JP2004014933A - 圧電素子およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】支持体4の上に第一の電極膜2、この第一の電極膜2の上に圧電膜1、この圧電膜1の上に第二の電極膜3を形成してなる圧電素子において、上記第一の電極膜2の厚みを100nm〜300nmの範囲とした圧電素子であり、上記支持体4と第一の電極膜2との密着性が向上する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は各種センサやアクチュエータなど幅広いデバイスに使用される圧電素子およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ペロブスカイト型構造を有する誘電体薄膜は、優れた強誘電性、圧電性、焦電性および電気光学特性を示し、各種センサやアクチュエータなど幅広いデバイスに有効な材料として注目されており、今後その利用範囲は拡大していくと思われる。
【0003】
誘電体薄膜の代表例として、ABO3構造を示すPb(ZrxTi1−x)O3系薄膜は、高い圧電性を有することから、圧電センサや圧電アクチュエータなどの圧電素子の圧電膜として利用されている。圧電センサは、強誘電性の圧電効果を利用したものであり、強誘電体は内部に自発分極を有しており、その表面に正および負電荷を発生させる。大気中における定常状態では大気中の分子が持つ電荷と結合して中性状態になっているが、この圧電膜に外圧がかかると圧電膜から圧力量に応じた電気信号を取り出すことができる。また圧電アクチュエータも同様の原理を用いたもので、圧電膜に電圧を印加するとその電圧に応じて圧電膜が伸縮し、伸縮方向あるいはその方向に直交する方向に変位を生じさせることができる。
【0004】
このような圧電素子は少なくとも圧電膜とこの圧電膜の両面の電極とから構成される。以下に代表的な圧電素子の基本構造について図面を参照しながら説明する。
【0005】
図6は代表的な圧電素子の構成を示す断面図である。
【0006】
圧電膜1は厚み方向に分極方向を持ち、圧電膜1の分極方向に直交する両面にそれぞれ第一の電極膜2と第二の電極膜3が形成されている。そのうち第一の電極膜2は圧電膜1の伸縮を伸縮方向と直交する方向に変位方向を変換するための振動板の役目をあわせ持つ。第一の電極膜2と第二の電極膜3で挟まれた圧電膜1は支持体4と周縁部のみで固定されており、この支持体4の圧電膜1の下の大部分は空洞5になっている。このような圧電素子の第一および第2の電極膜2,3に電圧を印加すると圧電膜1が伸縮し、結果的に圧電膜1の分極方向に変位が得られる。
【0007】
このような圧電素子の性能は圧電膜1の性能が大きく寄与しているため、圧電膜1の品質をいかに向上させるかが重要である。そして圧電膜1の品質はその製造方法に大きく影響される。
【0008】
以下に圧電素子の製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0009】
図7は圧電素子を製造する際に用いる第一および第二の電極膜2,3、圧電膜1の構成を示す断面図である。
【0010】
基板6の上に第一の電極膜2を形成し、その第一の電極膜2の上に圧電膜1を形成し、そしてこの圧電膜1の上に第二の電極膜3を形成する。但し、実際にこれを圧電素子として用いる場合は、圧電膜1の下の基板6の一部を除去し、さらに第二の電極膜3と圧電膜1の一部をウェットもしくはドライエッチングによって除去し、第一の電極膜2の一部を露出する必要がある。
【0011】
ここで、圧電膜1と第一および第二の電極膜2,3の形成には一般的にスパッタ装置が用いられる。図5は薄膜形成用のスパッタ装置の構成を示す模式図である。
【0012】
槽の内部に成膜したい材料の組成で構成されたターゲット7を下部電極(以下、陰極、図示せず)に配置し、そして基板設置用の基板ホルダー8を上部電極(図示せず)に配置する。基板ホルダー8の内部には基板加熱用ヒータ9を備え、成膜したい面をターゲット7に向けて基板6を支持して、さらに槽の内部を排気するための排気ポンプ10、そしてガス供給用のアルゴンガスボンベ11および酸素ガスボンベ12から槽の内部へ配管してある。
【0013】
以上のように構成されるスパッタ装置を用いて、圧電膜1と第一および第二の電極膜2,3の製造方法について、以下に説明する。
【0014】
例えば、ガラスやシリコン等からなる基板6を基板ホルダー8に取り付け、排気ポンプ10によって槽の内部を10−5Pa程度まで真空に排気し、基板6を基板加熱用ヒータ9で所望の温度にまで加熱し、スパッタガスであるアルゴンガスおよび酸素ガスを導入する。さらに高周波電源13から高周波電力を陰極に印加することでターゲット7からスパッタ粒子(図示せず)が飛び出し、基板6に所定の薄膜が形成できる。
【0015】
良好な特性の圧電素子を実現するためには、高品質の圧電膜1を形成することが重要であり、圧電膜1の組成や結晶性を精度よく制御する製造方法の開発が重要となる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
高い圧電特性を有するペロブスカイト型構造の圧電膜は、製造方法や製造条件によって圧電特性が大きく変化するため、この圧電膜を用いた圧電素子において、安定して優れた圧電特性を得ることが非常に困難であった。
【0017】
本発明は前記従来の問題点を解決するもので、高品質の圧電素子とこの圧電素子に用いられる圧電膜を品質良く形成するための製造方法を提供することを目的とするものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、以下の構成を有するものである。
【0019】
本発明の請求項1に記載の発明は、支持体上に第一の電極膜、この第一の電極膜上に圧電膜、この圧電膜上に第二の電極膜を形成してなる圧電素子において、上記第一の電極膜の厚みを100nm〜300nmの範囲とした圧電素子であり、内部応力が抑制されるため上記支持体と第一の電極膜との密着性が向上する。
【0020】
請求項2に記載の発明は、支持体上に第一の電極膜、この第一の電極膜上に圧電膜、この圧電膜上に第二の電極膜を形成してなる圧電素子において、圧力を4mTorr以下とするスパッタリングにより上記第一の電極膜を形成する圧電素子の製造方法であり、単一配向の第一の電極膜の形成により、この第一の電極膜上に形成する圧電膜の結晶および結晶粒を揃えることができるため圧電素子としての特性が向上する。
【0021】
請求項3に記載の発明は、支持体上に第一の電極膜、この第一の電極膜上に圧電膜、この圧電膜上に第二の電極膜を形成してなる圧電素子において、酸素ガスを用いたスパッタリングの次に酸素ガスを無くしたスパッタリングによって上記第一の電極膜を形成する圧電素子の製造方法であり、酸素ガスを用いたスパッタリングにより形成した酸化膜により、熱工程により生じる第一の電極膜に基板中の物質が拡散するのを防止するため、第一の電極膜および圧電膜の結晶性が保持でき、長期的な特性の安定性が得られる。
【0022】
請求項4に記載の発明は、支持体上に第一の電極膜、この第一の電極膜上に圧電膜、この圧電膜上に第二の電極膜を形成してなる圧電素子において、圧力を3mTorr以下とするスパッタリングにより上記圧電膜を形成する圧電素子の製造方法であり、圧電膜の結晶性を劣化させる鉛不足を解消して単一配向の圧電膜が形成できるため、圧電素子の特性が向上する。
【0023】
請求項5に記載の発明は、支持体上に第一の電極膜、この第一の電極膜上に圧電膜、この圧電膜上に第二の電極膜を形成してなる圧電素子において、スパッタリングに用いるアルゴンガスの圧力を酸素ガスの圧力の15倍以上として上記圧電膜を形成する圧電素子の製造方法であり、圧電膜の結晶性を劣化させるジルコニウム不足が解消できるため、圧電素子の特性が向上する。
【0024】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における圧電素子の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施の形態1における圧電素子の構成を示す断面図である。
【0025】
実施の形態1では、第一の電極膜2として白金膜、この白金膜の上に圧電膜1としてPbZr0.5Ti0.5O3膜(以下PZT膜と称す)、さらにこのPZT膜の上に第二の電極膜3として白金膜をそれぞれ形成し、支持体4に空洞5を形成した。
【0026】
次に実施の形態1における圧電素子の製造プロセスについて図を用いて説明する。
【0027】
図2は第一および第二の電極膜2,3と圧電膜1の製造方法を示す断面図である。
【0028】
まず、第一の電極膜2の形成には従来の技術で説明した図5に示すスパッタ装置を用いた。ここで、電極材料の白金からなる4インチのターゲット7を用いて槽の内部の陰極に設置し、基板ホルダー8に基板6を設置した。この装置において、まず排気ポンプ10によって槽の内部を10−5Pa程度にまで真空に排気し、基板6を基板加熱用ヒータ9で400℃程度にまで加熱し、さらにスパッタガスであるアルゴンガスを10sccmの流量で導入した。この際のガス圧は5mTorrに調節し、さらに高周波電源13によって150Wの高周波電力を陰極に印加し、30分間のスパッタリングによって基板6の上に膜厚200nm程度の第一の電極膜2として白金膜を形成した。
【0029】
次に、第一の電極膜2の上に形成する圧電膜1も同様の形態のスパッタ装置を用いた。ここで、PZTからなる10インチのターゲット7を用いて槽の内部の陰極に設置し、そして基板ホルダー8には予め上記の方法で第一の電極膜2を形成した基板6を設置し、排気ポンプ10によって槽の内部を10−5Pa程度にまで真空に排気し、基板6を基板加熱用ヒータ9で600℃程度にまで加熱し、さらにスパッタガスであるアルゴンガスおよび酸素ガスをそれぞれ10sccm、1sccmの流量で導入した。この際のガス圧は5mTorrに調節した。さらに高周波電源13によって1kWの高周波電力を陰極に印加し、1.5時間のスパッタリングによって膜厚2μm程度の圧電膜1としてPZT膜を形成した。
【0030】
さらに、圧電膜1としてPZT膜上に形成する第二の電極膜3も同様のスパッタ装置を用いて第一の電極膜2と同様の方法によって膜厚20nm程度の白金膜を形成した。
【0031】
以上のように形成した薄膜の圧電素子において、高い圧電定数を得ることと共に薄膜界面の密着性が高く大きな負荷に対して剥離しないことが要求される。
【0032】
この場合、特に第一の電極膜2として白金膜の膜厚が重要な要素となる。一般に基板6と第一の電極膜2の金属膜との密着性は低い場合が多い。そこで第一の電極膜2の膜厚と基板6の密着性の評価を行い、膜厚300nm以上および100nm以下において密着性が低下することが確認できた。
【0033】
一方、第一の電極膜2としての白金膜や圧電膜1としてのPZT膜の内部応力が大きい場合がある。その要因として膜厚が大きくなるほど内部応力が大きくなることが考えられ、300nm以上での密着性の低下は内部応力の増加に伴うものと推測できる。
【0034】
従って、第一の電極膜2の膜厚を100nmから300nmとすることにより、基板6と剥離なく安定した圧電素子を得ることができた。
【0035】
(実施の形態2)
実施の形態2における圧電素子の製造プロセスについて図を用いて説明する。図2を用いて実施の形態1と異なる点について説明する。
【0036】
まず、第一の電極膜2の形成には実施の形態1で説明した図5に示すスパッタ装置を用いた。ここで、電極材料の白金からなる4インチのターゲット7を用いて槽の内部の陰極(図示せず)を設置し、基板ホルダー8には基板6を設置した。この装置において、まず排気ポンプ10によって槽の内部を10−5Pa程度にまで真空に排気し、基板6を基板加熱用ヒータ9で400℃程度にまで加熱し、さらにスパッタガスであるアルゴンガスを10sccmの流量で導入した。この際のガス圧は3mTorrに調節し、さらに高周波電源13によって150Wの高周波電力を陰極に印加し、30分間のスパッタリングによって基板6の上に膜厚200nm程度の白金膜を形成した。
【0037】
以上のように形成した第一の電極膜2として白金膜の結晶性をX線解析装置により評価を行い、白金膜上に圧電膜1としてPZT膜を形成するが、この場合、白金膜の結晶は単一配向していることが望ましい。従ってここでの結晶性の比較は白金膜が優先配向している方位におけるピーク強度の高さを指標とした。
【0038】
上記の方法で形成した白金膜は(111)の方位に優先配向しており他のピークはまったく無く強度は200kcpsと非常に良好な結晶性を示した。このときの測定条件は管電流30mA、管電圧30kVである。
【0039】
次に、第一の電極膜2の上に形成する圧電膜1も同様の形態のスパッタ装置を用いた。ここで、PZTからなる10インチのターゲット7を用い、槽の内部の陰極に設置し、そして基板ホルダー8には予め上記の方法で第一の電極膜2を形成した基板6を設置し、排気ポンプ10によって層の内部を10−5Pa程度にまで真空に排気し、基板6を基板加熱用ヒータ9で600℃程度にまで加熱し、さらにスパッタガスであるアルゴンガスおよび酸素ガスをそれぞれ10sccm、1sccmの流量で導入した。この際のガス圧は5mTorrに調節した。さらに高周波電源13によって1kWの高周波電力を陰極に印加し、1.5時間のスパッタリングによって膜厚2μm程度の圧電膜1としてPZT膜を形成した。
【0040】
さらに、圧電膜1の上に形成する第二の電極膜3も同様のスパッタ装置を用いて第一の電極膜2と同様の方法によって20nm厚みの白金膜を形成した。
【0041】
以上のように形成した積層膜を用いて圧電素子を形成して、第一および第二の電極膜2,3への電圧の印加により発生する歪み量から圧電定数を計算し、120pm/Vの非常に良好な圧電特性を有する圧電素子が得られた。
【0042】
一方、従来の技術では第一の電極膜2の製造方法において、実施の形態1と同様の加熱温度、アルゴンガス流量、ターゲットへの印加電力とし、ガス圧だけを5mTorr以上の設定で白金膜を形成し評価した結果、白金膜は(111)(100)の多方位の配向を示し、優先配向の(111)のピーク強度は100kcpsと著しく悪い結晶性を示した。さらにこの第一の電極膜2の上に実施の形態1と同様の方法により圧電膜1のPZT膜を形成し、第二の電極膜3としての白金膜を形成し、この積層膜を用いて圧電素子を形成して圧電定数を計算した結果、50pm/Vであった。
【0043】
従って、第一の電極膜2をスパッタリングにより形成する場合、ガス圧を4mTorr以下とすることにより白金膜の結晶性が向上し、この白金膜上に形成するPZT膜の圧電特性が著しく向上することを確認した。
【0044】
以上の結果から実施の形態2における加熱温度、アルゴンガス流量、ガス圧、印加電力等の条件により基板6の上に形成する第一の電極膜2としての白金膜を結晶配向(111)方位の優先配向とすることにより、この第一の電極膜2の上に形成した圧電膜1としてPZT膜は良好な圧電特性を示した。これは多方位が混在する白金膜よりも単一配向となった白金膜の上に形成されることにより圧電膜の結晶および結晶粒が揃うことが要因と考えられる。
【0045】
(実施の形態3)
以下、実施の形態3における圧電膜形成について図面を参照しながら説明する。
【0046】
図3は実施の形態3における電極膜および圧電膜の構成を示す断面図であり、実施の形態1と異なる点について説明する。
【0047】
基板6を用いてスパッタリングにより第一の電極膜2として白金膜、圧電膜1としてPZT膜、さらに第二の電極膜3として白金膜をそれぞれ形成した。
【0048】
第一の電極膜2は実施の形態1と同様のスパッタ装置を用いて形成した。ここで、白金からなる4インチのターゲット7を槽の内部の陰極に設置し、基板ホルダー8に基板6を設置した。この装置において、排気ポンプ10により槽の内部を10−5Pa程度に真空に排気し、基板6を基板加熱用ヒータ9により400℃程度に加熱しアルゴンガスを10sccm、酸素ガスを2sccmの流量で供給し、ガス圧を5mTorrに調整した。さらに高周波電源13により150Wの高周波電力を陰極に印加し、5分間のスパッタリングにより基板6の上に膜厚35nm程度の白金膜を形成し、さらに酸素ガスの供給を停止してアルゴンガスの供給と共に高周波電源13から150Wの高周波電力を陰極に印加し、25分程度のスパッタリングによって膜厚165nm程度の白金膜を形成した。
【0049】
従来の製造方法において、アルゴンガスだけのスパッタリングにより第一の電極膜2を形成すると、この第一の電極膜2として白金膜上に圧電膜1を形成する場合に600℃程度の高温となり、基板6の成分であるシリコンが白金膜中に拡散して白金との合金が形成されるため白金膜の結晶性が劣化し長期安定性に大きな課題となる。
【0050】
実施の形態3において、酸素ガスを用いたスパッタリングの次に酸素ガスを無くしたスパッタリングにより第一の電極膜2として白金膜を形成するため、酸素ガスを用いたスパッタリングにより形成した白金膜が高温プロセスによるシリコンの拡散を抑制する壁となっていると考えられる。
【0051】
これにより、第一の電極膜2の結晶性の安定化が図られるため、圧電素子として長期的な特性の安定性が得られる。
【0052】
(実施の形態4)
以下、実施の形態4における圧電膜の製造方法について図面を参照しながら説明する。図3は実施の形態4における電極膜および圧電膜の構成を示す断面図であり、実施の形態1と異なる点について説明する。
【0053】
圧電膜1としてPZT膜、第一の電極膜2として白金膜、第二の電極膜3として白金膜から構成した。
【0054】
第一の電極膜2は実施の形態1と同様のスパッタ装置を用いて形成した。ここで白金からなる4インチのターゲット7を槽の内部の陰極に設置し、基板ホルダー8に基板6を設置した。この装置において、排気ポンプ10により槽の内部を10−5Pa程度に真空に排気し、基板6を基板加熱用ヒータ9により400℃程度に加熱しアルゴンガスを10sccmの流量で供給し、ガス圧を5mTorrに調整した。さらに高周波電源13により150Wの高周波電力を陰極に印加し、30分間のスパッタリングにより基板6の上に膜厚200nm程度の白金膜を形成した。
【0055】
次に、圧電膜1についても同様のスパッタ装置を用いた。ここでPZTからなる10インチのターゲット7を槽の内部の陰極に設置し、基板ホルダー8に上記の第一の電極膜2が形成された基板6を設置して、排気ポンプ10により槽の内部を10−5Pa程度に真空に排気し、基板6を基板加熱用ヒータ9で600℃程度にまで加熱し、アルゴンガスおよび酸素ガスをそれぞれ10sccm、1sccmの流量で供給し、ガス圧を1.5mTorrに調整した。さらに高周波電源13により1kWの高周波電力を陰極に印加して1.5時間のスパッタリングにより膜厚2μmのPZT膜を形成した。
【0056】
さらに、圧電膜1の上に形成する第二の電極膜3も同様のスパッタ装置を用いて第一の電極膜2と同様の製造方法により膜厚20nm程度の白金膜を形成した。
【0057】
以上、形成した積層膜を用いて圧電素子を形成し第一の電極膜2と第二の電極膜3に電圧を印加して得られた圧電膜1の歪み量から圧電定数を計算した結果、180pm/Vと非常に良好な圧電特性を有する圧電素子が得られた。
【0058】
一方、従来の技術の製造方法において、ガス圧を5mTorr以上として形成した圧電膜1を用いた圧電素子に上記同様の圧電定数を計算した結果、50pm/Vとなり、ガス圧を1.5mTorrとすることにより圧電膜1の圧電定数が向上することが確認できた。この要因として圧電膜1の中に取り込まれる鉛の不足が考えられ、圧電膜1の形成において、スパッタリングのガス圧を低くすることにより不足する鉛を多量に発生することが確認でき、この結果、圧電膜1の結晶性が向上すると考えられる。
【0059】
なお、実施の形態4において圧電膜1の形成の条件としてガス圧を1.5mTorrとしたが、3mTorr以下のガス圧でも同様の効果が得られた。
【0060】
(実施の形態5)
以下、実施の形態5における圧電膜1の製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0061】
図4は実施の形態5における第一および第二の電極膜2,3と圧電膜1の構成を示す断面図であり、実施の形態1と異なる点について説明する。
【0062】
第一の電極膜2として白金膜は実施の形態1と同様の製造方法で形成した。
【0063】
第一の電極膜2の上に形成する圧電膜1も同様のスパッタ装置を用いた。ここでPZTからなる10インチのターゲット7を用いて槽の内部の陰極に設置し、基板ホルダー8には予め第一の電極膜2を形成した基板6を設置した。この装置において、まず排気ポンプ10によって槽の内部を10−5Pa程度まで真空に排気し、基板6を基板加熱用ヒータ9で600℃程度まで加熱し、さらにスパッタガスであるアルゴンおよび酸素ガスをそれぞれ10sccm、0.5sccmの流量で導入しガス圧を5mTorrに調整した。さらに高周波電源13により1kWの高周波電力を陰極に印加して1.5時間のスパッタリングにより膜厚2μmのPZT膜を形成した。
【0064】
さらに、圧電膜1の上に第二の電極膜3の形成においても同様のスパッタ装置を用いて第一の電極膜2と同様の方法により膜厚20nm程度の白金膜を形成した。
【0065】
以上のように形成した積層膜を用いて圧電素子を形成し、第一の電極膜2と第二の電極膜3に電圧を印加して圧電膜1に発生する歪み量から圧電定数を計算した結果、220pm/Vと高い圧電定数の圧電素子が得られた。
【0066】
一方、従来の技術において、アルゴンガス対酸素ガスの分圧比を10対1として圧電膜を形成して評価を行った結果、50pm/Vであった。
【0067】
実施の形態5においてアルゴンガス対酸素ガスの分圧比を20対1として圧電膜1を形成して大きく向上が図れた。
【0068】
従来の技術においては、良好な結晶性のPZT膜を得ることは困難であり、この大きな要因としてPZT膜中へ取り込まれるジルコニウムの不足が考えられる。実施の形態5において、PZT膜を形成する場合、低酸素分圧とすることによりPZT膜中のジルコニウム不足を解消させ、膜の結晶性が向上できたと考えられる。これによってPZT膜の形成時にアルゴンガス対酸素ガスの分圧比を20対1としたが、15対1以上の分圧比で同様の効果が得られることを確認した。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したとおり本発明によれば、支持体上に第一の電極膜、この第一の電極膜上に圧電膜、この圧電膜上に第二の電極膜を形成してなる圧電素子において、上記第一の電極膜の厚みを100nm〜300nmの範囲とした圧電素子であり、上記支持体と第一の電極膜との密着性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における圧電素子の構成を示す断面図
【図2】本発明の実施の形態1,2における第一および第二の電極膜と圧電膜の製造方法を示す断面図
【図3】実施の形態3,4における電極膜および圧電膜の構成を示す断面図
【図4】実施の形態5における第一および第二の電極膜と圧電膜の構成を示す断面図
【図5】薄膜用スパッタ装置の構成を示す模式図
【図6】従来の圧電素子の構成を示す断面図
【図7】従来の第一および第二の電極膜と圧電膜の構成を示す断面図
【符号の説明】
1 圧電膜
2 第一の電極膜
3 第二の電極膜
4 支持体
5 空洞
6 基板
7 ターゲット
8 基板ホルダー
9 基板加熱用ヒータ
10 排気ポンプ
11 アルゴンガスのボンベ
12 酸素ガスのボンベ
13 高周波電源
Claims (5)
- 支持体上に第一の電極膜、この第一の電極膜上に圧電膜、この圧電膜上に第二の電極膜を形成してなる圧電素子において、上記第一の電極膜の厚みを100nm〜300nmの範囲とした圧電素子。
- 支持体上に第一の電極膜、この第一の電極膜上に圧電膜、この圧電膜上に第二の電極膜を形成してなる圧電素子において、圧力を4mTorr以下とするスパッタリングにより上記第一の電極膜を形成する圧電素子の製造方法。
- 支持体上に第一の電極膜、この第一の電極膜上に圧電膜、この圧電膜上に第二の電極膜を形成してなる圧電素子において、酸素ガスを用いたスパッタリングの次に酸素ガスを無くしたスパッタリングにより上記第一の電極膜を形成する圧電素子の製造方法。
- 支持体上に第一の電極膜、この第一の電極膜上に圧電膜、この圧電膜上に第二の電極膜を形成してなる圧電素子において、圧力を3mTorr以下とするスパッタリングにより上記圧電膜を形成する圧電素子の製造方法。
- 支持体上に第一の電極膜、この第一の電極膜上に圧電膜、この圧電膜上に第二の電極膜を形成してなる圧電素子において、スパッタリングに用いるアルゴンガスの圧力を酸素ガスの圧力の15倍以上として上記圧電膜を形成する圧電素子の製造方法。
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- 2002-06-10 JP JP2002168758A patent/JP2004014933A/ja active Pending
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