JP2004006624A - 配線基板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】配線回路の比抵抗が小さい配線基板と、それを同時焼成によって作製する製造方法を提供する。
【解決手段】アルミナを主体とする絶縁基板1と、該絶縁基板1の表面及び/又は内部に低抵抗金属及び高融点金属を含有する配線層2が被着形成されて設けられた配線回路を具備する配線基板であって、前記配線層2に存在する5μm以上の気孔が5個/cm2以下、側面の凹凸が15μm以下であることを特徴とするものである。
【選択図】図1
【解決手段】アルミナを主体とする絶縁基板1と、該絶縁基板1の表面及び/又は内部に低抵抗金属及び高融点金属を含有する配線層2が被着形成されて設けられた配線回路を具備する配線基板であって、前記配線層2に存在する5μm以上の気孔が5個/cm2以下、側面の凹凸が15μm以下であることを特徴とするものである。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミナを主体とする絶縁基板を用いた配線基板とその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
近年、半導体素子の高集積化に伴い、半導体装置から発生する熱も増加している。半導体装置の誤動作をなくすためには、このような熱を装置外に放出可能な配線基板が必要とされている。一方、電気的な特性としては、演算速度の高速化により、信号の遅延が問題となり、導体損失の小さい、つまり低抵抗の導体を用いることが要求されてきた。
【0003】
これに対して、従来の半導体素子を搭載した配線基板としては、信頼性の点からアルミナセラミックスを絶縁基板とし、その表面又は内部にWやMoなどの高融点金属からなる配線層を被着形成したセラミック配線基板が多用されている。ところが、従来から多用されている高融点金属からなる配線層では、比抵抗を高々10μΩcm程度までしか低くできない。
【0004】
そこで、放熱性を維持したまま、配線層の電気抵抗を低下するため、Cu、またはCuとW又はMoを組み合わせた配線層とアルミナとを同時焼成により形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、導体抵抗と熱膨張の観点からCuとW又はMo並びにガラスを組み合わせた導体組成を絶縁基板と同時焼成にて形成する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−8503号公報
【特許文献2】
特開平3−306437号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、アルミナの緻密化のために、1600℃以上の高温で焼成するため、溶融したCu成分が表面に分離し、表面配線層ににじみが生じ、配線の側面形状の凹凸が大きくなることから抵抗も高くなるという問題があった。
【0008】
一方、特許文献2に記載の方法は、焼成温度の高いアルミナを主成分とする絶縁層と同時焼成する場合にはCuの比率が著しく低下し、さらに、ガラスを添加することによりCuが配線層から分離し、配線に大きなボイドが残留し、配線の比抵抗が10μΩcm以下を満足することができない。
【0009】
従って、本発明は、配線回路の比抵抗が小さい配線基板と、それを同時焼成によって作製する製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、配線層の組成及びその組織を制御することによって、高融点金属及び低抵抗金属が均一に分布し、大きなボイドの発生を抑制するとともに側面の凹凸を小さくすることがでるという知見に基づくもので、その結果、配線基板の比抵抗を低下させることができる。
【0011】
また、微細な低抵抗金属粉末に、該低抵抗金属粉末よりも小さな平均粒径を有する高融点金属粉末を組み合わせることによって低温で同時焼成ができ、上記のような配線層の均一な組織を実現するものである。
【0012】
特に、高融点金属からなる表面粉末層を有する低抵抗金属粉末を用いることにより、金属粉末の分散性を向上させることによって、微細な高融点金属を低抵抗金属マトリックス中に高均一分散でき、その結果、配線基板の比抵抗をさらに低下させることができる。
【0013】
即ち、本発明の配線基板は、アルミナを主体とする絶縁基板と、該絶縁基板の表面及び/又は内部に低抵抗金属及び高融点金属を含有する配線層が被着形成されて設けられた配線回路を具備する配線基板であって、前記配線層に存在する5μm以上の気孔が5個/cm2以下、側面の凹凸が15μm以下であることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の配線基板は、アルミナを主体とする絶縁基板と、該絶縁基板の表面及び/又は内部に低抵抗金属及び高融点金属を含有する配線層が被着形成されて設けられた配線回路を具備する配線基板であって、該配線層の組成が30〜65質量%の低抵抗金属及び35〜70質量%の高融点金属からなり、該組成のバラツキが5%以下であるとともに、前記配線層の比抵抗が4.5μΩcm以下であることを特徴とするものである。
【0015】
特に、前記低抵抗金属がCu、前記高融点金属がW及び/又はMoであることが好ましい。これにより、Cuの保形剤として働くW及び/又はMo粒子がCu中に均一に分布させやすくなり、導体の低比抵抗化の達成が容易となる。
【0016】
さらに、前記高融点金属の平均粒径が1μm以下であることが好ましい。これにより、焼成中に流動するCuに対する保持力が向上すると共に粗大な高融点金属による低抵抗金属層の断絶を回避し、抵抗上昇を抑制することが容易になる。
【0017】
また、本発明の配線基板の製造方法は、低抵抗金属粉末及び該低抵抗金属粉末より小さい平均粒径を有する高融点金属粉末を含有する導体ペーストを、アルミナを主体とするグリーンシートの表面に塗布して配線層を形成する工程と、該グリーンシートを複数積層して積層体を形成する工程と、該積層体を非酸化性雰囲気中で焼成する工程とを具備することを特徴とするものである。
【0018】
特に、前記グリーンシートにビアホールを形成する工程と、該ビアホールの内部に配線層を形成する工程を含むことが好ましい。これにより、Cuを含有する配線層とアルミナを主成分とする絶縁基板との同時焼成を行っても、優れた保形性を維持することにより、導体配線内に存在すボイドや、コア剤としてはたらくW及び/又はMo粒子或いは、Cuの不均一分布を抑制でき、緻密で比抵抗の低い配線層を形成することができる。
【0019】
また、高融点金属粉末がMo及び/又はW、前記低抵抗金属粉末がCuであり、該Cuの平均粒径が2.0〜5.5μm且つ最大粒径が15μm以下であるとともに、前記焼成の最高温度が1200〜1500℃であることが好ましい。これによって、コア剤の間隔が広がることにより側面の凹凸が抑制でき、均一な組織を形成することができる。
【0020】
さらに、前記高融点金属粉末の平均粒径が、0.6〜2.0μmであることが好ましい。これにより、粒子の凝集及び異常粒成長や巨大粒子添加に起因する配線層の断線を防止することが容易になるとともに、配線層の側面や上面の凹凸を小さくすることが容易となる。
【0021】
前記高融点金属粉末の平均粒径が0.5μm以下であって、該高融点金属粉末が前記低抵抗金属粉末の表面に粉末被覆層を形成していることが好ましい。これにより、より微細な高融点金属を均一に分散させることが可能となる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の配線基板を、図を用いて説明する。図1は配線基板の概略の断面を示すもので、アルミナ質焼結体1a〜1eの積層体からなる絶縁基板1の表面に表面配線層2aが、絶縁基板1の内部に内部配線層2bが設けられ、これらの配線層2は、絶縁基板1の内部に設けられたビアホール導体3によって電気的に連結している。
【0023】
本発明によれば、配線層2に存在する5μm以上の気孔が5個/cm2以下であることが重要である。即ち、表面配線層2aは表面に露出した気孔を、内部配線層2bは断面を観察して気孔の大きさを測定し、いずれも5μm以上の気孔の密度が1cm2当たり5個以下であることが重要である。これにより、Cuの寸断の抑制と均一な組織が形成でき、特に3個以下、更には1個以下が好ましい。
【0024】
例えば、表面配線層2aの場合、走査型電子顕微鏡を用いて、表面配線層2aの表面を観察し、表面に形成された気孔の大きさを測定すれば良い。また、内部配線層2bの場合、絶縁基板1を切断及び/又は研磨して内部配線層2bの断面を観察して気孔の大きさを測定すれば良い。
【0025】
また、配線回路における各配線層2の側面の凹凸が、15μm以下であることが重要である。即ち、図2に示す配線層2の拡大図のように、配線層2の側面は直線ではなく、大小の凹凸が形成されている。この凹凸は、配線層2の中心線に平行に引いた時、その間隔を凹凸の幅dと規定すれば、dが15μm以下であることが重要である。特に10μm以下、更には5μm以下であることが好ましい。
【0026】
これにより、均一で安定した配線層2を形成でき、抵抗上昇を抑制することができる。なお、この凹凸は、表面配線層2a及び内部配線層2bに対して適応される。
【0027】
上述したように、表面配線層2aに観察される5μm以上の気孔密度を5個/cm2以下にするとともに、配線の側面の凹凸を15μm以下とすることによって、導電パスの断面積を大きくし、配線層2の抵抗を小さくすることができ、その結果、低抵抗を有する配線基板を提供することが可能となる。
【0028】
配線層2の比抵抗は、4.5μΩcm以下、特に3μΩcm以下、更には1μΩcm以下にすることが、ジュール熱による発熱を効率的に抑制することができ、配線基板の温度上昇を防ぐ効果がある。
【0029】
表面配線層2a、内部配線層2b及びビアホール導体3は低抵抗金属及び高融点金属を含む。低融点金属は、比抵抗が1.0〜2.5μΩcmを有する金属であり、Cu、Ag、Au等を例示できるが、コスト、マイグレーション及び融点の点でCuが特に好ましい。高融点金属は、Mo、W、Re、Taの少なくとも1種であり、特に、コスト、難焼結性の点でMo、Wが特に好ましい。CuとW及び/又はMoの組合せは、配線層のコア剤となるW及び/又はMoがアルミナ質焼結体1a〜1eとのアンカー効果によって、溶融したCuを保形し、緻密で連続した配線層2を形成できるという利点がある。
【0030】
絶縁基板1は配線層2との同時焼成によって作製されるが、焼成温度はCuの融点よりも高いため、Cuは焼成時に溶融するが、高融点金属であるWやMoは溶融せずに溶融Cu中に分散され、焼結体中に粒子状で分散していることが好ましい。高融点金属は低抵抗金属に比べて抵抗が高いため、高融点金属が凝集し、或いは部分的に焼結して偏在すると、凝集部分又は偏在部分が高抵抗となり、配線層2の抵抗が高くなることがある。
【0031】
本発明に用いられる絶縁基板1は、アルミナを主体し、絶縁基板1の熱伝導性及び高強度化を達成するために、相対密度が95%以上、特に97%以上、さらには98%以上の高緻密体から構成され、さらに熱伝導率は10W/m・K以上、特に15W/m・K以上、さらには17W/m・K以上であることが望ましい。
【0032】
また、絶縁基板1を形成する主結晶相はアルミナ結晶であり、その形状は粒状、板状又は柱状として存在するが、主結晶相の平均結晶粒径は1.5〜5.0μm、特に2.0〜3.0μmであることが望ましい。なお、主結晶相が柱状結晶からなる場合、上記平均結晶粒径は、短軸径に基づくものである。この主結晶相の平均結晶粒径が1.5μmよりも小さいと、高熱伝導化が難しく、平均粒径が5μmよりも大きいと基板材料として用いる場合に要求される十分な強度を得にくくなる。
【0033】
また、この絶縁基板1には、Cuを含有するメタライズ組成物との同時焼結性を高める目的でさらに焼結助剤を添加することが好ましい。例えば、CaO、SrO等のアルカリ土類元素酸化物及びSiO2のうち少なくとも1種を0.4〜8質量%の割合で含有することで、低温焼結性を高めることができる。
【0034】
また、アルミナを84質量%以上の割合で含有し、焼結助剤としてMn化合物をMn2O3換算で2.0〜15.0質量%、特に3〜10質量%の割合で含有することが、高い絶縁性を維持したまま、1200〜1500℃の低温での緻密化が容易になる。さらに、W、Moなどの金属を着色成分として2質量%以下の割合で含んでも良い。
【0035】
なお、上記のアルミナ以外の成分は、アルミナ主結晶相の粒界に非晶質相として存在しても結晶相として存在しても良いが、熱伝導性を高める上で粒界中に助剤成分を含有する結晶相が形成されていることが望ましい。
【0036】
本発明によれば、配線層2中に分散する高融点金属の平均粒径は1μm以下、特に0.8μm以下、更には0.5μm以下であることが好ましい。このように高融点金属の粒径を設定することにより、高融点金属が微細にかつ均一に分散するため、配線層中でコア剤として同時焼成中に溶融、流動するCuを所望形状に保持することができ、その結果、断線の防止と均一な組織を容易に形成することができる。
【0037】
高融点金属の平均粒径は、配線基板の切断面を研磨し、走査型電子顕微鏡を用いた配線層2の断面写真において、直線上に配置された少なくとも30個の高融点金属粒子の最大粒径と最小粒径をそれぞれ測定し、各高融点金属粒子の平均粒径を算出した後、測定全粒子の平均値を算出して平均粒径とすれば良い。
【0038】
本発明によれば、配線層2の緻密化と高融点金属粉末の分散状態を制御することによって5μm以上の気孔を排除し、側面の凹凸を15μm以下にすることが重要である。この粉末が凝集し、偏在することによって高融点金属が存在する部位と存在しない部位とが生じてしまうと、低抵抗金属の流動性が高まって、短絡する危険があり、また、比抵抗が部位によって異なるという不具合が生じる。
【0039】
また、高融点金属が存在しない部位の低融点金属の流動性が高いため、焼成すると高融点金属が存在しない部位に大きな気孔が生じる確立が高くなる。
【0040】
具体的には、低抵抗金属であるCuが30〜65質量%、高融点金属であるW又は/及びMo粒子が35〜70質量%含まれことが重要である。この組成範囲にすることによってW又は/及びMoとCuの均一分散された組織が実現できる。
【0041】
配線層2におけるW又は/及びMo含有量は、配線層2の保形性、凝集による抵抗上昇抑制のため、特に40〜55質量%、更には45〜50質量%が好ましい。また、組成のバラツキは、微細配線部での抵抗バラツキ幅が大きくなるため、5%以下であることが好ましい。特に、低抵抗化並びに保形性の観点から、3%以下、更には1%以下であることが好ましい。
【0042】
また、配線層2は、比抵抗が4.5μΩcm以下であることが好ましい。
【0043】
さらに、配線層2は、各アルミナ質焼結体1a〜1eの表面及び/又は内部に形成され、表面配線層2a、内部配線層2b及びビアホール導体3を形成し、電気的に接続するものであるが、一対の内部配線層2bを、アルミナ質焼結体(1a〜1eの少なくとも1種)を挟持するように形成し、容量成分を配線基板内部に形成することもできる。これは、内部配線層2bが挟持するアルミナ質焼結体を薄層化することにより、キャパシタを形成するといったものである。
【0044】
以上のように、本発明の配線基板は、低抵抗導体であるCuを用い、平均粒径の制御によって緻密な配線層2を得られ、低い比抵抗を達成できるという特徴を有し、パワーアンプ用モジュール、フロントエンドモジュ−ル等に好適に利用できる。
【0045】
次に、本発明の配線基板の製造方法について説明する。
【0046】
まず、絶縁基板1を形成する。主成分となるアルミナ原料粉末として、平均粒径が0.5〜2.5μm、特に0.5〜2.0μmの粉末を用いる。これは、平均粒径は0.5μmよりも小さいと、粉末の取扱いが難しく、また粉末のコストが高くなり、2.5μmよりも大きいと、1500℃以下の温度で焼成することが難しくなることがあるためである。
【0047】
上記アルミナ粉末に対して、第2の成分として、Mn2O3を2.0〜15.0質量%、特に3.0〜10.0質量%第3の成分として、SiO2を2.0〜15.0質量%、特に3.0〜10.0質量%の割合で添加する。また、適宜、第4成分としてMgO、CaO、SrO粉末等を0.2〜8質量%、第5の成分として、W、Mo、Crなどの遷移金属の金属粉末や酸化物粉末を着色成分として金属換算で2質量%以下の割合で添加する。
【0048】
なお、上記酸化物の添加に当たっては、酸化物粉末以外に、焼成によって酸化物を形成し得る炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩などとして添加してもよい。
【0049】
この混合粉末を用いてアルミナ質焼結体1を形成するためのシート状成形体を作製する。シート状成形体は、周知の成形方法によって作製することができる。例えば、上記混合粉末に有機バインダーや溶媒を添加してスラリーを調製した後、ドクターブレード法によって形成したり、混合粉末に有機バインダーを加え、プレス成形、圧延成形等により所定の厚みのシート状成形体を作製できる。そしてこのシート状成形体に対して、マイクロドリル、レーザー等によりビアホール導体用スルーホールを形成してもよい。
【0050】
次に、配線層2を形成するための導体ペーストを作製する。原料粉末を準備するに当たり、高融点金属粉末の平均粒径が低抵抗金属粉末の平均粒径よりも小さいものを準備することが重要である。低抵抗金属粉末の平均粒径の方が大きい場合、高融点金属粒子の間隔が狭くなり、焼成時の粒成長により低抵抗金属が押し出され、表面偏析等の概観不良が発生しやすくなる。特に、低抵抗金属粉末の平均粒径が高融点金属粉末の平均粒径よりも過度に大きい場合、配線層2の厚みに対して1個の高融点金属粒子の占める割合が多くなるため、低抵抗金属からなる導電パスを寸断し、部分的に比抵抗の高い部位が形成される。
【0051】
低抵抗金属粉末の平均粒径のバラツキが大きい場合は、低抵抗金属粉末が焼成時に溶融するため、気孔となりやすく、特に保形性を保つ高融点金属粒子が偏在する場合には大きな気孔が形成される。
【0052】
低抵抗金属粉末の平均粒径は2.0〜5.5μm、特に2.5〜3.8μmであることが好ましい。低抵抗金属粉末であるCu粉末の平均粒径を上記の範囲に設定することにより、Cuの焼結性が高まってアルミナとの収縮開始温度に差が生じ、同時焼成における配線層2の剥がれや、断線や変形、不均一組織等が発生することを防止し、或いは焼成時に溶融したCuが流動してボイドが生じることを防止できる。
【0053】
また、低抵抗金属粉末の最大粒径を15μm以下にすることが好ましい。Cu等の低抵抗金属粉末の最大粒径が15μm以上の場合、Cuの流動性が大きいため、配線層2のボイドが著しく増加するばかりではなく、先に溶融したCuが粗大粒近辺に集中し、配線層2中のCu分布の不均一が生じ、比抵抗の増大が生じる。
【0054】
上記の平均粒径が2.0〜5.5μmのCu粉末を10〜70体積%、特に30〜60体積%、及びこのCu粉末より小さい平均粒径を有するW及び/またはMo粉末を30〜90体積%、特に40〜70体積%の割合で含有してなる導体ペーストを調製する。ここで、W及び/またはMo粉末の平均粒径は、特に0.6〜2.0μm、更には0.8〜1.8μmが好ましい。これによって、粒子が凝集及び焼成における異常粒成長により、また大きすぎる粒子により、配線層2の表面の凹凸、特に配線層2の側面7を含む境界の凹凸の増大を防止することが容易となる。
【0055】
本発明によれば、上述したように、高融点金属粉末と低抵抗金属粉末との単純混合を行って導体ペーストを作製しても良いが、特に、高融点金属を配線層中に均一に分散させるため、低抵抗金属粒子を中核粒子とし、その表面に高融点金属の粉末層を形成した複合粉末を用いることが好ましい。
【0056】
例えば、図3に示したように、低抵抗金属粉末101の粒子表面に、低抵抗金属粉末101よりも平均粒径が小さい高融点金属粉末102が多数付着し、粉末被覆層103を形成した複合粉末を用いるのが、配線層2に高融点金属粉末101を均一に分散させるために好ましい。
【0057】
なお、粉末被覆層103は、高融点金属粉末102が必ずしも低抵抗金属粉末101粒子の表面全てを覆う必要は無く、低抵抗金属粉末粒子101の一部の表面が露出していても同様の効果がある。
【0058】
このような粉末被覆層103の作製方法は、特に制限されるものではないが、総合技術出版「微粒子・超微粒子」−目で見るそのミクロ構造−に記載された粉体/粉体系混合法や高速気流中衝撃法等の手法を用いることができる。特に、簡便、低コストの点で、粉体/粉体系混合法に基づき、低抵抗金属粉末101と高融点金属粉末102との乾式混合によって複合粉末を得るのが良い。
【0059】
上記の複合粉末を用いる場合、スクリーン印刷などにより配線層2の形成を考慮すると、低抵抗金属粉末101の平均粒径は2.0〜5.5μmの被覆金属粉末を準備するのが良い。平均粒径が2.0μm未満では導体ペーストにおける粉末の分散、充填性を十分高めるのが容易ではないことがあり、その結果、配線層2における高融点金属粒子102が不均一に分散し、抵抗値が増大するという問題が生じやすい。また、平均粒径が5.5μmを越えると溶融されたCuが流動し、その跡に大きな空隙が形成されることがあり、緻密な組織を形成するのが容易ではないことがある。
【0060】
また、複合粉末に用いる低抵抗金属粉末101の最大粒径は、10μm以下、特に5μm以下、更には3μm以下であるのが良い。低抵抗金属粉末101の最大粒径が10μmを越えると、複合粉末としての平均粒径が15μmを越えることがあり、そのために配線層2の側面7の凹凸が大きくなる場合があり、また、大きな空隙ができ易く、Mo又はWの分散状態が部分的に悪くなり易い場合がある。
【0061】
また、導体ペーストの組成は、上記単純混合の場合と同様に、低抵抗金属のCuが30〜65質量%、高融点金属のW又は/及びMo粒子が35〜70質量%含まれることが好ましい。この組成範囲にすることによってW又は/及びMoとCuが均一に分散された組織を容易に実現することが可能となる。
【0062】
配線層2におけるW又は/及びMo含有量は、配線層2の保形性、凝集による抵抗上昇抑制のため、特に40〜55質量%、更には45〜50質量%が好ましい。また、組成のバラツキは、微細配線部での抵抗バラツキ幅が大きくなるため、5%以下であることが好ましい。特に、低抵抗化並びに保形性の観点から、3%以下、更には1%以下であることが好ましい。
【0063】
本発明によれば、配線層2における高融点金属粉末102の微細化と均一な分散状態を確保するために、複合粉末を用いることにより、微細な高融点金属が低抵抗金属からなるマトリックス中に均一に分散させた組織を有する配線層を容易に形成でき、しかも高融点金属粉末102の平均粒径を1.0μm以下に抑制しやすく、配線層2の側面7の凹凸も15μm以下、特に10μm以下にすることが容易になる。
【0064】
この高融点金属粉末102が凝集し、偏在することによって高融点金属が存在する部位と存在しない部位とが生じてしまうと、低抵抗金属の流動性が高まって、短絡する危険があり、また、比抵抗が部位によって異なるという不具合が生じる。また、高融点金属が存在しない部位の低融点金属の流動性が高いため、焼成すると高融点金属が存在しない部位に大きな気孔が生じる確立が高くなる。
【0065】
なお、単純混合粉末及び複合粉末を用いた場合について上述したが、複合粉末と単純混合粉末とを組合せても良い。例えば、複合粉末に20質量%以下の割合で高融点金属を加えても良いし、混合粉末を20質量%と複合粉末80質量%の割合で混合しても良い。
【0066】
これらの導体ペースト中には、アルミナ質焼結体1a〜1e各層との密着性を高めるために、アルミナ粉末や、アルミナ質焼結体成分と同一の組成物粉末、或いはNi、Zr、Al、Li、Mg、Znを酸化物、ホウ化物、窒化物或いは炭酸塩として0.05〜2体積%の割合で添加することも可能である。
【0067】
次いで、上記の導体ペーストを各シート状成形体に施した配線回路用ビアホール内に上記Cu含有導体ペーストを充填するとともに、各シート状成形体に対しスクリーン印刷、グラビア印刷などの方法により上記の導体ペーストを印刷塗布して配線層を形成する。
【0068】
その後、上記の複数のシート状成形体を位置合わせして積層圧着して積層体を作製する。そして、この積層体を、非酸化性雰囲気中、焼成最高温度が1200〜1500℃の温度で焼成する。
【0069】
また、表面配線層2a及び内部配線層2bの形成には、保形性及び絶縁性を達成する上で、Cuを含む配線層との同時焼成が必要である。そして、その焼成温度は1200〜1500℃、特に1250〜1400℃が好ましい。
【0070】
焼成温度を上記の範囲に設定することによって、アルミナを主体とする絶縁基板1の相対密度を95%以上に容易に緻密化でき、熱伝導性や強度の低下を防止しやすく、また、W及び/又はMo自体の焼結が進み、Cuの流動により均一組織を維持できなく、強いては低抵抗を維持することが困難となることを防止できる。
【0071】
また、アルミナ主結晶相の粒径が大きくなる異常粒成長の発生を容易に防止でき、Cuが絶縁基板1中へ拡散するときのパスである粒界の長さが短くなって拡散速度が速くなったり、Cuの拡散距離が増加し、配線層2間又はアルミナ質焼結体1a〜1e間の絶縁劣化が生じることを防止できる。
【0072】
焼成時の非酸化性雰囲気としては、窒素、あるいは窒素と水素との混合雰囲気であることが望ましいが、特に、配線層中のCuの拡散を抑制する上では、水素及び窒素を含み露点+30℃以下、特に0〜25℃の非酸化性雰囲気であることが望ましい。なお、この雰囲気には所望により、アルゴンガス等の不活性ガスを混入してもよい。焼成時の露点が+30℃より高いと、焼成中に酸化物セラミックスと雰囲気中の水分とが反応し酸化膜を形成し、この酸化膜とCu含有導体のCuが反応してしまい、導体の低抵抗化の妨げとなるのみでなく、Cuの拡散を助長してしまうためである。
【0073】
【実施例】
実施例1
平均粒径1.8μmのアルミナ粉末に対して、焼結助剤として平均粒径3.5μmのMn2O3粉末を6質量%、平均粒径1.0μmのSiO2粉末を3質量%、平均粒径0.8μmのMgCO3粉末を1.2質量%の割合で添加し、混合した後、結合材としてアクリル系バインダーと、トルエンを溶媒として混合してスラリーを調製した。
【0074】
このスラリーを用いて、ドクターブレード法にて厚さ250μmのシート状に成形してグリーンシートを作成した。次に、表1に示した平均粒径及び最大粒径を有するCu粉末、Ag粉末、Au粉末とW粉末及び/又はMo粉末とを、表1に示す比率で混合し、アクリル系バインダーとをアセトンを溶媒として導体ペーストを作製した。
【0075】
そして、焼成後に線幅100μm、長さ40mmになるようにスクリーン印刷法を用いてグリーンシート上に上記導体ペーストを印刷塗布し、抵抗測定用試料の前駆体を作成した。
【0076】
次いで、この積層体を実質的に水分を含まない酸素含有雰囲気中(H2+O2)で脱脂を行った後、表1に示した焼成温度にて、露点20℃の窒素水素混合雰囲気中にて焼成した。
【0077】
各配線層表面のボイド、配線中のW又は/及びMo粒子の占有率を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定した。
【0078】
導体の比抵抗はデジタルマルチメーターを用いて抵抗値を測定した。
【0079】
気孔の密度は、表面配線層に露出している気孔を観察し、5μm以上の気孔だけをカウントして密度を算出した。また、外観観察は、光学顕微鏡で配線層を観察し、偏析、ニジミ、変色、断線を調べた。
【0080】
配線層2の側面7の凹凸形状は上記の抵抗測定用試料のラインの一部を用いて、長さ200μmの領域で導体金属がまばらに存在する領域の凹凸の幅dを測定した。
【0081】
配線中の高融点金属粒子であるW又は/及びMo粒子の占有率は配線層を断面方向に研磨し、画像処理にて100μm2の領域におけるW又は/及びMo粒子の占有率を測定し、10箇所のバラツキを算出した。
【0082】
配線層中の高融点金属粒径は、配線層の断面を観察し、画像解析処理を行い平均粒径を算出した。
【0083】
【表1】
【0084】
本発明の試料No.2〜5、8〜10、13〜15、18〜20及び24〜26は、配線層の比抵抗が4.5μΩcm以下、配線層2の側面7の凹凸の幅dが15μm以下、高融点金属粒子の占有率バラツキが5%以下の緻密な配線層を得た。
実施例2
高融点金属と低抵抗金属の複合粉末、Cu粉末、Ag粉末、Au粉末とW粉末及び/又はMo粉末とを、表1の組合せで混合し、複合粉末を得た。そして、所望により、さらにCu粉末、Ta粉末、Re粉末、W粉末又はMo粉末を加え、アクリル系バインダーとをアセトンを溶媒として導体ペーストを作製した。他は実施例1と同様にして配線基板を作製した。
【0085】
評価も実施例1と同様に行った。なお、配線層中の高融点金属粒径は、配線層の断面を観察し、画像解析処理を行い平均粒径を算出した。
【0086】
【表2】
【0087】
本発明の試料No.31〜35、37〜40、42〜48は、配線層の比抵抗が4.5μΩcm以下、配線層2の側面7の凹凸が15μm以下で緻密かつ外観上良好な配線層を得た。特に、配線層中の高融点金属の粒子径が1.0μm以下の場合には、dが10μm以下で、外観も良好であった。
【0088】
一方、低抵抗金属の含有量が20質量%及び80質量%と本発明の範囲外の試料No.36及び41は、比抵抗が5.5μΩcm以上であった。また、外観観察でも異常が見られた。
【0089】
さらに、低抵抗金属粉末より大きい平均粒径を有する高融点金属粉末を用いた試料No.49及び50は、比抵抗が高すぎて測定できず、又、配線層2の側面7の凹凸も大きすぎて測定不可能であった。
【0090】
【発明の効果】
本発明によれば、アルミナを絶縁層とする配線基板の低抵抗化を達成でき、配線層の緻密化が図れる為、メッキ処理後の残留分による外観不良が無く、アルミナ質焼結体と配線層の密着性が向上し、高周波信号の損失を低減できる配線層を同時焼成によって形成することができ、高信頼性の配線基板を得ることが出来る。
【0091】
本発明によれば、アルミナを絶縁層とする配線基板の低抵抗化を達成する為に、Cu配線中に微細な高融点金属を均一に分散することにより配線層の緻密化が図れ、導体抵抗値を低減できる。また、アルミナ質焼結体と配線層の密着性が向上し、高周波信号の損失を低減できる配線層を同時焼成によって形成することができ、高信頼性の配線基板を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の配線基板を示す概略断面図である。
【図2】本発明の配線基板の配線における側面の凹凸の測定方法を示す平面図である。
【図3】本発明の配線基板の製造に用いる複合粉末の構造を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1・・・絶縁基板
1a、1b、1c、1d、1e・・・アルミナ質焼結体
2・・・配線層
2a・・・表面配線層
2b・・・内部配線層
3・・・ビアホール導体
6・・・中心線
7・・・側面
d・・・凹凸の幅
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミナを主体とする絶縁基板を用いた配線基板とその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
近年、半導体素子の高集積化に伴い、半導体装置から発生する熱も増加している。半導体装置の誤動作をなくすためには、このような熱を装置外に放出可能な配線基板が必要とされている。一方、電気的な特性としては、演算速度の高速化により、信号の遅延が問題となり、導体損失の小さい、つまり低抵抗の導体を用いることが要求されてきた。
【0003】
これに対して、従来の半導体素子を搭載した配線基板としては、信頼性の点からアルミナセラミックスを絶縁基板とし、その表面又は内部にWやMoなどの高融点金属からなる配線層を被着形成したセラミック配線基板が多用されている。ところが、従来から多用されている高融点金属からなる配線層では、比抵抗を高々10μΩcm程度までしか低くできない。
【0004】
そこで、放熱性を維持したまま、配線層の電気抵抗を低下するため、Cu、またはCuとW又はMoを組み合わせた配線層とアルミナとを同時焼成により形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、導体抵抗と熱膨張の観点からCuとW又はMo並びにガラスを組み合わせた導体組成を絶縁基板と同時焼成にて形成する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−8503号公報
【特許文献2】
特開平3−306437号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、アルミナの緻密化のために、1600℃以上の高温で焼成するため、溶融したCu成分が表面に分離し、表面配線層ににじみが生じ、配線の側面形状の凹凸が大きくなることから抵抗も高くなるという問題があった。
【0008】
一方、特許文献2に記載の方法は、焼成温度の高いアルミナを主成分とする絶縁層と同時焼成する場合にはCuの比率が著しく低下し、さらに、ガラスを添加することによりCuが配線層から分離し、配線に大きなボイドが残留し、配線の比抵抗が10μΩcm以下を満足することができない。
【0009】
従って、本発明は、配線回路の比抵抗が小さい配線基板と、それを同時焼成によって作製する製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、配線層の組成及びその組織を制御することによって、高融点金属及び低抵抗金属が均一に分布し、大きなボイドの発生を抑制するとともに側面の凹凸を小さくすることがでるという知見に基づくもので、その結果、配線基板の比抵抗を低下させることができる。
【0011】
また、微細な低抵抗金属粉末に、該低抵抗金属粉末よりも小さな平均粒径を有する高融点金属粉末を組み合わせることによって低温で同時焼成ができ、上記のような配線層の均一な組織を実現するものである。
【0012】
特に、高融点金属からなる表面粉末層を有する低抵抗金属粉末を用いることにより、金属粉末の分散性を向上させることによって、微細な高融点金属を低抵抗金属マトリックス中に高均一分散でき、その結果、配線基板の比抵抗をさらに低下させることができる。
【0013】
即ち、本発明の配線基板は、アルミナを主体とする絶縁基板と、該絶縁基板の表面及び/又は内部に低抵抗金属及び高融点金属を含有する配線層が被着形成されて設けられた配線回路を具備する配線基板であって、前記配線層に存在する5μm以上の気孔が5個/cm2以下、側面の凹凸が15μm以下であることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の配線基板は、アルミナを主体とする絶縁基板と、該絶縁基板の表面及び/又は内部に低抵抗金属及び高融点金属を含有する配線層が被着形成されて設けられた配線回路を具備する配線基板であって、該配線層の組成が30〜65質量%の低抵抗金属及び35〜70質量%の高融点金属からなり、該組成のバラツキが5%以下であるとともに、前記配線層の比抵抗が4.5μΩcm以下であることを特徴とするものである。
【0015】
特に、前記低抵抗金属がCu、前記高融点金属がW及び/又はMoであることが好ましい。これにより、Cuの保形剤として働くW及び/又はMo粒子がCu中に均一に分布させやすくなり、導体の低比抵抗化の達成が容易となる。
【0016】
さらに、前記高融点金属の平均粒径が1μm以下であることが好ましい。これにより、焼成中に流動するCuに対する保持力が向上すると共に粗大な高融点金属による低抵抗金属層の断絶を回避し、抵抗上昇を抑制することが容易になる。
【0017】
また、本発明の配線基板の製造方法は、低抵抗金属粉末及び該低抵抗金属粉末より小さい平均粒径を有する高融点金属粉末を含有する導体ペーストを、アルミナを主体とするグリーンシートの表面に塗布して配線層を形成する工程と、該グリーンシートを複数積層して積層体を形成する工程と、該積層体を非酸化性雰囲気中で焼成する工程とを具備することを特徴とするものである。
【0018】
特に、前記グリーンシートにビアホールを形成する工程と、該ビアホールの内部に配線層を形成する工程を含むことが好ましい。これにより、Cuを含有する配線層とアルミナを主成分とする絶縁基板との同時焼成を行っても、優れた保形性を維持することにより、導体配線内に存在すボイドや、コア剤としてはたらくW及び/又はMo粒子或いは、Cuの不均一分布を抑制でき、緻密で比抵抗の低い配線層を形成することができる。
【0019】
また、高融点金属粉末がMo及び/又はW、前記低抵抗金属粉末がCuであり、該Cuの平均粒径が2.0〜5.5μm且つ最大粒径が15μm以下であるとともに、前記焼成の最高温度が1200〜1500℃であることが好ましい。これによって、コア剤の間隔が広がることにより側面の凹凸が抑制でき、均一な組織を形成することができる。
【0020】
さらに、前記高融点金属粉末の平均粒径が、0.6〜2.0μmであることが好ましい。これにより、粒子の凝集及び異常粒成長や巨大粒子添加に起因する配線層の断線を防止することが容易になるとともに、配線層の側面や上面の凹凸を小さくすることが容易となる。
【0021】
前記高融点金属粉末の平均粒径が0.5μm以下であって、該高融点金属粉末が前記低抵抗金属粉末の表面に粉末被覆層を形成していることが好ましい。これにより、より微細な高融点金属を均一に分散させることが可能となる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の配線基板を、図を用いて説明する。図1は配線基板の概略の断面を示すもので、アルミナ質焼結体1a〜1eの積層体からなる絶縁基板1の表面に表面配線層2aが、絶縁基板1の内部に内部配線層2bが設けられ、これらの配線層2は、絶縁基板1の内部に設けられたビアホール導体3によって電気的に連結している。
【0023】
本発明によれば、配線層2に存在する5μm以上の気孔が5個/cm2以下であることが重要である。即ち、表面配線層2aは表面に露出した気孔を、内部配線層2bは断面を観察して気孔の大きさを測定し、いずれも5μm以上の気孔の密度が1cm2当たり5個以下であることが重要である。これにより、Cuの寸断の抑制と均一な組織が形成でき、特に3個以下、更には1個以下が好ましい。
【0024】
例えば、表面配線層2aの場合、走査型電子顕微鏡を用いて、表面配線層2aの表面を観察し、表面に形成された気孔の大きさを測定すれば良い。また、内部配線層2bの場合、絶縁基板1を切断及び/又は研磨して内部配線層2bの断面を観察して気孔の大きさを測定すれば良い。
【0025】
また、配線回路における各配線層2の側面の凹凸が、15μm以下であることが重要である。即ち、図2に示す配線層2の拡大図のように、配線層2の側面は直線ではなく、大小の凹凸が形成されている。この凹凸は、配線層2の中心線に平行に引いた時、その間隔を凹凸の幅dと規定すれば、dが15μm以下であることが重要である。特に10μm以下、更には5μm以下であることが好ましい。
【0026】
これにより、均一で安定した配線層2を形成でき、抵抗上昇を抑制することができる。なお、この凹凸は、表面配線層2a及び内部配線層2bに対して適応される。
【0027】
上述したように、表面配線層2aに観察される5μm以上の気孔密度を5個/cm2以下にするとともに、配線の側面の凹凸を15μm以下とすることによって、導電パスの断面積を大きくし、配線層2の抵抗を小さくすることができ、その結果、低抵抗を有する配線基板を提供することが可能となる。
【0028】
配線層2の比抵抗は、4.5μΩcm以下、特に3μΩcm以下、更には1μΩcm以下にすることが、ジュール熱による発熱を効率的に抑制することができ、配線基板の温度上昇を防ぐ効果がある。
【0029】
表面配線層2a、内部配線層2b及びビアホール導体3は低抵抗金属及び高融点金属を含む。低融点金属は、比抵抗が1.0〜2.5μΩcmを有する金属であり、Cu、Ag、Au等を例示できるが、コスト、マイグレーション及び融点の点でCuが特に好ましい。高融点金属は、Mo、W、Re、Taの少なくとも1種であり、特に、コスト、難焼結性の点でMo、Wが特に好ましい。CuとW及び/又はMoの組合せは、配線層のコア剤となるW及び/又はMoがアルミナ質焼結体1a〜1eとのアンカー効果によって、溶融したCuを保形し、緻密で連続した配線層2を形成できるという利点がある。
【0030】
絶縁基板1は配線層2との同時焼成によって作製されるが、焼成温度はCuの融点よりも高いため、Cuは焼成時に溶融するが、高融点金属であるWやMoは溶融せずに溶融Cu中に分散され、焼結体中に粒子状で分散していることが好ましい。高融点金属は低抵抗金属に比べて抵抗が高いため、高融点金属が凝集し、或いは部分的に焼結して偏在すると、凝集部分又は偏在部分が高抵抗となり、配線層2の抵抗が高くなることがある。
【0031】
本発明に用いられる絶縁基板1は、アルミナを主体し、絶縁基板1の熱伝導性及び高強度化を達成するために、相対密度が95%以上、特に97%以上、さらには98%以上の高緻密体から構成され、さらに熱伝導率は10W/m・K以上、特に15W/m・K以上、さらには17W/m・K以上であることが望ましい。
【0032】
また、絶縁基板1を形成する主結晶相はアルミナ結晶であり、その形状は粒状、板状又は柱状として存在するが、主結晶相の平均結晶粒径は1.5〜5.0μm、特に2.0〜3.0μmであることが望ましい。なお、主結晶相が柱状結晶からなる場合、上記平均結晶粒径は、短軸径に基づくものである。この主結晶相の平均結晶粒径が1.5μmよりも小さいと、高熱伝導化が難しく、平均粒径が5μmよりも大きいと基板材料として用いる場合に要求される十分な強度を得にくくなる。
【0033】
また、この絶縁基板1には、Cuを含有するメタライズ組成物との同時焼結性を高める目的でさらに焼結助剤を添加することが好ましい。例えば、CaO、SrO等のアルカリ土類元素酸化物及びSiO2のうち少なくとも1種を0.4〜8質量%の割合で含有することで、低温焼結性を高めることができる。
【0034】
また、アルミナを84質量%以上の割合で含有し、焼結助剤としてMn化合物をMn2O3換算で2.0〜15.0質量%、特に3〜10質量%の割合で含有することが、高い絶縁性を維持したまま、1200〜1500℃の低温での緻密化が容易になる。さらに、W、Moなどの金属を着色成分として2質量%以下の割合で含んでも良い。
【0035】
なお、上記のアルミナ以外の成分は、アルミナ主結晶相の粒界に非晶質相として存在しても結晶相として存在しても良いが、熱伝導性を高める上で粒界中に助剤成分を含有する結晶相が形成されていることが望ましい。
【0036】
本発明によれば、配線層2中に分散する高融点金属の平均粒径は1μm以下、特に0.8μm以下、更には0.5μm以下であることが好ましい。このように高融点金属の粒径を設定することにより、高融点金属が微細にかつ均一に分散するため、配線層中でコア剤として同時焼成中に溶融、流動するCuを所望形状に保持することができ、その結果、断線の防止と均一な組織を容易に形成することができる。
【0037】
高融点金属の平均粒径は、配線基板の切断面を研磨し、走査型電子顕微鏡を用いた配線層2の断面写真において、直線上に配置された少なくとも30個の高融点金属粒子の最大粒径と最小粒径をそれぞれ測定し、各高融点金属粒子の平均粒径を算出した後、測定全粒子の平均値を算出して平均粒径とすれば良い。
【0038】
本発明によれば、配線層2の緻密化と高融点金属粉末の分散状態を制御することによって5μm以上の気孔を排除し、側面の凹凸を15μm以下にすることが重要である。この粉末が凝集し、偏在することによって高融点金属が存在する部位と存在しない部位とが生じてしまうと、低抵抗金属の流動性が高まって、短絡する危険があり、また、比抵抗が部位によって異なるという不具合が生じる。
【0039】
また、高融点金属が存在しない部位の低融点金属の流動性が高いため、焼成すると高融点金属が存在しない部位に大きな気孔が生じる確立が高くなる。
【0040】
具体的には、低抵抗金属であるCuが30〜65質量%、高融点金属であるW又は/及びMo粒子が35〜70質量%含まれことが重要である。この組成範囲にすることによってW又は/及びMoとCuの均一分散された組織が実現できる。
【0041】
配線層2におけるW又は/及びMo含有量は、配線層2の保形性、凝集による抵抗上昇抑制のため、特に40〜55質量%、更には45〜50質量%が好ましい。また、組成のバラツキは、微細配線部での抵抗バラツキ幅が大きくなるため、5%以下であることが好ましい。特に、低抵抗化並びに保形性の観点から、3%以下、更には1%以下であることが好ましい。
【0042】
また、配線層2は、比抵抗が4.5μΩcm以下であることが好ましい。
【0043】
さらに、配線層2は、各アルミナ質焼結体1a〜1eの表面及び/又は内部に形成され、表面配線層2a、内部配線層2b及びビアホール導体3を形成し、電気的に接続するものであるが、一対の内部配線層2bを、アルミナ質焼結体(1a〜1eの少なくとも1種)を挟持するように形成し、容量成分を配線基板内部に形成することもできる。これは、内部配線層2bが挟持するアルミナ質焼結体を薄層化することにより、キャパシタを形成するといったものである。
【0044】
以上のように、本発明の配線基板は、低抵抗導体であるCuを用い、平均粒径の制御によって緻密な配線層2を得られ、低い比抵抗を達成できるという特徴を有し、パワーアンプ用モジュール、フロントエンドモジュ−ル等に好適に利用できる。
【0045】
次に、本発明の配線基板の製造方法について説明する。
【0046】
まず、絶縁基板1を形成する。主成分となるアルミナ原料粉末として、平均粒径が0.5〜2.5μm、特に0.5〜2.0μmの粉末を用いる。これは、平均粒径は0.5μmよりも小さいと、粉末の取扱いが難しく、また粉末のコストが高くなり、2.5μmよりも大きいと、1500℃以下の温度で焼成することが難しくなることがあるためである。
【0047】
上記アルミナ粉末に対して、第2の成分として、Mn2O3を2.0〜15.0質量%、特に3.0〜10.0質量%第3の成分として、SiO2を2.0〜15.0質量%、特に3.0〜10.0質量%の割合で添加する。また、適宜、第4成分としてMgO、CaO、SrO粉末等を0.2〜8質量%、第5の成分として、W、Mo、Crなどの遷移金属の金属粉末や酸化物粉末を着色成分として金属換算で2質量%以下の割合で添加する。
【0048】
なお、上記酸化物の添加に当たっては、酸化物粉末以外に、焼成によって酸化物を形成し得る炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩などとして添加してもよい。
【0049】
この混合粉末を用いてアルミナ質焼結体1を形成するためのシート状成形体を作製する。シート状成形体は、周知の成形方法によって作製することができる。例えば、上記混合粉末に有機バインダーや溶媒を添加してスラリーを調製した後、ドクターブレード法によって形成したり、混合粉末に有機バインダーを加え、プレス成形、圧延成形等により所定の厚みのシート状成形体を作製できる。そしてこのシート状成形体に対して、マイクロドリル、レーザー等によりビアホール導体用スルーホールを形成してもよい。
【0050】
次に、配線層2を形成するための導体ペーストを作製する。原料粉末を準備するに当たり、高融点金属粉末の平均粒径が低抵抗金属粉末の平均粒径よりも小さいものを準備することが重要である。低抵抗金属粉末の平均粒径の方が大きい場合、高融点金属粒子の間隔が狭くなり、焼成時の粒成長により低抵抗金属が押し出され、表面偏析等の概観不良が発生しやすくなる。特に、低抵抗金属粉末の平均粒径が高融点金属粉末の平均粒径よりも過度に大きい場合、配線層2の厚みに対して1個の高融点金属粒子の占める割合が多くなるため、低抵抗金属からなる導電パスを寸断し、部分的に比抵抗の高い部位が形成される。
【0051】
低抵抗金属粉末の平均粒径のバラツキが大きい場合は、低抵抗金属粉末が焼成時に溶融するため、気孔となりやすく、特に保形性を保つ高融点金属粒子が偏在する場合には大きな気孔が形成される。
【0052】
低抵抗金属粉末の平均粒径は2.0〜5.5μm、特に2.5〜3.8μmであることが好ましい。低抵抗金属粉末であるCu粉末の平均粒径を上記の範囲に設定することにより、Cuの焼結性が高まってアルミナとの収縮開始温度に差が生じ、同時焼成における配線層2の剥がれや、断線や変形、不均一組織等が発生することを防止し、或いは焼成時に溶融したCuが流動してボイドが生じることを防止できる。
【0053】
また、低抵抗金属粉末の最大粒径を15μm以下にすることが好ましい。Cu等の低抵抗金属粉末の最大粒径が15μm以上の場合、Cuの流動性が大きいため、配線層2のボイドが著しく増加するばかりではなく、先に溶融したCuが粗大粒近辺に集中し、配線層2中のCu分布の不均一が生じ、比抵抗の増大が生じる。
【0054】
上記の平均粒径が2.0〜5.5μmのCu粉末を10〜70体積%、特に30〜60体積%、及びこのCu粉末より小さい平均粒径を有するW及び/またはMo粉末を30〜90体積%、特に40〜70体積%の割合で含有してなる導体ペーストを調製する。ここで、W及び/またはMo粉末の平均粒径は、特に0.6〜2.0μm、更には0.8〜1.8μmが好ましい。これによって、粒子が凝集及び焼成における異常粒成長により、また大きすぎる粒子により、配線層2の表面の凹凸、特に配線層2の側面7を含む境界の凹凸の増大を防止することが容易となる。
【0055】
本発明によれば、上述したように、高融点金属粉末と低抵抗金属粉末との単純混合を行って導体ペーストを作製しても良いが、特に、高融点金属を配線層中に均一に分散させるため、低抵抗金属粒子を中核粒子とし、その表面に高融点金属の粉末層を形成した複合粉末を用いることが好ましい。
【0056】
例えば、図3に示したように、低抵抗金属粉末101の粒子表面に、低抵抗金属粉末101よりも平均粒径が小さい高融点金属粉末102が多数付着し、粉末被覆層103を形成した複合粉末を用いるのが、配線層2に高融点金属粉末101を均一に分散させるために好ましい。
【0057】
なお、粉末被覆層103は、高融点金属粉末102が必ずしも低抵抗金属粉末101粒子の表面全てを覆う必要は無く、低抵抗金属粉末粒子101の一部の表面が露出していても同様の効果がある。
【0058】
このような粉末被覆層103の作製方法は、特に制限されるものではないが、総合技術出版「微粒子・超微粒子」−目で見るそのミクロ構造−に記載された粉体/粉体系混合法や高速気流中衝撃法等の手法を用いることができる。特に、簡便、低コストの点で、粉体/粉体系混合法に基づき、低抵抗金属粉末101と高融点金属粉末102との乾式混合によって複合粉末を得るのが良い。
【0059】
上記の複合粉末を用いる場合、スクリーン印刷などにより配線層2の形成を考慮すると、低抵抗金属粉末101の平均粒径は2.0〜5.5μmの被覆金属粉末を準備するのが良い。平均粒径が2.0μm未満では導体ペーストにおける粉末の分散、充填性を十分高めるのが容易ではないことがあり、その結果、配線層2における高融点金属粒子102が不均一に分散し、抵抗値が増大するという問題が生じやすい。また、平均粒径が5.5μmを越えると溶融されたCuが流動し、その跡に大きな空隙が形成されることがあり、緻密な組織を形成するのが容易ではないことがある。
【0060】
また、複合粉末に用いる低抵抗金属粉末101の最大粒径は、10μm以下、特に5μm以下、更には3μm以下であるのが良い。低抵抗金属粉末101の最大粒径が10μmを越えると、複合粉末としての平均粒径が15μmを越えることがあり、そのために配線層2の側面7の凹凸が大きくなる場合があり、また、大きな空隙ができ易く、Mo又はWの分散状態が部分的に悪くなり易い場合がある。
【0061】
また、導体ペーストの組成は、上記単純混合の場合と同様に、低抵抗金属のCuが30〜65質量%、高融点金属のW又は/及びMo粒子が35〜70質量%含まれることが好ましい。この組成範囲にすることによってW又は/及びMoとCuが均一に分散された組織を容易に実現することが可能となる。
【0062】
配線層2におけるW又は/及びMo含有量は、配線層2の保形性、凝集による抵抗上昇抑制のため、特に40〜55質量%、更には45〜50質量%が好ましい。また、組成のバラツキは、微細配線部での抵抗バラツキ幅が大きくなるため、5%以下であることが好ましい。特に、低抵抗化並びに保形性の観点から、3%以下、更には1%以下であることが好ましい。
【0063】
本発明によれば、配線層2における高融点金属粉末102の微細化と均一な分散状態を確保するために、複合粉末を用いることにより、微細な高融点金属が低抵抗金属からなるマトリックス中に均一に分散させた組織を有する配線層を容易に形成でき、しかも高融点金属粉末102の平均粒径を1.0μm以下に抑制しやすく、配線層2の側面7の凹凸も15μm以下、特に10μm以下にすることが容易になる。
【0064】
この高融点金属粉末102が凝集し、偏在することによって高融点金属が存在する部位と存在しない部位とが生じてしまうと、低抵抗金属の流動性が高まって、短絡する危険があり、また、比抵抗が部位によって異なるという不具合が生じる。また、高融点金属が存在しない部位の低融点金属の流動性が高いため、焼成すると高融点金属が存在しない部位に大きな気孔が生じる確立が高くなる。
【0065】
なお、単純混合粉末及び複合粉末を用いた場合について上述したが、複合粉末と単純混合粉末とを組合せても良い。例えば、複合粉末に20質量%以下の割合で高融点金属を加えても良いし、混合粉末を20質量%と複合粉末80質量%の割合で混合しても良い。
【0066】
これらの導体ペースト中には、アルミナ質焼結体1a〜1e各層との密着性を高めるために、アルミナ粉末や、アルミナ質焼結体成分と同一の組成物粉末、或いはNi、Zr、Al、Li、Mg、Znを酸化物、ホウ化物、窒化物或いは炭酸塩として0.05〜2体積%の割合で添加することも可能である。
【0067】
次いで、上記の導体ペーストを各シート状成形体に施した配線回路用ビアホール内に上記Cu含有導体ペーストを充填するとともに、各シート状成形体に対しスクリーン印刷、グラビア印刷などの方法により上記の導体ペーストを印刷塗布して配線層を形成する。
【0068】
その後、上記の複数のシート状成形体を位置合わせして積層圧着して積層体を作製する。そして、この積層体を、非酸化性雰囲気中、焼成最高温度が1200〜1500℃の温度で焼成する。
【0069】
また、表面配線層2a及び内部配線層2bの形成には、保形性及び絶縁性を達成する上で、Cuを含む配線層との同時焼成が必要である。そして、その焼成温度は1200〜1500℃、特に1250〜1400℃が好ましい。
【0070】
焼成温度を上記の範囲に設定することによって、アルミナを主体とする絶縁基板1の相対密度を95%以上に容易に緻密化でき、熱伝導性や強度の低下を防止しやすく、また、W及び/又はMo自体の焼結が進み、Cuの流動により均一組織を維持できなく、強いては低抵抗を維持することが困難となることを防止できる。
【0071】
また、アルミナ主結晶相の粒径が大きくなる異常粒成長の発生を容易に防止でき、Cuが絶縁基板1中へ拡散するときのパスである粒界の長さが短くなって拡散速度が速くなったり、Cuの拡散距離が増加し、配線層2間又はアルミナ質焼結体1a〜1e間の絶縁劣化が生じることを防止できる。
【0072】
焼成時の非酸化性雰囲気としては、窒素、あるいは窒素と水素との混合雰囲気であることが望ましいが、特に、配線層中のCuの拡散を抑制する上では、水素及び窒素を含み露点+30℃以下、特に0〜25℃の非酸化性雰囲気であることが望ましい。なお、この雰囲気には所望により、アルゴンガス等の不活性ガスを混入してもよい。焼成時の露点が+30℃より高いと、焼成中に酸化物セラミックスと雰囲気中の水分とが反応し酸化膜を形成し、この酸化膜とCu含有導体のCuが反応してしまい、導体の低抵抗化の妨げとなるのみでなく、Cuの拡散を助長してしまうためである。
【0073】
【実施例】
実施例1
平均粒径1.8μmのアルミナ粉末に対して、焼結助剤として平均粒径3.5μmのMn2O3粉末を6質量%、平均粒径1.0μmのSiO2粉末を3質量%、平均粒径0.8μmのMgCO3粉末を1.2質量%の割合で添加し、混合した後、結合材としてアクリル系バインダーと、トルエンを溶媒として混合してスラリーを調製した。
【0074】
このスラリーを用いて、ドクターブレード法にて厚さ250μmのシート状に成形してグリーンシートを作成した。次に、表1に示した平均粒径及び最大粒径を有するCu粉末、Ag粉末、Au粉末とW粉末及び/又はMo粉末とを、表1に示す比率で混合し、アクリル系バインダーとをアセトンを溶媒として導体ペーストを作製した。
【0075】
そして、焼成後に線幅100μm、長さ40mmになるようにスクリーン印刷法を用いてグリーンシート上に上記導体ペーストを印刷塗布し、抵抗測定用試料の前駆体を作成した。
【0076】
次いで、この積層体を実質的に水分を含まない酸素含有雰囲気中(H2+O2)で脱脂を行った後、表1に示した焼成温度にて、露点20℃の窒素水素混合雰囲気中にて焼成した。
【0077】
各配線層表面のボイド、配線中のW又は/及びMo粒子の占有率を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定した。
【0078】
導体の比抵抗はデジタルマルチメーターを用いて抵抗値を測定した。
【0079】
気孔の密度は、表面配線層に露出している気孔を観察し、5μm以上の気孔だけをカウントして密度を算出した。また、外観観察は、光学顕微鏡で配線層を観察し、偏析、ニジミ、変色、断線を調べた。
【0080】
配線層2の側面7の凹凸形状は上記の抵抗測定用試料のラインの一部を用いて、長さ200μmの領域で導体金属がまばらに存在する領域の凹凸の幅dを測定した。
【0081】
配線中の高融点金属粒子であるW又は/及びMo粒子の占有率は配線層を断面方向に研磨し、画像処理にて100μm2の領域におけるW又は/及びMo粒子の占有率を測定し、10箇所のバラツキを算出した。
【0082】
配線層中の高融点金属粒径は、配線層の断面を観察し、画像解析処理を行い平均粒径を算出した。
【0083】
【表1】
【0084】
本発明の試料No.2〜5、8〜10、13〜15、18〜20及び24〜26は、配線層の比抵抗が4.5μΩcm以下、配線層2の側面7の凹凸の幅dが15μm以下、高融点金属粒子の占有率バラツキが5%以下の緻密な配線層を得た。
実施例2
高融点金属と低抵抗金属の複合粉末、Cu粉末、Ag粉末、Au粉末とW粉末及び/又はMo粉末とを、表1の組合せで混合し、複合粉末を得た。そして、所望により、さらにCu粉末、Ta粉末、Re粉末、W粉末又はMo粉末を加え、アクリル系バインダーとをアセトンを溶媒として導体ペーストを作製した。他は実施例1と同様にして配線基板を作製した。
【0085】
評価も実施例1と同様に行った。なお、配線層中の高融点金属粒径は、配線層の断面を観察し、画像解析処理を行い平均粒径を算出した。
【0086】
【表2】
【0087】
本発明の試料No.31〜35、37〜40、42〜48は、配線層の比抵抗が4.5μΩcm以下、配線層2の側面7の凹凸が15μm以下で緻密かつ外観上良好な配線層を得た。特に、配線層中の高融点金属の粒子径が1.0μm以下の場合には、dが10μm以下で、外観も良好であった。
【0088】
一方、低抵抗金属の含有量が20質量%及び80質量%と本発明の範囲外の試料No.36及び41は、比抵抗が5.5μΩcm以上であった。また、外観観察でも異常が見られた。
【0089】
さらに、低抵抗金属粉末より大きい平均粒径を有する高融点金属粉末を用いた試料No.49及び50は、比抵抗が高すぎて測定できず、又、配線層2の側面7の凹凸も大きすぎて測定不可能であった。
【0090】
【発明の効果】
本発明によれば、アルミナを絶縁層とする配線基板の低抵抗化を達成でき、配線層の緻密化が図れる為、メッキ処理後の残留分による外観不良が無く、アルミナ質焼結体と配線層の密着性が向上し、高周波信号の損失を低減できる配線層を同時焼成によって形成することができ、高信頼性の配線基板を得ることが出来る。
【0091】
本発明によれば、アルミナを絶縁層とする配線基板の低抵抗化を達成する為に、Cu配線中に微細な高融点金属を均一に分散することにより配線層の緻密化が図れ、導体抵抗値を低減できる。また、アルミナ質焼結体と配線層の密着性が向上し、高周波信号の損失を低減できる配線層を同時焼成によって形成することができ、高信頼性の配線基板を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の配線基板を示す概略断面図である。
【図2】本発明の配線基板の配線における側面の凹凸の測定方法を示す平面図である。
【図3】本発明の配線基板の製造に用いる複合粉末の構造を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1・・・絶縁基板
1a、1b、1c、1d、1e・・・アルミナ質焼結体
2・・・配線層
2a・・・表面配線層
2b・・・内部配線層
3・・・ビアホール導体
6・・・中心線
7・・・側面
d・・・凹凸の幅
Claims (9)
- アルミナを主体とする絶縁基板と、該絶縁基板の表面及び/又は内部に低抵抗金属及び高融点金属を含有する配線層が被着形成されて設けられた配線回路を具備する配線基板であって、前記配線層に存在する5μm以上の気孔が5個/cm2以下、側面の凹凸が15μm以下であることを特徴とする配線基板。
- アルミナを主体とする絶縁基板と、該絶縁基板の表面及び/又は内部に低抵抗金属及び高融点金属を含有する配線層が被着形成されて設けられた配線回路を具備する配線基板であって、該配線層の組成が30〜65質量%の低抵抗金属及び35〜70質量%の高融点金属からなり、該組成のバラツキが5%以下であるとともに、前記配線層の比抵抗が4.5μΩcm以下であることを特徴とする配線基板。
- 前記低抵抗金属がCu、前記高融点金属がW及び/又はMoであることを特徴とする請求項1又は2記載の配線基板。
- 前記高融点金属の平均粒径が1μm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の配線基板。
- 低抵抗金属粉末及び該低抵抗金属粉末より小さい平均粒径を有する高融点金属粉末を含有する導体ペーストを、アルミナを主体とするグリーンシートの表面に塗布して配線層を形成する工程と、該グリーンシートを複数積層して積層体を形成する工程と、該積層体を非酸化性雰囲気中で焼成する工程とを具備することを特徴とする配線基板の製造方法。
- 前記グリーンシートにビアホールを形成する工程と、該ビアホールの内部に配線層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項5記載の配線基板の製造方法。
- 高融点金属粉末がMo及び/又はW、前記低抵抗金属粉末がCuであり、該Cuの平均粒径が2.0〜5.5μm且つ最大粒径が15μm以下であるとともに、前記焼成の最高温度が1200〜1500℃であることを特徴とする請求項5又は6記載の配線基板の製造方法。
- 前記高融点金属粉末の平均粒径が、0.6〜2.0μmであることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の配線基板の製造方法。
- 前記高融点金属粉末の平均粒径が0.5μm以下であって、該高融点金属粉末が前記低抵抗金属粉末の表面に粉末被覆層を形成していることを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の配線基板の製造方法。
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