JP2004020198A - 回転体の回転位置検出装置及び回転体の制御装置 - Google Patents
回転体の回転位置検出装置及び回転体の制御装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004020198A JP2004020198A JP2002171184A JP2002171184A JP2004020198A JP 2004020198 A JP2004020198 A JP 2004020198A JP 2002171184 A JP2002171184 A JP 2002171184A JP 2002171184 A JP2002171184 A JP 2002171184A JP 2004020198 A JP2004020198 A JP 2004020198A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- generating means
- rotational position
- signal
- data group
- coarse
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Transmission And Conversion Of Sensor Element Output (AREA)
- Control Of Motors That Do Not Use Commutators (AREA)
Abstract
【課題】回転位置信号発生手段の1つに故障が生じている場合においても、粗位置(従って精位置)が不正確にならないようにする。
【解決手段】比較的大きな角度間隔で信号レベルが切換わる回転位置信号を出力する回転位置信号発生手段(5a〜5c)を回転体(1a)の周りに等間隔で複数備え、1の回転位置信号発生手段を除く、残りの回転位置発生手段の信号レベルの組合せから回転体の粗位置を求め得る第1のデータ群と、回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたときに、故障が生じている一つの回転位置信号発生手段を除く、残りの回転位置信号発生手段の信号レベルの組合せから、前記第1のデータ群を用いて回転体の粗位置を演算する粗位置演算手段(14)と、この粗位置と回転体の回転角速度と直前の信号レベルの切換からの経過時間とから回転体の精位置を推定する精位置推定手段(17)とを備える。
【選択図】 図1
【解決手段】比較的大きな角度間隔で信号レベルが切換わる回転位置信号を出力する回転位置信号発生手段(5a〜5c)を回転体(1a)の周りに等間隔で複数備え、1の回転位置信号発生手段を除く、残りの回転位置発生手段の信号レベルの組合せから回転体の粗位置を求め得る第1のデータ群と、回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたときに、故障が生じている一つの回転位置信号発生手段を除く、残りの回転位置信号発生手段の信号レベルの組合せから、前記第1のデータ群を用いて回転体の粗位置を演算する粗位置演算手段(14)と、この粗位置と回転体の回転角速度と直前の信号レベルの切換からの経過時間とから回転体の精位置を推定する精位置推定手段(17)とを備える。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電動モータ等の回転体の回転位置を検出するための回転位置検出装置及び同検出装置を用いた回転体の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術と解決すべき課題】
回転体の回転位置を検出する装置として、比較的大きな角度間隔で信号レベルが切換わる回転位置信号を出力するセンサ(回転位置信号発生手段)を回転体の周りに等間隔で3個備え、これら3個のセンサの信号レベルの組み合わせからデータテーブルを参照して回転体の粗い精度の回転位置を求め、この粗い精度の回転位置と、回転体の回転角速度と、直前の信号レベルの切換からの経過時間とから、
細かい精度の回転位置=粗い精度の回転位置+回転角速度×経過時間…(1)
の式により細かい精度の回転位置を推定するようにした装置がある(特開平9−74790号公報参照)。
【0003】
ここで、上記(1)式右辺の粗い精度の回転位置を以下「粗位置」、上記(1)式左辺の細かい精度の回転位置を以下「精位置」という。
【0004】
このような従来装置では、3個のセンサの信号レベルの組合せから粗位置を求めるためのデータテーブルは、3個のセンサ総てが正常に働くことを前提としているため、1つしか用意していない。このため、3つあるセンサのうちの1つに故障が生じたときにも、全てのセンサが正常に働くことを前提として作成されているデータテーブルを用いたのでは、回転体の粗位置の演算が不正確となり、結果として精位置を正確に求めることができなくなる。
【0005】
従って、トルク指令発生手段からのトルク指令値と回転体の精位置とに基づいてステータに流す電流やステータに印加する電圧を決定するようにしているモータ制御装置では、この正確に求められていない精位置を用いても、モータ制御を精度良く行うことができない。
【0006】
そこで本発明では、回転位置信号発生手段の一つに故障が生じている場合に、故障が生じている回転位置信号発生手段の一つを除く、残りの回転位置信号発生手段の信号レベルの組合せから粗位置を求めるためのデータテーブルを追加して予め用意しておき、回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたかどうかを判定し、回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたときには、故障が生じている回転位置信号発生手段を除く、残りの回転位置信号発生手段の信号レベルの組合せから、追加してある粗位置を求めるためのデータテーブルを用いて回転体の粗位置を求めることにより、回転位置信号発生手段の1つに故障が生じている場合においても、粗位置(従って精位置)が不正確にならないようにすることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、比較的大きな角度間隔で信号レベルが切換わる回転位置信号を出力する回転位置信号発生手段を回転体の周りに等間隔で複数備え、1の回転位置信号発生手段を除く、残りの回転位置発生手段の信号レベルの組合せから回転体の粗位置を求め得る第1のデータ群と、回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたかどうかを判定する故障検出手段と、この検出結果より回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたときに、故障が生じている一つの回転位置信号発生手段を除く、残りの回転位置信号発生手段の信号レベルの組合せから、前記第1のデータ群を用いて回転体の粗位置を演算する粗位置演算手段と、この粗位置と回転体の回転角速度と直前の信号レベルの切換からの経過時間とから回転体の精位置を推定する精位置推定手段とを備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、比較的大きな角度間隔で信号レベルが切換わる回転位置信号を出力する回転位置信号発生手段を回転体の周りに等間隔で複数備え、1の回転位置信号発生手段を除く、残りの回転位置発生手段の信号レベルの組合せから回転体の粗位置を求め得る第1のデータ群と、全ての回転位置発生手段の信号レベルの組合せから回転体の粗位置を求め得る第2のデータ群と、回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたかどうかを検出する故障検出手段と、この検出結果より回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたときに、故障が生じている一つの回転位置信号発生手段を除く、残りの回転位置信号発生手段の信号レベルの組合せから前記第1のデータ群を用いて、また故障が生じてないときに全ての回転位置発生手段の信号レベルの組合せから前記第2のデータ群を用いて回転体の粗位置を演算する粗位置演算手段と、この粗位置と回転体の回転角速度と直前の信号レベルの切換からの経過時間とから回転体の精位置を推定する精位置推定手段とを備える。
【0009】
請求項5に記載の発明は、比較的大きな角度間隔で信号レベルが切換わる回転位置信号を出力する回転位置発生手段をロータの周りに等間隔で複数備え、1の回転位置信号発生手段を除く、残りの回転位置発生手段の信号レベルの組合せから粗位置を求め得る第1のデータ群と、回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたかどうかを検出する故障検出手段と、この検出結果より回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたときに、故障が生じている回転位置信号発生手段の一つを除く、残りの回転位置信号発生手段の信号レベルの組合せから、前記第1のデータ群を用いてロータの粗位置を演算する粗位置演算手段と、この粗位置とロータの回転角速度と直前の信号レベルの切換からの経過時間とからロータの精位置を推定する精位置推定手段と、外部からのトルク要求を受けてトルク指令値を発生させるトルク指令発生手段と、このトルク指令値と前記精位置とを受けて指令信号を作成する指令信号作成手段と、この指令信号を受けてステータに通電するインバータとを備える。
【0010】
請求項6に記載の発明は、比較的大きな角度間隔で信号レベルが切換わる回転位置信号を出力する回転位置信号発生手段をロータの周りに等間隔で複数備え、1の回転位置信号発生手段を除く、残りの回転位置発生手段の信号レベルの組合せからロータの粗位置を求め得る第1のデータ群と、全ての回転位置発生手段の信号レベルの組合せからロータの粗位置を求め得る第2のデータ群と、回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたかどうかを検出する故障検出手段と、この検出結果より回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたときに、故障が生じている回転位置信号発生手段の一つを除く、残りの回転位置信号発生手段の信号レベルの組合せから前記第1のデータ群を用いて、また故障が生じてないときに全ての回転位置発生手段の信号レベルの組合せから前記第2のデータ群を用いてロータの粗位置を演算する粗位置演算手段と、この粗位置とロータの回転角速度と直前の信号レベルの切換からの経過時間とからロータの精位置を推定する精位置推定手段と、外部からのトルク要求を受けてトルク指令値を発生させるトルク指令発生手段と、このトルク指令値と前記精位置とを受けて指令信号を作成する指令信号作成手段と、この指令信号を受けてステータに通電するインバータとを備える。
【0011】
【発明の効果】
請求項1、2に記載の発明によれば、1の回転位置信号発生手段を除く、残りの回転位置発生手段の信号レベルの組合せから回転体の粗位置を求め得る第1のデータ群を新たに追加して設けたので、回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたときに、故障が生じている一つの回転位置信号発生手段を除く、残りの回転位置信号発生手段の信号レベルの組合せから、前記第1のデータ群を用いて回転体の粗位置を演算することが可能となり、このため、このようにして求めた粗位置と回転体の回転角速度と直前の信号レベルの切換からの経過時間とから精位置を推定することにより、回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたときですら、回転体の1回転区間の総てにわたり、回転位置信号発生手段の総てに故障が生じていないときと同様の精位置特性が得られる。
【0012】
請求項5、6に記載の発明では、請求項1、2に記載の発明により得られる精位置をモータ制御に用いるので、回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたときですら、モータ制御を精度良く行うことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明による回転位置検出装置及び同検出装置を用いたモータ制御装置の一実施形態を示している。
【0014】
図において、同期モータ1は、ロータ1a(回転体)とステータ1bからなり、インバータ2によって制御されたバッテリ3の電力を受けて回転駆動される。なお、同期モータ1をジェネレータとして使用する場合は、発電された電力がインバータ2を介してバッテリ3に供給される。
【0015】
ロータ1aの周囲には回転位置信号発生手段として3つのホールICセンサ5a〜5cがロータ1aの周囲に等間隔で直接配設されている。なお、ロータ1aに検出プレートを取付け、この検出プレートの周囲にセンサ5a〜5cを配設した構成としてもよい。
【0016】
これらのセンサ5a〜5cは、図2上段に示したように比較的大きな角度間隔(180°間隔)で信号レベルがハイからローへと、あるいはその逆へと切換わる回転位置信号を出力する。3つのセンサのうち5aをU相センサ、5bをV相センサ、5cをW相センサとして区別すると、図2上段のようにU相センサの信号を基準にしたとき、V相センサの信号はこのU相センサの信号に対して120°、またW相センサの信号はU相センサの信号に対して240°それぞれ遅れる信号である。
【0017】
インバータ2へ指令信号(例えばPWM信号)を供給して同期モータ1の回転を制御するコントローラ10は、第1データ群としてのデータテーブル(1)〜データテーブル(3)と、第2データ群としてのデータテーブル(0)からなる4つのデータテーブル(図4参照)を記憶するデータテーブル記憶部11、センサ5a〜5cのいずれか一つに故障が生じているか否かを検出する故障検出部12(故障検出手段)、この故障検出部12からの検出結果を受けて、3つのセンサの総てに故障のないとき(正常時)には3つのセンサの信号レベルがいずれの組合せになっているのか、また3つのセンサのいずれか一つに故障があるときには、その故障の生じているセンサを除く、残り2つのセンサの信号レベルがいずれの組合せになっているのかを判定する組合せ判定部13、この組合せ判定部13の判定結果を受けてロータ1aの粗位置を演算する粗位置演算部14(粗位置演算手段)、同じく組合せ判定部13の判定結果を受けて直前の信号レベルの切換からの経過時間tを計測する経過時間計測部15、ロータ1aの回転角速度ωを演算する回転角速度演算部16、この回転角速度ω、経過時間t、粗位置を受けてロータ1aの精位置θを演算する精位置演算部17(精位置演算手段)、同期モータ1に対する外部からのトルク要求を受けてトルク指令を発生させるトルク指令発生部18(トルク指令発生手段)、トルク指令発生部11からのトルク指令と精位置演算部17からの精位置θを受けてインバータ2への指令信号を作成する指令信号作成部19(指令信号作成手段)とを備えている。
【0018】
次に、コントローラ10が実行する処理のうち精位置演算を図3に示した制御フローチャートに基づいて説明する。
【0019】
図3は所定時間毎に周期的に実行する。以下各ステップ(符号Sで示す)につき説明する。
【0020】
Slでは、3つのセンサからの信号を波形成形した信号Su、Sv、Swを読み込む。波形成形後の信号Su、Sv、Swの信号レベルは図2下段に示したように0または1の値である。
【0021】
S1ではまた、ロータ1aの回転角速度ω[°/s]を読み込む。これは、信号Su(あるいはSv、Sw)が、例えば0から1に変化するまでに要した時間[s]を測定し、信号Suの信号レベルが0から1に変化するまでの回転角度区間である180°をこの測定時間で除算することにより算出する。回転角速度は回転角速度センサをホールICセンサとは別に設けて実際に検出してもよい。
【0022】
S2では、故障検出フラグFを読み込む。この故障検出フラグFは図示しない故障判定ルーチンによって設定されるフラグであり、その値が0のとき正常であることを、その値が1のときU相センサ5a(第1の回転位置信号発生手段)の故障、その値が2のときV相センサ5b(第2の回転位置信号発生手段)の故障、その値が3のときW相センサ5c(第3の回転位置信号発生手段)の故障を表す。
【0023】
なお、センサの故障検出方法はどのような方法であっても良いが、例えばSvとSwの値が0→1→0と変化する間にSuの値が変化しなかった場合はU相センサの故障であると検出することができる。
【0024】
S3では、ロータ1aの回転角速度ωの絶対値が基準回転角速度ω0より大きいか否かを判断する。ロータ1aがある程度の角速度以上で回転していれば正確に精位置を推定できる。
【0025】
ロータ1aの回転角速度ωの絶対値が基準回転角速度ω0より大きい場合はS4へ進み、故障検出フラグFの値に応じたデータテーブル(図4のデータテーブル(0)〜データテーブル(3))から現在の信号Su、Sv、Swの組合せに対応する粗位置θa、θb[°]を読み込む。粗位置θa、θbは、信号Su、Sv、Swの組合せから判定できる回転区間の始点を示している。ただし、θa、θbの起点は、図5に示したようにU相センサから得られる信号Suが0から1へと切換わるタイミングである。また、θaは正転時の、θbは逆転時の粗位置である。
【0026】
3つのセンサが総て正常(故障検出フラグF=0)である場合、図4のデータテーブル(0)に示すように、信号Su、Sv、Swの組合せから6つの粗位置を知ることができる。具体的には正転時においてロータ1aの1回転区間である360°を6等分した値(0°、60°、120°、180°、240°、300°)である。
【0027】
しかしながら、何れか1つのセンサが故障した場合、判定可能な粗位置は4つへと減少する。
【0028】
S5では、ロータ1aの回転角速度ωが0より大きいか否か(正転か否か)を判断する。
【0029】
ロータ1aの回転角速度ωが0より大きい場合はS6へ進み、ロータ1aの回転角速度ωに経過時間tを乗算した値を正転時の粗位置θaに加算してロータ1aの精位置θを算出する。
【0030】
ここで、上記の経過時間tは信号Su、Sv、Swが現在の組合せになってから現在までの経過時間(直前の信号レベルの切換からの経過時間)である。ロータ1aの回転角速度ωが0以下の場合はS7へ進み、ロータ1aの回転角速度ωに経過時間tを乗算した値を逆転時の粗位置θbに加算してロータ1aの精位置θを算出する。
【0031】
S3でロータ1aの回転角速度ωの絶対値が基準回転角速度ω0以下と判断された場合はS8へ進み、故障検出フラグFが0であるか否か判断する。
【0032】
故障検出フラグFが0である場合はS9へ進み、データテーブル(0)から現在の信号Su、Sv、Swの組合せに対応する低速回転用の粗位置θcを読み込み、続くS10でこの低速回転用の粗位置θcをそのままロータ1aの精位置θとする。なお、低速回転用の粗位置θcは、信号Su、Sv、Swの組合せから判定できる粗位置θaの中央の回転位置を示している。ロータ1aの回転角速度が非常に小さい(あるいは停止している)場合、S6やS7で行うような精位置の推定演算を行ってもほとんど無意味なので、センサ正常時に得られる粗位置θaの中央値を使用している。
【0033】
S8で故障検出フラグFが0でないと判断された場合はS11へ進み、ステータ1bに印加する電圧と電流の関係もしくはインダクタンス等のパラメータを検出して現在の精位置を推定する(準精位置推定)。このような精位置の推定は非常に大きな誤差を含むものであるが、ロータ1aの回転角速度ωが小さいので大きな問題は生じない。また、故障検出フラグFが0でないときの粗位置の間隔は大きいところで120°もあり、この120°区間の中央値をロータの精位置として固定しても電流制御が行えないので、ここでは準精位置推定を用いるようにしている。
【0034】
ここで、本実施形態の回転位置検出装置の作用をロータ1aの正転時について図5を参照しながら説明すると、図5は簡単のためロータ1aは一定回転しているものとして、最上段に
(a)信号Su
の波形を、その下に、
(b)総てのセンサが正常である時のロータ1aの粗位置θa(実線参照)と精位置θ(一点鎖線参照)、
(c)U相センサ故障時のロータ1aの粗位置θa(実線参照)と精位置θ(一点鎖線参照)、
(d)V相センサ故障時のロータ1aの粗位置θa(実線参照)と精位置θ(一点鎖線参照)、
(e)W相センサ故障時のロータ1aの粗位置θa(実線参照)と精位置θ(一点鎖線参照)
の各波形を太線で示している。
【0035】
まず3つのセンサの総てに故障のないとき(正常時)には、データテーブル(0)が用いられるので、粗位置θaはステップ的に0°、60°、120°、180°、240°、300°と変化し、これに対して経過時間tは3つの信号Su、Sv、Swの信号レベルの組合せが切換わったタイミングより計測される。この経過時間tを回転角速度ωに乗算した値を粗位置θaに加算した値である精位置θは一点鎖線で示す直線となり、細かい精度の回転位置が得られる。なお、精位置θは正確には細かな階段状の値であるが、表現しきれないので直線で表している。
【0036】
このように、θaで粗位置を確定しておき、その後にその間をω・tを用いて補間した値であるθにより精度良く回転位置を求めることができている。
【0037】
このような回転位置検出によれば、回転位置信号発生手段を簡素化しつつ回転位置の検出精度を保つことができるという効果があり、さらに高速回転時に演算回数を減らして演算負荷を低減できるという効果もある。
【0038】
さて、U相センサの故障時を考える。このときにはデータテーブル(0)とは異なり、U相センサの故障により信頼性のない信号Suを除いた、残り2つの信号Sv、Swが用いられる。すなわち、このときにはデータテーブル(1)(1番目のデータ群)が用いられるので、回転位置が60°から360°までの区間において、粗位置θaがステップ的に300°、60°、120°、240°、300°と変化し、データテーブル(0)によればθaが180°である区間もデータテーブル(1)によれば120°となっている(第3段目の実線参照)。
【0039】
この場合、経過時間tは、信号レベルの組合せが切換わったタイミング(=粗位置が切換わったタイミング)からの経過時間であるため、データテーブル(0)によれば180°である区間においても、データテーブル(1)が用いられる限りリセットされることなく増え続ける。
【0040】
このため、回転位置が60°から360°までの区間においては、経過時間tを回転角速度ωに乗算した値を粗位置θaに加算した値である精位置θは一点鎖線で示す直線となる。すなわち、正常時と比較すれば分かるように、データテーブル(1)が用いられるときにも、回転位置が60°から360°までの区間においてデータテーブル(0)が用いられるときと同じ精位置θの特性が得られている(第3段目の一点鎖線参照)。
【0041】
これに対して、回転位置が0°から60°の区間においては、粗位置が300°であるため、これにω・tを加算して得られる精位置θは360°から420°までの値になってしまうので、この区間に限り精位置θを、
θ=0°+ω・t−360°=ω・t−360°…(2)
の式により算出することで、精位置を0°から60°までの値へとシフトすることができ、これによって回転位置が0°から60°の区間においてもデータテーブル(0)が用いられるときと同じ精位置θの特性が得られる(第3段目の一点鎖線参照)。実際には上記(2)式の演算は行っていない。制御上、sinθやcosθで扱う限り、360°を超える角度であっても、sinθやcosθの値は同じになるからである。
【0042】
次に、V相センサの故障時には、V相センサの故障により信頼性のない信号Svを除いた残り2つの信号Su、Swが用いられる。すなわち、このときにはデータテーブル(2)(2番目のデータ群)が用いられるので、粗位置θaがステップ的に0°、60°、180°、240°と変化し、データテーブル(0)によればθaが120°である区間もデータテーブル(2)によれば60°となり、またデータテーブル(0)によればθaが300°である区間もデータテーブル(2)によれば240°となる(第4段目の実線参照)。
【0043】
この場合、経過時間tは、信号レベルの組合せが切換わったタイミングからの経過時間であるため、データテーブル(0)によれば120°や300°である区間においても、データテーブル(2)が用いられる限りリセットされることなく増え続ける。
【0044】
このため、経過時間tを回転角速度ωに乗算した値を粗位置θaに加算した値である精位置θは一点鎖線で示す直線となる。すなわち、データテーブル(2)が用いられるときにも、0°から360°までのロータ1回転区間の総てにわたり、データテーブル(0)が用いられるときと同じ精位置θの特性が得られている(第4段目の一点鎖線参照)。
【0045】
W相センサの故障時には、W相センサの故障により信頼性のない信号Swを除いた残り2つの信号Su、Svが用いられる。すなわち、このときにはデータテーブル(3)(3番目のデータ群)が用いられるので、粗位置θaがステップ的に0°、120°、180°、300°と変化し、データテーブル(0)によればθaが60°や240°である区間もデータテーブル(3)によれば0°や180°となる(最下段の実線参照)。
【0046】
この場合、経過時間tは、信号レベルの組合せが切換わったタイミングからの経過時間であるため、データテーブル(0)によれば60°や240°である区間においても、データテーブル(3)が用いられる限りリセットされることなく増え続ける。
【0047】
このため、経過時間tを回転角速度ωに乗算した値を粗位置θaに加算した値である精位置θは一点鎖線で示す直線となり、データテーブル(3)が用いられるときにも、0°から360°までのロータ1回転区間の総てにわたり、データテーブル(0)が用いられるときと同じ精位置θの特性が得られている(最下段の一点鎖線参照)。
【0048】
次に、図6はロータ1aは一定回転で逆転しているものとして、最上段に
(a)信号Su
の波形を、その下に、
(b)総てのセンサが正常である時のロータ1aの粗位置θa(実線参照)と精位置θ(二点鎖線参照)、
(c)U相センサ故障時のロータ1aの粗位置θa(実線参照)と精位置θ(二点鎖線参照)、
(d)V相センサ故障時のロータ1aの粗位置θa(実線参照)と精位置θ(二点鎖線参照)、
(e)W相センサ故障時のロータ1aの粗位置θa(実線参照)と精位置θ(二点鎖線参照)
の各波形を太線で示している。
【0049】
図5では横軸に示す0°の位置を基準の位置として考えたが、図6では横軸に示す360°の位置を基準の位置として考える。
【0050】
まず3つのセンサの総てに故障のないとき(正常時)には、データテーブル(0)が用いられるので、粗位置θbはステップ的に360°、300°、240°、180°、120°、60°と変化し、これに対して経過時間tは3つの信号Su、Sv、Swの信号レベルの組合せが切換わったタイミングより計測される。この経過時間tを回転角速度ωに乗算した値を粗位置θbに加算した値である精位置θは二点鎖線で示す直線となり、細かい精度の回転位置が得られる。なお、図6においても精位置θは正確には細かな階段状の値であるが、表現しきれないので直線で表している。
【0051】
詳述すると、逆転時にはωが負の値であるため、ω=−5[°/s]であるとし、今仮に360°から300°の区間で考えると、この区間ではθbが360°であるから精位置θは、
θ=360°−5t…(3)
と表される。いまtがゼロであれば(3)式よりθ=360°となる。そして、tが増えるほど精位置θは360°から直線的に小さくなってゆく。粗位置θbが300°になる直前ではt=12[s]となるので、このときの精位置θを(4)式より計算してみるとθ=360°−5×12°=300°となる。従って、精位置θは360°より300°へと近づいて行くことがわかる。
【0052】
さて、U相センサの故障時を考える。このときにはデータテーブル(0)とは異なり、U相センサの故障により信頼性のない信号Suを除いた、残り2つの信号Sv、Swが用いられる。すなわち、このときにはデータテーブル(1)(1番目のデータ群)が用いられるので、回転位置が300°から0°までの区間において、粗位置θbがステップ的に300°、240°、120°、60°と変化し、データテーブル(0)によればθbが180°である区間もデータテーブル(1)によれば240°となっている(第3段目の実線参照)。
【0053】
この場合、経過時間tは、信号レベルの組合せが切換わったタイミング(=粗位置が切換わったタイミング)からの経過時間であるため、データテーブル(0)によれば180°である区間においても、データテーブル(1)が用いられる限りリセットされることなく増え続ける。
【0054】
このため、回転位置が300°から0°までの区間においては、経過時間tを回転角速度ωに乗算した値を粗位置θaに加算した値である精位置θは二点鎖線で示す直線となる。すなわち、正常時と比較すれば分かるように、データテーブル(1)が用いられるときにも、回転位置が300°から0°までの区間においてデータテーブル(0)が用いられるときと同じ精位置θの特性が得られている(第3段目の二点鎖線参照)。
【0055】
これに対して、回転位置が360°から300°の区間においては、粗位置が60°であるため、これにω・tを加算して得られる精位置θは60°から0°までの値になってしまうので、この区間に限り精位置θを、
θ=60°+ω・t+300°=360°+ω・t…(4)
の式により算出することで、精位置を360°から300°までの値へとシフトすることができ、これによって回転位置が360°から300°の区間においてもデータテーブル(0)が用いられるときと同じ精位置θの特性が得られる(第3段目の二点鎖線参照)。実際には上記(2)式の演算は行っていない。制御上、sinθやcosθで扱う限り、sinθやcosθの値は同じになるからである。
【0056】
次に、V相センサの故障時には、V相センサの故障により信頼性のない信号Svを除いた残り2つの信号Su、Swが用いられる。すなわち、このときにはデータテーブル(2)(2番目のデータ群)が用いられるので、粗位置θbがステップ的に360°、240°、180°、60°と変化し、データテーブル(0)によればθbが300°である区間もデータテーブル(2)によれば360°となり、またデータテーブル(0)によればθbが120°である区間もデータテーブル(2)によれば180°となる(第4段目の実線参照)。
【0057】
この場合、経過時間tは、信号レベルの組合せが切換わったタイミングからの経過時間であるため、データテーブル(0)によれば300°や120°である区間においても、データテーブル(2)が用いられる限りリセットされることなく増え続ける。
【0058】
このため、経過時間tを回転角速度ωに乗算した値を粗位置θbに加算した値である精位置θは二点鎖線で示す直線となる。すなわち、データテーブル(2)が用いられるときにも、360°から0°までのロータ1回転区間の総てにわたり、データテーブル(0)が用いられるときと同じ精位置θの特性が得られている(第4段目の二点鎖線参照)。
【0059】
W相センサの故障時には、W相センサの故障により信頼性のない信号Swを除いた残り2つの信号Su、Svが用いられる。すなわち、このときにはデータテーブル(3)(3番目のデータ群)が用いられるので、粗位置θbがステップ的に360°、300°、180°、120°と変化し、データテーブル(0)によればθaが240°や60°である区間もデータテーブル(3)によれば300°や120°となる(最下段の実線参照)。
【0060】
この場合、経過時間tは、信号レベルの組合せが切換わったタイミングからの経過時間であるため、データテーブル(0)によれば240°や60°である区間においても、データテーブル(3)が用いられる限りリセットされることなく増え続ける。
【0061】
このため、経過時間tを回転角速度ωに乗算した値を粗位置θbに加算した値である精位置θは二点鎖線で示す直線となり、データテーブル(3)が用いられるときにも、360°から0°までのロータ1回転区間の総てにわたり、データテーブル(0)が用いられるときと同じ精位置θの特性が得られている(最下段の二点鎖線参照)。
【0062】
このように、本実施形態(請求項1、2に記載の発明)によれば、1のセンサ(回転位置信号発生手段)を除く、残りのセンサの信号レベルの組合せから回転体の粗位置を求め得るデータテーブル(1)〜データテーブル(3)(第1のデータ群)を、新たに追加して設けたので、センサの一つに故障が生じたときに、故障が生じている一つのセンサを除く、残り2つのセンサの信号レベルの組合せから、前記データテーブル(1)〜データテーブル(3)を用いてロータ(回転体)の粗位置θa、θbを演算することが可能となり、このため、このようにして求めた粗位置とロータの回転角速度ωと直前の信号レベルの切換からの経過時間tとから精位置θを推定することにより、センサの一つに故障が生じたときですら、ロータの1回転区間の総てにわたり、センサの総てに故障が生じていないときと同様の精位置特性が得られる。
【0063】
また、本実施形態(請求項5、6に記載の発明)では、このようにして得られる精位置θをモータ制御に用いるので、センサの一つに故障が生じたときですら、モータ制御を精度良く行うことができる。
【0064】
実施形態では、センサが3つの場合で説明したが、この数に限定されるものでない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の概略構成図。
【図2】実施形態におけるホールICセンサの出力特性図。
【図3】実施形態における粗位置演算を説明するためのフローチャート。
【図4】データテーブル(0)〜データテーブル(3)の内容を示す表図。
【図5】実施形態の正転時の作用を説明するための波形図。
【図6】実施形態の逆転時の作用を説明するための波形図。
【符号の説明】
1 同期モータ
1a ロータ(回転体)
1b ステータ
2 インバータ
5a ホールICセンサ(第1の回転位置信号発生手段)
5b ホールICセンサ(第2の回転位置信号発生手段)
5c ホールICセンサ(第3の回転位置信号発生手段)
10 コントローラ
11 データテーブル記憶部
12 故障検出部(故障検出手段)
14 粗位置演算部(粗位置演算手段)
17 精位置演算部(精位置演算手段)
18 トルク指令発生部(トルク指令発生手段)
19 指令信号作成部(指令信号作成手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は電動モータ等の回転体の回転位置を検出するための回転位置検出装置及び同検出装置を用いた回転体の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術と解決すべき課題】
回転体の回転位置を検出する装置として、比較的大きな角度間隔で信号レベルが切換わる回転位置信号を出力するセンサ(回転位置信号発生手段)を回転体の周りに等間隔で3個備え、これら3個のセンサの信号レベルの組み合わせからデータテーブルを参照して回転体の粗い精度の回転位置を求め、この粗い精度の回転位置と、回転体の回転角速度と、直前の信号レベルの切換からの経過時間とから、
細かい精度の回転位置=粗い精度の回転位置+回転角速度×経過時間…(1)
の式により細かい精度の回転位置を推定するようにした装置がある(特開平9−74790号公報参照)。
【0003】
ここで、上記(1)式右辺の粗い精度の回転位置を以下「粗位置」、上記(1)式左辺の細かい精度の回転位置を以下「精位置」という。
【0004】
このような従来装置では、3個のセンサの信号レベルの組合せから粗位置を求めるためのデータテーブルは、3個のセンサ総てが正常に働くことを前提としているため、1つしか用意していない。このため、3つあるセンサのうちの1つに故障が生じたときにも、全てのセンサが正常に働くことを前提として作成されているデータテーブルを用いたのでは、回転体の粗位置の演算が不正確となり、結果として精位置を正確に求めることができなくなる。
【0005】
従って、トルク指令発生手段からのトルク指令値と回転体の精位置とに基づいてステータに流す電流やステータに印加する電圧を決定するようにしているモータ制御装置では、この正確に求められていない精位置を用いても、モータ制御を精度良く行うことができない。
【0006】
そこで本発明では、回転位置信号発生手段の一つに故障が生じている場合に、故障が生じている回転位置信号発生手段の一つを除く、残りの回転位置信号発生手段の信号レベルの組合せから粗位置を求めるためのデータテーブルを追加して予め用意しておき、回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたかどうかを判定し、回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたときには、故障が生じている回転位置信号発生手段を除く、残りの回転位置信号発生手段の信号レベルの組合せから、追加してある粗位置を求めるためのデータテーブルを用いて回転体の粗位置を求めることにより、回転位置信号発生手段の1つに故障が生じている場合においても、粗位置(従って精位置)が不正確にならないようにすることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、比較的大きな角度間隔で信号レベルが切換わる回転位置信号を出力する回転位置信号発生手段を回転体の周りに等間隔で複数備え、1の回転位置信号発生手段を除く、残りの回転位置発生手段の信号レベルの組合せから回転体の粗位置を求め得る第1のデータ群と、回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたかどうかを判定する故障検出手段と、この検出結果より回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたときに、故障が生じている一つの回転位置信号発生手段を除く、残りの回転位置信号発生手段の信号レベルの組合せから、前記第1のデータ群を用いて回転体の粗位置を演算する粗位置演算手段と、この粗位置と回転体の回転角速度と直前の信号レベルの切換からの経過時間とから回転体の精位置を推定する精位置推定手段とを備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、比較的大きな角度間隔で信号レベルが切換わる回転位置信号を出力する回転位置信号発生手段を回転体の周りに等間隔で複数備え、1の回転位置信号発生手段を除く、残りの回転位置発生手段の信号レベルの組合せから回転体の粗位置を求め得る第1のデータ群と、全ての回転位置発生手段の信号レベルの組合せから回転体の粗位置を求め得る第2のデータ群と、回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたかどうかを検出する故障検出手段と、この検出結果より回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたときに、故障が生じている一つの回転位置信号発生手段を除く、残りの回転位置信号発生手段の信号レベルの組合せから前記第1のデータ群を用いて、また故障が生じてないときに全ての回転位置発生手段の信号レベルの組合せから前記第2のデータ群を用いて回転体の粗位置を演算する粗位置演算手段と、この粗位置と回転体の回転角速度と直前の信号レベルの切換からの経過時間とから回転体の精位置を推定する精位置推定手段とを備える。
【0009】
請求項5に記載の発明は、比較的大きな角度間隔で信号レベルが切換わる回転位置信号を出力する回転位置発生手段をロータの周りに等間隔で複数備え、1の回転位置信号発生手段を除く、残りの回転位置発生手段の信号レベルの組合せから粗位置を求め得る第1のデータ群と、回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたかどうかを検出する故障検出手段と、この検出結果より回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたときに、故障が生じている回転位置信号発生手段の一つを除く、残りの回転位置信号発生手段の信号レベルの組合せから、前記第1のデータ群を用いてロータの粗位置を演算する粗位置演算手段と、この粗位置とロータの回転角速度と直前の信号レベルの切換からの経過時間とからロータの精位置を推定する精位置推定手段と、外部からのトルク要求を受けてトルク指令値を発生させるトルク指令発生手段と、このトルク指令値と前記精位置とを受けて指令信号を作成する指令信号作成手段と、この指令信号を受けてステータに通電するインバータとを備える。
【0010】
請求項6に記載の発明は、比較的大きな角度間隔で信号レベルが切換わる回転位置信号を出力する回転位置信号発生手段をロータの周りに等間隔で複数備え、1の回転位置信号発生手段を除く、残りの回転位置発生手段の信号レベルの組合せからロータの粗位置を求め得る第1のデータ群と、全ての回転位置発生手段の信号レベルの組合せからロータの粗位置を求め得る第2のデータ群と、回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたかどうかを検出する故障検出手段と、この検出結果より回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたときに、故障が生じている回転位置信号発生手段の一つを除く、残りの回転位置信号発生手段の信号レベルの組合せから前記第1のデータ群を用いて、また故障が生じてないときに全ての回転位置発生手段の信号レベルの組合せから前記第2のデータ群を用いてロータの粗位置を演算する粗位置演算手段と、この粗位置とロータの回転角速度と直前の信号レベルの切換からの経過時間とからロータの精位置を推定する精位置推定手段と、外部からのトルク要求を受けてトルク指令値を発生させるトルク指令発生手段と、このトルク指令値と前記精位置とを受けて指令信号を作成する指令信号作成手段と、この指令信号を受けてステータに通電するインバータとを備える。
【0011】
【発明の効果】
請求項1、2に記載の発明によれば、1の回転位置信号発生手段を除く、残りの回転位置発生手段の信号レベルの組合せから回転体の粗位置を求め得る第1のデータ群を新たに追加して設けたので、回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたときに、故障が生じている一つの回転位置信号発生手段を除く、残りの回転位置信号発生手段の信号レベルの組合せから、前記第1のデータ群を用いて回転体の粗位置を演算することが可能となり、このため、このようにして求めた粗位置と回転体の回転角速度と直前の信号レベルの切換からの経過時間とから精位置を推定することにより、回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたときですら、回転体の1回転区間の総てにわたり、回転位置信号発生手段の総てに故障が生じていないときと同様の精位置特性が得られる。
【0012】
請求項5、6に記載の発明では、請求項1、2に記載の発明により得られる精位置をモータ制御に用いるので、回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたときですら、モータ制御を精度良く行うことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明による回転位置検出装置及び同検出装置を用いたモータ制御装置の一実施形態を示している。
【0014】
図において、同期モータ1は、ロータ1a(回転体)とステータ1bからなり、インバータ2によって制御されたバッテリ3の電力を受けて回転駆動される。なお、同期モータ1をジェネレータとして使用する場合は、発電された電力がインバータ2を介してバッテリ3に供給される。
【0015】
ロータ1aの周囲には回転位置信号発生手段として3つのホールICセンサ5a〜5cがロータ1aの周囲に等間隔で直接配設されている。なお、ロータ1aに検出プレートを取付け、この検出プレートの周囲にセンサ5a〜5cを配設した構成としてもよい。
【0016】
これらのセンサ5a〜5cは、図2上段に示したように比較的大きな角度間隔(180°間隔)で信号レベルがハイからローへと、あるいはその逆へと切換わる回転位置信号を出力する。3つのセンサのうち5aをU相センサ、5bをV相センサ、5cをW相センサとして区別すると、図2上段のようにU相センサの信号を基準にしたとき、V相センサの信号はこのU相センサの信号に対して120°、またW相センサの信号はU相センサの信号に対して240°それぞれ遅れる信号である。
【0017】
インバータ2へ指令信号(例えばPWM信号)を供給して同期モータ1の回転を制御するコントローラ10は、第1データ群としてのデータテーブル(1)〜データテーブル(3)と、第2データ群としてのデータテーブル(0)からなる4つのデータテーブル(図4参照)を記憶するデータテーブル記憶部11、センサ5a〜5cのいずれか一つに故障が生じているか否かを検出する故障検出部12(故障検出手段)、この故障検出部12からの検出結果を受けて、3つのセンサの総てに故障のないとき(正常時)には3つのセンサの信号レベルがいずれの組合せになっているのか、また3つのセンサのいずれか一つに故障があるときには、その故障の生じているセンサを除く、残り2つのセンサの信号レベルがいずれの組合せになっているのかを判定する組合せ判定部13、この組合せ判定部13の判定結果を受けてロータ1aの粗位置を演算する粗位置演算部14(粗位置演算手段)、同じく組合せ判定部13の判定結果を受けて直前の信号レベルの切換からの経過時間tを計測する経過時間計測部15、ロータ1aの回転角速度ωを演算する回転角速度演算部16、この回転角速度ω、経過時間t、粗位置を受けてロータ1aの精位置θを演算する精位置演算部17(精位置演算手段)、同期モータ1に対する外部からのトルク要求を受けてトルク指令を発生させるトルク指令発生部18(トルク指令発生手段)、トルク指令発生部11からのトルク指令と精位置演算部17からの精位置θを受けてインバータ2への指令信号を作成する指令信号作成部19(指令信号作成手段)とを備えている。
【0018】
次に、コントローラ10が実行する処理のうち精位置演算を図3に示した制御フローチャートに基づいて説明する。
【0019】
図3は所定時間毎に周期的に実行する。以下各ステップ(符号Sで示す)につき説明する。
【0020】
Slでは、3つのセンサからの信号を波形成形した信号Su、Sv、Swを読み込む。波形成形後の信号Su、Sv、Swの信号レベルは図2下段に示したように0または1の値である。
【0021】
S1ではまた、ロータ1aの回転角速度ω[°/s]を読み込む。これは、信号Su(あるいはSv、Sw)が、例えば0から1に変化するまでに要した時間[s]を測定し、信号Suの信号レベルが0から1に変化するまでの回転角度区間である180°をこの測定時間で除算することにより算出する。回転角速度は回転角速度センサをホールICセンサとは別に設けて実際に検出してもよい。
【0022】
S2では、故障検出フラグFを読み込む。この故障検出フラグFは図示しない故障判定ルーチンによって設定されるフラグであり、その値が0のとき正常であることを、その値が1のときU相センサ5a(第1の回転位置信号発生手段)の故障、その値が2のときV相センサ5b(第2の回転位置信号発生手段)の故障、その値が3のときW相センサ5c(第3の回転位置信号発生手段)の故障を表す。
【0023】
なお、センサの故障検出方法はどのような方法であっても良いが、例えばSvとSwの値が0→1→0と変化する間にSuの値が変化しなかった場合はU相センサの故障であると検出することができる。
【0024】
S3では、ロータ1aの回転角速度ωの絶対値が基準回転角速度ω0より大きいか否かを判断する。ロータ1aがある程度の角速度以上で回転していれば正確に精位置を推定できる。
【0025】
ロータ1aの回転角速度ωの絶対値が基準回転角速度ω0より大きい場合はS4へ進み、故障検出フラグFの値に応じたデータテーブル(図4のデータテーブル(0)〜データテーブル(3))から現在の信号Su、Sv、Swの組合せに対応する粗位置θa、θb[°]を読み込む。粗位置θa、θbは、信号Su、Sv、Swの組合せから判定できる回転区間の始点を示している。ただし、θa、θbの起点は、図5に示したようにU相センサから得られる信号Suが0から1へと切換わるタイミングである。また、θaは正転時の、θbは逆転時の粗位置である。
【0026】
3つのセンサが総て正常(故障検出フラグF=0)である場合、図4のデータテーブル(0)に示すように、信号Su、Sv、Swの組合せから6つの粗位置を知ることができる。具体的には正転時においてロータ1aの1回転区間である360°を6等分した値(0°、60°、120°、180°、240°、300°)である。
【0027】
しかしながら、何れか1つのセンサが故障した場合、判定可能な粗位置は4つへと減少する。
【0028】
S5では、ロータ1aの回転角速度ωが0より大きいか否か(正転か否か)を判断する。
【0029】
ロータ1aの回転角速度ωが0より大きい場合はS6へ進み、ロータ1aの回転角速度ωに経過時間tを乗算した値を正転時の粗位置θaに加算してロータ1aの精位置θを算出する。
【0030】
ここで、上記の経過時間tは信号Su、Sv、Swが現在の組合せになってから現在までの経過時間(直前の信号レベルの切換からの経過時間)である。ロータ1aの回転角速度ωが0以下の場合はS7へ進み、ロータ1aの回転角速度ωに経過時間tを乗算した値を逆転時の粗位置θbに加算してロータ1aの精位置θを算出する。
【0031】
S3でロータ1aの回転角速度ωの絶対値が基準回転角速度ω0以下と判断された場合はS8へ進み、故障検出フラグFが0であるか否か判断する。
【0032】
故障検出フラグFが0である場合はS9へ進み、データテーブル(0)から現在の信号Su、Sv、Swの組合せに対応する低速回転用の粗位置θcを読み込み、続くS10でこの低速回転用の粗位置θcをそのままロータ1aの精位置θとする。なお、低速回転用の粗位置θcは、信号Su、Sv、Swの組合せから判定できる粗位置θaの中央の回転位置を示している。ロータ1aの回転角速度が非常に小さい(あるいは停止している)場合、S6やS7で行うような精位置の推定演算を行ってもほとんど無意味なので、センサ正常時に得られる粗位置θaの中央値を使用している。
【0033】
S8で故障検出フラグFが0でないと判断された場合はS11へ進み、ステータ1bに印加する電圧と電流の関係もしくはインダクタンス等のパラメータを検出して現在の精位置を推定する(準精位置推定)。このような精位置の推定は非常に大きな誤差を含むものであるが、ロータ1aの回転角速度ωが小さいので大きな問題は生じない。また、故障検出フラグFが0でないときの粗位置の間隔は大きいところで120°もあり、この120°区間の中央値をロータの精位置として固定しても電流制御が行えないので、ここでは準精位置推定を用いるようにしている。
【0034】
ここで、本実施形態の回転位置検出装置の作用をロータ1aの正転時について図5を参照しながら説明すると、図5は簡単のためロータ1aは一定回転しているものとして、最上段に
(a)信号Su
の波形を、その下に、
(b)総てのセンサが正常である時のロータ1aの粗位置θa(実線参照)と精位置θ(一点鎖線参照)、
(c)U相センサ故障時のロータ1aの粗位置θa(実線参照)と精位置θ(一点鎖線参照)、
(d)V相センサ故障時のロータ1aの粗位置θa(実線参照)と精位置θ(一点鎖線参照)、
(e)W相センサ故障時のロータ1aの粗位置θa(実線参照)と精位置θ(一点鎖線参照)
の各波形を太線で示している。
【0035】
まず3つのセンサの総てに故障のないとき(正常時)には、データテーブル(0)が用いられるので、粗位置θaはステップ的に0°、60°、120°、180°、240°、300°と変化し、これに対して経過時間tは3つの信号Su、Sv、Swの信号レベルの組合せが切換わったタイミングより計測される。この経過時間tを回転角速度ωに乗算した値を粗位置θaに加算した値である精位置θは一点鎖線で示す直線となり、細かい精度の回転位置が得られる。なお、精位置θは正確には細かな階段状の値であるが、表現しきれないので直線で表している。
【0036】
このように、θaで粗位置を確定しておき、その後にその間をω・tを用いて補間した値であるθにより精度良く回転位置を求めることができている。
【0037】
このような回転位置検出によれば、回転位置信号発生手段を簡素化しつつ回転位置の検出精度を保つことができるという効果があり、さらに高速回転時に演算回数を減らして演算負荷を低減できるという効果もある。
【0038】
さて、U相センサの故障時を考える。このときにはデータテーブル(0)とは異なり、U相センサの故障により信頼性のない信号Suを除いた、残り2つの信号Sv、Swが用いられる。すなわち、このときにはデータテーブル(1)(1番目のデータ群)が用いられるので、回転位置が60°から360°までの区間において、粗位置θaがステップ的に300°、60°、120°、240°、300°と変化し、データテーブル(0)によればθaが180°である区間もデータテーブル(1)によれば120°となっている(第3段目の実線参照)。
【0039】
この場合、経過時間tは、信号レベルの組合せが切換わったタイミング(=粗位置が切換わったタイミング)からの経過時間であるため、データテーブル(0)によれば180°である区間においても、データテーブル(1)が用いられる限りリセットされることなく増え続ける。
【0040】
このため、回転位置が60°から360°までの区間においては、経過時間tを回転角速度ωに乗算した値を粗位置θaに加算した値である精位置θは一点鎖線で示す直線となる。すなわち、正常時と比較すれば分かるように、データテーブル(1)が用いられるときにも、回転位置が60°から360°までの区間においてデータテーブル(0)が用いられるときと同じ精位置θの特性が得られている(第3段目の一点鎖線参照)。
【0041】
これに対して、回転位置が0°から60°の区間においては、粗位置が300°であるため、これにω・tを加算して得られる精位置θは360°から420°までの値になってしまうので、この区間に限り精位置θを、
θ=0°+ω・t−360°=ω・t−360°…(2)
の式により算出することで、精位置を0°から60°までの値へとシフトすることができ、これによって回転位置が0°から60°の区間においてもデータテーブル(0)が用いられるときと同じ精位置θの特性が得られる(第3段目の一点鎖線参照)。実際には上記(2)式の演算は行っていない。制御上、sinθやcosθで扱う限り、360°を超える角度であっても、sinθやcosθの値は同じになるからである。
【0042】
次に、V相センサの故障時には、V相センサの故障により信頼性のない信号Svを除いた残り2つの信号Su、Swが用いられる。すなわち、このときにはデータテーブル(2)(2番目のデータ群)が用いられるので、粗位置θaがステップ的に0°、60°、180°、240°と変化し、データテーブル(0)によればθaが120°である区間もデータテーブル(2)によれば60°となり、またデータテーブル(0)によればθaが300°である区間もデータテーブル(2)によれば240°となる(第4段目の実線参照)。
【0043】
この場合、経過時間tは、信号レベルの組合せが切換わったタイミングからの経過時間であるため、データテーブル(0)によれば120°や300°である区間においても、データテーブル(2)が用いられる限りリセットされることなく増え続ける。
【0044】
このため、経過時間tを回転角速度ωに乗算した値を粗位置θaに加算した値である精位置θは一点鎖線で示す直線となる。すなわち、データテーブル(2)が用いられるときにも、0°から360°までのロータ1回転区間の総てにわたり、データテーブル(0)が用いられるときと同じ精位置θの特性が得られている(第4段目の一点鎖線参照)。
【0045】
W相センサの故障時には、W相センサの故障により信頼性のない信号Swを除いた残り2つの信号Su、Svが用いられる。すなわち、このときにはデータテーブル(3)(3番目のデータ群)が用いられるので、粗位置θaがステップ的に0°、120°、180°、300°と変化し、データテーブル(0)によればθaが60°や240°である区間もデータテーブル(3)によれば0°や180°となる(最下段の実線参照)。
【0046】
この場合、経過時間tは、信号レベルの組合せが切換わったタイミングからの経過時間であるため、データテーブル(0)によれば60°や240°である区間においても、データテーブル(3)が用いられる限りリセットされることなく増え続ける。
【0047】
このため、経過時間tを回転角速度ωに乗算した値を粗位置θaに加算した値である精位置θは一点鎖線で示す直線となり、データテーブル(3)が用いられるときにも、0°から360°までのロータ1回転区間の総てにわたり、データテーブル(0)が用いられるときと同じ精位置θの特性が得られている(最下段の一点鎖線参照)。
【0048】
次に、図6はロータ1aは一定回転で逆転しているものとして、最上段に
(a)信号Su
の波形を、その下に、
(b)総てのセンサが正常である時のロータ1aの粗位置θa(実線参照)と精位置θ(二点鎖線参照)、
(c)U相センサ故障時のロータ1aの粗位置θa(実線参照)と精位置θ(二点鎖線参照)、
(d)V相センサ故障時のロータ1aの粗位置θa(実線参照)と精位置θ(二点鎖線参照)、
(e)W相センサ故障時のロータ1aの粗位置θa(実線参照)と精位置θ(二点鎖線参照)
の各波形を太線で示している。
【0049】
図5では横軸に示す0°の位置を基準の位置として考えたが、図6では横軸に示す360°の位置を基準の位置として考える。
【0050】
まず3つのセンサの総てに故障のないとき(正常時)には、データテーブル(0)が用いられるので、粗位置θbはステップ的に360°、300°、240°、180°、120°、60°と変化し、これに対して経過時間tは3つの信号Su、Sv、Swの信号レベルの組合せが切換わったタイミングより計測される。この経過時間tを回転角速度ωに乗算した値を粗位置θbに加算した値である精位置θは二点鎖線で示す直線となり、細かい精度の回転位置が得られる。なお、図6においても精位置θは正確には細かな階段状の値であるが、表現しきれないので直線で表している。
【0051】
詳述すると、逆転時にはωが負の値であるため、ω=−5[°/s]であるとし、今仮に360°から300°の区間で考えると、この区間ではθbが360°であるから精位置θは、
θ=360°−5t…(3)
と表される。いまtがゼロであれば(3)式よりθ=360°となる。そして、tが増えるほど精位置θは360°から直線的に小さくなってゆく。粗位置θbが300°になる直前ではt=12[s]となるので、このときの精位置θを(4)式より計算してみるとθ=360°−5×12°=300°となる。従って、精位置θは360°より300°へと近づいて行くことがわかる。
【0052】
さて、U相センサの故障時を考える。このときにはデータテーブル(0)とは異なり、U相センサの故障により信頼性のない信号Suを除いた、残り2つの信号Sv、Swが用いられる。すなわち、このときにはデータテーブル(1)(1番目のデータ群)が用いられるので、回転位置が300°から0°までの区間において、粗位置θbがステップ的に300°、240°、120°、60°と変化し、データテーブル(0)によればθbが180°である区間もデータテーブル(1)によれば240°となっている(第3段目の実線参照)。
【0053】
この場合、経過時間tは、信号レベルの組合せが切換わったタイミング(=粗位置が切換わったタイミング)からの経過時間であるため、データテーブル(0)によれば180°である区間においても、データテーブル(1)が用いられる限りリセットされることなく増え続ける。
【0054】
このため、回転位置が300°から0°までの区間においては、経過時間tを回転角速度ωに乗算した値を粗位置θaに加算した値である精位置θは二点鎖線で示す直線となる。すなわち、正常時と比較すれば分かるように、データテーブル(1)が用いられるときにも、回転位置が300°から0°までの区間においてデータテーブル(0)が用いられるときと同じ精位置θの特性が得られている(第3段目の二点鎖線参照)。
【0055】
これに対して、回転位置が360°から300°の区間においては、粗位置が60°であるため、これにω・tを加算して得られる精位置θは60°から0°までの値になってしまうので、この区間に限り精位置θを、
θ=60°+ω・t+300°=360°+ω・t…(4)
の式により算出することで、精位置を360°から300°までの値へとシフトすることができ、これによって回転位置が360°から300°の区間においてもデータテーブル(0)が用いられるときと同じ精位置θの特性が得られる(第3段目の二点鎖線参照)。実際には上記(2)式の演算は行っていない。制御上、sinθやcosθで扱う限り、sinθやcosθの値は同じになるからである。
【0056】
次に、V相センサの故障時には、V相センサの故障により信頼性のない信号Svを除いた残り2つの信号Su、Swが用いられる。すなわち、このときにはデータテーブル(2)(2番目のデータ群)が用いられるので、粗位置θbがステップ的に360°、240°、180°、60°と変化し、データテーブル(0)によればθbが300°である区間もデータテーブル(2)によれば360°となり、またデータテーブル(0)によればθbが120°である区間もデータテーブル(2)によれば180°となる(第4段目の実線参照)。
【0057】
この場合、経過時間tは、信号レベルの組合せが切換わったタイミングからの経過時間であるため、データテーブル(0)によれば300°や120°である区間においても、データテーブル(2)が用いられる限りリセットされることなく増え続ける。
【0058】
このため、経過時間tを回転角速度ωに乗算した値を粗位置θbに加算した値である精位置θは二点鎖線で示す直線となる。すなわち、データテーブル(2)が用いられるときにも、360°から0°までのロータ1回転区間の総てにわたり、データテーブル(0)が用いられるときと同じ精位置θの特性が得られている(第4段目の二点鎖線参照)。
【0059】
W相センサの故障時には、W相センサの故障により信頼性のない信号Swを除いた残り2つの信号Su、Svが用いられる。すなわち、このときにはデータテーブル(3)(3番目のデータ群)が用いられるので、粗位置θbがステップ的に360°、300°、180°、120°と変化し、データテーブル(0)によればθaが240°や60°である区間もデータテーブル(3)によれば300°や120°となる(最下段の実線参照)。
【0060】
この場合、経過時間tは、信号レベルの組合せが切換わったタイミングからの経過時間であるため、データテーブル(0)によれば240°や60°である区間においても、データテーブル(3)が用いられる限りリセットされることなく増え続ける。
【0061】
このため、経過時間tを回転角速度ωに乗算した値を粗位置θbに加算した値である精位置θは二点鎖線で示す直線となり、データテーブル(3)が用いられるときにも、360°から0°までのロータ1回転区間の総てにわたり、データテーブル(0)が用いられるときと同じ精位置θの特性が得られている(最下段の二点鎖線参照)。
【0062】
このように、本実施形態(請求項1、2に記載の発明)によれば、1のセンサ(回転位置信号発生手段)を除く、残りのセンサの信号レベルの組合せから回転体の粗位置を求め得るデータテーブル(1)〜データテーブル(3)(第1のデータ群)を、新たに追加して設けたので、センサの一つに故障が生じたときに、故障が生じている一つのセンサを除く、残り2つのセンサの信号レベルの組合せから、前記データテーブル(1)〜データテーブル(3)を用いてロータ(回転体)の粗位置θa、θbを演算することが可能となり、このため、このようにして求めた粗位置とロータの回転角速度ωと直前の信号レベルの切換からの経過時間tとから精位置θを推定することにより、センサの一つに故障が生じたときですら、ロータの1回転区間の総てにわたり、センサの総てに故障が生じていないときと同様の精位置特性が得られる。
【0063】
また、本実施形態(請求項5、6に記載の発明)では、このようにして得られる精位置θをモータ制御に用いるので、センサの一つに故障が生じたときですら、モータ制御を精度良く行うことができる。
【0064】
実施形態では、センサが3つの場合で説明したが、この数に限定されるものでない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の概略構成図。
【図2】実施形態におけるホールICセンサの出力特性図。
【図3】実施形態における粗位置演算を説明するためのフローチャート。
【図4】データテーブル(0)〜データテーブル(3)の内容を示す表図。
【図5】実施形態の正転時の作用を説明するための波形図。
【図6】実施形態の逆転時の作用を説明するための波形図。
【符号の説明】
1 同期モータ
1a ロータ(回転体)
1b ステータ
2 インバータ
5a ホールICセンサ(第1の回転位置信号発生手段)
5b ホールICセンサ(第2の回転位置信号発生手段)
5c ホールICセンサ(第3の回転位置信号発生手段)
10 コントローラ
11 データテーブル記憶部
12 故障検出部(故障検出手段)
14 粗位置演算部(粗位置演算手段)
17 精位置演算部(精位置演算手段)
18 トルク指令発生部(トルク指令発生手段)
19 指令信号作成部(指令信号作成手段)
Claims (8)
- 比較的大きな角度間隔で信号レベルが切換わる回転位置信号を出力する回転位置信号発生手段を回転体の周りに等間隔で複数備え、
1の回転位置信号発生手段を除く、残りの回転位置発生手段の信号レベルの組合せから回転体の粗位置を求め得る第1のデータ群と、
回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたかどうかを判定する故障検出手段と、
この検出結果より回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたときに、故障が生じている一つの回転位置信号発生手段を除く、残りの回転位置信号発生手段の信号レベルの組合せから、前記第1のデータ群を用いて回転体の粗位置を演算する粗位置演算手段と、
この粗位置と回転体の回転角速度と直前の信号レベルの切換からの経過時間とから回転体の精位置を推定する精位置推定手段と
を備えることを特徴とする回転体の回転位置検出装置。 - 比較的大きな角度間隔で信号レベルが切換わる回転位置信号を出力する回転位置信号発生手段を回転体の周りに等間隔で複数備え、
1の回転位置信号発生手段を除く、残りの回転位置発生手段の信号レベルの組合せから回転体の粗位置を求め得る第1のデータ群と、
全ての回転位置発生手段の信号レベルの組合せから回転体の粗位置を求め得る第2のデータ群と、
回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたかどうかを検出する故障検出手段と、
この検出結果より回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたときに、故障が生じている一つの回転位置信号発生手段を除く、残りの回転位置信号発生手段の信号レベルの組合せから前記第1のデータ群を用いて、また故障が生じてないときに全ての回転位置発生手段の信号レベルの組合せから前記第2のデータ群を用いて回転体の粗位置を演算する粗位置演算手段と、
この粗位置と回転体の回転角速度と直前の信号レベルの切換からの経過時間とから回転体の精位置を推定する精位置推定手段と
を備えることを特徴とする回転体の回転位置検出装置。 - 回転位置信号発生手段が第1と第2と第3の3つの回転位置信号発生手段であり、前記第1のデータ群が、第2と第3の回転位置信号発生手段の信号レベルの組合せから回転体の粗位置を求め得る1番目のデータ群と、第1と第3の回転位置信号発生手段の信号レベルの組合せから回転体の粗位置を求め得る2番目のデータ群と、第1と第2の回転位置信号発生手段の信号レベルの組合せから回転体の粗位置を求め得る3番目のデータ群とからなる場合に、
前記故障検出手段は3つの回転位置信号発生手段のいずれに故障が生じたかどうかを検出し、
前記粗位置演算手段は、第1の回転位置信号発生手段に故障が生じたときに前記1番目のデータ群を用いて、第2の回転位置信号発生手段に故障が生じたときに前記2番目のデータ群を用いて、第3の回転位置信号発生手段に故障が生じたときに前記3番目のデータ群を用いて回転体の粗位置を演算することを特徴とする請求項1または2に記載の回転体の回転位置検出装置。 - 前記データ群はテーブルデータであることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の回転体の回転位置検出装置。
- 比較的大きな角度間隔で信号レベルが切換わる回転位置信号を出力する回転位置発生手段をロータの周りに等間隔で複数備え、
1の回転位置信号発生手段を除く、残りの回転位置発生手段の信号レベルの組合せから粗位置を求め得る第1のデータ群と、
回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたかどうかを検出する故障検出手段と、
この検出結果より回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたときに、故障が生じている回転位置信号発生手段の一つを除く、残りの回転位置信号発生手段の信号レベルの組合せから、前記第1のデータ群を用いてロータの粗位置を演算する粗位置演算手段と、
この粗位置とロータの回転角速度と直前の信号レベルの切換からの経過時間とからロータの精位置を推定する精位置推定手段と、
外部からのトルク要求を受けてトルク指令値を発生させるトルク指令発生手段と、
このトルク指令値と前記精位置とを受けて指令信号を作成する指令信号作成手段と、
この指令信号を受けてステータに通電するインバータと
を備えることを特徴とする回転体の制御装置。 - 比較的大きな角度間隔で信号レベルが切換わる回転位置信号を出力する回転位置信号発生手段をロータの周りに等間隔で複数備え、
1の回転位置信号発生手段を除く、残りの回転位置発生手段の信号レベルの組合せからロータの粗位置を求め得る第1のデータ群と、
全ての回転位置発生手段の信号レベルの組合せからロータの粗位置を求め得る第2のデータ群と、
回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたかどうかを検出する故障検出手段と、
この検出結果より回転位置信号発生手段の一つに故障が生じたときに、故障が生じている回転位置信号発生手段の一つを除く、残りの回転位置信号発生手段の信号レベルの組合せから前記第1のデータ群を用いて、また故障が生じてないときに全ての回転位置発生手段の信号レベルの組合せから前記第2のデータ群を用いてロータの粗位置を演算する粗位置演算手段と、
この粗位置とロータの回転角速度と直前の信号レベルの切換からの経過時間とからロータの精位置を推定する精位置推定手段と、
外部からのトルク要求を受けてトルク指令値を発生させるトルク指令発生手段と、
このトルク指令値と前記精位置とを受けて指令信号を作成する指令信号作成手段と、
この指令信号を受けてステータに通電するインバータと
を備えることを特徴とする回転体の制御装置。 - 回転位置信号発生手段が第1と第2と第3の3つの回転位置信号発生手段であり、前記第1のデータ群が、第2と第3の回転位置信号発生手段の信号レベルの組合せからロータの粗位置を求め得る1番目のデータ群と、第1と第3の回転位置信号発生手段の信号レベルの組合せからロータの粗位置を求め得る2番目のデータ群と、第1と第2の回転位置信号発生手段の信号レベルの組合せからロータの粗位置を求め得る3番目のデータ群とからなる場合に、
前記故障検出手段は3つの回転位置信号発生手段のいずれに故障が生じたかどうかを検出し、
前記粗位置演算手段は、第1の回転位置信号発生手段に故障が生じたときに前記1番目のデータ群を用いて、第2の回転位置信号発生手段に故障が生じたときに前記2番目のデータ群を用いて、第3の回転位置信号発生手段に故障が生じたときに前記3番目のデータ群を用いてロータの粗位置を演算することを特徴とする請求項5または6に記載の回転体の制御装置。 - 前記データ群はテーブルデータであることを特徴とする請求項5から7までのいずれか一つに記載の回転体の制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002171184A JP2004020198A (ja) | 2002-06-12 | 2002-06-12 | 回転体の回転位置検出装置及び回転体の制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002171184A JP2004020198A (ja) | 2002-06-12 | 2002-06-12 | 回転体の回転位置検出装置及び回転体の制御装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004020198A true JP2004020198A (ja) | 2004-01-22 |
Family
ID=31171107
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002171184A Pending JP2004020198A (ja) | 2002-06-12 | 2002-06-12 | 回転体の回転位置検出装置及び回転体の制御装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004020198A (ja) |
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2005318724A (ja) * | 2004-04-28 | 2005-11-10 | Nsk Ltd | モータ駆動装置及び電動パワーステアリング装置 |
JP2010220349A (ja) * | 2009-03-16 | 2010-09-30 | Hitachi Automotive Systems Ltd | 車両用モータの制御装置 |
JP2012529628A (ja) * | 2009-06-26 | 2012-11-22 | 三菱電機株式会社 | 検知デバイス、およびエレベータ又はエスカレータの制御装置 |
US9157770B2 (en) | 2011-07-29 | 2015-10-13 | Mitsubishi Electric Corporation | Encoder |
CN105322849A (zh) * | 2015-07-03 | 2016-02-10 | 浙江海洋学院 | 大功率无刷电机驱动电路及其控制方法 |
WO2021068241A1 (zh) * | 2019-10-12 | 2021-04-15 | 江苏科技大学 | 一种无刷直流电机霍尔传感器容错控制装置及其控制方法 |
-
2002
- 2002-06-12 JP JP2002171184A patent/JP2004020198A/ja active Pending
Cited By (9)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2005318724A (ja) * | 2004-04-28 | 2005-11-10 | Nsk Ltd | モータ駆動装置及び電動パワーステアリング装置 |
JP4613513B2 (ja) * | 2004-04-28 | 2011-01-19 | 日本精工株式会社 | 電動パワーステアリング装置 |
JP2010220349A (ja) * | 2009-03-16 | 2010-09-30 | Hitachi Automotive Systems Ltd | 車両用モータの制御装置 |
JP2012529628A (ja) * | 2009-06-26 | 2012-11-22 | 三菱電機株式会社 | 検知デバイス、およびエレベータ又はエスカレータの制御装置 |
JP2012529627A (ja) * | 2009-06-26 | 2012-11-22 | 三菱電機株式会社 | 検知デバイス、およびエレベータ又はエスカレータの制御装置 |
US9157770B2 (en) | 2011-07-29 | 2015-10-13 | Mitsubishi Electric Corporation | Encoder |
CN105322849A (zh) * | 2015-07-03 | 2016-02-10 | 浙江海洋学院 | 大功率无刷电机驱动电路及其控制方法 |
CN105322849B (zh) * | 2015-07-03 | 2020-08-14 | 浙江海洋学院 | 大功率无刷电机驱动电路及其控制方法 |
WO2021068241A1 (zh) * | 2019-10-12 | 2021-04-15 | 江苏科技大学 | 一种无刷直流电机霍尔传感器容错控制装置及其控制方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4191172B2 (ja) | ブラシレス直流モーターのホールセンサー位置合わせ | |
US6593714B2 (en) | Motor control apparatus with a current sensor diagnostic apparatus and a current sensor diagnostic method | |
JP3695342B2 (ja) | 電動機の制御装置 | |
JP5131143B2 (ja) | モータの回転角検出装置 | |
US10554158B2 (en) | Motor control method | |
WO2012063297A1 (ja) | 回転角算出装置および回転角算出方法 | |
JP2002325493A (ja) | モータ制御装置 | |
US11855520B2 (en) | Electric tool, control method, and program | |
JP5409034B2 (ja) | 回転電機制御装置 | |
JP2004020198A (ja) | 回転体の回転位置検出装置及び回転体の制御装置 | |
JP2001211698A (ja) | 同期モータ制御装置 | |
JP5605312B2 (ja) | 回転機の制御装置 | |
JP5673009B2 (ja) | インバータ制御装置および電力変換システム | |
US8669734B2 (en) | Control device and control method for motor | |
JP2003255006A (ja) | 交流モータの電流センサ故障検知装置 | |
JP2003319682A (ja) | 永久磁石型同期電動機の制御装置 | |
JP2007274781A (ja) | 電動駆動制御装置及び電動駆動制御方法 | |
JP4839119B2 (ja) | 電動駆動制御装置及び電動駆動制御方法 | |
JP7414436B2 (ja) | モータ制御装置およびその制御方法 | |
JP2004056889A (ja) | 電流センサ診断装置 | |
JP4613861B2 (ja) | 電動駆動制御装置及び電動駆動制御方法 | |
JP2008259347A (ja) | モータ制御装置 | |
JP5884747B2 (ja) | 交流電動機の制御装置 | |
JPH11160101A (ja) | 回転センサ及びそれを用いた永久磁石型同期機の制御装置及び回転センサの故障判定方法 | |
JP6551289B2 (ja) | 回転電機制御装置 |