JP4123940B2 - ガラスクロスの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラスクロスの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ガラスクロスは、プリント配線基板等を構成する補強材として使用されている。プリント配線基板は電子機器等に用いられているが、電子機器等は近年の技術の高度化に伴い小型化、高機能化が目指されている。そのため、プリント配線基板用のガラスクロスも平滑性、薄物化が要求されている。
【0003】
ガラスクロスの薄物化のために無撚り硝子繊維ストランドを開繊処理し製織する方法がある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−324340号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、原糸に無撚りのガラスヤーンを用いてもガラスクロスの製造工程において以下のような問題点が生じていた。
【0006】
ガラスクロスの製造においては、まず紡糸工程では巻取りチューブにガラスヤーンが巻き取られたガラスケーキから引き出されたものや更に工業的に加撚したガラスヤーンを経糸及び緯糸として用いる。そして、ガラスクロスの製織工程では緯糸用のガラスヤーンは、織機上でガラスクロスの幅に相当する長さに測長される。一般的にこの測長はガラスケーキから引き出されたガラスヤーンを測長ドラムに複数回巻くことで行われている。ところが、測長ドラムにガラスヤーンを巻いて引き出すと、引き出す際にガラスヤーンが測長ドラムの外周を1周することでガラスヤーンが1回捩れることがある。ここで、「捩れ」とは、ガラス繊維フィラメントを束ねたものに更に工業的に加撚した場合の撚りではなく、そのような工業的な加撚が施されていない無撚りのガラスヤーンに、例えば測長ドラムから引き出すときやガラスケーキから引き出すとき等に自然に発生する撚りを意味する。
【0007】
従って、原糸に無撚りのガラスヤーンを用いても上述したように測長されたガラスヤーンには捩れが生じる場合があった。そして、そのように捩れが生じているとその部分でガラスクロスの厚さが増していた。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガラスクロスを構成するガラスヤーンに捩れが生じていないガラスクロスを製造する方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係るガラスクロスの製造方法は、測長ドラムで測長されたガラスヤーンを用いてガラスクロスを製造する方法であって、ガラスケーキを回転体上にガラスケーキの巻回軸が回転体の回転軸と平行になるように置き、ガラスケーキから略巻回軸方向にガラスヤーンを引き出し、ガラスヤーンを測長ドラムに巻きつけて測長して、当該測長されたガラスヤーンを用いてガラスクロスを製織し、測長ドラムにガラスヤーンを巻きつける際には、測長ドラムからガラスヤーンを引き出すときに生じる捩れの方向が、ガラスケーキから引き出されることでガラスヤーンに生じる捩れの方向と反対の方向になるようにガラスケーキから引き出されたガラスヤーンを測長ドラムに巻きつけ、測長ドラムに巻きつけるべきガラスヤーンが、測長ドラムで決まっており測長ドラムからガラスヤーンを引き出すときの捩れ量と同じ捩れ量を有するように、ガラスケーキからの引き出し量に応じて生じるガラスヤーンの捩れの変化に対応して回転体の回転速度を制御することを特徴とする。
【0010】
上記製造方法によれば、ガラスケーキから略巻回軸方向にガラスヤーンを引き出すことで生じる捩れと反対の捩れが生じるように測長ドラムにガラスヤーンを巻きつける。この際、測長ドラムに巻きつけることでキャンセルされる捩れが測長ドラムに巻きつけるべきガラスヤーンに生じているように、ガラスケーキからの引き出し量に応じて生じるガラスヤーンの捩れの変化に対応して回転体の回転速度を制御している。そのため、測長されたガラスヤーンの捩れは解消しており、その捩れが解消したガラスヤーンを用いてガラスクロスを製織することができる。
【0011】
また、上記本発明に係るガラスクロスの製造方法において、ガラスヤーンをガラスケーキの内側から引き出し、回転体の回転速度を、ガラスヤーンの引き出し量に応じて増加するように制御することが好適である。
【0012】
ガラスヤーンをガラスケーキの内側から引き出せば、ガラスケーキの内径は引き出し量に応じて長くなる。そのため引き出されたガラスヤーンに生じる引き出し長さあたりの捩れは小さくなる。一方、そのようなガラスヤーンの引き出し量に応じて生ずるガラスヤーンの捩れの変化に対応して回転体の回転速度を増加させている。従って、測長ドラムに巻きつけるべきガラスヤーンには測長ドラムでキャンセルされる捩れが生じている。
【0013】
また、本発明に係るガラスクロスの製造方法は、測長ドラムで測長されたガラスヤーンを用いてガラスクロスを製造する方法であって、ガラスケーキを回転体上にガラスケーキの巻回軸が回転体の回転軸と平行になるように置き、ガラスケーキから略巻回軸方向にガラスヤーンを引き出し、ガラスケーキにおけるガラスヤーンの引き出し位置の回転方向と反対方向に回転体を回転させ、ガラスヤーンの引き出しに応じて生じるガラスヤーンの捩れの変化に対応して当該捩れをキャンセルするように回転体の回転速度を制御し、回転体の回転速度の制御により捩れがキャンセルされたガラスヤーンを第1ドラムに巻きつけ、第1ドラムからガラスヤーンを引き出して測長ドラムに巻きつけて測長し、当該測長されたガラスヤーンを用いてガラスクロスを製織し、測長ドラムにガラスヤーンを巻きつける際には、測長ドラムからガラスヤーンを引き出すときの捩れの方向が、第1ドラムからガラスケーキが引き出されることでガラスヤーンに生じる捩れの方向と反対の方向になるように第1ドラムから引き出されたガラスヤーンを測長ドラムに巻きつける、ことを特徴とする。
【0014】
このような製造方法によれば、第1ドラムに巻きつけるべきガラスヤーンは捩れが生じていない状態である。従って、第1ドラムに巻きつけられ更にガラスヤーンが引き出された場合、そのガラスヤーンには第1ドラムに巻きつけられたことに起因する捩れが生じている。そして、そのガラスヤーンを第1ドラムにより生じた捩れと反対の捩れが生じように測長ドラムに巻きつけるので、測長ドラムから引き出されたガラスヤーンの捩れはキャンセルされる。
【0015】
なお、上記のように第1ドラムと測長ドラムとを用いるガラスクロスの製造方法において、ガラスヤーンをガラスケーキの内側から引き出した場合には、回転体の回転速度を、ガラスヤーンの引き出し量に応じて減速するように制御すれば良い。
【0016】
更に、本発明に係るガラスクロスの製造方法は、測長ドラムにより測長されたガラスヤーンを用いてガラスクロスを製造する方法であって、ガラスケーキを回転させ、そのガラスケーキの外側から外周方向にガラスヤーンを引き出して第2ドラムに巻きつけ、第2ドラムに巻きつけられているガラスヤーンを引き出して測長ドラムに巻きつけて測長し、測長されたガラスヤーンを用いてガラスクロスを製織し、測長ドラムにガラスヤーンを巻きつける際には、測長ドラムからガラスヤーンを引き出すときの捩れの方向が、第2ドラムから引き出されることでガラスヤーンに生じる捩れの方向と反対の方向になるように第2ドラムから引き出されたガラスヤーンを測長ドラムに巻きつける、ことを特徴とする。
【0017】
上記方法によれば、ガラスケーキの外側からガラスヤーンを外周方向に引き出しているので、ガラスヤーンを引き出した時点でガラスヤーンに捩れは生じない。また、測長ドラムには第2ドラムで生じた捩れと反対の捩れが生じるように巻きつける。従って、第2ドラムに起因するガラスヤーンの捩れは、測長ドラムに巻きつけて引き出すことでキャンセルされる。即ち、測長ドラムから引き出されたガラスヤーンは捩れが生じていない状態である。従って、そのような捩れが生じていないガラスヤーンを用いてガラスクロスを製織することができる。
【0018】
更にまた、本発明に係るガラスクロス製造方法は、上記の製造方法で製織されたガラスクロスに開繊処理を施すことを特徴とする。
【0019】
このように緯糸の捩れを極力少なくしたガラスクロスに開繊処理を施すことで捩れによるガラス繊維フィラメント同士の拘束が無いので、ガラス繊維フィラメントがスムーズに移動する為に開繊処理し易くなる。また、ガラスヤーンの捩れ部と捩れ無し部との差が無いのでガラスクロス全体が均一に開繊し、その結果としてガラスクロスを薄くすることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、同一要素には同一符号を用いるものとし、重複する説明は省略する。
【0021】
(第1の実施形態)
図1〜図4は、本実施形態におけるプリント基板用のガラスクロスの製造方法を説明した図である。
【0022】
本実施形態では、ガラスクロスの経糸及び緯糸として無撚りのガラスヤーン 、または緯糸のみを無撚りのガラスヤーン(以下、単に「ヤーン」という)10を用いる。通常、ガラスクロスを構成するヤーンはガラス繊維フィラメントに集束剤を塗布し、束ねたものを工業的に加撚し使用している。これに対して、本実施形態で用いる上記の無撚りのヤーン10とは、加撚されていない状態のヤーンを意味する。また、経糸用及び緯糸用のヤーン10としては、それらを構成しているガラス繊維フィラメントが共に異型断面繊維又は円形断面繊維であっても良いし、経糸用及び緯糸用のヤーン10のうちの一方が異型断面繊維で構成され他方が円形断面繊維で構成されていても良い。
【0023】
図1に示すようにガラスクロスは、基本的に紡糸工程S10、整経工程S12、製織工程S14、開繊処理工程S16、脱油工程S18及び表面処理工程S20を経て製造される。以下、各工程について説明する。
【0024】
紡糸工程S10では、巻取りチューブに無撚りのヤーン10を巻取り、ガラスケーキ(以下、単に「ケーキ」という)12を形成する。
【0025】
整経工程S12では、ケーキ12からヤーン10を捩れが生じないように引き出して整経する。
【0026】
ケーキ12からヤーン10を捩れが生じないように引き出すには、例えば、図2のようにケーキ12の外側から外周方向に引き出せば良い。本実施形態では、このようにケーキ12の外側からその外周方向にヤーン10を引き出す方式をクリール方式という。
【0027】
製織工程S14では、ケーキ12の内側からほぼ巻回軸αの方向にヤーン10を引き出し、図3に示す径D0の測長ドラム14にヤーン10を複数回巻き付けガラスクロスの幅の長さに相当する長さを測る。尚、ケーキ12からヤーン10をほぼ巻回軸αの方向に引き出すことをプル方式という。そして、その測長したヤーン10を緯糸とし、整経工程S12で整経されているヤーン10を経糸としてエアージェット織機、レピア織機などで製織する。織り方は、特に限定する必要はなく平織、朱子織り、綾織り、ななこ織りなどを用いれば良い。
【0028】
ところで、測長ドラム14にヤーン10を巻きつけると、測長ドラム14からヤーン10を引き出す際にヤーン10が測長ドラム14の外周を1周する毎にヤーン10が1回捩れる。径D(mm)のドラム等の筒状体に巻かれてその略中心軸方向に引き出されるときに発生する捩れの程度を、25(mm)あたりに対して25/(π・D)と表し、以下捩れ指数と呼ぶこととする。
【0029】
薄物のガラスクロスを製造する場合には測長ドラム14から引き出されたヤーン10の捩れの回数は3回/1200mm以下(捩れ指数:0.06以下)であることが必要であり、1回/1200mm以下(捩れ指数:0.02以下)が好ましく、0.5回/1200mm以下(捩れ指数:0.01以下)であることが更に好ましい。
【0030】
本実施形態では、上記測長ドラム14から引き出したヤーン10に捩れが生じないように測長している。図3を用いて本実施形態における測長方法を説明する。
【0031】
まず、図3に示すようにケーキ12をターンテーブル等の回転体16の上にケーキ12の巻回軸αが回転体16の回転軸βとほぼ一致するように置く。また、回転体16は図示しない制御装置に接続されており、回転速度が制御されるようになっている。
【0032】
次に、ケーキ12の内側からヤーン10をプル方式で引き出す。このようにプル方式でヤーン10を引き出すと、ヤーン10の引き出し位置Pは、ヤーン10が引き出されるにつれてケーキ10の内周に沿って回転する。そのため、ヤーン10に捩れが生じる。この捩れの方向はケーキ12の置き方に依存するが、本実施形態では引き出されたヤーン10に右まわりの捩れが生じる、即ち引き出し位置Pは図3の矢印Aの方向に回転するものとする。このような右まわりの捩れをS型の捩れという。また、S型の捩れと反対の捩れ、即ちヤーン10の左まわりの捩れをZ型の捩れという。
【0033】
そして、ケーキ12から引き出されたヤーン10を、測長ドラム14にZ型の捩れが生じるように巻きつける。
【0034】
上述したようにケーキ12からヤーン10を引き出す場合に、ヤーン10にS型の捩れが生じるように、即ちヤーン10が解除されていく方向(図3の矢印A)と同方向に回転体16を回転させる。また、回転体16の回転速度を、測長ドラム14に巻きつけるべきヤーン10に、その測長ドラム14でキャンセルされる量の捩れ、即ち測長ドラム14で生じるZ型の捩れの捩れ指数と同指数であるS型の捩れが常にヤーン10に発生しているように増加させる。このように回転速度を増加させる理由を次に説明する。尚、以下の説明では、測長ドラム14の径D0を150mmとする。また、ヤーン10を引き出す前のケーキ12の内径D1を150mmとし、ケーキ12の外径D2を300mmとする。
【0035】
ヤーン10の引き出し始めでは、内径D1が150mmであることから、ヤーン10に生じる捩れの捩れ指数S1は、0.053である。また、ケーキ12の外径D2は300mmであることから、引き出し位置Pが外径D2を1周する場合に対する捩れ指数S2は、0.027である。
【0036】
即ち、仮にケーキ12を固定台の上に置いていた場合に、ケーキ12からヤーン10を引き出すと、ヤーン10が引き出されるにつれてヤーン10に生じるS型の捩れの捩れ指数は、0.053から0.027に減少する。
【0037】
一方、測長ドラム14の径D0は150mmであることから、測長ドラム14による捩れの捩れ指数Zは0.053である。
【0038】
従って、測長ドラム14に巻きつけるべきヤーン10に、上記捩れ指数Zと同じ捩れ指数0.053であるS型の捩れを生じさせるためには、ヤーン10の捩れ指数の減少分(S1−S2)を回転体16の回転で補う必要がある。そして、捩れ指数の減少分を補うために回転体16の回転速度を増加させなければならない。
【0039】
ヤーン10が引き出されるにつれて回転体16の回転速度を上記のように制御することでケーキ12から引き出されたヤーン10には捩れ指数0.053のS型の捩れが常に生じている。一方、測長ドラム14の径D0は150mmであって、ヤーン10は測長ドラム14にZ型の捩れが生じるように巻かれる。そして、S型の捩れとZ型の捩れとは上述したように反対方向の捩れである。
【0040】
従って、測長ドラム14から引き出されるヤーン10は捩れがキャンセルされた無撚りのヤーン10である。この無撚りのヤーン10を緯糸用のヤーン10としてガラスクロスが製織される。
【0041】
開繊処理工程S16では、製織工程S14で製織されたガラスクロスを開繊処理する。開繊処理方法としては、ガラスクロスを超音波振動させた水中内で開繊させる超音波法、ガラスクロスを温水中で上下回転筒体によりプレスして開繊させる回転筒体による押圧法、ガラスクロスに柱状流高圧水を噴きつけて開繊させる柱状流高圧水噴射開繊法、バイブロウオッシャー法、稜線法などを適用すれば良い。
【0042】
脱油工程S18では、上記のように開繊処理工程S16を経たガラスクロスを脱油処理する。ここで、脱油処理とは、ヤーン10を構成しているガラス繊維フィラメントに付着している集束剤等を除去することであり、例えばガラスクロスを加熱炉等で熱処理することである。
【0043】
そして、脱油されたガラスクロスに表面処理工程S20において、カップリング剤をガラスクロスに含浸させてプリント配線基板用のガラスクロスとする。
【0044】
従来、ケーキ12は、固定されておりケーキ12からプル方式で引き出されたヤーン10は、測長ドラム14にZ型の捩れが生じるように巻きつけられていた。このようにすると、測長されたヤーン10の捩れは、ケーキ12の内径D1が測長ドラム14の径D0と同じ場合には解消されるが、ケーキ12の内径D1はヤーン10が引き出されるにつれて大きくなることから、全ての捩れは解消できなかった。
【0045】
これに対して、本実施形態ではケーキ12を回転体16上に置いている。そして、ケーキ12の内径D1の増加に伴い、測長ドラム14に巻きつけるべきヤーン10に測長ドラム14の捩れ指数と同じ捩れ指数のS型の捩れが常に生じているように回転体16をその回転速度を制御しながら回転させる。従って、ヤーン10が測長ドラム14で測長されると、測長ドラム14に巻かれる前に生じていた捩れは測長ドラム14からヤーン10を引き出すときにキャンセルされる。即ち、測長された緯糸用のヤーン10はケーキ12を構成しているヤーン10と同様の無撚りである。このようなヤーン10を用いてガラスクロスを製織すれば測長による捩れが生じないことから、ヤーン10の捩れによるガラス繊維フィラメント同士の拘束が無い為に、ガラスクロスを開繊処理した時にガラス繊維フィラメント単位まで均一に開繊でき、その結果ガラスクロスの厚みを薄くすることができる。
【0046】
また、本実施形態におけるガラスクロスの製造方法では、製織工程S14の後に開繊処理工程S16がある。例えば製織する前にヤーン10に開繊処理を施すと、製織する場合に、その開繊されているガラス繊維フィラメントが再度集束する恐れがあった。しかしながら、本実施形態では上述のように製織した後に開繊処理を施しているので開繊を効果的且つ確実に行え、工業生産上も効率が良い。
【0047】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。第2の実施形態も第1の実施形態と同様に図1の製造工程に従ってガラスクロスが製造される。ただし、製織工程S14において、測長されたヤーン10に捩れが発生しないように測長する手法が第1の実施形態と異なる。図4を参照して本実施形態におけるヤーン10の測長方法を説明する。
【0048】
第1の実施形態の場合と同様に、ケーキ12を回転体16の上にケーキ12の巻回軸αが回転体16の回転軸βとほぼ一致するように置く。図4のケーキ12のヤーン10を引き出す前の内径D1及び外径D2は第1の実施形態と同様に例えば150mm、300mmとする。
【0049】
ケーキ12の内側からヤーン10をプル方式で引き出す。ここで、ヤーン10の引き出しにより生じるS型の捩れがキャンセルされるように回転体16を回転させながらヤーン10を引き出す。回転体16はケーキ12から引き出すことから生じるヤーン10の捩れをキャンセルするように次のように制御している。
【0050】
ケーキ12からプル方式で引き出されるヤーン10に捩れが生じるのは、引き出される際にヤーン10の引き出し位置がケーキ12の内周に沿ってキャンセルされている場合、ヤーン10の引き出し位置はケーキ12の周方向に回転しない。ただし、ヤーン10は引き出されるにつれて内径D1が増加するためヤーン10の引き出し位置はケーキ12の径方向に移動する。従って、回転体16は、ヤーン10の引き出し位置がケーキ12の周方向に移動せずに径方向に移動するように制御する。
【0051】
より具体的には、回転体16の回転方向は、S型の捩れを解消するためにヤーン10にZ型の捩れが生じる方向、即ち、図4においてケーキ12におけるヤーン10の引き出し位置Pの回転方向(矢印Aの方向)と反対方向(矢印Bの方向)に回転させる。ところで、仮にケーキ12を固定台の上に置いてケーキ12からヤーン10を引き出す場合を考えると、ケーキ12からヤーン10を引き出せば、ヤーン10に生じるS型の捩れはケーキ12の内径D1から外径であるD2に変化し、捩れ指数はS1からS2、即ち0.053から0.027に減少する。従って、回転体16の回転速度は、そのような捩れ指数の減少に対応させて減速させるように制御する。
【0052】
上記回転体16の回転により捩れが解消されたヤーン10を、図4に示すように測長ドラム14の径D0とほぼ同じ径D0を有する第1ドラム18に巻きつける。第1ドラム18には、第1ドラム18から引き出される場合にヤーン10にS型の捩れが生じるようにヤーン10を巻きつける。
【0053】
そして、その第1ドラム18から当該ヤーン10を引き出して測長ドラム14にS型の捩れと反対の捩れであるZ型の捩れが生じるように巻きつける。
【0054】
第1ドラム18の径D0と測長ドラム14の径D0とは同一であり且つ第1ドラム18と測長ドラム14とから引き出されて生じる捩れの方向は互いに逆である。従って、第1ドラム18から引き出されることで生じた捩れは測長ドラム14から引き出される際に解消される。従って、測長されたヤーン10は、捩れが生じていない無撚りのヤーン10である。
【0055】
このような無撚りのヤーン10を緯糸に用いてガラスクロスを製織する。
【0056】
上記のようにして製織されたガラスクロスに対して第1の実施形態と同様に開繊処理、脱油処理及び表面処理を行い、プリント配線基板用のガラスクロスとする。
【0057】
本実施形態では、回転体16を回転させることでヤーン10が周方向に回転しないで引き出されるようになっている。そのため、ヤーン10が捩れているか否かを容易に判断することができる。また、測長ドラム14で測長されたヤーン10に捩れが生じていないことの作用・効果は第1の実施形態の場合と同様である。更に、製織した後に開繊処理を施すことの作用・効果も第1の実施形態の場合と同様である。
【0058】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について説明する。第3の実施形態も第1の実施形態と同様に図1の製造工程に従ってガラスクロスが製造される。ただし、製織工程S14において、測長に伴うヤーン10の捩れを解消する手法が第1の実施形態と異なる。
【0059】
第3の実施形態における製織工程S14では、図5のようにして測長する。
【0060】
まず、図6に示すようにケーキ12からヤーン10をクリール方式で引き出す。そして、測長ドラム14とほぼ同じ径D0を有する第2ドラム20にS型の捩れが生じように巻きつける。
【0061】
次に、第2ドラム20から引き出したヤーン10を測長ドラム14にZ型の捩れが生じるように、即ち第2ドラム20に巻きつけた方向と反対方向に巻きつける。
【0062】
上述のように、ケーキ12からクリール方式でヤーン10を引き出すと、第2ドラム20に巻かれるべきヤーン10には捩れが生じていない。一方、第2ドラム20にはS型の捩れが生じるように巻かれているので、第2ドラム20からその中心軸方向に引き出されたヤーン10にはS型の捩れが生じる。他方、測長ドラム14には、Z型の捩れが生じるように巻かれている。上述したように測長ドラム14と第2ドラム20との径はほぼ等しいことから、第2ドラム20による捩れの捩れ指数と測長ドラム14による捩れの捩れ指数とは同じである。従って、測長ドラム14に巻かれるべきヤーン10に生じていた捩れは、測長ドラム14から引き出される際にキャンセルされる。そのため、測長されたヤーン10は、捩れが生じていないヤーン10である。
【0063】
そして、その測長されたヤーン10を緯糸として用い、整経工程S12で整経されたヤーン10を経糸としてガラスクロスを製織する。
【0064】
上記のようにして製織されたガラスクロスを第1の実施形態及び第2の実施形態と同様に開繊処理、脱油処理及び表面処理を行い、プリント配線基板用のガラスクロスとする。
【0065】
本実施形態では、測長ドラム14の他に第2ドラム20を準備するだけで容易に測長されたヤーン10の捩れを解消することができる。また、測長ドラム14で測長されたヤーン10に捩れが生じていないことの作用・効果は第1の実施形態の場合と同様である。更に、製織した後に開繊処理を施すことの作用・効果も第1の実施形態の場合と同様である。
【0066】
上記第1の実施形態〜第3の実施形態では、測長ドラムにはZ型の捩れが生じるように巻きつけるようにしているが、特にその方向に限定する必要はない。第1の実施形態では、ケーキから引き出されて生じる捩れの方向と反対方向の捩れが生じるように巻きつければよく、第2の実施形態及び第3の実施形態では第2ドラムに巻きつけた方向と反対方向に巻きつければよい。
【0067】
更に、第1の実施形態では、回転体をケーキから引き出されるヤーンにS型の捩れが生じる方向に回転させており、第2の実施形態では、ヤーンにZ型の捩れが生じる方向に回転させているが、これらに限定する必要は無い。第1の実施形態では、ケーキから引き出されたヤーンの捩れが増す方向に回転させ、第2の実施形態では、引き出されたヤーンの捩れが解消する方向に回転させればよい。
【0068】
また、上記第1〜第3の実施形態では、異型断面繊維で構成されたヤーンまたは円形断面繊維のヤーンを用いても良い。
【0069】
更に、第2の実施形態における第1ドラム及び第3の実施形態における第2ドラムの径は測長ドラムの径とほぼ同じとしているが、それらの径は、測長されたガラスヤーンの捩れが、少なくとも3回/1200mm以下(捩れ指数:0.06以下)を満たしていればよい。
【0070】
また、上記第1〜第3の実施形態では、経糸、緯糸共に無撚りヤーン10を用いているが、経糸については通常、クリール方式でヤーン10を引き出して整経しているため、上記実施形態に示すような方式を用いなくてもヤーン10を引き出す際に捩れが発生することはない。また、本発明の実施形態の様に経糸、緯糸共に無撚りヤーン10を使用する事で絶大な効果を発揮するが、経糸は通常の加撚ヤーンを使用し、緯糸のみを無撚りヤーン10で実施しても効果は得られる。
【0071】
また、ガラスクロスの厚さとしては、100μm以下のガラスクロスを製造しているが必ずしも100μm以下に限る必要はない。上記実施形態ではガラスクロスの厚さが薄くなるほど効果的であり、30μm以下のガラスクロスを製造することもできる。
【0072】
更に、上記第1〜第3の実施形態では、開繊処理工程S16を製織工程S14と脱油工程S14との間に導入しているが、製織工程S14の後に導入されていれば良く、ガラスクロスの要求特性により、脱油工程S18の後、あるいは表面処理工程S20の後などに導入することができる。
【0073】
更にまた、第1〜第3の実施形態では、測長ドラム14を円筒状としているがこれに限定されない。例えば、測長ドラムからヤーンを引き出す方向に向けて細くなっているテーパ状の測長ドラム22としても良い。この場合、第2の実施形態の第1ドラム及び第3の実施形態の第2ドラムもそのテーパ状の測長ドラムと同形とする。テーパの形状は、ヤーン10の巻き付け位置による捩れ指数の差を無視できる程度が望ましい。ここで、捩れ指数の差が無視できる程度とは、テーパ状の測長ドラム22を用いて第1の実施形態のように測長する場合を例に説明すると、測長ドラム22においてより太い方の端部側の直径で決まる捩れ指数に対して回転体16を制御した場合でも測長されたヤーン10の捩れが、3回/1200mm以下となる程度である。
【0074】
上記のように測長ドラム、第1ドラム及び第2ドラムをテーパ状とすることでヤーン10をよりスムーズに引き出すことが可能である。
【0075】
尚、図6に、第2の実施形態についてテーパ状の測長ドラム22及び第1ドラム24を用いた場合にヤーン10を測長する手法を示す工程図を示す。測長ドラム22及び第1ドラム24を用いる場合には、図6に示すようにそれらの向きを同じ方向にして配置する。これは第3の実施形態の場合も同様である。
【0076】
【発明の効果】
本発明によれば、測長ドラムで測長されたガラスヤーンに捩れが生じていないため、製織されたガラスクロスを構成しているガラスヤーンには捩れが生じていない。従って、ガラスクロスを構成しているガラスヤーンの捩れに起因する厚みの増加が生じない。そのため、ガラスクロスを薄くすることができる。
【0077】
また、上記のように捩れの解消したガラスヤーンを用いて製織されたガラスクロスに開繊処理を施すので、ガラス繊維フィラメント単位まで均一に開繊でき、ガラスクロスを更に薄くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したガラスクロスの製造方法の一実施形態を示す工程表である。
【図2】ケーキからヤーンを引き出す一手法を示す図である。
【図3】測長ドラムから引き出されたヤーンに捩れが生じていない状態とする1手法を示す図である。
【図4】測長ドラムから引き出されたヤーンに捩れが生じていない状態とする他の手法を示す図である。
【図5】測長ドラムから引き出されたヤーンに捩れが生じていない状態とする更に他の手法を示す図である。
【図6】第2の実施形態においてテーパ状の測長ドラム及び第1ドラムを使用して測長する場合の工程図である。
【符号の説明】
10…ガラスヤーン、12…ガラスケーキ、14…測長ドラム、16…回転体、18…第1ドラム、20…第2ドラム、22…テーパ状の測長ドラム、24…テーパ状の第1ドラム。

Claims (5)

  1. 測長ドラムで測長されたガラスヤーンを用いてガラスクロスを製造する方法であって、
    ガラスケーキを回転体上に前記ガラスケーキの巻回軸が前記回転体の回転軸と平行になるように置き、前記ガラスケーキから略巻回軸方向に前記ガラスヤーンを引き出し、前記ガラスヤーンを前記測長ドラムに巻きつけて測長し、当該測長されたガラスヤーンを用いてガラスクロスを製織し、
    前記測長ドラムにガラスヤーンを巻きつける際には、前記測長ドラムからガラスヤーンを引き出すときに生じる捩れの方向が、前記ガラスケーキから引き出されることでガラスヤーンに生じる捩れの方向と反対の方向になるように前記ガラスケーキから引き出されたガラスヤーンを前記測長ドラムに巻きつけ、
    前記測長ドラムに巻きつけるべき前記ガラスヤーンが、前記測長ドラムで決まっており前記測長ドラムからガラスヤーンを引き出すときの捩れ量と同じ捩れ量を有するように、前記ガラスケーキからの引き出し量に応じて生じる前記ガラスヤーンの捩れの変化に対応して前記回転体の回転速度を制御することを特徴とするガラスクロスの製造方法。
  2. 前記ガラスヤーンを前記ガラスケーキの内側から引き出し、前記回転体の回転速度を、前記ガラスヤーンの引き出し量に応じて増加するように制御することを特徴とする請求項1記載のガラスクロスの製造方法。
  3. 測長ドラムで測長されたガラスヤーンを用いてガラスクロスを製造する方法であって、
    ガラスケーキを回転体上に前記ガラスケーキの巻回軸が前記回転体の回転軸と平行になるように置き、
    前記ガラスケーキから略巻回軸方向に前記ガラスヤーンを引き出し、前記ガラスケーキにおける前記ガラスヤーンの引き出し位置の回転方向と反対方向に前記回転体を回転させ、前記ガラスヤーンの引き出しに応じて生じる前記ガラスヤーンの捩れの変化に対応して当該捩れをキャンセルするように前記回転体の回転速度を制御し、前記回転体の回転により捩れがキャンセルされたガラスヤーンを第1ドラムに巻きつけ、前記第1ドラムからガラスヤーンを引き出して前記測長ドラムに巻きつけて測長し、当該測長されたガラスヤーンを用いてガラスクロスを製織し、
    前記測長ドラムにガラスヤーンを巻きつける際には、前記測長ドラムからガラスヤーンを引き出すときの捩れの方向が、前記第1ドラムからガラスケーキが引き出されることでガラスヤーンに生じる捩れの方向と反対の方向になるように前記第1ドラムから引き出されたガラスヤーンを前記測長ドラムに巻きつける、
    ことを特徴とするガラスクロスの製造方法。
  4. 測長ドラムにより測長されたガラスヤーンを用いてガラスクロスを製造する方法であって、
    ガラスケーキを回転させ、前記ガラスケーキの外側から外周方向に前記ガラスヤーンを引き出して第2ドラムに巻きつけ、前記第2ドラムに巻きつけられているガラスヤーンを引き出して前記測長ドラムに巻き付けて測長し、当該測長されたガラスヤーンを用いてガラスクロスを製織し、
    前記測長ドラムにガラスヤーンを巻きつける際には、前記測長ドラムからガラスヤーンを引き出すときの捩れの方向が、前記第2ドラムから引き出されることでガラスヤーンに生じる捩れの方向と反対の方向になるように前記第2ドラムから引き出されたガラスヤーンを前記測長ドラムに巻きつける、
    ことを特徴とするガラスクロスの製造方法。
  5. 請求項1〜請求項4の何れか1項において製織されたガラスクロスに開繊処理を更に施すことを特徴とするガラスクロスの製造方法。
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