JP2004003081A - ガラスヤーン、ガラスヤーンパッケージおよびガラスヤーンの解舒方法 - Google Patents
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Abstract
【構成】本発明のガラスヤーンは、ガラスヤーンパッケージから解舒された後の撚り数(実際撚り数)が0.3以下であることを特徴し、また、ガラスヤーンパッケージは、撚りをほどくようにガラスヤーンを解舒するための解舒方向を認識できることを特徴し、ガラスヤーンパッケージからガラスヤーンを解舒する方法は、撚糸工程において撚りを付与しながらガラスストランドを風乾し、ボビンの軸方向から供給し、ボビンに巻き取ってガラスヤーンパッケージとし、ガラスストランドの供給方向とは逆の方向に前記ガラスヤーンパッケージからガラスヤーンを外取りで解舒することによって、ガラスヤーンの撚りをほどくことを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント配線基板用基材として好適なガラスクロスの製織に使用するためのガラスヤーン、ガラスヤーンパッケージおよびガラスヤーンの解舒方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ガラスクロスは以下に示す方法で製造される。まず、溶融ガラスを白金製のブッシングの底部に設けられた多数のノズルから引き出すことによって紡糸し、ガラスフィラメントの表面に集束剤を塗布した後、数十〜数千本のガラスフィラメントを束ねたガラスストランドをケーキとして巻き取る。次に、ケーキの外層からガラスストランドを解舒し、撚りを付与しながらボビンに巻き取ることによってガラスクロス用のガラスヤーンパッケージが作製される。さらに、ガラスヤーンパッケージから解舒されたガラスヤーンを経糸ならびに緯糸に使用し、エアージェットルームを用いてガラスクロスが製織される。
【0003】
その後、ガラスクロスに付着している有機成分を加熱焼却することにより取り除き(加熱脱油)、そのガラスクロスに熱硬化性樹脂を含侵させた後、積層し、樹脂を硬化させることによってプリント配線基板用の積層板が製造される。
【0004】
プリント配線基板用のガラスクロスには、積層板の品質を低下させないため、毛羽立ちが少ないこと、加熱脱油性が良好なこと等が求められる。
【0005】
ところで、近年のプリント配線基板における配線の高密度化のため、プリント配線基板の誘電率の均一化および加工性の向上を目的として、ガラスヤーンを拡幅した隙間の狭いガラスクロスが求められている。ガラスヤーンは撚り数が小さいほど拡幅しやすいため、隙間の狭いガラスクロスを得るためには撚り数の小さいガラスヤーンが必要となる。
【0006】
そもそもガラスヤーンの撚りは、ガラスヤーンの毛羽の発生を防止する目的で付与されている。従って、隙間の狭いガラスクロスを作製するために、撚糸工程においてガラスストランドの供給量とボビンの回転数を調整することによって従来の撚り数(0.3〜2.0のS撚りもしくはZ撚り)よりも撚り数の小さいガラスヤーンを作製しようとしても、撚糸工程で毛羽が発生しやすいため良好なガラスヤーンを生産することは難しかった。
【0007】
これに対して、撚糸工程を省略することによって撚り数の小さいガラスクロス用のガラスストランドを製造する方法が考え出されている(例えば、特許文献1参照。)。すなわち、この方法は、細番手のガラスストランドをケーキとして巻き取った後、ケーキから解舒したガラスストランドを直接ガラスクロスの製織に使用するものである。
【0008】
また、無芯円筒状に巻き取られたロービングパッケージから内取りで解舒する際にかかる撚りを相殺するようにロービングパッケージの台座を回転させて、撚り数の小さいストランドを得る方法が考え出されている(例えば、特許文献2参照。)。すなわち、ストランドをロービングパッケージから内取りで解舒する際にかかる撚りを相殺するようにロービングパッケージの台座を回転させるものであり、解舒されたストランドの撚り数はロービングパッケージに巻き取られていた状態の無撚りのままである。
【0009】
【特許文献1】
特開平9−268034号公報
【特許文献2】
特開平5−84838号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1に開示されている方法は、撚糸工程を省略するため撚り数の小さいガラスストランドを得ることができるが、ガラスストランドが大きな内径を有する無芯円筒状に巻き取られ、それから内取りで解舒されるため、現在最も広く使用されている片テーパー形状に巻き取られたガラスヤーンパッケージのボビンを棒に挿して固定する従来の製織設備では使用することが困難であった。
【0011】
また、特許文献2に開示されている方法は、ガラスクロスに使用されるガラスヤーンのようにストランドが細い場合、無芯円筒状に巻き取ると巻き厚が薄くなるため輸送時にへこみ等の不良が発生しやすい。また、高速で解舒されるガラスヤーンにかかる撚りを相殺するには高速で台座を回転させなければならず、ガラスヤーンを経糸に使用すると、経糸の本数分(通常約500程度)の台座が必要になり、経済的および設備的に問題があった。
【0012】
本発明の目的は、従来の製織設備を使用でき、拡幅しやすく隙間の狭いガラスクロスを製織でき、プリント配線基板の誘電率の均一化および加工性の向上を可能にするガラスヤーン、ガラスヤーンパッケージおよびガラスヤーンの解舒方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明のガラスヤーンは、ガラスヤーンパッケージから解舒された後の撚り数(実際撚り数)が0.3以下であることを特徴とする。ここで、実際撚り数は、ガラスヤーンパッケージから解舒された後のガラスヤーン1インチあたりの撚り回数である。
【0014】
ガラスヤーンパッケージに巻き取られた状態でのガラスヤーンの撚り数は、0.01以上であると好ましい。この撚り数は、JIS R 3420に基づいて測定されたものである。
【0015】
また、本発明のガラスヤーンパッケージは、撚りをほどくようにガラスヤーンを解舒するための解舒方向を認識できることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のガラスヤーンの解舒方法は、撚糸工程において撚りを付与しながらガラスストランドをボビンの軸方向から供給し、ボビンに巻き取ってガラスヤーンパッケージとし、ガラスストランドの供給方向とは逆の方向に前記ガラスヤーンパッケージからガラスヤーンを外取りで解舒することによって、ガラスヤーンの撚りをほどくことを特徴とする。ここで、外取りとはガラスヤーンパッケージの外周側からガラスヤーンを解舒する方式である。
【0017】
【作用】
ガラスヤーンの撚り数は、通常JIS R 3420においてボビンに巻き取られた状態のガラスヤーン1インチあたりの撚り回数と規定され、ボビンの軸を中心にボビンを回転させて解舒したガラスヤーンから測定される。しかし、実際使用されるガラスヤーンは、ボビンを固定したまま解舒されるため、ガラスヤーンがボビンを1周するたびに1回撚りがかかり、実際使用されるガラスヤーンの撚り数はボビンに巻き取られた撚り数とは異なる。JIS R 3420で規定されたガラスヤーンの撚り数よりも実際使用される解舒後のガラスヤーンの撚り数(実際撚り数)の方がガラスクロスの特性と関係が深いため、実際撚り数について検討した。
【0018】
本発明のガラスヤーンは、ガラスヤーンパッケージから解舒された後の撚り数(実際撚り数)が0.3以下、好ましくは0.2以下であるため、従来の製織設備を使用して拡幅しやすく隙間の狭いガラスクロスを製織でき、プリント配線基板の誘電率の均一性および加工性が向上する。すなわち、本発明のガラスヤーンは一度ガラスヤーンパッケージに巻き取られるため、ガラスヤーンパッケージのボビンを棒に挿して固定する従来の製織設備が使用できる。また、実際撚り数が0.3以下であるため、ガラスクロスを製織する際ガラスヤーンが拡幅しやすく、ガラスクロスの隙間が狭くなりやすい。なお、解舒したガラスヤーンの撚り方向は、左ネジ方向に撚られたS撚りであっても右ネジ方向に撚られたZ撚りであっても構わない。また、ガラスヤーンは、一般にガラス繊維に使用されるアルカリをほとんど含有しないEガラス製であっても耐薬品性に優れたCガラス製であっても誘電率が低いDガラス製であってもよく、Eガラスは、質量%でSiO2 52〜55%、Al2O3 14〜17%、B2O3 6〜9%、CaO 16〜22%、MgO 0.5〜5%の組成を有する。
【0019】
また、本発明のガラスヤーンは、ガラスヤーンパッケージに巻き取られた状態の撚り数が0.01以上、好ましくは0.1以上であると、撚糸の際に撚りが付与されているため、毛羽が発生しにくく、解舒の際にかかる撚りを撚糸の際に付与された撚りをほどくように解舒することで実際撚り数が0とすることも可能である。
【0020】
本発明のガラスヤーンは、ガラスストランドの供給方向と逆の方向に撚りをほどくように解舒されてなると、実際撚り数が小さくなりやすいため好ましい。ただし、ガラスヤーンパッケージに巻き取られた状態の撚り数が0.6よりも大きいと撚りをほどくように解舒しても実際撚り数が0.3より大きくなりやすい。
【0021】
本発明のガラスヤーンパッケージは、撚りをほどくようにガラスヤーンを解舒するための解舒方向を認識できるため、ガラスヤーンの解舒方向を間違えることなく撚りをほどくように解舒でき、実際撚り数の小さいガラスヤーンを得ることができる。ガラスヤーンの解舒方向を認識できるガラスヤーンパッケージとしては、例えば、ガラスヤーンが巻き取られていないボビンの両端部の長さが異なるガラスヤーンパッケージ、テーパー角が異なるダブルテーパー形状のガラスヤーンパッケージ、端部の形状や表面状態が異なるボビン、または、解舒方向を示す点、線、矢印等のマーキングが施されているガラスヤーンパッケージを使用することが可能であるが、特に解舒方向を示すマーキングが施されているガラスヤーンパッケージであると、ガラスヤーンの解舒方向を認識しやすいため好ましい。
【0022】
ボビンの直径は、10〜150mmであると好ましく、さらに20〜100mmであるとさらに好ましい。10mmより小さいと、巻き量が多い場合には巻き厚が大きくなり、ガラスヤーンパッケージに巻かれたガラスヤーンの最初と最後での実際撚り数の差が大きくなり、また、ボビンを高速で回転させガラスヤーンの巻き取り速度を上げることが困難となり、高い生産効率を維持しにくい。一方、150mmより大きいと、解舒の際に撚りをほどく効果が小さくなるため実際撚り数が小さくなりにくい。
【0023】
ガラスヤーンパッケージの形状は、巻き崩れしにくく、巻き取りや解舒が可能なものであれば紡錘形状、片テーパー形状、ダブルスクエア形状、ダブルテーパー形状等のいずれの形状であってもよいが、特にダブルテーパー形状であるとガラスヤーンをスムースに巻き取りや、解舒が可能であるため好ましい。
【0024】
ボビンの材質は、紙、ABS樹脂、ポリプロピレン樹脂、金属等種類は問わない。また、ボビンの形状は、筒状であると製織や整経時に棒に挿してガラスヤーンパッケージを固定することができる。円筒であるとスムースに巻き取りや解舒が可能であり毛羽が発生しにくいため好ましい。また、ボビンの中央部がくびれた円筒であるとガラスヤーンが巻き崩れしにくいため好ましい。
【0025】
また、本発明のガラスヤーンの解舒方法によれば、撚糸工程において、撚りを付与しながらガラスストランドをボビンの軸方向から供給し、ボビンに巻き取ってガラスヤーンパッケージとするため毛羽が発生しにくく、また、ガラスヤーンパッケージのボビンを棒に挿して固定する従来の製織設備に使用できるため、従来の製織設備で使用可能となる。さらに、ガラスストランドの供給方向とは逆の方向にガラスヤーンパッケージからガラスヤーンを外取りで解舒することによって、ガラスヤーンの撚りがほどかれるため容易に撚り数の小さいガラスヤーンを得ることができる。
【0026】
ガラスストランドの供給方向とは、ガラスストランドをボビンに巻き取る際にボビンへガラスストランドが供給される方向のことである。
【0027】
なお、ガラスヤーンは、通常乾燥した状態で使用され、ガラスストランドが巻き取られたケーキの状態で、ガラスヤーンパッケージに巻き取られる前にストランドの状態で、または、ガラスヤーンパッケージの状態で乾燥させることが可能であるが、特にガラスヤーンパッケージに巻き取られる前にストランドの状態で風乾されてなると、集束剤によって隣接するガラスストランド同士またはガラスヤーン同士が接着することがなく、解舒する際に持ち上がりやフィラメント切れが発生しにくく、製織効率が低下しにくいため好ましい。
【0028】
【実施例】
以下、本発明のガラスヤーンおよびその解舒方法を実施例と比較例を用いて詳細に説明する。
【0029】
表1は、実施例および比較例の実際撚り数を示す。また、図1は、ガラスヤーンパッケージを作製する方法を示す説明図、図2は、ガラスヤーンパッケージからガラスヤーンを解舒する方法を示す説明図である。
【0030】
【表1】
【0031】
[実施例1]
直径7μmのEガラスからなるガラスフィラメント200本の表面に集束剤を塗布し、1本のガラスストランドに束ね、ケーキとして巻き取った。次に図1に示すようにケーキ(図示せず)からガラスストランド1を解舒し、撚りを付与しながら風乾し、直径50mm、長さ250mmのボビン2に巻き幅200mmで10000mをダブルテーパー形状に巻き取り、ガラスヤーンパッケージ10を作製した。なお、ボビン2に巻き取ったガラスヤーンは撚り数が0.4のZ撚りであり、ガラスストランド1の供給方向と逆の方向が解舒方向であること示すマーキング3がボビン2に施されていた。
【0032】
続いて、図2に示されるように、作製したガラスヤーンパッケージ10からガラスヤーン4をマーキング3で示される解舒方向に外取りで解舒した。
【0033】
[実施例2]
直径60mmのボビンに撚り数が0.3のZ撚りでガラスヤーンを巻き取った以外は実施例1と同様の方法でガラスヤーンパッケージを作製し、実施例1と同様の方法で解舒した。
【0034】
[実施例3]
直径20mmのボビンに撚り数が0.3のZ撚りでガラスヤーンを巻き取った以外は実施例1と同様の方法でガラスヤーンパッケージを作製し、実施例1と同様の方法で解舒した。
【0035】
[実施例4]
直径80mmのボビンに撚り数が0.3のZ撚りでガラスヤーンを巻き取った以外は実施例1と同様の方法でガラスヤーンパッケージを作製し、実施例1と同様の方法で解舒した。
【0036】
[実施例5]
直径100mmのボビンに撚り数が0.3のZ撚りでガラスヤーンを巻き取った以外は実施例1と同様の方法でガラスヤーンパッケージを作製し、実施例1と同様の方法で解舒した。
【0037】
[実施例6]
直径150mmのボビンに撚り数が0.3のZ撚りでガラスヤーンを巻き取った以外は実施例1と同様の方法でガラスヤーンパッケージを作製し、実施例1と同様の方法で解舒した。
【0038】
[実施例7]
直径60mmのボビンに撚り数が0.15のZ撚りでガラスヤーンを巻き取った以外は実施例1と同様の方法でガラスヤーンパッケージを作製し、実施例1と同様の方法で解舒した。
【0039】
[比較例]
実施例1で作製したガラスヤーンパッケージからガラスヤーンをマーキングで示される解舒方向と逆の方向から外取りで解舒した。
【0040】
なお、実施例および比較例の実際撚り数は、ガラスヤーンをガラスヤーンパッケージから解舒した後、JIS R 3420に規定された所定長さ(つかみ間隔500mm)について撚り数を測定し、その測定値からインチあたりの撚り数を算出したものである。
【0041】
表1から明らかなように実施例1〜7は、解舒の際に撚りをほどいているため解舒されたガラスヤーンの実際撚り数が、ボビンに巻き取られた状態の撚り数よりも小さく、実際撚り数が0.3以下のガラスヤーンを得ることができた。
【0042】
一方、比較例は、解舒の際に撚りがさらにかかるためガラスヤーンの実際撚り数は、ボビンに巻き取られた状態の撚り数よりも大きくなっており、実際撚り数の小さいガラスヤーンを得ることができなかった。
【0043】
【発明の効果】
以上のように、本発明のガラスヤーンは、従来の製織設備を使用でき、拡幅しやすく隙間の狭いガラスクロスを製織でき、プリント配線基板の誘電率の均一化および加工性の向上を可能にするため、プリント配線基板用途に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】ガラスヤーンパッケージを作製する方法を示す説明図である。
【図2】ガラスヤーンパッケージからガラスヤーンを解舒する方法を示す説明図である。
【符号の説明】
1 ガラスストランド
2 ボビン
3 マーキング
4 ガラスヤーン
10 ガラスヤーンパッケージ
Claims (7)
- ガラスヤーンパッケージから解舒された後の撚り数(実際撚り数)が0.3以下であることを特徴とするガラスヤーン。
- ガラスヤーンパッケージに巻き取られた状態の撚り数が0.01以上であることを特徴とする請求項1に記載のガラスヤーン。
- 撚りをほどくようにガラスヤーンを解舒するための解舒方向を認識できることを特徴とするガラスヤーンパッケージ。
- 撚りをほどくようにガラスヤーンを解舒するための解舒方向を示すマーキングが施されてなることを特徴とする請求項3に記載のガラスヤーンパッケージ。
- ボビンの直径が10〜150mmであることを特徴とする請求項3または4に記載のガラスヤーンパッケージ。
- ガラスヤーンがボビンにダブルテーパー形状に巻き取られてなることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のガラスヤーンパッケージ。
- 撚糸工程において撚りを付与しながらガラスストランドをボビンの軸方向から供給し、ボビンに巻き取ってガラスヤーンパッケージとし、ガラスストランドの供給方向とは逆の方向に前記ガラスヤーンパッケージからガラスヤーンを外取りで解舒することによって、ガラスヤーンの撚りをほどくことを特徴とするガラスヤーンの解舒方法。
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