JP2004018772A - 環状オレフィン系樹脂成形品のフレーム処理方法及び環状オレフィン系樹脂成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】環状オレフィン系樹脂成形品表面へのインク密着性を改善し、ソルベントクラックの発生を防止し、また、成形品長期保存時のクラックの発生を防止できる表面フレーム処理方法及び該方法で製造した成形品を提供する。
【解決手段】内炎距離Lとバーナーノズルの内径Dの比(L/D)が80〜170及び被処理成形品の外表面がガスバーナーの正面を通過する際の、被処理成形品の外表面速度が50〜100cm/秒である環状オレフィン系樹脂成形品のフレーム処理方法及びその成形品。
【選択図】 図1
【解決手段】内炎距離Lとバーナーノズルの内径Dの比(L/D)が80〜170及び被処理成形品の外表面がガスバーナーの正面を通過する際の、被処理成形品の外表面速度が50〜100cm/秒である環状オレフィン系樹脂成形品のフレーム処理方法及びその成形品。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、環状オレフィン系樹脂成形品を、ガスバーナーの燃焼火炎によってフレーム処理する表面処理方法に関する。さらに詳しくは、環状オレフィン系樹脂成形品表面へのインク密着性を改善し、ソルベントクラックの発生を防止し、また、成形品長期保存時のクラックの発生を防止できる、環状オレフィン系樹脂成形品のフレーム表面処理方法及び該方法で製造した成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
医薬品容器や食品容器などは従来ガラス製のものが使用されてきたが、軽量化、易廃棄性などの観点からプラスチック製のものに置き換わりつつある。環状オレフィン系樹脂成形品、例えば熱可塑性ノルボルネン系樹脂製の容器が、透明性、耐熱性、耐薬品性、低溶出性などに優れるために医薬品容器や食品容器などに好適であることはすでに知られている(特開平9−77038号公報、特開平11−170345号公報、特開平11−170779号公報)。
容器の内容物の表示は通常表面に印刷ラベルを貼着して行われるが、容器の回収再生利用の観点で、容器とは材質の異なるラベルを貼る方式よりプラスチック製容器表面に直接印刷するのが好ましい。
しかし、プラスチック製容器表面に直接印刷するには、成形品表面の印刷性を向上させる表面処理が必要である。
プラスチック成形品の表面処理法としては、コロナ放電処理、プライマー処理、溶剤処理方法、フレーム処理などが知られている。
コロナ放電処理は、装置コストが高くつくほか、処理時にオゾンが発生し、発生したオゾンの処理のための設備が必要になるという問題がある。
プライマ−処理は、コ−ティング剤の選定が困難であり、コーティング剤によっては、表面にべたつきが残る上、工業製品の印刷の品質基準を満足させるのが難しくなる。また、溶剤処理法だけでは、印刷性の向上が不十分であり、フレーム処理は、成形品の変形、変色などを起こし易い問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、環状オレフィン系樹脂成形品の表面のインク密着性を改善し、ソルベントクラックの発生を防止し、さらに成形品長期保存時のクラックの発生を防止できる表面フレーム処理方法及び該方法で製造した成形品を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、環状オレフィン系樹脂成形品の表面処理方法を鋭意検討した結果、環状オレフィン系樹脂成形品を、特定の処理条件で、フレーム処理することによって、印刷性が向上し、且つ、ソルベントクラックなどの変形や変色が起きないことを見いだし、この知見に基づき、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
(1)環状オレフィン系樹脂成形品をフレーム処理する表面処理方法において、フレーム処理条件が、バーナー内炎先端と被処理成形品外表面との距離Lとバーナーノズルの内径Dの比(L/D)が80〜170及び被処理成形品の外表面がガスバーナーの正面を通過する際の、被処理成形品の外表面速度が50〜100cm/秒であることを特徴とする環状オレフィン系樹脂成形品のフレーム処理方法、
(2)フレーム処理条件において、フレーム処理時間が0.3〜0.9秒であることを特徴とする第1項記載の環状オレフィン系樹脂成形品のフレーム処理方法、
(3)環状オレフィン系樹脂成形品が、外径1〜15cmの筒形状であることを特徴とする第1項又は第2項記載の環状オレフィン系樹脂成形品のフレーム処理方法、
(4)環状オレフィン系樹脂が、ノルボルネン系重合体又はビニル脂環式炭化水素重合体であって、脂環式構造含有重合体樹脂中における脂環式構造を有する繰り返し単位の割合が、50重量%以上であることを特徴とする第1項、第2項又は第3項記載の環状オレフィン系樹脂成形品のフレーム処理方法、及び
(5)フレーム表面処理を施した環状オレフィン系樹脂成形品において、フレーム処理条件が、バーナー内炎先端と被処理成形品外表面との距離Lとバーナーノズルの内径Dの比(L/D)が80〜170及び被処理成形品の外表面がガスバーナーの正面を通過する際の、被処理成形品の外表面速度が50〜100cm/秒であることを特徴とする環状オレフィン系樹脂成形品、
を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の環状オレフィン系樹脂成形品をフレーム処理する表面処理方法においては、移動可能なコンベア機構上に環状オレフィン系樹脂成形品を保持し、該環状オレフィン系樹脂成形品を所定の、被処理成形品の外表面がガスバーナーの正面を通過する際の、被処理成形品の外表面速度に対応する速度で回転させながら、ガスバーナーによるフレーム処理領域に環状オレフィン系樹脂成形品を移行させて、所定時間のフレーム処理を行う。
ガスバーナーは、コンベア機構から所定の距離をおいた位置に、環状オレフィン系樹脂成形品の垂直方向と平行して、該樹脂成形品の高さに応じた個数を設置することができる。このガスバーナーによって、所定のフレーム処理時間加熱することにより、フレーム表面処理を行なうことができる。
【0006】
上記所定のガスバーナーの正面を通過する被処理成形品の外表面速度に対応する速度で駆動される該樹脂成形品の回転速度、バーナー内炎先端と被処理成形品外表面との距離L及びフレーム処理時間を調節することによって、本発明の、バーナー内炎先端と被処理成形品外表面との距離L(以下、内炎距離Lという)とバーナーノズルの内径Dの比(L/D)が80〜170、好ましくは80〜130、被処理成形品の外表面がガスバーナーの正面を通過する際の、被処理成形品の外表面速度が50〜100cm/秒及びフレーム処理時間が0.3〜0.9秒の処理条件を達成することができる。なお、内炎距離Lが、被処理成形品外表面の形状が円筒形でなく、部位によって異なる場合は、内炎先端と外表面との距離が最小となる部位での値をLの値として用いる。また、Dの値として、空気とガスが別々のノズルから供給されて燃焼する場合は、ガスのノズルの内径を用い、あらかじめ空気とガスが混合した状態で供給されて燃焼する場合は、図3に示すように混合ガス供給路の内径を用いる。なお、複数個のバーナーノズルを用いる場合の前記(L/D)は、各バーナーノズルの(L/D)の平均値とする。
【0007】
本発明においては、1)コンベア機構により被処理成形品をガスバーナーの前まで移動後停止させ、被処理成形品を回転させながらフレーム処理を所定時間行なった後に、処理後の被処理成形品を再び移動させるワンピッチ移動方式、または、2)コンベア機構により被処理成形品をガスバーナーの前で停止することなく回転させた状態のまま所定の速度で通過させながらフレーム処理を行なう連続移動方式があるが、前記1)の方式が好適に用いることができる。
本発明において、フレーム処理時のガスバーナーの正面を通過する被処理成形品の外表面速度は、被処理成形品外表面の被処理点がガスバーナーの正面前を通過する速度である。従って、被処理成形品が円筒形で、前記1)の方式で処理する場合の前記外表面速度は、回転する被処理成形品の外円周速度となる。また、被処理成形品が円筒形で、前記2)の方式で処理する場合の前記外表面速度は、図2aに示すように、被処理成形品がガスバーナーの正面を通過する回転方向がコンベア機構の移動方向と同じ場合には、コンベア機構の移動速度と被処理成形品の回転による外円周速度との和になる。そして、図2bに示すように、コンベア機構の進行方向と被処理成形品の回転方向が逆であれば、前記外表面速度は被処理成形品の回転による外円周速度とコンベア機構の移動速度との差になる。また、図2cに示すように、コンベア機構の進行方向と斜め方向にガスバーナーが設置された場合には、被処理成形品の回転による外円周速度と、ガスバーナーの正面を通過する被処理成形品外表面点での、コンベア機構の移動速度の接線方向速度成分とのベクトル和になる。例えば、コンベア機構進行方向の直角方向(図2a方向)から、45度斜めの方向にガスバーナーが設置された場合には、コンベア機構の移動速度の接線方向速度成分はコンベア機構の移動速度の(1/1.414)倍となる。
【0008】
本発明に用いるフレーム処理時間は、被処理成形品外表面の被処理点がガスバーナーの正面前を通過する時間である。従って、被処理成形品が筒形状
で、前記1)の方式で処理する場合の前記処理時間は、被処理成形品がガスバーナーの前で停止して熱処理を受けている時間をいう。また、被処理成形品が筒形状で、前記2)の方式で処理する場合の前記処理時間は、被処理成形品がガスバーナーの正面前を通過する際に、バーナー内径の10倍の長さを移動するのに要した時間をいう。
本発明に用いるコンベア機構は、環状オレフィン系樹脂成形品を所定の移動速度で移送することのできるものであれば、公知のものを特に制限することなく使用することができ、例えば、ベルト状のものを使用することができる。また、平面上をエンドレスに移動回転する方式又は立体的にエンドレスに移動回転する方式を使用することもできる。
【0009】
本発明に用いる環状オレフィン系樹脂成形品を回転駆動する機構は、公知のものを特に制限することなく使用することができる。例えば、回転速度変換機構を備えたモーターを、各回転軸の下部に配置させた構造のものを使用することができる。
本発明に用いるフレーム処理実施の一態様を、図1、図2a、b、c及び図3によって説明する。図1は、本発明に用いるフレーム処理設備の側面図で、図2a、b、cは本発明に用いるフレーム処理設備の平面図である。
図1及び図2a、b、cに示すように、本発明のフレーム処理は、所定の速度で移動するコンベア機構1上に保持されて、所定の速度で回転する被処理成形品2を、ガスバーナー内炎4の先端12から被処理成形品2の外表面までの所定の内炎距離Lに設置したガスバーナー3により所定の時間加熱することによって行なうことができる。ガスバーナー3の位置は移動機構(図示されていない)によって、前後に移動自在に固定されている。
上記所定の速度、回転速度、距離及び時間は本発明に用いるフレーム処理条件が、内炎距離Lとバーナーノズルの内径Dの比(L/D)が80〜170及びガスバーナーの正面を通過する被処理成形品の外表面速度が50〜100cm/秒及びフレーム処理時間が0.3〜0.9秒である条件に適合するように設定することができる。
【0010】
本発明に用いるフレーム処理の内炎距離Lは、7〜13cm、好ましくは8〜12cmにすることができる。
本発明に用いるガスバーナーの正面を通過する被処理成形品の外表面速度は、50〜100cm/秒、好ましくは60〜90cm/秒にすることができる。
本発明に用いるフレーム処理時間は、0.3秒〜0.9秒、好ましくは0.4秒〜0.7秒にすることができる。
図3は本発明に用いるバーナー炎の状態を示す。本発明のフレーム処理に用いるガスバーナーは、空気を内部供給するバーナーを使用することができる。
【0011】
このタイプのバーナーの燃焼状態においては、図3のガスバーナーノズル11の先端部の火炎中にガスバーナー内炎4が形成され、その温度は、通常300〜500℃となっている。この頂点が本発明で規定するガスバーナー内炎先端12であり、内炎は低温で燃焼し還元作用を有し、その外側にガスバーナー外炎5が形成される。外炎は高温で燃焼する酸化炎であり、通常温度1,500〜1,800℃となっている。ガスバーナーにガスのみを供給したときは内炎はできず、空気の供給量を増やしていくと内炎ができてくる。十分に空気を吸い込めば外炎は目視が困難となる。
本発明に用いるフレーム処理のバーナー用燃料ガスは、公知の燃料ガス、例えば都市ガス、LPGガス、LNGガス、プロパンガス等を使用することができる。
【0012】
本発明に用いる環状オレフィン系樹脂成形品は、原料の環状オレフィン系樹脂を用い、公知の熱可塑性樹脂の成形方法を特に制限なく使用して製造することができる。例えば、ダイレクトブロー、インジェクションブロー、インジェクション延伸ブローまたは多層ブローなどのブロー成形、射出成形及び押出成形によって容器等を製造することができ、とりわけ、ブロー成形が好ましく、その中でもインジェクション延伸ブローを特に好適に使用することができる。
本発明に用いる環状オレフィン系樹脂成形品は、環状オレフィン系樹脂を成形して得られた成形品であれば、その形状及び用途は特に限定されないが、好ましくは容器である。容器の外観形状としては、円柱状、角柱状、球状等が挙げられるが、衝撃強度等の観点から円柱状、角柱状が好ましい。容器は、開口部から底部にかけての裾広がり形状(錐状)であっても、高さ方向の中央部が膨らんだ形状(樽状)などであってもよい。また容器の底部の形状については特に制限されず、平面状であっても内側に向かって窪みのある形状であってもよい。
【0013】
本発明の成形品としての容器は、医薬品や食品等を密閉保存できるように、また、医薬品や食品等を密閉保存した状態でスチーム滅菌等の処理ができるように、蓋を取り付けることができる首部及び胴体部を有する形状であるのが好ましい。首部は、蓋が取り付けられ、かつ密閉できるように、螺子溝、蓋と嵌合可能な凹凸部等を有しているものが好ましい。
本発明の成形品としての容器は、液体、粉体状の薬品容器、特に薬品等を充填した後に滅菌して使用する薬品容器として適当である。具体的には無菌状態が高度に保持されることを要求される無菌精剤用の容器や、造影剤などの検査診断薬用の容器などに適当である。その他、点滴用容器や輸液キット用容器;点眼薬容器;純水用容器;血液分析用のサンプリング用試験管;採血管;検体容器;紫外線検査セルなどの分析容器;メスや鉗子、ガーゼ、コンタクトレンズなどの医療器具の滅菌容器;ディスポーザブルシリンジやプレフィルドシリンジなどの医療用具;ビーカー、バイアル瓶、アンプル、試験管、フラスコなどの実験器具;人工臓器のハウジングなどに好適に使用できる。
【0014】
また、本発明の成形品としての容器は、食料品保存容器、清涼飲料水などのボトルとしても好適であるが、特に、食器、哺乳瓶、マグカップなどのように皮脂や唾液等からの油分が付着しやすい食品容器としても好適であり、哺乳瓶として最も好適である。
本発明に用いる環状オレフィン系樹脂は脂環式構造含有重合体樹脂であり、重合体の繰り返し単位中に脂環式構造を含有するものであり、脂環式構造を主鎖及び側鎖のいずれに有していてもよい。脂環式構造としては、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造などが挙げられるが、熱安定性等の観点からシクロアルカン構造が好ましい。脂環式構造を構成する炭素原子数は、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であると、耐熱性及び透明性に優れた容器が得られる。
【0015】
脂環式構造含有重合体樹脂中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。脂環式構造含有重合体樹脂中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合が過度に少ないと耐熱性が低下し好ましくない。なお、脂環式構造含有重合体樹脂中の脂環式構造を有する繰り返し単位以外の残部は、使用目的に応じて適宜選択される。
脂環式構造含有重合体樹脂の具体例としては、1)ノルボルネン系重合体、2)単環の環状オレフィン系重合体、3)環状共役ジエン系重合体、4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度等の観点から、ノルボルネン系重合体水素化物、ビニル脂環式炭化水素重合体及びその水素化物などが好ましい。
【0016】
1)ノルボルネン系重合体
本発明に用いるノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーと、これと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、これらの水素化物、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーと、これと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度等の観点から、ノルボルネン系モノマーの開環共重合体水素化物が最も好ましい。
ノルボルネン系モノマーとしては、ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)、トリシクロ[4.3.12,5.01,6]−デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)及びその誘導体、テトラシクロ[7.4.110,13.01,9.02,7]−トリデカ−2,4,6,11−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう:慣用名メタノテトラヒドロフルオレン)及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]−ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)及びその誘導体、などが挙げられる。
【0017】
置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基などが例示でき、上記ノルボルネン系モノマーは、これらを2種以上有していてもよい。具体的には、8−メトキシカルボニル基−テトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]−ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]−ドデカ−3−エンなどが挙げられる。
これらのノルボルネン系モノマーは、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
これらノルボルネン系モノマーの開環重合体、またはノルボルネン系モノマーと、これと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体は、モノマー成分を、公知の開環重合触媒の存在下で重合して得ることができる。開環重合触媒としては、例えば、ルテニウム、オスミウムなどの金属のハロゲン化物と、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物、及び還元剤とからなる触媒、あるいは、チタン、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いることができる。
【0018】
ノルボルネン系モノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィン系単量体などを挙げることができる。
ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体水素化物は、通常、上記開環(共)重合体の重合溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を水素化することにより得ることができる。
【0019】
ノルボルネン系モノマーの付加重合体、またはノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとの付加(共)重合体は、これらのモノマーを、公知の付加重合触媒、例えば、チタン、ジルコニウム又はバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いて(共)重合させて得ることができる。
ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエンなどが用いられる。これらの中でも、α−オレフィン、特にエチレンが好ましい。
これらの、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。ノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとを付加共重合する場合は、付加共重合体中のノルボルネン系モノマー由来の構造単位と共重合可能なその他のモノマー由来の構造単位との割合が、重量比で通常30:70〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは70:30〜95:5の範囲となるように適宜選択される。
【0020】
2)単環の環状オレフィン系重合体
単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィン系単量体の付加重合体を用いることができる。
【0021】
3)環状共役ジエン系重合体
環状共役ジエン系重合体としては、例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの環状共役ジエン系単量体を1,2−または1,4−付加重合した重合体及びその水素化物などを用いることができる。
本発明で使用されるノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体又は環状共役ジエン系重合体の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常5,000〜500,000、好ましくは8,000〜200,000、より好ましくは10,000〜100,000の範囲であるときに、容器の機械的強度、及び成形加工性とが高度にバランスされて好適である。
【0022】
4)ビニル脂環式炭化水素重合体
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサンなどのビニル脂環式炭化水素系単量体の重合体及びその水素化物;スチレン、α−メチルスチレンなどのビニル芳香族系単量体の重合体の芳香環部分の水素化物などが挙げられ、ビニル脂環式炭化水素重合体やビニル芳香族系単量体と、これらの単量体と共重合可能な他の単量体とのランダム共重合体、ブロック共重合体などの共重合体及びその水素化物など、いずれでもよい。ブロック共重合体としては、ジブロック、トリブロック、またはそれ以上のマルチブロックや傾斜ブロック共重合体などが挙げられ、特に制限はない。
【0023】
本発明で使用されるビニル脂環式炭化水素重合体の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法で測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常10,000〜300,000、好ましくは15,000〜250,000、より好ましくは20,000〜200,000の範囲であるときに、容器の機械的強度及び成形加工性とが高度にバランスされて好適である。
本発明で使用される脂環式構造含有重合体樹脂のガラス転移温度(Tg)は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常、80℃以上、好ましくは100℃〜250℃、より好ましくは120℃〜200℃の範囲である。この範囲において、耐熱性と成形加工性とが高度にバランスされ好適である。
【0024】
なお、本発明で使用される脂環式構造含有重合体樹脂には、必要に応じて各種配合剤を配合することができる。配合剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤等の安定剤;滑剤、可塑剤等の樹脂改質剤;染料や顔料等の着色剤;帯電防止剤等が挙げられる。これらの配合剤は、単独で、あるいは2種以上を組み合せて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損ねない範囲で適宜選択される。
酸化防止剤としては、たとえばフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤、特にアルキル置換フェノール系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤を配合することにより、透明性等を低下させることなく、成形時の酸化劣化等による容器の着色や強度低下を防止できる。
これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、あるいは2種以上を組み合わせて用いることもできる。酸化防止剤の配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、脂環式構造含有重合体樹脂100重量部に対して通常0.001〜5重量部、好ましくは0.01〜1重量部である。
【0025】
また、本発明に用いる脂環式構造含有重合体樹脂には、他の種類の重合体(ゴムや樹脂)を混合して、重合体組成物として成形材料に供することもできる。
具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系重合体;ポリイソブチレン、イソブチレン・イソプレンゴムなどのイソブチレン系重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン・スチレンランダム共重合体、イソプレン・スチレンランダム共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、イソプレン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン・ブロック共重合体などのジエン系重合体;ポリブチルアクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレートなどのアクリル系重合体;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル・スチレン共重合体などのビニル化合物の重合体;ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エピクロルヒドリンゴムなどのエポキシ系重合体;フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴムなどのフッ素系重合体などが挙げられる。これらの軟質重合体は、架橋構造を有したものであってもよく、また、変性反応により官能基を導入したものでもよい。
【0026】
上記重合体の中でもジエン系重合体が好ましく、特に該重合体の炭素−炭素不飽和結合を水素化した水素化物が、ゴム弾性、機械強度、柔軟性、分散性の点で優れる。
本発明においては、例えば、上記の脂環式構造含有重合体樹脂をブロー成形して得られた容器を使用することができる。容器の厚みは、通常、0.5〜3mm、好ましくは0.7〜2mmである。
ブロー成形法として、インジェクション延伸ブロー成形法を用いた場合には、
1)射出成形により、開口部を有する中空体であるプリフォームを成形した後、
2)前記プリフォームをブロー金型内に挿入し、加熱溶融かつ機械的に延伸させながら開口部より内部にエアーを吹き込んでブロー成形を行う。
【0027】
上記方法において、プリフォームは、通常、断面の直径が一定の円柱状のものを用いるのが好ましい。
プリフォーム成形時の成形条件は、シリンダー温度が、通常、180〜350℃、好ましくは200〜320℃、より好ましくは220〜300℃の範囲である。シリンダー温度が過度に低いと流動性が悪化し、得られる容器にひずみを生じ、シリンダー温度が過度に高いと樹脂の熱分解等により容器が着色するおそれがある。
プリフォームの直径及び中空部分の内径、プリフォームの長さは目的とする容器の大きさにより適宜選択することができる。
ブロー成形時の成形条件は、用いる脂環式構造含有重合体樹脂のガラス転移温度をTgとした場合に、ブロー金型温度が、通常、(Tg−55℃)〜(Tg−10℃)、好ましくは(Tg−45℃)〜(Tg−5℃)である。
プリフォーム成形条件及びブロー成形条件が上記範囲にあると、容器の耐ソルベントクラック性が向上する。
【0028】
【実施例】
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて、より具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの例に限定されるものではない。
実施例における各種物性の測定法は、次の通りである。
1)ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC法)により測定した。
2)分子量は、特に記載しない限り、シクロへキサンを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリイソプレン換算値として測定した。
【0029】
〔重合体製造例〕
窒素雰囲気下、脱水したシクロへキサン500重量部に、1−へキセン0.82重量部、ジブチルエーテル0.15重量部、トリイソブチルアルミニウム0.30重量部を室温で反応器にいれ混合した後、45℃に保ちながら、トリシクロ[4.3.12,5.01,6]−デカ−3,7−ジエン(ジシクロペンタジエン、以下、DCPと略記)80重量部、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン(以下、MTFと略記)50重量部、及びテトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]−ドデカ−3−エン(以下、TCDと略記)70重量部からなるノルボルネン系モノマー混合物と、六塩化タングステン(0.7%トルエン溶液)40重量部とを、2時間かけて連続的に添加し重合した。重合溶液にブチルグリシジルエーテル1.06重量部とイソプロピルアルコール0.52重量部を加えて重合触媒を不活性化し重合反応を停止させた。重合体中の各ノルボルネン系モノマーの共重合比率を、重合後の溶液中の残留ノルボルネン類組成(ガスクロマトグラフィー法による)から計算したところ、DCP/MTF/TCD=40/25/35でほぼ仕込組成に等しかった。
【0030】
次いで、得られた開環重合体を含有する反応溶液100重量部に対して、シクロヘキサン270重量部を加え、さらに水素化触媒としてニッケル−アルミナ触媒[日揮化学社製]5重量部を加え、水素により5MPaに加圧して攪拌しながら温度200℃まで加温して4時間反応させ、DCP/MTF/TCD開環重合体水素化ポリマーを20%含有する反応溶液を得た。得られた反応溶液からろ過により水素化触媒を除去した後、軟質重合体[クラレ社製;セプトン2002]、及び酸化防止剤[チバスぺシャリティ・ケミカルズ社製;イルガノックス1010]を、添加して溶解させた(いずれも重合体100重量部あたり0.1重量部)。次いで、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を、円筒型濃縮乾燥器[日立製作所製]を用いて除去し、そして水素化重合体を押出機からストランド状に押出し、冷却後ペレット化して回収した。
この開環重合体水素添加物の、重量平均分子量(Mw)は35,000、水素添加率は99.9%、Tgは134℃であった。
【0031】
〔容器製造例〕
重合体製造例で得た原料樹脂ペレットを、空気を流通させた熱風乾燥器を用いて100℃で2時間乾燥した後、プリフォーム成形機[青木固研究所製;SBIII250]を用いて、シリンダー温度280℃、ホットランナー280℃、プリフォーム金型温度120℃の条件で、高さ150mm、断面の直径50mm、容量300mLのプリフォームを成形した。前記プリフォームは、開口部から15mmに渡り首部を有し、首部には螺子溝が形成されている。
次いで、上記プリフォームに対し、ブロー金型を用い、ブロー金型温度110℃の条件で、機械的延伸をかけながら上記プリフォーム内にエアーを吹き込むことによりブロー成形を行い、開口部を有する首部と、胴体部とを有する容器を得た。
【0032】
各実施例及び比較例において、容器製造例で得た脂環式構造含有重合体樹脂中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合が90重量%含まれているノルボルネン重合体樹脂成形品円筒状容器を使用した。
容器の寸法、バーナー形状、ノズル数、バーナー炎の状態、及びコンベア移動速度は、各例とも実施例1と同じである。
結果の判定は、ソルベントクラックテストは、フレーム処理した成形品をn−へキサンに10秒浸漬し、クラックの発生有無を確認し、クラックの発生しない場合を○、クラックの発生した場合を×とした。
印刷特性テストは、フレーム処理した成形品に、シルクスクリーン印刷法によりセイコーアドバンス社製インク(ウレタン系のSG740)を用いて印刷し、硬化処理のため80℃で30分間オーブン処理した。その成形品を沸騰水と氷水にそれぞれ20分間浸漬し、これを10回繰り返す。その後印刷部1cm四方をカッターで1mm間隔で碁盤目状にカットし市販の18mm粘着テープにより剥離試験を行なった。印刷部に剥がれの無い場合を○、剥がれた場合を×とした。
長期保管性テストは、フレーム処理した成形品5個を40℃のオーブンに1ヶ月放置した後取り出して観察し、フレーム処理面の亀裂の有無を確認し、1個も亀裂の発生しない場合を○、1個でもクラックの発生した場合を×とした。
【0033】
実施例1
フレーム処理を行なう容器は、直径が50mm、高さが150mm、胴部肉厚が1mm、内容積が300mLの寸法のものを使用した。この容器を、ワンピッチ移動方式で搬送するコンベアに載せ、内炎距離Lが8cmになるように設置した、1個のバーナーノズルの内径Dが0.8mmであるバーナー60個を垂直方向に接続配置したバーナーノズルの前を通過させた。このとき、フレーム処理時間が0.5秒で、ガスバーナーの正面を通過する被処理成形品の外表面速度が70cm/秒になるように設定した容器の回転状態で通過させて、フレーム処理実験を行なった。
このフレーム処理条件では、内炎距離Lが8cm、バーナーノズルの内径Dが0.8mmであるので、この場合の内炎距離Lとバーナーノズルの内径Dの比(L/D)は100である。
このフレーム処理実験を行なった容器のソルベントクラックテストは○、印刷特性テストは○、長期保管性テストは○であった。
実験条件及び結果を第1表に示す。
【0034】
実施例2〜5および比較例1〜5
第1表及び第2表のフレーム処理条件を採用した以外は、実施例1の通り成形品のフレーム処理を行なった。評価結果を第1表及び第2表に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
実施例1より内炎距離Lを短くした比較例1では明らかに悪い結果が出ている。この場合、内炎距離Lとバーナーノズルの内径Dの比(L/D)は75である。
比較例2は印刷特性が良くないが、この場合、内炎距離Lとバーナーノズルの内径Dの比(L/D)は175である。
実施例2でのガスバーナーの正面を通過する被処理成形品の外表面速度の半分のガスバーナーの正面を通過する被処理成形品の外表面速度で処理した比較例3では、ソルベントクラック試験と長期保管性で明らかに実施例2が優れている。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、成形品に多用されるフレ−ム処理を利用でき、条件の選定が難しい環状オレフィン系樹脂成形品表面へのインク密着性を改善し、ソルベントクラックの発生を防止し、また、成形品長期保存時のクラックの発生を防止できる環状オレフィン系樹脂成形品の本来の特性を損なうことなくフレーム処理する表面処理方法を提供することができ、耐ソルベントクラック性に優れた、医薬品用や食品用に好適なブロー成形容器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に用いるフレーム処理設備の側面図である。
【図2】図2a、b、cは、本発明に用いるフレーム処理設備の平面図である。
【図3】図3は、本発明に用いるバーナー炎の燃焼状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 コンベア機構
2 被処理成形品
3 ガスバーナー
4 ガスバーナー内炎
5 ガスバーナー外炎
L 内炎距離
11 ガスバーナーノズル
12 ガスバーナー内炎先端
D ガスバーナー内径
【発明の属する技術分野】
本発明は、環状オレフィン系樹脂成形品を、ガスバーナーの燃焼火炎によってフレーム処理する表面処理方法に関する。さらに詳しくは、環状オレフィン系樹脂成形品表面へのインク密着性を改善し、ソルベントクラックの発生を防止し、また、成形品長期保存時のクラックの発生を防止できる、環状オレフィン系樹脂成形品のフレーム表面処理方法及び該方法で製造した成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
医薬品容器や食品容器などは従来ガラス製のものが使用されてきたが、軽量化、易廃棄性などの観点からプラスチック製のものに置き換わりつつある。環状オレフィン系樹脂成形品、例えば熱可塑性ノルボルネン系樹脂製の容器が、透明性、耐熱性、耐薬品性、低溶出性などに優れるために医薬品容器や食品容器などに好適であることはすでに知られている(特開平9−77038号公報、特開平11−170345号公報、特開平11−170779号公報)。
容器の内容物の表示は通常表面に印刷ラベルを貼着して行われるが、容器の回収再生利用の観点で、容器とは材質の異なるラベルを貼る方式よりプラスチック製容器表面に直接印刷するのが好ましい。
しかし、プラスチック製容器表面に直接印刷するには、成形品表面の印刷性を向上させる表面処理が必要である。
プラスチック成形品の表面処理法としては、コロナ放電処理、プライマー処理、溶剤処理方法、フレーム処理などが知られている。
コロナ放電処理は、装置コストが高くつくほか、処理時にオゾンが発生し、発生したオゾンの処理のための設備が必要になるという問題がある。
プライマ−処理は、コ−ティング剤の選定が困難であり、コーティング剤によっては、表面にべたつきが残る上、工業製品の印刷の品質基準を満足させるのが難しくなる。また、溶剤処理法だけでは、印刷性の向上が不十分であり、フレーム処理は、成形品の変形、変色などを起こし易い問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、環状オレフィン系樹脂成形品の表面のインク密着性を改善し、ソルベントクラックの発生を防止し、さらに成形品長期保存時のクラックの発生を防止できる表面フレーム処理方法及び該方法で製造した成形品を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、環状オレフィン系樹脂成形品の表面処理方法を鋭意検討した結果、環状オレフィン系樹脂成形品を、特定の処理条件で、フレーム処理することによって、印刷性が向上し、且つ、ソルベントクラックなどの変形や変色が起きないことを見いだし、この知見に基づき、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
(1)環状オレフィン系樹脂成形品をフレーム処理する表面処理方法において、フレーム処理条件が、バーナー内炎先端と被処理成形品外表面との距離Lとバーナーノズルの内径Dの比(L/D)が80〜170及び被処理成形品の外表面がガスバーナーの正面を通過する際の、被処理成形品の外表面速度が50〜100cm/秒であることを特徴とする環状オレフィン系樹脂成形品のフレーム処理方法、
(2)フレーム処理条件において、フレーム処理時間が0.3〜0.9秒であることを特徴とする第1項記載の環状オレフィン系樹脂成形品のフレーム処理方法、
(3)環状オレフィン系樹脂成形品が、外径1〜15cmの筒形状であることを特徴とする第1項又は第2項記載の環状オレフィン系樹脂成形品のフレーム処理方法、
(4)環状オレフィン系樹脂が、ノルボルネン系重合体又はビニル脂環式炭化水素重合体であって、脂環式構造含有重合体樹脂中における脂環式構造を有する繰り返し単位の割合が、50重量%以上であることを特徴とする第1項、第2項又は第3項記載の環状オレフィン系樹脂成形品のフレーム処理方法、及び
(5)フレーム表面処理を施した環状オレフィン系樹脂成形品において、フレーム処理条件が、バーナー内炎先端と被処理成形品外表面との距離Lとバーナーノズルの内径Dの比(L/D)が80〜170及び被処理成形品の外表面がガスバーナーの正面を通過する際の、被処理成形品の外表面速度が50〜100cm/秒であることを特徴とする環状オレフィン系樹脂成形品、
を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の環状オレフィン系樹脂成形品をフレーム処理する表面処理方法においては、移動可能なコンベア機構上に環状オレフィン系樹脂成形品を保持し、該環状オレフィン系樹脂成形品を所定の、被処理成形品の外表面がガスバーナーの正面を通過する際の、被処理成形品の外表面速度に対応する速度で回転させながら、ガスバーナーによるフレーム処理領域に環状オレフィン系樹脂成形品を移行させて、所定時間のフレーム処理を行う。
ガスバーナーは、コンベア機構から所定の距離をおいた位置に、環状オレフィン系樹脂成形品の垂直方向と平行して、該樹脂成形品の高さに応じた個数を設置することができる。このガスバーナーによって、所定のフレーム処理時間加熱することにより、フレーム表面処理を行なうことができる。
【0006】
上記所定のガスバーナーの正面を通過する被処理成形品の外表面速度に対応する速度で駆動される該樹脂成形品の回転速度、バーナー内炎先端と被処理成形品外表面との距離L及びフレーム処理時間を調節することによって、本発明の、バーナー内炎先端と被処理成形品外表面との距離L(以下、内炎距離Lという)とバーナーノズルの内径Dの比(L/D)が80〜170、好ましくは80〜130、被処理成形品の外表面がガスバーナーの正面を通過する際の、被処理成形品の外表面速度が50〜100cm/秒及びフレーム処理時間が0.3〜0.9秒の処理条件を達成することができる。なお、内炎距離Lが、被処理成形品外表面の形状が円筒形でなく、部位によって異なる場合は、内炎先端と外表面との距離が最小となる部位での値をLの値として用いる。また、Dの値として、空気とガスが別々のノズルから供給されて燃焼する場合は、ガスのノズルの内径を用い、あらかじめ空気とガスが混合した状態で供給されて燃焼する場合は、図3に示すように混合ガス供給路の内径を用いる。なお、複数個のバーナーノズルを用いる場合の前記(L/D)は、各バーナーノズルの(L/D)の平均値とする。
【0007】
本発明においては、1)コンベア機構により被処理成形品をガスバーナーの前まで移動後停止させ、被処理成形品を回転させながらフレーム処理を所定時間行なった後に、処理後の被処理成形品を再び移動させるワンピッチ移動方式、または、2)コンベア機構により被処理成形品をガスバーナーの前で停止することなく回転させた状態のまま所定の速度で通過させながらフレーム処理を行なう連続移動方式があるが、前記1)の方式が好適に用いることができる。
本発明において、フレーム処理時のガスバーナーの正面を通過する被処理成形品の外表面速度は、被処理成形品外表面の被処理点がガスバーナーの正面前を通過する速度である。従って、被処理成形品が円筒形で、前記1)の方式で処理する場合の前記外表面速度は、回転する被処理成形品の外円周速度となる。また、被処理成形品が円筒形で、前記2)の方式で処理する場合の前記外表面速度は、図2aに示すように、被処理成形品がガスバーナーの正面を通過する回転方向がコンベア機構の移動方向と同じ場合には、コンベア機構の移動速度と被処理成形品の回転による外円周速度との和になる。そして、図2bに示すように、コンベア機構の進行方向と被処理成形品の回転方向が逆であれば、前記外表面速度は被処理成形品の回転による外円周速度とコンベア機構の移動速度との差になる。また、図2cに示すように、コンベア機構の進行方向と斜め方向にガスバーナーが設置された場合には、被処理成形品の回転による外円周速度と、ガスバーナーの正面を通過する被処理成形品外表面点での、コンベア機構の移動速度の接線方向速度成分とのベクトル和になる。例えば、コンベア機構進行方向の直角方向(図2a方向)から、45度斜めの方向にガスバーナーが設置された場合には、コンベア機構の移動速度の接線方向速度成分はコンベア機構の移動速度の(1/1.414)倍となる。
【0008】
本発明に用いるフレーム処理時間は、被処理成形品外表面の被処理点がガスバーナーの正面前を通過する時間である。従って、被処理成形品が筒形状
で、前記1)の方式で処理する場合の前記処理時間は、被処理成形品がガスバーナーの前で停止して熱処理を受けている時間をいう。また、被処理成形品が筒形状で、前記2)の方式で処理する場合の前記処理時間は、被処理成形品がガスバーナーの正面前を通過する際に、バーナー内径の10倍の長さを移動するのに要した時間をいう。
本発明に用いるコンベア機構は、環状オレフィン系樹脂成形品を所定の移動速度で移送することのできるものであれば、公知のものを特に制限することなく使用することができ、例えば、ベルト状のものを使用することができる。また、平面上をエンドレスに移動回転する方式又は立体的にエンドレスに移動回転する方式を使用することもできる。
【0009】
本発明に用いる環状オレフィン系樹脂成形品を回転駆動する機構は、公知のものを特に制限することなく使用することができる。例えば、回転速度変換機構を備えたモーターを、各回転軸の下部に配置させた構造のものを使用することができる。
本発明に用いるフレーム処理実施の一態様を、図1、図2a、b、c及び図3によって説明する。図1は、本発明に用いるフレーム処理設備の側面図で、図2a、b、cは本発明に用いるフレーム処理設備の平面図である。
図1及び図2a、b、cに示すように、本発明のフレーム処理は、所定の速度で移動するコンベア機構1上に保持されて、所定の速度で回転する被処理成形品2を、ガスバーナー内炎4の先端12から被処理成形品2の外表面までの所定の内炎距離Lに設置したガスバーナー3により所定の時間加熱することによって行なうことができる。ガスバーナー3の位置は移動機構(図示されていない)によって、前後に移動自在に固定されている。
上記所定の速度、回転速度、距離及び時間は本発明に用いるフレーム処理条件が、内炎距離Lとバーナーノズルの内径Dの比(L/D)が80〜170及びガスバーナーの正面を通過する被処理成形品の外表面速度が50〜100cm/秒及びフレーム処理時間が0.3〜0.9秒である条件に適合するように設定することができる。
【0010】
本発明に用いるフレーム処理の内炎距離Lは、7〜13cm、好ましくは8〜12cmにすることができる。
本発明に用いるガスバーナーの正面を通過する被処理成形品の外表面速度は、50〜100cm/秒、好ましくは60〜90cm/秒にすることができる。
本発明に用いるフレーム処理時間は、0.3秒〜0.9秒、好ましくは0.4秒〜0.7秒にすることができる。
図3は本発明に用いるバーナー炎の状態を示す。本発明のフレーム処理に用いるガスバーナーは、空気を内部供給するバーナーを使用することができる。
【0011】
このタイプのバーナーの燃焼状態においては、図3のガスバーナーノズル11の先端部の火炎中にガスバーナー内炎4が形成され、その温度は、通常300〜500℃となっている。この頂点が本発明で規定するガスバーナー内炎先端12であり、内炎は低温で燃焼し還元作用を有し、その外側にガスバーナー外炎5が形成される。外炎は高温で燃焼する酸化炎であり、通常温度1,500〜1,800℃となっている。ガスバーナーにガスのみを供給したときは内炎はできず、空気の供給量を増やしていくと内炎ができてくる。十分に空気を吸い込めば外炎は目視が困難となる。
本発明に用いるフレーム処理のバーナー用燃料ガスは、公知の燃料ガス、例えば都市ガス、LPGガス、LNGガス、プロパンガス等を使用することができる。
【0012】
本発明に用いる環状オレフィン系樹脂成形品は、原料の環状オレフィン系樹脂を用い、公知の熱可塑性樹脂の成形方法を特に制限なく使用して製造することができる。例えば、ダイレクトブロー、インジェクションブロー、インジェクション延伸ブローまたは多層ブローなどのブロー成形、射出成形及び押出成形によって容器等を製造することができ、とりわけ、ブロー成形が好ましく、その中でもインジェクション延伸ブローを特に好適に使用することができる。
本発明に用いる環状オレフィン系樹脂成形品は、環状オレフィン系樹脂を成形して得られた成形品であれば、その形状及び用途は特に限定されないが、好ましくは容器である。容器の外観形状としては、円柱状、角柱状、球状等が挙げられるが、衝撃強度等の観点から円柱状、角柱状が好ましい。容器は、開口部から底部にかけての裾広がり形状(錐状)であっても、高さ方向の中央部が膨らんだ形状(樽状)などであってもよい。また容器の底部の形状については特に制限されず、平面状であっても内側に向かって窪みのある形状であってもよい。
【0013】
本発明の成形品としての容器は、医薬品や食品等を密閉保存できるように、また、医薬品や食品等を密閉保存した状態でスチーム滅菌等の処理ができるように、蓋を取り付けることができる首部及び胴体部を有する形状であるのが好ましい。首部は、蓋が取り付けられ、かつ密閉できるように、螺子溝、蓋と嵌合可能な凹凸部等を有しているものが好ましい。
本発明の成形品としての容器は、液体、粉体状の薬品容器、特に薬品等を充填した後に滅菌して使用する薬品容器として適当である。具体的には無菌状態が高度に保持されることを要求される無菌精剤用の容器や、造影剤などの検査診断薬用の容器などに適当である。その他、点滴用容器や輸液キット用容器;点眼薬容器;純水用容器;血液分析用のサンプリング用試験管;採血管;検体容器;紫外線検査セルなどの分析容器;メスや鉗子、ガーゼ、コンタクトレンズなどの医療器具の滅菌容器;ディスポーザブルシリンジやプレフィルドシリンジなどの医療用具;ビーカー、バイアル瓶、アンプル、試験管、フラスコなどの実験器具;人工臓器のハウジングなどに好適に使用できる。
【0014】
また、本発明の成形品としての容器は、食料品保存容器、清涼飲料水などのボトルとしても好適であるが、特に、食器、哺乳瓶、マグカップなどのように皮脂や唾液等からの油分が付着しやすい食品容器としても好適であり、哺乳瓶として最も好適である。
本発明に用いる環状オレフィン系樹脂は脂環式構造含有重合体樹脂であり、重合体の繰り返し単位中に脂環式構造を含有するものであり、脂環式構造を主鎖及び側鎖のいずれに有していてもよい。脂環式構造としては、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造などが挙げられるが、熱安定性等の観点からシクロアルカン構造が好ましい。脂環式構造を構成する炭素原子数は、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であると、耐熱性及び透明性に優れた容器が得られる。
【0015】
脂環式構造含有重合体樹脂中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。脂環式構造含有重合体樹脂中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合が過度に少ないと耐熱性が低下し好ましくない。なお、脂環式構造含有重合体樹脂中の脂環式構造を有する繰り返し単位以外の残部は、使用目的に応じて適宜選択される。
脂環式構造含有重合体樹脂の具体例としては、1)ノルボルネン系重合体、2)単環の環状オレフィン系重合体、3)環状共役ジエン系重合体、4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度等の観点から、ノルボルネン系重合体水素化物、ビニル脂環式炭化水素重合体及びその水素化物などが好ましい。
【0016】
1)ノルボルネン系重合体
本発明に用いるノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーと、これと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、これらの水素化物、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーと、これと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度等の観点から、ノルボルネン系モノマーの開環共重合体水素化物が最も好ましい。
ノルボルネン系モノマーとしては、ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)、トリシクロ[4.3.12,5.01,6]−デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)及びその誘導体、テトラシクロ[7.4.110,13.01,9.02,7]−トリデカ−2,4,6,11−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう:慣用名メタノテトラヒドロフルオレン)及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]−ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)及びその誘導体、などが挙げられる。
【0017】
置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基などが例示でき、上記ノルボルネン系モノマーは、これらを2種以上有していてもよい。具体的には、8−メトキシカルボニル基−テトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]−ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]−ドデカ−3−エンなどが挙げられる。
これらのノルボルネン系モノマーは、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
これらノルボルネン系モノマーの開環重合体、またはノルボルネン系モノマーと、これと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体は、モノマー成分を、公知の開環重合触媒の存在下で重合して得ることができる。開環重合触媒としては、例えば、ルテニウム、オスミウムなどの金属のハロゲン化物と、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物、及び還元剤とからなる触媒、あるいは、チタン、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いることができる。
【0018】
ノルボルネン系モノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィン系単量体などを挙げることができる。
ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体水素化物は、通常、上記開環(共)重合体の重合溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を水素化することにより得ることができる。
【0019】
ノルボルネン系モノマーの付加重合体、またはノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとの付加(共)重合体は、これらのモノマーを、公知の付加重合触媒、例えば、チタン、ジルコニウム又はバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いて(共)重合させて得ることができる。
ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエンなどが用いられる。これらの中でも、α−オレフィン、特にエチレンが好ましい。
これらの、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。ノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとを付加共重合する場合は、付加共重合体中のノルボルネン系モノマー由来の構造単位と共重合可能なその他のモノマー由来の構造単位との割合が、重量比で通常30:70〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは70:30〜95:5の範囲となるように適宜選択される。
【0020】
2)単環の環状オレフィン系重合体
単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィン系単量体の付加重合体を用いることができる。
【0021】
3)環状共役ジエン系重合体
環状共役ジエン系重合体としては、例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの環状共役ジエン系単量体を1,2−または1,4−付加重合した重合体及びその水素化物などを用いることができる。
本発明で使用されるノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体又は環状共役ジエン系重合体の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常5,000〜500,000、好ましくは8,000〜200,000、より好ましくは10,000〜100,000の範囲であるときに、容器の機械的強度、及び成形加工性とが高度にバランスされて好適である。
【0022】
4)ビニル脂環式炭化水素重合体
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサンなどのビニル脂環式炭化水素系単量体の重合体及びその水素化物;スチレン、α−メチルスチレンなどのビニル芳香族系単量体の重合体の芳香環部分の水素化物などが挙げられ、ビニル脂環式炭化水素重合体やビニル芳香族系単量体と、これらの単量体と共重合可能な他の単量体とのランダム共重合体、ブロック共重合体などの共重合体及びその水素化物など、いずれでもよい。ブロック共重合体としては、ジブロック、トリブロック、またはそれ以上のマルチブロックや傾斜ブロック共重合体などが挙げられ、特に制限はない。
【0023】
本発明で使用されるビニル脂環式炭化水素重合体の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法で測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常10,000〜300,000、好ましくは15,000〜250,000、より好ましくは20,000〜200,000の範囲であるときに、容器の機械的強度及び成形加工性とが高度にバランスされて好適である。
本発明で使用される脂環式構造含有重合体樹脂のガラス転移温度(Tg)は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常、80℃以上、好ましくは100℃〜250℃、より好ましくは120℃〜200℃の範囲である。この範囲において、耐熱性と成形加工性とが高度にバランスされ好適である。
【0024】
なお、本発明で使用される脂環式構造含有重合体樹脂には、必要に応じて各種配合剤を配合することができる。配合剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤等の安定剤;滑剤、可塑剤等の樹脂改質剤;染料や顔料等の着色剤;帯電防止剤等が挙げられる。これらの配合剤は、単独で、あるいは2種以上を組み合せて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損ねない範囲で適宜選択される。
酸化防止剤としては、たとえばフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤、特にアルキル置換フェノール系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤を配合することにより、透明性等を低下させることなく、成形時の酸化劣化等による容器の着色や強度低下を防止できる。
これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、あるいは2種以上を組み合わせて用いることもできる。酸化防止剤の配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、脂環式構造含有重合体樹脂100重量部に対して通常0.001〜5重量部、好ましくは0.01〜1重量部である。
【0025】
また、本発明に用いる脂環式構造含有重合体樹脂には、他の種類の重合体(ゴムや樹脂)を混合して、重合体組成物として成形材料に供することもできる。
具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系重合体;ポリイソブチレン、イソブチレン・イソプレンゴムなどのイソブチレン系重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン・スチレンランダム共重合体、イソプレン・スチレンランダム共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、イソプレン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン・ブロック共重合体などのジエン系重合体;ポリブチルアクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレートなどのアクリル系重合体;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル・スチレン共重合体などのビニル化合物の重合体;ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エピクロルヒドリンゴムなどのエポキシ系重合体;フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴムなどのフッ素系重合体などが挙げられる。これらの軟質重合体は、架橋構造を有したものであってもよく、また、変性反応により官能基を導入したものでもよい。
【0026】
上記重合体の中でもジエン系重合体が好ましく、特に該重合体の炭素−炭素不飽和結合を水素化した水素化物が、ゴム弾性、機械強度、柔軟性、分散性の点で優れる。
本発明においては、例えば、上記の脂環式構造含有重合体樹脂をブロー成形して得られた容器を使用することができる。容器の厚みは、通常、0.5〜3mm、好ましくは0.7〜2mmである。
ブロー成形法として、インジェクション延伸ブロー成形法を用いた場合には、
1)射出成形により、開口部を有する中空体であるプリフォームを成形した後、
2)前記プリフォームをブロー金型内に挿入し、加熱溶融かつ機械的に延伸させながら開口部より内部にエアーを吹き込んでブロー成形を行う。
【0027】
上記方法において、プリフォームは、通常、断面の直径が一定の円柱状のものを用いるのが好ましい。
プリフォーム成形時の成形条件は、シリンダー温度が、通常、180〜350℃、好ましくは200〜320℃、より好ましくは220〜300℃の範囲である。シリンダー温度が過度に低いと流動性が悪化し、得られる容器にひずみを生じ、シリンダー温度が過度に高いと樹脂の熱分解等により容器が着色するおそれがある。
プリフォームの直径及び中空部分の内径、プリフォームの長さは目的とする容器の大きさにより適宜選択することができる。
ブロー成形時の成形条件は、用いる脂環式構造含有重合体樹脂のガラス転移温度をTgとした場合に、ブロー金型温度が、通常、(Tg−55℃)〜(Tg−10℃)、好ましくは(Tg−45℃)〜(Tg−5℃)である。
プリフォーム成形条件及びブロー成形条件が上記範囲にあると、容器の耐ソルベントクラック性が向上する。
【0028】
【実施例】
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて、より具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの例に限定されるものではない。
実施例における各種物性の測定法は、次の通りである。
1)ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC法)により測定した。
2)分子量は、特に記載しない限り、シクロへキサンを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリイソプレン換算値として測定した。
【0029】
〔重合体製造例〕
窒素雰囲気下、脱水したシクロへキサン500重量部に、1−へキセン0.82重量部、ジブチルエーテル0.15重量部、トリイソブチルアルミニウム0.30重量部を室温で反応器にいれ混合した後、45℃に保ちながら、トリシクロ[4.3.12,5.01,6]−デカ−3,7−ジエン(ジシクロペンタジエン、以下、DCPと略記)80重量部、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン(以下、MTFと略記)50重量部、及びテトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]−ドデカ−3−エン(以下、TCDと略記)70重量部からなるノルボルネン系モノマー混合物と、六塩化タングステン(0.7%トルエン溶液)40重量部とを、2時間かけて連続的に添加し重合した。重合溶液にブチルグリシジルエーテル1.06重量部とイソプロピルアルコール0.52重量部を加えて重合触媒を不活性化し重合反応を停止させた。重合体中の各ノルボルネン系モノマーの共重合比率を、重合後の溶液中の残留ノルボルネン類組成(ガスクロマトグラフィー法による)から計算したところ、DCP/MTF/TCD=40/25/35でほぼ仕込組成に等しかった。
【0030】
次いで、得られた開環重合体を含有する反応溶液100重量部に対して、シクロヘキサン270重量部を加え、さらに水素化触媒としてニッケル−アルミナ触媒[日揮化学社製]5重量部を加え、水素により5MPaに加圧して攪拌しながら温度200℃まで加温して4時間反応させ、DCP/MTF/TCD開環重合体水素化ポリマーを20%含有する反応溶液を得た。得られた反応溶液からろ過により水素化触媒を除去した後、軟質重合体[クラレ社製;セプトン2002]、及び酸化防止剤[チバスぺシャリティ・ケミカルズ社製;イルガノックス1010]を、添加して溶解させた(いずれも重合体100重量部あたり0.1重量部)。次いで、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を、円筒型濃縮乾燥器[日立製作所製]を用いて除去し、そして水素化重合体を押出機からストランド状に押出し、冷却後ペレット化して回収した。
この開環重合体水素添加物の、重量平均分子量(Mw)は35,000、水素添加率は99.9%、Tgは134℃であった。
【0031】
〔容器製造例〕
重合体製造例で得た原料樹脂ペレットを、空気を流通させた熱風乾燥器を用いて100℃で2時間乾燥した後、プリフォーム成形機[青木固研究所製;SBIII250]を用いて、シリンダー温度280℃、ホットランナー280℃、プリフォーム金型温度120℃の条件で、高さ150mm、断面の直径50mm、容量300mLのプリフォームを成形した。前記プリフォームは、開口部から15mmに渡り首部を有し、首部には螺子溝が形成されている。
次いで、上記プリフォームに対し、ブロー金型を用い、ブロー金型温度110℃の条件で、機械的延伸をかけながら上記プリフォーム内にエアーを吹き込むことによりブロー成形を行い、開口部を有する首部と、胴体部とを有する容器を得た。
【0032】
各実施例及び比較例において、容器製造例で得た脂環式構造含有重合体樹脂中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合が90重量%含まれているノルボルネン重合体樹脂成形品円筒状容器を使用した。
容器の寸法、バーナー形状、ノズル数、バーナー炎の状態、及びコンベア移動速度は、各例とも実施例1と同じである。
結果の判定は、ソルベントクラックテストは、フレーム処理した成形品をn−へキサンに10秒浸漬し、クラックの発生有無を確認し、クラックの発生しない場合を○、クラックの発生した場合を×とした。
印刷特性テストは、フレーム処理した成形品に、シルクスクリーン印刷法によりセイコーアドバンス社製インク(ウレタン系のSG740)を用いて印刷し、硬化処理のため80℃で30分間オーブン処理した。その成形品を沸騰水と氷水にそれぞれ20分間浸漬し、これを10回繰り返す。その後印刷部1cm四方をカッターで1mm間隔で碁盤目状にカットし市販の18mm粘着テープにより剥離試験を行なった。印刷部に剥がれの無い場合を○、剥がれた場合を×とした。
長期保管性テストは、フレーム処理した成形品5個を40℃のオーブンに1ヶ月放置した後取り出して観察し、フレーム処理面の亀裂の有無を確認し、1個も亀裂の発生しない場合を○、1個でもクラックの発生した場合を×とした。
【0033】
実施例1
フレーム処理を行なう容器は、直径が50mm、高さが150mm、胴部肉厚が1mm、内容積が300mLの寸法のものを使用した。この容器を、ワンピッチ移動方式で搬送するコンベアに載せ、内炎距離Lが8cmになるように設置した、1個のバーナーノズルの内径Dが0.8mmであるバーナー60個を垂直方向に接続配置したバーナーノズルの前を通過させた。このとき、フレーム処理時間が0.5秒で、ガスバーナーの正面を通過する被処理成形品の外表面速度が70cm/秒になるように設定した容器の回転状態で通過させて、フレーム処理実験を行なった。
このフレーム処理条件では、内炎距離Lが8cm、バーナーノズルの内径Dが0.8mmであるので、この場合の内炎距離Lとバーナーノズルの内径Dの比(L/D)は100である。
このフレーム処理実験を行なった容器のソルベントクラックテストは○、印刷特性テストは○、長期保管性テストは○であった。
実験条件及び結果を第1表に示す。
【0034】
実施例2〜5および比較例1〜5
第1表及び第2表のフレーム処理条件を採用した以外は、実施例1の通り成形品のフレーム処理を行なった。評価結果を第1表及び第2表に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
実施例1より内炎距離Lを短くした比較例1では明らかに悪い結果が出ている。この場合、内炎距離Lとバーナーノズルの内径Dの比(L/D)は75である。
比較例2は印刷特性が良くないが、この場合、内炎距離Lとバーナーノズルの内径Dの比(L/D)は175である。
実施例2でのガスバーナーの正面を通過する被処理成形品の外表面速度の半分のガスバーナーの正面を通過する被処理成形品の外表面速度で処理した比較例3では、ソルベントクラック試験と長期保管性で明らかに実施例2が優れている。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、成形品に多用されるフレ−ム処理を利用でき、条件の選定が難しい環状オレフィン系樹脂成形品表面へのインク密着性を改善し、ソルベントクラックの発生を防止し、また、成形品長期保存時のクラックの発生を防止できる環状オレフィン系樹脂成形品の本来の特性を損なうことなくフレーム処理する表面処理方法を提供することができ、耐ソルベントクラック性に優れた、医薬品用や食品用に好適なブロー成形容器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に用いるフレーム処理設備の側面図である。
【図2】図2a、b、cは、本発明に用いるフレーム処理設備の平面図である。
【図3】図3は、本発明に用いるバーナー炎の燃焼状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 コンベア機構
2 被処理成形品
3 ガスバーナー
4 ガスバーナー内炎
5 ガスバーナー外炎
L 内炎距離
11 ガスバーナーノズル
12 ガスバーナー内炎先端
D ガスバーナー内径
Claims (5)
- 環状オレフィン系樹脂成形品をフレーム処理する表面処理方法において、フレーム処理条件が、バーナー内炎先端と被処理成形品外表面との距離Lとバーナーノズルの内径Dの比(L/D)が80〜170及び被処理成形品の外表面がガスバーナーの正面を通過する際の、被処理成形品の外表面速度が50〜100cm/秒であることを特徴とする環状オレフィン系樹脂成形品のフレーム処理方法。
- フレーム処理条件において、フレーム処理時間が0.3〜0.9秒であることを特徴とする請求項1記載の環状オレフィン系樹脂成形品のフレーム処理方法。
- 環状オレフィン系樹脂成形品が、外径1〜15cmの筒形状であることを特徴とする請求項1又は2記載の環状オレフィン系樹脂成形品のフレーム処理方法。
- 環状オレフィン系樹脂が、ノルボルネン系重合体又はビニル脂環式炭化水素重合体であって、脂環式構造含有重合体樹脂中における脂環式構造を有する繰り返し単位の割合が、50重量%以上であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の環状オレフィン系樹脂成形品のフレーム処理方法。
- フレーム表面処理を施した環状オレフィン系樹脂成形品において、フレーム処理条件が、バーナー内炎先端と被処理成形品外表面との距離Lとバーナーノズルの内径Dの比(L/D)が80〜170及び被処理成形品の外表面がガスバーナーの正面を通過する際の、被処理成形品の外表面速度が50〜100cm/秒であることを特徴とする環状オレフィン系樹脂成形品。
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JP2002178568A JP2004018772A (ja) | 2002-06-19 | 2002-06-19 | 環状オレフィン系樹脂成形品のフレーム処理方法及び環状オレフィン系樹脂成形品 |
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JP2016155594A (ja) * | 2015-02-26 | 2016-09-01 | 日本クロージャー株式会社 | キャップ、キャップ表面処理方法及び装置 |
-
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- 2002-06-19 JP JP2002178568A patent/JP2004018772A/ja active Pending
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