JP3662388B2 - 経皮吸収製剤及びその製造方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、経皮吸収製剤及びその製造方法に関する。具体的には、皮膚面に貼付して薬物を皮膚から生体内へ連続的に投与するための経皮吸収製剤及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及びその問題点】
近年、皮膚を通して薬物を生体内に投与するための経皮吸収製剤として、膏体や粘着剤を用いたパップ剤やテープ剤などの経皮吸収型の外用貼付剤が、種々開発されている。
【0003】
これらの貼付型の経皮吸収製剤から薬物を効果的に放出させ、しかも皮膚から効率よく生体内に吸収させるための方法として、薬物の含有濃度を高める方法や経皮吸収促進剤を併存させる方法などが提案されている。これらの方法は、薬物の経皮吸収性が向上するものの、しばしば経皮吸収製剤の粘着性を低下させ、いわゆる糸引き現象や皮膚面への糊のこりの原因となる。
【0004】
これらの問題を解決する手段として、微粉末シリカを粘着剤中に加える方法(特開平2−295565号公報)や、粘着剤を架橋して膏体をゲル状にすることにより粘着特性をコントロールする方法(特開平3−220120号公報)など種々の方法が提案されている。
【0005】
これらのうち、微粉末シリカは、レオロジー剤として粘着剤の流動特性を変化させることが一般的に知られており、微粉末シリカを粘着剤中に加える方法は様々な分野で利用されている。
【0006】
しかしながら、微粉末シリカを添加する方法は、粘着剤の配合組成や配合方法によっては粘着特性を改善できないことがある。特に、経皮吸収促進剤として、例えばポリエチレングリコールのような極性物質を多量に添加する場合には、粘着剤の粘度低下を抑えることができない。
【0007】
一方、粘着剤全体を外部架橋によって架橋してゲル状にする方法は、経皮吸収促進剤や他の添加剤を多量に使用した場合でも粘着特性をコントロールできる点で非常に優れている。
【0008】
しかし、この方法も架橋阻害作用のある物質を含有する場合には、粘着剤を十分に架橋することができず、この方法も用いることができない。特に、架橋剤として一般的によく用いられる多官能性イソシアネートを用いた場合には、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基を有する薬物や添加剤を粘着剤中に配合すると、架橋阻害を生じる。このために、これらの官能基を有する薬物や添加剤を用いることができない。
【0009】
さらに、粘着剤を粒子状にして経皮吸収製剤とする技術については、例えば特公昭58−12255号公報や特公昭58−23367号公報に開示されているが、経皮吸収促進剤や他の添加剤を多量に用いた場合には、適度な粘着特性を得ることは困難であった。
【0010】
そこで、本発明の発明者らは、粘着特性にも優れ、皮膚刺激性を発現せず、しかも良好な経皮吸収性を発揮する皮膚貼付型の経皮吸収製剤を開発すべく、鋭意研究を重ねた結果、アクリル系共重合体を架橋粉砕してなるアクリル系共重合体架橋粒子を粘着剤中に配合することにより、上記問題点を解決できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
特に、この粘着剤はブプレノルフィン及び/又はその塩以外の経皮吸収用薬物にも有効であることが分かった。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の経皮吸収製剤は、特に、ブプレノルフィン及び/又はその塩以外の経皮吸収用薬物への適用を試みたものであって、支持体の片面にブプレノルフィン及び/又はその塩を除く経皮吸収用薬物を含有する粘着剤層を形成してなる経皮吸収製剤において、前記粘着剤層は、アクリル系共重合体に、アクリル系共重合体を架橋粉砕してなるアクリル系共重合体架橋粒子を含有させてなることを特徴としている。
【0013】
さらに、本発明の経皮吸収製剤の製造方法は、本発明の経皮吸収製剤の製造方法であって、アクリル系共重合体の溶液中に架橋剤を添加して架橋した後、粉砕して、アクリル系共重合体及びアクリル系共重合体架橋粒子を含む粘着剤溶液を調製し、当該粘着剤溶液にブプレノルフィン及び/又はその塩を除く経皮吸収用薬物、さらには、経皮吸収促進剤あるいはその他の添加剤を配合して、粘着剤層を形成することを特徴としている。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる支持体としては、粘着剤層に配合される経皮吸収用薬物や経皮吸収促進剤が支持体中を通過して、背面から失われずにその含有量の低下を引き起こさないものが望ましい。具体的には、ポリエステル、ナイロン、サラン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、サーリン、金属箔などの単独フィルムまたはこれらの積層フィルムなどを用いることができる。
【0015】
また、支持体と後述する粘着剤層との間の接着力(投錨力)を良好なものにするため、当該支持体を上記の材質からなる無孔のフィルムと織布あるいは不織布などの布帛との積層フィルムとするのが好ましい。この場合、積層フィルムの厚さとして、10μm〜200μmのものを用いるのがよい。
【0016】
あるいは、単独フィルムとしての特性を活かすのならば、投錨力を良好なものとするため、単独フィルムにいわゆる下塗り処理をして、支持体として用いるのが望ましい。この場合、単独フィルムの厚さとして、1μm〜100μmのものを用いるのが好ましい。
【0017】
本発明の粘着剤層に用いられるアクリル系共重合体は、例えば、通常のアクリル系粘着剤に用いられる(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分単量体として、これに官能性単量体を共重合することによって得ることができる。
【0018】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、具体的には、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基などの炭素数4〜13の直鎖アルキル基または分岐アルキル基などを有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることができ、一種若しくは二種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることができる。
【0019】
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、上記述べたものに限定されるものではなく、本発明の特性を変化させない範囲であれば、炭素数1〜3の直鎖アルキル基若しくは分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルや炭素数14以上の直鎖アルキル基若しくは分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを、炭素数4〜13の上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと併用してもよい。
【0020】
これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な官能性単量体としては、極性単量体やビニル系単量体などを用いることができる。
【0021】
共重合可能な極性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有単量体や、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸などのスルホキシル基含有単量体、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルエステルなどのヒドロキシ基含有単量体、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有単量体、(メタ)アクリル酸アミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸tert−ブチルアミノエチルエステルなどのアルキルアミノアルキル基含有単量体、(メタ)アクリル酸メトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルエステルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシジエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステルなどのアルコキシ基(または側鎖にオキシド結合)含有(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられ、これらの単量体は、一種もしくは二種以上併用して共重合することができる。
【0022】
また、ビニル系単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、N−ビニル−2−ピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルカプロラクタム、ビニルオキサゾールなどの窒素原子含有の複素環を有するビニル系単量体などが挙げられ、これらの単量体も、一種もしくは二種以上併用して共重合することができる。
【0023】
上記極性単量体およびビニル系単量体は、一種もしくは二種以上併用して、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合することができるが、これらの共重合可能な単量体のうち、架橋処理を施す際の架橋点となる官能基を有する点や、アクリル系共重合体のガラス転移温度を上昇させて凝集力を向上させる点から、カルボキシル基含有単量体、ヒドロキシ基含有単量体、アミド基含有単量体、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、アルコキシ基(または側鎖にオキシド結合)含有(メタ)アクリル酸エステルを、共重合成分として重合することが望ましい。また、凝集力の向上や薬物を含有させた場合の薬物溶解性を向上させる点からは、ビニルエステル類や窒素原子含有の複素環を有するビニル系単量体を共重合することが好ましい。
【0024】
これらの共重合可能な極性単量体及び/又はビニル系単量体の共重合量は、アクリル系共重合体をベースとする粘着剤層の凝集力の調整や、薬物を含有させた場合の溶解度の調整などによって任意に設定することができるが、通常、共重合量として50重量%以下、好ましくは2〜40重量%の範囲とする。
【0025】
本発明におけるアクリル系共重合体架橋粒子は、後述する経皮吸収促進剤の流出を防止し、さらに凝集力を粘着剤層に付与し、糸引き現象を防止するとともに、粘着剤層に保型性を与える役目を果たすものである。また、含有された薬物の放出特性を制御する役割を果たすものでもある。
【0026】
このアクリル系共重合体架橋粒子に用いるアクリル系共重合体には、上述したように粘着剤層に用いるアクリル系共重合体と同じものを用いることができる。
【0027】
アクリル系共重合体架橋粒子を作成するために行なう架橋反応としては、紫外線や電子線などの放射線を照射する物理的架橋処理や、多官能性イソシアネートや有機過酸化物、有機金属塩、金属アルコラート、金属キレート化合物、ジビニル化合物、エポキシ化合物、メラミンやその他の多官能性化合物などの架橋剤を用いる化学的架橋処理などを適用することができる。
【0028】
その反応性やその取り扱いなどの点から、特に三官能性イソシアネートやチタンあるいはアルミニウムからなる金属アルコラート、若しくは金属キレート化合物を用いる化学的架橋処理を行なうのが好適である。また、化学的架橋を行なう際に用いる架橋剤の配合量は、アクリル系共重合体100重量部に対して、0.01〜2.0重量部を用いるのが好ましい。さらに、これらの架橋剤を用いる場合には、架橋反応性の点から、官能性単量体として(メタ)アクリル酸を用いるのが望ましい。
【0029】
アクリル系共重合体架橋粒子の製造方法としては具体的に言うと、上記アクリル系共重合体と上記架橋剤とを、有機溶剤など適当な溶剤存在下において均一に攪拌し、そのまま50℃〜80℃で加温しながらゲル状に架橋固化するまで保存するか、または、架橋剤を添加したアクリル系共重合体溶液を一般的な粘着テープ製造用の塗工機を用いて製膜し、加熱熟成させることにより架橋固化させる。
【0030】
こうして架橋固化させたアクリル系共重合体組成物に、さらに適当な溶剤を添加し、所望する濃度になるように希釈する。その後、アクリル系共重合体組成物を粉砕機にて粉砕して、アクリル系共重合体架橋粒子を作製する。このとき粉砕機としては、例えば、日鉄鉱業(株)社製ゴラトール(商品名)あるいは小松ゼノア社製ディスインテグレーター(商品名)、特殊機化工業(株)社製T.K.カットルーダー(商品名)等の粉砕機を用いることができる。これらの粉砕機以外には、例えば特殊機化工業(株)のTKホモミキサー(商品名)等の乳化、分散装置を用いることができる。これらのうち、処理量の点からゴラトールやディスインテグレーター、T.K.カットルーダーを用いるのが好ましい。
【0031】
アクリル系共重合体架橋粒子の粒子径は、希釈溶媒によっても異なるが、例えば酢酸エチルを用いて、架橋粒子の濃度を1重量%とした場合には、0.5μm〜50μmとするのがよく、特に1μm〜20μmとするのが好ましい。これより粒子径が小さいと、架橋粒子を添加する効果がなくなり、粘着剤層の凝集力が低下し、糸引き現象を生じるようになる。また、これより大きくなると支持体への塗工性が悪くなり、すじ塗りとなったり、塗布乾燥後の塗布面の凹凸が大きく、塗工厚が不均一になるとともに外観が悪くなり、使用に耐えない。
【0032】
こうして得られたアクリル系共重合体架橋粒子は、適当な方法により取り出して、さらに別なアクリル系共重合体の溶液に混合することができる。
【0033】
粘着剤層中におけるアクリル系共重合体架橋粒子の含有量は、アクリル系共重合体100重量部に対して、70〜400重量部となるように混合するのがよく、好ましくは、100〜300重量部である。含有量がこれより少ないと、架橋粒子の添加効果が小さくなり、凝集力が低下して糸引き現象を生じる。また、これよりも多くなると、粘着剤層の接着力が低下して、皮膚面への貼付性が悪くなったり、支持体との間の投錨力が低下するので好ましくない。
【0034】
また、上述したようにアクリル系共重合体の溶液に上記の架橋剤を添加して、アクリル系共重合体の一部に架橋処理を施し、これを粉砕することによって、アクリル共重合体の溶液中にアクリル系共重合体架橋粒子を含有させた状態とすることができるので、そのまま本発明における粘着剤層に用いることもできる。このようにすれば、アクリル系共重合体の調製から、アクリル系共重合体架橋粒子が含有された粘着剤層を、連続工程によって得ることができ、製造工程の簡略化が図れ、好都合である。
【0035】
このとき、架橋反応が終了した時点での架橋率(ゲル分率)は、粘着剤層中のアクリル共重合体架橋粒子の含有率に等しくなる。したがって、架橋剤の添加量や架橋反応の時間等を調整し、アクリル系共重合体のゲル分率を調整すれば、上記の好ましい含有量比にすることができる。例えば、ゲル分率が50〜60重量%となるようにすれば、残りの未反応のアクリル系共重合体は40〜50重量%となり、上記含有量比のものを容易に得ることができる。
【0036】
本発明の経皮吸収製剤の粘着剤層中には、様々な添加剤を添加することができ、経皮吸収用薬物はもちろんのこと、経皮吸収促進剤やその他の添加剤、例えば酸化防止剤などを用いることができる。これらの添加剤は、上記で得られるアクリル系共重合体架橋粒子を含んだアクリル系共重合体の溶液中に配合するのがよい。
【0037】
経皮吸収促進剤としては、粘着剤層内での薬物の溶解性や拡散性を良くする機能を有する化合物、また、角質の保水能、角質軟化性、角質浸透性(ルーズ化)、浸透助剤や毛孔開孔剤としての機能や皮膚の界面状態を変える機能のような経皮吸収性を良くする機能を有する化合物、さらに上記の各機能を合わせもつ化合物、あるいは、これらの機能に加えて、薬物の薬効をさらに高める薬効促進機能を有する化合物などが広く用いられる。
【0038】
このような経皮吸収促進剤として、具体的には次のような化合物を挙げることができる。例えば、主に薬物溶解性を高める化合物として、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール類、主に薬物拡散性を高める化合物として、オリーブ油、スクアレン、ラノリンなどの油脂類、主に角質の保水能を高める化合物として、尿素、アラントインなどの尿素誘導体、主に角質透過性を高める化合物として、ジメチルデシルホスホキシド、メチルオクチルスルホキシド、ジメチルラウリルアミド、ドデシルピロリドン、イソソルビトール、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドのような極性溶剤、主に角質軟化性を高めるサリチル酸、主に浸透助剤としてのアミノ酸、主に毛孔開孔剤としてのニコチン酸ベンジル、主に皮膚の界面状態を変える機能があるラウリル硫酸ナトリウム、経皮吸収性が良好な薬物と併用するサロコールなどが挙げられる。
【0039】
その他ジイソプロピルアジペート、フタル酸エステル、ジエチルセバケートのような可塑剤、流動パラフィンのような炭化水素類、各種乳化剤、エトキシ化ステアリルアルコール、オレイン酸モノグリセリド、カプリル酸モノグリセリド、ラウリル酸モノグリセリドのようなグリセリンモノエステル類、あるいはグリセリンジエステル、グリセリントリエステルまたはそれらの混合物、ミリスチン酸イソプロピルやパルミチン酸オクチルのような高級脂肪酸エステル、オレイン酸、カプリル酸のような高級脂肪酸などを挙げることができる。
【0040】
また、これらの2種以上の経皮吸収促進剤を混合してもよく、特に好ましい経皮促進促進剤としては、ミリスチン酸イソプロピルとカプリル酸モノグリセリドの組み合わせである。これらの添加量としては、1種又は2種以上の経皮吸収促進剤の合計が、アクリル系共重合体100重量部に対して、150〜400重量部であり、さらに好ましくは、200〜300重量部である。これより少ないと経皮吸収促進剤としての効果が十分に発揮できず、これよりも多いと粘着剤層が可塑化されて、糸引き現象や糊のこりが生じる。また、必要以上に添加しても、経皮吸収促進剤としての効果は、添加量に比例して増大しないことが多く、経済的にも好ましくない。
【0041】
また、これらの経皮吸収促進剤はアクリル系共重合体やアクリル系共重合体架橋粒子とよく相溶するものが望ましく、これらの経皮吸収促進剤を相溶させることにより製剤にソフト感を付与し、密着性を向上させるとともに、経皮吸収性を向上させたり、皮膚刺激性を低減させることができる。
【0042】
上記粘着剤層に配合することができる経皮吸収用薬物としては、経皮吸収性を有するものであれば特に限定されず、広くブプレノルフィン及び/又はその塩以外の経皮吸収用薬物を用いることができる。具体的には全身性麻酔薬、催眠・鎮静薬、抗てんかん薬、解熱鎮痛消炎薬、鎮暈薬、精神神経用薬、骨格筋弛緩薬、自律神経用薬、鎮痙薬、抗パーキンソン薬、抗ヒスタミン薬、強心薬、不整脈用薬、利尿薬、血圧降下薬、血管収縮薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、動脈硬化用薬、循環器用薬、呼吸促進薬、鎮咳去痰薬、ホルモン薬、化膿性疾患用外用薬、鎮痛・鎮痒・収斂・消炎用薬、寄生性皮膚疾患用薬、止血用薬、痛風治療用薬、糖尿病用薬、抗悪性腫瘍用薬、抗生物質、化学療法薬、麻薬などを用いることができる。
【0043】
これらの経皮吸収用薬物の含有量は、薬物種や投与目的に応じて適宜設定することができる。好ましくは粘着剤層中に1〜60重量%、さらに好ましくは5〜30重量%程度の範囲で配合するのがよい。含有量が1重量%に満たないと、治療や予防に有効な量の薬物放出が期待できない場合があり、60重量%を超えると、薬物を増量したほどの効果が期待できない場合が多く、経済的にも不利であるばかりか、皮膚に対する接着性が低下することがある。なお、本発明において、上記経皮吸収用薬物は、粘着剤層中にその全てが溶解している必要はなく、粘着剤層に対する溶解度以上の薬物量を含有させ、未溶解状態で薬物が分散された状態であってもよい。
【0044】
本発明は、特に粘着剤層中に架橋阻害物質が存在する場合に有効な手段となる。つまり、従来の経皮吸収製剤にあっては、三官能性イソシアネート、チタン又はアルミニウムからなる金属アルコラートあるいは金属キレート化合物などの化学的架橋剤を用いて、粘着剤層全体を架橋することにより、いわゆるゲル状態とすることにより最適な粘着特性を得ていた。しかしながら、この方法にあっては、粘着剤層中に架橋阻害物質が存在する場合には架橋反応が阻害され、十分な粘着特性を得られなかった。このような場合に、アクリル系共重合体架橋粒子を粘着剤層中に含有させることにより、最適な粘着特性を作り出すことができる。
【0045】
例えば、多官能性イソシアネートに対する架橋阻害物質として、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基を有する化合物が該当する。水酸基を有するものとしては、メタノール、エタノール等のアルコール類、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、オレイン酸モノグリセリド、カプリル酸モノグリセリド、ラウリル酸モノグリセリドなどのグリセリンモノエステル類、あるいはグリセリンジエステル類、含水二酸化ケイ素や軽質無水ケイ酸などのシリカ、グリセリン等の多価アルコール類、水などである。アミノ基を有するものとしては、アミノ酸などが挙げられる。また、カルボキシル基を有するものとしては、脂肪酸などが挙げられる。
【0046】
また、チタンやアルミニウムからなる金属アルコラートや金属キレート化合物に対する架橋阻害物質としては、水、アルコール類、ジケトン類、ケトエステル類、ジエステル類、脂肪酸、酸無水物、各種エステル、塩化水素、アミノ酸など多岐にわたる化合物が挙げられる。
【0047】
本発明の経皮吸収製剤に含有させる経皮吸収促進剤や経皮吸収用薬物は、これらの架橋阻害物質として機能する場合がある。架橋阻害物質として作用する量は、その物質や他の添加剤によっても異なるが、粘着剤層中10重量%以上含有された場合に、架橋阻害作用が強く現れることが多い。また、70重量%以上含有する場合には、架橋阻害作用だけでなく、単に可塑化作用として働き、接着性が悪化し、保型性がなくなり、糸引き現象や糊のこりを生じる。特にカプリル酸モノグリセリド等の脂肪酸モノグリセリドを粘着剤層中に配合した場合には、脂肪酸モノグリセリドがセパレータ中へ移行し、セパレータからの粘着剤層の剥離性が悪くなる。
【0048】
すなわち、本発明によれば、アクリル系共重合体架橋粒子を粘着剤層中に含有させることにより、これらの問題を解決することができ、各種の経皮吸収促進剤を添加することにより、薬物の放出を容易に制御することができる。
【0049】
【実施例】
次に、以下に示すように本発明の実施例である経皮吸収製剤を作製し、本発明による効果を確認した。なお、以下本文中に示す「部」は全て重量部を示し、「%」とあるのは重量%を意味する。
【0050】
(実施例1)
〈アクリル系共重合体溶液の調製〉
まず、粘着剤層を形成するために必要なアクリル共重合体及びアクリル系共重合体架橋粒子を作製するためのアクリル系共重合体溶液を作製した。
【0051】
窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で、アクリル酸2−エチルヘキシルエステル95部とアクリル酸5部を酢酸エチル中で、常法に従って共重合させ、アクリル系共重合体を含むアクリル系共重合体溶液を調製した。
【0052】
〈アクリル系共重合体架橋粒子を含有する粘着剤溶液の調製〉
アクリル系共重合体100部に対して、0.13部となるように3官能性イソシアネート(日本ポリウレタン社製、コロネートHL、以下同じ)を、上記で得たアクリル系共重合体溶液に添加し、さらに酢酸エチルを添加してアクリル系共重合体の濃度が25%となるように調整した。その後、気密容器に入れ、60℃で96時間加熱熟成して、アクリル系共重合体架橋体を含有する粘着剤溶液を調製した。このときのゲル分率を下記に示す方法により測定したところ、59%であった。(なお、以下において、ゲル分率は同様の方法により測定した結果を示す。)また、この粘着剤溶液におけるアクリル系共重合体とアクリル系共重合体架橋粒子の重量比は、アクリル系共重合体100重量部に対して、アクリル系共重合体架橋粒子が144重量部であった。
【0053】
こうして得られたアクリル系共重合体架橋体を含有する粘着剤溶液を、高粘度用ポンプで送液しながら、日鉄鉱業(株)社製ゴラトールを用いて、粒径が1〜2mmになるように粉砕した。さらに、アクリル系共重合体架橋粒子の濃度が10%となるように酢酸エチルで希釈し、特殊機化工業(株)社製TKホモミキサーにて、粒径が1〜10μmとなるように粉砕した。
【0054】
次に、このアクリル系共重合体架橋粒子を含有する粘着剤溶液に、プリロカイン50%、ミリスチン酸イソプロピル10%となるように添加し、均一に攪拌溶解した。この粘着剤溶液を、ポリエステル製セパレータ(厚さ75μm)上に、乾燥後の粘着剤重量が2mg/cm2となるように塗布、乾燥して粘着剤層を作製した。次いで、この粘着剤層上に、支持体としてポリエステルフィルム(厚さ12μm)を貼り合わせて、実施例1の経皮吸収製剤を得た。
【0055】
(実施例2)
実施例1で得たアクリル系共重合体架橋粒子を含有する粘着剤溶液に、塩酸インデロキサジン5%、カプリル酸モノグリセリド30%、ミリスチン酸イソプロピル10%、含水ケイ酸(塩野義製薬(株)社製、カープレックス#80)10%となるように添加し、均一に攪拌し分散させた。この粘着剤溶液を、支持体となるポリエステル製不織布(目付け量12g/m2)とポリエステルフィルム(厚さ2μm)との積層フィルムの不織布側に、乾燥後の粘着剤重量が4mg/cm2となるように塗布、乾燥して粘着剤層を作製した。次いで、この粘着剤層上に、セパレータとしてポリエステルフィルム(厚さ12μm)を貼り合わせ、実施例2の経皮吸収製剤を得た。
【0056】
(実施例3)
実施例2において、3官能性イソシアネートを、アクリル系共重合体100重量部に対して0.06部となるように添加した以外は、実施例2と同様にして、実施例3の経皮吸収製剤を得た。なお、このときの粘着剤溶液のゲル分率は41%で、アクリル系共重合体100部に対し、アクリル系共重合体架橋粒子は70部であった。
【0057】
(実施例4)
実施例2において、3官能性イソシアネートを、アクリル系共重合体100重量部に対して0.17部となるように添加した以外は、実施例2と同様にして、実施例4の経皮吸収製剤を得た。なお、このときの粘着剤溶液のゲル分率は75%で、アクリル系共重合体100部に対し、アクリル系共重合体架橋粒子は300部であった。
【0058】
(比較例1)
攪拌器及び還流冷却器を備えた3つ口フラスコに、イオン交換水600部と分散剤としてポリビニルアルコール(ケン化度78.5%〜81.5%)0.5部とを入れ、両者を充分に混合攪拌した。この水溶液に、アクリル酸2−エチルヘキシルエステル200部とアクリル酸10部及び過酸化ベンゾイル0.2部よりなるモノマー混合物を添加した。この溶液に、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下において1時間攪拌(温度25℃、回転速度300rpm)し、次に65℃に昇温して4〜5時間、加熱攪拌して共重合させた。さらに、80℃に昇温して2時間攪拌して共重合を完結させ、架橋されていないアクリル系共重合粒子を含有する粘着剤溶液を得た。なお、この粘着剤溶液中のアクリル系共重合粒子の含有率は25%であった。この粘着剤溶液に、メタノール600部を添加して、アクリル系共重合体粒子を沈殿回収し、次に、10%の濃度となるように、アクリル系共重合体粒子を酢酸エチルに分散させた。また、このときのアクリル系共重合体粒子の粒径は、5〜80μmであった。この溶液にプリロカイン、ミリスチン酸イソプロピルを添加し、実施例1と同様にして、比較例1の経皮吸収製剤を作製した。
【0059】
(比較例2)
実施例1で得たアクリル系共重合体溶液に、最終的な製剤中の含有量が実施例1で得た経皮吸収製剤中の含有量と等しくなるように、プリロカイン及びミリスチン酸イソプロピルを添加した。次いで、3官能性イソシアネートを0.052%(アクリル系共重合体100部に対して0.13部に相当)となるように添加して、粘着剤溶液を調製したのち、実施例1と同様にして、プリロカイン等を含む経皮吸収製剤を作製した。この後、さらに70℃で60時間加熱熟成して、比較例2の経皮吸収製剤を得た。なお、このときの粘着剤溶液のゲル分率は20%で、架橋されたアクリル系共重合体の含有量は、粘着剤全体の約8%であった。
【0060】
(比較例3)
3官能性イソシアネートを添加せず、加熱熟成を行なわかった以外は、すべて比較例2と同様にして、比較例3の経皮吸収製剤を得た。なお、このときの粘着剤溶液のゲル分率は18%であった。
【0061】
(比較例4)
メタアクリル酸とアクリル酸n−ブチルエステルのアミノ酢酸水溶液中で得られた共重合体の乳濁液(日本アクリル化学(株)社製、プライマルN−580(NF−1))に同重量のエタノールを加え、メタアクリル酸とアクリル酸n−ブチルの共重合体粒子を沈降回収し、さらにエタノールで洗浄後、20%濃度となるようにエタノールで再分散した。なお、この共重合体粒子の粒径は、約250〜550nmであった。この溶液に、塩酸インデロキサジン、カプリル酸モノグリセリド、ミリスチン酸イソプロピル、含水ケイ酸を添加し、実施例2と同様にして、比較例4の経皮吸収製剤を得た。
【0062】
(比較例5)
実施例1で得たアクリル系共重合体溶液に、最終的な製剤中の含有量が実施例2で得た経皮吸収製剤中の含有量と等しくなるように、塩酸インデロキサジン、カプリル酸モノグリセリド、ミリスチン酸イソプロピル、含水ケイ酸を添加した。次いで、3官能性イソシアネートを0.0585%(アクリル系共重合体100部に対して0.13部に相当)となるように添加して、粘着剤溶液を調製したのち、実施例2と同様にして、塩酸インデロキサジン等を含む経皮吸収製剤を作製した。この後、さらに70℃で60時間加熱熟成して、比較例5の経皮吸収製剤を得た。なお、このときの粘着剤溶液のゲル分率は25%で、架橋されたアクリル系共重合体の含有量は、粘着剤全体の約11.25%であった。
【0063】
(比較例6)
3官能性イソシアネートを添加せず、加熱熟成を行なわかった以外は、すべて比較例5と同様にして、比較例6の経皮吸収製剤を得た。なお、このときの粘着剤溶液のゲル分率は18%であった。
【0064】
(比較例7)
実施例2において、3官能性イソシアネートを、アクリル系共重合体100重量部に対して0.03部となるように添加した以外は、実施例2と同様にして、比較例7の経皮吸収製剤を得た。なお、このときの粘着剤溶液のゲル分率は29%で、アクリル系共重合体架橋粒子粉砕後における重量比は、アクリル系共重合体100部に対し、アクリル系共重合体架橋粒子は40部であった。
【0065】
(比較例8)
実施例2において、3官能性イソシアネートを、アクリル系共重合体100重量部に対して0.5部となるように添加した以外は、実施例2と同様にして、比較例8の経皮吸収製剤を得た。なお、このときの粘着剤溶液のゲル分率は83%で、アクリル系共重合体架橋粒子粉砕後における重量比は、アクリル系共重合体100部に対し、アクリル系共重合体架橋粒子は500部であった。
【0066】
〈ゲル分率の測定〉
上記ゲル分率の測定には、上記各実施例及び比較例で用いたアクリル系共重合体の粘着剤溶液を、一般的な粘着テープを作製する通常の条件で、乾燥後の粘着剤層の厚みが約40μm程度になるように、支持体上に塗付・乾燥したサンプルを作製し、以下の方法により試験を行なった。
【0067】
四フッ化エチレン樹脂製の多孔質膜(厚み30μm〜100μm、平均孔径0.1〜1.0μm)を、幅100mm、長さ200mmに裁断し、この裁断した多孔質膜に、40cm2(粘着剤重量として60〜200mgに相当。)に打ち抜いたサンプルを貼り付ける。次に、サンプルが重なり合わないように、多孔質膜を2つに折り曲げ、さらに、3方の耳端をそれぞれ2回折り曲げ、サンプルから漏出するアクリル系共重合体架橋粒子が漏れないように、多孔質膜の袋を作製する。この袋を、アクリル系共重合体を溶解できる溶媒、例えば、酢酸エチル100mlに24時間浸漬する。さらに、この浸漬操作を2回繰り返す。その後、溶媒を揮散させた後、以下の各重量を測定し、次式によりゲル分率を算出する。
ゲル分率(%)=〔(B−C−D−F)/(A−C−D−E)〕×100
A:浸漬前の多孔質膜袋(サンプル込み)の重量(g)
B:浸漬後の多孔質膜袋(サンプル込み)の重量(g)
C:多孔質膜の重量(g)
D:支持体の重量(g)
E:添加剤の重量(g)
F:溶媒によって100%除去できず、浸漬後に多孔質膜の袋中に残った添加剤の重量
【0068】
なお、多孔質膜の重量C、支持体の重量Dが浸漬前後で変化する場合には、予め、多孔質膜及び支持体それぞれについて、重量変化を測定しておき、その重量変化を換算して、ゲル分率を補正する。また、サンプルを作製した粘着剤溶液中に、添加剤が含まれている場合(比較例2、3、5、6)には、添加剤の重量E、Fとして、添加剤の配合割合から換算した値を用いた。
【0069】
〈比較試験〉
上記各実施例1〜4及び比較例1〜8で得た経皮吸収製剤につき、以下の項目について各試験(測定)を行ない、その結果を表1及び表2、表3に示した。
【0070】
【表1】
Figure 0003662388
【0071】
【表2】
Figure 0003662388
【0072】
(接着力試験)
ベークライト板に、経皮吸収製剤を幅12mmに裁断した帯状の各サンプルを貼付し、荷重850gのローラを1往復させて密着させたのち、23℃、60%R.H.の条件下で、テンシロン引張試験機によって、180度方向に300mm/分の速度で剥離させ、その際の剥離力(g)を測定した。
【0073】
(保持力試験)
経皮吸収製剤を幅10mm、長さ50mmの大きさに裁断した各サンプルの一端を、ベークライト板の端部に20mmの長さで貼り付け、他端に150gの荷重をかけて、40℃中に保存し、凝集破壊を起こして各サンプルが落下するまでの時間(分)を測定した。
【0074】
(投錨力試験)
幅13mm、長さ100mmに裁断したプラセボテープ(各実施例、比較例等で作製した経皮吸収製剤から、薬物および添加剤を加えずに作製したテープ)の支持体面を、両面テープで25×100mmのベークライト板に固定し、プラセボテープの粘着剤層面に、経皮吸収製剤を幅12mm、長さ70mmの大きさに裁断した各サンプルを、荷重850gのローラを用いて粘着剤層同士を貼付したのち、ただちに23℃、60%R.H.の条件下で、テンシロン引張試験機によって、90度方向に300mm/分の速度で剥離させ、その際の負荷応力(g)を測定した。
【0075】
〈投錨力の判定〉
測定時に、各実施例及び比較例において作製した経皮吸収製剤の支持体と粘着剤層とがきれいに剥がれる時の負荷応力を、支持体への投錨力とした。このとき、支持体に粘着剤層が残存し、測定中に、糸引き等の粘着剤層の破壊現象が観察された場合を凝集破壊とした。また、上記の中間的な現象で、支持体に部分的に粘着剤層が残存する場合を部分的投錨破壊とした。さらに、各実施例及び比較例で作製した経皮吸収製剤の粘着剤層とプラセボテープの粘着剤層とがきれいに剥がれた場合を界面剥離とした。界面剥離やプラセボテープでの投錨破壊が生じた場合には、実施例や比較例で作製した経皮吸収製剤の投錨力や凝集性が十分であると考えられる。
【0076】
(ヒト皮膚貼付試験)
経皮吸収製剤を幅30mm、長さ50mmの大きさに裁断した各サンプルを、健常な人ボランティアの前腕部内側に1時間貼付したのち、引き剥がして、その時の投錨破壊の状態を観察し、以下の判定基準で評価した。
○ : 投錨破壊がなく、糊のこりも生じない。
△ : エッジ部に少し投錨破壊または凝集破壊が生じ、粘着剤が皮膚上に残る。
× : 全面に投錨破壊または凝集破壊が生じて、粘着剤が皮膚上に残る。
【0077】
(塗工性及び外観試験)
塗工時の塗工性及び作製した経皮吸収製剤の外観を以下の判断基準で評価した。
○ : 平滑な塗工面で、外観に異常がなし。
△ : 少しすじ塗りで塗工面に凹凸があるが、外観上特に問題はない。
× : すじ塗りがひどく塗工面に凹凸があり、外観上きたなく製剤として不適切である。
【0078】
〈試験結果〉
表1から明らかなように、実施例1の経皮吸収製剤と比較例1〜3の経皮吸収製剤とを比較すると、接着力についてはほぼ同じような接着力が得られたが、実施例1の経皮吸収製剤は、アクリル系共重合体があらかじめ架橋されたアクリル系共重合体架橋粒子を含んでいるため、凝集力の指標である保持力試験については、実施例1の経皮吸収製剤が最も優れており、比較例に比べ約10倍向上した。
【0079】
また、予想外に支持体への投錨性もよく、驚くべきことに、比較例に比べて2倍以上の投錨力が得られた。さらに、ヒト皮膚貼付試験においても実施例1の経皮吸収製剤は、糊のこりもなく実用的なものであった。また、塗工性においてもアクリル系共重合体の架橋物を細い粒子状に粉砕しているので、なんら問題を生じず、優れた経皮吸収製剤であることが確認された。
【0080】
一方、比較例1の粒子状粘着剤を用いた経皮吸収製剤では、水系以外の溶媒では塗工性が不安定であり、外観においても実用性が不足していた。また、比較例2及び比較例3の経皮吸収製剤では、塗工性や外観においては問題がなかったが、プリロカインが3官能性イソシアネートの架橋阻害物質として働くため、アクリル系共重合体が架橋されず、優れた保持力等が得られなかったものと考えられる。
【0081】
また、表2から分かるように、実施例2の経皮吸収製剤においては、対応する比較例4〜6の経皮吸収製剤と比較すると、カプリル酸モノグリセリドの影響で全体的に接着力が弱くなったものの、全てほぼ同等の接着力が得られた。また、保持力試験においては優れたものが得られ、ヒト皮膚貼付試験の結果も糊のこりがなく、実用的なものであった。なお、投錨力試験においては、支持体にポリエステル製不織布とポリエステルフィルムとの積層フィルムを用いているため、投錨力は全て非常に強固であり、完全な投錨破壊として測定できなかったものの、実施例2の経皮吸収製剤おいては、比較例5、6のような凝集破壊による多量の糸引きは見られず、比較例4の投錨力に比べて約3.5倍の値を示し、優れた経皮吸収製剤であることが確認された。
【0082】
この多量の糸引き現象は、比較例5及び6の経皮吸収製剤の組成では、カプリル酸モノグリセリド及び含水ケイ酸が、アクリル系共重合体の架橋を阻害していることを示していると考えられる。特に比較例4の粒子状粘着剤を用いた経皮吸収製剤では、比較例1の経皮吸収製剤に比較して、塗工性は優れているものの、凝集力(保持力)は低く、ヒト皮膚貼付試験ではエッジ部に糊のこりを生じた。
【0083】
【表3】
Figure 0003662388
【0084】
また、表3には、アクリル系共重合体架橋粒子の含有量が異なる経皮吸収製剤について対比させた。なお、表3において架橋粒子含有量とは、アクリル系共重合体100重量部に対する含有量(重量部)を示している。この結果、表3から分かるように、実施例2〜4の各経皮吸収製剤は、対応する比較例7の経皮吸収製剤に比べて、保持力が高いので凝集力に優れていると言える。また、対応する比較例8の経皮吸収製剤と比較すると、接着力、投錨力、塗工性において優れていると言える。さらに、ヒト皮膚貼付試験では糸引き性、投錨性の点で優れ、実用的な経皮吸収製剤であると言える。
【0085】
また、図1には、実施例2〜4の経皮吸収製剤と比較例7、8の経皮吸収製剤において、アクリル系共重合体架橋粒子の含有比と各経皮吸収製剤の諸物性値との関係を示した。図中、−○−は接着力を示し、−×−は保持力を示し、−△−は接着力に対する保持力の比(保持力/接着力)を示している。これによると、保持力/接着力の値が、両者のバランスのとれた0.5以上のものは、アクリル系共重合体100重量部に対し、100重量部以上のアクリル系共重合体架橋粒子が含有されたものである。
【0086】
【図1】
【0087】
また、図2には、添加した架橋剤の添加量とアクリル系共重合体架橋粒子を含む粘着剤溶液のゲル分率の関係を示すが、架橋剤の添加量が、架橋前のアクリル系共重合体100重量部に対して、0.17重量部(アクリル系共重合体架橋粒子の含有量300重量部に相当)を越えると、架橋剤の添加量をさらに増してもアクリル系共重合体架橋粒子の生成率が向上せず、効率的でないことが分かる。
【0088】
【図2】
【0089】
これらの結果から、接着力の値に対する保持力の値が、0.5以上の製剤、好ましくは1に近い製剤は、接着力と凝集力とのバランスがとれており、実用上、糸引き現象や糊のこりを生じない優れた貼付型の経皮吸収製剤であると言える。さらに、ヒト皮膚貼付試験でも実用レベルでは、アクリル系共重合体架橋粒子は70重量部以上必要であり、塗工性の面から400重量部以下が好ましいと言える。
【0090】
以上のことより、本発明の実施例である実施例1〜4の経皮吸収製剤は、接着力と凝集力のバランスが優れており、経皮吸収促進剤を含有するためソフト感を有する、すなわち、皮膚に対する刺激が少なく、吸収促進効果のために高い薬理活性を持つ、実用的に非常に優れた経皮吸収製剤である。
【0091】
【発明の効果】
本発明の経皮吸収製剤の粘着剤層は、アクリル系共重合体にアクリル系共重合体を架橋粉砕してなるアクリル系共重合体架橋粒子を含有させているので、粘着剤層の凝集力を高めることができ、塗工性や外観に優れた経皮吸収薬剤を提供することができる。特にこの粘着剤層は、ブプレノルフィン及び/又はその塩以外の経皮吸収用薬物にも適用できる点で、優れた粘着剤層であると言える。
【0092】
また、投錨力にも優れた経皮吸収製剤が得られ、糸引き現象や糊のこりを少なくすることができる。
【0093】
特に、含有させる経皮吸収用薬物や経皮吸収促進剤が、架橋阻害作用を示す場合には有効であり、架橋阻害物質に影響されずに粘着特性を制御することができる。例えば、経皮吸収促進剤として脂肪酸モノグリセリドを添加する場合には好都合である。したがって、経皮吸収用薬物の種類や経皮吸収促進剤に影響されず、各種の薬物に応用できるとともに、種々の経皮吸収促進剤を用いることにより、薬物の放出制御が容易となり、経皮吸収製剤の適用範囲を広げることができる。
【0094】
本発明の経皮吸収製剤の製造方法によると、アクリル系共重合体の溶液中に架橋剤を加えて、架橋粉砕して、アクリル系共重合体架橋粒子を含む粘着剤溶液を調製しているので、アクリル系共重合体架橋粒子を取り出すことなく、架橋粒子が形成された粘着剤溶液をそのまま用いることができる。その後、この粘着剤溶液に、ブプレノルフィン及び/又はその塩以外の経皮吸収用薬物やその他必要な添加剤等を配合した後、塗付して粘着剤層を形成することができる。したがって、アクリル共重合体の調製から一貫して製造することができ、製剤工程が複雑になることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】アクリル系共重合体架橋粒子の含有比と各経皮吸収製剤の諸物性値との関係を示す図である。
【図2】アクリル系共重合体に添加した架橋剤の添加量とアクリル系共重合体架橋粒子を含む粘着剤溶液のゲル分率との関係を示す図である。

Claims (5)

  1. 支持体の片面にブプレノルフィン及び/又はその塩を除く経皮吸収用薬物を含有する粘着剤層を形成してなる経皮吸収製剤において、
    前記粘着剤層は、アクリル系共重合体に、アクリル系共重合体を架橋粉砕してなるアクリル系共重合体架橋粒子を含有させてなることを特徴とする経皮吸収製剤。
  2. 前記アクリル系共重合体100重量部に対して、前記アクリル系共重合体架橋粒子を70〜400重量部を含有することを特徴とする請求項1に記載の経皮吸収製剤。
  3. 当該粘着剤層中に、さらに経皮吸収促進剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の経皮吸収製剤。
  4. 前記粘着剤層中に、経皮吸収促進剤として脂肪酸モノグリセリドを含有させたことを特徴とする請求項1に記載の経皮吸収製剤。
  5. 請求項1又は3に記載の経皮吸収製剤の製造方法であって、アクリル系共重合体の溶液中に架橋剤を添加して架橋した後、粉砕して、アクリル系共重合体及びアクリル系共重合体架橋粒子を含む粘着剤溶液を調製し、当該粘着剤溶液にブプレノルフィン及び/又はその塩を除く経皮吸収用薬物、さらには、経皮吸収促進剤あるいはその他の添加剤を配合して、粘着剤層を形成することを特徴とする経皮吸収製剤の製造方法。
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