JP2663559B2 - 放射線架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体およびその製造方法 - Google Patents

放射線架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体およびその製造方法

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【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、放射線架橋されたエチレン−プロピレン共
重合体とポリエチレン樹脂とのブレンドポリマーからな
る発泡体に係り、特に、この発泡体に表皮材を張り合わ
せて複合素材とし、これを成形加工する際の成形性や、
気泡構造の均一性に優れた放射線架橋ポリオレフィン系
樹脂発泡体に関する。
[従来の技術] 従来、各種のポリオレフィン系樹脂からなる発泡体か
ら工業的に広く製造、販売され、例えば車両用内装材な
どの多くの用途に使用されている。
ポリプロピレン樹脂は、機械的強度、耐熱性さらには
成形性において優れているため、この種の発泡体用樹脂
として広く使用されているが、低温脆化性に劣り、0℃
付近で成形品に割れを生じることがある。
そこで、ガラス転移温度の低いポリエチレン樹脂をポ
リプロピレン樹脂に混合し、これを放射線架橋して得ら
れたブレンドポリマーから発泡体を作成することによっ
て、低温において成形品に割れが生じないようにしてい
る。
[発明が解決しようとする問題点] しかし、上述したような2種類(ポリプロピレン樹脂
とポリエチレン樹脂)の樹脂を混合して発泡体を製造し
た場合、前記両樹脂の橋カケ反応性に大きな差がある
と、次のような問題点を引き起こす。以下、第2図を参
照して説明する。
第2図は、ポリプロピレン樹脂(PP)とポリエチレン
樹脂(PE)の橋カケ特性の一例を示している。
図中、実線で示したような橋カケ特性をもつポリプロ
ピレン樹脂を発泡させる上で、最適なゲル分率がG0であ
り、このゲル分率G0を得るのに必要な放射線エネルギー
がE0であるとする。
このようなポリプロピレン樹脂に、破線PE1で示した
ように、ポリプロピレン樹脂の橋カケ特性に対して大き
な差のあるポリエチレン樹脂を混合したものに、上記の
放射線エネルギーE0を与えても、このポリエチレン樹脂
はほとんど架橋されないことがわかる。このような状態
で架橋されたポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂と
の混合物を発泡させた場合、ポリエチレン樹脂はほとん
ど架橋されていないので、発泡工程で粘度が著しく低下
し、ブレンドポリマー内で発生した気泡がポリエチレン
樹脂部分に集まって、その部分にボイドが発生するとい
う不都合を生じる。
逆に、破線PE2で示したような橋カケ特性をもつポリ
エチレン樹脂をポリプロピレン樹脂に混合したものに、
放射線エネルギーE0を照射すると、ポリエチレン樹脂が
ほとんど架橋されてしまうから、このようなブレンドポ
リマーから得られた発泡体は伸び特性が悪く、真空成形
などを施すと樹脂割れなどを引き起こすという問題を生
じる。
本発明は、このような従来例の問題点を解決するため
になされたものであって、気泡構造が均一でボイドの発
生がなく、成形加工性に優れた放射線架橋ポリオレフィ
ン系樹脂発泡体を提供することを目的としている。
[問題点を解決するための手段] 本発明は、このような問題点を解決するために次のよ
うな手段を採用するものである。
すなわち、本発明に係る放射線架橋ポリオレフィン系
樹脂発泡体は、ゲル分率が10〜70%の範囲内であるエチ
レン−プロピレン共重合体と、前記エチレン−プロピレ
ン共重合体とのゲル分率の差が−8〜+8%の範囲内に
あるポリエチレン樹脂とのブレンドポリマーからなり、
見掛密度が0.025〜0.100g/cc、ゲル分率が10〜70%であ
ることを特徴としている。
エチレン−プロピレン共重合体としては、エチレン
が、ブロック、ランダム、ランダム−ブロック状にプロ
ピレンに共重合された樹脂が例示される。特に、ランダ
ムの場合、エチレンは0.5〜15重量%、ブロックあるい
はブロック−ランダムの場合、エチレン0.5〜30重量%
の範囲内にそれぞれ設定するのが好ましい。
放射線架橋されたブレンドポリマー中のエチレン−プ
ロピレン共重合体のゲル分率は、10〜70%の範囲内、好
ましくは25〜50%の範囲内に設定される。ゲル分率が10
%未満であると、発泡時にガス抜けを起こし、発泡倍率
が上がりにくい。また、ゲル分率が70%を超えると、発
泡体の伸び特性が低下し、成形することが困難になる。
エチレン−プロピレン共重合体に混合されるポリエチ
レン樹脂としては、密度0.895〜0.955g/ccの低,中,高
密度ポリエチレン樹脂と炭素原子数が4以上のα−オレ
フィンとが共重合された直鎖状のポリエチレン樹脂、ま
たはアクリル酸アルキルエステル、酢酸ビニル、無水マ
レイン酸などが共重合された変性ポリエチレン樹脂が例
示される。
第1図に示すように、エチレン−プロピレン共重合体
(EPC)に混合されるポリエチレン樹脂は、その混合物
が放射線架橋された際に、前記エチレン−プロピレン共
重合体のゲル分率との差が−8〜+8%の範囲内にある
ことが必要であり、好ましくは−5〜+5%の範囲内に
入るものが使用される。第1図中のPE1,PE2は、使用可
能なポリエチレン樹脂の下限および上限の橋カケ特性を
それぞれ示している。
ポリエチレン樹脂のゲル分率が、エチレン−プロピレ
ン共重合体のゲル分率よりも8%を超えて小さい場合
(第1図中、PE1よりも右側に位置する橋カケ特性であ
る場合)、このブレンドポリマーを発泡させた際に、ポ
リエチレン樹脂の架橋の程度がエチレン−プロピレン共
重合体に比較して少ないから、ポリエチレン樹脂部分の
粘度が下がり、その部分に発泡ガスが集中してボイドが
発生し、発泡体中の気泡構造が不均一になる。
一方、ポリエチレン樹脂のゲル分率が、エチレン−プ
ロピレン共重合体のゲル分率よりも8%を超えて大きい
場合(第1図中、PE2よりも左側に位置する橋カケ特性
である場合)、ポリエチレン樹脂の橋カケがエチレン−
プロピレン共重合体よりも相当進むから、エチレン−プ
ロピレン共重合体部分に気泡が集中するとともに、発泡
体の伸び特性が悪くなって成形が困難になる。
発泡剤としては、常温で固体の化合物であり、ポリオ
レフィン系樹脂の溶融点以上に加熱されたときに分解す
る化合物であり、シート化や架橋反応を実質的に妨害し
ないものであることが必要であり、分解温度が180〜240
℃の範囲の熱分解型発泡剤が好ましい。このような熱分
解発泡剤として、アゾジカルボンアミド、アロファン酸
セミカルバジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン
などが例示される。これらの発泡剤は、ポリオレフィン
系樹脂に対して0.1〜40重量%の範囲で使用され、それ
ぞれの種類や見掛密度によって任意に混合量を変えるこ
とができる。
上記エチレン−プロピレン共重合体およびポリエチレ
ン樹脂の他に、架橋助剤として、不飽和結合を2個以上
有する他官能性ポリマー、例えばジビニルベンゼン、ジ
アリルフタレート、トリカルボン酸アリルエステルなど
が配合される。さらに、これら以外に、滑剤、酸化防止
剤、紫外線吸収剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤その他
の添加物を適宜に配合することも可能である。
エチレン−プロピレン共重合体とポリエチレン樹脂な
どの混合には、例えば、ヘンシェルミキサ、バンバリミ
キサ、ミキシングロールによる混合、混練押出機による
混合方法などがある。特に粉末状樹脂の場合は、ヘンシ
ェルミキサによる粉末混合が便利である。粉末混合は通
常室温から樹脂の軟化温度の間で行われ、溶融混合は、
通常、樹脂の溶融温度から195℃の範囲で行われる。連
続シート状の発泡体を製造する場合は、発泡剤の分解温
度以下で押出成形によりシート状に成形しておくことが
望ましい。
上述のようにシート状に成形された樹脂混合物は放射
線によって架橋される。具体的には、高エネルギー線と
してα,β、γ、X線、電子線、中性子線などが例示さ
れ、通常は、高エネルギー電子線照射機を使用し、例え
ば1〜50Mradの線量の電子線をシート状の樹脂混合物に
照射されることにより架橋される。このようにして架橋
されたブレンドポリマーは、熱風雰囲気中またはソルト
浴上で加熱され、成形品内部に含有される発泡剤を急激
に分解させることによって発泡体に変換される。
発泡体の見掛密度は、0.025〜0.100g/ccの範囲内に、
好ましくは0.040〜0.056g/ccの範囲内に設定される。発
泡体の見掛密度が0.025g/cc未満になると、発泡体の強
度が低下し、成形時に破断しやすくなり、見掛密度が0.
100g/ccを超えると、発泡体のクッション性が失われ
る。
また、発泡体のゲル分率は10〜70%、好ましくは25〜
50%の範囲に設定される。ゲル分率が10%未満では、発
泡倍率が低すぎてクッション性に欠け、また、ゲル分率
が70%を超えると、発泡体の伸び特性が低下し、成形す
ることが困難になる。
このようにして得られた発泡体は、その少なくとも1
面にコロナ放電処理、コーティングなどにより接着剤を
付与し、ラミネート加工し、その加工性の向上を図るこ
とができるし、プラスチックフィルムやシート、他の発
泡体シートや金属箔を貼り合わせたり、押出ラミネート
などにより複合構造を付与したりするなど、各種の加工
技術を施すことができる。
なお、発泡体のゲル分率やエチレン−プロピレン共重
合体とポリエチレン樹脂の各ゲル分率は、次のようにし
て測定することができる。
まず、発泡体を1mm角に裁断し、これを試料として精
秤して、その重量をA(g)とする。この試料を、熱テ
トラリン(135℃/5Hr)を用いて処理しゲル分を濾過分
離する。熱テトラリン中のゾル分は非溶媒(例えば、ア
セトン)を用いて結晶化させる。このようにして分離さ
れたゲル分を精秤し、その重量をB(g)とすると、発
泡体のゲル分率GFは次式から求められる。
GF(%)=(B/A)×100 … さらに、分離されたゲル分中のエチレン−プロピレン
共重合体(GEPC)とポリエチレン樹脂量(GpE)とを、
示差走査熱量計(DSC)によって計測されたポリプロピ
レン樹脂とポリエチレン樹脂の吸熱量から検量線を用い
てそれぞれ求める。同様に、ゾル分中のエチレン−プロ
ピレン共重合体(SEPC)とポリエチレン樹脂量(SpE
とを求める。
以上の測定結果より、発泡体中のエチレン−プロピレ
ン共重合体のゲル分率GF-EPCは次式により求められ
る。
GF-EPC={GEPC/(GEPC+SEPC)}×100 … また、発泡体中のポリエチレン樹脂のゲル分率GF-PE
は次式により求められる。
GF-PE={GpE/(GpE+SpE)}×100 … このようにして求められたポリエチレン樹脂のゲル分
率GF-PEは、エチレン−プロピレン共重合体のゲル分率
に対して、GF-EPC−8〜GF-EPC+8%の範囲内に入って
いることが必要である。
[実施例] 以下、本発明の実施例を説明する。
実施例1〜4 エチレンが5重量%共重合しているエチレン−プロピ
レン共重合体(EPC)と、高圧法低密度ポリエチレン樹
脂(PE)(メルトインデックスMI:7.0、密度:0.921g/c
c)を各々80/20%、50/50%の割合で均一に混合したも
の100重量部に、発泡剤としてアゾジカルボンアミド13
重量部、橋カケ助剤としてジビニルベンゼンを3重量部
およびフェノール系/燐系安定剤を各々0.1重量部均一
に混合して発泡性混合物とした。なお、上記エチレン−
プロピレン共重合体としては、ジビニルベンゼン存在下
で、ゲル分率が25%、45%のものを、ポリエチレン樹脂
としては、ジビニルベンゼン存在下で、ゲル分率が21
%、41%のものを使用した。
上記混合物を押出機で厚み1.4mmのシートに成形し
た。このシートに、発泡体のゲル分率が約25%、45%に
なるように電離性放射線を照射した後、230℃に加熱さ
れた塩浴炉で発泡させた。
このようにして得られた各発泡体は、第1表に示すと
おり、平均気泡径が350μm前後で均一な気泡構造のも
のであった。
比較例1〜4 比較のために、高圧法低密度ポリエチレン樹脂とし
て、MI3.7、密度0.923g/ccのものを使用し、実施例と同
じ方法で発泡体を作成した。比較例において、エチレン
−プロピレン共重合体としては、ジビニルベンゼン存在
下で、ゲル分率が25%、45%のものを、ポリエチレン樹
脂としては、ジビニルベンゼン存在下で、ゲル分率が36
%、58%のものを使用した。
比較例の発泡体は、第1表に示すとおり、気泡構造が
不均一で巣状態を呈し、更にゲル分率の大きい条件では
ガマ(大ボイド)状態になり、良好な発泡体は得られな
かった。
実施例5,6 エチレンが9重量%共重合されているエチレン−プロ
ピレン共重合体と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(MI:
2.0、密度:0.915g/cc)を各々70/30%、50/50%の混合
比率で均一に混合したもの100重量部に、発泡剤として
アゾジカルボンアミド15重量部、橋カケ助剤としてジビ
ニルベンゼン3重量部およびフェノール系/燐系安定剤
を各々0.3重量部を均一に混合し、押出機で厚み2.4mmの
シートを作成した。このシートのゲル分率が約35%にな
るように電離性放射線を照射した後、225℃に加熱され
た塩浴炉で発泡させた。なお、本実施例において、エチ
レン−プロピレン共重合体としては、ジビニルベンゼン
存在下で、ゲル分率が35%のものを、ポリエチレン樹脂
としては、ジビニルベンゼン存在下で、ゲル分率が32%
のものを、それぞれ使用した。
このようにして得られた発泡体は、第2表に示すとお
り、気泡構造が均一で真空成形性に優れたものであっ
た。
比較例5,6 比較のために、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とし
て、MI:8.0、密度:0.935g/ccのものを使用し、実施例と
同じ方法で発泡体を作成した。本比較例において、エチ
レン−プロピレン共重合体としては、ジビニルベンゼン
存在下で、ゲル分率が35%のものを、ポリエチレン樹脂
としては、ジビニルベンゼン存在下で、ゲル分率が19%
のものを使用した。
このようにして得られた発泡体は、第2表に示すとお
り、実施例品と比較して気泡構造が不均一で真空成形性
の悪いものであった。
なお、上述の実施例1〜6の各評価において、平均気
泡径は、走査型電子顕微鏡(SEM)装置により、発泡体
の断面を20倍に拡大し、一定長さLの範囲に存在する気
泡の個数Nを係数し、L/Nによって算出した。なお、前
記一定長さLは、気泡が少なくとも30個存在するような
長さに設定した。
また、真空成形性の評価は、直径50mm(D)、深さを
可変数(L)にした円筒状のカップで、発泡体温度を14
0〜150℃に加熱し真空成形し、発泡体が破壊した限界値
(L/D)を表したものである。
[発明の効果] 以上の説明から明らかなように、本発明に係る放射線
架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、ゲル分率が互いに
近似したエチレン−プロピレン共重合体とポリエチレン
樹脂とのブレンドポリマーを使用しているから、発泡工
程において両樹脂の粘度が同程度になる。したがって、
本発明によれば、発泡処理の際に樹脂内で発生したガス
が偏らないので、気泡構造が均一化し、ボイドがなく、
成形加工性に優れた発泡体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明に係る放射線架橋ポリオレフィン系樹脂
発泡体に使用されるエチレン−プロピレン共重合体とポ
リエチレン樹脂の橋カケ特性図、第2図は従来例の問題
点の説明に供するポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹
脂の橋カケ特性図である。 EPC……エチレン−プロピレン共重合体の橋カケ特性、P
E1,PE2……ポリエチレン樹脂の橋カケ特性

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ゲル分率が10〜70%の範囲内であるエチレ
    ン−プロピレン共重合体と、前記エチレン−プロピレン
    共重合体とのゲル分率の差が−8〜+8%の範囲内にあ
    るポリエチレン樹脂とのブレンドポリマーからなり、見
    掛密度が0.025〜0.100g/cc、ゲル分率が10〜70%である
    放射線架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
  2. 【請求項2】該エチレン−プロピレン共重合体のエチレ
    ンの比率が1〜15重量%であり、かつ、該ポリエチレン
    樹脂が炭素数4以上のα−オレフィンが共重合した直鎖
    状ポリエチレン樹脂で有ることを特徴とする請求項1記
    載の放射線架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
  3. 【請求項3】ゲル分率が10〜70%の範囲内であるエチレ
    ン−プロピレン共重合体と、前記エチレン−プロピレン
    共重合体とのゲル分率の差が−8〜+8%の範囲内にあ
    るポリエチレン樹脂とのブレンドポリマーからなり、見
    掛密度が0.025〜0.100g/cc、ゲル分率が10〜70%である
    放射線架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を製造するに際
    して、混合する前の単独のポリマーについて、混合して
    架橋する際に用いる架橋剤と同じ架橋剤で単独で架橋さ
    せてゲル分率を測定し、ゲル分率の差が−8〜+8%の
    範囲内にあることを確認したのち、混合して架橋させる
    放射線架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法。
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