JP3893427B2 - ハロゲン化銀写真感光材料、ハロゲン化銀乳剤組成物およびこれらに用いられるメルカプト基含有ポリマー化合物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、メルカプト基を有する含窒素芳香族環を含有する新規なポリマーに関する。本発明はさらに、上記ポリマーとハロゲン化銀粒子とからなるハロゲン化銀乳剤組成物、上記ポリマーを含有するハロゲン化銀写真感光材料、特にハロゲン化銀写真感光材料中のハロゲン化銀の凝集安定性を改良したハロゲン化銀写真感光材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
水溶性高分子は写真化学工業において長い間利用されており、水溶性高分子が写真システムにおいて果たしている役割は多岐にわたっている。水溶性高分子の役割が多岐にわたっている理由としては、水溶性高分子が優れた保護コロイド性、ゾルーゲル変換性、イオン透過性、適度な吸湿、保水性などの優れた特性を有することに起因する。特に水溶性高分子の1つであるゼラチンは上記特性の他にハロゲン化銀の分散安定性に非常に優れており、現在でも写真感光材料用の分散安定化剤、バインダーとして大量に使用されている。
【0003】
しかしながら、ゼラチンは牛や豚の骨や皮等から抽出された天然物由来の素材であるためにその品質を一定に保つことは非常に難しく、合成ポリマーをハロゲン化銀の分散安定剤として利用する試みが数多くなされてきた。例えば、米国特許第3,615,624号明細書、同3,860,428号明細書、同3,706,564号明細書に記載のチオエーテル基含有ポリマー;米国特許第4,030,929号明細書、同4,152,161号明細書に記載のヒドロキシキノリン含有ポリマー;米国特許第2,541,474号明細書、同3,284,207号明細書、同3,713,834号明細書、同3,746,548号明細書、独国特許第3,284,207号、特公昭45−14031号公報に記載のアクリルアミドポリマー;米国特許第4,131,471号明細書に記載のポリアクリル酸含有ポリマー;米国特許第3,345,346号明細書、同3,706,564号明細書、同3,425,836号明細書、同3,511,818号明細書、同4,350,759号明細書、同3,832,185号明細書、同3,852,073号明細書に記載のアミン含有ポリマー;米国特許第3,000,741号明細書、同3,236,653号明細書、同2,579,016号明細書、同3,479,189号明細書に記載のポリビニルアルコール含有ポリマー;特公昭43−7561号公報に記載のアクリルアミド、ビニルイミダゾール、アクリル酸の共重合ポリマー;等が挙げられるが、ハロゲン化銀の粒子形成はするものの、感度低下や、分散不良、粒子が丸みを帯びる、粒子のサイズ分布が大きい等の弊害があり、ゼラチンより優れた分散剤は見出されていなかった。
【0004】
近年、ハロゲン化銀写真感光材料の高感度化が求められるようになり、より平面性の優れた高アスペクト比のハロゲン化銀乳剤の調製が必要となってきた。一方、アスペクト比を高くするほどハロゲン化銀乳剤を調製する際にゼラチン単独では防ぎきれないハロゲン化銀乳剤の凝集が問題となってきた。そこで、もともと分散能力に優れたゼラチンに機能性部を修飾した修飾ゼラチンを用いてハロゲン化銀粒子の凝集を抑制する試みがなされている。このような修飾ゼラチンとして、ラテックスと共有結合したゼラチン(特開平7−152103号公報)などが提案されているが、その効果はまだ十分なものとはいえず、高アスペクト比のハロゲン化銀粒子の凝集を抑制する分散剤の開発が強く望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第一の目的は、高感度で、且つ平面性の優れた高アスペクト比のハロゲン化銀粒子の凝集を抑制することができ、高感度なハロゲン化銀乳剤を調製するのに有用な新規なポリマーを提供することにある。
本発明の第二の目的は、高アスペクト比のハロゲン化銀粒子を凝集を生じることなく安定的に含有する、高感度のハロゲン化銀乳剤を提供することにある。
本発明の第三の目的は、高感度で平面性に優れているとともに、圧力耐性にも優れ、且つ安定的に製造可能なハロゲン化銀写真感光材料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、メルカプト基を有する含窒素芳香族環を導入した特定構造のポリマーは、ハロゲン化銀粒子の凝集を抑制し得るとの知見を得、さらにこの知見に基づいて検討を重ねた結果、前記ポリマーを用いることで、高感度で平面性に優れた写真感光材料の安定的な作製を実現し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
[1] 下記一般式(2−B)で表されるメルカプト基含有ポリマー化合物。
【0008】
【化3】
【0009】
式中、R 11 は水素原子またはメチル基を表し、R 12 およびR 13 は各々独立に水素原子または置換基を表し、X 1 はエチレン性不飽和結合及び酸基を有するモノマーから誘導される少なくとも一種を含むユニットを表す。mおよびnはモノマーユニットの質量比を表し、m+n=100である。Y 11 およびY 12 は各々末端基を表し、このうちの少なくとも一方は下記一般式(3)で表される基を表す。
【0010】
【化4】
【0011】
一般式(3)において、QはN、CHまたはC−SHを表し、L 1A は−CO−NH−(CH 2 ) 2 −S−を表す。
[2] 前記X 1 における酸基を含有するモノマーが、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、アクリル酸リチウム、アクリル酸アンモニウム、メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カリウム、メタクリル酸リチウム、メタクリル酸アンモニウム、イタコン酸、イタコン酸カリウム、マレイン酸、CH 2 =CHCOOCH 2 CH 2 COOH、CH 2 =CHCONHCH 2 CH 2 COOH、CH 2 =CHC 6 H 5 COOH(p)、CH 2 =CHCOOCH 2 CH 2 CH 2 COOH、α−クロロアクリル酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸アンモニウム、スチレンスルホン酸リチウム、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸アンモニウム、3−アクリロイルオキシ−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−メタクリロイルオキシ−プロパンスルホン酸カリウム、イソプレンスルホン酸または3−アクリロイルオキシ−エチルホスホン酸ナトリウムであることを特徴とする[1]のメルカプト基含有ポリマー化合物。
[3] 前記メルカプト基含有ポリマー化合物が、水に0.5質量%以上溶解する水溶性ポリマー化合物であることを特徴とする[1]または[2]のメルカプト基含有ポリマー化合物。
[4] 前記メルカプト基含有ポリマー化合物が、前記一般式(3)で表される基を、ポリマー鎖1本につき平均で2個以下含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかのメルカプト基含有ポリマー化合物。
[5] 前記メルカプト基含有ポリマー化合物の数平均分子量が5,000以上であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかのメルカプト基含有ポリマー化合物。
【0020】
[6] 下記一般式(2−C)で表されるメルカプト基含有ポリマー化合物。
【0021】
【化6】
【0022】
式中、Y11、Y12およびR11は前記一般式(2−B)におけるそれらと同義である。R21は水素原子またはメチル基を表し、L2は単結合または2価の連結基を表す。m2、n2はモノマーユニットの質量比を表し、m2+n2=100である。Mは水素原子またはカチオンを表す。
【0023】
[7] [1]〜[6]のいずれかのメルカプト基含有ポリマー化合物を少なくとも1種含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
[8] [1]〜[6]のいずれかのメルカプト基含有ポリマー化合物とハロゲン化銀粒子とを含有することを特徴とするハロゲン化銀乳剤組成物。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施方法および実施態様について詳細に説明する。本明細書において「〜」はその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
まず、本発明に用いられるメルカプト基含有ポリマーについて説明する。
本発明に用いられるメルカプト基含有ポリマーは、下記一般式(2−B)で表されるメルカプト基を含有する合成ポリマーである。
【0025】
【化5】
式中、R 11 は水素原子またはメチル基を表し、R 12 およびR 13 は各々独立に水素原子または置換基を表し、X 1 はエチレン性不飽和結合及び酸基を有するモノマーから誘導される少なくとも一種を含むユニットを表す。mおよびnはモノマーユニットの質量比を表し、m+n=100である。Y 11 およびY 12 は各々末端基を表し、このうちの少なくとも一方は下記一般式(3)で表される基を表す。
【化6】
一般式(3)において、QはN、CHまたはC−SHを表し、L 1A は−CO−NH−(CH 2 ) 2 −S−を表す。
【0026】
本発明のポリマーは、水溶性高分子であるのが好ましい。本明細書において、「水溶性高分子」とは、水に0.5質量%以上溶解する高分子のことをいい、好ましくは1.0質量%以上溶解する高分子、より好ましくは2.0質量%以上溶解する高分子、さらに好ましくは4.0質量%以上溶解する高分子である。
【0027】
本発明のポリマーは、前記一般式(3)で表されるメルカプト基を、平均で2個/(ポリマー鎖1本)以下含有することが好ましい。ポリマー鎖1本当たり平均で、より好ましくは0.01〜1.5個、さらに好ましくは0.1〜2個、よりさらに好ましくは0.1〜1.8個、特に好ましくは0.2〜1.5個、最も好ましくは1個以下である。ここで、ポリマー鎖1本当たりのメルカプト基の個数は、ポリエチレンオキサイドを基準物質としてGPC測定を行った際のポリマーの数平均分子量Mnから求めた水溶性合成ポリマー水溶液のモル濃度AMnと、ポリマー水溶液中のメルカプト基を有する含窒素芳香族環のUV吸光度から求めたモル濃度Quvとを測定し、Quv/AMnの値として求められる。即ち、本発明のポリマーは、Quv/AMnが2以下であるのが好ましく、1以下であるのがより好ましい。メルカプト基の導入量が上記範囲であると、ハロゲン化銀写真感光材料の感度を低下せずに、カブリ濃度の上昇をより抑制することができ、さらに乳剤の溶解経時後のハロゲン化銀粒子の凝集抑制効果をより発揮する。その結果、塗設における写真性能の悪化が改良され、製造適性がより優れたハロゲン化銀乳剤を調製することが可能になる。
【0028】
本発明のポリマーは、前記一般式(3)で表されるメルカプト基が、ポリマーの片末端に導入されていることが好ましい。
【0031】
一般式(2−B)において、Y 11 およびY 12 のうち一方のみが一般式(3)の基を表すとき、他方はポリマー合成過程で導入されるいかなる基であってもよく、例えば、水素原子、重合開始剤、溶媒分子またはモノマー誘導体の他、合成時の添加剤誘導体が、他方の末端基となり得る。
【0035】
置換基Tとしては例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、イソ−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる)、置換または未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる)、
【0036】
アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる)、
【0037】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基はさらに置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0038】
前記一般式(2−B)中、X 1 はエチレン性不飽和結合及び酸基を有するモノマーから誘導されるユニット、即ち、単独重合体又は共重合体の基を表し、共重合体である場合は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体およびグラフト共重合体のいずれの形態であってもよい。また、X 1 が共重合体である場合は、L 1A と共有結合を形成するモノマーがいずれになるかについても特に限定されない。
【0039】
X 1 は、エチレン性不飽和結合及び酸基を有するモノマーから誘導される少なくとも一種を含むユニット(以下モノマー)を少なくとも1種含む。前記モノマーとしては、重合可能なモノマーであれば特に制限はなく、ラジカル重合またはイオン重合法で重合可能なモノマーのいずれも用いることができる。X 1 のモノマーとしては、その単独重合体が水溶性となるモノマーが好ましい。X 1 の水溶性を損なわない限り、X 1 は複数のモノマーの共重合体であってもよい。
【0040】
単独重合体が水溶性となるモノマーとしては、以下のモノマー群(k)が挙げられ(但し、酸基を含有するものに限る)、いずれもX 1 のモノマーとして好ましく用いられる。
(k)アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルピペリジン、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メタクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド、ジアセトンアクリルアミド、ω−メトキシポリエチレングリコールアクリレート(付加mol数n=9)、ω−メトキシポリエチレングリコールアクリレート(付加mol数n=23)、N−メトキシエチルアクリルアミド等。
【0041】
X 1 が共重合体である場合は、前述の(k)のモノマー群のいずれか少なくとも1種と、下記に示すモノマー群(a)〜(j)等のいずれか少なくとも1種との共重合体(但し、少なくとも1種は酸基を有するモノマー)が好ましい。なお、前述の(k)モノマー群の属するモノマーであっても、(a)〜(j)モノマー群に属するものは、重複して列挙した。
【0042】
−モノマー群(a)〜(i)−
(a)共役ジエン:1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2‐n‐プロピル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1−α−ナフチル−1,3−ブタジエン、1−β−ナフチル−1,3−ブタジエン、2‐クロロ1,3−ブタジエン、1−ブロム−1,3−ブタジエン、1‐クロロ1,3−ブタジエン、2‐フルオロ‐1,3−ブタジエン、2,3−ジクロロ1,3−ブタジエン、1,1,2−トリクロロ1,3−ブタジエン、2‐シアノ−1,3−ブタジエン、シクロペンタジエン等
(b) オレフィン:エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、6−ヒドロキシ−1−ヘキセン、4−ペンテン酸、8−ノネン酸メチル、ビニルスルホン酸、トリメチルビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、1,4−ジビニルシクロヘキサン、1,2,5−トリビニルシクロヘキサン等
【0043】
(c) α,β−不飽和カルボン酸エステル類:アルキルアクリレート(例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート等)、置換アルキルアクリレート(例えば、2−クロロエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート等)、アルキルメタクリレート(例えば、メチルメタクリレート、ブチルメタクリ−レート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート等)、置換アルキルメタクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、グリセリンモノメタクリレート、2−アセトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(ポリオキシプロピレンの付加mol数=2ないし100のもの)、3−N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、クロロ−3−N,N,N−トリメチルアンモニオプロピルメタクリレート、2−カルボキシエチルメタクリレート、3−スルホプロピルメタクリレート、4−オキシスルホブチルメタクリレート、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、アリルメタクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート等)、不飽和ジカルボン酸の誘導体(例えば、マレイン酸モノブチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸ジブチル等)、多官能エステル類(例えばエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラメタクリレート等)
【0044】
(d) β−不飽和カルボン酸のアミド類:例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−tertブチルアクリルアミド、N−tertオクチルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド、N−アクリロイルモルフォリン、ジアセトンアクリルアミド、イタコン酸ジアミド、N−メチルマレイミド、2−アクリルアミド−メチルプロパンスルホン酸、メチレンビスアクリルアミド、ジメタクリロイルピペラジン等
(e)不飽和ニトリル類:アクリロニトリル、メタクリロニトリル等
(f) スチレンおよびその誘導体:スチレン、ビニルトルエン、p−tertブチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、α−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、ビニルナフタレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−アミノメチルスチレン、1,4−ジビニルベンゼン等
(g)ビニルエーテル類:メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル等
(h)ビニルエステル類:酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニルクロロ酢酸ビニル等
【0045】
(i)酸基を含有するモノマー:アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、アクリル酸リチウム、アクリル酸アンモニウム、メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カリウム、メタクリル酸リチウム、メタクリル酸アンモニウム、イタコン酸、イタコン酸カリウム、マレイン酸、CH2=CHCOOCH2CH2COOH、CH2=CHCONHCH2CH2COOH、CH2=CHC6H5COOH(p)、CH2=CHCOOCH2CH2CH2COOH、α−クロロアクリル酸等やスチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸アンモニウム、スチレンスルホン酸リチウム、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸アンモニウム、3−アクリロイルオキシ−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−メタクリロイルオキシ−プロパンスルホン酸カリウム、イソプレンスルホン酸等や3−アクリロイルオキシ−エチルホスホン酸ナトリウム等
(j)その他の重合性単量体:N−ビニルイミダゾール、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ビニルオキサゾリン、2−イソプロペニルオキサゾリン、ジビニルスルホン等等が挙げられる。
【0046】
X1としては、上記(k)モノマー群から選ばれる1種(但し酸基を有するものに限る)の単独重合体もしくは2種以上(但し、一種は酸基を有するモノマー)の共重合体、または(k)モノマー群から選ばれる少なくとも1種と上記(i)酸基を含有するモノマー群から選ばれる少なくとも1種との共重合体が好ましく、上記(k)モノマー群から選ばれる1種(但し酸基を有するものに限る)の単独重合体もしくは2種以上(但し、一種は酸基を有するモノマー)の共重合体がより好ましい。X 1 のさらに好ましい態様は、カルボン酸基を有するモノマーの単独重合体もしくは2種以上の共重合体であり、よりさらに好ましい態様は、アクリル酸、メタクリル酸、CH2=CHCOOCH2CH2COOH、CH2=CHCONHCH2CH2COOHもしくはCH2=CHCOOCH2CH2CH2COOHの単独重合体またはこれら2種以上の共重合体であり、特に好ましい態様は、アクリル酸もしくはメタクリル酸の単独重合体、またはこれらとアクリル酸、メタクリル酸、CH2=CHCOOCH2CH2COOH、CH2=CHCONHCH2CH2COOHもしくはCH2=CHCOOCH2CH2CH2COOH他のモノマーとの共重合体である。
【0051】
前記一般式(2−B)で表されるポリマー化合物の好ましい態様は、X1が上記(i)酸基を含有するモノマー群から選ばれる少なくとも1種、またはX1がない(すなわちn=0であること)態様である。より好ましい態様は、X1がカルボン酸基を含有するモノマーの少なくとも1種である態様であり、さらに好ましい態様は、X1がアクリル酸、メタクリル酸、CH2=CHCOOCH2CH2COOH、CH2=CHCONHCH2CH2COOHまたはCH2=CHCOOCH2CH2CH2COOHである態様であり、特に好ましい態様は、X1がアクリル酸またはメタクリル酸の態様である。
【0052】
式中、mおよびnはモノマーユニットの質量比を表し、m+n=100である。mとして好ましくは50〜100、より好ましくは70〜100、さらに好ましくは80〜100である。nとして好ましくは0〜50、より好ましくは0〜30、さらに好ましくは0〜20である。
なお、X1が2種以上のモノマーユニットを含む場合は、そのモノマーユニットの質量比の合計をnとする。
【0056】
一般式(2−B)において、Y11およびY12は末端基であり、少なくとも一方は上記一般式(3)で表される基を表す。
【0058】
前記一般式(3)において、L1Aは−CO−NH−(CH 2 ) 2 −S−を表す。
【0060】
式中、QはN、CHまたはC−SHを表し、好ましくはNまたはCHであり、より好ましくはNである。
【0061】
前記一般式(2−B)で表されるポリマーのさらに好ましい態様は、下記一般式(2−C)で表されるポリマーある。
【0062】
【化13】
【0063】
式中、Y11およびY12は、前記一般式(2−B)におけるそれらと同義である。即ち、Y12およびY12の少なくとも一方は、前記一般式(3)で表される基を表し、好ましい範囲も同様である。
式中、R11は前記一般式(2−B)におけるR11と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0064】
式中、R21は水素原子またはメチル基を表し、好ましくは水素原子である。
【0065】
式中、L2は単結合または2価の連結基を表し、単結合または2価の連結基であればなんでもよいが、L2として好ましくは単結合または炭素数0〜20の2価の連結基であり、より好ましくは単結合または炭素数0〜10の2価の連結基であり、具体的には単結合または炭素数1〜10のアルキレン基(例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、キシリレンなど)、炭素数6〜10のアリーレン基(例えばフェニレン、ナフチレンなど)−C(=O)−、−S(=O)2−、−S(=O)−、−S−、−O−、−P(=O)O-−、−P(=O)O-−、−P(=O)ORa−、−NRa−(Raは水素原子または置換基を表し、置換基としては前述の置換基Tとしてあげたものが適用できる)、−N=、芳香族へテロ環基、またはこれらを2種以上組合わせて得られる炭素数0〜10の2価の連結基であり、さらに好ましくは単結合または
【0066】
【化14】
【0067】
である。
これらは、ポリマー主鎖に対して左右いずれの向きで結合してもよいが、左側がポリマー主鎖と結合するのが好ましい。
【0068】
式中、m2およびn2はモノマーユニットの質量比を表し、m2+n2=100である。m2として好ましくは50〜100、より好ましくは70〜100、さらに好ましくは80〜100である。n2として好ましくは0〜50、より好ましくは0〜30、さらに好ましくは0〜20である。
【0069】
式中、Mは水素原子またはカチオンを表す。好ましくは、水素原子、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはアンモニウムイオンであり、特に好ましくは水素原子、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンまたはアンモニウムイオンである。
【0070】
本発明のポリマーの分子量は、数平均分子量5,000以上が好ましく、より好ましくは10,000以上、さらに好ましくは30,000以上、特に好ましくは50,000以上であり、最も好ましくは100,000以上である。
【0071】
次に、本発明のポリマーの一般的合成法の一例を示すが、これらに限定されるものではない。
本発明のポリマーは、▲1▼あらかじめ重合反応により得られたポリマーに、メルカプト基を有する含窒素芳香族環を含みポリマー中の反応性基と共有結合を形成しうる化合物を反応させて前記メルカプト基を導入することによって合成してもよいし、▲2▼メルカプト基を有する含窒素芳香族環を有する化合物をモノマーとともに重合してもよい。モノマーユニットは、ラジカル重合、イオン重合、縮重合、開環重合、重付加等のいずれの重合反応によって重合させてもよい。
【0072】
以下に、前記一般式(2−B)または(2−C)で表されるポリマーの具体例を示すが、本発明は、以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0073】
【化7】
【0074】
【化16】
【0075】
【化8】
【0076】
次に、本発明のハロゲン化銀写真感光材料について説明する。
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、親水性コロイド層(例えばハロゲン化銀乳剤層および非感光性親水性コロイド層)の少なくとも1層に本発明のポリマーを含有する。本発明のハロゲン化銀写真感光材料の好ましい態様は、ハロゲン化銀乳剤層およびその隣接親水性コロイド層の少なくとも1層に本発明のポリマーを含有する態様であり、特に好ましい態様は、ハロゲン化銀乳剤層に本発明のポリマーを含有する態様である。
【0077】
本発明のポリマーは、ハロゲン化銀写真感光材料の親水性コロイド層を形成する際に、層形成用組成物中に含有させることができる。本発明のポリマーをハロゲン化銀乳剤層中に含有させる場合は、ハロゲン化銀乳剤の調製時に用いるが、本発明のポリマーの添加時期は、ハロゲン化銀粒子形成過程、化学熟成過程、化学熟成終了後のいずれのタイミングであってもよい。粒子形成過程において添加するのが最も好ましい。また、本発明の合成ポリマーは水または親水性有機溶媒(例えばメタノール、N,N−ジメチルホルムアミド)に溶解して添加してもよい。
【0078】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、光、レーザーまたはX線照射に感光性のある材料であり、白黒リバーサルフィルム、白黒ネガフィルム、カラーネガフィルム、カラーリバーサルフィルム、感光性写真成分がデジタルスキャンされたフィルム、白黒反転紙、白黒紙、カラー紙、反転カラー紙、感光性写真成分がデジタルデータベースからのレーザー照射により感光された紙のいずれの形態であってもよい。ハロゲン化銀写真感光材料としてはカラーネガフィルムが好ましく、その実施態様としては、例えば特開平11−305396号公報などを挙げることができる。
【0079】
本発明で用いるハロゲン化銀粒子乳剤の形状は、立方体、八面体、十四面体のような規則的な結晶を有しているもの、球状、板状のような変則的な結晶を有するもの、双晶面などの結晶欠陥を有するもの、またはそれらの複合形である。特に平板状粒子であることがより好ましい。
平板粒子乳剤は全投影面積の50%以上がアスペクト比3以上の粒子で占められることが好ましい。ここで平板粒子の投影面積ならびにアスペクト比は参照用のラテックス球とともにシャドーをかけたカーボンレプリカ法による電子顕微鏡写真から測定することができる。平板粒子は主平面に対して垂直方向から見た時に、通常6角形、3角形もしくは円形状の形態をしているが、該投影面積と等しい面積の円に相当する直径(円相当直径)を厚みで割った値がアスペクト比である。平板粒子の形状は6角形の比率が高い程好ましく、また、6角形の各隣接する辺の長さの比は1:2以下であることが好ましい。
【0080】
本発明の効果はアスペクト比が高い程、好ましい写真性能が得られるので、平板粒子乳剤は全投影面積の50%以上がアスペクト比8以上の粒子で占められることが好ましい。さらに好ましくはアスペクト比12以上である。アスペクト比があまり大きくなりすぎると、前述した粒子サイズ分布の変動係数が大きくなる方向になるために、通常アスペクト比は50以下が好ましい。
【0081】
本発明で用いるハロゲン化銀粒子の平均粒子直径は、平均円相当直径としては0.2〜10.0μmであることが好ましく、0.5〜5.0μmであることがさらに好ましい。円相当直径とは粒子の平行な主平面の投影面積と等しい面積をもつ円の直径である。粒子の投影面積は電子顕微鏡写真上での面積を測定し、撮影倍率を補正することにより得られる。また、平均球相当直径では0.1〜5.0μmであることが好ましく、0.6〜2.0μmであることがさらに好ましい。これらの範囲が写真乳剤にとって最も感度/粒状比の関係が優れている。平板粒子の場合、平均厚みとしては0.05〜1.0μmであることが好ましい。ここで平均円相当直径とは、均一な乳剤から任意に採取した1000個以上の粒子の円相当直径の平均値をいう。平均厚みについても同様である。
本発明で用いるハロゲン化銀粒子は単分散であっても多分散であってもよい。
【0082】
平板粒子乳剤は対向する(111)主平面と該主平面を連結する側面からなることが好ましい。該主平面の間には少なくとも1枚の双晶面が入っていることが好ましい。本発明において用いる平板粒子乳剤には通常2枚の双晶面が観察されることが好ましい。この2枚の双晶面の間隔は米国特許第5,219,720号明細書に記載のように0.012μm未満にすることが可能である。さらには特開平5−249585号公報に記載のように(111)主平面間の距離を該双晶面間隔で割った値が15以上にすることも可能である。
【0083】
本発明において平板粒子乳剤の対向する(111)主平面を連結する側面は全側面の75%以下が(111)面から構成されていることが好ましい。ここで全側面の75%以下が(111)面から構成されるとは、全側面の25%よりも高い比率で(111)面以外の結晶学的な面が存在するということである。通常その面は(100)面であるとして理解し得るが、それ以外の面、すなわち(110)面や、より高指数の面である場合も含み得る。本発明においては全側面の70%以下が(111)面から構成されていると効果が顕著である。
【0084】
本発明で用いることができるハロゲン化銀溶剤としては、米国特許第3,271,157号明細書、同第3,531,289号明細書、同3,574,628号明細書、特開昭54−1019号公報、同54−158917号公報等に記載された(a)有機チオエーテル類、特開昭53−82408号公報、同55−77737号公報、同55−2982号公報等に記載された(b)チオ尿素誘導体、特開昭53−144319号公報に記載された(c)酸素または硫黄原子と窒素原子とにはさまれたチオカルボニル基を有するハロゲン化銀溶剤、特開昭54−100717号公報に記載された(d)イミダゾール類、(e)アンモニア、(f)チオシアネート等があげられる。
特に好ましい溶剤としては、チオシアネート、アンモニアおよびテトラメチルチオ尿素がある。また用いられる溶剤の量は種類によっても異なるが、例えばチオシアネートの場合、好ましい量はハロゲン化銀1mol当り1×10-4mol以上1×10-2mol以下である。
【0085】
平板粒子乳剤の側面の面指数を変化させる方法として欧州特許公開EP515894A1号公報等を参考にすることができる。また米国特許第5,252,453号明細書等に記載のポリアルキレンオキサイド化合物を用いることもできる。有効な方法として米国特許第4,680,254号明細書、同4,680,255号明細書、同4,680,256号明細書ならびに同4,684,607号明細書等に記載の面指数改質剤を用いることができる。通常の写真用分光増感色素も上記と同様な面指数の改質剤として用いることができる。
【0086】
本発明においては上述した要件を満足する限りにおいて種々の方法によって調製することが可能である。平板粒子乳剤の調製は通常、核形成、熟成ならびに成長の基本的に3工程よりなる。核形成の工程においては米国特許第4,713,320号明細書および同4,942,120号明細書に記載のメチオニン含量の少ないゼラチンを用いること、同4,914,014号明細書に記載の高pBrで核形成を行うこと、特開平2−222940号公報に記載の短時間で核形成を行うことは本発明において用いる平板粒子乳剤の核形成工程において極めて有効である。熟成工程においては米国特許第5,254,453号明細書に記載の低濃度のベースの存在下でおこなうこと、同5,013,641号明細書に記載の高いpHでおこなうことは、本発明において用いる平板粒子乳剤の熟成工程において有効である場合がある。成長工程においては米国特許第45248587号明細書記載の低温で成長を行うこと、同4,672,027号明細書、および同4,693,964号明細書に記載の沃化銀微粒子を用いることは本発明において用いる平板粒子乳剤の成長工程において特に有効である。さらには、臭化銀、沃臭化銀、塩沃臭化銀微粒子乳剤を添加して熟成することにより成長させることも好ましく用いられる。特開平10−43570号公報に記載の撹拌装置を用いて、上記微粒子乳剤を供給することも可能である。
【0087】
本発明で用いる乳剤は沃臭化銀、沃塩化銀、臭塩化銀または沃塩臭化銀であることが好ましい。さらに沃臭化銀もしくは沃塩臭化銀より成ることがより好ましい。沃塩臭化銀の場合塩化銀を含んでもよいが、好ましくは塩化銀含率は8mol%以下、より好ましくは3mol%以下もしくは0mol%である。沃化銀含有率については、粒子サイズの分布の変動係数が25%以下であることが好ましいので、沃化銀含有率は20mol%以下が好ましい。沃化銀含有率を低下させることにより平板粒子乳剤の粒子サイズの分布の変動係数は小さくすることが容易になる。特に平板粒子乳剤の粒子サイズの分布の変動係数は20%以下が好ましく、沃化銀含有率は10mol%以下が好ましい。沃化銀含有率に拘わらず、粒子間の沃化銀含量の分布の変動係数は20%以下が好ましく、特に10%以下が好ましい。
【0088】
本発明で用いる乳剤は沃化銀分布について粒子内で構造を有していることが好ましい。この場合、沃化銀分布の構造は2重構造、3重構造、4重構造さらにはそれ以上の構造があり得る。
本発明で用いる乳剤の構造は例えば臭化銀/沃臭化銀/臭化銀からなる3重構造粒子ならびにそれ以上の高次構造も好ましい。構造間の沃化銀含有率の境界は明確なものであっても、連続的になだらかに変化しているものであっても、いずれでも良い。通常、粉末X線回折法を用いた沃化銀含有量の測定では沃化銀含有量の異なる明確な2山を示すようなことはなく、高沃化銀含有率の方向にすそをひいたようなX線回折プロフィールを示す。
本発明においては表面よりも内側の相の沃化銀含有率が表面の沃化銀含有率よりも高いことが好ましく、表面よりも内側の相の沃化銀含有率は好ましくは5mol%以上、より好ましくは7mol%以上である。
【0089】
本発明で用いる乳剤は、平板粒子である場合、好ましくは転位線を有する。平板粒子の転位線は、例えばJ.F.Hamilton,Phot.Sci.Eng.,11、57、(1967)やT.Shiozawa,J.Soc.Phot.Sci.Japan,35、213、(1972)に記載の、低温での透過型電子顕微鏡を用いた直接的な方法により観察することができる。すなわち乳剤から粒子に転位線が発生するほどの圧力をかけないよう注意して取り出したハロゲン化銀粒子を電子顕微鏡観察用のメッシュにのせ、電子線による損傷(プリントアウト等)を防ぐように試料を冷却した状態で透過法により観察を行う。この時粒子の厚みが厚い程、電子線が透過しにくくなるので高圧型(0.25μmの厚さの粒子に対して200kV以上)の電子顕微鏡を用いた方がより鮮明に観察することができる。このような方法により得られた粒子の写真より、主平面に対して垂直方向から見た場合の各粒子についての転位線の位置および数を求めることができる。
【0090】
転位線の数は、好ましくは1粒子当り平均10本以上である。より好ましくは1粒子当り平均20本以上である。転位線が密集して存在する場合、または転位線が互いに交わって観察される場合には、1粒子当りの転位線の数は明確には数えることができない場合がある。しかしながら、これらの場合においても、約10本、20本、30本という程度には数えることが可能であり、明らかに、数本しか存在しない場合とは区別できる。転位線の数の1粒子当りの平均数については100粒子以上について転位線の数を数えて、数平均として求める。
【0091】
本発明で用いるハロゲン化銀粒子は硫黄増感、セレン増感、金増感、パラジウム増感または貴金属増感の少なくとも1つをハロゲン化銀乳剤の製造工程の任意の工程で施こすことができる。2種以上の増感法を組み合せることは好ましい。どの工程で化学増感するかによって種々のタイプの乳剤を調製することができる。粒子の内部に化学増感核をうめ込むタイプ、粒子表面から浅い位置にうめ込むタイプ、または表面に化学増感核を作るタイプがある。本発明で用いる乳剤は目的に応じて化学増感核の場所を選ぶことができるが、好ましいのは表面近傍に少なくとも1種の化学増感核を作った場合である。
【0092】
本発明で好ましく実施しうる化学増感の一つはカルコゲナイド増感と貴金属増感の単独または組合せであり、ジェームス(T.H.James)著、ザ・フォトグラフィック・プロセス、第4版、マクミラン社刊、1977年、(T.H.James、The Theory of the Photographic Process,4th ed, Macmillan, 1997)67−76頁に記載されるように活性ゼラチンを用いて行うことができるし、またリサーチ・ディスクロージャー120巻、1974年4月、12008;リサーチ・ディスクロージャー、34巻、1975年6月、13452、米国特許第2,642,361号明細書、同3,297,446号明細書、同3,772,031号明細書、同3,857,711号明細書、同3,901,714号明細書、同4,266,018号明細書、および同3,904,415号明細書、並びに英国特許第1,315,755号明細書に記載されるようにpAg5〜10、pH5〜8および温度30〜80℃において硫黄、セレン、テルル、金、白金、パラジウム、イリジウムまたはこれら増感剤の複数の組合せとすることができる。貴金属増感においては、金、白金、パラジウム、イリジウム等の貴金属塩を用いることができ、中でも特に金増感、パラジウム増感および両者の併用が好ましい。金増感の場合には、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレナイド等の公知の化合物を用いることができる。パラジウム化合物はパラジウム2価塩または4価の塩を意味する。好ましいパラジウム化合物は、R2PdX6またはR2PdX4で表される。ここでRは水素原子、アルカリ金属原子またはアンモニウム基を表す。Xはハロゲン原子を表し、塩素、臭素またはヨウ素原子を表す。
具体的には、K2PdCl4、(NH4)2PdCl6、Na2PdCl4、(NH4)2PdCl4、Li2PdCl4、Na2PdCl6またはK2PdBr4が好ましい。金化合物およびパラジウム化合物はチオシアン酸塩またはセレノシアン酸塩と併用することが好ましい。
【0093】
硫黄増感剤として、ハイポ、チオ尿素系化合物、ロダニン系化合物および米国特許第3,857,711号明細書、同4,266,018号明細書および同4,054,457号明細書に記載されている硫黄含有化合物を用いることができる。いわゆる化学増感助剤の存在下に化学増感することもできる。有用な化学増感助剤には、アザインデン、アザピリダジン、アザピリミジンのごとき、化学増感の過程でカブリを抑制し、且つ感度を増大するものとして知られた化合物が用いられる。化学増感助剤改質剤の例は、米国特許第2,131,038号明細書、同3,411,914号明細書、同3,554,757号明細書、特開昭58−126526号公報および前述ダフィン著「写真乳剤化学」、138〜143頁に記載されている。
【0094】
本発明で用いる乳剤は金増感を併用することが好ましい。金増感剤の好ましい量としてハロゲン化銀1mol当り1×10-4〜1×10-7molであり、さらに好ましいのは1×10-5〜5×10-7molである。パラジウム化合物の好ましい範囲は1×10-3から5×10-7である。チオシアン化合物またはセレノシアン化合物の好ましい範囲は5×10-2から1×10-6である。
本発明で用いるハロゲン化銀粒子に対して使用する好ましい硫黄増感剤量はハロゲン化銀1mol当り1×10-4〜1×10-7molであり、さらに好ましいのは1×10-5〜5×10-7molである。
【0095】
本発明で用いる乳剤に対して好ましい増感法としてセレン増感がある。セレン増感においては、公知の不安定セレン化合物を用い、具体的には、コロイド状金属セレニウム、セレノ尿素類(例えば、N,N−ジメチルセレノ尿素、N,N−ジエチルセレノ尿素等)、セレノケトン類、セレノアミド類、等のセレン化合物を用いることができる。セレン増感は硫黄増感もしくは貴金属増感またはその両方と組み合せて用いた方が好ましい場合がある。
本発明においては好ましくはチオシアン酸塩が上述した分光増感色素ならびに化学増感剤の添加以前に添加される。好ましくは粒子形成後、より好ましくは脱塩工程終了後に添加される。好ましくは化学増感時にもチオシアン酸塩を添加するのでチオシアン酸塩の添加は2回以上行われることになる。チオシアン酸塩としては、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム等が用いられる。
通常は水溶液または水可溶性溶媒に溶解して添加される。添加量はハロゲン化銀1mol当たり1×10-5molから1×10-2mol、より好ましくは5×10-5molから5×10-3molである。
【0096】
本発明で用いる乳剤の調製時に用いられる保護コロイドとして、およびその他の親水性コロイド層のバインダーとしては、ゼラチンを用いるのが有利であるが、それ以外の親水性コロイドも用いることができる。例えばゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマー、アルブミン、カゼイン等の蛋白質;ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロース硫酸エステル類等の如きセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、澱粉誘導体などの糖誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分アセタール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピラゾール等の単一または共重合体の如き多種の合成親水性高分子物質を用いることができる。
ゼラチンとしては石灰処理ゼラチンのほか、酸処理ゼラチンやBull.Soc.Sci.Photo.Japan. No. 16、P30(1966)に記載されたような酵素処理ゼラチンを用いてもよく、また、ゼラチンの加水分解物や酵素分解物も用いることができる。
【0097】
本発明で用いる乳剤は脱塩のために水洗し、新しく用意した保護コロイド分散にすることが好ましい。水洗の温度は目的に応じて選べるが、5℃〜50℃の範囲で選ぶことが好ましい。水洗時のpHも目的に応じて選べるがpH2〜10の間で選ぶことが好ましい。さらに好ましくはpH3〜8の範囲である。水洗時のpAgも目的に応じて選べるがpAg5〜10の間で選ぶことが好ましい。水洗の方法としてヌードル水洗法、半透膜を用いた透析法、遠心分離法、凝析沈降法、イオン交換法のなかから選んで用いることができる。凝析沈降法の場合には硫酸塩を用いる方法、有機溶剤を用いる方法、水溶性ポリマーを用いる方法、ゼラチン誘導体を用いる方法などから選ぶことができる。
【0098】
本発明で用いる乳剤の調製時、例えば粒子形成時、脱塩工程、化学増感時、塗布前に金属イオンの塩を存在させることは目的に応じて好ましい。粒子にドープする場合には粒子形成時、粒子表面の修飾または化学増感剤として用いる時は粒子形成後、化学増感終了前に添加することが好ましい。粒子全体にドープする場合と粒子のコアー部のみ、シェル部のみ、エピタシャル部分にのみ、または基盤粒子にのみドープする方法も選べる。Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Sc、Y、LaCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Au、Cd、Hg、Tl、In、Sn、Pb、Biなどを用いることができる。これらの金属はアンモニウム塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、水酸塩または6配位錯塩、4配位錯塩など粒子形成時に溶解させることができる塩の形であれば添加できる。例えばCdBr2、CdCl2、Cd(NO3)2、Pb(NO3)2、Pb(CH3COO)2、K3〔Fe(CN)6〕、(NH4)4〔Fe(CN)6〕、K3IrCl6、(NH4)3RhCl6、K4Ru(CN)6などがあげられる。配位化合物のリガンドとしてハロ、アコ、シアノ、シアネート、チオシアネート、ニトロシル、チオニトロシル、オキソ、カルボニルのなかから選ぶことができる。これらは金属化合物を1種類のみ用いてもよいが2種または3種以上を組み合せて用いてよい。
【0099】
金属化合物は水またはメタノール、アセトンなどの適当を溶媒に解かして添加するのが好ましい。溶液を安定化するためにハロゲン化水素水溶液(例HCl、HBrなど)またはハロゲン化アルカリ(例KCl、NaCl、KBr、NaBrなど)を添加する方法を用いることができる。また必要に応じ酸・アルカリなどを加えてもよい。金属化合物は粒子形成前の反応容器に添加しても粒子形成の途中で加えることもできる。また水溶性銀塩(例えばAgNO3)またはハロゲン化アルカリ水溶性(例えばNaCl、KBr、KI)に添加しハロゲン化銀粒子形成中連続して添加することもできる。さらに水溶性銀塩、ハロゲン化アルカリとは独立の溶液を用意し粒子形成中の適切な時期に連続して添加してもよい。さらに種々の添加方法を組み合せるのも好ましい。
【0100】
米国特許第3,772,031号明細書に記載されているようなカルコゲナイド化合物を乳剤調製中に添加する方法も有用な場合がある。S、Se、Te以外にもシアン塩、チオシアン塩、セレノシアン酸、炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩を存在させてもよい。
本発明で用いる乳剤はその製造工程中に銀に対する酸化剤を用いることが好ましい。但し、粒子表面の還元増感によって得られた感度の向上に寄与する銀核はある程度残存する必要がある。特にハロゲン化銀粒子の形成過程および化学増感過程において副生するきわめて微小な銀粒子を、銀イオンに変換せしめる化合物が有効である。ここで生成する銀イオンは、ハロゲン化銀、硫化銀、セレン化銀等の水に難溶の銀塩を形成してもよく、又、硝酸銀等の水に易溶の銀塩を形成してもよい。
好ましい酸化剤は、チオスルホン酸塩の無機酸化剤およびキノン類の有機酸化剤である。
【0101】
本発明に用いられる写真乳剤には、感光材料の製造工程、保存中もしくは写真処理中のカブリを防止し、または写真性能を安定化させる目的で、種々の化合物を含有させることができる。すなわちチアゾール類、例えばベンゾチアゾリウム塩、ニトロイミダゾール類、ニトロベンズイミダゾール類、クロロベンズイミダゾール類、ブロモベンズイミダゾール類、メルカプトチアゾール類、メルカプトベンゾチアゾール類、メルカプトベンズイミダゾール類、メルカプトチアジアゾール類、アミノトリアゾール類、ベンゾトリアゾール類、ニトロベンゾトリアゾール類、メルカプトテトラゾール類(特に1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール)など;メルカプトピリミジン類;メルカプトトリアジン類;たとえばオキサドリンチオンのようなチオケト化合物;アザインデン類、たとえばトリアザインデン類、テトラアザインデン類(特に4−ヒドロキシ置換(1,3,3a,7)テトラアザインデン類)、ペンタアザインデン類などのようなカブリ防止剤または安定剤として知られた、多くの化合物を加えることができる。たとえば米国特許第3,954,474号明細書、同3,982,947号明細書、特公昭52−28660号公報に記載されたものを用いることができる。好ましい化合物の一つに特開昭63−212932号公報に記載された化合物がある。カブリ防止剤および安定剤は粒子形成前、粒子形成中、粒子形成後、水洗工程、水洗後の分散時、化学増感前、化学増感中、化学増感後、塗布前のいろいろな時期に目的に応じて添加することができる。乳剤調製中に添加して本来のカブリ防止および安定化効果を発現する以外に、粒子の晶壁を制御する、粒子サイズを小さくする、粒子の溶解性を減少させる、化学増感を制御する、色素の配列を制御するなど多目的に用いることができる。
【0102】
本発明を採用し得るハロゲン化銀写真感光材料に使用することができる層配列等の技術、ハロゲン化銀乳剤、色素形成カプラー、DIRカプラー等の機能性カプラー、各種の添加剤等、および現像処理については、欧州特許公開EP0565096A1号公報(1993年10月13日公開)およびこれに引用された特許に記載されている。以下に各項目とこれに対応する記載個所を列記する。
【0103】
1.層構成:61頁23〜35行、61頁41行〜62頁14行
2.中間層:61頁36〜40行、
3.重層効果付与層:62頁15〜18行、
4.ハロゲン化銀ハロゲン組成:62頁21〜25行、
5.ハロゲン化銀粒子晶癖:62頁26〜30行、
6.ハロゲン化銀粒子サイズ:62頁31〜34行、
7.乳剤製造法:62頁35〜40行、
8.ハロゲン化銀粒子サイズ分布:62頁41〜42行、
9.平板粒子:62頁43〜46行、
10.粒子の内部構造:62頁47行〜53行、
11.乳剤の潜像形成タイプ:62頁54行〜63頁5行、
12.乳剤の物理熟成・化学熟成:63頁6〜9行、
13.乳剤の混合使用:63頁10〜13行、
14.かぶらせ乳剤:63頁14〜31行、
15.非感光性乳剤:63頁32〜43行、
16.塗布銀量:63頁49〜50行、
17.写真用添加剤:リサーチ・ディスクロージャ(RD)Item17643(1978年12月)、同Item18716(1979年11月)および同Item307105(1989年11月)に記載されており、下記に各項目および これに関連する記載個所を示す。
【0104】
【0105】
18.ホルムアルデヒドスカベンジャー:64頁54〜57行、
19.メルカプト系カブリ防止剤:65頁1〜2行、
20.かぶらせ剤等放出剤:65頁3〜7行、
21.色素:65頁7〜10行、
22.カラーカプラー全般:65頁11〜13行、
23.イエロー、マゼンタおよびシアンカプラー:65頁14〜25行、
24.ポリマーカプラー:65頁26〜28行、
25.拡散性色素形成カプラー:65頁29〜31行、
26.カラードカプラー:65頁32〜38行、
27.機能性カプラー全般:65頁39〜44行、
28.漂白促進剤放出カプラー:65頁45〜48行、
29.現像促進剤放出カプラー:65頁49〜53行、
30.その他のDIRカプラー:65頁54行〜66頁4行、
31.カプラー分散方法:66頁5〜28行、
32.防腐剤・防かび剤:66頁29〜33行、
33.感光材料の種類:66頁34〜36行、
34.感光層膜厚と膨潤速度:66頁40行〜67頁1行、
35.バック層:67頁3〜8行、
36.現像処理全般:67頁9〜11行、
37.現像液と現像薬:67頁12〜30行、
38.現像液添加剤:67頁31〜44行、
39.反転処理:67頁45〜56行、
40.処理液開口率:67頁57行〜68頁12行、
41.現像時間:68頁13〜15行、
42.漂白定着、漂白、定着:68頁16行〜69頁31行、
43.自動現像機:69頁32〜40行、
44.水洗、リンス、安定化:69頁41行〜70頁18行、
45.処理液補充、再使用:70頁19〜23行、
46.現像薬感光材料内蔵:70頁24〜33行、
47.現像処理温度:70頁34〜38行、
48.レンズ付フィルムへの利用:70頁39〜41行。
【0106】
本発明は、ハロゲン化銀カラー写真感光材料に適用することもできる。前記ハロゲン化銀カラー写真感光材料には、処理の簡略化および迅速化の目的で発色現像主薬を内蔵させても良い。内蔵させるためには、発色現像主薬の各種プレカーサーを用いるのが好ましい。例えば、米国特許第3,342,597号明細書記載のインドアニリン系化合物、例えば、同第3,342,599号明細書、リサーチ・ディスクロージャーNo.14,850および同No.15,159号明細書に記載のシッフ塩基型化合物、同No.13,924号明細書に記載のアルドール化合物、米国特許第3,719,492号明細書に記載の金属塩錯体、特開昭53−135628号公報に記載のウレタン系化合物を挙げることができる。
【0107】
本発明を適用するハロゲン化銀カラー感光材料は、必要に応じて、発色現像を促進する目的で、各種の1−フェニル−3−ピラゾリドン類を内蔵しても良い。典型的な化合物は、例えば、特開昭56−64339号公報、同57−144547号公報、および同58−115438号公報に記載されている。
本発明における各種処理液は、10℃〜50℃において使用される。通常は33℃〜38℃の温度が標準的であるが、より高温にして処理を促進し処理時間を短縮したり、逆により低温にして画質の向上や処理液の安定性の改良を達成することができる。
【0108】
また、本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、米国特許第4,500,626号明細書、特開昭60−133449号公報、同59−218443号公報、同61−238056号公報、欧州特許公開EP210,660A2号公報などに記載されている熱現像感光材料にも適用できる。
また、本発明を適用するハロゲン化銀カラー写真感光材料は、特公平2−32615号公報、実公平3−39784号公報などに記載されているレンズ付きフィルムユニットに適用した場合に、より効果を発現しやすく有効である。
【0109】
【実施例】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によりいかなる意味においても限定されることはない。
【0110】
[実施例1]
(合成例1:WP−1の合成)
あらかじめpH4.7のフタル酸緩衝液(90mL)にアクリルアミド50g、2−メルカプトエチルアミン塩酸塩0.396gを溶解したA液と、フタル酸緩衝液(50mL)に和光純薬製ラジカル発生剤V−50を溶解させたB液を調製した。
窒素雰囲気下、1000mLの3ツ口フラスコにフタル酸緩衝液(150mL)を加え、60℃で3時間かけて、A液とB液をそれぞれ別に滴下した。滴下終了後80℃で3時間加熱攪拌した後、室温まで冷却し、メタノール10Lに反応液を滴下し、再沈殿操作を行った。得られた固形分をろ別し、40℃で減圧乾燥し、ポリアクリルアミド50gを得た。
得られたポリアクリルアミド 20g(0.22mmol)を水300mLに溶解し、5mol/LのNaOHでpH値8.0に調整した後、あらかじめ、N、N−ジメチルホルムアミド 30mLに4−(5−メルカプト−1−テトラゾリル)安息香酸 495mg(2.2mmol)、N−ヒドロキシサクシンイミド(NHS)253mg(2.2mmol)及びWSC(N−エチル−N、N−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩)422mg(2.2mmol)を溶解し、室温で3時間攪拌したものをポリアクリルアミド水溶液中に20分間かけて滴下した。滴下終了後、40℃に保ちながらさらに30分間攪拌した。反応終了後、6Lのメタノールに反応液をゆっくりと滴下し、得られた固形分をろ別した。再び水270mLに溶解させ、6Lのメタノールに再沈殿操作を行い、固形分をろ別した。得られた固形分を40℃で減圧乾燥を行い、白色の固体としてWP−1aを20g得た。
【0111】
また、2−メルカプトエチルアミン塩酸塩の添加量を換えることにより、分子量を制御したポリアクリルアミドを合成し、得られたポリマーに対して10mol等量の4−(5−メルカプト−1−テトラゾリル)安息香酸、NHS、WSCを用いて分子量の異なるポリマーWP−1b〜WP−1dを合成した。
合成したWP−1の物性値を表1に示す。
【0112】
(合成例2:ポリマーWP−2の合成)
あらかじめpH4.7のフタル酸緩衝液(90mL)にアクリルアミド47.5g、アクリル酸、2.5g、2−メルカプトエチルアミン塩酸塩0.396gを溶解したA液と、フタル酸緩衝液(50mL)に和光純薬製ラジカル発生剤V−50を溶解させたB液を調整した。
窒素雰囲気下、1000mLの3口フラスコにフタル酸緩衝液(150mL)を加え、60℃で3時間かけて、A液とB液をそれぞれ別に滴下した。滴下終了後80℃で3時間加熱攪拌した後、室温まで冷却し、5mol/lNaOHでpH値7.8に調整した後メタノール5Lに反応液を滴下し、再沈殿操作を行った。得られた固形分をろ別し、40℃で減圧乾燥し、アクリルアミド−アクリル酸共重合ポリマー50gを得た。
得られたポリマー20gを水70mLに溶解し、5mol/lNaOHでpH値8.0に調整した後、あらかじめ、N,N−ジメチルホルムアミド 70mLに、4−(5−メルカプト−1−テトラゾリル)安息香酸ジナトリウム 1.43g(5.9mmol)と、NHS 0.68g(5.9mmol)と、WSC、1.13g(5.9mmol)とを溶解し、室温で3時間攪拌したものをポリマー水溶液中に20分間かけて滴下した。滴下終了後、40℃に保ちながらさらに3時間攪拌した。反応終了後、3Lのメタノールに反応液をゆっくりと滴下し、得られた固形分をろ別した。再び水50mLに溶解させ、3Lのメタノールに再沈殿操作を行い、固形分をろ別した。得られた固形分を40℃で減圧乾燥を行い、白色の固体としてWP−2aを2g得た。
また、2−メルカプトエチルアミン塩酸塩の添加量を換えることにより、分子量を制御したアクリルアミド−アクリル酸共重合ポリマーを合成し、得られたポリマーに対して10mol等量の4−(5−メルカプト−1−テトラゾリル)安息香酸、NHS、WSCを用いて分子量の異なるポリマーWP−2bを合成した。
【0113】
(実施例3:ポリマーWP−3の合成)
ポリマーWP−2と同様の方法で、2−メルカプトエチルアミン塩酸塩の添加量と、アクリルアミドとアクリル酸との添加質量比を95:5に換えることにより、分子量を制御したアクリルアミド−アクリル酸共重合ポリマーを合成し、得られたポリマーに対して10mol等量の4−(5−メルカプト−1−テトラゾリル)安息香酸、NHS、WSCを用いて分子量の異なるポリマーWP−3a、WP−3bを合成した。
合成したWP-3の物性値を表1に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
[実施例2]
以下の製法によりハロゲン化銀乳剤を調製した。調製に使用した化合物1〜化合物3以外の構造は後にまとめて示す。
(乳剤Em−A1の製法)
質量平均分子量15000の低分子量ゼラチン2.0g、KBr1.1gを含む水溶液1300mLを45℃に保ち、pHを9に調整し激しく攪拌した。
【0116】
AgNO3 1.1gを含む水溶液と、KBr 1.1gと質量平均分子量15,000の低分子量ゼラチン 1.0gを含む水溶液を、ダブルジェット法で30秒間かけて添加し、核形成を行った。KBrを6.6g添加し、75℃に昇温して熟成した。熟成終了後、質量平均分子量10万のアルカリ処理ゼラチンを無水コハク酸で化学修飾したゼラチン 20.0gを添加し、その後pHを5.2に調整した(ここまでが内部核の形成)。AgNO3 29.3gを含む水溶液230mLと、KBr 15.8gおよびKI 1.92gを含む水溶液とをダブルジェット法で40分間かけて添加した。この時、銀電位を飽和カロメル電極に対して−30mVに保った。さらに、AgNO3 64.5gを含む水溶液と、KBr 42.3gおよびKI 5.14gを含む水溶液 233mLをダブルジェット法で最終流量が初期流量の1.33倍になるように流量加速して、57分間かけて添加した。添加している間、銀電位を−25mVに保った(内部核の形成後ここまでが、第1被覆相の形成)。次に、AgNO3 47.2gを含む水溶液とKBr水溶液とをダブルジェット法で銀電位を−20mVに保ちながら25分間かけて添加した。
【0117】
温度を40℃に降温した後、化合物1を3.9g添加し、さらに0.8Mの亜硫酸ナトリウム水溶液を25.6mL添加した。次にNaOH水溶液を用いてpH9.0に調整し5分間保持した。温度を55℃に昇温した後、H2SO4にてpHを5.5に調整した。ベンゼンチオスルホン酸ナトリウムを1.5mg添加し、カルシウム濃度が1ppmの石灰処理ゼラチンを16g添加した。添加終了後、AgNO3 94.6gを含む水溶液250mLおよびKBr水溶液を、銀電位を+75mVに保ちながら30分間かけて添加した。この時、黄血塩を銀1molに対して2.0×10-5molおよびK2IrCl6を銀1molに対して1.5×10-8mol添加した。
【0118】
水洗した後、ゼラチンを添加し40℃でpH5.6、pAg8.8に調整した。56℃に昇温した後、化合物2および増感色素ExS−5、ExS−6、ExS−7、ExS−8、ExS−9を添加した後,チオシアン酸カリウム、塩化金酸、チオ硫酸ナトリウム、ヘキサフルオロフェニルジフェニルホスフィンセレニドおよび化合物F−11、化合物3を添加し最適に化学増感した。化学増感終了時に化合物F−2を添加した。
【0119】
この乳剤は、平均球相当直径1.30μm、平均円相当直径2.74μm、平均厚み0.20μm、平均アスペクト比14.0の平板状粒子であった。
得られた粒子を液体窒素で冷却しながら透過電子顕微鏡で観察した結果、粒子外周部から投影面積で30%の粒子周辺部には1粒子当り10本以上の転位線が観察された。
【0120】
【化18】
【0121】
(乳剤Em−B1の製法)
分子量15,000の低分子量ゼラチンを1.0gと、KBrを1.0g含む水溶液1200mLを35℃に保ち、激しく撹拌した。AgNO3を1.9g含む水溶液30mL、KBrを1.5gおよび分子量15,000の低分子量ゼラチンを0.7g含む水溶液30mLとをダブルジェット法で30秒間かけて添加し、核形成を行った。この時、KBrの過剰濃度を一定に保った。KBrを5g添加し、75℃に昇温して熟成した。熟成終了後、1gあたり35μmolのメチオニンを含有する分子量100,000のトリメリット化率98%のトリメリット化ゼラチンを35g添加した。PHを5.5に調整した。AgNO3を30g含む水溶液150mLとKBr水溶液とをダブルジェット法で16分間かけて添加した。この時、銀電位を飽和カロメル電極に対して−25mVに保った。さらに、AgNO3を110g含む水溶液とKBr水溶液とをダブルジェット法で最終流量が初期流量の1.2倍になるように流量加速して、15分間かけて添加した。この時、サイズが0.03μmのAgI微粒子乳剤をヨウ化銀含有率が3.8%になるように同時に流量加速して添加し、かつ銀電位を−25mVに保った。AgNO3を35g含む水溶液132mLとKBr水溶液をダブルジェット法で7分間かけて添加した。添加終了時の電位を−20mVになるようにKBr水溶液の添加を調整した。温度を40℃にした後、下記化合物16aをKI換算で8g添加し、さらに0.8Mの亜硫酸ナトリウム水溶液を64mL添加した。さらにNaOH水溶液を添加してpHを9.0に上げ4分間保持し、沃化物イオンを急激に生成せしめた後、pHを5.5に戻した。温度を55℃に戻した後、ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム、1mgを添加し、さらにカルシウム濃度が1ppmの石灰処理ゼラチンを13g添加した。添加終了後、AgNO3を70g含む水溶液250mLおよびKBr水溶液を電位を60mVに保ちながら20分間に亘り添加した。このとき、黄血塩を銀1モルに対して1.0×10-5モル添加した。水洗した後、カルシウム濃度1ppmの石灰処理ゼラチンを80g添加し、40℃でpHを5.8、pAgを8.7に調整した。
【0122】
化合物16a
【化19】
【0123】
上記の乳剤のカルシウム、マグネシウムおよびストロンチウムの含有量をICP発光分光分析法により測定したところ、それぞれ15ppm、2ppmおよび1ppmであった。
上記の乳剤を56℃に昇温した後、化合物2および増感色素ExS−5、ExS−6、ExS−7、ExS−8、ExS−9を添加した後,チオシアン酸カリウム、塩化金酸、チオ硫酸ナトリウム、ヘキサフルオロフェニルジフェニルホスフィンセレニドおよび化合物F−11、化合物3を添加し最適に化学増感した。化学増感終了時に化合物F−2を添加した。
この乳剤は、平均球相当直径0.85μm、平均円相当直径1.60μm、平均厚み0.14μm、平均アスペクト比11.4の平板状粒子であった。
【0124】
乳剤Em−A1およびEm−B1は液体窒素で冷却しながら透過電子顕微鏡で観察した結果、ともに粒子外周部から投影面積で30%の粒子周辺部には1粒子当り10本以上の転位線が観察された。
【0125】
(乳剤Em−Kの製法)
《種乳剤の調製》
質量平均分子量15,000の低分子量酸化処理ゼラチンを1.0gと、KBrを0.9g含む水溶液1200mLを35℃に保ち激しく攪拌した。AgNO3 1.05gを含む水溶液40mLと、KBr 1.02gおよび分子量15,000の低分子量ゼラチン 1.2gを含む水溶液35mLをダブルジェット法で30秒間かけて添加し、核形成を行った。添加終了後、直ちにKBrを5.4g加えて、75℃に昇温し熟成を行った。熟成終了後、質量平均分子量10万のアルカリ処理ゼラチンを無水コハク酸で化学修飾したゼラチン35gを添加し、その後pHを5.5に調整した。AgNO3 36gを含む水溶液250mLと、KBr 21.2gおよびKI 2.21gを含む水溶液282mLとを銀電位−10mVに保ちながらダブルジェット法で25分間かけて添加した。その後、AgNO3 200gを含む水溶液650mLと、KBr 134.1gおよびKI13.9gを含む水溶液900mLとをダブルジェット法で最終流量が初期流量の1.5倍になるように流量加速して150分間かけて添加した。この時、銀電位を飽和カロメル電極に対して+5mVに保った。水洗した後、ゼラチンを加えpH5.7、pAg8.8、乳剤1kg当たりの銀換算の質量139.0g、ゼラチン質量56gに調整し、種乳剤とした。
【0126】
カルシウム濃度が1ppmの石灰処理ゼラチン33g、KBr 3.4gを含む水溶液1200mLを75℃に保ち激しく攪拌した。前述した種乳剤を89g加えた後、変成シリコンオイル(日本ユニカ−株式会社製品;「L7602」)を0.3g添加した。H2SO4を添加してpHを5.8に調整し、ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム 3mgと二酸化チオ尿素3mgを添加した後、AgNO3 51.0gを含む水溶液600mLと、KBr 36.2gおよびKI 3.49gを含む水溶液600mLとをダブルジェット法で最終流量が初期流量の1.1倍になるように流量加速して、85分間かけて添加した。この時、銀電位を飽和カロメル電極に対して−35mVに保った。さらに、AgNO3 44.7gを含む水溶液300mLと、KBr 30.6gおよびKI 3.06gを含む水溶液300mLとを、ダブルジェット法で最終流量が初期流量の1.1倍になるように流量加速して56分間かけて添加した。この時、銀電位を飽和カロメル電極に対して−25mVに保った。次に、AgNO3 36.9gを含む水溶液180mLと、KBr水溶液とをダブルジェット法で40分間かけて添加した。この時、銀電位を飽和カロメル電極に対して+10mVに保った。KBrを添加して銀電位を−70mVに調整した後、0.037μmの粒子サイズのAgI微粒子乳剤をKI質量換算で1.38g添加した。添加終了後直ちに、AgNO3 17.4gを含む水溶液100mLを15分間かけて添加した。水洗した後、ゼラチンを添加し40℃でpH5.8、pAg8.7に調整した。60℃に昇温した後、化合物2および増感色素ExS−10、ExS−13を添加し、チオシアン酸カリウム、塩化金酸、チオ硫酸ナトリウム、ヘキサフルオロフェニルジフェニルホスフィンセレニド、化合物F−11と、化合物3を添加し最適に化学増感した。化学増感終了時に化合物F−3を添加した。
【0127】
この乳剤は、平均球相当直径1.90μm、平均円相当直径3.58μm、円相当直径の変動係数20%、平均厚み0.36μm、平均アスペクト比10.0の平板状粒子であった。
【0128】
得られた粒子を液体窒素で冷却しながら透過電子顕微鏡で観察した結果、粒子中心部から投影面積で80%以内に転位線が存在しない粒子が全数の約97%であり、粒子外周部から投影面積で20%の粒子周辺部には1粒子当り10本以上の転位線が観察された。
【0129】
(乳剤Em−Nの製法)
脱イオンゼラチン48g、KBr0.75gとを含む水溶液1250mLを70℃に保ち激しく攪拌した。
【0130】
この溶液中に、AgNO3 12.0gを含む水溶液276mLと等モル濃度のKBr水溶液とをダブルジェット法により7分間かけてpAg7.5に保ちながら添加した。次に、AgNO3 108.0gを含む水溶液600mLと、等モル濃度のKBrおよびKIの混合水溶液(2.2mol%のKI)とをダブルジェット法により28分30秒かけてpAg7.30に保ちながら添加した。この時、添加終了する5分前に0.1質量%のチオスルホン酸水溶液を24.0mL添加した。通常のフロキュレーション法による脱塩・水洗を行って再分散させた後、40℃でpH6.2、pAg7.6に調整した。温度を40℃に制御した後、化合物2および増感色素ExS−10、ExS−12を添加し、チオシアン酸カリウム、塩化金酸、チオ硫酸ナトリウム、ヘキサフルオロフェニルジフェニルホスフィンセレニド、化合物F−11、化合物3とを添加した後、65℃に昇温し、最適に化学増感した。化学増感終了時に化合物F−2を添加した。
【0131】
この乳剤は、球相当径0.19μm、球相当径の変動係数16%の立方体粒子であった。
【0132】
乳剤Em−B1、Em−C〜J、L、M、Oは、上記実施例1の乳剤Em−A1、上記乳剤Em−Kの調製における温度、pH、銀電位、硝酸銀量、KI量、化合物量、増感色素種、種乳剤量などを適宜変更することによって調製した。
このようにして調製した乳剤の詳細を表2に示す。
【0133】
【表2】
【0134】
(塗布試料の作製)
下塗りを施した三酢酸セルロースフィルム支持体上に、下記に示すような組成の各層を重層塗布し、多層カラー感光材料である試料101を作製した。
【0135】
(感光層の組成)
各層に使用する素材の主なものは下記のように分類されている;
ExC:シアンカプラー ExS:分光増感色素
UV :紫外線吸収剤
ExM:マゼンタカプラー HBS:高沸点有機溶剤
ExY:イエローカプラー H :ゼラチン硬化剤
(具体的な化合物は以下の記載で、記号の次に数値が付けられ、後ろに化学式が挙げられている)。
【0136】
各成分に対応する数字は、g/m2単位で表した塗布量を示し、ハロゲン化銀については銀換算の塗布量を示す。また、分光増感色素については同一層のハロゲン化銀1molに対する塗布量をmol単位で示した。
【0137】
第1層(第1ハレーション防止層)
黒色コロイド銀 銀 0.077
ゼラチン 0.560
ExM−1 0.048
Cpd−2 0.001
F−8 0.001
HBS−1 0.120
HBS−2 0.015
【0138】
第2層(第2ハレーション防止層)
黒色コロイド銀 銀 0.088
ゼラチン 0.830
ExM−1 0.057
ExF−1 0.002
F−8 0.001
HBS−1 0.090
HBS−2 0.010
【0139】
第3層(中間層)
ExC−2 0.010
Cpd−1 0.086
UV−2 0.029
UV−3 0.052
UV−4 0.011
HBS−1 0.100
ゼラチン 0.580
【0140】
第4層(低感度赤感乳剤層)
Em−D 銀 0.67
Em−C 銀 0.37
ExC−1 0.282
ExC−2 0.012
ExC−3 0.102
ExC−4 0.148
ExC−5 0.005
ExC−6 0.008
ExC−8 0.071
ExC−9 0.010
ExS−1 1.6×10-3
ExS−2 5.0×10-4
ExS−3 2.6×10-5
UV−2 0.036
UV−3 0.067
UV−4 0.014
Cpd−2 0.010
Cpd−4 0.012
HBS−1 0.240
HBS−5 0.010
ゼラチン 1.630
【0141】
第5層(中感度赤感乳剤層)
Em−B1 銀 0.73
ExC−1 0.111
ExC−2 0.039
ExC−3 0.018
ExC−4 0.074
ExC−5 0.019
ExC−6 0.024
ExC−8 0.010
ExC−9 0.005
ExS−1 6.9×10-4
ExS−2 2.5×10-4
ExS−3 9.4×10-6
Cpd−2 0.020
Cpd−4 0.021
HBS−1 0.129
ゼラチン 0.900
【0142】
第6層(高感度赤感乳剤層)
Em−A1 銀 1.37
ExC−1 0.122
ExC−6 0.032
ExC−8 0.110
ExC−9 0.005
ExC−10 0.159
ExS−1 4.7×10-4
ExS−2 2.5×10-4
ExS−3 9.9×10-6
Cpd−2 0.068
Cpd−4 0.015
HBS−1 0.440
ゼラチン 1.610
【0143】
第7層(中間層)
Cpd−1 0.081
Cpd−6 0.002
固体分散染料ExF−4 0.015
HBS−1 0.049
ポリエチルアクリレートラテックス 0.088
ゼラチン 0.759
【0144】
第8層(赤感層へ重層効果を与える層)
Em−J 銀 0.46
Cpd−4 0.010
ExM−2 0.082
ExM−3 0.006
ExM−4 0.026
ExY−1 0.010
ExY−4 0.040
ExC−7 0.007
ExS−4 7.8×10-4
ExS−5 3.5×10-4
HBS−1 0.203
HBS−3 0.003
HBS−5 0.010
ゼラチン 0.570
【0145】
第9層(低感度緑感乳剤層)
Em−H 銀 0.20
Em−G 銀 0.17
Em−I 銀 0.30
ExM−2 0.388
ExM−3 0.040
ExY−1 0.003
ExY−3 0.002
ExC−7 0.009
ExS−5 3.4×10-4
ExS−6 7.4×10-5
ExS−7 1.1×10-4
ExS−8 3.5×10-4
ExS−9 1.0×10-4
HBS−1 0.337
HBS−3 0.018
HBS−4 0.260
HBS−5 0.110
Cpd−5 0.010
ゼラチン 1.470
【0146】
第10層(中感度緑感乳剤層)
Em−F 銀 0.40
ExM−2 0.084
ExM−3 0.012
ExM−4 0.005
ExY−3 0.002
ExC−6 0.003
ExC−7 0.007
ExC−8 0.008
ExS−7 1.0×10-4
ExS−8 6.1×10-4
ExS−9 1.3×10-4
HBS−1 0.096
HBS−3 0.002
HBS−5 0.002
Cpd−5 0.004
ゼラチン 0.382
【0147】
第11層(高感度緑感乳剤層)
Em−E 銀 0.90
ExC−6 0.002
ExC−8 0.010
ExM−1 0.014
ExM−2 0.023
ExM−3 0.023
ExM−4 0.005
ExM−5 0.040
ExY−3 0.003
ExS−7 7.4×10-4
ExS−8 6.9×10-4
ExS−9 1.9×10-4
Cpd−3 0.004
Cpd−4 0.007
Cpd−5 0.010
HBS−1 0.259
HBS−5 0.020
ポリエチルアクリレートラテックス 0.099
ゼラチン 0.781
【0148】
第12層(イエローフィルター層)
Cpd−1 0.088
固体分散染料ExF−2 0.051
固体分散染料ExF−8 0.010
HBS−1 0.049
ゼラチン 0.593
【0149】
第13層(低感度青感乳剤層)
Em−N 銀 0.18
Em−M 銀 0.04
Em−L 銀 0.60
ExC−1 0.024
ExC−7 0.011
ExY−1 0.002
ExY−2 0.956
ExY−4 0.091
ExS−10 8.5×10-5
ExS−11 7.4×10-4
ExS−12 9.5×10-5
ExS−13 3.0×10-4
Cpd−2 0.037
Cpd−3 0.004
HBS−1 0.372
HBS−5 0.047
ゼラチン 2.201
【0150】
第14層(高感度青感乳剤層)
Em−K 銀 1.32
ExY−2 0.235
ExY−4 0.018
ExS−10 1.0×10-4
ExS−13 1.5×10-4
Cpd−2 0.075
Cpd−3 0.001
HBS−1 0.087
ゼラチン 1.156
【0151】
第15層(第1保護層)
0.07μmのヨウ臭化銀乳剤 銀 0.28
UV−1 0.358
UV−2 0.179
UV−3 0.254
UV−4 0.025
F−11 0.0081
S−1 0.078
ExF−5 0.0024
ExF−6 0.0012
ExF−7 0.0010
HBS−1 0.175
HBS−4 0.050
ゼラチン 2.231
【0152】
第16層(第2保護層)
H−1 0.400
B−1(直径1.7μm) 0.050
B−2(直径1.7μm) 0.150
B−3 0.050
S−1 0.200
ゼラチン 0.711
【0153】
さらに、各層に適宜、保存性、処理性、圧力耐性、防黴・防菌性、帯電防止性および塗布性をよくするために、W−1ないしW−6、B−4ないしB−6、F−1ないしF−17および、鉛塩、白金塩、イリジウム塩、ロジウム塩が含有されている。
【0154】
(有機固体分散染料の分散物の調製)
ExF−2のウエットケーキ
(17.6質量%の水を含む) 2.800 kg
オクチルフェニルジエトキシメタンスルホン酸ナトリウム
(31質量%水溶液) 0.376 kg
F−15(7%水溶液) 0.011 kg
水 4.020 kg
計 7.210 kg
(NaOHでpH=7.2に調整)
上記組成のスラリーをディゾルバーで攪拌して粗分散した後、アジテータミルLMK−4を用い、周速10m/s、吐出量0.6kg/min、0.3mm径のジルコニアビーズ充填率80%で分散液の吸光度比が0.29になるまで分散し、固体微粒子分散物を得た。染料微粒子の平均粒子サイズは0.29μmであった。
【0155】
同様にして、ExF−4、ExF−8の固体分散物を得た。染料微粒子の平均粒子サイズはそれぞれ、0.28μm、0.49μmであった。
【0156】
以下、各層に用いた化合物を示す。
【0157】
【化20】
【0158】
【化21】
【0159】
【化22】
【0160】
【化23】
【0161】
【化24】
【0162】
【化25】
【0163】
【化26】
【0164】
【化27】
【0165】
【化28】
【0166】
【化29】
【0167】
【化30】
【0168】
【化31】
【0169】
【化32】
【0170】
【化33】
【0171】
【化34】
【0172】
【化35】
【0173】
(乳剤Em−A2〜A10の製法)
乳剤Em−A1において、化学増感終了時の化合物F−2の添加前に水溶性合成ポリマーを銀1molに対して20mg、後述の表3に示すように添加する以外は乳剤Em−A1と同様に乳剤Em−A2〜A10を調製した。
【0174】
(乳剤Em−B2〜B10の製法)
乳剤Em−B1において、化学増感終了時の化合物F−2の添加前に水溶性合成ポリマーを銀1molに対して20mg、後述の表3に示すように添加する以外は乳剤Em−B1と同様に乳剤Em−B2〜B10を調製した。
【0175】
(試料102〜110の作製)
試料101の第6層の乳剤Em−A1をEm−A2〜A10に、第5層の乳剤Em−B1をEm−B2〜B10に、各々等銀量となるように後述の表3のごとく置き換えた以外は試料101と同じようにして多層カラー感光材料102〜110を作製した。
【0176】
(特定写真感度の測定)
写真感光材料の感度は一般に国際規格であるISO感度が用いられているが、ISO感度では感光材料を露光後5日目に現像処理し、かつその現像処理は各社指定の処理によると規定されているので、本発明では露光後現像処理までの時間を短縮し、かつ一定の現像処理を行うようにしている。
【0177】
この特定写真感度の決定方法は、JIS K 7614−1981に準じたものであり、異なる点は、現像処理をセンシトメトリ用露光後30分以上6時間以内に完了させる点、および現像処理を下記に記すフジカラー処理処方CN−16による点にある。その他は実質的にJIS記載の測定方法と同一である。
【0178】
下記に示した現像処理以外は、特開昭63−226650号公報に記載されている、試験条件、露光、濃度測定、特定写真感度の決定と同様の方法とした。
【0179】
現像は富士写真フイルム社製自動現像機FP−360Bを用いて以下により行った。尚、漂白浴のオーバーフロー液を後浴へ流さず、全て廃液タンクへ排出するように改造を行った。このFP−360Bは公開技法94−4992号(社団法人発明協会発行)に記載の蒸発補正手段を搭載している。
処理工程および処理液組成を以下に示す。
【0180】
安定液および定着液は(2)から(1)への向流方式であり、水洗水のオーバーフロー液は全て定着浴(2)へ導入した。尚、現像液の漂白工程への持ち込み量、漂白液の定着工程への持ち込み量、および定着液の水洗工程への持ち込み量は感光材料35mm幅1.1m当たりそれぞれ2.5mL、2.0mL、2.0mLであった。また、クロスオーバーの時間はいずれも6秒であり、この時間は前工程の処理時間に包含される。
上記処理機の開口面積は発色現像液で100cm2、漂白液で120cm2、その他の処理液は約100cm2であった。
【0181】
以下に処理液の組成を示す。
【0182】
【0183】
(定着(1)タンク液)
上記漂白タンク液と下記定着タンク液との5対95(容量比)混合液
(pH6.8)
(定着(2)) タンク液(g) 補充液(g)
チオ硫酸アンモニウム水溶液 240mL 720mL
(750g/L)
イミダゾール 7 21
メタンチオスルホン酸アンモニウム 5 15
メタンスルフィン酸アンモニウム 10 30
エチレンジアミン四酢酸 13 39
水を加えて 1.0L 1.0L
pH〔アンモニア水、酢酸で調整〕 7.4 7.45
【0184】
(水洗水)
水道をH型強酸性カチオン交換樹脂(ロームアンドハース社製アンバーライトIR−120B)と、OH型強塩基性アニオン交換樹脂(同アンバーライトIR−400)を充填した混床式カラムに通水してカルシウムおよびマグネシウムイオン濃度を3mg/L以下に処理し、続いて二塩化イソシアヌール酸ナトリウム20mg/Lと硫酸ナトリウム150mg/Lを添加した。この液のpHは6.5〜7.5の範囲にあった。
【0185】
また、各感色性層の相対感度は、上記特定写真感度の測定方法から求めている。
カブリをイエロー濃度、マゼンタ濃度およびシアン濃度の最小値(DYmin、DMmin、DCmin)で定義し、各感色性層の感度はDYmin、DMmin、DCminより各々0.15高い濃度を与える露光量の逆数の対数で定義した。各試料の赤感色性層の感度値を試料101に対する相対値で表した。
【0186】
粒状度については、特定写真感度の測定と同様の処理を行い、慣用のRMS(Root Mean Square)法で測定した。この際、露光は0.005Lux・秒、測定は直径48μmのアパチャーを用いたRMS測定を行った。
【0187】
(圧力耐性の評価)
試料の圧力耐性を評価する為に、以下に示す試験を行った。試料を温度25℃で55%に調湿し、荷重4gを掛けた0.05mmの細針で乳剤面を一定方向に引っかいた後、先述した方法により露光および現像処理、濃測を行った。引っかきを行わない試料を上記露光、現像、濃測して求められた DYmin、DMmin、DCminより各々0.25高い濃度を与える露光量における、引っかきがある部分と引っかきがない部分の濃度差(ΔD)を求めた。ΔDが小さいほど圧力耐性に優れていることを示している。これらの各感色性層のΔDの和を圧力耐性を示す評価値とした。
【0188】
(塗設時の粒子凝集による写真性能悪化の評価)
前記の試料101〜110において第6層の乳剤を各々40℃で溶解し、8時間経時させた後に試料101〜110と同様の塗布条件で試料111〜120を作製した。これらの試料を40℃、相対湿度70%の条件下で14時間放置した後、上記と同様に連続ウェッジを通して1/100秒間露光を行いカラー現像処理を行った。処理後の試料を赤色フィルターで濃度測定し、感度はカブリ濃度プラス0.15のシアン濃度を与えるルックス・秒で表示する露光量の逆数の対数の相対値で表示した(試料101の感度を100とした)。また、試料101〜110および試料111〜120の各試料のカブリ濃度プラス0.15の濃度でのRMS粒状度を測定した。
試料101のRMS粒状度を100としたときの相対値を粒状性を示す評価値とした。数値が小さいほど粒状性に優れていることを示す。
【0189】
このようにして求めた試料101〜110、111〜120の各性能を表3に示した。
【0190】
【表3】
【0191】
本発明のポリマーを添加した試料102〜109では感度を低下させずに、圧力耐性が向上することが分かる。特に、本発明試料102〜109では、乳剤の溶解経時後の塗設における、感度の低下、粒状性の悪化といった写真性能の悪化が改良され、製造適性にも優れていることがわかる。本発明のポリマーは、他の吸着性添加剤の存在下においても、ハロゲン化銀粒子から脱着し難く、保護コロイド性を向上することにより圧力耐性が向上するものと推定される。また、乳剤の溶解経時後の塗設における、感度の低下、粒状性の悪化といった写真性能の悪化の改良効果は、本発明の水溶性合成高分子の数平均分子量が大きいほど効果が大きいことがわかる。また、比較試料120と本発明試料111〜119の比較から分かるように乳剤の溶解経時後の塗設における、感度の低下、粒状性の悪化といった写真性能の悪化の改良効果はポリマーの部分構造としてメルカプト基を含む含窒素へテロ環が導入されたことによることも分かる。
【0192】
(実施例3)
試料101において、乳剤Em−A1およびEm−B1の水洗後、化合物2の添加後かつ増感色素の添加前に、本発明のポリマーWP−3aを銀1molあたり20mg添加して同じように多層カラー感光材料を作製した。実施例2と同様に、圧力耐性と塗設における写真性能の悪化防止に良好な結果を得た。
【0193】
(実施例4)
試料101において、乳剤Em−A1およびEm−B1の粒子形成過程の黄血塩の添加前に、本発明のポリマーWP−3aを銀1molあたり20mg添加して同じように多層カラー感光材料を作製した。実施例2と同様に、圧力耐性と塗設における写真性能の悪化防止に良好な結果を得た。
【0194】
(実施例5)
試料101において、第5層および第6層の塗布液調製時に、本発明のポリマーWP−3aを銀1molあたり20mg添加して同じように多層カラー感光材料を作製した。実施例2と同様に、圧力耐性と塗設における写真性能の悪化防止に良好な結果を得た。
【0195】
【発明の効果】
本発明のポリマーを添加したハロゲン化銀写真感光材料は感度を低下せずに、圧力耐性に優れる。さらに本発明のポリマーは特に、乳剤の溶解経時後のハロゲン化銀粒子の凝集を防止し、塗設における写真性能の悪化が改良され、製造適性にも優れたハロゲン化銀乳剤の調製が可能になる。
即ち、本発明によれば、高感度で、且つ平面性の優れた高アスペクト比のハロゲン化銀粒子の凝集を抑制することができ、高感度なハロゲン化銀乳剤を調製するのに有用な新規なポリマーを提供することができる。また、本発明によれば、高アスペクト比のハロゲン化銀粒子を凝集を生じることなく安定的に含有する、高感度のハロゲン化銀乳剤を提供することができる。また、本発明によれば、高感度で平面性に優れているとともに、圧力耐性にも優れ、且つ安定的に製造可能なハロゲン化銀写真感光材料を提供することができる。
Claims (7)
- 前記X 1 における酸基を含有するモノマーが、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、アクリル酸リチウム、アクリル酸アンモニウム、メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カリウム、メタクリル酸リチウム、メタクリル酸アンモニウム、イタコン酸、イタコン酸カリウム、マレイン酸、CH 2 =CHCOOCH 2 CH 2 COOH、CH 2 =CHCONHCH 2 CH 2 COOH、CH 2 =CHC 6 H 5 COOH(p)、CH 2 =CHCOOCH 2 CH 2 CH 2 COOH、α−クロロアクリル酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸アンモニウム、スチレンスルホン酸リチウム、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸アンモニウム、3−アクリロイルオキシ−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−メタクリロイルオキシ−プロパンスルホン酸カリウム、イソプレンスルホン酸または3−アクリロイルオキシ−エチルホスホン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1に記載のメルカプト基含有ポリマー化合物。
- 前記メルカプト基含有ポリマー化合物が、水に0.5質量%以上溶解する水溶性ポリマー化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のメルカプト基含有ポリマー化合物。
- 前記メルカプト基含有ポリマー化合物が、前記一般式(3)で表される基を、ポリマー鎖1本につき平均で2個以下含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のメルカプト基含有ポリマー化合物。
- 前記メルカプト基含有ポリマー化合物の数平均分子量が5,000以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のメルカプト基含有ポリマー化 合物。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のメルカプト基含有ポリマー化合物を少なくとも1種含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のメルカプト基含有ポリマー化合物とハロゲン化銀粒子とを含有することを特徴とするハロゲン化銀乳剤組成物。
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