JP3947675B2 - ハロゲン化銀写真感光材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハロゲン化銀写真感光材料に関し、特に、帯電防止性効果に優れるとともに、高速塗布時等に生じるハジキが軽減された、安定に製造可能なハロゲン化銀写真感光材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、フッ化アルキル鎖を有する化合物が界面活性剤として知られている。このような界面活性剤は、フッ化アルキル鎖の独特の性質(撥水・撥油性、潤滑性、帯電防止性等)により種々の表面改質を行うことができ、繊維、布、カーペット、樹脂等、幅広い基材の表面加工に用いられている。また、フッ化アルキル鎖を持つ界面活性剤(以降含フッ素系界面活性剤と称する)を種々基質の水性媒体溶液に添加すると、塗膜形成時にハジキのない、均一な被膜を形成することができるばかりでなく、界面活性剤の吸着層を基質表面に形成することができ、上記のフッ化アルキル鎖が持つ独特の性質を被膜表面にもたらすことができる。
【0003】
写真感光材料においても、種々の界面活性剤が用いられ、重要な役割を果たしている。写真感光材料は、通常、親水性コロイドバインダー(例えばゼラチン)の水溶液を含む複数の塗布液を、支持体上に個々に塗布して複数の層を形成し作製される。しばしば、複数の親水性コロイド層を同時多層塗布することも行われる。これらの層には、帯電防止層、下塗り層、ハレーション防止層、ハロゲン化銀乳剤層、中間層、フィルター層、保護層等が含まれ、各層には各機能を発現するための種々の素材が添加される。また、膜物理性改良のためにポリマーラテックスを親水性コロイド層に含有させることもある。さらに、カラーカプラー、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、スベリ剤等の水に難溶性の機能性化合物を親水性コロイド層に含有させるために、これらの素材をそのまま、あるいはリン酸エステル系化合物、フタル酸エステル化合物などの高沸点有機溶媒に溶解させた状態で、親水性コロイド溶液中に乳化分散させて、塗布液の調製に用いる場合がある。このように、一般的に、写真感光材料は種々の親水性コロイド層から構成されており、その製造に際して、種々の素材を含む塗布液を、ハジキや塗布ムラなどの欠陥なく均一に高速塗布することが要求される。このような要求に応えるため、界面活性剤を塗布助剤として塗布液中に添加することがしばしば行われている。
【0004】
一方で、写真感光材料はその製造、撮影、現像処理の間に種々の物質と接触する。例えば、処理の工程において、感光材料が巻き取られた状態にあると、支持体の裏面に形成されたバック層と表面層が接触する場合がある。また、処理の工程において搬送される際に、ステンレス、ゴムローラー等と接触する場合がある。これらの材料と接触すると、感光材料の表面(ゼラチン層)は正に帯電しやすく、場合によっては不要な放電を起こすため、感光材料に望ましくない露光跡(スタチックマークと称される)を残すことになる。このゼラチンの帯電性を軽減するには、フッ素原子を有する化合物が有効であり、フッ素系界面活性剤を添加することがしばしば行われている。
【0005】
フッ素系界面活性剤は写真感光材料の表面に配向し帯電性を調整する効果が大きいという利点がある一方で、フッ素系界面活性剤は水あるいは親水性の有機溶媒等に極少量しか溶解しないため、フッ素系界面活性剤を可溶化する目的で炭化水素系の界面活性剤を同時に添加することがしばしば行われている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように、界面活性剤、特にフッ素系界面活性剤は塗布膜の均質性を付与するための塗布助剤、あるいは写真感光材料の帯電防止性付与の両機能を担う素材として用いられており、例えば特開昭49−46733号公報、同51−32322号公報、同57−64228号公報、同64−536号公報、特開平2−141739号公報、同3−95550号公報、同4−248543号公報等にその具体例が開示されている。しかしながら、これらの素材は近年の写真感光材料の高感度化および高速塗布化の要請に対して、必ずしも満足する性能を有するものではなく、さらなるフッ素系界面活性剤の改良が望まれていると同時にフッ素系界面活性剤を可溶化する炭化水素系界面活性剤の開発も望まれている。
【0007】
本発明は、安定な作製が可能であるとともに、帯電防止性に優れたハロゲン化銀写真感光材料を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
<1> 支持体上に少なくとも1層の感光性ハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料において、少なくとも1層中に下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2A)、(2B)または(2C−1)のいずれかで表されるフッ素系界面活性剤とを含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
一般式(1)
【化1】
(式中、R1は炭素数6〜25のアルキル基またはアルケニル基を表し、m1は2〜4のいずれかの整数を表し、n1は0〜30のいずれかの整数を表し、aは0または1を表す。Z1はOSO3MまたはSO3Mを表し、Mはカチオンを表す。)
一般式(2A)
【化2】
(式中、R A1 およびR A2 はそれぞれ置換もしくは無置換のアルキル基を表すが、R A1 およびR A2 の少なくとも1つはフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。R A3 、R A4 およびR A5 はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、L A1 、L A2 およびL A3 はそれぞれ独立に2価の連結基を表し、X + はカチオン性の置換基を表す。Y - は対アニオンを表すが、分子内で荷電が0になる場合にはY - はなくてもよい。m A は0または1である。)
一般式(2B)
【化3】
(式中、R B3 、R B4 およびR B5 はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表す。AおよびBはそれぞれ独立にフッ素原子を表す。n B3 およびn B4 はそれぞれ独立に4〜6のいずれかの整数を表す。L B1 およびL B2 はそれぞれ独立して、置換もしくは無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基を表す。m B は0または1を表す。Mはカチオンを表す。)
一般式(2C−1)
【化4】
(式中、R C11 は炭素数6以上の置換または無置換のアルキル基を表し、R CF1 は炭素数6以下のパーフルオロアルキル基を表す。Y C11 およびY C12 は、一方が水素原子を、もう一方が−SO 3 M c を表し、M c はカチオンを表す。n C1 は1以上の整数を表す。)
<2> 前記フッ素系界面活性剤が、前記一般式(2A)および(2B)から選択される化合物であることを特徴とする<1>に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
<3> 前記フッ素系界面活性剤が、下記一般式(2A−1)で表される化合物であることを特徴とする<1>または<2>に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
一般式(2A−1)
【化5】
(式中、R A11 およびR A12 はそれぞれ置換または無置換のアルキル基を表すが、R A11 およびR A12 の少なくとも1つはフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、R A11 およびR A12 の炭素数の総計は19以下である。L A2 およびL A3 はそれぞれ独立に−O−、−S−または−NR 100 −を表し、R 100 は水素原子または置換基を表す。L A1 およびY - はそれぞれ前記一般式(2A)におけるそれらと同義である。R A13 、R A14 およびR A15 はそれぞれ独立に置換または無置換のアルキル基を表す。)
<4> 前記フッ素系界面活性剤が、下記一般式(2A−2)で表される化合物であることを特徴とする<1>または<2>に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
一般式(2A−2)
【化6】
(式中、R A13 、R A14 、R A15 およびL A1 およびY - はそれぞれ前記一般式(2A−1)におけるそれらと同義である。AおよびBはそれぞれ独立にフッ素原子または水素原子を表す。n A1 は1〜6の整数を表し、n A2 は3〜8の整数を表す。)
<5> 前記フッ素系界面活性剤が、下記一般式(2A−3)で表される化合物であることを特徴とする<1>または<2>に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
一般式(2A−3)
【化7】
(式中、n A1 は1〜6のいずれかの整数を、n A2 は3〜8のいずれかの整数を表すが、2(n A1 +n A2 )は19以下である。R A13 、R A14 、R A15 、L A1 およびY - はそれぞれ上記一般式(2A−1)におけるそれらと同義である。)
<6> 前記フッ素系界面活性剤が、下記一般式(2B−1)で表される化合物であることを特徴とする<1>または<2>に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
一般式(2B−1)
【化8】
(式中、R B3 、R B4 、R B5 、n B3 、n B4 、m B 、A、BおよびMは、前記一般式(2B)におけるそれらと同義であり、n B1 およびn B2 はそれぞれ独立に1〜6のいずれかの整数を表す。)
<7> 前記フッ素系界面活性剤が、下記一般式(2B−2)で表される化合物であることを特徴とする<1>または<2>に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
一般式(2B−2)
【化9】
(式中、n B3 、n B4 、m B およびMは前記一般式(2B)におけるそれらと同義であり、n B1 およびn B2 は前記一般式(2B−1)におけるそれらと同義である。)
<8> 前記フッ素系界面活性剤が、下記一般式(2B−3)で表される化合物であることを特徴とする<1>または<2>に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
一般式(2B−3)
【化10】
(式中、n B5 は2または3を表し、n B6 は4〜6のいずれかの整数を表す。m B は0または1を表す。Mは前記一般式(2B)におけるMと同義である。)
<9> 前記一般式(1)で表される化合物と前記フッ素系界面活性剤を含有する層が、最外層の非感光性の親水性コロイド層であることを特徴とする<1>〜<8>のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。
【0026】
まず、本発明に用いられる下記一般式(1)で表される化合物について詳細に説明する。
【0027】
一般式(1)
【化8】
【0028】
式中、R1は炭素数6〜25のアルキル基またはアルケニル基を表し、m1は2〜4の整数を表し、n1は0〜30の整数を表し、aは0または1を表す。Z1はOSO3MまたはSO3Mを表し、Mはカチオンを表す。
【0029】
前記一般式(1)中、R1は炭素数6〜25のアルキル基またはアルケニル基を表し、R1の炭素数は6〜22が好ましく、6〜20がさらに好ましく、8〜18が特に好ましい。アルキル基およびアルケニル基は環状構造を有してもよいが、鎖状アルキル基および鎖状アルケニル基の方が好ましい。ここで、アルキル基およびアルケニル基は無置換のアルキル基およびアルケニル基である。鎖状アルキル基および鎖状アルケニル基は、分岐を有してもよい。アルケニル基の二重結合の位置については、特に制限しない。アルキル基の方が、アルケニル基よりも好ましい。
【0030】
前記一般式(1)中、m1は2〜4の整数を表す。n1は0〜30の整数を表し、0〜25が好ましく、0〜20がさらに好ましく、0〜15が特に好ましい。
【0031】
前記一般式(1)中、Z1はOSO3MまたはSO3Mを表し、Mはカチオンを表す。Mで表されるカチオンとしては、例えばアルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等)、アルカリ土類金属イオン(バリウムイオン、カルシウムイオン等)、アンモニウムイオン等が好ましく適用される。これらのうち、特に好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンである。
【0032】
前記一般式(1)中、aは0または1を表す。
【0033】
以下に、上記一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。
WS−1 C6H13−O−(CH2CH2O)n−(CH2)2−SO3Na(n=0〜12)
WS−2 C6H13−O−(CH2CH2O)n−(CH2)3−SO3Na(n=0〜12)
WS−3 C6H13−O−(CH2CH2O)n−(CH2)2−SO3Na(n=0〜12)
WS−4 C8H17−O−(CH2CH2O)n−(CH2)2−SO3Na(n=0〜12)
WS−5 C8H17−O−(CH2CH2O)n−(CH2)3−SO3Na(n=0〜12)
WS−6 C8H17−O−(CH2CH2O)n−(CH2)4−SO3Na(n=0〜12)
WS−7 C10H21−O−(CH2CH2O)n−(CH2)2−SO3Na(n=0〜12)
WS−8 C10H21−O−(CH2CH2O)n−(CH2)3−SO3Na(n=0〜12)
WS−9 C10H21−O−(CH2CH2O)n−(CH2)4−SO3Na(n=0〜12)
WS−10 C10H21−O−(CH2CH2O)n−(CH2)4−SO3K(n=0〜12)
【0034】
WS−11 C10H21−O−(CH2CH2O)n−(CH2)4−SO3NH3(n=0〜12)
WS−12 C11H23−O−(CH2CH2O)n−(CH2)2−SO3Na(n=0〜12)
WS−13 C11H23−O−(CH2CH2O)n−(CH2)3−SO3Na(n=0〜12)
WS−14 C11H23−O−(CH2CH2O)n−(CH2)4−SO3Na(n=0〜12)
WS−15 C12H25−O−(CH2CH2O)n−(CH2)2−SO3Na(n=0〜12)
WS−16 C12H25−O−(CH2CH2O)n−(CH2)3−SO3Na(n=0〜12)
WS−17 C12H25−O−(CH2CH2O)n−(CH2)4−SO3Na(n=0〜12)
WS−18 C14H29−O−(CH2CH2O)n−(CH2)2−SO3Na(n=0〜25)
WS−19 C14H29−O−(CH2CH2O)n−(CH2)3−SO3Na(n=0〜25)
WS−20 C14H29−O−(CH2CH2O)n−(CH2)4−SO3Na(n=0〜25)
【0035】
WS−21 C16H33−O−(CH2CH2O)n−(CH2)3−SO3NH3(n=0〜30)
WS−22 C16H33−O−(CH2CH2O)n−(CH2)4−SO3Na(n=0〜30)
WS−23 C18H37−O−(CH2CH2O)n−(CH2)3−SO3Na(n=0〜30)
WS−24 C18H37−O−(CH2CH2O)n−(CH2)4−SO3Na(n=0〜30)
WS−25 C20H41−O−(CH2CH2O)n−(CH2)4−SO3Na(n=0〜30)
WS−26 C8H17CH=C8H15−O−(CH2CH2O)n−(CH2)3−SO3Na(n=0〜30)
WS−27 C22H45−O−(CH2CH2O)n−(CH2)2−SO3Na(n=0〜30)
WS−28 C24H49−O−(CH2CH2O)n−(CH2)2−SO3Na(n=0〜30)
WS−29 C24H49−O−(CH2CH2O)n−(CH2)2−SO3Li(n=0〜30)
【0036】
WS−33 C10H21 −(OCH2CH 2 ) n−OSO3Na(n=1)
【0037】
WS−41 C7H15C(=O)O−(CH2CH2O)2−(CH2)2−SO3Na
WS−42 C9H19C(=O)O−(CH2CH2O)4−(CH2)2−SO3Na
WS−43 C9H19C(=O)O−(CH2CH2O)6−(CH2)3−SO3Na
WS−44 C9H19C(=O)O−(CH2CH2O)8−(CH2)4−SO3Na
WS−45 C11H23C(=O)O−(CH2CH2O)15−(CH2)2−SO3Na
WS−46 C8H17CH=C7H13C(=O)O−(CH2CH2O)15−(CH2)3−SO3Na
WS−47 C21H43C(=O)O−(CH2CH2O)20−(CH2)2−SO3Na
【0038】
上記一般式(1)で表される化合物は、J.Phys.Chem.90,2413(1986)、J.Dispersion Sci.and Tech.,4,361(1983)、US5602087などに記載の公知の方法により合成することができる。
【0039】
以下に、上記一般式(1)で表される化合物の合成例を挙げ、具体的に説明するが、本発明は以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
(合成例1:WS−9(n=1)の合成)
(2−ヒドロキシエチル)−n−デシルエーテル 20g(0.099mol)、水酸化ナトリウム 21.4g(0.118mol)をトルエン40mLに溶解し、90℃で2時間加熱した後、溶媒を減圧留去した。その後、ブタンサルトン 16.1g(0.53mol)を滴下した。その後、90℃で6時間攪拌した後、アセトニトリル700mLを加え、再結晶操作を行った。得られた結晶をろ過し、白色の固体として目的物を34.6g(97%)得た。
【0040】
(合成例2:WS−33(n=1)の合成)
(2−ヒドロキシエチル)−n−デシルエーテル 30.0g(0.148mol)をクロロホルム150mLに溶解し、氷浴で冷却した後、クロロスルホン酸18.2g(0.156mol)のクロロホルム(30mL)を15分間かけて滴下した。滴下終了後、水酸化ナトリウム 12.12gのエタノール溶液を40分間かけて滴下した後、溶媒を減圧留去し、アセトニトリル 1.5Lを加え、再結晶操作を行った。得られた結晶をろ過し、白色の固体として目的物を36.8g(82%)得た。
【0041】
次に、本発明に使用する一般式(2A)、(2B)、(2C−1)のいずれかで表されるフッ素系界面活性剤について詳細に説明する。
最初に、下記一般式(2A)で表される化合物について詳細に説明する。
【0042】
一般式(2A)
【化9】
【0043】
式中、RA1およびRA2はそれぞれ置換または無置換のアルキル基を表すが、RA1およびRA2の少なくとも1つはフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。RA3、RA4およびRA5はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、LA1、LA2およびLA3はそれぞれ独立に2価の連結基を表し、X+はカチオン性の置換基を表す。Y-は対アニオンを表すが、分子内で荷電が0になる場合にはY-はなくてもよい。mAは0または1である。
【0044】
前記一般式(2A)中、RA1およびRA2はそれぞれ置換または無置換のアルキル基を表す。前記アルキル基は、炭素数1以上であって、直鎖状、分岐鎖状および環状のいずれであってもよい。前記置換基としては、ハロゲン原子、アルケニル基、アリール基、アルコキシル基、フッ素以外のハロゲン原子、カルボン酸エステル基、カルボンアミド基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、燐酸エステル基等が挙げられる。但し、RA1およびRA2の少なくとも1つはフッ素原子で置換されたアルキル基(以下、フッ素原子で置換されたアルキル基を「Rf」という)を表す。
【0045】
Rfは、炭素数1以上の少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基である。Rfは少なくとも1つのフッ素原子で置換されていればよく、直鎖状、分岐状および環状のいずれの構造であってもよい。また、フッ素原子以外の置換基でさらに置換されていてもよいし、フッ素原子のみで置換されていてもよい。Rfのフッ素原子以外の置換基としては、アルケニル基、アリール基、アルコキシル基、フッ素以外のハロゲン原子、カルボン酸エステル基、カルボンアミド基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、燐酸エステル基等が挙げられる。
【0046】
Rfとしては、炭素数1〜16のフッ素置換アルキル基が好ましく、炭素数1〜12がより好ましく、炭素数4〜10がさらに好ましい。Rfの好ましい例としては、
【0047】
−(CH2)2−(CF2)4F、
−(CH2)2−(CF2)6F、
−(CH2)2−(CF2)8F、
−(CH2)−(CF2)4H、
−(CH2)−(CF2)6H、
−(CH2)−(CF2)8H、
−(CH2)3−(CF2)4F、
−(CH2)6−(CF2)4F、
−CH(CF3)CF3、
【0048】
などが挙げられる。
【0049】
Rfとしてさらに好ましくは、末端がトリフルオロメチル基で置換された炭素数4〜10のアルキル基であり、特に好ましくは−(CH2)α−(CF2)βFで表される炭素数3〜10のアルキル基である(αは1〜6の整数を表す。βは3〜8の整数を表す)。具体的には、
−CH2−(CF2)2F、
−(CH2)6−(CF2)4F、
−(CH2)3−(CF2)4F、
−CH2−(CF2)3F、
−(CH2)2−(CF2)4F、
−(CH2)3−(CF2)4F、
−(CH2)6−(CF2)4F、
−(CH2)2−(CF2)6F、
−(CH2)3−(CF2)6F、
−(CH2)2−(CF2)6F、
等が挙げられる。これらの中でも、特に、
−(CH2)2−(CF2)4Fおよび−(CH2)2−(CF2)6Fが最も好ましい。
【0050】
前記一般式(2A)中、RA1およびRA2の双方がRfを表すのが好ましい。
【0051】
RA1およびRA2がそれぞれRf以外のアルキル基、即ち、フッ素原子で置換されていないアルキル基を表す場合、該アルキル基としては、炭素数1〜24の置換または無置換のアルキル基が好ましく、炭素数6〜24の置換または無置換のアルキル基がより好ましい。炭素数6〜24の無置換アルキル基の好ましい例としては、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、セチル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、2−オクチルドデシル基、ドコシル基、テトラコシル基、2−デシルテトラデシル基、トリコシル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。また、置換基を有する総炭素数が6〜24のアルキル基の好ましい例としては、2−ヘキセニル基、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基、ベンジル基、β−フェネチル基、2−メトキシエチル基、4−フェニルブチル基、4−アセトキシエチル基、6−フェノキシヘキシル基、12−フェニルドデシル基、18−フェニルオクタデシル基、12−(p−クロロフェニル)ドデシル基、2−(燐酸ジフェニル)エチル基等を挙げることができる。
【0052】
RA1およびRA2でそれぞれ表されるRf以外のアルキル基としては、更に好ましくは炭素数6〜18の置換もしくは無置換のアルキル基である。炭素数6〜18の無置換アルキル基の好ましい例としては、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、セチル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、オクタデシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基等が挙げられる。また、置換基を有する総炭素数が6〜18の置換アルキル基の好ましい例としては、フェネチル基、6−フェノキシヘキシル基、12−フェニルドデシル基、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基等が挙げられる。
【0053】
RA1およびRA2でそれぞれ表されるRf以外のアルキル基としては、特に好ましくは、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、セチル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、オクタデシル基、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基であり、最も好ましくは炭素数8〜16の直鎖状、環状または分岐状の無置換アルキル基である。
【0054】
前記一般式(2A)中、RA3、RA4およびRA5はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表す。該置換基として後述の置換基Tが適用できる。
RA3、RA4およびRA5は、アルキル基または水素原子を表すのが好ましく、炭素数1〜12のアルキル基または水素原子を表すのがより好ましく、メチル基または水素原子を表すのが更に好ましく、水素原子を表すのが特に好ましい。
【0055】
前記一般式(2A)中、LA1およびLA2はそれぞれ独立して、2価の連結基を表す。2価の連結基であれば特に制約はないが、好ましくはアリーレン基、−O−、−S−または−NRA100−(RA100は水素原子または置換基を表す。置換基としては後述の置換基Tと同様である。RA100として好ましくは、アルキル基、前述のRfまたは水素原子であり、更に好ましくは水素原子である)を単独またはそれらを組み合わせて得られる基であり、より好ましくは−O−、−S−または−NRA100−である。LA1およびLA2としてより好ましくは、−O−または−NRA100−であり、更に好ましくは−O−または−NH−であり、特に好ましくは−O−である。
【0056】
前記一般式(2A)中、LA3は2価の連結基を表す。2価の連結基であれば特に制約はないが、好ましくはアルキレン基、アリーレン基、−C(=O)−、−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)2−または−NRA100−(RA100は水素原子または置換基を表し、置換基としては後述の置換基Tと同様である。RA100として好ましくはアルキル基または水素原子であり、更に好ましくは水素原子である)を単独またはそれらを組合せて得られる基であり、より好ましくは炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、−C(=O)−、−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)2−または−NRA100−を単独またはそれらを組合せて得られる基である。Zとして更に好ましくは、炭素数1〜8のアルキレン基、−C(=O)−、−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)2−または−NRA100−を単独またはそれらを組合せて得られる基であり、例えば、
【0057】
−(CH2)2S−、
−(CH2)2NH−、
−(CH2)3NH−、
−(CH2)2C(=O)NH−、
−(CH2)2SCH2−、
−(CH2)2NHCH2−、
−(CH2)3NHCH2−、
【0058】
等が挙げられる。
【0059】
前記一般式(2A)中、X+はカチオン性の置換基を表し、X+として好ましくは、有機のカチオン性置換基であり、より好ましくは窒素または燐のカチオン性基である。さらに好ましくはピリジニウムカチオンまたはアンモニウムカチオンであり、より好ましくは下記一般式(3)で表されるトリアルキルアンモニウムカチオンである。
【0060】
一般式(3)
【化10】
【0061】
前記一般式(3)中、RA13、RA14およびRA15はそれぞれ独立に置換または無置換のアルキル基を表す。該置換基としては後述の置換基Tとして挙げたものが適用できる。また、RA13、RA14およびRA15は可能な場合にはお互いが結合して環を形成してもよい。RA13、RA14およびRA15として好ましくは、炭素数1〜12のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、更に好ましくはメチル基、エチル基、メチルカルボキシル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0062】
前記一般式(3)中、Y-は対アニオンを表し、無機アニオンでも有機アニオンでもよい。また、分子内で荷電が0になる場合にはY-はなくてもよい。無機アニオンとして好ましくは、ヨードイオン、臭素イオン、塩素イオン等が挙げられ、有機アニオンとして好ましくは、p−トルエンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン等が挙げられる。Y-としてより好ましくは、ヨードイオン、p−トルエンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオンであり、更に好ましくはp−トルエンスルホン酸である。
【0063】
前記一般式(2A)中、mAは0または1を表し、好ましくは0である。
【0064】
上記一般式(2A)で表される化合物の中でも、下記一般式(2A−1)で表される化合物が好ましい。
【0065】
一般式(2A−1)
【化11】
【0066】
一般式(2A−1)中、RA11およびRA12はそれぞれ置換または無置換のアルキル基を表すが、RA11およびRA12の少なくとも1つはフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、RA11およびRA12の炭素数の総計は19以下である。LA2およびLA3はそれぞれ独立に−O−、−S−または−NR100−を表し、R100は水素原子または置換基を表す。LA1およびY-はそれぞれ上記一般式(2A)におけるそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。RA13、RA14およびRA15については、それぞれ上記一般式(3)におけるそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0067】
前記一般式(2A−1)中、LA2およびLA3はそれぞれ−O−、−S−または−NR100−(R100は水素原子または置換基を表し、該置換基としては後述の置換基Tとして挙げたものが適用できる。R100として好ましくはアルキル基、前述のRf、または水素原子であり、更に好ましくは水素原子である)である。LA2およびLA3としてより好ましくは−O−、−NH−であり、更に好ましくは−O−である。
【0068】
前記一般式(2A−1)中、RA11およびRA12はそれぞれ一般式(2A)におけるRA1およびRA2と同義であり、好ましい範囲も同様である。ただし、RA11およびRA12の炭素数の総計は19以下である。
【0069】
上記一般式(2)で表される化合物の中でも、下記一般式(2A−2)で表される化合物がより好ましい。
【0070】
一般式(2A−2)
【化12】
【0071】
前記一般式(2A−2)中、RA13、RA14、RA15、LA1およびY-はそれぞれ上記一般式(2A)および上記一般式(3)におけるそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。AおよびBはそれぞれ独立にフッ素原子または水素原子を表す。AおよびBは共にフッ素原子または水素原子を表すのが好ましく、共にフッ素原子を表すのが好ましい。
前記一般式(2A−2)中、nA1は1〜6の整数を表し、nA2は3〜8の整数を表す。
【0072】
上記一般式(2A)で表される化合物の中でも、下記一般式(2A−3)で表される化合物が更に好ましい。
【0073】
一般式(2A−3)
【化13】
【0074】
前記一般式(2A−3)中、nA1は1〜6のいずれかの整数を、nA2は3〜8のいずれかの整数を表すが、2(nA1+nA2)は19以下である。RA13、RA14、RA15、LA1およびY-はそれぞれ上記一般式(2A)および上記一般式(3)におけるそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0075】
nA1は1〜6のいずれかの整数を表し、好ましくは1〜3の整数を表し、更に好ましくは2または3を表し、最も好ましくは2である。nA2は3〜8のいずれかの整数を表し、より好ましくは、3〜6であり、更に好ましくは4〜6である。nA1およびnA2の好ましい組み合わせとしては、nA1が2または3で、且つnA2は4または6であるのが好ましい。
【0076】
以下に、上記一般式(2A)で表される化合物の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら限定されるものではない。下記例示化合物の構造表記の中で特に断りのない限り、アルキル基、パーフルアロアルキル基は直鎖の構造を意味する。また、表記中の略号の内2EHは、2−ethylhexyl、2BOは2−Butyloctylを意味する。
【0077】
【化14】
【0078】
【化15】
【0079】
【化16】
【0080】
【化17】
【0081】
【化18】
【0082】
【化19】
【0083】
【化20】
【0084】
【化21】
【0085】
【化22】
【0086】
【化23】
【0087】
【化24】
【0089】
【化26】
【0090】
【化27】
【0091】
上記一般式(2A)で表される化合物は、フマル酸誘導体、マレイン酸誘導体、イタコン酸誘導体、グルタミン酸誘導体、アスパラギン酸誘導体等を原料にして合成できる。例えば、フマル酸誘導体、マレイン酸誘導体、イタコン酸誘導体を原料とした場合は、それらの2重結合に、求核種によるマイケル付加反応を行った後、アルキル化剤によるカチオン化を行うことにより合成できる。
【0092】
以下に、上記一般式(2A)で表される化合物の合成例を挙げ、具体的に説明するが、本発明は以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0093】
(合成例3:FS−113の合成)
3−1 2−(2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアミノ)コハク酸 1,4−ジ(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル)の合成
コハク酸 1,4−ジ(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル)の500g(0.82mol)、N,N−ジメチルアミノエチルアミンの79.5g(0.90mol)、および炭酸カリウムの11.3g(0.08mol)をアセトニトリル500mLに溶解し、45分加熱還流した。その後、分液ロートに反応液を移し、酢酸エチルを2L加えて、塩化トリウム水溶液(1.5L)で有機相を洗浄した後、有機層を回収し、有機溶媒を減圧留去し、淡黄色のオイルとして目的化合物を453g(収率79%)得た。
た。
【0094】
3−2 FS−113の合成
上記化合物380g(0.55mol)、p−トルエンスルホン酸メチルの101.6g(0.55mmol)、酢酸エチルの1500mLを加え2時間加熱還流した後、不溶解物を濾別し、濾液を攪拌しながら氷浴中で冷却した。しばらくすると濾液から結晶が析出した。得られた結晶を濾過回収し、酢酸エチルで洗浄し、80℃、2時間減圧乾燥した。無色透明の固体として、目的化合物をg(収率%)得た。
得られた化合物の1H−NMRのデータは以下の通りである。
1H−NMR(DMSO−d6):δ2.50(s,3H)、2.61−2.73(br,8H)、3.07(s,9H)3.33(m,2H)、3.66(m,1H)、4.30−4.40(m,4H)、7.11(d,2H)7.48(d,2H)
【0095】
次に下記一般式(2B)で表される化合物について詳細に説明する。
【0096】
一般式(2B)
【化28】
【0097】
前記一般式(2B)中、RB3、RB4およびRB5はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表す。AおよびBはフッ素原子を表す。nB3およびnB4はそれぞれ独立に4〜6のいずれかの整数を表す。LB1およびLB2は各々独立して、置換もしくは無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基を表す。mBは0または1を表す。Mはカチオンを表す。
【0098】
前記一般式(2B)中、RB3、RB4およびRB5はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表す。該置換基として後述の置換基Tが適用できる。
RB3、RB4およびRB5としては、好ましくはアルキル基または水素原子であり、より好ましくは炭素数1〜12のアルキル基または水素原子であり、更に好ましくはメチル基または水素原子であり、特に好ましくは水素原子である。
【0100】
前記一般式(2B)中、nB3およびnB4はそれぞれ独立に4〜6のいずれかの整数を表す。nB3およびnB4として好ましくは4〜6のいずれかの整数で、かつnB3=nB4であり、より好ましくは、4または6の整数で、かつnB3=nB4であり、更に好ましくはnB3=nB4=4である。
【0101】
前記一般式(2B)中、mBは0または1を表し、どちらも同様に好ましい。
【0102】
前記一般式(2B)中、LB1およびLB2は各々独立して、置換もしくは無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基を表す。置換基は後述の置換基Tが置換基が適用できる。LB1およびLB2はそれぞれ、炭素数が4以下であるのが好ましく、また、無置換アルキレンであるのが好ましい。
【0103】
Mはカチオンを表し、上記一般式(1)におけるMと同義である。Mとして好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンであり、より好ましくは、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンである。更に好ましくはナトリウムイオンである。
【0104】
上記一般式(2B)で表される化合物の中でも、下記一般式(2B−1)で表される化合物が好ましい。
【0105】
一般式(2B−1)
【化29】
【0106】
前記一般式(2B−1)中、RB3、RB4、RB5、nB3、nB4、mB、A、BおよびMは、上記一般式(2B)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。nB1およびnB2はそれぞれ独立に1〜6のいずれかの整数を表す。
【0107】
前記一般式(2B−1)中、nB1およびnB2はそれぞれ独立に1〜6のいずれかの整数を表す。nB1およびnB2は1〜6の整数で、かつnB1=nB2であるのが好ましく、2または3で、かつnB1=nB2であるのがより好ましく、nB1=nB2=2であるのが更に好ましい。
【0108】
上記一般式(2B)で表される化合物の中でも、下記一般式(2B−2)で表される化合物がより好ましい。
【0109】
一般式(2B−2)
【化30】
【0110】
前記一般式(2B−2)中、nB3、nB4、mBおよびMは上記一般式(2B)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。前記一般式(2B−2)中、nB1およびnB2は一般式(2B−1)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0111】
上記一般式(2B)で表される化合物としては、より好ましくは下記一般式(2B−3)で表される化合物である。
【0112】
一般式(2B−3)
【化31】
【0113】
前記一般式(2B−3)中、nB5は2または3を表し、nB6は4〜6のいずれかの整数を表す。mBは0または1を表し、どちらも同様に好ましい。Mは上記一般式(2B)におけるMと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。
【0114】
以下に、上記一般式(2B)にで表される化合物の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0115】
【化32】
【0116】
【化33】
【0117】
【化34】
【0118】
【化35】
【0119】
【化36】
【0120】
上記一般式(2B)で表される化合物は一般的なエステル化反応および、スルホン化反応を組み合わせて容易に合成可能である。また対カチオンの変換はイオン交換樹脂により容易に可能である。以下に代表的な合成方法の例を挙げるが、本発明は以下の具体的合成例によってなんら限定されるものではない。
【0121】
(合成例4:FS−201の合成)
4−1 マレイン酸 ジ(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル)の合成
無水マレイン酸90.5g(0.924mol)、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキサノール500g(1.89mol)、p−トルエンスルホン酸一水和物17.5g(0.09mol)をトルエン1000L中、生成する水を留去しながら20時間加熱還流した。その後、室温まで冷却し、トルエンを追加し、水で有機相を洗浄し、溶媒を減圧留去して透明の液体として目的物を484g(収率86%)得た。
【0122】
4−2 FS−201の合成
マレイン酸 ジ(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル)514g(0.845mol)、亜硫酸水素ナトリウム91.0g(0.875mol)、水−エタノール(1/1 v/v)250mlを加え、6時間加熱還流した後、酢酸エチル500mL、飽和塩化ナトリウム水溶液120mLを加え、抽出操作を行った。有機相を回収し、硫酸ナトリウムを添加し、脱水操作を行った。硫酸ナトリウムを濾過で除き、濾液を濃縮した後、アセトン2.5Lを加え、加熱した。不溶解物を濾過で除いた後、0℃まで冷却し、ゆっくりとアセトニトリル2.5Lを添加した。析出した固体をろ過回収し、得られた結晶を80℃で減圧乾燥し、白色の結晶として目的化合物を478g(収率79%)得た。
得られた化合物の1H−NMRデータは以下の通りである。
1H−NMR(DMSO−d6)δ2.49−2.62(m,4H),2.85−2.99(m,2H),3.68(dd,1H),4.23−4.35(m,4H)
【0123】
次に下記一般式(2C−1)で表される化合物について詳細に説明する。
【0132】
一般式(2C−1)
【化38】
【0133】
前記一般式(2C−1)中、RC11 は炭素数6以上の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。RCF1は炭素数6以下のパーフルオロアルキル基を表す。YC11およびYC12は、一方が水素原子を、もう一方がSO3MCを表し、MCはカチオンを表す。nC1は1以上の整数を表す。
【0134】
前記一般式(2C−1)中、RC11 は炭素数6以上の置換または無置換のアルキル基を表す。但し、RC11はフッ素原子で置換されたアルキル基になることはない。RC11で表される置換もしくは無置換のアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、また環状構造を有していてもよい。前記置換基としては、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、フッ素以外のハロゲン原子、カルボン酸エステル基、カルボンアミド基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、燐酸エステル基等が挙げられる。
【0135】
RC11で表される置換もしくは無置換のアルキル基は、炭素数が6〜24であるのが好ましい。炭素数6〜24の無置換アルキル基の好ましい例としては、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、セチル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、2−オクチルドデシル基、ドコシル基、テトラコシル基、2−デシルテトラデシル基、トリコシル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。また、置換アルキル基の好ましい例としては、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基、6−フェノキシヘキシル基、12−フェニルドデシル基、18−フェニルオクタデシル基、12−(p−クロロフェニル)ドデシル基等を挙げることができる。
【0136】
RC11で表される置換もしくは無置換のアルキル基は、炭素数が6〜18であるのがより好ましい。炭素数6〜18の無置換アルキル基の好ましい例としては、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、セチル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、オクタデシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基等が挙げられる。また、炭素数が6〜18の置換アルキル基の好ましい例としては、6−フェノキシヘキシル基、12−フェニルドデシル基、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基等が挙げられる。中でも、RC11としては、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、セチル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、オクタデシル基、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基であるのがさらに好ましく、炭素数8〜16の直鎖、環状または分岐の無置換アルキル基であるのが特に好ましい。
【0137】
前記一般式(2C−1)中、RCF1は炭素数6以下のパーフルオロアルキル基を表す。ここで、パーフルオロアルキル基とは、アルキル基の水素原子が全てフッ素置換された基をいう。前記パーフルオロアルキル基中のアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、また環状構造を有していてもよい。RCF1で表されるパーフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロ−n−プロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ノナフルオロ−n−ブチル基、ウンデカフルオロ−n−ペンチル基、トリデカフルオロ−n−ヘキシル基、ウンデカフルオロシクロヘキシル基等が挙げられる。中でも、炭素数2〜4のパーフルオロアルキル基(例えば、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロ−n−プロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ノナフルオロ−n−ブチル基等)が好ましく、ヘプタフルオロ−n−プロピル基、ノナフルオロ−n−ブチル基が特に好ましい。
【0138】
前記一般式(2C−1)中、nC1は1以上の整数を表す。好ましくは1〜4のいずれかの整数であり、特に好ましくは1または2である。
また、nC1とRCF1の組み合わせとして、nC1=1の場合にはRCF1がヘプタフルオロ−n−プロピル基またはノナフルオロ−n−ブチル基;nC1=2の場合にはRCF1がノナフルオロ−n−ブチル基であるのがより好ましい。
【0139】
前記一般式(2C−1)中、YC11およびYC12は、一方が水素原子を、もう一方がSO3MCを表し、MCはカチオンを表す。ここで、MCで表されるカチオンとしては、例えばアルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等)、アルカリ土類金属イオン(バリウムイオン、カルシウムイオン等)、アンモニウムイオン等が好ましく例示される。これらのうち、特に好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンまたはアンモニウムイオンであり、最も好ましくはナトリウムイオンである。
【0140】
以下に、上記一般式(2C−1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0141】
【化39】
【0142】
【化40】
【0143】
【化41】
【0144】
【化42】
【0146】
【化44】
【0149】
上記一般式(2C)で表される化合物は一般的な無水マレイン酸等を原料にして、モノエステル化反応、酸ハロゲン化、エステル化反応、スルホン化反応と順次行いことによって容易に合成可能である。また対カチオンの変換はイオン交換樹脂により容易に可能である。
以下に代表的な合成方法の例を挙げるが、本発明は以下の具体的合成例によってなんら限定されるものではない。
【0150】
(合成例5:FS−302の合成)
5−1 マレイン酸(2−エチルヘキシル)クロリドの合成
五塩化リン4.1g(20ミリモル)にAldrich社製のマレイン酸モノ(2−エチルヘキシル)4.5g(20ミリモル)を30℃以下に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温で1時間攪拌した。その後、60℃に加熱し、アスピレーターで減圧し、生成したオキシ塩化リンを留去し、茶色のオイル状の化合物マレイン酸(2−エチルヘキシル)クロリドを4.5g(収率92%)得た。
【0151】
5−2 マレイン酸 モノ2−エチルヘキシル モノ2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルの合成
2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブタノール 66.8g(0.334モル)、ピリジン 29.6mL(0.367モル)をアセトニトリル 180mLに溶解し、氷浴で冷やし、内温を20℃以下に保ちながらマレイン酸モノ2−エチルヘキシルクロリド90.6g(0.367モル)滴下した。滴下終了後、室温で1時間攪拌する。その後酢酸エチルを1000mL加え、1mol/L塩酸水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で有機相を洗浄した後、有機層を回収し、有機溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/クロロホルム:10/0〜7/3 v/v)で精製操作を行い、無色透明オイル状化合物として目的化合物を80.3g(収率59%)得た。
【0152】
5−3 シジウム モノ2−エチルヘキシル モノ2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル スルホサクシネート(FS−302)の合成
マレイン酸 モノ2−エチルヘキシルモノ2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル 80.3g(0.196mol)、亜硫酸水素ナトリウム 20.4g(0.196mol)、水−エタノール(1/1 v/v)80mLを加え10時間加熱還流した。その後酢酸エチルを1000mL加え、飽和塩化ナトリウム水溶液で有機相を洗浄した後、有機層を回収し、有機溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール:9/1v/v)で精製操作を行い、回収した有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した後、有機溶媒を減圧留去し、無色透明の固体として目的化合物を32g(収率32%)得た。
得られた化合物の1H−NMRデータは以下の通りである。
1H−NMR(DMSO−d)δ0.81−0.87(m,6H), 1.24(m,8H),1.50(br,1H), 2.77−2.99(m,2H),3.63−3.71(m,1H),3.86−3.98(m,3H),4.62−4.84(br,1H)
【0153】
(合成例6:FS−312の合成)
6−1 マレイン酸 モノデシル モノ3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルの合成
3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキサノール 164.6g(623mmol)、ピリジン 49.3mL(623mmol))をクロロホルム 280mLに溶解し、氷浴で冷やし、内温を20℃以下に保ちながらマレイン酸モノドデシルクロリド 155.8g(566mmol)滴下した。滴下終了後、室温で1時間攪拌する。その後酢酸エチルを加え、1mol/L塩酸水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で有機相を洗浄した後、有機層を回収し、有機溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/クロロホルム:10/0〜7/3 v/v)で精製操作を行い、目的化合物を48.2g(収率18%)得た。
【0154】
6−2 ソジウム モノデシル モノ3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル スルホサクシネート(FS−312)の合成
マレイン酸モノデシルモノ3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル 48.0g(90mmol)、亜硫酸水素ナトリウム 10.4g(99mmol)、水−エタノール(1/1 v/v)50mLを加え5時間加熱還流した。その後酢酸エチルを加え、飽和塩化ナトリウム水溶液で有機相を洗浄した後、有機層を回収し、有機溶媒を減圧留去し、アセトニトリルで再結晶操作を行った。無色透明の固体として目的化合物を12.5g(収率22%)得た。
得られた化合物の1H−NMRデータは以下の通りである。
1H−NMR(DMSO−d)δ0.81−0.87(t,3H), 1.24(m,18H),1.51(br,2H), 2.50−2.70(m,2H),2.70−2.95(m,2H),3.61−3.70(m,1H),3.96(m,2H),4.28(ms,2H)
【0155】
(合成例7:FS−309の合成)
7−1 マレイン酸 モノ2−エチルヘキシル モノ3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル の合成
3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキサノール 515g(1.95mol)、ピリジン 169g(2.13mol)、トリエチルアミン 394ml(3.89mol)をクロロホルム 1000mlに溶解し、氷浴で冷やし、内温を20℃以下に保ちながらマレイン酸(2−エチルヘキシル)クロリド 530g(2.14mol)滴下した。滴下終了後、室温で1時間攪拌した。その後クロロホルム加え、水、飽和塩化ナトリウム水溶液で有機相を洗浄した後、有機層を回収し、有機溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/クロロホルム:10/0〜7/3 v/v)で精製操作を行い、無色透明の目的化合物を508g(収率50%)得た。
【0156】
7−2 ソジウム(モノ2−エチルヘキシル)(モノ3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル)スルホサクシネート(FS−309)の合成
マレイン酸(モノ2−エチルヘキシル)(モノ3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル) 137.5g(0.29mol)、亜硫酸水素ナトリウム 33.2g(0.32mol)、水−エタノール(1/1 v/v)140mlを加え、2時間加熱還流した。その後、酢酸エチルを1000ml加え、飽和塩化ナトリウム水溶液で有機相を洗浄した後、有機層を回収し、有機溶媒を減圧留去し、トルエン 800mLで再結晶操作を行い、氷浴で冷却すると結晶が析出した。最後に結晶を濾別し、無色透明の目的化合物を140g(収率84%)得た。
1H−NMR(DMSO− d6)δ0.82−0.93(m,6H), 1.13−1.32(m,8H),1.50(br,1H), 2.57−2.65(m,2H),2.84−2.98(m,2H),3.63−3.68(m,1H),3.90(d,2H),4.30(m,2H)
【0172】
また、上記の種々の化合物のうち、イオン性の界面活性剤はその使用目的、必要とされる諸特性等によってイオン交換もしくは中和等の手段で種々の異なる塩の形で、または1種もしくは2種以上の対イオン存在下で用いることができる。
【0173】
以下に上記一般式中の置換可能な基が有していてもよい置換基の例、置換基Tについて説明する。
置換基Tとしては、例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる)、
【0174】
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールオキシ基であり、例えば、フェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12アシル基であり、例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10のアリールオキシカルボニル基であり、例えば、フェニルオキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルオキシ基であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、
【0175】
アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニルアミノ基であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12のスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のカルバモイル基であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、
【0176】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールチオ基であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニル基であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のウレイド基であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のリン酸アミド基であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されていてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
【0177】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、支持体上に少なくとも1層の感光性ハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料において、少なくとも1層中に上記一般式(1)で表される化合物と本発明のフッ素系界面活性剤とを含有することを特徴とする。本発明のハロゲン化銀写真感光材料の好ましい態様としては、最外層に非感光性の親水性コロイド層を有し、該最外層が上記一般式(1)で表される化合物と本発明のフッ素系界面活性剤を含有する態様が挙げられる。該層は、上記一般式(1)で表される化合物と、本発明のフッ素系界面活性剤とを含有する水性塗布組成物を、支持体の上方に塗布することによって形成できる。前記水性塗布組成物は、本発明のフッ素系界面活性剤の1種類を単独で用いてもよいし、また2種類以上を混合して用いてもよい。上記一般式(1)で表される化合物についても1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、それらの成分とともに、他の界面活性剤を用いてもよい。併用可能な界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の各種界面活性剤を挙げることができる。また併用する界面活性剤は、高分子界面活性剤であってもよい。併用する界面活性剤としては、アニオン系もしくはノニオン系活性剤がより好ましい。併用可能な界面活性剤としては、例えば特開昭62−215272号公報(649〜706頁)、リサーチ・ディスクロージャ(RD)Item17643,26〜27頁(1978年12月)、同18716,650頁(1979年11月),同307105,875〜876頁(1989年11月)等に記載の界面活性が挙げられる。
【0178】
前記水性塗布組成物中に含まれていてもよい、他の成分としては、ポリマー化合物が代表的な例として挙げられる。前記ポリマー化合物は水性媒体に可溶なポリマー(以下、「可溶性ポリマー」という)であってもよいし、ポリマーの水分散物(いわゆるポリマーラテックス)であってもよい。可溶性ポリマーとしては特に制限はないが、例えばゼラチン、ポリビニルアルコール、カゼイン、寒天、アラビアゴム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を挙げることができ、ポリマーラテックスとしては、種々のビニルモノマー[例えば、アクリレート誘導体、メタクリレート誘導体、アクリルアミド誘導体、メタクリルアミド誘導体、スチレン誘導体、共役ジエン誘導体、N−ビニル化合物、O−ビニル化合物、ビニルニトリル、その他のビニル化合物(例えばエチレン、塩化ビニリデン)]の単独もしくは共重合体、縮合系ポリマーの分散物(例えばポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド)を挙げることができる。この種のポリマー化合物の具体例については、例えば、特開昭62−215272号公報(707〜763頁)、リサーチ・ディスクロージャ(RD)Item17643,651頁(1978年12月)、同18716,650頁(1979年11月),同307105,873〜874頁(1989年11月)等に記載されたポリマー化合物が挙げられる。
【0179】
前記水性塗布組成物は、その他種々の化合物を含んでいてもよく、またそれらは媒体に溶解していてもよく、分散されていてもよい。例えば、写真感光材料の構成層形成に用いる場合には、種々のカプラー、紫外線吸収剤、混色防止剤、スタチック防止剤、スカベンジャー、カブリ防止剤、硬膜剤、染料、防黴剤等を挙げることができる。また、前述したように、本発明の水性塗布組成物は写真感光材料の最上層の親水性コロイド層の形成に用いるのが好ましが、この場合は、塗布組成物中には、親水性コロイド(例えばゼラチン)や本発明のフッ素化合物以外に、他の界面活性剤やマット剤、スベリ剤、コロイダルシリカ、ゼラチン可塑剤等を含有させることができる。
【0180】
前記水性塗布組成物中における上記一般式(1)で表される化合物およびフッ素系界面活性剤の濃度については特に制約はなく、用いる化合物の構造やその用途、水性組成物中に含まれる素材の種類や量、および媒体の構成等に応じて、その使用量を任意に決定することができる。例えば、前記水性塗布組成物を、ハロゲン化銀写真感光材料の最上層の親水性コロイド(ゼラチン)層用塗布液として用いる場合、フッ素系界面活性剤の塗布組成物中の濃度としては、0.003〜0.5質量%であることが好ましい。またゼラチン固形分に対しては0.03〜5質量%であることが好ましい。上記一般式(1)で表される化合物の塗布組成物中の濃度は、0.003〜0.5質量%であることが好ましい。
【0181】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、前記水性塗布組成物の1種または2種以上を、支持体の上方に塗布して作製することができる。前記塗布組成物の塗布方式としては、特に制限されず、スライドビード塗布方式、スライドカーテン塗布方式、エクストルージョンカーテン塗布方式およびエクストルージョンビード塗布方式のいずれであってもよい。中でも、スライドビード塗布方式が好ましい。
【0182】
以下、本発明のハロゲン化銀写真感光材料に用いられる種々の材料について、ハロゲン化銀カラー写真感光材料を例として説明する。
本発明のハロゲン化銀写真感光材料に使用可能なハロゲン化銀粒子乳剤の形状は、立方体、八面体、十四面体のような規則的な結晶を有しているもの、球状、板状のような変則的な結晶を有するもの、双晶面などの結晶欠陥を有するもの、あるいはそれらの複合形である。特に平板状粒子であることがより好ましい。
【0183】
平板粒子乳剤は全投影面積の50%以上がアスペクト比3以上の粒子で占められることが好ましい。ここで平板粒子の投影面積ならびにアスペクト比は参照用のラテックス球とともにシャドーをかけたカーボンレプリカ法による電子顕微鏡写真から測定することができる。平板粒子は主平面に対して垂直方向から見た時に、通常6角形、3角形もしくは円形状の形態をしているが、該投影面積と等しい面積の円に相当する直径(円相当直径)を厚みで割った値がアスペクト比である。平板粒子の形状は6角形の比率が高い程好ましく、また、6角形の各隣接する辺の長さの比は1:2以下であることが好ましい。
【0184】
本発明の効果はアスペクト比が高い程、好ましい写真性能が得られるので、平板粒子乳剤は全投影面積の50%以上がアスペクト比8以上の粒子で占められることが好ましい。さらに好ましくはアスペクト比12以上である。アスペクト比があまり大きくなりすぎると、前述した粒子サイズ分布の変動係数が大きくなる方向になるために、通常アスペクト比は50以下が好ましい。
【0185】
ハロゲン化銀粒子の平均粒子直径は、平均円相当直径としては0.2〜10.0μmであることが好ましく、0.5〜5.0μmであることがさらに好ましい。円相当直径とは粒子の平行な主平面の投影面積と等しい面積をもつ円の直径である。粒子の投影面積は電子顕微鏡写真上での面積を測定し、撮影倍率を補正することにより得られる。また、平均球相当直径では0.1〜5.0μmであることが好ましく、0.6〜2.0μmであることがさらに好ましい。これらの範囲が写真乳剤にとって最も感度/粒状比の関係が優れている。平板粒子の場合、平均厚みとしては0.05〜1.0μmであることが好ましい。ここで平均円相当直径とは、均一な乳剤から任意に採取した1000個以上の粒子の円相当直径の平均値をいう。平均厚みについても同様である。
なお、ハロゲン化銀粒子は単分散であっても多分散であってもよい。
【0186】
平板粒子乳剤は対向する(111)主平面と該主平面を連結する側面からなることが好ましい。該主平面の間には少なくとも1枚の双晶面が入っていることが好ましい。本発明において用いる平板粒子乳剤には通常2枚の双晶面が観察されることが好ましい。この2枚の双晶面の間隔は米国特許第5,219,720号明細書に記載のように0.012μm未満にすることが可能である。さらには特開平5−249585号公報に記載のように(111)主平面間の距離を該双晶面間隔で割った値が15以上にすることも可能である。本発明において、平板粒子乳剤の対向する(111)主平面を連結する側面は全側面の75%以下が(111)面から構成されていることが好ましい。ここで全側面の75%以下が(111)面から構成されるとは、全側面の25%よりも高い比率で(111)面以外の結晶学的な面が存在するということである。通常その面は(100)面であるとして理解し得るが、それ以外の面、すなわち(110)面や、より高指数の面である場合も含み得る。本発明においては全側面の70%以下が(111)面から構成されていると効果が顕著である。
【0187】
本発明に使用可能なハロゲン化銀溶剤としては、米国特許第3,271,157号、同第3,531,289号、同3,574,628号の各明細書、特開昭54−1019号、同54−158917号等の各公報に記載された(a)有機チオエーテル類、特開昭53−82408号、同55−77737号、同55−2982号等の各公報に記載された(b)チオ尿素誘導体、特開昭53−144319号公報に記載された(c)酸素または硫黄原子と窒素原子とにはさまれたチオカルボニル基を有するハロゲン化銀溶剤、特開昭54−100717号公報に記載された(d)イミダゾール類、(e)アンモニア、(f)チオシアネート等が挙げられる。
【0188】
特に好ましい溶剤としては、チオシアネート、アンモニアおよびテトラメチルチオ尿素がある。また用いられる溶剤の量は種類によっても異なるが、例えばチオシアネートの場合、好ましい量はハロゲン化銀1mol当り1×10-4mol〜1×10-2molである。
【0189】
平板粒子乳剤の側面の面指数を変化させる方法として欧州特許第515894A1号公報等を参考にすることができる。また米国特許第5252453号明細書等に記載のポリアルキレンオキサイド化合物を用いることもできる。有効な方法として米国特許第4,680,254号、同4,680,255号、同4,680,256号ならびに同4,684,607号等の各明細書に記載の面指数改質剤を用いることができる。通常の写真用分光増感色素も上記と同様な面指数の改質剤として用いることができる。
【0190】
ハロゲン化銀乳剤は上述した要件を満足する限りにおいて種々の方法によって調製することが可能である。平板粒子乳剤の調製は通常、核形成、熟成ならびに成長の基本的に3工程よりなる。核形成の工程においては米国特許第4,713,320号および同4,942,120号の各明細書に記載のメチオニン含量の少ないゼラチンを用いること、同4,914,014号明細書に記載の高pBrで核形成を行うこと、特開平2−222940号公報に記載の短時間で核形成を行うことは本発明において用いる平板粒子乳剤の核形成工程において極めて有効である。熟成工程においては米国特許第5,254,453号明細書に記載の低濃度のベースの存在下で行うこと、同5,013,641号明細書に記載の高いpHで行うことは、平板粒子乳剤の熟成工程において有効である場合がある。成長工程においては米国特許第45,248,587号明細書に記載の低温で成長を行うこと、同4,672,027号および同4,693,964号明細書に記載の沃化銀微粒子を用いることは平板粒子乳剤の成長工程において特に有効である。さらには、臭化銀、沃臭化銀、塩沃臭化銀微粒子乳剤を添加して熟成することにより成長させることも好ましく用いられる。特開平10−43570号公報に記載の撹拌装置を用いて、上記微粒子乳剤を供給することも可能である。
【0191】
ハロゲン化銀乳剤は沃臭化銀、沃塩化銀、臭塩化銀または沃塩臭化銀であることが好ましい。さらに沃臭化銀もしくは沃塩臭化銀よりなることがより好ましい。沃塩臭化銀の場合、塩化銀を含んでもよいが、好ましくは塩化銀含率が8mol%以下、より好ましくは3mol%以下もしくは0mol%である。沃化銀含有率については、粒子サイズの分布の変動係数が25%以下であることが好ましいので、沃化銀含有率は20mol%以下が好ましい。沃化銀含有率を低下させることにより平板粒子乳剤の粒子サイズ分布の変動係数は小さくすることが容易になる。特に平板粒子乳剤の粒子サイズ分布の変動係数は20%以下が好ましく、沃化銀含有率は10mol%以下が好ましい。沃化銀含有率にかかわらず、粒子間の沃化銀含量の分布の変動係数は20%以下が好ましく、特に10%以下が好ましい。
【0192】
ハロゲン化銀乳剤は沃化銀分布について粒子内で構造を有していることが好ましい。この場合、沃化銀分布の構造は2重構造、3重構造、4重構造さらにはそれ以上の構造があり得る。
【0193】
ハロゲン化銀乳剤の構造は、例えば臭化銀/沃臭化銀/臭化銀からなる3重構造粒子ならびにそれ以上の高次構造も好ましい。構造間の沃化銀含有率の境界は明確なものであっても、連続的になだらかに変化しているものであっても、いずれでもよい。通常、粉末X線回折法を用いた沃化銀含有量の測定では、沃化銀含有量の異なる明確な2山を示す様なことはなく、高沃化銀含有率の方向にすそをひいたようなX線回折プロフィールを示す。
【0194】
また、表面よりも内側の相の沃化銀含有率が表面の沃化銀含有率よりも高いことが好ましく、表面よりも内側の相の沃化銀含有率は好ましくは5mol%以上、より好ましくは7mol%以上である。
【0195】
ハロゲン化銀乳剤が平板粒子である場合、転位線を有する平板粒子を用いるのが好ましい。平板粒子の転位線は、例えばJ.F.Hamilton,Phot.Sci.Eng.,11、57、(1967)やT.Shiozawa,J.Soc.Phot.Sci.Japan,35、213、(1972)に記載の、低温での透過型電子顕微鏡を用いた直接的な方法により観察することができる。すなわち乳剤から粒子に転位線が発生するほどの圧力をかけないよう注意して取り出したハロゲン化銀粒子を、電子顕微鏡観察用のメッシュにのせ、電子線による損傷(プリントアウト等)を防ぐように試料を冷却した状態で透過法により観察を行う。この時粒子の厚みが厚い程、電子線が透過しにくくなるので、高圧型(0.25μmの厚さの粒子に対して200kV以上)の電子顕微鏡を用いた方がより鮮明に観察することができる。このような方法により得られた粒子の写真より、主平面に対して垂直方向から見た場合の各粒子についての転位線の位置および数を求めることができる。
【0196】
転位線の数は、好ましくは1粒子当り平均10本以上である。より好ましくは1粒子当り平均20本以上である。転位線が密集して存在する場合、または転位線が互いに交わって観察される場合には、1粒子当りの転位線の数は明確には数えることができない場合がある。しかしながら、これらの場合においても、おおよそ10本、20本、30本という程度には数えることが可能であり、明らかに、数本しか存在しない場合とは区別できる。転位線の1粒子当りの平均数については100粒子以上について転位線の数を数えて、数平均として求める。
【0197】
ハロゲン化銀粒子には、硫黄増感、セレン増感、金増感、パラジウム増感および貴金属増感の少なくとも1つをハロゲン化銀乳剤の製造工程の任意のタイミングで施こすことができる。2種以上の増感法を組み合せることは好ましい。いずれのタイミングで化学増感するかによって種々のタイプの乳剤を調製することができる。粒子の内部に化学増感核をうめ込むタイプ、粒子表面から浅い位置にうめ込むタイプ、あるいは表面に化学増感核を形成するタイプがある。目的に応じて、乳剤の調製条件により、所望の場所に化学増感核を形成することができるが、表面近傍に少なくとも1種の化学増感核を形成するのが好ましい。
【0198】
好ましく実施しうる化学増感の一つとして、カルコゲナイド増感と貴金属増感の単独または組合せが挙げられる。これらの化学増感は、ジェームス(T.H.James)著、ザ・フォトグラフィック・プロセス、第4版、マクミラン社刊、1977年、(T.H.James、The Theoryof the Photographic Process,4th ed,Macmillan,1977)67−76頁に記載されるように活性ゼラチンを用いて行うことができるし、またリサーチ・ディスクロージャー120巻、1974年4月、12008;リサーチ・ディスクロージャー、34巻、1975年6月、13452、米国特許第2,642,361号、同3,297,446号、同3,772,031号、同3,857,711号、同3,901,714号、同4,266,018号、および同3,904,415号の各明細書、並びに英国特許第1,315,755号の明細書に記載されるようにpAg5〜10、pH5〜8および温度30〜80℃において硫黄、セレン、テルル、金、白金、パラジウム、イリジウムまたはこれら増感剤の複数の組合せとすることができる。貴金属増感においては、金、白金、パラジウム、イリジウム等の貴金属塩を用いることができ、中でも特に金増感、パラジウム増感および両者の併用が好ましい。
【0199】
金増感の場合には、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレナイド等の公知の化合物を用いることができる。パラジウム増感には、パラジウム2価塩または4価塩を用いることができる。パラジウム増感に用いる好ましいパラジウム化合物としては、R2PdX6またはR2PdX4で表わされる化合物が挙げられる。ここでRは水素原子、アルカリ金属原子またはアンモニウム基を表わす。Xはハロゲン原子(塩素、臭素またはヨウ素原子)を表わす。具体的には、K2PdCl4 、(NH4)2PdCl6、Na2PdCl4、(NH4)2PdCl4、Li2PdCl4、Na2PdCl6またはK2PdBr4が好ましい。金化合物およびパラジウム化合物はチオシアン酸塩あるいはセレノシアン酸塩と併用することが好ましい。
【0200】
硫黄増感剤として、ハイポ、チオ尿素系化合物、ロダニン系化合物および米国特許第3,857,711号、同4,266,018号および同4,054,457号の各明細書に記載されている硫黄含有化合物を用いることができる。いわゆる化学増感助剤の存在下に化学増感することもできる。有用な化学増感助剤には、アザインデン、アザピリダジン、アザピリミジンのごとき、化学増感の過程でカブリを抑制し、且つ感度を増大するものとして知られた化合物が用いられる。化学増感助剤改質剤の例は、米国特許第2,131,038号、同3,411,914号、同3,554,757号の各明細書、特開昭58−126526号公報および前述ダフィン著「写真乳剤化学」、138〜143頁に記載されている。
【0201】
ハロゲン化銀乳剤は金増感を併用することが好ましい。金増感剤の好ましい量としては、ハロゲン化銀1mol当り1×10-4〜1×10-7molであり、さらに好ましいのは1×10-5〜5×10-7molである。パラジウム化合物の好ましい量としては、ハロゲン化銀1mol当り1×10-3〜5×10-7molである。チオシアン化合物あるいはセレノシアン化合物の好ましい量としては、ハロゲン化銀1mol当り5×10-2〜1×10-6molである。ハロゲン化銀粒子に対して使用する好ましい硫黄増感剤の好ましい量は、ハロゲン化銀1mol当り1×10-4〜1×10-7molであり、さらに好ましいのは1×10-5〜5×10-7molである。
【0202】
ハロゲン化銀乳剤に対して好ましい増感法としてセレン増感がある。セレン増感においては、公知の不安定セレン化合物を用い、具体的には、コロイド状金属セレニウム、セレノ尿素類(例えば、N,N−ジメチルセレノ尿素、N,N−ジエチルセレノ尿素等)、セレノケトン類、セレノアミド類、等のセレン化合物を用いることができる。セレン増感は硫黄増感あるいは貴金属増感あるいはその両方と組み合せて用いるのがより好ましい場合がある。例えば、チオシアン酸塩を、上述した分光増感色素ならびに化学増感剤の添加以前に添加するのが好ましい。より好ましくは粒子形成後、さらに好ましくは脱塩工程終了後に添加する。化学増感時にもチオシアン酸塩を添加するのが好ましく、即ち、化学増感の工程で、チオシアン酸塩を2回以上添加するのが好ましい。チオシアン酸塩としては、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム等が用いられる。チオシアン酸塩は、通常、水溶液または水可溶性溶媒に溶解して添加される。添加量はハロゲン化銀1mol当たり1×10-5mol〜1×10-2mol、より好ましくは5×10-5mol〜5×10-3molである。
【0203】
ハロゲン化銀乳剤の調製時に用いられる保護コロイドとして、およびその他の親水性コロイド層のバインダーとしては、ゼラチンを用いるのが有利であるが、それ以外の親水性コロイドも用いることができる。例えば、ゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマー、アルブミン、カゼイン等の蛋白質;ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロース硫酸エステル類等の如きセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、澱粉誘導体などの糖誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分アセタール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピラゾール等の単一あるいは共重合体の如き多種の合成親水性高分子物質を用いることができる。
【0204】
ゼラチンとしては石灰処理ゼラチンのほか、酸処理ゼラチンやBull.Soc.Sci.Photo.Japan. No. 16、P30(1966)に記載されているような酵素処理ゼラチンを用いてもよく、また、ゼラチンの加水分解物や酵素分解物も用いることができる。
【0205】
得られた乳剤は脱塩のために水洗した後、新たに保護コロイド分散するのが好ましい。水洗の温度は目的に応じて選べるが、5〜50℃の範囲で選ぶのが好ましい。水洗時のpHも目的に応じて選べるが、2〜10の範囲で選ぶのが好ましく、3〜8の範囲で選ぶのがより好ましい。水洗時のpAgも目的に応じて選べるが5〜10の範囲で選ぶのが好ましい。水洗の方法としてヌードル水洗法、半透膜を用いた透析法、遠心分離法、凝析沈降法、イオン交換法のなかから選んで用いることができる。凝析沈降法の場合には、硫酸塩を用いる方法、有機溶剤を用いる方法、水溶性ポリマーを用いる方法、ゼラチン誘導体を用いる方法などから選ぶことができる。
【0206】
乳剤調製時、例えば粒子形成時、脱塩工程、化学増感時、塗布前に金属イオンの塩を存在させることは目的に応じて好ましい。粒子にドープする場合には粒子形成時、粒子表面の修飾あるいは化学増感剤として用いる時は粒子形成後、化学増感終了前に添加することが好ましい。粒子全体にドープすることもできるし、あるいは、粒子のコア部のみ、シェル部のみ、エピタシャル部分にのみ、基盤粒子にのみドープすることもできる。前記金属イオンとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Sc、Y、LaCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Au、Cd、Hg、Tl、In、Sn、Pb、Biなどを用いることができる。これらの金属はアンモニウム塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、水酸塩あるいは6配位錯塩、4配位錯塩など粒子形成時に溶解させることができる塩の形であれば添加できる。例えばCdBr2、CdCl2、Cd(NO3)2、Pb(NO3)2、Pb(CH3COO)2、K3[Fe(CN)6]、(NH4)4[〔Fe(CN)6]、K3IrCl6、(NH4)3RhCl6、K4Ru(CN)6等が挙げられる。配位化合物のリガンドとしては、ハロ、アコ、シアノ、シアネート、チオシアネート、ニトロシル、チオニトロシル、オキソ、カルボニルのなかから選ぶことができる。これらは金属化合物を1種類のみ用いてもよいが2種あるいは3種以上を組み合せて用いてよい。
【0207】
金属化合物は水またはメタノール、アセトンなどの適当を溶媒に解かして添加するのが好ましい。溶液を安定化するためにハロゲン化水素水溶液(例HCl、HBrなど)あるいはハロゲン化アルカリ(例KCl、NaCl、KBr、NaBrなど)を添加する方法を用いることができる。また必要に応じ酸・アルカリなどを加えてもよい。金属化合物は粒子形成前の反応容器に添加しても粒子形成の途中で加えることもできる。また水溶性銀塩(例えばAgNO3)あるいはハロゲン化アルカリ水溶性(例えばNaCl、KBr、KI)に添加し、ハロゲン化銀粒子形成中連続して添加することもできる。さらに水溶性銀塩、ハロゲン化アルカリとは独立の溶液を用意し、粒子形成中の適切な時期に連続して添加してもよい。さらに種々の添加方法を組み合せるのも好ましい。
【0208】
米国特許第3,772,031号明細書に記載されているようなカルコゲナイド化合物を乳剤調製中に添加する方法も有用な場合がある。S、Se、Te以外にもシアン塩、チオシアン塩、セレノシアン酸、炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩を存在させてもよい。
【0209】
乳剤はその製造工程中に銀に対する酸化剤を用いることが好ましい。但し、粒子表面の還元増感によって得られた感度の向上に寄与する銀核はある程度残存する必要がある。特にハロゲン化銀粒子の形成過程および化学増感過程において副生する極めて微小な銀粒子を、銀イオンに変換せしめる化合物が有効である。ここで生成する銀イオンは、ハロゲン化銀、硫化銀、セレン化銀等の水に難溶の銀塩を形成してもよく、また硝酸銀等の水に易溶の銀塩を形成してもよい。
【0210】
好ましい酸化剤は、チオスルホン酸塩の無機酸化剤およびキノン類の有機酸化剤である。
【0211】
本発明に用いられる写真乳剤には、感光材料の製造工程、保存中あるいは写真処理中のカブリを防止し、あるいは写真性能を安定化させる目的で、種々の化合物を含有させることができる。すなわちチアゾール類、例えばベンゾチアゾリウム塩、ニトロイミダゾール類、ニトロベンズイミダゾール類、クロロベンズイミダゾール類、ブロモベンズイミダゾール類、メルカプトチアゾール類、メルカプトベンゾチアゾール類、メルカプトベンズイミダゾール類、メルカプトチアジアゾール類、アミノトリアゾール類、ベンゾトリアゾール類、ニトロベンゾトリアゾール類、メルカプトテトラゾール類(特に1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール)など;メルカプトピリミジン類;メルカプトトリアジン類;たとえばオキサドリンチオンのようなチオケト化合物;アザインデン類、たとえばトリアザインデン類、テトラアザインデン類(特に4−ヒドロキシ置換(1,3,3a,7)テトラアザインデン類)、ペンタアザインデン類などのようなカブリ防止剤または安定剤として知られた、多くの化合物を加えることができる。たとえば米国特許第3,954,474号、同3,982,947号の各明細書、特公昭52−28660号公報に記載されたものを用いることができる。好ましい化合物の一つに特公平07−78597号公報(特願昭62−47225号明細書)に記載された化合物がある。カブリ防止剤および安定剤は粒子形成前、粒子形成中、粒子形成後、水洗工程、水洗後の分散時、化学増感前、化学増感中、化学増感後、塗布前のいろいろな時期に目的に応じて添加することができる。乳剤調製中に添加して本来のカブリ防止および安定化効果を発現する以外に、粒子の晶壁を制御する、粒子サイズを小さくする、粒子の溶解性を減少させる、化学増感を制御する、色素の配列を制御するなど多目的に用いることができる。
【0212】
乳剤ならびにその乳剤を用いた写真感光材料に使用することができる層配列等の技術、ハロゲン化銀乳剤、色素形成カプラー、DIRカプラー等の機能性カプラー、各種の添加剤等、および現像処理については、欧州特許第0565096A1号(1993年10月13日公開)およびこれに引用された特許に記載されている。以下に各項目とこれに対応する記載個所を列記する。
【0213】
1.層構成:61頁23−35行、61頁41行−62頁14行
2.中間層:61頁36−40行、
3.重層効果付与層:62頁15−18行、
4.ハロゲン化銀ハロゲン組成:62頁21−25行、
5.ハロゲン化銀粒子晶癖:62頁26−30行、
6.ハロゲン化銀粒子サイズ:62頁31−34行、
7.乳剤製造法:62頁35−40行、
8.ハロゲン化銀粒子サイズ分布:62頁41−42行、
9.平板粒子:62頁43−46行、
10.粒子の内部構造:62頁47行−53行、
11.乳剤の潜像形成タイプ:62頁54行−63頁5行、
12.乳剤の物理熟成・化学熟成:63頁6−9行、
13.乳剤の混合使用:63頁10−13行、
14.かぶらせ乳剤:63頁14−31行、
15.非感光性乳剤:63頁32−43行、
16.塗布銀量:63頁49−50行、
17.写真用添加剤:リサーチ・ディスクロージャ(RD)Item17643(1978年12月)、同Item18716(1979年11月)および同Item307105(1989年11月)に記載されており、下記に各項目およびこれに関連する記載個所を示す。
【0214】
【0215】
18.ホルムアルデヒドスカベンジャー:64頁54−57行、
19.メルカプト系カブリ防止剤:65頁1−2行、
20.かぶらせ剤等放出剤:65頁3−7行、
21.色素:65頁7−10行、
22.カラーカプラー全般:65頁11−13行、
23.イエロー、マゼンタおよびシアンカプラー:65頁14−25行、
24.ポリマーカプラー:65頁26−28行、
25.拡散性色素形成カプラー:65頁29−31行、
26.カラードカプラー:65頁32−38行、
27.機能性カプラー全般:65頁39−44行、
28.漂白促進剤放出カプラー:65頁45−48行、
29.現像促進剤放出カプラー:65頁49−53行、
30.その他のDIRカプラー:65頁54行−66頁4行、
31.カプラー分散方法:66頁5−28行、
32.防腐剤・防かび剤:66頁29−33行、
33.感材の種類:66頁34−36行、
34.感光層膜厚と膨潤速度:66頁40行−67頁1行、
35.バック層:67頁3−8行、
36.現像処理全般:67頁9−11行、
37.現像液と現像薬:67頁12−30行、
38.現像液添加剤:67頁31−44行、
39.反転処理:67頁45−56行、
40.処理液開口率:67頁57行−68頁12行、
41.現像時間:68頁13−15行、
42.漂白定着、漂白、定着:68頁16行−69頁31行、
43.自動現像機:69頁32−40行、
44.水洗、リンス、安定化:69頁41行−70頁18行、
45.処理液補充、再使用:70頁19−23行、
46.現像薬感材内蔵:70頁24−33行、
47.現像処理温度:70頁34−38行、
48.レンズ付フィルムへの利用:70頁39−41行、
また、欧州特許第602600号公報に記載の、2−ピリジンカルボン酸または2,6−ピリジンジカルボン酸と硝酸第二鉄のごとき第二鉄塩、および過硫酸塩を含有した漂白液も好ましく使用できる。この漂白液の使用においては、発色現像工程と漂白工程との間に、停止工程と水洗工程を介在させることが好ましく、停止液には酢酸、コハク酸、マレイン酸などの有機酸を使用することが好ましい。さらに、この漂白液には、pH調整や漂白カブリの目的に、酢酸、コハク酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸などの有機酸を0.1〜2mol/Lの範囲で含有させることが好ましい。
【0216】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
【0217】
[例1:ハロゲン化銀カラー写真感光材料の作製と評価]
(1)支持体
下記の通り、支持体を作製した。
1)第1層および下塗り層
厚さ90μmのポリエチレンナフタレート支持体について、その各々の両面に、処理雰囲気圧力2.66×10Pa、雰囲気気体中のH2O分圧75%、放電周波数30kHz、出力2500W、処理強度0.5kV・A・分/m2でグロー放電処理を施した。この支持体上に、第1層として下記組成の塗布液を特公昭58−4589号公報に記載のバー塗布法を用いて、5mL/m2の塗布量で塗布した。
【0218】
第1層を塗設後、直径20cmのステンレス巻芯に巻付けて、110℃(PEN支持体のTg:119℃)で48時間加熱処理し熱履歴させてアニール処理をした後、支持体をはさみ第1層側と反対側に乳剤用の下塗り層として下記組成の塗布液をバー塗布法を用いて、10mL/m2の塗布量で塗布した。
【0219】
さらに、以下の第2、第3層を第1層の上に順に塗設した。
2)第2層
▲1▼磁性体の分散
Co被着γ−Fe2O3磁性体(平均長軸長:0.25μm、SBET:39m2/g、Hc:6.56×104A/m、σs:77.1Am2/kg、σr:37.4Am2/kg)1100質量部、水220質量部およびシランカップリング剤〔3−(ポリ(重合度10)オキシエチニル)オキシプロピルトリメトキシシラン〕165質量部を添加して、オープンニーダーで3時間よく混練した。この粗分散した粘性のある液を70℃で1昼夜乾燥し、水を除去した後、110℃で1時間加熱処理し、表面処理をした磁気粒子を作製した。
さらに以下の処方で、再びオープンニーダーにて4時間混練した。
上記表面処理済み磁気粒子 855 g
ジアセチルセルロース 25.3 g
メチルエチルケトン 136.3 g
シクロヘキサノン 136.3 g
さらに、以下の処方で、サンドミル(1/4Gのサンドミル)にて2000rpm、4時間微細分散した。メディアは1mmΦのガラスビーズを用いた。
上記混練液 45 g
ジアセチルセルロース 23.7 g
メチルエチルケトン 127.7 g
シクロヘキサノン 127.7 g
【0220】
さらに、以下の処方で、磁性体含有中間液を作製した。
▲2▼磁性体含有中間液の作製
上記磁性体微細分散液 674 g
ジアセチルセルロース溶液 24280 g
(固形分4.34%、溶媒:メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=1/1)
シクロヘキサノン 46 g
これらを混合した後、ディスパ−にて撹拌し、「磁性体含有中間液」を作製した。
【0221】
以下の処方でα−アルミナ研磨材分散液を作製した。
(a)スミコランダムAA−1.5(平均1次粒子径1.5μm、比表面積1.3m2/g)
粒子分散液の作製
スミコランダムAA−1.5 152 g
シランカップリング剤KBM903(信越シリコ−ン社製) 0.48 g
ジアセチルセルロース溶液 227.52 g
(固形分4.5%、溶媒:メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=1/1)
上記処方にて、セラミックコートしたサンドミル(1/4Gのサンドミル)を用いて800rpm、4時間微細分散した。メディアは1mmΦのジルコニアビーズを用いた。
(b)コロイダルシリカ粒子分散液(微小粒子)
日産化学(株)製の「MEK−ST」を使用した。
これは、メチルエチルケトンを分散媒とした、平均1次粒子径0.015μmのコロイダルシリカの分散液であり、固形分は30%である。
【0222】
▲3▼第2層塗布液の作製
上記磁性体含有中間液 19053 g
ジアセチルセルロース溶液 264 g
(固形分4.5%、溶媒:メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=1/1)
コロイダルシリカ分散液「MEK−ST」[分散液b] 128 g
(固形分30%)
AA−1.5分散液[分散液a] 12 g
ミリオネートMR-400(日本ポリウレタン(株)製) 希釈液 203 g
(固形分20%、希釈溶剤:メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=1/1)
メチルエチルケトン 170 g
シクロヘキサノン 170 g
上記を混合・撹拌した塗布液をワイヤーバーにて、塗布量29.3mL/m2になるように塗布した。乾燥は110℃で行った。乾燥後の磁性層としての厚みは1.0μmであった。
【0223】
3)第3層(高級脂肪酸エステル滑り剤含有層)
▲1▼滑り剤の分散原液の作製
下記のア液を100℃加温溶解し、イ液に添加後、高圧ホモジナイザーで分散し、滑り剤の分散原液を作製した。
ア液
下記化合物 399 質量部
C6H13CH(OH)(CH2)10COOC50H101
下記化合物 171 質量部
n−C50H101O(CH2CH2 O)16H
シクロヘキサノン 830 質量部
イ液
シクロヘキサノン 8600 質量部
▲2▼球状無機粒子分散液の作製
以下の処方にて、球状無機粒子分散液[c1]を作製した。
イソプロピルアルコール 93.54 質量部
シランカップリング剤KBM903(信越シリコ−ン社製)
(CH3O)3Si−(CH2)3−NH2) 5.53 質量部
化合物1 2.93 質量部
【0224】
【化50】
【0225】
シーホスタKEP50 88.00 質量部
(非晶質球状シリカ、平均粒子径0.5μm、日本触媒(株)製)
【0226】
上記処方にて10分間撹拌後、さらに以下を追添した。
ジアセトンアルコール 252.93 質量部
上記液を氷冷・攪拌しながら、超音波ホモジナイザー「SONIFIER450(BRANSON(株)製)」を用いて3時間分散し、球状無機粒子分散液c1を調製した。
▲3▼球状有機高分子粒子分散液の作製
以下の処方にて、球状有機高分子粒子分散液[c2]を作製した。
XC99−A8808
(東芝シリコーン(株)製、球状架橋ポリシロキサン粒子、
平均粒径0.9μm) 60 質量部
メチルエチルケトン 120 質量部
シクロヘキサノン 120 質量部
(固形分20%、溶媒:メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=1/1)
氷冷・攪拌しながら、超音波ホモジナイザー「SONIFIER450(BRANSON(株) 製)」を用いて2時間分散し球状有機高分子粒子分散液c2を調製した。
【0227】
▲4▼第3層塗布液の作製
前述、滑り剤分散原液542gに下記を加え第3層塗布液とした。
ジアセトンアルコール 5950 g
シクロヘキサノン 176 g
酢酸エチル 1700 g
上記シーホスタKEP50分散液[c1] 53.1 g
上記球状有機高分子粒子分散液[c2] 300 g
メガファックF−178K 4.8 g
(大日本インキ(株)製、固形分30%)
BYK310 5.3 g
(BYKケミジャパン(株) 製、固形分含量25%)
【0228】
上記第3層塗布液を第2層の上に10.35mL/m2の塗布量で塗布し、110℃で乾燥後、さらに97℃で3分間後乾燥した。
【0229】
(2)感光層の塗設
次に、前記支持体の下塗面側に、下記の組成の各層を重層塗布し、カラーネガフィルムを作製した。
(感光層の組成)
各層に使用した素材の主なものは下記のように分類した;
ExC:シアンカプラー UV :紫外線吸収剤
ExM:マゼンタカプラー HBS:高沸点有機溶剤
ExY:イエローカプラー H :ゼラチン硬化剤
(具体的な化合物は以下の記載で、記号の次に数値が付けられ、後ろに化学式が挙げられている)。
各成分に対応する数字は、g/m2単位で表した塗布量を示し、ハロゲン化銀については銀換算の塗布量を示す。
【0230】
第1層(第1ハレーション防止層)
黒色コロイド銀 銀 0.122
0.07μmのヨウ臭化銀乳剤 銀 0.01
ゼラチン 0.919
ExM−1 0.066
ExC−1 0.002
ExC−3 0.002
Cpd−2 0.001
F−8 0.010
HBS−1 0.005
HBS−2 0.002
第2層(第2ハレーション防止層)
黒色コロイド銀 銀 0.055
ゼラチン 0.425
ExF−1 0.002
F−8 0.012
固体分散染料 ExF−7 0.120
HBS−1 0.074
第3層(中間層)
ExC−2 0.050
Cpd−1 0.090
ポリエチルアクリレートラテックス 0.200
HBS−1 0.100
ゼラチン 0.700
【0231】
第4層(低感度赤感乳剤層)
Em−D 銀 0.577
Em−C 銀 0.347
ExC−1 0.188
ExC−2 0.011
ExC−3 0.075
ExC−4 0.121
ExC−5 0.010
ExC−6 0.007
ExC−8 0.050
ExC−9 0.020
Cpd−2 0.025
Cpd−4 0.025
HBS−1 0.114
HBS−5 0.038
ゼラチン 1.474
第5層(中感度赤感乳剤層)
Em−B 銀 0.431
Em−C 銀 0.432
ExC−1 0.154
ExC−2 0.068
ExC−3 0.018
ExC−4 0.103
ExC−5 0.023
ExC−6 0.010
ExC−8 0.016
ExC−9 0.005
Cpd−2 0.036
Cpd−4 0.028
HBS−1 0.129
ゼラチン 1.086
【0232】
第6層(高感度赤感乳剤層)
Em−A 銀 1.108
ExC−1 0.180
ExC−3 0.035
ExC−6 0.029
ExC−8 0.110
ExC−9 0.020
Cpd−2 0.064
Cpd−4 0.077
HBS−1 0.329
HBS−2 0.120
ゼラチン 1.245
第7層(中間層)
Cpd−1 0.094
Cpd−6 0.369
固体分散染料ExF−4 0.030
HBS−1 0.049
ポリエチルアクリレートラテックス 0.088
ゼラチン 0.886
第8層(赤感層へ重層効果を与える層)
Em−J 銀 0.293
Em−K 銀 0.293
Cpd−4 0.030
ExM−2 0.120
ExM−3 0.016
ExM−4 0.026
ExY−1 0.016
ExY−4 0.036
ExC−7 0.026
HBS−1 0.090
HBS−3 0.003
HBS−5 0.030
ゼラチン 0.610
【0233】
第9層(低感度緑感乳剤層)
Em−H 銀 0.329
Em−G 銀 0.333
Em−I 銀 0.088
ExM−2 0.378
ExM−3 0.047
ExY−1 0.017
ExC−7 0.007
HBS−1 0.098
HBS−3 0.010
HBS−4 0.077
HBS−5 0.548
Cpd−5 0.010
ゼラチン 1.470
第10層(中感度緑感乳剤層)
Em−F 銀 0.457
ExM−2 0.032
ExM−3 0.029
ExM−4 0.029
ExY−3 0.007
ExC−6 0.010
ExC−7 0.012
ExC−8 0.010
HBS−1 0.065
HBS−3 0.002
HBS−5 0.020
Cpd−5 0.004
ゼラチン 0.446
【0234】
第11層(高感度緑感乳剤層)
Em−E 銀 0.794
ExC−6 0.002
ExC−8 0.010
ExM−1 0.013
ExM−2 0.011
ExM−3 0.030
ExM−4 0.017
ExY−3 0.003
Cpd−3 0.004
Cpd−4 0.007
Cpd−5 0.010
HBS−1 0.148
HBS−5 0.037
ポリエチルアクリレートラテックス 0.099
ゼラチン 0.939
第12層(イエローフィルター層)
Cpd−1 0.094
固体分散染料ExF−2 0.150
固体分散染料ExF−5 0.010
油溶性染料ExF−6 0.010
HBS−1 0.049
ゼラチン 0.630
【0235】
第13層(低感度青感乳剤層)
Em−O 銀 0.112
Em−M 銀 0.320
Em−N 銀 0.240
ExC−1 0.027
ExC−7 0.013
ExY−1 0.002
ExY−2 0.890
ExY−4 0.058
Cpd−2 0.100
Cpd−3 0.004
HBS−1 0.222
HBS−5 0.074
ゼラチン 2.058
第14層(高感度青感乳剤層)
Em−L 銀 0.714
ExY−2 0.211
ExY−4 0.068
Cpd−2 0.075
Cpd−3 0.001
HBS−1 0.071
ゼラチン 0.678
【0236】
第15層(第1保護層)
0.07μmのヨウ臭化銀乳剤 銀 0.301
UV−1 0.211
UV−2 0.132
UV−3 0.198
UV−4 0.026
F−11 0.009
S−1 0.086
HBS−1 0.175
HBS−4 0.050
ゼラチン 1.984
第16層(第2保護層)
H−1 0.400
B−1 (直径0.8μm) 0.050
B−2 (直径3.0μm) 0.150
B−3 (直径3.0μm) 0.050
S−1 0.200
ゼラチン 0.750
【0237】
さらに、各層に適宜、保存性、処理性、圧力耐性、防黴・防菌性、帯電防止性および塗布性をよくするために、W−1〜W−4、B−4〜B−6、F−1〜F−19、および鉛塩、白金塩、イリジウム塩、ロジウム塩を含有させた。
【0238】
有機固体分散染料の分散物の調製
第12層のExF−2を次の方法で分散した。
ExF−2のウエットケーキ
(17.6質量%の水を含む) 2.800 kg
オクチルフェニルジエトキシメタンスルホン酸ナトリウム
(31質量%水溶液) 0.376 kg
F−15(7%水溶液) 0.011 kg
水 4.020 kg
計 7.210 kg
(NaOHでpH=7.2に調整)
上記組成のスラリーをディゾルバーで攪拌して粗分散した後、アジテータミルLMK−4を用い、周速10m/s、吐出量0.6kg/min、0.3mm径のジルコニアビーズ充填率80%で分散液の吸光度比が0.29になるまで分散し、固体微粒子分散物を得た。染料微粒子の平均粒径は0.29μmであった。
同様にして、ExF−4およびExF−7の固体分散物を得た。染料微粒子の平均粒径はそれぞれ、0.28μm、0.49μmであった。ExF−5は欧州特許第549,489Aの実施例1に記載の微小析出(Microprecipitation)分散方法により分散した。平均粒径は0.06μmであった。
【0239】
【表1】
【0240】
表1において、乳剤Em−A〜Cは、分光増感色素1〜3が最適量添加され、最適に金増感、硫黄増感、セレン増感されていた。乳剤Em−Jは、分光増感色素7および8が最適量添加され、最適に金増感、硫黄増感、セレン増感されていた。乳剤Em−Lは分光増感色素9〜11が最適量添加され、最適に金増感、硫黄増感、セレン増感されていた。乳剤Em−Oは分光増感色素10〜12が最適量添加され、最適に金増感、硫黄増感されていた。乳剤Em−D、H、I、K、MおよびNは、表2に記載の分光増感色素が最適量添加され、最適に金増感、硫黄増感、セレン増感されていた。
【0241】
【表2】
【0242】
表2に記載の増感色素を以下に示す。
【0243】
【化51】
【0244】
【化52】
【0245】
【化53】
【0246】
平板状粒子の調製には、特開平1−158426号公報に記載の実施例に従い、低分子量ゼラチンを使用した。乳剤Em−A〜KにはIr、Feを最適量含有させた。乳剤Em−L〜Oは粒子調製時に還元増感した。平板状粒子には高圧電子顕微鏡を用いると、特開平3−237450号公報に記載されているような転位線が観察された。乳剤Em−A〜CおよびJは、特開平6−11782号公報に記載の実施例に従い、ヨードイオン放出剤を使用して転位導入した。乳剤Em−Eは、特開平10−43570号公報に記載の磁気カップリング誘導型攪拌機を有する別チャンバーで添加直前に調製したヨウ化銀微粒子を使用して転位導入した。
以下、各層に用いた化合物を示す。
【0247】
【化54】
【0248】
【化55】
【0249】
【化56】
【0250】
【化57】
【0251】
【化58】
【0252】
【化59】
【0253】
【化60】
【0254】
【化61】
【0255】
【化62】
【0256】
【化63】
【0257】
【化64】
【0258】
【化65】
【0259】
【化66】
【0260】
上記のハロゲン化銀カラー写真感光材料を試料100とした。
上記の試料100に対して、第16層に下記FC−1を0.009g/m2、W−1を0.056g/m2添加した以外は試料100と同様にして試料101を作製した。試料101における第16層のFC−1に対して、各層に対する添加量がフッ素量換算で等質量となるように、FC−1の代わりに表3に示す界面活性剤を添加し、比較試料101〜105、112および本発明試料106〜111を作製した。
【0261】
<評価>
(1)帯電調整能試験
試料100〜112について帯電調整能を評価した。帯電量は、温度25℃、相対湿度10%の環境で、35mm×120mmのサンプルの乳剤塗布した面の反対の面を両面テープで接着し、接地した対向ローラーにナイロン製リボンを巻きつけ、該ローラ間をニップ搬送させた後で、ファラデーケージに入れる方法で測定した。帯電量の測定結果は各々帯電列指数で示した。帯電列指数とは、試料100の帯電量から試料101〜112の各々の帯電量を差し引いた値を109倍した値である。帯電列指数が−1.0よりも小さくなるものについては帯電列調整能が実用上充分あると判定した。結果を表3に示す。
なお、表3中帯電調整能の欄の記号は以下の意味で用いた。
× : 帯電列指数が0〜−1.0で、帯電列調整効果がない。
△ : 帯電列指数が−1.1〜−2.0で、帯電列調整効果が小さい。
○ : 帯電列指数が−2.1〜−3.0で、帯電列調整効果がある。
◎ : 帯電列指数が−3.1以下で、帯電列調整効果が大きい。
【0262】
【表3】
【0263】
【化67】
【0264】
表3に示す結果から明らかなように、従来のフッ素系界面活性剤は長鎖のパーフルオロアルキル基を持つ化合物でのみ帯電調整能が発現しており、炭素数6以下のフッ化アルキル基(比較化合物FC−4)では帯電調整能が不十分である。一方、本発明の試料(106、107)は、分岐のパーフルオロアルキル鎖を有することにより短鎖フッ化アルキル基でも十分な帯電調整能を有することがわかった。
【0265】
さらに、本発明の試料の表面をXPS(X−ray photoelectron spectroscopy)によって分析し、表面のF原子/炭素原子比を定量した結果、帯電調整能と表面フッ素量に良い相関が観測され、本発明の界面活性剤が試料表面にフッ素原子を効果的に存在させていることがわかった。
【0266】
(2)ハジキ特性評価
さらに、試料101〜112における第16層のB−1の粒子径を3μmとした以外は構成成分をそれぞれ試料101〜112と同じとした表4に示す試料201〜212を作製した。試料201〜212はスライドビード塗布方式で1.5m/secで塗布した後、直ちに乾燥させ、塗布膜表面に発生したハジキ(塗布膜がスポット状にはじいている箇所)の数を目視にて計数し、ハジキ度数で示した。ハジキ度数とは、試料201のハジキ数に対する各試料のハジキ数を百分率で示したものであり、100以下の場合にハジキ抑制効果ありと判定した。結果を下記表4に示す。
なお、塗布性の欄の記号は以下の意味で用いた。
◎ : ハジキ個数〜20。
○ : ハジキ個数21〜5。
△ : ハジキ個数50以上。
【0267】
【表4】
【0268】
本発明の試料は、いずれもハジキを低減する能力に優れていることが示された。また、表3の結果と合わせると、上記一般式(1)で表される化合物と本発明のフッ素系界面活性剤とを組み合わせた、本発明の試料を作製することにより比較試料と比べ、帯電調整能、ハジキ低減化の両立の点で優れていることが明らかである。
【0269】
(3)写真特性
試料101〜112を、温度40℃、相対湿度70%の条件下で14時間放置した後、色温度4800°Kで連続ウェッジを通して1/100秒間露光を行い、下記のカラー現像処理を施した。処理後の試料を青色フィルターで濃度測定することにより写真性能の評価を行った。感度はかぶり濃度プラス0.2のイエロー濃度を与えるルックス・秒で表示する露光量の逆数の対数の相対値で評価した。いずれの素材も、感度や色像濃度等の写真特性は同等であった。
【0270】
現像は富士写真フイルム社製自動現像機FP−360Bを用いて以下の方法により行った。
なお、漂白浴のオーバーフロー液を後浴へ流さず、全て廃液タンクへ排出するように改造を行った。このFP−360Bは公開技報94−4992号(社団法人発明協会発行)に記載の蒸発補正手段を搭載している。
処理工程および処理液組成を以下に示す。
(処理工程)
工程 処理時間 処理温度 補充量* タンク容量
発色現像 3分5秒 37.8℃ 20mL 11.5L
漂 白 50秒 38.0℃ 5mL 5L
定着(1) 50秒 38.0℃ ─ 5L
定着(2) 50秒 38.0℃ 8mL 5L
水 洗 30秒 38.0℃ 17mL 3L
安定(1) 20秒 38.0℃ ─ 3L
安定(2) 20秒 38.0℃ 15mL 3L
乾 燥 1分30秒 60.0℃
*補充量:感光材料35mm幅1.1m当たり(24毎撮り1本相当)の補充量
安定液および定着液は(2)から(1)への向流方式であり、水洗水のオーバーフロー液は全て定着浴(2)へ導入した。尚、現像液の漂白工程への持ち込み量、漂白液の定着工程への持ち込み量、および定着液の水洗工程への持ち込み量は感光材料35mm幅1.1m当たりそれぞれ2.5mL、2.0mL、2.0mLであった。また、クロスオーバーの時間はいずれも6秒であり、この時間は前工程の処理時間に包含される。
上記処理機の開口面積は発色現像液で100cm2、漂白液で120cm2、その他の処理液は約100cm2であった。
【0271】
以下に処理液の組成を示す。
【0272】
【0273】
(定着(1)タンク液)
上記漂白タンク液と下記定着タンク液との5対95(容量比)混合液
(pH6.8)
【0274】
(水洗水)
水道をH型強酸性カチオン交換樹脂(ロームアンドハース社製アンバーライトIR−120B)と、OH型強塩基性アニオン交換樹脂(同アンバーライトIR−400)を充填した混床式カラムに通水してカルシウムおよびマグネシウムイオン濃度を3mg/L以下に処理し、続いて二塩化イソシアヌール酸ナトリウム20mg/Lと硫酸ナトリウム150mg/Lを添加した。この液のpHは6.5〜7.5の範囲にあった。
【0275】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、上記一般式(1)で表される化合物と、本発明のフッ素系界面活性剤とを含有することにより、帯電防止性に優れ、且つ安定的に作製可能なハロゲン化銀写真感光材料を提供することができ、かつ安定に製造することができる。
Claims (9)
- 支持体上に少なくとも1層の感光性ハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料において、少なくとも1層中に下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2A)、(2B)または(2C−1)のいずれかで表されるフッ素系界面活性剤とを含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
一般式(1)
一般式(2A)
(式中、R A1 およびR A2 はそれぞれ置換もしくは無置換のアルキル基を表すが、R A1 およびR A2 の少なくとも1つはフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。R A3 、R A4 およびR A5 はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、L A1 、L A2 およびL A3 はそれぞれ独立に2価の連結基を表し、X + はカチオン性の置換基を表す。Y - は対アニオンを表すが、分子内で荷電が0になる場合にはY - はなくてもよい。m A は0または1である。)
一般式(2B)
(式中、R B3 、R B4 およびR B5 はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表す。AおよびBはそれぞれ独立にフッ素原子を表す。n B3 およびn B4 はそれぞれ独立に4〜6のいずれかの整数を表す。L B1 およびL B2 はそれぞれ独立して、置換もしくは無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基を表す。m B は0または1を表す。Mはカチオンを表す。)
一般式(2C−1)
(式中、R C11 は炭素数6以上の置換または無置換のアルキル基を表し、R CF1 は炭素数6以下のパーフルオロアルキル基を表す。Y C11 およびY C12 は、一方が水素原子を、もう一方が−SO 3 M c を表し、M c はカチオンを表す。n C1 は1以上の整数を表す。) - 前記フッ素系界面活性剤が、前記一般式(2A)および(2B)から選択される化合物であることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
- 前記フッ素系界面活性剤が、下記一般式(2A−1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
一般式(2A−1)
(式中、R A11 およびR A12 はそれぞれ置換または無置換のアルキル基を表すが、R A11 およびR A12 の少なくとも1つはフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、R A11 およびR A12 の炭素数の総計は19以下である。L A2 およびL A3 はそれぞれ独立に−O−、−S−または−NR 100 −を表し、R 100 は水素原子または置換基を表す。L A1 およびY - はそれぞれ前記一般式(2A)におけるそれらと同義である。R A13 、R A14 およびR A15 はそれぞれ独立に置換または無置換のアルキル基を表す。) - 前記一般式(1)で表される化合物と前記フッ素系界面活性剤を含有する層が、最外層の非感光性の親水性コロイド層であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
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