JP2004026937A - ポリオレフィン系樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】加熱した型に熱可塑性樹脂組成物を加え溶融成形し、加熱発泡することで発泡層を含む構造体を形成することができる発泡能力を有するポリオレフィン系組成物であって、該組成物は、熱分解型化学発泡剤の分解開始温度未満に結晶融解ピーク(融点Tma)を有するポリオレフィン系樹脂(A)と100℃以上の結晶融解ピーク(融点Tmb)を有するポリオレフィン系樹脂(B)の少なくとも2種類の樹脂から構成され、熱分解型化学発泡剤(C)を加え、Tma以上かつ熱分解型化学発泡剤(C)の分解開始温度未満の温度で溶融混練した後、粉末状に粉砕加工した架橋構造を導入した発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂架橋組成物(D)に、粉末状のポリオレフィン系樹脂(E)を混合してなる。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂組成物およびその製造方法に関する。更に詳しくは、例えば自動車内装用などの緩衝材、充填材、断熱材などに適用するポリオレフィン系樹脂組成物であって、加熱した型に熱可塑性樹脂組成物を加え溶融成形し、加熱発泡することで発泡層を含む構造体を形成するものであり、耐熱性、リサイクル性などの特性を有し、さらに粉末状ポリオレフィン系樹脂を混合することによって発泡加工時の作業性に優れ、また加熱発泡した発泡体同士の接着効果があるため発泡層の厚みが稼げるポリオレフィン系樹脂組成物およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、独立気泡を有する発泡体は、軽量かつ緩衝性や断熱性などに優れ、幅広い分野に使用されている。一方ポリウレタン注入発泡などは加工性に優れ、成型と同時に発泡体の供給が可能であり、加工工程を簡素化でき、様々な形状に密着した発泡構造体を造ることができる。しかし、廃棄処理やリサイクルの点では問題があった。
【0003】
廃棄処理やリサイクルの点で優位であるポリオレフィン系樹脂で、ポリウレタンの注入発泡に代替可能な加工方法として、特開平5−228947号公報には非発泡オレフィン系熱可塑性エラストマーと、ポリエチレン樹脂パウダーに熱分解型発泡剤を混合した組成物を、公知の加熱した金型と粉末供給ボックスとを一体化させて回転又は揺動あるいは噴射させて金型内面に粉末を溶着させ、未溶着粉末は自動的あるいは強制的に粉末供給ボックスに回収する工法で成形する方法が開示されている。しかしながらこの方法では発泡倍率が5倍未満の低発泡倍率の発泡体しか得られず、軽量性は満足するものの高発泡倍率発泡体が有する緩衝性や断熱性といった特性が実現できない欠点があった。また、特開平8−192436号公報にはポリオレフィン系樹脂を特定の組み合わせで配合し、アゾジカルボンアミド系または重炭酸ソーダ系発泡剤と有機過酸化物系架橋剤および特定の難燃剤を配合し、パウダースラシュ成形法に限定した成形工法により表皮と一体的に発泡体を形成した成形工法が開示されている。しかしながらこの成形工法では均一な気泡形状の独立気泡発泡体を得ることは難しい。何故なら均一な気泡を形成するには、加熱により、まず樹脂を軟化させ、次に発泡ガスを保持する適度な粘度を付与するため有機過酸化物の分解により樹脂を架橋し、発泡剤が分解し独立気泡を形成するという順序が必要であるが、本例の如く樹脂と発泡剤、架橋剤を単に配合しただけの組成物では熱源近傍に存在する部分から軟化や分解が開始するため上記の順序が満たされず、均一な気泡を形成することは難しく発泡体の表面が平滑でなかったり、また高い発泡倍率の発泡体とすることは困難であったためである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
いずれにしても、上記従来技術では、加熱発泡により得られた発泡体が高い耐熱性を有し、高い発泡倍率であってかつ得られた発泡体内部に存在する気泡が均一のものは得られなかった。
【0005】
本発明は上述した欠点を解消し、ポリウレタン樹脂を代替可能で種々の用途で緩衝材、充填材、断熱材として機能する発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂組成物とそれを用いた発泡構造体の形成方法を提供するものである。特に耐熱性、リサイクル性などの特性を有し、また粉末樹脂の成形作業性が良く、すなわち加熱した型に粉末状樹脂組成物を供給し溶融成形する際の樹脂の粉落ちが少なく、加熱発泡により得られた発泡体は高い発泡倍率であって、発泡体内部に存在する気泡が均一のものができるポリオレフィン系樹脂組成物を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、熱分解型発泡剤を含んだ発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂に、粉末状ポリオレフィン系樹脂を混合し、加熱発泡させることによって、かかる目的を達成することを見いだし、本発明に達した。即ち、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、加熱した型に熱可塑性樹脂組成物を加え溶融成形し、加熱発泡することで発泡層を含む構造体を形成することができるポリオレフィン系組成物であって、該組成物は、少なくとも熱分解型化学発泡剤の分解開始温度未満の結晶融解ピーク(融点Tma)を有するポリオレフィン系樹脂(A)と100℃以上の結晶融解ピーク(融点Tmb)を有するポリオレフィン系樹脂(B)および熱分解型化学発泡剤(C)を含み、その形状が粉末状である架橋構造が導入された発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂架橋組成物(D)と、粉末状ポリオレフィン系樹脂(E)を混合してなることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法は、熱分解型化学発泡剤の分解開始温度未満の結晶融解ピーク(融点Tma)を有するポリオレフィン系樹脂(A)と、100℃以上の結晶融解ピーク(融点Tmb)を有するポリオレフィン系樹脂(B)および熱分解型化学発泡剤(C)を、Tma以上かつ該化学発泡剤(C)の分解開始温度未満の温度で溶融混練した後、粉末状に粉砕加工した架橋構造が導入された発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂架橋組成物(D)に、粉末状のオレフィン系樹脂(E)を混合することを特徴とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態を説明する。
【0009】
本発明は、ポリウレタン樹脂等が使用されている緩衝材、充填材、断熱材に利用可能な発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂組成物を提供するものであり、具体的には、本発明の発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂組成物を加熱した型に加え溶融成形し、加熱発泡することで発泡層を含む構造体を形成するものである。このような構造体に本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を適用することで本発明の目的が達せられる。かかる溶融成形の方法としては、例えば粉末回転成形法または粉末スラッシュ成形法が挙げられる。そのうち粉末成形スラッシュ成形法に特に効果が見られる。すなわち、粉末スラッシュ成形方法とは、粉末状の熱可塑性樹脂を必要量入れた開口部を有する容器を粉末状熱可塑性樹脂の溶融粘度より充分高温に加熱された開口部を有する金型と開口部を合わせて固定するか、金型内中空間へ固定して一体化し、回転および/または揺動とともに粉末状熱可塑性樹脂を容器から金型内各部へ迅速に供給し、付着、溶融させ、必要ならば余剰の粉末状樹脂を容器中へ排出する工程を含むことを特徴とする成形法である。かかる溶融成形の後、加熱発泡し発泡層を含む構造体となす。
【0010】
本発明の発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂架橋組成物(D)に用いるポリオレフィン系樹脂とは、オレフィン系炭化水素の重合体または共重合体である。このポリオレフィン系樹脂架橋組成物(D)は、その外観形状が粉末状であって架橋構造が導入されており、加熱により発泡体を形成する発泡能力を有している必要がある。かかるポリオレフィン系樹脂架橋組成物(D)は、調整時に熱分解型化学発泡剤(C)の分解を抑制し、かつ得られる発泡体の耐熱性を満足させるため融点が熱分解型化学発泡剤の分解開始温度未満の結晶融解ピーク(融点Tma)を有するポリオレフィン系樹脂(A)と、100℃以上の結晶融解ピーク(融点Tmb)を有するポリオレフィン系樹脂(B)の融点範囲を有する樹脂から構成されている必要がある。
【0011】
ここで表される「融点」とは、示差走査熱量分析より得られるDSC曲線の結晶融解ピーク温度であり、その測定条件は−10℃から200℃の間で10℃/分の速度で昇温し、5分間保持した後200℃から−10℃の間で10℃/分の速度で降温し、更に5分間保持した後−10℃から200℃の間で10℃/分の速度で昇温したときに、2度目の昇温で得られたDSC曲線の結晶融解ピーク温度を融点とするものである。
【0012】
熱分解型化学発泡剤の分解開始温度未満の結晶融解ピーク(融点Tma)を有するポリオレフィン系樹脂(A)としては、特に限定されないが、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合体、エチレン−オクテン共重合体、低密度ポリエチレン、エチレンと炭素数が4〜12のα−オレフィンとを共重合した直鎖状のポリエチレンなどが例示され、それぞれ単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0013】
100℃以上の結晶融解ピーク(融点Tmb)を有するポリオレフィン系樹脂(B)としては、特に限定されないが、例えば低密度ポリエチレン、エチレンと炭素数が4〜12のα−オレフィンとを共重合した直鎖状のポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマーなどが例示され、それぞれ単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
また、熱分解型化学発泡剤の分解開始温度未満であって、かつ100℃以上の結晶融解ピークの融点を有するポリオレフィン系樹脂、すなわちポリオレフィン系樹脂(A)および(B)の条件を満たすポリオレフィン系樹脂については、上記樹脂を単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0015】
熱分解型化学発泡剤(C)の種類は、熱を加えることで分解しガスを放出する化学発泡剤であれば特に限定するものではなく、例えば有機、無機系の各種があり、有機系にはアゾジカルボンアミド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾジアミノベンゼン、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ベンゼン1,3−スルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3−ジスルホニルヒドラジド、ジフェニルオキシド−4,4’−ジスルホニルヒドラジド、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、p−トルエンスルホニルヒドラジド、N,N’−ニトロソペンタメチレンテトラミンなどが例示され、無機系には重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、カルシウムアジドなどが例示される。これら熱分解型化学発泡剤(C)は、それぞれ単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
更に本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂架橋組成物(D)に粉末状ポリオレフィン系樹脂(E)が混合している必要がある。かかる樹脂を含まないと、溶融成形時に粉末状樹脂組成物の粉切れの悪さや粉落ち量が多いなどの作業性が悪くなる場合がある。
【0017】
粉末状ポリオレフィン系樹脂(E)としては、特に限定されないが、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合体、エチレン−オクテン共重合体、低密度ポリエチレン、エチレンと炭素数が4〜12のα−オレフィンとを共重合した直鎖状のポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマーが例示され、それぞれ単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。エチレンに共重合させるα−オレフィンについては特に限定されないが、たとえばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−オクタデセン等が好ましい。これらはそれぞれ単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
本発明における発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂架橋組成物(D)と粉末状ポリオレフィン系樹脂(E)の配合比は、
(D):50〜98重量部
(E):2〜50重量部
であることが好ましく、さらに、
(D):60〜80重量部
(E):20〜40重量部
であることがより好ましい。
発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂架橋組成物(D)が50重量部未満で粉末状ポリオレフィン系樹脂(E)が50重量部を越える場合、発泡構造体中の発泡能力のある樹脂成分が少ないため、充分な発泡体が得られず、柔軟性や緩衝性に問題が生じることがある。また、発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂架橋組成物(D)が98重量部超、粉末状ポリオレフィン系樹脂(E)が2重量部未満である場合、発泡体同士の接着効果のために隙間を埋めたり、粉切れをよくする目的の粉末状ポリオレフィン系樹脂(E)が少なすぎて充分な効果が得られない場合がある。
【0019】
ポリオレフィン系樹脂(A)の融点Tmaは熱分解型化学発泡剤(C)の分解開始温度未満であって、該発泡剤(C)を溶融混練する際に、該発泡剤(C)が熱分解しないよう加工温度を低くする目的から融点Tmaは50〜100℃の範囲であることが好ましく、さらに60〜80℃の範囲であることがより好ましい。融点が50℃未満であれば熱分解型化学発泡剤(C)の分解なく溶融混練することは可能であるが、加熱加工し発泡体としたときに著しく耐熱性が低下するため実用性に乏しい場合がある。結晶融解ピーク(融点Tma)が100℃を越えると、発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂の調整時に加える熱が高温化し、調整時に熱分解型化学発泡剤(C)の分解が避けられない。また、かかる低融点の樹脂のみで構成されると耐熱性が不十分であり使用に耐えない。そこで100℃以上の融点Tmbを存するポリオレフィン系樹脂(B)を含有させる必要がある。
【0020】
ポリオレフィン系樹脂(B)の融点Tmbは100〜170℃の範囲であることが好ましく、さらに130〜150℃の範囲であることがより好ましい。融点が100℃未満であれば熱分解型化学発泡剤(C)の分解なく溶融混練することは可能であるが、加熱発泡体としたときに著しく耐熱性が低下するため実用性に乏しい場合がある。また、融点が170℃を越える場合、溶融混練の際、該化学発泡剤(C)の分解頻度が著しく多くなるため良好な発泡能力を有する組成物が得られない場合がある。
【0021】
ポリオレフィン系樹脂(A)と(B)の190℃測定MFRは1g/10分以上が好ましい。さらに発泡剤の発泡ガスを保持し、より良好な発泡体を得るためには1〜20g/10分であることが好ましく、2〜10g/10分が特に好ましい。MFRが1g/10分未満であると溶融混練の際、熱分解型化学発泡剤(C)の分解頻度が著しく多くなるため良好な発泡能力を有する組成物が得られない場合がある。ここで示すMFRとはJIS K−6922−2に準じた方法より測定された値を示す。但し、ポリプロピレン系樹脂のNFRについても同様に190℃での測定値とした。
【0022】
発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂架橋組成物(D)を構成するポリオレフィン系樹脂(A)と(B)の配合割合は、
(A):30〜95重量部
(B):5〜70重量部
であることが好ましく、さらに、
(A):40〜90重量部
(B):10〜60重量部
であることがより好ましい。
【0023】
ポリオレフィン系樹脂(A)が30重量部未満でポリオレフィン系樹脂(B)が70重量部を越える場合、溶融混練の際、熱分解型化学発泡剤(C)の分解頻度が著しく多くなるため良好な発泡能力を有する組成物が得られない場合があり、また、ポリオレフィン系樹脂(A)が95重量部を越えポリオレフィン系樹脂(B)が5重量部未満である場合、該化学発泡剤(C)の分解なく溶融混練することは可能であるが、加熱発泡体としたときに著しく耐熱性が低下するため実用性に乏しい場合がある。
【0024】
発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂架橋組成物(D)および粉末状ポリオレフィン系樹脂(E)の粒径は、下記に示す方法で求められる球換算平均粒子径が200μm〜5000μmが好ましく、より好ましくは300μm〜1500μmである。該粒子径が200μm未満では、粒径が小さすぎて、熱分解型化学発泡剤(C)の発泡ガスを保持できず発泡体とならない場合がある。また、該粒子径が5000μm超では、溶融成形時に樹脂どうしの熱融着が不十分で粉落ちが多く、得られる発泡体の厚さが薄くなる場合がある。球換算平均粒径の算出方法としては、粉末の平均体積を求め、その平均体積と同じ体積の球の直径として算出される粒径であり、ここで粒子の平均体積は任意に取り出した粉末状ポリオレフィン系樹脂組成物100個の合計重量及び粉末状ポリオレフィン系樹脂組成物の密度から計算される値である。
【0025】
熱分解型化学発泡剤(C)の添加量は加熱発泡体としたときの発泡倍率が5〜20倍の範囲、より好ましくは7〜20倍の範囲となるように調整をすると好ましい。発泡倍率が5倍未満であると緩衝性、断熱性、軽量性などの発泡体の特徴が著しく損なわれる場合があり、発泡倍率が20倍を越える場合であれば該化学発泡剤(C)の分解により大量に発生したガスの圧力が著しく大きくなり樹脂のガス保持力を上回ることで発泡ガスが逃散し良好な発泡体とならない場合がある。ここで示す発泡倍率とは、発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂組成物を加熱加工し発泡体とした上で、JIS K−6767に準じた測定方法で測定した見掛け密度の逆数を示す。
【0026】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、熱分解型化学発泡剤の分解開始温度未満の結晶融解ピーク(融点Tma)を有するポリオレフィン系樹脂(A)と、100℃以上の結晶融解ピーク(融点Tmb)を有するポリオレフィン系樹脂(B)の融点範囲を有する樹脂から構成され、かつ、熱分解型化学発泡剤(C)を含有し、その外観形状が粉末状である発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂架橋組成物(D)に、粉末状ポリオレフィン系樹脂(E)を混合してなるために、本発明では、成形時の粉落ちが少く、得られた発砲構造体の厚みを稼ぎ、得られた発泡体内部に存在する気泡が均一なポリオレフィン系樹脂組成物が得られる。
【0027】
次に本発明のポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法を説明する。
【0028】
本発明の発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂架橋組成物(D)の好ましい製造方法は、一旦ポリオレフィン系樹脂(A)と(B)をポリオレフィン系樹脂(B)の中の最も高い樹脂成分の融点以上で押出機やミキシングロールなどの汎用の混練装置を用いて溶融状態で混練した原料を準備し、これに熱分解型化学発泡剤(C)や必要に応じた架橋助剤、添加剤などを混合し、ポリオレフィン系樹脂(A)の融点Tma以上かつ該化学発泡剤(C)の分解開始温度以下の温度範囲で押出機やミキシングロールなどの汎用の混練装置を用いて溶融混練する方法、あるいはポリオレフィン系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)に熱分解型化学発泡剤(C)や必要に応じた架橋助剤、添加剤などを混合し、ポリオレフィン系樹脂(A)の融点Tma以上で該化学発泡剤(C)の分解開始温度以下の温度範囲で押出機やミキシングロールなどの汎用の混練装置を用いて溶融混練する方法が例示できる。かかる方法により本発明の発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂架橋組成物(D)をシート状やストランド状などの形状の長尺物に成形する。電子線架橋法やシラン架橋法のように発泡前に架橋を行う必要がある場合はシート状やストランド状などの長尺物で架橋処理を行った後、粉砕機などの汎用の裁断機で粉末状に裁断加工する。また、化学架橋法のような発泡中に架橋を行う場合は、シート状やストランド状などの長尺物に成形した後、粉砕機などの汎用の裁断機で粉末状に裁断加工する。該粉末状に加工した架橋構造が導入された発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂架橋組成物(D)に粉末状のポリオレフィン系樹脂(E)を混合する。かかる方法により形状が粉末状である本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を製造する。
【0029】
本発明でいう熱分解型化学発泡剤(C)の「分解開始温度」や「分解ピーク温度」とは、次の測定方法で表される。熱分解型化学発泡剤(C)の試料1gをポリエチレンフィルムに採取し、これを試験管の中に入れて流動パラフィン10mlを加え、この試験管を流動パラフィン浴中に浸漬しガスビュレットに接続したガス誘導管に接続する。その後、流動パラフィン浴を25〜250℃の間に2℃/分の速度で昇温し、1分ごとにビュレットに導入されたガス量を測定する。予め測定した該試料を含まない空気の膨張量を差し引いて求めた曲線を熱分解型化学発泡剤(C)の分解曲線とする。これより得られた熱分解型化学発泡剤(C)の分解曲線で、ガス発生が認められたときの温度を分解開始温度とし、最終的に発生したガス全量の70%以上のガス発生量でガスの増加量が前測定増加量の10%未満となった温度を分解ピーク温度とする。
【0030】
本発明では発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂架橋組成物(D)に架橋構造を導入する。架橋方法は、特に限定されないが、電離性放射線を照射し架橋させる電子線架橋法、有機過酸化物を混練し発泡時に有機過酸化物を分解し架橋させる化学架橋法、シラン基を持つポリオレフィン系樹脂を混合し水分と接触することで架橋させるシラン架橋法が例示され、これらの架橋方法はそれぞれ単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
上記の架橋には、必要に応じて架橋助剤を用いることができる。
【0032】
架橋助剤としては、特に限定されないが、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、トリメリット酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアネート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、トリシクロデカンジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートなどが例示され、これらを2つ以上組み合わせて用いることもできる。
【0033】
以上の架橋方法によって得られる架橋構造が導入された樹脂組成物は後述する方法で測定される架橋度を5〜80%にすることが好ましい。より好ましくは5〜40%である。架橋度が5%未満であると発泡体の製造時、発泡ガスの保持力が弱いため表面より発泡ガスが逃散し所定の発泡倍率にならなかったり、表面形態の悪化を招く場合があり、また耐熱性が低下する問題がある。一方、架橋度が80%を越えるとポリオレフィン系樹脂組成物を加熱加工した発泡体や該発泡体と接合する他の物品を含む発泡構造体を、リサイクルのため熱を加え各種加工を行うとき溶融不良、未溶融物のための加工不良、外観不良などの問題が発生する場合がある。また、架橋が密になり過ぎて発泡ガスの保持力が過度になり部分的に気泡の破壊が生じ、ボイドとなる場合がある。電離性放射線を照射するエネルギー、有機過酸化物を添加する量、樹脂中に含まれるシラン基の量や水分の接触条件などの諸条件は、架橋度が5〜80%の範囲であれば特に限定するものではない。
【0034】
本発明の発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂架橋組成物(D)は、必要に応じて例えば熱安定剤、耐候剤、難燃剤、難燃助剤、分散剤、顔料、流動性改良剤、離型剤、充填剤、造核剤など公知の各種添加剤を添加しても良い。
【0035】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を加熱発泡する方法としては特に限定されないが、多層構造体に成形する際に発泡加工することが好ましく、例えば成形した該ポリオレフィン系樹脂組成物と積層物をそれぞれ金型に設置し、熱風、赤外やセラミックなどのラジエーションヒータ、加圧蒸気、電熱ヒータなどの熱源で加熱発泡加工後または同時に積層する方法が例示される。
【0036】
以上に説明したとおり、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法は、熱分解型化学発泡剤の分解開始温度未満の結晶融解ピーク(融点Tma)を有するポリオレフィン系樹脂(A)と、100℃以上の結晶融解ピーク(融点Tmb)を有するポリオレフィン系樹脂(B)と熱分解型化学発泡剤(C)を、Tma以上かつ熱分解型化学発泡剤(C)の分解開始温度未満の温度で溶融混練し、粉末状とした架橋構造が導入された発泡能力を有する樹脂架橋組成物(D)に、粉末状のオレフィン系樹脂(E)を混合したものであり、加熱した型に粉末状熱可塑性樹脂を加え溶融させる成形方法において、粉末状である本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を使用することで融着成形の作業性が良く、該樹脂組成物を加熱発泡体または発泡構造体としたときの発泡体内部に存在する気泡が均一かつ高倍率発泡体であって、高い耐熱性を有する発泡体が得られるものである。
【0037】
【実施例】
次に、本発明を実施例および比較例により具体的に説明する。
【0038】
本発明における測定法、評価基準は次の通りである。
1.架橋度
発泡体を細断し、0.2g精秤する。これを130℃のテトラリン中に浸積し、攪拌しながら3時間加熱し溶解部分を溶解せしめ、不溶部分を取り出しアセトンで洗浄してテトラリンを除去後、純水で洗浄し、アセトンを除去する。次に120℃の熱風乾燥機にて水分を除去した後、室温になるまで自然冷却する。このものの重量W1(g)を測定し、次式で架橋度を求めた。
【0039】
架橋度=〔W1/0.2〕×100 (%)
2.発泡倍率
発泡体から10×10cmの寸法の試料片を切り出し、厚みt1(cm)と重量W2(g)を測定し、次式で見掛密度を算出した。
【0040】
見掛密度=W2/(10×10×t1) (g/cm3)
発泡倍率は、この見掛密度より、次式で求められる。
【0041】
発泡倍率=1/見掛密度
3.MFR
JIS K−6922−2に準じた方法で、測定温度190℃で測定した。なお、ポリプロピレン系樹脂を含むオレフィン系樹脂組成物についても測定温度190℃で測定した。
4.組成物混練可否
熱分解型化学発泡剤(C)が分解しない温度で溶融混練が可能であるか判定する。樹脂が軟化し、必要量の該化学発泡剤(C)が分解なく溶融混練できるものを合格、顕著な該化学発泡剤(C)の分解や必要量の該化学発泡剤(C)が溶融混練できない場合不合格と判定する。
5.組成物外観
溶融混練した発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂組成物をプレス機で板状に加圧成形加工したシートの歪み、表面の平面性、発泡分解ガスの有無を目視判定する。シートに歪みがなく、表面が平滑で、熱分解型化学発泡剤(C)の分解ガスによる気泡混入のないものを合格(◎)、多少の不備が見られるが発泡体に加工可能であるものを合格(○)、顕著な不備が見られ発泡体に加工不可能であるものを不合格(×)と判定する。
6.粉末状樹脂組成物の成形作業性
加熱した型に粉末状のポリオレフィン樹脂組成物を山盛り供給し、融着加工するときの樹脂の融着量、また融着しない余分の樹脂を取り除くときの粉切れの良さ、そして作業のしやすさを判定する。型に融着しない余分の樹脂量が少なく、かつ余分な樹脂の粉切れが良く、また樹脂がしっかりと型に融着しているものを合格(◎)、溶融成形後に表面を強く擦ったりすると多少融着していない余分な樹脂が出てくるが、特に不備は見られないものを(○)、型に融着する樹脂量が少なく、余分な樹脂を取り除く際、おこしを作り粉切れが悪いものを(×)と判定する。
7.発泡体外観
粉末状のポリオレフィン系樹脂組成物を溶融成形し、加熱発泡加工により得た発泡体の歪み、表面の外観、気泡の均一性を目視判定する。発泡体の歪み、表面の熱分解型発泡剤分解ガス逃散孔、発泡ムラによる凹凸がなく、発泡体内部に存在する気泡が均一であり、熱分解型発泡剤未分解物の影響による黄色着色の少ないものを合格(◎)、多少の不備が見られるが緩衝性、断熱性、軽量性などの発泡体基本性能を損なわないものを合格(○)、前記発泡体の基本特性を損なうような不備があるものを不合格(×)と判定する。
8.耐熱温度
粉末状のポリオレフィン系樹脂組成物を溶融成形し、加熱発泡加工により得た発泡体から15×15cmの正方形サンプルを切り出し、その中心の厚みZ0cmの測定及び各辺に平行となる各々長さ10cmの直交した標線を書き、このサンプルを熱風循環オ−ブンに入れ22時間加熱後、取出し、室温になるまで自然冷却する。この加熱処理サンプルの厚みZ1cm及び各縦横の標線長さL1、L2cmを測定し、下記の式に従って加熱体積変化率を算出する。
【0042】
加熱体積変化率(%)=[{(10×10×Z0)−(L1×L2×Z1)}/(10×10×Z0)]×100 (%)
10℃間隔に設定した各熱風温度の加熱体積変化を測定し、±10%以下となる最高温度を耐熱温度とし、実用上の耐熱温度として80℃以下を不合格(×)、80℃以上を合格(○)、特に耐熱性に優れる100℃以上を合格(◎)と判定する。
9.総合評価
組成物混練加工が可能であり、組成物や発泡体の外観に優れ、耐熱温度が100℃以上あるものを総合評価で合格(◎)、組成物混練加工が可能であるが、組成物や発泡体の外観に使用上問題とならない多少の不備点がみられる、または耐熱温度が80℃以上100℃未満である判定のいずれか1つでも該当する項目のあるものを合格(○)、組成物混練加工ができないものや、組成物や発泡体の外観に顕著な不備が見られる、または耐熱温度が80℃未満未満である判定のいずれか1つでも該当する項目のあるものを不合格(×)と判定する。
【0043】
[実施例1]
ポリオレフィン系樹脂(A)としてエチレン−酢酸ビニル共重合体(融点76℃、MFR4.0g/10分)60重量部、ポリオレフィン系樹脂(B)としてエチレン−プロピレンランダム共重合体(融点143℃、MFR2.0g/10分)40重量部、熱安定剤として“Irganox1010”を0.3重量部を210℃に設定した40mmφ単軸押出機で溶融混練した後、押出溶融混練した樹脂に熱分解型化学発泡剤(C)としてアゾジカルボンアミド(分解開始温度132℃、分解ピーク温度143℃)を加え、110℃に設定したミキシングロールで溶融混練した。この溶融混練した組成物を110℃に設定したプレス加工機で厚さ2mmのシートに作成した。このシートに加速電圧800kVの電子線を2Mrad照射し架橋させた。このシートは該化学発泡剤(C)の分解による気泡混入は認められず良好な発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂架橋組成物(D)を得た。該シート状発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂架橋組成物(D)を粉砕機で直径2mm以下に粉砕加工した。該樹脂架橋組成物(D)70重量部に粉末状ポリオレフィン樹脂(E)として粒径が2mm以下である直鎖状低密度ポリエチレン(融点124℃、MFR50.0g/10分)30重量部を配合しポリオレフィン系樹脂組成物を得た。このポリオレフィン系樹脂組成物を250℃に予熱された型枠内に山盛りに供給し、20秒間放置後熱融着しなかった余分の粉末を除去し20秒間保った。この操作をもう一度行いポリオレフィン系樹脂組成物の溶融成形体を得た。溶融成形時、該組成物は粉落ちする量が少なく、未融着の余分な粉末の粉切れは少なかった。得られた溶融成形物を型枠から取り出した後、180℃に設定した熱風オーブンで4分間加熱発泡を行い、加熱発泡体を得た。発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂組成物の溶融混練状態、シート状態、及びポリオレフィン系樹脂組成物の溶融成形作業性、得られた加熱加工発泡体の発泡倍率、気泡状態、耐熱温度などを評価した結果を表1に示す。いずれの評価項目においても合格であった。
【0044】
[実施例2]
ポリオレフィン系樹脂(A)としてエチレン−酢酸ビニル共重合体(融点76℃、MFR4.0g/10分)50重量部、ポリオレフィン系樹脂(B)として低密度ポリエチレン(融点113℃、MFR3.0g/10分)30重量部とエチレン−プロピレンランダム共重合体(融点143℃、MFR2.0g/10分)20重量部としたほかは実施例1と同様に発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂組成物及びその溶融成形加熱発泡体を得た。該組成物及び発泡体の評価結果を表1に示す。いずれの評価項目においても合格であった。
【0045】
[実施例3]
ポリオレフィン系樹脂(A)としてエチレン−酢酸ビニル共重合体(融点76℃、MFR4.0g/10分)90重量部、ポリオレフィン系樹脂(B)としてエチレン−プロピレンランダム共重合体(融点143℃、MFR2.0g/10分)10重量部としたほかは実施例1と同様に粉末状ポリオレフィン系樹脂組成物及びその溶融成形加熱発泡体を得た。該組成物及び発泡体の評価結果を表1に示す。耐熱性は実用温度レベルであるがいずれの評価項目においても合格であった。
【0046】
[実施例4]
ポリオレフィン系樹脂(A)としてエチレン−酢酸ビニル共重合体(融点76℃、MFR4.0g/10分)50重量部、ポリオレフィン系樹脂(B)として低密度ポリエチレン(融点113℃、MFR3.0g/10分)50重量部としたほかは実施例1と同様に粉末状ポリオレフィン系樹脂組成物及びその溶融成形加熱発泡体を得た。該組成物及び発泡体の評価結果を表1に示す。耐熱性は実用温度レベルであるがいずれの評価項目においても合格であった。
【0047】
[実施例5]
ポリオレフィン系樹脂(A)として低密度ポリエチレン(融点118℃、MFR3.0g/10分)80重量部、ポリオレフィン系樹脂(B)としてエチレン−プロピレンランダム共重合体(融点143℃、MFR2.0g/10分)20重量部としたほかは実施例1と同様に粉末状ポリオレフィン系樹脂組成物及びその溶融成形加熱発泡体を得た。該組成物及び発泡体の評価結果を表1に示す。110℃でプレスシートを作製したところ若干シートにムラが観測されたが発泡体に加工するには問題なく、いずれの評価項目においても合格であった。
【0048】
[実施例6]
ポリオレフィン系樹脂(A)としてエチレン−酢酸ビニル共重合体(融点76℃、MFR4.0g/10分)60重量部、ポリオレフィン系樹脂(B)としてポリプロピレン樹脂(融点166℃、MFR3.1g/10分)40重量部としたほかは実施例1と同様に粉末状ポリオレフィン系樹脂組成物及びその溶融成形加熱発泡体を得た。該組成物及び発泡体の評価結果を表1に示す。組成物に一部気泡の混入が、溶融成形時に若干の粉落ち、加熱発泡体内部に一部粗大気泡が認められたが発泡体基本性能を害するものではなく、いずれの評価項目においても合格であった。
【0049】
[実施例7]
ポリオレフィン系樹脂(E)を60重量部配合したほかは実施例1と同様にポリオレフィン系樹脂組成物及びその溶融成形加熱発泡体を得た。得られた発泡体の発泡倍率、気泡状態、耐熱温度などを評価した結果を表1に示す。融着成形時、樹脂の粉落ちも少なく作業性は良好であった。該溶融成形体を加熱発泡させたところ、発泡層に占める発泡体が少ないため、発泡による厚みが出ず、若干緩衝性に問題があったが、実用範囲内であった。
【0050】
[実施例8]
ポリオレフィン系樹脂(A)として低密度ポリエチレン樹脂(融点106℃、MFR8.0g/10分)60重量部、ポリオレフィン系樹脂(B)として低密度ポリエチレン樹脂(融点111℃、MFR8.0g/10分)40重量部としたほかは実施例1と同様に粉末状ポリオレフィン系樹脂組成物及びその溶融成形加熱発泡体を得た。該組成物及び発泡体の評価結果を表1に示す。耐熱性は実用温度レベルであるがいずれの評価項目においても合格であった。
【0051】
[比較例1]
ポリオレフィン系樹脂(B)を加えず、ポリオレフィン系樹脂(A)としてエチレン−酢酸ビニル共重合体(融点76℃、MFR4.0g/10分)100重量部としたほかは実施例1と同様にポリオレフィン系樹脂組成物を作製し、溶融成形後、加熱発泡により発泡体を得た。得られた加熱発泡体の発泡倍率、気泡状態、耐熱温度などを評価した結果を表2に示す。溶融成形の作業性については融着の量も多く、得られた加熱発泡体の厚みもあり外観も良好であったが、該発泡体の耐熱温度が80℃未満であり不合格であった。
【0052】
[比較例2]
ポリオレフィン系樹脂(A)として直鎖状低密度ポリエチレン(融点127℃、MFR3.0g/10分)60重量部、ポリオレフィン系樹脂(B)としてエチレン−プロピレンランダム共重合体(融点143℃、MFR2.0g/10分)40重量部、熱分解型化学発泡剤(C)としてアゾジカルボンアミド(分解開始温度124℃、分解ピーク温度138℃)10重量部をTma以上の温度で混練したほかは実施例1と同様に粉末状のポリオレフィン系樹脂架橋組成物(D)を作製した。樹脂(A)の融点(Tma)が熱分解型化学発泡剤(C)の分解開始温度よりも高く、混練温度を樹脂が混練可能な溶融状態となる130℃に上昇したところ、顕著な該発泡剤(C)の分解が認められた。この結果該組成物(D)は得られなかった。
【0053】
[比較例3]
粉末状にしたポリオレフィン樹脂(E)を配合しないとしたほかは実施例1と同様にポリオレフィン系樹脂組成物及びその溶融成形加熱発泡体を得た。得られた発泡体の発泡倍率、気泡状態、耐熱温度などを評価した結果を表2に示す。融着成形時に粉末状樹脂組成物の未融着樹脂の粉落ちが多くかつ粉切れが悪く、作業性に問題があった。そして得られた発泡体の厚さが充分である加熱発泡体が得られなかった。
【0054】
以上述べたように、実施例に示した本発明による組成物とその溶融成形加熱加工発泡体は、特定範囲の融点を有するポリオレフィン系樹脂を、限られた混合比率で混合し、特定範囲の分解挙動を示す熱分解型化学発泡剤を溶融混練し、架橋させ、該発泡能力を有する樹脂架橋組成物を粉末状とし、さらに粉末状のポリオレフィン系樹脂を混合し、特定形状に加工した該組成物を特定範囲温度で得た加熱発泡体は、溶融成形時の作業性が良く、形状の整った外観を有し、高い耐熱性が得られる、再溶融加工によるリサイクル性を有するものである。
【0055】
以上の実施例および比較例をまとめたのが次の表1〜2である。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【発明の効果】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物によると、発泡性、耐熱性、リサイクル性などの特性を有し、得られる発泡体内部に存在する気泡が均一な発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂組成物が得られる。また、本発明の製造方法によると、加熱した型に熱可塑性樹脂組成物を加え溶融成形し、加熱発泡することで発泡層を含む構造体とするとき、発泡体内部に存在する気泡が均一で高倍率発泡体とすることができるポリオレフィン系樹脂組成物を提供する。
Claims (7)
- 少なくとも熱分解型化学発泡剤の分解開始温度未満の結晶融解ピーク(融点Tma)を有するポリオレフィン系樹脂(A)と100℃以上の結晶融解ピーク(融点Tmb)を有するポリオレフィン系樹脂(B)および熱分解型化学発泡剤(C)を含み、その外観形状が粉末状である架橋構造を導入された発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂架橋組成物(D)と、粉末状ポリオレフィン系樹脂(E)を混合してなることを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物。
- 発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂架橋組成物(D)に含有されるポリオレフィン系樹脂(A)の融点Tmaが50〜100℃、ポリオレフィン系樹脂(B)の融点Tmbが100〜170℃であることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
- 発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂架橋組成物(D)が98〜50重量部、粉末状ポリオレフィン系樹脂(E)が2〜50重量部の混合比であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
- 発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂架橋組成物(D)の架橋度が5〜80%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
- 熱分解型化学発泡剤(C)の添加量が、ポリオレフィン系樹脂組成物を発泡させて得られる発泡体の発泡倍率が5〜20倍となるように調整されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
- 他素材との多層積層構造体とするために、加熱加工により発泡体とされることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
- 熱分解型化学発泡剤の分解開始温度未満の結晶融解ピーク(融点Tma)を有するポリオレフィン系樹脂(A)と、100℃以上の結晶融解ピーク(融点Tmb)を有するポリオレフィン系樹脂(B)および熱分解型化学発泡剤(C)を、Tma以上かつ該化学発泡剤(C)の分解開始温度未満の温度で溶融混練した後、粉末状に粉砕加工した架橋構造を導入された発泡能力を有する樹脂架橋組成物(D)に、粉末状のポリオレフィン系樹脂(E)を混合することを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法。
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JP2009523848A (ja) * | 2005-08-08 | 2009-06-25 | セキスイ アルヴェオ アーゲー | 高耐熱性を有する軟質ポリオレフィン |
-
2002
- 2002-06-24 JP JP2002182885A patent/JP2004026937A/ja active Pending
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