JP2004004653A - 画像形成装置、及び前記装置を使用する画像形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】磁気ブラシにより像形成体の帯電を行う際に、トナー微粉を発生させずに磁気ブラシを汚染しない画像形成を提供する。
【解決手段】帯電手段が感光体表面に接触配置された磁性粒子で形成される磁気ブラシで、構成樹脂がセル構造を有し、該セルのフェレ水平径の平均値が20〜200nm、フェレ水平径の変動係数が10〜35%のトナーを使用する。
【選択図】 なし
【解決手段】帯電手段が感光体表面に接触配置された磁性粒子で形成される磁気ブラシで、構成樹脂がセル構造を有し、該セルのフェレ水平径の平均値が20〜200nm、フェレ水平径の変動係数が10〜35%のトナーを使用する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像形成装置及び前記装置を使用する画像形成方法に関し、更に詳しくは、磁気ブラシによる像形成体上への帯電を経て電子写真画像形成を行う画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方式による画像形成技術において、像形成体である感光体上への帯電技術として、磁石体を内包した円筒状の搬送担持体上に磁性粒子を吸着させて磁気ブラシを形成し、この磁気ブラシを像形成体表面に摺擦させて帯電を行うものが、特許文献1〜3に開示されている。
【0003】
磁気ブラシを使用する帯電方式は、他の帯電方式よりもオゾン発生量や窒素酸化物の発生量が少ないことや、像形成体表面を均一に帯電することの可能なこと、さらにはローラ帯電よりも像形成体の寿命が長いといったメリットを有している。
【0004】
磁気ブラシ帯電は、前述の様に導電性の磁性体粒子より電荷を感光体に注入するタイプであるため、オゾンの発生が少ないが、長期にわたる使用によりブラシ表面に酸化膜が発生したり、あるいは転写残トナーがブラシ表面に融着することにより、磁性体粒子の抵抗が上昇し、剥離放電などによるオゾンの発生が徐々に高まる。
【0005】
一般に、帯電装置の磁気ブラシは、現像装置における磁気ブラシとは異なり、本来トナーを含有させるものではないため、磁性体粒子同士に作用する強固な磁気拘束力により、非常に強い力で帯電装置に保持されている。この様な環境に転写残トナーが混入すると、磁性体粒子間から非常に高いせん断力を受けてトナーの破砕と融着が進行する。
【0006】
また、トナーが残存した状態の像形成体を磁気ブラシ帯電装置に通過させると局所的に高いオゾン濃度となる。この様に像形成体上の残存トナーにより、画像形成装置内に局所的に高いオゾン濃度領域が発生し、この様な高濃度のオゾンの影響でトナーは劣化、分解してトナー微粉を発生させる原因となる。また、前述した様に、磁気ブラシ帯電装置を通過する際に大きなせん断力を受けるために、オゾンで劣化したトナーは分解していっそうのトナー微粉を発生する。
【0007】
磁気ブラシによる帯電方式は、他の帯電方式と比較するとオゾンの発生量の非常に少ないものであるが、画像形成を繰り返すことにより発生するオゾンの量は無視できるものではない。そして、前述した様に磁気ブラシは転写残トナーを破砕する傾向を有するので、オゾン劣化に起因する微粉発生を促進させる問題を有している。
【0008】
また、架橋構造を有するシロキサン系樹脂を有する樹脂層からなる感光体を使用する磁気ブラシ帯電方式の画像形成技術が、特許文献4に記されているが微粉の問題を課題として残すものであった。
【0009】
この様にして画像形成装置内で発生したトナー微粉は、帯電キャリアに融着してキャリアの寿命を低減させるとともに画像不良を誘発する問題を有している。
【0010】
また、感光体上に残存する微粉は除去しにくく、クリーニング不良の原因となり、トナー画像上に白筋等の画像欠陥を発生させる。
【0011】
さらに、現像装置内の現像ローラや現像キャリアにまで融着するので、現像キャリアの帯電能が低下して、トナー飛散やかぶりの原因となる。
【0012】
この様に、磁気ブラシ帯電方式を有する画像形成技術では、トナー微粉に起因する上記問題により、良好なトナー画像を長期にわたり安定して形成することの困難なものであった。
【0013】
【特許文献1】
特開昭59−133569号公報
【0014】
【特許文献2】
特開平4−21873号公報
【0015】
【特許文献3】
特開平4−116674号公報
【0016】
【特許文献4】
特開2001−92169号公報
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の第1の目的は、磁気ブラシにより像形成体の帯電を行う画像形成装置において、磁気ブラシの影響によりトナー微粉が発生せず、磁気ブラシを汚染することのない、画像形成装置、及び該装置を用いた画像形成方法を提供することである。
【0018】
本発明の第2の目的は、磁気ブラシがトナー微粉で汚染されることのない画像形成装置において、磁気ブラシの影響によるトナー微粉の発生がなく画像上の白スジ欠陥が低減し、トナー飛散が抑制される画像形成装置、及び該装置を用いた画像形成方法を提供することである。
【0019】
本発明の第3の目的は、磁気ブラシにより像形成体の帯電を行い、かつクリーナレスシステムに対応した現像手段を有する画像形成装置において、トナー微粉の回収により、現像剤中のキャリア汚染をなくして現像剤寿命を向上させる画像形成装置、及び該装置を用いた画像形成方法を提供することである。
【0020】
本発明の第4の目的は、磁気ブラシにより像形成体の帯電を行い、かつ高耐久性の像形成体を有する画像形成装置において、磁気ブラシやクリーニングブレード等の摺擦による衝撃でトナーが劣化することなくトナー微粉の発生しない画像形成装置及び該装置を用いた画像形成方法を提供することである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記のいずれか1項によって達成される。
【0022】
〔1〕 少なくとも帯電、露光、現像、転写の各手段を有し、かつ感光体上にトナー像を形成した後、転写材に転写する画像形成装置において、前記帯電手段が、感光体表面に接触配置された磁性粒子より形成される磁気ブラシであり、前記トナー像を形成するトナー粒子を構成する樹脂が、セル構造を有するもので、該セルのフェレ水平径の平均値が20〜200nmであり、かつ該フェレ水平径の変動係数が10〜35%であることを特徴とする画像形成装置。
【0023】
〔2〕 前記現像手段が、前記転写手段により前記トナー像を転写材に転写した後の前記感光体上に残存したトナーを回収するクリーニング手段を兼ねるものであることを特徴とする前記〔1〕に記載の画像形成装置。
【0024】
〔3〕 前記感光体が、電荷輸送能を有する構造単位を有し、かつ架橋構造を有するシロキサン系樹脂を含有する樹脂層を有することを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の画像形成装置。
【0025】
〔4〕 前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の画像形成装置を用いることを特徴とする画像形成方法。
【0026】
本発明では、上述のトナーが、オゾン暴露しても破砕されることがなく、トナー微粉を発生しないので、微粉による影響のない良好な画像形成の可能な技術を見出した。すなわち、セル構造を有するトナー粒子は破砕強度が高い割には加熱定着時には変形し易い性質を有するので定着性が確保され、また、微粉増加によるクリーニングの発生も見られない。さらに、微粉による現像ローラへの融着やトナー飛散が少なく、かぶりのない画像が長期にわたり安定して得られる。
【0027】
また、上記〔3〕に記載の構成により、表面硬度の硬い感光体を有する画像形成装置と組合せた画像形成技術は、感光体と帯電装置の双方の寿命を伸ばすとともに、多数枚にわたる画像形成を長期的に繰り返しても安定したトナー画像が形成されることが可能となり、より好ましい効果を奏することを見出した。
【0028】
【発明の実施の形態】
最初に、本発明に係る帯電手段である磁気ブラシを用いた接触式の磁気ブラシ帯電装置を説明する。図1は本発明に係る磁気ブラシを用いた接触式の磁気ブラシ帯電装置を示す図で、図2は図1の帯電装置による交流バイアス電圧と帯電電位との関係を示す。
【0029】
まず、帯電用磁気ブラシを形成する磁性粒子について説明する。
一般に帯電用磁気ブラシを形成する磁性粒子の平均粒径(重量平均)が大きいと、(イ)帯電用磁性粒子搬送体(搬送担体)上に形成される磁気ブラシの穂の状態が粗いために、電界により振動を与えながら帯電しても、磁気ブラシにムラが現れ易く、帯電ムラの問題が起こる。この問題を解消するには、磁性粒子の平均粒径を小さくすればよく、実験の結果、平均粒径が200μm以下でその効果が現れ初め、特に150μm以下になると、実質的に(イ)の問題が生じなくなる。しかし、粒子が細か過ぎると帯電時感光体ドラム10面に付着するようになったり、飛散し易くなったりする。これらの現象は、粒子に作用する磁界の強さ、それによる粒子の磁化の強さにも関係するが、一般的には、粒子の平均粒径が30μm以下に顕著に現れるようになる。なお、磁化の強さは30〜100emu/gのものが好ましく用いられる。
【0030】
以上から、磁性粒子の粒径は平均粒径(重量平均)が150μm以下、特に好ましくは150μm以下30μm以上であることが好ましい。
【0031】
このような磁性粒子は、磁性体として前述した従来の二成分現像剤の磁性キャリヤ粒子におけると同様の、鉄、クロム、ニッケル、コバルト等の金属、あるいはそれらの化合物や合金、例えば四三酸化鉄、γ−酸化第二鉄、二酸化クロム、酸化マンガン、フェライト、マンガン−銅系合金、と云った強磁性体の粒子、又はそれら磁性体粒子の表面をスチレン系樹脂、ビニル系樹脂、エチレン系樹脂、ロジン変性樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂で被覆するか、あるいは、磁性体微粒子を分散して含有した樹脂で作るかして得られた粒子を従来公知の平均粒径選別手段で粒径選別することによって得られる。
【0032】
なお、磁性粒子を球状に形成することは、搬送担体に形成される粒子層が均一となり、また搬送担体に高いバイアス電圧を均一に印加することが可能となると云う効果も与える。即ち、磁性粒子が球形化されていることは、(1)一般に、磁性粒子は長軸方向に磁化吸着され易いが、球形化によってその方向性がなくなり、従って、磁性粒子層が均一に形成され、局所的に抵抗の低い領域や層厚のムラの発生を防止する、(2)磁性粒子の高抵抗化と共に、従来の粒子に見られるようなエッジ部が無くなって、エッジ部への電界の集中が起こらなくなり、その結果、帯電用磁性粒子の搬送担体に高いバイアス電圧を印加しても、感光体ドラム10面に均一に放電して帯電ムラが起こらない、という効果を与える。
【0033】
以上のような効果を奏する球形粒子には磁性粒子の抵抗率が106Ω・cm以上1010Ω・cm以下であるように導電性の磁性粒子を形成したものが好ましい。この抵抗率は、粒子を0.50cm2の断面積を有する容器に入れてタッピングした後、詰められた粒子上に1kg/cm2の荷重を掛け、荷重と底面電極との間に1000V/cmの電界が生ずる電圧を印加したときの電流値を読み取ることで得られる値であり、この抵抗率が低いと、搬送担体にバイアス電圧を印加した場合に、磁性粒子に電荷が注入されて、感光体ドラム10面に磁性粒子が付着し易くなったり、あるいはバイアス電圧による感光体ドラム10の絶縁破壊が起こり易くなったりする。また、抵抗率が高いと電荷注入が行われず帯電が行われない。
【0034】
さらに、接触式の磁気ブラシ帯電装置20に用いられる磁性粒子は、それにより構成される磁気ブラシが振動電界により軽快に動き、しかも外部飛散が起きないように、比重の小さく、かつ適度の最大磁化を有するものが望ましい。具体的には真比重が6以下で最大磁化が30〜100emu/gのもの、特に40〜80emu/gを用いると好結果が得られることが判明した。
【0035】
以上を総合して、磁性粒子は、少なくとも長軸と短軸の比が3倍以下であるように球形化されており、針状部やエッジ部等の突起が無く、抵抗率は好ましくは106〜1010Ω・cmの範囲にあることが望まれる。そして、このような球状の磁性粒子は、磁性体粒子にできるだけ球形のものを選ぶこと、磁性体微粒子分散系の粒子では、できるだけ磁性体の微粒子を用いて、分散樹脂粒子形成後に球形化処理を施すこと、あるいはスプレードライの方法によって分散樹脂粒子を形成すること等によって製造される。
【0036】
図1又は図2によれば、帯電装置としての磁気ブラシ帯電装置20は回転する感光体ドラム10と対向し、感光体ドラム10との近接部(帯電部T)において同方向(反時計方向)に回転される帯電用磁性粒子搬送体としての、例えばアルミ材やステンレス材を用いた円筒状の帯電スリーブ20aと、該帯電スリーブ20aの内部に設けられるN、S極よりなる磁石体21と、該磁石体21により帯電スリーブ20aの外周面上に形成され感光体ドラム10を帯電する磁性粒子からなる磁気ブラシと、磁石体21のN−N磁極部において該帯電スリーブ20a上の磁気ブラシを掻取るスクレーパ23と、磁気ブラシ帯電装置20内の磁性粒子を撹拌或いは磁性粒子供給時に使用済み磁性粒子を磁気ブラシ帯電装置20の排出口25より溢れさせて排出する撹拌スクリュウ24と、磁気ブラシの穂立ち規制板26とにより構成される。帯電スリーブ20aは磁石体21に対し回動可能になっていて、感光体ドラム10との対向位置で感光体ドラム10の移動方向と同方向(反時計方向)に0.1〜1.0倍の周速度で回転させられるのが好ましい。また帯電スリーブ20aは、帯電バイアス電圧を印加し得る導電性の搬送担体が用いられるが、特に、表面に粒子層が形成される導電性の帯電スリーブ20aの内部に複数の磁極を有する磁石体21が設けられている構造のものが好ましく用いられる。このような搬送担体においては、磁石体21との相対的な回転によって、導電性の帯電スリーブ20aの表面に形成される磁性粒子層が波状に起伏して移動するようになるから、新しい磁性粒子が次々と供給され、帯電スリーブ20a表面の磁性粒子層に多少の層厚の不均一があっても、その影響は上記波状の起伏によって実際上問題とならないように十分カバーされる。帯電スリーブ20aの表面は磁性粒子の安定な均一搬送のために表面の平均粗さを5.0〜30μmとすることが好ましい、平滑であると搬送は十分に行えなく、粗すぎると表面の凸部から過電流が流れ、どちらにしても帯電ムラが生じ易い。上記の表面粗さとするにはサンドブラスト処理が好ましく用いられる。また、帯電スリーブ20aの外径は5.0〜20mmが好ましい。これにより、帯電に必要な接触領域を確保する。接触領域が必要以上に大きいと帯電電流が過大となるし、小さいと帯電ムラが生じ易い。また上記のように小径とした場合、遠心力により磁性粒子が飛散あるいは感光体ドラム10に付着し易いために、帯電スリーブ20aの線速度は感光体ドラム10の移動速度と殆ど同じか、それよりも遅いことが好ましい。
【0037】
また、帯電スリーブ20a上に形成する磁性粒子層の厚さは、規制手段によって十分に掻き落されて均一な層となる厚さであることが好ましい。帯電領域において帯電スリーブ20aの表面上の磁性粒子の存在量が多すぎると磁性粒子の振動が十分に行われず感光体の摩耗や帯電ムラを起こすとともに過電流が流れ易く、帯電スリーブ20aの駆動トルクが大きくなるという欠点がある。反対に磁性粒子の帯電領域における帯電スリーブ20a上の存在量が少な過ぎると感光体ドラム10への接触に不完全な部分を生じ磁性粒子の感光体ドラム10上への付着や帯電ムラを起こすことになる。実験を重ねた結果、帯電領域における磁性粒子の好ましい付着量は100〜400mg/cm2であり、特に好ましくは200〜300mg/cm2であることが判明している。なお、この付着量は、磁気ブラシの帯電領域における平均値である。
【0038】
帯電装置としての磁気ブラシ帯電装置20には、直流(DC)バイアスE3に必要により交流(AC)バイアスAC3が重畳される帯電バイアス、例えば直流バイアスE3としてトナーと同極性(本実施形態においてはマイナス極性)の−100〜−500Vが、また交流バイアスAC3として周波数1〜5kHz、電圧300〜500VP−Pの帯電バイアスが印加される帯電スリーブ20aにより、感光体ドラム10の周面が接触、摺擦されて感光体ドラム10が帯電される。帯電スリーブ20aと感光体ドラム10との間には前記交流バイアスAC3の電圧印加による振動電界が形成されているので、磁気ブラシを経て感光体層上への電荷の注入が円滑に行われて一様に高速な帯電が行われる。
【0039】
感光体ドラム10を帯電した帯電スリーブ20a上の磁気ブラシは、磁石体21に設けられるN−N磁極部において、スクレーパ23により帯電スリーブ20a上より落下され帯電スリーブ20aとの近接部において帯電スリーブ20aと逆方向(反時計方向)に回転する撹拌スクリュウ24により撹拌された後、再度磁気ブラシ形成され帯電部Tに搬送される。
【0040】
図2に示すように、帯電バイアスの交流バイアスAC3のピーク・ピーク電圧(VP−P)と帯電電位との関係は、ピーク・ピーク電圧VP−Pが大きくなるに従い帯電電位が大きくなり、帯電電位はピーク・ピーク電圧が一定のV1で帯電バイアスの直流バイアスE3の値VSとほぼ等しい値で飽和し、それ以上ピーク・ピーク電圧VP−Pを大きくしても帯電電位は殆ど変化しないという特性がある。磁性粒子の電気抵抗は環境条件によっても変化するが、また使用するに従い磁性粒子の表面にトナーが融着するなどして電気抵抗は高くなる。このため、特性曲線は使用初期の新しい磁性粒子の場合は実線で示す(a)のように左側に、長期間使用した磁性粒子の場合は前記特性曲線は点線で示す(b)のように右側に位置することになる。
【0041】
本発明の画像形成装置の接触方式による帯電装置では、装着電源のon時或いはプリント開始前に帯電電位に相当する直流バイアスE3の電圧値を所定値とし、交流バイアスAC3のピーク・ピーク電圧(VP−P)を低い値から次第に大きくした帯電バイアスを印加してその時変化する感光体ドラム10の帯電電位を電位計ESによって検出する。検出される帯電電位はA/D変換器によってディジタル値に変換されたのち制御部(CPU)に入力される。制御部ではこの帯電電位が所定値VSの飽和点に達した時のVP−Pの値を適正バイアス値V1と規定してプリント動作とする。
【0042】
即ち、プリントが行われる時交流バイアスAC3を低い値から次第に大きくして(スイープして)交流バイアスAC3のVP−Pの値V1を求め、制御部からバイアス信号が出力される。この制御信号はD/A変換器によってアナログ値に変換された後交流バイアスAC3に送出され、交流バイアスAC3は決定されたピーク・ピーク電圧V1を出力する。その際のピーク・ピーク電圧V1の値とメモリに格納された磁性粒子の劣化により交換すべき規定値V2を読み出しこれと比較する。磁性粒子はトナーの混入により抵抗が増加するので、プリントの使用に従い適正バイアス値V1が増加する。これに伴い印加するVP−Pが増加し帯電不能な状態が生じることになる。測定した電圧値が帯電不能を示す規定値V2より小さい間は画像形成を続けるが、規定値V2より大きくなると、制御部より画像形成動作停止信号が送出され画像形成動作を停止し、不図示の操作部の表示部に帯電装置異常の表示を行う。この表示に基づき、帯電用の磁性粒子の供給ボトル27を磁気ブラシ帯電装置20にセットし、供給ボトル27底面の不図示の開閉蓋を開口して磁性粒子を磁気ブラシ帯電装置20に落下、供給する。上記において感光体ドラム10の電位の測定に電位計ESを用いたが、バイアス電源に直流電流計を繋いで用いて交流バイアスVP−Pを変化させ、この電流値が飽和点に達した時のVP−Pを適正バイアス値V1と設定し、規定値V2との比較を行いV1を越えた時磁性粒子の供給を行うようにしてもよい。
【0043】
またメンテナンス時或いは例えば5万プリント等の定期時に、帯電用の磁性粒子の交換が行われる。メモリに記憶されたメンテナンスプリント毎や例えば5万プリント毎の定期時に、制御部を通して交換信号が出され、不図示の駆動モータの駆動により予めセットされた帯電用の磁性粒子の供給ボトル27の供給ローラ28が回転され、供給ボトル27内の磁性粒子が磁気ブラシ帯電装置20内に全量が1回で落下される。供給後空の供給ボトル27を外し、新たな供給ボトル27をセットすることにより画像形成装置が作動状態となるように制御することも可能である。また、定期時に制御部より不図示の操作部に例えばランプの点滅等による供給信号を表示し、供給ボトル27を磁気ブラシ帯電装置20にセットし、供給ボトル27底面の不図示の開閉蓋を開口して磁性粒子を供給するようにしてもよい。
【0044】
落下された磁性粒子は回転される帯電スリーブ20aにより搬送され、スクレーパ23により帯電スリーブ20a表面より掻落とされて磁気ブラシ帯電装置20の底部に補給される。これに伴い、反時計方向に回転される撹拌スクリュウ24により磁気ブラシ帯電装置20内部に収納されている使用済みの磁性粒子が排出口25より溢れ出され、ダクトDBを通して共通の磁性粒子回収容器29に回収される。この際、供給ボトル27より磁気ブラシ帯電装置20内に供給される1回の磁性粒子供給量は磁気ブラシ帯電装置20内に収納される全磁性粒子に対して、20〜50質量%が好ましい。20質量%未満では新規に供給される磁性粒子量が少な過ぎ交換効果がなく良好な帯電が行われず、50質量%を越えると新規の磁性粒子が溢れ出てしまう。
【0045】
上記により、帯電装置内の磁性粒子が劣化されることなく良好な帯電性能が長期に維持される。
【0046】
次に、本発明に係る画像形成装置を図3、図4を用いて説明する。
図3は、本発明の一例であるクリーナレスプロセスを有する画像形成装置の概略図で、具体的には、転写式電子写真プロセス、磁気ブラシ帯電方式、二成分現像方式、クリーナーレスプロセスを有するレーザービームプリンタ等に用いられる。
【0047】
10は像形成体としての回転ドラム型の電子写真感光体(感光体ドラム)を表す。ここで、感光体ドラム10は負帯電性・電荷注入帯電性のOPC感光体(有機光導電性感光体)であり、矢示の時計方向に100mm/秒〜550mm/秒のプロセススピード(周速度)で回転駆動される。
【0048】
20は感光体ドラム10の表面を予め決められた極性・電位に一様に帯電処理する接触帯電装置としての磁気ブラシ帯電装置(帯電器)である。回転する感光体ドラム10の表面は、磁気ブラシ帯電装置20によりほぼ−700Vに電荷注入帯電方式で一様に帯電処理される。
【0049】
12は画像情報書き込み手段としてのレーザービームスキャナーである。このレーザービームスキャナー12はホスト装置(図示していない)から入力された画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザー光Lを射出して、回転している感光体ドラム10の一様帯電処理面をレーザー光走査露光する。このレーザー光走査露光により回転している感光体ドラム10の周面に目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。また、レーザービームスキャナーとしては、市販のものを入手し、使用することが出来る。
【0050】
30は、非磁性トナーと磁性キャリアとを混合した二成分現像剤を用いる現像装置(現像器)を表し、回転している感光体ドラム10の表面の静電潜像をトナー画像として反転現像を行う。更に詳しくは、現像装置30は固定磁石体32と、その外周を感光体ドラム10より速い周速で順方向に回転するスリーブ31から成る現像ローラと撹拌器33A及び33Bを有する構成が好ましい。
【0051】
上記で得られたトナー画像は、給紙カセット40から給紙ローラ41及びタイミングローラ42により給送された転写紙P上に、電圧が印加された転写ローラ13等の転写手段により転写される。トナー像を担持した転写紙Pは搬送手段80により定着装置に搬送されてトナー像が定着される。
【0052】
尚、前記画像形成装置において、正または負の放電開始電圧(VTH)の測定は、磁気ブラシ帯電装置20の直後に図示しない像形成体表面電位測定装置を配置して行なわれることが好ましい。即ち前記電位測定装置の電位計プローブを磁気ブラシ帯電装置20の直後に配置し、感光体ドラム10の表面電位を電位計で読み取り、検出電位を増幅器で増幅してレコーダーで記録する。測定に際しては、現像器、転写手段等を不作動とし、磁気ブラシ帯電部材(図示していない)に正又は負の逓増する直流電圧を印加し、回転する感光体ドラム10上に前記磁気ブラシ帯電部材による接触帯電を行ない、印加する正又は負の直流の昇圧に伴って感光体ドラム10上に初めて正又は負の表面電位が検出されるに到ったときの印加直流電圧値を前記感光体ドラム10に対する正又は負の放電開始電圧(VTH)とする。
【0053】
また、図3の画像形成装置は、クリーナーレスプロセスが採用されている。転写ローラ13等の転写手段(転写装置ともいう)により転写紙Pに転写されずに、回転している感光体ドラム10の表面に残ったトナーを除去する為には、専用のクリーニング手段(クリーニング装置ともいう)が配設されているのが通常である。
【0054】
上記記載の専用のクリーニング手段(クリーニング装置)を持たない本発明の画像形成装置においては、転写残トナーは引き続く感光体ドラム10の回転で、感光体ドラム10に接触している磁気ブラシ帯電装置20の位置に至り、感光体ドラム10に接触している磁気ブラシ帯電部材(磁石体)21の磁気ブラシ部(図示していない)に一時的に回収され、その回収トナーが再び感光体ドラム10の表面上に吐き出されて最終的に現像装置30に現像同時クリーニングで回収され、感光体ドラム10は繰り返して画像形成に供される。
【0055】
ここで、現像装置がクリーニング手段を兼ねるとは、転写後に感光体ドラム上に若干残留したトナーを現像バイアス(現像スリーブに印加する直流電圧と感光体の表面電位間の電位差)によって回収する方法である。
【0056】
上記記載の現像同時クリーニングにより、転写残トナーは以降の現像手段に回収されて次工程以後用いられるため、廃トナーをなくし、メンテナンスフリーとなり、且つ、クリーナーレスシステムになるため、スペース面での利点も際だって大きく、画像形成装置を大幅に小型化することが可能になる。
【0057】
図4は本発明の一例であるクリーニング器を有する画像形成装置の概略図である。図4において10は像担持体である感光体ドラム(感光体)で、有機感光層をドラム上に塗布し、その上に本発明の樹脂層を塗設した感光体で、接地されて時計方向に駆動回転される。20は磁気ブラシ帯電装置で、感光体ドラム10周面に対し一様な帯電を与えられる。この帯電装置20による帯電に先だって、前画像形成での感光体の履歴をなくすために発光ダイオード等を用いた露光部11による露光を行って感光体周面の除電をしてもよい。
【0058】
感光体への一様帯電ののち像露光器14により画像信号に基づいた像露光が行われる。この図の像露光器14は図示しないレーザーダイオードを露光光源とする。回転するポリゴンミラー141、fθレンズ等を経て反射ミラー142により光路を曲げられた光により感光体ドラム上の走査がなされ、静電潜像が形成される。
【0059】
その静電潜像は次いで現像装置30で現像される。感光体ドラム10周縁にはトナーとキャリアとから成る現像剤を内蔵した現像装置30が設けられていて、マグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ31によって現像が行われる。現像剤は、例えば前述のフェライトをコアとしてそのまわりに絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアと、前述のスチレンアクリル系樹脂を主材料としてカーボンブラック等の着色剤と荷電制御剤と本発明の低分子量ポリオレフィンからなる着色粒子に、シリカ、酸化チタン等を外添したトナーとからなるもので、現像剤は図示していない層形成手段によって現像スリーブ31上に100〜600μmの層厚に規制されて現像域へと搬送され、現像が行われる。この時通常は感光体ドラム10と現像スリーブ31の間に直流バイアス、必要に応じて交流バイアス電圧をかけて現像が行われる。また、現像剤は感光体に対して接触あるいは非接触の状態で現像される。
【0060】
転写材(記録紙とも云う)Pは画像形成後、転写のタイミングの整った時点で給紙ローラ41の回転作動により転写域へと給紙される。
【0061】
転写域においては転写のタイミングに同期して感光体ドラム50の周面に転写ローラ(転写器)13が圧接され、給紙された転写材Pを挟着して転写される。
【0062】
次いで転写材Pは転写ローラとほぼ同時に圧接状態とされた分離ブラシ(分離器)15によって除電がなされ、感光体ドラム10の周面により分離して定着装置60に搬送され、熱ローラ601と圧着ローラ602の加熱、加圧によってトナーを溶着したのち排紙ローラ61を介して装置外部に排出される。なお前記の転写ローラ13及び分離ブラシ15は転写材Pの通過後感光体ドラム10の周面より退避離間して次なるトナー像の形成に備える。
【0063】
一方転写材Pを分離した後の感光体ドラム10は、クリーニング器62のクリーニングブレード621の圧接により残留トナーを除去・清掃し、再び露光部11による除電と帯電器20による帯電を受けて次なる画像形成のプロセスに入る。
【0064】
尚、70は感光体、帯電器、転写器・分離器及びクリーニング器を一体化されている着脱可能なプロセスカートリッジである。
【0065】
電子写真画像形成装置としては、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又、帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジを形成し、装置本体に着脱自在の単一ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0066】
像露光は、画像形成装置を複写機やプリンターとして使用する場合には、原稿からの反射光や透過光を感光体に照射すること、或いはセンサーで原稿を読み取り信号化し、この信号に従ってレーザービームの走査、LEDアレイの駆動、又は液晶シャッターアレイの駆動を行い感光体に光を照射することなどにより行われる。
【0067】
尚、ファクシミリのプリンターとして使用する場合には、像露光器14は受信データをプリントするための露光を行うことになる。
【0068】
電子写真画像形成装置としては、感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又像露光器、現像器、転写又は分離器、クリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジを形成し、装置本体に着脱自在の単一ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0069】
像露光は、画像形成装置を複写機やプリンターとして使用する場合には、原稿からの反射光や透過光を感光体に照射すること、或いはセンサーで原稿を読み取り信号化し、この信号に従ってレーザービームの走査、LEDアレイの駆動、又は液晶シャッターアレイの駆動を行い感光体に光を照射することなどにより行われる。
【0070】
尚、ファクシミリのプリンターとして使用する場合には、像露光器14は受信データをプリントするための露光を行うことになる。
【0071】
本発明の電子写真感光体は、複写機、レーザープリンター、LEDプリンター、液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適用し得るものであるが、更には電子写真技術を応用したディスプレイ、記録、軽印刷、製版、ファクシミリ等の装置にも広く適用し得るものである。
【0072】
後述するトナー粒子を使用し、図3及び図4に示される画像形成装置を用いることにより、本発明に記載の効果であるトナー微粉が発生せず、磁気ブラシの汚染を発生させないので、画像上の白スジ欠陥が低減し、トナー飛散が抑制され、現像剤寿命が向上し、良好な画質を有するトナー画像を安定して作製することが可能になる。
【0073】
次に本発明に好ましく用いられる電子写真感光体(以下像形成体、像担持体ともいう)について説明する。
【0074】
本発明に係る電子写真感光体は、電荷輸送性能を有する構造単位を有し、且つ架橋構造を有するシロキサン系樹脂及び酸化防止剤を含有する樹脂層を有することが好ましい。
【0075】
(架橋構造を有するシロキサン樹脂)
本発明においてシロキサン系樹脂とは、予め化学構造単位にシロキサン結合を有するモノマー、オリゴマー、ポリマーを反応させて(加水分解反応、触媒や架橋剤を加えた反応等を含む)3次元網目構造を形成し、硬化させた樹脂を意味する。一般的には、シロキサン結合を有する有機ケイ素化合物を加水分解反応とその後の脱水縮合によりシロキサン結合を促進させて3次元網目構造を形成させ、その結果生成したシロキサン系樹脂を意味する。例えば、アルコキシシランからなる組成物、又はアルコキシシランとコロイダルシリカからなる組成物の縮合反応により3次元網目構造を形成した樹脂を意味する。
【0076】
上記シロキサン系樹脂は公知の方法、即ち水酸基或いは加水分解性基を有する有機ケイ素化合物を用いて製造される。前記有機ケイ素化合物は下記一般式(A)〜(D)の化学式で示される。
【0077】
【化1】
【0078】
式中、R1〜R6は式中のケイ素に炭素が直接結合した形の有機基を表し、Xは水酸基又は加水分解性基を表す。又、R1〜R6はそれぞれの有機基が同一でも良く、異なっていてもよい。
【0079】
式中、Xが加水分解性基の場合、加水分解性基としてメトキシ基、エトキシ基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルアミノ基、アセトキシ基、プロペノキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基及びメトキシエトキシ基等が挙げられる。
【0080】
R1〜R6に示されるケイ素に炭素が直接結合した形の有機基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル基、フェニル、トリル、ナフチル、ビフェニル等のアリール基、γ−グリシドキシプロピル、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル等の含エポキシ基、γ−アクリロキシプロピル、γ−メタアクリロキシプロピルの含(メタ)アクリロイル基、γ−ヒドロキシプロピル、2,3−ジヒドロキシプロピルオキシプロピル等の含水酸基、ビニル、プロペニル等の含ビニル基、γ−メルカプトプロピル等の含メルカプト基、γ−アミノプロピル、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピル等の含アミノ基、γ−クロロプロピル、1,1,1−トリフロオロプロピル、ノナフルオロヘキシル、パーフルオロオクチルエチル等の含ハロゲン基、その他ニトロ、シアノ置換アルキル基等を挙げることができる。
【0081】
電荷輸送性能を有する構造単位を有し、且つ架橋構造を有するシロキサン系樹脂の原料として用いられる上記有機ケイ素化合物は、一般にはケイ素原子に結合している加水分解性基の数nが1のとき、有機ケイ素化合物の高分子化反応は抑制される。nが2、3又は4のときは高分子化反応が起こりやすく、特に3或いは4では高度に架橋反応を進めることが可能である。従って、これらをコントロールすることにより得られる塗布液の保存性や塗布層の硬度等を制御することが出来る。
【0082】
上記シロキサン系樹脂の原料としては上記有機ケイ素化合物を酸性条件下又は塩基性条件下で加水分解してオリゴマー化或いはポリマー化した加水分解縮合物を用いることもできる。
【0083】
尚、シロキサン系樹脂とは、上記シロキサン結合を含有する硬化性樹脂の原料が塗布液中或いは塗布乾燥工程等において樹脂成分の一部が架橋(クロスリンク)することにより、硬度の高い樹脂層を形成する樹脂をいう。
【0084】
上記樹脂層には水酸基或いは加水分解性基を有するコロイダルシリカを含ませて、架橋構造の一部にシリカ粒子を取り込んだ樹脂層としてもよい。
【0085】
(電荷輸送能を有する構造単位)
本発明における電荷輸送性能は、市販のTime−Of−Flight(TOF)法を用いることにより電荷輸送性能を電荷輸送に起因する検出電流として検出することができる。
【0086】
電荷輸送性能を有する構造単位とは、この構造自体が電子或いは正孔のドリフト移動度を有する性質を示すもの(電荷輸送性能付与基)をいう。
【0087】
例えば正孔輸送型電荷輸送性化合物:オキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、イミダゾリン、ビスイミダゾリジン、スチリル、ヒドラゾン、ベンジジン、ピラゾリン、スチルベン化合物、アミン、オキサゾロン、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、キナゾリン、ベンゾフラン、アクリジン、フェナジン、アミノスチルベン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−1−ビニルピレン、ポリ−9−ビニルアントラセンなどの化学構造を前記シロキサン系樹脂の部分構造として含有する。一方、電子輸送型としては無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水メリット酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、トリニトロベンゼン、テトラニトロベンゼン、ニトロベンゾニトリル、ピクリルクロライド、キノンクロルイミド、クロラニル、ブロマニル、ベンゾキノン、ナフトキノン、ジフェノキノン、トロポキノン、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、ジニトロアントラキノン、4−ニトロベンゾフェノン、4,4′−ジニトロベンゾフェノン、4−ニトロベンザルマロンジニトリル、α−シアノ−β−(p−シアノフェニル)−2−(p−クロロフェニル)エチレン、2,7−ジニトロフルオレン、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン、9−フルオレニリデンジシアノメチレンマロノニトリル、ポリニトロ−9−フルオロニリデンジシアノメチレンマロノジニトリル、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、3,5−ジニトロ安息香酸、ペンタフルオロ安息香酸、5−ニトロサリチル酸、3,5−ジニトロサリチル酸、フタル酸、メリット酸などの化学構造を前記シロキサン系樹脂の部分構造として含有する。
【0088】
好ましい電荷輸送性能付与基としては、上記の如き通常用いられる電荷輸送性化合物を含み、該電荷輸送性化合物を構成する炭素原子を介して或いは上記電荷輸送性化合物を部分構造として含有する化合物の炭素原子を介して下記一般式(I)におけるYの連結原子を介してシロキサン系樹脂中に含有される。
【0089】
【化2】
【0090】
式中、Xは電荷輸送性能付与基であって、該付与基を構成する炭素原子を介して式中のYと結合する基、Yは隣接する結合原子(SiとC)を除いた2価以上の原子である。但し、Yが3価以上の原子の時は式中のSiとC以外のYの結合手は結合が可能な上記硬化性樹脂中のいずれかの構成原子と結合しているか又は他の原子、分子基と連結した構造を有する。特にYは酸素原子、硫黄原子及び窒素原子が好ましい。窒素原子であればNRであり、Rは水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基である。
【0091】
電荷輸送性能付与基Xは式中では1価の基とされているが、シロキサン系樹脂と反応させる電荷輸送性化合物が2つ以上の反応性官能基を有している場合は該樹脂中で2価以上のクロスリンク基として接合してもよく、単にペンダント基として接合していてもよい。
【0092】
Yの好ましい原子としての酸素原子、硫黄原子及び窒素原子は、それぞれ電荷輸送性化合物中に導入された水酸基、メルカプト基、アミン基と、水酸基或いは加水分解性基を有する有機ケイ素化合物との反応によって形成され、シロキサン系樹脂中に電荷輸送化合物を部分構造として取り込んでいる。
【0093】
次に本発明で用いられる水酸基、メルカプト基、アミン基を有する電荷輸送性化合物について説明する。
【0094】
水酸基を有する電荷輸送性化合物とは、通常用いられる構造の電荷輸送物質で、且つ水酸基を有している化合物である。即ち、代表的には硬化性有機ケイ素化合物と結合して樹脂層を形成することが出来る下記一般式で示される電荷輸送性化合物を挙げることができるが、下記構造に限定されるものではなく、電荷輸送性能を有し、且つ水酸基を有している化合物であればよい。
【0095】
X−(R1−OH)m
式中、Xは電荷輸送性能付与基であり、R1は単結合子、各々置換又は非置換のアルキレン、アリーレン基であり、mは1以上、好ましくは1〜5である。
【0096】
その中でも代表的なものを挙げれば下記のごときものがある。
1.トリアリールアミン系化合物
【0097】
【化3】
【0098】
トリアリールアミン系化合物とは、トリフェニルアミン等のトリアリールアミン構造を含み、該基を構成する炭素原子を介して炭素原子と結合する水酸基を有する化合物である。
2.ヒドラジン系化合物
【0099】
【化4】
【0100】
3.スチルベン系化合物
【0101】
【化5】
【0102】
4.ベンジジン系化合物
【0103】
【化6】
【0104】
5.ブタジエン系化合物
【0105】
【化7】
【0106】
6.その他の化合物
【0107】
【化8】
【0108】
(メルカプト基を有する電荷輸送性化合物の具体例)
次に、メルカプト基を有する電荷輸送性化合物の具体例を下記に例示する。
【0109】
メルカプト基を有する電荷輸送性化合物とは、通常用いられる構造の電荷輸送物質で、且つ、メルカプト基を有する化合物である。即ち、代表的には硬化性有機ケイ素化合物と結合して、樹脂層を形成出来る下記一般式で示される電荷輸送性化合物を挙げることができるが、下記構造に限定されるものではなく、電荷輸送性能を有し、且つメルカプト基を有している化合物であればよい。
【0110】
X−(R1−SH)m
式中、Xは電荷輸送性能付与基であり、R1は単結合、各々置換又は非置換のアルキレン基または、アリーレン基であり、mは1以上を表し、好ましくは1〜5である。
【0111】
その中でも代表的なものを挙げれば下記のごときものが挙げられる。
【0112】
【化9】
【0113】
(アミノ基を有する電荷輸送性化合物の具体例)
更に、アミノ基を有する電荷輸送性化合物の具体例を下記に例示する。
【0114】
アミノ基を有する電荷輸送性化合物とは、通常用いられる構造の電荷輸送物質で、且つアミノ基を有している化合物である。即ち、代表的には硬化性有機ケイ素化合物と結合して、樹脂層を形成することが出来る下記一般式で示される電荷輸送性化合物を挙げることができるが、下記構造に限定されるものではなく、電荷輸送性能を有し、且つアミノ基を有している化合物であればよい。
【0115】
X−(R1−NR2H)m
式中、Xは電荷輸送性能付与基であり、R1は単結合子、各々置換又は非置換のアルキレン、アリーレン基であり、R2は水素原子、置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のアリール基、mは1以上、好ましくは1〜5である。
【0116】
その中でも代表的なものを挙げれば下記のごときものがある。
【0117】
【化10】
【0118】
アミノ基を有する電荷輸送性化合物の中で、第一アミン化合物(−NH2)の場合は2個の水素原子が有機ケイ素化合物と反応し、シロキサン構造に連結することもあり得る。第2アミン化合物(−NHR)の場合は1個の水素原子が有機ケイ素化合物と反応し、残りのRはブランチとして残存する基でも良く、架橋反応を起こす基でも良く、電荷輸送物質を含む化合物基でもよい。
【0119】
前記シロキサン系樹脂の形成原料組成比としては、上記の一般式(A)〜(D)で表される有機ケイ素化合物(以下、単に(A)、(B)、(C)、(D)とする)によれば、(A)+(B)成分1モルに対し、(C)+(D)成分0.05〜1モルを用いることが好ましい。
【0120】
又コロイダルシリカ(E)を添加する場合は(A)+(B)+(C)+(D)成分の総質量100部に対し(E)を1〜30質量部を用いることが好ましい。又上記有機ケイ素化合物やコロイダルシリカと反応して樹脂層を形成することができる電荷輸送性化合物(F)を加える場合は、(A)+(B)+(C)+(D)成分の総質量100部に対し(F)を1〜500質量部を用いることが好ましい。(A)+(B)成分が上記の範囲外で使用されると、(A)+(B)成分が少ない場合はシロキサン系樹脂層は架橋密度が小さすぎ硬度が不足する。又、(A)+(B)成分が多すぎると架橋密度が大きすぎ硬度は十分だが、脆い樹脂層となる。(E)成分のコロイダルシリカ成分の過不足も、(A)+(B)成分と同様の傾向がみられる。一方、(F)成分が少ない場合はシロキサン系樹脂層の電荷輸送能が小さく、感度の低下、残電の上昇を生じ、(F)成分が多い場合はシロキサン系樹脂含有層の膜強度が弱くなる傾向がみられる。
【0121】
シロキサン系樹脂とは予め構造単位にシロキサン結合を有するモノマー、オリゴマー、ポリマーに触媒や架橋剤を加えて新たな化学結合を形成させ3次元網目構造を形成することもあり、又加水分解反応とその後の脱水縮合によりシロキサン結合を促進させモノマー、オリゴマー、ポリマーから3次元網目構造を形成することもできる。一般的には、アルコキシシランからなる組成物、又はアルコキシシランとコロイダルシリカからなる組成物の縮合反応により3次元網目構造を形成することができる。
【0122】
又上記の3次元網目構造を形成させる触媒としては有機カルボン酸、亜硝酸、亜硫酸、アルミン酸、炭酸及びチオシアン酸の各アルカリ金属塩、有機アミン塩(水酸化テトラメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウムアセテート)、スズ有機酸塩(スタンナスオクトエート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンメルカプチド、ジブチルチンチオカルボキシレート、ジブチルチンマリエート等)、アルミニウム、亜鉛のオクテン酸、ナフテン酸塩、アセチルアセトン錯化合物等が挙げられる。
【0123】
(酸化防止剤)
樹脂層にはヒンダートフェノール、ヒンダートアミン、チオエーテル又はホスファイト部分構造を持つ酸化防止剤を含有させることを特徴とする。該樹脂層への酸化防止剤の含有は環境変動時の電位安定性・画質の向上に効果的である。
【0124】
ここでヒンダートフェノールとはフェノール化合物の水酸基に対しオルト位置に分岐アルキル基を有する化合物類及びその誘導体を云う。但し、水酸基がアルコキシに変成されていても良い。
【0125】
又、ヒンダートアミンは、例えば下記構造式で示される有機基を有する化合物類が挙げられる。
【0126】
【化11】
【0127】
式中、R11は水素原子又は1価の有機基、R12、R13、R14、R15はアルキル基、R16は水素原子、水酸基又は1価の有機基を示す。
【0128】
ヒンダートフェノール部分構造を持つ酸化防止剤としては、例えば特開平1−118137号(P7〜P14)記載の化合物が挙げられるが本発明はこれに限定されるものではない。
【0129】
ヒンダートアミン部分構造を持つ酸化防止剤としては、例えば特開平1−118138号(P7〜P9)記載の化合物も挙げられるが本発明はこれに限定されるものではない。製品化されている酸化防止剤としては以下のような化合物、例えばヒンダートフェノール系として「イルガノックス1076」、「イルガノックス1010」、「イルガノックス1098」、「イルガノックス245」、「イルガノックス1330」、「イルガノックス3114」、「イルガノックス1076」「3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシビフェニル」、ヒンダートアミン系として「サノールLS2626」、「サノールLS765」「サノールLS2626」、「サノールLS770」、「サノールLS744」、「チヌビン144」、「チヌビン622LD」、「マークLA57」、「マークLA67」、「マークLA62」、「マークLA68」、「マークLA63」、「スミライザーTPS」、チオエーテル系として「スミライザーTP−D」、ホスファイト系として「マーク2112」、「マークPEP−8」、「マークPEP−24G」、「マークPEP−36」、「マーク329K」、「マークHP−10」が挙げられ、特にヒンダートフェノール、ヒンダートアミン系酸化防止剤が好ましい。
【0130】
具体的な化合物例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0131】
【化12】
【0132】
これら酸化防止剤の添加量としては樹脂層組成物の総質量100部に対し0.01質量部〜50質量部を用いることが好ましく、更に好ましくは、0.1質量部〜25質量部である。
【0133】
又、前記樹脂層にはシリコーンオイルを含有させることが好ましい。本発明で用いられるシリコーンオイルは反応性、非反応性シリコーンオイルを用いることができる。
【0134】
反応性シリコーンオイルとは分子内に反応性をもつ有機基を含むシリコーンオイルを指し、その多くは反応性基を有するポリシロキサンである。ポリシロキサンは二官能基のアルコキシシランの縮合反応により得られるが、ここで云う反応性基とはポリシロキサン主鎖形成に関与する二官能基のアルコキシシランや二官能基のシラノールとは異なり、下記一般式(II)に示すようにシリコーンオイルの側鎖或いは末端に位置する反応性基である。具体的には次のような構造で表される。
【0135】
【化13】
【0136】
(式中、R1〜R10はそれぞれ異なっても良く、炭素数1〜10の置換、若しくは無置換のアルキル基、炭素数1〜10の置換、若しくは無置換のアルコキシル基、又は反応性基を表す。m、nは0〜200の整数を表す。但しR1〜R10の少なくとも1つは反応性基を有する。)
前記反応性基としては樹脂層塗布液中、或いは塗膜形成時に或いは熱処理時に化学反応によりシロキサン系樹脂中の一部となる反応性基であれば特に限定されないが、一般的にはアミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、カルビノール基、メタクリル基、メルカプト基、フェノール基等を含む有機残基が挙げられる。
【0137】
更に、具体的には以下のような一般式の反応性基が好ましい。
(1)アミノ変性: −R11−NH2,−R11−NH−R12−NH2
(2)エポキシ変性: −R11−(エポキシ環)
(3)カルボキシ変性: −R11−COOH
(4)カルビノール変性: −R11−OH
(5)メタクリル変性: −R11−C(=O)(CH3)=CH2
(6)メルカプト変性: −R11−SH
(7)フェノール変性: −R11−C6H4−OH
式中、−R11−、−R12−はアルキレン基を表す。
【0138】
一方、非反応性のシリコーンオイルとしては、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、高級アルコキシ変性等の変性シリコーンオイルが挙げられる。これらの中でも特にシラノール基を含有するシラノールシリコーンが最も好ましい。尚、シラノールシリコーンオイルとは下記一般式(3)のごとくシラノールを含有するポリシロキサンを云う。
【0139】
【化14】
【0140】
式中、R1〜R8はそれぞれ異なっていても良く、炭素数1〜10の各置換、若しくは無置換のアルキル基またはアルコキシル基を表す。
【0141】
次に代表的なシリコーンオイルA〜Oの商品名を挙げる。
A:アミノ変性品 X−22−161AS(信越化学社製)
B:エポキシ変性品 X−22−163B(信越化学社製)
C:カルボキシル変性品 X−22−162A(信越化学社製)
D:カルビノール変性品 X−22−160AS(信越化学社製)
E:メタクリル変性品 X−22−164C(信越化学社製)
F:メルカプト変性品 X−22−167B(信越化学社製)
G:フェノール変性品 X−22−165B(信越化学社製)
H:ジメチルシリコーン KF−96(信越化学社製)
I:メチルフェニルシリコーン KF−54(信越化学社製)
J:ポリエーテル変性品 KF−351(信越化学社製)
K:メチルスチリル変性品 KF−410(信越化学社製)
L:アルキル変性品 KF−412(信越化学社製)
M:高級脂肪酸エステル変性品 X−22−715(信越化学社製)
N:高級アルコキシ変性品 KF−851(信越化学社製)
O:シラノールシリコーン DMS−S12(シッソ社製)
上記シリコーンオイルの添加量は樹脂層固形分に対し10ppm〜20質量%、好ましくは100ppm〜10質量%である。
【0142】
前記樹脂層にシリコーンオイルを含有させることにより、磁気ブラシやクリーニングブレードによる樹脂層の摩耗を更に少なくし、画像欠陥の発生を少なくするのにも効果が見られる。
【0143】
本発明に用いられる樹脂層は該樹脂層の特徴を生かすため感光体の表面層として構成されるのが最も好ましいが、該感光体を電子写真画像形成装置に組み込んだ時の画像形成スタート時のスベリ特性等を改良する目的で該樹脂層の上に更に表面層を設けることもできる。
【0144】
本発明に用いられる感光体の層構成はとくに限定は無いが、負帯電感光体においては導電性支持体上には下引層(UCL)、その上に機能分離した感光層の電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL層)を順に設けた上に本発明に用いられる樹脂層を塗設した構成をとるのが好ましい。正帯電感光体では前記負帯電感光体層構成の内、電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL層)の順を逆にした構成を取ることが好ましい。単層構造の感光体では導電性支持体上には下引層(UCL)の上に感光層(電荷発生+電荷輸送)の上に本発明に用いられる樹脂層を塗設した構成を採用しても良い。
【0145】
又、本発明に用いられる樹脂層は前記感光層を兼ねた構成を取ることも可能である。即ち、前記機能分離感光体の電荷輸送層或いは電荷発生層を本発明に用いられる樹脂層とする事もできる。又、単層構造の感光体の感光層を本発明に用いられる樹脂層としても良い。
【0146】
感光層に含有される電荷発生物質(CGM)としては、例えばフタロシアニン顔料、多環キノン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料、アズレニウム顔料、スクワリリウム染料、シアニン染料、ピリリウム染料、チオピリリウム染料、キサンテン色素、トリフェニルメタン色素、スチリル色素等が挙げられ、これらの電荷発生物質は単独で又は適当なバインダー樹脂と共に層形成が行われる。
【0147】
前記感光層に含有される電荷輸送物質(CTM)としては、例えばオキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、ベンジジン化合物、ピラゾリン誘導体、スチルベン化合物、アミン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−1−ビニルピレン、ポリ−9−ビニルアントラセン等が挙げられこれらの電荷輸送物質は通常バインダーと共に層形成が行われる。
【0148】
単層構成の感光層、及び積層構成の場合の電荷発生層(CGL)、電荷輸送層(CTL)に含有されるバインダー樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ポリシラン樹脂、ポリビニルカルバゾール等が挙げられる。
【0149】
電荷発生層中の電荷発生物質とバインダー樹脂との割合は質量比で1:5〜5:1が好ましい。又電荷発生層の膜厚は5μm以下が好ましく、特には0.05〜2μmが好ましい。
【0150】
又、電荷輸送層は前記の電荷輸送物質とバインダー樹脂を適当な溶剤に溶解し、その溶液を塗布乾燥することによって形成される。電荷輸送物質とバインダー樹脂との混合割合は質量比で10:1〜1:10が好ましい。
【0151】
電荷輸送層の膜厚は5〜50μm、特には10〜40μmが好ましい。又、電荷輸送層が複数設けられている場合は、電荷輸送層の上層の膜厚は10μm以下が好ましく、かつ、電荷輸送層の上層の下に設けられた電荷輸送層の全膜厚より小さいことが好ましい。
【0152】
シロキサン系樹脂含有の樹脂層は、上記電荷輸送層を兼ねても良いが、好ましくは電荷輸送層もしくは電荷発生層或いは単層型の電荷発生・輸送層等の感光層の上に、これらとは別層として設けるのがよい。この場合、上記感光層とシロキサン系樹脂含有層との間に接着層を設けるのが更に良い。
【0153】
感光体の製造に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン等が好ましく用いられる。又、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0154】
電子写真感光体の導電性支持体としては、例えば1)アルミニウム板、ステンレス板などの金属板、2)紙或いはプラスチックフィルムなどの支持体上に、アルミニウム、パラジウム、金などの金属薄層をラミネート若しくは蒸着によって設けたもの、3)紙或いはプラスチックフィルムなどの支持体上に、導電性ポリマー、酸化インジウム、酸化錫などの導電性化合物の層を塗布若しくは蒸着によって設けたもの等が挙げられる。
【0155】
本発明においては導電性支持体と感光層の間に、バリヤー機能を備えた中間層を設けることもできる。
【0156】
中間層用の材料としては、カゼイン、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリビニルブチラール、フェノール樹脂ポリアミド類(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、共重合ナイロン、アルコキシメチル化ナイロン等)、ポリウレタン、ゼラチン及び酸化アルミニウムを用いた中間層、或いは特開平9−68870号の如く金属アルコキシド、有機金属キレート、シランカップリング剤による硬化型中間層等が挙げられる。中間層の膜厚は、0.1〜10μmが好ましく、特には0.1〜5μmが好ましい。
【0157】
支持体と中間層との間に支持体の表面欠陥を補うための被覆を施すことや、特に画像入力がレーザー光の場合には問題となる干渉縞の発生を防止することなどを目的とした導電層を設けることができる。この導電層は、カーボンブラック、金属粒子又は金属酸化物粒子等の導電性粉体を適当なバインダー樹脂中に分散した溶液を塗布乾燥して形成することができる。導電層の膜厚は5μm〜40μmが好ましく、特に10μm〜30μmが好ましい。
【0158】
本発明に係るトナー粒子について説明する。
本発明に係るトナー粒子は、トナー粒子を構成する樹脂がセル構造を有し、セルのフェレ水平径の平均値が20nm〜200nmであり、かつ、フェレ水平径の変動係数が10%〜35%であることを特徴とするもので、セル構造を有する本発明に係るトナーは、現像器内での撹拌により生ずる機械的せん断力の作用や、あるいは画像形成装置内にオゾンが多く存在する環境下でも、微粉を発生しない性質を有することが見出された。
【0159】
ここで、セル構造について、トナー粒子の構造を生物の細胞構造に模して説明する。すなわち、セル構造を有するトナー粒子とは、細胞壁に対応する樹脂相であるセル壁と、それに包まれる細胞質に対応する樹脂相であるセルとから構成されているものである。但し、セルの一部が開口して隣接するセル壁とつながった構造を有していてもよい。本発明に係るトナーでは、後述するトナー断面をプラズマオゾン処理した後に観察すると、トナー粒子を構成する樹脂がお互いに混和せずにセル壁を介して独立した複数のセルの集合体を有することが確認される。
【0160】
本発明は、トナー粒子を構成する樹脂がセル構造を有するものであるが、トナー粒子を構成する樹脂がセル構造を有するトナー粒子は、図5の模式図で示される様な構造を有する。
【0161】
図5(A)、図5(B)において、aはセル、bはセル壁、cは着色剤粒子を表し、更に、図5(B)において、dは結晶性物質を表す。
【0162】
図5に示される様に本発明に係るトナー粒子は、各セルがセル壁と呼ばれる樹脂の相により隔てられた構造によってトナー粒子中においてセルの集合体を有するものであることが認められる。
【0163】
ここで、セル及びセル壁を構成する樹脂は同組成であっても、例えば結晶化度、分子量、塩等の不純物量の違いにより、電子顕微鏡では双方の領域の輝度が異なることが確認される。なお、図5の模式図は後述する透過型電子顕微鏡写真結果に基づいて作成したものである。また、図5の模式図は、本発明に係るトナー粒子を構成する樹脂がセルとセル壁とを有するものであることをより明瞭にするために、トナー粒子の粒径に対してセルの大きさを実際に観察される大きさよりも意図的にかなり大きく示している。
【0164】
このセル構造がトナーの耐久性に大きな効果を奏する理由は明確ではないが、例えば、次の様に考えられる。
【0165】
すなわち、内部がセル構造となっていることにより、粒子内部に緩衝構造を保持させることができ、脆さのない、微小な弾性構造を有するトナーとなっているものと推定される。その結果、機械的なストレスを受けた場合にトナー内部にそのストレスを拡散させることができるため、微粉などを発生させず、耐久性を維持することが可能になるものと推測される。特に、オゾンが発生している雰囲気下では樹脂が酸化され、分解し易くなっているものと推測され、微粉も発生し易い状況となる。しかし、セル構造とすることで、セルが一種のバリヤーとなり、オゾンの影響をトナー内部にまで進行させることがなく、オゾン分解の問題を解消することを可能にしたものと推測される。
【0166】
本発明に用いられるトナー粒子が、オゾンに対してバリヤー効果を発現する理由は明確ではないが、トナー粒子を構成する樹脂にオゾン分解の影響を受け易い領域と受けにくい領域とが混在することがその原因と推測される。すなわち、本発明に用いられるトナー粒子のセル構造は、オゾン分解の作用を受け易い領域が粒子状のセルとなりトナー粒子中央付近に存在し、オゾン分解の作用を受けにくい領域がセル壁となっているものと推測される。
【0167】
トナー粒子中に上記で規定されるフェレ水平径に関する条件を満足するセルを1つだけ有するトナーも考え得るが、本発明で用いられるトナー粒子は、セルを複数個有するもので、好ましくは10個以上のセルを有するものである。
【0168】
また、トナー粒子は、その周縁部にセルの存在の疎らな構造を有するものであることが好ましい。
【0169】
セル構造を有するトナーは、図5に示す様に着色剤粒子がセルとセルの間、すなわちセル間に分布しているものである。この着色剤粒子の分布としては、トナー粒子中の着色剤粒子全体の60個数%以上がセル間に分布していることが好ましい。また、本発明に用いられるトナーは、着色剤粒子がセル間に分布している比率の高いものほど高耐久性を有するものであり、全着色剤粒子のうちの80個数%以上がセル間に存在するものが特に好ましい。
【0170】
本発明に用いられるトナーが、この様に着色剤粒子がセル間に分布している比率の高いものほど高耐久性である明確な理由も明らかではないが、おそらく、着色剤粒子自体がセル構造の壁として作用し、トナー内部への緩衝機能やオゾンに対するバリヤー機能を発現するため、トナーの耐久性を維持するものと推測される。
【0171】
また、本発明に用いられるトナー粒子は、着色剤粒子の他に凝集塩や離型剤の様なトナー含有成分もセル壁領域に多く含有するものが好ましい。
【0172】
セル構造を有するトナー粒子中のセルの大きさは、セルのフェレ水平径の平均値が20nm〜200nmの範囲のものが好ましく、この様なセルを有するトナー粒子は機械的なストレスに対して十分な耐久性を発現して微粉を発生しない。
【0173】
また、セルのフェレ水平径の平均値が20nm〜200nmの範囲内の時、微粉の発生しない高耐久性のトナーとなる理由は明らかではないが、おそらく、フェレ水平径の平均値が20nm〜200nmの範囲内の時、セル壁を構成する樹脂がトナー粒子に付与される機械的な衝撃力を適度に吸収することや、セルがオゾンの影響を受けにくい構造となることが推測される。
【0174】
本発明に用いられるセル構造を有するトナー粒子では、セルのフェレ水平径の平均値が40nm〜160nmの時が好ましく、特に好ましくは60nm〜120nmである。なお、フェレ水平径とは、本発明に用いられるトナー粒子内のセルの大きさを特定するもので、任意の状態にトナー粒子を置いた時のセルの水平方向の長さ(最大長)を示す。
【0175】
また、本発明に用いられるトナー粒子内の各セルのフェレ水平径の大きさは、平均値に対してある程度バラツキを有するものであるが、本発明に用いられるトナー粒子では、セルのフェレ水平径の変動係数が10%〜35%の範囲にあるもので、好ましくは10%〜25%、特に好ましくは12%〜16%である。
【0176】
トナー粒子内のセルのフェレ水平径の変動係数は、下記の式により得られる。
フェレ水平径の変動係数={S2/K2}×100(%)
〔式中、S2は100個のセルのフェレ水平径の標準偏差を示し、K2はフェレ水平径の平均値を示す。〕
この様に、本発明に用いられるトナー粒子内に存在するセルのフェレ水平径の変動係数は、各セルのフェレ水平径の平均値に対するバラツキを表すものである。本発明では、セルのフェレ水平径の変動係数が10%〜35%の範囲にあるトナーで画像形成を行うと、機械的なせん断力やオゾンの作用によって破砕されることがなく、しかも微粉が発生しない。
【0177】
本発明に用いられるトナー粒子中に存在するセルの形状を円形に換算したときの円形度係数の値が0.75〜0.98の範囲内のものである。円形度係数は下記式より算出されるものである。
【0178】
円形度係数=(4π×(セルの面積))/(セルの周囲長)2
上記式は、セルが真円の時はその値が1となり、セルの形状が細長くなるほど円形度係数の値が0に近づいていくものである。本発明に用いられるトナーでは、前述の様にセルの形状は、真円のものではなく多少真円よりも細長い形状のものであることにより、トナー粒子の強度が向上し、微粉を発生させない。
【0179】
本発明に用いられるトナー粒子のセル構造の平均径などは、透過型電子顕微鏡(TEMとも言う)により得られるもので、透過型電子顕微鏡によりトナー粒子を写真撮影し、撮影された写真を画像解析して算出された解析結果により、フェレ水平径をはじめとするセルに関する種々の特性が算出される。
【0180】
透過型電子顕微鏡の測定写真より、本発明に係るトナー粒子を構成する樹脂は、セル壁の領域とセルの領域とでは、双方の輝度が異なることから本発明に係るトナー粒子を構成する樹脂がセル構造を有することが確認される。
【0181】
前述の透過型電子顕微鏡における輝度とは、結着樹脂、着色剤等の各トナー構成要素の電子線透過率が各々異なるので、各電子線透過率の差を可視化した時に顕れるもので、一般に着色剤の電子線透過率は結着樹脂の電子線透過率が低いために低輝度すなわち高い濃度で表される。
【0182】
また、電子顕微鏡写真において、低輝度とは画素(ピクセル)の輝度信号を256階調に分割した際に0〜99階調にあるものを言い、中輝度とは80〜160階調の範囲にあるもの、高輝度とは127〜255階調にあるものをいうが、本発明で云う低輝度、高輝度とは、トナーの各構成要素が相対的に判別可能な状態にあればよいもので、必ずしも着色剤の輝度が上記の範囲で定義付けられる低輝度の範囲内にあることを必須要件とするものではない。
【0183】
本発明に用いられるトナー粒子の構造を観察することの可能な透過型電子顕微鏡装置としては、通常当業者の間でよく知られた機種で十分観察されるもので、例えば「LEM−2000型(トプコン社製)」等が用いられる。本発明では、25,000倍の倍率で、1000個以上のトナー粒子の投影面を撮影した透過型電子顕微鏡写真の結果から、本発明に用いられるトナー粒子内におけるセルの個数等の値を算出する。
【0184】
透過型電子顕微鏡における具体的な撮影方法は、トナー粒子を測定する際に行う通常知られた方法で行われるものである。すなわち、トナーの断層面を測定する具体的方法としては、常温硬化性のエポキシ樹脂中にトナーを十分分散させた後、包埋し硬化させてもよく、粒径100nm程度のスチレン微粉末に分散させた後加圧成形した後、必要により得られたブロックを四三酸化ルテニウム、又は四三酸化オスミウムを併用し染色を施した後、ダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用い薄片状のサンプルを切り出す。
【0185】
切り出されたサンプルより、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、トナーの断層形態を写真撮影する。当該写真からトナー粒子中における着色剤の領域の形状を目視で確認するとともに、本発明に係るトナー粒子中のセル構造を特定する数値は電子顕微鏡装置により観察された画像情報に基づいて電子顕微鏡装置に付設された画像解析装置「ルーゼックスF」(ニレコ(株)社製)を用いて、撮影された画像情報を演算処理して算出されるものである。
【0186】
また、透過型電子顕微鏡の加速電圧は80〜200kVが好ましいが、得られる画像の高コントラストな電子顕微鏡画像を得る上では80kVで行うことが好ましい。上記測定でセル構造を評価する際にプラズマオゾン処理を行うと、セル構造を容易に観察することが可能になるので好ましい。
【0187】
次に、トナーへのプラズマオゾン処理の方法について説明する。
プラズマオゾン処理装置は図6の概略図に示す様に、活性ガスを用いたプラズマ放電により試料表面の改質を行うものであって、分析用電子顕微鏡で無機材料等の試料観察を行う際に試料表面に存在する不純物除去やエッチング、アッシング、コーティングと云った試料表面の改質に用いられる。
【0188】
具体的な装置としては、PC−2000プラズマクリーナー(SOUTH BAY TECHNOLOGY社製)、プラズマプレップ5(Gala INSTRUMENT社製)が挙げられ、以下に性能の一例を示す。
【0189】
本発明で使用されるトナー粒子は、上記条件中RFの出力100Wとし、使用ガスとして、Arとオゾンガスをガスフローメータ、及びニードルバルブ付きのガスサプライにより供給するもので、96リットル/minの真空ポンプによる真空条件下でアルゴンガスを5分、オゾンガスを5分供給しながら都合10分のプラズマ処理を行うものである。
【0190】
また、プラズマオゾン処理では、トナー粒子をアクリル樹脂で包埋した後、ウルトラミクロトームで切削したものを処理装置内のチャンバー内に設置された銅メッシュ上に載せてプラズマオゾン処理を行うものである。
【0191】
また、上記プラズマオゾン処理において、真空下の条件下で活性ガスとして酸素ガスを用いる場合には、真空ポンプ用のオイルとしてはFomblinオイル等の合成オイルを用いることが好ましい。
【0192】
本発明に使用されるトナー粒子は、外添混合された状態のもの、すなわち、製品として完成された状態にあるものを用いて評価してもよい。
【0193】
次に、本発明で好ましく用いられるトナーについて説明する。
本発明で用いられるトナー粒子は、形状係数の変動係数が16%以下であり、個数粒度分布における個数変動係数が27%以下であるトナー粒子から構成されるトナーを使用することで、トナー表面における外添剤の存在状態が均一になり、帯電量分布がシャープになるとともに高い流動性が得られる。その結果、現像性、細線再現性に優れ、安定したクリーニング性を長期にわたって形成することができるとともに、オゾンの存在する画像形成装置内で機械的なせん断力を長期にわたり加えられても、劣化、粉砕してトナー微粉の発生しないものであることを見出した。
【0194】
更に本発明者等は、個々のトナー粒子の微小な形状に着目して検討を行った結果、現像装置内部において、トナー粒子の角部分の形状が変化して丸くなり、その部分が外添剤の埋没を促進させ、帯電量の変化、流動性、クリーニング性を低下させ、特に画像形成装置内におけるオゾンの存在がこれらの問題を促進させていることを見出し、形状を特定のものとすることで、この問題を解決することを見出した。
【0195】
また、摩擦帯電によってトナー粒子に電荷を付与する場合には、特に角部分では外添剤が埋没しやすくなり、トナー粒子の帯電が不均一になりやすいと推定される。即ち、角がないトナー粒子の割合を50個数%以上とし、個数粒度分布における個数変動係数を27%以下に制御されたトナー粒子から構成されるトナーを使用することによっても、現像性、細線再現性に優れ、高画質な画像を長期にわたって形成することが可能であるとともに、オゾンの存在する画像形成装置内において機械的なせん断力を長期にわたり加えられても劣化、粉砕によるトナー微粉の発生のないことを見出した。
【0196】
更に、トナーを特定の形状としてその形状を揃えた場合にも、外添剤の埋没が発生せず、且つ帯電量分布がシャープとなり、微粉の発生しないことが判明した。すなわち、形状係数が1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子の割合が65個数%以上であり、形状係数の変動係数が16%以下であるトナーを使用することでも、現像性、細線再現性に優れ、高画質な画像を長期にわたって形成するとともに、オゾンの存在する画像形成装置内で機械的なせん断力を長期にわたって加えられても、トナー粒子の形状が揃っているため、トナーの部分的な劣化を抑制することが可能で微粉等の発生を抑制し、結果として長期にわたり安定した画像形成を可能にすることを見出した。
【0197】
ここで、本発明に用いられるトナーの個数粒度分布および個数変動係数について説明する。本発明に用いられるトナーの個数粒度分布および個数変動係数とは、コールターカウンターTA−IIあるいはコールターマルチサイザー(コールター社製)で測定されるものである。本発明ではコールターマルチサイザーを用い、粒度分布を出力するインターフェイス(日科機社製)、パーソナルコンピューターを接続して使用した。前記コールターマルチサイザーにおいて使用するアパーチャーとしては100μmのものを用いて2μm以上の体積径、個数径を測定して粒度分布および平均粒径を算出した。個数粒度分布とは、粒子径に対するトナー粒子の相対度数を表すものであり、個数平均粒径とは、個数粒度分布における累積50%の径、すなわちDn50を表すものである。
【0198】
トナーの個数粒度分布における個数変動係数は下記式から算出される。
個数変動係数=〔S/Dn〕×100(%)
〔式中、Sは個数粒度分布における標準偏差を示し、Dnは個数平均粒径(μm)を示す。〕
本発明に用いられるトナーの個数変動係数は27%以下であり、好ましくは25%以下である。個数変動係数が27%以下であることにより、転写されたトナー層の空隙が減少して定着性が向上し、オフセットが発生しにくくなる。また、帯電量分布がシャープとなり、転写効率が高くなって画質が向上する。
【0199】
本発明に用いられるトナーの個数変動係数の制御方法は、特に限定されるものではない。例えば、トナー粒子を風力により分級する方法も使用できるが、個数変動係数をより小さくするためには液中での分級が効果的である。この液中での分級方法は、遠心分離機を用い、回転数を制御してトナー粒子径の違いにより生じる沈降速度差に応じてトナー粒子を分別回収し調整する方法がある。
【0200】
次に、本発明に用いられるトナーの形状係数について説明する。本発明に用いられるトナーは、形状係数が1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子の割合が65個数%以上であり、形状係数の変動係数が16%以下で、かつ、個数粒度分布における個数変動係数が27%以下のものである。ここで、本発明に用いられるトナーの形状係数は、下記式により示され、トナー粒子の丸さの度合いを示す。
【0201】
形状係数=((最大径/2)2×π)/投影面積
ここで、最大径とは、トナー粒子の平面上への投影像を2本の平行線で挟んだとき、その平行線の間隔が最大となる粒子の幅をいう。また、投影面積とは、トナー粒子の平面上への投影像の面積をいう。本発明では、この形状係数は、走査型電子顕微鏡により2000倍にトナー粒子を拡大した写真を撮影し、ついでこの写真に基づいて「SCANNING IMAGE ANALYZER」(日本電子社製)を使用して写真画像の解析を行うことにより測定した。この際、100個のトナー粒子を使用して本発明の形状係数を上記算出式にて測定したものである。
【0202】
次に、本発明に用いられるトナーとして好ましく用いられる、角がないトナー粒子を図7を用いて説明する。ここで角がないトナー粒子とは、電荷の集中するような突部又はストレスにより摩耗し易い様な突部を実質的に有しないトナー粒子を云い、すなわち、図7(a)に示す様に、トナー粒子Tの長径をLaとするときに、半径(La/10)の円Cで、トナー粒子Tの周囲線に対し1点で内側に接しつつ内側を転がした場合に、当該円CがトナーTの外側に実質的にはみ出さない場合を「角がないトナー粒子」という。「実質的にはみ出さない場合」とは、はみ出す円が存在する突起が1箇所以下である場合をいう。
【0203】
また、「トナー粒子の長径」とは、当該トナー粒子の平面上への投影像を2本の平行線で挟んだとき、その平行線の間隔が最大となる粒子の幅をいう。なお、図7(b)及び(c)は、それぞれ角のあるトナー粒子の投影像を示している。
【0204】
角がないトナーの測定は、次のようにして行った。先ず、走査型電子顕微鏡によりトナー粒子を拡大した写真を撮影し、更に拡大して15,000倍の写真像を得る。次いでこの写真像について前記の角の有無を測定する。この測定を1000個のトナー粒子について行った。
【0205】
本発明に用いられるトナーにおいて、角がないトナー粒子の割合は50個数%以上であり、好ましくは70個数%以上である。角がないトナー粒子の割合が50個数%以上であることにより、現像剤搬送部材などとのストレスにより微細な粒子の発生などがおこりにくくなり、いわゆる現像剤搬送部材表面に対する汚染を抑制することができ、帯電量分布がシャープとなって、帯電性も安定し、良好な画質を長期にわたって形成できるとともに、トナー粒子に機械的なせん断力が加えられても破砕しにくい構造を有するものであるので、微粉の発生防止に寄与する構造を有するものである。
【0206】
角がないトナーを得る方法は、特に限定されるものではない。例えば、形状係数を制御する方法として前述したように、トナー粒子を熱気流中に噴霧する方法、またはトナー粒子を気相中において衝撃力による機械的エネルギーを繰り返して付与する方法、あるいはトナーを溶解しない溶媒中に添加し、旋回流を付与することによって得ることができる。
【0207】
また、本発明に用いられるトナーとしては、トナー粒子の粒径をD(μm)とするとき、自然対数lnDを横軸にとり、この横軸を0.23間隔で複数の階級に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムにおいて、最頻階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m1)と、前記最頻階級の次に頻度の高い階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m2)との和(M)が70%以上であるトナーであることが好ましい。
【0208】
相対度数(m1)と相対度数(m2)との和(M)が70%以上であることにより、トナー粒子の粒度分布の分散が狭くなるので、当該トナーを画像形成工程に用いることにより選択現像の発生を確実に抑制することができる。
【0209】
本発明において、前記の個数基準の粒度分布を示すヒストグラムは、自然対数lnD(D:個々のトナー粒子の粒径)を0.23間隔で複数の階級(0〜0.23:0.23〜0.46:0.46〜0.69:0.69〜0.92:0.92〜1.15:1.15〜1.38:1.38〜1.61:1.61〜1.84:1.84〜2.07:2.07〜2.30:2.30〜2.53:2.53〜2.76・・・)に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムであり、このヒストグラムは、下記の条件に従って、コールターマルチサイザーにより測定されたサンプルの粒径データを、I/Oユニットを介してコンピュータに転送し、当該コンピュータにおいて、粒度分布分析プログラムにより作成されたものである。
【0210】
〔測定条件〕
1:アパーチャー:100μm
2:サンプル調製法:電解液〔ISOTON II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)〕50〜100mlに界面活性剤(中性洗剤)を適量加えて攪拌し、これに測定試料10〜20mgを加える。この系を超音波分散機にて1分間分散処理することにより調製する。
【0211】
本発明に用いられるトナー粒子の粒径は、個数平均粒径で2〜7μmで、3〜6.5μmであることが好ましく、更に好ましくは3.5〜6μmである。この粒径はトナーの製造方法において、凝集剤(塩析剤)の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、重合体の組成により制御可能なもので、更に、個数平均粒径が2〜7μmという小径化されたものであることにより、転写効率を高めハーフトーンの画質が向上し、細線やドット等の画質向上に寄与する。
【0212】
また、本発明では、セル構造を有するトナーが粒径が小径化されていることにより、オゾンの暴露された環境下や長期にわたり繰り返し機械的なせん断力の付加される環境下にあっても、単位体積当たりに加わるトナー粒子への負荷が小さくなり、トナーの破砕による微粉の発生を起こしにくい構造を有する。
【0213】
トナーの粒度分布の算出、個数平均粒径の測定は、コールターカウンターTA−II、コールターマルチサイザー(いずれもコールター社製)、SLAD1100(島津製作所社製レーザ回折式粒径測定装置)等を用いて測定することができる。本発明においては、コールターマルチサイザーを用い、粒度分布を出力するインターフェース(日科機社製)、パーソナルコンピュータを接続し測定、算出したものである。
【0214】
この様に、本発明に用いられるトナー粒子は、その形状が特定範囲内にあることにより、機械的なせん断力、あるいはオゾン分解等によるトナー粒子の破砕に対しても有利であることが見出されている。
【0215】
次に、本発明に用いられるトナーの製造方法について説明する。
本発明に用いられるトナーの製造方法として、樹脂粒子を水系媒体中で塩析/融着させて調製する方法が挙げられる。ここで「水系媒体」とは、少なくとも水が50質量%以上含有されたものを示す。この方法は、特に限定されるものではないが、例えば、特開平5−265252号公報や特開平6−329947号公報、特開平9−15904号公報に示す方法を挙げられる。
【0216】
すなわち、樹脂粒子と着色剤などの構成材料の分散粒子、あるいは樹脂および着色剤等より構成される微粒子を複数以上塩析、凝集、融着させる方法、特に水中にてこれらを乳化剤を用いて分散した後に、臨界凝集濃度以上の凝集剤を加え塩析させると同時に、形成された重合体自体のガラス転移点温度以上で加熱融着させて融着粒子を形成しつつ徐々に粒径を成長させ、目的の粒径となったところで水を多量に加えて粒径成長を停止し、さらに加熱、攪拌しながら粒子表面を平滑にして形状を制御し、その粒子を含水状態のまま流動状態で加熱乾燥することにより、本発明で私用されるトナー粒子を形成することができる。なお、ここにおいて凝集剤と同時にアルコールなど水に対して無限溶解する溶媒を加えてもよい。
【0217】
本発明に用いられるトナーの製造方法では、少なくとも重合性単量体に離型剤等の機能性物質を溶かした後、重合性単量体を重合せしめる工程を経て形成した複合樹脂微粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させてトナー粒子を得る。本発明に用いられるトナーは、重合性単量体に離型剤等の機能性物質を溶かすものであるが、これは溶解させて溶かすものでも、溶融して溶かすものであってもよい。
【0218】
また、本発明に用いられるトナーの製造方法は、多段重合法によって得られる複合樹脂微粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させるものが好ましい。以下、多段重合法について説明する。
【0219】
多段重合法とは、1つの樹脂粒子において異なる分子量分布を有する相を形成するために重合反応を多段階に分けて行うものであって、得られた樹脂粒子がその粒子の中心より表層に向かって分子量勾配を形成させる様に意図して行うものである。例えば、はじめに高分子量の樹脂粒子分散液を得た後、新たに重合性単量体と連鎖移動剤を加えることによって低分子量の表層を形成する方法が採られている。
【0220】
本発明では、セル構造を安定に形成することを可能にするという観点から二段重合以上の多段重合法を採用することが好ましい。以下に、多段重合法の代表例である二段重合法および三段重合法について説明する。この様な多段階重合反応によって得られたトナーでは破砕強度の観点から表層程低分子量のものが好ましい。
【0221】
〈二段重合法〉
二段重合法は、高分子量樹脂から形成される中心部(核)と低分子量樹脂から形成される外層(殻)とにより構成される複合樹脂粒子を製造する方法である。
【0222】
この方法を具体的に説明すると、先ず、単量体溶液を水系媒体(例えば、界面活性剤水溶液)中に油滴分散させた後、この系を重合処理(第一段重合)することにより、高分子量の樹脂粒子の分散液を調製するものである。
【0223】
次いで、この樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と低分子量樹脂を得るための単量体とを添加し、樹脂粒子の存在下で単量体を重合処理(第二段重合)を行うことにより、樹脂粒子の表面に、低分子量の樹脂(単量体の重合体)からなる被覆層を形成する方法である。ここで、中心部の核となる高分子量成分中に離型剤等の機能性物質を添加してもよい。
【0224】
〈三段重合法〉
三段重合法は、高分子量樹脂から形成される中心部(核)、中間層及び低分子量樹脂から形成される外層(殻)とにより構成される複合樹脂粒子を製造する方法である。
【0225】
この方法を具体的に説明すると、先ず、常法に従った重合処理(第一段重合)により得られた樹脂粒子の分散液を、水系媒体(例えば、界面活性剤の水溶液)に添加するとともに、上記水系媒体中に単量体溶液を油滴分散させた後、この系を重合処理(第二段重合)することにより、樹脂粒子(核粒子)の表面に樹脂からなる被覆層(中間層)を形成して、複合樹脂粒子(高分子量樹脂−中間分子量樹脂)の分散液を調製する。
【0226】
次いで、得られた複合樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と低分子量樹脂を得るための単量体とを添加し、複合樹脂粒子の存在下で単量体を重合処理(第三段重合)することにより、複合樹脂粒子の表面に、低分子量の樹脂(単量体の重合体)からなる被覆層を形成する。上記方法において、中間層中に離型剤等の機能性物質を含有させることで離型剤等の分散を微細かつ均一にすることが可能になり好ましい。
【0227】
本発明でいう水系媒体とは、水50〜100質量%と水溶性の有機溶媒0〜50質量%とからなる媒体をいう。水溶性の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等を例示することができ、得られる樹脂を溶解しないアルコール系有機溶媒が好ましい。
【0228】
なお、離型剤等の機能性物質を含有する樹脂粒子または被覆層を形成するために好適な重合法としては、臨界ミセル濃度以下の濃度の界面活性剤を溶解してなる水系媒体中に、離型剤を単量体に溶解した単量体溶液を、機械的エネルギーを利用して油滴分散させて分散液を調製し、得られた分散液に水溶性重合開始剤を添加して、油滴内でラジカル重合させる方法(以下、本発明では「ミニエマルジョン法」という。)を挙げることができ、本発明の効果をより発揮することができ好ましい。なお、上記方法において、水溶性重合開始剤に代えて、あるいは水溶性重合開始剤と共に、油溶性重合開始剤を用いても良い。
【0229】
機械的に油滴を形成するミニエマルジョン法によれば、通常の乳化重合法とは異なり、油相に溶解させた離型剤等の機能性物質が脱離しにくく、樹脂粒子または被覆層内に十分な量の離型剤等の機能性物質を導入することが可能である。
【0230】
ここで、機械的エネルギーによる油滴分散を行うための分散機としては、特に限定されるものではなく、例えば、高速回転するローターを備えた攪拌装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)、超音波分散機、機械式ホモジナイザー、マントンゴーリンおよび圧力式ホモジナイザーなどを挙げることができる。また、分散粒子径としては、10〜1000nmとされ、好ましくは50〜1000nm、更に好ましくは30〜300nmである。
【0231】
この重合工程で得られる複合樹脂粒子の粒子径は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定される質量平均粒径で10〜1000nmの範囲にあることが好ましい。
【0232】
また、樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は48〜74℃の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは52〜64℃である。
【0233】
また、樹脂粒子の軟化点は95〜140℃の範囲にあることが好ましい。
本発明に用いられるトナーは、樹脂および着色粒子の表面に、塩析/融着法によって樹脂粒子を融着させてなる樹脂層を形成させて得られるものであるが、このことについて以下に説明する。
【0234】
〔着色剤微粒子〕
本発明に用いられるトナーを得るために使用する着色剤微粒子は、界面活性剤を含有する水系媒体中で着色剤微粒子を微分散させるための分散装置を用いて形成されるものである。
【0235】
ここで着色剤微粒子を分散させる水系媒体中に含有される界面活性剤は臨界ミセル濃度(CMC)以上の濃度で溶解しているものであり、使用される界面活性剤は、前記重合工程で使用するものと同一のものを使用することができる。
【0236】
着色剤粒子の分散処理に使用する分散機は、特に限定されないが、好ましくは、高速回転するローターを備えた攪拌装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)、超音波分散機、機械的ホモジナイザー、マントンゴーリン、圧力式ホモジナイザー等の加圧分散機、ゲッツマンミル、ダイヤモンドファインミル等の媒体型分散機が挙げられる。
【0237】
〔塩析/融着工程〕
この塩析/融着工程は、樹脂粒子と前記の様に分散して得られた着色剤粒子とを塩析/融着させる(塩析と融着とを同時に起こさせる)ことによって、不定形(非球形)のトナー粒子を得る工程である。
【0238】
本発明でいう塩析/融着とは、塩析(粒子の凝集)と融着(粒子間の界面消失)とが同時に起こること、または、塩析と融着とを同時に起こさせる行為をいう。塩析と融着とを同時に行わせるためには、樹脂粒子を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)以上の温度条件下において粒子(樹脂粒子、着色剤粒子)を凝集させる必要がある。
【0239】
この塩析/融着工程では、樹脂粒子および着色剤粒子とともに、荷電制御剤などの内添剤粒子(数平均一次粒子径が10〜1000nm程度の微粒子)を塩析/融着させてもよい。また、着色剤粒子は、表面改質されていてもよく、表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができる。
【0240】
樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させるためには、樹脂粒子および着色剤粒子が分散している分散液中に、臨界凝集濃度以上の塩析剤(凝集剤)を添加するとともに、この分散液を樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)以上に加熱することが必要である。
【0241】
塩析/融着させるために好適な温度範囲としては、(Tg+10)〜(Tg+50℃)とされ、特に好ましくは(Tg+15)〜(Tg+40℃)とされる。また、融着を効果的に行なわせるために、水に無限溶解する有機溶媒を添加してもよい。
【0242】
また、本発明では樹脂粒子と着色剤を水系媒体中において塩析、凝集、融着させて着色粒子(本発明では、トナー粒子と呼ぶ)を得た後、前記トナー粒子を水系媒体から分離するときに、水系媒体中に存在している界面活性剤のクラフト点以上の温度で行うことが好ましく、更に好ましくは、クラフト点〜(クラフト点+20℃)の温度範囲で行うことである。
【0243】
上記のクラフト点とは、界面活性剤を含有した水溶液が白濁化しはじめる温度であり、クラフト点の測定は下記のように行われる。
【0244】
《クラフト点の測定》
塩析、凝集、融着する工程で用いる水系媒体すなわち界面活性剤溶液に、実際に使用する量の凝集剤を加えた溶液を調製し、この溶液を1℃で5日間貯蔵した。次いで、この溶液を攪拌しながら透明になるまで徐々に加熱した。溶液が透明になった温度をクラフト点として定義する。
【0245】
本発明で用いられるセル構造を有するトナーは、上記に記載の金属元素(形態として、金属、金属イオン等が挙げられる)をトナー中に350ppm〜35000ppm含有することが好ましく、更に好ましくは500ppm〜30000ppmである。
【0246】
トナー中の金属イオン残存量の測定は、蛍光X線分析装置「システム3270型」〔理学電気工業(株)製〕を用いて、凝集剤として用いられる金属塩の金属種(例えば、塩化カルシウムに由来するカルシウム等)から発する蛍光X線強度を測定することによって求めることができる。具体的な測定法としては、凝集剤金属塩の含有割合が既知のトナーを複数用意し、各トナー5gをペレット化し、凝集剤金属塩の含有割合(質量ppm)と、当該金属塩の金属種からの蛍光X線強度(ピーク強度)との関係(検量線)を測定する。次いで、凝集剤金属塩の含有割合を測定すべきトナー(試料)を同様にペレット化し、凝集剤金属塩の金属種からの蛍光X線強度を測定し、含有割合すなわち「トナー中の金属イオン残存量」を求めることができる。
【0247】
本発明に用いられるトナーは、塩析/融着する樹脂粒子表面に塩を多めに吸着させながら更に塩析/融着させることで、セル構造化が可能である。
【0248】
本発明に用いられるトナーでは、塩を多く残存させるために界面活性剤の代わりに高分子分散剤を使用したり、あるいは界面活性剤と高分子分散剤を併用することで塩の残存量を制御することが好ましい。
【0249】
高分子分散剤としては、具体的にはポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸が挙げられ、分子量は3000〜10000のものが好ましく用いられる。
【0250】
〔熟成工程〕
熟成工程は、塩析/融着工程に後続する工程であり、樹脂粒子の融着後も温度を樹脂のTg+15〜Tg+40℃に保ち、一定の強度で攪拌を継続する。
【0251】
〔濾過・洗浄工程〕
この濾過・洗浄工程では、上記の工程で得られたトナー粒子の分散系から当該トナー粒子を濾別する濾過処理と、濾別されたトナー粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤や塩析剤などの付着物を除去する洗浄処理とが施される。ここに、濾過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧濾過法、フィルタープレス等を使用して行う濾過法など特に限定されるものではない。
【0252】
〔乾燥工程〕
この工程は、洗浄処理されたトナー粒子を乾燥処理する工程である。
【0253】
この工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、攪拌式乾燥機などを使用することが好ましい。
【0254】
乾燥処理されたトナー粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは2質量%以下とされる。
【0255】
次に、トナー製造工程で用いられる各構成因子について、詳細に説明する。
(重合性単量体)
本発明に用いられる樹脂(バインダー)を造るための重合性単量体としては、疎水性単量体を必須の構成成分とし、必要に応じて架橋性単量体が用いられる。また、下記の様に構造中に酸性極性基を有する単量体又は塩基性極性基を有する単量体を少なくとも1種類含有するのが望ましい。
【0256】
(1)疎水性単量体
単量体成分を構成する疎水性単量体としては、特に限定されるものではなく従来公知の単量体を用いることができる。また、要求される特性を満たすように、1種または2種以上のものを組み合わせて用いることができる。
【0257】
具体的には、モノビニル芳香族系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、モノオレフィン系単量体、ジオレフィン系単量体、ハロゲン化オレフィン系単量体等を用いることができる。
【0258】
ビニル芳香族系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン系単量体およびその誘導体が挙げられる。
【0259】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
【0260】
ビニルエステル系単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等が挙げられ、ビニルエーテル系単量体としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0261】
又、モノオレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、ジオレフィン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
【0262】
(2)架橋性単量体
樹脂粒子の特性を改良するために架橋性単量体を添加しても良い。架橋性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、ジエチレングリコールメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、フタル酸ジアリル等の不飽和結合を2個以上有するものが挙げられる。
【0263】
(3)酸性極性基を有する単量体
酸性極性基を有する単量体としては、(a)カルボキシル基(−COOH)を有するα,β−エチレン性不飽和化合物、及び、(b)スルホン基(−SO3H)を有するα,β−エチレン性不飽和化合物を挙げることができる。
【0264】
(a)のカルボキシル基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物の例としては、アクリル酸、メタアクリル酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、マレイン酸モノブチルエステル、マレイン酸モノオクチルエステル、およびこれらのNa、Zn等の金属塩類等を挙げることができる。
【0265】
(b)のスルホン基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物の例としては、スルホン化スチレン、及びそのNa塩、アリルスルホコハク酸、アリルスルホコハク酸オクチル、及びこれらのNa塩等を挙げることができる。
【0266】
(4)塩基性極性基を有するモノマー
塩基性極性基を有するモノマーとしては、(a)アミン基或いは4級アンモニウム基を有する炭素原子数1〜12、好ましくは2〜8、特に好ましくは2の脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、(b)(メタ)アクリル酸アミドあるいは、随意N上で炭素原子数1〜18のアルキル基でモノ又はジ置換された(メタ)アクリル酸アミド、(c)Nを環員として有する複素環基で置換されたビニール化合物及び(d)N,N−ジアリル−アルキルアミン或いはその四級アンモニウム塩を例示することができる。中でも、(a)のアミン基或いは四級アンモニウム基を有する脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステルが塩基性極性基を有するモノマーとして好ましい。
【0267】
(a)のアミン基或いは四級アンモニウム基を有する脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステルの例としては、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、上記4化合物の四級アンモニウム塩、3−ジメチルアミノフェニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0268】
(b)の(メタ)アクリル酸アミド或いはN上で随意モノ又はジアルキル置換された(メタ)アクリル酸アミドとしては、アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、ピペリジルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−オクタデシルアクリルアミド等を挙げることができる。
【0269】
(c)のNを環員として有する複素環基で置換されたビニル化合物としては、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニル−N−メチルピリジニウムクロリド、ビニル−N−エチルピリジニウムクロリド等を挙げることができる。
【0270】
(d)のN,N−ジアリル−アルキルアミンの例としては、N,N−ジアリルメチルアンモニウムクロリド、N,N−ジアリルエチルアンモニウムクロリド等を挙げることができる。
【0271】
(重合開始剤)
本発明に用いられるラジカル重合開始剤は、水溶性であれば適宜使用が可能である。例えば、過硫酸塩(例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物(例えば、4,4′−アゾビス4−シアノ吉草酸及びその塩、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩等)、パーオキシド化合物等が挙げられる。更に、上記ラジカル重合開始剤は、必要に応じて還元剤と組み合せレドックス系開始剤とする事が可能である。レドックス系開始剤を用いることにより、重合活性を上昇させ、重合温度の低下が図れ、更に、重合時間の短縮が達成できる等好ましい面を有している。
【0272】
重合温度は、重合開始剤の最低ラジカル生成温度以上であれば、特に限定されるものではないが例えば50℃から90℃の範囲である。但し、過酸化水素−還元剤(アスコルビン酸等)を組み合わせた常温開始の重合開始剤を用いることで、室温またはそれ以上の温度で重合することも可能である。
【0273】
(連鎖移動剤)
分子量を調整することを目的として、公知の連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸ブチル、チオグリコール酸t−ブチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸デシル、チオグリコール酸ドデシル、エチレングリコールのメルカプト基を有する化合物を挙げることができる。このうち、トナー加熱定着時の臭気を抑制する観点で、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル、n−オクチルメルカプタンが特に好ましい。
【0274】
(界面活性剤)
前述の重合性単量体を使用して、特にミニエマルジョン重合を行うためには、界面活性剤を使用して水系媒体中に油滴分散を行うことが好ましい。この際に使用することのできる界面活性剤としては、特に限定されるものでは無いが、下記のイオン性界面活性剤を好適な化合物の例として挙げることができる。
【0275】
イオン性界面活性剤としては、例えば、スルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等)、硫酸エステル塩(ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム等)、脂肪酸塩(オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等)が挙げられる。
【0276】
本発明においては、下記一般式(1)、(2)の界面活性剤が特に好ましく用いられる。
【0277】
一般式(1) R1(OR2)nOSO3M
一般式(2) R1(OR2)nSO3M
一般式(1)、(2)において、R1は炭素数6〜22のアルキル基またはアリールアルキル基を表すが、好ましくは炭素数8〜20のアルキル基またはアリールアルキル基であり、更に好ましくは炭素数9〜16のアルキル基またはアリールアルキル基である。
【0278】
R1で表される炭素数6〜22のアルキル基としては、例えば、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、R2で表されるアリールアルキル基としては、ベンジル基、ジフェニルメチル基、シンナミル基、スチリル基、トリチル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0279】
一般式(1)、(2)において、R2は炭素数2〜6のアルキレン基を表すが、好ましくは炭素数2〜3のアルキレン基である。R2で表される炭素数2〜6のアルキレン基としては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、エチルエチレン基等が挙げられる。
【0280】
一般式(1)、(2)において、nは1〜11の整数であるが、好ましくは2〜10、更に好ましくは2〜5であり、特に好ましくは2〜3である。
【0281】
一般式(1)、(2)において、Mで表される1価の金属元素としてはナトリウム、カリウム、リチウムが挙げられる。中でも、ナトリウムが好ましく用いられる。
【0282】
以下に、一般式(1)、(2)で表される界面活性剤の具体例を示すが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0283】
化合物(101):C10H21(OCH2CH2)2OSO3Na
化合物(102):C10H21(OCH2CH2)3OSO3Na
化合物(103):C10H21(OCH2CH2)2SO3Na
化合物(104):C10H21(OCH2CH2)3SO3Na
化合物(105):C8H17(OCH2CH(CH3))2OSO3Na
化合物(106):C18H37(OCH2CH2)2OSO3Na
(樹脂粒子、トナーの分子量分布)
本発明に用いられるトナーは、その分子量分布のピーク又は肩が、100,000〜1,000,000、及び1,000〜50,000に存在することが好ましく、更に分子量分布のピーク又は肩が、100,000〜1,000,000、25,000〜150,000及び1,000〜50,000に存在するものであることが好ましい。
【0284】
樹脂粒子の分子量は、100,000〜1,000,000の領域にピークもしくは肩を有する高分子量成分と、1,000から50,000未満の領域にピークもしくは肩を有する低分子量成分の両成分を少なくとも含有する樹脂が好ましく、更に好ましくは、15,000〜100,000の部分にピーク又は肩を有する中間分子量体の樹脂を使用することが好ましい。
【0285】
前述のトナーあるいは樹脂の分子量測定方法は、THF(テトラヒドロフラン)を溶媒としたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定がよい。すなわち、測定試料0.5〜5mg、より具体的には1mgに対してTHFを1.0ml加え、室温にてマグネチックスターラーなどを用いて撹拌を行い、充分に溶解させる。次いで、ポアサイズ0.45〜0.50μmのメンブランフィルターで処理した後に、GPCへ注入する。GPCの測定条件は、40℃にてカラムを安定化させ、THFを毎分1.0mlの流速で流し、1mg/mlの濃度の試料を約100μl注入して測定する。カラムは、市販のポリスチレンジェルカラムを組み合わせて使用することが好ましい。例えば、昭和電工社製のShodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807の組合せや、東ソー社製のTSKgelG1000H、G2000H、G3000H、G4000H、G5000H、G6000H、G7000H、TSK guard columnの組合せなどを挙げることができる。又、検出器としては、屈折率検出器(IR検出器)、あるいはUV検出器を用いるとよい。試料の分子量測定では、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作成した検量線を用いて算出する。検量線作成用のポリスチレンとしては10点程度用いるとよい。
【0286】
(凝集剤)
本発明では、水系媒体中で調製した樹脂粒子の分散液から、樹脂粒子を塩析、凝集、融着する工程において、金属塩を凝集剤として好ましく用いることができるが、2価または3価の金属塩を凝集剤として用いることが更に好ましい。その理由は、1価の金属塩よりも2価、3価の金属塩の方が臨界凝集濃度(凝析値あるいは凝析点)が小さいため好ましい。さらに、前述のセル構造を形成するためにも多価金属塩が好ましい。
【0287】
本発明で用いられる凝集剤は、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の塩である1価の金属塩、例えばカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の塩やマンガン、銅等の2価の金属塩、鉄やアルミニウム等の3価の金属塩等が挙げられる。
【0288】
これら金属塩の具体的な例を以下に示す。1価の金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、2価の金属塩としては、塩化カルシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等が挙げられ、3価の金属塩としては、塩化アルミニウム、塩化鉄等が挙げられる。これらは、目的に応じて適宜選択されるが臨界凝集濃度の小さい2価や3価の金属塩が好ましい。
【0289】
本発明で云う臨界凝集濃度とは、水性分散液中の分散物の安定性に関する指標であり、凝集剤を添加し、凝集が起こるときの凝集剤の添加濃度を示すものである。この臨界凝集濃度は、ラテックス自身及び分散剤により大きく変化する。例えば、岡村誠三他著 高分子化学17,601(1960)等に記述されており、これらの記載に従えば、その値を知ることが出来る。又、別の方法として、目的とする粒子分散液に所望の塩を濃度を変えて添加し、その分散液のζ電位を測定し、ζ電位が変化し出す点の塩濃度を臨界凝集濃度とすることも可能である。
【0290】
本発明では、金属塩を用いて臨界凝集濃度以上の濃度になるように重合体微粒子分散液を処理する。この時、当然の事ながら、金属塩を直接加えるか、水溶液として加えるかは、その目的に応じて任意に選択される。水溶液として加える場合には、重合体粒子分散液の容量と金属塩水溶液の総容量に対し、添加した金属塩が重合体粒子の臨界凝集濃度以上になる必要がある。
【0291】
本発明では、金属塩の濃度は、臨界凝集濃度以上であれば良いが、セル構造を形成させる必要上、臨界凝集濃度の1.5倍以上、更に好ましくは2.0倍以上添加するとよい。
【0292】
(着色剤)
本発明に用いられるトナーは、上記の複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着して得られるものである。本発明に係るトナーを構成する着色剤(複合樹脂粒子との塩析/融着に供される着色剤粒子)としては、各種の無機顔料、有機顔料、染料を挙げることができる。無機顔料としては、従来公知のものを用いることができる。具体的な無機顔料を以下に例示する。
【0293】
黒色の顔料としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、更にマグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
【0294】
これらの無機顔料は所望に応じて単独または複数を選択併用する事が可能である。また顔料の添加量は重合体に対して2〜20質量%であり、好ましくは3〜15質量%が選択される。
【0295】
磁性トナーとして使用する際には、前述のマグネタイトを添加することができる。この場合には所定の磁気特性を付与する観点から、トナー中に20〜60質量%添加することが好ましい。
【0296】
有機顔料及び染料も従来公知のものを用いることができ、具体的な有機顔料及び染料を以下に例示する。
【0297】
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0298】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー156等が挙げられる。
【0299】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0300】
また、染料としては、例えば、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等を用いることができ、またこれらの混合物も用いることができる。
【0301】
これらの有機顔料及び染料は、所望に応じて、単独または複数を選択併用することが可能である。また、顔料の添加量は、重合体に対して2質量%〜20質量%であり、好ましくは3質量%〜15質量%である。
【0302】
本発明に用いられるトナーを構成する着色剤(着色剤粒子)は、表面改質されていてもよい。表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができ、具体的にはシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等を好ましく用いることができる。
【0303】
シランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のアルコキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン等のシロキサン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0304】
チタンカップリング剤としては、例えば、味の素社製の「プレンアクト」と称する商品名で市販されているTTS、9S、38S、41B、46B、55、138S、238S等、日本曹達社製の市販品A−1、B−1、TOT、TST、TAA、TAT、TLA、TOG、TBSTA、A−10、TBT、B−2、B−4、B−7、B−10、TBSTA−400、TTS、TOA−30、TSDMA、TTAB、TTOP等が挙げられる。アルミニウムカップリング剤としては、例えば、味の素社製の「プレンアクトAL−M」等が挙げられる。
【0305】
これらの表面改質剤の添加量は、着色剤に対して0.01質量%〜20質量%であることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%〜5質量%である。また、着色剤粒子の表面改質法としては、着色剤粒子の分散液中に表面改質剤を添加し、この系を加熱して反応させる方法が挙げられる。この様にして表面改質された着色剤粒子は、濾過により採取され、同一の溶媒による洗浄処理と濾過処理が繰り返された後、乾燥処理されて得られるものである。
【0306】
(離型剤)
本発明に使用されるトナーは、離型剤を含有した樹脂粒子を水系媒体中において融着させ、熟成工程により離型剤を適度に凝集させてセル構造を形成させたトナーであることが好ましい。この様に樹脂粒子中に離型剤を含有させた樹脂粒子を着色剤粒子と水系媒体中で塩析/融着させることで、微細に離型剤が分散されたトナーを得ることができる。ここで、熟成工程とは、樹脂粒子の融着後も温度を離型剤の融点±20℃の範囲で攪拌を継続する工程をいうものである。
【0307】
本発明に係るトナーでは、離型剤として、低分子量ポリプロピレン(数平均分子量=1500〜9000)や低分子量ポリエチレン等が好ましく、特に好ましくは、下記式で表されるエステル系化合物である。
【0308】
R1−(OCO−R2)n
式中、nは1〜4の整数で、好ましくは2〜4、更に好ましくは3〜4、特に好ましくは4である。R1、R2は、各々置換基を有しても良い炭化水素基を示す。R1は、炭素数1〜40、好ましくは1〜20、更に好ましくは2〜5がよい。R2は、炭素数1〜40、好ましくは16〜30、更に好ましくは18〜26がよい。
【0309】
次に代表的な化合物の例を以下に示す。
【0310】
【化15】
【0311】
【化16】
【0312】
また、本発明では離型剤として結晶性ポリエステルも用いることができるものであるが、結晶性ポリエステルとしては、脂肪族ジオールと、脂肪族ジカルボン酸(酸無水物および酸塩化物を含む)とを反応させて得られるポリエステルが好ましい。
【0313】
結晶性ポリエステルを得るために使用されるジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−ブテンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールZ、水素添加ビスフェノールA等を挙げることができる。
【0314】
結晶性ポリエステルを得るために使用されるジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコ酸、イタコン酸、グルタコ酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、これらの酸無水物あるいは酸塩化物を挙げることができる。
【0315】
特に好ましい結晶性ポリエステルとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノールとアジピン酸とを反応して得られるポリエステル、1,6−ヘキサンジオールとセバシン酸とを反応して得られるポリエステル、エチレングリコールとコハク酸とを反応して得られるポリエステル、エチレングリコールとセバシン酸とを反応して得られるポリエステル、1,4−ブタンジオールとコハク酸とを反応して得られるポリエステルを挙げることができ、これらのうち、1,4−シクロヘキサンジメタノールとアジピン酸とを反応して得られるポリエステルが最も好ましい。
【0316】
上記化合物の添加量は、トナー全体に対し1質量%〜30質量%、好ましくは2質量%〜20質量%、更に好ましくは3質量%〜15質量%である。
【0317】
(現像剤)
本発明に用いられるトナーは、二成分現像剤として用いられる。すなわち、トナーとキャリアとを混合した二成分現像剤である。この場合、キャリアの磁性粒子として、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を用いることが出来る。特にフェライト粒子が好ましい。上記磁性粒子は、その体積平均粒径としては15μm〜100μm、より好ましくは25μm〜80μmのものがよい。
【0318】
キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0319】
キャリアは、磁性粒子が更に樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
【0320】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、文中「部」とは「質量部」を表す。
【0321】
実施例1
《トナー用樹脂粒子の作製》
(樹脂粒子(1HML)の作製)
(1)核粒子の調製(第一段重合):樹脂粒子(1H)
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5000mlのセパラブルフラスコにポリビニルアルコール30.0gをイオン交換水3010gに溶解させた界面活性剤溶液(水系媒体)を仕込み、窒素気流下230rpmの攪拌速度で攪拌しながら、フラスコ内の温度を80℃に昇温させた。
【0322】
この界面活性剤溶液に、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)9.2gをイオン交換水200gに溶解させた開始剤溶液を添加し、温度を75℃とした後、スチレン70.1g、n−ブチルアクリレート19.9g、メタクリル酸10.9gからなる単量体混合液を1時間かけて滴下し、この系を75℃にて2時間にわたり加熱、攪拌することにより重合(第一段重合)を行い、樹脂粒子(高分子量樹脂からなる樹脂粒子の分散液)を調製した。これを「樹脂粒子(1H)」とする。
【0323】
(2)中間層の形成(第二段重合);樹脂粒子(1HM)
攪拌装置を取り付けたフラスコ内において、スチレン105.6g、n−ブチルアクリレート30.0g、メタクリル酸6.2g、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル5.6gからなる単量体混合液に、結晶性物質として、上記19)で表される化合物(以下、「例示化合物(19)」という。)98.0gを添加し、90℃に加温し溶解させて単量体溶液を調製した。
【0324】
一方、アニオン系界面活性剤(ドデシルスルホン酸ナトリウム)1.6gをイオン交換水2700mlに溶解させた界面活性剤溶液を98℃に加熱し、この界面活性剤溶液に、核粒子の分散液である前記樹脂粒子(1H)を固形分換算で28g添加した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)により、前記例示化合物(19)の単量体溶液を8時間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液(乳化液)を調製した。
【0325】
次いで、この分散液(乳化液)に、重合開始剤(KPS)5.1gをイオン交換水240mlに溶解させた開始剤溶液と、イオン交換水750mlとを添加し、この系を98℃にて12時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第二段重合)を行い、樹脂粒子(高分子量樹脂からなる樹脂粒子の表面が中間分子量樹脂により被覆された構造の複合樹脂粒子の分散液)を得た。これを「樹脂粒子(1HM)」とする。
【0326】
(3)外層の形成(第三段重合):樹脂粒子(1HML)
上記の様にして得られた樹脂粒子(1HM)に、重合開始剤(KPS)7.4gをイオン交換水200mlに溶解させた開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下に、スチレン300g、n−ブチルアクリレート95g、メタクリル酸15.3g、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル10.4gからなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第三段重合)を行った後、28℃まで冷却し樹脂粒子(高分子量樹脂からなる中心部と、中間分子量樹脂からなる中間層と、低分子量樹脂からなる外層とを有し、前記中間層に例示化合物(19)が含有されている複合樹脂粒子の分散液)を得た。この樹脂粒子を「樹脂粒子(1HML)」とする。
【0327】
この樹脂粒子(1HML)を構成する複合樹脂粒子は、138,000、80,000および13,000にピーク分子量を有するものであり、また、この複合樹脂粒子の重量平均粒径は142nmであった。
【0328】
(樹脂粒子(2HML)の調製)
ポリビニルアルコール30gを54gとしたこと以外は、樹脂粒子(1HML)と同様にして、樹脂粒子(高分子量樹脂からなる中心部と、中間分子量樹脂からなる中間層と、低分子量樹脂からなる外層とを有する複合樹脂粒子の分散液)を得た。この樹脂粒子を「樹脂粒子(2HML)」とする。
【0329】
この樹脂粒子(2HML)を構成する複合樹脂粒子は、188,000、78,000および11,000にピーク分子量を有するものであり、また、この複合樹脂粒子の重量平均粒径は112nmであった。
【0330】
(樹脂粒子(3HML)の調製)
ポリビニルアルコール30gを22gとしたこと以外は、樹脂粒子(1HML)と同様にして、樹脂粒子(高分子量樹脂からなる中心部と、中間分子量樹脂からなる中間層と、低分子量樹脂からなる外層とを有する複合樹脂粒子の分散液)を得た。この樹脂粒子を「樹脂粒子(3HML)」とする。
【0331】
この樹脂粒子(3HML)を構成する複合樹脂粒子は、111,000、54,000および17,000にピーク分子量を有するものであり、また、この複合樹脂粒子の重量平均粒径は164nmであった。
【0332】
(樹脂粒子(4HML)の調製)
ポリビニルアルコール30gの代わりにポリビニルピロリドン40gを使用したこと以外は、樹脂粒子(1HML)と同様にして、樹脂粒子(高分子量樹脂からなる中心部と、中間分子量樹脂からなる中間層と、低分子量樹脂からなる外層とを有する複合樹脂粒子の分散液)を得た。この樹脂粒子を「樹脂粒子(4HML)」とする。
【0333】
この樹脂粒子(4HML)を構成する複合樹脂粒子は、171,000、67,000および16,000にピーク分子量を有するものであり、また、この複合樹脂粒子の重量平均粒径は127nmであった。
【0334】
(樹脂粒子(5HML)の調製)
ポリビニルアルコール30gの代わりにポリビニルピロリドンを20g使用したこと以外は、樹脂粒子(1HML)と同様にして、樹脂粒子(高分子量樹脂からなる中心部と、中間分子量樹脂からなる中間層と、低分子量樹脂からなる外層とを有する複合樹脂粒子の分散液)を得た。この樹脂粒子を「樹脂粒子(5HML)」とする。
【0335】
この樹脂粒子(5HML)を構成する複合樹脂粒子は、162,000、82,000および18,000にピーク分子量を有するものであり、また、この複合樹脂粒子の重量平均粒径は82nmであった。
【0336】
(比較用樹脂粒子(比較1HML)の調製)
ポリビニルアルコール30gの代わりにアニオン系界面活性剤(ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム:DBS)7.08gを使用したこと以外は、樹脂粒子(1HML)と同様にして、樹脂粒子(高分子量樹脂からなる中心部と、中間分子量樹脂からなる中間層と、低分子量樹脂からなる外層とを有する複合樹脂粒子の分散液)を得た。この樹脂粒子を「比較用樹脂粒子(比較1HML)」とする。
【0337】
この樹脂粒子(比較1HML)を構成する複合樹脂粒子は、121,000、74,000および15,000にピーク分子量を有するものであり、また、この複合樹脂粒子の重量平均粒径は124nmであった。
【0338】
(比較用樹脂粒子(比較2HML)の調製)
ポリビニルアルコール30gの代わりにポリビニルアルコール8gおよびアニオン系界面活性剤(ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム:DBS)0.8gを使用したこと以外は、樹脂粒子(1HML)と同様にして、樹脂粒子(高分子量樹脂からなる中心部と、中間分子量樹脂からなる中間層と、低分子量樹脂からなる外層とを有する複合樹脂粒子の分散液)を得た。この樹脂粒子を「比較用樹脂粒子(比較2HML)」とする。
【0339】
この樹脂粒子(比較2HML)を構成する複合樹脂粒子は、121,000、74,000および15,000にピーク分子量を有するものであり、また、この複合樹脂粒子の重量平均粒径は124nmであった。
【0340】
(比較用樹脂粒子(比較3HML)の調製)
ポリビニルアルコール30gの代わりにポリビニルアルコール8gおよびアニオン系界面活性剤(ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム:DBS)1.6gを使用したこと以外は、樹脂粒子(1HML)と同様にして、樹脂粒子(高分子量樹脂からなる中心部と、中間分子量樹脂からなる中間層と、低分子量樹脂からなる外層とを有する複合樹脂粒子の分散液)を得た。この樹脂粒子を「比較用樹脂粒子(比較3HML)」とする。
【0341】
この樹脂粒子(比較3HML)を構成する複合樹脂粒子は、140,000、82,000および19,000にピーク分子量を有するものであり、また、この複合樹脂粒子の重量平均粒径は112nmであった。
【0342】
(トナー1〜5及び比較用トナー1〜3の製造)
アニオン系界面活性剤(101)C10H21(OCH2CH2)2OSO3Na59.0gをイオン交換水1600mlに攪拌溶解し、この溶液を攪拌しながら、カーボンブラック「リーガル330」(キャボット社製)420.0gを徐々に添加し、次いで「クレアミックス」(エム・テクニック(株)製)を用いて分散処理することにより、着色剤粒子の分散液(以下「着色剤分散液1」という。)を調製した。この着色剤分散液における着色剤粒子の粒子径を、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定したところ、重量平均粒径で89nmであった。
【0343】
樹脂粒子(1HML)420.7g(固形分換算)と、イオン交換水900gと、着色剤分散液1 166gとを、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、攪拌装置を取り付けた反応容器(四つ口フラスコ)に入れ攪拌した。容器内の温度を30℃に調製した後、この溶液に5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを8〜10.0に調製した。
【0344】
次いで、塩化アルミニウム12.1gをイオン交換水1000mlに溶解した水溶液を、攪拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、この系を6〜60分間かけて90℃まで昇温し、会合粒子の生成を行った。その状態で、「コールターカウンター TA−II」にて会合粒子の粒径を測定し、個数平均粒径が2〜7μmになった時点で、塩化ナトリウム80.4gをイオン交換水1000mlに溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させ、更に熟成処理として液温度98℃にて12時間にわたり加熱攪拌することにより、樹脂粒子粒子の融着継続させた(熟成工程)。
【0345】
その後、30℃まで冷却し、塩酸を添加してpHを2.0に調整し、攪拌を停止した。生成した会合粒子を濾過し、45℃のイオン交換水で繰り返し洗浄を行い、その後、40℃の温風で乾燥したのち、疎水性シリカ0.8質量部、疎水性酸化チタン1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサーの回転翼の周速を30m/sに設定し25分間混合しトナー1を得た。
【0346】
トナー1と同様に表1の組み合わせで樹脂粒子を選択し、熟成処理工程の温度、熟成時間、攪拌強度を制御することにより、トナーの形状および形状係数の変動係数を制御し、更に、液中分級により、トナー粒径および粒度分布の変動係数を調整して、表1に示す形状特性、粒度分布特性、及び表2に示すセル構造の特性を有するトナー1〜5および比較用トナー1〜3を得た。なお、表2では現像剤1〜5、比較用現像剤1〜3と記載されているが、これは以下の外部添加剤の添加処理をトナー1〜5、比較用トナー1〜3に行って得られたものである。
【0347】
【表1】
【0348】
【表2】
【0349】
以上の様にして得られたトナー1〜5及び比較用トナー1〜3の各々に、疎水性シリカ0.8質量部、疎水性酸化チタン1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサーの回転翼の周速を30m/sに設定し25分間混合した。なお、これらのトナーについて、外部添加剤の添加によってその形状や粒径は変化しないものである。
【0350】
評価機として、図1に記載のような画像形成装置構成を有するデジタル複写機(コロナ帯電、レーザ露光、二成分反転現像、静電転写、クリーニングレスシステムを有する)にて評価した。上記デジタル複写機には、下記に記載の感光体を搭載し、次いで、後述する帯電、露光、現像条件に設定し評価を行った。なお、帯電器〜現像器間のエアーをサンプリングし、ガステック社製の検知管式気体測定器を用いてオゾン濃度を測定し、5.5ppmのオゾン濃度であった。
【0351】
《感光体1の作製》
下記のように感光体1を作製した。
【0352】
(中間層塗布液の調製)
ポリアミド樹脂(アミランCM−8000:東レ社製) 60g
メタノール 1600ml
1−ブタノール 400ml
上記の材料を混合、溶解して中間層塗布液を調製した。この塗布液を円筒状アルミニウム基体上に浸漬塗布法で塗布し、膜厚0.3μmの中間層を形成した。
【0353】
(電荷発生層塗布液の調製)
チタニルフタロシアニン 60g
シリコーン樹脂溶液(KR5240、15%キシレン−ブタノール溶液
:信越化学社製) 700g
2−ブタノン 2000ml
上記の材料を混合し、サンドミルを用いて10時間分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を前記中間層の上に浸漬塗布法で塗布し、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0354】
(電荷輸送層塗布液の調製)
電荷輸送物質(4−メトキシ−4′−(4−メチル−α−フェニルスチリル)
トリフェニルアミン) 200g
ビスフェノールZ型ポリカーボネート(ユーピロンZ300
:三菱ガス化学社製) 300g
1,2−ジクロロエタン 2000ml
上記の材料を混合、溶解して電荷輸送層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法で塗布し、膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
【0355】
(樹脂層塗布液の調製)
メチルシロキサン単位80モル%、メチル−フェニルシロキサン単位20モル%からなるポリシロキサン樹脂10質量部にモレキュラーシーブ4Aを添加し、15時間静置し脱水処理した。この樹脂をトルエン10質量部に溶解し、これにメチルトリメトキシシラン5質量部、ジブチル錫アセテート0.2質量部を加え均一な溶液を調製した。この溶液にジヒドロキシメチルトリフェニルアミン(例示化合物T−1)6質量部、ヒンダードアミン(例示化合物2−1)0.3質量部を加えて混合し、樹脂層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷輸送層上に塗布した後、120℃、1時間の加熱硬化を行い、乾燥膜厚2μmの樹脂層の感光体1を作製した。
【0356】
評価は、市販のデジタル複写機Sitios7035(コニカ社製)に図1の磁気ブラシ帯電装置を取り付けた改造機に上記感光体を搭載し、上記で得られた現像剤1〜5、比較用の現像剤1〜3の各々について、高温高湿(HH)環境(30℃、80%RH)下、反転現像によりA4紙を用いて、各トナーに対して50万枚の文字プリント試験を行った。なお、白地部の感光体電位を−750V、現像バイアスを−550Vとした。
【0357】
1μm以下の微粉量、カブリ、トナー飛散発生枚数、現像ローラへの融着発生枚数、クリーニング不良発生枚数、画像の定着性について以下の評価基準にて評価を行った。
【0358】
《1μm以下の微粉量》
現像ローラ上のトナーをサンプリングし、コールターマルチサイザーにアパーチャー径1μmのアパーチャーを取り付け、1μm以下の微粉について個数基準の比率を測定した。測定は、プリント開始前の「初期」と20万プリント時の2回行った。
【0359】
《カブリ》
マクベス濃度計を用いて非画像部白地部分の未使用転写シートに対する相対濃度を測定した。
【0360】
《トナー飛散発生枚数》
転写極に溜まった飛散トナー汚れによる転写不良がハーフートーン画像に現れ始めた枚数で評価した。
【0361】
《現像装置によるクリーニング不良》
現像装置が感光体上の転写残トナーをクリーニング出来ずに、前(過去のコピー履歴のこと)の画像が重なって印字されはじめた枚数によって評価した。
【0362】
《現像ローラへの融着発生枚数》
現像ローラ表面を1万プリント毎に観察しながら、現像ローラの融着によるハーフトーンすじ状汚れが発生した枚数で評価した。
【0363】
《定着性:定着可能温度領域の評価》
熱ロール温度を130℃〜240℃まで10℃刻みで変更しつつ定着画像を作製した。なお、定着画像の出力に当たっては、A4サイズの普通紙(坪量64g/m2)を使用した。
【0364】
得られた定着画像の定着強度を、「電子写真技術の基礎と応用:電子写真学会編」第9章1.4項に記載のメンディングテープ剥離法に準じた方法を用いて定着率により評価した。具体的には、トナー付着量が0.6mg/cm2である2.54cm角のベタ定着画像を作製した後、スコッチメンディングテープ(住友3M社製)で剥離する前後の画像濃度を測定し、画像濃度の残存率を定着率として求めた。画像濃度の測定にはマクベス反射濃度計RD−918を使用し、定着率が95%以上得られた定着温度を定着可能温度とする。
【0365】
ここで、定着可能温度領域の評価は下記のようにランク評価した。
◎:100℃以上の温度領域がある場合(優良)
○:70℃〜100℃未満の温度領域がある場合(良好)
△:40℃〜70℃未満の温度領域がある場合(実用可能)
×:40℃未満の温度領域しかない場合(実用不可)
《帯電磁性粒子(帯電キャリア)の汚染》
画像形成50万枚時の帯電磁性粒子3gを採取し、アセトン100ml中にて攪拌、混合した後、波長500nmの透過率を測定した。実用可能なのは65%以上である。
【0366】
《帯電装置の寿命》
白地部の電位が−600Vまで低下し、画像上白地部にトナーがかぶった状態になる枚数を評価した。市場のニーズは、50万枚以上である。
【0367】
上記評価結果を表3に示す。
【0368】
【表3】
【0369】
上記表3の結果から明らかな様に、本発明の実施例である現像剤1〜5では、1μm以下の微粉量、カブリ、トナー飛散発生枚数、現像ローラへの融着発生枚数、現像装置によるクリーニング不良発生枚数、画像の定着性、帯電性磁性粒子(帯電キャリア)の汚染、帯電装置の寿命等の全ての評価項目について良好な結果が得られた。これに対して比較用の現像剤1〜3はいずれも本発明に記載の効果が得られないことが明らかである。
【0370】
【発明の効果】
本発明によれば、セル構造を有するトナーが微粉を発生しないので、微粉による影響のない良好な画像を形成する画像形成装置の提供を可能にした。
【0371】
本発明では、セル構造を有するトナー粒子は破砕強度が高く、しかも加熱定着時に変形し易い性質を有することにより定着性が確保され、また、微粉増加によるクリーニングの発生も見られない。さらに、微粉による現像ローラへの融着やトナー飛散もなく、かぶりのない良好な画質のトナー画像を長期にわたり安定して得ることを可能にした。
【0372】
また、特に、表面硬度の硬い感光体を有する画像形成装置と組合せた画像形成技術は、感光体と帯電装置の双方の寿命を伸ばすとともに、多数枚にわたる画像形成を長期的に繰り返しても安定したトナー画像が形成されることが可能となり、より好ましい効果を奏することを見出した。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁気ブラシを用いた接触式の磁気ブラシ帯電装置を示す図である。
【図2】図1の帯電装置による交流バイアス電圧と帯電電位との関係を示す図である。
【図3】本発明に係るクリーナレスプロセスを有する画像形成装置の概略図である。
【図4】本発明に係るクリーニング器を有する画像形成装置の概略図である。
【図5】セル構造を有するトナー粒子を示す模式図である。
【図6】プラズマオゾン処理装置の構成概略側面図である。
【図7】角がないトナー粒子の説明図である。
【符号の説明】
a セル
b セル壁
c 着色剤粒子
d 結晶性物質
1 円筒状チャンバー
2 試料
3 ガス用プラズマ切替ユニット
4 オゾンガス用プラズマ発生ユニット
5 アルゴンガス用プラズマ発生ユニット
6 ベンチレーション
7 酸素ガスボンベ
8 アルゴンガスボンベ
9 真空ポンプ
10 感光体ドラム
20 磁気ブラシ帯電装置
20a 帯電スリーブ
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像形成装置及び前記装置を使用する画像形成方法に関し、更に詳しくは、磁気ブラシによる像形成体上への帯電を経て電子写真画像形成を行う画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方式による画像形成技術において、像形成体である感光体上への帯電技術として、磁石体を内包した円筒状の搬送担持体上に磁性粒子を吸着させて磁気ブラシを形成し、この磁気ブラシを像形成体表面に摺擦させて帯電を行うものが、特許文献1〜3に開示されている。
【0003】
磁気ブラシを使用する帯電方式は、他の帯電方式よりもオゾン発生量や窒素酸化物の発生量が少ないことや、像形成体表面を均一に帯電することの可能なこと、さらにはローラ帯電よりも像形成体の寿命が長いといったメリットを有している。
【0004】
磁気ブラシ帯電は、前述の様に導電性の磁性体粒子より電荷を感光体に注入するタイプであるため、オゾンの発生が少ないが、長期にわたる使用によりブラシ表面に酸化膜が発生したり、あるいは転写残トナーがブラシ表面に融着することにより、磁性体粒子の抵抗が上昇し、剥離放電などによるオゾンの発生が徐々に高まる。
【0005】
一般に、帯電装置の磁気ブラシは、現像装置における磁気ブラシとは異なり、本来トナーを含有させるものではないため、磁性体粒子同士に作用する強固な磁気拘束力により、非常に強い力で帯電装置に保持されている。この様な環境に転写残トナーが混入すると、磁性体粒子間から非常に高いせん断力を受けてトナーの破砕と融着が進行する。
【0006】
また、トナーが残存した状態の像形成体を磁気ブラシ帯電装置に通過させると局所的に高いオゾン濃度となる。この様に像形成体上の残存トナーにより、画像形成装置内に局所的に高いオゾン濃度領域が発生し、この様な高濃度のオゾンの影響でトナーは劣化、分解してトナー微粉を発生させる原因となる。また、前述した様に、磁気ブラシ帯電装置を通過する際に大きなせん断力を受けるために、オゾンで劣化したトナーは分解していっそうのトナー微粉を発生する。
【0007】
磁気ブラシによる帯電方式は、他の帯電方式と比較するとオゾンの発生量の非常に少ないものであるが、画像形成を繰り返すことにより発生するオゾンの量は無視できるものではない。そして、前述した様に磁気ブラシは転写残トナーを破砕する傾向を有するので、オゾン劣化に起因する微粉発生を促進させる問題を有している。
【0008】
また、架橋構造を有するシロキサン系樹脂を有する樹脂層からなる感光体を使用する磁気ブラシ帯電方式の画像形成技術が、特許文献4に記されているが微粉の問題を課題として残すものであった。
【0009】
この様にして画像形成装置内で発生したトナー微粉は、帯電キャリアに融着してキャリアの寿命を低減させるとともに画像不良を誘発する問題を有している。
【0010】
また、感光体上に残存する微粉は除去しにくく、クリーニング不良の原因となり、トナー画像上に白筋等の画像欠陥を発生させる。
【0011】
さらに、現像装置内の現像ローラや現像キャリアにまで融着するので、現像キャリアの帯電能が低下して、トナー飛散やかぶりの原因となる。
【0012】
この様に、磁気ブラシ帯電方式を有する画像形成技術では、トナー微粉に起因する上記問題により、良好なトナー画像を長期にわたり安定して形成することの困難なものであった。
【0013】
【特許文献1】
特開昭59−133569号公報
【0014】
【特許文献2】
特開平4−21873号公報
【0015】
【特許文献3】
特開平4−116674号公報
【0016】
【特許文献4】
特開2001−92169号公報
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の第1の目的は、磁気ブラシにより像形成体の帯電を行う画像形成装置において、磁気ブラシの影響によりトナー微粉が発生せず、磁気ブラシを汚染することのない、画像形成装置、及び該装置を用いた画像形成方法を提供することである。
【0018】
本発明の第2の目的は、磁気ブラシがトナー微粉で汚染されることのない画像形成装置において、磁気ブラシの影響によるトナー微粉の発生がなく画像上の白スジ欠陥が低減し、トナー飛散が抑制される画像形成装置、及び該装置を用いた画像形成方法を提供することである。
【0019】
本発明の第3の目的は、磁気ブラシにより像形成体の帯電を行い、かつクリーナレスシステムに対応した現像手段を有する画像形成装置において、トナー微粉の回収により、現像剤中のキャリア汚染をなくして現像剤寿命を向上させる画像形成装置、及び該装置を用いた画像形成方法を提供することである。
【0020】
本発明の第4の目的は、磁気ブラシにより像形成体の帯電を行い、かつ高耐久性の像形成体を有する画像形成装置において、磁気ブラシやクリーニングブレード等の摺擦による衝撃でトナーが劣化することなくトナー微粉の発生しない画像形成装置及び該装置を用いた画像形成方法を提供することである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記のいずれか1項によって達成される。
【0022】
〔1〕 少なくとも帯電、露光、現像、転写の各手段を有し、かつ感光体上にトナー像を形成した後、転写材に転写する画像形成装置において、前記帯電手段が、感光体表面に接触配置された磁性粒子より形成される磁気ブラシであり、前記トナー像を形成するトナー粒子を構成する樹脂が、セル構造を有するもので、該セルのフェレ水平径の平均値が20〜200nmであり、かつ該フェレ水平径の変動係数が10〜35%であることを特徴とする画像形成装置。
【0023】
〔2〕 前記現像手段が、前記転写手段により前記トナー像を転写材に転写した後の前記感光体上に残存したトナーを回収するクリーニング手段を兼ねるものであることを特徴とする前記〔1〕に記載の画像形成装置。
【0024】
〔3〕 前記感光体が、電荷輸送能を有する構造単位を有し、かつ架橋構造を有するシロキサン系樹脂を含有する樹脂層を有することを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の画像形成装置。
【0025】
〔4〕 前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の画像形成装置を用いることを特徴とする画像形成方法。
【0026】
本発明では、上述のトナーが、オゾン暴露しても破砕されることがなく、トナー微粉を発生しないので、微粉による影響のない良好な画像形成の可能な技術を見出した。すなわち、セル構造を有するトナー粒子は破砕強度が高い割には加熱定着時には変形し易い性質を有するので定着性が確保され、また、微粉増加によるクリーニングの発生も見られない。さらに、微粉による現像ローラへの融着やトナー飛散が少なく、かぶりのない画像が長期にわたり安定して得られる。
【0027】
また、上記〔3〕に記載の構成により、表面硬度の硬い感光体を有する画像形成装置と組合せた画像形成技術は、感光体と帯電装置の双方の寿命を伸ばすとともに、多数枚にわたる画像形成を長期的に繰り返しても安定したトナー画像が形成されることが可能となり、より好ましい効果を奏することを見出した。
【0028】
【発明の実施の形態】
最初に、本発明に係る帯電手段である磁気ブラシを用いた接触式の磁気ブラシ帯電装置を説明する。図1は本発明に係る磁気ブラシを用いた接触式の磁気ブラシ帯電装置を示す図で、図2は図1の帯電装置による交流バイアス電圧と帯電電位との関係を示す。
【0029】
まず、帯電用磁気ブラシを形成する磁性粒子について説明する。
一般に帯電用磁気ブラシを形成する磁性粒子の平均粒径(重量平均)が大きいと、(イ)帯電用磁性粒子搬送体(搬送担体)上に形成される磁気ブラシの穂の状態が粗いために、電界により振動を与えながら帯電しても、磁気ブラシにムラが現れ易く、帯電ムラの問題が起こる。この問題を解消するには、磁性粒子の平均粒径を小さくすればよく、実験の結果、平均粒径が200μm以下でその効果が現れ初め、特に150μm以下になると、実質的に(イ)の問題が生じなくなる。しかし、粒子が細か過ぎると帯電時感光体ドラム10面に付着するようになったり、飛散し易くなったりする。これらの現象は、粒子に作用する磁界の強さ、それによる粒子の磁化の強さにも関係するが、一般的には、粒子の平均粒径が30μm以下に顕著に現れるようになる。なお、磁化の強さは30〜100emu/gのものが好ましく用いられる。
【0030】
以上から、磁性粒子の粒径は平均粒径(重量平均)が150μm以下、特に好ましくは150μm以下30μm以上であることが好ましい。
【0031】
このような磁性粒子は、磁性体として前述した従来の二成分現像剤の磁性キャリヤ粒子におけると同様の、鉄、クロム、ニッケル、コバルト等の金属、あるいはそれらの化合物や合金、例えば四三酸化鉄、γ−酸化第二鉄、二酸化クロム、酸化マンガン、フェライト、マンガン−銅系合金、と云った強磁性体の粒子、又はそれら磁性体粒子の表面をスチレン系樹脂、ビニル系樹脂、エチレン系樹脂、ロジン変性樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂で被覆するか、あるいは、磁性体微粒子を分散して含有した樹脂で作るかして得られた粒子を従来公知の平均粒径選別手段で粒径選別することによって得られる。
【0032】
なお、磁性粒子を球状に形成することは、搬送担体に形成される粒子層が均一となり、また搬送担体に高いバイアス電圧を均一に印加することが可能となると云う効果も与える。即ち、磁性粒子が球形化されていることは、(1)一般に、磁性粒子は長軸方向に磁化吸着され易いが、球形化によってその方向性がなくなり、従って、磁性粒子層が均一に形成され、局所的に抵抗の低い領域や層厚のムラの発生を防止する、(2)磁性粒子の高抵抗化と共に、従来の粒子に見られるようなエッジ部が無くなって、エッジ部への電界の集中が起こらなくなり、その結果、帯電用磁性粒子の搬送担体に高いバイアス電圧を印加しても、感光体ドラム10面に均一に放電して帯電ムラが起こらない、という効果を与える。
【0033】
以上のような効果を奏する球形粒子には磁性粒子の抵抗率が106Ω・cm以上1010Ω・cm以下であるように導電性の磁性粒子を形成したものが好ましい。この抵抗率は、粒子を0.50cm2の断面積を有する容器に入れてタッピングした後、詰められた粒子上に1kg/cm2の荷重を掛け、荷重と底面電極との間に1000V/cmの電界が生ずる電圧を印加したときの電流値を読み取ることで得られる値であり、この抵抗率が低いと、搬送担体にバイアス電圧を印加した場合に、磁性粒子に電荷が注入されて、感光体ドラム10面に磁性粒子が付着し易くなったり、あるいはバイアス電圧による感光体ドラム10の絶縁破壊が起こり易くなったりする。また、抵抗率が高いと電荷注入が行われず帯電が行われない。
【0034】
さらに、接触式の磁気ブラシ帯電装置20に用いられる磁性粒子は、それにより構成される磁気ブラシが振動電界により軽快に動き、しかも外部飛散が起きないように、比重の小さく、かつ適度の最大磁化を有するものが望ましい。具体的には真比重が6以下で最大磁化が30〜100emu/gのもの、特に40〜80emu/gを用いると好結果が得られることが判明した。
【0035】
以上を総合して、磁性粒子は、少なくとも長軸と短軸の比が3倍以下であるように球形化されており、針状部やエッジ部等の突起が無く、抵抗率は好ましくは106〜1010Ω・cmの範囲にあることが望まれる。そして、このような球状の磁性粒子は、磁性体粒子にできるだけ球形のものを選ぶこと、磁性体微粒子分散系の粒子では、できるだけ磁性体の微粒子を用いて、分散樹脂粒子形成後に球形化処理を施すこと、あるいはスプレードライの方法によって分散樹脂粒子を形成すること等によって製造される。
【0036】
図1又は図2によれば、帯電装置としての磁気ブラシ帯電装置20は回転する感光体ドラム10と対向し、感光体ドラム10との近接部(帯電部T)において同方向(反時計方向)に回転される帯電用磁性粒子搬送体としての、例えばアルミ材やステンレス材を用いた円筒状の帯電スリーブ20aと、該帯電スリーブ20aの内部に設けられるN、S極よりなる磁石体21と、該磁石体21により帯電スリーブ20aの外周面上に形成され感光体ドラム10を帯電する磁性粒子からなる磁気ブラシと、磁石体21のN−N磁極部において該帯電スリーブ20a上の磁気ブラシを掻取るスクレーパ23と、磁気ブラシ帯電装置20内の磁性粒子を撹拌或いは磁性粒子供給時に使用済み磁性粒子を磁気ブラシ帯電装置20の排出口25より溢れさせて排出する撹拌スクリュウ24と、磁気ブラシの穂立ち規制板26とにより構成される。帯電スリーブ20aは磁石体21に対し回動可能になっていて、感光体ドラム10との対向位置で感光体ドラム10の移動方向と同方向(反時計方向)に0.1〜1.0倍の周速度で回転させられるのが好ましい。また帯電スリーブ20aは、帯電バイアス電圧を印加し得る導電性の搬送担体が用いられるが、特に、表面に粒子層が形成される導電性の帯電スリーブ20aの内部に複数の磁極を有する磁石体21が設けられている構造のものが好ましく用いられる。このような搬送担体においては、磁石体21との相対的な回転によって、導電性の帯電スリーブ20aの表面に形成される磁性粒子層が波状に起伏して移動するようになるから、新しい磁性粒子が次々と供給され、帯電スリーブ20a表面の磁性粒子層に多少の層厚の不均一があっても、その影響は上記波状の起伏によって実際上問題とならないように十分カバーされる。帯電スリーブ20aの表面は磁性粒子の安定な均一搬送のために表面の平均粗さを5.0〜30μmとすることが好ましい、平滑であると搬送は十分に行えなく、粗すぎると表面の凸部から過電流が流れ、どちらにしても帯電ムラが生じ易い。上記の表面粗さとするにはサンドブラスト処理が好ましく用いられる。また、帯電スリーブ20aの外径は5.0〜20mmが好ましい。これにより、帯電に必要な接触領域を確保する。接触領域が必要以上に大きいと帯電電流が過大となるし、小さいと帯電ムラが生じ易い。また上記のように小径とした場合、遠心力により磁性粒子が飛散あるいは感光体ドラム10に付着し易いために、帯電スリーブ20aの線速度は感光体ドラム10の移動速度と殆ど同じか、それよりも遅いことが好ましい。
【0037】
また、帯電スリーブ20a上に形成する磁性粒子層の厚さは、規制手段によって十分に掻き落されて均一な層となる厚さであることが好ましい。帯電領域において帯電スリーブ20aの表面上の磁性粒子の存在量が多すぎると磁性粒子の振動が十分に行われず感光体の摩耗や帯電ムラを起こすとともに過電流が流れ易く、帯電スリーブ20aの駆動トルクが大きくなるという欠点がある。反対に磁性粒子の帯電領域における帯電スリーブ20a上の存在量が少な過ぎると感光体ドラム10への接触に不完全な部分を生じ磁性粒子の感光体ドラム10上への付着や帯電ムラを起こすことになる。実験を重ねた結果、帯電領域における磁性粒子の好ましい付着量は100〜400mg/cm2であり、特に好ましくは200〜300mg/cm2であることが判明している。なお、この付着量は、磁気ブラシの帯電領域における平均値である。
【0038】
帯電装置としての磁気ブラシ帯電装置20には、直流(DC)バイアスE3に必要により交流(AC)バイアスAC3が重畳される帯電バイアス、例えば直流バイアスE3としてトナーと同極性(本実施形態においてはマイナス極性)の−100〜−500Vが、また交流バイアスAC3として周波数1〜5kHz、電圧300〜500VP−Pの帯電バイアスが印加される帯電スリーブ20aにより、感光体ドラム10の周面が接触、摺擦されて感光体ドラム10が帯電される。帯電スリーブ20aと感光体ドラム10との間には前記交流バイアスAC3の電圧印加による振動電界が形成されているので、磁気ブラシを経て感光体層上への電荷の注入が円滑に行われて一様に高速な帯電が行われる。
【0039】
感光体ドラム10を帯電した帯電スリーブ20a上の磁気ブラシは、磁石体21に設けられるN−N磁極部において、スクレーパ23により帯電スリーブ20a上より落下され帯電スリーブ20aとの近接部において帯電スリーブ20aと逆方向(反時計方向)に回転する撹拌スクリュウ24により撹拌された後、再度磁気ブラシ形成され帯電部Tに搬送される。
【0040】
図2に示すように、帯電バイアスの交流バイアスAC3のピーク・ピーク電圧(VP−P)と帯電電位との関係は、ピーク・ピーク電圧VP−Pが大きくなるに従い帯電電位が大きくなり、帯電電位はピーク・ピーク電圧が一定のV1で帯電バイアスの直流バイアスE3の値VSとほぼ等しい値で飽和し、それ以上ピーク・ピーク電圧VP−Pを大きくしても帯電電位は殆ど変化しないという特性がある。磁性粒子の電気抵抗は環境条件によっても変化するが、また使用するに従い磁性粒子の表面にトナーが融着するなどして電気抵抗は高くなる。このため、特性曲線は使用初期の新しい磁性粒子の場合は実線で示す(a)のように左側に、長期間使用した磁性粒子の場合は前記特性曲線は点線で示す(b)のように右側に位置することになる。
【0041】
本発明の画像形成装置の接触方式による帯電装置では、装着電源のon時或いはプリント開始前に帯電電位に相当する直流バイアスE3の電圧値を所定値とし、交流バイアスAC3のピーク・ピーク電圧(VP−P)を低い値から次第に大きくした帯電バイアスを印加してその時変化する感光体ドラム10の帯電電位を電位計ESによって検出する。検出される帯電電位はA/D変換器によってディジタル値に変換されたのち制御部(CPU)に入力される。制御部ではこの帯電電位が所定値VSの飽和点に達した時のVP−Pの値を適正バイアス値V1と規定してプリント動作とする。
【0042】
即ち、プリントが行われる時交流バイアスAC3を低い値から次第に大きくして(スイープして)交流バイアスAC3のVP−Pの値V1を求め、制御部からバイアス信号が出力される。この制御信号はD/A変換器によってアナログ値に変換された後交流バイアスAC3に送出され、交流バイアスAC3は決定されたピーク・ピーク電圧V1を出力する。その際のピーク・ピーク電圧V1の値とメモリに格納された磁性粒子の劣化により交換すべき規定値V2を読み出しこれと比較する。磁性粒子はトナーの混入により抵抗が増加するので、プリントの使用に従い適正バイアス値V1が増加する。これに伴い印加するVP−Pが増加し帯電不能な状態が生じることになる。測定した電圧値が帯電不能を示す規定値V2より小さい間は画像形成を続けるが、規定値V2より大きくなると、制御部より画像形成動作停止信号が送出され画像形成動作を停止し、不図示の操作部の表示部に帯電装置異常の表示を行う。この表示に基づき、帯電用の磁性粒子の供給ボトル27を磁気ブラシ帯電装置20にセットし、供給ボトル27底面の不図示の開閉蓋を開口して磁性粒子を磁気ブラシ帯電装置20に落下、供給する。上記において感光体ドラム10の電位の測定に電位計ESを用いたが、バイアス電源に直流電流計を繋いで用いて交流バイアスVP−Pを変化させ、この電流値が飽和点に達した時のVP−Pを適正バイアス値V1と設定し、規定値V2との比較を行いV1を越えた時磁性粒子の供給を行うようにしてもよい。
【0043】
またメンテナンス時或いは例えば5万プリント等の定期時に、帯電用の磁性粒子の交換が行われる。メモリに記憶されたメンテナンスプリント毎や例えば5万プリント毎の定期時に、制御部を通して交換信号が出され、不図示の駆動モータの駆動により予めセットされた帯電用の磁性粒子の供給ボトル27の供給ローラ28が回転され、供給ボトル27内の磁性粒子が磁気ブラシ帯電装置20内に全量が1回で落下される。供給後空の供給ボトル27を外し、新たな供給ボトル27をセットすることにより画像形成装置が作動状態となるように制御することも可能である。また、定期時に制御部より不図示の操作部に例えばランプの点滅等による供給信号を表示し、供給ボトル27を磁気ブラシ帯電装置20にセットし、供給ボトル27底面の不図示の開閉蓋を開口して磁性粒子を供給するようにしてもよい。
【0044】
落下された磁性粒子は回転される帯電スリーブ20aにより搬送され、スクレーパ23により帯電スリーブ20a表面より掻落とされて磁気ブラシ帯電装置20の底部に補給される。これに伴い、反時計方向に回転される撹拌スクリュウ24により磁気ブラシ帯電装置20内部に収納されている使用済みの磁性粒子が排出口25より溢れ出され、ダクトDBを通して共通の磁性粒子回収容器29に回収される。この際、供給ボトル27より磁気ブラシ帯電装置20内に供給される1回の磁性粒子供給量は磁気ブラシ帯電装置20内に収納される全磁性粒子に対して、20〜50質量%が好ましい。20質量%未満では新規に供給される磁性粒子量が少な過ぎ交換効果がなく良好な帯電が行われず、50質量%を越えると新規の磁性粒子が溢れ出てしまう。
【0045】
上記により、帯電装置内の磁性粒子が劣化されることなく良好な帯電性能が長期に維持される。
【0046】
次に、本発明に係る画像形成装置を図3、図4を用いて説明する。
図3は、本発明の一例であるクリーナレスプロセスを有する画像形成装置の概略図で、具体的には、転写式電子写真プロセス、磁気ブラシ帯電方式、二成分現像方式、クリーナーレスプロセスを有するレーザービームプリンタ等に用いられる。
【0047】
10は像形成体としての回転ドラム型の電子写真感光体(感光体ドラム)を表す。ここで、感光体ドラム10は負帯電性・電荷注入帯電性のOPC感光体(有機光導電性感光体)であり、矢示の時計方向に100mm/秒〜550mm/秒のプロセススピード(周速度)で回転駆動される。
【0048】
20は感光体ドラム10の表面を予め決められた極性・電位に一様に帯電処理する接触帯電装置としての磁気ブラシ帯電装置(帯電器)である。回転する感光体ドラム10の表面は、磁気ブラシ帯電装置20によりほぼ−700Vに電荷注入帯電方式で一様に帯電処理される。
【0049】
12は画像情報書き込み手段としてのレーザービームスキャナーである。このレーザービームスキャナー12はホスト装置(図示していない)から入力された画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザー光Lを射出して、回転している感光体ドラム10の一様帯電処理面をレーザー光走査露光する。このレーザー光走査露光により回転している感光体ドラム10の周面に目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。また、レーザービームスキャナーとしては、市販のものを入手し、使用することが出来る。
【0050】
30は、非磁性トナーと磁性キャリアとを混合した二成分現像剤を用いる現像装置(現像器)を表し、回転している感光体ドラム10の表面の静電潜像をトナー画像として反転現像を行う。更に詳しくは、現像装置30は固定磁石体32と、その外周を感光体ドラム10より速い周速で順方向に回転するスリーブ31から成る現像ローラと撹拌器33A及び33Bを有する構成が好ましい。
【0051】
上記で得られたトナー画像は、給紙カセット40から給紙ローラ41及びタイミングローラ42により給送された転写紙P上に、電圧が印加された転写ローラ13等の転写手段により転写される。トナー像を担持した転写紙Pは搬送手段80により定着装置に搬送されてトナー像が定着される。
【0052】
尚、前記画像形成装置において、正または負の放電開始電圧(VTH)の測定は、磁気ブラシ帯電装置20の直後に図示しない像形成体表面電位測定装置を配置して行なわれることが好ましい。即ち前記電位測定装置の電位計プローブを磁気ブラシ帯電装置20の直後に配置し、感光体ドラム10の表面電位を電位計で読み取り、検出電位を増幅器で増幅してレコーダーで記録する。測定に際しては、現像器、転写手段等を不作動とし、磁気ブラシ帯電部材(図示していない)に正又は負の逓増する直流電圧を印加し、回転する感光体ドラム10上に前記磁気ブラシ帯電部材による接触帯電を行ない、印加する正又は負の直流の昇圧に伴って感光体ドラム10上に初めて正又は負の表面電位が検出されるに到ったときの印加直流電圧値を前記感光体ドラム10に対する正又は負の放電開始電圧(VTH)とする。
【0053】
また、図3の画像形成装置は、クリーナーレスプロセスが採用されている。転写ローラ13等の転写手段(転写装置ともいう)により転写紙Pに転写されずに、回転している感光体ドラム10の表面に残ったトナーを除去する為には、専用のクリーニング手段(クリーニング装置ともいう)が配設されているのが通常である。
【0054】
上記記載の専用のクリーニング手段(クリーニング装置)を持たない本発明の画像形成装置においては、転写残トナーは引き続く感光体ドラム10の回転で、感光体ドラム10に接触している磁気ブラシ帯電装置20の位置に至り、感光体ドラム10に接触している磁気ブラシ帯電部材(磁石体)21の磁気ブラシ部(図示していない)に一時的に回収され、その回収トナーが再び感光体ドラム10の表面上に吐き出されて最終的に現像装置30に現像同時クリーニングで回収され、感光体ドラム10は繰り返して画像形成に供される。
【0055】
ここで、現像装置がクリーニング手段を兼ねるとは、転写後に感光体ドラム上に若干残留したトナーを現像バイアス(現像スリーブに印加する直流電圧と感光体の表面電位間の電位差)によって回収する方法である。
【0056】
上記記載の現像同時クリーニングにより、転写残トナーは以降の現像手段に回収されて次工程以後用いられるため、廃トナーをなくし、メンテナンスフリーとなり、且つ、クリーナーレスシステムになるため、スペース面での利点も際だって大きく、画像形成装置を大幅に小型化することが可能になる。
【0057】
図4は本発明の一例であるクリーニング器を有する画像形成装置の概略図である。図4において10は像担持体である感光体ドラム(感光体)で、有機感光層をドラム上に塗布し、その上に本発明の樹脂層を塗設した感光体で、接地されて時計方向に駆動回転される。20は磁気ブラシ帯電装置で、感光体ドラム10周面に対し一様な帯電を与えられる。この帯電装置20による帯電に先だって、前画像形成での感光体の履歴をなくすために発光ダイオード等を用いた露光部11による露光を行って感光体周面の除電をしてもよい。
【0058】
感光体への一様帯電ののち像露光器14により画像信号に基づいた像露光が行われる。この図の像露光器14は図示しないレーザーダイオードを露光光源とする。回転するポリゴンミラー141、fθレンズ等を経て反射ミラー142により光路を曲げられた光により感光体ドラム上の走査がなされ、静電潜像が形成される。
【0059】
その静電潜像は次いで現像装置30で現像される。感光体ドラム10周縁にはトナーとキャリアとから成る現像剤を内蔵した現像装置30が設けられていて、マグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ31によって現像が行われる。現像剤は、例えば前述のフェライトをコアとしてそのまわりに絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアと、前述のスチレンアクリル系樹脂を主材料としてカーボンブラック等の着色剤と荷電制御剤と本発明の低分子量ポリオレフィンからなる着色粒子に、シリカ、酸化チタン等を外添したトナーとからなるもので、現像剤は図示していない層形成手段によって現像スリーブ31上に100〜600μmの層厚に規制されて現像域へと搬送され、現像が行われる。この時通常は感光体ドラム10と現像スリーブ31の間に直流バイアス、必要に応じて交流バイアス電圧をかけて現像が行われる。また、現像剤は感光体に対して接触あるいは非接触の状態で現像される。
【0060】
転写材(記録紙とも云う)Pは画像形成後、転写のタイミングの整った時点で給紙ローラ41の回転作動により転写域へと給紙される。
【0061】
転写域においては転写のタイミングに同期して感光体ドラム50の周面に転写ローラ(転写器)13が圧接され、給紙された転写材Pを挟着して転写される。
【0062】
次いで転写材Pは転写ローラとほぼ同時に圧接状態とされた分離ブラシ(分離器)15によって除電がなされ、感光体ドラム10の周面により分離して定着装置60に搬送され、熱ローラ601と圧着ローラ602の加熱、加圧によってトナーを溶着したのち排紙ローラ61を介して装置外部に排出される。なお前記の転写ローラ13及び分離ブラシ15は転写材Pの通過後感光体ドラム10の周面より退避離間して次なるトナー像の形成に備える。
【0063】
一方転写材Pを分離した後の感光体ドラム10は、クリーニング器62のクリーニングブレード621の圧接により残留トナーを除去・清掃し、再び露光部11による除電と帯電器20による帯電を受けて次なる画像形成のプロセスに入る。
【0064】
尚、70は感光体、帯電器、転写器・分離器及びクリーニング器を一体化されている着脱可能なプロセスカートリッジである。
【0065】
電子写真画像形成装置としては、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又、帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジを形成し、装置本体に着脱自在の単一ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0066】
像露光は、画像形成装置を複写機やプリンターとして使用する場合には、原稿からの反射光や透過光を感光体に照射すること、或いはセンサーで原稿を読み取り信号化し、この信号に従ってレーザービームの走査、LEDアレイの駆動、又は液晶シャッターアレイの駆動を行い感光体に光を照射することなどにより行われる。
【0067】
尚、ファクシミリのプリンターとして使用する場合には、像露光器14は受信データをプリントするための露光を行うことになる。
【0068】
電子写真画像形成装置としては、感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又像露光器、現像器、転写又は分離器、クリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジを形成し、装置本体に着脱自在の単一ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0069】
像露光は、画像形成装置を複写機やプリンターとして使用する場合には、原稿からの反射光や透過光を感光体に照射すること、或いはセンサーで原稿を読み取り信号化し、この信号に従ってレーザービームの走査、LEDアレイの駆動、又は液晶シャッターアレイの駆動を行い感光体に光を照射することなどにより行われる。
【0070】
尚、ファクシミリのプリンターとして使用する場合には、像露光器14は受信データをプリントするための露光を行うことになる。
【0071】
本発明の電子写真感光体は、複写機、レーザープリンター、LEDプリンター、液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適用し得るものであるが、更には電子写真技術を応用したディスプレイ、記録、軽印刷、製版、ファクシミリ等の装置にも広く適用し得るものである。
【0072】
後述するトナー粒子を使用し、図3及び図4に示される画像形成装置を用いることにより、本発明に記載の効果であるトナー微粉が発生せず、磁気ブラシの汚染を発生させないので、画像上の白スジ欠陥が低減し、トナー飛散が抑制され、現像剤寿命が向上し、良好な画質を有するトナー画像を安定して作製することが可能になる。
【0073】
次に本発明に好ましく用いられる電子写真感光体(以下像形成体、像担持体ともいう)について説明する。
【0074】
本発明に係る電子写真感光体は、電荷輸送性能を有する構造単位を有し、且つ架橋構造を有するシロキサン系樹脂及び酸化防止剤を含有する樹脂層を有することが好ましい。
【0075】
(架橋構造を有するシロキサン樹脂)
本発明においてシロキサン系樹脂とは、予め化学構造単位にシロキサン結合を有するモノマー、オリゴマー、ポリマーを反応させて(加水分解反応、触媒や架橋剤を加えた反応等を含む)3次元網目構造を形成し、硬化させた樹脂を意味する。一般的には、シロキサン結合を有する有機ケイ素化合物を加水分解反応とその後の脱水縮合によりシロキサン結合を促進させて3次元網目構造を形成させ、その結果生成したシロキサン系樹脂を意味する。例えば、アルコキシシランからなる組成物、又はアルコキシシランとコロイダルシリカからなる組成物の縮合反応により3次元網目構造を形成した樹脂を意味する。
【0076】
上記シロキサン系樹脂は公知の方法、即ち水酸基或いは加水分解性基を有する有機ケイ素化合物を用いて製造される。前記有機ケイ素化合物は下記一般式(A)〜(D)の化学式で示される。
【0077】
【化1】
【0078】
式中、R1〜R6は式中のケイ素に炭素が直接結合した形の有機基を表し、Xは水酸基又は加水分解性基を表す。又、R1〜R6はそれぞれの有機基が同一でも良く、異なっていてもよい。
【0079】
式中、Xが加水分解性基の場合、加水分解性基としてメトキシ基、エトキシ基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルアミノ基、アセトキシ基、プロペノキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基及びメトキシエトキシ基等が挙げられる。
【0080】
R1〜R6に示されるケイ素に炭素が直接結合した形の有機基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル基、フェニル、トリル、ナフチル、ビフェニル等のアリール基、γ−グリシドキシプロピル、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル等の含エポキシ基、γ−アクリロキシプロピル、γ−メタアクリロキシプロピルの含(メタ)アクリロイル基、γ−ヒドロキシプロピル、2,3−ジヒドロキシプロピルオキシプロピル等の含水酸基、ビニル、プロペニル等の含ビニル基、γ−メルカプトプロピル等の含メルカプト基、γ−アミノプロピル、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピル等の含アミノ基、γ−クロロプロピル、1,1,1−トリフロオロプロピル、ノナフルオロヘキシル、パーフルオロオクチルエチル等の含ハロゲン基、その他ニトロ、シアノ置換アルキル基等を挙げることができる。
【0081】
電荷輸送性能を有する構造単位を有し、且つ架橋構造を有するシロキサン系樹脂の原料として用いられる上記有機ケイ素化合物は、一般にはケイ素原子に結合している加水分解性基の数nが1のとき、有機ケイ素化合物の高分子化反応は抑制される。nが2、3又は4のときは高分子化反応が起こりやすく、特に3或いは4では高度に架橋反応を進めることが可能である。従って、これらをコントロールすることにより得られる塗布液の保存性や塗布層の硬度等を制御することが出来る。
【0082】
上記シロキサン系樹脂の原料としては上記有機ケイ素化合物を酸性条件下又は塩基性条件下で加水分解してオリゴマー化或いはポリマー化した加水分解縮合物を用いることもできる。
【0083】
尚、シロキサン系樹脂とは、上記シロキサン結合を含有する硬化性樹脂の原料が塗布液中或いは塗布乾燥工程等において樹脂成分の一部が架橋(クロスリンク)することにより、硬度の高い樹脂層を形成する樹脂をいう。
【0084】
上記樹脂層には水酸基或いは加水分解性基を有するコロイダルシリカを含ませて、架橋構造の一部にシリカ粒子を取り込んだ樹脂層としてもよい。
【0085】
(電荷輸送能を有する構造単位)
本発明における電荷輸送性能は、市販のTime−Of−Flight(TOF)法を用いることにより電荷輸送性能を電荷輸送に起因する検出電流として検出することができる。
【0086】
電荷輸送性能を有する構造単位とは、この構造自体が電子或いは正孔のドリフト移動度を有する性質を示すもの(電荷輸送性能付与基)をいう。
【0087】
例えば正孔輸送型電荷輸送性化合物:オキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、イミダゾリン、ビスイミダゾリジン、スチリル、ヒドラゾン、ベンジジン、ピラゾリン、スチルベン化合物、アミン、オキサゾロン、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、キナゾリン、ベンゾフラン、アクリジン、フェナジン、アミノスチルベン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−1−ビニルピレン、ポリ−9−ビニルアントラセンなどの化学構造を前記シロキサン系樹脂の部分構造として含有する。一方、電子輸送型としては無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水メリット酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、トリニトロベンゼン、テトラニトロベンゼン、ニトロベンゾニトリル、ピクリルクロライド、キノンクロルイミド、クロラニル、ブロマニル、ベンゾキノン、ナフトキノン、ジフェノキノン、トロポキノン、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、ジニトロアントラキノン、4−ニトロベンゾフェノン、4,4′−ジニトロベンゾフェノン、4−ニトロベンザルマロンジニトリル、α−シアノ−β−(p−シアノフェニル)−2−(p−クロロフェニル)エチレン、2,7−ジニトロフルオレン、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン、9−フルオレニリデンジシアノメチレンマロノニトリル、ポリニトロ−9−フルオロニリデンジシアノメチレンマロノジニトリル、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、3,5−ジニトロ安息香酸、ペンタフルオロ安息香酸、5−ニトロサリチル酸、3,5−ジニトロサリチル酸、フタル酸、メリット酸などの化学構造を前記シロキサン系樹脂の部分構造として含有する。
【0088】
好ましい電荷輸送性能付与基としては、上記の如き通常用いられる電荷輸送性化合物を含み、該電荷輸送性化合物を構成する炭素原子を介して或いは上記電荷輸送性化合物を部分構造として含有する化合物の炭素原子を介して下記一般式(I)におけるYの連結原子を介してシロキサン系樹脂中に含有される。
【0089】
【化2】
【0090】
式中、Xは電荷輸送性能付与基であって、該付与基を構成する炭素原子を介して式中のYと結合する基、Yは隣接する結合原子(SiとC)を除いた2価以上の原子である。但し、Yが3価以上の原子の時は式中のSiとC以外のYの結合手は結合が可能な上記硬化性樹脂中のいずれかの構成原子と結合しているか又は他の原子、分子基と連結した構造を有する。特にYは酸素原子、硫黄原子及び窒素原子が好ましい。窒素原子であればNRであり、Rは水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基である。
【0091】
電荷輸送性能付与基Xは式中では1価の基とされているが、シロキサン系樹脂と反応させる電荷輸送性化合物が2つ以上の反応性官能基を有している場合は該樹脂中で2価以上のクロスリンク基として接合してもよく、単にペンダント基として接合していてもよい。
【0092】
Yの好ましい原子としての酸素原子、硫黄原子及び窒素原子は、それぞれ電荷輸送性化合物中に導入された水酸基、メルカプト基、アミン基と、水酸基或いは加水分解性基を有する有機ケイ素化合物との反応によって形成され、シロキサン系樹脂中に電荷輸送化合物を部分構造として取り込んでいる。
【0093】
次に本発明で用いられる水酸基、メルカプト基、アミン基を有する電荷輸送性化合物について説明する。
【0094】
水酸基を有する電荷輸送性化合物とは、通常用いられる構造の電荷輸送物質で、且つ水酸基を有している化合物である。即ち、代表的には硬化性有機ケイ素化合物と結合して樹脂層を形成することが出来る下記一般式で示される電荷輸送性化合物を挙げることができるが、下記構造に限定されるものではなく、電荷輸送性能を有し、且つ水酸基を有している化合物であればよい。
【0095】
X−(R1−OH)m
式中、Xは電荷輸送性能付与基であり、R1は単結合子、各々置換又は非置換のアルキレン、アリーレン基であり、mは1以上、好ましくは1〜5である。
【0096】
その中でも代表的なものを挙げれば下記のごときものがある。
1.トリアリールアミン系化合物
【0097】
【化3】
【0098】
トリアリールアミン系化合物とは、トリフェニルアミン等のトリアリールアミン構造を含み、該基を構成する炭素原子を介して炭素原子と結合する水酸基を有する化合物である。
2.ヒドラジン系化合物
【0099】
【化4】
【0100】
3.スチルベン系化合物
【0101】
【化5】
【0102】
4.ベンジジン系化合物
【0103】
【化6】
【0104】
5.ブタジエン系化合物
【0105】
【化7】
【0106】
6.その他の化合物
【0107】
【化8】
【0108】
(メルカプト基を有する電荷輸送性化合物の具体例)
次に、メルカプト基を有する電荷輸送性化合物の具体例を下記に例示する。
【0109】
メルカプト基を有する電荷輸送性化合物とは、通常用いられる構造の電荷輸送物質で、且つ、メルカプト基を有する化合物である。即ち、代表的には硬化性有機ケイ素化合物と結合して、樹脂層を形成出来る下記一般式で示される電荷輸送性化合物を挙げることができるが、下記構造に限定されるものではなく、電荷輸送性能を有し、且つメルカプト基を有している化合物であればよい。
【0110】
X−(R1−SH)m
式中、Xは電荷輸送性能付与基であり、R1は単結合、各々置換又は非置換のアルキレン基または、アリーレン基であり、mは1以上を表し、好ましくは1〜5である。
【0111】
その中でも代表的なものを挙げれば下記のごときものが挙げられる。
【0112】
【化9】
【0113】
(アミノ基を有する電荷輸送性化合物の具体例)
更に、アミノ基を有する電荷輸送性化合物の具体例を下記に例示する。
【0114】
アミノ基を有する電荷輸送性化合物とは、通常用いられる構造の電荷輸送物質で、且つアミノ基を有している化合物である。即ち、代表的には硬化性有機ケイ素化合物と結合して、樹脂層を形成することが出来る下記一般式で示される電荷輸送性化合物を挙げることができるが、下記構造に限定されるものではなく、電荷輸送性能を有し、且つアミノ基を有している化合物であればよい。
【0115】
X−(R1−NR2H)m
式中、Xは電荷輸送性能付与基であり、R1は単結合子、各々置換又は非置換のアルキレン、アリーレン基であり、R2は水素原子、置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のアリール基、mは1以上、好ましくは1〜5である。
【0116】
その中でも代表的なものを挙げれば下記のごときものがある。
【0117】
【化10】
【0118】
アミノ基を有する電荷輸送性化合物の中で、第一アミン化合物(−NH2)の場合は2個の水素原子が有機ケイ素化合物と反応し、シロキサン構造に連結することもあり得る。第2アミン化合物(−NHR)の場合は1個の水素原子が有機ケイ素化合物と反応し、残りのRはブランチとして残存する基でも良く、架橋反応を起こす基でも良く、電荷輸送物質を含む化合物基でもよい。
【0119】
前記シロキサン系樹脂の形成原料組成比としては、上記の一般式(A)〜(D)で表される有機ケイ素化合物(以下、単に(A)、(B)、(C)、(D)とする)によれば、(A)+(B)成分1モルに対し、(C)+(D)成分0.05〜1モルを用いることが好ましい。
【0120】
又コロイダルシリカ(E)を添加する場合は(A)+(B)+(C)+(D)成分の総質量100部に対し(E)を1〜30質量部を用いることが好ましい。又上記有機ケイ素化合物やコロイダルシリカと反応して樹脂層を形成することができる電荷輸送性化合物(F)を加える場合は、(A)+(B)+(C)+(D)成分の総質量100部に対し(F)を1〜500質量部を用いることが好ましい。(A)+(B)成分が上記の範囲外で使用されると、(A)+(B)成分が少ない場合はシロキサン系樹脂層は架橋密度が小さすぎ硬度が不足する。又、(A)+(B)成分が多すぎると架橋密度が大きすぎ硬度は十分だが、脆い樹脂層となる。(E)成分のコロイダルシリカ成分の過不足も、(A)+(B)成分と同様の傾向がみられる。一方、(F)成分が少ない場合はシロキサン系樹脂層の電荷輸送能が小さく、感度の低下、残電の上昇を生じ、(F)成分が多い場合はシロキサン系樹脂含有層の膜強度が弱くなる傾向がみられる。
【0121】
シロキサン系樹脂とは予め構造単位にシロキサン結合を有するモノマー、オリゴマー、ポリマーに触媒や架橋剤を加えて新たな化学結合を形成させ3次元網目構造を形成することもあり、又加水分解反応とその後の脱水縮合によりシロキサン結合を促進させモノマー、オリゴマー、ポリマーから3次元網目構造を形成することもできる。一般的には、アルコキシシランからなる組成物、又はアルコキシシランとコロイダルシリカからなる組成物の縮合反応により3次元網目構造を形成することができる。
【0122】
又上記の3次元網目構造を形成させる触媒としては有機カルボン酸、亜硝酸、亜硫酸、アルミン酸、炭酸及びチオシアン酸の各アルカリ金属塩、有機アミン塩(水酸化テトラメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウムアセテート)、スズ有機酸塩(スタンナスオクトエート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンメルカプチド、ジブチルチンチオカルボキシレート、ジブチルチンマリエート等)、アルミニウム、亜鉛のオクテン酸、ナフテン酸塩、アセチルアセトン錯化合物等が挙げられる。
【0123】
(酸化防止剤)
樹脂層にはヒンダートフェノール、ヒンダートアミン、チオエーテル又はホスファイト部分構造を持つ酸化防止剤を含有させることを特徴とする。該樹脂層への酸化防止剤の含有は環境変動時の電位安定性・画質の向上に効果的である。
【0124】
ここでヒンダートフェノールとはフェノール化合物の水酸基に対しオルト位置に分岐アルキル基を有する化合物類及びその誘導体を云う。但し、水酸基がアルコキシに変成されていても良い。
【0125】
又、ヒンダートアミンは、例えば下記構造式で示される有機基を有する化合物類が挙げられる。
【0126】
【化11】
【0127】
式中、R11は水素原子又は1価の有機基、R12、R13、R14、R15はアルキル基、R16は水素原子、水酸基又は1価の有機基を示す。
【0128】
ヒンダートフェノール部分構造を持つ酸化防止剤としては、例えば特開平1−118137号(P7〜P14)記載の化合物が挙げられるが本発明はこれに限定されるものではない。
【0129】
ヒンダートアミン部分構造を持つ酸化防止剤としては、例えば特開平1−118138号(P7〜P9)記載の化合物も挙げられるが本発明はこれに限定されるものではない。製品化されている酸化防止剤としては以下のような化合物、例えばヒンダートフェノール系として「イルガノックス1076」、「イルガノックス1010」、「イルガノックス1098」、「イルガノックス245」、「イルガノックス1330」、「イルガノックス3114」、「イルガノックス1076」「3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシビフェニル」、ヒンダートアミン系として「サノールLS2626」、「サノールLS765」「サノールLS2626」、「サノールLS770」、「サノールLS744」、「チヌビン144」、「チヌビン622LD」、「マークLA57」、「マークLA67」、「マークLA62」、「マークLA68」、「マークLA63」、「スミライザーTPS」、チオエーテル系として「スミライザーTP−D」、ホスファイト系として「マーク2112」、「マークPEP−8」、「マークPEP−24G」、「マークPEP−36」、「マーク329K」、「マークHP−10」が挙げられ、特にヒンダートフェノール、ヒンダートアミン系酸化防止剤が好ましい。
【0130】
具体的な化合物例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0131】
【化12】
【0132】
これら酸化防止剤の添加量としては樹脂層組成物の総質量100部に対し0.01質量部〜50質量部を用いることが好ましく、更に好ましくは、0.1質量部〜25質量部である。
【0133】
又、前記樹脂層にはシリコーンオイルを含有させることが好ましい。本発明で用いられるシリコーンオイルは反応性、非反応性シリコーンオイルを用いることができる。
【0134】
反応性シリコーンオイルとは分子内に反応性をもつ有機基を含むシリコーンオイルを指し、その多くは反応性基を有するポリシロキサンである。ポリシロキサンは二官能基のアルコキシシランの縮合反応により得られるが、ここで云う反応性基とはポリシロキサン主鎖形成に関与する二官能基のアルコキシシランや二官能基のシラノールとは異なり、下記一般式(II)に示すようにシリコーンオイルの側鎖或いは末端に位置する反応性基である。具体的には次のような構造で表される。
【0135】
【化13】
【0136】
(式中、R1〜R10はそれぞれ異なっても良く、炭素数1〜10の置換、若しくは無置換のアルキル基、炭素数1〜10の置換、若しくは無置換のアルコキシル基、又は反応性基を表す。m、nは0〜200の整数を表す。但しR1〜R10の少なくとも1つは反応性基を有する。)
前記反応性基としては樹脂層塗布液中、或いは塗膜形成時に或いは熱処理時に化学反応によりシロキサン系樹脂中の一部となる反応性基であれば特に限定されないが、一般的にはアミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、カルビノール基、メタクリル基、メルカプト基、フェノール基等を含む有機残基が挙げられる。
【0137】
更に、具体的には以下のような一般式の反応性基が好ましい。
(1)アミノ変性: −R11−NH2,−R11−NH−R12−NH2
(2)エポキシ変性: −R11−(エポキシ環)
(3)カルボキシ変性: −R11−COOH
(4)カルビノール変性: −R11−OH
(5)メタクリル変性: −R11−C(=O)(CH3)=CH2
(6)メルカプト変性: −R11−SH
(7)フェノール変性: −R11−C6H4−OH
式中、−R11−、−R12−はアルキレン基を表す。
【0138】
一方、非反応性のシリコーンオイルとしては、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、高級アルコキシ変性等の変性シリコーンオイルが挙げられる。これらの中でも特にシラノール基を含有するシラノールシリコーンが最も好ましい。尚、シラノールシリコーンオイルとは下記一般式(3)のごとくシラノールを含有するポリシロキサンを云う。
【0139】
【化14】
【0140】
式中、R1〜R8はそれぞれ異なっていても良く、炭素数1〜10の各置換、若しくは無置換のアルキル基またはアルコキシル基を表す。
【0141】
次に代表的なシリコーンオイルA〜Oの商品名を挙げる。
A:アミノ変性品 X−22−161AS(信越化学社製)
B:エポキシ変性品 X−22−163B(信越化学社製)
C:カルボキシル変性品 X−22−162A(信越化学社製)
D:カルビノール変性品 X−22−160AS(信越化学社製)
E:メタクリル変性品 X−22−164C(信越化学社製)
F:メルカプト変性品 X−22−167B(信越化学社製)
G:フェノール変性品 X−22−165B(信越化学社製)
H:ジメチルシリコーン KF−96(信越化学社製)
I:メチルフェニルシリコーン KF−54(信越化学社製)
J:ポリエーテル変性品 KF−351(信越化学社製)
K:メチルスチリル変性品 KF−410(信越化学社製)
L:アルキル変性品 KF−412(信越化学社製)
M:高級脂肪酸エステル変性品 X−22−715(信越化学社製)
N:高級アルコキシ変性品 KF−851(信越化学社製)
O:シラノールシリコーン DMS−S12(シッソ社製)
上記シリコーンオイルの添加量は樹脂層固形分に対し10ppm〜20質量%、好ましくは100ppm〜10質量%である。
【0142】
前記樹脂層にシリコーンオイルを含有させることにより、磁気ブラシやクリーニングブレードによる樹脂層の摩耗を更に少なくし、画像欠陥の発生を少なくするのにも効果が見られる。
【0143】
本発明に用いられる樹脂層は該樹脂層の特徴を生かすため感光体の表面層として構成されるのが最も好ましいが、該感光体を電子写真画像形成装置に組み込んだ時の画像形成スタート時のスベリ特性等を改良する目的で該樹脂層の上に更に表面層を設けることもできる。
【0144】
本発明に用いられる感光体の層構成はとくに限定は無いが、負帯電感光体においては導電性支持体上には下引層(UCL)、その上に機能分離した感光層の電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL層)を順に設けた上に本発明に用いられる樹脂層を塗設した構成をとるのが好ましい。正帯電感光体では前記負帯電感光体層構成の内、電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL層)の順を逆にした構成を取ることが好ましい。単層構造の感光体では導電性支持体上には下引層(UCL)の上に感光層(電荷発生+電荷輸送)の上に本発明に用いられる樹脂層を塗設した構成を採用しても良い。
【0145】
又、本発明に用いられる樹脂層は前記感光層を兼ねた構成を取ることも可能である。即ち、前記機能分離感光体の電荷輸送層或いは電荷発生層を本発明に用いられる樹脂層とする事もできる。又、単層構造の感光体の感光層を本発明に用いられる樹脂層としても良い。
【0146】
感光層に含有される電荷発生物質(CGM)としては、例えばフタロシアニン顔料、多環キノン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料、アズレニウム顔料、スクワリリウム染料、シアニン染料、ピリリウム染料、チオピリリウム染料、キサンテン色素、トリフェニルメタン色素、スチリル色素等が挙げられ、これらの電荷発生物質は単独で又は適当なバインダー樹脂と共に層形成が行われる。
【0147】
前記感光層に含有される電荷輸送物質(CTM)としては、例えばオキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、ベンジジン化合物、ピラゾリン誘導体、スチルベン化合物、アミン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−1−ビニルピレン、ポリ−9−ビニルアントラセン等が挙げられこれらの電荷輸送物質は通常バインダーと共に層形成が行われる。
【0148】
単層構成の感光層、及び積層構成の場合の電荷発生層(CGL)、電荷輸送層(CTL)に含有されるバインダー樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ポリシラン樹脂、ポリビニルカルバゾール等が挙げられる。
【0149】
電荷発生層中の電荷発生物質とバインダー樹脂との割合は質量比で1:5〜5:1が好ましい。又電荷発生層の膜厚は5μm以下が好ましく、特には0.05〜2μmが好ましい。
【0150】
又、電荷輸送層は前記の電荷輸送物質とバインダー樹脂を適当な溶剤に溶解し、その溶液を塗布乾燥することによって形成される。電荷輸送物質とバインダー樹脂との混合割合は質量比で10:1〜1:10が好ましい。
【0151】
電荷輸送層の膜厚は5〜50μm、特には10〜40μmが好ましい。又、電荷輸送層が複数設けられている場合は、電荷輸送層の上層の膜厚は10μm以下が好ましく、かつ、電荷輸送層の上層の下に設けられた電荷輸送層の全膜厚より小さいことが好ましい。
【0152】
シロキサン系樹脂含有の樹脂層は、上記電荷輸送層を兼ねても良いが、好ましくは電荷輸送層もしくは電荷発生層或いは単層型の電荷発生・輸送層等の感光層の上に、これらとは別層として設けるのがよい。この場合、上記感光層とシロキサン系樹脂含有層との間に接着層を設けるのが更に良い。
【0153】
感光体の製造に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン等が好ましく用いられる。又、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0154】
電子写真感光体の導電性支持体としては、例えば1)アルミニウム板、ステンレス板などの金属板、2)紙或いはプラスチックフィルムなどの支持体上に、アルミニウム、パラジウム、金などの金属薄層をラミネート若しくは蒸着によって設けたもの、3)紙或いはプラスチックフィルムなどの支持体上に、導電性ポリマー、酸化インジウム、酸化錫などの導電性化合物の層を塗布若しくは蒸着によって設けたもの等が挙げられる。
【0155】
本発明においては導電性支持体と感光層の間に、バリヤー機能を備えた中間層を設けることもできる。
【0156】
中間層用の材料としては、カゼイン、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリビニルブチラール、フェノール樹脂ポリアミド類(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、共重合ナイロン、アルコキシメチル化ナイロン等)、ポリウレタン、ゼラチン及び酸化アルミニウムを用いた中間層、或いは特開平9−68870号の如く金属アルコキシド、有機金属キレート、シランカップリング剤による硬化型中間層等が挙げられる。中間層の膜厚は、0.1〜10μmが好ましく、特には0.1〜5μmが好ましい。
【0157】
支持体と中間層との間に支持体の表面欠陥を補うための被覆を施すことや、特に画像入力がレーザー光の場合には問題となる干渉縞の発生を防止することなどを目的とした導電層を設けることができる。この導電層は、カーボンブラック、金属粒子又は金属酸化物粒子等の導電性粉体を適当なバインダー樹脂中に分散した溶液を塗布乾燥して形成することができる。導電層の膜厚は5μm〜40μmが好ましく、特に10μm〜30μmが好ましい。
【0158】
本発明に係るトナー粒子について説明する。
本発明に係るトナー粒子は、トナー粒子を構成する樹脂がセル構造を有し、セルのフェレ水平径の平均値が20nm〜200nmであり、かつ、フェレ水平径の変動係数が10%〜35%であることを特徴とするもので、セル構造を有する本発明に係るトナーは、現像器内での撹拌により生ずる機械的せん断力の作用や、あるいは画像形成装置内にオゾンが多く存在する環境下でも、微粉を発生しない性質を有することが見出された。
【0159】
ここで、セル構造について、トナー粒子の構造を生物の細胞構造に模して説明する。すなわち、セル構造を有するトナー粒子とは、細胞壁に対応する樹脂相であるセル壁と、それに包まれる細胞質に対応する樹脂相であるセルとから構成されているものである。但し、セルの一部が開口して隣接するセル壁とつながった構造を有していてもよい。本発明に係るトナーでは、後述するトナー断面をプラズマオゾン処理した後に観察すると、トナー粒子を構成する樹脂がお互いに混和せずにセル壁を介して独立した複数のセルの集合体を有することが確認される。
【0160】
本発明は、トナー粒子を構成する樹脂がセル構造を有するものであるが、トナー粒子を構成する樹脂がセル構造を有するトナー粒子は、図5の模式図で示される様な構造を有する。
【0161】
図5(A)、図5(B)において、aはセル、bはセル壁、cは着色剤粒子を表し、更に、図5(B)において、dは結晶性物質を表す。
【0162】
図5に示される様に本発明に係るトナー粒子は、各セルがセル壁と呼ばれる樹脂の相により隔てられた構造によってトナー粒子中においてセルの集合体を有するものであることが認められる。
【0163】
ここで、セル及びセル壁を構成する樹脂は同組成であっても、例えば結晶化度、分子量、塩等の不純物量の違いにより、電子顕微鏡では双方の領域の輝度が異なることが確認される。なお、図5の模式図は後述する透過型電子顕微鏡写真結果に基づいて作成したものである。また、図5の模式図は、本発明に係るトナー粒子を構成する樹脂がセルとセル壁とを有するものであることをより明瞭にするために、トナー粒子の粒径に対してセルの大きさを実際に観察される大きさよりも意図的にかなり大きく示している。
【0164】
このセル構造がトナーの耐久性に大きな効果を奏する理由は明確ではないが、例えば、次の様に考えられる。
【0165】
すなわち、内部がセル構造となっていることにより、粒子内部に緩衝構造を保持させることができ、脆さのない、微小な弾性構造を有するトナーとなっているものと推定される。その結果、機械的なストレスを受けた場合にトナー内部にそのストレスを拡散させることができるため、微粉などを発生させず、耐久性を維持することが可能になるものと推測される。特に、オゾンが発生している雰囲気下では樹脂が酸化され、分解し易くなっているものと推測され、微粉も発生し易い状況となる。しかし、セル構造とすることで、セルが一種のバリヤーとなり、オゾンの影響をトナー内部にまで進行させることがなく、オゾン分解の問題を解消することを可能にしたものと推測される。
【0166】
本発明に用いられるトナー粒子が、オゾンに対してバリヤー効果を発現する理由は明確ではないが、トナー粒子を構成する樹脂にオゾン分解の影響を受け易い領域と受けにくい領域とが混在することがその原因と推測される。すなわち、本発明に用いられるトナー粒子のセル構造は、オゾン分解の作用を受け易い領域が粒子状のセルとなりトナー粒子中央付近に存在し、オゾン分解の作用を受けにくい領域がセル壁となっているものと推測される。
【0167】
トナー粒子中に上記で規定されるフェレ水平径に関する条件を満足するセルを1つだけ有するトナーも考え得るが、本発明で用いられるトナー粒子は、セルを複数個有するもので、好ましくは10個以上のセルを有するものである。
【0168】
また、トナー粒子は、その周縁部にセルの存在の疎らな構造を有するものであることが好ましい。
【0169】
セル構造を有するトナーは、図5に示す様に着色剤粒子がセルとセルの間、すなわちセル間に分布しているものである。この着色剤粒子の分布としては、トナー粒子中の着色剤粒子全体の60個数%以上がセル間に分布していることが好ましい。また、本発明に用いられるトナーは、着色剤粒子がセル間に分布している比率の高いものほど高耐久性を有するものであり、全着色剤粒子のうちの80個数%以上がセル間に存在するものが特に好ましい。
【0170】
本発明に用いられるトナーが、この様に着色剤粒子がセル間に分布している比率の高いものほど高耐久性である明確な理由も明らかではないが、おそらく、着色剤粒子自体がセル構造の壁として作用し、トナー内部への緩衝機能やオゾンに対するバリヤー機能を発現するため、トナーの耐久性を維持するものと推測される。
【0171】
また、本発明に用いられるトナー粒子は、着色剤粒子の他に凝集塩や離型剤の様なトナー含有成分もセル壁領域に多く含有するものが好ましい。
【0172】
セル構造を有するトナー粒子中のセルの大きさは、セルのフェレ水平径の平均値が20nm〜200nmの範囲のものが好ましく、この様なセルを有するトナー粒子は機械的なストレスに対して十分な耐久性を発現して微粉を発生しない。
【0173】
また、セルのフェレ水平径の平均値が20nm〜200nmの範囲内の時、微粉の発生しない高耐久性のトナーとなる理由は明らかではないが、おそらく、フェレ水平径の平均値が20nm〜200nmの範囲内の時、セル壁を構成する樹脂がトナー粒子に付与される機械的な衝撃力を適度に吸収することや、セルがオゾンの影響を受けにくい構造となることが推測される。
【0174】
本発明に用いられるセル構造を有するトナー粒子では、セルのフェレ水平径の平均値が40nm〜160nmの時が好ましく、特に好ましくは60nm〜120nmである。なお、フェレ水平径とは、本発明に用いられるトナー粒子内のセルの大きさを特定するもので、任意の状態にトナー粒子を置いた時のセルの水平方向の長さ(最大長)を示す。
【0175】
また、本発明に用いられるトナー粒子内の各セルのフェレ水平径の大きさは、平均値に対してある程度バラツキを有するものであるが、本発明に用いられるトナー粒子では、セルのフェレ水平径の変動係数が10%〜35%の範囲にあるもので、好ましくは10%〜25%、特に好ましくは12%〜16%である。
【0176】
トナー粒子内のセルのフェレ水平径の変動係数は、下記の式により得られる。
フェレ水平径の変動係数={S2/K2}×100(%)
〔式中、S2は100個のセルのフェレ水平径の標準偏差を示し、K2はフェレ水平径の平均値を示す。〕
この様に、本発明に用いられるトナー粒子内に存在するセルのフェレ水平径の変動係数は、各セルのフェレ水平径の平均値に対するバラツキを表すものである。本発明では、セルのフェレ水平径の変動係数が10%〜35%の範囲にあるトナーで画像形成を行うと、機械的なせん断力やオゾンの作用によって破砕されることがなく、しかも微粉が発生しない。
【0177】
本発明に用いられるトナー粒子中に存在するセルの形状を円形に換算したときの円形度係数の値が0.75〜0.98の範囲内のものである。円形度係数は下記式より算出されるものである。
【0178】
円形度係数=(4π×(セルの面積))/(セルの周囲長)2
上記式は、セルが真円の時はその値が1となり、セルの形状が細長くなるほど円形度係数の値が0に近づいていくものである。本発明に用いられるトナーでは、前述の様にセルの形状は、真円のものではなく多少真円よりも細長い形状のものであることにより、トナー粒子の強度が向上し、微粉を発生させない。
【0179】
本発明に用いられるトナー粒子のセル構造の平均径などは、透過型電子顕微鏡(TEMとも言う)により得られるもので、透過型電子顕微鏡によりトナー粒子を写真撮影し、撮影された写真を画像解析して算出された解析結果により、フェレ水平径をはじめとするセルに関する種々の特性が算出される。
【0180】
透過型電子顕微鏡の測定写真より、本発明に係るトナー粒子を構成する樹脂は、セル壁の領域とセルの領域とでは、双方の輝度が異なることから本発明に係るトナー粒子を構成する樹脂がセル構造を有することが確認される。
【0181】
前述の透過型電子顕微鏡における輝度とは、結着樹脂、着色剤等の各トナー構成要素の電子線透過率が各々異なるので、各電子線透過率の差を可視化した時に顕れるもので、一般に着色剤の電子線透過率は結着樹脂の電子線透過率が低いために低輝度すなわち高い濃度で表される。
【0182】
また、電子顕微鏡写真において、低輝度とは画素(ピクセル)の輝度信号を256階調に分割した際に0〜99階調にあるものを言い、中輝度とは80〜160階調の範囲にあるもの、高輝度とは127〜255階調にあるものをいうが、本発明で云う低輝度、高輝度とは、トナーの各構成要素が相対的に判別可能な状態にあればよいもので、必ずしも着色剤の輝度が上記の範囲で定義付けられる低輝度の範囲内にあることを必須要件とするものではない。
【0183】
本発明に用いられるトナー粒子の構造を観察することの可能な透過型電子顕微鏡装置としては、通常当業者の間でよく知られた機種で十分観察されるもので、例えば「LEM−2000型(トプコン社製)」等が用いられる。本発明では、25,000倍の倍率で、1000個以上のトナー粒子の投影面を撮影した透過型電子顕微鏡写真の結果から、本発明に用いられるトナー粒子内におけるセルの個数等の値を算出する。
【0184】
透過型電子顕微鏡における具体的な撮影方法は、トナー粒子を測定する際に行う通常知られた方法で行われるものである。すなわち、トナーの断層面を測定する具体的方法としては、常温硬化性のエポキシ樹脂中にトナーを十分分散させた後、包埋し硬化させてもよく、粒径100nm程度のスチレン微粉末に分散させた後加圧成形した後、必要により得られたブロックを四三酸化ルテニウム、又は四三酸化オスミウムを併用し染色を施した後、ダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用い薄片状のサンプルを切り出す。
【0185】
切り出されたサンプルより、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、トナーの断層形態を写真撮影する。当該写真からトナー粒子中における着色剤の領域の形状を目視で確認するとともに、本発明に係るトナー粒子中のセル構造を特定する数値は電子顕微鏡装置により観察された画像情報に基づいて電子顕微鏡装置に付設された画像解析装置「ルーゼックスF」(ニレコ(株)社製)を用いて、撮影された画像情報を演算処理して算出されるものである。
【0186】
また、透過型電子顕微鏡の加速電圧は80〜200kVが好ましいが、得られる画像の高コントラストな電子顕微鏡画像を得る上では80kVで行うことが好ましい。上記測定でセル構造を評価する際にプラズマオゾン処理を行うと、セル構造を容易に観察することが可能になるので好ましい。
【0187】
次に、トナーへのプラズマオゾン処理の方法について説明する。
プラズマオゾン処理装置は図6の概略図に示す様に、活性ガスを用いたプラズマ放電により試料表面の改質を行うものであって、分析用電子顕微鏡で無機材料等の試料観察を行う際に試料表面に存在する不純物除去やエッチング、アッシング、コーティングと云った試料表面の改質に用いられる。
【0188】
具体的な装置としては、PC−2000プラズマクリーナー(SOUTH BAY TECHNOLOGY社製)、プラズマプレップ5(Gala INSTRUMENT社製)が挙げられ、以下に性能の一例を示す。
【0189】
本発明で使用されるトナー粒子は、上記条件中RFの出力100Wとし、使用ガスとして、Arとオゾンガスをガスフローメータ、及びニードルバルブ付きのガスサプライにより供給するもので、96リットル/minの真空ポンプによる真空条件下でアルゴンガスを5分、オゾンガスを5分供給しながら都合10分のプラズマ処理を行うものである。
【0190】
また、プラズマオゾン処理では、トナー粒子をアクリル樹脂で包埋した後、ウルトラミクロトームで切削したものを処理装置内のチャンバー内に設置された銅メッシュ上に載せてプラズマオゾン処理を行うものである。
【0191】
また、上記プラズマオゾン処理において、真空下の条件下で活性ガスとして酸素ガスを用いる場合には、真空ポンプ用のオイルとしてはFomblinオイル等の合成オイルを用いることが好ましい。
【0192】
本発明に使用されるトナー粒子は、外添混合された状態のもの、すなわち、製品として完成された状態にあるものを用いて評価してもよい。
【0193】
次に、本発明で好ましく用いられるトナーについて説明する。
本発明で用いられるトナー粒子は、形状係数の変動係数が16%以下であり、個数粒度分布における個数変動係数が27%以下であるトナー粒子から構成されるトナーを使用することで、トナー表面における外添剤の存在状態が均一になり、帯電量分布がシャープになるとともに高い流動性が得られる。その結果、現像性、細線再現性に優れ、安定したクリーニング性を長期にわたって形成することができるとともに、オゾンの存在する画像形成装置内で機械的なせん断力を長期にわたり加えられても、劣化、粉砕してトナー微粉の発生しないものであることを見出した。
【0194】
更に本発明者等は、個々のトナー粒子の微小な形状に着目して検討を行った結果、現像装置内部において、トナー粒子の角部分の形状が変化して丸くなり、その部分が外添剤の埋没を促進させ、帯電量の変化、流動性、クリーニング性を低下させ、特に画像形成装置内におけるオゾンの存在がこれらの問題を促進させていることを見出し、形状を特定のものとすることで、この問題を解決することを見出した。
【0195】
また、摩擦帯電によってトナー粒子に電荷を付与する場合には、特に角部分では外添剤が埋没しやすくなり、トナー粒子の帯電が不均一になりやすいと推定される。即ち、角がないトナー粒子の割合を50個数%以上とし、個数粒度分布における個数変動係数を27%以下に制御されたトナー粒子から構成されるトナーを使用することによっても、現像性、細線再現性に優れ、高画質な画像を長期にわたって形成することが可能であるとともに、オゾンの存在する画像形成装置内において機械的なせん断力を長期にわたり加えられても劣化、粉砕によるトナー微粉の発生のないことを見出した。
【0196】
更に、トナーを特定の形状としてその形状を揃えた場合にも、外添剤の埋没が発生せず、且つ帯電量分布がシャープとなり、微粉の発生しないことが判明した。すなわち、形状係数が1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子の割合が65個数%以上であり、形状係数の変動係数が16%以下であるトナーを使用することでも、現像性、細線再現性に優れ、高画質な画像を長期にわたって形成するとともに、オゾンの存在する画像形成装置内で機械的なせん断力を長期にわたって加えられても、トナー粒子の形状が揃っているため、トナーの部分的な劣化を抑制することが可能で微粉等の発生を抑制し、結果として長期にわたり安定した画像形成を可能にすることを見出した。
【0197】
ここで、本発明に用いられるトナーの個数粒度分布および個数変動係数について説明する。本発明に用いられるトナーの個数粒度分布および個数変動係数とは、コールターカウンターTA−IIあるいはコールターマルチサイザー(コールター社製)で測定されるものである。本発明ではコールターマルチサイザーを用い、粒度分布を出力するインターフェイス(日科機社製)、パーソナルコンピューターを接続して使用した。前記コールターマルチサイザーにおいて使用するアパーチャーとしては100μmのものを用いて2μm以上の体積径、個数径を測定して粒度分布および平均粒径を算出した。個数粒度分布とは、粒子径に対するトナー粒子の相対度数を表すものであり、個数平均粒径とは、個数粒度分布における累積50%の径、すなわちDn50を表すものである。
【0198】
トナーの個数粒度分布における個数変動係数は下記式から算出される。
個数変動係数=〔S/Dn〕×100(%)
〔式中、Sは個数粒度分布における標準偏差を示し、Dnは個数平均粒径(μm)を示す。〕
本発明に用いられるトナーの個数変動係数は27%以下であり、好ましくは25%以下である。個数変動係数が27%以下であることにより、転写されたトナー層の空隙が減少して定着性が向上し、オフセットが発生しにくくなる。また、帯電量分布がシャープとなり、転写効率が高くなって画質が向上する。
【0199】
本発明に用いられるトナーの個数変動係数の制御方法は、特に限定されるものではない。例えば、トナー粒子を風力により分級する方法も使用できるが、個数変動係数をより小さくするためには液中での分級が効果的である。この液中での分級方法は、遠心分離機を用い、回転数を制御してトナー粒子径の違いにより生じる沈降速度差に応じてトナー粒子を分別回収し調整する方法がある。
【0200】
次に、本発明に用いられるトナーの形状係数について説明する。本発明に用いられるトナーは、形状係数が1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子の割合が65個数%以上であり、形状係数の変動係数が16%以下で、かつ、個数粒度分布における個数変動係数が27%以下のものである。ここで、本発明に用いられるトナーの形状係数は、下記式により示され、トナー粒子の丸さの度合いを示す。
【0201】
形状係数=((最大径/2)2×π)/投影面積
ここで、最大径とは、トナー粒子の平面上への投影像を2本の平行線で挟んだとき、その平行線の間隔が最大となる粒子の幅をいう。また、投影面積とは、トナー粒子の平面上への投影像の面積をいう。本発明では、この形状係数は、走査型電子顕微鏡により2000倍にトナー粒子を拡大した写真を撮影し、ついでこの写真に基づいて「SCANNING IMAGE ANALYZER」(日本電子社製)を使用して写真画像の解析を行うことにより測定した。この際、100個のトナー粒子を使用して本発明の形状係数を上記算出式にて測定したものである。
【0202】
次に、本発明に用いられるトナーとして好ましく用いられる、角がないトナー粒子を図7を用いて説明する。ここで角がないトナー粒子とは、電荷の集中するような突部又はストレスにより摩耗し易い様な突部を実質的に有しないトナー粒子を云い、すなわち、図7(a)に示す様に、トナー粒子Tの長径をLaとするときに、半径(La/10)の円Cで、トナー粒子Tの周囲線に対し1点で内側に接しつつ内側を転がした場合に、当該円CがトナーTの外側に実質的にはみ出さない場合を「角がないトナー粒子」という。「実質的にはみ出さない場合」とは、はみ出す円が存在する突起が1箇所以下である場合をいう。
【0203】
また、「トナー粒子の長径」とは、当該トナー粒子の平面上への投影像を2本の平行線で挟んだとき、その平行線の間隔が最大となる粒子の幅をいう。なお、図7(b)及び(c)は、それぞれ角のあるトナー粒子の投影像を示している。
【0204】
角がないトナーの測定は、次のようにして行った。先ず、走査型電子顕微鏡によりトナー粒子を拡大した写真を撮影し、更に拡大して15,000倍の写真像を得る。次いでこの写真像について前記の角の有無を測定する。この測定を1000個のトナー粒子について行った。
【0205】
本発明に用いられるトナーにおいて、角がないトナー粒子の割合は50個数%以上であり、好ましくは70個数%以上である。角がないトナー粒子の割合が50個数%以上であることにより、現像剤搬送部材などとのストレスにより微細な粒子の発生などがおこりにくくなり、いわゆる現像剤搬送部材表面に対する汚染を抑制することができ、帯電量分布がシャープとなって、帯電性も安定し、良好な画質を長期にわたって形成できるとともに、トナー粒子に機械的なせん断力が加えられても破砕しにくい構造を有するものであるので、微粉の発生防止に寄与する構造を有するものである。
【0206】
角がないトナーを得る方法は、特に限定されるものではない。例えば、形状係数を制御する方法として前述したように、トナー粒子を熱気流中に噴霧する方法、またはトナー粒子を気相中において衝撃力による機械的エネルギーを繰り返して付与する方法、あるいはトナーを溶解しない溶媒中に添加し、旋回流を付与することによって得ることができる。
【0207】
また、本発明に用いられるトナーとしては、トナー粒子の粒径をD(μm)とするとき、自然対数lnDを横軸にとり、この横軸を0.23間隔で複数の階級に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムにおいて、最頻階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m1)と、前記最頻階級の次に頻度の高い階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m2)との和(M)が70%以上であるトナーであることが好ましい。
【0208】
相対度数(m1)と相対度数(m2)との和(M)が70%以上であることにより、トナー粒子の粒度分布の分散が狭くなるので、当該トナーを画像形成工程に用いることにより選択現像の発生を確実に抑制することができる。
【0209】
本発明において、前記の個数基準の粒度分布を示すヒストグラムは、自然対数lnD(D:個々のトナー粒子の粒径)を0.23間隔で複数の階級(0〜0.23:0.23〜0.46:0.46〜0.69:0.69〜0.92:0.92〜1.15:1.15〜1.38:1.38〜1.61:1.61〜1.84:1.84〜2.07:2.07〜2.30:2.30〜2.53:2.53〜2.76・・・)に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムであり、このヒストグラムは、下記の条件に従って、コールターマルチサイザーにより測定されたサンプルの粒径データを、I/Oユニットを介してコンピュータに転送し、当該コンピュータにおいて、粒度分布分析プログラムにより作成されたものである。
【0210】
〔測定条件〕
1:アパーチャー:100μm
2:サンプル調製法:電解液〔ISOTON II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)〕50〜100mlに界面活性剤(中性洗剤)を適量加えて攪拌し、これに測定試料10〜20mgを加える。この系を超音波分散機にて1分間分散処理することにより調製する。
【0211】
本発明に用いられるトナー粒子の粒径は、個数平均粒径で2〜7μmで、3〜6.5μmであることが好ましく、更に好ましくは3.5〜6μmである。この粒径はトナーの製造方法において、凝集剤(塩析剤)の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、重合体の組成により制御可能なもので、更に、個数平均粒径が2〜7μmという小径化されたものであることにより、転写効率を高めハーフトーンの画質が向上し、細線やドット等の画質向上に寄与する。
【0212】
また、本発明では、セル構造を有するトナーが粒径が小径化されていることにより、オゾンの暴露された環境下や長期にわたり繰り返し機械的なせん断力の付加される環境下にあっても、単位体積当たりに加わるトナー粒子への負荷が小さくなり、トナーの破砕による微粉の発生を起こしにくい構造を有する。
【0213】
トナーの粒度分布の算出、個数平均粒径の測定は、コールターカウンターTA−II、コールターマルチサイザー(いずれもコールター社製)、SLAD1100(島津製作所社製レーザ回折式粒径測定装置)等を用いて測定することができる。本発明においては、コールターマルチサイザーを用い、粒度分布を出力するインターフェース(日科機社製)、パーソナルコンピュータを接続し測定、算出したものである。
【0214】
この様に、本発明に用いられるトナー粒子は、その形状が特定範囲内にあることにより、機械的なせん断力、あるいはオゾン分解等によるトナー粒子の破砕に対しても有利であることが見出されている。
【0215】
次に、本発明に用いられるトナーの製造方法について説明する。
本発明に用いられるトナーの製造方法として、樹脂粒子を水系媒体中で塩析/融着させて調製する方法が挙げられる。ここで「水系媒体」とは、少なくとも水が50質量%以上含有されたものを示す。この方法は、特に限定されるものではないが、例えば、特開平5−265252号公報や特開平6−329947号公報、特開平9−15904号公報に示す方法を挙げられる。
【0216】
すなわち、樹脂粒子と着色剤などの構成材料の分散粒子、あるいは樹脂および着色剤等より構成される微粒子を複数以上塩析、凝集、融着させる方法、特に水中にてこれらを乳化剤を用いて分散した後に、臨界凝集濃度以上の凝集剤を加え塩析させると同時に、形成された重合体自体のガラス転移点温度以上で加熱融着させて融着粒子を形成しつつ徐々に粒径を成長させ、目的の粒径となったところで水を多量に加えて粒径成長を停止し、さらに加熱、攪拌しながら粒子表面を平滑にして形状を制御し、その粒子を含水状態のまま流動状態で加熱乾燥することにより、本発明で私用されるトナー粒子を形成することができる。なお、ここにおいて凝集剤と同時にアルコールなど水に対して無限溶解する溶媒を加えてもよい。
【0217】
本発明に用いられるトナーの製造方法では、少なくとも重合性単量体に離型剤等の機能性物質を溶かした後、重合性単量体を重合せしめる工程を経て形成した複合樹脂微粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させてトナー粒子を得る。本発明に用いられるトナーは、重合性単量体に離型剤等の機能性物質を溶かすものであるが、これは溶解させて溶かすものでも、溶融して溶かすものであってもよい。
【0218】
また、本発明に用いられるトナーの製造方法は、多段重合法によって得られる複合樹脂微粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させるものが好ましい。以下、多段重合法について説明する。
【0219】
多段重合法とは、1つの樹脂粒子において異なる分子量分布を有する相を形成するために重合反応を多段階に分けて行うものであって、得られた樹脂粒子がその粒子の中心より表層に向かって分子量勾配を形成させる様に意図して行うものである。例えば、はじめに高分子量の樹脂粒子分散液を得た後、新たに重合性単量体と連鎖移動剤を加えることによって低分子量の表層を形成する方法が採られている。
【0220】
本発明では、セル構造を安定に形成することを可能にするという観点から二段重合以上の多段重合法を採用することが好ましい。以下に、多段重合法の代表例である二段重合法および三段重合法について説明する。この様な多段階重合反応によって得られたトナーでは破砕強度の観点から表層程低分子量のものが好ましい。
【0221】
〈二段重合法〉
二段重合法は、高分子量樹脂から形成される中心部(核)と低分子量樹脂から形成される外層(殻)とにより構成される複合樹脂粒子を製造する方法である。
【0222】
この方法を具体的に説明すると、先ず、単量体溶液を水系媒体(例えば、界面活性剤水溶液)中に油滴分散させた後、この系を重合処理(第一段重合)することにより、高分子量の樹脂粒子の分散液を調製するものである。
【0223】
次いで、この樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と低分子量樹脂を得るための単量体とを添加し、樹脂粒子の存在下で単量体を重合処理(第二段重合)を行うことにより、樹脂粒子の表面に、低分子量の樹脂(単量体の重合体)からなる被覆層を形成する方法である。ここで、中心部の核となる高分子量成分中に離型剤等の機能性物質を添加してもよい。
【0224】
〈三段重合法〉
三段重合法は、高分子量樹脂から形成される中心部(核)、中間層及び低分子量樹脂から形成される外層(殻)とにより構成される複合樹脂粒子を製造する方法である。
【0225】
この方法を具体的に説明すると、先ず、常法に従った重合処理(第一段重合)により得られた樹脂粒子の分散液を、水系媒体(例えば、界面活性剤の水溶液)に添加するとともに、上記水系媒体中に単量体溶液を油滴分散させた後、この系を重合処理(第二段重合)することにより、樹脂粒子(核粒子)の表面に樹脂からなる被覆層(中間層)を形成して、複合樹脂粒子(高分子量樹脂−中間分子量樹脂)の分散液を調製する。
【0226】
次いで、得られた複合樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と低分子量樹脂を得るための単量体とを添加し、複合樹脂粒子の存在下で単量体を重合処理(第三段重合)することにより、複合樹脂粒子の表面に、低分子量の樹脂(単量体の重合体)からなる被覆層を形成する。上記方法において、中間層中に離型剤等の機能性物質を含有させることで離型剤等の分散を微細かつ均一にすることが可能になり好ましい。
【0227】
本発明でいう水系媒体とは、水50〜100質量%と水溶性の有機溶媒0〜50質量%とからなる媒体をいう。水溶性の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等を例示することができ、得られる樹脂を溶解しないアルコール系有機溶媒が好ましい。
【0228】
なお、離型剤等の機能性物質を含有する樹脂粒子または被覆層を形成するために好適な重合法としては、臨界ミセル濃度以下の濃度の界面活性剤を溶解してなる水系媒体中に、離型剤を単量体に溶解した単量体溶液を、機械的エネルギーを利用して油滴分散させて分散液を調製し、得られた分散液に水溶性重合開始剤を添加して、油滴内でラジカル重合させる方法(以下、本発明では「ミニエマルジョン法」という。)を挙げることができ、本発明の効果をより発揮することができ好ましい。なお、上記方法において、水溶性重合開始剤に代えて、あるいは水溶性重合開始剤と共に、油溶性重合開始剤を用いても良い。
【0229】
機械的に油滴を形成するミニエマルジョン法によれば、通常の乳化重合法とは異なり、油相に溶解させた離型剤等の機能性物質が脱離しにくく、樹脂粒子または被覆層内に十分な量の離型剤等の機能性物質を導入することが可能である。
【0230】
ここで、機械的エネルギーによる油滴分散を行うための分散機としては、特に限定されるものではなく、例えば、高速回転するローターを備えた攪拌装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)、超音波分散機、機械式ホモジナイザー、マントンゴーリンおよび圧力式ホモジナイザーなどを挙げることができる。また、分散粒子径としては、10〜1000nmとされ、好ましくは50〜1000nm、更に好ましくは30〜300nmである。
【0231】
この重合工程で得られる複合樹脂粒子の粒子径は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定される質量平均粒径で10〜1000nmの範囲にあることが好ましい。
【0232】
また、樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は48〜74℃の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは52〜64℃である。
【0233】
また、樹脂粒子の軟化点は95〜140℃の範囲にあることが好ましい。
本発明に用いられるトナーは、樹脂および着色粒子の表面に、塩析/融着法によって樹脂粒子を融着させてなる樹脂層を形成させて得られるものであるが、このことについて以下に説明する。
【0234】
〔着色剤微粒子〕
本発明に用いられるトナーを得るために使用する着色剤微粒子は、界面活性剤を含有する水系媒体中で着色剤微粒子を微分散させるための分散装置を用いて形成されるものである。
【0235】
ここで着色剤微粒子を分散させる水系媒体中に含有される界面活性剤は臨界ミセル濃度(CMC)以上の濃度で溶解しているものであり、使用される界面活性剤は、前記重合工程で使用するものと同一のものを使用することができる。
【0236】
着色剤粒子の分散処理に使用する分散機は、特に限定されないが、好ましくは、高速回転するローターを備えた攪拌装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)、超音波分散機、機械的ホモジナイザー、マントンゴーリン、圧力式ホモジナイザー等の加圧分散機、ゲッツマンミル、ダイヤモンドファインミル等の媒体型分散機が挙げられる。
【0237】
〔塩析/融着工程〕
この塩析/融着工程は、樹脂粒子と前記の様に分散して得られた着色剤粒子とを塩析/融着させる(塩析と融着とを同時に起こさせる)ことによって、不定形(非球形)のトナー粒子を得る工程である。
【0238】
本発明でいう塩析/融着とは、塩析(粒子の凝集)と融着(粒子間の界面消失)とが同時に起こること、または、塩析と融着とを同時に起こさせる行為をいう。塩析と融着とを同時に行わせるためには、樹脂粒子を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)以上の温度条件下において粒子(樹脂粒子、着色剤粒子)を凝集させる必要がある。
【0239】
この塩析/融着工程では、樹脂粒子および着色剤粒子とともに、荷電制御剤などの内添剤粒子(数平均一次粒子径が10〜1000nm程度の微粒子)を塩析/融着させてもよい。また、着色剤粒子は、表面改質されていてもよく、表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができる。
【0240】
樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させるためには、樹脂粒子および着色剤粒子が分散している分散液中に、臨界凝集濃度以上の塩析剤(凝集剤)を添加するとともに、この分散液を樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)以上に加熱することが必要である。
【0241】
塩析/融着させるために好適な温度範囲としては、(Tg+10)〜(Tg+50℃)とされ、特に好ましくは(Tg+15)〜(Tg+40℃)とされる。また、融着を効果的に行なわせるために、水に無限溶解する有機溶媒を添加してもよい。
【0242】
また、本発明では樹脂粒子と着色剤を水系媒体中において塩析、凝集、融着させて着色粒子(本発明では、トナー粒子と呼ぶ)を得た後、前記トナー粒子を水系媒体から分離するときに、水系媒体中に存在している界面活性剤のクラフト点以上の温度で行うことが好ましく、更に好ましくは、クラフト点〜(クラフト点+20℃)の温度範囲で行うことである。
【0243】
上記のクラフト点とは、界面活性剤を含有した水溶液が白濁化しはじめる温度であり、クラフト点の測定は下記のように行われる。
【0244】
《クラフト点の測定》
塩析、凝集、融着する工程で用いる水系媒体すなわち界面活性剤溶液に、実際に使用する量の凝集剤を加えた溶液を調製し、この溶液を1℃で5日間貯蔵した。次いで、この溶液を攪拌しながら透明になるまで徐々に加熱した。溶液が透明になった温度をクラフト点として定義する。
【0245】
本発明で用いられるセル構造を有するトナーは、上記に記載の金属元素(形態として、金属、金属イオン等が挙げられる)をトナー中に350ppm〜35000ppm含有することが好ましく、更に好ましくは500ppm〜30000ppmである。
【0246】
トナー中の金属イオン残存量の測定は、蛍光X線分析装置「システム3270型」〔理学電気工業(株)製〕を用いて、凝集剤として用いられる金属塩の金属種(例えば、塩化カルシウムに由来するカルシウム等)から発する蛍光X線強度を測定することによって求めることができる。具体的な測定法としては、凝集剤金属塩の含有割合が既知のトナーを複数用意し、各トナー5gをペレット化し、凝集剤金属塩の含有割合(質量ppm)と、当該金属塩の金属種からの蛍光X線強度(ピーク強度)との関係(検量線)を測定する。次いで、凝集剤金属塩の含有割合を測定すべきトナー(試料)を同様にペレット化し、凝集剤金属塩の金属種からの蛍光X線強度を測定し、含有割合すなわち「トナー中の金属イオン残存量」を求めることができる。
【0247】
本発明に用いられるトナーは、塩析/融着する樹脂粒子表面に塩を多めに吸着させながら更に塩析/融着させることで、セル構造化が可能である。
【0248】
本発明に用いられるトナーでは、塩を多く残存させるために界面活性剤の代わりに高分子分散剤を使用したり、あるいは界面活性剤と高分子分散剤を併用することで塩の残存量を制御することが好ましい。
【0249】
高分子分散剤としては、具体的にはポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸が挙げられ、分子量は3000〜10000のものが好ましく用いられる。
【0250】
〔熟成工程〕
熟成工程は、塩析/融着工程に後続する工程であり、樹脂粒子の融着後も温度を樹脂のTg+15〜Tg+40℃に保ち、一定の強度で攪拌を継続する。
【0251】
〔濾過・洗浄工程〕
この濾過・洗浄工程では、上記の工程で得られたトナー粒子の分散系から当該トナー粒子を濾別する濾過処理と、濾別されたトナー粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤や塩析剤などの付着物を除去する洗浄処理とが施される。ここに、濾過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧濾過法、フィルタープレス等を使用して行う濾過法など特に限定されるものではない。
【0252】
〔乾燥工程〕
この工程は、洗浄処理されたトナー粒子を乾燥処理する工程である。
【0253】
この工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、攪拌式乾燥機などを使用することが好ましい。
【0254】
乾燥処理されたトナー粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは2質量%以下とされる。
【0255】
次に、トナー製造工程で用いられる各構成因子について、詳細に説明する。
(重合性単量体)
本発明に用いられる樹脂(バインダー)を造るための重合性単量体としては、疎水性単量体を必須の構成成分とし、必要に応じて架橋性単量体が用いられる。また、下記の様に構造中に酸性極性基を有する単量体又は塩基性極性基を有する単量体を少なくとも1種類含有するのが望ましい。
【0256】
(1)疎水性単量体
単量体成分を構成する疎水性単量体としては、特に限定されるものではなく従来公知の単量体を用いることができる。また、要求される特性を満たすように、1種または2種以上のものを組み合わせて用いることができる。
【0257】
具体的には、モノビニル芳香族系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、モノオレフィン系単量体、ジオレフィン系単量体、ハロゲン化オレフィン系単量体等を用いることができる。
【0258】
ビニル芳香族系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン系単量体およびその誘導体が挙げられる。
【0259】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
【0260】
ビニルエステル系単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等が挙げられ、ビニルエーテル系単量体としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0261】
又、モノオレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、ジオレフィン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
【0262】
(2)架橋性単量体
樹脂粒子の特性を改良するために架橋性単量体を添加しても良い。架橋性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、ジエチレングリコールメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、フタル酸ジアリル等の不飽和結合を2個以上有するものが挙げられる。
【0263】
(3)酸性極性基を有する単量体
酸性極性基を有する単量体としては、(a)カルボキシル基(−COOH)を有するα,β−エチレン性不飽和化合物、及び、(b)スルホン基(−SO3H)を有するα,β−エチレン性不飽和化合物を挙げることができる。
【0264】
(a)のカルボキシル基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物の例としては、アクリル酸、メタアクリル酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、マレイン酸モノブチルエステル、マレイン酸モノオクチルエステル、およびこれらのNa、Zn等の金属塩類等を挙げることができる。
【0265】
(b)のスルホン基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物の例としては、スルホン化スチレン、及びそのNa塩、アリルスルホコハク酸、アリルスルホコハク酸オクチル、及びこれらのNa塩等を挙げることができる。
【0266】
(4)塩基性極性基を有するモノマー
塩基性極性基を有するモノマーとしては、(a)アミン基或いは4級アンモニウム基を有する炭素原子数1〜12、好ましくは2〜8、特に好ましくは2の脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、(b)(メタ)アクリル酸アミドあるいは、随意N上で炭素原子数1〜18のアルキル基でモノ又はジ置換された(メタ)アクリル酸アミド、(c)Nを環員として有する複素環基で置換されたビニール化合物及び(d)N,N−ジアリル−アルキルアミン或いはその四級アンモニウム塩を例示することができる。中でも、(a)のアミン基或いは四級アンモニウム基を有する脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステルが塩基性極性基を有するモノマーとして好ましい。
【0267】
(a)のアミン基或いは四級アンモニウム基を有する脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステルの例としては、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、上記4化合物の四級アンモニウム塩、3−ジメチルアミノフェニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0268】
(b)の(メタ)アクリル酸アミド或いはN上で随意モノ又はジアルキル置換された(メタ)アクリル酸アミドとしては、アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、ピペリジルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−オクタデシルアクリルアミド等を挙げることができる。
【0269】
(c)のNを環員として有する複素環基で置換されたビニル化合物としては、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニル−N−メチルピリジニウムクロリド、ビニル−N−エチルピリジニウムクロリド等を挙げることができる。
【0270】
(d)のN,N−ジアリル−アルキルアミンの例としては、N,N−ジアリルメチルアンモニウムクロリド、N,N−ジアリルエチルアンモニウムクロリド等を挙げることができる。
【0271】
(重合開始剤)
本発明に用いられるラジカル重合開始剤は、水溶性であれば適宜使用が可能である。例えば、過硫酸塩(例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物(例えば、4,4′−アゾビス4−シアノ吉草酸及びその塩、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩等)、パーオキシド化合物等が挙げられる。更に、上記ラジカル重合開始剤は、必要に応じて還元剤と組み合せレドックス系開始剤とする事が可能である。レドックス系開始剤を用いることにより、重合活性を上昇させ、重合温度の低下が図れ、更に、重合時間の短縮が達成できる等好ましい面を有している。
【0272】
重合温度は、重合開始剤の最低ラジカル生成温度以上であれば、特に限定されるものではないが例えば50℃から90℃の範囲である。但し、過酸化水素−還元剤(アスコルビン酸等)を組み合わせた常温開始の重合開始剤を用いることで、室温またはそれ以上の温度で重合することも可能である。
【0273】
(連鎖移動剤)
分子量を調整することを目的として、公知の連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸ブチル、チオグリコール酸t−ブチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸デシル、チオグリコール酸ドデシル、エチレングリコールのメルカプト基を有する化合物を挙げることができる。このうち、トナー加熱定着時の臭気を抑制する観点で、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル、n−オクチルメルカプタンが特に好ましい。
【0274】
(界面活性剤)
前述の重合性単量体を使用して、特にミニエマルジョン重合を行うためには、界面活性剤を使用して水系媒体中に油滴分散を行うことが好ましい。この際に使用することのできる界面活性剤としては、特に限定されるものでは無いが、下記のイオン性界面活性剤を好適な化合物の例として挙げることができる。
【0275】
イオン性界面活性剤としては、例えば、スルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等)、硫酸エステル塩(ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム等)、脂肪酸塩(オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等)が挙げられる。
【0276】
本発明においては、下記一般式(1)、(2)の界面活性剤が特に好ましく用いられる。
【0277】
一般式(1) R1(OR2)nOSO3M
一般式(2) R1(OR2)nSO3M
一般式(1)、(2)において、R1は炭素数6〜22のアルキル基またはアリールアルキル基を表すが、好ましくは炭素数8〜20のアルキル基またはアリールアルキル基であり、更に好ましくは炭素数9〜16のアルキル基またはアリールアルキル基である。
【0278】
R1で表される炭素数6〜22のアルキル基としては、例えば、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、R2で表されるアリールアルキル基としては、ベンジル基、ジフェニルメチル基、シンナミル基、スチリル基、トリチル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0279】
一般式(1)、(2)において、R2は炭素数2〜6のアルキレン基を表すが、好ましくは炭素数2〜3のアルキレン基である。R2で表される炭素数2〜6のアルキレン基としては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、エチルエチレン基等が挙げられる。
【0280】
一般式(1)、(2)において、nは1〜11の整数であるが、好ましくは2〜10、更に好ましくは2〜5であり、特に好ましくは2〜3である。
【0281】
一般式(1)、(2)において、Mで表される1価の金属元素としてはナトリウム、カリウム、リチウムが挙げられる。中でも、ナトリウムが好ましく用いられる。
【0282】
以下に、一般式(1)、(2)で表される界面活性剤の具体例を示すが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0283】
化合物(101):C10H21(OCH2CH2)2OSO3Na
化合物(102):C10H21(OCH2CH2)3OSO3Na
化合物(103):C10H21(OCH2CH2)2SO3Na
化合物(104):C10H21(OCH2CH2)3SO3Na
化合物(105):C8H17(OCH2CH(CH3))2OSO3Na
化合物(106):C18H37(OCH2CH2)2OSO3Na
(樹脂粒子、トナーの分子量分布)
本発明に用いられるトナーは、その分子量分布のピーク又は肩が、100,000〜1,000,000、及び1,000〜50,000に存在することが好ましく、更に分子量分布のピーク又は肩が、100,000〜1,000,000、25,000〜150,000及び1,000〜50,000に存在するものであることが好ましい。
【0284】
樹脂粒子の分子量は、100,000〜1,000,000の領域にピークもしくは肩を有する高分子量成分と、1,000から50,000未満の領域にピークもしくは肩を有する低分子量成分の両成分を少なくとも含有する樹脂が好ましく、更に好ましくは、15,000〜100,000の部分にピーク又は肩を有する中間分子量体の樹脂を使用することが好ましい。
【0285】
前述のトナーあるいは樹脂の分子量測定方法は、THF(テトラヒドロフラン)を溶媒としたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定がよい。すなわち、測定試料0.5〜5mg、より具体的には1mgに対してTHFを1.0ml加え、室温にてマグネチックスターラーなどを用いて撹拌を行い、充分に溶解させる。次いで、ポアサイズ0.45〜0.50μmのメンブランフィルターで処理した後に、GPCへ注入する。GPCの測定条件は、40℃にてカラムを安定化させ、THFを毎分1.0mlの流速で流し、1mg/mlの濃度の試料を約100μl注入して測定する。カラムは、市販のポリスチレンジェルカラムを組み合わせて使用することが好ましい。例えば、昭和電工社製のShodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807の組合せや、東ソー社製のTSKgelG1000H、G2000H、G3000H、G4000H、G5000H、G6000H、G7000H、TSK guard columnの組合せなどを挙げることができる。又、検出器としては、屈折率検出器(IR検出器)、あるいはUV検出器を用いるとよい。試料の分子量測定では、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作成した検量線を用いて算出する。検量線作成用のポリスチレンとしては10点程度用いるとよい。
【0286】
(凝集剤)
本発明では、水系媒体中で調製した樹脂粒子の分散液から、樹脂粒子を塩析、凝集、融着する工程において、金属塩を凝集剤として好ましく用いることができるが、2価または3価の金属塩を凝集剤として用いることが更に好ましい。その理由は、1価の金属塩よりも2価、3価の金属塩の方が臨界凝集濃度(凝析値あるいは凝析点)が小さいため好ましい。さらに、前述のセル構造を形成するためにも多価金属塩が好ましい。
【0287】
本発明で用いられる凝集剤は、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の塩である1価の金属塩、例えばカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の塩やマンガン、銅等の2価の金属塩、鉄やアルミニウム等の3価の金属塩等が挙げられる。
【0288】
これら金属塩の具体的な例を以下に示す。1価の金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、2価の金属塩としては、塩化カルシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等が挙げられ、3価の金属塩としては、塩化アルミニウム、塩化鉄等が挙げられる。これらは、目的に応じて適宜選択されるが臨界凝集濃度の小さい2価や3価の金属塩が好ましい。
【0289】
本発明で云う臨界凝集濃度とは、水性分散液中の分散物の安定性に関する指標であり、凝集剤を添加し、凝集が起こるときの凝集剤の添加濃度を示すものである。この臨界凝集濃度は、ラテックス自身及び分散剤により大きく変化する。例えば、岡村誠三他著 高分子化学17,601(1960)等に記述されており、これらの記載に従えば、その値を知ることが出来る。又、別の方法として、目的とする粒子分散液に所望の塩を濃度を変えて添加し、その分散液のζ電位を測定し、ζ電位が変化し出す点の塩濃度を臨界凝集濃度とすることも可能である。
【0290】
本発明では、金属塩を用いて臨界凝集濃度以上の濃度になるように重合体微粒子分散液を処理する。この時、当然の事ながら、金属塩を直接加えるか、水溶液として加えるかは、その目的に応じて任意に選択される。水溶液として加える場合には、重合体粒子分散液の容量と金属塩水溶液の総容量に対し、添加した金属塩が重合体粒子の臨界凝集濃度以上になる必要がある。
【0291】
本発明では、金属塩の濃度は、臨界凝集濃度以上であれば良いが、セル構造を形成させる必要上、臨界凝集濃度の1.5倍以上、更に好ましくは2.0倍以上添加するとよい。
【0292】
(着色剤)
本発明に用いられるトナーは、上記の複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着して得られるものである。本発明に係るトナーを構成する着色剤(複合樹脂粒子との塩析/融着に供される着色剤粒子)としては、各種の無機顔料、有機顔料、染料を挙げることができる。無機顔料としては、従来公知のものを用いることができる。具体的な無機顔料を以下に例示する。
【0293】
黒色の顔料としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、更にマグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
【0294】
これらの無機顔料は所望に応じて単独または複数を選択併用する事が可能である。また顔料の添加量は重合体に対して2〜20質量%であり、好ましくは3〜15質量%が選択される。
【0295】
磁性トナーとして使用する際には、前述のマグネタイトを添加することができる。この場合には所定の磁気特性を付与する観点から、トナー中に20〜60質量%添加することが好ましい。
【0296】
有機顔料及び染料も従来公知のものを用いることができ、具体的な有機顔料及び染料を以下に例示する。
【0297】
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0298】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー156等が挙げられる。
【0299】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0300】
また、染料としては、例えば、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等を用いることができ、またこれらの混合物も用いることができる。
【0301】
これらの有機顔料及び染料は、所望に応じて、単独または複数を選択併用することが可能である。また、顔料の添加量は、重合体に対して2質量%〜20質量%であり、好ましくは3質量%〜15質量%である。
【0302】
本発明に用いられるトナーを構成する着色剤(着色剤粒子)は、表面改質されていてもよい。表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができ、具体的にはシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等を好ましく用いることができる。
【0303】
シランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のアルコキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン等のシロキサン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0304】
チタンカップリング剤としては、例えば、味の素社製の「プレンアクト」と称する商品名で市販されているTTS、9S、38S、41B、46B、55、138S、238S等、日本曹達社製の市販品A−1、B−1、TOT、TST、TAA、TAT、TLA、TOG、TBSTA、A−10、TBT、B−2、B−4、B−7、B−10、TBSTA−400、TTS、TOA−30、TSDMA、TTAB、TTOP等が挙げられる。アルミニウムカップリング剤としては、例えば、味の素社製の「プレンアクトAL−M」等が挙げられる。
【0305】
これらの表面改質剤の添加量は、着色剤に対して0.01質量%〜20質量%であることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%〜5質量%である。また、着色剤粒子の表面改質法としては、着色剤粒子の分散液中に表面改質剤を添加し、この系を加熱して反応させる方法が挙げられる。この様にして表面改質された着色剤粒子は、濾過により採取され、同一の溶媒による洗浄処理と濾過処理が繰り返された後、乾燥処理されて得られるものである。
【0306】
(離型剤)
本発明に使用されるトナーは、離型剤を含有した樹脂粒子を水系媒体中において融着させ、熟成工程により離型剤を適度に凝集させてセル構造を形成させたトナーであることが好ましい。この様に樹脂粒子中に離型剤を含有させた樹脂粒子を着色剤粒子と水系媒体中で塩析/融着させることで、微細に離型剤が分散されたトナーを得ることができる。ここで、熟成工程とは、樹脂粒子の融着後も温度を離型剤の融点±20℃の範囲で攪拌を継続する工程をいうものである。
【0307】
本発明に係るトナーでは、離型剤として、低分子量ポリプロピレン(数平均分子量=1500〜9000)や低分子量ポリエチレン等が好ましく、特に好ましくは、下記式で表されるエステル系化合物である。
【0308】
R1−(OCO−R2)n
式中、nは1〜4の整数で、好ましくは2〜4、更に好ましくは3〜4、特に好ましくは4である。R1、R2は、各々置換基を有しても良い炭化水素基を示す。R1は、炭素数1〜40、好ましくは1〜20、更に好ましくは2〜5がよい。R2は、炭素数1〜40、好ましくは16〜30、更に好ましくは18〜26がよい。
【0309】
次に代表的な化合物の例を以下に示す。
【0310】
【化15】
【0311】
【化16】
【0312】
また、本発明では離型剤として結晶性ポリエステルも用いることができるものであるが、結晶性ポリエステルとしては、脂肪族ジオールと、脂肪族ジカルボン酸(酸無水物および酸塩化物を含む)とを反応させて得られるポリエステルが好ましい。
【0313】
結晶性ポリエステルを得るために使用されるジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−ブテンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールZ、水素添加ビスフェノールA等を挙げることができる。
【0314】
結晶性ポリエステルを得るために使用されるジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコ酸、イタコン酸、グルタコ酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、これらの酸無水物あるいは酸塩化物を挙げることができる。
【0315】
特に好ましい結晶性ポリエステルとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノールとアジピン酸とを反応して得られるポリエステル、1,6−ヘキサンジオールとセバシン酸とを反応して得られるポリエステル、エチレングリコールとコハク酸とを反応して得られるポリエステル、エチレングリコールとセバシン酸とを反応して得られるポリエステル、1,4−ブタンジオールとコハク酸とを反応して得られるポリエステルを挙げることができ、これらのうち、1,4−シクロヘキサンジメタノールとアジピン酸とを反応して得られるポリエステルが最も好ましい。
【0316】
上記化合物の添加量は、トナー全体に対し1質量%〜30質量%、好ましくは2質量%〜20質量%、更に好ましくは3質量%〜15質量%である。
【0317】
(現像剤)
本発明に用いられるトナーは、二成分現像剤として用いられる。すなわち、トナーとキャリアとを混合した二成分現像剤である。この場合、キャリアの磁性粒子として、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を用いることが出来る。特にフェライト粒子が好ましい。上記磁性粒子は、その体積平均粒径としては15μm〜100μm、より好ましくは25μm〜80μmのものがよい。
【0318】
キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0319】
キャリアは、磁性粒子が更に樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
【0320】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、文中「部」とは「質量部」を表す。
【0321】
実施例1
《トナー用樹脂粒子の作製》
(樹脂粒子(1HML)の作製)
(1)核粒子の調製(第一段重合):樹脂粒子(1H)
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5000mlのセパラブルフラスコにポリビニルアルコール30.0gをイオン交換水3010gに溶解させた界面活性剤溶液(水系媒体)を仕込み、窒素気流下230rpmの攪拌速度で攪拌しながら、フラスコ内の温度を80℃に昇温させた。
【0322】
この界面活性剤溶液に、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)9.2gをイオン交換水200gに溶解させた開始剤溶液を添加し、温度を75℃とした後、スチレン70.1g、n−ブチルアクリレート19.9g、メタクリル酸10.9gからなる単量体混合液を1時間かけて滴下し、この系を75℃にて2時間にわたり加熱、攪拌することにより重合(第一段重合)を行い、樹脂粒子(高分子量樹脂からなる樹脂粒子の分散液)を調製した。これを「樹脂粒子(1H)」とする。
【0323】
(2)中間層の形成(第二段重合);樹脂粒子(1HM)
攪拌装置を取り付けたフラスコ内において、スチレン105.6g、n−ブチルアクリレート30.0g、メタクリル酸6.2g、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル5.6gからなる単量体混合液に、結晶性物質として、上記19)で表される化合物(以下、「例示化合物(19)」という。)98.0gを添加し、90℃に加温し溶解させて単量体溶液を調製した。
【0324】
一方、アニオン系界面活性剤(ドデシルスルホン酸ナトリウム)1.6gをイオン交換水2700mlに溶解させた界面活性剤溶液を98℃に加熱し、この界面活性剤溶液に、核粒子の分散液である前記樹脂粒子(1H)を固形分換算で28g添加した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)により、前記例示化合物(19)の単量体溶液を8時間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液(乳化液)を調製した。
【0325】
次いで、この分散液(乳化液)に、重合開始剤(KPS)5.1gをイオン交換水240mlに溶解させた開始剤溶液と、イオン交換水750mlとを添加し、この系を98℃にて12時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第二段重合)を行い、樹脂粒子(高分子量樹脂からなる樹脂粒子の表面が中間分子量樹脂により被覆された構造の複合樹脂粒子の分散液)を得た。これを「樹脂粒子(1HM)」とする。
【0326】
(3)外層の形成(第三段重合):樹脂粒子(1HML)
上記の様にして得られた樹脂粒子(1HM)に、重合開始剤(KPS)7.4gをイオン交換水200mlに溶解させた開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下に、スチレン300g、n−ブチルアクリレート95g、メタクリル酸15.3g、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル10.4gからなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第三段重合)を行った後、28℃まで冷却し樹脂粒子(高分子量樹脂からなる中心部と、中間分子量樹脂からなる中間層と、低分子量樹脂からなる外層とを有し、前記中間層に例示化合物(19)が含有されている複合樹脂粒子の分散液)を得た。この樹脂粒子を「樹脂粒子(1HML)」とする。
【0327】
この樹脂粒子(1HML)を構成する複合樹脂粒子は、138,000、80,000および13,000にピーク分子量を有するものであり、また、この複合樹脂粒子の重量平均粒径は142nmであった。
【0328】
(樹脂粒子(2HML)の調製)
ポリビニルアルコール30gを54gとしたこと以外は、樹脂粒子(1HML)と同様にして、樹脂粒子(高分子量樹脂からなる中心部と、中間分子量樹脂からなる中間層と、低分子量樹脂からなる外層とを有する複合樹脂粒子の分散液)を得た。この樹脂粒子を「樹脂粒子(2HML)」とする。
【0329】
この樹脂粒子(2HML)を構成する複合樹脂粒子は、188,000、78,000および11,000にピーク分子量を有するものであり、また、この複合樹脂粒子の重量平均粒径は112nmであった。
【0330】
(樹脂粒子(3HML)の調製)
ポリビニルアルコール30gを22gとしたこと以外は、樹脂粒子(1HML)と同様にして、樹脂粒子(高分子量樹脂からなる中心部と、中間分子量樹脂からなる中間層と、低分子量樹脂からなる外層とを有する複合樹脂粒子の分散液)を得た。この樹脂粒子を「樹脂粒子(3HML)」とする。
【0331】
この樹脂粒子(3HML)を構成する複合樹脂粒子は、111,000、54,000および17,000にピーク分子量を有するものであり、また、この複合樹脂粒子の重量平均粒径は164nmであった。
【0332】
(樹脂粒子(4HML)の調製)
ポリビニルアルコール30gの代わりにポリビニルピロリドン40gを使用したこと以外は、樹脂粒子(1HML)と同様にして、樹脂粒子(高分子量樹脂からなる中心部と、中間分子量樹脂からなる中間層と、低分子量樹脂からなる外層とを有する複合樹脂粒子の分散液)を得た。この樹脂粒子を「樹脂粒子(4HML)」とする。
【0333】
この樹脂粒子(4HML)を構成する複合樹脂粒子は、171,000、67,000および16,000にピーク分子量を有するものであり、また、この複合樹脂粒子の重量平均粒径は127nmであった。
【0334】
(樹脂粒子(5HML)の調製)
ポリビニルアルコール30gの代わりにポリビニルピロリドンを20g使用したこと以外は、樹脂粒子(1HML)と同様にして、樹脂粒子(高分子量樹脂からなる中心部と、中間分子量樹脂からなる中間層と、低分子量樹脂からなる外層とを有する複合樹脂粒子の分散液)を得た。この樹脂粒子を「樹脂粒子(5HML)」とする。
【0335】
この樹脂粒子(5HML)を構成する複合樹脂粒子は、162,000、82,000および18,000にピーク分子量を有するものであり、また、この複合樹脂粒子の重量平均粒径は82nmであった。
【0336】
(比較用樹脂粒子(比較1HML)の調製)
ポリビニルアルコール30gの代わりにアニオン系界面活性剤(ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム:DBS)7.08gを使用したこと以外は、樹脂粒子(1HML)と同様にして、樹脂粒子(高分子量樹脂からなる中心部と、中間分子量樹脂からなる中間層と、低分子量樹脂からなる外層とを有する複合樹脂粒子の分散液)を得た。この樹脂粒子を「比較用樹脂粒子(比較1HML)」とする。
【0337】
この樹脂粒子(比較1HML)を構成する複合樹脂粒子は、121,000、74,000および15,000にピーク分子量を有するものであり、また、この複合樹脂粒子の重量平均粒径は124nmであった。
【0338】
(比較用樹脂粒子(比較2HML)の調製)
ポリビニルアルコール30gの代わりにポリビニルアルコール8gおよびアニオン系界面活性剤(ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム:DBS)0.8gを使用したこと以外は、樹脂粒子(1HML)と同様にして、樹脂粒子(高分子量樹脂からなる中心部と、中間分子量樹脂からなる中間層と、低分子量樹脂からなる外層とを有する複合樹脂粒子の分散液)を得た。この樹脂粒子を「比較用樹脂粒子(比較2HML)」とする。
【0339】
この樹脂粒子(比較2HML)を構成する複合樹脂粒子は、121,000、74,000および15,000にピーク分子量を有するものであり、また、この複合樹脂粒子の重量平均粒径は124nmであった。
【0340】
(比較用樹脂粒子(比較3HML)の調製)
ポリビニルアルコール30gの代わりにポリビニルアルコール8gおよびアニオン系界面活性剤(ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム:DBS)1.6gを使用したこと以外は、樹脂粒子(1HML)と同様にして、樹脂粒子(高分子量樹脂からなる中心部と、中間分子量樹脂からなる中間層と、低分子量樹脂からなる外層とを有する複合樹脂粒子の分散液)を得た。この樹脂粒子を「比較用樹脂粒子(比較3HML)」とする。
【0341】
この樹脂粒子(比較3HML)を構成する複合樹脂粒子は、140,000、82,000および19,000にピーク分子量を有するものであり、また、この複合樹脂粒子の重量平均粒径は112nmであった。
【0342】
(トナー1〜5及び比較用トナー1〜3の製造)
アニオン系界面活性剤(101)C10H21(OCH2CH2)2OSO3Na59.0gをイオン交換水1600mlに攪拌溶解し、この溶液を攪拌しながら、カーボンブラック「リーガル330」(キャボット社製)420.0gを徐々に添加し、次いで「クレアミックス」(エム・テクニック(株)製)を用いて分散処理することにより、着色剤粒子の分散液(以下「着色剤分散液1」という。)を調製した。この着色剤分散液における着色剤粒子の粒子径を、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定したところ、重量平均粒径で89nmであった。
【0343】
樹脂粒子(1HML)420.7g(固形分換算)と、イオン交換水900gと、着色剤分散液1 166gとを、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、攪拌装置を取り付けた反応容器(四つ口フラスコ)に入れ攪拌した。容器内の温度を30℃に調製した後、この溶液に5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを8〜10.0に調製した。
【0344】
次いで、塩化アルミニウム12.1gをイオン交換水1000mlに溶解した水溶液を、攪拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、この系を6〜60分間かけて90℃まで昇温し、会合粒子の生成を行った。その状態で、「コールターカウンター TA−II」にて会合粒子の粒径を測定し、個数平均粒径が2〜7μmになった時点で、塩化ナトリウム80.4gをイオン交換水1000mlに溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させ、更に熟成処理として液温度98℃にて12時間にわたり加熱攪拌することにより、樹脂粒子粒子の融着継続させた(熟成工程)。
【0345】
その後、30℃まで冷却し、塩酸を添加してpHを2.0に調整し、攪拌を停止した。生成した会合粒子を濾過し、45℃のイオン交換水で繰り返し洗浄を行い、その後、40℃の温風で乾燥したのち、疎水性シリカ0.8質量部、疎水性酸化チタン1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサーの回転翼の周速を30m/sに設定し25分間混合しトナー1を得た。
【0346】
トナー1と同様に表1の組み合わせで樹脂粒子を選択し、熟成処理工程の温度、熟成時間、攪拌強度を制御することにより、トナーの形状および形状係数の変動係数を制御し、更に、液中分級により、トナー粒径および粒度分布の変動係数を調整して、表1に示す形状特性、粒度分布特性、及び表2に示すセル構造の特性を有するトナー1〜5および比較用トナー1〜3を得た。なお、表2では現像剤1〜5、比較用現像剤1〜3と記載されているが、これは以下の外部添加剤の添加処理をトナー1〜5、比較用トナー1〜3に行って得られたものである。
【0347】
【表1】
【0348】
【表2】
【0349】
以上の様にして得られたトナー1〜5及び比較用トナー1〜3の各々に、疎水性シリカ0.8質量部、疎水性酸化チタン1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサーの回転翼の周速を30m/sに設定し25分間混合した。なお、これらのトナーについて、外部添加剤の添加によってその形状や粒径は変化しないものである。
【0350】
評価機として、図1に記載のような画像形成装置構成を有するデジタル複写機(コロナ帯電、レーザ露光、二成分反転現像、静電転写、クリーニングレスシステムを有する)にて評価した。上記デジタル複写機には、下記に記載の感光体を搭載し、次いで、後述する帯電、露光、現像条件に設定し評価を行った。なお、帯電器〜現像器間のエアーをサンプリングし、ガステック社製の検知管式気体測定器を用いてオゾン濃度を測定し、5.5ppmのオゾン濃度であった。
【0351】
《感光体1の作製》
下記のように感光体1を作製した。
【0352】
(中間層塗布液の調製)
ポリアミド樹脂(アミランCM−8000:東レ社製) 60g
メタノール 1600ml
1−ブタノール 400ml
上記の材料を混合、溶解して中間層塗布液を調製した。この塗布液を円筒状アルミニウム基体上に浸漬塗布法で塗布し、膜厚0.3μmの中間層を形成した。
【0353】
(電荷発生層塗布液の調製)
チタニルフタロシアニン 60g
シリコーン樹脂溶液(KR5240、15%キシレン−ブタノール溶液
:信越化学社製) 700g
2−ブタノン 2000ml
上記の材料を混合し、サンドミルを用いて10時間分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を前記中間層の上に浸漬塗布法で塗布し、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0354】
(電荷輸送層塗布液の調製)
電荷輸送物質(4−メトキシ−4′−(4−メチル−α−フェニルスチリル)
トリフェニルアミン) 200g
ビスフェノールZ型ポリカーボネート(ユーピロンZ300
:三菱ガス化学社製) 300g
1,2−ジクロロエタン 2000ml
上記の材料を混合、溶解して電荷輸送層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法で塗布し、膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
【0355】
(樹脂層塗布液の調製)
メチルシロキサン単位80モル%、メチル−フェニルシロキサン単位20モル%からなるポリシロキサン樹脂10質量部にモレキュラーシーブ4Aを添加し、15時間静置し脱水処理した。この樹脂をトルエン10質量部に溶解し、これにメチルトリメトキシシラン5質量部、ジブチル錫アセテート0.2質量部を加え均一な溶液を調製した。この溶液にジヒドロキシメチルトリフェニルアミン(例示化合物T−1)6質量部、ヒンダードアミン(例示化合物2−1)0.3質量部を加えて混合し、樹脂層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷輸送層上に塗布した後、120℃、1時間の加熱硬化を行い、乾燥膜厚2μmの樹脂層の感光体1を作製した。
【0356】
評価は、市販のデジタル複写機Sitios7035(コニカ社製)に図1の磁気ブラシ帯電装置を取り付けた改造機に上記感光体を搭載し、上記で得られた現像剤1〜5、比較用の現像剤1〜3の各々について、高温高湿(HH)環境(30℃、80%RH)下、反転現像によりA4紙を用いて、各トナーに対して50万枚の文字プリント試験を行った。なお、白地部の感光体電位を−750V、現像バイアスを−550Vとした。
【0357】
1μm以下の微粉量、カブリ、トナー飛散発生枚数、現像ローラへの融着発生枚数、クリーニング不良発生枚数、画像の定着性について以下の評価基準にて評価を行った。
【0358】
《1μm以下の微粉量》
現像ローラ上のトナーをサンプリングし、コールターマルチサイザーにアパーチャー径1μmのアパーチャーを取り付け、1μm以下の微粉について個数基準の比率を測定した。測定は、プリント開始前の「初期」と20万プリント時の2回行った。
【0359】
《カブリ》
マクベス濃度計を用いて非画像部白地部分の未使用転写シートに対する相対濃度を測定した。
【0360】
《トナー飛散発生枚数》
転写極に溜まった飛散トナー汚れによる転写不良がハーフートーン画像に現れ始めた枚数で評価した。
【0361】
《現像装置によるクリーニング不良》
現像装置が感光体上の転写残トナーをクリーニング出来ずに、前(過去のコピー履歴のこと)の画像が重なって印字されはじめた枚数によって評価した。
【0362】
《現像ローラへの融着発生枚数》
現像ローラ表面を1万プリント毎に観察しながら、現像ローラの融着によるハーフトーンすじ状汚れが発生した枚数で評価した。
【0363】
《定着性:定着可能温度領域の評価》
熱ロール温度を130℃〜240℃まで10℃刻みで変更しつつ定着画像を作製した。なお、定着画像の出力に当たっては、A4サイズの普通紙(坪量64g/m2)を使用した。
【0364】
得られた定着画像の定着強度を、「電子写真技術の基礎と応用:電子写真学会編」第9章1.4項に記載のメンディングテープ剥離法に準じた方法を用いて定着率により評価した。具体的には、トナー付着量が0.6mg/cm2である2.54cm角のベタ定着画像を作製した後、スコッチメンディングテープ(住友3M社製)で剥離する前後の画像濃度を測定し、画像濃度の残存率を定着率として求めた。画像濃度の測定にはマクベス反射濃度計RD−918を使用し、定着率が95%以上得られた定着温度を定着可能温度とする。
【0365】
ここで、定着可能温度領域の評価は下記のようにランク評価した。
◎:100℃以上の温度領域がある場合(優良)
○:70℃〜100℃未満の温度領域がある場合(良好)
△:40℃〜70℃未満の温度領域がある場合(実用可能)
×:40℃未満の温度領域しかない場合(実用不可)
《帯電磁性粒子(帯電キャリア)の汚染》
画像形成50万枚時の帯電磁性粒子3gを採取し、アセトン100ml中にて攪拌、混合した後、波長500nmの透過率を測定した。実用可能なのは65%以上である。
【0366】
《帯電装置の寿命》
白地部の電位が−600Vまで低下し、画像上白地部にトナーがかぶった状態になる枚数を評価した。市場のニーズは、50万枚以上である。
【0367】
上記評価結果を表3に示す。
【0368】
【表3】
【0369】
上記表3の結果から明らかな様に、本発明の実施例である現像剤1〜5では、1μm以下の微粉量、カブリ、トナー飛散発生枚数、現像ローラへの融着発生枚数、現像装置によるクリーニング不良発生枚数、画像の定着性、帯電性磁性粒子(帯電キャリア)の汚染、帯電装置の寿命等の全ての評価項目について良好な結果が得られた。これに対して比較用の現像剤1〜3はいずれも本発明に記載の効果が得られないことが明らかである。
【0370】
【発明の効果】
本発明によれば、セル構造を有するトナーが微粉を発生しないので、微粉による影響のない良好な画像を形成する画像形成装置の提供を可能にした。
【0371】
本発明では、セル構造を有するトナー粒子は破砕強度が高く、しかも加熱定着時に変形し易い性質を有することにより定着性が確保され、また、微粉増加によるクリーニングの発生も見られない。さらに、微粉による現像ローラへの融着やトナー飛散もなく、かぶりのない良好な画質のトナー画像を長期にわたり安定して得ることを可能にした。
【0372】
また、特に、表面硬度の硬い感光体を有する画像形成装置と組合せた画像形成技術は、感光体と帯電装置の双方の寿命を伸ばすとともに、多数枚にわたる画像形成を長期的に繰り返しても安定したトナー画像が形成されることが可能となり、より好ましい効果を奏することを見出した。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁気ブラシを用いた接触式の磁気ブラシ帯電装置を示す図である。
【図2】図1の帯電装置による交流バイアス電圧と帯電電位との関係を示す図である。
【図3】本発明に係るクリーナレスプロセスを有する画像形成装置の概略図である。
【図4】本発明に係るクリーニング器を有する画像形成装置の概略図である。
【図5】セル構造を有するトナー粒子を示す模式図である。
【図6】プラズマオゾン処理装置の構成概略側面図である。
【図7】角がないトナー粒子の説明図である。
【符号の説明】
a セル
b セル壁
c 着色剤粒子
d 結晶性物質
1 円筒状チャンバー
2 試料
3 ガス用プラズマ切替ユニット
4 オゾンガス用プラズマ発生ユニット
5 アルゴンガス用プラズマ発生ユニット
6 ベンチレーション
7 酸素ガスボンベ
8 アルゴンガスボンベ
9 真空ポンプ
10 感光体ドラム
20 磁気ブラシ帯電装置
20a 帯電スリーブ
Claims (4)
- 少なくとも帯電、露光、現像、転写の各手段を有し、かつ感光体上にトナー像を形成した後、転写材に転写する画像形成装置において、
前記帯電手段が、感光体表面に接触配置された磁性粒子より形成される磁気ブラシであり、
前記トナー像を形成するトナー粒子を構成する樹脂が、セル構造を有するもので、該セルのフェレ水平径の平均値が20〜200nmであり、かつ該フェレ水平径の変動係数が10〜35%であることを特徴とする画像形成装置。 - 前記現像手段が、前記転写手段により前記トナー像を転写材に転写した後の前記感光体上に残存したトナーを回収するクリーニング手段を兼ねるものであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
- 前記感光体が、電荷輸送能を有する構造単位を有し、かつ架橋構造を有するシロキサン系樹脂を含有する樹脂層を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成装置を用いることを特徴とする画像形成方法。
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- 2003-03-25 JP JP2003082558A patent/JP2004004653A/ja active Pending
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