JP2022142438A - 水分センサー機能付含水系貼付剤 - Google Patents

水分センサー機能付含水系貼付剤 Download PDF

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Abstract

【課題】粘着剤層中の水分含量を、着色剤を使用することなくその色調変化にて確認できる含水系貼付剤を提供すること。【解決手段】支持体と、該支持体上に設けられた粘着剤層及び剥離ライナーからなる含水系貼付剤であって、該粘着剤層は、a)親水性粘着剤、b)疎水性粘着剤、j)水を少なくとも含み、該疎水性粘着剤は粘着剤層全質量に対して15~40質量%の割合にて配合されてなり、該粘着剤層は、該粘着剤層中の水分含量の減少により下記式(1)で表される色差:ΔE*abとして10以上の色調が変化する、水分センサー機能付含水系貼付剤。ΔE*ab=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2(1)【選択図】図2

Description

本発明は、含水系貼付剤に関するものであり、詳細には、水分含量によって色調が変化することで水分センサーとしての機能を有する粘着剤層を備える含水系貼付剤に関する。
外用貼付剤は、皮膚表面に貼付されることで、皮膚表面に冷感や温感を与えたり、また粘着剤層中に含まれる有効成分を経皮吸収的に投与する製剤である。含水系貼付剤(パップ剤)にあっては、粘着剤層に含まれる水分とともに、冷感・温感成分や薬物等の有効成分が皮膚へ移行し、また薬物等が経皮吸収される。含水系貼付剤において、粘着剤層中の水分が消失すると有効成分の皮膚への移行や経皮吸収性が低下することから、皮膚貼付時における粘着剤層の水分含量のモニタリングは、該貼付剤の適切な適用時間(投与時間)の把握につながる。
従来、被対象物の水分含量を測定する水分センサーには、電気的特性を利用する方法(電気抵抗式、電気容量式)、光特性を利用する方法(マイクロ波式、近赤外式、中性子式)、乾燥重量法、化学測定法(滴定法)などの種々の方法がある。ただ、これら水分センサーは、測定対象に針を刺したり、比重や厚みの設定が必要となること、測定に際して外部エネルギーを必要としたり、重量測定や滴定といった操作の必要性、測定装置の大型化など、貼付剤の貼付時において瞬時に水分含量を把握するには不向きである。
これに対し、例えば特許文献1には、支持体と、水中油滴型のゲル基剤からなる基剤層を具備した外用貼付剤において、基剤層の水分の蒸散により、基剤層の曇度の低下を視覚的に把握することが検討されている。また特許文献2には、含水層と支持体とからなる貼付剤において、水分の減少に伴い視認度が変化する標示部として、該支持体と密度を変えるなどした標示部を該支持体に設けた貼付剤が提案されている。さらに、低屈折率顔料をバインダ樹脂に分散状態に固着させ、非吸液状態で不透明、吸液状態で透明化する多孔質層を設けた変色性粘着シート等の開示がある(特許文献3、特許文献4等)
特許第6218187号公報 特開2011-84542号公報 特開2006-117807号公報 特開2007-322594号公報
これまで含水系貼付剤(パップ剤)において、粘着剤層中の水分含量を、着色剤を使用することなく粘着剤の色調変化にて確認することを検討した貼付剤の提案はなされていない。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、親水性粘着剤と疎水性粘着剤を含む含水系粘着剤層において、該疎水性粘着剤の配合量を制御することにより、粘着剤層中の水分含量の変化によってその色調が変化し、粘着剤層中の水分含量の変化を視覚的に判断できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、支持体と、該支持体上に設けられた粘着剤層及び剥離ライナーから
なる含水系貼付剤であって、
該粘着剤層は、a)親水性粘着剤、b)疎水性粘着剤、j)水を少なくとも含み、
該疎水性粘着剤は粘着剤層全質量に対して15~40質量%の割合にて配合されてなり、該粘着剤層は、該粘着剤層中の水分含量の減少により、下記式(1)で表される色差:ΔEabとして10以上の色調が変化する、
水分センサー機能付含水系貼付剤。
ΔEab=[(ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)1/2 (1)
そして本発明によれば、さらに以下の実施態様が提供される。
[2]前記粘着剤層は、粘着剤層全質量に対する当初の水分含量が30~50質量%であり、当初の水分含量を100とし、前記水分含量が75を下回ったとき、上記式(1)で表される色差:ΔEabとして10以上の色調が変化する、前記水分センサー機能付含水系貼付剤。
[3]該粘着剤層は、g)架橋剤を含み、架橋された親水性粘着剤中に、疎水性粘着剤が分散されてなる、前記水分センサー機能付含水系貼付剤。
[4]前記粘着剤層が、下記a)~j)成分を含有する、前記水分センサー機能付含水系貼付剤。
a)親水性粘着剤、
b)疎水性粘着剤、
c)水溶性高分子、
d)有機溶媒、
e)湿潤剤、
f)粘稠化剤、
g)架橋剤、
h)有機酸、
i)キレート剤、及び、
j)水。
[5]前記a)親水性粘着剤が、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸部分中和物、及び、ポリアクリル酸塩からなる群から選択される少なくとも一種である、前記水分センサー機能付含水系貼付剤。
[6]前記b)疎水性粘着剤が、アクリル酸アルキルエステル共重合体である、前記水分センサー機能付含水系貼付剤。
[7]前記アクリル酸アルキルエステル共重合体が、モノマーAとモノマーBからなるモノマー混合物の共重合体であり、前記モノマーAは、該モノマーAをホモ重合したときガラス転移温度(Tg)が270K以上のポリマーとなるモノマーであり、前記モノマーBは、該モノマーBをホモ重合したときガラス転移温度(Tg)が220K以下のポリマーとなるモノマーである、前記水分センサー機能付含水系貼付剤。
本発明によれば、外部エネルギーや、重量測定や滴定等の操作を必要とせず、粘着剤層中の水分含量の変化を色調変化にて判断でき、かつ粘着性にも優れる含水系貼付剤を提供できる。
そして本発明によれば、含水系貼付剤の皮膚貼付時に粘着剤層の水分変化(水分減少)を視覚的に確認することが可能となり、すなわち水分減少・水分消失による有効成分の皮膚への移行や経皮吸収性の低下を判断することが可能となり、薬剤等の有効な投与時間を表示するセンサー機能を有する貼付剤として本発明の含水系貼付剤を提供することが可能となる。
図1は実施例で作製した製剤において、疎水性粘着剤(アクリル酸アルキルエステル)の配合量の変化に対する粘着剤(膏体)層の色変化を示す図(すべて含水時、括弧内は水分含有値)であり、それぞれ(A)例1(40.83%)、(B)例2(43.21%)、(C)例4(37.27%)、(D)例6(34.41%)、(E)例7(33.61%)の製剤の粘着剤層の色調を示す。 図2は実施例で作製した例7の製剤において、粘着剤層中の水分量の減少及び増加(水分再含有)に伴う色変化を示す図であって、それぞれ(A)含水時(33.61%)、(B)乾燥時(0%)、(C)(約33.61%)水分再含有時の際の粘着剤層の色調を示す図である。 図3は実施例で作製した例2の製剤において、粘着剤層中の水分量の減少及び増加(水分再含有)に伴う色変化を示す図であって、それぞれ(A)含水時(43.21%)、(B)乾燥時(0%)、(C)(約43.21%)水分再含有時の際の粘着剤層の色調を示す図である。
本発明の水分センサー機能付含水系貼付剤(以下、単に「含水系貼付剤」、「貼付剤」とも称する)は、支持体と、該支持体上に設けられた粘着剤層及び剥離ライナーからなる。
上記貼付剤、特に支持体と、該支持体上に設けられた粘着剤層からなる製剤部分の形状は特に限定されず、方形(正方形、長方形等)、四角形(台形、菱形等)、多角形、円形、楕円形、半円形、三角形、三日月形、並びにこれらを組み合わせた形状等、貼付箇所に合わせて種々の形状を選択できる。
なお貼付剤(特に上記の製剤部分)の面積は適宜決定することができ、例えば粘着剤層に配合する有効成分の量などを考慮し、例えば2~300cmの範囲とすることができる。
[粘着剤層]
本発明の含水系貼付剤の粘着剤層には、a)親水性粘着剤、b)疎水性粘着剤、j)水を少なくとも含む。好適な態様において、該粘着剤層はg)架橋剤を含む。
例えば本発明の含水系貼付剤の粘着剤層は、a)親水性粘着剤、b)疎水性粘着剤、c)水溶性高分子、d)有機溶媒、e)湿潤剤、f)粘稠化剤、g)架橋剤、h)有機酸、i)キレート剤、及び、j)水を含有し、さらにその他成分を配合し得るものとすることができる。
<a)親水性粘着剤>
本発明の含水系貼付剤の粘着剤層は親水性粘着剤を含有する。親水性の粘着剤としては、例えばアクリル系親水性粘着剤が挙げられる。アクリル系親水性粘着剤は、後述するb)疎水性粘着剤(例えばアクリル酸アルキルエステル系共重合体)との親和性が高く、互いに均一に分散して粘着剤層中に配合できる。
なお、親水性粘着剤は、後述するg)架橋剤により、粘着剤層の形成時に架橋構造を形成することができる。好ましい態様において、本発明の含水貼付剤の粘着剤層は、架橋剤により架橋された親水性粘着剤中に、疎水性粘着剤が分散されてなる態様を有することができる。なお本発明の含水系粘着剤層は水中油滴型のゲル基材からなるものは除かれる。
上記アクリル系親水性粘着剤としては、水溶性の(メタ)アクリル系ポリマーが挙げられる。水溶性(メタ)アクリル系ポリマーは、水溶性を有する官能基(親水性基)を有する(メタ)アクリロイル基含有モノマーを重合して得られるポリマーであり、粘着剤層に水とともに配合することで、粘着性を発揮する。水溶性(メタ)アクリル系ポリマーは、例えばポリアクリル酸、ポリアクリル酸の中和物等のホモポリマー;アクリル酸ナトリウム-N-ビニルアセトアミド共重合体等のコポリマーが挙げられる。
上記ポリアクリル酸中和物は、ポリアクリル酸完全中和物(ポリアクリル酸の酸基の全てが中和された中和物)であっても、ポリアクリル酸部分中和物(ポリアクリル酸の酸基
の一部中和された中和物)であっても、これらの混合物であってもよい。ポリアクリル酸完全中和物とは、ポリアクリル酸塩を意味し、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等を用いることができる。
親水性粘着剤の配合量は、含水系貼付剤の粘着剤層の全質量を基準として、例えば0.1質量%以上10質量%以下、1質量%以上8質量%以下とすることができる。
<b)疎水性粘着剤>
本発明の含水系貼付剤は疎水性粘着剤を含有する。疎水性の粘着剤としては、例えばアクリル系粘着剤であるアクリル酸アルキルエステル系共重合体を含有することを特徴とする。なお、本明細書において「アクリル酸アルキルエステル系共重合体」は、アクリル酸及びメタクリル酸のアルキルエステルの双方を含むことを意図し、また「アクリル系粘着剤」もアクリル系粘着剤とメタクリル系粘着剤の双方を含むことを意図してなる。
アクリル酸アルキルエステル系共重合体は、一般に、粘着力を発現する成分として、アルキルエステルの炭素原子数が一般に2~12程度であり、ホモ重合させたときガラス転移温度(Tg)が-55℃(218K)以下のポリマーとなるモノマーと、凝集力を向上させる成分として、ホモ重合させたときTgが8~165℃(281~438K)のポリマーとなるモノマーとから構成される共重合体であり、さらに必要によってはカルボキシル基やヒドロキシ基といった架橋点となるなどの官能基を有するモノマーも含みて構成される共重合体である(モノマーの一例を表1に挙げた)。
Figure 2022142438000002
なお、粘着力を発現するモノマーのみを重合したホモポリマーは、粘着力は高いものの機械的強度が弱いとされ、一般に凝集力を向上させるモノマーとの共重合により機械的強度を向上させた共重合体が粘着剤として用いられる。
上記の表1に示す粘着力を発現するモノマーとして挙げたように、本発明では、より粘
着力の高いモノマー(モノマーB)として、該モノマーをホモ重合させたとき(ホモポリマー)のTgが220K以下であるアクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸イソノニル等が用いられる。医薬品に用いる場合には、これらのうち、医薬品添加物として使用実績があり、粘着力の高い(ホモポリマーのTgが低い)アクリル酸2-エチルヘキシルを好ましく用いることができる。
また凝集力を向上させるモノマー(モノマーA)(ホモポリマーのTgが270K以上)としては表1に挙げたアクリル酸メチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が用いられる。中でも機械的強度が高く、粘着性を著しく低下させない(ホモポリマーのTgが比較的低い)アクリル酸メチルを好ましく用いることができる。
なお、従来技術において挙げたように、貼付剤に使用される市販のアクリル酸アルキルエステル系共重合体として、日本カーバイド(株)製の、ニカゾール(登録商標)TS-620(アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合樹脂エマルジョン)がある。アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合樹脂エマルジョンは、医薬品添加物規約の収載品である。
本発明の含水系貼付剤の粘着剤層において、疎水性粘着剤、例えばアクリル酸アルキルエステル系共重合体の配合量(エマルションの場合、固形分換算値)は、含水系貼付剤の粘着剤層の全質量を基準として、例えば1質量%以上60質量%以下、例えば3質量%以上50質量%以下とすることができる。
また、前述の親水性粘着剤との配合割合は、例えば、質量比で、b)疎水性粘着剤/a)親水性粘着剤=1~20とすることができる。
<c)水溶性高分子化合物>
本発明の含水系貼付剤の粘着剤層には、水溶性高分子を配合し得る。配合される水溶性高分子化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール(部分けん化物を含む)、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。これらは1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて、使用できる。
水溶性高分子化合物の配合量は、通常、含水系貼付剤の粘着剤層の全質量を基準として、例えば1.0質量%以上30質量%以下、1.0質量%以上20質量%以下、あるいは1.0質量%以上10質量%以下の範囲とすることができる。
<d)有機溶媒>
本発明の含水系貼付剤の粘着剤層には、有機溶媒を配合し得る。配合される有機溶媒は、各配合成分の溶解を補助し(溶解補助剤)、また粘着剤層から各配合効成分が析出することを防ぐ役割を有し得る。このような有機溶媒(溶解補助剤)として、クロタミトン;N-メチル-2-ピロリドン;マクロゴール400(ポリエチレングリコール)、ポリブチレングリコール等のポリアルキレングリコール;アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸オレイル等の脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル等のソルビタンエステル類;1,3-ブタンジオール等の多価アルコール;ジメチルホルムアミド;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは一種単独で、あるいは2種以上を組合せて用いることができる。
有機溶媒の配合量は、含水系貼付剤の粘着剤層の全質量を基準として、例えば0.1質量%以上20質量%以下、0.5質量%以上10質量%以下、あるいは1.0質量%以上5質量%以下の範囲とすることができる。
<e)湿潤化剤>
本発明の含水系貼付剤の粘着剤層には、湿潤化剤(湿潤剤、保湿剤ともいう)を配合し得る。該湿潤化剤には、経時的な水分の蒸発を抑制する機能とともに、親水性粘着剤や粘稠化剤、架橋剤等、直接水に配合するとダマ発生や架橋により増粘することを抑制する機能が期待される。例えばe)湿潤化剤に、前記a)親水性系粘着剤、後述するf)粘稠化剤、g)架橋剤等を配合して予製剤とした後、粘着剤層を構成する他成分と混合することにより、ダマ発生や増粘を抑制できる。
そのような湿潤化剤としては、例えば、濃グリセリン、グリセリン、D-ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、流動パラフィン、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、マルチトール、キシリトール等の多価アルコールが挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種類以上を適宜組み合わせて、使用できる。
湿潤化剤の配合量は、通常、含水系貼付剤の粘着剤層の全質量を基準として、例えば1.0質量%以上70質量%以下、5.0質量%以上60質量%以下、あるいは10質量%以上60質量%以下の範囲とすることができる。
<f)粘稠化剤>
本発明の含水系貼付剤の粘着剤層は、粘稠化剤(粘稠剤ともいう)を含有し得る。粘稠化剤は、粘着剤の保形性向上や粘着性向上としての機能が期待される。該粘稠化剤としては、例えば、エチルセルロース、カルメロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、メチルセルロース等のセルロース類、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、ヒアルロン酸ナトリウム等の多糖類、ゼラチン、尿素等が挙げられる。このうち、チキソトロピー性があり展延性が向上するカルメロースナトリウムが好適である。これらは1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて、使用できる。
粘稠化剤の配合量は、通常、含水系貼付剤の粘着剤層の全質量を基準として、例えば0.1質量%以上10質量%以下、0.5質量%以上20質量%以下、あるいは1.0質量%以上10質量%以下の範囲とすることができる。
<g)架橋剤>
本発明の含水系貼付剤の粘着剤層には、架橋剤を配合し得る。該架橋剤としては、多価金属塩が挙げられ、中でもアルミニウムを含む多価金属化合物が挙げられる。一例として、水酸化アルミニウム、水酸化アルミナマグネシウム等の水酸化物;塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、アルミニウムグリシネート(ジヒドロキシアルミニウムアミノアセタール)、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、合成ケイ酸アルミニウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、カオリン、ステアリン酸アルミニウム等の無機又は有機酸の正塩又はそれらの塩基性塩;アルミニウムミョウバン等の復塩;アルミン酸ナトリウム等のアルミン酸塩;無機性アルミニウム錯塩及び有機性アルミニウムキレート化合物;合成ヒドロタルサイト、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等の多価金属化合物が挙げられ、これらを単独又は2種以上の組み合わせで用いることができる。
架橋剤の配合量は、粘着剤の皮膚への残留や貼着性の一因となり得る架橋度を考慮して適宜選択すればよい。含水系貼付剤の粘着剤層の全質量を基準として、例えば0.01質量%以上6.0質量%以下、0.01質量%以上4.0質量%以下、0.01質量%以上2.0質量%以下、あるいは0.1質量%以上1.0質量%以下の範囲を挙げることができる。
<h)有機酸>
本発明の含水系貼付剤の粘着剤層には、有機酸を配合し得る。該有機酸としては、クエン酸、乳酸、酒石酸、グルコン酸、グリコール酸、リンゴ酸、フマル酸、メタスルホン酸
、マレイン酸、酢酸等が挙げられ、これらを単独又は2種以上の組み合わせで用いることができる。有機酸のうち、乳酸等のヒドロキシ酸は難溶性アルミニウム化合物(架橋剤)の溶解性を向上させる効果も有する。
有機酸の配合量は、含水系貼付剤の粘着剤層の全質量を基準として、例えば0.01質量%以上5質量%以下、あるいは0.1質量%以上3質量%以下の範囲とすることができる。
<i)キレート剤>
本発明の含水系貼付剤の粘着剤層には、製造時の粘着剤(膏体)の粘度制御や、難溶性アルミニウム化合物(架橋剤)の溶解速度を制御させるためにキレート剤を配合することができる。
キレート剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム(エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム塩)が挙げられる。
キレート剤の配合量は、通常、含水系貼付剤の粘着剤層の全質量を基準として、例えば0.01質量%以上1質量%以下の範囲とすることができる。
<j)水>
本発明の含水系貼付剤は、粘着剤層中に水(水分)を含有するものである。本明細書において、粘着剤層に含まれる「水」とは、粘着剤層を形成時に、水として別に添加したものだけでなく、エマルションや水溶液などの形態として含まれる水も含む。水の配合量は特に限定されないが、含水系貼付剤の粘着剤層の全質量を基準として、例えば10質量%以上90質量%以下、10質量%以上70質量%以下、10質量%以上65質量%以下の範囲とすることができる。なおこの水分配合量は、貼付剤調製時、あるいは、貼付剤の貼付前の値であり、貼付の経過とともに粘着剤層から水が揮散した場合にはこの限りでない。
<その他の任意成分>
本発明の含水系貼付剤の粘着剤層には、その他の任意成分として、有効成分、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、界面活性剤、無機粉体、着色剤、香料、防腐剤等の、従来の含水系貼付剤(パップ剤)や非水系粘着剤(テープ剤)における粘着剤層に一般に配合され得る成分を配合することができる。これらの任意成分は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
〈有効成分〉
本発明の含水系貼付剤における粘着剤層には、有効成分を任意で含有することができる。なお有効成分を含まない場合の本発明の含水系貼付剤の用途としては、ケロイド状の皮膚のカバー材や、胼胝腫や肉刺等を保護するクッション材などに利用することができる。
粘着剤層に有効成分を含む場合は、生理活性物質を含有する。生理活性物質とは、経皮吸収性を有し、体内に投与された場合に薬理活性を示すものであれば特に限定されず、水溶性物質であっても脂溶性物質であってもよい。
生理活性物質としては、例えば、フェルビナク、フルルビプロフェン、ジクロフェナク、ジクロフェナクナトリウム、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール(サリチル酸エチレングリコール)、インドメタシン、ケトプロフェン、イブプロフェン等の非ステロイド系抗炎症剤またはこれらのエステル;ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン等の抗ヒスタミン剤;アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム等の鎮痛剤;リドカイン、ジブカイン等の局所麻酔剤;塩化スキサメトニウム等の筋弛緩剤;クロトリマゾール等の抗真菌剤;クロニジン等の降圧剤;ニトログリセリン、硝酸イソソルビド等の血管拡張剤;ビタミンA、ビタミンE(トコフェロール)、酢酸トコフェロール、ビタミンK、オクトチアシン、酪酸リボフラビン等のビタミン類、プロスタグランジン類;スコポラミン、フェンタニール、トウガラシエキス、ノニル酸ワニリ
ルアミド、カプサイシン、l-メントール、dl-カンフル等が挙げられる。生理活性物質は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記有効成分は、その種類によって適宜配合量を決定できるが、例えば含水系貼付剤の粘着剤層の全質量を基準として0.1質量%以上30質量%以下、あるいは0.5質量%以上15質量%以下とすることができる。
〈安定剤〉
本発明の含水系貼付剤の粘着剤層には、光(特に、紫外線)、熱又は酸素に対して、前記有効成分等の保存安定性を向上させるために安定剤を配合することができる。
安定剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)等の抗酸化剤;ベンゾイルメタン誘導体等の紫外線吸収剤;等が挙げられる。
安定剤の配合量は、通常、含水系貼付剤の粘着剤層の全質量を基準として、例えば0.01質量%以上1質量%以下の範囲とすることができる。
〈界面活性剤〉
本発明の含水系貼付剤の粘着剤層に配合可能な界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールジオレエート、ポリプロピレングリコールジオレエート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル;ソルビタンモノカプリレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノミリステート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンモノセスキオレート、及びこれらのエチレンオキシド付加物等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリイソステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンドデシルエーテル(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシアルキレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン-2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル;モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリン等のグリセリン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、レシチン等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて、使用できる。
これら界面活性剤の配合量は、含水系貼付剤の粘着剤層の全質量を基準として、例えば0.001質量%以上10質量%以下、0.01質量%以上5質量%以下の範囲とすることができる。
〈無機粉体〉
無機粉体としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸塩、酸化亜鉛、酸化チタン、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム等を配合することができる。
[支持体]
一般に、含水系貼付剤に用いる支持体としては、フィルム、不織布、和紙、綿布、編布、織布、不織布とフィルムのラミネート複合体等の柔軟性を有する支持体であって、皮膚に密着することができ、かつ、皮膚の動きに追随することができる程度の柔軟な材質、そして長時間貼付後において皮膚のかぶれ等の発生を抑制できる材質が使用される。
これらの支持体の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ナイロン、コットン、アセテートレーヨン、レーヨン、レーヨン/ポリエチレンテレフタレート複合体、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、アクリル系ポリウレタン、エステル系ポリウレタン、エーテル系ポリウレタン、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、セロハン等を必須成分とするものが挙げられる。
特に本発明の含水系貼付剤においては、粘着剤層の水分含量の変化(減少)が粘着剤層の色調の変化として現れ、貼付時において貼付剤を剥がすことなく支持体を通して目視にて色調の変化を確認できるという点から、透明~半透明の支持体、例えば透明性に優れたプラスチックフィルムの形態の支持体を好適に使用できる。
支持体の厚みは、通常5μmから1mm程度である。支持体が布類である場合、その厚みは、好ましくは50μm~1mm、より好ましくは100~800μm、更に好ましくは200~700μmである。支持体がプラスチックフィルムである場合、その厚みは、好ましくは10~300μm、より好ましくは12~200μm、更に好ましくは15~150μmである。支持体の厚みが5μm~30μm程度とごく薄い場合は、支持体上に形成された粘着剤層とは反対の面上に、剥離可能なキャリアフィルム層を設けると、貼付剤としての取り扱い性が向上するので好ましい。但し5μmよりも支持体の厚みが小さいと、貼付剤の強度や取り扱い性が低下して、皮膚への貼付が困難になり、他の部材等との接触によって破れたり、入浴等の水との接触によって短時間で皮膚から剥離したりすることがある。また、支持体の厚みが大きすぎる(1mmより超える)と、貼付剤が、皮膚の動きに追随しにくくなり、貼付剤の辺縁部に剥がれるきっかけを形成しやすくなるため、短時間で皮膚から剥離したり、貼付中の違和感が増えたりする虞がある。
なお支持体がフィルムである場合は、粘着剤と支持体の投錨性を向上することを目的に、支持体の片面又は両面にサンドブラスト処理、コロナ処理等の処理を行なってもよい。
また、包材から取り出しやすくするために支持体の片面又は両面にサンドブラスト以外の方法で凹凸を設けてもよい。
[剥離ライナー]
本発明の含水系貼付剤に用いる剥離ライナー(剥離層・剥離紙ともいい、単にライナーとも称する)としては、粘着剤層中の薬物等が吸収・吸着しにくい材質であることが好ましく、貼付剤の技術分野において慣用のものを使用することができる。
例えば、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリプロピレン(無延伸、延伸等)、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等のプラスチックフィルム;上質紙、グラシン紙、パーチメント紙、クラフト紙等の紙や合成紙;前記プラスチックフィルム、紙又は合成紙、合成繊維等にシリコーン樹脂やフッ素樹脂等の剥離性能を有する剥離剤をコーティングした剥離加工紙;アルミ箔;これらフィルム・シートを種々積層したラミネート加工紙、及び該ラミネート加工紙に剥離剤をコーティングしたラミネート剥離加工紙などの、無色又は着色したシートを挙げることができる。なお剥離ライナーは、包材から取り出しやすいように凹凸を設けることも可能である。
これら剥離ライナーの厚さは特に限定されないが、通常10μm~1mm、例えば20μm~500μm、好ましくは40μm~200μmの範囲である。
剥離ライナーの形状は方形、矩形、円形等とすることができ、所望により角を丸くした形状とすることができる。その大きさは、前記貼付材における支持体の大きさと同形状か、やや大きめとすることができる。剥離ライナーは1枚または分割されて複数枚から構成されてもよく、その切れ目は直線、波線、ミシン線状で構成されてもよく、剥離ライナー同士の一部が重なる状態としてもよい。
[含水系貼付剤の製造方法]
本発明の含水系貼付剤は、従来公知の方法を用いて製造され得る。例えば一例として、以下の(i)又は(ii)の工程を経て製造可能である。
(i)支持体上に、粘着剤層形成組成物を塗工し、粘着剤層を形成する工程、及び、支持体上に形成された粘着剤層と、剥離ライナーとを貼り合わせる工程。
(ii)剥離ライナー上に、粘着剤層形成組成物を塗工し、粘着剤層を形成する工程、及び、剥離ライナー上に形成された粘着剤層と、支持体とを貼り合わせる工程。
なお、上記粘着剤層の厚みは特に限定されないが、通常10μm乃至1000μm、例えば20μm乃至800μm程度とすることができる。
前記粘着剤層形成組成物とは、前述した粘着剤層に含まれる各種成分:a)親水性粘着剤、b)疎水性粘着剤、j)水を含有し、さらにはc)水溶性高分子、d)有機溶媒、e)湿潤剤、f)粘稠化剤、g)架橋剤、h)有機酸、i)キレート剤を含有し得、そして所望により有効成分等のその他の任意の成分を含有し得る半固形状の組成物である。
上記粘着剤層形成組成物は、製造時の操作性の観点から、20℃~30℃における粘度を、例えば90~250Pa・s、100~250Pa・s、また130~250Pa・sに調整することができる。
本発明の含水系貼付剤は、前述したとおり、粘着剤層の色調が水分含量によって変化するものである。該色調の変化は、下記式(1)で表される色差:ΔEabとして10以上の色調の変化として確認できる。
ΔEab=[(ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)1/2 (1)
好ましい態様において、前記粘着剤層は、粘着剤層全質量に対する当初の水分含量が30~50質量%であり、当初の水分含量を100とし、前記水分含量が75を下回ったとき、上記式(1)で表される色差:ΔE*abとして10以上の色調の変化が確認できることが望ましい。
このように、本発明の含水系貼付剤は、その粘着剤層が水分量の変化によって色差10以上の色調変化を有するものとすることにより、これを皮膚に適用したとき、該貼付剤の水分量が減少して水分量が0に近づく(枯渇する)につれて、粘着剤層の色調が目視で確認できるほど変化するものとなる。前述したように、粘着剤層中の水分が消失すると有効成分の皮膚への移行や経皮吸収性が低下することから、水分消失を確認できる本発明の含水系貼付剤は、薬剤等の有効な投与期間を表示するセンサー機能を有する貼付剤としての提供が可能となる。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<貼付剤の作製>
以下の手順にて、例1~例11の貼付剤を製造した。
例1
ポリビニルアルコール1質量部を、精製水10質量部に70℃に加熱して溶解させた後、室温まで冷却した(予製剤1)。
次に、ロキソプロフェンナトリウム1.13質量部(水和物換算)及びL-メントール1質量部を、マクロゴール400 3質量部並びに乳酸1質量部に加えて40℃で溶解させた後、室温まで冷却した(予製剤2)。
更に、ポリアクリル酸部分中和物2質量部、カルメロースナトリウム3質量部、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート0.25質量部を、濃グリセリン20質量部中で均一に分散させた(予製剤3)。
撹拌機中に、予製剤1、アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョン8質量部、エデト酸ナトリウム水和物0.2質量部の順に投入し、脱気条件下、均一に分散又は溶解させた。ここに、予製剤2を投入し、脱気条件下、均一に練合した。更に、予製剤3を投入し、精製水で全100質量部となるように質量補正した後、脱気条件下、均一に練合し例1の粘着剤層形成組成物(膏体)を得た。
得られた例1の粘着剤層形成組成物を、スリット幅0.5mmに調整した展延機でライナー(片面シリコーン処置したPET(75μm))上に展延して粘着剤層(膏体層)を形成し、該粘着剤層上に透明~半透明の支持体(ポリエチレン製)をラミネートした後、作製した貼付剤をアルミ包装し、40℃で1週間熟成させた。熟成後、包材から貼付剤を取り出し、任意の形状に打抜き、例1の製剤を得た。
例2
アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョンの配合量を15質量部に変えたほかは例1と同様にして、例2の製剤を得た。
例3
アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョンの配合量を20質量部に変えたほかは例1と同様にして、例3の製剤を得た。
例4
アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョンの配合量を30質量部に変えたほかは例1と同様にして、例4の製剤を得た。
例5
アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョンの配合量を40質量部に変えたほかは例1と同様にして、例5の製剤を得た。
例6
アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョンの配合量を50質量部に変えたほかは例1と同様にして、例6の製剤を得た。
例7
アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョンの配合量を60質量部に変えたほかは例1と同様にして、例7の製剤を得た。
例8
アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョンをメタクリル酸n-ブチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョンに変えたほかは例5と同様にして、例8の製剤を得た。
例9
アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョンをメタクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョンに変えたほかは例5と同様にして、例9の製剤を得た。
例10
アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョンをアクリル酸メチル・アクリル酸n-ブチル共重合エマルジョンに変えたほかは例5と同様にして、例10の製剤を得た。
例11
アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョンをメタクリル酸エチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョンに変えたほかは例5と同様にして、例11の製剤を得た。
試験例1 水分含量の測定
例1~11の製剤を4cm×5cmに裁断した。裁断した製剤のライナーを剥離後、5cm×6cmのポリプロピレン板に粘着剤層が上になるように(ポリプロピレン板と支持体が対面するように)置き、テープで4隅を固定し、測定サンプルとした。これを、50℃の恒温器に保存し、任意の時間に測定サンプルを取り出して質量を測定(測定時全質量)し、恒温器にて長時間保存して測定サンプルの質量変化が終了した際の質量を乾燥時全質量とし、下記式から粘着剤層中の水分含量(%)を算出した。
水分含量(%)=(測定時全質量-乾燥時全質量)/測定時粘着剤層質量×100
測定時の水分量 :測定時全質量-乾燥時全質量
測定時の粘着剤層質量:測定時全質量-支持体質量-ポリプロピレン板質量-テープ質量
試験例2 色差測定
試験例1にて、例1~11の製剤の水分含量を測定した後、分光測色計(CM600d、コニカミノルタ(株)製)を用いて、色空間:L、a及びbを測定した(初期値)。
次に、試験例1にて50℃の恒温器に保存し、任意の時間に取り出して水分含量を測定後、上記と同様に色空間:L、a及びbを測定した(測定値)。
更に、測定値と初期値の色空間:L、a及びbの差(ΔL、Δa及びΔb)を算出し、下記式を用いて、色差(ΔEab)を算出した。
尚、色空間:L、a及びbの測定には、SCE(正反射光除去)方式を用いた。
ΔEab=((ΔL+(Δa+(Δb1/2
試験例3 プローブタック粘着力試験
例1~11の製剤を15mm×15mmに裁断し、ライナーを剥離後、プローブタックテスターで日局一般試験法 6.12粘着力試験法 3.4プローブタック試験法に従い、プローブタック測定を実施した。
なお、プローブタックの目標値は、水分含有時:0.20以上、水分非含有時:0.50以上である。
例1~例11の製剤の処方及び仕様を表2に、例1~例7の製剤の試験結果(試験例1~試験例3)を表3に、例5(再掲)、例8~例11の試験結果(試験例1~試験例3)を表4に、それぞれ示す。
Figure 2022142438000003
Figure 2022142438000004
Figure 2022142438000005
表3は、アクリル酸アルキルエステル共重合体(アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合体)の(固形分換算)を4.8~36.0質量%に変化させた製剤(例1~例7)における、色差ΔEab及びプローブタック粘着力測定結果である。
表3に示すように、アクリル酸アルキルエステル共重合体の配合量が4.8~12.0質量%(例1~例3)の範囲では、水分含量0.00~43.21質量%の範囲で、色差ΔEabは最大でも5以下であった。なおこの場合、プローブタック粘着力は水分含有時(水分含量32.38~40.83質量%)で0.13~0.17、水分非含有時(水分含量0.00%)において0.60~1.12であった。
一方、アクリル酸アルキルエステル共重合体の配合量が18.0~36.0質量%の範囲(例4~例7)では、水分含量の変化によって、色差ΔEabが20.12~31.23となり、初期の状態から明確な変化を示した。また、プローブタック粘着力は、水分含有時(水分含量33.61~40.30%において0.24~1.03、水分非含有時(水分含量0.00%)において1.55~3.57であり、水分含有時・水分非含有時ともに所望の粘着力も有していた。
以上の結果より、本発明の含水系貼付剤は、アクリル酸アルキルエステル共重合体の配
合量を18.0~36.0質量%の範囲で配合した粘着剤層とすることにより、色差を指標とした水分センサーとして機能し、また使用に際し十分な粘着力も有することが確認された。
表4は、アクリル酸アルキルエステル共重合体のモノマーの種類を変更した場合(例5、例8~例11)の、色差ΔEab及びプローブタック粘着力測定結果である。
表4に示すように、モノマーA(ハードセグメント)をアクリル酸メチル(MA)(例5、例10)、メタクリル酸n-ブチル(nBMA)(例8)、メタクリル酸メチル(MMA)(例9)、またはメタクリル酸エチル(EMA)(例11)とし、モノマーB(ソフトセグメント)をアクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)(例5、例8、例9、例11)、またはアクリル酸n-ブチル(nBA)(例10)とした場合でも、水分含量の変化によって、色差ΔEabは0.00~26.17と明確な変化を示した。また、プローブタック粘着力は、水分含有時(水分含量40.30~49.30%)において0.27~0.71、水分非含有時(水分含量0.00%)において0.66~2.68であり、粘着力も有していた。
以上の結果より、本発明の含水系貼付剤は、共重合体を構成するモノマーによらず、様々なアクリル酸アルキルエステル共重合体を配合した粘着剤層とすることにより、色差を指標とした水分センサーとして機能し、また使用に際し粘着力も有することが確認された。
また図1及び図2に、上記製剤の粘着剤層の写真を示す。
図1は、疎水性粘着剤(アクリル酸アルキルエステル)の配合量の変化に対する粘着剤(膏体)層の色変化を示す図である。それぞれ(A)例1(疎水性粘着剤:4.8%))、(B)例2(同4.5%)、(C)例4(同18%)、(D)例6(同30%)、(E)例7(同(同36%)の製剤の粘着剤層を示す。なお何れの製剤も、含水時(例1:水分含量40.83%、例2:同43.21%、例4:同37.27%、例6:同34.41%、例7:同33.61%)の粘着剤層を示す。
図2は例7の製剤において、粘着剤層中の水分量の減少及び増加(水分再含有)に伴う色変化を示す図である。それぞれ(A)含水時(水分含量:33.61%)、(B)乾燥時(同0%)、(C)水分再含有時(同約33.61%)の粘着剤層を示す。
図1に示すように、疎水性粘着剤の配合量によって粘着剤層の色調は変化し、疎水性粘着剤の配合量が多いほど、粘着剤層の色調が薄く透明(画像上は薄色化)になることが確認できた。
そして図2に示すように、例7の製剤は、含水時には薄く透明(画像上は薄色化)であった粘着剤層の色調が、乾燥時には白濁化(画像上は濃色化)し、粘着剤層を再度含水させるとその色調は薄く透明(画像上は薄色化)に変化した。なお、例2の製剤では、含水時においても乾燥時においても、目視で確認できるほどの粘着剤層の色調変化は生じなかった(図3:(A)含水時(43.21%)、(B)乾燥時(0%)、(C)(約43.21%))。
これらの結果より、本発明の含水系貼付剤は、疎水性粘着剤の配合量の制御により、粘着剤層の湿潤状態(含水時/乾燥時)を色調変化にて可逆的に判断可能であることが確認された。
本発明の含水系貼付剤は、その可逆的な水分センサー機能により、医薬品・医療機器分野においては、上記薬剤の有効な投与時間を判断できる貼付剤として、また、水分をある程度保持する必要がある疾患(アトピー性皮膚炎、皮膚掻痒症、魚鱗癬、皮脂欠乏性疾患等)治療のための保護テープとして有用である。非医薬品・医療分野においては、湿度維持が必要となる対象における水分センサーとして、また荷物等の包装用の粘着剤や、特定の湿度表示機能を有するセンサー等への利用が期待できる。

Claims (7)

  1. 支持体と、該支持体上に設けられた粘着剤層及び剥離ライナーからなる含水系貼付剤であって、
    該粘着剤層は、a)親水性粘着剤、b)疎水性粘着剤、j)水を少なくとも含み、
    該疎水性粘着剤は粘着剤層全質量に対して15~40質量%の割合にて配合されてなり、該粘着剤層は、該粘着剤層中の水分含量の減少により、下記式(1)で表される色差:ΔEabとして10以上の色調が変化する、
    水分センサー機能付含水系貼付剤。
    ΔEab=[(ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)1/2 (1)
  2. 前記粘着剤層は、粘着剤層全質量に対する当初の水分含量が30~50質量%であり、当初の水分含量を100とし、前記水分含量が75を下回ったとき、上記式(1)で表される色差:ΔEabとして10以上の色調が変化する、
    請求項1に記載の水分センサー機能付含水系貼付剤。
  3. 該粘着剤層は、g)架橋剤を含み、架橋された親水性粘着剤中に、疎水性粘着剤が分散されてなる、
    請求項1又は請求項2に記載の水分センサー機能付含水系貼付剤。
  4. 前記粘着剤層が、下記a)~j)成分を含有する、請求項1乃至請求項3のうち何れか一項に記載の水分センサー機能付含水系貼付剤。
    a)親水性粘着剤、
    b)疎水性粘着剤、
    c)水溶性高分子、
    d)有機溶媒、
    e)湿潤剤、
    f)粘稠化剤、
    g)架橋剤、
    h)有機酸、
    i)キレート剤、及び、
    j)水。
  5. 前記a)親水性粘着剤が、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸部分中和物、及び、ポリアクリル酸塩からなる群から選択される少なくとも一種である、
    請求項1乃至請求項4のうち何れか一項に記載の水分センサー機能付含水系貼付剤。
  6. 前記b)疎水性粘着剤が、アクリル酸アルキルエステル共重合体である、
    請求項1乃至請求項5のうちいずれか一項に記載の水分センサー機能付含水系貼付剤。
  7. 前記アクリル酸アルキルエステル共重合体が、モノマーAとモノマーBからなるモノマー混合物の共重合体であり、
    前記モノマーAは、該モノマーAをホモ重合したときガラス転移温度(Tg)が270K以上のポリマーとなるモノマーであり、
    前記モノマーBは、該モノマーBをホモ重合したときガラス転移温度(Tg)が220K以下のポリマーとなるモノマーである、
    請求項6に記載の水分センサー機能付含水系貼付剤。
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