JP4136996B2 - 熱可塑性ノルボルネン系樹脂からなる物品の成形方法 - Google Patents
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Description
現在市場に出ている主な環状オレフィン系樹脂としては、環状オレフィンのみからなる重合体とエチレンとの共重合体とがあるが、共重合体系の樹脂は、押出成形などの溶融成形法によりフィルムやシートに成形した場合、フィッシュアイと呼ばれる架橋ゲル状物の粒子が数多く発生する。フィッシュアイは、成形品の外観を損なうばかりでなく、光学フィルムなどの光学用途においては光学特性に悪影響を及ぼし、また、延伸フィルムにおいてはこれが一層際立つために表面の平滑性を損ない、印刷性を低下させるなど、成形品の物性、特性においても好ましくない存在である。
原料樹脂の製造中にゲルが発生するのを防ぐためには、例えば、特許文献1に開示されているとおり、重合の仕上げ工程で溶媒の除去を不活性雰囲気下で行う方法、重合後に酸化防止剤を添加する方法などがあり、発生したゲルはポリマースクリーンによって取り除かれる。
また、フィッシュアイは、押出成形などにおいて原料樹脂をシリンダー中で加熱しながらスクリューで混練して溶融する際にも、原料樹脂が架橋反応してゲル化することによっても発生する。このような溶融成形時のゲル化によるフィッシュアイの発生を抑制するため、例えば、特許文献2に開示されているとおり、特殊なフライト構造の混練用スクリューを有する押出機を用いる方法が提案されている。
すなわち、本発明の要旨は、環状オレフィンとα−オレフィンとの共重合体からなる熱可塑性ノルボルネン系樹脂を用いて物品を溶融成形する方法において、剪断力を受けない状態で加熱することにより下記数式1で表されるゲル発生温度領域の上限Tuより高い温度に昇温させた状態で前記樹脂を混練溶融することを特徴とする物品の成形方法にある。
<数式1>
Tu(℃)=8.52Tg 0.605
(式中、Tgは前記樹脂のガラス転移温度(℃)を表す。)
前記環状オレフィンは特にノルボルネン又はテトラシクロドデセンであり、前記α−オレフィンは特にエチレン又はプロピレンであり、前記樹脂を予熱するために原料供給用ホッパー内で該樹脂同士が融着しないように搬送しながら熱風により加熱することが望ましい。
なお、上に例示したモノマー以外にも、例えば特開2003−128865公報に開示されている多数の環状オレフィンが挙げられる。
これらの環状オレフィンは、それぞれ単独であるいは2種以上組合わせて用いることができる。
Tu=8.52Tg0.605
上記の関係式は、3種の環状オレフィン共重合体(TICONA社製、商品名“Topas”)について、後述する試験法を用いて各共重合体のTgとTuを測定し、その試験結果から導き出されたものである。
50℃で12時間乾燥した樹脂から0.4mg秤量して試料とし、パーキンエルマー社製のDSC7示差走査型熱量計を用いて、窒素ガス流通下において20℃/分の昇温速度で50℃から250℃まで昇温し、DSC曲線を得た。得られたDSC曲線からTgを読み取った。
東洋精機社製のラボプラストミル(ミキサー)を用い、これに試料樹脂10gを仕込んで5分間予熱し、試験温度に昇温させた後、20rpmの回転数で3分間混練した。混練後の試料樹脂2gをシクロヘキサン40ml中に浸漬し、23℃で48時間攪拌して溶解させた。混練により発生した架橋ゲルは溶媒中で膨潤し溶解せずに残存しており、その存在を目視により確認した。
ゲル発生の有無及びその程度は、以下に示す基準で判定した。
○ ゲルの発生がない(不溶物が認められない)
△ ゲルがわずかに発生している(不溶物がわずかに沈殿している)
▲ ゲルがかなり発生している(溶液全体に不溶物が認められる)
■ 多量のゲルが発生している(多量の不溶物が沈殿している)
* 適正な混練溶融に必要な温度領域に達しないため混練不能
また、別の予熱方法として、例えば、ホッパー内では加熱せず、又は樹脂のTg以下の一定温度に達するまで加熱し、次いで、シリンダー内に搬送された樹脂を混練せずに搬送しながら加熱し、所望の温度まで昇温させた樹脂を混練ゾーンに搬送する方法も有効である。
1軸押出機(シリンダー径:φ35mm、L/D:24、スクリュー形状:フルフライト)を用い、ゲル発生温度領域の上限Tuが117℃であることを確認した環状オレフィン系樹脂(TICONA社製のノルボルネン/エチレン共重合体、商品名“Topas8007”)を原料供給用ホッパーに投入した。
樹脂材料は熱風で加熱され、樹脂同士の融着を防ぐため振動しているホッパーの内壁に設置した数枚の金属メッシュ製の戸板を通して徐々に下方へ搬送され、130℃に昇温した樹脂材料をシリンダー温度が原料供給部の180℃から先端部の220〜230℃に昇温設定された押出混練ゾーンへ供給された。
押出機先端に設置され、240℃に温度設定されたTダイにより厚さ0.1mmの透明なシートを成形した。目視による観察では、得られたシートにフィッシュアイの発生は殆ど全く認められなかった。
原料樹脂として、Tuが166℃であることを確認した環状オレフィン系樹脂(TICONA社製のノルボルネン/エチレン共重合体、商品名“Topas6013”)を用い、樹脂材料を予熱して180℃まで昇温させたこと以外は、実施例1と同様にしてシート成形を行った。
実施例1と同様、得られたシートにフィッシュアイの発生は認められなかった。
原料樹脂として、Tuが182℃であることを確認した環状オレフィン系樹脂(TICONA社製のノルボルネン/エチレン共重合体、商品名“Topas6015”)を用い、樹脂材料を予熱して190℃まで昇温させたこと以外は、実施例1と同様にしてシート成形を行った。
実施例1と同様、得られたシートにフィッシュアイの発生は認められなかった。
押出機として2軸押出機(シリンダー径:φ20mm、L/D:24)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてシート成形を行った。
実施例1と同様、得られたシートにフィッシュアイの発生は認められなかった。
射出成形機(シリンダー径:φ28mm、型締力:760kN)を用い、実施例3で用いた樹脂を原料供給用ホッパーに投入した。
実施例1と同様の予熱方法により樹脂材料をホッパー内で予熱し、190℃まで昇温させた樹脂材料を混練ゾーンへ供給した。溶融した樹脂材料を金型内に射出し、厚さ2mm、縦150mm、横130mmの透明板を成形した。
得られた透明板を90℃、1分間加熱した後、テスト延伸機にて横方向に3倍延伸し、目視で観察したが、延伸前も延伸後も透明板にフィッシュアイの発生は殆ど全く認められなかった。
樹脂材料を熱風により予め昇温させることを行わなかったこと以外は、実施例1と同様にしてシート成形を行った。
得られたシートには多数のフィッシュアイが発生していた。
樹脂材料を熱風により予め昇温させることを行わなかったこと以外は、実施例2と同様にしてシート成形を行った。
得られたシートには多数のフィッシュアイが発生していた。
樹脂材料を熱風により予め昇温させることを行わなかったこと以外は、実施例3と同様にしてシート成形を行った。
得られたシートには多数のフィッシュアイが発生していた。
樹脂材料を予熱して110℃まで昇温させたこと以外は、実施例1と同様にしてシート成形を行った。
得られたシートには多数のフィッシュアイが発生していた。
樹脂材料を熱風により予め昇温させることを行わなかったこと以外は、実施例4と同様にしてシート成形を行った。
得られたシートには多数のフィッシュアイが発生していた。
樹脂材料を熱風により予め昇温させることを行わなかったこと以外は、実施例5と同様にして射出成形法で厚さ2mmの透明板を成形した。
得られた透明板は、目視ではフィッシュアイの発生が確認できなかったが、実施例5と同様にして延伸したところ、延伸後の透明板においてはフィッシュアイが多数発生していることを確認した。
Claims (3)
- 環状オレフィンとα−オレフィンとの共重合体からなる熱可塑性ノルボルネン系樹脂を用いて物品を溶融成形する方法において、剪断力を受けない状態で加熱することにより下記数式1で表されるゲル発生温度領域の上限Tuより高い温度に昇温させた状態で前記樹脂を混練溶融することを特徴とする物品の成形方法。
<数式1>
Tu(℃)=8.52Tg 0.605
(式中、Tgは前記樹脂のガラス転移温度(℃)を表す。) - 前記環状オレフィンがノルボルネン又はテトラシクロドデセンであり、前記α−オレフィンがエチレン又はプロピレンである請求項1に記載の物品の成形方法。
- 前記樹脂を予熱するために原料供給用ホッパー内で該樹脂同士が融着しないように搬送しながら熱風により加熱することを特徴とする請求項1に記載の物品の成形方法。
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