JP2004014108A - 磁気ヘッドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 緻密なギャップ膜によるガラスとフェライトとの接触防止と、ギャップ膜のフェライトへの応力低減、ギャップ膜と融着ガラスの密着性の向上を図り、大量生産に適し、高密度磁気記録に対応可能なものとなす。
【解決手段】 酸化物磁性材料からなる一対の磁気コア基板1,2のうち少なくとも一方の突合わせ面にギャップ膜3,4が形成され、そのギャップ膜3,4を突合わせ面としてこれら一対の磁気コア基板1,2が突合わされ、その突合わせ面間に磁気ギャップgが形成されてなる磁気ヘッドにおいて、上記ギャップ膜3,4として白金又は白金族を主とする金属若しくは合金よりなる膜を用いた。また、本発明においては、上記ギャップ膜3,4としてCr又はCrを主とする合金よりなる膜,Ti又はTiを主とする合金よりなる膜或いはTa2O5又はTa2O5を主とする酸化物よりなる膜を用いても良い。
【選択図】 図2
【解決手段】 酸化物磁性材料からなる一対の磁気コア基板1,2のうち少なくとも一方の突合わせ面にギャップ膜3,4が形成され、そのギャップ膜3,4を突合わせ面としてこれら一対の磁気コア基板1,2が突合わされ、その突合わせ面間に磁気ギャップgが形成されてなる磁気ヘッドにおいて、上記ギャップ膜3,4として白金又は白金族を主とする金属若しくは合金よりなる膜を用いた。また、本発明においては、上記ギャップ膜3,4としてCr又はCrを主とする合金よりなる膜,Ti又はTiを主とする合金よりなる膜或いはTa2O5又はTa2O5を主とする酸化物よりなる膜を用いても良い。
【選択図】 図2
Description
本発明は、例えばビデオテープレコーダ(VTR)やデータストレージ等の如き記録及び/又は再生装置に搭載して有用な磁気ヘッドの製造方法に関する。
例えば、8ミリVTRに用いられる磁気ヘッドとしては、図15に示すように、ギャップ膜101,102がスパッタリング等によってそれぞれ成膜された一対の磁気コア基板103,104を、互いのギャップ膜101,102同士を突合わせ面として突合わせ、融着ガラス105により接合一体化し、その突合わせ面間に記録再生ギャップとして作動する磁気ギャップを構成したものが提案されている。
通常、かかる構成の磁気ヘッドにおいては、磁気コア基板103,104としてMn−Znフェライト若しくはNi−Znフェライト等の軟磁性酸化物材料が用いられ、一方ギャップ膜101,102としてSiO2等の酸化物非磁性材料が用いられる。
ところで、SiO2はいわゆる石英であり熱膨張係数が零に近いため、ガラスの溶融に必要な加熱・冷却工程でフェライトに残留応力が発生する。また、SiO2はスパッタ形成時にも応力を磁気コア基板103,104に対して与え易いので、その応力により該SiO2が成膜されるフェライト部分の透磁率、軟磁気特性が低下せしめられ、結果として磁気コアの効率が低下してしまう。
さらに、SiO2は融着ガラス105の成分として含まれていることから、図16に示すように、融着工程中にギャップ膜101,102の侵食が発生し、ガラスとフェライトとの接触が起こる。ガラスとフェライトの接触は、この他SiO2が酸化物であることから分子構造が大きく、しかも膜としての構造が粗であるために、この構造的欠陥を通しても生ずる。
かかるガラスとフェライトが接触すると、界面では原子の移動が起こり、フェライト成分がガラス中に溶出することでガラスが僅かに磁性を帯び、この磁性を帯びたギャップ中のガラス及びトラック幅規制溝近傍のガラス部分106をコア間の磁束が通る傾向が強まる結果、磁気ギャップから本来必要な媒体への磁束が弱められる結果となる。
また、磁気ギャップ端部では、SiO2が粗になり易く、表面の化学ポテンシャルが高くなる結果、SiO2の侵食が起こる。その結果、フェライトの溶出が発生し、冷却過程で再析出が起こり、光学的観察でフェライトがつながって見える場合もある。このような場合は、著しく磁気ギャップの効率が低下する。また、溶出が起こることで、フェライト自体も組成ずれが発生し、磁気ギャップ近傍で軟磁性が劣化し、磁気ヘッドの性能が劣化する原因となる。
また、このような現象は、磁気コア基板103,104同士を押さえ付ける負荷が増加するに従い助長される傾向にあり、またギャップ膜が薄くなるに従って起き易くなる。このため、最近の高密度磁気記録のための狭トラック幅、狭ギャップ長時には狭くなったトラック幅部に相対的にかかる応力が大きくなり、ギャップ膜も薄くなる結果、このような現象が起き易くなる。したがって、ヘッド出力減を招き、狭トラック化を妨げる要因となる。
そこで、SiO2がガラスにより侵食されにくく、ガラスとフェライトの接触が発生しにくい低温融着法が提案されている。上記低温融着法は、磁気コア基板上にギャップ膜をスパッタリングにより形成する前に、ギャップ膜形成面に逆スパッタと称されるスパッタリング現象によるエッチング処理を施すことを特徴とするものである。なお、ここで言う逆スパッタとは、通常のスパッタリングにおけるターゲットを磁気コア基板に置き換えてAr,Nなどのイオンをたたきつけることにより磁気コア基板表面にエッチング処理を行うものである。
すなわち、低温融着法においては、先ず、所定の加工を行った磁気コア基板のギャップ形成面をJIS B0601にて規定されている中心線平均粗さRaが20〜100オングストローム程度となるように研磨する。そして、少なくとも一方の磁気コア基板のギャップ形成面に逆スパッタを施して平滑面とした後、上記ギャップ形成面上にSiO2よりなるギャップ膜をスパッタリングにより形成する。
次に、一対の磁気コア基板をギャップスペーサーを介してそれぞれのギャップ形成面を突き合わせ面として突き合わせ、適当な組成を有する融着ガラスにより接合一体化する。このとき、上記低温融着法においては、融着ガラスの融着時の粘度を規定している。本発明者等が検討した結果、融着ガラスを磁気コア基板間に十分充填し、融着ガラスによるSiO2の侵食を防止するためには、融着ガラスの溶融時の粘度を160000(Pa・s)とすれば良く、ある融着ガラスにおける温度と粘度が図17に示すような関係を有している場合、図17から融着時の粘度を上記粘度とするためには融着温度を520℃とすれば良いことも確認されている。ただし、図17中においては、粘度をlogηで示す。そこで、上記低温融着法においては、図17に示す温度−粘度特性を持つガラスを用いて融着温度を520℃として融着を行う。
その結果、磁気コア基板の突き合わせ面間に記録再生ギャップとして作動する磁気ギャップを有する磁気ヘッドが形成される。
上記磁気ヘッドにおいては、前述の磁気ヘッドよりも磁気ギャップ端部のSiO2の侵食が起こり難く、上述のようなガラスとフェライトの接触が発生しにくく、磁気ギャップからの磁束の漏れが弱まりにくく、特性が向上される。
しかしながら、上記低温融着法により磁気ヘッドを製造すると、以下のような不都合が生じる。すなわち、融着ガラスの融着時の温度ずれが最終的に得られる磁気ヘッドの品質に及ぼす影響があまりにも大きく、融着温度の許容範囲があまりにも狭いために生産性が良好ではない。
例えば融着温度が適正温度よりも低温であると、融着ガラスが磁気コア基板間に十分に充填されず、融着温度が高温であると、図18に示すように、磁気コア基板113,114上に形成されているSiO2よりなるギャップ膜111,112に融着ガラス115による侵食が発生する。
従って、融着温度誤差を最小限にとどめる必要があり、融着を行う融着炉として温度精度が非常に高精度なものが必要とされ、かつ温度管理を十分に行う必要があり、量産が難しく、生産性が良好ではない。さらに、上記低温融着法で量産を行った場合には、磁気ヘッド毎のSiO2の侵食の度合いのばらつきが生じ易く、磁気ヘッドの特性も大きくばらつき、量産が難しく、生産性が良好ではない。
そして、上記低温融着法によって磁気ヘッドを製造する際、適正な融着温度にて融着を行っても、融着ガラスとSiO2の反応が生じ、図19に示すように、融着ガラス115とギャップ膜111,112の界面に反応層116が形成されており、SiO2の侵食を完全に抑えることは不可能である。
これは、以下のようなことからも確認されている。すなわち、磁性フェライトよりなる基板上にSiO2を膜厚850オングストロームで形成し、その上に上記低温融着法により磁気ヘッドを製造するために必要とされると思われる膜厚2000オングストロームの融着ガラスをスパッタリングにより形成し、530℃の温度条件で1時間の熱処理を行った場合のSiO2と磁性フェライトの界面の解析をオージェ電子分光法により行った結果を図20に示すが、この結果からSiO2と融着ガラスが反応していることがわかり、これらの界面に反応層が形成され、SiO2の侵食が完全に抑えられているわけではないことが確認されている。なお、図20中横軸は融着ガラスの表面を0とした膜厚方向の深さを示し、縦軸は相対含有量を示す。
また、上記低温融着方法により磁気ヘッドの製造を行っても、ギャップ膜としてSiO2膜を使用する限り、前述のようにSiO2の熱膨張係数が零に近いことから上記SiO2膜形成部分の磁気コア基板に応力が発生することとなり、これによりSiO2の侵食が生じている可能性もある。
そこで本発明は、かかる従来の技術的な課題に鑑みて提案されたものであって、緻密なギャップ膜によるガラスとフェライトとの接触防止と、ギャップ膜のフェライトへの応力低減が図れ、ギャップ膜と融着ガラスの密着性が向上され、大量生産に適し、高密度磁気記録に対応可能な磁気ヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
上述の目的を達成するために、本発明は、酸化物磁性材料からなる一対の磁気コア基板のうち少なくとも一方の突き合わせ面にギャップ膜が形成され、そのギャップ膜を突き合わせ面としてこれら一対の磁気コア基板が突き合わされ、その磁気コア基板間に磁気ギャップが形成されてなり、磁気ギャップのトラック幅が50μm以下かつ膜厚が150nm以下の磁気ヘッドの製造方法において、上記ギャップ膜として白金または白金族を主とする金属もしくは合金よりなる膜が形成され、上記一対の磁気コア基板を突き合わせて非磁性ガラスにより接合一体化する際の上記非磁性ガラスの融着工程における融着時の粘度を10000〜64000Pa・sとすることを特徴とする。
ところで、本発明者等は、白金等に加え、ギャップ膜として特定の材料を使用することにより、ギャップ膜の侵食が防止されるとともに、ギャップ膜と融着ガラス間の密着性が向上されることを見い出した。
すなわち、本発明は、酸化物磁性材料からなる一対の磁気コア基板のうち少なくとも一方の突き合わせ面にギャップ膜が形成され、そのギャップ膜を突き合わせ面としてこれら一対の磁気コア基板が突き合わされ、その磁気コア基板間に磁気ギャップが形成されてなり、磁気ギャップのトラック幅が50μm以下かつ膜厚が150nm以下の磁気ヘッドの製造方法において、ギャップ膜としてCr又はCrを主とする合金よりなる膜,Ti又はTiを主とする合金よりなる膜或いはTa2O5又はTa2O5を主とする酸化物よりなる膜が形成され、上記一対の磁気コア基板を突き合わせて非磁性ガラスにより接合一体化する際の上記非磁性ガラスの融着工程における融着時の粘度を10000〜64000Pa・sとすることを特徴とする。
なお、上記のような磁気ヘッドにおいて、ギャップ膜を形成する前に、一対の磁気コア基板のうち少なくとも一方の突き合わせ面に逆スパッタを施しギャップ膜形成面の平滑性を向上させることにより、磁気ヘッドの特性を更に向上させることができる。
白金又は白金族を主とする金属若しくは合金は、スパッタ粒子が細かく被覆性が高いことから緻密な膜となり、またフェライトやガラスに対してほとんど固溶せず、しかもフェライトの熱膨張係数と略一致するという性質を有する。したがって、白金等をギャップ膜として用いた場合には、ギャップ膜の侵食やガラスとフェライトとの接触が回避されることになり、その結果ガラスとフェライト間の拡散が無くなる。また、フェライトに対して残留応力の発生が少なくなるので、フェライト本来の持つ透磁率、軟磁気特性が損なわれにくい。
また、Cr又はCrを主とする合金は高融点金属であり、さらに酸化物Cr2O3が形成された場合、さらに高融点となるので、ガラスの侵食により粒子が拡散することがなく、Cr又はCrを主とする合金をギャップ膜として用いた場合には、ギャップ膜の侵食やガラスとフェライトとの接触が回避されることになり、その結果ガラスとフェライト間の拡散が無くなる。また、Cr又はCrを主とする合金膜をギャップ膜として用いた場合においては、融着時、融着ガラスとの界面に酸化層が形成され、これにより融着ガラスとの密着性が向上される。
さらに、Ti又はTiを主とする合金は、高融点金属でありガラスの侵食により粒子が拡散しない、緻密な膜を構成し不純物原子の侵入や置換を発生させにくい、熱膨張係数が85×10−7(℃−1)でありフェライトの熱膨張係数よりも若干小さいという性質を有する。したがって、Ti又はTiを主とする合金をギャップ膜として用いた場合には、ギャップ膜の侵食やガラスとフェライトとの接触が回避されることになり、その結果ガラスとフェライト間の拡散が無くなる。また、フェライトに対して残留応力を発生させることが無くなるので、フェライト本来の持つ透磁率、軟磁気特性が損なわれない。さらに、上記Ti又はTiを主とする合金膜をギャップ膜として用いた場合においては、融着時、融着ガラスとの界面に酸化層が形成され、これにより融着ガラスとの密着性が向上される。
そして、Ta2O5又はTa2O5を主とする酸化物は、高融点でガラス成分となりにくく、ガラスの侵食により粒子が拡散しない、熱膨張係数がSiO2の熱膨張係数よりも大きいという性質を有する。したがって、Ta2O5又はTa2O5を主とする酸化物をギャップ膜として用いた場合には、ギャップ膜の侵食やガラスとフェライトとの接触が回避されることになり、その結果ガラスとフェライト間の拡散が少なくなる。また、SiO2成膜時に比べフェライトに対して残留応力を発生させにくくなるので、フェライト本来の持つ透磁率、軟磁気特性が損なわれない。さらに、上記Ta2O5又はTa2O5を主とする酸化物をギャップ膜として用いた場合においては、融着時、融着ガラスとの界面に結合層が形成され、これにより融着ガラスとの密着性が向上される。さらにまた、上記Ta2O5又はTa2O5を主とする酸化物と磁性フェライト及び融着ガラスは、摩耗特性に大きな差がなく、上記Ta2O5又はTa2O5を主とする酸化物をギャップ膜として用いた磁気ヘッドにおいては偏摩耗が発生しにくい。
以上の説明からも明らかなように、本発明の磁気ヘッドにおいては、被覆性が高く緻密でありフェライトやガラスに対して固溶せず、且つフェライトと熱膨張係数が略一致する特性を持つ白金又は白金族を主とする金属若しくは合金をギャップ膜としているので、ガラスとフェライトとの接触による拡散反応を回避することができると共に、フェライトに対する残留応力を与えることを防止でき、本来フェライトの持つ透磁率、軟磁気特性を充分に発揮させることができる。したがって、本発明によれば、狭トラック化・狭ギャップ化した場合でも、磁気記録媒体に対して情報信号を密に書き込むことができ、更に密な情報信号を読み出すことが可能となり、高密度磁気記録化を達成することができる磁気ヘッドを製造することができる。
また、本発明においては、ガラスの侵食により粒子が拡散しないCr又はCrを主とする金属若しくは合金をギャップ膜としているので、ガラスとフェライトとの接触による拡散反応を回避することができ、本来フェライトの持つ透磁率、軟磁気特性を充分に発揮させることができる。したがって、本発明によれば、狭トラック化・狭ギャップ化した場合でも、磁気記録媒体に対して情報信号を密に書き込むことができ、高密度磁気記録化を達成することができる磁気ヘッドを製造することができる。また、本発明においては、Cr又はCrを主とする合金膜と融着ガラスとの界面に酸化層が形成されるため、これにより融着ガラスとの密着性が向上され、高いチップ強度が得られる。
さらに、本発明においては、ガラスの侵食により粒子が拡散せず、緻密な膜を構成し、且つ熱膨張係数がフェライトの熱膨張係数よりも若干小さい特性を持つTi又はTiを主とする金属若しくは合金をギャップ膜としているので、ガラスとフェライトとの接触による拡散反応を回避することができると共に、フェライトに対する残留応力を与えることを防止でき、本来フェライトの持つ透磁率、軟磁気特性を充分に発揮させることができる。したがって、本発明によれば、狭トラック化・狭ギャップ化した場合でも、磁気記録媒体に対して情報信号を密に書き込むことができ、高密度磁気記録化を達成することができる磁気ヘッドを製造することができる。また、本発明においては、Ti又はTiを主とする合金膜と融着ガラスとの界面に酸化層が形成されるため、これにより融着ガラスとの密着性が向上され、高いチップ強度が得られる。
更に、本発明においては、ガラスの侵食により粒子が拡散せず、緻密な膜を構成し、且つ熱膨張係数がフェライトの熱膨張係数よりも若干小さい特性を持つTa2O5又はTa2O5を主とする酸化物をギャップ膜としているので、ガラスとフェライトとの接触による拡散反応を回避することができると共に、フェライトに対する残留応力を与えることを防止でき、本来フェライトの持つ透磁率、軟磁気特性を充分に発揮させることができる。したがって、本発明によれば、狭トラック化・狭ギャップ化した場合でも、磁気記録媒体に対して情報信号を密に書き込むことができ、高密度磁気記録化を達成することができる磁気ヘッドを製造することができる。また、本発明においては、Ta2O5又はTa2O5を主とする酸化物と融着ガラスとの界面に酸化層が形成されるため、これにより融着ガラスとの密着性が向上され、高いチップ強度が得られる。さらに、本発明においては、磁性フェライト及び融着ガラスと摩耗特性に大きな差がないTa2O5又はTa2O5を主とする酸化物をギャップ膜として用いているため、偏摩耗が発生しにくく、スペーシングロス等による特性の劣化が生じない。
以下、本発明を適用した具体的な実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施例1
本実施例においては、ギャップ膜として白金又は白金族を主とする金属若しくは合金よりなる膜を用いた磁気ヘッドについて説明し、上記磁気ヘッドは、8ミリVTRに搭載される磁気ヘッドとする。
本実施例においては、ギャップ膜として白金又は白金族を主とする金属若しくは合金よりなる膜を用いた磁気ヘッドについて説明し、上記磁気ヘッドは、8ミリVTRに搭載される磁気ヘッドとする。
本実施例の磁気ヘッドは、図1及び図2に示すように、酸化物磁性材料よりなる磁気コア基板1,2とこの磁気コア基板1,2の突合わせ面側にそれぞれ被着形成されるギャップ膜3,4とからなる一対の磁気コア半体5,6とが、互いのギャップ膜3,4を突合わせ融着ガラス7により接合一体化され、その突合わせ面間に記録再生ギャップとして動作するアジマスを有した磁気ギャップgを形成してなっている。
上記一対の磁気コア基板1,2は、例えばMn−ZnフェライトやNi−Znフェライト等の軟磁性酸化物材料からなる。これら磁気コア基板1,2の突合わせ面側には、アジマスを持った磁気ギャップgと平行な磁気ギャップ形成面8,9と、この磁気ギャップ形成面8,9と非平行でトラック幅規制溝によって形成される傾斜面10,11とが設けられている。
なお、上記磁気ギャップ形成面8,9は、トラック幅規制溝によって切り欠かれることにより形成されるもので、磁気ギャップgのトラック幅Twとなるように形成されている。
また、上記一対の磁気コア基板1,2の突合わせ面側には、コイルを巻装させるための巻線溝12,13が断面略コ字状をなす溝としてコア厚方向に貫通して設けられている。そして、その巻線溝12,13のうち、磁気記録媒体摺動面14側に設けられる傾斜面12a,13aは、磁気ギャップgのデプスを規制する役目をするようになっている。
この一方、上記磁気コア基板1,2の突合わせ面側とは反対側の側面には、上記巻線溝12,13に巻回されるコイルの巻装状態を確保するための巻線ガイド溝15,16が設けられている。この巻線ガイド溝15,16は、断面略コ字状をなす溝として、上記巻線溝12,13が設けられる位置と相対向する位置に形成されている。
一方、ギャップ膜3,4は、各磁気コア基板1,2の突合わせ面側の磁気ギャップ形成面8,9と、その両側に設けられる傾斜面10,11にそれぞれフロント側からバック側に亘って連続した膜として成膜されている。巻線溝12,13部分にもギャップ膜3,4が成膜されているが、磁気ギャップ形成面8,9から離れた部分は成膜されないように形成してもよい。
このように構成された一対の磁気コア半体5,6は、磁気ギャップ形成面8,9上に成膜されたギャップ膜3,4間にギャップスペーサを介在させトラック位置で合わせされて突合わされ、該磁気ギャップgの両端縁の空隙部分に非磁性である融着ガラス7を充填することにより接合一体化され、そのギャップ膜3,4間に記録再生ギャップとして動作する磁気ギャップgを形成する。
なお、図示は省略するが、相対向するギャップ膜3,4間には融着ガラス7が充填され、この融着ガラス7とこれらギャップ膜3,4との総膜厚が磁気ギャップgのギャップ長となっている。また、本実施例では、高密度磁気記録を目的として、磁気ギャップgのトラック幅Twを50μm以下とし、ギャップ膜3,4の膜厚を150nm以下としている。
そして特に本実施例では、上記ギャップ膜3,4として、例えば白金又は白金族を主とする金属若しくは合金よりなる膜を用いている。白金族としては、白金の他にルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムが挙げられる。これら白金等は、スパッタ粒子が細かく表面の被覆性が高いという特性を有する。これは、例えば走査型顕微鏡で絶縁物を観察する際に通常の導電性金属では倍率の高い像を得る場合には粒子が大きく不向きであり、白金若しくは白金−パラジウム合金等が用いられることからも明かである。
また、白金族は、結晶構造が面心立方格子若しくは稠密六方格子であり密な構造をとる。このため、被覆性がSiO2等の酸化物に比べて向上し、ガラスとフェライトの接触が起こり難くなる。また、白金はフェライトの単結晶作製用の坩堝に用いられることから判るように、高融点であり、さらにフェライトやガラスに対しほとんど固溶しない特性を持っている。このため、ガラス溶融による高温の融着時にも侵食や拡散を起こさず緻密な膜構造を維持する。
このことは、以下のようなことから確認されている。すなわち、磁性フェライトよりなる基板上に白金を膜厚850オングストロームで形成し、その上に磁気ヘッドを製造するために必要とされると思われる膜厚2000オングストロームの融着ガラスをスパッタリングにより形成し、530℃の温度条件で1時間の熱処理を行った場合の白金と磁性フェライトの界面の解析をオージェ電子分光法により行った結果を図3に示すが、この結果から白金と融着ガラスが反応していないことがわかり、白金の侵食が抑えられていることが確認されている。なお、図3中横軸は融着ガラスの表面を0とした膜厚方向の深さを示し、縦軸は相対含有量を示す。
また、熱膨張係数も91×10−7(℃−1)、Pt−Pd合金でも約100×10−7(℃−1)と略フェライトの熱膨張係数に一致するため、スパッタ及び熱処理によりフェライトに対し残留応力を発生することもない。
このような特徴を持つため、SiO2をギャップ膜とした場合と異なり、例えば狭トラック幅、狭ギャップ長で磁気ヘッドを作製した場合にも磁気ギャップが維持され、ギャップ中のガラス(図示は省略する。)とギャップ膜3,4が完全に非磁性のまま維持される。したがって、磁気ギャップ部で磁気記録媒体側への磁束の漏洩が充分に起こり、高い記録再生性能が達成できる。
また、白金等を用いた場合には、SiO2をギャップ膜としたときの出力を零dBとしてなる相対出力レベルのトラック幅依存性を示す図4から明らかなように、トラック幅Twが50μm以下の狭トラックであっても相対出力がSiO2に比べて遥かに高いことが判る。同様に、SiO2をギャップ膜としたときの出力を零dBとしてなる相対出力レベルの白金膜厚依存性を示す図5から明らかなように、その膜厚が150nm以下の狭ギャップ長であっても相対出力がやはりSiO2に比べて遥かに高い。
次に、上述の磁気ヘッドを製造する方法について説明する。先ず、Mn−Znフェライト若しくはNi−Znフェライト等の如き軟磁性酸化物材料からなるコア半体ブロックを14本得られる大きな基板を、図6に示すように縦横厚みそれぞれ45×45×1(単位mm)となるように切り出し、コア半体ブロック17を形成する。
次に、図7に示すように、上記コア半体ブロック17の主面17aに対して断面略U字状をなすトラック幅規制溝18を、ブロック長手方向に沿って規定のトラック幅Twが残るように複数形成する。本実施例では、主面17aに対する接触部の角度を60゜として溝開口部の幅190μm、深さ95μm、残存するトラック幅16μmとなるように略U字状にトラック幅規制溝18を形成した。
なお、トラック幅規制溝18は、上記の例では断面略U字状としたが、例えば断面略V字状としても構わない。
次いで、図8に示すように、上記コア半体ブロック17の主面17aに、上記トラック幅規制溝18と略直交する方向にコイルを巻装するための巻線溝19を形成する。本実施例では、開口幅650μm、深さ200μm、摺動面となる側に近い端部における傾斜面19aと主面17aとのなす角度を40゜、反対側の端部における傾斜面19bと主面17aとのなす角度を90゜とする断面形状を有する巻線溝19を形成した。
しかる後、コア半体ブロック17の主面17aを研磨し、表面粗度が50nm程度になるように形成する。次いで、図9に示すように、トラック幅規制溝18、巻線溝19を含めて上記コア半体ブロック17の主面17aに白金よりなるギャップ膜(図示は省略する。)を成膜する。
ギャップ膜を成膜するに際しては、直径6インチの純白金からなるターゲットをRFマグネトロンスパッタ法で300Wの投入電力の下にスパッタし、90nmの膜厚となるようにした。白金はフェライトと熱膨張係数が略一致することから、スパッタによってはフェライトに対して残留応力を発生させることがない。
次に、同様に作製したコア半体ブロック17,17同士をトラック位置合わせしながら図10に示すように重ね合わせる。そして、巻線溝19,19内にガラス棒(図示は省略する。)を挿入し、これを加熱溶融せしめ、相対向するトラック幅規制溝18,18間の空間部に融着ガラス20を充填する。
かかる融着工程では高い温度が加えられるが、白金よりなるギャップ膜は緻密且つフェライトやガラスに対して固溶しない膜であることから、ギャップ膜がガラスによって侵食されることもなく、またフェライトとガラスとの拡散が発生することもない。
次に、図11に示すように、融着ガラス20によって接合一体化されたコアブロックに対して、上記巻線溝19と相対向する位置に巻線ガイド溝21,21を形成する。次いで、磁気記録媒体と摺接する摺動面となる部分を円筒研磨して曲面形状となした後、磁気ギャップgのアジマス角が20゜となるように図11中点線で示す位置でそれぞれチップ切断する。
そして、得られたヘッドチップを、外形寸法幅1500μm、高さ1900μm、厚み220μmとなるように仕上げた。
以上のようにして作製された磁気ヘッドに、インダクタンスが約1.8μHとなるように巻線を行い出力を測定した。また、比較例としてSiO2をギャップ膜とした同一構成の磁気ヘッドの出力も測定した。その結果、白金をギャップ膜とした磁気ヘッドでは4.5MHzで180μVp−pであり、SiO2をギャップ膜とした磁気ヘッドでは105μVp−pであった。このように、白金をギャップ膜とした場合には、SiO2をギャップ膜とした場合に比べて約5dBもの大幅な出力の改善効果が確認された。
実施例2
本実施例においては、ギャップ膜としてCr又はCrを主とする合金よりなる膜を用いた実施例1の磁気ヘッドと同様の構成を有する磁気ヘッドについて説明する。
本実施例においては、ギャップ膜としてCr又はCrを主とする合金よりなる膜を用いた実施例1の磁気ヘッドと同様の構成を有する磁気ヘッドについて説明する。
本実施例の磁気ヘッドも図1及び2に示すような磁気ヘッドであり、酸化物磁性材料よりなる磁気コア基板1,2とこの磁気コア基板1,2の突合わせ面側にそれぞれ被着形成されるギャップ膜3,4とからなる一対の磁気コア半体5,6とが、互いのギャップ膜3,4を突合わせ融着ガラス7により接合一体化され、その突合わせ面間に記録再生ギャップとして動作するアジマスを有した磁気ギャップgを形成してなる磁気ヘッドである。以下、実施例1と重複する部分については説明を省略する。
そして、本実施例の磁気ヘッドにおいては、特に、上記ギャップ膜3,4としてCr又はCrを主とする合金よりなる膜を用いている。上記Cr又はCrを主とする合金は金属であるため、SiO2等の酸化物のようにガラスの侵食により粒子が拡散することがなく、ギャップ膜の侵食やガラスとフェライトとの接触が回避されることになり、その結果ガラスとフェライト間の拡散が無くなる。すなわち、本実施例の磁気ヘッドにおいては、SiO2をギャップ膜とした場合と異なり、例えば狭トラック幅、狭ギャップ長で磁気ヘッドを作製した場合にも磁気ギャップが維持され、ギャップ中のガラス(図示は省略する。)とギャップ膜3,4が完全に非磁性のまま維持される。従って、磁気ギャップ部で磁気記録媒体側への磁束の漏洩が充分に起こり、高い記録再生性能が達成できる。
また、本実施例の磁気ヘッドにおいては、図12に示すように、ギャップ膜3,4と融着ガラス7との界面にCr又はCrを主とする合金の酸化層22が形成されており、これによりギャップ膜3,4と融着ガラス7との密着性が向上され、磁気ヘッドのチップ強度は高いものとなる。
なお、このことは以下のようなことから確認されている。すなわち、磁性フェライトよりなる基板上にCrを膜厚850オングストロームで形成し、その上に磁気ヘッドを製造するために必要とされると思われる膜厚2000オングストロームの融着ガラスをスパッタリングにより形成し、530℃の温度条件で1時間の熱処理を行った場合のCrと磁性フェライトの界面の解析をオージェ電子分光法により行った結果を図13に示すが、この結果からCr膜表面に酸化層が形成されていることがわかり、このようなCr等よりなる膜をギャップ膜として使用している本実施例の磁気ヘッドにおいては、ギャップ膜と融着ガラスとの密着性が向上され、磁気ヘッドのチップ強度は高いものとなることが確認されている。なお、図13中横軸は融着ガラスの表面を0とした膜厚方向の深さを示し、縦軸は相対含有量を示す。
次に本実施例の磁気ヘッドを製造する製造方法について説明するが、該製造方法は、実施例1で述べた製造方法と略同等の方法であるので、重複する部分については説明を省略する。
先ず、図6に示すようなMn−Znフェライト若しくはNi−Znフェライト等の如き軟磁性酸化物材料からなるコア半体ブロック17をその縦厚みがそれぞれ30×2.9(単位mm)となるように用意する。
そして、図7に示すように、上記コア半体ブロック17の主面17aに実施例1と同様に複数のトラック幅規制溝18を形成するが、本実施例においては、上記トラック幅規制溝18をその各対応する一側面が垂直面の例えばトラック幅規制溝18の他側面に対し所要の角度βをクロストーク対策としてβ=8〜45゜とし、深さを60μm程度とした溝として形成し、トラック幅を15μmとした。
次に、上記コア半体ブロック17の主面17aを研磨して、その中心線平均粗さRaを20〜100オングストロームとなるようにした。その後、図8に示すように、実施例1と同様に巻線溝19をトラック幅規制溝18に略直交する方向に形成する。
そして、上記コア半体ブロック17の主面17aにその平滑性を向上させるために逆スパッタを施した後に、図9に示すように、トラック幅規制溝18、巻線溝19を含めて上記コア半体ブロック17の主面17aにCrよりなるギャップ膜(図示は省略する。)をスパッタリングにより形成する。なお、本実施例においては上記Crよりなるギャップ膜の膜厚を850オングストロームとした。
次に、同様に作製したコア半体ブロック17,17同士をトラック位置合わせしながら図10に示すように重ね合わせる。そして、巻線溝19,19内にガラス棒(図示は省略する。)を挿入し、これを加熱溶融せしめ、相対向するトラック幅規制溝18,18間の空間部に融着ガラス20を充填する。
このとき、本実施例においては、融着温度を530℃〜560℃の範囲とした。これは、融着時の融着ガラス20の粘度を規定するためで、図17の結果からコア半体ブロック17,17間に融着ガラス20を十分に充填させることを可能とする粘度64000(Pa・s)を得るための温度が530℃であり、融着工程によりCr膜よりなるギャップ膜にガラスによる侵食が発生し始める粘度10000(Pa・s)を得るための温度が560℃であるためである。
かかる融着工程では高い温度が加えられるが、Crよりなるギャップ膜は金属であり、SiO2等の酸化物のようにガラスの侵食により粒子が拡散することがないため、ギャップ膜の侵食やガラスとフェライトとの接触が回避され、ガラスとフェライト間の拡散が発生することもない。
次に、実施例1と同様に各種加工を施した後、チップ切断し、得られたヘッドチップを、外形寸法幅1500μm、高さ1900μmとなるように仕上げた。なお、本実施例においてはアジマス角を10゜とした。
このとき、本実施例においては、Cr膜よりなるギャップ膜と融着ガラスの界面にCr膜の酸化層が形成されており、これらの密着性が向上され、高いチップ強度を有しているため、上記各種加工等において磁気ヘッドが破損することもない。
そして、以上のようにして作製された磁気ヘッドと比較のためにSiO2をギャップ膜とした同一構成の磁気ヘッドの出力を測定した。その結果、Crをギャップ膜とした磁気ヘッドでは3.13m/s,4.7MHzで170μVp−pであり、SiO2をギャップ膜とした磁気ヘッドでは112μVp−pであった。このように、Crをギャップ膜とした場合には、SiO2をギャップ膜とした場合に比べて3.65dBもの大幅な出力の改善効果が確認された。
実施例3
本実施例においては、ギャップ膜としてTi又はTiを主とする合金よりなる膜を用いた実施例2の磁気ヘッドと同様の構成を有する磁気ヘッドについて説明する。
本実施例においては、ギャップ膜としてTi又はTiを主とする合金よりなる膜を用いた実施例2の磁気ヘッドと同様の構成を有する磁気ヘッドについて説明する。
本実施例の磁気ヘッドは、実施例2に示した磁気ヘッドと同様の構成を有し、図1,2に示すようなギャップ膜3,4としてTi又はTiを主とする合金よりなる膜を用いていることのみ異なる磁気ヘッドである。上記Ti又はTiを主とする合金は金属であるため、SiO2等の酸化物のようにガラスの侵食により粒子が拡散することがない。また、Ti又はTiを主とする合金は密な結晶構造を有するため、緻密な膜を構成し不純物原子の侵入や置換を発生させにくい。すなわち、本実施例の磁気ヘッドにおいては、ギャップ膜の侵食やガラスとフェライトとの接触が回避されることになり、その結果ガラスとフェライト間の拡散が無くなる。
また、熱膨張係数もTiにおいては85×10−7(℃−1)であり、フェライトの熱膨張係数よりも若干小さいため、スパッタ及び熱処理によりフェライトに対し残留応力を発生することが少ない。
このような特徴を有するため、SiO2をギャップ膜とした場合と異なり、例えば狭トラック幅、狭ギャップ長で磁気ヘッドを作製した場合にも磁気ギャップが維持され、ギャップ中のガラス(図示は省略する。)とギャップ膜3,4が完全に非磁性のまま維持される。従って、磁気ギャップ部で磁気記録媒体側への磁束の漏洩が充分に起こり、高い記録再生性能が達成できる。
また、本実施例の磁気ヘッドにおいても、実施例2の磁気ヘッドと同様に、図12に示すようなギャップ膜3,4と融着ガラス7との界面にTi又はTiを主とする合金の酸化層22が形成されており、これによりギャップ膜3,4と融着ガラス7との密着性が向上され、磁気ヘッドのチップ強度は高いものとなる。
次に本実施例の磁気ヘッドを製造する製造方法について説明するが、該製造方法は、実施例2で述べた製造方法と略同等の方法であり、ギャップ膜としてTiよりなるギャップ膜を形成する点のみ異なるものである。
本実施例においては、図9に示すように、トラック幅規制溝18、巻線溝19を含めて上記コア半体ブロック17の主面17aにTiよりなるギャップ膜(図示は省略する。)をスパッタリングにより形成するが、Tiの熱膨張係数がフェライトの熱膨張係数よりも若干小さいことから、スパッタによってはフェライトに対して残留応力を発生させることが少ない。
また、本実施例においては、図10に示すようにコア半体ブロック17,17同士をトラック位置合わせしながら重ね合わせ、巻線溝19,19内にガラス棒(図示は省略する。)を挿入し、これを加熱溶融せしめ、相対向するトラック幅規制溝18,18間の空間部に融着ガラス20を充填する。
かかる融着工程では高い温度が加えられるが、Tiよりなるギャップ膜は金属であり、SiO2等の酸化物のようにガラスの侵食により粒子が拡散することがなく、また緻密な膜であるため、ギャップ膜の侵食やガラスとフェライトとの接触が回避され、ガラスとフェライト間の拡散が発生することもない。
そして、本実施例においても、図11に示すように、融着ガラス20によって接合一体化されたコアブロックに対して、巻線ガイド溝21,21を形成する、磁気記録媒体と摺接する摺動面となる部分を円筒研磨して曲面形状となす、磁気ギャップgのアジマス角が10゜となるように図11中点線で示す位置でそれぞれチップ切断する等の各種加工を施す。このとき、本実施例においては、Ti膜よりなるギャップ膜と融着ガラスの界面にTi膜の酸化層が形成されており、これらの密着性が向上され、高いチップ強度を有しているため、上記各種加工等において磁気ヘッドが破損することもない。
さらに、以上のようにして作製された磁気ヘッドと比較のためにSiO2をギャップ膜とした同一構成の磁気ヘッドの出力を測定した。ただし、これらの磁気ヘッドのアジマス角は10゜とした。その結果、Tiをギャップ膜とした磁気ヘッドでは3.13m/s,4.7MHzで143μVp−pであり、SiO2をギャップ膜とした磁気ヘッドでは112μVp−pであった。このように、Tiをギャップ膜とした場合には、SiO2をギャップ膜とした場合に比べて2.1dBもの大幅な出力の改善効果が確認された。
実施例4
本実施例においては、ギャップ膜としてTa2O5又はTa2O5を主とする酸化物よりなる膜を用いた実施例2の磁気ヘッドと同様の構成を有する磁気ヘッドについて説明する。
本実施例においては、ギャップ膜としてTa2O5又はTa2O5を主とする酸化物よりなる膜を用いた実施例2の磁気ヘッドと同様の構成を有する磁気ヘッドについて説明する。
本実施例の磁気ヘッドは、実施例2に示した磁気ヘッドと同様の構成を有し、図1,2に示すようなギャップ膜3,4としてTa2O5又はTa2O5を主とする酸化物よりなる膜を用いていることのみ異なる磁気ヘッドである。上記Ta2O5又はTa2O5を主とする酸化物は、SiO2等の酸化物のようにガラスの侵食により粒子が拡散することが少なく、本実施例の磁気ヘッドにおいては、ギャップ膜の侵食やガラスとフェライトとの接触が回避されることになり、その結果ガラスとフェライト間の拡散が無くなる。
SiO2の熱膨張係数が零に近いのに比べ、Ta2O5の熱膨張係数は大きく、スパッタ成膜やガラス融着等の熱処理時にフェライトに及ぼす応力はSiO2をギャップ膜とした場合よりも減少することからフェライトの残留応力による透磁率の劣化を防ぐ。
このような特徴を有するため、SiO2をギャップ膜とした場合と異なり、例えば狭トラック幅、狭ギャップ長で磁気ヘッドを作製した場合にも磁気ギャップが維持され、ギャップ中のガラス(図示は省略する。)とギャップ膜3,4が完全に非磁性のまま維持される。従って、磁気ギャップ部で磁気記録媒体側への磁束の漏洩が充分に起こり、高い記録再生性能が達成できる。
また、本実施例の磁気ヘッドにおいても、融着ガラスとTa2O5又はTa2O5を主とする酸化物が共に酸化物であることから、実施例2の磁気ヘッドと同様に、図12に示すようなギャップ膜3,4と融着ガラス7との界面にTa2O5又はTa2O5を主とする酸化物の結合層22が形成されており、これによりギャップ膜3,4と融着ガラス7との密着性が向上され、磁気ヘッドのチップ強度は高いものとなる。
なお、このことは以下のようなことから確認されている。すなわち、磁性フェライトよりなる基板上にTa2O5を膜厚850オングストロームで形成し、その上に磁気ヘッドを製造するために必要とされると思われる膜厚2000オングストロームの融着ガラスをスパッタリングにより形成し、530℃の温度条件で1時間の熱処理を行った場合のTa2O5と磁性フェライトの界面の解析をオージェ電子分光法により行った結果を図14に示すが、この結果から融着ガラスとTa2O5膜の酸素成分が結合し、これらの密着性が向上され、磁気ヘッドのチップ強度は高いものとなることが確認されている。なお、図14中横軸は融着ガラスの表面を0とした膜厚方向の深さを示し、縦軸は相対含有量を示す。
さらに、本実施例の磁気ヘッドにおいては、ギャップ膜としてTa2O5又はTa2O5を主とする酸化物を用いており、上記Ta2O5又はTa2O5を主とする酸化物と磁気コア基板を構成する磁性フェライトや融着ガラスの摩耗特性に大きな差がないことから、偏摩耗が発生しにくい。
次に本実施例の磁気ヘッドを製造する製造方法について説明するが、該製造方法は、実施例2で述べた製造方法と略同等の方法であり、ギャップ膜としてTa2O5よりなるギャップ膜を形成する点のみ異なるものである。
本実施例においては、図9に示すように、トラック幅規制溝18、巻線溝19を含めて上記コア半体ブロック17の主面17aにTa2O5よりなるギャップ膜(図示は省略する。)をスパッタリングにより形成するが、Ta2O5の熱膨張係数がSiO2の熱膨張係数よりも大きいことから、スパッタによってはフェライトに対して残留応力を発生させることが少ない。
また、本実施例においては、図10に示すようにコア半体ブロック17,17同士をトラック位置合わせしながら重ね合わせ、巻線溝19,19内にガラス棒(図示は省略する。)を挿入し、これを加熱溶融せしめ、相対向するトラック幅規制溝18,18間の空間部に融着ガラス20を充填する。
かかる融着工程では高い温度が加えられるが、Ta2O5よりなるギャップ膜は金属であるため、SiO2等の酸化物のようにガラスの侵食により粒子が拡散することがなく、ギャップ膜の侵食やガラスとフェライトとの接触が回避され、ガラスとフェライト間の拡散が発生することもない。
そして、本実施例においても、図11に示すように、融着ガラス20によって接合一体化されたコアブロックに対して、巻線ガイド溝21,21を形成する、磁気記録媒体と摺接する摺動面となる部分を円筒研磨して曲面形状となす、磁気ギャップgのアジマス角が所定の角度となるように図11中点線で示す位置でそれぞれチップ切断する等の各種加工を施す。このとき、本実施例においては、融着ガラスとTa2O5膜の酸素成分の結合により、該Ta2O5膜よりなるギャップ膜と融着ガラスの界面に結合層が形成されており、これらの密着性が向上され、高いチップ強度を有しているため、上記各種加工等において磁気ヘッドが破損することもない。
さらに、以上のようにして作製された磁気ヘッドと比較のためにSiO2をギャップ膜とした同一構成の磁気ヘッドの出力を測定した。ただし、これらの磁気ヘッドのアジマス角は10゜とした。その結果、Ta2O5をギャップ膜とした磁気ヘッドでは3.13m/s,4.7MHzで143μVp−pであり、SiO2をギャップ膜とした磁気ヘッドでは112μVp−pであった。このように、Ta2O5をギャップ膜とした場合には、SiO2をギャップ膜とした場合に比べて2.1dBもの大幅な出力の改善効果が確認された。
1,2・・・磁気コア基板、3,4・・・ギャップ膜、5,6・・・磁気コア半体、7・・・融着ガラス、8,9・・・磁気ギャップ形成面、12,13・・・巻線溝、15,16・・・巻線ガイド溝、22・・・酸化層
Claims (5)
- 酸化物磁性材料からなる一対の磁気コア基板のうち少なくとも一方の突き合わせ面にギャップ膜が形成され、そのギャップ膜を突き合わせ面としてこれら一対の磁気コア基板が突き合わされ、その磁気コア基板間に磁気ギャップが形成されてなり、磁気ギャップのトラック幅が50μm以下かつ膜厚が150nm以下の磁気ヘッドの製造方法において、
上記ギャップ膜として白金または白金族を主とする金属もしくは合金よりなる膜が形成され、
上記一対の磁気コア基板を突き合わせて非磁性ガラスにより接合一体化する際の上記非磁性ガラスの融着工程における融着時の粘度を10000〜64000Pa・sとすることを特徴とする磁気ヘッドの製造方法。 - 酸化物磁性材料からなる一対の磁気コア基板のうち少なくとも一方の突き合わせ面にギャップ膜が形成され、そのギャップ膜を突き合わせ面としてこれら一対の磁気コア基板が突き合わされ、その磁気コア基板間に磁気ギャップが形成されてなり、磁気ギャップのトラック幅が50μm以下かつ膜厚が150nm以下の磁気ヘッドの製造方法において、
上記ギャップ膜としてCrまたはCrを主とする合金よりなる膜が形成され、
上記一対の磁気コア基板を突き合わせて非磁性ガラスにより接合一体化する際の上記非磁性ガラスの融着工程における融着時の粘度を10000〜64000Pa・sとすることを特徴とする磁気ヘッドの製造方法。 - 酸化物磁性材料からなる一対の磁気コア基板のうち少なくとも一方の突き合わせ面にギャップ膜が形成され、そのギャップ膜を突き合わせ面としてこれら一対の磁気コア基板が突き合わされ、その磁気コア基板間に磁気ギャップが形成されてなり、磁気ギャップのトラック幅が50μm以下かつ膜厚が150nm以下の磁気ヘッドの製造方法において、
上記ギャップ膜としてTiまたはTiを主とする合金よりなる膜が形成され、
上記一対の磁気コア基板を突き合わせて非磁性ガラスにより接合一体化する際の上記非磁性ガラスの融着工程における融着時の粘度を10000〜64000Pa・sとすることを特徴とする磁気ヘッドの製造方法。 - 酸化物磁性材料からなる一対の磁気コア基板のうち少なくとも一方の突き合わせ面にギャップ膜が形成され、そのギャップ膜を突き合わせ面としてこれら一対の磁気コア基板が突き合わされ、その磁気コア基板間に磁気ギャップが形成されてなり、磁気ギャップのトラック幅が50μm以下かつ膜厚が150nm以下の磁気ヘッドの製造方法において、
上記ギャップ膜としてTa2O5またはTa2O5を主とする酸化物よりなる膜が形成され、
上記一対の磁気コア基板を突き合わせて非磁性ガラスにより接合一体化する際の上記非磁性ガラスの融着工程における融着時の粘度を10000〜64000Pa・sとすることを特徴とする磁気ヘッドの製造方法。 - 一対の磁気コア基板のうち少なくとも一方の突き合わせ面の表面粗度(中心線平均粗さRa)を20〜100オングストロームとし、その面に逆スパッタを施した後にギャップ膜が形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうち何れか1項に記載の磁気ヘッドの製造方法。
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2003
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