JP2004018393A - 貼付剤 - Google Patents
貼付剤 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004018393A JP2004018393A JP2002171605A JP2002171605A JP2004018393A JP 2004018393 A JP2004018393 A JP 2004018393A JP 2002171605 A JP2002171605 A JP 2002171605A JP 2002171605 A JP2002171605 A JP 2002171605A JP 2004018393 A JP2004018393 A JP 2004018393A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- pressure
- sensitive adhesive
- support
- adhesive layer
- drug
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Abstract
【課題】接着性や粘着性、凝集性などの粘着物性に悪影響を与えることなく、粘着剤層の支持体への投錨性を向上させ、かつ支持体への下塗り後、温度および湿度の管理なしの条件において保存安定性に優れた下塗り支持体を使用した貼付剤の提供。
【解決手段】支持体の片面にポリブタジエン系アンカーコート剤からなる下塗り層を形成し、その上に粘着剤層が形成されている貼付剤。
【選択図】 なし
【解決手段】支持体の片面にポリブタジエン系アンカーコート剤からなる下塗り層を形成し、その上に粘着剤層が形成されている貼付剤。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は皮膚面に貼付して傷口を保護したり、薬物を皮膚から生体内に連続的に投与しうる投錨性に優れた貼付剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、薬物を皮膚面を通して生体内へ投与するための貼付剤として、粘着剤を用いたテープ剤などが種々開発されている。
【0003】
貼付剤から薬物を効果的に皮膚面に放出させ、しかも皮膚内に吸収させるには、ある程度薬物濃度を高める必要がある。しかし、薬物濃度を高めることにより粘着剤中で薬物が過飽和状態あるいは結晶状態となり、粘着剤の支持体への投錨性が低下し、貼付剤を皮膚から除去する際に、粘着剤が皮膚面上に残るという問題が生じる。
【0004】
特開平2−212419号公報には、不織布や織布などを積層した支持体上に粘着剤層を形成して粘着剤の支持体への投錨性を向上させ、粘着剤の糊残りを防止した貼付剤が提案されている。
【0005】
しかし、この貼付剤は粘着剤層が不織布や織布の凹凸を充分にカバーできる厚みを有する場合は問題を生じないが、薬物の利用率を考慮して薬物を含有する粘着剤層を薄くしたとき、粘着剤層が不織布や織布の凹凸を充分にカバーしきれず、皮膚への接着性が低下したり、逆に皮膚への糊残りが生じやすくなったりする。また、極薄の不織布や織布を用いることは可能ではあるがコスト高となる。
【0006】
さらに、肘や膝などに貼付するために伸縮性が要求される貼付剤の場合には、単層では非常に伸縮性のある支持体でも、不織布や織布を積層加工することで、著しく伸縮性が損なわれる。
【0007】
また、特開平6−310559号公報には、支持体表面への下塗り剤としてイソシアネート系化合物を用いて支持体と粘着剤層との投錨性を向上させる技術が提案されている。しかしながら、イソシアネート系化合物はポットライフが極めて短いために水分の遮断や反応温度を低温制御するなどの手段を必要とし、操作が極めて煩雑となる。さらにイソシアネート系化合物は反応性が高いので、粘着剤や薬物の種類によっては粘着剤と架橋反応などを起こして粘着物性を変化させたり、薬物と分解反応を起こしたりすることもあり、その使用においては充分な注意が必要である。
【0008】
さらに、特開平8−92074号公報には、支持体表面への下塗り剤としてエチレンイミン変性したアクリル系ポリマーまたはポリエチレンイミンを用いて支持体と粘着剤層との投錨性を向上させる技術が提案されている。エチレンイミン変性したアクリル系ポリマーまたはポリエチレンイミンは、アミノ基(−NH2)を持ち、高い極性と反応性に富み、実際に支持体表面への下塗り剤として使用されている。しかしながら、エチレンイミン変性したアクリル系ポリマーまたはポリエチレンイミンは、高い極性と反応性に富む反面、水への親和性が強い。したがって、支持体への下塗り処理後、下塗り支持体を温度および湿度の管理なしで保存すると、環境中の水や湿度によってアミノ基の効果が徐々に低減し、やがて失われてしまう。製造頻度が低い貼付剤では、下塗り支持体をまとめて作製しておくことができず、製造作業の効率がよくない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、接着性や粘着性、凝集性などの粘着物性に悪影響を与えることなく、粘着剤層の支持体への投錨性を向上させ、かつ支持体への下塗り後、温度および湿度の管理なしの条件において保存安定性に優れた貼付剤を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意努力した結果、支持体の片面にポリブタジエン系アンカーコート剤からなる下塗り層を形成し、その上に粘着剤層が形成されてなる貼付剤とすることで、粘着物性に悪影響を与えることなく、粘着剤層の支持体への投錨性を向上させることができ、かつ支持体への下塗り後、温度および湿度の管理なしの条件においても下塗り層の保存安定性が優れていることを見出して本発明を完成させた。すなわち、本発明によれば、従来からの貼付剤に用いる支持体と粘着剤層との間に特定の組成からなる下塗り層を形成しているので、支持体と粘着剤層との投錨性が良好であり、皮膚に貼付使用したのちに剥離除去する際に、皮膚面への糊残り現象が生じない。さらに、本発明によれば、粘着剤の物性(粘着特性)を変化させず、かつ、本発明において下塗り層として用いるポリブタジエン系アンカーコート剤は極めて良好な保存安定性を発揮するので、下塗り後の支持体を長期間保存した後に貼付剤の製造に使用しても、投錨性が良好な貼付剤を得ることができる。
【0011】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)支持体の片面にポリブタジエン系アンカーコート剤からなる下塗り層が形成され、その上に粘着剤層が形成されてなる貼付剤。
(2)ポリブタジエン系アンカーコート剤が、1,2−ポリブタジエン鎖の末端に水酸基またはカルボキシル基を有するものである、前記(1)記載の貼付剤。
(3)粘着剤層を形成する粘着剤がアクリル系粘着剤である、前記(1)または(2)記載の貼付剤。
(4)粘着剤層を形成する粘着剤が炭素数4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いた重合体を含有する粘着剤である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の貼付剤。
(5)粘着剤層に薬物が含有されている、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の貼付剤。
(6)粘着剤層に結晶状態または無定形状態の薬物が分散している、前記(5)記載の貼付剤。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明に用いる支持体は特に限定されないが、プラスチックフィルムが好ましく、具体的には、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルアルコールなどの単層または積層フィルムが挙げられる。また、プラスチックフィルム以外に、金属箔とのラミネートフィルムを用いることができる。
【0013】
上記支持体のうち、伸縮性を有するものが好ましく、例えばポリエチレン、多孔質ポリエチレン、ポリエステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、多孔質ポリテトラフルオロエチレンなどの単層または積層フィルムなどが挙げられる。
【0014】
支持体の厚みは、通常5〜1000μm、好ましくは5〜100μm、柔軟性および貼付操作性のバランスから、さらに好ましくは10〜50μmである。
【0015】
下塗り層として用いるポリブタジエン系アンカーコート剤は、本発明において投錨力の向上などの重要な役割を果たすものである。本発明におけるポリブタジエン系アンカーコート剤としては、末端に水酸基(−OH)またはカルボキシル基(−COOH)を有する1,2−ポリブタジエンが特に有効に用いられる。すなわち、1,2−ポリブタジエン鎖の両末端を水酸基またはカルボキシル基で変性し、水分散化(エマルション化)したもので、無色ないし微黄色の液状ポリマーからなり、水またはアルコールで希釈して用いることができる。
【0016】
また、上記ポリブタジエン系アンカーコート剤は、支持体への塗布乾燥を経て、ポリブタジエンの二重結合が架橋反応することにより、耐湿性および耐水性のある塗膜を生成する。
【0017】
上記材料からなる下塗り層は、支持体の片面に固形分換算で0.001〜0.1g/m2、好ましくは0.01〜0.1g/m2の範囲で塗布形成する。塗布量が0.001g/m2に満たない場合は、ポリブタジエン系アンカーコート剤が支持体と粘着剤層とを投錨する効果が弱くなる。一方、塗布量が0.1g/m2を超える場合には、ポリブタジエン系アンカーコート剤によって粘着剤層の粘着物性が変化する。
【0018】
粘着剤としてはアクリル系、天然ゴム系、合成ゴム系、シリコーン系、ビニルエーテル系、ビニルエステル系などの粘着剤が挙げられる。その中で好ましいのはアクリル系粘着剤であり、粘着力が強く、皮膚刺激が少ない上に、本発明の目的を一層効果的に達成することができる。さらに好ましいのは、モノマーの種類と配合比とを選択することによって目的の粘着力および凝集力を持つ粘着剤の設計が容易であるアクリル酸アルキルエステル系ポリマーからなる接着剤である。
【0019】
アクリル酸アルキルエステル系ポリマーとしては、アルキル基の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いた重合体であって、特に架橋反応のしやすさの点から、該(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とした共重合体を用いることが好ましい。
【0020】
このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、具体的には、アルキル基が直鎖状または分岐状のブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシルなどである(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、これらは1種または2種以上併用することができる。また、必要に応じて、アルキル基の炭素数が3以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを、上記アルキル基の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの一部に置き換えて共重合することもできる。
【0021】
また、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合するモノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基を含有するモノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸などのスルホキシル基を含有するモノマー、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルエステルなどのヒドロキシル基を含有するモノマー、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどのアミド基を含有するモノマー、(メタ)アクリル酸アミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルエステルなどのアルキルアミノアルキル基を含有するモノマー、(メタ)アクリル酸メトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルエステルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシジエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールエステルなどのアルコキシル基(または側鎖にエーテル結合)を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニル−2−ピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペラジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルカプロラクタム、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリンなどのビニル系モノマーなどが挙げられ、これらは1種もしくは2種以上併用して共重合することができる。
【0022】
これらの共重合するモノマーは、粘着剤層と支持体との投錨力の調整や、薬物を含有する場合の薬物溶解性向上のために用いることができ、共重合量は目的に応じて適宜設定することができる。
【0023】
ポリブタジエン系アンカーコート剤からなる下塗り層が粘着剤層に何らかの作用をすることによって上記粘着剤層との良好な投錨性を発揮することができると推測される。
【0024】
上記粘着剤層の厚みは、通常、10〜200μm、好ましくは10〜80μm、さらに好ましくは20〜50μmである。
【0025】
上記粘着剤層に配合することができる薬物としては、経皮吸収性を有するものであれば特に限定されない。具体的には全身性麻酔薬、催眠・鎮静薬、抗癲癇薬、解熱鎮痛消炎薬、鎮暈薬、精神神経用薬、局所麻酔薬、骨格筋弛緩薬、自律神経用薬、鎮痙薬、抗パーキンソン薬、抗ヒスタミン薬、強心薬、不整脈用薬、利尿薬、血圧降下薬、血管収縮薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、動脈硬化用薬、循環器用薬、呼吸促進薬、鎮咳去痰薬、ホルモン薬、化膿性疾患用外用薬、鎮痛・鎮痒・収斂・消炎用薬、寄生性皮膚疾患用薬、止血用薬、痛風治療用薬、糖尿病用薬、抗悪性腫瘍用薬、抗生物質、化学療法薬、麻薬などを用いることができる。
【0026】
本発明の貼付剤において、薬物が粘着剤層中に結晶状態または無定形状態で析出、分散している場合に本発明の効果がより顕著に現れる。
【0027】
上記薬物の粘着剤(固形分)に対する配合割合は、粘着剤の薬物放出能力や薬物の種類、薬理効果などによって、任意に設定することができる。好ましくは粘着剤層中に10〜70重量%、さらに好ましくは30〜65重量%の範囲で配合する。
【0028】
配合した薬物の結晶化やブルーミングにより支持体への投錨性を低下させる割合は、個々の薬物によって異なる。粘着剤に対する親和性の低い薬物の場合には、10重量%程度から結晶が析出して投錨力が低下し、親和性の高い薬物では、30重量%程度から結晶が析出して投錨力が低下する場合がある。従って、薬物の配合割合が10重量%未満では薬物の結晶化が起こらないので、投錨性の低下もほとんど起こらない。よって、本発明に特有の効果は、薬物の配合割合が10重量%以上となって結晶が析出したものについて、より顕著に現れるのである。また、薬物の配合割合が70重量%を超えると粘着剤層がほとんど皮膚接触性を示さなくなり、コストも高くなる。
【0029】
また、上記の薬物と共に放出補助物質を配合させてもよい。この物質は単純には、身体面に対する薬物の放出を促進するものと定義することができるが、これには粘着剤層内での薬物の溶解性や拡散性を良くする機能を有するもの、また、角質の保水能、角質軟化性、角質浸透性(ルーズ化)、浸透助剤や毛孔開孔剤としての機能、皮膚の界面状態を変える機能のような経皮吸収性を良くする機能を有するもの、さらに上記の両機能を併有し、あるいはこれらの機能を加えて薬物の薬効をさらに高くする薬効促進の機能をも有しているものなどが広く包含される。
【0030】
このような放出補助物質としては、例えばジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールの如きグリコール類(主に薬物溶解性)、オリーブ油、スクアレン、ラノリンの如き油脂類(主に薬物拡散性)、尿素、アラントインの如き尿素誘導体(主に角質の保水能)、ジメチルデシルホスホキシド、メチルオクチルスルホキシド、ジメチルラウリルアミド、ドデシルピロリドン、イソソルビトール、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドの如き極性溶剤(主に角質浸透性)、サリチル酸(主に角質軟化性)、アミノ酸(主に浸透助剤)、ニコチン酸ベンジル(主に毛孔開孔剤)、ラウリル硫酸ソーダ(主に皮膚の界面状態を変える機能)、サロコール(経皮吸収性良好な薬物と併用)などが挙げられる。
【0031】
その他ジイソプロピルアジペート、フタル酸エステル、ジエチルセバケートの如き可塑剤、流動パラフィンの如き炭化水素類、各種乳化剤、エトキシ化ステアリルアルコール、オレイン酸モノグリセリド、カプリル酸モノグリセリド、ラウリル酸モノグリセリドの如きグリセリンモノエステル類、あるいはグリセリンジエステル、グリセリントリエステルまたはそれらの混合物、ミリスチン酸イソプロピルやパルミチン酸オクチルの如き高級脂肪酸エステル、オレイン酸、カプリル酸の如き高級脂肪酸などを挙げることができる。
【0032】
上記のように薬物以外に他の物質を配合させる場合には、薬物と他の物質の合計で前記範囲内になるようにするのが好ましい。
【0033】
本発明の貼布剤は、従来から用いられている方法で各層を形成して製造すればよく、例えば支持体上の片面へのポリブタジエン系アンカーコート剤からなる下塗り層の形成は、塗工や印刷などによって行われ、粘着剤層の形成は共押出やドライラミネートなどによって行われる。
【0034】
具体的には、支持体の片面にグラビア印刷などの手段によって、ポリブタジエン系アンカーコート剤からなる下塗り層用の溶液を塗布、乾燥し、別途作製した粘着剤層をその上に転写して、本発明の貼付剤を得ることができる。
【0035】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示し、さらに具体的に説明する。なお本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で種々の応用ができることはいうまでもない。以下の文中で部とあるのは全て重量部を意味するものである。
【0036】
実施例1
不活性ガス置換を充分に行った反応容器内に、モノマーとしてのアクリル酸2−エチルヘキシルエステル95部とアクリル酸5部とを投入し、攪拌しながら、重合開始剤として過酸化ベンゾイルを上記モノマーに対して0.28部添加し、攪拌速度の調整、外浴温度の調整、希釈溶媒としての酢酸エチルの滴下などによって、共重合反応の温度(反応混合物温度)を60〜65℃に制御しながら、酢酸エチル中で共重合反応を15時間行った。
【0037】
15時間経過後、反応混合物温度を75〜80℃まで昇温し、さらに20時間熟成して粘着剤溶液を調製した。
【0038】
得られた粘着剤溶液の固形分40部に対して、局所麻酔薬であるリドカインを60部添加し、乾燥後の厚みが20μmとなるように離型ライナー(表面に剥離処理を施したポリエステルフィルム)上に塗布、乾燥して、薬物含有粘着剤層を作製した。
【0039】
一方、支持体として片面にコロナ放電処理を施した12μm厚のポリエステルフィルムを用い、この処理面にポリブタジエン系アンカーコート剤としてチタボンドT−180(商品名、日本曹達社製)のエタノール溶液を固形分換算で0.0005、0.001、0.01、0.05、0.1、0.15g/m2となるように塗布、乾燥して下塗り層を形成した。このようにして得られた支持体の下塗り層面に、上記にて作製した薬物含有粘着剤層を転写して本発明の貼付剤を得た。
【0040】
実施例2
支持体として片面にコロナ放電処理を施した12μm厚のポリエステルフィルムを用い、この処理面にチタボンドT−180(商品名、日本曹達社製)のエタノール溶液を固形分換算で0.03g/m2となるように塗布、乾燥して下塗り層を形成した。このようにして得られた支持体の下塗り層面に、実施例1と同様にして作製した薬物含有粘着剤層を転写して本発明の貼付剤を得た。
【0041】
比較例1
支持体として片面にコロナ放電処理を施した12μm厚のポリエステルフィルムを用い、この処理面をエチレンイミン変性したアクリルポリマーとしてポリメントNK−350(商品名、日本触媒社製)のトルエン溶液を固形分換算で0.03g/m2となるように塗布、乾燥して下塗り層を形成した。このようにして得られた支持体の下塗り層面に、実施例1と同様にして作製した薬物含有粘着剤層を転写して貼付剤を得た。
【0042】
比較例2
コロナ放電処理を施した12μm厚のポリエステルフィルムに、下塗り層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして貼付剤を作製した。
【0043】
また、実施例1、2及び比較例1、2の支持体を40℃、75%R.H.(室温にて保存するときのおよそ6ヶ月間に相当する)の条件下で1ヶ月間保管したものを、実施例1と同様に薬物含有粘着剤層に転写して貼付剤を得た。
【0044】
実施例1で得られた貼付剤については試験1を行い、その結果を表1に示した。実施例2、比較例1、2で得られた貼付剤については以下の各試験を行い、その結果を表2に示した。
【0045】
試験例1 投錨性試験
13×50mmに裁断したプラセボ両面テープ(実施例1で作製したアクリル系共重合体の粘着剤溶液にて作製した両面テープ)を、25×150mmのベークライト板に貼付した。さらにプラセボ両面テープ上面に12×50mmに裁断した各サンプルを荷重850gのローラを用いて貼付したのち、23℃、60%R.H.の条件下で、テンシロン引張試験機によって、90度方向に300mm/分の速度で剥離し、その際の負荷応力を測定した。
【0046】
試験例2 ヒト皮膚貼付試験
15×50mmに裁断した各サンプルを、ボランティアの上腕部内側に30分間貼付したのち、引き剥がして、そのときの投錨破壊の状況を観察し、以下の判定基準で評価した。
【0047】
○:投錨破壊しない。
△:エッジ部が少し投錨破壊して、粘着剤が前腕部内側に残る。
×:全面投錨破壊して、粘着剤が前腕部内側に残る。
【0048】
試験例3 接着力試験
ベークライト板に12×50mmに裁断した各サンプルを貼付し、荷重850gのローラを1往復させたのち、23℃、60%R.H.の条件下で、テンシロン引張試験機によって、180度方向に300mm/分の速度で剥離し、その剥離力を測定した。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
上記表1から明らかなように、実施例1の塗布量0.001〜0.1g/m2である下塗り支持体を用いた貼付剤の投錨力は、粘着剤層中の薬剤が60部の貼付剤の場合に一般的な投錨力値である4〜6.5N/12mmを満たす。
【0052】
さらに実施例1の支持体を、40℃、75%R.H.において1ヶ月間(室温にて保存するときのおよそ6ヶ月間に相当する)保管したのち、作製した貼付剤の場合も、塗布量0.001〜0.1g/m2である下塗り支持体を用いた貼付剤の投錨力は、上記投錨力値を満たす。
【0053】
上記表2から明らかなように、実施例2の支持体を用いた貼付剤は、対応する比較例1の支持体を用いた貼付剤に比べて接着力において差異はなく、どちらとも粘着剤層中の薬剤が60部の貼付剤の場合で一般的な接着力値である1.5〜2.5N/12mmを満たす。しかし、投錨力では比較例1より高い値を示し、粘着剤層中の薬剤が60部の貼付剤の場合に一般的な投錨力値である4.5〜6.5N/12mmを満たす。また、ヒト皮膚へも糊残りせず、優れた貼着性を示す。
【0054】
また、実施例2の支持体を用いた貼付剤は、対応する比較例2の支持体を用いた貼付剤に比べて接着力、投錨力、ヒト皮膚への貼着性ともに優れている。
【0055】
さらに、実施例2および比較例1、2の支持体を、40℃、75%R.H.において1ヶ月間(室温にて保存するときのおよそ6ヶ月間に相当する)保管したのち、作製した貼付剤の場合、実施例2の支持体を用いた貼付剤は、投錨力の低下がほとんどなく、ヒト皮膚への貼着性も保たれる。以上より、下塗り剤としてのチタボンドT−180は、投錨性および保存安定性において極めて優れた特性を有するものである。
【0056】
【発明の効果】
本発明により、接着性や粘着性、凝集性などの粘着物性に悪影響を与えることなく、粘着剤層の支持体への投錨性を向上させ、かつ支持体への下塗り後、温度および湿度の管理なしの条件において保存安定性の優れた下塗り支持体を使用した貼付剤を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は皮膚面に貼付して傷口を保護したり、薬物を皮膚から生体内に連続的に投与しうる投錨性に優れた貼付剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、薬物を皮膚面を通して生体内へ投与するための貼付剤として、粘着剤を用いたテープ剤などが種々開発されている。
【0003】
貼付剤から薬物を効果的に皮膚面に放出させ、しかも皮膚内に吸収させるには、ある程度薬物濃度を高める必要がある。しかし、薬物濃度を高めることにより粘着剤中で薬物が過飽和状態あるいは結晶状態となり、粘着剤の支持体への投錨性が低下し、貼付剤を皮膚から除去する際に、粘着剤が皮膚面上に残るという問題が生じる。
【0004】
特開平2−212419号公報には、不織布や織布などを積層した支持体上に粘着剤層を形成して粘着剤の支持体への投錨性を向上させ、粘着剤の糊残りを防止した貼付剤が提案されている。
【0005】
しかし、この貼付剤は粘着剤層が不織布や織布の凹凸を充分にカバーできる厚みを有する場合は問題を生じないが、薬物の利用率を考慮して薬物を含有する粘着剤層を薄くしたとき、粘着剤層が不織布や織布の凹凸を充分にカバーしきれず、皮膚への接着性が低下したり、逆に皮膚への糊残りが生じやすくなったりする。また、極薄の不織布や織布を用いることは可能ではあるがコスト高となる。
【0006】
さらに、肘や膝などに貼付するために伸縮性が要求される貼付剤の場合には、単層では非常に伸縮性のある支持体でも、不織布や織布を積層加工することで、著しく伸縮性が損なわれる。
【0007】
また、特開平6−310559号公報には、支持体表面への下塗り剤としてイソシアネート系化合物を用いて支持体と粘着剤層との投錨性を向上させる技術が提案されている。しかしながら、イソシアネート系化合物はポットライフが極めて短いために水分の遮断や反応温度を低温制御するなどの手段を必要とし、操作が極めて煩雑となる。さらにイソシアネート系化合物は反応性が高いので、粘着剤や薬物の種類によっては粘着剤と架橋反応などを起こして粘着物性を変化させたり、薬物と分解反応を起こしたりすることもあり、その使用においては充分な注意が必要である。
【0008】
さらに、特開平8−92074号公報には、支持体表面への下塗り剤としてエチレンイミン変性したアクリル系ポリマーまたはポリエチレンイミンを用いて支持体と粘着剤層との投錨性を向上させる技術が提案されている。エチレンイミン変性したアクリル系ポリマーまたはポリエチレンイミンは、アミノ基(−NH2)を持ち、高い極性と反応性に富み、実際に支持体表面への下塗り剤として使用されている。しかしながら、エチレンイミン変性したアクリル系ポリマーまたはポリエチレンイミンは、高い極性と反応性に富む反面、水への親和性が強い。したがって、支持体への下塗り処理後、下塗り支持体を温度および湿度の管理なしで保存すると、環境中の水や湿度によってアミノ基の効果が徐々に低減し、やがて失われてしまう。製造頻度が低い貼付剤では、下塗り支持体をまとめて作製しておくことができず、製造作業の効率がよくない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、接着性や粘着性、凝集性などの粘着物性に悪影響を与えることなく、粘着剤層の支持体への投錨性を向上させ、かつ支持体への下塗り後、温度および湿度の管理なしの条件において保存安定性に優れた貼付剤を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意努力した結果、支持体の片面にポリブタジエン系アンカーコート剤からなる下塗り層を形成し、その上に粘着剤層が形成されてなる貼付剤とすることで、粘着物性に悪影響を与えることなく、粘着剤層の支持体への投錨性を向上させることができ、かつ支持体への下塗り後、温度および湿度の管理なしの条件においても下塗り層の保存安定性が優れていることを見出して本発明を完成させた。すなわち、本発明によれば、従来からの貼付剤に用いる支持体と粘着剤層との間に特定の組成からなる下塗り層を形成しているので、支持体と粘着剤層との投錨性が良好であり、皮膚に貼付使用したのちに剥離除去する際に、皮膚面への糊残り現象が生じない。さらに、本発明によれば、粘着剤の物性(粘着特性)を変化させず、かつ、本発明において下塗り層として用いるポリブタジエン系アンカーコート剤は極めて良好な保存安定性を発揮するので、下塗り後の支持体を長期間保存した後に貼付剤の製造に使用しても、投錨性が良好な貼付剤を得ることができる。
【0011】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)支持体の片面にポリブタジエン系アンカーコート剤からなる下塗り層が形成され、その上に粘着剤層が形成されてなる貼付剤。
(2)ポリブタジエン系アンカーコート剤が、1,2−ポリブタジエン鎖の末端に水酸基またはカルボキシル基を有するものである、前記(1)記載の貼付剤。
(3)粘着剤層を形成する粘着剤がアクリル系粘着剤である、前記(1)または(2)記載の貼付剤。
(4)粘着剤層を形成する粘着剤が炭素数4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いた重合体を含有する粘着剤である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の貼付剤。
(5)粘着剤層に薬物が含有されている、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の貼付剤。
(6)粘着剤層に結晶状態または無定形状態の薬物が分散している、前記(5)記載の貼付剤。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明に用いる支持体は特に限定されないが、プラスチックフィルムが好ましく、具体的には、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルアルコールなどの単層または積層フィルムが挙げられる。また、プラスチックフィルム以外に、金属箔とのラミネートフィルムを用いることができる。
【0013】
上記支持体のうち、伸縮性を有するものが好ましく、例えばポリエチレン、多孔質ポリエチレン、ポリエステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、多孔質ポリテトラフルオロエチレンなどの単層または積層フィルムなどが挙げられる。
【0014】
支持体の厚みは、通常5〜1000μm、好ましくは5〜100μm、柔軟性および貼付操作性のバランスから、さらに好ましくは10〜50μmである。
【0015】
下塗り層として用いるポリブタジエン系アンカーコート剤は、本発明において投錨力の向上などの重要な役割を果たすものである。本発明におけるポリブタジエン系アンカーコート剤としては、末端に水酸基(−OH)またはカルボキシル基(−COOH)を有する1,2−ポリブタジエンが特に有効に用いられる。すなわち、1,2−ポリブタジエン鎖の両末端を水酸基またはカルボキシル基で変性し、水分散化(エマルション化)したもので、無色ないし微黄色の液状ポリマーからなり、水またはアルコールで希釈して用いることができる。
【0016】
また、上記ポリブタジエン系アンカーコート剤は、支持体への塗布乾燥を経て、ポリブタジエンの二重結合が架橋反応することにより、耐湿性および耐水性のある塗膜を生成する。
【0017】
上記材料からなる下塗り層は、支持体の片面に固形分換算で0.001〜0.1g/m2、好ましくは0.01〜0.1g/m2の範囲で塗布形成する。塗布量が0.001g/m2に満たない場合は、ポリブタジエン系アンカーコート剤が支持体と粘着剤層とを投錨する効果が弱くなる。一方、塗布量が0.1g/m2を超える場合には、ポリブタジエン系アンカーコート剤によって粘着剤層の粘着物性が変化する。
【0018】
粘着剤としてはアクリル系、天然ゴム系、合成ゴム系、シリコーン系、ビニルエーテル系、ビニルエステル系などの粘着剤が挙げられる。その中で好ましいのはアクリル系粘着剤であり、粘着力が強く、皮膚刺激が少ない上に、本発明の目的を一層効果的に達成することができる。さらに好ましいのは、モノマーの種類と配合比とを選択することによって目的の粘着力および凝集力を持つ粘着剤の設計が容易であるアクリル酸アルキルエステル系ポリマーからなる接着剤である。
【0019】
アクリル酸アルキルエステル系ポリマーとしては、アルキル基の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いた重合体であって、特に架橋反応のしやすさの点から、該(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とした共重合体を用いることが好ましい。
【0020】
このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、具体的には、アルキル基が直鎖状または分岐状のブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシルなどである(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、これらは1種または2種以上併用することができる。また、必要に応じて、アルキル基の炭素数が3以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを、上記アルキル基の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの一部に置き換えて共重合することもできる。
【0021】
また、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合するモノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基を含有するモノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸などのスルホキシル基を含有するモノマー、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルエステルなどのヒドロキシル基を含有するモノマー、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどのアミド基を含有するモノマー、(メタ)アクリル酸アミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルエステルなどのアルキルアミノアルキル基を含有するモノマー、(メタ)アクリル酸メトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルエステルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシジエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールエステルなどのアルコキシル基(または側鎖にエーテル結合)を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニル−2−ピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペラジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルカプロラクタム、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリンなどのビニル系モノマーなどが挙げられ、これらは1種もしくは2種以上併用して共重合することができる。
【0022】
これらの共重合するモノマーは、粘着剤層と支持体との投錨力の調整や、薬物を含有する場合の薬物溶解性向上のために用いることができ、共重合量は目的に応じて適宜設定することができる。
【0023】
ポリブタジエン系アンカーコート剤からなる下塗り層が粘着剤層に何らかの作用をすることによって上記粘着剤層との良好な投錨性を発揮することができると推測される。
【0024】
上記粘着剤層の厚みは、通常、10〜200μm、好ましくは10〜80μm、さらに好ましくは20〜50μmである。
【0025】
上記粘着剤層に配合することができる薬物としては、経皮吸収性を有するものであれば特に限定されない。具体的には全身性麻酔薬、催眠・鎮静薬、抗癲癇薬、解熱鎮痛消炎薬、鎮暈薬、精神神経用薬、局所麻酔薬、骨格筋弛緩薬、自律神経用薬、鎮痙薬、抗パーキンソン薬、抗ヒスタミン薬、強心薬、不整脈用薬、利尿薬、血圧降下薬、血管収縮薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、動脈硬化用薬、循環器用薬、呼吸促進薬、鎮咳去痰薬、ホルモン薬、化膿性疾患用外用薬、鎮痛・鎮痒・収斂・消炎用薬、寄生性皮膚疾患用薬、止血用薬、痛風治療用薬、糖尿病用薬、抗悪性腫瘍用薬、抗生物質、化学療法薬、麻薬などを用いることができる。
【0026】
本発明の貼付剤において、薬物が粘着剤層中に結晶状態または無定形状態で析出、分散している場合に本発明の効果がより顕著に現れる。
【0027】
上記薬物の粘着剤(固形分)に対する配合割合は、粘着剤の薬物放出能力や薬物の種類、薬理効果などによって、任意に設定することができる。好ましくは粘着剤層中に10〜70重量%、さらに好ましくは30〜65重量%の範囲で配合する。
【0028】
配合した薬物の結晶化やブルーミングにより支持体への投錨性を低下させる割合は、個々の薬物によって異なる。粘着剤に対する親和性の低い薬物の場合には、10重量%程度から結晶が析出して投錨力が低下し、親和性の高い薬物では、30重量%程度から結晶が析出して投錨力が低下する場合がある。従って、薬物の配合割合が10重量%未満では薬物の結晶化が起こらないので、投錨性の低下もほとんど起こらない。よって、本発明に特有の効果は、薬物の配合割合が10重量%以上となって結晶が析出したものについて、より顕著に現れるのである。また、薬物の配合割合が70重量%を超えると粘着剤層がほとんど皮膚接触性を示さなくなり、コストも高くなる。
【0029】
また、上記の薬物と共に放出補助物質を配合させてもよい。この物質は単純には、身体面に対する薬物の放出を促進するものと定義することができるが、これには粘着剤層内での薬物の溶解性や拡散性を良くする機能を有するもの、また、角質の保水能、角質軟化性、角質浸透性(ルーズ化)、浸透助剤や毛孔開孔剤としての機能、皮膚の界面状態を変える機能のような経皮吸収性を良くする機能を有するもの、さらに上記の両機能を併有し、あるいはこれらの機能を加えて薬物の薬効をさらに高くする薬効促進の機能をも有しているものなどが広く包含される。
【0030】
このような放出補助物質としては、例えばジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールの如きグリコール類(主に薬物溶解性)、オリーブ油、スクアレン、ラノリンの如き油脂類(主に薬物拡散性)、尿素、アラントインの如き尿素誘導体(主に角質の保水能)、ジメチルデシルホスホキシド、メチルオクチルスルホキシド、ジメチルラウリルアミド、ドデシルピロリドン、イソソルビトール、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドの如き極性溶剤(主に角質浸透性)、サリチル酸(主に角質軟化性)、アミノ酸(主に浸透助剤)、ニコチン酸ベンジル(主に毛孔開孔剤)、ラウリル硫酸ソーダ(主に皮膚の界面状態を変える機能)、サロコール(経皮吸収性良好な薬物と併用)などが挙げられる。
【0031】
その他ジイソプロピルアジペート、フタル酸エステル、ジエチルセバケートの如き可塑剤、流動パラフィンの如き炭化水素類、各種乳化剤、エトキシ化ステアリルアルコール、オレイン酸モノグリセリド、カプリル酸モノグリセリド、ラウリル酸モノグリセリドの如きグリセリンモノエステル類、あるいはグリセリンジエステル、グリセリントリエステルまたはそれらの混合物、ミリスチン酸イソプロピルやパルミチン酸オクチルの如き高級脂肪酸エステル、オレイン酸、カプリル酸の如き高級脂肪酸などを挙げることができる。
【0032】
上記のように薬物以外に他の物質を配合させる場合には、薬物と他の物質の合計で前記範囲内になるようにするのが好ましい。
【0033】
本発明の貼布剤は、従来から用いられている方法で各層を形成して製造すればよく、例えば支持体上の片面へのポリブタジエン系アンカーコート剤からなる下塗り層の形成は、塗工や印刷などによって行われ、粘着剤層の形成は共押出やドライラミネートなどによって行われる。
【0034】
具体的には、支持体の片面にグラビア印刷などの手段によって、ポリブタジエン系アンカーコート剤からなる下塗り層用の溶液を塗布、乾燥し、別途作製した粘着剤層をその上に転写して、本発明の貼付剤を得ることができる。
【0035】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示し、さらに具体的に説明する。なお本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で種々の応用ができることはいうまでもない。以下の文中で部とあるのは全て重量部を意味するものである。
【0036】
実施例1
不活性ガス置換を充分に行った反応容器内に、モノマーとしてのアクリル酸2−エチルヘキシルエステル95部とアクリル酸5部とを投入し、攪拌しながら、重合開始剤として過酸化ベンゾイルを上記モノマーに対して0.28部添加し、攪拌速度の調整、外浴温度の調整、希釈溶媒としての酢酸エチルの滴下などによって、共重合反応の温度(反応混合物温度)を60〜65℃に制御しながら、酢酸エチル中で共重合反応を15時間行った。
【0037】
15時間経過後、反応混合物温度を75〜80℃まで昇温し、さらに20時間熟成して粘着剤溶液を調製した。
【0038】
得られた粘着剤溶液の固形分40部に対して、局所麻酔薬であるリドカインを60部添加し、乾燥後の厚みが20μmとなるように離型ライナー(表面に剥離処理を施したポリエステルフィルム)上に塗布、乾燥して、薬物含有粘着剤層を作製した。
【0039】
一方、支持体として片面にコロナ放電処理を施した12μm厚のポリエステルフィルムを用い、この処理面にポリブタジエン系アンカーコート剤としてチタボンドT−180(商品名、日本曹達社製)のエタノール溶液を固形分換算で0.0005、0.001、0.01、0.05、0.1、0.15g/m2となるように塗布、乾燥して下塗り層を形成した。このようにして得られた支持体の下塗り層面に、上記にて作製した薬物含有粘着剤層を転写して本発明の貼付剤を得た。
【0040】
実施例2
支持体として片面にコロナ放電処理を施した12μm厚のポリエステルフィルムを用い、この処理面にチタボンドT−180(商品名、日本曹達社製)のエタノール溶液を固形分換算で0.03g/m2となるように塗布、乾燥して下塗り層を形成した。このようにして得られた支持体の下塗り層面に、実施例1と同様にして作製した薬物含有粘着剤層を転写して本発明の貼付剤を得た。
【0041】
比較例1
支持体として片面にコロナ放電処理を施した12μm厚のポリエステルフィルムを用い、この処理面をエチレンイミン変性したアクリルポリマーとしてポリメントNK−350(商品名、日本触媒社製)のトルエン溶液を固形分換算で0.03g/m2となるように塗布、乾燥して下塗り層を形成した。このようにして得られた支持体の下塗り層面に、実施例1と同様にして作製した薬物含有粘着剤層を転写して貼付剤を得た。
【0042】
比較例2
コロナ放電処理を施した12μm厚のポリエステルフィルムに、下塗り層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして貼付剤を作製した。
【0043】
また、実施例1、2及び比較例1、2の支持体を40℃、75%R.H.(室温にて保存するときのおよそ6ヶ月間に相当する)の条件下で1ヶ月間保管したものを、実施例1と同様に薬物含有粘着剤層に転写して貼付剤を得た。
【0044】
実施例1で得られた貼付剤については試験1を行い、その結果を表1に示した。実施例2、比較例1、2で得られた貼付剤については以下の各試験を行い、その結果を表2に示した。
【0045】
試験例1 投錨性試験
13×50mmに裁断したプラセボ両面テープ(実施例1で作製したアクリル系共重合体の粘着剤溶液にて作製した両面テープ)を、25×150mmのベークライト板に貼付した。さらにプラセボ両面テープ上面に12×50mmに裁断した各サンプルを荷重850gのローラを用いて貼付したのち、23℃、60%R.H.の条件下で、テンシロン引張試験機によって、90度方向に300mm/分の速度で剥離し、その際の負荷応力を測定した。
【0046】
試験例2 ヒト皮膚貼付試験
15×50mmに裁断した各サンプルを、ボランティアの上腕部内側に30分間貼付したのち、引き剥がして、そのときの投錨破壊の状況を観察し、以下の判定基準で評価した。
【0047】
○:投錨破壊しない。
△:エッジ部が少し投錨破壊して、粘着剤が前腕部内側に残る。
×:全面投錨破壊して、粘着剤が前腕部内側に残る。
【0048】
試験例3 接着力試験
ベークライト板に12×50mmに裁断した各サンプルを貼付し、荷重850gのローラを1往復させたのち、23℃、60%R.H.の条件下で、テンシロン引張試験機によって、180度方向に300mm/分の速度で剥離し、その剥離力を測定した。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
上記表1から明らかなように、実施例1の塗布量0.001〜0.1g/m2である下塗り支持体を用いた貼付剤の投錨力は、粘着剤層中の薬剤が60部の貼付剤の場合に一般的な投錨力値である4〜6.5N/12mmを満たす。
【0052】
さらに実施例1の支持体を、40℃、75%R.H.において1ヶ月間(室温にて保存するときのおよそ6ヶ月間に相当する)保管したのち、作製した貼付剤の場合も、塗布量0.001〜0.1g/m2である下塗り支持体を用いた貼付剤の投錨力は、上記投錨力値を満たす。
【0053】
上記表2から明らかなように、実施例2の支持体を用いた貼付剤は、対応する比較例1の支持体を用いた貼付剤に比べて接着力において差異はなく、どちらとも粘着剤層中の薬剤が60部の貼付剤の場合で一般的な接着力値である1.5〜2.5N/12mmを満たす。しかし、投錨力では比較例1より高い値を示し、粘着剤層中の薬剤が60部の貼付剤の場合に一般的な投錨力値である4.5〜6.5N/12mmを満たす。また、ヒト皮膚へも糊残りせず、優れた貼着性を示す。
【0054】
また、実施例2の支持体を用いた貼付剤は、対応する比較例2の支持体を用いた貼付剤に比べて接着力、投錨力、ヒト皮膚への貼着性ともに優れている。
【0055】
さらに、実施例2および比較例1、2の支持体を、40℃、75%R.H.において1ヶ月間(室温にて保存するときのおよそ6ヶ月間に相当する)保管したのち、作製した貼付剤の場合、実施例2の支持体を用いた貼付剤は、投錨力の低下がほとんどなく、ヒト皮膚への貼着性も保たれる。以上より、下塗り剤としてのチタボンドT−180は、投錨性および保存安定性において極めて優れた特性を有するものである。
【0056】
【発明の効果】
本発明により、接着性や粘着性、凝集性などの粘着物性に悪影響を与えることなく、粘着剤層の支持体への投錨性を向上させ、かつ支持体への下塗り後、温度および湿度の管理なしの条件において保存安定性の優れた下塗り支持体を使用した貼付剤を提供することができる。
Claims (6)
- 支持体の片面にポリブタジエン系アンカーコート剤からなる下塗り層が形成され、その上に粘着剤層が形成されてなる貼付剤。
- ポリブタジエン系アンカーコート剤が、1,2−ポリブタジエン鎖の末端に水酸基またはカルボキシル基を有するものである、請求項1記載の貼付剤。
- 粘着剤層を形成する粘着剤がアクリル系粘着剤である、請求項1または2記載の貼付剤。
- 粘着剤層を形成する粘着剤が炭素数4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いた重合体を含有する粘着剤である、請求項1〜3のいずれかに記載の貼付剤。
- 粘着剤層に薬物が含有されている、請求項1〜4のいずれかに記載の貼付剤。
- 粘着剤層に結晶状態または無定形状態の薬物が分散している、請求項5記載の貼付剤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002171605A JP2004018393A (ja) | 2002-06-12 | 2002-06-12 | 貼付剤 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002171605A JP2004018393A (ja) | 2002-06-12 | 2002-06-12 | 貼付剤 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004018393A true JP2004018393A (ja) | 2004-01-22 |
Family
ID=31171416
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002171605A Pending JP2004018393A (ja) | 2002-06-12 | 2002-06-12 | 貼付剤 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004018393A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010163367A (ja) * | 2009-01-13 | 2010-07-29 | Nitto Denko Corp | 貼付剤および貼付製剤 |
-
2002
- 2002-06-12 JP JP2002171605A patent/JP2004018393A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010163367A (ja) * | 2009-01-13 | 2010-07-29 | Nitto Denko Corp | 貼付剤および貼付製剤 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2700835B2 (ja) | アクリル系ゲル材およびアクリル系ゲル製剤 | |
JP3576608B2 (ja) | 貼付剤および貼付製剤 | |
JP2849950B2 (ja) | 経皮吸収製剤 | |
US20060193900A1 (en) | Pressure sensitive adhesive and patch | |
JP5552255B2 (ja) | 薬物経皮投与デバイス | |
WO2010074183A1 (ja) | 経皮吸収型製剤 | |
JP5870350B2 (ja) | ビソプロロール経皮投与デバイス | |
JP4145996B2 (ja) | アクリル系粘着テープおよび経皮吸収製剤 | |
WO2005072669A1 (ja) | カバー材及びカバー材付き貼付剤 | |
CA2338987A1 (en) | Adhesive agent composition, and permeable adhesive tape, adhesive drug composition and adhesive tape preparation containing the adhesive agent composition | |
ES2609247T3 (es) | Composición para mejorar la absorción transdérmica de un fármaco y preparado en parche | |
JP5130026B2 (ja) | 貼付剤および貼付製剤 | |
KR980008221A (ko) | 부프레노르핀 경피 흡수 제제 | |
JP2014087704A (ja) | 貼付剤及び貼付製剤 | |
JP3014188B2 (ja) | アクリル系ゲル材およびアクリル系ゲル製剤 | |
JP4008532B2 (ja) | 経皮吸収貼付製剤 | |
JP2003000694A (ja) | 貼付剤および貼付製剤、ならびにそれらの製造方法 | |
JP3201645B2 (ja) | 投錨性を向上させた貼付剤 | |
JP3622775B2 (ja) | 貼付剤 | |
JP2004018393A (ja) | 貼付剤 | |
JPH09301853A (ja) | 貼付剤および貼付製剤 | |
JPH0769869A (ja) | ブニトロロール含有貼付製剤 | |
JPH06343685A (ja) | 外用粘着テープおよびテープ製剤 | |
JP3662388B2 (ja) | 経皮吸収製剤及びその製造方法 | |
JPH1149669A (ja) | 抗ウイルス剤含有テープ製剤 |