発明の調製工程としては、(a)基盤粒子形成工程と、それに引き続く粒子形成工程((b)工程)から成る。基本的に(a)工程に引き続き(b)工程を行うことがより好ましいが、(a)工程のみでもよい。(b)工程は、(b1)転位導入工程、(b2)頂点部転位限定導入工程、または(b3)エピタキシャル接合工程、のいずれでもよく、少なくとも一つでもよければ、二つ以上組み合わせてもよい。
【0219】
まず、(a)基盤粒子形成工程について説明する。基盤部は、粒子形成に使用した全銀量に対して少なくとも50%以上が好ましく、さらに好ましくは60%以上である。また、基盤部の銀量に対するヨードの平均含有率は0mol%以上30%mol以下が好ましく、0mol%以上15mol%以下がさらに好ましい。また、基盤部は必要に応じてコアシェル構造を取ってもよい。この際、基盤部のコア部は基盤部の全銀量に対して50%以上70%以下であることが好ましく、コア部の平均ヨード組成は0mol%以上30mol%以下が好ましく、0mol%以上15mol%以下が更に好ましい。シェル部のヨード組成は0mol%以上3mol%以下が好ましい。
【0220】
ハロゲン化銀写真乳剤の調製方法としては、ハロゲン化銀核を形成した後、更にハロゲン化銀粒子を成長させて所望のサイズの粒子を得る方法が一般的であり、本発明も同様であることに変りはない。また、平板状粒子の形成に関しては、少なくとも核形成、熟成、成長の工程が含まれる。この工程は、米国特許第4,945,037号明細書に詳細に記載されている。
【0221】
1.核形成
平板粒子の核形成は、一般にはゼラチンの水溶液を保持する反応容器に、銀塩水溶液とハロゲン化アルカリ水溶液を添加して行われるダブルジェット法、あるいはハロゲン化アルカリを含むゼラチン溶液に銀塩水溶液を添加するシングルジェット法が用いられる。また、必要に応じて銀塩を含むゼラチン溶液にハロゲン化アルカリ水溶液を添加する方法も用いることができる。さらに、必要に応じて特開昭2−44335号公報に開示されている混合器にゼラチン溶液と銀塩溶液とハロゲン化アルカリ水溶液を添加し、ただちにそれを反応容器に移すことによって平板粒子の核形成を行うこともできる。また、米国特許第5,104,786号明細書に開示されているように、ハロゲン化アルカリと保護コロイド溶液を含む水溶液をパイプに通しそこに銀塩水溶液を添加することにより核形成を行うこともできる。また、米国特許第6,022,681号明細書記載の塩素含有量が核形成に使用した銀量に対して10mol%以上であるような核形成を用いてもよい。
【0222】
核形成は、ゼラチンを分散媒とし、pBrが1〜4の条件で分散媒形成することが好ましい。ゼラチンの種類としては、アルカリ処理ゼラチン、低分子量ゼラチン(分子量:3000〜4万)、米国特許第4,713,320号明細書および同第4,942,120号明細書に記載の酸化処理ゼラチン、および低分子量の酸化処理ゼラチンを用いてもよい。特に低分子量の酸化処理ゼラチンを用いることは好まし
い。
【0223】
分散媒の濃度は、10質量%以下が好ましく、さらに1質量%以下がより好ましい。
核形成時の温度は、5〜60℃が好ましいが、平均粒径が0.5μm以下の微粒子平板粒子を作る場合は5〜48℃がより好ましい。
分散媒のpHは、1以上10以下が好ましいが、1.5以上9以下がさらに好ましい。
【0224】
また、米国特許第5,147,771号明細書,同第5,147,772号明細書、同第5,147,773号明細書、同第5,171,659号明細書、同第5,210,013号明細書、同第5,252,453号明細書、および特許第3,089,578号公報に記載のポリアルキレンオキサイド化合物を核形成工程、もしくは後の熟成工程、および成長工程で添加することが可能である。
【0225】
2.熟成
1.における核形成では、平板粒子以外の微粒子(特に、八面体および一重双晶粒子)が形成される。次に述べる成長過程に入る前に平板粒子以外の粒子を消滅せしめ、平板粒子となるべき形状でかつ単分散性のよい核を得る必要がある。これを可能とするために、核形成に引き続いてオストワルド熟成を行うことがよく知られている。
【0226】
核形成後直ちにpBrを調節した後、温度を上昇させ六角平板粒子比率が最高となるまで熟成を行う。この時に、ゼラチン溶液を追添加してもよい。その際の分散媒溶液に対するゼラチンの濃度は、10質量%以下であることが好ましい。この時使用する追添加ゼラチンは、アルカリ処理ゼラチン、アミノ基が95%以上修飾されたコハク化ゼラチンやトリメリット化ゼラチンのような特開平11−143002号公報記載のアミノ基修飾ゼラチン、特開平11−143003号公報記載のイミダゾール基修飾ゼラチン、および酸化処理ゼラチンを用いる。特に、コハク化ゼラチンやトリメリット化ゼラチンを用いることが好ましい。
熟成の温度は、40〜80℃、好ましくは50〜80℃であり、pBrは1.2〜3.0である。また、pHは1.5以上9以下が好ましい。
【0227】
また、この時平板粒子以外の粒子を速やかに消失せしめるために、ハロゲン化銀溶剤を添加してもよい。この場合のハロゲン化銀溶剤の濃度としては、0.3mol/L(以下、「L」とも表記する。)以下が好ましく、0.2mol/L以下がより好ましい。直接反転用乳剤として用いる場合は、ハロゲン化銀溶剤として、アルカリ性側で用いられるNH3より、中性、酸性側で用いられるチオエーテル化合物等のハロゲン化銀溶剤の方が好ましい。
このように熟成して、ほぼ100%平板状粒子のみとする。
【0228】
熟成が終わった後、次の成長過程でハロゲン化銀溶剤が不要の場合は次のようにしてハロゲン化銀溶剤を除去する。
(i) NH3のようなアルカリ性ハロゲン化銀溶剤の場合は、HNO3のようなAg+との溶解度積の大きな酸を加えて無効化する。
(ii) チオエーテル系ハロゲン化銀溶剤の場合は、特開昭60−136736号公報に記載のごとくH2O2等の酸化剤を添加して無効化する。
【0229】
3.成長
熟成過程に続く結晶成長期のpBrは1.4〜3.5に保つことが好ましい。成長過程に入る前の分散媒溶液中のゼラチン濃度が低い場合(1質量%以下)に、ゼラチンを追添加する場合がある。その際、分散媒溶液中のゼラチン濃度は、1〜10質量%にすることが好ましい。この時使用するゼラチンは、アルカリ処理ゼラチン、アミノ基が95%以上修飾されたコハク化ゼラチンやトリメリット化ゼラチン、および酸化処理ゼラチンを用いる。特に、コハク化ゼラチンやトリメリット化ゼラチンを用いることが好ましい。
【0230】
成長中のpHは、2以上10以下、好ましくは4以上8以下である。ただし、コハク化ゼラチンおよびトリメリット化ゼラチン存在時には5以上8以下が好ましい。結晶成長期におけるAg+、およびハロゲンイオンの添加速度は、結晶臨界成長速度の20〜100%、好ましくは30〜100%の結晶成長速度になるようにすることが好ましい。この場合、結晶成長とともに銀イオンおよびハロゲンイオンの添加速度を増加させていくが、その場合、特公昭48−36890号公報、同52−16364号公報記載のように、銀塩およびハロゲン塩水溶液の添加速度を上昇させてもよく、水溶液の濃度を増加させてもよい。銀塩水溶液とハロゲン塩水溶液を同時に添加するダブルジェット法で行ってもよいが、米国特許第4,672,027号明細書および同第4,693,964号明細書に記載の硝酸銀水溶液と臭化物を含むハロゲン水溶液と沃化銀微粒子乳剤を同時に添加することが好ましい。この際、成長の温度は、50℃以上90℃以下が好ましく、60℃以上85℃以下が更に好ましい。
また、添加するAgI微粒子乳剤は、あらかじめ調製したものでもよく、連続的に調製しながら添加してもよい。この際の調製方法は特開平10−43570号公報を参考にできる。
【0231】
添加するAgI乳剤の平均粒子サイズは0.005μm以上0.1μm以下、好ましくは0.007μm以上0.08μm以下である。基盤粒子のヨード組成は、添加するAgI乳剤の量により変化させることができる。
【0232】
さらに、銀塩水溶液とハロゲン塩水溶液の添加の代わりに、ヨウ臭化銀微粒子を添加することは好ましい。この際、微粒子のヨード量を所望する基盤粒子のヨード量と等しくすることで、所望のヨード組成の基盤粒子が得られる。ヨウ臭化銀微粒子はあらかじめ調製したものでもよいが、連続的に調製しながら添加する方が好ましい。添加するヨウ臭化銀微粒子サイズは、0.005μm以上0.1μm以下、好ましくは0.01μm以上0.08μm以下である。成長時の温度は50℃以上90℃以下、好ましくは60℃以上85℃以下である。
【0233】
次に、(b)工程について説明する。
まず、(b1)工程について説明する。(b1)工程は第1シェル工程と第2シェル工程から成る。上述した基盤に第1シェルを設ける。第1シェルの比率は好ましくは全銀量に対して1mol%以上30mol%以下であって、その平均沃化銀含有率20mol%以上100mol%以下である。より好ましくは第1シェルの比率は全銀量に対して1mol%以上20mol%以下であって、その平均沃化銀含有率25mol%以上100mol%以下である。基盤への第1シェルの成長は基本的には硝酸銀水溶液と沃化物と臭化物を含むハロゲン水溶液をダブルジェット法で添加する。もしくは硝酸銀水溶液と沃化物を含むハロゲン水溶液をダブルジェット法で添加する。もしくは沃化物を含むハロゲン水溶液をシングルジェット法で添加する。
【0234】
以上のいずれの方法でも、それらの組み合わせでもよい。第1シェルの平均沃化銀含有率から明らかなように、第1シェル形成時には沃臭化銀混晶の他に沃化銀が析出し得る。いずれの場合でも通常は、次の第2シェルの形成時に、沃化銀は消失し、すべて沃臭化銀混晶に変化する。
【0235】
第1シェルの形成の好ましい方法として沃臭化銀もしくは沃化銀微粒子乳剤を添加して熟成し溶解する方法がある。さらに、好ましい方法として沃化銀微粒子乳剤を添加して、その後硝酸銀水溶液の添加もしくは硝酸銀水溶液とハロゲン水溶液を添加する方法がある。この場合、沃化銀微粒子乳剤の溶解は、硝酸銀水溶液の添加により促進されるが、添加した沃化銀微粒子乳剤の銀量を用いて第1シェルとし、沃化銀含有率100mol%とする。そして添加した硝酸銀水溶液の銀量を用いて第2シェルとして計算する。沃化銀微粒子乳剤は急激に添加されることが好ましい。
【0236】
沃化銀微粒子乳剤を急激に添加するとは、好ましくは10分以内に沃化銀微粒子乳剤を添加することをいう。より好ましくは7分以内に添加することをいう。この条件は添加する系の温度、pBr、pH、ゼラチン等の保護コロイド剤の種類、濃度、ハロゲン化銀溶剤の有無、種類、濃度等により変化しうるが、上述したように短い方が好ましい。添加する時には実質的に硝酸銀等の銀塩水溶液の添加は行なわれない方が好ましい。添加時の系の温度は40℃以上90℃以下が好ましく、50℃以上80℃以下が特に好ましい。
【0237】
沃化銀微粒子乳剤は実質的に沃化銀であればよく、混晶となり得る限りにおいて臭化銀および/または塩化銀を含有していてもよい。好ましくは100%沃化銀である。沃化銀はその結晶構造においてβ体、γ体ならびに米国特許第4,672,026号明細書に記載されているようにα体もしくはα体類似構造があり得る。
【0238】
本発明においては、その結晶構造の制限は特にはないが、β体とγ体の混合物がさらに好ましくはβ体が用いられる。沃化銀微粒子乳剤は米国特許第5,004,679号明細書等に記載の添加する直前に形成したものでもよいし、通常の水洗工程を経たものでもいずれでもよいが、本発明においては好ましくは通常の水洗工程を経たものが用いられる。沃化銀微粒子乳剤は、米国特許第4,672,026号明細書等に記載の方法で容易に形成できうる。粒子形成時のpI値を一定にして粒子形成を行う、銀塩水溶液と沃化物塩水溶液のダブルジェット添加法が好ましい。ここでpIは系のI−イオン濃度の逆数の対数である。温度、pI、pH、ゼラチン等の保護コロイド剤の種類、濃度、ハロゲン化銀溶剤の有無、種類、濃度等に特に制限はないが、粒子のサイズは0.1μm以下、より好ましくは0.07μm以下が本発明に都合がよい。微粒子であるために粒子形状は完全には特定できないが粒子サイズの分布の変動係数は25%以下が好ましい。特に20%以下の場合には、本発明の効果が著しい。ここで沃化銀微粒子乳剤のサイズおよびサイズ分布は、沃化銀微粒子を電子顕微鏡観察用のメッシュにのせ、カーボンレプリカ法ではなく直接、透過法によって観察して求める。これは粒子サイズが小さいために、カーボンレプリカ法による観察では測定誤差が大きくなるためである。粒子サイズは観察された粒子と等しい投影面積を有する円の直径と定義する。粒子サイズの分布についても、この等しい投影面積円直径を用いて求める。本発明において最も有効な沃化銀微粒子は粒子サイズが0.06μm以下0.02μm以上であり、粒子サイズ分布の変動係数が18%以下である。
【0239】
沃化銀微粒子乳剤は上述の粒子形成後、好ましくは米国特許第2,614,929号明細書等に記載の通常の水洗およびpH、pI、ゼラチン等の保護コロイド剤の濃度調整ならびに含有沃化銀の濃度調整が行われる。pHは5以上7以下が好ましい。pI値は沃化銀の溶解度が最低になるpI値もしくはその値よりも高いpI値に設定することが好ましい。保護コロイド剤としては、平均分子量10万程度の通常のゼラチンが好ましく用いられる。平均分子量2万以下の低分子量ゼラチンも好ましく用いられる。また上記の分子量の異なるゼラチンを混合して用いると都合がよい場合がある。乳剤1kgあたりのゼラチン量は好ましくは10g以上100g以下である。より好ましくは20g以上80g以下である。乳剤1kgあたりの銀原子換算の銀量は好ましくは10g以上100g以下である。より好ましくは20g以上80g以下である。ゼラチン量および/または銀量は沃化銀微粒子乳剤を急激に添加するのに適した値を選択することが好ましい。
【0240】
沃化銀微粒子乳剤は、通常あらかじめ溶解して添加するが、添加時には系の撹拌効率を十分に高める必要がある。好ましくは撹拌回転数は、通常よりも高めに設定される。撹拌時の泡の発生を防じるために消泡剤の添加は効果的である。具体的には、米国特許第5,275,929号明細書の実施例等に記述されている消泡剤が用いられる。
【0241】
第1シェル形成のさらに好ましい方法として、従来の沃化物イオン供給法(フリーな沃化物イオンを添加する方法)のかわりに米国特許第5、496、694号明細書に記載の沃化物イオン放出剤を用いて、沃化物イオンを急激に生成せしめながら沃化銀を含むハロゲン化銀相を形成することができる。
【0242】
沃化物イオン放出剤は沃化物イオン放出調節剤(塩基および/または求核試薬)との反応により沃化物イオンを放出するが、この際に用いる求核試薬としては好ましくは以下の化学種が挙げられる。例えば、水酸化物イオン、亜硫酸イオン、ヒドロキシルアミン、チオ硫酸イオン、メタ重亜硫酸イオン、ヒドロキサム酸類、オキシム類、ジヒドロキシベンゼン類、メルカプタン類、スルフィン酸塩、カルボン酸塩、アンモニア、アミン類、アルコール類、尿素類、チオ尿素類、フェノール類、ヒドラジン類、ヒドラジド類、セミカルバジド類、ホスフィン類、スルフィド類が挙げられる。
【0243】
塩基や求核試薬の濃度、添加方法、また反応液の温度をコントロールすることにより沃化物イオンの放出速度、タイミングをコントロールすることができる。塩基として好ましくは水酸化アルカリが挙げられる。
【0244】
沃化物イオンを急激に生成せしめるのに用いる沃化物イオン放出剤及び沃化物イオン放出調節剤の好ましい濃度範囲は1×10−7〜20Mであり、より好ましくは1×10−5〜10M、さらに好ましくは1×10−4〜5M、特に好ましくは1×10−3〜2Mである。
濃度が20Mを上回ると、分子量の大きい沃化物イオン放出剤及び沃化物イオン放出剤の添加量が粒子形成容器の容量に対して多くなり過ぎるため好ましくない。
また、1×10−7Mを下回ると沃化物イオン放出反応速度が遅くなり、沃化物イオン放出剤を急激に生成せしめるのが困難になるため好ましくない。
【0245】
好ましい温度範囲は30〜80℃であり、より好ましくは35〜75℃、特に好ましくは35〜60℃である。
温度が80℃上回る高温では一般に沃化物イオン放出反応速度が極めて速くなり、また30℃下回る低温では一般に沃化物イオン放出反応速度が極めて遅くなるため、それぞれ使用条件が限られ好ましくない。
【0246】
沃化物イオンの放出の際に塩基を用いる場合、液pHの変化を用いてもよい。
【0247】
この時、沃化物イオンの放出速度、タイミングをコントロールするのに好ましいpHの範囲は2〜12であり、より好ましくは3〜11、特に好ましくは5〜10、最も好ましくは調節後のpHが7.5〜10.0である。pH7の中性条件下でも水のイオン積により定まる水酸化物イオンが調節剤として作用する。
【0248】
また、求核試薬と塩基を併用してもよく、この時もpHを上記の範囲でコントロールし、沃化物イオンの放出速度、タイミングをコントロールしてもよい。
沃化物イオン放出剤から沃素原子を沃化物イオンの形で放出させる場合、全沃素原子を放出させてもよいし、一部は分解せずに残っていてもよい。
【0249】
上述した基盤および第1シェルを有する平板粒子上に第2シェルを設ける。第2シェルの比率は好ましくは全銀量に対して10mol%以上40mol%以下であって、その平均沃化銀含有率が0mol%以上5mol%以下である。より好ましくは第2シェルの比率は全銀量に対して15mol%以上30mol%以下であって、その平均沃化銀含有率が0mol%以上3mol%以下である。基盤および第1シェルを有する平板粒子上への第2シェルの成長は該平板粒子のアスペクト比を上げる方向でも下げる方向でもよい。基本的には硝酸銀水溶液と臭化物を含むハロゲン水溶液をダブルジェット法で添加することにより第2シェルの成長は行なわれる。もしくは臭化物を含むハロゲン水溶液を添加した後、硝酸銀水溶液をシングルジェット法で添加してもよい。系の温度、pH、ゼラチン等の保護コロイド剤の種類、濃度、ハロゲン化銀溶剤の有無、種類、濃度等は広範に変化しうる。pBrについては、本発明においては該層の形成終了時のpBrが該層の形成初期時のpBrよりも高くなることが好ましい。好ましくは該層の形成初期のpBrが2.9以下であり該層の形成終了時のpBrが1.7以上である。さらに好ましくは該層の形成初期のpBrが2.5以下であり該層の形成終了時のpBrが1.9以上である。最も好ましくは該層の形成初期のpBrが2.3以下1以上である。最も好ましくは該層の終了時のpBrが2.1以上4.5以下である。
【0250】
(b1)工程の部分には転位線が存在することが好ましい。転位線は平板粒子の側面部近傍に存在することが好ましい。側面部近傍とは、平板粒子の六辺の側面部とその内側部分、すなわち(b1)工程で成長させた部分のことである。側面部に存在する転位線は1粒子当り平均10本以上が好ましい。より好ましくは1粒子当り平均20本以上である。転位線が密集して存在する場合、または転位線が互いに交わって観察される場合には、1粒子当りの転位線の数は明確には数えることができない場合がある。しかしながら、これらの場合においても、おおよそ10本、20本、30本という程度には数えることが可能であり、明らかに数本しか存在しない場合とは区別できる。転位線の数の1粒子当りの平均数については100粒子以上について転位線の数を数えて、数平均として求める。
【0251】
本発明の平板粒子は粒子間の転位線量分布が均一であることが望ましい。本発明の乳剤は1粒子当たり10本以上の転位線を含むハロゲン化銀粒子が全粒子の100〜50%を占めることが好ましく、より好ましくは100〜70%を、特に好ましくは100〜90%を占める。50%を下回ると粒子間の均質性の点で好ましくない。
【0252】
本発明において転位線を含む粒子の割合及び転位線の本数を求める場合は、少なくとも100粒子について転位線を直接観察して求めることが好ましく、より好ましくは200粒子以上、特に好ましくは300粒子以上について観察して求める。
【0253】
次に、(b2)工程について説明する。
(b2)工程としては、第一の態様として、頂点近傍のみをヨウ化物イオンにより溶解する方法;第二の態様として、銀塩溶液とヨウ化物塩溶液を同時に添加する方法;第三の態様として、ハロゲン化銀溶剤を用いて頂点近傍のみを実質的に溶解する方法;第四の態様として、ハロゲン変換を介する方法;がある。
【0254】
第一の態様であるヨウ化物イオンにより溶解する方法について説明する。
基盤粒子にヨウ化物イオンを添加することで基盤粒子の各頂点部近傍が溶解して丸みを帯びる。続けて、硝酸銀溶液と臭化物溶液、または、硝酸銀溶液と臭化物溶液とヨウ化物溶液の混合液を同時に添加すると粒子は更に成長して頂点近傍に転位が導入される。この方法に関しては、特開平4−149541号公報、および特開平9−189974号公報を参考にできる。
【0255】
本態様において添加されるヨウ化物イオンの総量は、該ヨウ化物イオン総モル数を基盤粒子の総銀量モル数で除した値に100を掛けた値をI2(mol%)とした時、基盤粒子のヨウ化銀含有率I1(mol%)に対して、(I2−I1)が0以上8以下を満たすことが本発明に従う効果的な溶解を得る上で好ましく、より好ましくは0以上4以下である。
【0256】
本態様において添加されるヨウ化物イオンの濃度は低い方が好ましく、具体的には0.2mol/L以下の濃度であることが好ましく、更に好ましくは0.1mol/Lである。
また、ヨウ化物イオン添加時のpAgは8.0以上が好ましく、更に好ましくは8.5以上である。
【0257】
基盤粒子へのヨウ化物イオンの添加による該基盤粒子の頂点部溶解に引き続き、硝酸銀溶液の単独添加、または、硝酸銀溶液と臭化物溶液、もしくは、硝酸銀溶液と臭化物溶液とヨウ化物溶液の混合液を同時に添加して粒子を更に成長させ頂点近傍に転位を導入させる。
【0258】
第二の態様である銀塩溶液とヨウ化物塩溶液との同時添加による方法について説明する。
基盤粒子に対して銀塩溶液とヨウ化物塩溶液を急速に添加することで粒子の頂点部にヨウ化銀もしくはヨウ化銀含率の高いハロゲン化銀をエピタキシャル生成させることができる。この際、銀塩溶液とヨウ化物塩溶液の好ましい添加速度は0.2分〜0.5分であり、更に好ましくは0.5分から2分である。この方法に関しては、特開平4−149541号公報に詳細に記載されているので、参考にすることができる。
【0259】
基盤粒子へのヨウ化物イオンの添加による該基盤粒子の頂点部溶解に引き続き、硝酸銀溶液の単独添加、または、硝酸銀溶液と臭化物溶液、もしくは、硝酸銀溶液と臭化物溶液とヨウ化物溶液の混合液を同時に添加して粒子を更に成長させ頂点近傍に転位を導入させる。
【0260】
第三の態様であるハロゲン化銀溶剤を用いる方法について説明する。
基盤粒子を含む分散媒にハロゲン化銀溶剤を加えた後、銀塩溶液とヨウ化物塩溶液を同時添加すると、ハロゲン化銀溶剤により溶解した基盤粒子の頂点部にヨウ化銀もしくはヨウ化銀含率の高いハロゲン化銀が優先的に成長することになる。この際、銀塩溶液およびヨウ化物塩溶液は急速に添加する必要はない。この方法に関しては、特開平4−149541号公報に詳細に記載されているので、これを参考にできる。
【0261】
基盤粒子へのヨウ化物イオンの添加による該基盤粒子の頂点部溶解に引き続き、硝酸銀溶液の単独添加、または、硝酸銀溶液と臭化物溶液、もしくは、硝酸銀溶液と臭化物溶液とヨウ化物溶液の混合液を同時に添加して粒子を更に成長させ頂点近傍に転位を導入させる。
【0262】
第四の態様であるハロゲン変換を介する方法について説明する。
基盤粒子にエピタキシャル成長部位指示剤(以下、サイトダイレクターと呼ぶ)、例えば特開昭58−108526号公報記載の増感色素や、水溶性ヨウ化物を添加することで基盤粒子の頂点部に塩化銀のエピタキシャルを形成した後ヨウ化物イオンを添加することで塩化銀をヨウ化銀もしくはヨウ化銀含率の高いハロゲン化銀へハロゲン変換する方法である。サイトダイレクターは増感色素、水溶性チオシアン酸イオン、および水溶性ヨウ化物イオンが使用できるが、沃化物イオンが好ましい。ヨウ化物イオンは基盤粒子に対して0.0005〜1mol%、好ましくは0.001〜0.5mol%が好ましい。最適な量の沃化物イオンを添加した後、銀塩溶液と塩化物塩溶液の同時添加すると塩化銀のエピタキシャルを基盤粒子の頂点部に形成できる。
【0263】
塩化銀のヨウ化物イオンによるハロゲン変換について説明する。溶解度の大きいハロゲン化銀は溶解度のより小さいハロゲン化銀を形成し得るハロゲンイオンを添加することにより、溶解度のより小さいハロゲン化銀に変換される。この過程はハロゲン変換と呼ばれ、例えば米国特許第4,142,900号に記載されている。基盤の頂点部にエピタキシャル成長した塩化銀をヨウ化物イオンにより選択的にハロゲン変換することで基盤粒子頂点部にヨウ化銀相を形成させる。詳細は、特開平4−149541号公報に記載されている。
【0264】
基盤粒子の頂点部にエピタキシャル成長した塩化銀をヨウ化物イオンの添加によるヨウ化銀相へのハロゲン変換に引き続き、硝酸銀溶液の単独添加、または、硝酸銀溶液と臭化物溶液、もしくは、硝酸銀溶液と臭化物溶液とヨウ化物溶液の混合液を同時に添加して粒子を更に成長させ頂点近傍に転位を導入させる。
【0265】
(b2)工程の部分には転位線が存在することが好ましい。転位線は平板粒子の頂点部近傍に存在することが好ましい。頂点部近傍とは、粒子の中心と各頂点を結ぶ直線の中心からx%の位置の点から、各頂点を作る辺に垂線を下した時に、その垂線とその辺とで囲まれた三次元の部分のことである。このxの値は好ましくは50以上100未満、さらに好ましくは75以上100未満である。側面部に存在する転位線は1粒子当り平均10本以上が好ましい。より好ましくは1粒子当り平均20本以上である。転位線が密集して存在する場合、または転位線が互いに交わって観察される場合には、1粒子当りの転位線の数は明確には数えることができない場合がある。しかしながら、これらの場合においても、おおよそ10本、20本、30本という程度には数えることが可能であり、明らかに数本しか存在しない場合とは区別できる。転位線の数の1粒子当りの平均数については100粒子以上について転位線の数を数えて、数平均として求める。
【0266】
本発明の平板粒子は粒子間の転位線量分布が均一であることが望ましい。本発明の乳剤は1粒子当たり10本以上の転位線を含むハロゲン化銀粒子が全粒子の100〜50%を占めることが好ましく、より好ましくは100〜70%を、特に好ましくは100〜90%を占める。50%を下回ると粒子間の均質性の点で好ましくない。
【0267】
本発明において転位線を含む粒子の割合及び転位線の本数を求める場合は、少なくとも100粒子について転位線を直接観察して求めることが好ましく、より好ましくは200粒子以上、特に好ましくは300粒子以上について観察して求める。
【0268】
次に、(b3)工程について説明する。
基盤粒子へのハロゲン化銀のエピタキシャル形成に関しては、米国特許第4,435,501号明細書に記載されているように、基盤粒子表面に吸着したヨウ化物イオン、アミノアザインデン、もしくは分光増感色素等のサイトダイレクターによって銀塩エピタキシャルが選択された部位、例えば基盤粒子の側面、もしくは頂点に形成できることが示されている。また、特開平8−69069号公報には極薄平板粒子基盤の選択された部位に銀塩エピタキシャルを形成させ、このエピタキシャル相を最適な化学増感することで高感化を達成している。
【0269】
本発明においても、これらの方法を用いて本発明の基盤粒子を高感化することは非常に好ましい。サイトダイレクターは、アミノアザインデン、もしくは分光増感色素を用いてもよいし、ヨウ化物イオン、もしくはチオシアン酸イオンを用いることができ、目的に応じて使い分けることもできるし、組み合わせてもよい。
【0270】
増感色素量、ヨウ化物イオン、およびチオシアン酸イオンの添加量を変化させることで、銀塩エピタキシャルの形成部位を、基盤粒子の側面、あるいは頂点に限定させることができる。添加するヨウ化物イオンの量は、基盤粒子の銀量に対して0.0005〜1.0mol%、好ましくは、0.001〜0.5mol%である。また、チオシアン酸イオンの量は、基盤粒子の銀量に対して、0.01〜0.2mol%、好ましくは、0.02〜0.1mol%である。これらサイトダイレクター添加後に、銀塩溶液とハロゲン塩溶液を添加して銀塩エピタキシャルを形成する。この際の、温度は、40〜70℃が好ましく、45〜60℃が更に好ましい。また、この際のpAgは7.5以下が好ましく、6.5以下が更に好ましい。サイトダイレクターを用いることで、基盤粒子の頂点部、もしくは側面部に銀塩のエピタキシャルが形成される。こうして得た乳剤を、特開平8−69069号公報のようにエピタキシャル相に選択的に化学増感を施して高感化させてもよいが、銀塩エピタキシャル形成に引き続き、銀塩溶液とハロゲン塩溶液を同時添加して更に成長させてもよい。この際添加するハロゲン塩水溶液は、臭化物塩溶液、もしくは、臭化物塩溶液とヨウ化物塩溶液との混合液が好ましい。またこの際の温度は、40〜80℃が好ましく、45〜70℃が更に好ましい。また、この際のpAgは5.5以上9.5以下が好ましく、6.0以上9.0以下が好ましい。
【0271】
(b3)工程において形成されるエピタキシャルは、基本的に(a)工程で形成した基盤粒子の外部に基盤粒子とは異なるハロゲン組成が形成されていることを特徴とする。エピタキシャルの組成は、AgCl、AgBrCl、AgBrClI、AgBrI、AgI、AgSCN等が好ましい。また、エピタキシャル層に特開平8−69069号公報に記載されているような「ドーパント(金属錯体)」を導入することはさらに好ましい。エピタキシャル成長の位置は、基盤粒子の頂点部、側面部、主平面部の少なくとも一部分でもよく、複数の個所にまたがってもよい。頂点部のみ、もしくは、側面部のみ、もしくは、頂点部と側面部の形態を取ることが好ましい。
【0272】
(b3)工程の部分には転位線が存在しなくてもよいが、転位線が存在することはさらに好ましい。転位線は基盤粒子とエピタキシャル成長部との接合部、もしくはエピタキシャル部に存在することが好ましい。接合部、もしくはエピタキシャル部に存在する転位線は1粒子当り平均10本以上が好ましい。より好ましくは1粒子当り平均20本以上である。転位線が密集して存在する場合、または転位線が互いに交わって観察される場合には、1粒子当りの転位線の数は明確には数えることができない場合がある。しかしながら、これらの場合においても、おおよそ10本、20本、30本という程度には数えることが可能であり、明らかに数本しか存在しない場合とは区別できる。転位線の数の1粒子当りの平均数については100粒子以上について転位線の数を数えて、数平均として求める。
【0273】
エピタキシャル部の形成時に6シアノ金属錯体がドープされているのが好ましい。6シアノ金属錯体のうち、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム又はクロムを含有するものが好ましい。金属錯体の添加量は、ハロゲン化銀1mol当たり10−9〜10−2molの範囲であることが好ましく、ハロゲン化銀1mol当たり10−8〜10−4molの範囲であることがさらに好ましい。金属錯体は、水または有機溶媒に溶かして添加することができる。有機溶媒は水と混和性を有することが好ましい。有機溶媒の例には、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、及びアミド類が含まれる。
【0274】
金属錯体としては、下記式(MA)で表される6シアノ金属錯体が特に好ましい。6シアノ金属錯体は、高感度の感光材料が得られ、しかも生感光材料を長期間保存したときでも被りの発生を抑制するという効果を有する。
一般式(MA)
[M(CN)6]n−
式中、Mは鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウムまたはクロムであり、nは3または4である。
【0275】
前記6シアノ金属錯体の具体例を以下に示す。
(MA−1) [Fe(CN)6]4−
(MA−2) [Fe(CN)6]3−
(MA−3) [Ru(CN)6]4−
(MA−4) [Os(CN)6]4−
(MA−5) [Co(CN)6]3−
(MA−6) [Rh(CN)6]3−
(MA−7) [Ir(CN)6]3−
(MA−8) [Cr(CN)6]4−。
【0276】
6シアノ錯体の対カチオンは、水と混和しやすく、ハロゲン化銀乳剤の沈殿操作に適合しているイオンを用いることが好ましい。対イオンの例には、アルカリ金属イオン(例、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、リチウムイオン)、アンモニウムイオンおよびアルキルアンモニウムイオンが含まれる。
【0277】
本発明に用いられる平板粒子は粒子間の転位線量分布が均一であることが望ましい。本発明の乳剤は1粒子当たり10本以上の転位線を含むハロゲン化銀粒子が全粒子の100〜50%を占めることが好ましく、より好ましくは100〜70%を、特に好ましくは100〜90%を占める。50%を下回ると粒子間の均質性の点で好ましくない。
【0278】
本発明において転位線を含む粒子の割合及び転位線の本数を求める場合は、少なくとも100粒子について転位線を直接観察して求めることが好ましく、より好ましくは200粒子以上、特に好ましくは300粒子以上について観察して求める。
【0279】
本発明の乳剤の調製時に用いられる分散媒もしくは保護コロイドとして、及びその他の親水性コロイド層のバインターとしては、ゼラチンを用いるのが有利であるが、それ以外の親水性コロイドも用いることができる。
【0280】
例えば、ゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマー、アルブミン、カゼインのような蛋白質;ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロース硫酸エステル類のようなセルロース誘導体、アルギン酸ソーダ、澱粉誘導体のような糖誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分アセタール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピラゾールのような単一あるいは共重合体の如き多種の合成親水性高分子物質を用いることができる。
【0281】
ゼラチンとしては、上述のゼラチン、石灰処理ゼラチンのほか、酸処理ゼラチンやBull.Soc.Sci.Photo.Japan.No.16.P30(1966)に記載されたような酵素処理ゼラチンを用いてもよく、また、ゼラチンの加水分解物や酵素分解物も用いることができる。
【0282】
好ましくは、アミノ基が95%以上修飾されたコハク化ゼラチン、およびトリメリット化ゼラチン、または酸化処理ゼラチンである、また低分子量ゼラチン、および低分子量酸化処理ゼラチンを用いることも好ましい。
【0283】
さらに、分子量分布が28万以上の成分を全ゼラチンに対して、30質量%以上、好ましくは35質量%以上含んでいるゼラチンを用いてもよい。石灰処理ゼラチンは、その分子量に基づいてサブα(低分子量)、α(分子量約10万)、β(分子量約20万)、γ(分子量約30万)および大高分子部分(ボイド:分子量30万より大)からなる。それぞれの成分の比率、すなわち分子量分布は、国際的に定められたPAGI法により測定される。更に詳しい説明および製法は、特開平11−237704号広報に詳細に記載されている。
【0284】
本発明の乳剤は脱塩のために水洗し、新しく用意した保護コロイド分散にすることが好ましい。この際の保護コロイドは上述した親水性コロイドおよびゼラチンを用いることができる。この際、分子量分布が28万以上の成分を30%以上、好ましくは35%以上含んでいるゼラチンを用いることは好ましい。水洗の温度は目的に応じて選べるが、5℃〜50℃の範囲で選ぶことが好ましい。水洗時のpHも目的に応じて選べるが2〜10の間で選ぶことが好ましい。さらに好ましくは3〜8の範囲である。水洗時のpAgも目的に応じて選べるが5〜10の間で選ぶことが好ましい。水洗の方法としてヌードル水洗法、半透膜を用いた透析法、遠心分離法、凝析沈降法、イオン交換法のなかから選んで用いることができる。凝析沈降法の場合には硫酸塩を用いる方法、有機溶剤を用いる方法、水溶性ポリマーを用いる方法、ゼラチン誘導体を用いる方法などから選ぶことができる。
【0285】
本発明の乳剤は、グラフキデ著「写真の物理と化学」、ポールモンテル社刊(P.Glafkides,Chemie et Phisique Photographique,Paul Montel,1967)、ダフィン著「写真乳剤化学」,フォーカルプレス社刊(G.F.Duffin,Photographic EMulsion Chemistry(Focal Press,1966))、ゼリクマン等著「写真乳剤の製造と塗布」、フォーカルプレス社刊(V.L.Zelikman et al.,Making and Coating Photographic EMulsion,Focal Press,1964)などに記載された方法に基づいて調製することができる。すなわち、酸性法、中性法、アンモニア法等のいずれでもよく、また可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させる形式としては片側混合法、同時混合法、それらの組合わせなどのいずれを用いてもよい。粒子を銀イオン過剰の下において形成させる方法(いわゆる逆混合法)を用いることもできる。同時混合法の一つの形式としてハロゲン化銀の生成する液相中のpAg を一定に保つ方法、すなわちいわゆるコントロールド・ダブルジェット法を用いることもできる。この方法によると、結晶形が規則的で粒子サイズが均一に近いハロゲン化銀写真乳剤が得られる。
【0286】
乳剤調製用の反応容器にあらかじめ沈澱形成したハロゲン化銀粒子を添加する方法、米国特許第4,334,012号明細書、同第4,301,241号明細書、同第4,150,994号明細書に記載の方法は、場合により好ましい。これらは種結晶として用いることもできるし、成長用のハロゲン化銀として供給する場合も有効である。後者の場合粒子サイズの小さい乳剤を添加するのが好ましく、添加方法として一度に全量添加、複数回に分割して添加あるいは連続的に添加するなどのなかから選んで用いることができる。また表面を改質させるために種々のハロゲン組成の粒子を添加することも場合により有効である。
【0287】
ハロゲン化銀粒子のハロゲン組成の大部分あるいはごく一部分をハロゲン変換法によって変換させる方法は米国特許第3,477,852号明細書、同第4,142,900号明細書、欧州特許273,429号明細書、同第273,430号明細書、西独公開特許第3,819,241号明細書などに開示されており、有効な粒子形成法である。より難溶性の銀塩に変換するのに可溶性ハロゲンの溶液あるいはハロゲン化銀粒子を添加することができる。一度に変換する、複数回に分割して変換する、あるいは連続的に変換するなどの方法から選ぶことができる。
【0288】
粒子成長の方法として、一定濃度、一定流速で可溶性銀塩とハロゲン塩を添加する方法以外に、英国特許第1,469,480号明細書、米国特許第3,650,757号明細書、同第4,242,445号明細書に記載されているように濃度を変化させる、あるいは流速を変化させる粒子形成法は好ましい方法である。濃度を増加させる、あるいは流速を増加させることにより、供給するハロゲン化銀量を添加時間の一次関数、二次関数、あるいはより複雑な関数で変化させることができる。また必要により供給ハロゲン化銀量を減量することも場合により好ましい。さらに溶液組成の異なる複数個の可溶性銀塩を添加する、あるいは溶液組成の異なる複数個の可溶性ハロゲン塩を添加する場合に、一方を増加させ、もう一方を減少させるような添加方式も有効な方法である。
【0289】
可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩の溶液を反応させる時の混合器は米国特許第2,996,287号明細書、同第3,342,605号明細書、同第3,415,650号明細書、同第3,785,777号明細書、西独公開特許2,556,885号明細書、同第2,555,364号明細書に記載されている方法のなかから選んで用いることができる。
【0290】
熟成を促進する目的に対してハロゲン化銀溶剤が有用である。例えば熟成を促進するのに過剰量のハロゲンイオンを反応器中に存在せしめることが知られている。また他の熟成剤を用いることもできる。これらの熟成剤は銀およびハロゲン化物塩を添加する前に反応器中の分散媒中に全量を配合しておくことができるし、ハロゲン化物塩、銀塩または解膠剤を加えると共に反応器中に導入することもできる。別の変形態様として、熟成剤をハロゲン化物塩および銀塩添加段階で独立して導入することもできる。
【0291】
熟成剤としては、例えば、アンモニア、チオシアン酸塩(例えば、ロダンカリ、ロダンアンモニウム)、有機チオエーテル化合物(例えば、米国特許第3,574,628号明細書、同第3,021,215号明細書、同第3,057,724号明細書、同第3,038,805号明細書、同第4,276,374号明細書、同第4,297,439号明細書、同第3,704,130号明細書、同第4,782,013号明細書、特開昭57−104926号公報に記載の化合物)、チオン化合物(例えば、特開昭53−82408号公報、同55−77737号公報、米国特許第4,221,863号明細書に記載されている四置換チオウレアや、特開昭53−144319号公報に記載されている化合物)や、特開昭57−202531号公報に記載されているハロゲン化銀粒子の成長を促進しうるメルカプト化合物、アミン化合物(例えば、特開昭54−100717号公報)
が挙げられる。
【0292】
米国特許第3,772,031号明細書に記載されているようなカルコゲン化合物を乳剤調製中に添加する方法も有用な場合がある。S、Se、Te以外にもシアン塩、チオシアン塩、セレノシアン酸、炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩を存在させてもよい。
【0293】
本発明のハロゲン化銀粒子は硫黄増感、セレン増感等のカルコゲン増感;金増感、パラジウム増感等の貴金属増感;及び還元増感の少なくとも1つをハロゲン化銀乳剤の製造工程の任意の工程で施こすことができる。2種以上の増感法を組み合せることは好ましい。どの工程で化学増感するかによって種々のタイプの乳剤を調製することができる。粒子の内部に化学増感核をうめ込むタイプ、粒子表面から浅い位置にうめ込むタイプ、あるいは表面に化学増感核を作るタイプがある。本発明の乳剤は目的に応じて化学増感核の場所を選ぶことができるが、一般に好ましいのは表面近傍に少なくとも一種の化学増感核を作った場合である。
【0294】
本発明で好ましく実施しうる化学増感の一つはカルコゲン増感と貴金属増感の単独又は組合せであり、ジェームス(T.H.James)著、ザ・フォトグラフィック・プロセス、第4版、マクミラン社刊、1977年、(T.H.James、The Theory of the Photographic Process,4th ed,Macmillan,1977)67−76頁に記載されるように活性ゼラチンを用いて行うことができるし、またリサーチ・ディスクロージャー、120巻、1974年4月、12008;リサーチ・ディスクロージャー、34巻、1975年6月、13452、米国特許第2,642,361号明細書、同第3,297,446号明細書、同第3,772,031号明細書、同第3,857,711号明細書、同第3,901,714号明細書、同第4,266,018号明細書、および同第3,904,415号明細書、並びに英国特許第1,315,755号明細書に記載されるようにpAg 5〜10、pH5〜8および温度30〜80℃において硫黄、セレン、テルル、金、白金、パラジウム、イリジウムまたはこれら増感剤の複数の組合せとすることができる。貴金属増感においては、金、白金、パラジウム、イリジウム等の貴金属塩を用いることができ、中でも特に金増感、パラジウム増感および両者の併用が好ましい。金増感の場合には、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレナイドのような公知の化合物を用いることができる。パラジウム化合物はパラジウム2価塩または4価の塩を意味する。好ましいパラジウム化合物は、R2PdX6またはR2PdX4で表わされる。ここでRは水素原子、アルカリ金属原子またはアンモニウム基を表わす。Xはハロゲン原子を表わし塩素、臭素または沃素原子を表わす。
【0295】
具体的には、K2PdCl4、(NH4)2PdCl6、Na2PdCl4、(NH4)2PdCl4、Li2PdCl4、Na2PdCl6またはK2PdBr4が好ましい。金化合物およびパラジウム化合物はチオシアン酸塩あるいはセレノシアン酸塩と併用することが好ましい。
【0296】
硫黄増感剤として、ハイポ、チオ尿素系化合物、ロダニン系化合物および米国特許第3,857,711号明細書、同第4,266,018号明細書および同第4,054,457号明細書に記載されている硫黄含有化合物を用いることができる。いわゆる化学増感助剤の存在下に化学増感することもできる。有用な化学増感助剤には、アザインデン、アザピリダジン、アザピリミジンのごとき、化学増感の過程でカブリを抑制し、且つ感度を増大するものとして知られた化合物が用いられる。化学増感助剤改質剤の例は、米国特許第2,131,038号明細書、同第3,411,914号明細書、同第3,554,757号明細書、特開昭58−126526号公報および前述ダフィン著「写真乳剤化学」、138〜143頁に記載されている。
【0297】
本発明の乳剤は金増感を併用することが好ましい。金増感剤の好ましい量としてハロゲン化銀1mol当り1×10−4〜1×10−7molであり、さらに好ましいのは1×10−5〜5×10−7molである。パラジウム化合物の好ましい範囲は1×10−3から5×10−7である。チオシアン化合物あるいはセレノシアン化合物の好ましい範囲は5×10−2から1×10−6である。
【0298】
本発明のハロゲン化銀粒子に対して使用する好ましい硫黄増感剤量はハロゲン化銀1mol当り1×10−4〜1×10−7molであり、さらに好ましいのは1×10−5〜5×10−7molである。
【0299】
本発明の乳剤に対して好ましい増感法としてセレン増感がある。セレン増感においては、公知の不安定セレン化合物を用い、具体的には、コロイド状金属セレニウム、セレノ尿素類(例えば、N,N−ジメチルセレノ尿素、N,N−ジエチルセレノ尿素)、セレノケトン類、セレノアミド類のようなセレン化合物を用いることができる。セレン増感は硫黄増感あるいは貴金属増感あるいはその両方と組み合せて用いた方が好ましい場合がある。
【0300】
本発明のハロゲン化銀写真乳剤を粒子形成中、粒子形成後でかつ化学増感前あるいは化学増感中、あるいは化学増感後に還元増感することは好ましい。
【0301】
ここで、還元増感とは、ハロゲン化銀写真乳剤に還元増感剤を添加する方法、銀熟成と呼ばれるpAg 1〜7の低pAg の雰囲気で成長あるいは熟成させる方法、高pH熟成と呼ばれるpH8〜11の高pHの雰囲気で成長あるいは熟成させる方法のいずれを選ぶこともできる。また2つ以上の方法を併用することもできる。
【0302】
還元増感剤を添加する方法は還元増感のレベルを微妙に調節できる点で好ましい方法である。
【0303】
還元増感剤としては、例えば、二酸化チオ尿素、アスコルビン酸およびその誘導体、アミンおよびポリアミン類、ヒドラジン誘導体、ジヒドロキシベンゼン類及びその誘導体(例えば4,5−ジヒドロキシー1,3−ベンゼンジスルホン酸ジナトリウムなど)、ヒドロキシアミン類及びその誘導体、シラン化合物、ボラン化合物が公知である。本発明の還元増感にはこれら公知の還元増感剤を選んで用いることができ、また2種以上の化合物を併用することもできる。還元増感剤としては二酸化チオ尿素、アスコルビン酸およびその誘導体、ヒドラジン誘導体、ジヒドロキシベンゼン類及びその誘導体が好ましい化合物である。還元増感剤の添加量は乳剤製造条件に依存するので添加量を選ぶ必要があるが、ハロゲン化銀1mol当り10−7〜10−1molの範囲がである。
【0304】
還元増感剤は、例えば、水あるいはアルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類のような有機溶媒に溶かし粒子成長中に添加される。あらかじめ反応容器に添加するのもよいが、粒子成長の適当な時期に添加する方法が好ましい。また水溶性銀塩あるいは水溶性アルカリハライドの水溶性にあらかじめ還元増感剤を添加しておき、これらの水溶液を用いてハロゲン化銀粒子を沈澱せしめてもよい。また粒子成長に伴って還元増感剤の溶液を何回かに分けて添加しても連続して長時間添加するのも好ましい方法である。
【0305】
本発明の乳剤の製造工程中に銀に対する酸化剤を用いることが好ましい。銀に対する酸化剤とは、金属銀に作用して銀イオンに変換せしめる作用を有する化合物をいう。特にハロゲン化銀粒子の形成過程および化学増感過程において副生するきわめて微小な銀粒子を、銀イオンに変換せしめる化合物が有効である。ここで生成する銀イオンは、例えば、ハロゲン化銀、硫化銀、セレン化銀のような水に難溶の銀塩を形成してもよく、又、硝酸銀のような水に易溶の銀塩を形成してもよい。銀に対する酸化剤は、無機物であっても、有機物であってもよい。無機の酸化剤としては、例えば、オゾン、過酸化水素およびその付加物(例えば、NaBO2・H2O2・3H2O、2NaCO3・3H2O2、Na4P2O7・2H2O2、2Na2SO4・H2O2・2H2O)、ペルオキシ酸塩(例えば、K2S2O8、K2C2O6、K2P2O8)、ペルオキシ錯体化合物(例えば、K2[Ti(O2)C2O4]・3H2O、4K2SO4・Ti(O2)OH・SO4・2H2O、Na3[VO(O2)(C2H4)2]・6H2O)、過マンガン酸塩(例えば、KMnO4)、クロム酸塩(例えば、K2Cr2O7)のような酸素酸塩、沃素や臭素のようなハロゲン元素、ハロゲンのオキソ酸塩(例えば、過沃素酸カリウム)、高原子価の金属の塩(例えば、ヘキサシアノ第二鉄酸カリウム)およびチオスルフォン酸塩がある。
【0306】
また、有機の酸化剤としては、p−キノンのようなキノン類、過酢酸や過安息香酸のような有機過酸化物、活性ハロゲンを放出する化合物(例えば、N−ブロムサクシンイミド、クロラミンT、クロラミンB)が例として挙げられる。
【0307】
本発明に用いる好ましい酸化剤は過酸化水素およびその付加物、ハロゲン元素、ハロゲンのオキソ酸塩、チオスルフォン酸塩の無機酸化剤及びキノン類の有機酸化剤である。前述の還元増感と銀に対する酸化剤を併用するのは好ましい態様である。酸化剤を用いたのち還元増感を施こす方法、その逆方法あるいは両者を同時に共存させる方法のなかから選んで用いることができる。これらの方法は粒子形成工程でも化学増感工程でも選んで用いることができる。
【0308】
本発明の乳剤には、感光材料の製造工程、保存中あるいは写真処理中のかぶりを防止し、あるいは写真性能を安定化させる目的で、種々の化合物を含有させることができる。すなわちチアゾール類、例えば、ベンゾチアゾリウム塩、ニトロイミダゾール類、ニトロベンズイミダゾール類、クロロベンズイミダゾール類、ブロモベンズイミダゾール類、メルカプトチアゾール類、メルカプトベンゾチアゾール類、メルカプトベンズイミダゾール類、メルカプトチアジアゾール類、アミノトリアゾール類、ベンゾトリアゾール類、ニトロベンゾトリアゾール類、メルカプトテトラゾール類(特に1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール);メルカプトピリミジン類;メルカプトトリアジン類;例えば、オキサドリンチオンのようなチオケト化合物;アザインデン類、例えば、トリアザインデン類、テトラアザインデン類(特に4−ヒドロキシ置換(1,3,3a,7)チトラアザインデン類)、ペンタアザインデン類のようなかぶり防止剤または安定剤として知られた、多くの化合物を加えることができる。例えば、米国特許第3,954,474号明細書、同第3,982,947号明細書、特公昭52−28660号公報に記載されたものを用いることができる。好ましい化合物の一つに特開昭63−212932号公報に記載された化合物がある。かぶり防止剤および安定剤は粒子形成前、粒子形成中、粒子形成後、水洗工程、水洗後の分散時、化学増感前、化学増感中、化学増感後、塗布前のいろいろな時期に目的に応じて添加することができる。乳剤調製中に添加して本来のかぶり防止および安定化効果を発現する以外に、粒子の晶壁を制御する、粒子サイズを小さくする、粒子の溶解性を減少させる、化学増感を制御する、色素の配列を制御するなど多目的に用いることができる。
【0309】
本発明の乳剤は、増感色素によって分光増感された乳剤である。青感色性以外の増感色素によって分光増感されているのが好ましい。青感性色素は通常添加量が比較的少量でも、目的の性能が得られるが、緑感性または赤感性色素は、飽和吸着量の60%以上使用しないと、必要な性能が得られないことが多い。増感色素としては、メチン色素類が挙げられる。より具体的には、シアニン色素、メロシアニン色素、複合シアニン色素、複合メロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素およびヘミオキソノール色素が包含される。特に有用な色素は、シアニン色素、メロシアニン色素、および複合メロシアニン色素に属する色素である。これらの色素類には、塩基性複素環核としてシアニン色素類に通常利用される核のいずれをも適用できる。すなわち、例えば、ピロリン核、オキサゾリン核、チオゾリン核、ピロール核、オキサゾール核、チアゾール核、セレナゾール核、イミダゾール核、テトラゾール核、ピリジン核;これらの核に脂環式炭化水素環が融合した核;及びこれらの核に芳香族炭化水素環が融合した核、即ち、例えば、インドレニン核、ベンゾインドレニン核、インドール核、ベンゾオキサドール核、ナフトオキサゾール核、ベンゾチアゾール核、ナフトチアゾール核、ベンゾセレナゾール核、ベンゾイミダゾール核、キノリン核が適用できる。これらの核は炭素原子上に置換基を有していてもよい。
【0310】
メロシアニン色素または複合メロシアニン色素にはケトメチレン構造を有する核として、例えば、ピラゾリン−5−オン核、チオヒダントイン核、2−チオオキサゾリジン−2,4−ジオン核、チアゾリジン−2,4−ジオン核、ローダニン核、チオバルビツール酸核の5〜6員複素環核を適用することができる。
【0311】
これらの増感色素は単独に用いてもよいが、それらの組合せを用いてもよく、増感色素の組合せは特に、強色増感の目的でしばしば用いられる。その代表例は米国特許第2,688,545号明細書、同第2,977,229号明細書、同第3,397,060号明細書、同第3,522,052号明細書、同第3,527,641号明細書、同第3,617,293号明細書、同第3,628,964号明細書、同第3,666,480号明細書、同第3,672,898号明細書、同第3,679,428号明細書、同第3,703,377号明細書、同第3,769,301号明細書、同第3,814,609号明細書、同第3,837,862号明細書、同第4,026,707号明細書、英国特許第1,344,281号明細書、同第1,507,803号明細書、特公昭43−4936号公報、同53−12375号公報、特開昭52−110618号公報、同52−109925号公報に記載されている。
【0312】
増感色素とともに、それ自身分光増感作用をもたない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感を示す物質を乳剤中に含んでもよい。
【0313】
増感色素を乳剤中に添加する時期は、これまで有用であると知られている乳剤調製の如何なる段階であってもよい。もっとも普通には化学増感の完了後塗布前までの時期に行なわれるが、米国特許第3,628,969号明細書、および同第4,225,666号明細書に記載されているように化学増感剤と同時期に添加し分光増感を化学増感と同時に行なうことも、特開昭58−113928号公報に記載されているように化学増感に先立って行なうこともでき、またハロゲン化銀粒子沈澱生成の完了前に添加し分光増感を開始することもできる。更にまた米国特許第4,225,666号公報に教示されているようにこれらの前記化合物を分けて添加すること、即ちこれらの化合物の一部を化学増感に先立って添加し、残部を化学増感の後で添加することも可能であり、米国特許第4,183,756号明細書に開示されている方法を始めとしてハロゲン化銀粒子形成中のどの時期であってもよい。
【0314】
添加量は、ハロゲン化銀1mol当り、4×10−6〜8×10−3molで用いることができるが、より好ましいハロゲン化銀粒子サイズ0.2〜1.2μmの場合は約5×10−5〜2×10−3molが有効である。
【0315】
本発明において、増感色素は、ハロゲン化銀粒子にその飽和被覆量に対して60%以上吸着している。75%以上100%以下吸着しているのが好ましい。増感色素のハロゲン化銀粒子に対する飽和被覆量は、通常の増感色素の吸着等温線を求めることにより容易に算出できる。増感色素の吸着等温線に関しては、例えば、T.H.James著「THE THEORY OF THE PHOTOGRAPHIC PROCESS 第4版」マクミラン出版、ニューヨーク、1章III節(1977年)」237頁に記載されている通り、一般に遠心沈殿により個相と液相を分離し、最初に添加した増感色素と上澄み液中の増感色素との差を測定して吸着された増感色素量を求めることができる。
【0316】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、本発明の乳剤を含有する感光性層を少なくとも一層有すればよい。また本発明の乳剤は、何れの感光性層に含有させても本発明の効果を奏する。
【0317】
本発明を採用し得るハロゲン化銀写真感光材料に使用することができる層配列等の技術、ハロゲン化銀乳剤、色素形成カプラー、DIRカプラー等の機能性カプラー、各種の添加剤等、及び現像処理については、欧州特許第0565096A1号(1993年10月13日公開)及びこれに引用された特許に記載されている。以下に各項目とこれに対応する記載個所を列記する。
【0318】
1.層構成:61頁23〜35行、61頁41行〜62頁14行
2.中間層:61頁36〜40行、
3.重層効果付与層:62頁15〜18行、
4.ハロゲン化銀ハロゲン組成:62頁21〜25行、
5.ハロゲン化銀粒子晶癖:62頁26〜30行、
6.ハロゲン化銀粒子サイズ:62頁31〜34行、
7.乳剤製造法:62頁35〜40行、
8.ハロゲン化銀粒子サイズ分布:62頁41〜42行、
9.平板粒子:62頁43〜46行、
10.粒子の内部構造:62頁47行〜53行、
11.乳剤の潜像形成タイプ:62頁54行〜63頁5行、
12.乳剤の物理熟成・化学熟成:63頁6〜9行、
13.乳剤の混合使用:63頁10〜13行、
14.かぶらせ乳剤:63頁14〜31行、
15.非感光性乳剤:63頁32〜43行、
16.塗布銀量:63頁49〜50行、
17.写真用添加剤:リサーチ・ディスクロージャ(RD)Item17643(1978年12月)、同Item18716(1979年11月)及び同Item307105(1989年11月)に記載されており、下記に各項目およびこれに関連する記載個所を示す。
【0319】
【0320】
18.ホルムアルデヒドスカベンジャー:64頁54〜57行、
19.メルカプト系かぶり防止剤:65頁1〜2行、
20.かぶらせ剤等放出剤:65頁3〜7行、
21.色素:65頁7〜10行、
22.カラーカプラー全般:65頁11〜13行、
23.イエロー、マゼンタ及びシアンカプラー:65頁14〜25行、
24.ポリマーカプラー:65頁26〜28行、
25.拡散性色素形成カプラー:65頁29〜31行、
26.カラードカプラー:65頁32〜38行、
27.機能性カプラー全般:65頁39〜44行、
28.漂白促進剤放出カプラー:65頁45〜48行、
29.現像促進剤放出カプラー:65頁49〜53行、
30.その他のDIRカプラー:65頁54行〜66頁4行、
31.カプラー分散方法:66頁5〜28行、
32.防腐剤・防かび剤:66頁29〜33行、
33.感材の種類:66頁34〜36行、
34.感光層膜厚と膨潤速度:66頁40行〜67頁1行、
35.バック層:67頁3〜8行、
36.現像処理全般:67頁9〜11行、
37.現像液と現像薬:67頁12〜30行、
38.現像液添加剤:67頁31〜44行、
39.反転処理:67頁45〜56行、
40.処理液開口率:67頁57行〜68頁12行、
41.現像時間:68頁13〜15行、
42.漂白定着、漂白、定着:68頁16行〜69頁31行、
43.自動現像機:69頁32〜40行、
44.水洗、リンス、安定化:69頁41行〜70頁18行、
45.処理液補充、再使用:70頁19〜23行、
46.現像薬感材内蔵:70頁24〜33行、
47.現像処理温度:70頁34〜38行、
48.レンズ付フィルムへの利用:70頁39〜41行。
【0321】
本発明を適用するハロゲン化銀カラー写真感光材料には、処理の簡略化及び迅速化の目的で発色現像主薬を内蔵させてもよい。内蔵させるためには、発色現像主薬の各種プレカーサーを用いるのが好ましい。例えば、米国特許第3,342,597号明細書記載のインドアニリン系化合物、例えば、同第3,342,599号明細書、リサーチ・ディスクロージャーNo.14,850及び同No.15,159に記載のシッフ塩基型化合物、同No.13,924に記載のアルドール化合物、米国特許第3,719,492号明細書に記載の金属塩錯体、特開昭53−135628号公報に記載のウレタン系化合物を挙げることができる。
【0322】
本発明を適用するハロゲン化銀カラー感光材料は、必要に応じて、発色現像を促進する目的で、各種の1−フェニル−3−ピラゾリドン類を内蔵してもよい。典型的な化合物は、例えば、特開昭56−64339号公報、同57−144547号公報、および同58−115438号公報に記載されている。
本発明における各種処理液は、10℃〜50℃において使用される。通常は33℃〜38℃の温度が標準的であるが、より高温にして処理を促進し処理時間を短縮したり、逆により低温にして画質の向上や処理液の安定性の改良を達成することができる。
【0323】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は適切には、光、レーザーまたはX線照射に感光性のある材料であり、白黒リバーサルフィルム、白黒ネガフィルム、カラーネガフィルム、カラーリバーサルフィルム、感光性写真成分がデジタルスキャンされたフィルム、白黒反転紙、白黒紙、カラー紙、反転カラー紙、感光性写真成分がデジタルデータベースからのレーザー照射により感光された紙から選択される。ハロゲン化銀写真感光材料としてはカラーネガフィルムが好ましく、その実施態様としては例えば特開平11−305396号公報などを挙げることができる。
【0324】
また、本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、米国特許第4,500,626号明細書、特開昭60−133449号公報、同59−218443号公報、同61−238056号公報、欧州特許第210,660A2号などに記載されている熱現像感光材料にも適用できる。また、本発明を適用するハロゲン化銀カラー写真感光材料は、特公平2−32615号公報、実公平3−39784号公報などに記載されているレンズ付きフィルムユニットに適用した場合に、より効果を発現しやすく有効である。
【0325】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
【0326】
(実施例1)
合成例1:修飾ゼラチン1b及び2aの合成
未修飾のアルカリ処理された元ゼラチン1としては、牛骨を原料とする通常のアルカリ処理オセインゼラチンを用いた。元ゼラチン1の物性値は
含水率 : 11.4%
等電点 : 5.0
質量平均分子量: 164,000(分子量はPAGI法に基づいて測定)PAGI法により測定された分子量分布は、高分子量成分が2.5%、低分子量成分が60.0%であった。 ボイド/α比 : 0.13(GPCプロフィールにおける使用したカラム(GS−620)の排除限界のボイド部分(分子量約200万以上)とα鎖(分子量10万)に対する高さの比率)であった。
【0327】
1−1 修飾ゼラチン1bの合成
元ゼラチン1(113.6g)に水836.4gを加え、室温で30分間膨潤させた後、60℃に加温して溶解した。次いで5mol/LのNaOHでpH値8.0に調整した後、あらかじめ、N、N−ジメチルホルムアミド50mLに4−(5−メルカプト−1−テトラゾリル)安息香酸(前記例示化合物1)222mg(1.0mmol)、N−ヒドロキシサクシンイミド(NHS)115mg(1.0mmol)、WSC(N−エチル−N、N−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩)191mg(1.0mmol)を溶解し、室温3時間攪拌したものをゼラチン水溶液中に30分間かけて滴下した。滴下終了後、60℃に保ちながら更に30分間攪拌した。反応終了後、再び5mol/LのでpH=8.0に調整した後、透析(55℃、72時間)を行った。次いで濃縮(55℃、130hPa)を行い、固形分濃度が10質量%になるように調整した。その後5℃に冷却し、ゼラチンセット物として修飾ゼラチン1bを1kg得た。
【0328】
1−2 修飾ゼラチン2aの合成
元ゼラチン1(113.6g)に水760mLを加え、室温で30分間膨潤させた後、60℃に加温して溶解した。次いで5mol/LのNaOHでpH値6.8に調整した後、硬膜剤H−II−4の1%水溶液71.4mL(H−II−4:2.2mmol)を1時間かけて滴下し60℃、3時間攪拌した。この時、ゼラチンは架橋されて高分子量となり、PAGI法により測定された分子量分布は、高分子量成分が11.8%、低分子量成分が42.5%であった。この高分子量ゼラチンを「ゼラチンa」とする。ゼラチンaを更に5mol/LのNaOHでpH値8.0に調整した後、あらかじめ、N、N−ジメチルホルムアミド50mLに4−(5−メルカプト−1−テトラゾリル)安息香酸(前記例示化合物1)ジナトリウム塩133mg(0.5mmol)、N−ヒドロキシサクシンイミド(NHS)58mg(0.5mmol)、WSC(N−エチル−N、N−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩)96mg(0.5mmol)を溶解し、室温3時間攪拌したものをゼラチン水溶液中に30分間かけて滴下した。滴下終了後、60℃に保ちながら更に30分間攪拌した。反応終了後透析(55℃、72時間)を行った。次いで濃縮(55℃、130hPa)を行い、固形分濃度が10%になるように調整した。その後5℃に冷却し、ゼラチンセット物として修飾ゼラチン2aを1kg得た。
【0329】
修飾ゼラチン1bおよび2aの導入量はUV吸収より定量した。結果を表1に示す。
【0330】
【表1】
【0331】
合成例2:吸着基をもつ水溶性ポリマーWP−1の合成
あらかじめpH4.7のフタル酸緩衝液(90mL)に、アクリルアミド47.5g、アクリル酸、2.5g、2−メルカプトエチルアミン塩酸塩0.396gを溶解したA液と、フタル酸緩衝液(50mL)に和光純薬製ラジカル発生剤V−50を溶解させたB液を調製した。窒素雰囲気下、1000mLの3ツ口フラスコに、フタル酸緩衝液(150mL)を加え、60℃で3時間かけて、A液とB液をそれぞれ別に滴下した。滴下終了後、80℃で3時間加熱攪拌した後、室温まで冷却し、5mol/LのNaOHでpH値7.8に調整した後、メタノール5Lに反応液を滴下し、再沈殿操作を行った。得られた固形分をろ別し、40℃で減圧乾燥し、ポリアクリルアミド、アクリル酸共重合ポリマー50gを得た。
得られたポリマー20gを水70mLに溶解し、5mol/LのNaOHでpH値8.0に調整した後、あらかじめN、N−ジメチルホルムアミド70mLに4−(5−メルカプト−1−テトラゾリル)安息香酸ジナトリウム1.43g(5.9mmol)、NHS、0.68g(5.9mmol)、WSC、1.13g(5.9mmol)を溶解し、室温3時間攪拌したものをポリマー水溶液中に20分間かけて滴下した。滴下終了後、40℃に保ちながら更に3時間攪拌した。反応終了後、3Lのメタノールに反応液をゆっくりと滴下し、得られた固形分をろ別した。再び水50mLに溶解させ、3Lのメタノールに再沈殿操作を行い、固形分をろ別した。得られた固形分を40℃で減圧乾燥を行い、白色の固体としてWP−1を2g得た。
合成したWP−1の物性値を表2に示す。
【0332】
【表2】
【0333】
(実施例2)
以下の乳剤調製で分散媒として用いたゼラチン1〜ゼラチン4は、以下の属性を持つゼラチンである。
ゼラチン1: 牛骨を原料とする、通常のアルカリ処理オセインゼラチン。ゼラチン中の−NH2基の化学修飾なし。
ゼラチン2: ゼラチン1の水溶液に、50℃、pH9.0の条件下で無水フタル酸を加えて化学反応させた後、残留するフタル酸を除去して乾燥させたゼラチン。ゼラチン中の−NH2基が化学修飾された数の割合は95%。
ゼラチン3: ゼラチン1の水溶液に、50℃、pH9.0の条件下で無水トリメリット酸を加えて化学反応させた後、残留するトリメリット酸を除去して乾燥させたゼラチン。ゼラチン中の−NH2基が化学修飾された数の割合は95%。
ゼラチン4: ゼラチン1に酵素を作用させて低分子量化し、平均分子量を15,000にした後、酵素を失活させて乾燥させたゼラチン。ゼラチン中の−NH2基の化学修飾なし。
【0334】
上記のゼラチン1〜ゼラチン4は、全て脱イオン処理をした後、5%水溶液の35℃におけるpHが6.0となるように調整を行った。
【0335】
(乳剤A−1の調製)
KBrを1.0g、前記のゼラチン4を1.1g含む水溶液1300mLを35℃に保ち、撹拌した(1st液調製)。Ag−1水溶液(100mL中にAgNO3を4.9g含有する)38mLと、X−1水溶液(100mL中にKBrを5.2g含有する)29mL、およびG−1水溶液(100mL中に前記のゼラチン4を8.0g含有する)8.5mLをトリプルジェット法で、一定の流量で30秒間にわたり添加した(添加1)。その後、KBr6.5gを添加し、温度を75℃に昇温した。昇温後12分間の熟成工程を経た後、G−2水溶液(100mL中に前記のゼラチン1を12.7g含有する)300mLを添加した。
【0336】
次に、Ag−2水溶液(100mL中にAgNO3を22.1g含有する)157mLと、X−2水溶液(100mL中にKBrを15.5g含有する)をダブルジェット法で28分間にわたり添加した。この時、Ag−2水溶液の添加は最終流量が初期流量の3.4倍になるように流量加速を行い、X−2水溶液の添加は反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgが7.52を保つように行った(添加2)。次いで、Ag−3水溶液(100mL中にAgNO3を32.0g含有する)329mLと、X−3水溶液(100mL中にKBrを21.5g、KIを1.2g含有する)をダプルジェット法で53分間にわたり添加した。この時、Ag−3水溶液の添加は最終流量が初期流量の1.6倍になるように流量加速を行い、X−3水溶液の添加は反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgが7.52を保つように行った(添加3)。さらに、Ag−4水溶液(100mL中にAgNO3を32.0g含有する)156mLと、X−4水溶液(100mL中にKBrを22.4g含有する)をダプルジェット法で17分間にわたり添加した。この時、Ag−4水溶液の添加は一定の流量で行い、X−3水溶液の添加は反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgが7.52を保つように行った(添加4)。
【0337】
その後、ベンゼンチオスルホン酸ナトリウムを0.0025g、G−3水溶液(100mL中に前記のゼラチン1を12.0g含有する)125mLを、1分間づつ間隔をあけて順次添加した。次いでKBr43.7gを添加し反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを9.00にしてから、AgI微粒子乳剤(100g中に平均粒径0.047μmのAgI微粒子を13.0g含有する)73.9gを添加し、その2分後から、Ag−4水溶液249mLと、X−4水溶液をダブルジェット法で添加した。この時Ag−4水溶液は一定の流量で9分間にわたって添加し、X−4水溶液は最初の3.3分間だけ反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを9.00に保つように添加し、残りの5.7分間は添加をせず、反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgが最終的に8.4になるようにした(添加5)。その後、通常のフロキュレーション法により脱塩を行い、次いで、攪拌しながら水、NaOH、前記のゼラチン1を添加し、56℃でpH6.4、pAg8.6になるように調整した。
得られた乳剤は、平均球相当径0.99μm、平均円相当径1.26μm、アスペクト比の平均値が3.1、粒子の平均厚みが0.41μmであり、AgI含有量の平均値が3.94mol%の沃臭化銀、平行な主平面が(111)面である平板状ハロゲン化銀粒子からなり、XPSで測定されたハロゲン化銀粒子表面のAgI含有量は2.1mol%であった。また、AgCl含量が0mol%であった。
【0338】
続いて、下記増感色素Exs−1、チオシアン酸カリウム、塩化金酸、チオ硫酸ナトリウムおよびN,N−ジメチルセレノ尿素、下記化合物RS−1を順次添加し最適に化学増感を施した後、水溶性メルカプト化合物ExA−1およびExA−2を4:1の比率で合計でハロゲン化銀1mol当たり3.6×10−4mol添加することにより化学増感を終了させた。
【0339】
【化27】
【0340】
【化28】
【0341】
(乳剤A−2及びA−3の調製)
前記の乳剤A−1における調製条件を変更して、乳剤A−2及びA−3を調製した。
得られた乳剤は、乳剤A−2が平均球相当径0.99μm、平均円相当径1.73μm、平均アスペクト比が7.0、粒子の平均厚みが0.24μmであり、AgI含有量の平均値が3.94mol%、平行な主平面が(111)面である平板状ハロゲン化銀粒子からなり、XPSで測定されたハロゲン化銀粒子表面のAgI含有量は2.4mol%であった。
乳剤A−3は、平均球相当径0.99μm、平均円相当径2.0μm、平均アスペクト比が12.5、粒子の平均厚みが0.16μmであり、AgI含有量の平均値が3.94mol%、平行な主平面が(111)面である平板状ハロゲン化銀粒子から成り、XPSで測定されたハロゲン化銀粒子表面のAgI含有量は2.6mol%であった。
また、乳剤A−2及びA−2はともにAgCl含量が0mol%であった。
【0342】
前記の乳剤A−1〜A−3の増感色素Exs−1の添加量は、何れも飽和被覆量の80%とした。
前記の乳剤A−1〜A−3について400kVの透過型電子顕微鏡を用いて液体窒素温度で観察したところ、何れの粒子においても平板粒子のフリンジ部に転位線が10本以上存在していることがわかった。
【0343】
(乳剤A−4〜A−6の調製)
乳剤A−1〜A−3において、実施例1、合成例2のポリマーWP−1をハロゲン化銀1mol当たり100mg、化学増感終了時に添加する以外は同様にして、各々乳剤A−4〜A−6を調製した。乳剤A−4〜A−6の粒子形状は各々乳剤A−1〜A−3と同じである。
【0344】
(乳剤A−7〜A−9の調製)
乳剤A−1〜A−3において、実施例1、合成例1に記載の高分子量ゼラチン、ゼラチンaを脱塩後に添加するゼラチン1に対し等重量に置き換えた以外は同様にして、各々乳剤A−7〜A−9を調製した。
【0345】
(乳剤A−10〜A−12の調製)
乳剤A−1〜A−3において、脱塩後に添加するゼラチン1を実施例1、合成例1の修飾ゼラチン1bに最適な量に置き換えた以外は同様にして、各々乳剤A−10〜A−12を調製した。
【0346】
(乳剤A−13〜A−15の調製)
乳剤A−1〜A−3において、脱塩後に添加するゼラチン1を実施例1、合成例1の修飾ゼラチン2aに最適な量に置き換えた以外は同様にして、各々乳剤A−13〜A−15を調製した。
【0347】
(吸着バインダー層厚みの測定)
乳剤A−1〜A−15において、増感色素Exs−1を添加せず分光増感を施さない乳剤を準備した。各々乳剤Ab−1〜Ab−15とする。
前述のAFMを用いた測定方法に従って、乳剤Ab−1〜Ab−3、Ab−7〜Ab−15、A−1〜A−3、およびA−7〜A−15の吸着バインダー層厚みを求めた。
乳剤A−1〜A−6はハロゲン化銀の定着をせずに測定し、上記のようにA−1〜A−3で求めた吸着バインダー層厚みから算出したA−1〜A−3の乳剤子自身の厚みを用いて乳剤A−4〜A−6の吸着バインダー層厚みを求めた。
乳剤A−1〜A−15の各々の乳剤Ab−1〜Ab−15に対する減少率(%)を分光増感後の吸着バインダー層厚みの減少率とし、乳剤A−1〜A−15の厚みとともに後述の表3に示した。
【0348】
以下に乳剤の写真性能の評価実験について説明する。
下塗り層を設けてある三酢酸セルロースフィルム支持体に下記に示すような塗布条件で、前記の乳剤A−1〜A−15の塗布を行った。塗布試料を各々表3に示すように試料101〜115とする。
(乳剤塗布条件)
ハロゲン化銀については銀換算の塗布量を示す。
また塗布性をよくするために、適宜、界面活性剤が含有されている。
【0349】
マゼンタ色素形成カプラーM−1
【0350】
【化29】
【0351】
これらの試料を40℃、相対湿度70%の条件下で14時間硬膜処理を施した。その後、富士フイルム(株)製ゼラチンフィルターSC−50(カットオフ波長が500nmである長波長光透過フィルター)と連続ウェッジを通して1/100秒間露光を行い、後述の現像処理を行なった試料を緑色フィルターで濃度測定することにより写真性能の評価を行った。感度はかぶり濃度プラス0.2のマゼンタ濃度を与えるルックス・秒で表示する露光量の逆数の対数の相対値で表示した。(試料101の感度を100とした。)
富士写真フイルム(株)製ネガプロセサーFP−350を用い、特開2002−55412号公報の実施例1に記載の方法で発色現像の処理時間を2分45秒に変更して処理した。
【0352】
(塗設時の粒子凝集による粒状性悪化の評価)
前記の試料101〜115において各乳剤を40℃で溶解し、8時間経時させた後に試料101〜115と同様の塗布条件で試料を新たに作製した。これらの試料を101と同様に40℃、相対湿度70%の条件下で14時間放置した後、各試料のかぶり濃度プラス0.2の濃度でのRMS粒状度を測定した。粒子が凝集すると粒状性が悪化しRMS粒状度の値が増大する。粒状度は試料101を100とした相対値で示した。
【0353】
写真性能の結果を表3にまとめて示した。
【表3】
【0354】
表3に示した結果より、1.0nmより大きい吸着バインダー層厚みを有する本発明の乳剤は、乳剤溶解経時後の粒状性悪化が小さいことが分かる。吸着バインダー層厚みの増加が粒状性悪化の低減と対応している。またアスペクト比の大きい粒子ほど高感度、かつ粒状性悪化に対する効果が大きい。
【0355】
実施例3
以下の製法によりホストハロゲン化銀乳剤Bを調製した。
(種乳剤aの調製)
KBr0.017g、平均分子量20000の酸化処理ゼラチン0.4gを含水溶液1164mLを30℃に保ち撹拌した。AgNO3(1.6g)水溶液とKBr水溶液と平均分子量20000の酸化処理ゼラチン(2.1g)水溶液をトリプルジェット法で30秒間に渡り添加した。AgNO3溶液の濃度は0.2mol/Lの溶液を用いた。この時,銀電位を飽和カロメル電極に対して15mVに保った。KBr水溶液を加え、銀電位を−60mVとした後、75℃に昇温した。平均分子量100,000のコハク化ゼラチン21gを添加した。AgNO3(206.3g)水溶液とKBr水溶液をダブルジェット法で流量加速しながら61分間にわたって添加した。この時、銀電位を飽和カロメル電極に対して−40mVに保った。脱塩した後、平均分子量100,000のコハク化ゼラチンを加え、40℃でpH5.8、pAg8.8に調整し、種乳剤を調製した。この種乳剤は乳剤1kg当たり、Agを1mol、ゼラチンを80g含有し、平均円相当直径1.60μm、円相当直径の変動係数22%、平均厚み0.043μm、平均アスペクト比37の平板粒子であった。
【0356】
(ホスト平板粒子乳剤Bの調製)
上記種乳剤aを134g、KBr 1.9g、平均分子量100,000のコハク化ゼラチン22gを含む水溶液1,200mLを75℃に保ち撹拌した。AgNO3(137.5g)水溶液とKBr水溶液と分子量20,000の酸化処理ゼラチン水溶液を特開平10−43570号に記載の磁気カップリング誘導型攪拌機を有する別のチャンバ−内で添加前直前混合して25分間にわたり添加した。この時、銀電位を飽和カロメル電極に対して−40mVに保った。その後、AgNO3(30.0g)水溶液とKBr水溶液と予め調製したAgI超微粒子乳剤をトリプルジェット法で30分間にわたって一定流量で添加した。AgI超微粒子乳剤の添加量は沃化銀含有率が15mol%になるように調整した。またAgI超微粒子乳剤は円相当径0.03μm、円相当径の変動係数17%であり、分散ゼラチンとしてトリメリット化ゼラチンを使用したものを用いた。この時、銀電位を飽和カロメル電極に対して−20mVに保った。その後AgNO3水溶液(36.4g)とKBr水溶液と前述した予め調整したAgI超微粒子乳剤を40分間に渡って一定流量で添加した。AgI超微粒子乳剤の添加量は沃化銀含有率が15mol%になるように調整した。この時、銀電位を飽和カロメル電極に対して+80mVに保った。通常の水洗を行い、実施例2のゼラチン1を添加し、40℃でpH5.8、pBr4.0に調整した。この乳剤を乳剤Bとした。乳剤Bは平均円相当径4.2μm、円相当径の変動係数19%、平均厚み0.062μm、平均アスペクト比68の平板粒子であった。また、全投影面積の90%以上が円相当径3.0μm以上、厚み0.07μm以下であった。低温での透過電子顕微鏡観察の結果、全投影面積の90%以上の粒子に転位線は全く観測されなかった。また側面の(111)面比率は68%であった。
【0357】
(エピタキシャル沈着と化学増感)
ホスト平板粒子乳剤Bに以下に示した(i)から(iii)のエピタキシャル沈着を行い、乳剤Em−1〜Em−3を調製した。
【0358】
(1の製法)
ホスト平板粒子乳剤Bを40℃で溶解し、KI水溶液をホスト平板粒子の銀量1molに対して3×10−3mol添加した。増感色素I、II、IIIを6:3:1のモル比で飽和被覆量の90%の比率で添加した。但し増感色素は、特開平11−52507号公報に記載の方法で作成した固体微分散物として、使用した。すなわち硝酸ナトリウム0.8質量部および硫酸ナトリウム3.2質量部をイオン交換水43部に溶解し、増感色素13質量部を添加し、60℃の条件下でディゾルバ−翼を用い2000rpmで20分間分散することにより、増感色素の固体分散物を得た。ヘキサシアノルテニウム(II)酸カリウムを最適量になるように添加した後KBr水溶液を1.5×10−2mol添加した。その後、1mol/Lの硝酸銀水溶液3.0×10−2molとNaCl水溶液2.7×10−2molをダブルジェット法で10分間にわたって定流量で添加した。添加終了時の銀電位は飽和カロメル電極に対して+85mVであった。乳剤を50℃に昇温し、チオシアン酸カリウム、塩化金酸、チオ硫酸ナトリウムおよびN,N−ジメチルセレノ尿素を添加し最適に化学増感を施した。かぶり防止剤ExA−3を2×10−5mol、ExA−4を6×10−6mol添加した後、実施例2のメルカプト化合物ExA−1を5×10−4mol添加して化学増感を終了した。
【0359】
【化30】
【0360】
(乳剤Em−2の製法)
ホスト平板粒子乳剤を40℃で溶解し前述したAgI微粒子乳剤を、ホスト平板粒子の銀量1molに対して3×10−3mol添加した。増感色素I、II、IIIを6:3:1のモル比で飽和被覆量の90%の比率で添加した。但し増感色素は、特開平11−52507号公報に記載の方法で作成した固体微分散物として、使用した。すなわち硝酸ナトリウム0.8質量部および硫酸ナトリウム3.2質量部をイオン交換水43部に溶解し、増感色素13質量部を添加し、60℃の条件下でディゾルバ−翼を用い2000rpmで20分間分散することにより、増感色素の固体分散物を得た。ヘキサシアノルテニウム(II)酸カリウムを最適量となるように添加し、KBr水溶液を1.5×10−2mol添加した。NaCl水溶液を2.7×10−2mol添加した後、0.1mol/Lの硝酸銀水溶液3.0×10−2molを1分間に渡って定流量で添加した。添加終了時の銀電位は飽和カロメル電極に対して+85mVであった。乳剤を50℃に昇温し、チオシアン酸カリウム、塩化金酸、チオ硫酸ナトリウムおよびN,N−ジメチルセレノ尿素を添加し最適に化学増感を施した。かぶり防止剤ExA−3を2×10−5mol、ExA−4を6×10−6mol添加した後、化合物ExA−1を5×10−4mol添加して化学増感を終了した。
【0361】
(乳剤Em−3の製法)
ホスト平板粒子乳剤を40℃で溶解し、前述したAgI微粒子乳剤をホスト平板粒子の銀量1molに対して3×10−3mol添加した。増感色素I、II、IIIを6:3:1のモル比で飽和被覆量の90%の比率で添加した。但し増感色素は、特開平11−52507号公報に記載の方法で作成した固体微分散物として、使用した。すなわち硝酸ナトリウム0.8質量部および硫酸ナトリウム3.2質量部をイオン交換水43部に溶解し、増感色素13質量部を添加し、60℃の条件下でディゾルバ−翼を用い2000rpmで20分間分散することにより、増感色素の固体分散物を得た。ヘキサシアノルテニウム(II)酸カリウムを最適量となるように添加し、KBr水溶液を1.5×10−2mol添加した。その後、0.1mol/Lの硝酸銀水溶液3.0×10−2molとNaCl水溶液2.7×10−2molをダブルジェット法で2分間に渡って定流量で添加した。添加終了時の銀電位は飽和カロメル電極に対して+85mVであった。KBr水溶液を添加して銀電位を飽和カロメル電極に対して+20mVに調整した。乳剤を50℃に昇温し、チオシアン酸カリウム、塩化金酸、チオ硫酸ナトリウムおよびN,N−ジメチルセレノ尿素を添加し最適に化学増感を施した。かぶり防止剤ExA−3を2×10−5mol、ExA−4を6×10−6mol添加した後、化合物ExA−1を5×10−4mol添加して化学増感を終了した。
【0362】
ホスト平板粒子乳剤Bに上記エピタキシャル沈着を組み合わせて調製した乳剤Em−1〜Em−3についてEPMA法を用いて粒子間の沃化銀含有率と塩化銀含有率の分布を測定した。またレプリカでの電子顕微鏡観察からエピタキシャル沈着の様子を観察した。ホスト平板粒子乳剤Bでの結果をまとめて表4に示す。これらの乳剤は塩化銀含有率が1.2mol%、沃化銀含有率が4.5mol%の沃臭化銀よりなる平板状ハロゲン化銀粒子であった。
【0363】
【表4】
【0364】
(乳剤Em−4〜Em−6の調製)
乳剤B−1〜B−3において、後述の表5に示すように実施例1のポリマーWP−1をハロゲン化銀1mol当たり120mgを、化学増感終了時に添加する以外は同様にして、乳剤Em−4〜Em−6を調製した。
【0365】
(乳剤Em−7〜Em−9の調製)
乳剤B−1〜B−3において、水洗後に添加するゼラチン1を後述の表5に示すように実施例1のゼラチン2に置き換える以外は同様にして、乳剤Em−7〜Em−9を調製した。
【0366】
(乳剤Em−10〜Em−12の調製)
乳剤B−1〜B−3において、水洗後に添加するゼラチン1を後述の表5に示すように実施例1の修飾ゼラチン2aに置き換える以外は同様にして、乳剤Em−10〜Em−12を調製した。
【0367】
(吸着バインダー層厚みの測定)
実施例2と同様にして、乳剤Em−1〜Em−12において、増感色素を添加しない乳剤(乳剤Emb−1〜Emb−12とする)を用いて、吸着バインダー層厚みの測定を行った。乳剤Em−4〜Em−6及びEmb−4〜Emb−6については、乳剤Emb−1〜Emb−3をハロゲン化銀の定着をせずに測定し、Emb−1〜Emb−3で求めた吸着バインダー層厚みから算出したEm−1〜Em−3の乳剤子自身の厚みを用いて乳剤EMb−4〜EMb−6の吸着バインダー層厚みを求めた。乳剤Em−1〜Em−12の各々の乳剤Emb−1〜Emb−12に対する減少率(%)を分光増感後の吸着バインダー層厚みの減少率とし、乳剤Em−1〜Em−12の厚みとともに後述の表9に示した。
【0368】
上記乳剤以外に多層カラー感光材料乳剤に用いた乳剤の一覧表を表5〜8に示す。
【0369】
【表5】
【0370】
【表6】
【0371】
【表7】
【0372】
【表8】
【0373】
表5〜8に示した乳剤については、以下の記載の特許の本文および/または実施例記載の内容に基づいて、適宜選択、組合せ、および/または変更して調製した。各試料の化学増感方法、用いた化学増感剤、かぶり剤等については詳細を省略するが、いずれも下記特許の本文および/または実施例記載の内容に基づいて、適宜選択、組合せ、および/または変更して、調製した。
乳剤の構造、化学増感、分光増感等については、特に、EP573649B1号公報、特許第2912768号公報、特開平11−249249号公報、特開平11−295832号公報、特開平11−72860号公報、米国特許第5985534号明細書、米国特許第5965343号明細書、特許第3002715号公報、特許第3045624号公報、特許第3045623号公報、特開2000−275571号公報、米国特許第6172110号明細書、特開2000−321702号公報、特開2000−321700号公報、特開2000−321698号公報、米国特許第6153370号明細書、特開2001−92065号公報、特開2001−92064号公報、特開2000−92059号公報、特開2001−147501号公報、US2001/0006768A1、特開2001−228572号公報、特開2001−255613号公報、特開2001−264911号公報、US6280920B1、特開2001−264912号公報、特開2001−281778、US6287753B1、US2002/0006590A1、米国特許第5919611号明細書、US2001/0031434A1等の記載内容を基にした。
【0374】
乳剤の製造法については特に特許第2878903号公報、特開平11−143002号公報、特開平11−143003号公報、特開平11−174612号公報、米国特許第5925508号明細書、米国特許第5955253号明細書、特開平11−327072号公報、米国特許第5989800号明細書、特許第3005382号公報、特許第3014235号公報、EP0431585B1号公報、US6040127A、特許第3049647号公報、特許第3045622号公報、特許第3066692号公報、EP0563708B1号公報、特許第3091041号公報、特開2000−338620号公報、特開2001−83651号公報、特開2001−75213号公報、特開2001−100343号公報、US6251577B1、EP0563701B1号公報、特開2001−281780号公報、US2001/0036606A1等の記載内容に基づいて行った。
【0375】
(多層カラー感光材料201の作製)
下塗りを施した三酢酸セルロースフィルム支持体上に、下記に示すような組成の各層を重層塗布し、多層カラー感光材料である試料201を作製した。
(感光層の組成)
各層に使用する素材の主なものは下記のように分類されている;
ExC:シアンカプラー ExS:分光増感色素
UV :紫外線吸収剤
ExM:マゼンタカプラー HBS:高沸点有機溶剤
ExY:イエローカプラー H :ゼラチン硬化剤
(具体的な化合物は以下の記載で、記号の次に数値が付けられ、後ろに化学式が挙げられている)。
【0376】
各成分に対応する数字は、g/m2単位で表した塗布量を示し、ハロゲン化銀については銀換算の塗布量を示す。また、分光増感色素については同一層のハロゲン化銀1molに対する塗布量をmol単位で示した。
【0377】
第1層(第1ハレーション防止層)
黒色コロイド銀 銀 0.010
ゼラチン 0.66
ExM−1 0.048
Cpd−2 0.001
F−8 0.001
HBS−1 0.090
HBS−2 0.010。
【0378】
第2層(第2ハレーション防止層)
黒色コロイド銀 銀 0.010
ゼラチン 0.80
ExM−1 0.057
ExF−1 0.002
F−8 0.001
HBS−1 0.090
HBS−2 0.010。
【0379】
第3層(中間層)
ExC−2 0.010
Cpd−1 0.086
UV−2 0.029
UV−3 0.052
UV−4 0.011
HBS−1 0.100
ゼラチン 0.580。
【0380】
第4層(低感度赤感乳剤層)
Em−M 銀 0.42
Em−N 銀 0.52
Em−O 銀 0.10
ExC−1 0.222
ExC−2 0.012
ExC−3 0.72
ExC−4 0.148
ExC−5 0.005
ExC−6 0.008
ExC−8 0.071
ExC−9 0.010
UV−2 0.036
UV−3 0.067
UV−4 0.014
Cpd−2 0.010
Cpd−4 0.012
HBS−1 0.240
HBS−5 0.010
ゼラチン 1.50。
【0381】
第5層(中感度赤感乳剤層)
Em−L 銀 0.38
Em−M 銀 0.28
ExC−1 0.110
ExC−2 0.040
ExC−3 0.018
ExC−4 0.074
ExC−5 0.019
ExC−6 0.024
ExC−8 0.010
ExC−9 0.021
Cpd−2 0.020
Cpd−4 0.021
HBS−1 0.129
ゼラチン 0.90。
【0382】
第6層(高感度赤感乳剤層)
Em−1 銀 1.40
ExC−1 0.122
ExC−6 0.032
ExC−8 0.110
ExC−9 0.005
ExC−10 0.159
Cpd−2 0.068
Cpd−4 0.011
HBS−1 0.440
ゼラチン 1.510。
【0383】
第7層(中間層)
Cpd−1 0.081
Cpd−6 0.002
固体分散染料ExF−4 0.015
HBS−1 0.049
ポリエチルアクリレートラテックス 0.088
ゼラチン 0.759。
【0384】
第8層(赤感層へ重層効果を与える層)
Em−E 銀 0.40
Cpd−4 0.010
ExM−2 0.082
ExM−3 0.006
ExM−4 0.026
ExY−1 0.010
ExY−4 0.040
ExC−7 0.007
HBS−1 0.203
HBS−3 0.003
HBS−5 0.010
ゼラチン 0.520。
【0385】
第9層(低感度緑感乳剤層)
Em−H 銀 0.15
Em−I 銀 0.23
Em−J 銀 0.26
ExM−2 0.388
ExM−3 0.040
ExY−1 0.003
ExY−3 0.002
ExC−7 0.009
HBS−1 0.337
HBS−3 0.018
HBS−4 0.260
HBS−5 0.110
Cpd−5 0.010
ゼラチン 1.470。
【0386】
第10層(中感度緑感乳剤層)
Em−G 銀 0.30
Em−H 銀 0.12
ExM−2 0.084
ExM−3 0.012
ExM−4 0.005
ExY−3 0.002
ExC−6 0.003
ExC−7 0.007
ExC−8 0.008
ExS−7 1.0x10−4
ExS−8 6.1x10−4
ExS−9 1.3x10−4
HBS−1 0.096
HBS−3 0.002
HBS−5 0.002
Cpd−5 0.004
ゼラチン 0.42。
【0387】
第11層(高感度緑感乳剤層)
Em−F 銀 1.20
ExC−6 0.002
ExC−8 0.010
ExM−1 0.014
ExM−2 0.023
ExM−3 0.023
ExM−4 0.005
ExM−5 0.040
ExY−3 0.003
ExA−4 4.0x10−6
Cpd−3 0.004
Cpd−5 0.010
HBS−1 0.259
HBS−5 0.020
ポリエチルアクリレートラテックス 0.099
ゼラチン 1.11。
【0388】
第12層(イエローフィルター層)
Cpd−1 0.088
固体分散染料ExF−2 0.051
固体分散染料ExF−8 0.010
HBS−1 0.049
ゼラチン 0.54。
【0389】
第13層(低感度青感乳剤層)
Em−B 銀 0.50
Em−C 銀 0.15
Em−D 銀 0.10
ExC−1 0.024
ExC−7 0.011
ExY−1 0.002
ExY−2 0.956
ExY−4 0.091
Cpd−2 0.037
Cpd−3 0.004
HBS−1 0.372
HBS−5 0.047
ゼラチン 2.01。
【0390】
第14層(高感度青感乳剤層)
Em−A 銀 1.22
ExY−2 0.235
ExY−4 0.018
ExA−4 6.0x10−6
Cpd−2 0.075
Cpd−3 0.001
HBS−1 0.087
ゼラチン 1.30。
【0391】
第15層(第1保護層)
0.07μmのヨウ臭化銀乳剤 銀 0.25
UV−1 0.358
UV−2 0.179
UV−3 0.254
UV−4 0.025
F−11 0.0081
S−1 0.078
ExF−5 0.0024
ExF−6 0.0012
ExF−7 0.0010
HBS−1 0.175
HBS−4 0.050
ゼラチン 1.81。
【0392】
第16層(第2保護層)
H−1 0.400
B−1(直径1.7μm) 0.050
B−2(直径1.7μm) 0.150
B−3 0.050
S−1 0.200
ゼラチン 0.75。
【0393】
更に、各層に適宜、保存性、処理性、圧力耐性、防黴・防菌性、帯電防止性及び塗布性をよくするために、W−1〜W−6、B−4〜B−6、F−1〜F−20及び、鉛塩、白金塩、イリジウム塩、ロジウム塩が含有されている。
【0394】
有機固体分散染料の分散物の調製
第12層のExF−2を次の方法で分散した。
【0395】
ExF−2のウエットケーキ(17.6重量%の水を含む)2.800kg
オクチルフェニルジエトキシメタンスルホン酸ナトリウム
(31重量%水溶液) 0.376kg
F−15(7%水溶液) 0.011kg
水 4.020kg
計 7.210kg
(NaOHでpH=7.2に調整)。
【0396】
上記組成のスラリーをディゾルバーで攪拌して粗分散した後、アジテータミルLMK−4を用い、周速10m/s、吐出量0.6kg/min、0.3mm径のジルコニアビーズ充填率80%で分散液の吸光度比が0.29になるまで分散し、固体微粒子分散物を得た。染料微粒子の平均粒径は0.29μmであった。
【0397】
同様にして、ExF−4、ExF−8の固体分散物を得た。染料微粒子の平均粒径はそれぞれ、0.28μm、0.49μmであった。
【0398】
以下、各層に用いた化合物を示す。
【0399】
【化31】
【0400】
【化32】
【0401】
【化33】
【0402】
【化34】
【0403】
【化35】
【0404】
【化36】
【0405】
【化37】
【0406】
【化38】
【0407】
【化39】
【0408】
【化40】
【0409】
【化41】
【0410】
【化42】
【0411】
【化43】
【0412】
【化44】
【0413】
【化45】
【0414】
【化46】
【0415】
【化47】
【0416】
(試料202〜212の作製)
試料201の第6層の乳剤Em−1を乳剤Em−2〜Em−12に、各々等銀量となるように置き換えた以外は試料201と同じようにして多層カラー感光材料を作製した。
【0417】
試料202〜212について、以下の評価を行った。評価結果を下記表9に示す。
(特定写真感度の測定)
写真感光材料の感度は一般に国際規格であるISO感度が用いられているが、ISO感度では感光材料を露光後5日目に現像処理し、かつその現像処理は各社指定の処理によると規定されているので、本発明では露光後現像処理までの時間を短縮し、かつ一定の現像処理を行うようにしている。
この特定写真感度の決定方法は、JIS K 7614−1981に準じたものであり、異なる点は、現像処理をセンシトメトリ用露光後30分以上6時間以内に完了させる点、および現像処理を下記に記すフジカラー処理処方CN−16による点にある。その他は実質的にJIS記載の測定方法と同一である。
【0418】
下記に示した現像処理以外は、特開昭63−226650号公報に記載されている、試験条件、露光、濃度測定、特定写真感度の決定と同様の方法とした。
現像は富士写真フイルム社製自動現像機FP−360Bを用いて以下により行った。尚、漂白浴のオーバーフロー液を後浴へ流さず、全て廃液タンクへ排出するように改造を行った。このFP−360Bは公開技法94−4992号(社団法人発明協会発行)に記載の蒸発補正手段を搭載している。処理工程及び処理液組成は特開2002−55412号公報の実施例1に記載の方法で行った。
【0419】
また、各感色性層の相対感度は、上記特定写真感度の測定方法から求めている。
かぶりをイエロー濃度、マゼンタ濃度およびシアン濃度の最小値(DYmin、DMmin、DCmin)で定義し、各感色性層の感度はDYmin、DMmin、DCminより各々0.15高い濃度を与える露光量の逆数の対数で定義した。各試料の赤感色性層の感度値を試料201に対する相対値で表した。
【0420】
粒状度については、特定写真感度の測定と同様の処理を行い、慣用のRMS(Root Mean Square)法で測定した。この際、露光は0.005Lux・秒、測定は直径48μmのアパチャーを用いたRMS測定を行った。
【0421】
【表9】
【0422】
(塗設時の粒子凝集による写真性能悪化の評価)
前記の試料201〜212において第6層の乳剤を各々40℃で溶解し8時間経時させた後に試料201〜212と同様の塗布条件で作製したそれぞれの試料を、温度40℃、相対湿度70%の条件下で14時間放置した後、上記と同様に粒状度を測定した(表9の「溶解経時後の粒状度」;試料201の粒状度を100とした)。本発明の吸着バインダー層厚みを有する平板状粒子乳剤を用いた多層カラー感光材料では、乳剤の溶解経時後の塗設における粒状性の悪化が改良され、製造適性に優れていることがわかる。
【0423】
【発明の効果】
本発明のハロゲン化銀写真乳剤は、感度を低下させることなく、溶解経時後の平板状ハロゲン化銀粒子の凝集が軽減されている。塗設における写真性能の悪化が改善されていて、製造適性にも優れている。
Claims (4)
- 粒子の全投影面積の50%以上が沃臭化銀、塩臭化銀、塩化銀もしくは塩沃臭化銀よりなるアスペクト比2以上の平板状ハロゲン化銀粒子で占められているハロゲン化銀写真乳剤であって、該乳剤は増感色素がハロゲン化銀粒子に対する飽和被覆量の60%以上吸着して分光増感されており、かつ、該粒子の主表面における吸着バインダー層の厚みが1.0nmより大きいことを特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。
- 粒子の全投影面積の50%以上がアスペクト比2以上の平板状ハロゲン化銀粒子で占められているハロゲン化銀写真乳剤であって、該乳剤は青感色性以外の増感色素がハロゲン化銀粒子に対する飽和被覆量の60%以上吸着して分光増感されており、かつ、該粒子の主表面における吸着バインダー層の厚みが1.0nmより大きいことを特徴とするロゲン化銀写真乳剤。
- 粒子の全投影面積の50%以上が沃臭化銀、塩臭化銀、塩化銀もしくは塩沃臭化銀よりなるアスペクト比2以上の平板状ハロゲン化銀粒子で占められているハロゲン化銀写真乳剤であって、該乳剤は増感色素がハロゲン化銀粒子に対する飽和被覆量の60%以上吸着して分光増感されており、かつ、該粒子の主表面における吸着バインダー層の厚みの増感色素の添加による減少率が50%未満であることを特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。
- 粒子の全投影面積の50%以上がアスペクト比2以上の平板状ハロゲン化銀粒子で占められているハロゲン化銀写真乳剤であって、該乳剤は青感色性以外の増感色素がハロゲン化銀粒子に対する飽和被覆量の60%以上吸着して分光増感されており、かつ、該粒子の主表面における吸着バインダー層の厚みの増感色素の添加による減少率が50%未満であることを特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。
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